平成22年7月27日(火曜日) 10時00分~12時00分
文部科学省 3F2特別会議室
安成主査 山内主査代理 青木委員 東委員 阿部委員 大畑委員 島田委員 杉本委員 野沢委員 原委員 原田委員 福田委員 藤谷委員 松浦委員
森本審議官 田口環境エネルギー課長 谷環境エネルギー課推進官
井上総合地球環境学研究所教授
【安成主査】 ただいまから科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の北極研究検討作業部会の第3回会合を開催いたします。
本日は暑い中、またお忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。
出席者の確認をまず事務局からお願いします。
【谷推進官】 ありがとうございます。本日はご出席の委員の先生方、14名ご出席をいただいております。五十嵐委員、石川委員、福田委員はご欠席というふうに伺っております。いずれにいたしましても過半数に達しておりますので、作業部会成立ということをご報告させていただきます。
また、本作業部会運営規則により、公開とさせていただきます。
以上でございます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
続きまして資料の確認をお願いいたします。
【楠原補佐】 それでは、議事に入る前に本日の資料を確認させていただきます。
まず、お手元に座席表をお配りしております。次にめくっていただいて、議事次第がございます。
続きまして配付資料といたしましては、資料1「わが国の北極研究体制について-国立極地研究所における北極研究のあり方-」がございます。その後、資料2といたしまして「北極研究検討作業部会報告書-中間とりまとめ-(案)」というのがございます。
その後、参考資料がございまして、参考資料1「北極研究検討作業部会の設置について」、これは1枚物です。それから参考資料2としまして「国際北極科学委員会(IASC)活動と成果」。それからさらに最後1枚物になるんですけれども、参考資料2-2としまして「IASC作業グループの設置メモ」がございます。
抜けなどございましたら、事務局までお伝えいただければと思います。以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。資料の確認よろしいでしょうか。
それでは早速ですが、今日の議題、1番が「我が国の北極研究の在り方について」、これが今日のメーンの仕事になると思います。
北極研究のあり方についてということで、前回、事務局に中間取りまとめの草案をお願いしました。それで委員の方には事前にメールでお送りされたと思いますが、見ていただけましたでしょうか。
これについて今日議論を行いますが、その前に国立極地研究所の山内委員のほうから、議論に向けて、まず極地研としての北極研究のあり方、並びに国際北極科学委員会(IASC)に関するインプットがございますので、まずこれについて山内委員のほうからご説明をお願いします。
【山内主査代理】 おはようございます。本来、北極研究のあり方の議論にも入ることですが、第1回、第2回通じて極地研究所の役割のようなこともいろいろ皆さんからご意見をいただいているということもありましたので、一応極地研究所の姿勢といいますか、どんな考えでいるかというのを少し整理してみましたので、1枚紙でお示ししたいと思います。
第1回のときに極地研究所のこれまでの北極研究の状況は既にお話ししておりますので、大体のことは皆さん把握していただいていると思いますけれども、改めて書いてみますと、極地研究所は本来、極域科学の中核機関として設置されたものであると。これは世界的にもユニークなシステムですけれども、日本の中で大学共同利用機関というのがあって、極地研以外にも18ぐらいあるんでしょうか、そういう機関ですが、その1つなんですが、極地研究所としては、1つは南極観測を進めるということを書いていますが、もう1つは極域科学を進めるということが大きい課題になっているということで、本来そういう役を持っているということで、そのことを再確認しなくちゃいけないかなということです。
そのために、これまでの北極観測をこれから充実していき、北極研究に携わる大学・研究機関、ここはちょっとまだ明確ではありませんが、研究機関あるいは研究者を結集したネットワーク型の連携組織「北極環境研究コンソーシアム」を構築して、その運営・事務局機能も担っていくのがふさわしいんじゃないかというふうに考えました。
1つは、前回少し議論がありました、北極研究というと、固体地球物理から、あるいは中層、超高層、オーロラ、そういうものまで全部含むことになるんですが、ここで議論しているところは、中心はやはり地球環境にかかわるような北極の研究ということで、仮に「北極環境研究コンソーシアム」という言葉を入れてみたということです。
その内容を少し下に幾つかピックアップしていますが、要は、現状の極地研の北極研究体制というのはあまり強力になっていない。本来中核機関としてあるべきなんですが、強くなっていないというのは、1つは予算的状況があるということはあって、それを改善するために、新しく種々の概算要求等は進めているところでありますけれども、今の予算状況は皆さんご存じのように、そうすすっといろんな予算が認められるとは期待できない状況にありますけれども、そういう中でも何とか、ここに挙げた項目について極地研究所としても進めていきたいというふうに思っているという状況です。
1つは、センターとして北極研究・観測の充実を進めていかなくちゃいけないということで、大きい柱としては環北極観測網の維持・拡充ということで、観測プラットフォームを提供する。これは既に一部についてはこれまで行ってきていますので、それの維持・充実ということも含めて、さらにもっと北極を巡る広域の展開ができるようにするべきでしょうと。
その中の一番ポイントとなるのは、中心的に維持するものはやっぱり長期の継続観測を維持、進めていくということが非常に大きいタスクじゃないかというふうに思っております。
それから当然、そういう観測、研究から出てきたデータを整理して提供するというものも非常に大きい役割かというふうに思っています。
それから、もうちょっとステップが進むと思いますが、学際的な総合観測プロジェクトを進めていくという、そういう立場も非常に重要なことであるということで、これは今ここでいろんな議論がされていますけれども、特に北極温暖化の解明につながるようないろんな重要な課題の推進、国際プロジェクトの推進、そして、これはちょっと具体的な話ですが、モデル-観測の融合という、そういう立場も重要かなというふうに思っています。
具体的な日本の北極研究をどう進めていくかという中で、既に議論が大分出てきたものがそのコンソーシアム設立ということですので、それをちょっと整理してみたところですが、オールジャパンの研究体制を目指して、今ここに既にこの作業部会ということで、かなり日本を代表する北極研究を進めておられる方が集まっておられるので、例えばここを核にして、さらに不足するメンバーを加えていくというようなあり方、それから運営においては運営委員会等を設けて行う、それから既にお話があった海洋研究開発機構(JAMSTEC)と協力して、この事務局を担っていくことが現実的には一番ふさわしいかなと。
そして、その他機関とも例えば連携協定を結ぶとか、この辺はどういう設計にするかというのは多分今後のまだ議論かと思いまして、コンソーシアムというのはどういうところに置くかなんですね。その辺がまだ私どもも必ずしもちゃんとしたアイデアがあるわけではないので、議論いただければというふうに思っております。
それからコンソーシアムの役割は、非常に初歩的では北極研究の情報の交換から始まって、国際シンポジウムやワークショップの開催、国際共同研究の推進、そして特に求められているのは国際組織への貢献というのが大きいかなと思います。
そして、広い役割としてはアウトリーチ、後継者養成まである。
そして、一番大きい課題でしょうか、我が国の北極研究の方向性・戦略の議論、そして研究計画をつくり、あるいは予算案、ここがどこまでつくるかありますが、そういう方向性を示すことかなというふうに思っております。
話は変わるんですが、IASC(国際北極科学委員会)について前ちょっとお話ししまして、今体制が変わろうとしているということもあって、IASCの日本代表を今しています神田さん、極地研究所の教授を退官されたんですが、ちょっと情報を伝えてほしいということで、参考資料2に資料をつけてあります。
参考資料2の最初の2枚は一般的なIASCの説明資料なので、これは後で見ていただければいいかと思います。一番最後の紙に集約されていますので、これはIASCの代表のデービッド・ヒックという人から各国の委員に対するレターという形で来ていますけれども、ここにちょっと集約されているので、それを見ていただければと思います。
【安成主査】 参考資料2-2ですね。
【山内主査代理】 2-2ですね。すいません。裏表の1枚の紙ですが、要するにIASCとしてワーキンググループをつくることが決まったんだということで、その分野が5つの分野にするという、ドットで書いていますね。Terrestrial、Cryosphere、Marine、Atmosphere、Social and Humanという枠組みです。
これまではIASCには各国から代表が参加する程度だったんですが、これからは各分野に最高2人の委員を各国から派遣しなさいということですので、かなり総合的に当たっていく必要があるんじゃないかということと同時に、国際的にもこういう枠組みの議論が進んでいるということで、それを振り返って日本の議論もどういう分野とかそういうのが参考になるかなと思っています。
そのワーキンググループの役割、書いてありますが、サイエンスの国際プログラムをやる、特に研究分野をアイデンティファイして進めていくでしょうと。それからインフォメーション交換、観測システムの維持、特にロングターム・オブザーベーショナル・プログラム、さっき申し上げたのと非常に似ている。長期観測も維持するということが1つの大きい課題かなと。
それから、ポツの下から4つ目にあるProvide scientific advice to the Councilとあります、これはアークティックカウンシル、要するに北極評議会に必要に応じてアドバイスをするということで、南極における南極条約体制にSCARが果たしているのと同じような関係を期待しているということかなと思います。
ワーキンググループは各分野のディシプリナリーにつくられるけれども、インターディシプリナリーな活動が非常に望まれるんだということです。
さっきも言った2人のメンバーをワーキンググループに出す。実はそれが非常に迫っていまして、9月1日までに各国はノミネートしなさいということで、4年の任期だということで、公式には、前お話しした学術会議のIASC小委員会というのがあって、そこで議論はしているはずですが、ここにお集まりの方は十分対応していただく必要が出てくるかと思います。その新しい体制でのワークショップを今年の11月8日~10日にポツダムで開くというので、行っていただける方は行っていただく必要があるんじゃないかと思っています。
それから、ここには書いていませんが、2年に一度シンポジウムをやって、毎年ビジネスミーティング的なものをやる、そういうアークティックサイエンスサミットウィークというのがありますが、今度2011年は韓国で開かれます。3月28日~4月1日、そこにいろいろなさっきのワーキンググループその他の委員会が行われるということで、そういうところに皆さん出ていっていただく必要があるということで、簡単ですが、以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
