資料4-3 平成23年度の科学技術戦略推進費の実施方針(新規プロジェクト実施分等)(平成23年5月31日総合科学技術会議)

平成23年5月31日
総合科学技術会議

 平成23年度の科学技術戦略推進費(以下、「戦略推進費」という。)については、「科学技術戦略推進費に関する基本方針」(平成23年5月13日総合科学技術会議)等を踏まえ、総合科学技術会議が科学技術政策の司令塔機能を発揮し、各府省を牽引して自らが設定した科学技術イノベーション政策を戦略的に推進していくため、科学技術振興調整費から引き継いだプログラムを継続して着実に実施するとともに、新規プログラムについては、各府省の施策では対応が難しい取組や科学技術を取り巻く規制等社会システム改革の取組などの府省連携施策等に重点を置いて先導的に活用することとする。
 新規プロジェクト実施分について、具体的な実施プログラム、プログラム別の配分予定額、プログラムの実施期間・体制等は以下の通りとする。なお、新規プロジェクトの選定期間については、平成23年度の実施プロジェクトの選定状況等を踏まえ別途設定する。

【1】平成23年度に新規プロジェクトを設定するプログラム

1.社会システム改革と研究開発の一体的推進プログラム

(1)目的

 革新的技術を開発し、ひいては新産業を創造していくためには、研究開発とその成果の実利用・普及段階で障害となる社会システムの転換とを一体的に推進する必要がある。このため、「研究開発」と「社会システムの転換」との連携・調整によりイノベーションを創出するためのプログラムを府省連携の下に実施する。

(2)平成23年度配分予定額

 6.7億円(継続プロジェクト実施分と合わせて27.7億円)

(3)対象となる取組

 本プログラムにおいて、府省毎の施策では対応できない境界的・融合的な課題について、「研究開発」に「規制等社会システム」との連携・調整を取り入れ、双方が一体となって取り組むこととする。

○サブプログラム「地域社会における危機管理システム改革プログラム」

[1]目的

 大規模な自然災害、各種感染症に対して、組織間・地域間の情報共有・相互連携を図る上での隘路を解消し、自治体首長・関係組織の迅速な意思決定と的確な行動を支援するとともに、住民へのきめ細かい情報提供と対応・円滑な対策実施を可能にする危機管理の情報・業務・対策システムを構築する。
 システム構築においては、平成23年東日本大震災のような広範囲で大規模な災害時において重要である、組織間・地域間・住民との間の情報共有化、高精度な被害推定・状況把握、情報提供等を可能にする情報・業務対応システムを高度化する。併せて、防災・減災対策(自然災害における効率的な避難、感染症における防疫)や被災後の復旧・復興対策に対応した危機管理システム改革を行う。

[2]達成目標

○ 自然災害への対応

 自然災害に関する情報システムについて、関係府省庁、自治体等のニーズを集約し、複数の情報システム間のインターフェースをはじめ、情報共有や状況把握等に必要な機能を実装する。構築した情報システムについては、実用化に向けた実証実験を継続的に行い、実用に資する機能・性能を達成する。

○ 各種感染症への対応

 鳥インフルエンザの対策は、大流行以前の早期発見・防疫対策(摘発淘汰、消毒等)の確実な実施が最も重要である。このため、防疫の主体となる地方自治体における迅速かつ的確な初動対応を支援する「県境を越えた一体的な広域監視・警報システム」を構築する。また、構築したシステムを活用して県境を越えて自治体同士をシームレスにつなぎ、有効な総合的感染症対策を迅速に実施するため、複数の地方自治体において実証を継続的に行い、実用に資する機能・性能を達成する。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

○ 自然災害への対応

 災害対応時の自治体首長や関係機関等の迅速な意思決定・行動を支援するとともに必要な情報を住民まで展開する、防災・減災のための「危機管理システム」を構築する。
 モデル地域となる地方自治体において、自治体や各府省、研究機関、ライフライン事業者等が独自に所有する自然災害への危機管理対応に資する多くの情報を集約し、情報共有、状況把握・分析、情報伝達、情報整理ができる危機管理情報システムの開発を行う。また、人的・組織的観点から危機管理対応業務における課題の抽出を行い、開発した情報システムを利活用した実証実験を通して総合的にシステムを改善する。
 システム構築においては、平成23年東日本大震災の状況を踏まえて、自治体のシステムの機能喪失の際のバックアップ機能や、近隣の自治体間での情報共有化と、住民への情報提供機能や、復旧・復興の立ち上げに貢献する情報・業務機能を導入する。

