地球観測推進部会 北極研究検討作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成22年7月13日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 16F特別会議室

3.議題

  1. 関係省庁・機関の取組について
  2. 我が国における北極研究の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

安成主査 山内主査代理 青木委員 東委員 阿部委員 五十嵐委員 石川委員 榎本委員 大畑委員 島田委員 野沢委員 原田委員  福田委員 藤谷委員 松浦委員 

文部科学省

森本審議官 田口環境エネルギー課長 谷環境エネルギー課推進官

オブザーバー

井上総合地球環境学研究所教授

5.議事録

 【安成主査】  ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会北極研究検討作業部会の第2回会合を開催いたします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

 それでは、まず、事務局に出席者の確認をお願いしたいと思います。

【谷環境エネルギー課推進官】  ありがとうございました。本日ご出席の委員は15名におなりです。杉本先生と原先生がご欠席かというふうにご連絡いただいておりますが、いずれにいたしましても過半数に達しておりますので、作業部会としては成立いたします。また、本作業部会の運営規則により、公開とさせていただきますので、お願いいたします。

【安成主査】  続きまして、資料の確認をお願いいたします。

【楠原環境エネルギー課補佐】  それでは、議事に入る前に、本日の資料を確認させていただきます。まず、お手元に、座席表をお配りしております。座席表の下に、めくっていただいて、次に、議事次第がございます。

 その次をめくっていただきますと、配付資料といたしまして、まず、資料1-1「気象研究所における北極圏研究への取り組み」。さらにめくっていただきまして、資料1-2「国立環境研究所における温暖化研究と北極研究への取り組みの現状と今後」。それから、資料1-3「周極域の森林生態系研究」。続きまして、資料1-4「北見工業大学における北極研究の概要」。続きまして、資料1-5「東大大気海洋研究所における北極関連研究」。続きまして、4つのものが1ページに印刷されているものですけれども、「北極研究検討作業部会資料」、資料1-6-1です。それから、1枚物でさらに、「気候変動の世紀における体系的海洋学教育プログラム」ということで資料1-6-2がございます。資料1-7としまして、「地球研のプロジェクト」。資料2といたしまして、1枚物ですけれども、「各国の北極域研究に関する体制比較」。参考資料といたしまして、一番最後ですけれども、北極研究検討作業部会の設置についてという資料がございます。それから、本日、席上配付で1枚配付させていただきましたけれども、「日本の北極研究の在り方と新たな体制 米国を事例として」の以上でございます。

 抜けなどがございましたら、事務局までお伝えいただければと思います。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。資料を確認できましたでしょうか。

 本日はお手元の議事次第にあるとおり、3件の議題ということになっています。終了は12時ということですが、きょう、まず前半に、各機関の北極研究の取り組みについての紹介をお願いいたします。その後に、今後の研究の進め方に関する体制、それから、国際協力についてということで、結構、議題がたくさん、かなり時間を要する件があります。きょう、できれば、重要課題についてできるだけ絞り込みをするということにできるだけ時間をとりたいと。その後、時間のある限り、議題2の北極研究のあり方、それから、それに関連して、国際協力の話という形で進めたいと思います。

 各機関の研究の紹介ということで、皆さんそれぞれ、非常に立派な資料を用意していただいていますが、時間が1人7分ということで非常にタイトですので、特に北極圏研究に関連したこれまでの経緯プラス、特に今後の進めるべき研究といいますか、その辺を中心に、できるだけ要領よく、時間厳守でご発表をお願いしたいと思います。

 それでは、まず最初、気象研究所の青木委員のほうからお願いします。

【青木委員】  私の資料は資料1-1で、スライドが全部で20枚あります。後半が気象研究所の紹介、気象庁の紹介についてもありますけれども、多分、時間がないと思いますので、前半の研究の内容について説明したいと思います。