IASCですけど、これはICUSに関係する、あるいはこれはインターガバメントですか。
【山内主査代理】 インターガバメントじゃなくて、ノンガバでサイエンスのグループなんですが、SCARは早くからICUSのもとで、これはICUSに申請しているんですが、ご存じのように北極は南極とちょっと違って、多分少し政治的なあれを引きずっているところが強いので、ICUSとしてまだフルのメンバーとして認めていないんですね。申請はずっと出ているんですが、数年来、フルじゃない、アソシエートか何かになっているということで、こちら自体はそれを望んでいるということです。
【安成主査】 わかりました。どうもありがとうございました。
今、山内委員のほうから我が国の北極研究体制について、これについてご質問どうぞ。
【杉本委員】 質問というよりは、ぜひ期待をしたいところなんですけれども、私たち大学の研究者ですけれども、国立極地研究所がこれまで大学の共同利用機関としてあったんですけれども、明確に大学の共同利用として利用しようというような体制に残念ながらなっていなかったのではないかなというふうに思います。ですから、これから中間取りまとめの案をまとめるに当たって大学の研究者をいかに取り込んでいくか、それをぜひ私たちも含めて真剣に議論しなければいけないんじゃないかなというふうに思います。
大学の研究者は基本的には個人商店で、組織を背負っているわけではないので、ある意味勝手なことをしている人が多いというふうに見られがちかもしれませんけれども、逆に言えば組織を背負っていない分、サイエンスにとって何が必要であるかということを明確に考えて個別に動いているという面もありますので、そういう個人商店をうまく1つにまとめて活用していくということを、オールジャパン体制の中にうまく活用していくということを考えていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。
そのために、例えば、大学間のネットワークみたいなものも1つ考えて、そこが大学の個人商店の意見を吸い上げる1つの窓口みたいなものを考えるというようなことも可能性としてあるのかなというふうに考えます。
【安成主査】 今、杉本さんが言われたことは、大学間のというと、極地研、これとは別にということですか。
【杉本委員】 そうですね。別にというか、一緒にというか、それはこれからの議論によるかと思うんですけれども、例えば、ここにコンソーシアムを構築して、その取りまとめというか、事務局をどこにするか、これは大学ではあり得ない話だと思いますので、極地研とJAMSTECということで協力して進んでいくということは、もちろんそういうふうにすべきだと思うんですけれども、そこにただ大学が、個人商店がその下にぶら下がっているという形ではなくて、大学は大学としてある程度の意見を言えるような仕組みをぜひ作って、個人商店の活用を図っていただきたいということです。
【安成主査】 わかりました。ほかに何か。
【島田委員】 今の意見というか、私もそう思っていまして、意見を反映するというよりも、この北極環境研究コンソーシアムがどういう権限を持つのか、そこに尽きると思うんですね。
今ここに書いてあるのは連携組織ということで、結局はこれ進言する程度のものであって、このコンソーシアムに決定機能を持たせるのか、持たせないのか、ここは極めて重要なところで、例えばこの資料の中で後で議論になるかと思うんですけど、アメリカなんかの場合はそれこそ個人商店が決定機能をある程度持っている国です。中国とかはかなり中央集権型というか、そういう意味でどういうスタイルでやるのか、コンソーシアムの定義はどういうものなのか、そこが多分この議論の中心になるかなと思います。事務局としてはやはり大学は無理かなという点ですね。
あともう1つ補足したいのは、IASCの再編というのは、実は今までアークティックサイエンスサミットウィークというのが毎年行われていまして、これはIASCとアークティックオーシャンサイエンスボードの2つの母体を中心に活動がされてきました。それで今回、書いていますが、マージャー・ウィズ・アークティック・オーシャン・サイエンス・ボードという、かなり北極海洋の部分が大きくかかわっていて、これを統合整理するという形で進んでいるという点で、単にIASCの再編ではなくて、AOSBとの合体という形での再編であるということを補足させていただきます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。ほかに何かありますか。
特にこの北極環境研究コンソーシアム、仮称でしょうが、この役割・権限、確かにそうですね、ここは何をするか、できるか、これは結構大きな問題。この作業部会の趣旨としては、オールジャパンで北極圏の研究ということですから、それに向けた何らかの旗振りをちゃんとやっていくということだと思うんですが、ほかに何かございませんか。よろしいでしょうか。
じゃ、また後から議論になるかと思いますが、続きまして、今日の議論のメーンだと思いますが、事務局が作成しました中間取りまとめ(案)、これについて事務局から説明をまずお願いして、それからディスカッションしたいと思います。
じゃ、ご説明お願いできますか。
【谷推進官】 それでは、資料2をごらんいただきたいと思います。「北極研究検討作業部会報告書-中間とりまとめ-(案)」でございます。
第1回、第2回でご議論いただきまして、またインプットいただきましたものをベースに、事務局のほうで中間取りまとめということで整理をさせていただきました。先週金曜日、ちょっと遅い時間になりましたけれども、送らせていただいております。お目通しいただいた時間は十分あったかどうかわかりませんけれども、一通りご紹介をさせていただきたいと思います。
おめくりいただきまして、まず全体の構成でございますが、目次、1(ローマ数字)がはじめにでございまして、4(ローマ数字)が結びでございまして、2(ローマ数字).は北極研究の現状ということでまとめております。これは特に第1回、第2回でインプットいただいたものを整理させていただいたもので、1が我が国における北極研究の現状ということで、各機関の取り組みの現状を整理してございます。2.が北極研究の国際的な枠組みということで、先ほどご紹介ありましたIASC等について整理をしています。それから3.は北極研究の体制、これは各国の比較というような形で整理をしてございます。
そういった現状を踏まえまして、3(ローマ数字).といたしまして、我が国の北極研究将来戦略をどのようにやっていくべきかということについて、少し提言といいますか、議論を先取りする部分がございますが、あわせて整理をさせていただいております。
1点目は、まず何をするべきかということについての整理をしております。北極研究における戦略的重要課題ということでございます。2.が「北極研究コンソーシアム」の設置と体制整備ということで、課題が明らかになって、それに対して、それを核とする体制としてどういう体制がよいのかということを整理しております。3.として、北極研究の総合的なプロジェクトを新たに立ち上げるということも提案するということを書いてございます。
それから観測について4.、国際協力について5.ということで整理をしてございます。
個々について、それぞれの章立てに従って紹介をさせていただきます。
まず1(ローマ数字).序文でございます。これは当作業部会の設置の状況といいますか、背景部分を書いてございます。繰り返しになりますので、その部分は割愛をさせていただきます。
2(ローマ数字).北極研究の現状につきまして、1.我が国における北極研究の現状ということで、国立極地研究所のまず最初に概観ということで取り組みを書かせていただいております。
以下、個々にa、b、c、dと各機関別に書いておりまして、海洋研究開発機構、宇宙航空研究開発機構、総合地球環境研究所以下、気象研究所、国立環境研究所、森林総合研究所、あと北海道大学をはじめに各大学の取り組みを書かせていただいております。これは基本的には事実関係の整理ということだというふうに理解しておりますので、ここでは詳細特にご紹介いたしませんが、不十分な点がある、あるいはどこかバランスが悪いといったようなところがございましたら、書面でいただければというふうに思っております。
それから4ページになりますが、2.北極研究の国際的な枠組みでございます。代表的な国際的枠組みということで、一応4つだけ書かせていただいております。
一番最初、国際北極科学委員会(IASC)でございます。先ほどのお話もありましたけれども、簡単にまとめを書いております。それから国際北極科学計画会議、国際北極変化研究委員会、持続的北極観測ネットワークの4つについて、ごくごく簡単にではありますけれども、整理をしております。
これは後ほど出てまいります我が国の取り組み、それを国際的な枠組みの中できちんとその整合性を持たせる、あるいはこういったものをドライブしていくという関係で整理をしたという位置づけとお考えいただければというふうに思います。あまりここは詳細に書くということは必要ないのかなというふうに思っております。ただ、書き方あるいは内容的に漏れ抜けがあるということであれば、ご指摘をいただきたいというふうに思います。
3.については諸外国における北極研究体制ということで、各国の体制について特徴を少し整理してございます。1つのパラグラフにまとめておりますけれども、まず北極国においてはノルウェー、ロシアのような、北極研究の中核研究機関が、1つの研究機関が観測施設、設備、こういったものを一手に持っておって、それが強力に牽引する、そういうタイプの進め方をやっている国がございます。
他方で米国のような、国家戦略の観点から北極研究の目標を設定する委員会というのが政府の中にあって、その目標に向かって複数の中核研究機関が研究を遂行するタイプというような形で大別できるのではないかということでございます。
いずれにしても、北極研究が国家戦略的に推進されているということが言えるのではないか。
また非北極国においても、ドイツのように中核研究機関がドライブをする国、あるいは中国のように、政府内委員会の管轄のもとで北極研究中核研究機関が進めるという国もあるということでございます。
北極国、非北極国がございますけれども、いずれにしても研究体制について機能面が十分に整備されている事例が多いということで、これは後ほど出てまいります我が国の体制の整備の中で参考になるのではないかということで整理をしたということでございます。
それから5ページになります。ここが3(ローマ数字).我が国の北極研究の将来戦略ということで、特に集中的にご議論をいただきたいところ、今回の中間取りまとめのいわゆる案部に相当する部分でございます。
まず1点目が北極研究における戦略的重要課題でございます。まず北極研究で今最も喫緊の課題は何かということを整理をするということでございます。
少し読んだりしながらざっとご説明をさせていただきたいと思いますが、まず、北極においては地球温暖化の影響と考えられる事象が増加しているということで、既にここ20年程度の間、気温上昇、顕著な雪氷衰退というものが起こっている。特に2007年、北極海の海氷の激減、同年9月には観測史上最小となったということを書いております。また2010年初頭、北極圏の寒気が流れ込んでくる北極振動が発生して、我が国の不順な天候に影響したことがございました。
しかしながらということで、現実に進行している北極圏の温暖化と、それからIPCCが予測している温暖化の間には乖離がございます。これは新聞報道等でも指摘がされたところでございますけれども、その北極の地域性、物理過程、まだ大きな不確定性があるのではないか、乖離している原因は大きな不確定性に基づくものではないかということでございます。
また、現実に増加しつつある気候・気象の極端現象に北極圏プロセスがどう作用しているか、非常に重要であるにもかかわらず十分に解明されていないということを書いております。