○ 各種感染症への対応

 鳥インフルエンザに対する、地方自治体における迅速かつ的確な初動対応を支援するための「県境を越えた一体的でシームレスな広域監視・警報システム」を構築する。
 具体的には、(1)県を越えて情報共有が可能となるように地理情報システム(GIS)を改良するとともに、(2)野鳥種ごとに家禽への感染源としてのリスク(ウイルスに対する感受性、ウイルス放出のしやすさ等)を評価する研究を行う。次に、(3) (2)の研究によって得られた野鳥種ごとのリスク情報のほか、野鳥の飛来状況、野鳥における感染発生状況などの情報を(1)のGISに付加することにより、地方自治体が野鳥から家禽への危険性を迅速かつ的確に把握し、家禽への感染拡大防止策の早期実施を支援する広域的監視・警報システムを構築する。当該システムについては、県境に係る情報連携の不備を解消するため、「県境を越えた一体的でシームレスな」システムとし、複数の地方自治体において実証を行い、実用可能性を検証する。
 合わせて、当該システムを効果的に運用し、かつ総合的な感染症対策につなげるため、関係省庁の参画の下、各種感染症に対する適切なリスク管理・危機管理のあり方を継続的に検討・検証する。
 これらを通じて、各種感染症の発生時に、地方自治体が迅速かつ効果的な防疫対策を実施し、発生地域の拡大を食い止め、各種感染症による経済的被害等を最小限に抑えることのできる「総合的な感染症対策の危機管理システム」の構築につなげる。

イ 体制

○ 自然災害への対応

 実証実験等、プロジェクトの遂行に当たっては、システムの活用者である地方自治体の意見を十分に反映できるような体制を組む。具体的には、研究機関、国の機関、地方自治体、民間企業等が協力するチームと、関係府省(内閣府、総務省、文部科学省、国土交通省等)が連携して推進する。

○ 各種感染症への対応

 実証実験等、プロジェクトについては、地方自治体を含み、大学、独立行政法人、民間企業、国の機関等が協力するチームが実施する。ただし、研究開始当初から地方自治体の参加が望ましいが、研究の進捗に応じて段階的に参画することも可とする。なお、当該チームによる研究開発を総括し、プロジェクト全体に係る責任者を設置する。

ウ 期間

○ 自然災害への対応

 原則として3年

○ 各種感染症への対応

 原則として3年とするが、総合科学技術会議は、初年度終了までに文部科学省からプロジェクトの進捗状況等について報告を受け継続の可否等について確認する。

エ プロジェクトの選定

(方法)

○ 自然災害への対応

 文部科学省が、地方自治体、研究機関、国の機関、民間企業等によるチームを公募により1件選定する。なお、チームには地方自治体の参加を必須とする。

○ 各種感染症への対応

 文部科学省が関係省庁の意見を踏まえつつ、大学、独立行政法人、民間企業、国の機関、地方自治体等によるチームを公募により1件選定する。なお、チームには地方自治体の参加を必須とする。

(留意事項)

○ 自然災害への対応

  • 開発する危機管理情報システムの仕様が、設定したテーマに合致していること。
  • 社会や現場ニーズを十分に反映し、社会に根付く情報システムとすること。
  • システムに新たに実装する機能が明確になっていること。
  • 関連するシステムの連携が容易になること。
  • システムの実用化に際して個人情報保護等の観点で考慮されていること。
  • 実証実験の適切な実施計画が立てられていること。
  • 実用段階で可能な限り省力、低コストで容易に実現できる設計とすること。

