研究開発評価部会(第43回) 議事要旨

1.日時

平成24年7月5日(木曜日)15時30分~17時

2.場所

文部科学省 3F2会議室

3.議題

  1. 科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について
  2. 科学技術振興調整費による実施プロジェクト等の評価の実施について
  3. 研究開発評価システムの改革について
  4. その他

4.出席者

委員

平野部会長、室伏部会長代理、北澤委員、有信委員、有本委員、受田委員、岡村委員、金子委員、小林委員、諏訪委員、田中委員、東嶋委員、冨山委員、奈良委員、西島委員
(各評価作業部会主査等)
阿部プログラムディレクター、山本主査

文部科学省

渡辺科学技術・学術政策局次長、行松科学技術・学術戦略官(調査・評価担当)、板倉基盤政策課長、大山科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)、奥国際交流官補佐、德成科学技術・学術戦略官付室長補佐、相原科学技術・学術戦略官付専門官

5.議事要旨

 部会長より、議題1について、運営規則第4条第3号及び同規則第5条第2項に基づき、会議を非公開とし議事録を非公表とすることが諮られ、部会において了承された。

○議題1 科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について

 事務局より資料1-1~1-3に基づき説明が行われた後、採択候補プロジェクトを取りまとめたJSTの阿部プログラム・ディレクターより、PD・PO会議についての状況報告が行われた。続いて、作業部会の山本主査より審査の経緯・結果の概要を報告した後、審議が行われた。

 審議の結果、作業部会の審査結果については、本部会における採択プロジェクトとして了承された。

 なお、本審査結果については、総合科学技術会議へ報告されるとともに、審査要領に基づき、提案者に対して通知される旨、説明があった。
また、事務局より資料1-4に基づき文部科学省行政事業レビュー公開プロセスについて報告があった。

【平野部会長】 
 それでは、議題2「科学技術振興調整費による実施プロジェクト等の評価の実施について」の審議に入ります。
 
ここからは本部会を公開といたします。傍聴の方がお見えでしたら、入室をお願いします。(傍聴者入室)

○議題2「科学技術振興調整費による実施プロジェクト等の評価の実施について」

 まず、事務局から資料の説明をお願いします。

【板倉基盤政策課長】  
 それでは、私から議題2について御説明させていただきます。科学技術振興調整費で実施されたプログラムのうち、科学技術人材育成費補助金に移行したプログラムにつきまして、今回、評価を実施しようとするものでございます。この科学技術人材育成費補助金につきましては、担当課が基盤政策課でございますので、基盤政策課の方から御説明するという次第でございます。

 お手元の資料2-1、更には2-2をごらんいただきたいと思います。2-1は昨年8月に本部会でお決めいただきました実施プロジェクトの評価の進め方についての決定内容でございますが、評価の基本的な考え方、更には評価の目的につきましては、1ページ目に書いてあるとおりでございます。具体的な進め方につきまして2ページ目以降に記載されてございますので、ごらんいただければと思います。

 評価の対象となるプロジェクトとしては、3.になりますけれども、調整費による全ての実施プロジェクトを評価対象とするということになっておりまして、旧科学技術振興調整費によって実施していた本プログラムにつきましても評価対象になります。

 評価項目でございますが、4.にありますように、中間評価、更には事後評価とございます。中間評価は実施中のものですが、事後評価につきましては終了年度の翌年度に実施するということになっております。なお、追跡評価というのもありますけれども、これにつきましては、今回、該当するプロジェクトはございませんので、実施いたしません。

 具体的な評価の方法につきましては、その次の3ページ以降に記載がございます。5.の(1)にございますが、評価作業部会を本部会の下に設置いたしまして、評価作業部会での審議の後、評価作業部会の報告を踏まえて、本部会において評価結果を取りまとめていただくということになっております。

 また、評価の観点・基準につきましては、3ページの下の6.にございます。科学的・技術的意義のみならず、社会・経済への貢献に係る評価も含めて適切な評価を行うということが、当部会で決まっている内容でございます。

 こういった基本的考え方に基づきまして具体的な評価の実施方法につきまして今回御提案申し上げるわけでございますが、それは資料2-2でございます。今回、評価の対象となりますのは、資料2-2の1ページ目の真ん中ほどに掲げてございます4つのプログラムが対象となります。この4プログラムで43プロジェクトを実施しておりますが、これらを対象として、評価をいたします。具体的なプロジェクトにつきましては、別添1、5ページに記載してございますが、先ほど申しましたように43プロジェクトが対象となります。この科学技術人材育成補助金に移行したプログラムにつきましては、移行に伴いまして総合科学技術会議のプログラム評価の対象外となっております。通常であれば、科学技術振興調整費でプロジェクト評価を実施した後、プログラム全体の評価を総合科学技術会議の方で実施するわけでございますが、移行に伴いまして内局補助金ということになりまして、総合科学技術会議ではプログラム評価を行わないということになりましたので、本部会のもとでプログラム全体の評価も行っていただきたいということでございます。

 評価の実施体制につきましては、文部科学省から事務委託をしております科学技術振興機構の中に作業部会を設置・運営し、評価を実施していただくということになります。具体的には、プログラムごとに内容が異なることから、プログラムの内容に応じて3つの評価作業部会を設置することにしております。1ページ目の下から2ページ目にかけて表に載せてございますが、この3つの作業部会で実施をしていただくということで考えてございます。評価作業部会の構成員につきましては、別添4の選定基準にのっとり部会長よりご指名いただくということになっております。

