地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成21年7月1日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 作業部会における検討事項について
  2. 地震発生時に推奨される退避行動等の現状について
  3. E-ディフェンスによる実験映像について
  4. その他

4.出席者

委員

田中主査、荒卷委員、国崎委員、小林委員、中埜委員、林委員、室﨑委員

文部科学省

藤木局長、増子地震・防災研究課長、渡邉防災科学技術推進室長 他

5.議事録

(富田補佐)

定刻となりましたので、地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会第1回目を開催させていただきます。

 まず、議事に先立ちまして、当作業部会の公開についての確認をさせていただきたいと存じます。当作業部会の上位会議の「防災分野の研究開発に関する委員会」の運営規則に基づき、会議及び会議資料は原則公開とさせていただきます。また、会議の議事概要も、原則公開とさせて頂きます。具体的な公開の方法につきましては、後ほど説明いたします。以上、よろしくお願いいたします。

 本日は、地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会発足、最初の会議ですので、ご就任いただいた委員の方々をご紹介させていただきます。

- 委員の紹介 -

 それでは、当部会の発足に当たりまして、研究開発局長の藤木よりごあいさつ申し上げます。

(藤木局長)

- 局長挨拶 -

(富田補佐)

それでは、引き続きまして、当部会の主査を勤めて頂く田中主査よりご挨拶を頂きます。

(田中主査)

東京大学の田中でございます。

 地震に限りませんけれども、やはり人の命を守るという意味では、事前対策というのが極めて重要な対策であります。ただ、1人でも多くの人を救うためには、やはり適切な行動というものがとれればと願っております。

 実際に今、藤木局長のほうからもございましたけれども、多くの地震災害の教訓を経ながら、少しずつ改編をされ、地震時の行動というものの指針がつくられてきております。やはり、阪神・淡路大震災は、相当大きな契機になっております。最近では、緊急地震速報が一般供与され始め、その情報で揺れてからの対応に、少し見直す部分が必要なのではないかという気もしています。

 また、先ほどご紹介にありましたとおりに、E-ディフェンスという手段もありますので、その成果を生かせるものは生かす、そして、測定できるものはしていくという、ある意味でエビデンスに基づいた形で、1つの知見を整理できればと思っております。

 人の命に関することでございますので、極めて難しい、責任の重い話だと思いますし、また同時に重要な課題であると思っております。そういう面では、今回、大変有力なメンバーをお迎えしております。皆様方のお力添えを得て良い成果が出るものと期待しておりますので、よろしくご協力のほどをお願いしたいと思います。

(富田補佐)

続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

-資料確認-

 では、資料1-1に沿って、当部会の設置趣旨等につきまして説明をさせていただきます。

 兵庫県三木市に防災科学技術研究所のE-ディフェンスという、実大の構造物を実際に大きく揺らして破壊する実験施設があります。ここでの実験によって、構造物などの詳細な破壊過程等が順次明らかにされつつありますが、その実験の過程にて、家具類や機器類の挙動についても、詳しく把握するようにしております。これによって、学校やオフィス、家などにおいて、地震時に実際に人がとるべき行動や、事前にとっておくべき地震対策等について、検討することが重要ではないかということが考えられるようになってきました。

 このように色々な知見が得られてきており、適切であると言われてきた被害軽減策等について、改めてその有効性を検証し、また課題を抽出し、より適切な被害軽減策を導出するためには、いかなる研究開発をすべきなのかということも含め検討を行うというのが、本作業部会の趣旨でございます。

 本作業部会での検討事項は、(1)従来適切であると言われてきた地震の際の退避行動の有効性について、(2)地震の際の適切な退避行動及び事前準備のあり方、(3)新たな地震の際の適切な退避行動の解明に必要な研究事項、(4)その他、とし、本作業部会の上位の防災分野の研究開発に関する委員会で設置が認められております。

 設置期間は、来年の3月31日までの1年間ということで考えております。

 以降の議事進行は、田中主査にお願いいたします。

(田中主査)

それでは、始めさせていただきたいと思います。

 まず、議題「(1)作業部会における検討事項について」ですが、今までのところで何か質問等ございますでしょうか。その前に、議事録はどの程度の公開ですか確認させください。

(渡邉室長)

基本的には、すべて公開ということでお願いします。

(田中主査)

 わかりました。それでは、議題(1)に入っていきたいと思います。色々な議論のある中で、検討事項、範囲、どういうことを検討するのかということについて、特に退避行動というのは状況に依存しますので、極端に言えば、1億人いれば1億人の状況があることを考慮しながら、考え方とか、この辺を中心に進めるべきだとかの範囲を絞る1つの基準を定めていきたいと思っております。

 まず、資料を、事務局と、荒卷委員からも用意していただいているようですので、まずそれについての発表をお願います。

(富田補佐)

それでは、まず、事務局から資料1-5と資料1-6につきまして、説明をさせていただきます。

 資料1-5は、当作業部会における検討事項について、どういったことを今後やっていくのかということについて説明しています。

 まず「(1)作業部会における検討事項」につきまして、説明をさせていただきます。

 当作業部会の検討事項につきましては、2つ考えております。「1最新の地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する提言の取りまとめ」については、今年度、最後に提言を取りまとめたいと考えております。「2退避行動等研究を推進するための研究課題」については、今後、こういった退避行動の検討をしていくに当たって、室内の家具の転倒とか移動量の定量的なデータなど、退避行動を検討する上で不足しているデータを収集する実験の実施や、地震で建物が揺れている最中に人が行動できる範囲や能力を、E-ディフェンスの実験を通じで把握することと等を挙げて頂きます。

 資料1-6は、一体どういった場合を対象にするか、あるいはどういった考え方で場合分けをして、それぞれの場合についてどういった検討するかを事務局で整理したものです。

 まず、「1.検討対象について」。当作業部会では、緊急地震速報や初期微動により地震の発生を察知してから、地震による揺れが最大となり、さらに震動が収束するまでの間における人の行動について、検討を行いたいと思っております。また、退避行動のみでは安全が確保できない場合を対象に、必要な事前対策についてもあわせて検討をしたいと思ってます。

