地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年7月15日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省18階研究開発局第1会議室

3.議題

  1. 地方自治体における地震時の防災・減災に向けた取り組みについて
  2. 作業部会における検討内容について
  3. 今後取り組むべき研究課題および調査内容について
  4. その他

4.出席者

委員

田中主査、荒卷委員、国崎委員、小林委員、首藤委員、福和委員

文部科学省

藤木研究開発局長、鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他

5.議事録

 【富田補佐】

 お時間となりましたので第2回地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会を開催させていただきます。 まず、7月14日付で事務局内の人事異動がございましたので、報告させていただきます。

 新たに着任いたしました地震・防災研究課長の鈴木と防災科学技術推進室長の南山でございます。

 

 - 課長・室長 あいさつ -

 

【富田補佐】

 本日は、委員9名中6名のご出席をいただいておりまして、定足数を満たしております。 本日、中埜委員、林委員、室﨑委員がご欠席でございます。

 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 

 - 資料確認 -

 

 以上、何か不足等ございましたらお申し出いただきたいと思います。

 では、議事進行は田中先生にお願いいたします。

 

【田中主査】

 本日もよろしくお願いしたいと思います。

 本委員会の大きな目的は、E-ディフェンスをはじめとして、いろんな災害局面を含めて、緊急時の人間がどういう行動をとるべきかという具体的な議論と今後の短期と中期の研究開発課題について議論をしていければいいと思っています。その中で、今日は、議題の一つとして地方自治体の取り組みについてご発表いただきます。

 中心となる審議内容は議題2および議題3ということになりますが、その前提としてお話をいただければと思っています。それでは、地方自治体における地震時の防災・減災に向けた取り組みということで、議題1に移りたいと思います。では、横浜の荒巻さんと兵庫の山本さんの順にお願いいたします。

 

【 議題1 地方自治体における地震時の防災・減災に向けた取り組みについて 】

 

【荒巻委員】

 それでは資料に基づきまして、横浜市の取り組み状況についてご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

 参考資料2-1にそって簡潔にご説明したいと思います。

まず1点目として横浜市民向けの防災資料関係を7点ほど本日はお配りしましたけれども、横浜市では自分の身は自分で守ることを基本に地震三原則というものを定めています。それは「その場にあった身の安全」、「すばやい火の始末」、「となり近所の助け合い」となっており、これに基づいて横浜市民向けの防災資料を作成して配布しております。

 また、避難行動につきましては、市民それぞれの状況によって対応は全く違ってまいりますので、避難行動の推奨というよりも、「心がけ」を掲載しております。最近では、住宅の耐震改修及び家具の転倒防止対策など、事前対策による減災の勧め並びに防災情報の提供等に重点を置いてきております。

 なお、お手元に本日配付しました資料は、実際に市民に配付している資料として(1)から(7)までございますが、(1)から(5)までの配布物というのは、作成年代順の変遷資料でございます。その中で、避難行動の市民向け指導内容が、横浜市の問題意識によって変わってきているとご理解をいただければと思います。したがいまして、(1)から(7)までのこの順番で、これから配付物でご説明させていただきます。まず、「家庭防災員の研修テキスト」をごらんいただきたいと思います。

 横浜市では、家庭防災員というのは昭和47年にできまして、今現在、毎年5,000名ずつ委嘱してきて、今年度で19万人になっております。横浜の人口が367万でございますので、おおむね20人に1人ということですから、各地域の町の防災組織では、家庭防災員の方々も相当力になっていただいております。その方々に対する研修システムも確立しておりますが、そこでのテキストとなっています。

 1ページをごらんになっていただきますと、目的という部分で、家庭防災員は防火・防災活動の推進に関し、自助・共助・公助の視点に立ち、自助をベースに、共助にもつながる制度として、本市の安全・安心の向上に資するため、一人でも多くの市民が防災に関し、知識、技術を身につけることを目的とした制度だということで、ご理解いただけるかと思います。

次に23ページをご覧ください。防災に関していろんな研修をしていただきますが、この部分で、今回、課題となっている避難の対応という部分で、「地震が起きたら」という部分で書いてございますけれども、「地震が起きたときには、自分の身は自分で守ることが基本です。グラッときたら、次の行動を心掛けましょう」と記載してあります。先ほども「心がけ」というお話をいたしました。地震の3原則での下に「その場にあった身の安全」ということで「グラッときたらその瞬間どうするのか?」という問いの事例として、家にいるとき、デパート・映画館などにいるとき、地下街にいるとき、自動車等を運転しているとき、電車に乗っているとき、その他の場合というものを入れております。

 それから、その後に「すばやく火の始末」という部分で、その下に、「火の始末のチェックポイント」ということを入れておりますけれども、「無理をして火を消しにいくことにより、調理器具の落下物で火傷等を負う場合があることから、大きな揺れのときは、すぐその場から離れ、揺れが収まってから消火しましょう」ということを言っております。よく指導の内容では、揺れがあったら、火を使っていたらすぐ火をとめなさいと言っているところがありますけれども、やっぱりけがが多いものですから前述のように横浜では是正をしているということをご承知いただければと思います。

 次に「いざというときに備えて」という資料の20ページをご覧いただけますでしょうか。

これは、横浜市の日ごろの取り組みと、市民に対して日ごろの備えなどを紹介している冊子でございますけれども、その20ページで地震が起きたらという部分がございます。地震が起きたときは、自分の身は自分で守ることが基本です。ふだんからどのような行動をとったらよいか考えておきましょうというふうに、考えることを推奨しているというものになりますので、基本的なものしかここで扱ってないということでご理解をいただければと思います。22ページで、一般的に避難所に避難していく場合のことも考えられますので、こういうケースで避難してくださいというフローにしてあるものを載せております。

 次に「防火・防災ハンドブック」の9ページをご覧ください。やはり「その場にあった身の安全」という部分で、屋内の場合、屋外の場合ということを入れてあるんですが、その真ん中の四角書きに、「してはいけない3動作」というのが入れてあります。その一つとして「揺れと同時に外へ飛び出すこと」があります。前回の作業部会でも、外に飛び出すことも必要なんじゃないかというお話がございました。揺れと同時に建物が非常に危険な場合に外に飛び出すということを何かで打ち出す場合は、相当の説明材料が必要になってくるのではないかと考えます。何故なら、この「してはいけない3動作」というのは、各防災関係機関では同様なことはほぼ言っていると思いますので、市民から何で今までと違うのということで相当の疑問が投げかけられることも考えられます。その部分の説明材料が必要なのではないかと考えております。

 次に防火・地震の対策などを紹介している「防災・サポートブック」の20ページをご覧ください。やはりここでも地震が起きたときは「自分の身は自分で守ることが基本」としるしております。いざという時にどのような行動をとればよいのかを考えておきましょう、ということであります。考えるきっかけとしての「その場にあった身の安全」という部分で、これだけのことしか言ってこなくなってきております。古い家庭防災員は、今現在も家庭防災員の研修会に参加してもらっていますので、研修会としてしっかりご説明できる段階では、ある程度のボリュームを持たせている一方で、市民の方々に配るものというものについては、だんだん内容的に狭まってきています。

それから次に最新のものですが「『減災行動』のススメ」があります。これにつきましては、事前対策を大前提としております。避難行動云々というよりも、事前対策をしっかりやっていただかないと命を守れませんよというスタンスでつくっているペーパーでございます。

 まず1ページをごらんになっていただければと思います。まずは「住宅の耐震診断・耐震改修のススメ」ということで、実際に市民アンケートをとった内容でございます。地震に対して脅威と感じている方は92.5%ですが、その一方で対策を昭和56年5月以前の建物の耐震対策の現状というもので確認しましたら、耐震診断を受けてないという方が51.1%でした。それから耐震改修等の実施予定がないというのも16%という状況です。私どもとしては、減災に向けた取り組みの支援対策として、56年5月以前に確認申請をとって建築した家庭の木造住宅につきましては、診断料無料というものもやっています。それから危険という判断をされた場合には、補助限度額として一般家庭は150万まで改修費用を出すシステムを敷いています。

 なおかつ、耐震改修が困難な場合は、ベッドの上に骨組みを作り、屋根が落ちてきても大丈夫な形をとる防災ベッドや耐震シェルターの設置費の一部を上限として10万円助成する制度も設けております。

 マンションのほうも、支援対策として、ここに記されたことを実施しています。あくまでもマンションの場合は、居住者全員の同意が必要というあしかせの部分ございますけれども、耐震改修をまず促すようにしております。

 次に「家具の転倒防止対策のススメ」ということを示しております。「減災に向けた取組」の家具の転倒防止という部分では、「家具の配置を工夫しましょう」とありますが、「家具の転倒・落下によって、ドアの開閉や出入りができなくなると、避難が遅れてしまったり、救出も困難になることも記しております。また、寝室では、寝ている間に倒れてきた家具の下敷きになる危険があります」ということで、危険性をまずご承知いただいて、転倒防止対策をとっていただこうと考えております。その中で家具を正しく固定しましょうということで、これは後ほどの東大の報告書のところでご説明しますけれども、ある問題が明らかになってきます。ここでは「家具の転倒を防止するためには、『L字金具』等が効果的ですが、ここでは、家具や壁を傷つけずに、誰でも簡単に取り付けることのできる転倒防止器具等を紹介します」と言っています。実際、市民の方も家具を傷つけるのが嫌いなものですから、ポール式器具を使用します。一種の突っ張り棒でございますけれども「家具と天井の間に突っ張り棒を入れて固定します。家具の両端の奥に設置することが重要です。(ただし、柔らかいベニヤ板などの天井には不向きです)」ということを言ってつくられていますが、ここに今後訂正しなければならない部分が出ている部分でもあります。

