原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力基盤強化作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成21年6月30日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 研究開発局会議室1

3.出席者

委員

田中主査、市村委員、井上委員、小川委員、小澤委員、高橋委員、丹沢委員、服部委員、村上委員、山名委員

文部科学省

櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、坪井開発企画課長、山野原子力計画課長、中澤原子力計画課課長補佐、稲田原子力研究開発課課長補佐

4.議事録

【田中主査】

 それでは、定刻になりましたので、第4回原子力基盤強化作業部会を開催したいと思います。

 本日は、お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日の議題や配付資料につきまして、まず事務局からご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 本日は、今までの3回の議論をある程度集約するということで、中間整理的な議論をしたいと思っています。

 配付資料は、事務局が用意した資料1「原子力基盤強化作業部会中間整理(案)」、そして机上配布資料として、井上委員からの中間整理(案)に対するコメントについての資料、また、今日は長﨑委員が欠席でございますが、中間整理(案)に対するコメントをいただいておりますので、そちらについても参考までに配付しております。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、議題1、「原子力基盤強化作業部会中間整理(案)」についてです。事務局からご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 今までいろいろな議論があったことを集約するということで、「原子力基盤強化作業部会中間整理(案)」を用意しました。

 理念的とか総花的なものよりも、むしろ具体的な施策や検討の方向性について議論していったらどうかということでまとめてございます。

 また、項目といたしましては、今までも議論してきた人材、インフラ、技術移転・産業化、原子力機構の基盤機能の強化という4項目で、それぞれでリンクするところもありますが、それぞれに整理した上で、早急に対応すべき課題と中長期的に検討すべき課題という2つのカテゴリーでまとめました。

 意図としては、いろいろな具体的な施策のアウトプットをタイムリーに出していくことが重要ということです。例えば、早急に対応すべき課題は、早々で言えば、来年度予算要求に対応すべきものもあれば、来年4月から原子力機構は新しい中期目標、中期計画になり、その検討もかなり進んでいますので、そこに打ち込んで具体化を図っていくというものもあります。

 また、中期的にいうと、原子力政策大綱の改訂作業がいつ始まるかは、まだ原子力委員会で検討中ですが、そういう方向の中で入れてもらうようなこと。また、もっと長期的にいろいろ考えていかなければいけないこともあろうかと思いますが、そういうことについてまとめてございます。

 さらに、すべてをこの作業部会で具体化まで議論するのではなくて、個々の課題について検討するのによりふさわしい場がある場合には、そういうところに検討を促すということ。また、個別論としては、原子力機構の中できちんと考えるべきというように、それぞれのところに検討を促すというようにしたらどうかと思っています。

 今日まとめたものでまとめてしまうのではなくて、今日の議論も踏まえて、もう一回作業部会を開催して、中間的な整理をしたらどうかと考えてございます。

 そういう考え方のもとに、2ページ目にいきますが、これももっとよく検討しなければいけないところもありますが、個々の課題の前に原子力の基盤強化の重要性ということについて簡単に整理したらどうかということで、まだ箇条書きベースですがまとめています。まず、このような作業部会を立ち上げた背景といったところにも関係するわけですが、背景としましては、今後の原子力の展開を考えた場合には、原子力発電を今後とも基幹電源としていくということ。そして、今後は軽水炉体系に加えて、再処理や高速増殖炉、高レベル放射性廃棄物処分という多様な技術体系を我が国においてきちんと開発・維持していくことが必要になるということでございます。また、国際的には原子力ルネサンスの動きがあるということ。

 さらに、国内の関係機関の現状を見ると、大学の中では学科が減少していく、人材の供給力が弱体化していく、黎明期の原子力人材がかなり高齢化を迎えている、昭和30年代から使ってきている施設がかなり老朽化しているといったこともありますし、いろいろな分野で国、電気事業者、メーカーの三すくみ構造みたいなものの危険性があるということでございます。

 研究開発の状況を見ると、いい悪いはもちろんあるのですが、人材や予算のリソースの配分が大型プロジェクト中心になっているということで、いわゆる基礎・基盤のような分野がかなり弱体化してきているということ。あと、実現場で核燃料や高レベル廃棄物などを取り扱うような、狭い意味での原子力の真ん中部分がかなり弱体化しているようなことがあるということ。あと、それぞれのプロジェクト研究もある一定の条件のもとの線形モデルを前提としているものですから、応用動作的なところが弱いということ。それから、真の意味の産学連携が不足しているということ。

 そのような背景を踏まえて、今後の方向としましては、我が国の原子力産業を支えるとともに、事業化を促進していくための、軽水炉から高速増殖炉、また核燃料サイクルの基盤の維持・強化が必要であるということで、大型プロジェクトも重要ですが、基盤強化もきちんとやっていかないといけないということ。最終的には、原子力機構を中核とした真の産学連携でall-Japanでの基盤強化が必要であるということです。

 具体的には3ページ以降です。具体的な課題として、人材のところでは、よく言われていることですが、まず早急に対応すべきということで、Action1としましては、大学レベルだけでなくて初等中等教育段階からの原子力教育の強化です。これにつきましては、既に文部科学省だけでなく経済産業省とも協力して、また文部科学省の中でも我々のような原子力部隊だけでなく、初等中等教育局にも協力いただきながら、立派な副読本をつくるというようなことを考えているとか、教員研修などで原子力教育の取り組みを強化するということです。

 Action2としましては、大学レベルの機能強化でございます。原子力人材育成プログラムは3年目を迎えているわけで、今年は中間評価の時期にも当たりますが、中間評価も踏まえてプログラムの内容が悪ければ改善もするし、内容的にも全体の底上げとトップの育成を考えながら拡充を図っていくということでございます。

 またあわせて、原子力人材育成プログラムの中で原子力学会が今行っていますが、「コアカリキュラム開発プログラム」で標準的な教科書をつくってございます。そこらについて、実際上の活用方策について検討を行うべきではないかということでございます。

 Action3が若手研究者への支援の拡充でございます。これにつきましても、昨年度から原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブという制度ができましたが、その中に若手の支援策がありまして、それの拡充を図っていくということです。

 Action4としては、それぞれの立地地域、ここに例示を書いてますが、例えば、六ヶ所村であれば東北大学がブランチをつくりました。東海村であれば、もちろん東京大学のブランチはありますが、あわせて原子力機構と連携した体制であるとか、敦賀市については福井大学が京都大学や大阪大学と協力しながら原子力の研究所をつくっていく構想があります。そういう構想に対して、いろいろな機関からきちんと支援をしていこうということでございます。

 次の中期的な課題につきましては、Action1ということで、これまでの議論でも出てきましたが、原子力機構と大学との関係は、今までどちらかというと個人の力量とかに依存する部分がかなりあったということで、組織対組織とか機動的に動くという意味では不十分な点があったという指摘もあるわけですが、そういう反省も踏まえて、もう少し組織的・機動的に動けるような方策について検討するということでございます。

 Action2は退職者人材ということで、いろいろなところで黎明期の優秀な人材が退職するわけですが、そこらの活用策について、関係団体とかいろいろな関係機関と連携しながら検討を行ったらどうかということでございます。

 次に5ページのインフラ関係でございます。まず最初のAction1としましては、特にここは原子力機構中心のことを書いていますが、まず原子力機構にはいろいろ施設があるわけですので、それらの施設がそれぞれ、今、どういう状況にあって、今後のニーズはどうなっているかをきちんと整理した上で、それぞれの施設ごとに、今後どのように利用していくか、必要であれば改造をどうやっていくか、止めるものは廃止措置計画というように、きちんと一度整理したらどうかということでございます。

 またあわせて、それぞれの施設が外部利用という観点からは使い勝手が悪いとか、いろいろな問題も指摘されているところですので、海外の事例も比較しながら、そこらの問題点の整理を行った上で改善策の検討を行うことが出発点としてあろうかと思います。

 Action2としましては、そこにも関係しますが、役目を終えた施設については計画的に廃止していくということをきちんとやっていくということ。中途半端にしておりますと、稼働率が低かろうが同じぐらいコストがかかるというようなことがありますので、止めるものは止めるということを考えた上で計画的・合理的な廃止措置を進めていくということです。 あわせて、そのためには、昨年、法律で原子力機構が行うことになった低レベル放射性廃棄物の処分事業についても、「着実な具体化」と書いていますが、さらに言うとしたら、経済的にも合理的な事業を着実にきちんと進めていくことが必要ということでございます。

 Action3としましては、そういう原子力機構の施設の外部利用をもう少しいろいろな意味で進めていくために窓口の機能強化を図る、コーディネートを行うような仕組みをもう少し強化するということで、そういう問題点も踏まえながら具体策を実施に移していくということです。

 Action4は、今まで原子力機構の施設の外部利用は、主として旧日本原子力研究所(旧原研)の施設で取り組んできたところですが、片や旧核燃料サイクル開発機構(旧サイクル機構)の再処理関係の施設などはかなり限定的です。そういったこともあり、単純に貸しラボ的に開く、共用施設として開くという意味ではなくて、むしろプロジェクト研究を産業界なども巻き込んでいかに連携していくかも考えた上で、外部との活用策を検討していくということでございます。

 Action5は、いろいろなことをやろうとしたら、ある程度資金も必要になるということで、これにつきましても、昨年度からはじめました原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブで、こういったホット施設を使った研究課題に対するファンディングを小さいながらも用意しましたので、そういったものを拡充していくということでございます。

 次の中期的に検討を要する課題ということで、まず1番目が、今後、我が国で戦略的に整備すべきホットなインフラとしてはどういうものがあるのかということを検討するということで、ここはこの作業部会としてのメインの一つになろうかと思います。

 これも単なる大きな共用施設をつくっていくという発想もあるかと思いますが、それに加えて、all-Japanで産業界、原子力機構などを巻き込んで今後何をやっていくのか、そのときにどういう施設が要るかという観点から、将来、我が国として絶対に要るようなものはどういうものがあるかをまず整理するということでございます。その際には、ハードウェアだけではなく、まずはつくる段階でいろいろなニーズを巻き込むようなall-Japan体制で設計や整備を行う方策とか、当然、できた後にどうやって戦略的に有効活用を図っていくかという方策についても、あわせて検討するということでございます。