 最初のページの下、これは放射強制力の図で、IPCCの2007年版に載っているものです。このときから、ちょうど真ん中に赤い丸をかいていますけれども、「Black carbon on snow」というのが追加されました。雪の上に黒色炭素、ブラックカーボンがのることによって、アルベドが低下して、それで、地球を温めると。それの放射強制力は0.1プラスマイナス0.1ワットというような値が出ています。これは温室効果基点に比べると非常に小さい値ですけれども、実際、雪がある場所で、しかも雪のある期間にしか働かないものを全球年平均した値ですから、実際には積雪がある場所で、しかも融雪期に主に働きますので、この10倍から数十倍の効果があると考えられます。そういうことで、最近の急激な北極域の雪氷の融解が加速されているんではないかということがいろいろなところで言われています。

 一方、次のページをめくっていただいて、これは2007年の『Science』に載ったマッコーネルらのグリーンランドアイスコアから求めた、コア中のブラックカーボンの濃度です。過去200年ぐらいの記録があります。上の図は1800年から2000年までのブラックカーボンの濃度で、単位はppbwという単位です。ppbwというのは10のマイナス9乗ですから、雪1グラム中にブラックカーボンが何ナノグラムあったかというような単位です。

 赤が年平均、黒が月平均ですけれども、パッと見て、1900年代の前半に非常に濃度が高くなって、また最近減ってきていると。これは石炭の燃焼によって、ブラックカーボンが増えたということだと思います。それ以外にも、イベント的にパルス状に非常に高い濃度がある。これはおそらく森林火災の影響ではないかと思います。

 その下に、それによる放射強制力が載っていますけれども、1900年代前半では、時に1ワットを超えるような放射強制力が計算されていて、最初のIPCCの0.1ワットに比べると、1けた大きい値がグリーンランドではあると。これだと溶けているかもしれないということを言われるわけですけれども、それがほんとうだろうかというところが、きょうの私の話のポイントです。

 同じようなことを、札幌の低温科学研究所ではかったのがその下の図で、2006年から3冬期間の、上の図がアルベド、下がダストとオーガニックカーボンと、ここではECと書いていますけれども、これがブラックカーボンと考えていただいて結構です。このときの黒い線がECですけれども、その濃度は札幌の場合、数十ppbwから数百ppbw、すなわち、グリーンランドに比べると数十倍から数百倍の非常に高い濃度がある。それによって、アルベドが数%低下している。そこに黒い字で書いていますけれども、積雪不純物の効果は、アルベドの低下量が0.01、これはモデルを使って計算したんですけれども、不純物がなかった場合に比べて、アルベドは0.06低下して、放射強制力は6.3ワットというような値になっています。

 それで、その次のページ、気象研究所のモデルにそういう物理プロセスを全部入れたモデルを使って、さらにその下の図ですけれども、札幌の場合、左側が不純物あり、右側がなし、雪質は赤が濡れ雪、緑が新雪ですけれども、なかった場合とあった場合で、融雪がおくれているということがモデルで計算できます。一番下が積雪深ですけれども、不純物がなければ、融雪が約1カ月おくれるということで、札幌の場合は主にブラックカーボンと、ここの場合はミネラルダストが多いんですけれども、こういう不純物があることによって融雪が1カ月おくれる。逆に言えば、そういうものがあって加熱されているということがわかるわけです。

 それをまた全球のモデルに入れて調べますと、次のMASINGARによって見積もった積雪不純物による大気上端の放射収支と気温変動ということですけれども、左側の図の上が大気上端における放射収支です。それから、下が温度の上昇。それを見ると、やはり北半球の、しかも発生域に近いところで非常に赤くなっている。そこは加熱されているということで、温度上昇もその下に出ています。全球年平均のブラックカーボンの放射強制力、RFという赤字で右側に書いてある値を見ると、我々の計算では0.09ワットなので、IPCCに非常に近いんですけれども、この値が重要かどうかというよりは、やはり地域的にどれぐらいきいているか、それがほんとうに北極域で働いているかどうかということが重要です。

 その下の図は、雪の粒径とすす――これもブラックカーボンですけれども、その濃度を上のMASINGARというモデルで計算した場合と、それから、左の灰色の2つの図が衛星で抽出したものです。このように、モデルと衛星で同じようなパラメーターが抽出できるので、それを比較して実態把握をする必要があるということです。