 それから、この「『減災行動』のススメ」のところでは、避難行動の勧めはほとんどしておりません。今、減災をとにかく最優先にしようという部分になっています。今までご説明したものが、安全管理局がつくったものです。

 それから、次に磯子区の防災マップというもので、磯子区内の地図情報の中に避難所等が入っているもの、それからやはり知識的なものが入っておりますけれども、「地震が起きたら」という真ん中の部分をごらんになっていただきますと、これも地震3原則のみで簡単に説明しているのみだということをご理解いただければと思います。

 それから、最後に「あなたの携帯電話に防災情報が届きます!」というのは、危険情報等について的確に入手して、それぞれの方が、自分の身は自分で守るためにご判断くださいと言っている関係がございますので、正しい情報を提供できるように変わってきているという資料でございます。

 今後の検討の方向性につきましては、現実的には避難行動で示されている内容の検証と家具の転倒防止措置等事前対策の検証等に的を絞っていったほう良いのではないかと思われます。特に、避難行動につきましては、その場の状況、さまざまな要素という部分がございますし、それに応じて千差万別のハード面、ソフト面の組み合わせが多数出てまいります。そのために、さまざまな国民ニーズに合った理想的な避難行動などは、なかなか簡単にまとめ切れないのではないかと思います。

 また、それに加えて阪神・淡路大震災の圧死者の教訓を勘案すると、屋内の場合は、理想的な避難行動の推奨よりも、まず事前対策を進めるための「『減災行動』のススメ」でございます。建物の耐震化、家具の転倒防止装置等の推奨徹底が重要であると考えておりまして、横浜市ではその方向に進んできております。

 さらに、「『減災行動』のススメ」の中の家具の転倒防止措置方法についてですが、文部科学省のプロジェクト研究成果で、その実施方法によっては効果に違いがあるということが明確になってきております。その研究成果などを生かして、国民に広く、措置方法の問題点提起、解決策の提案ができれば、防災科学技術の範疇での検討にふさわしく、それこそ他省庁ではできない文部科学省の研究会の真価発揮と言えるのではないかと思います。

次に「室内の安全性向上の実現に関する研究」をご覧ください。これは委員会のほうで、プロジェクトの研究発表がありました。実際の報告書の抜粋をお配りしています。

 この中で、「地震時の家具の動的挙動シミュレーターの開発」という研究課題としては、家具の動的挙動を原因とする人的被害の問題は重要な課題と結論付けています。適切な防災対策を実現するための基本は、災害状況を適切にイメージできる能力の向上であり、さらに具体的な対策とその効果に対する理解が必要であるとしています。次に「振動台実験による転倒防止器具の効果の検証」をご覧ください。防止器具のチェーン式、L字金具、ストッパー式、マット、ポール式、ハニカムボードなど、それらの強度を把握するための実験を実施しています。15ページの図3.1.5をご覧になっていただきますと、実線より上が、転倒してしまう地震動の範囲を示しています。ハニカムボードを家具の上部のすき間に詰める方法や、チェーン式の転倒防止装置の効果が高いことがわかりました。ベルト式は一般的には斜め上30度方向に設置しますが「斜め下30°方向に取り付けることで、家具を下方に押さえることができ効果が高まります」とまとめられていま。また、「ポール式では、家具上面の両端に設置したポールが落下して転倒に至りますが、ホールの上部に合板材を取り付け両面テープで固定することにより、新潟県中越地震の地震動を入力した場合にも家具の転倒を抑えることができました」とまとめられています。図3.1.6をご覧になっていただきますと、「転倒防止器具のより効果的な方法」ということで、「『減災行動』のススメ」でポール式のことに言及していますが、板のことはなにも述べられていません。板をつなぐと新潟県中越地震ですと転倒しているという研究結果が出ています。一方で、板を入れるとロックしていて、非常に効果的なものが出ています。ですので、こういう指導方針に、私どもとして改めていかなければならないと考えております。

 ところが、実際に私どもの磯子消防署でこの研究成果を生かして指導を実施していますが、この研究成果そのものが世間であまり知られてないために、市民のご理解を得るのが容易ではないのが現状であります。

 それから、先ほどの検討の参考資料2で、市民の防災対応という部分において個人的な考えの部分を入れさせていただいていますけれども、これからは防災意識のない人たちをいかに掘り起こして、防災意識を芽生えさせて、防災行動あるいは準備をさせられるかが、これからの防災危機管理対策に求められる重要課題だと思っておりますので、アプローチの仕方もしっかりと考なければならいと思っております。

 なお、今日お配りした資料関係で、1-7というものは、基本的にはインターネットで公開しておりますが、それ以外のものは、しっかりと編さんして製本しております。このように、しっかりと編さんしているのは、各家庭で保存用にしていただくためには、こういう形式をとらないと、まず保存もらえません。例えば、こういうコピーですと安価な印象を与えてしまい、そのままごみ箱に直行というのが実態です。ですから、非常に豪華なような形をとっておりますけれども、そういう理由でこのような形式になっています。

 それから最後で参考でございますけれども、アメリカ西海岸に位置しています地震の多いロサンゼルス市と横浜は、2004年に2都市間の防災政策会議をやりました。その会議に出席して、意見交換の中で非常に勉強になったことが、会議に際に頂戴した「Under the Table SAFETY TUBE」というものなんです。何かといいますと、最悪の事態を想定して、小学生に配っているものですが、小学生が小学校で生き埋めになることを想定しているものです。中身をごらんいただきますと、まず、警笛、蛍光の棒、マスク、それからお水となっています。この4点セットを必ず机の下に備えつけられるように配っています。これ自身は、ロサンゼルス市がコーディネートをしています。各企業に寄附を求めて、その寄附金はすべてアメリカ赤十字に入り、赤十字がこういったものをロサンゼルス市のオーダーに合わせてつくって、それをロサンゼルス市に寄附をして、寄附されたものを小学生に配っているというものです。

 最悪の事態を想定して、生き埋めになったときのことを指導しているために、子供たちは、自分自身の身は自分で守らなきゃいけないということを子供のころから真剣に考えるようになると報告がありました。

 一方で、日本の場合どうかというと、避難は先生が誘導するという被害を受けない教育が専らとなっています。ですから、建物が倒壊するとか全然考えずに、避難することだけしか考えません。先生の指示に従えばいいやという認識になってしまっている部分が気になっています。

 実際に私ども消防署のほうでは、避難対策が実際に実体験ができるようにしています。そうすると子供たちは非常に目を輝かします。火災の観点で言いますと、一般的には、避難の仕方だとか火の消し方を訓練しますが、アメリカの方式にならうと、自分の着衣に火がついた場合にどう対応するのか、日本の子供達に火がついたときどうする、と尋ねると手を振る、駆け回るといいます。そうすると衣類の多くは化繊ですから炎が上がります。アメリカで教えているのは、火がついたら、すぐその場に寝なさい、転がりなさいと窒息消火させます。そうすると、また子供たちに工夫が生まれる。それから、さらに避難するときも、外に火災が発生しているかもしれないので、ドアノブのさわり方も教えます。日本ではおそらくやってないので、私が教えると、まず正直に、ノブをこうやって握ってしまいます。握ってしまうと、向こうで火災があったときは、輻射熱で相当熱くなっていますから、一番重要な、敏感な部分をやけどをします。ですから、アメリカでは、手の甲で一瞬さわりなさいと教えます。ですから、先ほどの委員会でも防災教育の観点が出ましたけれども、そういうことも含めていくとよいと思います。

 横浜市の取り組んできた内容の一部ですが、以上でございます。

 

【田中主査】

 ありがとうございました。示唆に富んだ部分が多いご発表でした。ご質問も含めて、い何かございますでしょうか。

 

【国崎委員】

 3章の「室内の安全性向上の実現に関する研究」ですが、もしかしたら、この委員会の報告書の記述が間違っているのではないかと思うのですが、ご説明いただきました15ページで「チェーン式の転倒防止装置の効果が高いことがわかりました」という部分で、図3.1.5でチェーン式という記述かなり出てきますが、図3.1.6のほうではベルト式と書いてあります。このイラストでベルト式とチェーン式の記述が異なっていると思います。チェーンとベルトは、揺れに対しての挙動が異なります。

 それから、これは本震での地震波に対してどのぐらい耐えられるかということの結果だと思いますが、前回の委員会でもお話ししたように、必ず大地震の後には余震が来ます。その後、余震を想定した実験も行い、これが有効です、有効ではありませんということが言えるのかどうかというところも、実験のあり方として考慮すべきであると思います。

 

【荒巻委員】

 避難行動という部分で今後検討していくとなれば、余震よりも、まず本震のところでの対応が重要だと思いますので、その部分に限定しても良いと思います。余震への対策部分も、本震での研究の成果をそのまま生かせるところは生かしたほうが良いとのいう視点での説明でした。

 

【福和委員】

 さっきのポールの件ですが、板をつけるかどうかというのは、天井の構造によって多分違ってきます。板をつけなくてもいい場合もたくさんあると思います。それから実験するときに、1方向の入力であるとポールはとても役に立ちますけれども、2方向で入力するとポールは効果がありません。ですから、条件によってこの結果って全部違うので、どのぐらい丁寧にこの種類のものを出していくかが課題となります。基本的に、固定度の低い天井に、いくら板を取り付けても効果は期待できません。