 次に、「2.退避行動を検討する上で考慮すべき場合分け」について。

 まず、「1被災する場所とか時間による場合分け」を考えております。住宅内にいる場合、住宅の中でも寝ているときとか起きている時とかによる場合分けも必要かと思います。また、学校やオフィスなどにいる場合、あるいは百貨店や劇場など不特定多数の人々が集合する空間にいる場合、公共交通機関や自動車等に乗って移動している場合、また屋外にいる場合(徒歩で移動したり、立ちどまっているような場合)を考えております。

 また、「2地震の分類に応じた場合分け」も考えております。例えば、緊急地震速報により地震時の最大揺れが発生するまでの時間的猶予の有無による場合分け、また、長周期地震による高層ビル等を長時間にわたり振動させる地震への対応についてなどのた場合も必要があろうかと考えております。

 また、「3建物・構造物の特徴および耐震性能等による場合分け」も必要であろうと思います。例えば、建物の構造種別、RC造とか鉄骨造、木造、その他、また、建物の高さや規模によっても場合分けが必要かと思います。また、建物や構造物が有する耐震性能のレベルによる場合分けでは、新耐震設計基準と旧耐震設計基準、建物の老朽化、耐震補強が必要にもかかわらず補強されていない建物など、が必要ではないかと考えております。

 「4その他特に留意すべき事項」では、例えば高齢者や子供などの防災弱者の問題等について、検討していく必要があろうかと考えております。

 また、「3.地震による揺れが退避行動に与える影響について」では、例えば地震によってどのように人間の行動は制限され、運動能力は低下するのかということ、また、地震による人間への心理的影響はどのようなものか、また、心理的・身体的影響を考慮した地震発生直後の退避のあり方はどうあるべきか、について検討していくべきではないかと挙げております。

 以上、本部会のスコープと検討範囲について、簡単に事務局でまとめました。本日は、この内容について、主にご検討頂きたいと思います。

(田中主査)

ありがとうございました。

 関連して、荒卷委員から、検討範囲についてあらかじめご意見をいただいているようです。発表をお願いします。

(荒卷委員)

資料1-6で言い得ているとは思うんですが、私なりに考えさせていただいたのは、検証の課題等ということで、現在推奨されている避難行動は、あくまでも基本的な一般論であって、自助の観点からその場や状況に応じた判断を国民各人に任せているものと解しております。

 このため、横浜市では市民に対して、地震が起こったときには、自分自身の身は自分で守ることを基本に、地震三原則というものを定めております。これは、その場に合った身の安全ということになります。そのほか2点を定めております。5月25日の事前の打ち合わせでは、さまざまな意見がありましたが、前提となる発災時の場面設定等のハード的な要素とソフト的な要素の条件を、どこまで追求・考慮する必要があるのかという部分をしっかりと見きわめないと、最終成果物の目標像が違ってくるのではないかと。また、震度の強さ・時間的フェーズ、これは地震発生からどのくらいまでを考えるのか。これについては、先ほど事務局より出ていました。それとともに、国民それぞれが置かれた状況・環境・立場等によっては、避難行動の対応は全く違ってくると考えておりますので、さまざまな状況等によっては、適切な行動も不適切な行動になってしまうんじゃないかと。

 そういったことから、前提となるハード的な要素とソフト的な要素の基本的な条件等を類型整理して、検証する範囲をある程度絞り込み、基本軸を明確にする必要があるんじゃないかと。

 例えば、先ほどのことと重なりますけれども、類型整理の項目としては、ハード的な要素をどうするとか。屋内・屋外の条件という部分では、建築物の構造について、木造、鉄骨、鉄筋コンクリート造なのか。それから階層、何階部分なのか、耐震性の有無、戸建て、中高層、超高層、地下街等、こういった構造物の条件はどうするのか。それから、交通機関という対象もあるでしょう。また、地域特性として、都市部であっても市街地のビジネス街、旧市街地の住宅密集地、それから郊外地等によっては、全く対応が変わってくると思いますし、また地方の農村部でも違うと思います。それから、ソフト的な要素という部分では、個人特性の条件ということで、例えば大人では妊婦までを考えるかと。

 こういうことを幾つかしっかりと見据えていかないと。最終成果物に基づいて、市町村は実際に防災指導することになりますので、それぞれのケースに応じて具体的な説明ができるようにする必要があるのではないかと考えております。

(田中主査)

ありがとうございました。

 震度の強さ、あるいは地域区分というのは、先ほどの資料1-6にはなかった視点も含めて提示していただいたと思います。それでは、今日、ここが一番重要な部分だと思いますので、検討事項、検討範囲について、ぜひ活発な議論を進めていただければと思います。どなたからでも結構でございます。どうぞ。

(国崎委員)

今、お示しいただきました範囲についてなんですけれども、ここで加えていただきたいと個人的に思いますのは、5として地域特性ということですね。例えばその地域において、津波の発生、土砂崩れ、液状化等の危険性の影響により退避行動も変わってくるというところから、地域特性にかかわる場合分けというか、地域特性分けというようなところも入れていただければと思います。

(室崎委員)

2つコメントと1つ質問があります。資料1-6について。最初の「1.検討対象について」というところの最後の2行は、すごく大切な視点だと思います。要は、できるだけ人間の行動に依拠しないような対策をするというのは本来のあり方で、人間のとっさのときの思いがけない行動にかなりの安全を期待するということ自体は、やはり原則から外れていると。基本的にはハードなもの、システム、そういうものを、きちっと事前対策で確保した上で、それでもなお問題が起きたときに人間が対応するということなので、そこの事前対策と人間行動のかかわり合いというか、関係性はしっかり押さえておかないといけないだろうと。これはコメントです。

