地球観測推進部会 北極研究検討作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成22年11月17日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

安成主査 山内主査代理  阿部委員 石川委員 榎本委員 大畑委員 島田委員 杉本委員 野沢委員 原委員 福田委員 藤谷委員 松浦委員 

文部科学省

加藤審議官 田口環境エネルギー課長 福井環境エネルギー課推進官

4.議事録

安成主査

ただいまから科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の北極研究検討作業部会の第4回会合を開催します。

本日はどうもお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。

8月に資料3の「中間とりまとめ」をまとめていただき、その後、この中間とりまとめを受けまして、文科省で予算要求等に取り組んでいただくということで、本日は、中間とりまとめでも提言されております、北極圏環境研究コンソーシアムの具体的な中身についてご議論いただく、それが一番大きな議題でございます。北極研究において我が国が総合的に力を発揮していくために、この共通のプラットフォームとしてのコンソーシアムが必要だと思うので、これについてできるだけ忌憚のない御意見を頂ければと思います。

それでは、出席者の確認を事務局からよろしくお願いします。

福井推進官

現在ご出席の委員が12名ということで、また、阿部委員が遅れていらっしゃいます。

そういうことで過半数に達しておりますので、作業部会が成立ということでございます。

また本作業部会は運営規則により公開とさせていただきます。

安成主査

続きまして資料の確認をお願いします。

楠原補佐

それでは議事に入る前に本日の資料を確認させていただきます。

まず1枚目に座席表がございます。その次1枚捲っていただきまして、本日の式次第になっております。

それから続いて1枚捲っていただきまして、北極圏気候変動研究プロジェクト資料1、これが1枚ものになっております。

さらにこれを捲っていただきますと、続きまして資料2といたしまして、北極圏環境研究コンソーシアムについて(案)という資料がございます。こちら2枚書いたものと、画としてイメージ図が付いております。これで資料2を構成しております。

それから最後に資料3といたしまして、北極研究検討作業部会報告書中間とりまとめが入っております。

以上です。何か抜け等ございましたら事務局のほうにご連絡いただければと思います。

安成主査

ありがとうございました。

では、本日はお手元の議事次第にあるとおり、2件の議題を用意しております。

終了時刻は3時を予定しております。

まず議題1に参りますが、北極研究の在り方についてということで、これは資料1でご説明をお願いします。

石﨑企画官

資料1に従いまして、北極圏気候変動研究プロジェクトにつきましてご説明を申し上げます。

今年8月に資料3にありますように中間取りまとめをしていただきまして、その内容を踏まえまして、新規に北極圏気候変動研究プロジェクトといたしまして、来年度概算要求で8億円要求しているところでございます。まず内容についてご説明申し上げますと、必要性というところございますけども、こちらは中間とりまとめの内容を踏まえまして、今、北極圏では温暖化の影響が予想を上回る速さで現れている、特に北極振動というような現象が我が国の気象にも大きな影響を与えていると。

海氷が小さくなっているということもありまして、夏季の北極海航路が開かれる可能性もあるという観点からと、もう一つ、気候変動に関する政府間パネルにおいても観測体制が不十分であると指摘されている状況も踏まえまして、新たに研究を進めていこうということでございます。

具体的な内容といたしましては、事業概要のところにございますけども、まず一つは北極圏環境研究コンソーシアムを作ってそれを運営していくための事業を準備していくことでございます。中間とりまとめを踏まえまして、関係研究機関との連携強化でありますとか、データ、それから研究成果の共有・発信を促進するような北極研究体制の中核となるコンソーシアムを設置いたしまして、それに係る運営費を措置しようとするものでございます。

もう一つは北極圏の気候変動の解明を目的とした課題について研究を進めてくための費用を措置していくものでございます。例えばここに4点ほど書いてございますけども、大気・海洋観測の強化でありますとか、環境予測システムの構築、それから北極振動の解明等の研究の実施、そして気候予測モデルの高度化による日本への影響予測研究の実施ということでございます。

具体的にこちらの予算につきましては、中心機関としまして国立極地研究所、それから海洋研究開発機構に措置をいたしまして、事業を実施することを考えているところでございます。国立極地研究所につきましては大学共同利用機関としてのシステムを利用いたしまして、大学や研究機関等との共同研究を実施するための費用、それからスバールバルの観測機器等の整備、それからコンソーシアムの事務局については極地研に置くという方向でご提言いただいておりますので、こちらでコンソーシアムの運営はやっていただく、そのための費用を措置していくということを考えてございます。それから海洋研究開発機構につきましては東部北極海における大気海洋相互作用観測のための費用でありますとか、観測システムの開発費というものを措置しようとするものであります。

なお、この資料につきましては、予算のための説明資料ということもございますので、この海洋の研究につきましては、陸域とか大気とか色々と北極研究に重要な分野ございますけども、この資料の中では海洋はちょっと特だしというような形で書かれてございますけども、全ての分野をなるべくうまく推進できるように、執行の段階で調整をしていきたいと考えているところでございます。

この予算案につきましては所謂特別枠で要求しているものでございまして、先日公開のヒアリングが行われたという状況でございます。本年末の概算要求の取りまとめに向けて努力していきたいというふうに考えているところでございます。

以上でございます。

安成主査

どうもありがとうございました。

只今のご説明に関しまして、ご質問等ございませんか。 

島田委員

この予算っていうのは、コンソーシアムに関しては極地研究所で運営するということですけども、それ以外の研究の側面につきましてはどのような措置のされ方をするのか。

所謂通常の運営交付金の上積みみたいなかたちでやられるのか、もしくはある程度目的特化型の公募型でやるとか、その辺りを文科省はどのようにお考えでしょうか。

堀内課長

両機関に頼んでいる内容が基盤の整備と事務局の運営ということでありまして、両機関に対して委託費という形で本省経費から措置するということを考えております。ですから運営費交付金の上積み等ではございません。

安成主査

委託費ということですね。 他には何かございますか。

島田委員

委託費で、「基盤」ということですが、(資料に記載されている内容では)、特に海洋部分に関して言いますと、殆ど消耗品になるかと思うんですね、ブイとか。そういう意味で、所謂国内北極研究の活性に資するものになっているのかというのはどうなのでしょうか。本当の基盤の部分というのはどこで見たらよろしいのでしょうか。

堀内課長

北極圏の気候変動研究に使う基盤ということで限定をかけて、両機関として整備・運営を行うつもりですので、ここで出ている経費が何か他のものにとか、そういうことではないのですが、そういったお答えでよろしいでしょうか。

島田委員

申し上げているのは、東部北極海での大気海洋相互作用ということで、一つは氷が無いところをやるということで、いま北極というと、やっぱり北極海氷減少と冒頭にもあるんですけども、その部分があまり見えない。

あとブイ観測中心になると結局は北極研究に参加できる基盤みたいなものが無くなってしまう。所謂氷海に置いてきて、残置して消耗品という、殆どゾンデ観測とブイ観測でほぼ消耗品観測になっている。そうしますと、北極研究、海洋も色んな分野から成っており、生物にしても化学を含め多角的に学際的に北極研究を進める基盤みたいなものが必要になるかと思うんです、これだけの予算措置がされるのであれば。その部分がどうなっているのかということですね。

安成主査

ちょっともう少し具体的に。例えばどういう経費が一番必要だとか。

島田委員

例えば、北極でこういうのを運営する場合は、国際的なコミュニティ、複数機関で、例えば砕氷船を措置して相互観測をするような、かつ複数の船を使って、そういう基盤的な部分を整備するのが中核基盤の役割かなと思うんですね。それに付随して中核機関の個別の研究を行うのは結構だと思うんですけども、まず基盤である、特に船の確保が重要になります。

陸上観測でも色んなシチュエーションがあるかと思うんですけども、そういう部分が見えないので、どこが基盤なのかという、言ってみると、科研費の個人研究的な色彩がするのですが、基盤の部分を明示する必要があるんじゃないかと思います。

堀内課長

海洋機構では、北極研究を推進する基盤として「みらい」を北極にまわすことを考えています。それで、ここにあるブイ、観測システム、観測機器類は、この「みらい」を使って、またその「みらい」を持っていってということを考えているということであります。

もう一つ国立極地研究所では、スバールバルにある観測基地、ここの拠点を使って観測機器を充実させるということでありまして、そういった意味で基盤というふうに申し上げているところです。

安成主査

確かにこの文面通り解釈すると、ブイを導入するだけですかという話になると思いますが、島田委員が言われたように、実際に北極というのは、大気・海洋、当然海氷が入ると思うんですけど、国際的なプロジェクトと言うか、国際連携でやるというのが実質的なやり方ですよね。そういう時にJAMSTEC等に付けられた経費が使えるということであれば、問題無いと思うんですよね。ですから、例えば北極の海氷絡みの観測で言われたような事は、これで実質的にできるんじゃないかなと。どうでしょうか。