どれだけ丁寧にどのぐらい効果があるのかを書くのかということで、結果は全部違ってきます。例えば、いざというときに逃げるべきかどうかというのも、丁寧に書いた場合は、逃げたほうが良い場合があると思います。

しかし、短い言葉で記述する場合には、中途半端になってしまうため、書いてはいけない言葉もあると思います。

 

【荒巻委員】

 実際にボリュームがあり過ぎると、見てはもらえません。やっぱり簡潔明瞭にしていたほうが、一目でぱっと目に入ってきたほうが良いと思います。

 

【福和委員】

 しかし、実際に本当に強い揺れで生き残っている人は外へ逃げている人たちであるといのことも、事実としてはたくさんあります。一方で、役所が作る避難関連のパンフレットでは、小さな揺れで逃げてしまって怪我をしたら、全部しかられてしまいますから、役所が書くものでは、そういった行動を推奨することが多分できないでしょうね。

 

【荒巻委員】

 してはいけない行動で書いてあるというのは、外に出てしまって大怪我をしているという事例もありますので。

かわらが落ちてきた、ガラスが落ちてきた、看板が落ちてきたという部分で、かえって建物の中でしっかり安全を確保できているということもあります。

 

【福和委員】

 丁寧に記述する場合には、建物の耐震性が十分に確保されている場合には建物から出ない。しかし、耐震診断を行い、診断結果が0.2とか0.3の建物内にいるような場合で、ほんとに強い揺れだと思ったときは、外にお庭がある場合には、逃げたほうがいい場合もあります。ですから、後で小さい字で書くような話です。

 

【田中主査】

 その部分が一番難しい論議でして、人の命がかかっている。実際に、2例亡くなっています。また、鳥取県西部でも亡くなっているし、この前の岩手・宮城でも亡くなっています。しかし、積極的には言いにくいですが能登半島の地震ときには、多くの方は飛び出して助かっています。

 

【福和委員】

 戦前の地震では、外に飛び出して生き残っている人たちの体験談は沢山あります。

 

【首藤委員】

 基本的な質問ですが、一般の耐震基準で、住宅が倒壊し、人がその下敷きになって生き埋めになるほどつぶれるまでには、どのぐらいの時間がかかるんですか。

 

【福和委員】

 それは揺れ方にもよりますが、兵庫県南部地震のように比較的近距離のところで起きた断層に伴う揺れのときには、感じてから出るまでにはほとんど時間がありませんし、そもそもそのぐらいの揺れになると、倒壊までに人間は行動できません。

 東海地震や東南海地震や南海地震の場合には、多くの人が住んでいる場所は、震源から離れています。都会ということだけで言えば、大阪平野も濃尾平野も関東平野も、本格的に揺れるまでには数十秒あります。数十秒あるのなら意外と逃げることは可能かもしれませんが、それがそのぐらいある地震であるかどうかということを伝える手段は、通常の緊急地震速報でテレビを介して情報を出す場合しかないです。ただ、個人で、それ契約していれば、あと何秒後という情報は入ります。あと何秒後という情報がもらえて、そして、震源があのあたりという情報までもらえた場合で、耐震性の低い建物に住んでいるということも知っている人であれば、逃げるという選択肢はあると思います。それは、その人が持っている情報量にもよります。

 

【田中主査】

 次に兵庫県のご担当者からもご説明もいただいて、あわせて議論をしていただければと思います。

 山本さん、よろしくお願いいたします。

 

【山本係長】

 兵庫県防災企画局防災計画室の山本と申します。本来でしたら、防災企画局長の木村からご説明申し上げるところですけれども、今日は代理で山本から説明させていただきます。

 今回ご説明しますのは、E-ディフェンスを活用した防災科学技術研究所と兵庫県の共同研究の中身について説明をさせていただきたいと思います。

 課題の背景ですが地震災害の多発で、住民の生命を守るためということになりますと、やはり建物の耐震化と建物内の安全性を高めると、この2つではないかと考えております。

 建物の耐震化については、建築基準法の改正であるとか耐震基準であるとか、また、耐震改修の補助制度とか、さまざまな施策が展開されていますが、室内の安全対策については、そういった明確な基準もなければ、具体的な施策がないと認識しております。

 私の経験ですが、阪神・淡路大震災のときには西宮市で被災しまして、私自身は文化住宅のアパートに住んでいましたので、層崩壊で逃げる暇もなく生き埋めになりました。命は助かり、その後、住民で助けに行くんですけれども、余震でつぶれるかもしれないなと思いながら、横穴掘ったり縦穴掘ったりしながら人を助けている。ただし、家がきちんと建っているお宅でも、2階を寝室にされた方が多いせいかはっきりしませんが、大きな婚礼だんすが、まともに体に転倒してきて亡くなられている方が結構おられる。そういった方をまた運び出すのも、1階の場合は混乱しておりますので、窓にはしごをかけて、その方をす巻きにしまして、背負って出てまいりました。やはり建物がいくら建っていても、室内の安全対策がうまくいってないと、そういった悲劇が出るのではないかと思います。

 もう一つ、私の上司から聞いた体験談ですが、近くに住んでおられた方が、1回助かって被災家屋から出てきたんですけれども、息子が埋もれているということで、さらに中に入って、余震でつぶれて、両親とも亡くなって、1人残されたということもありました。避難できたけれども、家族が建物の中に埋もれていたら、家族は逃げられるのかなというのもあるのかなと思います。

 室内の安全対策や耐震性とか建物の構造のことについては、中央省庁で基準を作ることが重要ですので、自治体としては、法律にかかわらない部分の安全性の評価を実験したらどうかということで、兵庫県は平成18年、19年、20年の3カ年にかけまして、室内の安全対策といった研究をやってまいりました。

 実験の推進においては、これまでの関係者として兵庫県と防災科学技術研究所等の各研究機関、防災の先進地区東京都と静岡県からもアドバイスを受けながら進めてきました。

 18年、19年の実験状況なんですけれども、18年度実験につきましては、まず、長周期地震動をつくってみようということで、長周期地震動の研究として防災科学技術研究所の研究員の方々のご尽力をいただきまして、長周期地震動を再現し、想定しうる波形と揺れを、30階の高層建物を再現した形でやっていただきました。

 また、これと同じ試験体で、直下型地震の揺れも入れてみて、それらの違いを18年度の実験でやってみました。ここでわかったことですが長周期地震動の揺れのほうが震動時間が長いので、もしかすると室内の家具についての影響が大きいのではないかといったことがわかりましたので、19年度につきましては、長周期地震動に特化しまして、室内安全対策や実際どんな現象が起きるかということを実験で確認しました。

 これについては、実験映像をごらんになられたということをお聞きしておりますけれども、そういった実験映像が出まして、これについてもマスコミに発表していただきまして、長周期地震動、超高層建物についてはかなり危ないということがわかったのではないかということです。

 ただし、実際にそれをどういうふうに危険なのかというのを、自分の家とかオフィスが安全かどうかというのを客観的に判断する基準がないのではないかということで、20年度実験につきましては、そういった室内安全空間の危険度、もしくは、どのような方法でどこまでやれば安全性を向上できるのかという軽減の効果の実験をやりました。

 この成果を踏まえまして、21年度以降については、これを実際に室内安全性評価手法という形でまとめをつくろうということで、今までのデータや既存研究のデータを踏まえながら、それをまとめていこうと考えております。

 住宅のそれぞれの部屋を想定した研究に加え、事業継続の拠点ということでオフィスが重要ではないかということで、オフィスにあるいろいろなものを揺らしてみて、その効果を確認しました。

 あとは建築基準法にかからない非構造部材についての安全性についても若干実験してきました。

 ここから見えてきた新たな課題ですけれども、ほんとうに強震動のもとでは人は何も動けないということです。中越地震の後、新潟県に派遣されておりまして、その派遣中に今度は中越沖地震に遭いまして、しかも、コンロの前でフライパンにハムを載せて焼いている状況でした。それで地震が来ましたが、結局動けませんでした。火を消そうとかフライパンをどうしようというのは、持ったままでとりあえず動きがとまってしまった。そのとき、壁と天井をとりあえず見て、この壁が落ちてくるのではないかということばっかりを心配していたので、その後、火を消したかどうかもあまり記憶にない状況で、強震動下では人は立ってもいられないのではないか、気の強い人は、もしかすると動いて火を消そうとするかもしれませんが、いろいろな行動パターンがあると思います。火の消火については、安全対策の自動化みたいな形で進めていくべきではないかということです。

 また、室内にあるものが4Gの加速度で襲ってくるというのは、これはまさに長周期実験の中のいろいろデータによるものです。転倒させない、滑らせない対策が必要ではないかと思います。これについては、阪神・淡路大震災のときには、私は管財課で庁舎管理の担当をしておりまして、その後、庁舎の状況みたいなものをずっと見て回りましたけれども、いろんなことがありまして、エレベーターの大きなモーターがこけていたとか、高架水槽から水が漏れて階段から流れていたとかいう状況でした。その中で印象的だったのは、オフィスの中の机が全部一方向に寄ってしまっている状況です。職場に来たら、課長以下みんな、机の上にあぐらで座って、電話を持って、そこから連絡している。下に落ちている書類を机の上に積み上げて、その書類を見ながら、あぐらをかいて、下ではとても仕事ができない状況でした。下は、机が寄ってしまったので、復旧しようにも、その間に書類が埋まっていて、なかなか机をもとどおりの島にすることができなかった。当分の間は、あぐらをかいて、机の上で仕事をしていたという状況があります。