 評価の実施方法につきましては、2ページ目以降に具体的に記載してあります。まず、被評価者に成果報告書を作成・提出していただいた上で、事務局、それから主査補佐をお務めいただく担当のプログラムオフィサー(PO)の方で確認等を済ませまして、評価作業部会での作業を進めるということになります。評価作業部会におきましては、まず、POから評価作業部会の委員に対して説明を行った上で、書面審査を行い、必要な事項を確認した後に、ヒアリングを行うという段取りになっております。また、必要であれば、ヒアリングの前に評価作業部会の委員以外に、更にご専門の方に御意見を求めるためのメールレビューを行う場合もあります。これにつきましては、主査、更には主査補佐で精査し、メールレビューを行うか、行わないかを決定した上で進めるということになります。また、プログラム全体の評価をまとめる関係上、必要に応じてプロジェクト実施機関に対して追加で資料を求めるということも考えてございます。これは資料の3ページの中ほどに書いております。ヒアリングを経て評価結果を評価作業部会として決定して、その結果を評価作業部会から本評価部会に御報告いただきまして、評価部会において評価結果を決定していただくということになります。

 なお、利害関係者の範囲を資料に記載してございます。4.であります。実施機関と同一の機関に所属する者については、基準により利害関係者となるため、当該プロジェクトの評価を行うことはできないということになっております。

 各プログラムの評価項目、更には評価基準につきましては、別添2、別添3、資料の7ページから13ページにわたって添付してございますので、ごらんいただければと思います。

 最後に、評価スケジュールでございますが、17ページ、別添5をごらんいただければと思います。本日の評価部会で実施方法をお決めいただいた上で、7月中旬以降、評価作業部会を設置いたしまして、委員への必要な御説明、あるいは査読といった作業を開始いたします。9月下旬から10月にかけまして、実際の評価作業部会による評価を実施するということで、ヒアリングを経て、作業部会としての報告案をまとめるという段取りを考えてございます。11月末から12月上旬にかけまして、本本部会を開催いただきまして、評価作業部会の主査から評価結果を御報告し、部会として評価結果を決定していただくということになります。なお、総合科学技術会議から評価結果の報告が求められた場合には、報告を行い、最終的には12月上旬ごろ、公表、更には担当機関への通知を予定しているということでございます。

 説明は、以上でございます。

【平野部会長】
 ただいまの説明につきまして、何か御質問等ございましたら、お願いします。

【岡村委員】
 それぞれの作業部会に分かれていることが理由かもしれませんが、最初の「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プロジェクトの評価基準の項目数が、他のプロジェクトと比べて結構多いような気がしますが、細かく見ていくか、粗く見るかというのが全体の評価にどう関係するのか、少しわかりづらいところもあるのですが、何か理由があるのでしょうか。

【板倉基盤政策課長】
 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プロジェクトは、テニュアトラック制度の導入を目的として実施しております。テニュアトラック制度は、制度そのものが若干複雑といいますか、いろいろな観点、細かく制度の詳細部分を審査する必要があるということから、過去の累次にわたる評価の部会でも様々な意見が出ておりまして、それらの意見をもとに、これらの詳細な評価項目を設定した次第でございます。

 他の制度につきましては、制度の目的が比較的シンプルであるということもありますので、評価項目が比較的少ないということで考えております。

【平野部会長】  
 そのほか、いかがでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、議題2につきましては、提案どおり決定することにいたします。これに基づきまして、今後の評価を進めたいと思います。

 議題2について終了いたしましたので、続いて、議題3、研究開発評価システムの改革についての審議に入りたいと思います。

 現在、総合科学技術会議の評価専門調査会において、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の見直しに向けた議論が進められております。新たな大綱的指針が策定されますと、それに基づいて「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」についても見直しが必要となります。本件については、この部会において御検討いただくということになるわけでありますが、本部会においては、昨年8月に研究開発評価システムの改革についての現状を事務局より報告いただき、意見交換を行ったところでございます。本日は、その後の状況について報告をいただいて、意見交換をしたいと思っております。

 それでは、事務局から説明をお願いします。

【行松科学技術・学術戦略官】  
 ただ今、部会長から御説明をいただきました研究開発評価システムの改革について、内閣府方で検討を進めております大綱的指針の見直しに基づいて、私ども文部科学省の評価指針の見直しを行うということになっておりますが、ただ今お話がありましたように、本部会では、内閣府の進捗状況を去年8月に御報告をしたところでございます。、その後、内閣府の方でも検討を進め、3日前、資料3-3という形でお示しをしております、「研究開発評価システムの充実に向けた検討の取りまとめ」という素案が示されましたので、ここであわせて状況を御報告申し上げます。

 まず、資料3-1でございますけれども、これは、去年8月にこれの前の案の段階で本部会に御報告申し上げたものでございますけれども、「研究開発評価システムの充実に向けた検討項目及び論点について」ということで、検討の基本的なスタンスと、1から4まで4つの項目ありますけれども、「政策体系に対応した体系的・効率的な評価システム」、2番目として、「連続性・一貫性のある評価プロセス」、3番目として「評価結果を次の行動に生かす仕組み」更に「研究開発評価に係る人材の育成等」という、この4点を検討項目及び論点にするということで、去年9月13日の評価専門調査会でこういう点が示されたところでございます。

 続きまして、資料3-2というところでございますけれども、評価専門調査会のもとに検討ワーキンググループを設置し、細かい点を検討するということになりまして、2.に議論の主要なポイントということで、ワーキンググループの中で特に深掘りをして検討をするべきものとして、プログラム評価の拡大という点、事前評価の強化という点、更に、アウトカム指標、イノベーションとしてどのようにこの目標をとらえていくかという点、4番目として追跡評価の在り方ということで、追跡評価をどう位置づけていくか等、これらの4点につきましてワーキンググループで検討をするということになりまして、4.にありますワーキンググループのメンバーで検討が進められてきたという経緯でございます。