次の一文は金曜日にお送りしたものから少しつけ加えておるところでございます。これは事実関係だけですが、IPCCの第4次評価報告書の記載をリファーしておりまして、極域の複雑な大気・海洋・陸域凍土及びエコシステムに対する理解が不十分であり、また観測データの不足により、極域のモデル評価に課題があるというふうに指摘をされているところでございます。
こういった状況を概観いたしました上で、早急に解明・監視を迫られている具体的な科学的課題は以下のとおりであると考えられるということで、大きく2つ挙げております。1点目が現象理解及びその解明といったものでございます。それからもう1点はモデルの精緻化、高度化といったことでございます。
まず前者の、温暖化の影響を強く受け変化している現象理解及びその潜在的影響の解明というところは、4点に分けて整理をしております。
1点目が北極海の急激な変化の発生と原因ということで、現在、冒頭のところでも書いたとおり、海氷の急激な減少、海水温の上昇、海氷変化、こういったものが大気の挙動を制約し、また海氷変化をさらに加速させるということが考えてられております。また、北極変動が北極海の生物化学過程にどのような影響を及ぼすか、海洋酸性化にも影響するわけですけれども、そういったプロセス、それから北極海への流入量が増加している淡水、これが生態系にどう影響するのか、あるいは陸域生態系の炭素循環も非常に重要なポイントでありますけれども、北極域全体としての水循環の変調と、それに伴う自然現状がさまざまな形で起こっているわけですけれども、いまだ総合的な理解ができていない。
特にバレンツ海を含む東部北極海、あるいはシベリア陸域の気候変動、これは日本の気候に大きな影響を与えるということが報告されているわけですが、この地域の観測強化、これはモデルの精緻化を図る上で重要な課題だというふうに整理をしております。
それから2点目が温室効果気体、雲、エアロゾルの実態ということで、これは極域にかかわらずということではあるんですが、特に北極圏のエネルギー収支を支配する要因であるということで書いておりまして、特にブラックカーボンについては、特に雪表面の影響というものを北極域では考える必要があるということで、その実態の把握が必要ということを指摘しております。
3といたしまして、氷床・氷河の変化の実態、これは融解域が拡大していると言われているグリーンランド、それから北極域に集中しております氷河の衰退の実態、その影響性を早急に把握する必要があるということを書いております。
それからaの部分では最後になります4として、凍土の融解と影響ということで、凍土の融解についても進行しているわけですけれども、それが水文学的影響あるいは陸域生態系の変化、陸域からさらに温室効果気体放出・吸収が起こっているわけです、その変化、さらには沿岸域の侵食といった幅広い現象へと転じているわけでありますが、その評価をしなければならないということでございます。
IPCCのAR4でも、この1、3、4については影響事例ということで明示的に取り上げられているということを付記しております。
それから喫緊の課題の2点目でございます気候モデルの高度化ということで整理をしております。海氷面積については、その後回復傾向を見せているとはいえ、依然IPCCの予測を超える速度で減少したということについて、まだ再現性に大きな課題があるということを指摘しております。
予測を改善し、将来的にどのような影響が発生するか検討するために、必要なデータの取得、またグローバルデータを用いた統合的解析や北極域の研究者、特に観測の研究をなさっている研究者と気候モデル研究者の協力で、気候モデルを改善することは重要だということを指摘してございます。
aとbは観測それからモデル双方のそれぞれを整理しているわけですけれども、次の2つのパラグラフは両者の統合的な取り組みということで整理をしております。北極研究の重要性は、北極の持つ意味、これは全球の気候変動へのフィードバックあるいは我が国への影響というものであるということですが、招来の変化を的確に予測し、必要な対策を講じるためには気候モデル、これがきちんと精緻化が図られるということが重要だということであります。そのモデリングの高度化のために観測データ、これはまだ十分とは言えないということですが、その充実が不可欠であるという整理でございます。
また、高緯度の寒冷圏を含む北極圏での急激な気候変化、またそれに伴う地域的な変化、水循環、生態系への影響評価、これも北極圏システムモデル、一種の領域モデルになりますが、その構築も重要だ、このための観測プロセス研究の高度化も同時に必要であるというふうに整理をしてございます。
気候モデルの精緻化、それから北極圏システムモデルの構築、これに当たっては、モデリングの研究者と観測研究者の協力が不可欠ということでございます。
それから2.になりますけれども、体制のところに進ませていただきたいと思います。タイトルは「北極研究コンソーシアム」の設置と体制整備というふうにしております。先ほど山内委員からございましたとおり、北極研究というとちょっと広すぎるのではないかということで、ここは事前に「北極研究コンソーシアム」というふうにさせていただきましたけれども、ご議論を踏まえさせていただきたいと思いますが、「北極環境研究コンソーシアム」ということになるのかなと思っております。
1.で課題を整理したとおりでございますが、まず分野横断で非常に総合的、またモデリングと観測の共同作業を含む、多くの研究者の連携、これが必然でございますので、適切な研究推進体制を整えることが必要だということでございます。
体制ということでは、先ほど既にご議論があったとおりですが、大学共同利用機関として国立極地研究所が位置づけられております。その中に北極観測センターが設置されておりまして、我が国の中核研究機関としての位置づけはあるというふうに理解をしております。独立行政法人またさまざまな大学がそれぞれのポテンシャル、またその特徴を生かして多様な活動に取り組んでいるということでございます。
しかしながらということで、7ページになりますが、我が国としての総合力また連携による相乗効果、これはまだ改善の余地があるということ。それから海外においての状況というものを見ましたけれども、北極研究を一体的に推進する例といったものも見ますと、これらラップアップいたしますと、我が国において体制整備としてコンソーシアムの設置が必要ではないということでございます。
7ページ、3つ目のパラグラフになりますが、北極研究における総合力を発揮するためには、北極研究の関係者が広く結集して議論を行い、戦略と方向性を見出し、連携していく、またデータ・研究成果を共有・発信し、さらには新たな研究に協調して取り組んでいく、非常に多様な取り組みをするということをつらつらと書いておりますが、共通プラットフォームとなる組織を整備することが有効であるというふうに考えられるということで、「北極研究コンソーシアム」を設置してはどうかということでございます。
この設置により、多岐にわたる研究機関間の連携の推進、オールジャパン体制による北極研究の強化ということができるのではないかということでございます。
こういった全体の体制、連携が図られるということだけではなくて、限られた研究資源を共有するということで、その有効活用が図られ、より大きな効果をもたらすということも期待できるのではないかということを整理しております。
ただし、コンソーシアム、先ほど島田委員のほうから意思決定等のお話がございました。どういう機能を持たせるかということでございます。事務局として、ここを書かせていただいたときには、コンソーシアム自身は非常に幅広い議論を行う場ということでございますので、広く研究者が結集する緩やかな連携組織というイメージを持っております。
ただ、そういう意味では広く連携をしてということになりますと、なかなか焦点を絞った議論、これをそういった形でやるというのはちょっと難しいかもしれないなということで、具体的に例えば研究計画、国際協力、人材育成、あと杉本委員から指摘がありました例えば大学間ネットワーク、こういったものをきちっと議論をするのは、もう少しコアなグループをこのコンソーシアムの中につくって、イシュー別に具体的な議論を行う場をコンソーシアムの中に設置するということが、実質的な推進役として真にコンソーシアムが機能するために不可欠ではないかなというふうに思っておりまして、コンソーシアムという非常に大きなプラットフォームをつくった上で、その中に個別の議論をする場というのを設けるというような体制ということでいかがかということでございます。
それから事務局についても、先ほど山内委員からございましたが、海洋研究開発機構の協力を得つつ、国立極地研究所が担うべきであるというふうに書いてございまして、ここでの事務局として考えておりますのは、極地研究所が担うべきであるということでございますが、事務局は物理的には国立極地研究所に置くということを想定しているということでございます。
コンソーシアムのところの最後ですが、日本として現有資源をもとに最大効果を発揮する体制ということを考える必要があるだろうと。連携は1つの方法である。しかしながら、現在研究機関が分担している業務に見られる重複と不足、このような視点から考えると、現在の状況は必ずしも妥当とは言えないということで、それを是正するための組織的調整ということで、このコンソーシアムを位置づけたらどうかということでございます。
研究機関・グループの再編及び構築を実施することで、日本として効率的・効果的な研究体制を築くことが重要であるというふうに締めくくっております。
コンソーシアムは以上でございまして、続いて3.の北極総合研究プロジェクトの創設でございます。ここは課題が明らかになった、あるいは研究推進体制が整備をされた、それでやっていこうということであるのですが、それで十分かといったときに、やはりまだ足りない例えば観測を行う必要があるのではないか、あるいは各機関・大学の取り組みを統合していく部分については新しい取り組みが必要ではないかということが考えられます。
またモデルの高度化、精緻化、これは観測と一体的にやっていく必要があるのではないか、こういった新しい取り組みをするための予算的な裏づけといいますか、プロジェクトを新たに立ち上げてはどうかというのが3.の提案でございます。
若干繰り返しになりますが、北極研究の重要課題、これは北極の重要課題で書いたとおりでございますが、モデル研究、モデルの精緻化に直結する観測研究をパッケージで推進する必要があるということで、北極総合研究プロジェクトを立ち上げることが適当であるということを冒頭書いております。
ポイントは、1つはモデル研究、これは将来どうなっていくのかということをきちっと言っていくためには不可欠でありますので、モデル研究というのがあるわけですが、現在問題点としては、モデルの研究と、それから観測の研究は必ずしも十分つながっていないということが言えるのではないかという問題意識から、その両者をパッケージで推進するということが1つのポイントでございます。
現在、既に行われております各機関、大学等でいろんな活動をされているわけですけれども、そういった中から出てまいります観測データの統合といったもの、これも並行して推進するということが全体の研究の中では非常に重要ではないかということで、これもパッケージの一環として取り込むことが重要であるということで書いております。
8ページにまいりますが、こうした我が国の取り組みを国際研究計画として提案をして、国際的にモデリング、観測、これが一体となった国際共同研究を主導するということも一案であるということを書かせていただいております。
これは我が国の資源、これもすべて北極研究カバーできるとは限りませんし、あるいは資源だけでできることも限りがあるということもございますので、国際共同研究ということを活用するということもあるのではないかということでございます。これは後にもまた出てまいります国際協力のところで触れたいと思います。