島田委員

それはできないと思っていまして、まず北極海の海氷減少、淡水化、酸性化、この3つは海洋圏になると思うんですけども、海氷減少を知るためには、氷が今存在する所でどのように無くなっているか、その下の海の構造も含めてやらないと駄目なんですね。そういう意味では、「みらい」で行ける所というのは、既に海氷が無くなった所の影響評価しかできない。今後の将来予測に資するような観測というのは、海氷がある海域でやらなきゃいけない。なので、砕氷船と「みらい」とのジョイントということを常に念頭においてやる必要がある。

これだけ大型の予算が付くのであれば、各国と中心機関がコンタクトを取りながら、このコンソーシアムでもいいんですけども、砕氷船の共同利用みたいな形の基盤経費ですね、そういうのを日本が分担して、多くの国内研究者が参加できる基盤を作る。

例えば十数年前にSHEBAというプロジェクトがありましたけども、一年間砕氷船を残置する、その間毎月クルーチェンジをするので、延べ400名ぐらいの研究者が参加できるプロジェクトを日本、カナダ、アメリカでやったんですね。そういうタイプの研究がおそらく望まれる。

あと、淡水化・酸性化という問題が、生態系の話、水循環の話が絡んでくると思いますし、陸域とも繋がる。そうしますと所謂物理パラメータしか取得できないブイだけでは不十分で、化学成分の観測とか生物観測が必要になります。その時に、日本の研究者が船を使った研究ができるベースがまず必要になってくる。言わばノルウェーのスバールバルの観測基地的な意味で船を措置するようなことが活性化に繋がると思います。

その部分がやはり、ここには明示されていなくて説明できるかどうかわからないですけども、必要かと思います。言ってみると、ある程度の部分は基盤経費、船とか、ある部分はそれを用いた研究経費みたいな形で、且つ、それが国際的な方向性とちゃんとマッチしている、そういう三位一体の構造にする必要があると思います。

安成主査

この時点で、要求額が通った時に、それをどういう形で自主的に必要な研究という形で修正と言いますか中身を変えるか、そのコストは可能性としては当然考えないといけないとは思います。

大畑委員

島田さんが言われた事は尤もで、だからこそコンソーシアムみたいなものが必要だということになるんですけども、現在うちで出しているのは基盤・測器の整備、それから「みらい」も入っていますけど、それ以外のチャーター船を使ってやるということで、それは海洋研究の基盤になっていくんじゃないかなと思います。

それと、具体的にどれだけどこにブイ等を放すかというのは決まっていませんけども、そのデータ共有というのは当然勘案するわけでありまして、データとしてのパターンは掲載されると。 

それで、詳細についてはまだ詰めた議論を行なっておりません。ですから、実施の段階においては、もう少し広い範囲の専門家の意見を聞いて、一番効率の上がる効果的な形にしたいと考えております。

安成主査

予算が通った時に、コンソーシアムをどういう形で自主的に使っていくのが一番研究の目的に合った形になるかという方向で議論したほうがいいかと思うのですが。

田口課長

島田先生のおっしゃる事はまさにその通りだと思っていまして、そういう意味では今の8億円自体は、今我々が持っている基盤を強化する、それは「みらい」とスバールバルの観測基地、それと極地研を中心にやっていく共同研究の研究費ということで内訳は構成されています。

その中で、チャーター船で砕氷船を使うというのも当然あり得るわけですが、我々がこの予算を要求する時に、そもそも砕氷船をどうするのかという議論はさせていただきまして、ただ、今造るっていう話にはならないと。そして、「しらせ」を回すこともできないと。

何れにせよ、砕氷船を使った研究の中身、あるいは島田先生のおっしゃったように国際協力体制が下地にあって、それで初めてそういう概算要求ができるのではないかというふうに考えています。

安成先生がおっしゃったようにこの後の議論になるかもしれませんが、この北極のコンソーシアムとして、これから国際協力も含めて具体的にどういう研究計画を持っていくかというのを是非議論していただいて、その中で新たに必要になるものは頑張って予算措置をするという認識です。

安成主査

コンソーシアムで、今何が大事かと言うことを、陸域、海洋、大気全て含めて議論して、最大限予算を有効に活用するという、その為のコンソーシアムと理解しています。

島田委員

これまでの作業部会でもあったんですけども、北極振動と、所謂気候変化、クライメートチェンジっていうのは分けて考えなければいけない。先月も極域の予測可能性に関する会議がノルウェーであったんですけども、あくまでクライメートチェンジを見る場合には、北極振動はノイズでしか、ウェザーでしかないとの位置づけになっています。北極研究と気候変動(変化)は分離をして考え、気候変動の中の北極振動のパターンの変化といった見方をするべきと考えます。ちょっとこの辺りはしっかり確認しておく必要が実はあると私は思います。今ここで議論してもしかたないんですけども、これまでの作業部会にてインプットされたことが反映されてないなという感じがします。

安成主査

何かコメントありますか。

田口課長

その点に関しては安成先生からもご指摘をいただいておりまして、その上で若干、少し分かりやすくするために正確性を犠牲にした資料になっているということは我々も承知しておりますが、そこはちょっとご容赦を頂きたいと思っております。

安成主査

その北極振動の事も含めまして、まさに大きなターゲットとしては北極圏の気候の理解とその予測に向けた研究と。それに勿論北極振動というものもある意味含まれるんですけど、北極振動の研究をやるということになると、北極圏だけやって北極振動の実態解明になるのかという、逆にそういう声も出てくる可能性もありますので。勿論、北極振動とのいうのは実際にコア寒冷圏、北極圏を含めた天候、異常気象の一つの大きなメカニズム、現象ではありますからね。具体的にモデルの研究も含めて、どういう形でやっていくかっていうのはまさに次のコンソーシアムの仕事だと思います。

他に何か。

福田委員

陸域に関して言いますと、スバールバルは決して陸域ではありません。海洋に浮かんだ島であって、そこでいくら観測しても陸域で起こることの理解には繋がらない。ですから、便宜的にそれを挙げられたっていうのはいいんですけども、コンソーシアムの中ではユーラシアからシベリア、アラスカを含む広域的な陸域っていうふうに捉え直していただきたいと思います。

安成主査

まさにそうであると思っています。

松浦委員

今の事にも関連するのですが、門外漢なので分からないんですけども、私みたいな人間がこれを読んでも、スバールバルは日本の南極基地の昭和基地に相当するというふうに思えます。ですから、南極の昭和基地が日本のものであるように、スバールバルの基地っていうのは日本のものなのでしょうか。その辺が明確に分からないと、今後拠点化するという話をしても事情が色々出てくるんじゃないかと思うんですが。

山内委員

スバールバルを含めて、北極は全て、南極の基地とは色んな事情が違いますよね。拠点を作ると言っても、普通は国があって、皆それぞれの国の中で、共同でどこかやる場所を確保するということなので、南極に昭和基地があることとは大分違うレベルの事かなと思います。特にスバールバルは特殊な事情で、スバールバル条約で各国勝手に行っていい場所ではあるんですけれども、やっぱりこのニーオルスンというところはノルウェーが開いて国際観測村という位置づけにしているんで、そこに日本も参加しているという形なので、北極という特有な状況かなと思っているんですが。

松浦委員

資材を日本から持ち込んで新しい建物を建てるとか、そういう場所ではないんですね。

山内委員

日本用に建物を造ってもらうことは可能なんですね。今はたまたまあるものを借りてるだけなんです。国によっては自分用の建物を造ってるところもあります。

松浦委員

だから拠点を整備すると言っても、やり方が全然違う。

山内委員

質的に違いますね。

杉本委員

スバールバルに関しても、ブイも同じですけれども、北極の研究をこれから進めるに関して、どの程度そこに投資すべきかどうかということも含めて、コンソーシアムの中で検討していくべきではないかと思います。

阿部委員

北極振動の問題に加えて、極域の温暖化増幅(polar amplification)というのは、次のIPCC第5次報告書の一つのキーワードですので、もし北極振動という言葉が外せないのだとしたら、予測の難しさは他地域より大きな極域温暖化増幅が起こるということ、それに北極振動が重なって予測可能性に関する研究が必要であるというふうなロジックにしておいたらいかがでしょうか。極域温暖化増幅polar amplificationっていう言葉を一言加えれば。

安成主査

これは既に財務省に提出しているわけですね。12月の末ぐらいに予算がどうなるか決まると。実際に予算が通った時に、具体的に何をやるかという議論。これはコンソーシアムで、勿論中間とりまとめでかなり議論したわけですよね、ただもう少し具体的にじゃあ予算を含めて何を、例えばモデリングで言えばどの辺をまず優先的にやるかという。polar amplificationも含めてですね。