 それからもう1つのコメントは「3.地震によるゆれが退避行動に与える影響について」のところですけど、挙げてある3つはすべてとても大切な課題ですけど、ただ一番重要なのは、地震が発生した時の人間の心理とか行動能力というのは、なかなか測りずらい。過去の事例を丹念に調べればある程度わかりますけれども、やっぱり腰を抜かすとかパニックになるとかということは、実際に揺らしてみないとわからない。人体実験に近いようなデータがとれるのかどうか。その辺りを考慮していくことは難しい。これは研究課題のところにつながっていくのかもしれませんけれども、どこまで人間というものの可能性を信じるのかということと、やっぱりその実証のあり方を相当慎重に検討しておかないと、ここはそう簡単に答えが出ないような気がします。

 それから、3つ目は単純な質問です。先ほどの地域とのかかわりということの1つの視点かもしれない、事象について。例えば津波がやってくるようなところで揺れたときに、どこをどうするのか。津波が来る時には、火を消すのを放ったらかしてでも逃げるというのを優先すべきなのかというようなこと。また、津波が来て、それによる被害、要するに複合災害。あるいは火災が起きたときの対応行動。そういう事象の展開、どういう形で災害事象が展開していくかというような、多少時間軸も入れてやらないといけない。

 あるいは、そこに小さな子供たちが沢山いるというような状況の中だと、当然とるべき行動が違ってくる。単に建物と場所というだけではない状況。場所の中に多少あるのかもしれませんけど、火災とか津波とかをも考慮すべきなのか。揺れた直後の行動だけを対象とするのか、あるいはもう少し、ある程度時間がたった避難所に入るまでか。どこまでを適切な避難行動というものの範疇とするのか、時間軸でどこまでを避難行動ととらえているのかということを、ご検討されていたら、お知らせいただきたい。

(増子課長)

 ありがとうございました。まず、最初の質問についてですが、最初から退避行動にすべて依存するというのはやっぱり問題があると思います。基本的には耐震補強するとか、家具の固定をするとかは前提だと思います。しかし、実際にでやっている人というのは多くないというのも現状です。老朽化した建物に住んでいる人がいっぱいいますので、そういう人たちも含めてどう考えたらいいかというのは、まず第一の視点だと思います。

 2つ目は、「3.地震による揺れ」のところですけれども、最終的にはE-ディフェンスに人を乗せて実験をする方向で進めたいと思っております。但し、どういう人を乗せるかというのは、結構問題があると思っています。人間の行動を見るには、実際に乗せることが必要だと思っていますので、実験実施にあたっての環境整備については防災科研にて検討していただいています。実際にダミー人形を乗せ、人間にどのような影響を与えるかについてのデータを既に収集し始めております。その辺りを含めて、来年度以降の課題とし、最終的には、実際に人間を乗せて実証したいと思っています。

 もう一つの津波、複合災害についてですが。確かに津波の場合は、津波が予想される地域に住んでいる人というのは、最終的には高台に逃げないといけない。単に家の中にいたら多分助からないと思いますので、高いところに逃げるというのが基本になると思います。ですから、地震が起きて、とにかく外に出て退避するということが重要になってくると思います。そういう複合災害もある程度見た上で、最終的な判断をするということになると思います。ですから、津波が予想される地域ということを最初から考えるというよりも、まず退避行動を基本的に考えた上で、津波の地域はどうするか、という段階を踏んで考えていきたいと思います。

(田中主査)

よろしいでしょうか。津波は来るのに時間がかかる。土砂災害、火災も時間的に展開していきますね。

(増子課長)

土砂災害も、土砂崩れが起きるようなところに住んでいる方については考えなければならない。岩手・宮城内陸地震でも土砂で旅館が埋まったなどの被害がありますが、そういう被害が予見されるところでも、逃げるということに行き着くと思いますので、土砂災害も含めて考えていいと思います。ですから、地域特性というものも範囲に含めた上で考えていくということは、重要だと思います。

(室崎委員)

火災については、今までの推奨された行動が適切かどうかということを検討することの項目に入ると思います。今までは、ぐらっと来たらすぐ火を消せと言っていたんですけど、阪神・淡路大震災のときは、消しに行って亡くなった人がいます。じゃあ、それは消さないで良いのかというと、そう言えない。緊急地震速報で消すとしても、これも当てにならない状況もあるので、じゃあどうするのか。そういう問題が出てくるので、やっぱり火災のことも加味して考えておかないといけないと考えます。

(田中主査)

ありがとうございます。

(国崎委員)

今の増子課長のご意見にお伺いしたいことがあるのですが、人間への心理的影響についてなんですが、これは、E-ディフェンスだけの結果を用いて判断できるものなのかどうか。というのは、E-ディフェンスに乗るということ自体、もう構えちゃっているわけですよね。どういうものが来るかと事前に情報も入っている中で、心理的影響というものをどのように測るのか、また、どのように人間の行動が制限されるのか。例えば、ぼんと情報を受けてから5秒ぐらいは状況把握する空白時間があるということになると、何秒というのが具体的にわかれば、緊急地震速報を受けた際の行動についても影響がある。その意味では、(E-ディフェンスによる情報は)必要な情報だとは思います。しかし、行動にしろ心理的にしろ、E-ディフェンスの情報だけで判断できるものなのかどうか、ちょっとご意見を伺いたいと思います。

(増子課長)

基本的に、E-ディフェンスの情報だけで決めるつもりはありません。阪神・淡路大震災のときに、実際に生き残った方々の状況というのは、かなり文献で整理されているということですので、第2回目以降にもご紹介させて頂きます。それらを補う意味で、E-ディフェンスを使うということになろうかと思います。

 E-ディフェンスでは、揺れるのがわかって乗るわけですから、何分後に揺れますよという情報はわからない中で震度7級のものが来るという状況とは全然違うと思います。どういう実験が妥当かどうかを含めて、課題として出して頂けたらと思います。

(田中主査)

ほかはいかがでしょうか。

(林委員)