 Action2としましては、やはり既存の施設が海外とかと比べると稼働率が低いということや、何か頼んだときに実際に使えるまでに長期間かかるとか、いろいろな問題があるわけです。そこも、最後は安全規制がどうのこうのという以前に、技術的知見を有する原子力機構として、もう少し上手に進むような対応を検討したらどうかということでございます。

 Action3も繰り返しになりますが、真の意味で外部に開かれたインフラの活用方策について、これはAction1と絡むような話ですが、考えたらどうかということでございます。その際には、単純にハードをどう使うかという以前に、そういうハードを使って、我が国としてどういう研究開発を産学官連携でやっていくかという観点から考えることが重要であろうということでございます。

 次に7ページの技術移転・産業化です。総論のところは省略いたしますが、ここで早急に対応すべきことは、まず第一は、既に移転している軽水炉再処理、濃縮、また、今、建設が進んでいるMOX加工については、当然ながら原子力機構と日本原燃とかの関係でいろいろな枠組みがあるのですが、そこがきちんと機能しているかどうかを関係者で一遍レビューしてみる必要があるのではないかということでございます。レビューした上で、何か改善点があるのであれば改善を図っていくことがまず第一点でございます。

 Action2としましては、今後の技術移転を考えるようなものはどうやっていくかということで、高速増殖炉については五者協議会で関係者はいろいろやっていますが、そういうことも参考にしながら、ほかの分野では高レベル放射性廃棄物処分であるとか、デコミッショニングについても当然ながら今後の技術移転とか産業化はあるわけなので、それらについても、今の仕組みをレビューした上で、必要であれば高速増殖炉の仕組みも参考にして連携を強化するような枠組みを考えたらどうかということでございます。

 Action3は、原子力機構で行っている技術開発段階から、もう少し産業界を巻き込んだエンジニアリングジャッジメントであるとか、最終ユーザーとしての要求事項を明確化するということで、研究のための研究にならないように、研究開発段階からもう少し産業界からの評価の強化を考えたらどうかということでございます。

 Action4としては、これも同じですが、技術開発段階から将来のことを考えて、成果をどうやってまとめていくか、データベースにしておくかということ、あと知識伝承のための仕組みをどう考えていくかということについて、きちんと検討していくということでございます。

 Action5としましては、大きなプロジェクトを進めるに当たっては、卓越したリーダーの存在が重要であろうということで、今まで原子力機構の中では、変な言葉ですが、「ミスター○○」という人がなかなか出てこなかったという土壌があるわけですが、そういうものを生み出すような職場環境とか制度について検討すべきということでございます。

 中期的に検討を要する課題としましては、まず一つは、今までの濃縮等の教訓や反省も踏まえた上で、今後ある程度想定すべき分野なども考えながら、モデル的なシナリオを考えてみたらどうかということです。考えた上で、それをきちんとやるために重要配慮事項も整理するということでございます。

 Action2が、Action1とも絡むわけですが、そういう技術移転・産業化を考える際には、単純にドキュメントを渡しましたというだけではなくて、「人」とか組織の移行が重要であるということなので、そういうことが円滑にできるような方策について検討するということでございます。

 次の9ページですが、最後に原子力機構の基盤的機能の強化です。これは原子力機構が自らきちんと考えてくれればいいということで並んでいます。

 まず早急にやるということでは、Action1として、原子力機構の経営企画機能の強化です。当然、やっている技術開発がかなり幅広いものですから、全体を見渡すようなマネージメント力、地元や国際関係など、いろいろ配慮すべき事項があるわけですが、そこらを踏まえた戦略的な機能強化が原子力機構に求められるということでございます。

 Action2は、その中の一つである国際ということで見ると、ここもいろいろ考えると、すべて日本の技術というのは、昔で言うような自主技術というよりも、今後考えるのは戦略的な国際協力みたいなものもあるし、プルトニウムとかを使う分野ではどうしても核不拡散動向が重要であるということなので、そこらを見渡せるような機能を強化したらどうかということでございます。

 Action3で旧原研、旧サイクルの実質的な統合の加速ということで、これも全体でやると総花的になるので、とりあえずは、今後、気合を入れないといけないと言われている高速増殖炉とか再処理の分野で旧原研の人材も活用して、原子力機構の中の体制強化を検討したらどうかということでございます。

 Action4としましては、既に一部動いていますが、原子力エネルギー基盤連携センターという民間からのイニシアティブも使いながら技術開発を行う仕組みがあるわけですが、そういったものをもう少し機能強化して民間企業の参入を促進するような制度にしていったらどうかということでございます。これについても、この制度が動いているのは旧原研の部分だけなので、旧サイクル機構部分も含めて考えてはどうかということでございます。

 最後の10ページです。最後は全体をまとめるような話になるかもしれませんが、我が国唯一の総合的な原子力研究開発機関は原子力機構なわけですから、そこを中心にして産学官が広く連携して、目標とするワーディングとして、とりあえず書いたのは、世界最先端の原子力拠点、原子力道場、原子力の万屋相談所など、いろいろな目指すべき機能があると思いますが、そのような機能を果たせるような体制にしていくことについて検討していったらどうかということでございます。

 事務局としては、今までの議論を多少項目を立ててまとめるとしたらこのようなものかということでまとめたので、別にこれに決め打ちする必要はないと思うのですが、とりあえずまとめてみました。

 この中間整理(案)は事前に各委員から意見もいただいていますし、今日ご欠席である長﨑委員からは、最後の資料がそうですが、原子力機構が中核になるなんて決まっていないのではないかというコメントもいただいていますが、ただいまの説明も踏まえていただきまして、またいろいろご意見等をいただけたらと思います。

 事務局からの説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からのご説明を踏まえまして、「原子力基盤強化作業部会中間整理(案)」について議論したいと思いますが、井上委員から「中間整理についてのコメント」を机上資料でいただいていますので、まず井上委員からご説明をいただけたらと思います。

 よろしくお願いします。

【井上委員】

 それでは、事前に中間整理案をお送りいただいておりましたので、気がついたことをコメントとして書かせていただきました。今、山野課長からご紹介があったものは今までの議論を非常によくまとめられていると思いますが、二、三、この資料に沿って説明させていただきたいと思います。

 まず、原子力人材の育成についてです。「原子力教育」という前に「エネルギー」も今後は入れていただきたい。いわゆるエネルギー・原子力教育です。 2つ目でございます。終わりのほうにあったと思うのですが、いわゆる第一線で活動してきた人の大量退職は既に始まっております。実際は退職される数年前から第一線を退かれるのが普通でございます。したがって、原案を見てみますと、中期的に検討する課題になっておりますが、これは早急に対応すべき課題ではないかと私は考えております。

 例を申しますと、核燃料の専門家はほとんど退いており、実際、自分で物を触って、実体験できている人は大学の先生も含めてほとんどいなくなっているのではないかということ。もう一つ、同じような分野として放射化学の分野があります。この前、ドイツに行きましたら、ドイツも原子力、核を止めていますので、この分野は大学で教えることができる先生すら欠けてきている状況だということを聞いております。この辺は早急に手を打つべき対策ではないかと考えます。

 その次に、研究開発のインフラについて早急に対応すべき課題のAction1にありましたインフラの利用状況、ニーズの調査についてですが、これは、先ほどの説明にもありましたように、なぜ効率的に利用できないのか。試験の目的と施設内容の合致、使用形態、運用方法、安全規制、スピード、費用等、その辺をしっかりと分析して解決策を提示することが必要ではないかということです。

 もう一つ、ユーザーの利便性向上、施設の外部利用の促進も書かれていたのですが、これはいわゆる「使わせる」という形態は利用者が使いやすいように進めればいいわけですが、使われているのに照射利用などがあるわけですが、利用費用、スピード、規制の面から産業界単独の利用は限られているのではないかと考えます。この前、服部委員から韓国のHANAROでシリコンの照射が行われるということをお聞きしましたが同じ例でアメリカのミズーリ大学にも研究炉がございまして、日本のあるメーカーのシリコンがかなりここに持ち込まれて、実際にそこで照射されています。日本の炉をなぜ使わないかということについて先ほど申したようなことを分析する必要があると思います

 次に、ホットラボ等の戦略的な活用策ですが、これを実質的に進めるには、核燃料サイクルのような国策技術について、原子力機構と外部、外部と申しますと、メーカー、研究機関、大学等すべてひっくるめているのですが、この両者が、いわゆる研究推進への関与、知財等に関して対等に取り組むプロジェクトを推進することが重要であるということです。これをしないと、どうしても原子力機構のホット施設という域を出ないのではないかと考えます。このためにも早い段階でサイクルや燃料開発の戦略マップ(技術戦略、国内協力体制などを含む推進戦略)をつくる必要があると考えます。

 Action5に書かれております、インフラ活用促進のためのファンドの拡充です。これにつきましては、今は国、メーカー他、他機関へという流れが多いわけですが、メーカーなどがもっと主体的に獲得できるような仕組みが必要ではないかと考えます。

 それはどういうことかと申しますと、例えば、国の公募事業を私どもも使わせていただいていますが、使い勝手をもう少し工夫する必要があるのではないか。例えば、今はどちらかというと国がこういう基準であるからそれに合わせなさいということなのですが、相手の支給基準に合わせる。そうでないと、特にメーカーのように公募を受けて統括機関になっても赤字になってしまってなかなか積極的に応募できないという声は聞いたことがあります。だから、その辺の使い方を工夫していただく必要があるのではないかと思います。

 それから、中期的に検討を要する課題です。戦略的に整備すべきインフラとして、私は前に申しましたが、マイナーアクチノイドを取り扱える施設が第一義的に挙げられるのではないか。特に燃料サイクル技術を開発する上です。今は、マイナーアクチノイドはほとんど海外から買っている状況です。だけど、日本でここまで核燃料サイクルを進めていて、それを自前で製造できない。当然、それを使って分離とか物性、製造試験ができないのであり、日本としては何とも情けないのではないかということです。最初に紹介しましたような海外の施設の調査なども貴重な例になるのではないかと思います。