 続きまして、資料3-3でございますが、これはおとといのワーキンググループの場で示された「研究開発評価システムの充実に向けた検討の取りまとめ」ということで、初めてワーキンググループの中でこのような形で示されましたので、これに対する議論もこれからまた始まっていくわけでございますけれども、まずは、今までの議論の集約という形で、この資料3-3を中心に御紹介したいと思います。

 まず、1番、「基本的な問題認識」ということで、今までの検討の趣旨を振り返って総括をしているわけですけれども、第4期の科学技術基本計画において、科学技術の成果をイノベーションを通じて新たな価値創造に結びつけるため、我が国が取り組むべき課題をあらかじめ設定し、その達成に向けて、研究開発の推進から、その成果の利用・活用に至るまでの科学技術政策と関連するイノベーション政策を一体的・総合的に推進することで、イノベーション、いわば出口までの一体的・総合的な推進が基本的な方向として示されております。これに対応するため、今後、大綱的指針を見直していくということになるわけですが、ここにありますのは、これまで国が行う研究開発に関しては、大綱的指針をガイドラインとして評価システムを形成していたけれども、現行の大綱的指針では、科学技術政策、すなわち研究開発の実施に焦点を当てているために、科学技術イノベーション政策まで見通した一体的・総合的な推進という観点から見た場合には、十分にこれをカバーできてないのではないかという問題意識であります。

 そこで、大綱的指針の見直しに当たっては、マル1、「研究開発の推進からその成果の利用・活用に至るまでを視野に入れて、このPDCAサイクルを確立していくということ。」更に、マル2として、「研究開発政策の各階層の相互の関連づけを明確にして、各段階でのPDCAサイクルを含めて、最も施策の実効性が上がる階層でPDCAサイクルを確立していくということ」を重視するということが、ポイントになろうということです。

 2に、「研究開発評価システムの充実に向けた具体的な方向」ということで、この基本的な問題認識を受けてどうしていくかということが書かれているわけですが、ここでは、(1)として研究開発政策体系におけるプログラム評価の導入・拡大というのが1点目、2点目として、後ほどまた御説明しますが、アウトカム指標による目標の明確化とその達成に向けたシステムの検討という、この二本柱になってございます。

 まず、プログラム評価の拡大という点でございますけれども、ア、研究開発政策における階層構造ということで、基本計画に基づく研究開発課題の4段階の階層を政策評価法に基づいて整理をしたということを書いているわけですけれども、プログラムと制度、それから研究開発課題、この両階層というものは事務事業に該当し、施策の実行手段として位置づけられるんだけれども、研究開発課題よりも上位の階層であるプログラムと制度は施策レベルに近い実行手段となるということで、いわばイノベーションまで見通した施策というものをしっかり実効性あるものにしていくという意味では、施策レベルに近いプログラム・制度の評価が重要だということになっているわけでございます。

 次のページでは、イ、各府省において研究開発施策の現状がどうなっているかということを概観しておりますが、ここにありますのは、プログラムとして位置づけられているということがなかなか見られないという状況であると。これは、我が国の研究開発施策の実行において、プログラムという概念が現時点ではあまり浸透していないのではないかというふうに、この報告は見ています。研究資金制度とは独立した形で、1つ又は複数の研究開発課題で構成され、これらの研究開発課題を解決するためにプロジェクトが施策の実行手段として実施されているということですけれども、資金制度とプロジェクトは施策における双方の関連づけが明確にされないまま実施されている場合も多いと、問題提起がされております。

 続きまして3ページ目に、ウ、として海外において研究開発施策がどのように実施されているかということを書いているわけですけれども、欧米諸国においては研究開発施策の実行手段としてプロジェクトを内包する多くのプログラムが実施されているということで、我が国においては、プログラム・制度とは独立した個々のプロジェクトが施策の中心的な実行手段になっている場合が多いということ。ただ、それに比べて欧米においてはプログラムが施策の中心的な実行手段になっているというふうに見ておりまして、プログラムの概念について整理するということで、施策の最小単位であり、独自の目的・目標を有するもの。更に、階層性を有し、プログラムの目標を達成するためのプロジェクトで構成されて、プログラムの中で個々のプロジェクトの位置づけが明確になっているもの。更に、施策の対象と目的の特性に適合したマネジメント方式と評価システムを備えているというものが共通の事項ということで、こういうプログラムのPDCAサイクルをうまく回しているという事例として、イギリスのROAMEFという制度がその代表例ではないかと。プロジェクトレベルとプログラムレベルの評価をつないでいくということで、ROAMEFというのは、Rationale、Objectives、Appraisal、Monitoring、Evaluation、Feedbackという、この頭の文字をとったものでございますけれども、こういう形で、例えば、マル1にありますプログラム設定の理由・位置づけの明確化、マル2の検証可能な目標の設定、こういったものを事前評価できちっと設定をした上で、更にマル4とマル5とマル6まで見通した具体的な計画を事前評価の際にチェックをしてこのサイクルを回していくという制度について、紹介がされております。