多分、この資料1-6を拝見すると、一番問題になるのは、検討の対象というのが、地震の発生を察知してから揺れが収束するまでという前提になっているが、室崎先生はどんどん時間を広げて話をされておられる。ということで、一体どこまでをやるか。

 昔行った研究成果によると、生き残ったというか、被災された人たちに1年半後にずっとインタビューして回ったときの記録は、全員無事だった人はせいぜい3行なのです。はね起きた、もう次には外でいろんなことをやっているんですよね。実は娘さんが亡くなっている場合には、亡くなった娘さんの話がずっと出てくる。そういう意味では、阪神・淡路大震災のせいぜい10何秒ぐらいの世界の広がりは、やはりすごく狭い。サイコロジカルに言っても。だから、どこまでをスコープとするのかというのは、重要な問題だろう。

 正直、被災した人の話は、1日目の会話がほぼ6割ぐらいを占めるんですね。1日ぐらいのスコープで話させると、いろんなものが出てくる。研究効率的に1日ぐらいの幅で聞いておいて、直後にフォーカスをするというぐらいのほうが効率は良い。最初から10秒とか、海溝型地震を対象とするのだったら1分、2分というようなところにフォーカスをしても、なかなか難しいだろう。

 2つ目は、目的関数として、人間を基本的に、本質的に理解しようということは結構難しいと思う。やはり目的をどこに置くかというのを明確にしておいたほうが良い。例えば、死なないようにしたいのか、けがもなくしたいのか、あるいは不安感までゼロで行きたいのか。逆に言えば、どこまではしようがないなと思うかによって、大分要求水準が変わってくるだろうと。

 昔、行った研究結果では、阪神・淡路大震災で、特に西宮では、死者の85%は建物の層破壊が原因である。つまり木造2階の1階部分の残存空間がほぼゼロになって、2階とつなぐ柱だとかはりだとか、2階部分全体だとか、そういうものが落ちてきて、亡くなっている。それが死因の85%だと。そう考えると、いかに覚醒していたとしても、人間のやれる範囲は狭い。それで、さっきの室崎先生の言い方になる。家具が人を殺しているような前提で様々なマニュアルが書かれている雰囲気はあるが、やっぱりそうではない。家具の転倒と移動で起こるのは、負傷がほとんどだと。これから考えると、死亡なのか負傷なのかという、どこを基準にするかによって、着目するものが違ってくるだろう。

 もう一つ余計なことを言えば、先程の死因の85%が層破壊によるということですが、層破壊が生じた場合の死亡率は25%でしかない。だから、層破壊でつぶれたとしても、亡くなっているは4人のうち1人なんです。3人は生き残っているという勘定になるわけだから、そういう意味ではなかなか人間はしぶとい。どの辺までを目的とするか議論し、中には火災予防みたいなものも当然入れても良いかと思う。

 こういうものを枠組みとして考える場合には、今私が準備しているパブリック・ウォーニングで学んだ分け方が役に立つ。ウォーニングというのは2つの要素からなっており、1つはアラートで、もう一つはノティフィケーションである。アラートというのは、今が危ないという、今が行動するときだと伝えること。それから、なぜ危ないとか、どういう行動をすべきとか、どこが危ないとかというのはノティフィケーション。事前に教えるか、アラートを出した直後にノティフィケーションの情報を出さないと、ウォーニングというのは完成しない。アラートだけ、例えばブザーだけ鳴らして、それで警報になるかというと、必ずしもならない。それはなぜかというと、ノティフィェーションの部分がない。何で危ないのか、どうしたらいいのか、どこが危ないのかが、わからない。

 だから、ノティフィェーションというのは、多くの場合は事前の教育の中に入れる。事前事後とか、その直後みたいな話をしていると出てこない。アラートはどういう形でいつどこで何をするかを考えないといけない。緊急地震速報はアラート。じゃあ、ノティフィケーションについての、何がハザードで、どんなペリルがあって、どういうアクションをとるべきで、どこが危ないみたいなものを、どういうふうに環境の中に散りばめるかというような議論もできるんじゃないか。そこまでスコープに入れて考えられるのではないか。

(田中主査)

ありがとうございます。幾つかご指摘もあり、またご質問もあったと思いますけれども、事務局のほうでは何か。

(増子課長)

林先生のおっしゃった点は、先生方の中でもご議論いただけたらと思います。但し、目的をどこに置くかということについては、生き残るというのが一番重要であり、極端な言い方、多少けがをしても生き残るためにはどういう行動が適切であるのかを基本としたいと思います。まず、とっさの行動に精神的な影響は多少あると思いますが、そのための行動などは訓練はできませんから。では、まず生き残るということを考える場合には、本当に耐震性能が不足している建物に住んでいる方は、1階にいれば、2階の部分が落ちてくる可能性があります。そのような時にでも、今までの行動指針では「まず机の下に潜りなさい」になる。しかし、場合によっては、外に飛び出したほうが良いかもしれません。そういうのも含めて、まず生き残るという前提でどのような行動をとるのか検討を行うのが基本だと思っております。

(荒卷委員)

先程、時間軸に関して、火災の話が出たんですけれども、今までの大規模災害では、火災が起こるまでというのは、地震が発生してから大体3分前後なのですね。3分までに、2次的な災害が結構出てくるのです。そこまで含める必要があるのか。資料1-6で示されている範囲にある程度絞り込みをやっていかないと、スコープが非常に広がりを持ち過ぎるのでは?