 もう一つここに書いております開かれた研究開発インフラの活用促進については、そのためにはまず良質な施策をつくること。そうしないと皆さんが興味を持って動かない。その一環としてインフラの整備を考える必要があると思います。

 今はどういう流れになっているかを私なりに申し上げますと、もし間違ったら訂正いただきたいのですが、例えば、メーカーが原子力機構の場所を使いたい場合には、原子力機構としてはお金を取って場所を貸すだけです。一方、原子力機構がメーカーを使いたい場合には、メーカーにいわゆる専門技術を備えた作業者として出してくれ、出向に来てくれと。そして、彼らを使って仕事をすることが多いのですが、そうではなくて、原子力機構と他の機関があくまでも対等な形で協力して国策技術を開発する仕組みが必要なのではないかと考えます。そのためには資金の流れが非常に重要でして、メーカーから原子力機構、原子力機構からメーカーの両方向性が必要であり、当然、知財等の権利も共有できるということが必要ではないかと思います。

 残念ながら現状は、先ほど申しましたように、メーカーにとってこの国の資金の利用については、今のところポジティブ思考ではないということです。

 それから、原子力技術の戦略的な技術移転・産業化についてということでございますが、これにつきましては、原子力機構よりもう1段大きいところで、政策、体制を含めて、国と原子力機構の役割、責任の明確化、それからもう1つは、逆にこれも先ほどの報告書の原案にありましたが、メーカーから設計あるいは性能保証のための必要事項の提示、それからユーザーからは使用経験に基づいた要求事項の明確化、以上の3軸が効率的に機能することが重要であると思うのです。どうも今までは一方通行とかすれ違いが多かったのではないか。我が思いは人の思いにあらずということがあるのではないかということです。

 それから、もう1つは、せいぜい数基つくるだけの実用品に対しては、やはりメーカーが製品化していくというのは非常に困難だと思います。これは必要なサポートは国が行うことが必要なのではないかと思います。

これらの点を改善するためには、関係者からなる場所を作り技術移転、産業化のための戦略を構築することが必要であると思います。ただし、その場所についても、それが持つミッションは何であるかということを事前にきちんと議論して、関係者間で共通認識を持っておく必要があるのではないかと思います。

 最後のページですが、評価の強化についてです。これは、常々いろいろな評価をさせていただいていて思うことは、各委員の考え方、それからその人の思いによって、非常に千差万別でありまして、我が国で最もあいまいに行われている行為の1つではないかと思います。

 実際に技術を評価するということは、むしろ厳し目の評価が必要であるが、現状はどうしても甘目になっており、結局そういうことをしたつけが、ものをつくったときに現状としてあらわれてきているのではないかと思います。従って評価に先立ってしっかりした評価基準を定めておく必要があるのではないかと思います。

 次に今日お配りした資料に、これは1つのいい例なのですが、NASAがロケットを開発するときに用いたTRL(TECHNOLOGY READINESS LEVELS)というのがあります。現在の技術状況はどこにあるかというのが、ここの1ページ目の「TECHNOLOGY READINESS LEVELS」の英語の文章なのですが、研究開発から実用化までのレベルを1から9段階まで分けて、それぞれの技術のマジョリティーを評価するということ。それから、1つの開発に対して複数の選択肢がある場合、それを同じ土俵の上でちゃんと評価できるようにするということ。こういうものを作って、アメリカは月に人を送るロケットを開発したということを聞いたことがあります。

 今、GNEPでも、これはウェブを引いていただければ皆さんどなたでも見られると思いますが、このように、これに基づいて、TableのE-2と書いてあるところに、軽水炉の使用済み燃料の処理ということについて、それぞれ大きく3つに分けられています。最初は概念の段階、それから原理を実証する段階、次に実用化の技術をつくっていく段階と、それぞれ分けて、それぞれがどのレベルにあるかということを、しっかり技術を評価しています我が国ではここのところがしっかりなされていないために、その人の主観によるあいまいな技術評価になっているのではないかと思います。

 その次に、原子力機構の基盤的機能について、Action1ですが、総合的経営企画機能の強化ということがありますが、ちょっと今までずっと私は厳しいことを申してきましたが、今求められているのは、現状の改革なのです。そのためには、外部の血と知、両方の血(知)が必要だと思うのですが、この血(知)がやはり必要なのではないかと。そういうことからいって、我が国の総合戦略を構築して進めるための国内知が結集できるような、いわゆる原子力機構、メーカー、関連機関が集まって戦略を構築して、それを推進する機能を考える必要があるのではないかと感じております。

 これについては、今後具体化を考えていかれればいいと思うのですが、原子力機構の中でもいいですが、やはり現有部門とは独立性が強く、現有の組織体に指示ができるようにすることが、必要なのではないかとです。

 そういう意味からいって、Action4にある原子力エネルギー基盤連携センター、私はこれを詳しくはまだ知りませんが、こういうようなことを強化することも一案ではないかと考えます。

 最後に、大きな3のところのAction5のところにミスターという専門家の醸成のための環境整備とありますが、人様の組織のことですから、具体的にここに文章は特に書かなかったのですが、私が従来から申していますように、自ら実際のデータをとって、その中で10から15年程度は徹底的に専門分野を進化させるというようにしていかないとだめだと。

 それから、専門的に進化させた人については、処遇面で、いわゆる同世代の管理畑を歩いている人間と同等以上の処遇をする必要があるのではないかと。そのようなことをして、ほんとうの技術者を育てる必要があるのではないかと思います。

 以上、気がついたコメントを紹介させていただきました。

【田中主査】

 ありがとうございました。それでは、井上委員のコメントも踏まえて、先ほどの事務局からの中間整理(案)につきまして議論したいと思います。いくつかの項目にわたってございますので、その項目ごとに議論し、その後、2ページ目の総論となる原子力基盤強化の重要性と今後の方向についても議論いただきたいと思います。

 それでは、まず1つ目、原子力人材の育成についていろいろご議論したいと思います。約20分時間をとっていますので、よろしくお願いいたします。

村上委員どうぞ。

【村上委員】

 これは、第1回か第2回あたりで、たしか服部委員がおっしゃったことだと思いますが、原子力産業界を担う人材に求められているのは、どちらかというと深い専門知識もさりながら、技術的な深い専門知識もさりながら、ちょっと正確な言葉は忘れましたが、何か実際のプロジェクト遂行に当たり、問題を解決していく能力、総合的な力であるということをおっしゃられた記憶があるのですが、何かそのようなアクション事項というのは、こちらの課題のほうには入っていないようにも読めるのですが、何かそれは考慮されなかったでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 例えば原子力人材育成プログラムでは、まず1つのコアとして、いわゆる昔の原子力工学科のようなところに気合いを入れるということがありますが、それに加えて、本当に人材が不足しそうなのは、例えば溶接であるとか、腐蝕であるとか、原子力の真ん中ではないのですが、実際上、原子力のプラントをつくろうとしたらとても重要な分野が、実はもっと弱っているというのがあって、そっちのほうを支援するようなプログラムは入っています。

 ただ、今おっしゃったように、大きなプログラムをマネジメントする能力ということについては、今の原子力人材育成プログラムには入っていません。もちろんそのようなものが重要だというなら、具体策というのは直ちに難しいと思いますが、そういうことも考えてもいいのかもしれません。

 今日は井上委員もいるので、人材だけではなくて、いろいろな研究費を国から民間とか大学に出していますが、よく使い勝手が悪いと言われます。何を変えたらいいのでしょうか。いろいろな機関の方がいるので、この際ですからお聞きしたいと思います。

【田中主査】

 井上委員、お願いします。

【井上委員】

 例えば、細かい話になりますが、人件費の算定とか、ものを買ったりするときに、こういうものまでは認めるけれども、こういうものは認めないと。そうすると、1つのことをするには、そのものを買わなくてはいけないですから、それは自前で買うということも出てくるのです。

 それから、出張の話についても、所属する組織の基準とはちょっと違うようなことがあります。特にメーカーなんかに仕事を一緒にしていただく場合は、費用についてマイナスは食えないということだと、やはりしんどい思いをさせているということをよく聞きます。

【田中主査】

 あと、いかがでしょう。山名委員どうぞ。

【山名委員】

 人材育成の細かい話は、いろいろ具体案はあると思うのですが、何よりも初回に私は言いましたが、原子力という1つの目標に向かって、学協会や、いろいろな人や学生がそれに目を向けて、着目して、それにある種の意義を感じているという、全体的な風土ができることが一番大事なのです。

 実は、一昔前までは、原子力開発というのは、科学技術調査で原子力機構がやるもので、大学はあまり関与しないという歴史があったように思います。そのために、大学は核融合研究とか、自前の科学研究費補助金でしようもないことをやっているとか、そういう世界があったのです。

 ところが、文部科学省の原子力システム研究開発事業や原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブといった公募制度が始まり、大学とか民間に、少なくとも大きな原子力開発に自分から集まってこいよというチャンネルを開いたのです。閉じられていた扉は少なくとも開いたのです。それによって、多くの人たちが、今まで原子力は何か別世界のものだというか、ちょっと毛嫌いしていたのが、それに自ら提案して、その提案に基づいて自分が研究したり、あるいは原子力のいろいろな実態を知るチャンネルを開いていったということだと思うのです。つまり、閉じられた扉は少しあいて、おそらく改善に向かいつつある。これが私の認識なのです。ですから、文部科学省がつくったこの公募制度は、まさに正解であったと思います。

 それで、原子力システム研究開発事業については、三、四年経ちまして、大分熟成してきまして、次の段階で何が求められるかという段階に入ってきているのです。

 そうすると、門戸を開いたという目的をある程度達成して、今度はその門戸がさらに開くとか、あるいはもっと人材育成的な効果を上げていくとか、みんなが目を向けるようになったのだから、簡単に言うともっと発展する。そうすると、大きなコミュニティーができてきて、多くの人たちが原子力というものに取り組むというフィールドができてくるわけです。