 次の図ですけれども、下が青い図、上はグラフがかいてある。この図の意味するものは、ブラックカーボンの濃度が上がったときにアルベドがどれぐらい下がるかというのを放射伝達モデルで計算して、その低下量が実際の北極域の濃度とどういう関係にあるかというのを示したものです。図の上にSouth Poleとか、Greenlandとか、Other Arcticとか、Sapporoとか書いていますけれども、これは最近のブラックカーボンの測定値の大まかな範囲を示しています。

 結論としては、グリーンランドや北極域では、もし雪の粒径が小さいとアルベドの低下量は少ないんですけれども、そういう状態だと、現在の濃度では融解をそれほど加速するほどの濃度ではない。逆に何らかの原因で粒径が大きくなると、仮に不純物がなくても、アルベドが15%ぐらい下がります。そちらが先にきいて、さらに粒径が大きくなるとアルベドの効果が顕在化してきて、さらに5%ぐらい上乗せになって、20%ぐらいアルベドが下がるということで、今、溶けている直接の原因が、ブラックカーボンよりむしろ温度上昇によるものではないかということがこのグラフからは示唆されるわけです。

 さらに、その下の雪氷微生物の効果というものがあるわけですけれども、グリーンランドの消耗域の末端ではかなり黒く汚れていて、雪氷微生物がそこで繁殖してアルベドを急激に低下させて、最後は溶かしてしまっていると、そういうようなメカニズムが働いている可能性がある。ですから、やはり最初のトリガーが何かというところは今、はっきりわかっていないんですけれども、計算上からは、温度上昇のほうがきいている可能性がある。さらに、ブラックカーボンがそれをエンハンスして、最後に雪氷微生物が完全に溶かし切るというような働きの可能性があります。

 最後の、次の提言のところですけれども、アルベド低下の原因は雪氷の不純物か、気温の上昇による粒径効果か、あるいはその両方か、そこら辺のところを観測からプロセスモデルをつくって、GCMに入れてきちんと検証する必要があるというのが私の結論です。

 もう時間がないので、ずっと最後まで行きますけれども、最後の19ページのところです。全体についての提言で、一番上の下線を引っ張ったところを少し強調しておきたいんですけれども、研究全体を大まかに分けて、影響評価の研究か、あるいはメカニズムの解明かと分けた場合に、その2つをバランスよく進めることが重要じゃないかと思います。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。時間の中で発表いただいて、ありがとうございました。質問はまた後からということにさせていただきたいと思いますが、雪氷に不純物があって、アルベドの値に影響すると。非常に重要な話かと思います。

 それでは次に、国立環境研究所、野沢委員のほうからお願いします。

【野沢委員】  野沢と申します。国立環境研究所における温暖化研究と北極研究への取り組みについてご説明させていただきます。国立環境研究所では、北極という看板を大きく掲げて研究をしているわけではありませんけれども、関連するものとして幾つかありますので、そちらを説明させていただきます。

 主には、地球環境研究センターというセンターがございまして、そちらのほうで地球温暖化研究を推進しております。それが1ページ目の下、スライドの2番になりますけれども、概要としてポンチ絵にまとめてあります。中核プロジェクトが4つ走っておりまして、中核1、2の左側のものが観測的な研究、3、4がモデル的な研究になって、それらができるだけインターラクションをとるような形で進めております。現状では、観測同士あるいはモデル同士のコミュニケーションのほうはよくとれているんですが、残念ながら、観測とモデルのほうがまだ十分に連携がとれているとは言い切れない状況であります。

 めくっていただいて、3番のスライドになるんですが、観測のほうは前回の委員会のときにもたくさんお話がありましたので簡単に済ませたいと思いますが、環境研究所では主に温室効果ガス等の濃度のモニタリングなり、鉛直プロファイルなりを中心にして、航空機観測とか国際船舶あるいは航空機網、そういうものを使って、例えば北太平洋のCO2の吸収の分布とか、シベリアのある1地点ではありますけれども、航空機ではかったCO2濃度の鉛直分布、それの季節性がどうなっているかというようなことを調べております。