○ 各種感染症への対応

 感染症対策に取り組む関係省、地方自治体のニーズに対応でき、隣接した地方自治体において相互使用できるのか実証・検証できる体制となっているか。

[4]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 1.9億円

イ 平成23年度選定分 1プロジェクト当たりの経費

○ 自然災害への対応

 1億円上限

○ 各種感染症への対応

 9,000万円上限

○サブプログラム「ゲノム情報と電子化医療情報等の統合によるゲノムコホート研究の推進」

[1]目的

 疫学・コホート研究から得られるゲノム情報等の生体情報、生活習慣等の疫学情報に加えて電子化された医療情報を統合する新しい疫学・コホート研究を行う。本事業では、対象者の生活習慣、生活環境等について情報収集のため追跡調査(疫学・コホート研究)を実施するとともに、血液等の生体材料を採取、保存し、ゲノム、バイオマーカー等の解析などの基盤整備を行う。同時に、IT戦略に基づき医療情報の電子化が進展していることから、ITネットワークを効果的・効率的に活用し、疫学・コホート研究の上記データと医療情報とを統合することにより、ゲノムレベルでの疾患リスクや疾患メカニズムの解明、薬物反応(作用、副作用)の発見、評価等を行う。これらの成果を疾患の予防や新規治療法(新規治療薬、治療技術等)の創生につなげる。

[2]達成目標

 本サブプログラムの終了後、ゲノムコホート研究推進体制(研究体制、対象者の登録方法等)の構築、標準プロトコールの策定とともに、パイロット研究の結果を踏まえて、10万人規模を目指したコホート研究を開始すること。さらに、関係省との連携の下、研究継続のための行政側の推進体制を完成すること。IT戦略本部、厚生労働省等との連携が進み、電子化医療情報のコホート研究への活用に向けての方針を明確にすること。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

 1年目は、大学病院、国立高度専門医療研究センター等又はそれらの機関から構成されるコンソーシアムにおいて、10万人規模のコホート研究を実施するための研究推進体制(研究目的、対象者の登録方法、追跡体制、生体試料の採取・保管体制、個人情報の取扱い等)の検討を行い、研究推進体制の決定、標準プロトコール案策定のための情報収集等を行う。また、生体試料の採取と分析方法等に関して、評価検討できるように目的を明確に設定したパイロット研究を、数百人程度を対象として実施する。さらに大規模ゲノムコホート研究結果の解析に向けたデータ解析に関する検討とインフォマティシャンの活用を、パイロット研究の中で行う。
 2年目は、1年目に検討してまとめた標準プロトコール案に従い、対象者を数千人規模に拡大したパイロット研究を行う。具体的には、対象者を募集し、インフォームドコンセントを取った上で、対象者に関する生活習慣、健康診断等の基本調査の実施、血液等の生体試料の採取・保管・各種分析などを行い、大規模研究に向けた標準プロトコール案を修正し、最適化、実施上の課題の解決を行い、研究実施体制を確立する。
 3年目以降は、2年目に確立した研究実施体制、標準プロトコールについて外部評価を得たうえで、それらに基づき10万人規模の大規模コホート研究を実施する準備を終えていること。同時に、IT戦略に基づき、進展している電子化医療情報を効果的・効率的に活用し、コホート研究のデータと医療情報とを将来的に統合させる方策についても検討を行う。

イ 体制

 大学病院、国立高度専門医療研究センター、地方自治体病院等の機関又はこれらの機関から構成されるコンソーシアムにおいて研究を実施する。
 また、疫学研究、産業界、倫理関係等各分野の専門家と関係府省(内閣府、文部科学省、厚生労働省)の担当者による運営委員会を設置し、研究の進捗等について議論し、目的に沿って研究が進むように必要な支援等を行う。

ウ 期間

 原則として3年

エ プロジェクトの選定

(方法)

 文部科学省が、大学病院、国立高度専門医療研究センター、地方自治体病院等又はこれらの機関から構成されるコンソーシアムを、公募により選定する。

(留意事項)