 それを達成するところまでどんどん発展させないといけないというのが結論でありまして、結論は文部科学省に原子力システム研究開発事業と原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブをもっともっと拡大していただきたいというのが結論です。閉じたところに莫大な予算をかけるよりも、そういった多くの人たちの力が集まる風土を広げていることは、基盤強化に明らかにつながる、当然人材育成につながっているということです。

 そういったことで、大学等もある種自分たちの研究フィールドを維持できるというか、守れるということもありますし、それによって次世代の教員が育っていく。当然、今の私のような教授が引退しても、次世代の教員が原子力に触れるチャンスの中で育ってきていますから、当然その継承者になっていくという仕組みができるはずなのです。だから、原子力に対して広く人が集まれるような制度をより拡大していくということが、結局、人材育成につながると思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。丹沢委員、どうぞ。

【丹沢委員】

 2点ほど。人材育成支援策の強化という点で、その後のアクションで、退職者人材の戦略的な有効活用、この辺と関連したコメントをさせていただきたいと思いますが、ここの視点は、これから原子力界を担っていく人材の育成ということですが、視点として人材を育成する側の人材の育成といいますか、活用という意味で、退職者、シニアですね。こういった方々を例えば大学に派遣できるような仕組みということも検討できるかなという点です。ですから、例えば退職者人材の戦略的な有効活用という点で、ここの辺に大学教育への支援が入ってもいいかなと思います。これが1点です。

 それからもう1点は、先ほど、国の公募の予算が使いにくいという点で、私のほうも感じているところを述べさせていただきたいと思います。もちろん公募という制度が非常に有効に活用して、有効に働いているということは前提なのですが、使い勝手という点で、いわゆるお金の細かいところまで含めてのフォロー、検査が微に入り細に入りというところがあるのです。これは、ある意味で使うほうからとってみると結構負担になっていて、この辺は国のほうとして税金を使うわけですから、ある意味でそこのところはきちんとしなければいけないということで、そういう発想で出てきているのだろうとは思いますが、監査を意識してというところだと思うのです。

 例えば、大学のほうで使うときを考えるとき、使途が明確であるというところがきちんと押さえられれば、受ける側に細部に当たっては使う側にお任せといいますか、どこまで監査するかというところを検討していただければと思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。あと、いかがでしょう。高橋委員どうぞ。

【高橋委員】

 先週ですか、東京大学の専門職大学院を見てきて、5年間で東海村というインフラを生かしながら、非常に立派なシステムができたなという感じがしました。一方、そういう目で見たときに、原子力機構の職員のヒアリングもやったのですが、全体としてはやはり原子力機構の職員の持ち出しというか、ボランティアではないのかもしれませんが、かなりの労力に覆うところが多いような気がしています。そこが今の2ページ目のところの担当職員の熱意や能力に依存する部分が非常に多いというところで、そこまではいいような気がするのですが、この先の文章を見ると、原子力機構、大学と連携して一生懸命やれよということだけしか書いていなくて、実はこれはやればやるほど原子力機構側の負荷は増えてくるということになるのかと思います。

 それから、いろいろ特定のインフラ、ソフト的なことについても、多分関与するところというのは、原子力機構全体のごく一部の専門職の人が非常に大きな負荷がかかってくるという問題があるような気がしていまして、こういう文章で本当にこの次、次期中期計画になったときに、原子力機構全体が受けていけるのかというところが、ちょっと個人的には心配な部分があります。例えば予算的にも、組織的にも相当整備をしていかないと、教育という問題については問題があるような気がするのですが、そういうところを少し原子力機構側に、この先のビジョンをしっかり考えていただいて、要するに負荷のかかっているところは負荷がかかっているのだと。

 この間、原子力機構の評価部会でも言ったのですが、いや、これは中期計画でも柱になっているからしっかりやりますと言っているのですが、何か限界もあるような気がしていまして、そういうところについても、ここに書いてあることの右側に、多分原子力機構が負うところ、期待するところがかなり多いと思うので、そこに対して原子力機構の今のリソース、人、物、金の中で大体どこまでできそうなのかという見通しをつけて、この中間整理を受けていただかないと、これはダイレクトに自分のところに反映してくると思いますので、その辺はそういう目でもう一歩、例えば右側に国、原子力機構、メーカー、電力というところを書いてみて、どこまで何をやるんだというところを見通した上で中間整理をやっていったほうがより具体的でフルートフルかなという感じがします。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。あと、いかがでしょう。小澤委員、どうぞ。

【小澤委員】

 3ページの初等中等教育の件についてですが、教科書の副読本の有効活用や、効果的な教員研修の実施ということで、副読本をつくってみると、先ほど山野課長からも説明がありましたが、現状を見ますと、こういう副読本というか、教科書が初等中等教育に向けて少ないというか、ないのではないかということで、ぜひこの方向でお願いしたいと思います。また、教員の研修実施ですが、教員の数も足りていないのではないかということで、その辺についても数がどのくらい要るのかとか、質の向上も含めてお願いできるといいかと思っています。

 また、学習指導要領が昨年の3月に変わっているということですが、現状がどのようになっているか少し状況をお聞きしたいと思います。

【田中主査】

 現状の何かがありましたら、後でもいいですか。

【小澤委員】

 はい。

【山野原子力計画課長】

 教科書については、やはりなかなか原子力だけで教科書を直すということは難しくて、できることというのは、当然昔の文部省と科学技術庁が一緒になったわけですから、そういう問題認識もあって、例えばおっしゃったように指導要領では、今まであまり原子力のことを書いていなかったのを、多少、小中学校の理科とか社会で教えるようにするとか、その後の解説書などでも、昔は原子力についてはメリットとデメリットを記載するというと、大体デメリットばかり書いていたとかありますが、そういうことをもう少し前向きに書くようにしたのですが、教科書自体はご存じのように教科書検定の問題とかがあって、そんなにトップダウンで何とかという仕組みではないのですね。だから、できることというので、とりあえずは経済産業省と相談して、副読本というのは、いろいろなところで作ったりされているのですが、たとえば茨城県とか、青森県とかにはありまして、そのようなものも見て、もう少しALL-Japanで使えるようなものを一遍考えてみようかと。それをどうやって広めていくかという案です。かつ、せっかく作ったものがいかに使われるようになるかと、例えばわかりやすく言うと、原子力計画課から各県の教育委員会に配ってもあまり効力がないのですが、初等中等教育局から配ると効力があるとかがあるわけです。そのように、実際上どこまで使えるかというのも、できるところからやっていこうと思います。

 ただ、教員周りですが、原子力の教員を増やすというのは、おそらくそれはなかなか難しいと思いますが、できるところは一歩ずつという感じになるのではないかと思います。

【小澤委員】

 ありがとうございます。

【田中主査】

 私も、日ごろ思っていることを1つ、2つ申し上げますと、いい学生がそこに入ってこないことには、いい人は育成できない。特に最近の人は、世の中のことを彼らの視点でいろいろ見ていて、特に原子力について、日本の将来はどうなるのかということを結構気にしている人がいる。そういう人に対して、しっかりやろうというように持っていかないといけないということ。

 それから、人が入ってきても、今度は出ていく先がないといけない。そういう意味では、原子力機構も人を減らさなくてはいけないとかがあって、研究機関、あるいは大学もそうかもしれませんが、残ろうとしてもなかなか残れない。その辺のところが結構現場として苦しいところなので、これはその辺まで見通した形でものをつくっていかないとできないのかなと思ったりします。

 山名委員、どうぞ。

【山名委員】

 基本的に、大学の立場から言うと、人材育成の件は、学生を教育する上で必要ないろいろなことを支援していただきたいということに尽きるのですが、今の制度で1つ気になるのは、今の公募制度は学生教育を目的にしていないので、学生教育をしますという入り方は当然できないのです。雇い上げということではできますが。

 それで、学生にこういった原子力に目を向けさせるということに対して大事なのは、私の大学の学生もそうですが、やはり実際のフィールドに接しさせる、チャンスを与えるということなのです。

 田中主査がおっしゃいましたが、結構いい学生はある程度来るのです。ある程度なんですが、来るのです。それで、何に困るかというと、やはり学生にそういうチャンスを与えるという活動支援的というか、活動費みたいなものの財源がないというのが、大学としては一番つらいところなのです。研究公募の資金では出せないということになります。

 それで、例えば1つの例が、私や小川委員たちでアクチノイド研究のJ-ACTINETというネットワークを始めました。今度もそのサマースクールをやるのですが、そういうときにヨーロッパなんかで学生たちが集まれるような旅費の支給とか、研究会に参加することの支援とか結構充実しているが、我が国ではそういうファンディングがない。結局自前でやるか、科学研究費補助金みたいな比較的自由な公募研究費をとってくるしかないのですが、そういったもっと学生に活動チャンスを与えるような、ある種のファンディングのシステムができないのかなと常に思っていました。

 これは、山野課長のところにお話しする話かどうかわかりませんが、いずれにせよそういう学生が動き回ることを支援していけば、当然学生はいろいろなことを見て、それを見ると興味を持ったり、これはやらないといけないという正義感をちゃんと持つのです。そういうチャンスを広げるような何か支援制度ができないのかということは、常に思っておりました。

 それから、退職者の件ですが、これは結構なことなのですが、退職者に関して一番大事なのは、その方たちが経験してきた成果と、その歴史を我々に継いでくれることなのです。

 こういうのは暗黙知というと最近は怒られるらしいのですが、その人についている価値ある情報と歴史、これを何かの形で成文化するなり、我々に伝えてくれるような、まさに技術継承です。そのチャンスを開くというのはものすごく大事であるということでありまして、むしろそういうところにご努力いただくような機会を増やしたいと思います。

 どちらかというと、ある程度若手に主導権を渡して、自分でためた成果を継いでいくということにぜひ努力していただけないかなと思っております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