 これについては、もし人がいれば、完全に机と机の間に挟まれてしまうのではないかということです。長周期地震は、まさしくその現象が顕著にあらわれて建物を揺すられるますが、阪神・淡路大震災のような直下地震でも、ある程度高い建物の10階の部分では、やっぱり机が事務所の片方に寄ってしまう。ある事務所については、入り口のところに机が寄ってしまったので、ドアもあけられなくて中にも入れない状況になっていたので、壁を壊して中に入ったという状況でした。

 次に、コピー機や移動式ロッカーの恐怖ですけれども、コピー機の挙動については、動き始めて、ガラスパーテーションを簡単に壊して、壊すつもりじゃなかった部分に繰り返し当たってしまうので、そこが完璧に壊れてしまいました。この後ろに、実はロッカーを置いて補強していたんですけれども、壊れてしまうような状況になってしまったということで、木枠でつくり直してやったんですけれども、ガラスパーテーションも撤去したんですが、今度は試験体自体の外壁に至るまで破壊を始めてしまう。で、外が見えてもしかするとコピー機がしまいます。カーテンウォールにぶち当たったら、コピーが落ちてくるんじゃないかなという気もしました。実際に、阪神・淡路のとき、兵庫県の県庁の庭に多くのロッカーが突き刺さっていました。大きなロッカーじゃないけれども、ロッカーの上に小さく低いものを載せていたんです。それが庭に落ちて突き刺さっているような状況も見たので、もしかすると、これはあり得るかもしれないなと思いました。

 あと、移動式ロッカーですが、20年度実験で、移動式ロッカーがどうなるかというのをやってみました。これは、頭つなぎのないというか、いわゆるレールだけでつながっているロッカーになりますと、もう簡単に移動式ロッカーは倒れてしまいます。これは、固定しようがありません。床はきっちり、スラブにアンカーを打ちつけてあるんですけれども、こういった形で倒れてしまう。

 今度、頭つなぎをセットしたもの、比較的補強されていると言われているロッカー、このように板でつながっているものですけれども、これについても揺れ始めますと、中が抜けて倒れてきてしまうということがわかりました。移動式ロッカーにつきましては、兵庫県庁、阪神・淡路大震災のときに、地下に大きな文書庫がありまして、会社が違っていましたが、ある一方の会社の書棚は大丈夫だったんですけれども、もう一方がつぶれてしまった。大丈夫だった会社は、それを宣伝文句にして、阪神・淡路大震災の兵庫県庁に置いていても大丈夫だったというふうな宣伝していました。これはやはり、レールさえちゃんとしていれば、ある程度もつことが分かりました。意外と簡単なやり方で、もしするともつんではないかなと思いました。

 もう一つ、トピックとしてやったのは、事業継続の重要拠点ということで、サーバー室とかフリーアクセスフロアのところについて、これの耐震対策をどうすればいいかということで実験を行いました。これも映像を見ていただきたいのですが、サーバーを、機器免震装置上に置いた場合に、これはサーバー用の長周期じゃない短周期を想定した機器免震なんですけれども、短周期の場合、うまくショックを吸収しますが、長周期になってしまうと、周期が合わなくて、逆に床を滑り出して、サーバー等が倒れてしまいました。コピー機がこういう感じで襲ってくるんだなという映像もありましたので、長く流してみましたが、今、避難路を塞がれるということを指し示しています。

 キッチンでの映像は、コンロの後ろに物が置いてある場合、特に厨房なんか多いと思うんですが、そういった場合はもう一気に、何もできないままにコンロの火の方に向かってつぶされてしまうということがあるんのではないかということが分かりました。

 コピー機の挙動については、先ほど説明しましたとおり、速度をはかったんですけれども、毎秒4メートルを超える測度で、しかも同じところを繰り返し何度もぶつかって、ガラスパーテーションも壊れてしまうし、石膏ボードも壊してしまいました。

「机の上が安全? それとも下が安全?」というのは、阪神・淡路大震災のときの兵庫県庁の職員の間で言われていたことですけれども、ほとんど24時間勤務になり、職場に寝泊まりすると、幹部のほうはベッドを調達してきて、休憩をとりますが、机の上に寝たほうが安全だという人たちと、机の間にマットを引いて寝たほうが安全だという方々、余震が来たときにどっちが生き残るだろうみたいな話をしていた。また、余震が来て、机につぶされているという人たちと、上から落ちてくると怖いなどの話をしていました。

 また、コピー機というのは、業務上の必需機器で、事業を再開する場合に必要なものになってきます。これらについても、きっちり安全対策や壊れないような対策をしなければならないのではないかと思いました。

 移動式書庫については、レールが破損して転倒しますが、逆にレールさえもてば、転倒は防げそうです。あと、コロを自動的にとめるようにしないと、長周期の場合には、コロによって力がかなり増幅して倒れてしまったのではないかと思いました。先ほど話しました県庁文書課で、転倒した移動式と転倒しなかった移動式がありました。これについても、資料が散逸してしまうと、事業再開が非常にしにくいということもありました、当時も、それぞれ落ちている資料を探しながら業務を再開していたといった状況にありました。

 フリーアクセスフロアです。これは映像がうまく残ってなかったんですけれども、フリーアクセスフロアについては、フロアパネルに引っつけているロッカーというのは簡単に転倒していました。もともとフリーアクセスフロアのフロアパネルというのは、人が引き剥がす程度にしか置いてませんので、これにロッカー等が引っ張ったらとてもじゃないけどもたないということです。そういうことは予想できましたので、あらかじめフリーアクセスフロアを貫通して、スラブにアンカーを打って、それで固定したロッカーもありましたが、これについては、ロッカーの側がもたなくて倒れてしまうか、もしくは、金属アンカーが抜けてしまったところがありました。これらの結果より、フリーアクセスフロアのロッカーの固定というのはかなり難しいのではないかということがわかりました。

 サーバーラックについては、先ほどと同じ形で、床スラブへの固定は有効ですけれども、これもサーバーラック側がきっちり、とめが強くないと、左側の写真のとおり、ラックのほうが壊れて転倒してしまうということがあります。これについても、サーバーに入っているデータというのは、速やかな復旧のためには重要なデータが入っているということがありますので、復旧復興には必要ではないかなと思われます。

 避難ルートにおいても、室内のあらゆるものが散乱し、混乱した状況が阪神・淡路でも見られました。ロッカーが倒れ込んで、書類が散逸してドアが開かないという状況です。ロッカーや机が一方方向に偏ってしまうと。これについても、避難しようにも避難できなくなってしまいます。

 安全対策の共同研究については、今申しましたとおり、事前対策がやっぱり中心になってくると考えておりました。兵庫県のほうでは、今後、事前対策についてまとめようということで、家具やロッカーの固定方法であるとか、コピー機や移動式書庫の対策、そもそも安全地帯とか避難経路、そういった空間的なものも確保の方法を検討してきました。具体的には、ここにありますとおり、室内危険度判定手法、テキスト配布とか専門家の育成を進めてまいりました。

 事後対策の避難行動については、今後の課題で、県の行政のほうではなかなか手のつけられない分野ではないかということで、この作業部会で、それらの避難行動手法であるとか啓発方法について示していただければ非常にありがたいと考えております。

 実際に、住民に対する室内の安全化に対する課題やそれらの資料はそろったんですが、これをいかに住民に伝えるかということで検討しました。まず、住民がこれを自分のこと、我々のこととして理解していただけるかが一番重要でだと想いました。住民が受け入れやすい方法でデータを出し、さらにデータを出した上で、やはり危険だということをわかっていただきたい。それが自分のことですよと理解してもらうために、自分の家が果たして安全かどうかということで、そういったことで室内安全評価みたいなものの手法を検討する必要があるのではないかと思いました。

 実際に自分のところが危険だとわかっていただいて、それをどうしたらいいのというところで、そういった固定方法の解説テキストが必要になるのではないかと思います。また、それだけではなくて、それらを実際にアドバイスできる人が必要です。建築士の方、建築士会とか、また安全器具を売るようなホームセンターの人であるとか、また、高層マンションだったら、高層マンションの自治会の防災担当みたいな人を啓発して、そういったアドバイスが行える人材の育成までいかないと、なかなか広まらないのではないかと考えております。

 これについては、平成21年度から、東京と新潟と静岡と徳島を含めまして、それぞれのスキルを生かして、共同でどういった形で啓発していくのがいいのかということを考えてみようといったプロジェクトを立ち上げております。

 これについて、自分のところが危険かどうか判定してもらいます。いわゆる「わが家とオフィスの耐震診断」の構造編がありますが、これの室内編みたいなものがつくれないかどうかということを検討したいと思います。これについて、それぞれ皆さんが危険度を理解した上で、実際、固定方法を安全に実施するためのテキストを示して対策をやっていただこうと考えています。さらに、それを広める人材育成ところまでいきたいなと考えております。

 兵庫県からの発表は、以上です。

 

【田中主査】

 ありがとうございました。ご自身の体験も含めて、迫力のあるお話だったと思います。

 今のお話で、ご質問等あればお願いします。あるいは、感想、意見等でも結構です。

 