財務省に出たこの資料はPowerPointの1枚ものですけど、実際には勿論書いてあることに基本的に沿って実施するというのは勿論そうだと思うんですけど。ただ、例えばスバールバルの北極観測基地の高度化、これは必ずしもスバールバルだけに特化した話ではないところですので、そういう意味で他のユーラシア、シベリア、アラスカとか、そういう所も含めた観測をやるということは当然入っていると理解していますが。

田口課長

この資料はあくまでも概算要求のためのアウトライン、ポイントだけを書いたものになっております。一方で、これが政府予算案の中に盛り込まれましたら、そもそも金額も幾らになるのかということもありますが、資料を作り直すことになりますので、その時はまた皆さんにもご相談をさせていただきたいと思いますし、北極研究という意味では、ここに書いてある大きな枠の中でやるということでございますので、具体的な研究計画はコンソーシアムの中で作って各機関が連携して実施していきます、という話になると思いますので、一番大切なのはそういうものを作って実行できるようなコンソーシアムに対して、これから皆さんで議論していただきたいと考えています。それに対して、この紙にこう書いてあるからこうしなきゃいけないというようなことを杓子定規に申し上げるつもりは全くありません。

島田委員

委託金で運営するということで、今の説明でも、コンソーシアムで色々議論して進めるということですけども、実際に、実行予算というのは1月ぐらいから作り始めるという形になりますよね。委託の仕方そのものも、今の所は白紙であるというふうに考えてよろしいのでしょうか。

堀内課長

内容については、大きな趣旨については変更があってはまずいということになりますけど、島田先生がおっしゃられたような考え方に沿ったものを作るということは、今の時点では予算も付いていないので、これからの議論ということで。当然委託を受けたところがどう考えるかということもありますけども、我々のほうから出すわけですので、国のと言うか、こちらの考え方というのは反映できますので、そこのところは先生がおっしゃったようにこれからだというふうにお考えいただいて結構です。

安成主査

実際に予算が付いた時に、このコンソーシアムでいい形の研究プランを作っていくと、これはかなり早急にやる必要が出てくると思うんですよね。その為にもこのコンソーシアムの形を今日是非ある程度のところは議論をしておきたいと思いますので、そちらのの議論に移りたいと思います。

それでは次の議題、コンソーシアムの話ですが、資料2についてご説明をお願いします。

石﨑企画官

それでは資料2を御覧いただきたいと思います。

北極圏環境研究コンソーシアムについてでございますけども、まず中間とりまとめの中に北極圏環境研究コンソーシアムについての記述がございまして、その内容を基本方針として今後考えていく必要があるということで、基本方針を3点ほど記述させていただいているところでございます。

1つは、このコンソーシアムでは概ね5年間で北極圏の気候モデル研究者と観測研究者が協働してシミュレーション結果を解析・検証するプロセスを通じて、モデリングと観測の融合を促進することでモデルの精緻化を達成し、日本の気候への影響等を明らかにしていくということでございます。

それから対象につきましては北極圏の環境ということで、固体地球物理分野、それから高層物理分野、北極圏に含まれない高地は除くということが書かれています。

それから、個別研究だけではなくて、北極研究の長期的な展望、それから人材育成、ネットワーク、国際協力等についてもコンソーシアムで検討できるものにするというような方針も示されているところでございます。

それを踏まえまして、具体的にコンソーシアムをどのようなものにするのかですけども、まずこのコンソーシアムの目的でございますけども、現在この作業部会が設けられておりますけども、北極研究を戦略的に進めていくという観点から、北極戦略会議、これは仮称でございますが、そのようなものを設けまして、そこで基本方針を出していこうということを考えているという状況でございます。コンソーシアムではそのような場で示された国の方針に従いまして、この北極圏環境研究を実施している研究機関、それから研究者の適切な役割分担を果しながら、オールジャパン体制で北極圏環境研究を進めていくというものでございます。

3枚目にございます図を御覧いただければと思いますけれども、先ほど申しました北極戦略会議というものがございますが、これは科学技術・学術審議会の下に置いてはどうかというふうに考えているところでございます。ここで北極研究の基本的な方針を提示していく、あるいは研究評価を行なっていくという機能を持たせたいと考えているとこでございます。

北極圏環境研究コンソーシアムでございますけども、先ほどご説明した目的の下に、具体的には5つほど挙げてございますが、このような業務を担うような内容にしてはどうかというふうに考えてございます。

1つは北極戦略会議が示した基本方針に従いまして、コンソーシアムに参加する研究者等の意見を踏まえながら、具体的にどのように研究を進めていくかという研究計画を策定していただく。それから、その後研究計画を実際に推進していくという機能。そして人材育成。それから国際協力の在り方など重要事項に関する具体的な方針を策定して、その方針に基づき取組を推進していただくということ。それから北極圏環境研究の様々な基盤と言いますか、プラットフォームを持っているような研究機関について、それを北極研究にどう活用していくのかということについて助言を与えていくような機能。それから国際シンポジウムの開催など、研究成果を広報していく、そのような業務を考えています。

コンソーシアムにはその中の組織として、1つは運営委員会を置いてはどうかと考えております。こちらは北極圏環境研究の基盤的な役割を果たしているような研究機関の研究者、あるいは北極圏環境研究を構成する研究分野の研究者から構成することを考えております。

それから、このコンソーシアムの実務を進めていくという観点から事務局を設けるということでございまして、こちらにつきましてはJAMSTECの協力を得て、極地研に設置してはどうかとい考えているところでございます。

なお運営委員会につきましては、ステアリングコミッティーですから、このコンソーシアムについて様々な業務の企画立案を具体的に行うということ、そしてコンソーシアムについての最終意思決定については当運営委員会で行なっていただくということを考えているところでございます。

そして、この北極圏環境研究コンソーシアムには、1つはこの研究を推進する上で基盤的な役割を果すというような研究機関、例えば極地研であるとかJAMSTECでありますとか、共同研究拠点になっているような大学、そのようなものが入る。もう1つは、北極圏環境研究を実施する研究機関・研究者も当然参加をしてもらうということで、特にそういう基盤的な役割を果している研究機関については、研究計画等に従いまして、北極圏環境研究を実施している研究者に対してプラットフォームを提供していくというようなことも考えているところでございます。

日本全体として、この北極圏環境研究というものを戦略的に推進するために、このようなコンソーシアムの形を考えているところでございます。

尚、このコンソーシアムの設立方法につきましては2ページ目のその他というところですけれども、審議会の下に置くというかたちではなくて、北極圏環境研究を推進する上で基盤的な役割を果している研究機関、主要な研究者が発起人となりまして、設立していただくということを考えているところでございます。その意味では、コンソーシアム自体は任意団体という性格の機関といいますか、組織になるということでございます。

具体的な論点でございますけども、資料の1ページ目ございますけども、先ほどご説明した業務自身が、このような業務でよいのかということが一つございます。それから構成員の要件と書いてございますが、これもこのような形でよいのかどうか。それからコンソーシアムの組織2つ、先ほど運営委員会と事務局と申しましたけども、基本的に任意団体の扱いにする以上は、その他の組織についてはコンソーシアムの判断で適切な組織を適時設けていただければよいと考えておりますが、それ以外に必置をするような組織を設けるべきかどうか。それから運営委員会につきましても、その任務の内容でありますとか構成員の資格はこれでいいのかどうか。そして、その他のところでございますけども、先ほど言った発起人による設立方式というようなコンソーシアムの置き方でよいのかというような論点があると考えてございます。

様々な御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

安成主査

まずこのポンチ絵があると思うんですが、これで北極戦略会議、これはまさに国が、科学技術・学術審議会の下で、文科省が直接関係するような北極研究の戦略会議であると。で、その下に北極圏環境研究コンソーシアム、これ基本的には任意団体というか研究者の集まりであると。但し、重要な事は、この北極圏の研究の予算は極地研、JAMSTECに基本的に付くということになっていますが、特にコンソーシアムは極地研が中心となり運営するということですけど、そこに実質的な研究の形を作ってきて、それを実施に移していく、かなり重要なファンクションという。現在この作業部会がありますけど、この数が大体十数人、20人弱ですか、 この作業部会にあたるような役割というのは、どちらかと言うとこの戦略会議にあたるのかなという気もしているんですが、その辺は文科省は何か意見ございますか。

石﨑企画官

一応そのような形で考えてございます。部会は発展的に解消した形で、正式にこれでいきたいと考えているところです。

安成主査

そうしますと、コンソーシアムも含めて、最終的には大きい、任意団体という呼び方をされているんですけど、これがなかなか悩ましいなと思うんですが、ただそこで決まった事は結構重みを持って実施されるかなと思うんですね。どなたか何か御意見ございますでしょうか。