【井上委員】

 すみません、先ほどの公募研究の使い勝手が悪いところで、重要なことを1つ言うのを忘れていまして、計画当初、これは一応3年とか5年ですが、その計画は基本的に変えられないのです。例えばいわゆる幾つか項目があって、A項目で3回、B項目で4回、これがなかなか変えられない。けれども、試験というのは、ある程度進むと、当然計画内容の変更が必要になるわけです。この辺が非常に融通がきかないというのはよく感じます。

 以上です。

【田中主査】

 人材育成ということについて、またいろいろと議論があって、私も意見がありますが、ここらで終りにしまして、服部委員のほうで、もし何か人材育成について、これだけ言っておきたいということがありましたら、お願いします。

【服部委員】

 少し遅れて参りまして申し訳ありません。

 来たときに話題になっていた、初等中等教育につきまして、実は私ども全国の中学校の理科の先生の団体で、全中理と呼んでいるグループがあって、会員が2万人とか3万人とかそういうオーダーらしいのですが、そことあることからチャンネルができて、今度そこの大会で、原子力というのはこんなものだよということを紹介する場面が少しできそうなのです。これまでJAEAの東海に、都の中学校の理科の先生ですが、代表になるような方をお連れしたのですが、どこにアプローチをしたらいいのか、彼らも情報が全くないのです。そういうことで、私どもとしても、こういう場面でこういうようにしていけばいいというような、その辺の橋渡しができればと思っております。

 いずれにしましても、いきなり原子力ということでいくのではなくて、どなたかご意見を出されていましたが、やっぱり環境・エネルギーという部門の中での原子力というようなアプローチをしたいと思っております。

【田中主査】

 高等学校のスーパーサイエンスハイスクールとか、いろいろなところが私のところに来たりすると、原子力の話をしないようにしながらやっているのですが、そのようなところでいろいろと宣伝することが大事かと思います。

 ありがとうございました。

 よければ、次の研究開発インフラに行きたいと思いますが、ご意見等よろしくお願いいたします。

 これは、市村委員か小川委員のほうで、原子力機構としても中期計画をつくるときに、これはこの間に何とかするという議論がありますよね。ああいう議論というのは、どのような背景のもとにやっているのでしょうか。

【小川委員】

 我々なりにAction1に書いてあるようなことを検討しつつ、ただ、幾つか問題に出ているのは、二法人統合の議論があったときと今とで、少し国内の状況も変わっているようなところがあったりして、あの当時見通していたところと若干状況が変わっているものに対して、どう対応しようかという側面で見直しが必要かなということは感じております。

 一番大きいのは、ここにも書いてありますホット関係の施設です。我が国の中で融通がきく施設を考えて、これから出てくるいろいろな課題に対してどう応えていくのか。既に現在出ている課題に対してもどう応えるのかということで、幾つか、当初の見込みと少し違っているかなという部分があります。

 それで、あまり泣き言を言っても仕方がないのですが、運営費交付金が着実に減っていく中で、今ここに書いてあるようなことをしっかり対応していくというのは、廃止措置に相当固定的に経費がかかるという中で、組織としては、かなり悩みながら進めているというところが実情です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 山名委員どうぞ。

【山名委員】

 この研究インフラについて、多分一番優先されるのは実態調査だと思います。どういう人がどういう目的でどこに行っていて、どう困っていて、どういう成果を上げたかと。これは1つは、どこがどういうキャラクターを持って、どういう施設をやっているのだという、実は全体像というのが最近ちょっと見えにくいのです。例えばこの研究であれば、あそこに行ったら確実にできる、ただ、こういう条件がある、これぐらいの研究だったら、こっちのここでやればいいというユーザーズマップみたいなものが本来あって、ユーザーはある程度それを見ながらやっているはずなのです。

 例えば大学の法人化以降、あるいは原子力機構が今門戸を開き始めているということから見て、全体像はどこがどうなっているのかというのは、あまり理解されないところがあるのです。最初からここはできないものだと思っている人もいるし、そういうところがありまして、その実態調査をきちんとやると。ユーザー調査、あるいはマーケット調査をきちんとやった上で、どういう機能が、どの程度のものを、どういうキャラクターを持ったのがどこにどういうようにいるかという全体像をもう一度しっかりと仕切り直す、描き直すことが何よりも大事ではないかと思います。そうしますと、この部分にこういう拠点がある、この部分にはこの程度の施設があるということが見えてきて、それをどう維持するかという、今度は戦略の絵がかけるようになってくるというわけです。

 それがないままやりますと、妙なところが忘れ去られたり、ユーザーの利便性が忘れ去られたりするようなことが必ず出てきますので、そういう意味で、原子力機構の施設と大学の施設、あるいは公的な研究機関の施設全部合わせて、よく調査をした上で、それぞれの役割、あるいはその意義づけをよく見直すということをまずやってはいかがかと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございます。つけ加えるとしたら、ユーザーサイドからのものと、実際にどのぐらいのお金を使って、あとどのぐらい使いそうだとか、そういう管理側の話もあるし、それから、国際的に今いろいろな施設を使いますから、そういうのを含めてやることが大事かと思います。

 服部委員、お願いします。

【服部委員】

 それに関連して、ドラフトの段階で見せていただいて、今回のものも基本的に同じような気がしますが、どのActionにも、原子力機構においてとか、原子力機構がとか、そのように書かれているのが若干気になりまして、やはり原子力機構が主体的な役割を担うというのは否定しないのですが、外部の人間も入って、今まさに山名委員が指摘されたような調査をしっかりやる必要があるのではないかと思っています。決して信頼していないというわけではありませんが、やはり当事者プラス何人かの方が入って、そういう形でやるのが、皆さんにとって公平性だとか透明性ということを考えて、ご検討いただきたいと思います。

【田中主査】

 もっともなご指摘だと思います。

 あといかがでしょうか。市村委員どうぞ。

【市村委員】

 先ほど井上委員がコメントとして説明された中にもここに該当することが書いてあって、私はそこに書いてあることは、基本的に同意することなのですが、今原子力機構が持っている、特にホットラボは、一般会計と特別会計の両方の会計で作られたのがあって、特別会計のほうは、ある目的のためにつくっていて、ただそれが、プロジェクトが進展してきたというか、当初、予定どおり進展しなくて、今そういうラボがあるのでどうしようかというような話になっているところもあるのではないかと思っているのです。そういうのを山名委員がおっしゃるように、では、どのように利用されているのかというようなことも調査した上で開放するということは非常に大事だと思うのですが、もう一方で、井上委員が言われた中にも書いてあったように、施設を持っている原子力機構と使うことを考えておられる人たちが当初から参画をして、今後、日本としてどうあるべきかという議論をよくやった上で、既存の施設をもちろん使うというのはいいのですが、今後どんなラボが要るのかという議論をよくやって、整備していくことが必要ではないかなと思います。

 そうなると、では、どこに置くのがいいかということを根本のところまで立ち返って、原子力機構が持っているのがいいのか、あるいはどこかほかのところのほうがいいのかもしれませんし、そこの資金面はどうするのかというようなことも含めた議論を、今後可能であればやっていくことが必要ではないかなと思います。

【田中主査】

 どれだけ維持費がかかって、将来廃止するのはどのぐらい経費がかかって、あと何年間使えるかなど、そこまで議論しないと表面的な議論に終わってしまうのかと思います。

 あといかがでしょう。小川委員、お願いします。

【小川委員】

 今何人かの方がおっしゃった、まさに原子力機構だけではなくて、いろいろな方が参加されて、こういうことを検討していただくというのは大変いいことだと思います。

 ただ、その中で、原子力機構の主体性が見失われてはいけないと思いますので、おそらく廃止措置の話ですとか維持費の話というのは、実際にやっている人間でないとなかなか見えないという部分もあると思いますので、そこは、あるところでは原子力機構に任せていただいて、ただほんとうに、国全体のリソースマップをしっかりつくって、その中で原子力機構をどう生かしていこうかということは、それこそやはり産業界、それから大学の方々に加わっていただいて、しっかり議論していただく、それが我々としても大変歓迎するところであります。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 丹沢委員、お願いします。

【丹沢委員】

 このまとめの中で、はっきり廃止措置をうたったというのは、非常に評価できるのではないかと思います。服部委員のほうからもお話がありました原子力機構がという部分について、原子力機構が中心になるのは、ある意味で当然なのですが、大学でもいろいろな施設を抱えていて、たしか私の記憶では、山名委員もレガシーという言葉をお使いになったかと思うのですが、こういった点を、ある意味で後ろ向きではなくて、きちんとポジティブに、次のステップのためにどうしても必要だという、ここのところをやはりここできちんとうたっておくということは非常に大事なことではないかと思います。マップの作成とあわせて、そこのところを位置づけないといけないかと思います。

 加えて、この案の中で、また原子力機構がというように、処理・処分のところを促進しなければいけない。実は今、私ども、特に大学で原子炉とか燃料を抱えているところが、ここのところが1つ推進すると先が見えてきます。こういう事業が先が見えるという状況をつくるということが1つキーポイントになっておりますので、この辺、原子力機構のほうはいろいろ難しい側面があるかとは思いますが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。これは要望です。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 もうちょっと議論を深めておいたほうがいいかと思いますが、いかがでしょうか。

 まず山名委員お願いします。

【山名委員】

 今のご指摘はそのとおりなのです。例えば1つの例は、我が国の研究炉、私どものKUR、それから原子力機構のJRR-3、4、その使用済み燃料というのは今アメリカに引き取ってもらっているわけです。DOEが引き取って、サバンナリバーで再処理するというようになっています。

 幸いなことに、文部科学省はご努力されて、研究施設等廃棄物については、JAEAが実施主体となってきちんと処分していただけるという体制が今できつつあるわけです。大事なことは、こういった研究インフラのためには、そのインフラを整えるためのインフラが要るわけです。それが、例えば研究炉の使用済み燃料の処理などです。なぜならば、それを我が国の再処理施設で処理できないわけです。第二再処理の議論を始めると、また日が暮れてしまうので、少なくとも六ヶ所や東海工場でそういうことをやるというのはないし、あるいはRIの使った線源を何かうまく処理して、別に転用するようなインフラもないですし。