 私がこの場に呼ばれた1つには、温暖化のモデルをやっているというところが大きいと思いますので、後はそちらのほうを中心にご説明させていただきます。モデルのグループとしては、気候関係として、東大の大気海洋研究所、JAMSTECさんと共同でモデルを開発して、温暖化研究、IPCCに貢献させていただいている。

 それが4枚目のスライドになりますけれども、前回のAR4、IPCC2007のような状況では、上に示しましたような気温の過去の再現と将来予測、1850年から2300年ぐらいまで複数のシナリオについてやらせていただいております。モデル研究の中でも、主には、左下のほう、過去をターゲットとした、気候変化シグナルの検出と原因特定あるいはメカニズム解明というような研究、それから、将来に関しては、気候感度とか将来予測の不確実性を定量化する、あるいは温暖化の影響評価、それから、適応策の検討というようなことにターゲットを絞って研究しております。

 私が主に関係しているのが過去のほうになりまして、3枚目の5ページのスライドになりますけれども、過去の再現実験をいろいろなシチュエーションでやる。それによって、既に温暖化のシグナルはもうさまざまな観測に検出されていると思いますので、それは何が原因なのかということをモデルから探るために、このような形で……、さまざまな、気候変化するような自然起源の要因と人為起因の要因がありますので、それを切り分けてモデルでシミュレーションを行って、どのような形になるかと。それのさまざまなモデル結果を観測と統計的に比較解析することにより、こういう可能性が高いんではないかということを研究として進めております。

 例えば1つの例として、6枚目にあります、北極が激しく温暖化している時期でありますけれども、20世紀前半における温暖化の要因特定として、20世紀前半、1901年から50年の地上気温の線形トレンドをいろいろな条件下でやったシミュレーションから計算して、それが観測とどういう形でどれがどう整合しているかというのを見てみますと、少なくともCCSR/NIES、フロンティアというかJAMSTECのMIROCのモデルで見ると、20世紀の前半の温暖化というのは自然要因に起因する可能性が比較的高いと。ただし、温室効果ガスの増加も実は無視できないというような結論に今の段階ではなっております。ただ、気象研の青木さんがお話しされたようなブラックカーボンの雪へ付着するようなプロセスはまだ入っておりませんので、今後そういうことも調べないといけないだろうということです。

 ほかにも、めくっていただいて、国際共同研究という形ではありますが、北極にわりと特化したような研究は行っております。世界の幾つかの機関で、マルチモデルで同じような研究をするわけですが、例えば北極の陸域による温暖化は人間活動に起因しているだろうという統計的研究を行っております。

 それから、8ページ目になりますが、北極域の陸地の降水量は、やはり人間関係によって雨がどんどん増えていっていると思われます。モデルのほうからは、観測と比較して、整合的にそういうことが今の段階では出てきますということがわかってきております。

 最後、今後の方向性に関してですけれども、これまでそんなに北極をターゲットとして行ってきていないということもありますので、一般的なことしか言えていないんですけれども、モデルのほうからは、少なくとも私たちがどういうことをやっていきたいか。まずは、やはり観測データとモデルを比較して、その再現性をきちんと検証して、それもクライマトロジーだけではなくて、内部変動、それから、トレンドという意味で、0次、1次ではなくて、2次の利用みたいなところまでできるだけパフォーマンスを高めたい。それと並行して、過去の長期気候変化をもたらした主たる気候変化の要因は何であるのかというようなところに踏み込んでいければなと思っています。

 ただ、注意して進めないといけないなと個人的に思っているところは、モデルは常に不完全で、いつまでたっても完成はしませんので、すべての物理・化学・生物過程をパーフェクトに取り込むことはまず不可能でしょうし、それから、例えば20世紀なら20世紀の気候変化を100%再現するということもおそらく不可能であろうと思います。その意味で、目的に応じてモデルを取捨選択して、きちんと使っていく必要はあるだろうと。例えば全球モデルが必要なのか、あるいは北極の領域モデルでいいのか、それから、いろいろなプロセスという意味では、すべて統合したモデルが必要なのか、あるいは粗過程のモデルで十分できるような研究なのかというのをきちんと分けて、やはり戦略をきちんと立ててやるべきであろうと。