福田委員

この会議の中で一度皆さんにご紹介したアメリカでのこういう枠組みと照らし合わせながら考えてみました。

まずこの北極戦略会議っていうのはアメリカですと大統領の直下においている北極リサーチカウンシルというものが、これ6名です。これには絶大な権力があって、ホワイトハウスに直結しているんです。そしてそこが5年に1遍大きな呼びかけをする、全国大会を開くんですね。SOAっていう、島田先生ご存知のように。そうすると、そこには約600人の全米の研究者とファンディング機関、NSSとかNOAAとかNASAとか、それらが全部集まって、そこで5ヵ年の総括をして、そこで次の目標、大枠を決めますと。そしてその中に、事務局にあたるのがARCUSという組織があって、これはコンソーシアムと名付けられていますけども、それが実は事務局で、会議を開いたり、それから申請書の整理をしたり、それから出てきた議論を纏めたり整理してフィードバックすると。

ですから、イメージとしてはそれと非常に近い形が出来ているんですけども、アメリカでは北極リサーチカウンシルが極めて高い位置にあって、大きな力を持っていると。それは6名ぐらいで、これ研究者だけじゃありません、企業の偉い人とか軍人も入っていますね、それで構成されている組織です。それでコンソーシアムにあたるところは、5年に1遍開かれる大会の事務局になるARCUSというアメリカのコンソーシアムです。

ですから階層的に言うと、よく似ている階層であるんですけども、ただどういうところにどれだけの権限が与えられているか、それからもう一つ重要なのは予算決定権がどこにあるか、そこのところをある程度明確にしておく必要があるんじゃないかなと。そこをしっかりすれば、一つの前例としてのアメリカのやり方をうまく踏襲できるような気がします。

山内委員

福田先生も言われたのと関連するんですが、今紹介されたアメリカとはだいぶ違うのは、日本だとこういう委員会とかそういうところの発言権があんまり無いんですね。だから、一応何か出してはもらうけども、それが必ずしも予算とかに反映されるようになっていないこともあって、そこが本当の問題という気はしますが、そういうことも踏まえても、さっきこの部会がそのまま発展的に戦略会議にと言われたんですが、そこはもうちょっと重みが出るような。今この会で文科省の方は委員としておられるわけじゃないんですよね。 幾つかの省庁を代表するような方が委員で入っていて、そこでの発言は予算化とかに繋がるような、本当はそういうファンクションが必要かなっていう思いが一つ。

それから、ここの額面通りでいきますと、戦略会議は基本方針を定めて、それに従って下のコンソーシアムは粛々とやるというふうに見えるのですが、多分日本的なこういうやり方はどちらかというと下の実行部隊が実質的な研究課題を定めて、それをオーソライズしているのがその上の機関かなっていう。南極観測でもそうやってきているんですけれども、南極統合推進本部が決めた計画に基づいて観測をやるんですけど、実はその中身は極地研が中心で外の色んな方の意見を入れて、計画を作って、それを持ち上げて承認してもらう、そんな形があるので、ここもある程度そういう矢印の関係で。基本方針提示ってありますが、基本方針が上で本当に決まるのは、実は下から色んな意見を上げたものが基本方針にされて提示されるのかなという感じがあるので、その辺は日本的と言うか、そういう形を維持していただきたいなという気がするんですね。この文章も、「国が定める基本方針に従い」となっていますけど、中身はどうかなという気はするので。

杉本委員

私も今の山内先生のおっしゃった事に賛成で、例えばこの研究の基本方針の提示をする北極戦略会議のところで全てが決まってしまうとすると、結局さっきと同じ議論がまた繰り返されることになると思いますので、このコンソーシアムの中で十分に揉まれて、運営委員会で意思決定されたものが提示されて、それを審議してオーソライズするという仕組みがいいんじゃないかなというふうに思いますね。

安成主査

私からもコメントですが、この北極戦略会議の基本方針は、基本的にはこの中間取りまとめが一つの大きな基本方針だと思います。それは皆さんも議論に参加されて、合意に達した言葉が書かれているわけで、それが一つの大枠で、それに沿って実際に何をどうするかというのをコンソーシアムで議論しましょうと、そんなイメージかなと。

先ほど福田さんがアメリカの例をピックアップされましたけど、違うのはアメリカは研究者が数百人いて、ファンディングもNSFだけじゃなくて色んなファンディングがあって、それを全体的に、政策的にも、北極研究をどうしていかなけらばならないかというのをARCでということだと思うんですね。我々の場合は、こういう方向の研究をすべきだっていうのはこの戦略会議で議論して、それに沿って実際にどうするかという。

福田委員

アメリカでもボトムアップです。全く同じです。皆の意見を集合して、それを実行する時に、色んなファンディングリソースがあるから、それが重ならないように国の方針を決めるという、そこがこの戦略会議の役割ですね。

阿部委員

文科省で他の、例えば理工学分野や医学・教育分野でこのようなコンソーシアムみたいな形をとって成功しているとか、あるいは参考にしているっていうようなものがあるのでしょうか。

田口課長

コンソーシアムという形式では、必ずしもまったく同じ形にはなっていないんですけど、例えばライフサイエンスで、バイオリソースでネットワーク形式って言うんですかね、役割分担をして、このバイオリソースはこの研究機関にということで整合性をとって、プロジェクトを進めていく例ですね。あるいは、材料系ですね、機器の利用なんかもそれぞれ高価な機器を分担して持って、皆で共同利用して進めていくっていうような枠組みがございますので。

それから福田先生の言われた事との関係では、やっぱりアメリカのような形式が取れるかどうかというのはやっぱりコミュニティの大きさがあるんじゃないかと思うんです。例えば日本でも原子力とか宇宙はまさに原子力委員会とか宇宙委員会がありますけれども、少人数でそれなりの権限を持って物事を決定して、それで全体を動かしていくという仕組みでやっているので。なかなか日本の北極研究でそういう仕組みをとることが効率的かどうかと言うと、お互いの研究者が意思疎通をとれるような研究の進め方・体制っていうのがあるんじゃないかと考えます。

大畑委員

北極戦略会議については、やはりそれなりに重みを持った組織にしたほうがいいかと思いますね。この部会が移行するというようなご発言がありましたけれども、この機能が上と下に分かれるってことじゃないかなと思うんです。戦略会議のほうは国として研究に何を期待するかとか、そういう議論をして、それを下から上がってきた具体的なものを実行に移していただくという、そういうファンクションじゃないかなという気がします。当然コンソーシアムの人間は何人かいないと意思疎通が悪くなると思うんですけど、そういう性格じゃないかと。

それからこのコンソーシアムが研究を行う所かっていうのが。研究状況の報告とかはあると思うんですけど、このコンソーシアムというのはコミュニティーの情報の流通をよくして、日本の北極研究の構想を作る。それから研究計画もいいんですけど、大事なのは何が足りないかっていう議論で、何をやりたいかは個々に色々あると思うんですけども、全体を見て、10~20年先の事を考えると、どういう事を日本はしなくてはいけないのか、寧ろギャップを意識して考えていくってことじゃないかなと。そうなると、研究計画を作るというより、研究構想というか研究のフレームワークを検討していくという、そういうことになるんじゃないかなと思います。

藤谷委員

今の話に関係するんですけど、資料2の案で行きますと、最初の基本方針のところで非常に個別具体的で非常に排他的な表現もあるので、ここのところが中間とりまとめの内容だと言われるんですけど、コンソーシアムの性格をもう少し議論したほうがいいと思います。

安成主査

まさにその通りだと思うんですが、ただ、例えば何が足りないかとか何をどうすべきかとか、それだけに特化すると、例えば、学術会議の分科会とか委員会ありますよね、そこでまさにそれをやっているという。だから、例えば学術会議にそういう北極圏環境研究分科会みたいなものを作っても構わないと思うんですね。但し、実質的にある程度予算が付いているわけですね。それをどう活用するかという問題があります。但し、非常に大々的な観測とかは、これで丸ごとできるかと言うと、多分できないですね。勿論他のリソースを持ってこないといけない。そうすると、場合によっては他省庁の予算なんかも含めて考えて、だから文科省だけじゃなくて関係他省庁の関係者も入って、できるだけ考慮していただくような方向で動いていただくんではないかと。そういう機能というか関係が必要かなと思うんですけど。ですから、その学術会議的な機能プラス、実際のある程度大きな枠として、ここの枠では何をやるんですかという基本方針ですね、これは中間とりまとめで議論したような枠になるかなというのが私の理解なんですけど。

島田委員

福田先生おっしゃられたように、アメリカとかヨーロッパもそうなんですけども、こういったコンソーシアムのメンバーっていうのは大抵の場合は国際委員会の委員をされているという風に、国内の部分と国際的な繋がりとを双方持ち合わせながら進めている面があるんですね。特に船なんかの研究の場合はそれが無いと物事を調整できない部分があるんで、ボトムアップは基本だと言っていいと思うんですけども、我侭ではない、世界的に見てこう進むべきだ、これだったら調整できるっていう、実現可能だっていうところも含めて、そういうファンクションもこのコンソーシアムの中にあったほうがいいかなと思います。