(林委員)

では、あえて荒卷委員に反論をしましょう。結局人間というのは、もちろん被災者になるエージェントでもありますが、地域の防災力という側面も持っているわけです。組織的な災害対応がとられるまでに、どうしても時間のラグが発生しているわけです。ですから、初期消火であるとか、あるいはライトレスキューというような比較的簡単にできる救助事案の担い手になるのは被災地にいる人になる。外から応援なんか来るわけないですから。ということは、被災者自身がそういうことを踏まえてもらわないと。阪神・淡路大震災の時にありまたが、「消防、早う火を消さんかい」と言って、自分でただずっと見ていた人も随分たくさんいるわけですね。そういう部分はやっぱり削っていく必要もあると。

 だから、全部の人がマイナス側に回るわけではないので、プラスに回ってもらえるポテンシャルも増やすということもあわせてセットにしておかないといけない。実は人間はそんなに都合が良いわけではない。だから、そういう意味では、人間にはトータルなイメージを与えておく。その中で、自分が状況に応じてプラスに回るかマイナスに回るか、どっちにおいても適切な行動をとってもらえるようにすべきではないかと思います。

(荒卷委員)

林先生がおっしゃることも非常に重要な部分だと思っています。一方で、火災まで考えると、当然、断水があったり、停電があったり、ガス漏れがあったり、爆発があったり、交通事故があったり、交通マヒがあったり、あるいは河川の決壊で浸水があったりと、どこまでを今度の事象をとらえる必要があるのかは問題になってくるということで警句させていただきました。

(林委員)

では、補足をします。今、消防行動の阻害要因を挙げておられるますが、それは、プロフェッショナルな方のためです。あくまでも主体になるのは被災地に居合わせた人たち。被災者になり得る人たちの視野に立ってというか視点に立って、どこまで行くか。だから、むしろ消火ということよりは、失火防止とか、消火としても初期消火ということ。最後は通報、普通の消防と同じで。そこから後の処理については、やっぱりスコープ外だと思います。時間は何分とは言えないと思いますけど、そういう個人の能力の中である程度できるものは、全部入れておいたほうが安全ではないかと思います。

(室崎委員)

荒卷委員の言われることもそのとおりなのですけが、あまり無制限に時間を考えれば色々なことが起こるので考えられない、というのはその通りです。しかし、火災を考えると時間軸が長くなるから、火災を対象としないという結論は間違いです。直後でも、揺れている最中であっても。例えば、ローソクを使っていた人はそれを消すべきかどうかということはあるでしょう。マイコンメーターがあるから消さないでいいと判断するかどうか。あるいは超高層ビルでは、放っておくと大きな火事が起きるかもしれないので、安全確認は、揺れている間なり、揺れた直後の5分間ぐらいはしないといけないということになってくるかもわからない。

 それは、火災かどうかじゃなくて、やっぱりどういう行動をすべきかという中にはいるかと。今、林先生は失火防止行動というように言われましたが、通報とか、色々な行為がある。それらは火災という現象ではなくて、やっぱり最優先にどういうことをやるべきかということである。だから、無制限に時間を延ばして考えるのではない。揺れが終わった後はもう知らない、考えなくて良いいというのか。林先生の意見は、少し広めて、揺れが終わってからある程度のところまでは考えようと。だから、そこで、ぷつっと切って、それ以外は知らないというふうなとらえ方をするのじゃなくて、揺れが終わった後の、少し、後遺症でもないですけど、影響を見ながら、揺れが終わるまでの行動を考えようというご指摘のような気がするので、あまり矛盾しているようには思わない。

(田中主査)

今のお話を伺っていると、何分とか何秒とかというオーダーではなくて、目的関数という言い方をされていましたけれども、ある一連の行動をやる上で、それぞれの時点で逆に何ができているほうが良いのか、と議論の仕方の土俵を少し広げてやったほうが良いだろうということだと思います。そういう中で見ると、やはり決定的に震度の強さとか卓越周波数とか周期がどれぐらい続くのかというのは、どこかで考えておかなきゃいけない。それから、やっぱり場所の問題というのは出てくると思うんですね。

 あと、もう一つ今の話の中で、ここはもう1回はっきりさせて注目しておいたほうが良いということは、単に揺れて驚きましたという話ではなくて、こういう対策を入れてみたら効果はどれくらいあったのかというような効果測定についても議論しておいたほうが良いのだろうという気がいたしました。

 その辺りを含めて考えていくと、ますます対象ケースが大変だなという気がしました。絞るほうで何か良いアイデアもあれば、それも含めて教えていただければと思います。

ところで、ここで、一旦、この議題についての議論を打ち切らせていただきます。次の議題では、今までのいろいろな推奨行動をまとめて頂いています。これを説明をして頂いて、それを含めて1番についての議論があればして頂く。もしそれがないようでしたら、実験映像を見て頂いて、またトータルにご議論をいただくということで進めさせていただきたいと思います。

 それでは、推奨行動のご説明をお願いいたします。

(田村係員)

それでは、参考資料について説明させていただきます。

 まず、参考資料1-1をご覧ください。文部科学省より去年、教材として学校に配付されております資料です。2-2-2ページでは、教室にいる際、地震時に机の下に潜るとか、あと、校庭や体育館にいるときは真ん中のほうに集まるようにと指導がなされております。

 次に、参考資料1-3は、内閣府から平成16年に出されております指針です。こちらの43ページの解説の2では、住宅の耐震性能に応じた避難が紹介されております。まず、住宅の耐震化が確保されている場合には圧死等は考えにくいため、揺れがおさまるまで住宅の中で待機するように。また、住宅の耐震性に問題がある場合には、丈夫な机やテーブルの下で身を守るようにと、退避行動について紹介がされております。39ページの解説の3では、住まい方の工夫として、就寝時の場所は、2階建ての住宅ではなるべく2階で就寝するようにと、どこの場所で就寝したらよいかということも紹介されております。

 参考資料1-4は、消防庁の「わたしの防災サバイバル手帳」という資料です。こちらの13ページでは、震度ごとに人がどのような状態に陥るかということが書かれております。例えば震度5強では、人が非常な恐怖を感じるとか、多くの人が行動に支障を感じるということ。また、震度6強になりますと、立っていることができず、はわないと動くことができないということなど。