 いずれにせよ、実はほんとうの下のところは十分手当てしないまま、我が国は比較的歴史を過ごしてきたのです。それで先ほどのレガシーが今たまった状態に来ていて、廃棄物については、何とか光が見えてきた。けれども、結局、今後我が国がきちんとした原子力の研究インフラを整えるためには、そういった最後の部分をどうするかということを、発電事業とはもちろん別なのですが、何か全体的にリンクしながら支えていくようなことをやらないと、結局海外におんぶしているような話が出てしまう。さっきのマイナーアクチノイドを海外から買っているというのと似たような話です。やはり国内で、試験研究のためのフロントエンドから、試験研究のためのバックエンドまで、何かの形で整備していけるような形にしないと、ほんとうの研究はできないということなのです。

 廃止措置と廃棄物については大体見えてきていますが、その辺もよく今後考えていかなければいけないと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 電力のほうでは、廃止措置とか廃棄物の処分とか、いろいろな将来の再処理にかかわる費用というのは、現在の電気料金に入れて対応しているのですが、今、大学とか研究機関等の運営についてはまだその仕組みができていなくて、場合によれば、研究費が研究へ生かされないかわからない。それでいいのかどうかとか、そこまで踏み込んだ大きな議論をしないと答えがないかと思います。

 高橋委員どうぞ。

【高橋委員】

 先ほどの小川委員の意見に比較的賛成ですが、やはり原子力機構の中でどのようにすべきかと。特にここの文章を見てみますと、効率的利用とか、利用ニーズといった、要するに効率側から物を全部見ているのですが、実はもう少し全体の国益を考えたときに、さっき山名委員がおっしゃったように、ワンセット必要だというような視点も入れながら、全体をどうするのかと。そのときに、原子力機構全体の今の予算縮小均衡の枠の中で、できることと、できないことと。特に廃止措置の費用も含めてになるかと思いますが、そういうビジネスプランを1回提示した上で、世の中の意見を問うというような形がよろしいのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

それでは、時間が予定より遅れ気味ですので、3つ目に行きたいと思います。3つ目は、技術移転と産業化についてです。

 高橋委員、お願いします。

【高橋委員】

 Action1とAction3のところでいろいろ書いてありますが、主語が、例えばその活動状況をレビューするのはだれかとか、Action3のところも、体制整備を図るのはだれかとかいうようなところが、必ずしも明確でない部分があるので、これはまた、もっとよく考えて書いておいたほうがいいかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 市村委員、お願いします。

【市村委員】

 ここの部分は、前回私がプレゼンさせていただいたようなところもかなり盛り込んで書いていただいていると思いますが、この中に書いてあるように、Action1であるような点がまず一つあると思います。従来は、技術開発を国のほうがやって、民間に移転して、その後のフォローをあまりしていないというところもあって、端的に言うと、例えばウラン濃縮ではそういったところがあって、これについては、前回も日本原燃の田中企画部長のほうからお話があったかと思いますが、今後我が国としてどうするのかということを考えると、やはりそういうフォローができるようにしておくべきであろうと思います。ただ、これまではいろいろしがらみがあって、なかなかそういうところができなかったというのがあるので、これはぜひとも考えていく必要があると思っていまして、そうなると、原子力機構だけができるかというと、そうでない点もありますので、特に独立行政法人化になったときに、いろいろ枠がかぶさっていて、できない。そこは会社ぐるみでどうするかというのはあるかと思いますが、その辺をはっきりしないと、なかなかやりにくいというところもあり、その辺をぜひとも検討していく必要があるかなと思います。それが1つです。

 それから、特に核燃料サイクルのほうを考えると、今後の実用化ということを目指した開発をしていく上では、研究開発機関が研究開発をやって、その成果を民間の実施主体が使っていくという単純な形では進められないだろうと思うのです。というのは、今後のことを考えると、特に核不拡散の話とかあって、あと、建設機会が非常に少ないということもあり、簡単に商売になるような話ではないので、どこかの1メーカーが手を挙げてくれるはずもないというような状況下で、どうしていくのかということを考えていかないといけない。そうなると、今後我が国としてこうしていくんだという確たるところがあって、その中で開発はどうしていく、あと実用化に向かって、製造メーカーなんかがどう関与してくるのかとか、実施主体がどうなるのかという議論をきちんとした形でやって、そういう戦略のもとに関係しているところが協力をし合って進めていくということが必要だろうと思います。

 そういうことを検討するような場を設けていただいて、その中で、こうしていくんだという戦略を練っていくことが不可欠で、研究開発機関、メーカー、それから実施主体がばらばらでは、やはりうまくいくわけがないと思います。

 それで、JAEAにかなりの部分が求められるであろうということは想像にかたくないのですが、今申し上げたようなことを実現していく上では、こう言うと語弊がありますが、いろいろしがらみがあるJAEAの枠の中だけにとらわれて考えていてはなかなかできにくいというところもあるかと思うので、検討する上では、一度そういう枠を取っ払って、我が国としていかにあるべきか、組織はどうするのか、あるいは資金面ではどうしていくのかということを考えていく必要があるのではないかと思います。

 そういうことを検討する場をぜひとも設定していただいて、そこに関係者が集まって議論していく必要があるだろうなと思います。

【田中主査】

 重要な点かと思いますので、ちょっとその辺について議論を深めたいと思いますが、井上委員のさっきのコメントを見ると、関係者から成る場所と書いてありましたが、その辺のところも少し説明いただけたらと思います。

【井上委員】

 今市村委員がおっしゃったのと同じようなことですが、今までの間違いというのは、研究したけれども、それが果たしてほんとうに設計に使えるデータであったかどうかというとについて非常に疑問であると感じます。また、性能保証にしても当然しかりと。そうすると、最初の開発段階から完全にミスマッチを起こしているのです。だから、研究開発するところ、そういうものをつくるところ、それから、ユーザーとして、例えばこれから六ヶ所を動かすなら、そういうところの経験に基づいた知見、この3つが最初から融合的に検討できる場というのはやはり必要なのではないかと思います。

 当然、その後には、それに基づく計画、さらに、それに対する評価、チェック・アンド・レビューですね、そういうものをきちんと、関連者がいる場で行う必要があるのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 山名委員、どうぞ。

【山名委員】

 この戦略的な技術移転・産業化について、まず何よりも明確にしなければいけないのは、国の役割が何で、メーカーの役割が何で、ユーザーの役割が何かというのが非常にあいまいだと思うのです。今までは、原子力機構がまさに中核だというような印象があったがために、原子力機構の中である種の個別のプランをつくり、それを線形モデルで大きくして、大きくなってここまでいったから、はい、渡すよというビジネスモデルに乗ってやってきたのです。けれども、これは結構失敗するという実例が幾つかあって、おそらくそれでは無理だろうと。そうすると、国が担う、原子力機構が担う役割は何かというのをもう一遍はっきりさせる必要がある。私のイメージでは、極めてしっかりした基礎研究、基礎データをきちんととるとか、あるいはそれを発展した芽出し的なある種の発明を出していくとか、最初の純工学的な、あるレベルまでの工学的な概念を固めるとか、あるいは極めて特殊な実験を行ってくれるとか、そういうことがあると思うのです。

 では、今度は、メーカーはその情報をもらいながら、それを物づくりにやっていくときにどうやっていくか。当然それがビジネスにならない、リスクがあるのであれば、国の資金を投入するとかしながら、メーカーに物づくりの力をつけていただいて、そのときには、当然ユーザーである事業者なり何なりからきちんとした性能目標が提示される。その全体が常に、スパイラルと私らは呼んでいるのですが、常に下からも上からも振り返って、また要求を出すとか、反省するとか、そういう単なる線形モデル、渡したモデルではなくて、その三者が連携しながらのスパイラル開発モデルにこれから変わっていくことが、多分一番大事な技術移転の改革だと思います。

 だから、それぞれの役割をきちんと定義するということをまずやってはどうかと思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。スパイラル開発モデルが大事だということ。役割とか役割分担とか、いろいろな議論がたくさんあって、産業化ということまで行けば、実際に最後に使う人からいろいろなことに対して意見が出てこないといけないのかなというものがたくさんあります。

 ほかいかがでしょうか。村上委員どうぞ。

【村上委員】

 この戦略的な技術移転と産業化については、前回もかなり生意気な意見を申し上げてしまったと思うのですが、今日いらっしゃらない長﨑委員のご意見を拝読しておりますと、すごくいいことが書いてあったので、ちょっと便乗して申し上げたいと思います。

 長﨑先生のご意見の中の、FBRサイクルにおける五者協議会についてのコメントがありまして、うまく機能していることが前提になっておりますが、ほんとうに機能していますかというお問いかけがありました。私は、同じような意見を持っておりますので、ちょっと申し上げたいと思います。

 実際に機能しているかどうかというのは、当事者の方が一番ご存じでしょうから、私から機能しているだの、していないだの、どちらの考えもありませんが、直感的に言って、いざ産業化に向けてプロジェクトがもう動いているときに、全く異なる立場の監督官庁、しかも、基礎基盤強化の監督官庁、事業者を統括する立場の監督官庁、研究開発をやってきた原子力機構、産業化の実施主体である電力と技術を担うメーカーと、かなり立場の異なる五者が全く対等な立場でお互いに意見をぶつけるという場が、物を決めていくときに機能するようには、あまり思いません。

 実際、これはかかわられている方が、いや、そんなことはない、あなたが知らないだけできちんと機能しているとおっしゃればそのとおりなのでしょうが、物を決めていくときにそういうことでいいのか。プロジェクトを何か実用化していくためには、どちらとも決めがたいところで、どちらかが折れなければならない場面というのが絶対あるはずで、そのときに立場が対等だと決まるものも決まらなくて、何か絶対に後で問題が先送りされるとか、そういったようなことが直感的に起きそうな気がしますので、この枠組みとして五者協議会が取り上げられていることに少し違和感があり、ほんとうにそれでよいのかというところを考えてみたほうがいいのではないかと思います。