 下記の条件を満たす機関又は複数の機関から構成されるコンソーシアム等を選定する。

  • コホート研究の実績があり、パイロット研究の実施体制の構築が可能であること。

[4]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 3億円

イ 平成23年度選定分 1プロジェクト当たりの経費

 3億円程度

○サブプログラム「気候変動に対応した新たな社会の創出に向けた社会システムの改革プログラム」

[1]目的

 気候変動のリスクを最小限に抑えた低炭素社会を目指すため、緩和技術と適応技術の双方を活用して温室効果ガスを削減するとともに、気候変動の影響に適応する都市・地域を形成する。
 このため、大学や地方公共団体、民間企業等で構成されるチームにおいて、気候変動の緩和策や適応策実施の基礎となる要素技術を開発し、それらを社会で組み合わせて統合化・実用化するとともに、気候変動に対応した新たな社会を先取りした都市・地域を形成するための社会システム改革を行う。

[2]達成目標

 気候変動の適応策や緩和策の実施の基礎となる要素技術を開発・応用し、それらを組み合わせて社会システムの中で地方共同体の参画のもと実証実験を行う。また、その実証実験から規制等の制度的隘路を明確化し、その克服策として特区や規制緩和等の対策を検討、実行することによって、社会システム改革を推進する。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

 「気候変動に適応した新たな社会の創出に向けた技術開発の方向性(最終とりまとめ)」(総合科学技術会議 気候変動適応型社会の実現に向けた技術開発の方向性立案のためのタスクフォース)に示された技術について、気候変動に対応した新たな社会実現のための社会システム改革と研究開発を一体的に進める取組であって、以下の4点のいずれも含むものとする。

  1. 新たな気候変動対策技術の開発・応用を行うとともに、新技術あるいは新技術と既存技術の組み合わせを社会システムに適用させた実証研究を行う。
  2. 提案段階で社会システム改革の具体像を明示するとともに、気候変動に対応した新たな社会実現につなげるため、チームと社会制度を所管する関係府省が連携を行う。
  3. 支援終了後においても、制度や行政システム改革などにより、実証試験のフィールド上に設定した社会システム改革の定着や継続的な発展を担保する。
  4. 社会システム改革がモデルとなり他地域への導入等の波及効果が期待できる。

イ 体制

 地方公共団体、大学、大学共同利用機関、国公立試験研究機関、独立行政法人、民間機関等の国内の機関により構成されるチームにより実施することとし、チームの中核となる実施機関は、外部有識者、関係府省庁、各実施機関の関係者からなる運営委員会を設置する。
 また、関係府省庁や外部有識者等で構成され、総合科学技術会議のリーダーシップの下に別途設置した「社会実証戦略委員会」が、気候変動に対応した社会システムの実証の過程において顕在化した制度的隘路の解消のため、制度的隘路の解消方法とそれに伴う課題について、内閣府のリーダシップの下で関係府省が連携し検討を行い、その解消方法の実現に向けた調整と提言を行う。

ウ 期間

 1つのプロジェクトの実施期間は原則として5年だが、プロジェクト開始後3年目に文部科学省が中間評価を行い、その結果に応じて計画の変更、プロジェクトの中止等の見直しを行う。

エ プロジェクトの選定

(方法)

 具体的な気候変動に対応した新たな社会実現のための社会システム改革の構想を有する、大学、大学共同利用機関、国公立試験研究機関、独立行政法人、民間機関等の国内の機関及び地方公共団体により構成されるチームを公募により選定する。またチームには研究能力を有する機関及び地方公共団体の参画を必須とする。

[5]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 9,000万円(継続プロジェクト実施分と合わせて7.9億円)

イ 平成23年度選定分 1プロジェクト当たり経費

 9,000万円上限

○サブプログラム「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」

[1]目的

 安全・安心な社会の構築に資する科学技術について、犯罪・テロ対策や化学品等による特殊な事故対応のための技術を開発する。これらの技術の主たるユーザーが関係府省庁とその関係機関であることを踏まえ、関係府省庁の連携体制の下、具体的な現場ニーズに基づいた研究開発テーマを設定し、技術開発及び実用化に向けた実証試験までを一体的に行い、研究成果の早期実用化につなげる。

[2]達成目標

 犯罪・テロ対策技術等について、関係府省庁との連携体制の下、具体的な現場ニーズに基づいた研究開発テーマを設定し、技術開発及び実用化に向けた実証試験までを一体的に行い、ニーズ側府省庁等が要求する実用に資する機能・性能を達成できること。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