【福和委員】

 すばらしい実験をされていて、その内容は啓発効果があると大変感じます。

 ちょっとだけ補足させていただきたいのですが、今見ている映像は、建物の中のカメラから見ているので、いかにもこちらが動いているように見えますけれども、外から見ると、実は人間が動いていて、家具はあんまり動いていません。それはうまく伝えないと誤解が発生すると思います。

 実際には、人間はもうすごい勢いで動いている中で、最初はとまっていて、徐々にこう動く。俯瞰したカメラだと、それが見えます。それを一緒に見せておいたほうが良いと思います。

もう一つは、今のは長周期の揺れですが、長周期の揺れのときは、家具は一気に倒れ、神戸のような地震のときはガタガタ揺れた後で揺れるという特徴があります。その違いをうまく両方で表現すると、さらに分かりやすいと思います。

 

【田中主査】

 つまり、人はもう動きようもなくて、勝手に翻弄されているところに、家具に自分で向かって行ってると言うことでしょうか。

結局、幾つか非常に難しい問題は先週も出ていたんですけれども、どういう範囲を対象にすればよいのかが決まっていません。震度7のときには、退避行動を考えても動けません。では、6強、6弱、5強と検討していけばよいでしょうか。その辺を整理する必要があると思います。

 

【福和委員】

 しかし、対象物によって対応が違うように思います。山本さんがお話しくださった超高層の揺れのときは、最初揺れ始めてからほんとに揺れるまでに長い時間があるので、そういう建物に関してだったら、揺れ始めて逃げるまでの時間がありますので、避難に活用できます。

 

【山本係長】

 長周期実験のビデオは4分あります。最大の揺れになるまでかなり時間があります。

 

【田中主査】

ということは、安全な場所をどう確保するかという議論に持ち込めば、そこに移動しなさいということですね。

 

【福和委員】

 自分がいる場所の特徴を事前にわかっていれば、その人に応じた退避行動は、きちんと書けます。問題なのは、それを普通のパンフレットのように、だれもが同じようにというように、もしもアウトプットしようとすると、これは書きにくいと思います。だから、アウトプットイメージによると思います。

 

【国崎委員】

 アウトプットで言うと、これを紙ベースにすることは、おそらく不可能です。

 やはりフローチャートのように、蓄積されたデータを、自身のケースに当てはめて、あなたのケースの場合にはこういうことが当てはまりますというような回答の見せ方ができたら理想だと思っています。

 

【福和委員】

 自分の家の揺れが予測されて、自分の部屋がこう揺れますよというのが出ると同時に、自分の部屋の写真が、その揺れで動くようなシステムを現在制作しています。そうすると、それはもう完全に自分の部屋なので、完全に我が事になります。そういうようなことをしながら、自分がこういう揺れだったら、その状況はこうなりますよというシステムと一緒に疑似体験すると、それが可能になります。しかし、それは手間がかかりますが。

 

【国崎委員】

 それは購入できるのでしょうか。

 

【福和委員】

 私の研究室のホームページ上に載せようとしています。自分はここに住んでいますといったら、自分の部屋の写真を登録したら、それで自分の部屋は地震の際に、こうなるって見えるようなシステムを制作しています。

 

【国崎委員】

 感想でよろしいでしょうか。

 先ほどの資料の3ページの研究体系というところで、いろいろこれから基礎研究を、住宅、オフィス、屋上等で、今後も展開していくというところで拝見したんですけれども、寝室のベッドの中で、ぜひ盛り込んでいただきたいのが、2段ベッドです。日本の住宅事情で、やはり子供がお2人以上いた場合には、2段ベッドにするご家庭は多いのですが、2段ベッドに対しての耐震強度の実験は殆ど行われていません。様々な構造がある中で、どういう挙動を示すのかというところとその対策ができたらよいと思います。それからオフィスのカテゴリーには、一般的な企業の他に、私が一番懸念している園や保育室を含めた考え方をお願いします。園や保育室は、学校と違い機能別に部屋が分かれていませんので、同じ部屋で寝る、食べる、遊んでいます。そのため、すべてのものを固定できないという厳しい条件の中で子ども達が過ごしています。今回の実験でピアノが固定されていない条件下の映像を広く周知させ子供の命を守るという意識の啓発と対策の推進を促進させたいと思います。

 

【 議題2 作業部会における検討内容について 】

 

【田中主査】

 ありがとうございました。

では、議事次第の2番に移ります。当作業部会における検討内容は、なかなか難しいと思われます。先回からの続きの中で、どういうふうに進めるのか、事務局から紹介してください。

 

【富田補佐】

 それでは、資料2-3を資料をごらんいただきたいと思います。

 これは、前回の資料をリバイスしたものでございますが、前回と変わっている箇所は、「目的と経緯」を付けたところです。これは設置紙と同じ内容のことを書いてございまして、E-ディフェンスでいろんな知見が得られるようになりましたので、こういった適切な方策について検討することが有効であると追記しました。だから、このような、「従来適切であると言われてきた」というふうな設置の趣旨について書いてございます。

 2の「検討範囲」でございますが、前回の検討を踏まえまして、ちょっと修正をさせていただいております。

 まず、1の「時間の範囲」と2の「状況の範囲」について分けさせていただいております。

 1の「時間の範囲」ですが、「緊急地震速報や初期微動により地震の発生を察知してから地震による揺れが最大となり、さらに振動が収束するまでの間での人間の行動について重点化して検討を行う」の部分は前回と同じでございます。

 そこで、なお書きといたしまして、前回の議論の中でも出てきましたし、今日も出てきたんですが、「次に発生することが予想される事象についてイメージして行動することが防災上有効であることから、地震動が収束した直後の行動についても、必要に応じて視野に入れる」と入れました。全体像を一応頭の中で考えつつ、第1の行動を行っていく、及び、可能であれば第2の行動を行っていくという視点を対象にしようと考えてございます。

 2の「状況の範囲」でございますが、本部会におきましては、事前対策及び適切な退避行動のあり方の検討に、必要なデータや実験・研究課題を提示することを目的としております。これは前回から言っております。

 今現在、E-ディフェンスに人を乗せるのに非常にいろいろ制約がございまして、それまでにいろいろなハードルがあるところでございます。それが可能になるまで、事前の検証など、過去の事例の検証とか実験等によらない検証、例えば、前回言われましたように、神戸のときのNHKの揺れている映像とか、あと、コンビニで商品が散乱するような映像とか、もう既に既存の映像でも人間の行動がある程度把握できるんではないかというご意見もありましたので、そういったところの既存のデータをまず検証してみる。

 あと、既存の条件でできる実験で、例えば、E-ディフェンスに乗れなくても、起震車の上に人に乗っていただいて、ある程度大きな揺れをすると、人間のほうというのは、そんなに正確な地震波形を反映した揺れでなくても、多分似たような行動をするのではないかという、そういった予想のもと、そういった既存の条件で、いろいろまだやれる実験があるのではないかということを考えまして、そういった実験を先行してさせていただいております。

 当然、全部にわたって想定することが重要ですが、先に事前対策を講じやすい場合、先ほどの兵庫県と横浜市からも言われましたように、まず、事前対策とセットで行動を考えていくというのは非常に重要であるということも言われておりますので、それと、前回の議論におきまして、震度7を扱う、震度7であればほとんど動けないのではないかという話もございます。非常に発生しやすい、その場で起きやすい震度を想定して、その地域のことを考えるなど、そういったことも考慮しつつ、まず事前対策を講じやすい場合とか場所について、優先的に本部会では検討させていただくと。その検討結果を、いち早く社会に還元するという視点で、当該、そういった場所に反映させることが防災対策上有効であろうということで、まずそういったところを、事前対策がやりやすいところ及び、その場で起きやすい震度について考えると、そういったことをまず重点的にやっていきたいと思っております。

 3段落目ですが、こういったことを踏まえまして、耐震化や家具の固定等、事前対策の対応が比較的期待できる家庭や学校、職場等について優先的に検討していきますが、その他の場所についても、現状で可能な範囲での課題の明確化を行うということにさせていただきたい。全体を視野に入れつつ、こういったところをまず先行してやらせていただきたいと思っております。

 このような検討範囲を設定しまして、その上で、次の3でございますが、「退避行動を検討する上で考慮すべき場合分けについて」です。前回、場合分け案を出させていただきましたが、それに基づいて、それと、前回の議論に基づきまして、2枚めくっていただきますと、別紙1というものがついております。

 こういった場合について、今の状況におきまして、事務局で、こういった場合について系統図を表にしたものですが、左端に地震発生があって、上に緊急地震速報がある場合、下に緊急地震速報がない場合ということで、それぞれについて住宅内、学校、職場、百貨店や劇場などの不特定多数の人々が集合する空間について、またそれぞれ耐震、非耐震、またそれぞれ、台所、寝室とか一般教室とか、理科室、家庭科室の専門室とか保健室、体育館など、そういった場合についてこのように分けさせていただいております。

 当然、これが全部網羅しているわけではございませんので、下に注意点として「以下の場合分けも必要に応じて適宜実施する」と書かせていただいております。当然、長周期地震動が起きた場合は、建物の高さとかがきいてきますし、木造でありますと、当然、1階はつぶれやすいとか、そういった建物の高さとか、あと地震発生時刻によって、人は、居間にいるか、寝室にいるか、台所にいるかというのが分かれます。その下の地震動の大きさ・周期・継続長さ等も影響してきます。また、ガラスは、割れた場合に容易に歩けないということで、ガラスへの対応や、また、学校だと、給食中という特異な場合もあります。