 参考資料の1-5は静岡県の「地震防災ガイドブック」です。こちらの13ページでは、緊急地震速報が起きたらどのような行動をとるべきかについて紹介されております。家庭では、無理に火を消そうとしない、慌てて外に飛び出そうとしない、また、頭を保護し丈夫な机の下などに隠れる、という避難行動について紹介されております。

 参考1-6は、外国人向きにも読めるように、5カ国語で書かれています。内容は、静岡県の資料と同じような退避行動についての紹介です。

(田中主査)

今のご説明に、何かご質問、ご確認ありますでしょうか。

(室崎委員)

一言だけ。この是非をきょうは議論するつもりはないですが、いわゆる全体が阪神・淡路大震災がベースになって、こういう結論が出ているように思うのですよね。例えば随分昔の十勝沖地震では、子供たちが学校の運動場の真ん中に飛び出したら、そこに地割れがあって、そこに子供がはまって死んだという事例がある。だから、阪神・淡路大震災だけの事例を調べるのではなくて、その前後の違ったタイプの地震とかの行動も踏まえながら、チェックするということが是非必要だろうと思います。

 それからもう一つは、いわゆるこういうパンフレットは全部ハウツー物です。本当にハウツー物で良のか。推奨するにしても条件を挙げる。だから「住宅が大丈夫な場合の安全は?」ということなどの場合分けをし、すごく難しく、複雑になる。臨機応変、その時々で、先ほどの荒卷さんの言うところの状況によって、適切な行動が決まってくるということに、こういうハウツー物の書き方がほんとうに良いのだろうか?最終的に、この委員会で、これのニューバージョンをつくろうとしているのなら、必ずしもハウツー物は適切ではないかとも思います。

(田中主査)

ハウツー物以外というと、どんなイメージでしょうか。

(室崎委員)

先ほどの林委員のアラートとノティフィケーションです。アラートといったら、「逃げろ」ということです。だけど、ノティフィェーションというのは、山が崩れてくるぞということを知らせる。その人はその自分の置かれた状況で、山が崩れるなら、自分は家の中にいるかどうかということを自分で判断をする。むしろ状況を与えるということだと思う。答えになっているかどうかよくわかりませんが、多分、林委員のさっきのアラート・ノティフィケーションは、そういう意味だと理解をしています。

(林委員)

少しおしゃれに言うと、ハウツーで言っているのは、専門用語ふうで言うと、オペラント条件づけというものですね。こういう状況があったらこういう行動をしなさいというのを組み合わせて、地震が来たら火の始末とか、何かがあったらこうだという、そこを対連合させてやっている。だけど、「地震が来たら」というのが抜けているところに、10個ぐらい並んでいます。何しなさいと言われてもだめなのですよ。「人が学ぶということ」とかいう本でも、そういうのはやっぱりだめであると書いてある。生きた知識にするためには、構成的アプローチにて、学習を一生懸命しなさいと。そうすれば、自分がそれまでに持っている知識に新しいものがリンクしていき、初めて生きた知識になると。だから、「試験前の一夜漬けの暗記はすぐ忘れてしまうことは皆さんの経験にもあるでしょう。忘れていない場合でも、本当に使うべきときに使えないことが多いのです。」ということに近いものに、実際はなってしまっている。

 大事なのは、どういう状況が起こったときに、どういうふうにすれば良いというのを結びつける。上手な人とかよくわかっている人というのは、自分がそれまでに持っていた知識体系に新しい知識の要素をリンクさせて、それで解釈ができる。そういう意味で、知的に攻めていくとすると、創造的なというか、構成的なアプローチを使った教育なり、ノティフィケーションの仕組みみたいなものがあって、初めてアラートが生きると説明したほうが良いのじゃないかなと。これだけだと、どうしても何か不足している。

 オペンラントというのは、犬に芸を教えるとか、ウグイスがおみくじを持ってくるとか、については良い。ですけど、人間は必ずしも、そうは動いていないというのが最近色々ろわかってきた。やはり構成的にうまく既存の知識体系の中に、こういう災害のときの、特にこの場合は地震ですけど、地震のときの振る舞いということをリンクさせる。

 例えば、机の中に入れと言われても、机がないところだったらどうしようみたいなことがある。逆に何が落ちてくるのか、例えば今度のE-ディフェンスで見られれば、何か防ぐものは欲しいということで、自分なりの問題解決ができる。そうすると、何が危険で、どうすると安全になるかということを、その人がその場の中で問題解決できるような仕掛けということを入れられる。そのシンボルが「地震が来たら机の下に」とかということなんだということまでわかってもらえると、生きた知恵になるのだろうなと思う。

(田中主査)

ありがとうございます。

 最近、「ブロック塀に注意」と書いてあるんですけど、宮城沖地震のことを知らない方は、何でブロック塀なんだと思っているところがあると思うのですね。そういう原因と対応指針という部分と、せっかくE-ディフェンスもあるので、これはできないよと、これはやろうと思ってもできないよというのをどんどんたたみかけていくこともあるのかもしれない。というのと、一種の防災教育的な部分ですね。と同時に、やっぱりワンアクション的なものも要るのかもしれない。その辺は少し広げて、今までのだけでなく、もう少し有効なものもぜひ考えていきたいというご指摘だと思います。

(国崎委員)

先ほどの色々ご紹介いただいた、こういったリーフレット、パンフレットなんですけど、私は以前から気になっていたのですが、先ほどの時間軸に範囲をどこまで広げるのかというところにもかかわってくるのですが、大きな地震の後には必ず大きな余震が来るんですね。ところが、こういったものに関しては、余震のことは全く触れていないのです。なので、国民の、市民の方々の安全行動とか退避行動の中には、余震は欠落しているのですね。ですので、余震のところも、私はやはり含めたほうがいいのではないかと。特にこういった調査研究の成果をもとにというところであれば、そういう知見を国民に出していったほうが良いのではないかと思います。

(田中主査)

ありがとうございます。ちなみに静岡県の資料には余震の話が入っていま。一覧表の整理をつくってもらったほうが良いかもしれないですね。どういう表現をしているのか。みんな、基本的には慌てて外に飛び出さないようにというのは共通だけれどもとか、何か比較をしていただいたほうがわかりやすいかもしれません。