それで、プロジェクトにつきましては、実施期間としてはおおむね5年程度、集中的に取り組むということで5年程度の提案をさせていただいております。具体的な中身としては北極圏の極めて大きな温暖化進行の正確な予測、それから雪表圏、生態系へのインパクトと気候フィードバックの評価を当面の目標とすることが考えられる。
北極研究には中長期的に取り組まなければならないことは自明であるが、解決すべき課題を明確にし、そのために各機関がどのように連携するか、どのような研究を行っていくか、さらにその成果を踏まえて、選択と集中による重点化を図りつつ新たな研究計画を策定していくという、研究の中でのいわゆるPDCAのサイクルというものを内在したようなプロジェクトにする必要があるのではないかということを書いております。
次の2行は金曜日にお送りしたものに追加をしておりまして、新しく書かせていただいております。5年の目標として、例えばモデルの精緻化においては、北極振動を数カ月前に予測できるレベルを目指すことが適当だということを書いておりまして、これは事前に安成先生ともご議論させていただいて、北極振動の予測というのをメーンのターゲットに掲げるのはちょっと問題があるのではないかという指摘をいただいております。
ただ事務局のほうでは、5年の目標として何かしら明確なものを掲げたほうがよいというふうに思っておりまして、これは重要課題のところもそうですが、バランスをとっていろんな課題があるというのは事実だと思いますけれども、特に何をやっていくかということについて焦点を絞ったほうがいいのではないかという問題意識で書かせていただきました。この点については具体的にご議論いただきたいというふうに思っております。
北極観測の強化ということでは既にいろいろなされている部分がございますが、必ずしも十分なデータが得られているとは言いがたく、多面的な取り組みが必要ということでございます。その観点では既存の観測拠点の利用というのがあるわけですけれども、それに加えて施設設備の強化あるいは相互利用というものが考えられるということを書いております。
具体的には、極地圏が運用されていますスバールバルの拠点、これは大学共同利用機関ということでありますので大学が利用できるということでございますが、さらに国内関係機関が有する観測拠点、この整備を強化するということがあり得るだろうということでございます。
また船舶についても非常に強力なツールということで、特に「みらい」については最大活用するということを視野に、その観測能力の拡充などを進めることが望ましいというふうにしております。これらの観測拠点の相互利用と、それから人材育成ということも付記をしているところでございます。
それから衛星のデータにつきましてもさらに一層の利活用を進めるということを書いておりまして、その際、着実なデータのアーカイブ化、あるいは利用しやすいデータセットの整備ということを書いております。
観測につきましては、限られたリソースの中で優先順位を見極めていくことが重要であるということ、ただしそれでも必要な観測については国際協力、利用可能な既存の施設を活用して取り組むということを書いております。
それから一番最後の「なお」書きのところは、これもちょっと新しい書きぶりが加わっております。北極海観測は当面、耐氷性能を有する「みらい」を活用していくことが重要ということと、あわせて将来的には砕氷船の利用についても検討する必要があるということを書いております。
5.の北極研究の国際協力でございますけれども、既に各機関・大学等が努力されてきて、国際的なネットワークというのができておりますけれども、9ページになります、一定の存在感を国際的には見せていると言えるけれども、それはどちらかといいますと個別の研究者・研究機関のレベルにとどまっているということ。それから、国内の横の連携というのが不十分ということで、コンソーシアムの活動を通じて国内の連携を強化、さらに国際的な情報発信、国際協力の充実ということをうたっております。
それから北極に領土領海を我が国は持たないわけでございますが、観測データの取得をはじめ観測活動に制約があるというわけですので、国際協力ということでその部分をカバーするということが重要ではないかということを書いております。これは受け身ではなくて、積極的に国際コミュニティに対して提案をし、主導するということで、我が国にとって貴重な観測データまたは研究成果というものを得ていくということを書いております。
最近、ロシア、中国が、国名は具体的には書いておりませんが、観測データの公開に対してちょっと抵抗するとか、観測活動の制約が厳しくなったりするといったような例が見られますが、そういった障壁を乗り越える方策として、単なる2国間協力ではなくて、マルチの国際研究計画として推進することも考えられるのではないかということを書いております。
全体、国際協力ということで注意点ということをその次に書いております。日本としてどのような情報取得をするか、またその知見、何が必要かということを明確化して、それに沿って国際協力を行うということであります。
その具体的方策として、国際委員会等に積極的に参加、先ほどIASCの話が出てまいりましたけれども、日本のコミュニティにとって好ましい主張をしっかりしていくということ、それで国際計画に反映させていくということ、さらに観測データ整備において他国との具体的関係を書いております。特に北極国との協力が重要であるということでございます。
それから北極評議会について国際協力の中で重要なポイントかというふうに思いましたので、ここに整理をしております。北極評議会、まず概要がざっと書いてありまして、その中でオブザーバーの資格のところですが、これは北極評議会のオブザーバーとなることが北極研究の円滑な推進につながると期待されるということでございます。
他方で、オブザーバー資格の獲得には北極研究の実績が有力な根拠となるということでございまして、お互い双方進めていく必要があるということでございます。現在オブザーバー資格の申請中であるが、北極研究の推進に当たって留意すべき事項というふうに整理をしております。
また国際協力につきまして、IARCについては明示的に特出しして書いております。現在、衛星データの活用拠点あるいは観測拠点として実績があるということで、人材育成の機能ということも期待できるということで、その特徴を生かして協力を進めることができるというふうにしてございます。
10ページは結びということでございます。精力的に議論をしてまとめたということでありますが、本報告書は中間的な取りまとめであって、骨格に過ぎないということで、さらなる具体化に向けた検討を引き続き行う必要があるというまとめでございます。
本報告を踏まえ、行政に対して適切な対応を要請するとともに、我が国における北極研究の飛躍をもたらす研究コミュニティの奮起を促したいということで最後まとめをさせていただきました。
長くなりましたが、以上でございます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
今日の議論のメーンはここですが、中間取りまとめ(案)について議論をぜひお願いしたいと思います。全体の報告書のまず形というんですか、目次にあるようなこと、それからもちろん内容について、どこからでも結構だと思いますが、いろいろご議論があるかと思います。はい、杉本さん。
【杉本委員】 あまり重要ではないんですけれども、正確ではないので。「北海道大学では、低温科学研究所にて北極研究を行っている」とありますけれども、低温科学研究所は商店街ですけれども、ほかにも大型商店がたくさんございますので、多数の部局あるいは複数の部局で行っていると書いてください。
【谷推進官】 失礼いたしました。
【安成主査】 ほかに。
【藤谷委員】 この取りまとめは非常にコンパクトにまとめられていると思います。2点ぐらいちょっとコメントです。
1つは、2.の現状の部分で今の日本の課題とか問題点があまり書かれていない。ローマ数字の3(ローマ数字).のところで少し書かれているわけなんですけれども、2.のところで少し課題を書いて、それを解決するためにローマ数字の3(ローマ数字).の将来戦略を策定するんだという書き方がいいのかなと思ってございます。
それからもう1つ、読ませていただいて、いろんなところに書いてあるんですけれども、持続的な長期観測をやる、その体制の構築あるいはデータアーカイブ、これについてはもう少し具体的な何か書き方があればよりいいのかなと。
以上でございます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。今、藤谷委員が言われたことは、要するに3(ローマ数字).の1に、結局2回で議論した内容は実はここに結構入っているんですが、これをむしろこれまでの取り組みの現状と、そこで一体どういう課題があったか、ちょっとこれは工夫が必要かもしれませんね。ありがとうございました。
ほかに何かございますでしょうか。
【東委員】 今後重点的に行うべき課題の中で、今までの議論の中で私ちょっと申し上げなかったんですけれども、古気候研究というものの重要性を入れていただきたいと思います。国際的には古気候データというのは非常に重要だという認識がされておりまして、ご存じのようにIPCCの報告書等でもかなり重要な部分を占めているんですけれども、残念ながら日本におきましては古気候研究の重要性があまり認識されていません。
特に今問題になっております北極振動ですとかブラックカーボン、こういったものにおきましては過去どうであったかということを知ることが必要ですし、特に北極におきましては自然の変動がかなり大きくて、なかなかモデルの予測と観測が合わないといったようなことがありますので、過去に学ぶということをぜひ取り入れていただきたいと思います。
なかなか取り入れられないという原因の1つとしては、私がやっていますアイスコアに関してはここ数年間予算がほとんどなかったこともありまして、北極域でのアイスコア解析等はここ数年ほとんどやっていない状態で、情報発信がなかなかなされていなかったという事情もあります。
ただ、北大なんかの大学の関係者では積極的にやられているところもありますので、今後、今まで極地研が予算がなくなる前はある程度取りまとめ機関として機能していたんですけれども、今またばらばらにやっているという状況がありますから、そういうところをもしこれを機会に連携して取り組むことができればと思います。
また、阿部さんもIPCCの報告書の古気候セクションのリードオーサーにもなられておりますし、またここにいらっしゃる原田さんほか古気候関係者もいらっしゃいますので、そういうところと、アイスコアだけではなくて、モデル研究、それからほかの古気候研究者、そういう方たちと連携してぜひやっていくことが必要ではないかと思っています。
【安成主査】 どうもありがとうございました。過去の環境、気候がどうであったかということを前提に、現在、これからどうなるか、そういうことで、その部分を入れるべきではないかということかと思いますが、ほかに。
【山内主査代理】 ほかじゃないんですけれども、藤谷さんがおっしゃった2番目のことですね。持続的観測網の構築・維持、そういうのをもう少し明示的に書いていただければという感じで、それと少し関係しそうなんですが、あまり明確に書いていただいていないので、どの場所か、重要課題なのかどうかあれなんですが、観測の強化とかそういうところに、単に重点課題の推進という方向性だけではなくて、ある程度長期モニタリングしていくことが、北極の気候、そういうものを考えていく上で非常に重要だという、そういう視点をもうちょっと示していただくといいかなという気がしました。
【安成主査】 どうも。ほかに。