 また、その下の※なんですが、今日も最初のほうにお話がありましたように、そこに初めて行った場合とか、あまり知らない場所に行った場合に入った建物で、その建物が耐震性があるかどうか、どの程度の耐震性があるのかというのはなかなかわかりにくいものですが、その建物の耐震性とか、例えば、急に飛び出していいような場所にあるものなのかどうなのかとか、周囲の状況等をどのように知り得るかについても考慮していくと考えております。

 これは、すべて網羅しているわけではないですが、今の時点での事務局の案で、今後、右の空欄につきまして、どのようなあれかということで、まず最初の段階として、こういったことを考えていくのかなと考えております。

 1枚戻っていただきまして、4でございます。地震による揺れが収束するまでの退避行動の優先順位につきまして、これは配慮事項ですが、先ほどの前のページの2で、「検討範囲」で、1の「時間の範囲」につきまして、揺れが収束するまでと言いましたけれども、そこの揺れが収束するまでの間に行動が何回とれるかということを考慮していこうということであります。読み上げますと「地震時においては、まず最初にとる行動の適否が、人体に大きな被害を受けるか否かの重要な鍵であると考えられるため、本作業部会では、防災対策上の観点から、まず最初にとる行動を検討し、それ以降のとるべき行動については、行動の可能性や重要性に配慮しつつ必要に応じて検討することとする」ということで、こういった配慮事項を掲げさせていただいております。

 本文に続きまして別紙1ですが、これが前回出しました場合分け(案)でございます。前回のご意見の中の2でございますけれども、震度の大小についても検討する必要があろうとか思います。長周期とか余震、そういったものについても検討すべきではないかということで、こういったことをつけ加えさせていただいております。その下の4ですが、地域特性についても考慮すべきというご意見がありましたので、このように書かせていただいております。

 また、下端に、なお書きで、賃貸住宅につきまして簡単に書いておりますが、賃貸住宅というのは、そう簡単に穴をあけたりできないようになっておりますが、そういったことも可能になる、及び、荒巻先生からご説明のあった大大特で示されたいろんな家具の補強の仕方を踏まえまして、不可能な対策についても有効な手法を必要に応じて検討していくと書かせていただいております。

 その次の参考2でございますが、これも前回、学校、家庭、屋外において、現在推奨されている行動について書き出したものでございます。その下のポイントとして、例えば、学校の「あわてて行動しない」というところだと、「あわてて行動して何かが落ちてきたりする危険性があるので、行動するにしても上に何もない方向に逃げる等事前の想定が必要ではないか?」のように、簡単にポイントとして問題点を挙げさせていただいております。参考1、参考2をもとに、別紙1をつくってみたものであります。

 以上でございます。

 

【田中主査】

 ありがとうございます。

 さて、なかなか難しいところでありますけれども、場合分けはすればするほどたくさん出てきます。

 

【福和委員】

 まず、震度というときは、どこの震度かということによって物が大分違うので、地面の震度なのか、床の震度なのかによって、欄外の建物の高さということの重要度が変わってくるように感じます。

 平屋建てであれば、地盤の揺れと室内の揺れは同じですけれども、階数が高くなるに従って床位置の揺れは全然違ってきますから、やはり建物の高さというのは入れておかないと、現実と違ってくると思います。建物の高さによって、揺れは増えるとともに、揺れやすい周期も変わってきますから、発生する状況も全く違ってくるように思います。

 それから、地震動の大きさ、周期、継続時間というよりは、むしろほんとに揺れるまでの時間というものがとても大事になってきますから、直下の地震で近距離なのか、それとも、少し距離が離れていて、P波がやってきてからS波がやってくるまでの時間が長いとかいうようなこともあると思います。

 それから、超高層の建物、例えば、この場所の場合は、揺れ始めるのにすごく時間がかかりますから、その建物の中での揺れるまでの時間というようなポイントもあると感じました。

 それから、周辺の状況ですが、停電するかどうかというのはすごく大きな違いで、周辺の状況が見えるかどうかということがすごく大きく左右しますから、昼間なのか夜なのか、そのときに電気があるのかどうかというのは、退避行動を考える上では多分決定的に重要になりそうに感じました。

 ここにはイメージがされてないですけれども、実際には、E-ディフェンスの実験をしていて、強い揺れを受けて、学校の中とか集合住宅の中がどうなるかというと、コンクリートガラが上からどんどん落ちてきます。コンクリートの破片がどんどん落ちてくるところの中での状況になります。震度6強から震度7の中での行動心理を考えるときには、コンクリートガラが落ちてきて、それから、そこら中でコンクリートにクラックが入るときの音というのは、すさまじい音がします。そういう音とか、目の前で何が起きてくるかという状況によって、人間の行動って全く違うな気がするので、そういうことを想像できるようにすることによって、この退避行動が多分変わるかなと思います。だから、電気の問題と音の問題と、ほんとに自分が死ぬかもしれないと思うような、物が落ちてくるような状況は考慮すべきと感じました。

 それから、あとは、体育館であれば、当然、天井が落ちてくるとか、あるいは、上からのつり物が落ちてくるというような状況がありますから、書かれてないかなと感じました。

 自分がいるところの安全度合いのチェックとして、私が必ずやるのは、建物に入るときには、必ず定礎の石を見て、この建物は何年にできた建物か必ずチェックした後でないと講演会のときは入らないです。それは、少なくともその建物が安全かどうか、今、安全マークが入ってない状況だと、そういうことを伝えるということも、退避行動を考える場合には大事かなと思いました。

 それから、もう一つは、その場所の揺れを事前に体感している人か、そうじゃない人かによって退避行動はすごく違ってくると思います。もう地震動予測地図もできているし、地盤もわかっているし、そういうことがわかれば、建物の揺れ方だってすぐにわかるわけだから、その建物の揺れ方がわかったら、それぞれの特定された地震に対しては、自分の住んでいる場所の揺れはこうだよということを予測する技術は持っているので、それを事前に体感させる。それを体感した人であれば、退避行動は的確ですよと言い、体感したことのない人はめちゃくちゃになっちゃうよということを伝えることは、文部科学省的にはとても意義がある話ではないかと思います。それは、通常の起震車では絶対できないので、ちゃんとした波形制御ができるような振動台を世の中に普及させていくためにも役に立つのではないかとは感じます。

 それから、やっぱり余震は怖いです。1回揺れてトラウマになった後で、余震は立て続けにやってきますから、その余震の中での行動心理というのは、とても大事になると感じて伺っていました。

 いっぱい言い過ぎてしまいましたけれども、そんなこと考え始めると、もう切りがなくなり、やりようがなくなるので、どこまで考えてやるかは、落としどころとして、先に考えるべきだと思います。以上です。

 

【田中主査】

 実際、阪神、真っ暗だったわけですし、いきなり、天井だったと思っていたら窓になっていたとか、いろんな状況がありますので、また、阪神は阪神の1つの特殊性を持っていますから、非常に難しいと思います。

 再三ここでもご指摘があるように、事前対策が大事だということははっきりしています。とりあえず事前対策を行っているところから始めていくけれども、事前対策をとってない人のところをどうしていくのかは、ちょっと先に延ばしているという感じだと思うんですけれども。

 

【首藤委員】

 私も前回欠席だったので、もしかすると議論にちょっとついていけてないかもしれないですけれども、まず、場合分けをして、推奨される退避行動というのを挙げていくということだろうと思うんですけれども、その場合はやはり、今までの議論でも多分出ていたように、条件によっていろいろと違うということはもう間違いのない事実だと思います。先ほど出ていた最終的の成果イメージですけれども、やはり正しく行動していただくためには、どんなに細かくなっても、いろんな条件が組み合わさると、その場合はこうですよという、一番お勧めの行動はこうですよということが出てくるようになる必要があるかと思います。ですから、先ほど、フローチャートのようにというのもありましたし、何か、それをあなたのお宅や身の回りやあなた自身はどうですかというのを考えて、チェックをしていったりすること自体が啓発になると思うので、いろんな視点でいろんなものをチェックしていくと、一番最適な行動はこれですよというのが見つかるようなキットを制作すればよいと思いました。たくさん考え過ぎると大変だから最低限で少なくしてしまい、あまり絞り過ぎると結果的に推奨行動が絞れない可能性があるので、この場合は違うということだったらそれを残しておいて、あなたに当てはまりますかどうですかというのをチェックしたら、どちらかの行動がある程度決まるというふうにできたら良いと思いました。

 そのときに、現状の知見で本当にいい退避行動がどのようなものか分からない場合を見つけて、それを実験等で確認するということかなと思っていましたが、そういう解釈で合っていますでしょうか。

 

【富田補佐】

 現状でできることとできないことをまず分けて、現状でわかるものは行っていきます。先ほど言われましたように、フローチャートのようなものだと思います。前回も議論が出ていたのは、単なるハウツー物じゃだめだということを皆さん言われておりまして、それだったらどんなのが良いのかと言うことは、まだ答えられず、まだ明確なイメージは持ってないですが、その辺も含めて、教えていただきたいところが多くあります。

 

【首藤委員】

 多分、今おっしゃられたように、あなたの条件はどれが合いますかというのを全部チェックしていって、最後、退避行動が、じゃあ、その場合の、そのシチュエーションのあなたはこういう行動がベストですよというのを入れるような形にすると、おそらく事前対策をしてなかったら、どんなに行動しても、あなた、助かりませんというのもきっと出てくると思います。それが事前対策推進のプロモーションにもなるので、そういう形で、事前対策セットしないと、絶対に望ましい退避行動が見つからないというところもあっても良いと思いますので、そういう形でつくり上げる成果品も良いと思います。