 それでは、実験映像を見ていただいて、そこから、どんなことを検討するのかというのを少し絞れればと思いますので、その議論に戻っていきたいと思います。

(富田補佐)

それでは、資料1-7をごらんいただきたいと思います。E-ディフェンスによる実験映像については、 1木造住宅実験について、2学校建築物等のRC造について、3高層建築物について、4ダミー人形の実験について、分けて説明させて頂きます。

-(映像の説明は省略)-

(田中主査)

実験映像を見ると、実際に乗る気力がなくなってしまいました。紹介していただいた映像は、室内風景が中心でしたので、建物の層破壊というときにどうするかというような話は、少し議論しにくいかもしれません。

 見ていると、かなり建物の耐震にもよるし、揺れの程度をどこに置くのかにもよる。推奨行動は、震度7と5じゃ全然違いそうだ。震度7だと行動することも出来ない気もしてきました。いかがでしょうか。今のビデオを見ていただいて、中埜委員、小林委員、ご感想はいかがでしょうか。

(中埜委員)

感想になりますが、基本的にはやっぱりもともと家具を止めるなり何なりしないと、もう対応のしようがないですよね。それで、建物全体を免震装置の上に乗っけるか、あるいは個別だったらば、機器を免震装置、除震装置の上に乗っけるかといったようなことで対応するとかということをする。建物自体ですと、耐震性を確保したもので、まず対応して、その上でどうするかということが一番最初にお話がありましたけど。それと似たようなことで、家具なんかも、何もとめていないものを相手にして逃げようと言っても、それは恐らく何もしようがなくて、まずは何かをしましょう。ですから、どなたにどういうふうに、こういう退避行動を推奨するのかということの前に、まず、こういうことが起こるのだということを知ってもらうというのが非常に大事。対応としては、まずは、家具をとめるなり何なりということが第一義的に重要ですといったようなことを示した上で、その次に何ができるのかといったようなことを示す。そうでない限り、きっと元も子もないといったようなことになってしまうのではないか。これが一点目です。

 次に、幾つか、先ほどの映像の前に少しパンフレットのようなものを見せていただきましたけれども、これもなかなか難しいのは、自分の建物が耐震性があるのかどうかということを知った上で行動することが大事ですと言われても、自分の家ならまあ何とかなるかもしれません。自分のオフィスならまだ良いです。けれども、ふだん活動の中心は、かなりの部分がよそといいますか、全然知らないところで行動しているようなこともある。それをさて、入るときに一々耐震性があるかと思っているかと言われると、私は割と気にしているほうですけど、ほとんどそのチェックはできていないですよね。入り口のところに耐震補強しましたなんていう、こういうプラカードを張ってあるのもありますけれども、まだまだ数は少ないです。見た感じ、建物は新しそうだなと思いながら入っているけれども、いざ揺れ始めたときどうなのかって。我々は、よく被害調査なんかに行ったときに経験するんですけれども、様子をちらちらと見ながら、どうなるかな、これから揺れが大きくなるのか、その時どうするのかなと思いながら、揺れを観察するけど、これ以上大きくなったらどうしようもないなと観念しながら建物の中にいるようなこともあります。実際問題としては、建物の耐震性能があるかどうかをよく知っていることが大事ですと言われても、なかなか行動しにくいかなという気がします。

 それから、大きな地震のときは、建物がぶっつぶれるか、つぶれないかというようなことが非常に大きなポイントになってくるでしょう。けれども、実際は、退避行動が必要になってくる、なってこないといったようなことが非常に問題になってくるのは、大地震の激震地はもちろんそうなんでしょうけど、それよりも広範囲に周りにある地域で、そこそこの揺れであるといったようなところ。これは、大きな地震のときであっても、非常に広範囲に、そこそこの揺れというものを経験する地域というのがあって、また別の見方をすると、そこそこの揺れの地震というのは、大地震のときよりももっと頻度高く起こり得る可能性があるといったようなことがある。ですから、一番効果的なターゲットとすべき揺れの程度というのは、激震ではなく、もう少し下のレベルというところを少しターゲットを当てたほうが、ほんとうは効果的なのではないかなと思います。

 激震のときにギブアップというわけではないのですけれども、対策の効果が実際に非常に得られるというのは、激震地の周りの広範囲にあるエリアだとか、頻度がもうちょっと高いであろう、確率的にもうちょっと起こるであろうと思われるような、そこそこの揺れの地震かと。そこそこというのはどれぐらいかと言われるとなかなか難しいですが、そこそこの揺れの地震をターゲットにするといったようなことがあり得るだろう。と思うと、一番心配なのは、倒れてくるとか、それからよく物が落ちてくるというのは一番大きな問題。ですから、体育館なんかだったらば真ん中に集まりましょうって、さっきパンフレットに書いてあったんですけど、多分あれは一般的には間違いだと僕は思っています。真ん中に集まると、上から物が落っこってきてだめということになるので、もし落ちてきそうな物があるような体育館であれば、例えばギャラリーがあれば、ギャラリーの下に入るとかといったようなことを本当はしなければいけない。体育館が、どういうものがぶら下がっているかというようなことを、例えば学校の先生によく見ていただいて、「こういう物があるときにはこういうふうに落ちるということが起こりますよ」ということをお伝えする。それで、「どういうふうに逃げればいいか、それだったらば必ずしも真ん中に集まると良いというわけではないですね」というようなことを、このときはこうしろ、ああしろって単純に言うんではなく、「こういう状況であるから、この体育館はこういうふうにしたほうが良いいですね」というようなことをちょっとずつためていって、対応できるようにして頂く。こういったことが必要になってくるのかなと思いました。感想で、あまり、だからどうしろというわけにはなかなか行かないのですけれども。

(小林委員)