大畑委員

まさにそうでして、かなり大きい部分になるんじゃないかなと思います。どうしても国際計画絡みですと、各研究者がその計画と繋がって、国内ではばらばらに対応しているっていう状況が非常によく見えていて、日本としての力を発揮できない。バラバラに、どこかの国際計画に、悪い言い方をすると利用されているという。そういう側面はしょうがないんですけれど、やはりそれを力にしていく、日本なりのビジョンを持って、うまく国際計画・委員会を動かしてやっていくという。このコンソーシアムはそれを行う必要があるところだと思います。

安成主査

今島田さんと大畑さんが言われた事はかなり重要で、所謂国際プログラム、プロジェクトは、世界にたくさんあるんですけども、そこから事務局を引き受けてくれと言われても、日本はできる枠組が無いんですね。ところが、中国とか韓国は、国がコミットして非常に強くそういうものを持っていて、それがそれぞれの国のビジビリティになっている。そういう意味で、せっかくこういうものができるということで、広い意味で北極圏環境研究に絡めた、そういう国際プログラム、プロジェクトの日本の役割をちゃんと担えば、場合によっては国際的なお世話役もできるような、そこまで含めた機能は一つ重要かなと思うんですね、コンソーシアムには。

例えば今島田さんなんか関係されているプロジェクトもそうだと思いますし。例えば大畑さんが関係されているCliC、WCRPの、これは寒冷圏ですが、その中でも北極圏っていうのは非常に重要だと。それから例えば寒冷圏の生態系ですとIGBP関係もあって、そういうところから、日本は結構お金があるはずなのに何でそういう国際プロジェクトなんかのオフィスをやってくれないのかと、ずっと前から言われているんですね。

だから、特にこの北極圏の環境ということで、そういう役割を果せるようなものがあれば、このコンソーシアムの中の一つの役割として、色々テクニカルな問題はあると思うんですけど、場合によっては考慮する必要があるかなと。

山内委員

今言われた事は大変重要な事で、コンソーシアムに限らず、今回のこの北極研究をどうしようかという議論の発端はその辺にあったんだと思うんですけど。色んな活動を皆さんしていても、それが個人としての対応を超えられなくて、そういう意味で日本としてのパワーがなかなか示せないというところが、欠けていた一つの事かなと思うんです。そのためにこの半年特に議論してきたかなということなので、そこが非常に重要なこのコンソーシアムの役割かと思います。

それからもう一つ、さっき大畑さんが言われた、ここは研究する所ではないと言われたところはかなり微妙な所で、研究の実施部隊ではないですね。それはそれぞれの所属する機関であるし、大学とかであると思うんですけれども、そこがどういう方向でどうやっていこうかという、そういう共同研究グループではあり得るのかなと。予算を出して何か物を買って、何かをどこかに作って、計算するということはそれぞれのところでやるでしょうけどれども、研究総体としてということでもいいのかなと。これが全部それとは限らないと思うんです。それは必要に応じて分科会的なものを統制して。

安成主査

中間とりまとめの中で、観測のコミュニティーとモデルのコミュニティーをどう使えるか、使うかという相互作用というところもひとつ議論になったと思いますが、モデルの立場から阿部さんとか野沢さんとか、コメントございますでしょうか、コンソーシアムについて。

阿部委員

プロジェクトの国際対応ということもありましたけども、もう一つ大事な点というのは、モデルと観測、あるいは、いろんな分野が違う人たちがいっしょになって論文を出して共同執筆をして、成果を出していくというところは、いい機会にできるんじゃないかなと思っています。ヨーロッパの小さい国でもモデラーと観測屋がいっしょになって論文を書くというのがどんどん出てきているように思っているんですけど、やはり日本だと、予算の取り方、グルーピングですとか組織だとか、どうしてもちょっと競争関係があったりして、腹を割って論文をいっしょに書くというところまでいかなかったりしてですね、今回は絶好の機会だなと思っています。ですから、オフィスを引き受けるほどの人はいなくてもですね、論文の書けそうなテーマ、国際的にも注目されている自分たちの威力を発揮できそうなテーマを見つけて、一つでも多く共同論文を書くというような、具体的にアイデアを出し合うというような機会にしたいと思っています。

野沢委員

おそらくモデルと観測に限ったことではないと思うのですが、国内にいらっしゃる研究者の北極に関する研究の交通整理と、それらを有機的に結びつけるという部分をこのコンソーシアムでやるべきだと思うんですね。モデルに関していえば、例えば、最初に島田さんがおっしゃったように、海氷の厚さが、今何メートルくらいなのかっていう部分がかなり大きな問題であって、モデルセンターによって全然違っているんですね。その厚さが違うことによって温暖化の程度がずれてくるんですよ。それははっきり分かっていますので。そういうところは将来予測の精緻化という意味でははっきりないと困る、モデルの立場としても。そういうある意味で隠れた情報を交換しつつ、有機的に進めるにはどうしたらいいか。それで、日本の世界における立ち位置を高めるというか、方向に進めて行ければいいんじゃないかなと思っております。

福田委員

それはひと言で言うと、機能としてはコーディネーションだと思うんですけど。国際的ないろんなやりとりをうまくアレンジする機能。それから研究領域や研究対象や分野の違いをどうやってお互いに意思疎通をはかるかというコーディネーションというのが、この機能としてはコンソーシアムでは一番重要な位置づけになる。それと実行部隊をうまくコーディネーションするっていう、そういうふうに位置づければ機能としては明確だと思います。

安成主査

コーディネーションをやるというのは非常に重要な機能なんですけど、具体的にじゃあどうやったらコーディネーションできるのかというところでね。ひとつはですね、今阿部さんが言われたように、いっしょに論文を書くということは、まずコンソーシアムで北極圏の気候のモデリングで何が問題かということを議論してもらって、観測の情報が足りないと、そこで関連する観測屋さんも参加してもらって、そこで実際にやりましょうというときに、まったく予算がなければそのための科研費を取りましょうみたいになってくるんですけど、今回は、ある程度の予算がつくでしょうという期待があるんですけど、その範囲である程度のことは可能かなと思うんですね。ただし、大々的な観測を丸ごとというのはとても難しい。いろんなレベルはあると思うんですね。そこのところはケースバイケースで考えていかねばいけないのかなと。

大畑委員

このコンソーシアムの中でやることなのか、例えば、極地研でそういう課題を設定して極地研がやると。僕のイメージとしては、後者じゃないかなと。コンソーシアムの中でこういう方向で進めるべきだという議論をして、それを反映して極地研がそういう課題を設定すると、それで人を集めて具体的に研究をするというイメージ。その辺のイメージをちょっとそろえておかないと。

安成主査

極地研にはコンソーシアムの運営という予算がついていると。その運営の部分と共同研究の実施と。だから極地研究所の方に、全国共同利用の研究所ですから、例えば、モデルを含めた共同研究について、議論するのはコンソーシアムでやって、これはぜひやるべきであるということであれば、極地研の方で共同研究として優先的にとらえると。そういう仕組みがあれば、それは技術的にはその方がいいのかなと。コンソーシアムそのもので研究するということでなくて。だからコンソーシアムの議論は、この極地研の共同利用研究の実施というところと対にして考えてもいいのかなという気がします。

杉本委員

JAMSTECの方はどういう感じになるんでしょうか。

大畑委員

JAMSTECでは船に関する共同利用は積極的にやるんですけど、それ以外、仕組みができてないというのが現状でして、それをなんとかするかどうかっていう話ですけどね。

安成主査

これはかなり悩ましい問題で。とは言いつつ、JAMSTECには地球環境変動領域というのがあってかなりの研究者がいてですね、そこに陸域とか、気候モデリングをやっているグループもかなりいるわけですが、そこのところをどういう具合に、ちょっと将来的な方向が絡むかもしれませんけれど、そういう研究は極地研に持っていった方がいいのか、あるいは、JAMSTECの中でやるかについては、ちょっと別の議論になるのかもという気がします。

大畑委員

ちょっと伺いたいのは、海洋をやっている島田さんなんかから見ると、そういう共同研究のかたちというのは、JAMSTECは今のままでいいのか、変えた方がいいのか。

島田委員

共同研究というかたちで、コンソーシアムの方向に合致するものを極地研が立ち上げるという意見がありましたけど、アメリカの場合は、ある特定の中核機関に預けるということをしません。それはある意味すごくリスクがあるんですね。本当に優秀な研究者、リーダーがいれば、中核機関がコンソーシアムの中心機能を果たすことはあります。でも必ずしも大きな組織がやるとは限らないんですね。そこのところは、コンソーシアムにもっと権限を持たせた方がいいんではないかと。