【松浦委員】 コンソーシアムをつくって、それからいろいろなプロジェクトを立てる、そして強化をするという方針には賛成です。
そのときに、8ページの北極観測の強化のところで取り上げられているんですけれども、スピッツベルゲン、スバールバル、それから国内関係機関が有する観測拠点と並べて書いてありますけれども、おそらくこれはものすごくレベルの違うものがたくさん含まれてしまっていて、これはちょっと議論しにくいと思います。
というのは、最後に出てくるIARCもそうですけれども、おそらくIARCとかスピッツベルゲンの施設というのは、例えば私たちがシベリアで観測している、向こうの国との合意で使わせてもらっている宿泊施設とかと全くレベルが違うはずなんですよ。お金の出所から大きく違っていると思うので、それを一緒くたに議論するのはちょっと難しい。ですから、強化のときにはその辺のことをかなりきちんと分けてやらないと、実は強化にならないという危惧があります。
例えば「みらい」のことも書いてありますけれども、多分関係者以外は「しらせ」と「みらい」の違いはわからないですね、どこの持ち物かということも含めて。ですから、そういうところはきちっと、戦略を立てるときにまず区分けをしておくことは大事だなというふうに感じました。
【安成主査】 どうも。
観測について今、山内委員のほうから長期モニタリング、長期の観測の必要性、それから結局何をやるべきかというところ、かなりリソースも限られるわけですから、ちょっとその辺の兼ね合いでの中身をどう記述するか、この観測のところはまさに課題オリエンテッドかなと思いますけど。
ほかに。
【杉本委員】 もういいかと思うんですけれども、今、松浦さんがおっしゃられたことは事実だと思うんですけれども、そのとおりだと思うんですけれども、例えばスバールバル、スピッツベルゲン、もちろん重要だとは思うんですけれども、やっていくべきかどうかというのは、どのぐらい投資していくべきかどうかというのは何をやるかにかかってくると思うので、お金の出所が違うかとか、そういうことではなくて、何が必要かということを議論すべきかと思います。
【阿部委員】 私も同じことを言おうとしたんですけれども、いきなりプロジェクトで5年というのの中身をフィージビリティスタディのようなことをまずやらないと、今ここで何が重要かということ、それが決まらないと思います。
例えば北極振動ということが出たので、それを1カ月予報するのか、それとも温暖化において例えば北極振動の振幅や周期がどう変わるのかという、その性質の変化を調べるような長期的な性質を中心にするのか、あるいは高アンプリフィケーションという、気候感度のもう少しアンプリフィケーションにかかわるフィードバックメカニズムをやるのかというのでは、例えば温暖化予測における近未来、長期未来、どこに標準を当てるかという時間スケールやプロセスの違いも入ってきますので、そういったまず何が重要かということをとことん話し合うような期間がある程度必要だと考えます。
【安成主査】 どうぞ。
【島田委員】 今話している議論、多分背景には大きなことがあって、今、大型研究とか進んでいますけれども、独法がある分野と独法がない分野でかなり色彩が出てくるものが違う。例えば北極観測の強化こうあるべきというのの、松浦さんがおっしゃったように、ある特定の中核機関のおそらく概算要求なり、そういうものを是認するような形に、ちょっと言わせていただきますけれども、なっているというのが現状です。
今、阿部さんがおっしゃられたように、例えば北極振動を絡めてバレンツ海、そういったことをやればいい、そうするならば多分これは3カ月、数カ月前に予測と書いているならば中期予報です。中期予報をやるのであれば、どういうような観測システムが必要か、スナップショットの消耗品観測のようなことをやってもこれはつながらないんですね。そこのところがグレーなままここは重要だ重要だと書いているのは、これは非常に危険な取りまとめ書になっているかと思うんですね。
多分この中におられる方でそう感じている方が多数いるので、今のような意見が出てきたと思うんですけれども、その辺ははっきり認識するべきではないかというふうに思います。このコンソーシアムの位置づけにしても緩やか、変な意味で、これをやっていいんだという大義名分を与えるためのコンソーシアムではあってはならないというふうに考えます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
実は谷さんとも事前にちょっと話して、この取りまとめ(案)の幾つかの問題点とか、今度の作業部会で何を特にやるのか、これは決してこれまでいろんな機関が既にやっていることを単に強化しようということじゃないと私は認識しています。むしろ、いろんな分野の方が観測、それからモデリング含めて連携して、連携することによってしかできない、しかも年限としてはとりあえず5年間ですね。場合によっては10年になるかもしれませんが、そのぐらいのタイムスケールで今やるべきことは何か、その辺の重要課題をもう少し詰めるべきかなと思います。
例えば先ほどの北極振動、私も谷さんとちょっと議論したのは、北極振動を数カ月前に予測できるレベル云々、これをあまり強く出すと、いや、北極振動の予測というのは多分北極圏の観測研究だけしていたのでは出てこないという気がするんですね。
ですからむしろ私自身は、個人的な意見になりますけれども、5ページの最初の3(ローマ数字)の1.の北極研究の戦略的重要課題の一番最初のあたり、やはり温暖化問題で北極圏というのは非常に特異な、ある意味では振り回している、非常に温暖化が顕著であると。それのいろんな影響も、凍土、生態系も含めて、海氷を含めて出てきている。これは一体何が結局一番効いているのか。しかもそれが今モデルの中での予測で出てきている振る舞いと現実の起こっているところというのはやっぱりどうもかなり違う。そういうところで今何をするべきか。
これは私の個人的な意見ですが、その辺に絞らないと、単に北極でやっているいろんなアクティビティをより強化しましょうなんていう話だったら、この作業部会の意味はあまりないかなという気がしています。私個人的な意見ですが。
ほかにどんどんご意見をいただきたいと思います。
【藤谷委員】 今、安成先生が言われました研究テーマをどう絞るかというのは非常に重要で、それによって研究コンソーシアムの性格も決まってくると思うんです。だから、どういう研究をするためにどういう連携が要るかということで、だからそれによってコンソーシアムの形も、緩やかなのか、もっとタイトなのか、コアの組織をつくるのか、どこが事務局を担うのか、あるいはどういう権限があるか、全部決まってくると思います。だから、今言われたそこのところをもっと議論すべきだと思います。
【榎本委員】 今のお話に重複するところもあるんですけれども、このレポート、これまでどういう研究をやられてきていて、それで既存のいろいろインフラがあるわけですね。船も「みらい」もありますし、ステーションもあります。そういったものを大切にしながら次のステップに踏み出そうと模索しているようなところも評価できて、例えば北極振動というのもありますが、北極振動のような陸地では相互作用系を探しながら、作用活性へ進んでいこうとするような方針はいいと思うんですが、先ほど島田さんが言われたように、特定のテーマ、地域、名称にここで縛ってしまっては危ない、そういう点もあると思います。
ですから、全体的なここでの取りまとめの、今言えることは既存のものもあるけれども、そういったものを見直す、次のステップのためのスタートを切るというところまででして、きっとローカルな地域名、あと現象名、そういったところを出すのはやっぱり危険じゃないかなと、私もそういう印象を受けました。
【安成主査】 ほかに。まだいろいろあると思うんですが。
【榎本委員】 あともう1点いいでしょうか。
北極圏のデータ整備というところなんですが、実は従来整備されていて、急激になくなってきている気象データみたいなものがあります。ここには出ていないんですけれども、それが現状以上にさらに将来の北極研究を難しくしてしまうような部分もありまして、そういうのもどこかで立ち入っておく、まだ大きな議論の中ではそういう細かいところまで出てこなくてもいいのかもしれないですが、どこかで入れたらと思います。
【安成主査】 北極圏のこういう特に観測研究中心のデータというのは、国際的には基本的にはどうなんですか。もう完全にフリーにエクスチェンジというのは前提になっているんですか。その辺も多分議論すべきかと。これはIASCなんかでその議論、ポリシーがあるんじゃないかと。
【山内主査代理】 そこでもあって、1つはアークティックマスターディレクトリというのをつくって、全部そこに、少なくともデータがどこにあるか、情報を集めるという動きはIASCなんか集合して努力は進んでいますけれども、必ずしもまだ本当に機能するところまでは行っていないような気がするんですね。
それから、個別には結構、アメリカにあるデータ、スノー・アンド・アイス、ああいうところにあったり、多分この15年ぐらい、いろんなプロジェクトで随分ロシアのデータを蘇らせる努力なんかは進んで、あるところまでは多分できているので、榎本さんがおっしゃるその後の最近のデータがまた必ずしもちゃんと自由に使えるようになっていないんじゃないか。
【榎本委員】 どんどん溶けている北極海の海洋域の気象データ、ブイとかを使っている、それがまた乏しくなってきている。せっかく必要な時期に逆に足りなくなってきているという話も聞いています。
【安成主査】 今データの話がありましたけど、もう1つ、この作業部会で議論すべきはやっぱり国際的な貢献ですね。日本がいろんなことをやっているけど、なかなかフィージビリティがはっきり出てこないというところで、日本のいろんな北極圏の研究に絡む人たちが組んで今一番やるべきこと、これは観測からモデルを含めて、特にモデルのコミュニティと観測コミュニティ、必ずしもこれまでちゃんと連携していない。特に、しかし非常に不確定なモデルもいろいろな大きな問題がある。当然いろんな観測データが要るはずだけど、観測の人たちはまたちょっと別の興味を持っている。
いろんなところがあって、だからこれはまさにコンソーシアムをどういう形にするか、あるいはそれに基づいて、ここの3.で「北極総合研究プロジェクト」の創設とあります、ここですね。ここを具体的にどうするかというところでちょっと議論を絞っていただいたほうがいいかな。
とにかく北極圏でこれもやるべき、あれもやるべきというのは当然あると思うんですが、特に日本が結集して、あるいはいわゆる観測屋さんとモデル屋さんが一緒になってまずやるべきことは何かというところでちょっと議論を絞って、その上で何をすべきかということを考えるべきかなと思っています。
特に予測という話が出ましたけど、それからIPCCへの貢献というようなこともこの間から議論になっています。ちょっとその辺で、例えば野沢さん、何かご意見ないですか。
【野沢委員】 今の安成先生のお話とちょっとずれてくるかもしれないんですけれども、まずモデルの立場からいいますと、モデルの高度化、特に北極における高度化というか、精緻化ですよね、観測と合わせるというような発想で見たときに、多分阿部さんがおっしゃったことと近いんですけれども、北極振動のようなバリアビリティまで合わせるのか、あるいは安成先生がここを絞ったほうがいいんじゃないかとおっしゃった温暖化の影響という意味では、多分北極振動というのはノイズに近くて、シグナルはもうちょっと長期のトレンドだと思うんですね。どちらに合わせるのかによって、多分モデルの高度化あるいは精緻化、発想が違ってくるんです。
ですから、そこもまず絞っていただかないと、こちら側としては、じゃ、そのためにはどういう観測が必要なのか、どういうコンポーネントが必要なのかという形にもなってきますので、そこが大きな問題としてやっぱりあるんじゃないかなという気がします。何となくここに書かれているのを全部やろうとすると、モデルの側としてはもうできませんと言うしかないという、お手上げの感じかなというふうにちょっと感じておりました。