 平成23年度は、次の研究テーマを対象とする。

  1. 現場における鑑識資料のイメージング装置の開発
  2. 初動対応のための生物剤・化学剤検知装置の開発

イ 体制

 プロジェクトの実施機関は、関係府省庁、外部有識者等からなる諮問委員会を設置する。
 また、平成22年度に本サブプログラムにおいて定義された「技術開発推進チーム」が、技術開発の適切な推進の確保、技術動向に係る調査(海外調査・国際協力を含む。)、実証試験への協力等を行う。なお、技術開発推進チームが行う調査等に費用が必要な場合は、文部科学省から関係府省への移替えにより、別途措置する。

ウ 期間

 原則として5年(研究開発段階3年、実証試験段階2年)
 課題開始後3年目に文部科学省が再審査を行う。再審査においては、具体的、定量的な達成目標の達成見込み、実証試験の見通し等について審査し、継続して実施する課題を選定。

エ プロジェクトの選定

(方法)

 文部科学省が、公募により選定する。 

(留意事項)

  • 実現を目指す装置等が研究テーマにおける要求仕様を満足していること
  1. 現場における鑑識資料のイメージング装置の開発
     犯罪現場等において、目に見えない潜在的なヒト由来成分(指掌紋、体液等)が印象されたこん跡を、適切な鑑識作業の支障にならぬよう非接触・非破壊で漏れなく検知するための手段として、光技術を応用した装置を開発する。
  2. 初動対応のための生物剤・化学剤検知装置の開発
     爆弾による飛散やテロリストの散布により非特定物質による汚染が想定される現場において、初動対応として一定種類の生物剤と化学剤を同時に検知する装置を開発する。
  • 開発する装置等の実現に向けて適切な開発要素の明確化ができていること
  • 個々の開発要素が設定した目標を期間内に技術的に達成できる見通しのあること
  • 個々の開発要素の統合化の考察が適切であること 等

[5]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 9,000万円(継続実施分と合わせて8.9億円)

イ 平成23年度選定分 1プロジェクト当たり経費

 4,500万円上限

2.科学技術国際戦略推進プログラム

(1)目的

 科学技術外交の戦略的展開を図るため、民間団体の力も生かしつつ、関係府省が一体となって、我が国が先導的に地球規模の課題解決などに貢献する取組を推進する。

(2)平成23年度配分予定額

 1.3億円

(3)対象となる取組

 少子・高齢化による日本のプレゼンス低下や新興国の台頭等が進む中、日本が知恵で生きていくためには、海外の産学官の関係者との連携を強め、海外の優れた研究資源を取り込み、日本の研究開発システムを強化することが必要である。「科学技術に関する基本政策について」(平成22年12月24日 総合科学技術会議答申)(以下、「答申」という。)に掲げられている「世界と一体化した国際活動の戦略的展開」の実現のため、以下の2つのサブプログラムを実施する。

○サブプログラム「途上国におけるイノベーションを促進する国際協力の戦略的推進」

[1]目的

 アフリカ地域とイノベーションにつながる科学技術協力を支援することにより、グリーン・イノベーション及びライフ・イノベーションを中心とする我が国の技術の国際展開を推進する。
 国際協力の実施に際して、海外の優れた研究機関・研究者との間で研究ネットワークを構築し、相互扶助的な連携関係を強化することにより、答申に掲げられている「地球規模問題に関する開発途上国との協調及び協力の推進」を実施する。

[2]達成目標

 アフリカ地域における協力活動の中心となる、自立した運営体制を備えた拠点を形成する。
 我が国の優れた技術の国際展開や国内で研究推進が困難な課題の海外での実施を実現する。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