まず、大変さまざまな思いの起きる資料をありがとうございました。教材として活用もできるなと思いながら、この生々しい資料だと、子供たちの住宅事情を考えるとやっぱり使えないかなとも思いました。学校にいるときに大きな災害が起きればまだ良いんですけれども、各家庭では条件が様々で広いところにゆったり暮らしているという子供たちばかりではありませんから、大変複雑な思いで資料を拝見いたしました。

 また、ちょっと話がそれるかもしれないのですけど、学習指導要領に安全という文言が入ってきて、大変よかったと思いながら、どれだけ現場で実行に移されていくか。安全といっても、交通安全、生活安全、災害安全というものがありますので、今回の教科書の中にもどのような形で取り上げられていくんだろうというのを重ねながら拝見いたしました。なかなか防災を取り上げてくれるところは少ないんじゃないかな。ややもすると生活安全に重点が置かれるのではないかなというような思いもしながら、期待したいという思いと、どれだけ指導がされるのだろうと。そういう場では、やはり今後出されるであろうこの映像にかかわる資料も、現場では大変期待したいし、それから、ハウツーだけではなくて、危険の予測トレーニングができるような指導資料ができるとありがたいとは感じました。

 それから、今度、現場を考えると、今日、映像で見た以上に教室はもっと狭くて、もっと物が多いと。そしてさらに、ほんとうに恥ずかしいのですけど、テレビなどをベルトでとめているようなところは一瞬にして落ちるなということも思いました。それから、通常の教室ならまだ良いのですけど、家庭科室や理科室や音楽室、図工室などは、場所によっては机も置かないで指導している場所もある。それから、専科教室は机の下には入れない構造になっていますね。そうすると、実際には子供たちの逃げる場所がないというようなところもあります。給食中にもし大きな揺れが来たらどうなるんだろうか。それから、一番子供たちを大事に扱わなければいけない保健室などは、さまざまな器具がありますので、もう保健室はアウトだなというようなことを思いながら拝見いたしました。

 現場では、耐震補強がすすめられておりますが、まだまだ、ガラスへの対応などもできていません。物の固定も十分ではないというので、今日の資料を見せていただいて、危機感がさらに増しました。ありがとうございました。

(田中主査)

ありがとうございました。

 司会の不手際で、あと3分ということになってまいりました。やはり検討対象は少し絞りたいなという気もしております。けれども、先ほどのお話を伺っている範囲では、ここだというところに絞り切れない気もいたします。個人的には、今の映像を見ると、心理的影響もなくて、何ができるのかというアクションレベルの話でしかないところから始めるのではないかと。驚いているとか、驚いていないという世界じゃないような気もします。どういうアクションならとれるのかというだけで良く、あとは場面ですね。住宅、オフィス、屋外とかいろいろありますし、建物をどういうふうに見るのか。これは、もし何かこうだというご意見があれば承らせて頂きます。もし、それがないようでしたらば、事務局で少し今日の議論の整理していただいたのをメールで頂き、そこに皆様方にコメントして頂くという形で進めさせて頂きます。

 もう一つお願い事項でございますが、推奨行動についても、本日、多数ご説明頂きましたが、今後とも事務局で集めて頂くことになっております。もし委員の方でもお気づきのものがあれば、教えていただければと思っています。

(林委員)

もし可能であれば、例えば有名なのはNHKの神戸局の、キックバックの揺れの初めから映像、コンビニが店舗を写している映像を集めていただければと思います。そういう意味では、地震が発生した瞬間の映像というのは、随分たくさんいろんなところにあるはずだと。それを収集してみて、そこの中の人の動きというのは、実は期せずして、ある種の社会実験に参加してくれていると見られる。そこに、ハザード側の情報というのをつけられるわけですよね。どんな揺れの状況になったかみたいな。決めうちで、これというのは多分無理だと思うけれども、どのくらいの時に、どういうことが起こるのだと。色々な状況の中で色々な情報があるとしたら、そういう調査も可能と思うのですけれども、どうなんでしょうか。

(田中主査)

乗らなくても、ある程度情報が集まる可能性があるということですよね。ちょっと色々と難しいこともあるかもしれませんが、アプライというか、トライをしていただければと思います。

 次回は、また、自治体の取り組みもご紹介いただけるようにも伺っておりますので、またそのときに含めてご議論いただければと思います。

(国崎委員)

こうした映像をご紹介いただくときにぜひお願いがあります。JMA神戸の100%入力とか、小千谷とかJR鷹取とかSN入力とかの説明は、専門知識がないと、何を言っているのか全くわからないんですね。一般の人たちは、これは震度幾つの大きさなのと聞きたいときに、神戸100%ですと言ったところで伝わらないので、ぜひそういった部分もちょっと配慮していただけるといいと思います。お願いします。

(荒卷委員)

映像を見てい感じるのですが、転倒防止の関係でいろいろと指導している中で、今一番困っているのが、事務所でフリーアクセスの床の場合です。一般的に、フリーアクセスになっていなければ、床荷重というのは決まっています。けれども、フリーアクセスの床というのは、特にカウンター等を置いた場合には、転倒防止措置がとれないところがあります。要するに床固定ができないという意味で。ですから、それが非常に動いてしまう。映像でのピアノと同じように、相当動く可能性があります。転倒防止という観点から、床の今の状況をある程度考慮していただけるとありがたいなと思っています。

(田中主査)

何か、人間の退避行動より、だんだん家具の固定のほうに論点が移ってまいりましたけれども、ある意味本質的な部分もあります。その点についても見ていかなきゃいけないと思いますので、目配りはしていきたいと思っております。

 それでは、時間が過ぎてしまいましたので、事務局に司会をお返したいと思います。

(富田補佐)

では、次回は7月15日の16時から、第3回目の作業部会は、8月13日の午前中10時からを予定しております。また、次回には、荒卷委員から30分ほど、横浜市の取り組みにつきまして、ご説明をいただく予定でおります。

(田中主査)

それでは、以上をもちまして閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

以上

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)