あと、期間5年というスパンで考えたときに、モデルの部分は若干不満があって、高度化、精緻化しか書かれていなくて、5年で、じゃ、それだけやればいいのというのは多分違うんですよね。おっしゃられるように観測とうまくモデルをリンクさせて、何か新しいことができませんかというのが絶対世界的にもやらないといけないことだと思いますので、そのためには、今あるモデルは不十分です。
不十分なんですけど、どこなら見れますかというところも含めながら、観測とうまく突き合わせて、悪いなりにどこなら使えるかというのを試行錯誤しながらやらせていただけるならば、こちらとしては非常にありがたい。
その上で、じゃ、ここは悪いので、もうちょっと別のモデルを使って見ていきましょうとか、次のステップ、次のステップに進めると思います。今のところ私の考えです。
【安成主査】 じゃ、阿部さん、どうぞ。
【阿部委員】 モデルに関する話題として、私も先ほどフィージビリティと言いましたが、もし具体的に申し上げますと、観測のデータセットをしっかりつくるということが書かれていまして、同様に、モデルの今までに蓄積された実験のアウトプットを見る、それを観測の人と一緒に見る、北極のことをこれから何を研究するべきか、どこが足りないのかということを一緒に専門家が見るということが必要だと思います。
ですから、新たなモデルの構築あるいは高度化をちょっと待って、今何が悪いかということを、今もう革新プロジェクト、共生プロジェクトでたくさんのモデルが出ました。あるいは日本だけではなくて、SIMIPのデータセットが今、DIASのデータベースなどでみんなが使えるような形にせっかくなりました。
ですから、北極を見る専門家がみんな結集して、どこが足りないのか、あるいはどこがうまくいっているのかということを、近未来、長期未来、そして近過去、長期過去、今、東さんは過去のことも言ってくださいました。私たちもいっぱい実験しております。だけれども、いつも高度化、高度化で追われておりますけれども、かなり実験データも蓄積されているんですね。ですから、ぜひ活用してというか、一緒に見ていただきたい、見させていただきたい。そして一緒に論文を書ける。
実は原田委員と前々回のとき、ここの文科省の同じ建物で記者発表させてもらいましたけれども、モデルと観測を組み合わせると、かなり『サイエンス』『ネイチャー』級の論文を出すことができます。我々もさせていただきたいと思うので、ぜひ一緒に組むことで国際的な評価を得るようなことはできる、あるいはそういう実績を積んでおりますので、ぜひそれを北極をターゲットにということをやれたらと思います。
そのためにはちょっと余分なある程度手間もかかりますので、それなりの裏づけを、人的なりということをコンソーシアムを中心に考えていくというのがよろしいのではないでしょうか。
【安成主査】 どうも。
【野沢委員】 すいません、ちょっと補足になるんですけど、モデルと観測を比較して、どこが合わないのかという発想はできればこちらとしては避けたい。もちろんそれは認識して改良するというのは重要なんですけれども、ここが合わない、あそこも合わない、そこも合わないねとなってくると、モデルのほうとしてはやっぱりどんどんへこんでいくというか、どこから手をつけていいかという形にどうしてもなっていくので、じゃ、合わないなりにここが合っているので、じゃ、それはなぜ合ったのかというメカニズムのほうに踏み込んでいけば、じゃ、これがこういうメカニズムで合っているならば、こういう観測とこういう形で整合しているはずだというふうに次に行けると思うんです。
そのときに、じゃ、その仮定に基づいて、別の観測データで合っているかどうかというのを見て行くことで、それがモデルがほんとうに正しかったのか、たまたま合っただけなのかというのを評価できますから、またさらなるモデルの次の解析に進むと思います。その点はこちら側からの、モデル側からの要望です。
【安成主査】 観測の大畑さんは。
【大畑委員】 観測とモデルの間にはかなり深い、溝ではないんだけど、昔からこれは議論していまして、なかなかうまくいかないというのがある。ただ、常に努力はしなくちゃいけないというのは事実であります。
今の議論を聞いていまして、何をしなければいけないかという話のときに、5年計画、5年のプロジェクトというのがある。もうちょっと北極は長いと思うんですよね。我々はここでどのぐらいの時間スケールでの課題を議論しなくちゃいけないかとなると、多分1つは20~30年あるいは50年、20~30年後だと僕はいないと思うんですけど、多くの人はまだ活躍している。そのぐらい時間をかけて極域というのは扱っていかないと、30年後後悔する可能性があると思うんですね。
少し時間スケールを、研究活動の時間スケール、それから観測の時間スケール、その辺を分けつつ整備、最終的にはしないと、今、特に何をしなくちゃいけないかというのは出てこないような気がします。
【安成主査】 長期的な変化、今後北極圏はどうなるかという、それのインパクトも含めて、当然それは課題としては十分議論しないといけないと思いますね。ただし、それを前提にまずこの数年というか5年、あるいは場合によっては10年で何をすべきかという、そのストラテジーが大事なんだなと思います。
私も今、モデルの立場からお2人が言われたことを非常に共感する部分があって、ただ大事なことは、これまで特にGCMなんかのアウトプットを、観測の人は確かに、我々もちょっと一時やったんですけど、全然観測と違う、使い物にならんみたいなことをそこでギブアップというのもあったんですが、同時に、ただ一方で、じゃ何が結局問題かというところは、観測の目を持った人とモデルの構築をやっている人が一緒に何が問題かということを考える。
特に問題のターゲットとしては、私はやっぱり温暖化というか、北極域は非常に気温の上昇、モデルでもはっきり出ているわけですね。観測も一応出ている。ただ、どうも何となく系統的に違う面もあるし、だからここが合う合わないじゃなくて、何でモデルではこういうことになるのかということをある意味で観測の視点からも考えるというか、そういう場として大事かなという気がします。
その上で、じゃ、やっぱりここのフィジカルプロセスがやっぱりおかしいんだなとか、そういうのが出てくれば、このアクティビティの役割も結構あるんじゃないかなという気がしますが、ほかにどうですか。
【藤谷委員】 今のモデルとその観測の協力なんですけど、1回目の作業部会でちょっと資料をお配りしましたけど、今年の1月に我々連携拠点主催で雪氷圏ワークショップをやったんです。そのときも気象研の鬼頭先生にコメントをいただいた。そのとき言われたのは、単なる観測データをいただくだけでは雪氷圏のモデルはだめですと。観測屋さんが一緒にモデルをつくるくらいの覚悟で入ってきていただかないと雪氷圏はよくならないという、そういうコメントをいただきましたので、それは非常に貴重なコメントだと思っております。
【安成主査】 まさにそうかなと思いますが、そういう意味で、観測の立場で、例えば青木さんなんかは観測もやられて、それを積雪のモデルに組み込んでいる。そういう視点で、何をすべきかみたいなことに関連してコメントがあればお願いします。
【青木委員】 我々地球システムモデルにアルベドのプロセスを入れているんですけれども、既存のモデルだとアルベドは気候に入っていたんですよね。そこを厳密なモデル、精緻化することによって、そのまますぐ精度がよくなるかというと、そうではなくて、逆に悪くなる場合がある。
それをモデルの人と一緒に考えてみたら、例えば南極の1つの例なんですけれども、雪が降って粒径が小さくなって、アルベドが上がって、だんだん時間がたつとアルベドが下がってくる。
ところが、南極では、気象圏のモデルは雪があまり降らないんですね。雪が降らないとどんどん粒径が大きくなって、アルベドが下がってしまう。だから、そのまま入れてもだめなんです。そうすると、今度は雪が降るように大気のほうを改良しなきゃいけない。そういうことは一緒にやってみて初めてわかった問題で、それを一方的に考えていてもなかなか改善しない。だから一緒にやらなきゃいけないんだ、これが1つの視点です。
それから、どこを直すかということは、モデルを改良してみて、モデルの中でどういうパラメータが必要だという情報をモデルの人からもらって、我々がそれを実際にその観測をやってみる。そういうモデルの側からの提案に基づいて新たな観測をやる、そういう視点が必要じゃないかなと思います。
そういう意味では、前回言いましたけど、温暖化の影響評価だけを調べるための観測ではなくて、資源は限られていますから、影響評価と同時にメカニズム解明に使えるような観測を一緒にやっていく、これが大事かなと思います。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
今、青木さんが言われたことは私も非常に重要だと思いますね。今、これは北極圏に限らず、例えば熱帯とか中緯度なんか、特に陸面過程なんかでモデルとモデルのアウトプットを観測屋さんがちゃんと比べてみて、それでまさに今言われたようなプロセスをやろうということで、WCRPのGEWEXなんかのあれはまさにそういう視点でやっているということで、それを北極圏の場合、海氷と積雪、もちろん凍土、時間スケールにもよりますが、特にその辺が絡んでいるプロセスであって、それが多分、僕はモデルの現在の予測で、どうも現実と違うというようなところ、その辺のモデルで何となく仮定してしまうということが実は現実とはかなり違うというところがあると思うんです。
それはやっぱりモデルと観測両方の人がアウトプットを見ながらやるということが非常に大事で、それを北極圏のプロセスとしてやるというのは1つ大きな仕事じゃないかなと思います。
ほかに。
【原田委員】 非常に重要だと思いますし、一つ一つの北極海で今起きている物理場のプロセスをきちんと再現できるようなリージョナルモデルを1つ構築するというのを具体的な目標に掲げてもいいのかなというふうに考えます。
というのは、私、前回のときに海洋生態系の今後を予測するのが重要だというふうに申し上げたんですけれども、次に、じゃ海洋生態系モデルを走らせるときに、物理場がモデルできちんと表現できていないと、うまく生態系を組み込めないんですね。生態系のほうもやっぱり観測とモデルと両方合わせて将来どういうふうに生態系が変化していくかということを見ていかなきゃいけないので、物理がまずベースとしてきちんとなっていけば、次に化学、生物と、分野間の融合とそれから高精度なサイエンスのアウトプットという点でも非常に重要だと思います。
【安成主査】 ありがとうございます。ほかに。
【島田委員】 それは非常に大事で、言うは易し、行うは難しというのが現状のところで、何が一番日本は諸外国と見ていて違いがあるかというと、やっぱりモデルの力がすごい日本はあると思うんですね。ただ、例えば北極の領域モデルというか、あと時間スケールが変わったときに、層がやっぱりいろんなところにないというところが、すべて環境研とかに押しやるのは無理で、気象研なんかで中期予報、今これだけに集中するんじゃなくて、そういう体制が必要かなと。数値モデルに関して言うと、北極となると北極海を、モデルと言うとほんとうはおかしくて、物理なんだと思うんですけれども、そういうことをよく知っている人があまり日本にはいないというのがかなりおくれている現状ですね。
世界で進んでいるかというと、アメリカでも北極の海洋モデルなんていうのは全然だめで、実は拡散係数を変えれば循環がひっくり返るというのがほんとうのところです。2007年の海氷減少が再現されたというのも、あれもかなり束縛を強くして、ほとんどスティックモデルになっている。境界条件のところも与えてやれば、そのとおり海氷がなくなるしかない。それが実は論文になったりもしていたりするんですね。