それで、JAMSTECの「みらい」の共同利用に関して言うと、共同利用といっても、いわゆる共同利用「型」なんですね。その共同利用「型」というのは、たとえばコンソーシアムでこれをやるべしといったものが反映されるシステムになっていない。その「型」というところは、あくまでJAMSTECの北極海洋グループの意向に従ってメイン・ミッションが決められる。そのメイン・ミッションにバッティングする課題、もしくはそれとはまったく違う課題になると、一応運用検討委員会がありますけども、事実上は主課題の意向でほぼ決まっている。だから本当の意味での共同利用ではない。

船の本当の共同利用というかたちをとるのであれば、白鳳丸、淡青丸の形式をとらなきゃいけないんです。「みらい」に関してもそれはさんざん議論していて、ある程度のシップタイムは100%フリーの共同利用にするべしという意見もコミュニティーの中にはありますけれども、現状はそうなっていない。だから共同利用型っていうのは、はっきり言うと、JAMSTECの邪魔をしない課題に関しては乗っけますよというものなので、共同利用には実際はなっていない。そういう面で、その主ミッションをどうするかというところに、このコンソーシアムがいかにコミットできるかが重要になります。あとJAMSTECの中では、来年、再来年は北極海観測航海は予定されていないですが、これは競争社会の結果です。船も皆さん使いたいので。その中で北極の重要性というか、コンソーシアムでちゃんと協調してバックアップして、みんなが使える船っていうものを確保できるように努めるのが大事じゃないかなと思います。砕氷船なんかをチャーターしてそれを使って参加できるようなことも必要かと思います。

阿部委員

モデルの方もまったくよく似た事情で、モデルの方もこれだけ北極振動と温暖化っていうことが問題になっておりますけれども、その予測可能性を上げるためには、たくさんの実験をして、何百回何千回に1回起きるかもしれないこと、あるいはその確率も含めて、不確実性も含めて評価しなければいけないので、北極の研究というのはかなり計算機資源を必要とするはずなんですね。そういう意味では、今回JAMSTECの中のたとえばES2の議論にからめてですね、コンソーシアムとしてある程度特別枠を持つのかどうかとか、そういうところは非常に気になるところで、今の場合だと、個人研究をした人は、個人研究枠で地球シミュレータの計算時間をとりにいくという、かなり計算資源的には厳しい。必要性として北極振動の解明、モデルの高度化といった大きな課題を掲げているわりには、資源が伴わないという危惧を持っておりますので、そのあたりの手立てを御願いしたいところです。

田口課長 

資料2を作るにあたって、我々の方で議論したわけですね。「みらい」にしても、あるいは極地研のスバールバルにしてもですね、共同利用ということなのですが、コンソーシアムとは何かという議論と直結するんですけれども、コンソーシアムとしての研究計画を作りましょうと書いてあります。その研究計画の範囲について議論する必要があって、およそ日本がやる北極研究全てを書く必要はないし、研究者個々のやりたいことを縛れるものではないけれども、やはり戦略会議の基本方針から下りて来て、下りて来てという言い方も適当でないかもしれませんけれども、それに沿って日本の北極コミュニティーとしてこういうことをやったら重要なので、これをやろうという研究計画を作ってもらう。その中には、当然モデルと観測が一緒に作業するような研究を計画の中に入れていくというのも含むわけですけれども、そうすると、その研究計画に載っているものは、例えば、スバールバルにしても「みらい」にしても優先枠と言うか、ある程度優先的に利用ができるようにしないといけないのではないかと。もちろん全部というわけではないですけれども。そうしないと、コンソーシアムに参加して、コンソーシアムとしての活動、コンソーシアムを結成する意味がないのではないかという議論はしておりました。

今、阿部先生がおっしゃったように、確かに計算資源の話があるので、それは北極のコンソーシアムで議論した話を、ES、ESだけではなくてHPCIという神戸にできるスパコンもありますので、そういうところにきちんと優先度の高いものにして、これは役所側である程度組み込んでいくことはやらなくてはいけないという考えです。少なくとも、今回の「みらい」とスバールバルの話については、どこまでコンソーシアムとしてのバインディングされた計画を持つのかというのと、それとどれだけ設備等の資源を優先的に使えるかという話が多少リンクするのかなというふうに考えています。

安成主査

戦略会議での声が、例えばESの担当に反映されるような仕組みはいるのかなと思うんです。それがないと、せっかく大事だと言っても、もちろんコンソーシアムの予算内でできるようなことだったらいいですけれども。戦略会議にどういう人をいれるかというところも絡んで来ると思います。

福田委員

日本の研究機関が持っている海外の研究拠点の有用な活用という点で、スバールバルが出ましたけれども、アラスカ大にある国際北極研究センターは立派に日本の財産ですので、半分は。それは規模から見ても費用から見てもスバールバルより遥かに大きな資産であるし、有用な研究資本だと思っているんです。今までの議論では全く出ませんでしたけれども、非常にもったいない。そのためには、コンソーシアムで作った研究計画を極地研にのせるのではなくて、やはりコンソーシアム自身として研究計画をしっかり作って、その基で優先度を高めて、例えば、研究計画グループが拠点を設けて研究を展開すると。そういうときはもう一歩踏み込む必要がある。極地研にとどめないことが重要だと思います。

安成主査

今のご意見は非常に重要だと思います。IARCには実質的に文科省から相当お金がいっているわけです。やはりその分を活用して、例えば、IARCの主立った研究者の一部にコンソーシアムに入ってもらうとか、IARCのディレクターに戦略会議に入ってもらうとか。それで、これはIARCでやってくださいよとか。そういうことだってあり得ると思っていますし、是非考えた方がいいんじゃないかと思います。

大畑委員

IARCに関しては、実際に担当している人間として、まずコンソーシアムで考えた方がいいんじゃないかと思います。それで、日本の研究の一部拠点となっていますけれども、それをどう活用していくか、運用していくかというのはもう一つシビアな議論が必要な段階ではないかなと思います。

それから、言葉のことなんですけれども、北極圏環境研究、「北極圏」という言葉を今まで使って来たんですけれども、本当に作る段になると確定しなくてはいけなくて。それで、北極圏というのは66度以北の部分を示していまして、それなりの定義があると。しかし、ここで議論してきた範囲は、もうちょっと広い範囲で、シベリアとか温暖化で非常に変動の大きいところまでを含めてという。他の分野の人が北極圏という言葉を見ると、66度以北をやるんですねという印象を抱くと思うので、我々有志の集まりでは、北極域という言葉を使っています。ちょっと曖昧ではあるけれども、あまり限定的ではないと。それを考えていただければと。

それから、コンソーシアムの主な業務のところにプラットフォームという言葉があるんですけれども、これは研究基盤という意味だと思いますけれども、船、観測拠点、それ以外にデータとかモデルも研究基盤になると思うんです。プラットフォームというとどうしても物という、研究拠点という意味合いが強いので、研究基盤として、データ等も含めていただきたいなと思います。

安成主査

北極域と言うともっと狭くならないかという気がしたんですけど。難しいところです。シベリアなんかはいわゆる寒冷圏・北極圏に当然入ると。厳密に緯度の問題ではなくて。北極域だとどうですか。私には、北極海とその周辺だけというイメージがあるですが。

山内委員

圏を入れられたのはどなたなのかなと思ったんですけれども。

安成主査

私が入れたんです。

山内委員

この部会は北極研究検討作業部会ですね。何も入れないのはまずいんでしょうか。 何も入れない方が好きなんですが。

安成主査

そこは、いろいろ議論があるかと思うのですけれども。私は、北極海とそれからいろいろ気候とか環境とかで密接に絡んでいる領域ということで、そういう意味で北極圏というのを使ったので、北緯何度以北というイメージで使ったわけではないんです。

山内委員

入れない方が広いかなと思うんです。

安成主査

皆さんどうですか。

それからプラットフォームの件で、基盤という言葉。先ほどスバールバルの話をされていますけれども、これはコンソーシアムで議論していただくと、スバールバルをどうするかということはone of themになる可能性がある。日本の気候を考えたときにどこが重要かという意味では、スバールバルじゃなくてということが出てくる。むしろ共同研究ではIARCなんかが重要になってくるということで、基盤ということで考えるべきかと思います。

それから他に何かありますか。いろんなアイデア、細かいことでも、包括的なこと何でもいいんですけど、ご意見をぜひいただいて。予算が年末あたりに決まって、来年の予算の実行をどうするかというのが、年が明けたら出てくる可能性がある。コンソーシアムについては、ここで今日メンバーまで決めるというわけにはいかないと思うんですけど、だいたいこういうかたちで進めるというのははっきりとしておきたい。