 それから、観測データに関しては、現状、私たちが進めている部分では、やっぱり観測が重要な位置を占めますので、それの一元管理による情報の共有、利便性の向上はやはり必須であると思います。それから、複数のデータを統合するなどして、やはり気温とか降水量とかというものはそれなりに50年ぐらいあったりはしますけれども、さらに長い期間になりますとなかなか探すのも大変になってきますので、ちょっと難しいとは思うんですが、例えばコアと、それから、温度計ではかったようなデータをうまく融合して、長期の経年トレンドのデータをつくるとかというようなことをある程度進めたほうがいいんではないかなという気がします。すみません。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。モデルによる北極圏の気候変化研究、これはある意味で今度の議題の非常に重要な部分かと思います。また後ほど議論いただきます。ありがとうございました。

 次、森林総研の松浦委員、お願いします。

【松浦委員】  それでは、森林総研の周極域の森林生態系研究の取り組みを説明します。

 最初の写真に示してありますように、実は北東ユーラシア、中央シベリアとか東シベリアの永久凍土地帯にはカラマツ林がこういうぐあいに広がっています。3,000キロの東西にわたる長さ、幅も1,500キロぐらいの南北幅を持っているところもあります。ところが、ソ連の時代にいろいろなことはソ連なりに調べていたんですけれども、西側との情報交換はなかったので、西側の私たちはこういう生態系があることをきちっと認識していなかったという背景があります。

 90年代以降、地球の温暖化、あるいは炭素の貯留という問題が大きく取り上げられるようになって、周極域の森林も非常に大きな炭素の蓄積の場であるということが統計的にも明らかになってきました。それを下の2枚目のスライドに示していますけれども、北方林と呼ばれる場所に、土壌の中の炭素が特に大きな貯留量を示していることがおわかりだと思います。

 次のページをめくっていただきますと、北極を中心にしたときに、実は周極域といっても一様でないことがわかります。凍土のタイプで分けると、濃い群青色――連続して永久凍土が分布する場所、あるいは不連続の外側の濃いピンク、あるいは点状にしか分布しないところ、海底の凍土のある場所もありますけれども、こういうふうに示しますと、実は北欧とか北米、ヨーロッパあたりまでは非常にマイルドなところです。年平均気温もプラスに転じていたりしています。ところが、北東ユーラシアはやはり気候が厳しい。それから、降水量が200ミリ、300ミリということは意外と知られていません。これは植物生態学の常識ですと、森林なんか成立しないで、ツンドラだろうというところなんですけれども、実は全然違っていたというのが、私たちがこの調査研究に携わって実感したところです。つまり、教科書が当てはまらない、教科書は当てにならないというのが一番大きな教訓でした。

 そういうふうな状況をいろいろ、10年、15年やってきまして、周極域というのは、その下に示したように、実はスカンジナビア、ヨーロッパまでは、常緑の針葉樹と広葉樹が非凍土の上に広がっている。北米の東岸からカナダ中央部も大体似たりよったり。カナダの北西部からアラスカ内陸部は不連続の凍土の分布があって、そこには常緑針葉樹と広葉樹。また、西シベリアのほうに行きますと、そこは湿地帯もありますし、凍土はやはり非凍土と、せいぜいあっても点状分布。ところが、中央シベリアから東シベリアは、連続した凍土の分布域が広がって、そこにはカラマツだけが広がっている。ドーナツのように周極域は理解されますけれども、そのドーナツの中身が実は多様だということがわかってまいりました。

 次のスライドですけれども、これは世界に分布する土壌の図です。ソビエトが70年代につくった土壌図とFAOが1993年に出した土壌図。それから、最新のものでは、USDAが2005年に出しています。左下のものは私たちが中学や高校でよく使う地図帳です。これはタイガとかポドゾルというのが周極域の部分に帯状に一面同じ色で塗られていますけれども、これは実はこんなことはないわけです。こういうことが実はきちんと分野を超えて理解されてこなかったというのが周極域の森林生態系の研究です。