 我が国とアフリカ諸国の研究機関・大学等の間で、国際共同研究から人材育成・国際標準化等も含めたイノベーションの創出に資する継続的な協力を、我が国との協力関係があるアフリカの研究機関や大学、あるいは我が国の大学等の海外現地機関を拠点として活用しながら行う。その際、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションを中心とするテーマを設定し、我が国の環境・エネルギー及び医療・介護技術等の国際展開を諸外国機関とともに推進する。さらには、研究ネットワークの構築、相互扶助的な関係を強化し、我が国の産業界との連携、研究開発成果の社会への還元につなげる。また、相乗効果が見込まれる場合、科学技術分野におけるアフリカ諸国の取組との連携を模索する。
 1年目はフィジビリティ・スタディを実施し、協力実施計画の作成を行い、関係する国、機関間で実現可能性が認められたもののみ協力実施フェーズに移行する。

イ 体制

 フィジビリティ・スタディは、プロジェクト・マネージャを中心とするチームが、必要に応じ、拠点候補機関の協力を得て実施する。なお、各プロジェクトの体制として、府省連携の可能性や国際機関(世界銀行、アフリカ開発銀行など)との連携の可能性についても検討する。
 協力実施フェーズは、フィジビリティ・スタディに参画した国内機関が、案件により連携可能な国内研究機関や国際機関と協力して行う。

ウ 期間

 開始年度にフィジビリティ・スタディを行い、実現可能性が認められた課題については、協力実施フェーズに移行し、原則5年以内の協力を行う。これらの課題については、協力実施後3年目に中間評価を行い、中間評価の結果に応じて、計画の見直しを行う。

エ プロジェクトの選定

(方法)

 フィジビリティ・スタディは、文部科学省が、国内の大学及び大学共同利用機関、国公立試験研究機関、独立行政法人、民法法人、民間企業から公募により選定する。
 なお、2年目に協力実施フェーズに移行するプロジェクトは、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究開発評価部会が定めるところにより設置された、外部有識者からなる作業部会が決定し、選定結果を総合科学技術会議に報告する。

(留意事項)

 相手地域の課題解決だけでなく、我が国の優れた技術の国際展開や国内で研究推進が困難な課題を海外での実施等、我が国への波及効果を考慮する。
 支援終了後も、自立的に活動が継続することが見込まれる。

[5]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 3,000万円

イ 平成23年度選定分 1プロジェクト当たり経費

 1,000万円程度

○サブプログラム「科学技術外交の展開に資する国際政策対話の促進」

[1]目的

 答申に掲げられている「科学技術の国際活動を展開するための基礎基盤の強化」の取組みの一つとして、民間団体の主導による科学技術外交の展開として、国際的に科学・技術をリードする産学官の関係者が社会の幅広いステークホルダーの参画を得て、将来に向けての科学・技術の在り方を議論する国際集会等の開催を支援し、国際的なコミュニケーションの場の定着を促進する。

[2]達成目標

 諸外国との政府間対話等を通じて、海外の科学技術の動向に関する情報を収集するとともに、我が国との新たな研究交流、科学技術協力、イノベーション協力等の科学技術外交に貢献する議論を行う。これにより国の科学技術の国際活動を展開するための基盤を強化する。

[3]サブプログラムに基づくプロジェクトの実施方法

ア 内容

 科学・技術の関係者のみならず政府関係者、大学等研究機関関係者等の社会の幅広いステークホルダーが世界各国から参画する国際集会を開催する(開催地は日本国内に限定しない)。

イ 体制

 民間企業、財団法人、社団法人、NPO法人をはじめとする民間団体等が実施する。

ウ 期間

 平成23年度

エ プロジェクトの選定

(方法)

 文部科学省が公募により選定する。

(留意事項)

 個別分野の研究集会は対象としない。

[4]平成23年度配分予定額

ア 全体の配分予定額

 1億円

【2】実施ワーキンググループの開催及びプログラム評価の実施

 戦略推進費は、総合科学技術会議が各府省を牽引して科学技術イノベーション政策を戦略的に推進するために不可欠な政策手段である。このため、内閣府は、関係府省の協力を得て、平成23年度科学技術戦略推進費を活用して実施するプログラム毎に実施ワーキンググループを開催し、プログラムの進捗状況を把握することとする。その際、有識者議員により適切に役割分担をしつつ、プログラムの効率的な推進を図る。
 総合科学技術会議はプログラムに係る評価を適切な時期に実施することとし、具体的実施時期、方法等は別途定める。

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))