参考資料3-3 諮問第11号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(平成22年12月)(抜粋)

2. グリーンイノベーションの推進

(1)目指すべき成長の姿

 我が国と世界が直面する喫緊の課題である気候変動問題を解決し、かつ、世界各国が将来の成長の鍵として熾烈な競争を展開している脱化石燃料の潮流を捉え、世界最先端の低炭素社会を実現するため、グリーンイノベーションを強力に推進する。これにより、我が国が強みをもつ環境・エネルギー技術の一層の革新を促すとともに、社会システムや制度改革を推進し、これを国内外に普及、展開することで、我が国の持続的な成長を実現する。また、これらの取組により、世界に先駆けた環境・エネルギー先進国の実現を目指すとともに、持続可能な自然共生社会や循環型社会の実現、さらには豊かな国民生活の実現を目指す。

(2)重要課題達成のための施策の推進

 (1)で述べたグリーンイノベーションの目標実現に向けて、具体的には以下に掲げる重要課題を設定する。国として、大学、公的研究機関、産業界との連携、協力の下、これに対応した研究開発等の関連施策を重点的に推進する。

1)エネルギー供給の低炭素化

 太陽光発電、バイオマス利用、風力発電、小水力発電、地熱発電、潮力・波力発電等の再生可能エネルギー技術の研究開発を戦略的に推進するとともに、その活用を促進する。その際、これらの技術の温室効果ガス排出削減ポテンシャルを最大限に活かし、それぞれの特徴や地域の特性に応じて、国内外に普及、展開を図る。太陽光発電とバイオマス利用については、これまでの技術を飛躍的に向上させるとともに、新たなブレークスルーとなる革新的技術の獲得を目指した取組を進める。

 また、分散型エネルギー供給システムの革新を目指し、蓄電池、燃料電池、充電インフラ、超電導送電、製造・輸送・貯蔵にわたる水素供給システムの研究開発、さらに基幹エネルギーと分散型エネルギーの両供給システム及びエネルギー需要システムを総合的に最適制御するスマートグリッド等のエネルギーマネジメントに関する研究開発を推進し、これらの海外展開を促進する。

 さらに、基幹エネルギー供給源の効率化と低炭素化に向けて、火力発電の高効率化、高効率石油精製に加え、石炭ガス化複合発電等と二酸化炭素の回収及び貯留を組み合わせたゼロエミッション火力発電の実現、次世代軽水炉の実用化に向けた研究開発も含め、安全確保を前提とした原子力発電の利用拡大に向けた取組を推進する。

2)エネルギー利用の高効率化及びスマート化

 製造部門における化石資源の一層の効率的利用を図るため、製鉄等における革新的な製造プロセスや、ここで用いられる材料の高機能化、さらにはグリーンサステイナブルケミストリー、バイオリファイナリーに関する研究開発を推進する。

 我が国の最終エネルギー消費の約半分を占める民生(家庭、業務)、運輸部門の低炭素化に向けて、住宅及び建築物の高断熱化、次世代型ヒートポンプシステム、定置用燃料電池、高効率照明、パワー半導体など省エネルギー技術の開発、普及や、次世代自動車に用いられる蓄電池、燃料電池、パワーエレクトロニクスによる電力制御等の開発、普及に関する取組を推進する。さらに、高効率輸送機器(鉄道、船舶、航空機)に関する研究開発を推進する。

 また、情報通信技術は、エネルギーの供給、利用や社会インフラの低炭素化を進める上で不可欠な基盤的技術であり、次世代の情報通信ネットワークに関する研究開発、情報通信機器やシステム構成機器の一層の省エネルギー化、ネットワークシステム全体の最適制御に関する技術開発を進める。

3)社会インフラのグリーン化

 環境先進都市の構築に向けて、高効率な交通及び輸送システムの構築に向けた研究開発を推進する。また、これまで人が通信主体であったネットワークに生活の中のすべての電力で作動する人工物が通信主体として接続し、電力、ガス、水道、交通等の社会インフラと一体となった巨大ネットワークシステムに関する研究開発を推進する。さらに、高度水処理技術を含む総合水資源管理システムの構築に向けた研究開発等を、実証実験も含めて推進する。同時に、これらの普及、拡大に向けて、統合システムとしての海外展開を推進する。

 また、資源再生技術の革新、レアメタル、レアアース等の代替材料の創出に向けた取組を推進する。

 さらに、地球観測、予測、統合解析により得られる情報は、グリーンイノベーションを推進する上で重要な社会的・公共的インフラであり、これらに関する技術を飛躍的に強化するとともに、地球観測等から得られる情報の多様な領域における活用を促進する。これらも含め、気候変動に対応した、都市や地域の形成、自然環境や生物多様性の保全、森林等における自然循環の維持、自然災害の軽減、持続可能な循環型食料生産の実現等に向けた取組を進める。

(3)グリーンイノベーション推進のためのシステム改革

 グリーンイノベーションの推進においては、(2)で掲げた重要課題達成のための施策の推進とあわせて、イノベーションを促進し、産業や雇用の創出等による我が国の持続的な成長や地球規模の問題解決に迅速かつ効果的につなげていくための取組を進める必要がある。こうした観点から、イノベーションを加速するための規制・制度改革、技術をはじめとする成果の海外への展開促進など、システム改革を積極的に推進する。

<推進方策>

  • 国は、例えば、バイオ燃料に関する温室効果ガス排出削減基準等の持続可能性基準の設定や自動車燃費基準の改定など、企業におけるイノベーションに向けた研究開発等の取組を促進するため、国際競争力も勘案しつつ、技術的、経済的合理性に立脚した新たな規制や制度の在り方について検討する。
  • 国は、次世代自動車、水素ステーション等の供給インフラ設備、再生可能エネルギー設備等の実用化、普及を促進するため、これを妨げるおそれのある関連法の点検、改革を推進する。
  • 国は、地方公共団体や大学、公的研究機関、産業界と協働し、それぞれの地域の特色を活かしつつ、スマートグリッド等の新しい社会システムの構築に向けて、研究開発から技術実証、普及、展開までを一体的に行う取組を支援する。
  • 国は、エネルギー、水、交通、輸送システム等の社会インフラの整備に関連して、官民が有する先進技術、管理運営ノウハウ、人材育成等をパッケージ化した総合システムとしてその海外展開を促進する。
  • 国は、我が国のもつ優れた技術を活かした途上国等への支援促進のため、気候変動対応に関する技術移転とシステム改革を、貧困対策や農業、水資源の開発、防災等の政策と連動させて総合的に推進し、これらの国々の自立的な対応力を強化する。

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