 引き続きまして4ページに、プログラム評価の導入・拡大の必要性ということで(ア)と(イ)と2つ挙げられているわけですけれども、1つはプロジェクトの関連づけによるプログラム化ということで、これも繰り返しになるんですが、各省庁には個々のプロジェクト単位で目標が設定されていて、それぞれの実施スケジュールの中でPDCAの取組が行われておりますが、上位施策に対する各プロジェクトの位置づけやプロジェクト同士の関連づけが必ずしも明確にされていないために、結果として各プロジェクトの総体としての効果が十分に発揮されているとは言えないという問題意識でございます。一部の省においてということで経産省の例がここに挙がっていますけれども、各プロジェクトの相互関係を明確にした上で、異なる年度に別々に行われていた関連するプロジェクトの中間・終了評価を同一年度に束ねて実施をする取組も開始されているという紹介があります。今後、課題解決を的確に行っていくためには、個々のプロジェクト単位ではなくて、関係するプロジェクトの関連づけを明確化することを通じて一定の目標を達し得るように、PDCAを確立していく方向に転換する必要があると。具体的には、各プロジェクトを関連づけて、評価の一括的な実施にとどまらず、評価結果をプログラムの企画立案やプロジェクトの新設・中止も含めた資金配分等に反映させる取組を行っていく必要があるということで、具体的にそのPDCAサイクル構築に向けた関連プロジェクトのプログラム化をどう進めていくかということについてマル1からマル4までのプロセスを示しておりまして、最終的には、マル4にありますけれども、こういう評価に関して、プログラム全体の目標やマネジメント体制を見直して、プログラムを構成するプロジェクトの新設・中止、継続プロジェクトの予算配分の見直しといったものに具体的に反映していけるような、こういうプロセスを確立する必要があるのではないかと示されております。

 2つ目が、6ページ目ですけれども、イ、研究資金制度のプログラム化ということで、現在、各府省で行われている競争的資金制度でありますけれども、終期が設定されていないもの、それから、目的は示されているけれども、制度全体及び制度を構成する領域・分野のサブ単位での時間軸に沿った検証可能な目標が示されていないものが多いという問題意識でございます。更に、研究資金制度で採択された個々のプロジェクトの目標は明確になっているんだけれども、制度全体の目標があいまいあるいは明確にされていないために、制度の中における個々の研究開発課題の役割についても不明確な場合が多いという問題意識であります。その下の方に、今後というところであるわけですけれども、研究資金制度については、一種のプログラムとしてとらえて、検証可能な目標を一定の時間軸の中で設定し、それに基づく評価結果を能動的・機動的に制度の見直しに反映させていくことが必要であるということが示されてございます。

 更に、7ページ目ですが、プログラムとして備えるべき要件とプログラム類型の考え方ということで、プログラムとして備えるべき要件の考え方というところでマル1からマル6まで示されておりまして、プログラムについては、研究開発のフェーズによって、科学技術的な価値を目指すタイプと、社会的・経済的な価値を実現するミッション型のプログラムに類型化できて、この目標はおのずと異なってくるんだけれども、プログラムとして備えるべき要件や評価方法において両者を区別して扱う必要はないんじゃないかということでございます。

 アウトカム指標による目標の明確化とその達成に向けたシステムの設計という2番目の柱が7ページの下ほどに示されているわけですけれども、研究開発成果の種類として、まずアウトプット、それからアウトカムといったものを区別するということ。更に、間接的で副次的な成果であるインパクトについても把握する必要があるのではないかということで、全体の概念、イメージが示されてございます。

 9ページに、各府省における研究開発目標設定の現状ということで、目的は明確になっているものの、目標については必ずしも明確にされていないものもあるということで、また、研究資金制度も、一部の資金制度ではアウトプットに係る成果とアウトカムに係る成果を区分して成果を把握するという取組が行われているけれども、大部分では両者の区分を認識しないまま制度が運営されているのではないかと。特に、アウトカム指標による目標の設定という観点で見ると、その達成時期を含めてあいまいな形でプロジェクトや研究資金制度が実施されているのではないかという問題意識が示されております。

 ウのところに、海外におけるアウトカム指標による目標設定の事例ということで、NIH(National Institutes of Health)のアウトカム目標の設定事例やDOE(Department of Energy)が行っているロジックモデルという中では幾つか参考になる事例があるのではないかということで、この両者の考え方を資料としてお示しをしております。

 11ページには、アウトカム指標による目標の設定とその達成に向けた取組ということで、これが大体今までの集約でもあるんですけど、課題解決を図っていくためにはアウトカム指標による目標を設定する必要があり、その設定に当たっては、検証可能な内容とすると同時に、達成時期を明確にする必要があるということで、短期、中期、長期などの段階を経て設定をしていくことが有効ではないかということです。このアウトカム指標を的確に設定して着実に実行していくために、以下のような取組を強化する必要があるということで、(ア)(イ)(ウ)という3つを示してあります。(ア)が事前評価の強化で、アウトカム指標による目標の設定や、それを達成するためのシナリオ、具体的な工程表を明確にする必要があるということと、以前にも増して事前評価の重要になるので、フィージビリティスタディーを積極的に行うことというのも必要ではないかというふうにあります。更に(イ)として、工程表の明確化と行政施策との連携強化・プログラムへの組み込みということで、研究開発成果を普及していく上で、関連する行政施策(委託、助成、税制、規制、補助金など)との連携を強化した上で、アウトカム指標による目標の達成をしていく、そういったものを工程表に入れていく必要があるのではないかといったことも挙げられておりまして、(ウ)として追跡評価の強化ということで、これを以前よりもっと積極的に位置づけた上で、今まで大綱的指針においては追跡評価というのはある程度限定的かつ副次的な評価として位置づけられていたわけですけれども、今後は追跡評価も活用した上で、全てのプロジェクトについて追跡評価を行うということで、必要な成果指標としてどのような情報やデータを収集できるのかというのをプログラム開始の前に十分に検討するということが重要ではないかということが示されてございます。

 13ページが、今申し上げた(1)と(2)を前提としたプログラム評価の観点ということで、アウトカム指標の目標によるプログラム評価を、事前、中間、終了、追跡評価と、それぞれどういった観点でプログラム評価をすべきか、という点が示されております。