 もう一つは、これは先ほど、実験の位置づけがどうなのかなというところで気になったところで、人を実験するのってすごく難しい。心理学をやっていると、もう実感していまして、多くの人がこういう行動をとりますとか、とれますという結論が科学的に出せる実験ってものすごく難しいです。そんな結果が出たら、それは実験計画が間違っていたんだと思えと、私は大学のときに心理の先生から言われたぐらいなので、ですので、人を起震台に乗せて実験ができて、こうだからこうですということにあまり大きな期待をされないほうがいいかなと思います。明らかに物理的にもう動けないというものはあるとは思いますけれども、心理状態も加味したときの人の振れ幅はものすごく大きいので、先ほども出ましたように、揺れだけではなくて、目に見えるものとか聞こえるものとか、すべての総合で人は結果的に行動しますので、その条件を全部あわせて実験をするということに、あまり過度な期待をされないほうがいいんではないかなと思います。

 もし実験をされるとしたら、客観的な事実として、実際に行動ができるかどうかだけではなくて、よく心理学では、実験後の内省報告をとると言いますが、どんなふうに感じたかとか、どのぐらい怖いと思ったかとか、何を思い出したかとか、そういった被験者からの報告を聞いて、その質的なデータのほうから、何かいろいろ判断材料にするなど、そういうことをやらないといけないと思うので、もし実際に人に入っていただいてやるとしたら、実験心理学の知見をお持ちの方にぜひ入っていただいて、そういったことも踏まえてやっていただいたら良いと思います。

 

【田中主査】

 ありがとうございます。おそらく、心理プロセスに入り込んでも仕方がないんだと思います。怖いものは怖いですから。だから、それを幾ら調べても怖いと思います。確かにおっしゃるとおりに、振れ幅が大きいので。

 ただ、問題なのは、おそらく平均値の議論をここであんまりしても仕方ないと思います。つまり、50%の人は助かって、50%死んでいいかという議論にならないので、極端言えば、100%の人ができない行動は推奨できなくなってしまう。逆に言えば、それぐらいの非常にシンプルなことだけをやることになると思います。だから、イメージとしては、安倍北夫さんがやっていた、3つ消火しなきゃいけないものがあると、やっぱり無理だと言う話になってきます。1つだと覚えられるけれども、3つは無理だとか、もうそんな程度のことしかないと思います。行動主義に戻るしかないのではないでしょうか。

 

【福和委員】

 これ、推奨行動を出すというところに結論を出すか、そのときに、こういうことが起こり得るから、あなた、考えなさいというところを結論にするかによって、持っていき方が相当違い、責任感も大分違ってくると思い伺っていました。多分、推奨行動というものはないのではないでしょうか。

それを書こうとすると、何かそれで間違って、人に何かがあったら責任がとれないからというふうに、筆が非常になまってしまって書けなくなるのではないでしょうか。結論は、推奨行動ではなくて、そのとき、こういうことがあるから、こういうことに気をつけないといけない、というような状況をお伝えするというアウトプットの仕方もあると思います。

 

【荒巻委員】

 おそらくそうだと思うんです。そもそもは、現在の避難行動について検証するということでスタートしたと思います。ですから、そういったことから考えると、そこの部分を検証することによって、こういう部分を注意しなさい、あるいは、このパターンはこの建物の場合は向かないということを指摘するのが良いのではないかと思います。

 

【田中主査】

 できるだけファクトとしてこういうことがわかっている、あるいは、こうなると。例えば、机の下に入りなさいと言っても、机は飛んじゃっているよねとか、それをファクトとして積み重ねて、フローチャートで、そうしたらどうするかとかどうでしょうか。

 

【荒巻委員】

 そうすると、1個1個に、対処行動で防災対策してくれるような気がします。

 

【田中主査】

 その方向が一番まとまりやすいですが、これだけ退避行動と打っていますので、落としどころはもうちょっと議論をしてもよいと思いますが。

 

【首藤委員】

 多分、一切退避行動が出てこないわけではなくて、今までパンフレットとかでしかなかったので、ごく簡単に、一番一般論でまとめられていたものが、もっと個別に考えると違う場合もあるよということがいろいろ示されて、すごく細かく、条件によっては違うこともあるとか、それも含めた退避行動ということになるのではないかと思います。場合によっては、条件によって全然違うから、この退避行動は当てはまらないなども含めて示していくということではないかなと思いますので、全然退避行動が出ないわけでは、きっとないかなと思いますが。

 

【小林委員】

 学校の防災教育では、やはり子供たちが幼いときからしっかり教えていきたいという願いは持っています。できれば、絵でわかるようにして欲しい。実は私の学校では、「4つのあ」というので、あいさつ、集まり、後始末、安全というものがあって、安全のところは、机の下に入って押さえている絵を今まで表示してきましたが、そのあたりも変えていかなければいけないなと思いながらも、今既にあるものはやはり有効に利用しながら、子供たちにも教員にも危険度を知らせていく必要があるのかなというのは感じました。

 それから、大変立派な資料映像がありますが、実は、私の過去に勤めていた学校では、阪神・淡路で被災された方のお話を子供たちに聞かせたことがあります。そうしたらば、家に帰って、大変子供がショックを受けて、というようなこともありましたので、なかなかそれは難しいと思います。あのような映像をアニメ化か何かした形で示すなら、子供の抵抗はわりあいと少なく、理解はしながら生々しくないなというような、そんなものがあればいいなと思います。あれをやっぱり直に子供に使うのは、いい資料でありながら、そういう点も配慮していく必要があると思いました。

 最後に、私も消防の査察が定期的に学校に入って、いろいろご指導いただくのですが、その折に、できれば防災にかかわっての屋内の危険度診断も一緒にアドバイスしていただくと良いと思いました。廊下に物を置いてはいけないとか、そういうことに関しては指導していただけるのですが、何かそういうような、公的なところで定期的にあると大変安心していられるなと思いました。

 それと、子供たちには、学校の場で教えていることが、家庭にもイコールと持ち帰りがちなので、学校は学校、それから、それぞれの家庭やいる場所によって違うんだよということは教えていかなければいけないと思います。学校で教えると、そのまま家に持ち帰りますから、そのあたりももう少しきめ細かな指導が必要なのかなということを感じました。

 

【国崎委員】

 ある意味、学校という施設はつくりが決まっているわけですから、個人の自宅とは違います。それこそ、その場合の退避行動というのは打ち出しやすいような気がします。先ほどのお話の中で、今までは、揺れたら机の下に潜りなさいと言っていたけれども、机が飛ぶことで潜れないこともあるとわかりました。先生は次の日からどう指導すべきか、悩まれると思うので、できる範囲においては明確に伝えていくという方針は、特に学校などの施設では大切だと思います。

 さらに、つけ加えて言うならば、地震本部でも何回も言わせていただいているのですが、このような検討会において、検討対象として、家庭や学校、職場の空間分けがされますが、この学校のカテゴリー中に園や保育室は入っているのかと、いつも確認させてもらっています。文部科学省は、幼稚園は管轄ですけれども、保育室や保育所は管轄外という事情もありますが、社会的な要配慮者であり、保育室等でゼロ歳から社会に出ている子供たちがいます。そのような子ども達をいかに私たち大人が知見を集めて、守っていくためにも、忘れられがちな園の部分を必ず明記していただきたいと思います。学校に入っているという解釈でなく、明記するべきだと思います。ぜひこの作業部会や防災関連の検討会において未就学児の子ども達の安全について忘れずに検討していっていただきたいと思っております。

 

【田中主査】

 今の話だと、学校から入ると学校教育となり、内容が相当細かくても、防災教育を考えていくならば良いということになると思います。全般的には、やはりフローチャートイメージで、かなりケース分けも行い、それをできるだけファクトとして出していってあげるということにするのが良いのではないでしょうか。やはり、3カ条、10カ条をつくるということは、少し慎重であったほうがよいのではないかと思います。

 

【 議題3 今後取り組むべき研究課題および調査内容について 】

 

【田中主査】

 それでは、2-4をご説明いただきたいと思います。これはどちらかというと、次年度のE-ディフェンスの研究課題ともう少し今後の研究開発課題をにらんでの議論だと思います。

 

【富田補佐】

 本部会の目的といたしましては、従来の推奨行動の有効性の検証及び、今後、そういった推奨行動を導くに当たっての、一体どういった実験とか研究をすべきかという、そういった課題を出していくのが大きな2つの目的でございまして、先ほど申し上げた資料につきましては本部会での検討内容ですが、今回の資料2-4につきましては、今後、一体どういった実験とか研究をしていくべきなのかというのを、事務局で簡単にまとめたものであります。

 まず、大きく1「人体への影響を考慮しない実験」、そして、2「人体への影響を考慮する実験」と、大きく2つに分けさせていただいております。

 まず、1「人体への影響を考慮しない実験」ということですが、まず、そういった、人体といいますか、ダミー人形も含めて、使って実験するのはなかなか難しいということもありますので、まず、周辺の状況を把握しようというものです。人体等を用いずに、家の中にどういった配置で家具を置いて、どういった震度でどういった周期で揺らしたら、どういうふうに動くのか定量的に把握しようというのが、まず1の考え方であります。