だから、野沢さんもおっしゃられていましたけど、メカニズムは何かという、物理学、生物学、化学とあると思うんですけれども、やっぱり人の知の部分というか、合う合わないではなくて、知の部分を大切にしながら、そういうのをつくれるような体制、観測にしても、モデルというときに何か道具、観測といえば何か労働者みたいなイメージがあるかもしれませんが、実はすごく理論的に見通しが立っていないと、ほんとうは観測なんていうのはできないんですね。
ほんとうに1回勝負、弾1発込めて、それでとりに行くようなものなので、たまたま突き合わせられるようなデータをとってくるんじゃなくて、その1回で決着つけるつもりで僕なんかも行っているつもりですけれども、モデル-観測の対話というのもやっぱりほんとうの基礎学問というか、というところが大事なんじゃないかなという気がしますね。
それをもってして社会に還元できるようなものは何かという、日本ならではのことを考えていけばいいんじゃないでしょうかねという気はします。
【安成主査】 どうもありがとうございます。
この取りまとめの中でも一応言葉としては北極圏システムモデルというような、一種の領域モデルを想定していますが、これは実はIARCのアクティビティの中で結構大きな部分でアークティックシステムモデリングというのがあって、これは特にアメリカの北極圏のモデルをやっている一種のコンソーシアムといいますか、それの世話役をIARCはやっているというのは、私はISABのメンバーをしていて知っていて、ただ、なかなかその成果、どれだけ上がっているか知りませんが、1つは、今日はIARCの方はどなたもおられないですが、IARCとの連携ということで1つ考える必要があるかなという気がしています。
【大畑委員】 確かに領域モデルは1つの課題になっていて、JAMSTECとIARCの共同研究でも一応課題としてうたっている。それには、以前からIARCがそれをつくるという方向で、コミュニティがアメリカの中、それからヨーロッパまで踏まえてできて、1つか2つぐらいつくるという最初の触れ込みだったんですけど、それがどうもたくさんできてきてしまって、多分北極の重要性とか見方がかなり違うということで、かなりたくさんしているもので、必ずしもIARCが領域モデルを現在先頭に立って開発しているという感じではなくなってきているみたいです。
領域モデルに関してはやはり私も関心がありまして、日本としてもそれなりに考えるべきだと。そういうのを若い連中と話すと、いや、GCMを細かくしていけばそっちのほうがいいとか、領域モデルのほうがやはり必要であるとか、いろんな議論があるんですね。そういう議論は意外と大変なことで、始めたら相当資源を投資しなくてはいけないですけど、例えばそういう議論が、ここで決めることはできないと思うんですけど、そういう議論をしていくのが多分コンソーシアムみたいなそういう共同の場で、ここはやっぱり幾つか重要なポイントを列記しておく、それで細かい議論はそう簡単にすぐ結論が出る問題じゃない。例えば、そういうものが必要であるという共通認識があるとしたら、どこが担うかとか、そういう議論に多分なっていくのではないかなと思います。私の意見です。
【安成主査】 どうもありがとうございます。
【杉本委員】 観測屋の立場から申し上げますと、観測とモデルを合わせていくことはもちろんすごく重要で、そのためには、私なんかはある程度領域が絞られて、その中にメカニズムとかプロセスがちゃんと書き込まれているようなモデルが必要なのかなと思っておりました。
ですから、モデルのコミュニティとして新しい領域モデルを新しくつくるというのは、すごく大変なことなのかもしれないんですけれども、観測とそれからモデルをつなげていくに当たって、観測屋のデータと直接合わせて、ここが合っているよというようなことを言えるようなプロセスが組み込まれたモデルというのをぜひ開発を期待したいところです。
【安成主査】 どうも。確かに領域モデルというのは必ずバウンダリーがあるので、それが逆に非常にクリティカルな場合はかえって、何をやっているかということになります。ただし、特にいろんなプロセスがどう効いているかとかということで、これも目的次第だと思うんですが、ある程度高解像あるいはプロセスもきちっと入れて、いわゆる領域のシステムモデルとしてやるというほうがいいケース、これはいろいろあると思うんですね。まずその議論は確かに今後やらないといけないと思いますが、確かにGCMはどうなんですか、北極圏の場合、普通のGCMですと、グリッドががーっとこっち寄ってきて、その問題というのが結構あるんじゃないかなという気がするんですけど。
【野沢委員】 テクニカルには、そのあたりは、特に海洋のモデルでは回避する方向のモデルのつくり方というのが確立されていまして、ですから、例えば海洋のほうですと、熱帯から中緯度の陸が多いようなところまでは通常の等間隔という、等緯度経度でこう区切っていくような形で行くんですけど、極のほうに行ったら、そのまま行っちゃうと当然、北極点で解けなくなっちゃうので、陸地の上に何か2点ぐらい通って、こういうふうにグリッドを、海洋のところをなるべく極に行っても格子のサイズが同じになるような、そういう特殊なグリッドをつくって解いていくという手法が開発されて、動いていたりもしますので。
大気側も、例えばNICAMなんかに代表されるように、等緯度経度ではなくて、グリッドのサイズをとにかく一緒にして張りつけるというのはもちろんありますので、そういうのをうまく融合していけば大丈夫なはずだと思います。そこはテクニカルなので解決できるはずです。
【阿部委員】 さっき観測の方がすごく労働みたいに思われているけどとおっしゃったんですけど、モデルは別に賢くて偉そうではなくて、実はそれもすごい労働で、そこのところは誤解なんですけれども、言いたいことは、幾つもモデルをつくるというのではなくて、できるだけ労力を結集して、アイデアを結集してオールジャパンの、ただしヒエラルキーを持ったモデルをみんなでつくるという方法にしないと、とてもじゃないけど、我々パワーがもたないというのが、それは全世界的な方向だと思います。
全世界的に、少なくともその国の中では幾つかのモデルを統合していく、あるいはヒエラルキーのシームレスな部分をどんどん追求していく、結局個人研究でやっているとみんな周りと互いに競争になりますから、最初のうちはそれでいいんですけれども、資源のことだとかいろんなアイデアのこととか考えると、ある程度拠点となるモデリングに統合していくほうが国際的にはいいかと思います。
GCMか領域モデルかという議論ではなくて、GCMも領域モデルも両方必要です。というのは、北極圏というのは周りからの輸送、海でも大気でもそれは重要ですし、フィードバックメカニズムはかなり放射も力学も両方かかわってきますので、領域で閉じるということはあり得ませんので、GCMも必要ですし、GCMだけではだめで、領域と両方。当然そういうようなことを高解像度にするだけじゃなくて、領域モデルをつくったりということは気象研の側でも、それから環境研、東大、MIROCの側でも両方やっていますので、そこをどんどん強化したり改良したりということを北極の目を持った、北極に関心して知恵のある方々に入っていただいて、よりよくしていくというふうにするほうが、新しいものをつくるというのはほとんど、それよりもそのほうがいいかと。
皆さんのお知恵を借りて、その部分をよくしていくと。もちろんプロセス、メカニズムを考えながらやっていく。それが引いてはまた、じゃ、そういうところの観測を得たほうがいい、データが必要だとか、モデルのこういうところを改良したらいいんじゃないかという知恵がお互いに出てくると思います。
【安成主査】 どうもありがとうございます。
【青木委員】 モデルと観測の人が集まって一緒に議論して、いろんなことがわかると思うんですけれども、人材育成という意味ではモデルとちょうど観測のインターフェースになるような人材育成が必要なんじゃないかなと最近感じています。
それはやっぱり観測のプロで長年観測をやっている人がモデルの人とまず言葉がなかなか通じ合えないとか、そういうようなこともあって、比較的中間、少しコーディングもできるし、観測のデータも見ることができる、そういうインターフェースになるような人材育成というのが必要かなと感じます。
【安成主査】 それは非常に大事だと思いますね。
【原委員】 モデルの話なんですけれども、最近、気候システムと生態系のインタラクションということで、生態系のエコシステムのプロセスを取り入れたモデルというのは非常に開発されているんですけれども、私は陸上の植物生態系のほうのモデリングをずっとやってきましたが、このプロセスを入れて、あのプロセスを入れてというふうにやればやるほどモデルが複雑になっていって、パラメータの数も増えていく。現実問題として、そういうパラメータは観測できないんですね。
今、我々は何をやっているかというと、パラメータの値というのは話し合いで決めるとか、モデルの結果が合うようにそのパラメータの値を逆推定する、そういうやり方なんですね。そういうモデルを北極域のリージョナルモデルにしても取り入れて、ほんとうに我々が目指すようなモデルができるかというと、そこは少し新しいアイデア、考え方が必要かなと。
今までのお話だと、観測してその結果を記述できるようなプロセスをどんどんモデルに入れていけば、より高度なモデルが開発できるのではないかというような流れかなというふうに感じたんですけれども、必ずしもそうではないというところで、ちょっとアイデアが必要かなと思います。
【安成主査】 特に生態系、バイオスフィアが入るとまさにそうですね。それ自体わからないことはまだたくさんあるということで、そういう意味で、ちょっと話はずれますけど、特に日本の気候への影響といいますか、それは1つの視点があったほうがいいのかなと。最初のきっかけで北極振動云々という話が出ましたけど、やはり日本の今後の気候予測への影響を考えたときの北極圏研究の重要性という、そういう視点も多分見えるかなと。
そういう意味では、多分日本の場合は風上側というか、要するにユーラシア大陸があって、そのプロセスを含めて研究、特にユーラシア大陸で観測をやっている方は結構いますが、モデルでも、例えば大陸上の降水がどれだけちゃんとモデルで出ているかというと、どうもかなり現実とは違う。もちろんいろんな原因があるかと思うんですが、それは1つには地表面過程の問題だとか、場合によっては北極海の影響がどうかとか、いろんな問題があろうかと思うんですね。だから、1つはその辺も課題の中には入れると、このコミュニティとして結構やれることもあるんじゃないかなと思います。
ほかに。大分議論が出てきましたが、この際、何でもいいですが。
【山内主査代理】 組織論のほうは後ですか。
【安成主査】 そうですね。今ずっとどちらかというと重要課題のサイエンス的な話になってしまいましたが、いや、もちろん組織、この取りまとめ(案)そのものへの議論ということですから、当然コンソーシアムあるいはプロジェクトを含めて、もし何か。
【山内主査代理】 さっき何人かの方から意見があって、大分議論の中心が変わりますけれども、コンソーシアムをどういう形でつくるべきかということで、単にぶら下がっている大学グループの人たちもかなり主導できるような、そういう組織が必要じゃないかというご意見もあって、確かにそうだなと思っていたんですが、1つはコンソーシアムみたいなのをつくって、それが機能するためには、さっきもちょっと私申し上げた、どこにコンソーシアムというのがぶら下がっているのかという、その辺の設定はどう皆さん考えておられるのか。
例えば今、日本学術会議にも、段階は下ですけれども、IASC小委員会というのがあることはあるんですね。だけど、それは必ずしも今皆さんの議論しておられる希望するコンソーシアム、実質的に進めていく機能にはなり得ていないわけですね。