 最後になりますが、(4)プログラム評価における評価対象の明確化ということで、これまで専ら研究開発の実施主体である研究者や研究機関による取組が主たる評価対象とされており、プロジェクトや研究資金制度の推進主体による取組は評価対象としては扱われていない場合が多かったが、今後、アウトカム指標による目標を明確にしたプログラムの評価を行っていくということになった場合は、プログラム推進主体によるマネジメントの妥当性、それが重要な観点になるのではないかということです。そのため、これらのプロジェクトや研究資金制度の推進主体による取組が評価対象となることを明確にした上で、評価を行っていく必要があり、関連の行政施策をプログラムに組み込んでいく場合には、行政施策による取組についても評価対象となることも明確にしておく必要があるのではないかという問題提起がされてございます。

 これが、おとといのワーキンググループで示された素案というものでございます。

 その考え方に関して、参考で資料3-4という形で、おとといの議論は直接ここには触れていませんけれども、ここに至るまでにどういう議論がされてきたかということをつけておりますのと、資料3-5は、科学技術基本計画、それから、資料3-1にありました論点、更に、この評価部会で平成21年8月4日におまとめいただきました「審議のまとめ」という、この3つを表にしております。プログラムの評価という意味では、御案内のとおり、第4期の基本計画におきましても、研究開発の各階層を踏まえた研究開発評価システムの構築も含め、科学技術イノベーションを促進する観点から、研究開発評価システムの在り方について幅広く検討を行うということになっておりまして、「審議のまとめ」におきましても、一番上の○の2番目ですけれども、説明責任を評価目的とする場合や、社会・経済的効果の評価を必要とする場合は、個々のプロジェクトを詳細に評価するよりも、施策やプログラム・制度レベルで評価をしたり、機関レベルに説明責任を課すほうが適当であるといったご提言もございまして、このワーキンググループでは、「審議のまとめ」も十分踏まえた上で、今まで審議を進めてきていただいているところでございます。

 長くなりましたが、以上でございます。

【平野部会長】   
 ただいまの説明にありましたように、これらの資料は案として出たばかりでございます。今後、この部会においても議論を続けていきたいと考えておりますが、特にきょうは、説明いただいたところで質問等がありましたらお受けしていきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

【有信委員】
 非常に大変な議論をやっていただいたと思っています。基本的には、プログラムの目標を明確にし、その目標を達成するためにそれぞれのプロジェクトの目標を設定するということで、その点で具体的に評価を進めていくというのが骨子だったような気がするんですけれども、実際には、例えば企業の中で具体的にイノベーションを行おうとすると、まず目標設定があって、一番簡単な例としてGMR(Giant Magneto Resistance)ヘッドの例を言うと非常にわかりやすいと思うのですが、現在のハードディスクドライブの高容量化を達成する一番キーになっていますGMRという原理を使ったヘッドがありますけれども、これを使ったハードディスクドライブを実現するためには、GMRというサイエンティフィックな原理の発見を実際に応用しようと。この目的としては、ハードディスクドライブの高容量化につなげる。これが目標設定なんですね。それを実現しようと思うとさまざまな問題があって、例えば温度による磁気劣化の問題だとか、それから、実際にはいわゆる垂直磁化という新しい磁化方式を取り入れないと高容量化が達成できないので、これの技術のさらなるブレークスルーだとか、あるいは、実際にハードディスクドライブにしようと思うと、例えば、ヘッドメディアと言いますけれども、ハードディスク面とヘッドとの間隔が極めて少ない。簡単に言うと、ジャンボジェット機が暴風雨の中を海面すれすれに墜落せずに飛ばすにはどうしたらいいかと、こういう技術が必要なわけですね。

 言いたいことは、似たようなフィールドの科学技術だけではなくて、プログラムの目標を達成するためには異なったフィールドの科学技術についてのプロジェクトを並行して動かさなければいけないということと、それからもう1つは、これは時間のファクターがあって、例えば一定の時期までに目標設定をするとこの目標を達成するとしたときに、個々のプロジェクトの達成目標がどの時期に達成されなければいけないかという、プロジェクトの達成目標とプログラムの達成目標の関係を明確にしなければいけない。もう1つは、プロジェクトの達成目標が達成されなかった場合に、最終目標はプログラムの目標を達成することであって、プロジェクトの目標を達成することではないという基本的な認識をしっかり持って、そこでのキャンディデートをどうするかというところまで含めてプログラムの設計をやる必要があるとか、こういうところを今後もう少し議論していく必要がある。これはたまたま一つの具体例に基づいたもので、全てに適用できるかどうかわかりませんが、通常、ある種の科学技術のブレークスルーをやろうとすると、そういうプロセスが必然的に必要になってくるわけで、従来、もちろんそういう政策的な意図に応じて例えば重点何分野というような分野が設定されたのですが、設定された分野でそれぞれの科学技術が発展して、ある程度のカッティングエッジの技術がそろうと、今言ったような目標設定をしたときに、そういう技術の統合・糾合をして実際に新しいものを実現するのはしやすかったわけですね。ところが今は、それをもっと合目的的にやらないととてもではないけれども今の競争の中では勝ち残っていけないとか、新しいイノベーションを起こしていくには、それぞれの技術なりサイエンスの成熟を待って、成熟がそろったところで初めて起きるようなイノベーションという考え方ではうまくいかない。もうそれぐらい、社会的な課題だとか、さまざまな問題が切迫しているということもありますし、競争環境が非常に厳しくなっているということもありますので、よりある意味で組織化されたプログラムというような形で科学技術にイノベーションを加えた具体的な施策をやらなきゃいけないと、こういう状況だろうというふうに思っていますので、そういう観点でぜひ今後議論を進めていただければと思います。