石川委員

コンソーシアムの仕事に人材育成というのが含まれていますけど、今日の話でそれがほとんどなかったような気がするんですが。皆さんどのようにお考えでしょうか

安成主査

何か具体的なアイデアございますか。

石川委員

大学が中心にならなければならないと思いますし、博士課程の学生をサポートするような体制もあってもいいのかなと思いました。

安成主査

非常にいいアイデアだと思います。それは、可能なほどの予算があればという気がするんですけどね。額は少なくとも、そういうことを考えることは重要だと思います。今各大学、グローバルCOEプログラムを実施中で。予算は非常に限られたものがありますけどね。北極研究をやりたいという若者を育てるという。

福田委員

榎本さんのところで、北極大学構想というのが前、あったんじゃないですか。

榎本委員

大学の機能という話が出たので、コンソーシアムの理念の話から出て、どういうメリットがあるか。せっかくいい提案しても、そこに求心力がなくて、集まってこなかったらそれで終わってしまう。世界の先端に出て行くような研究のことばかりに目は奪われているけども、すぐ後ろにポスドクの問題があって、その下の新しい研究者を育てる、というのがあるので、ぜひつなぎとめて。もっとアウトリーチとか出てくると思うんですけど、取り組むことは重要かと思います。コンソーシアムの中でというような話になるかもしれないですけども、抜けてはいけない。

それで、北見で前にご紹介しましたけども南極大学というのが北大を中心にしてある。日本の南極大学なんですよ、北海道大学にある。北大の中に移したかたちで募集を行って運営した。学外からの参加、海外からの参加は難しい。そういう窓口みたいなものをどこかのシステムで、北極につながる学生の興味を持たせるということで。南極大学に参加したからといって南極の先生になるわけじゃないですが、広い意味での研究基盤をそこでつくっているということで、うらやましく見ていました。北極においてもそういうことができたらいいと思っています。

安成主査

具体的には。

榎本委員

いろんなキャンペーンに学生が参加できれば。アメリカとかですと、観測に学生が参加していたり。

安成主査

観測研究とか、北極研究がらみで。

榎本委員

学生の参加も認められるとか。第一線の研究者でないとそういったところに潜り込めないので。もう少し枠を、教育という意味でも入り口があってよいのかなと。

阿部委員

そういう大学の学部や大学院の育成ということも人材育成ですが、ポスドクあるいは博士を取ったような人達が少し分野を変えて北極研究をするという人材を育成することも大事だと思います。また、モデルで学位を取ったけれども観測を経験するとか、観測で学位を取ったけれどもモデルのアウトプットを解析するようなことを経験する、そういう両方のことができるような人材を育成するというのは、確か以前話が出たと思いますけれども、やはりそれも人材育成として考えてですね、しかも即応性のある論文を書くというかたちで成果を出していくという。それは少ない限られた予算でもある程度いい成果を上げられるんではないかと考えます。

安成主査

今の皆さんのご意見、非常に大事だと思います。ポスドク研究員に関しては、このコンソーシアムの予算がある程度つけば、その中で北極研究という枠で、とくにコンソーシアムでリコメンドされた研究をやる人というかたちで何人かを推し進めることはできると思いまし、やるべきだと。

大学院の育成、どこか観測研究に連れて行きたいと。経費ということもあるし、それは現実的にある程度科研費とか予算があればある程度のことは何とかできる。ただし、もう少しシステマティックにやるために、例えば、極地研究所は総研大の大学院もっていますよね。例えば、総研大の大学院に、北極圏研究コースを設けて、そこに行った人はRA経費を出しますよとか、そんなかたちで、できるだけ北極研究を進めるような一種のインセンティブをつけるみたいな、そういうことはできないですか。可能性としては。

山内委員

可能性としては十分にできると思います。今は極域科学というコースが一つあるだけなんですけども。南極に行くんで、大学院のまま、隊員にはなかなかなれないんですけど同行者というかたちで南極に行って研究をするという。サポートはあまりシステマティックではないんですけど、そういうのがある程度システマティックにできるようになっていると、希望する人は増えていくんじゃないですか。筋道はあってもそういうサポート体制が必ずしもないので、なかなか。総研大の極域科学に求心力がないこともあって、そこに行っても何も違わないじゃないですかと言われる。

杉本委員

南極大学もそうなんですけれども、一つの大学だけですと北極圏をやっている研究者の数はそんなに多くないですね。北極大学とかそういう北極に関係したコースのようなものを立ち上げる際には、ぜひ大学間で協力しながら全体として学生を育てるということをやる必要があるのかなという感じがしています。私のところは実際に、北極圏に今年の夏も8名ぐらいの学生をいろんな予算を探して連れて行っていますけど、学生を連れて行くということはそれほどやさしいことではないので、いろんな安全の問題とか、クリアしなければならない問題があって、決してやさしくはないんで、そういうのをシステマティックに、いろんな大学から参加してやれるような仕組みがあるととてもいいなと思います。

藤谷委員

ちょっと実務的な話なんですけども、この委託予算ですけどもどれくらいの期間を考えておられるのですか。それによってだいぶ話が変わってくると思うんですけど。

先ほどから、いろんな研究計画の話をコンソーシアムで議論するというんですが、コンソーシアムは来年度ですよね。ところが予算の話は来年度からするから、今年度からいろいろ議論しないといけない。それをどう担保するかということが実務的には急だと思うんです。

安成主査

それについては、正式には来年度かもしれませんけど、私はコンソーシアムは自主的に今年度に、予備的なかたちになるかもしれませんけど、発足させるべきだと思っています。 

人材育成で悩ましいのはですね、システマティックに進めようと思ったら、5年間しかサポートがないといったら学生にとってはあまり意味がないケースもあるんですね。これはグローバルCEOでも常に問題になっているわけですけど、少なくともポスドク研究員というのは自主的にこのコンソーシアムで研究を担う人を担保するというのも含めてですね、重要なのかと思います。

山内委員

今藤谷委員が言われたことで、予算の概算要求みたいなものは、「何ヶ年計画」なんでしょうけども、私の印象では、どっちかというとこのコンソーシアムは5年じゃなくて、未来永劫というのは難しいでしょうけども、予算にかかわらず、常設でこういうコンソーシアム体制をこれからやっていこうということじゃないかなと思っています。予算がクリアできないときがあっても、それはその時々でいろんな手段で何とか続けていく必要があるかなと。そういう意味で、基本方針に概ね5年と書くべきかというのは、ちょっと疑問に思います。

それから役割としていくつか出て、人材育成等いろいろ、国際協力、あとさっきはプラットフォームの中にデータということをおっしゃった。データの公開利用とか、データベースを作る、本当に作る作業はどっかでやるにしろ、方向性を出すとか、そういうのもかなり大きい役割かなと。それから広報、アウトリーチとか。

安成主査

それは国際会議とか、そういうことですね。

コンソーシアムの予算は5年だけども5年で終わったら意味がないと。その通りで、これはまさにある意味で極地研の決意次第であるということですね。それで極地研と文科省で御相談しながらできるだけ継続できるようなかたちを考えてもらうということが大事だなと思うんですけど。

それで、今日はいろんなご意見をいただいて、まず暫定的に予算がある程度この年末に決まったときに、それに対応してどうするかと。もう集まるような会議の経費も今年はあまりないと聞いていますので、それでとりあえず、少なくともここの作業部会の委員の方は、暫定コンソーシアムにはとりあえず入っていただくということで、どうでしょうか。ご了解をいただきたいと思いますが。もちろんそれプラス何人か必要な場合は、ということになりますね。

そこで、この中間とりまとめの案がありますので、もちろん予算がどのくらいだとかいうことにもよりますが、本日いろんなご意見を出されたんで、可能な範囲でまずここから何をやっていくかというのを、今日はとても議論できませんが、今後の進め方としては、とりあえず暫定的なコンソーシアム、準備会のメンバーとしてこの作業部会の委員の方は入っていただくと。それで、場合によってはプラス何人かというのは、私と何人かの極地研、JAMSTECの担当の方とも御相談して、場合によっては入っていただくということが必要かなと。

それで、来年度の実行というのはいつ頃までに何を出さなきゃいけないのは、どうですか。事務的なプロセスは。

田口課長

新規の予算ですと、使えるのが4月1日以降ですから、4月1日から本当にお金が使えるようにしようとすれば、2月からいろんな詰めをやっていかなきゃいけないと思います。あとは準備が間に合い次第、契約をしてスタートということになりますので。そういう意味ではそんなにギリギリとしたスケジュールがある訳ではありませんが、なるべく早くということであれば、3月の頭くらいにはお金の使い方の計画みたいなものができていれば、4月までに契約が完了して、4月1日からスタートできるということです。国会で予算が成立することが前提になりますが。