そういう意味で、じゃ、今議論したコンソーシアムを、例えば今の地球観測部会ですか、そういう関連で置かれようとしているのか、あるいは単に研究者のボランティアの集まりでは多分あまり機能しなくて、単に議論しているだけで、それがその先の研究計画あるいは予算計画に反映していかないと思うんですけれども、その辺のことはどういうふうに考えていったらいいのかなという疑問なんです。
【安成主査】 事務局をどこに置くというのはいいとして、先ほど藤谷さんが言われましたように、何をこのコンソーシアムで議論してやるのかという中身、そこのところで決まると思うんですね。実際に、この取りまとめ(案)の大きな時計数字の3(ローマ数字)の我が国の北極研究、この中の特に1で何をやるか、ここのところで、それに沿って、その実行のためにこういうコンソーシアムが必要ですねという、その中の具体的なプロジェクトというのが多分この北極総合研究プロジェクトという、そういう形でないと多分意味をなさないというか、機能しないというか。
もちろん、ただあまりにもいわゆるプロジェクト的なものじゃなくて、いろんな裾野が広がると問題があるので、コンソーシアムはかなり幅広くということにはなるかと思うんですが、そこのところは私もなかなか、このコンソーシアムというのは名前はいいんですけれども、難しいなという気がします。
ただし、実際にこの5年間はプロジェクトとしては主にこれをやりますと。ただ、次につなぐことを常に考えないといけないですよね。この問題が解決されたら、じゃ次は何をすべきかという、その議論も含めて当然コンソーシアムではやるということにはなるかと思いますが、この辺が何か……。
【大畑委員】 コンソーシアムの話なんですけれども、山内さんの紹介した設立の一番下のところに役割というのが書いてあります。報告書の中に書いてあるのと類似しているかと思うんですけれども、多分何を北極研究をやっている人がそういうものに求めるかという、そのニーズ、最近ニーズとよく言いますけど、多分研究者のニーズだと思うんですね。
それもいろいろ挙げてもらって、やはりそれはそうかと。それをやる、だめなニーズもあるかもしれないけど、いいニーズはピックアップして、それをやるにはどういう形でやるか、あるいはさっきの権限という話がありましたけど、やっぱり権限を持たせなくちゃいけないか、そういう形の整理になると思うんですよね。
だから、それぞれの研究者あるいは研究グループからそういう一応漠然としたイメージはあると思うんですけど、具体的にそこに求めるものは何なのかを出してもらって整理した上で、再度整理して、そうすると、どこにどういう形かというのはよく見えてくると思うんですね。先ほどの学術会議の下という話も我々以前議論したんですけれども、ま、学術会議だったらちょっと無理だろうなと、皆そんなに寄ってこないだろうなとか、そういう議論もあります。
だからその辺を、みんな何を求めるかというのは言っていただいたほうがいいんじゃないでしょうか。
【安成主査】 ほかに、コンソーシアム、あるいは実際にこの研究を含めてどう進めるかということになると思いますね。それを含めて何かご意見とか。
【杉本委員】 まとまった意見があるわけではないんですけれども、多分一番問題となるのは、コンソーシアムというのは多分非常に緩い、なるべく広い範囲の人のアイデアを吸い上げるような、そういう組織であるべきだと思うんですけれども、実際に研究計画を立てて、予算をどのように配分していくかというところをどこでだれが決めるかということがおそらく一番問題で、それをコンソーシアムに全部「はい」と言って出したとしても、それはまとまり切れない部分もある一方で、どこかが、例えば極地研が勝手に決めてしまうというのも、それはまずい話ですので、そのあたりを組織上広く議論する場、それから、例えば研究経費は基本的には公募にして、それをどの研究からやりましょうかというようなことを決めていく、そういう組織がいると思うんですけれども、単に公募にすればすべて解決というわけでは多分なくて、ある程度リーダーシップを持ってやるべきところが必要にはなってくるかと思いますので、そのあたり非常に難しいんだなと思います。
【安成主査】 ほかに何でも結構ですが。
コンソーシアムでまずこれをやるべきだという話の議論は当然要るのかなと思います。そこで、今、杉本さんは公募型という話をしましたが、そういう形にするのか、あるいはコンソーシアムの中の1つのまたグループが、執行グループみたいなのがあって、そこで具体的なプランをつくって、実際の予算も含めたプロジェクトにするか、その辺のところのプロセスはまたいろいろ議論があるかと思います。
やっぱり私は、特に今回の今の議論で、観測のグループとモデルのグループ、これはこれまで一緒にやる場がほとんどなかったですね。それで今、北極圏でやるべきことというのは結構あるという問題が出てきていると思うんですね。だから、そこのところをコンソーシアムではまず議論する。
それで具体的に、じゃ何をすべきかというところは、このコンソーシアム全体でというのは何らかの、極地研が一応世話役をやるということで、極地研の事務局と、それから何人かの幹事会みたいな、そういうものが場合によっては要るのかなという気もしますけど、そこで実際のやるべきプロジェクトを考えていく。私は個人的にはそんなイメージを持っていますが、どうでしょうか。その辺のところ、事務局のほうは何かアイデアございますか、具体的に。
【谷推進官】 コンソーシアムのところに少し書いておりますけれども、今まさにいろいろご議論いただいた話で、実際にコンソーシアムが機能していくためにはどうしていくべきかというのは、7ページの4つ目のパラグラフになりますけれども、より焦点を絞って研究計画、国際協力、人材育成、これはこれだけ書いてありますが、「など」ということで、例えば観測とモデルの連携とか、そういうものを具体的に議論する場をつくっていくということは考えられるだろうというふうに思っております。
今回そもそも報告書中間取りまとめというふうにさせていただいておりますけれども、コンソーシアムをつくるとか、北極総合研究プロジェクトみたいなものを立ち上げようということ自体、大きな方向性としては多分ご了解いただければ、それは中間取りまとめという形でまとめさせていただいて、それ以後、ただ、それで、じゃ動いていくのかというと、必ずしもそうではないので、例えばコンソーシアムのある種の詳細設計といいますか、そういったものを引き続き当作業部会でご議論いただいて、例えばプロジェクトの中身についても重要課題の絞り込みといったものを議論して、継続的にやっていただくということをぜひお願いしたいというふうに思っております。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
一応これで3回目ということですが、特に中間取りまとめ、これを当然リバイズする必要がありますが、この際何かということがありましたら。
具体的に何をやるかというと、そこが一番問題ですね。サイエンスとして北極圏でまずやるべきこと、それをやることによってどういうメリットがあるかということも含めて、全体的な今日の議論の雰囲気として、温暖化そのもの、北極圏、このプロセスの問題点というのをモデルと観測両方から、それからもちろんそれの影響、特に温暖化に、広い意味での北極圏ですね。寒冷圏といいますか、もちろん凍土とか生態系とかいうもののインパクトということもありますが、それが同時にまた気候へのフィードバックという側面もかなりある。海氷もそうですね。だから、その辺でやはり観測とモデルと両方からちゃんと調べるということですが、かなりそこは見えてきているような気がしております。
その辺のところで具体的なプロジェクトをつくっていくということになるのかなという気がしますが、そろそろ時間になってしまいましたが、よろしいでしょうか。あとこれで、かなり意見が出たと思うんですが、今回の意見を踏まえまして修正を行うということになるかと思います。この取りまとめにつきましては、一応最終的にどうまとめるかというのは主査に一任していただくという面、もちろん皆さんといろいろフィードバックしながらということになるかと思います。
それから事務局のほうで修正を踏まえて、当然必要であれば個別に委員の方と相談して、最終的にまとめていきたい、そういうプロセスで行きたいと思いますが、まとめ方としましてはよろしいでしょうか。
じゃ、どうもありがとうございました。
それでは、そろそろ時間になりましたので、事務局のほうからよろしくお願いします。
【谷推進官】 タイトなスケジュールの中で中間取りまとめを精力的なご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。主査と相談をさせていただいて、今日いただいたご意見を踏まえたものを先生方に、メールベースになんですけれども、確認をいただいて、最終的に取りまとめというふうにさせていただければというふうに思っております。
それから今回の取りまとめ結果を踏まえて、最終取りまとめに向けて、今日は幾つかコンソーシアムの詳細設計でありますとか重要課題のさらに具体の洗い出しでありますとか、まだ引き続き仕事が残っておりますので、引き続き会議については開催をさせていただくということで、具体の日程調整についてはまた改めてさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それから、お願いになりますけれども、今回大きなことで例えばコンソーシアムをつくるということについて、大体ご了解いただけたということだと思うんですけれども、そのコンソーシアムを具体的に回していくという上では、例えば運営委員会をつくるとか研究計画委員会をつくるとか国際協力の委員会をつくるとか、個々の働く委員会が多分できるということになるかと思います。
大変恐縮なんですけれども、先生方にそれぞれ、安成主査とご相談しながらですけれども、先生方個々にお願いをする部分が出てくるであろうというふうに思っておりまして、その点についてはあらかじめお願い方々させていただきますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。
本日の議事録につきましては後日事務局からメールで先生方に送らせていただきます。修正がございましたらご指摘をいただきたいと思います。最終的にはまとめて文部科学省のホームページで掲載をさせていただきます。
それから旅費手当の確認について紙をお配りしておりますので、お帰りの際、事務局にご提出いただければというふうに思います。
事務局からは以上でございます。
【安成主査】 あと、ちょっと私から質問です。この取りまとめ(案)がこれで改訂、大体めどとしていつごろになるんでしょうかね。
【谷推進官】 大変失礼いたしました。8月4日に地球観測推進部会、親部会が予定をされておりますので、そこには完成版、案がとれた形で出させていただきたいというふうに思っております。
【安成主査】 時間があまりないんじゃないですか。
【谷推進官】 ええ。数日のうちに今日のコメントをいただいたものをフィードバックさせていただいて、それについてどうしてもここというところがあれば、書面でフィードバックをいただいて。数日といっても間に合わなくなっちゃいますので、大至急リバイズ版をお送りいたしまして、来週頭にはフィードバックいただくというような形でまとめさせていただければというふうに思います。
【安成主査】 ということで、非常にタイトなスケジュールですが、ぜひ委員の方々のご協力をお願いしたいと思います。
じゃ、どうも本日は非常に活発なご議論をありがとうございました。これをもちまして今回の第3回の会合を閉会したいと思います。どうも本日はありがとうございました。
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