【平野部会長】
 ありがとうございます。有本委員。

【有本委員】  
 二、三、質問させていただきます。まず、総合科学技術会議はいつこの指針を改定しようとしているのか、総合科学技術会議は1年ぐらい本会議もできないような状況の中で何をしようとしているのか、そういう状況の中でもこの部会がどういうインプットができるのか、全体のフレームがよくわからないので、それを教えていただきたいと思います。また、2つほどあります。第4期科学技術基本計画では、過去の15年間、第3期までと違って、大きく変わったはずです。科学技術政策から科学技術イノベーション政策というふうにウイングを広げたはずです。しかし、ポリシーは変わっても、ファンディングのシステムとか、エバリュエーションのシステムは、改革のための議論がないままではないか。後追いになっていると思うのです。これは大変に深刻な問題だということが共有されているのか。これを見ると、アナリシスばっかりやっているようだけれども、それをインテグレーションしてどう変えるのかという強い意思が働いてないような気がします。ですから、この部会の枠組みを超えてしまう話だけれども、そこはとても懸念されます。

 最後ですけれども、これでは、評価のための評価になっているような気がしてなりません。今の日本が、インプットの科研費なんかは結構ふえているはずですけれども、アウトプットの論文数は減っているというところを直視して、評価のところと同時に、この10数年間の競争的資金の制度の改革について、連動してやらないとうまくいかないと私は思っています。

【平野部会長】 
 わかりました。あまり意見を言う立場でありませんが、実は、前々期のときに私は、本評価部会評価システム改革作業部会の主査を務めており、皆さんの協力で審議のまとめを提案しております。そこにおいては、今、有本委員がおっしゃったようなことは間違いなく皆さんの御意見を審議のまとめに入れてあるのですが、あれらの意見はどこに行ってしまったのかなあというふうに思っております。プログラムをきちっと見る階層として政策にどう持っていくのかというのはそこにも触れてあるのですが、私、このシステムの改革の委員会の方々を批判するつもりは毛頭ありませんけれども、何か、堂々めぐりというのか、次の科学技術基本計画においてのポイントとどこまで先に進んでいくのか、懸念される部分はあります。有本委員の気持ちもよくわかるつもりでありますが、文部科学省、この点について、計画、全体フレームの中でどういうふうに位置づけるか、端的にお答えください。

【行松科学技術・学術戦略官】  
 総合科学技術会議評価専門調査会のワーキンググループ自身は、年内に全体の大綱的指針の大きな方向性を出すということですので、おそらく秋ぐらいまでその議論が進められるだろうというふうに考えておりまして、私どもとしては、その先の文科省の指針の改正ということをある程度にらんだ上で、こちらの評価部会の意見もある程度すり合わせをしながら、内閣府にもここでの御意見をきちっと御紹介しながら進めていきたいというふうに考えておりまして、そういった中では、今、部会長あるいは有本委員がおっしゃったプログラム評価の考え方という部分、更に、まさにイノベーションを確立あらしめるためにどのような評価をやっていくかという、そこの点に関してのこれまでの議論も改めて内閣府には伝えていきたいと思っております。

【平野部会長】 
 有信委員、どうぞ。

【有信委員】  
 紹介された議論の中で、これをどう考えるか注意してほしいと思うのは、例えば、プログラムの目標を達成するために個々のプロジェクトの目標を設定しますけど、個々のプロジェクトは当然、個々の科学技術のテーマについて目標設定をするわけですが、プログラムを達成するためのプロジェクトの目標の達成点と、科学技術のディシプリンという観点で考えたときに要求される達成度とは違うんですね。つまり、科学技術のディシプリンで言えば、80%の達成度でプログラムの目標達成ができる。だけど、研究者は80%では目標達成にならないという問題があって、残りの20%はものすごく大変な作業をやらなきゃいけないという部分があるんですね、極めて一般的に言うと。そこのところでかなり足をとられるところがあるのと、そこをどういうふうに切り分けるか。つまり、各プロジェクトに出す資金のうちで、プログラム向けの資金と個々のプロジェクト達成の資金とを分けなきゃいけないかもしれない。分けるというのは、色分けをして、プログラムに集約していく部分と、個々のプロジェクトのサイエンティフィックなディシプリンという意味での完成度を上げるというか、達成するという部分とを、ほんとうは分けなきゃいけないかもしれないんですね。その辺は少し議論をしていただくと良いと思います。

【平野部会長】  
 ありがとうございます。この部会としても、今、有信委員が言われたところはきちっと踏まえて、今後詰めていきたい。ワーキンググループができるとしたら、そこでもそれを反映していただきたいと思います。

 そのほか、いかがでしょうか。西島委員。

【西島委員】
 前にもこういう機会に述べたと思いますが、第4期科学技術基本計画が課題解決に向かっていく、これは世の中の流れとか使命として当然の流れかもしれませんけれども、グリーンイノベーションとライフイノベーション、あるいは安全・安心のイノベーションと、イノベーションいう言葉がつきますが、例えば、私が関係しているライフイノベーションの中の部分で、ミッション型プログラムとして5年とか10年のプログラムの中で社会的・経済的価値という部分をあまりタイトに評価すると、おそらくほんとうの意味での生命科学で望まれているような成果がでてこないのではないか。つまり、非常に小粒の、はっきり言えば、産業界からすれば、あの程度かというような成果になってしまう可能性がある。この辺は、グリーンイノベーションと異なって、ライフイノベーションでは、時間軸を考慮すると扱っている成果というものが常に形としてすぐに見えてくるものではなくて、生命のメカニズムを解いた結果としての波及効果としてかなり先のイノベーションに関わるというようなことも考えなければいけないので、イノベーションのうち、安全・安心に係るイノベーションや、グリーンイノベーション、ライフイノベーションに関して、一つの研究型プログラム、ミッション型プログラムというふうな形で事務的に同様に処理することは、少し危険なところがあるかなということがある。