ただ、そこはむしろ拙速よりは多少1~2ヵ月遅れてもきちんとしたものを作って始める方がよろしいんじゃないかと思います。

安成主査

年度内にコンソーシアムを暫定的に開催するのは予算的にはきびしいですよね。

田口課長

そこは、当課の予算はありませんけど、できる限り工夫の努力はしてみたいと思っていますが、それは今なかなか申し上げられないので、決まった後に御相談させていただければと思います。

安成主査

わかりました。

そうしましたら、今、いろんなご意見が出て、コンソーシアムの機能としては、いろんな分野の人のコーディネーションと研究のインテグレーション、それに基づいたプライオリティのある研究を考えていこうというのが機能ですね。それに基づいて、なにがしかの予算がついたときに、どう使うかということを考えていくと。その場合に多分いろんな必要性が出てきて、先ほどモデルの方でいえば、ESをどうするかとかですね。

それで、今の国際的な対応のことを考えても、現に、いろんな国際的な対応の日本の窓口のコミッティーというのは、基本的に全部学術会議にあるわけですね。今、北極研究に対応したような分科会とか委員会とかありますか。

山内委員

今、限定的に地球惑星科学委員会の下の国際対応分科会の下に、IASC小委員会というのがありますね。あるんですけど、かなり限定的で、もっと他にいろんな対応が必要だと思うんですが。

安成主査

場合によっては、少なくとも小委員会レベルのものは持っていた方が。地球惑星科学委員会にぶら下がるとか。今のIASCを少しモディファイしたかたちで統合するとか。それは是非考えた方が。

山内委員

ひとつはIASC小委員会で、今、IASCの体制が変わろうとしていて、IASCにいろんな分野のワーキンググループを作ろうとして、そこの委員の関係の議論がされているのが一つ。

それから、IASCの他にも南極はSCAR小委員会があって、それは私がやっているんですけど。それとは別にIPYというプロジェクトに対応するIPY対応小委員会と、3つに分かれているんです。

今、我々がしている議論は、ちょっと分かれすぎているんで、極域の分科会ぐらいにしてですね、もう少し小委員会のレベルを上げて広くしたらどうかという議論をそちら側ではしています。それともっとリンクができるようにと、そういうことを考えていく必要があるのではないかと思います。

安成主査

極域の分科会というのは南極も込みで。

山内委員

はい。今は小委員会なので、できれば極域の分科会などに昇格できればいいんじゃないかと思うんです。

安成主査

その辺は対応するのを考えて。とくにこのコンソーシアムの国際的役割を考えたときに、I世界的にみるとどうしても日本の窓口は学術会議になっていますので、かたちはなんか作っておいた方がいいかなという気がします。それが一つですね。

同時に、基本的にはこの中間とりまとめの中身に沿って、予算の話のときには、何人かの方に場合によっては集まっていただいて、たたき台を作ると。その作業は年を越えたころで、3月末までに出てくる可能性があるのかなという気がします。

それで、資料2はまだあくまで案ですから、いろんなご意見を踏まえてと修正を行うということを考えているのですが、正式にもう一度部会を開くのはちょっとできそうもないということですので、一応私、主査と、それから少なくとも極地研とJAMSTECの方も入っていただいて、たたき台の修正を事務局と相談しながら進めたいと思うんですが、よろしいですか。もちろん修正案はみなさんに投げて、コメントを頂くというのは当然やるんですけれども。それをできるだけ早めにやっていくということで。

他にコメントありますでしょうか。

福田委員

(2)の主な業務の中で、最後のところ、「国際シンポジウムの開催など研究成果の広報を行う」、この広報は非常に重要ではないだろうかと。特に研究者レベルではなくて、一般への広報というのは非常に重要で、例えば南極研究でも、いったい何がなされているかよく見えないというところでひっかかってしまう。ですからやはり、こういうところで特別に研究しているということが、いかに一般の人に伝わるかというところに、業務の内容として位置づけることだと思います。

安成主査

そうですね。そのためには、それを専念してやれるようなスタッフがいるということですね。それは最低必要だと思いますね。確かに、南極でもメディアが昭和基地を取り上げたりすると、結構それで盛り上がりますから。最低ホームページも含めて、先ほどの広報。これは当然人がいないとできないですね。

杉本委員

名称を早く決めていただきたいということと、同時に英語の名称もないと、いろんな人と話をするのに説明ができないんで、ぜひ日本語の名称、英語の名称を、名称だけでも先に決めていただければなと思います。

安成主査

皆さん、どうでしょうか。今は仮に、北極圏環境研究コンソーシアムとしていますが。先ほど圏というのに対していろいろとコメントがありましたが。

杉本委員

私は、圏はなくてよいのではないかと。英語にしたときに、圏をどうやって訳すのか。Arctic Environmentでいいんじゃないかなと。

安成主査

じゃあ日本語は、北極環境研究コンソーシアム、英語では、Arctic Environment Research Consortium あるいは、 Research Consortium for Arctic Environment。そのへんはネイティブに確認して。圏は取るということで。

他に。

島田委員

IASCの作業部会のメンバーの一部を日本はもう決めています。1月の12日から14日ポツダムでその1回目の会議があります。また、3月27日と4月1日にもソウルで会議が開催されます。日本の意志決定はどうなっているんだというのは各国から問われることだと思いますので、まず名称と、予算措置されたらこんな方向性でって言えるくらいにしておく必要があるかと思います。

もう一つ、さっきの教育のことが話題になりました。南極に関しては、海鷹丸という東京海洋大学の船が、「しらせ」から任務をバトンタッチして海洋観測をやっています。海鷹丸は耐氷船で、「みらい」と同じ性能がある船だと考えてください。8月から10月初旬まで、ちょうど、通常耐氷船が北極に行ける期間、東京にずっと停泊しています。先ほど、南極大学、北極大学という話が出ました。海鷹丸が停泊している期間には専攻科学生の乗船履歴として学生はそこに滞在はしているんですけども、もし船員等の労務条件とかがクリアできるのであれば、総研大、極地研などを通じて、物理的には教育・研究利用が可能であると思います。「みらい」と違って練習船で部屋は小さいですから、大人数が乗船できます。40から50日くらいの北極航海ですと、日本から乗せて日本まで帰せば、我々が他の陸域でも海洋でも現地まで高い航空券を買う必要はなく、食事代だけ何とか出せれば、もう大量に学生を連れて行くことができます。総研大において単位互換制度みたいな連携を組めば、日本の多くの大学が教育・研究の場として利用できる可能性はあるのではないかと思います。

山内委員

ちょっと付け加えると、その意味では海洋大と連携調停を結んで、南極観測に参加してもらっているという。燃料費も自己負担しているという。

島田委員

水産専攻科なので、海洋大学での教育部分に関しては海洋大の基本予算の中で教育経費でやっているんですけども、南極観測部分に関するプラスアルファの経費は極研から来ています。南極で行っているような教育と研究の抱き合わせ航海を北極でもできないかと思います。かつそれは海洋大学―極地研だけではなく、発展的なもので、IARC、他の大学も含めたものであればと思います。

安成主査

非常にいいご提案、ありがとうございました。

それではちょうど時間になりましたので、最後に事務局の方から。

福井推進官

次回の開催ですけれども、安成主査の方からお話しがありましたが、今後どんなかたちになるかわかりませんけども、主査とも相談して、あるいはコンソーシアムの事務局をやられる極地研の方にも相談して、連絡させていただきます。

本日の議事録は後日メールで送らせていただきますので、修正等ありましたらコメントをいただきまして、最終的に主査に了承していただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。

あと、恒例ですけども、旅費に手当の確認についての紙をお配りしております。今回はいろいろな経緯もありまして、委員毎でちょっと違った手続きになっているかと思いますが、もし疑問等ありましたら事務局の方にお伝えいただければと思っています。

事務局からは以上です。

山内委員

中間とりまとめの後は、コンソーシアムの文章なんかを入れて最終報告になるんでしょうか。他の文書を作るとか。

福井推進官

中間とりまとめを7月にとりまとめていただいて、最終的なとりまとめという意味で、コンソーシアムを具体的に動かしていくということで、特段の必要がなければこの中間とりまとめのままとさせていただければと思っております。そういう意味では、中間とりまとめに書いたことを実際に動かしていく方が重要ではないかなと考えております。

安成主査

この北極環境研究コンソーシアムは具体的にはこういうもんですよというのを、今日の議論が含まれたかたちで。それは付け足すんですか。

福井推進官

はい。

安成主査

それではちょうど時間になりましたが。

大畑委員

お配りした1枚の公開講演会、ISAR-2というシンポジウムの前日、12月6日に夕方6時から8時まで、3名の著名な北極研究者が話をしますので、ぜひ聴きに来てください。

安成主査

よろしくお願いいたします。

それではこれをもちまして北極研究検討作業部会第4回の会合を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

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電話番号:03-6734-4143
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(研究開発局環境エネルギー課)