 それから、どんな形がいいのかですが、少なくとも異なる機関が対等に物を言うのではなくて、何か決めなければならないときは、やはり実施主体の意見というのを一番尊重してほしいので、あとはサポートに回ってほしいというのが当事者としての希望であるかと思います。

 以上です。

【山野原子力計画課長】

 五者協議会の仕組みというのは、それぞれ責任ある者が応分の責任を持ってそれぞれ参画し、それぞれは単なる評論家ではないという仕組みです。最後は資金をどうするかという話に全部行くわけで、それぞれ責任ある者が腹をくくって、それぞれ応分の責任をとりながらやりましょうというのが五者協議会の仕組みなのです。

 そういう意味で、私は今後、このような仕組みが機能していかないといけないのではないかと思っています。五者協議会自体も、どこまで動くかというのはこれからの問題なので、機能しているかどうかではなくて、機能させていかないといけないというように思っています。

【高橋委員】

 村上委員のおっしゃることもよくわかりますが、若干考え方が旧スキームかなという感じがしていまして、むしろ責任に応じて対等にものを話すと。例えばFBRについても、将来メーカーが本当に売れるものになるのかならないのかというようなことも含めて、現時点で、これから実施主体も含めて議論していくわけですが、そういう意味では、五者協議会の中でいろいろ多様な意見交換を、電力とメーカー、それから経済産業省と、表の場だけではなく、多重に意見交換をしている段階ですが、アウトプットとしてはまだ見えてきていないのですが、こういうコミュニケーションをしていくということは、将来に向けて非常に大きな財産になってくると私自身は思っているところでございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 あといかがでしょうか。小澤委員、お願いします。

【小澤委員】

 井上委員の資料の原子力技術の戦略的な技術移転・産業化のところに書かれていますが、先ほどのFBRの五者協議会の話も出ましたが、核燃料サイクルについては、何十年かけて、せいぜい数基をつくるということが前提になっておりますので、メーカーとしては、そういった状況の中で製品化、産業化できるかというのを常に見ながら考えるという立場であるということを申し上げておきたいと思います。

【田中主査】

 あと何かございますか。

 市村委員、どうぞ。

【市村委員】

 先ほど山名委員が言われたことと、村上委員が言われたことに関連しますが、国とメーカーとユーザーの役割がはっきりしていないというお話があって、それはある部分、そのとおりで、そこが一番問題なのだろうと思います。

 もう一つ、では、そういう各々の立場でやると、先ほどの村上委員のお話ではありませんが、物事を決められなくなるのではないかということがあって、であれば、そういう三者を見ながら全体をマネジメントするというか、コントロールするようなところはどこなのかというところが非常に大事だと思っていて、そういうところをまずつくるということが、今後、研究開発をやるためにも、研究のための研究ではなくて最後に実用化に結びつけるためにはどうしていくのかという観点でやらなければいけないと思います。非常に難しいところをマネジメントしていかなければいけないので、それができるような仕組みをつくらないと進まないのだろうと思います。それは一朝一夕にできないでしょうから、取っかかりをどうしていくのかというところから考えていく必要があるのかと思います。

【田中主査】

 高橋委員、お願いします。

【高橋委員】

 山名委員おっしゃったことは、そのとおりだと思いますし、電気事業者としてもしっかり協力しなければいけないと思いますが、例えば次期の中期計画ということを考えたときには、もうあまり時間がないですよね。そこの中で、今問題点というのは、やっぱり原子力機構の現場の中にたくさんネタが転がっているような気がしますので、そういう意味では、法律を変えなければいけない部分と、役所に行って解釈をすれば何とかなる部分と、中期計画の枠の中で対応ができるところぐらいに大きく分けて、個別の議論をしていく中で官民の役割分担というのを考えていく必要があると思います。多分、全部一本では引けないと思いますし、ケース・バイ・ケースになると思いますが、そういう視点で考えながら、周りが少しそういうところで議論をサポートしていくというやり方をしていかないと、個人的には、時間的に間に合わないという感じがしています。

【田中主査】

 山名委員、どうぞ。

【山名委員】

 現実的には多分、原子力機構の中に、何人かの極めて優れたエンジニア的な能力をある種集結しながら、そこでスパイラル型の開発をマネージするような、COE的な役割を持たせていくようなことをしないと事が始まらないという気はいたします。確かに永遠に役割分担の議論をしていると、どんどんと年が進んでいくような気がします。

 多分COEの設立が早急に望まれることではあろうと思います。

【田中主査】

 いろいろな専門の方が原子力機構にかなりいるということは事実ですから、そういうことを検討する能力があるだろうと思います。それから、高橋委員が言われた、中期計画の話、概算要求の話とかいろいろなものがあって、ほんとうはそれらを全部、整合性をとってやっていかなくてはいけないのに、一つ一つ片付けていくと、結局全体がうまくいかないのではないかという心配があります。

 あといかがでしょう。

【山名委員】

 これは質問になりますが、いわゆる国側で開発した技術の知財の民間への移管に伴う障壁の存在があるかないかということを、私はよく知らないまま聞いておるのですが、これはだれに聞いたらいいのでしょうか。例えば対価の話ですとか、人材の移転の話ですとか、そこが円滑にいっていれば何の問題もないのですが。

【山野原子力計画課長】

 私もその分野はそんなに詳しくないのですが、当然国の金でやっておるわけですから、それは何らかの制約があると思います。例えばウラン濃縮の技術移転とかやる十何年前とかは、直接私どもが担当していないですが、対価がどうのこうのとか、そういう議論をしていましたから、そういう議論ももしかしたら要るのかもしれませんが、今後は、そんな議論をしていたら、うまくいかないのではないかという感じがします。

 そういう意味で、今後考えていくモデルは、そういう研究開発段階から、まさにメーカーの人とかエンドユーザーみたいな人も入ってもらって、どうやってその技術が、ある程度対価は要るかもしれませんが、スムーズに渡っていくかという発想で考えればいいのではないでしょうか。今後は、せっかくこういう議論をしているのですから、そこらの考え方も、もしも障壁があるのであれば変えればいいのかと思います。ただ、そこは何か制約があるかもしれないです。

【田中主査】

 こういう議論は難しくて、多分私の思い過ごしかわかりませんが、原子力機構からは、原子力機構法というのがあって、またいろいろと難しい評価制度があって、何かしがらみと言うと怒られるけれども、枠の中でしか考えられていないのではないでしょうか。そうすると、今、山野課長がおっしゃったことをさらにもっとエクスパンションすれば、現代のいろいろな仕組みが悪いとすれば、それを改善するというようなこともしていかないと、前に進まないのではないかと思います。

 あといかがでしょうか。

 よろしければ、次に行きたいと思います。次が、原子力機構の基盤的機能についてです。よろしくご議論お願いいたします。

 最後の10ページに、「当作業部会において、原子力機構と産学官の戦略的連携に関する抜本的方策について検討」とありますが、これから検討するということをおっしゃっているのでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 これは中期的な話で、これとか例えば今後整備すべきインフラとか、全部絡んでくる話ですが、そういうものは引き続き検討していくということかと思います。こういう話は、当然玉出しは原子力機構にやってもらうにしろ、ほかの項目と違って、作業部会できちんと議論すべきではないかというので書いています。

【田中主査】

 わかりました。玉出しとか、検討される専門家がいるとか、いろいろと原子力機構に期待するところは大きいみたいですが、よろしいでしょうか。

 井上委員、どうぞ。

【井上委員】

 これは先ほど皆さんもおっしゃっていることですが、原子力機構に期待、もちろん原子力機構への期待は大事なことですが、今までたくさん期待していたわけです。けれども、なかなかそれがうまくいかなかったというのが、これまで3回、今日も含めて議論しているところですから、もうその辺の限界は超えていると思います。だから、次の仕組みをどうするかということになりまして、そうすると、私はメモに書きましたが、やはり外部の「血」と「知」の両方を、どのようにうまく入れていくかを考えていく段階ではないかと思っています。

 何か1つ成功体験をつくるのがいいのではないかと思うのです。例えば、まず大きなところからでは成功体験はできない。例えば燃料サイクル全体を日本で今からやろうと思っても、それはなかなか難しいと思います。そうすると、先ほどから出ているインフラを今後どうしていくかということからでも、やはり1ついいものをつくって、それを前例として次へ発展させていくというのが必要なのではないでしょうか。

 以上です。

【田中主査】

 井上委員のメモに書かれていることはそういうことで、形式張っていろいろな血(知)を集めるのではなくて、グッドプラクティスにして、できるところからいい例をつくっていったらどうかということですね。

【井上委員】

 そういうことです。

【田中主査】

 小川委員、どうぞ。

【小川委員】

 井上委員の意見に反対するわけでもないし、大変いい考えだと思うのですが、おそらく原子力機構が外の方に対して大変いらだたしい思いをさせているとすると、まず、機構法がある、中期計画がある、それから、例えばJST公募であれば、その公募の枠組みがある。いろいろなフレームワークがあるわけです。そういう中で答えを出そうとしていると、原子力機構からしてみると、一番楽なのは思考停止なのです。その枠組みをしっかり尊重して、そこに対して創造的な答えを出さないようにしてしまうということです。そこで、その枠組みを少しでも創造的に解釈しようとするときに、こういう外の方が入って、もう少し自由な枠組みの中で議論するとか、あるいは今日のこういう議論の場をうまく使うとか、そういうことができれば、もう少し、前回柔軟性というのが資料の中にキーワードで出てきましたが、そういう柔軟性を持って、自らの思考の枠を崩すことができるのではないかと思っております。一番大きな制約は予算で、これはそう簡単にいかないと思っていますが、その予算の制約の中で、もう少し答えの出しようがあるかなと思っております。

【田中主査】

 山野課長どうぞ。

【山野原子力計画課長】

 おそらくそのいろいろな制約というものは、ほんとうの制約というのはありますが、実態はほとんどバーチャルなものが多いと思います。それは思考停止するほうが楽ですから、自分たちでできないと思っているだけではないでしょうか。