【平野部会長】
 ありがとうございます。注意をしながら進めていく必要があるということです。

 諏訪委員。

【諏訪委員】 
 今までの議論とは少し違うのですが、このシステムに関しては、何をどう評価するかというシステムの在り方についてはかなり議論されていて、それは大きく変わっているというのはよくわかるんですが、じゃあ一体それをだれが評価するかというイメージが実は書かれてないように思います。評価システムの議論なのでそこまではいいのかというふうに思われるのかもしれませんけど、これは一体化しているものであって、今までどおりに有識者をそれぞれ選ぶ、大学から選ぶ、あるいは企業から選ぶという流れで、そのまま同じでいいのか。あるいは、もしかしたらこのシステムとともに、だれが選ぶかという組織づくりみたいのを考えていただくということは必要かと思います。もしかすると法制も変えなければいけない可能性はあると思います。

【平野部会長】  
 ありがとうございます。

 続いて、田中委員。

【田中委員】
 2点質問がありまして、1点目は確認です。本日、「プログラム評価」という言葉が何度か出てきますが、私は社会科学の分野の人間なので、プログラム評価という、ある一種の評価の手法を指す言葉を聞くと、ある手法を思い浮かべるんですね。お聞きしていると、プログラムという単位・階層を評価するものを「プログラム評価」と総称されているように伺ったんですけれども、もしも今考えていらっしゃることが、他の階層を評価する場合とまた違うものであるという意味合いで「プログラム評価」という言葉をお使いであれば、ちょっと説明していただきたいというのが、1点目です。

 2点目は、ややこの部会の枠組みを超える話になるかもしれないと思っていまして、有本委員のコメントとも関係するかと思うんですが、今回の素案を拝見しますと、非常に大まかに解釈すると、政策体系の中でプログラムというものを重視して評価するということと、あとはPDCAに留意して評価していきましょうという、2点がポイントかなと思っているんですね。それはもちろん重要で、きちんとやっていく必要があろうかと思うんですけれども、もう少し大きい目で見ますと、日本の研究開発評価システムというものを考えたときに、何が一番の目標かというと、多分、日本の研究開発のパフォーマンスを上げることだろうと思うんですね。PDCAとかプログラムという単位で評価するのは大事なんですが、どうしても立てた目標に対しての進捗管理になりがちで、そこから大きく踏み出すことができなくなる。もしかしたらそういう理論とともに、先ほど有本委員もそういうことをおっしゃったのだと思いますが、もう少し大くくりの、例えば、どうしたらもっと革新的な研究案件が出てくるかとか、あるいは研究成果がいかに社会に還元されるような仕組みをつくっていくかとか、そういうところまで見通したような、非常にマクロ的な観点での政策的な知見につながるような評価というのもほんとうにあるべきだろうと思います。これはやはりこの部会を超えているのかしれないんですけれども、お伺いしていてそういうものがあったらいいなというような思いがありますので、もしそういうような議論が出ていたら、教えていただきたいと思います。

【平野部会長】  
 ありがとうございます。

 まだまだ御意見がたくさんあると思いますが、今の点について事務局から説明をしていただいて、時間の制約もありますので、あとは皆さんから事務局へメール等でぜひ御意見をお伝えいただきながら、次回、更に審議を深めていきたいと思います。その中で、本部会としての評価の在り方に反映させていきたいと思っております。

【行松科学技術・学術戦略官】  
 内閣府の議論の中で各省の様々なプロジェクトと上位の政策が分析され、結果がここに述べられていますが、プロジェクト単位ではいろいろ評価をするのだけれども、上位の政策という、例えば第4期科学技術基本計画という政策があって、プロジェクトがあって、その間をつないでいるプログラムという、そういう段階のもの、それがここにある施策の最小単位で独自の目的や目標があり、そのプログラムの目標を達成するためのプロジェクトで構成されていると。これら幾つかの要件がありますけれども、これらの要件が各省庁できちっと認識されておらず、当然、そういうものをPDCAサイクルの中でどう位置づけていくかという視点での評価も十分されていないのではないか。そういう問題意識から、こういう問題の立て方になっているのではないかと思います。

 2点目のご質問の中で、多様な研究成果をどう導いていくかとか、あるいはハイリスクの研究をどういうふうに促進していくかと、そういったところが論点としてあるかと思ういますが、それも議論の中では、プログラムという中でそこをどう位置づけていくかということについて、資料3-5の中の第4期科学技術基本計画の中で幾つか視点がありまして、例えば2ページに「国及び資金配分機関は、ハイリスク研究や新興・融合領域の権威旧が積極的に評価されるよう、多様な評価基準や項目を設定する」とあり、具体的にそれを進めていくための評価をどうしていくかということになろうかと思います。この点については、おそらく、政策目標を持ったプログラム、あるいはプログラムの目的の中にきちっと政策目標も織り込んで構成する、そういう議論で位置づけられていくのではないかと思っております。

【平野部会長】 
 最後に、ここでどうしてもという御意見がありましたらいただきたいと思います。

 どうぞ、東嶋委員。

【東嶋委員】 
 今、皆様方の御意見をお伺いして、それから報告をお伺いして思ったのですが、プログラムという言葉一つとっても、ここで議論されている意味合い・定義と、世間一般で使っている意味合い・定義が全く違いますので、プログラムとか、プロジェクトとか、それから、アウトカム、アウトプット、インパクトなどの言葉もありますけれども、定義がきっちりされていないので、結局はどこに議論を持っていきたいのか、また行こうとしているのかがよく、お互いに意思疎通ができていないと感じています。なぜ定義ができていないのかといえば、大枠の話で目標なりシステムなりがしっかり議論をされていないからではないかと思っていまして、いつまでも、プログラムとはこういう意味のものです、インパクトというのはこういう意味のものですというところを議論し合っていても何か時間のむだのような気がして、そこの定義のところをしっかり議論をしていくべきではないかと思います。