 その下の実験例といたしまして、住居の室内の2として、学校、職場に関しての実験、3つ目として百貨店や劇場などといたしまして、先ほどの場合分けに対応して、こういったことが考えられるのではないかということを書かせていただいております。

 次に2ですが、「人体への影響を考慮する実験」の1のほうで、一体家具類がどの範囲で動くのかというのを検証した上で、次は、人体へどのように影響を及ぼすのかというのが2の実験の内容でございます。

 その下に、2の中にも○が2つありまして、ダミー人形を使用した有効な実験とはどのようなものか。ダミー人形は、立たせておいても、地震動が来た場合に、普通の人間だと、地面が揺れますと、それに合わせて重心を変えようとして行動しますけれども、ダミー人形だと全く抵抗がありませんので、物と同様に倒れたりしますので、あまり人間の行動をあらわせない部分もあると存じますので、そういった範囲で、ダミー人形を使用した有効な実験とはどういうものかと。これは、その下に例と書いてありますように、ダミー人形を静的な状態で寝かせたり立たせたり座らせたりして、各所にセンサーをつけて、いろんなものを倒したり落としたりして、体にどういった損傷を及ぼすのか。それによって、ある意味、家具類の配置を考えたりして、できるだけ損傷が小さい場合を抽出していくのかなとして、例として挙げさせていただいております。

 また、その中でもE-ディフェンスを使用しない実験とは何か。また、E-ディフェンスを使用すべき、ほんとうにE-ディフェンスを使用しなければわからない実験というのはどういうものかというのを今後考えていく必要があると思いますし、また、各委員の皆様にもご意見をいただきたいと思っております。

 このペーパーで青字で書いているものは、実際の人間を、使用してというのは言い方が悪いですけれども、実際の人間に参加いただいて実験するものは青字で書いておりますが、実際の人間が参加して行う有効な実験というものはどういうものかと。実際の人間でなければできない実験というのはどういうものかということで、それでもまたさらにE-ディフェンスを使用しない実験、E-ディフェンスを使用すべき実験は何なのかということで、またいろいろご質問させていただきたいと思っております。

 実験例として、事務局が以下のように、こういった条件で実験をしたらどうかというのを簡単に挙げさせていただいております。

 (1)として、以下の条件を変化させて、人体またはダミー人形への影響の変化を定量把握する実験。この下に4つ箇条書きにしていますが、こういうふうにいろんな条件を変えて定量的に、一体どんな影響があるのかというのを測定する実験が必要になってくるのではないか。その下が、(2)として、学校及び職場。次のページですけれども、体育館とか、その下の百貨店、劇場など不特定多数の人々が集合する空間でということで、いろんな場合を想定して、いろんな位置の条件を付与したり、いろんな重さにしたり、いろんな地震動を加えてみて、一体どういった被害が起きるか、あるいは、家具固定の効果はどのようなものかというのを定量的に実験していくと。こういったことが、まず必要になってくるのではないかということで、資料2-4といたしましては、事務局として、今の状況で考えられ得るもの、大まかではございますけれども、こういったものではないかというのを挙げさせていただいております。こういったことについて、今後、また委員の皆様にも質問をさせていただきたいと思ってございます。

 

【田中主査】

 先ほど首藤委員からは、逆に資料2-3を網羅してやっていくと、資料2-4でやらなければならないこともかなり浮き彫りになるだろうというお話もございました。ここではとりあえず、建物の室内の物の話と、それから人の影響の話というところで大きく分かれてきています。本質的には、物の動きのほうになっていくんだと思いますが、いかがでございますか。まだこれはちょっと余裕があると思いますけれども。

 

【福和委員】

 では、起震車でできないことだけについて申し上げてもよろしいですか。

 起震車は基本的に、変位振幅がすごく小さいです。車で揺すれるということは、すごく小さな振幅しか出なくて、いかにも揺れているふりをしているだけで、実際に起震車で震度7といっていても、震度7にはなりません。震度7にするためには、相当な揺れの振幅が必要になるので、それはやっぱり相当難しいと思います。それが、まず1つの大きな問題だと思います。

 それから、もう最初から、あのボックスの中で経験するということになっているので、ほんとうに我々が生活している環境とはすごく違うということがあると思います。E-ディフェンスのよさは、やはり周辺にいろんな家具とかがある状況の中で人間が乗って、その様子を経験できるということが何よりも大事で、それから、実際に構造物が壊れていく状況の中での体験ができるということは、音もするし、すごく周辺の目線も違うから、その効果は多分にあると思います。それをやることが、兵庫県がねらわれたことで、その兵庫県がやられたあれのインパクトがあったから、今ここに来ているので、やっぱりそういう環境条件を使うべきかなと思います。

 ただ、あそこでは乗れないので、私自身がE-ディフェンスの方々に提案しているのは、あそこで出た映像を、ものすごい大画面であそこの入り口のところに出して、それがほんとに揺れている映像の前で、揺れだけを前で体験できるような小さな振動台をもう一個つくって、その揺れを体験する振動台への入力は、実際のE-ディフェンスで揺れた波形そのもので、そこで揺すればいいわけですよね。映像はもうばっちり撮れているわけですから、その撮れている映像を後ろで揺すりながら、自分はこうやって一生懸命揺れるという、それはもうすぐに実現できているので、そういうようなものを使うことによって、E-ディフェンスだけではできないものをもう少し、E-ディフェンスの実験結果を活用しつつ、だけど、起震車ではできないことをやるという、結構おもしろい道はたくさん残っているような気はして見ています。

 

【田中主査】

 ありがとうございます。山本さんの経験から考えると、もう二度とあんなとこ乗りたくないですよね。ほんとうに人がリアルに感じることに意味があるかどうかというのは、やや疑問もあります。震度5ぐらいだったら、それなりに意味があると思うのですが。でも、6強から7の振動台にのることに意味はあるのかといいますと、乗った乗らないの差は大きいと思いますよ。乗った乗らないの差は大きいけれども、そこで何か差がとれるかというと、多分何もだめだということだと思うので、むしろ5とか5強、6弱ぐらいだと、何か少しはとれるぐらいじゃないかという気もしていて。個人的な感想を言ってしまいました。

 ほか、今までの横浜市さんからの発表も含めまして、全体的にいかがでございますでしょうか。何となく今日、少し軌道修正がかかった気もいたしますけれども、少し事務局のほうでもご相談いただければと思います。

 

【福和委員】

 成果提出の提出期限や作業量により、実施できることが違ってきます。ここでの議論は、地震動予測地図よりもずっと難しいことをやろうとしています。地震動予測地図は、科学的にできることをやるんですけれども、こっちはもっと難しいことを全部入れ込まないといけないので、すごく長いタイムスパンでやろうとすると、すごくいいものができます。しかし、それはやはり待てなくて、短期的にということであれば、それに応じたまとめ方を田中先生が考えないといけないと思います。まずはフェーズ1で簡単にまとめ、将来ずっと続けていくのなら、そういったロードマップが書けると思います。

 

【田中主査】

 むしろ、これは事務局にお答えいただいたらいいと思いますが、時間的な制約というのは、客観的には来年度の予算しか基本的にはないんですよね。ですから、資料2-4はある程度時間的制約はあるけれども、資料2-3のとりまとめについては、事務局の鈴木課長のお考えによって決まります。全般的にこの作業部会に参加していらっしゃる委員の方々は、推奨行動はそう簡単に決まらないと考えておられると思います。これはじっくりデータを積み重ねて推進し、いろんな視点から、防災教育の面も含めて行うのがよいのではないでしょうか。そういう理解ですが、いかがでしょうか。

 

【鈴木課長】

 委員の先生方のご意見がそういうことであれば、我々のほうでまた、頂戴したご意見をもとに考えさせていただきたいと思います。

 

【富田補佐】

 資料2-3で場合分けを進め、資料2-4である程度こういった実験がや課題の明確化が必要ではないかという提言をいただくとことが当初の予定でした。

 

【田中主査】

 月曜日に室﨑先生とお話ししましたけど、室﨑先生も「大変難しい内容ですので、じっくりやったほうがいいね」と一言おっしゃっていました。それで、今日の議論ですと、次回までに資料を作成する事務局のほうも大変かなと思われますので、フローチャートイメージでポンチ絵1枚でもいいので、少し何か眺めてみて、書きとめてもらったものを事務局に送っていただけると、少しいいかなと思います。そんなに精緻なものじゃなくて、実際やっぱり、我々も少し作業してみると、難しいということがよくわかると思います。国崎さん、書けそうじゃないですか。例えば、学校に絞って、理科室にいたらどうなっていなど。ここはわからないから書けないということもあると思います。例えば、超高層のオフィスのケースを福和先生に作成いただけないでしょうか。

 

【福和委員】

 実はすごく簡単なものを、目黒さんと僕とでお手伝いして、内閣府のほうで作成しており、そろそろで出来始めています。

 ある条件下での状況をパソコン上で見れるようなシステムを、今つくり始めていて、1回ヒアリングをするのも良いかもしれないです。まだ作成中だと思いますが、低層の住宅と高層の住宅の中で、その人の備えの状況によってどういうことが起きるかなどを示すことができます。

 

【田中主査】

 事務局の方でそれを確認してもらえますか。

 では、時間が6時までということですので、本日の議論はここまでとさせていただきます。座長として、本日貴重な報告をおこなって下さいました荒巻委員と山本両氏に御礼申し上げます。

 では、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

以 上

 

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