 具体的に今日出た話で、例えば特別会計だから共用が難しいとかありましたがそんなのはおそらく全然制約がないと思います。予算というのは、総枠の制約はありますが、今運営交付金というのは、使い勝手が自由な額面小切手を渡しておるという制度ですから、その使い方については何ら制約はありません。制約は総額だけです。あと、当然法律上やるなと書いてあるものはできませんが、機構法なんて何でもできると書いていますから。ただ、若干過去の経緯があるので、ウラン濃縮のようなものだけは、私も当時、動燃法の改正をやりましたが、若干厳しめにつくったものですから、そこはちょっと厳しくなっていますが。それぞれのところで制度的にどうのこうのとかというものはありますが、そこを一遍洗い出して、ハードルがどれぐらいかというのを一遍やるだけでも、かなり意味があるのではないでしょうか。やってみると、事実はほとんど制約ではなかったというのが結構あるのではないかという気がします。

【田中主査】

 山野課長がおっしゃるから、多分本当だと思いますので、よろしくやっていただきたいと思います。

 あといかがでしょうか。

【田中主査】

 市村委員どうぞ。

【市村委員】

 今、山野課長が言われたことに別に反対するわけではありませんが、おっしゃるように、確かに我々自身がみずから呪縛してしまっているところもあるのかもしれませんが、一方、厳然としてある大きな問題というのは、先ほどのレガシーの話ではありませんが、1つは過去のつけなのですが、廃棄物の話がありまして、それから、ここに出てきたホットラボもそうなんですが、相当時間がたって老朽化が進んでいるとか、それをさらに活用しようとすると、いわゆる高経年化対策にすごい資金がかかるという話があるので、そこは避けて通れないのです。

 だから、もちろんあまりネガティブなことばかり言っていても事は進みませんから、前向きに考えたいとは思いますが、先ほど小川委員が言いたかったのは、いろいろな枠といった中には、今後いろいろなことはやりたいのだけれども、そういったたぐいのもので、まず片づけなければいけないことも多々あると。それを同じ枠の中で片づけつつやろうとすると、これは相当大変だというのがあって、そこらもどうにか考えていかないといけないのではないかと思っています。

 こういう話をすると、あまりこの場にふさわしくないから、これ以上申し上げませんが、そこをやらないと、今日の議論のようなところを一生懸命やろうとしたときに、そっちのほうがうまく進まないということもあるので、それがこの場の議論にふさわしいと思いませんので、別途どこかでそういうことを真剣に考えなければいけないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 あといかがでしょうか。

【村上委員】

 原子力機構が国際対応機能を海外事務所の活用という形で本当に強化しようとしているのかというところで、ちょっと最近、疑問に思うような事例がありまして、ある海外の方から私が問い合わせを受けたときに、その海外の問い合わせを受けた方の近くにある原子力機構の事務所にたまたま知人がお世話になった人がおりますので、その人にコンタクトをとって、その問題にこたえてもらおうと思ったら、何と原子力機構は、そういう問題は全部本社の広報で取り扱いますので、海外事務所からは一切回答するなと言われているという返事が来ました。

 こういう事例もございますので、海外事務所の活用というのは、言葉で書くだけではなく、活用なさるのだったら、もうちょっとそこら辺を考えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

【田中主査】 あとよろしいでしょうか。

 それでは、4つの項目が終わったので、2ページ目の総論というのがあって、それについて最後に議論したいと申し上げたところでありますが、特に何かご意見ございますでしょうか。

 高橋委員、お願いします。

【高橋委員】

 この2ページ目と後ろをどのようにつなぐのかというところを少し考えなければいけないのかなという感じがしていて、もし書くのであれば、ここの背景とか、今後の方向はこのとおりだと思いますが、どういう形でパブリッシュするのかということもあると思いますが、もうちょっと書き込んでもよろしいかなというような感じもするので、その辺少し全体の編集方針との整合性をとっていただいたほうがよろしいのかなという気がいたします。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 あといかがでしょうか。

 市村委員、お願いします。

【市村委員】

 「2.今後の方向」の2つ目の丸のところを、先ほど山野課長が説明されましたが、大きなプロジェクト偏重から基盤強化へというのは、言葉としてわかるのですが、現実を考えると、先ほどの説明の中でもあったように、大きなプロジェクトに非常に原子力機構のリソースがかかっているのが事実なのです。それをどうしていくのかということがないと、これを単に基盤強化のほうにシフトしていくといっても、それはなかなかいかないと思うのですが、その辺はどう考えたらよろしいのですか。

 私が課長に聞くのも変なのかもしれませんが、そういう問題があるという提起をされているのはよくわかります。けれども、現実問題として、例えばもんじゅにしろ、ITERにしろ、J-PARCにしろ、そういう非常に金を食っている部分があるのも事実で、これを一朝一夕に明日止めたといくわけもなく、その中で、基盤強化のほうにシフトといっても、そう簡単にいかないのです。そこらをどういうねらいで今後やっていきますかというところを、どうお考えなのか聞かせていただけるとありがたいと思います。

【山野原子力計画課長】

 それは、まず原子力機構が考えればいいと思いますが、まず、大型プロジェクトもいろいろあって、例えば今のFaCTであるとか再処理であるとか、それは今の進め方の中で、もうちょっと基盤的な要素を取り込んでいったらいいのではないかというのが1つの発想としてあるわけです。ですから、単純な一本道だけではなくて、やり方にもう少しいろいろな基盤的な、一本道が倒れたらみんな倒れるとならないような仕組みを入れていったらいいのではないでしょうか。

 それと、確かにITERとJ-PARCはどうするかというのがありますが、それも今やっておるから、当然やるのですが、そのために例えば、わかりやすく言うと、旧原研の基盤部分が全部ゼロになりましたというようには当然ならないようにバランスをとりながらやらなければいけないという2つの意味があるのでないかと思います。

【田中主査】

 よろしいでしょうか。

 どうぞ、井上委員。

【井上委員】

 私も今、同じようなことを思いましたが、この大型プロジェクトと基礎基盤というのは、結局全然別のものではないと思うのです。例えば大型プロジェクトのときの一定の割合、例えば2割とか3割とか、その数字は議論すればいいわけですが、その部分は基礎基盤、きちんと地固めに使うというように使えばいいわけです。特に今のFaCTなんかを見ていますと、やはり使い方によって十分このようなところに回せるのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 服部委員、お願いします。

【服部委員】

 この2ページを見まして、表現ぶりだけでちょっとこだわるようですが、それぞれのところが、国、電気事業者、メーカーと言ったり、産官学と言ってみたり、最後のところは産学連携となっていて、微妙に違えているのですが、ちょっと気になるところでありまして。最初の2つ目の国内の関係機関の現状のところで、大学のという話が最初に触れていますが、私は産官学というふうな形で、この問題を捉えたほうがいいのではないかと思いまして、たまたま原子力立国計画で国、電気事業者、メーカーの三すくみ構造というのが触れられているのですが、ここは三すくみ構造というところを、あまりこれのネガティブなところばかりに目をやるのではなくて、産官学が連携をして、いかに前に進んでいくかというような書きぶりにしてもらえばいいのではないかと思います。

 そういう意味で、研究機関のところでは産官学となっているので、これはいいかと思うのですが、最後の、今後のところについては、真の産官学連携でall-Japanと言ったときは、まさに国ということだと思いますので、ぜひそこは入れていただきたいなと思っているところであります。

【山野原子力計画課長】

 そこは意図的に変わっているのではなく、たまたまです。

【田中主査】

 あといかがでしょう。山名委員どうぞ。

【山名委員】

 先ほどの後のほうの議論で、いわゆるリーダーシップとマネジメントの重要性というものが随分出てきましたよね。それは五者の中でのどういう責任のもとでだれがやるかという話と、今度は原子力機構自身の中でのそういったエンジニアリング能力、統合能力の強化というのと2つあったと思うのです。これは結構キーで、今後の方向の中で基盤強化と、もう一つはやはりエンジニアリングマネジメント、統合的マネジメント、リーダーシップと言うのですか、それといろいろな概念が入っているので言いにくいんですが、要は、ミスターというのもそれなのですが、早急に求められるのはそこの強化です。リーダーの強化です。それを何かやはり書かないといけないのではないでしょうか。では、それはどうするのか、だれがどうやるかということは、これから議論しましょう。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 小川委員、お願いします。

【小川委員】

 リーダーの強化というのはとても大事な問題だと思います。ただ、こういう議論をするときに、ともすると忘れられがちだと思うのは、全体的にトップダウン的な視点で見ていて、どうかすると、一番物に近いところにいる現場が忘れられてしまうと思うのです。リーダーというのは、あるとき空から降ってくるかというと、そんなことなくて、多分現場からきちっと鍛え上げられて、本当に物の手ざわりを知っている人、そういう人にやはりリーダーになっていただきたいという部分が実は原子力であって、そういうことでいうと、やはり現場の再構築、現場の技術の再構築ということをやらないと、それはもうほんとうに緊急の課題なのですが、そんなにすぐに立派なリーダーがつくれるかなというと、そこのところは大変懐疑的に思っております。

【田中主査】

 ありがとうございました。重要なことかと思いました。

 あとよろしいでしょうか。もしよろしければ、時間も来ていますので、今日はいろいろな議論をいただきまして、ありがとうございました。これらの議論を踏まえて、また事務局のほうで中間整理案を修正していただいて、次回の作業部会にてまた再度お諮りし、議論していただけたらと思います。

 以上で本日予定していた議題はすべて終了でございますが、その他にご意見などございますでしょうか。なければ、事務局のほうから連絡事項等、お願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 今日の議論も踏まえて、もう一遍これを再整理して、もう少しわかりやすく、例えばもう少し主語を明確にすべきところはするとかも含めて再整理をして、またコメントをいただくようにしたいと思います。

 次回の日時等はまたご連絡いたします。よろしくお願いします。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、第4回原子力基盤強化作業部会はこれにて終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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