【平野部会長】 
 ありがとうございます。定義についても共通認識しながら、今後、この部会においても議論を進めていきたいと考えております。

 委員の皆様、たくさんの御意見、ありがとうございます。この第三の議題の冒頭でお話ししましたように、これについては、この部会として、どのように国のシステム改革の意見の中に反映するかということも含めまして次回の予定の中に入れていきたいと思いますが、しかしながら、きょういただいた貴重な御意見を踏まえながら、各委員の方々、ぜひ事務局に連絡し、提案をしておいていただきたいと思います。次回のこの議題については、委員の皆様の御意見を整理した上で、それを踏まえて議論を進めていきたいと考えております。これは今後の日本の科学技術において大変重要なところに今来ておると思っておりますので、ぜひ御意見をお寄せください。よろしくお願い申し上げます。

【岡村委員】  
 一つ関連で、質問させて頂いてもよろしいでしょうか。

【平野部会長】  
 どうぞ、岡村委員。

【岡村委員】  
 私がわからないだけなのかもしれませんが、施策、プログラム、プロジェクトというのを、例えば、きょうの2番目の議題の科学技術振興調整費で言うと、科学技術振興調整費というのが施策で、若手研究者自立的研究環境整備促進というのがプログラムで、その下にある各大学におけるものがプロジェクトという認識で大体よろしいのでしょうか。

【平野部会長】  
 事務局、いかがですか。

【相原専門官】  
 補足させていただきますと、戦略推進費自体を施策と明確に定めているわけではないですけれども、その下にプログラムがあり、さらにその下に個別の研究開発課題があり、戦略推進費の下のプログラムをここで言うプログラムであると、その下の個別の課題を研究開発課題と見なして良いとは思いますが、まだプログラムの定義がなされていないので、おそらくそういった方向になるとは思いますが、今は、そうではないかという程度かと思います。

【岡村委員】  
 そうすると、各施策とかプログラムによって若干呼び方が変わる場合もあるので、そこは、先ほどの話じゃないですけど、共通認識を持っていたほうが議論しやすいということでしょうか。

【平野部会長】  
 ぜひ事務局から、委員の皆様にきちっと例を挙げて示していただければと思います。

【行松科学技術・学術戦略官】  
 このワーキンググループの中でも、おおといの議論の中で、定義をしっかりやることが重要だということが、出てきておりましたし、まだこれはまさにワーキンググループに示されたばかりのものでありますので、その議論も、次に予定されている7月24日に御報告したいと考えております。

【平野部会長】  
 わかりました。

【金子委員】 
 1つだけいいですか。

【平野部会長】  
 はい、金子委員。

【金子委員】  
 定義もすごく大事だと思います。しかし、全体として見ると、例えば、もともとPDCAというのは、生産過程における、既に決まったものを管理する手法から来ていますよね。これを見たら、PDCAではなくROAMEFという、より複雑なものになっている。こういう形式面をより複雑にするのではなく、より具体的に、実際に日本の科学技術をどう進めるかというようなことをしっかりと考えていただきたいなと思います。定義も大事だと思いますけれども、大事なことを見誤らないように、ということです。「インパクト」という言葉が出てくるということも、私にとっては、言葉の遊びと言うと少し失礼かもしれないですけど、新しいキーワードが出て来ると、それが一体なにを意味しているのかということに時間が無駄になることもある。そういった印象を受けます。中央政府がこういう混迷状態ですから、その中で、我々がしっかりと議論していくことが重要だと思っています。

【平野部会長】  
 ありがとうございます。先ほど有本委員も言われたように、予算は予算としてきちっとついて動いてきておりますので、少なくとも私どもは科学技術の中で政策をどのように見て推進するか、非常に重要な根本問題であります。

 階層や、あるいはプログラム、プロジェクト等々については、これまでもここの委員会で議論が行われておりますので、事務局としてもきちっと昔の資料を見た上で、定義が違うのであれば、違うとして次回整理をして、委員の皆さんに説明しておいていただきたい。

 このまま議論していてもまたもとに戻るだけですから、今言われたようなところについては、ぜひ、事務局の方でもきちっと統一して整理をして次に臨んでいただきたいと思います。今のようなことも含めて、事務局に御意見をお寄せください。私も、御意見を読ませていただき、次回に臨みたいと思います。本日は、どうもありがとうございます。

 最後に、事務局から連絡事項がありましたらどうぞ。

【德成科学技術・学術戦略官付室長補佐】  
 事務局から、3点連絡させていただきます。

 1点目ですけれども、今回の議事録につきましては、部会運営規則第5条にのっとりまして、非公開の議事部分を非公表として議事録を作成し、各委員にご確認いただいた後に、ホームページにて公表させていただきます。

 2点目ですが、次回の部会につきましては、10月をめどに開催したいと考えております。主な議題としましては、今ご議論いただきました「研究開発評価システムの改革について」を予定しております。なお、内閣府の議論の進捗次第では、開催時期が前後する可能性もありますので、ご承知置きいただければと思います。後日、改めて日程調整をさせていただきます。

 3点目ですが、本日の配付資料につきましては、審査の秘匿性を保つ観点から、資料1-1から1-3については、お持ち帰りいただけません。その他の資料につきましては、机の上に置いていただければ、後日郵送させていただきます。

 以上でございます。

【平野部会長】  
 それでは、資料1-1から1-3については、机上に置いていただきたいと思います。

 また、事務局にお願いですが、内閣府から、様々な審議があり、ここの委員に対して公開できるものがある場合、すぐ皆さんにお伝えいただけませんか。内閣府の方々に意見を言えないことになっても大変残念でありますので、ぜひ、レスポンスできるところは、早目にレスポンスをしていただきたいと思います。

 どうありがとうございました。これで本日の研究開発評価部会を終わります。

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))