 例えば70年代のソビエトの土壌図では、エニセイ川を境に、凍土のあるところとないところ、エニセイより東が凍土のあるところなんですが、そこできちっと不連続が示されています。それから、FAOの93年の図でも、緯度に沿った帯の、いわゆる生態性土壌といいますが、それがあるところはやはりエニセイで不連続になっている。そういうことがきちんと認識されてこなかった。それから、2005年のUSDAのは、ちょっと見にくいですが、北米の東海岸とスカンジナビアあたりにあるピンク色のところがあります。これがいわゆるポドゾルとかスポドゾルというんですけれども、その土壌であって、それは決して帯状にぐるりと地球を周回していないわけです。こんなことが現場に携わってわかってまいりました。

 そこに森林総研の予算や何かの話をちょっと書きましたけれども、私たちは国内研究にしか予算が使えませんので、海外の研究は全部他省庁からいただいた予算で行ってきました。91年から、主に環境庁、環境省、あるいは科技庁、JSPS、科振調、それから、最近は科研にも私たちが応募できることになりましたので、科研をいただいてやっているところもあります。それから、共同研究をしてきましたので、所属されている方々はそこに示してあるように、非常に多くの大学、研究機関にまたがっています。やはり場所が場所ですから、単独だけではとてもできないわけです。

 それから、次をめくっていただきますと、3枚続きますのが、大まかな概要、結果です。強調したいのは、永久凍土地帯のカラマツ林が非常に根の割合の大きな生態系だということです。つまり、例えば熱帯から冷温帯まで得られた知見の数値をそのまま凍土地帯に当てはめると、これはちょっと問題が出ることになります。地下部への植物帯あるいは土壌の集積量が非常に大きい生態系ということがわかりました。

 また、北の林というのは、火災の影響を見逃すことができません。特に凍土地帯ですと、火災が起こって、凍土面が一回下がります。ところが、森林の回復に伴って、凍土が再上昇してくるという現象があります。そういうふうな凍土の作用によって、実は熱帯から冷温帯まで見られるような森林の構造とは違った構造をしているということがわかってきました。

 それから、グラフ、散布図が示してあります。土壌の性質なんですけれども、土壌の炭素の蓄積量にも、北東ユーラシア、大陸レベルでのかなりの違いがあるということがわかってきました。

 そういったことを考えますと、実は周極域というのは一様なドーナツリングではないということが、土壌についても、植生についてもわかってきました。いろいろな特徴があるんですけれども、おそらくこういう現場で得られたことというのは、モデルに繰り込むときに重要な知見になると思います。つまり、養分に乏しい環境と一口に言っても、もともとそこにないための自転車操業状態なのか、それとも、凍土のような形で、あるんだけれども、使えない状態なのかというような違いが出てくるわけです。

 そのあたりのことは、今年の春、出たんですけれども、シュプリンガーからのこういう成果としてまとめることができましたので、詳しくはそちらを見ていただきたいと思います。

 私たちのやってきたことを振り返ったときに、今後の研究のための提言としては、3つのCということを申し上げたいです。1つはComparativeです。私たちは北極域に自分たちの国の領土があるわけではありませんので、その国の特定の場所に行って何かをするわけです。ところが、そのときに、張りついている人にかなうわけがないという現実もあります。ですから、私たちは例えば北東ユーラシア……、今、ロシアは昔に比べるといろいろな事情が多少変わってきて、調査のやりにくい局面が出てきています。ですから、北東ユーラシアの知見を今度はアラスカとかカナダで比較研究のための知見として生かすとか、そういうことが考えられると思います。

 それから、継続です。3年間とか5年間のプロジェクトではその場所の変動はわからないです。北の調査をして実感したのは、暖かくて乾いた夏、暖かくて湿った夏、寒くて湿った夏、寒くて乾いた夏と、その4つのパターンが確実にあるわけです。それが年によって来ますから、木の成長なんかも大分影響を受けます。これは日本の杉と、100年ぐらいあるんですけれども、シベリアの木の年輪をちょっと比べてみてください。こういう長いスパンにかかわる森林ですので、やはり3年とか5年で、成果というのはほぼわからないことだらけです。ですから、Continuousというのが1つの大きな要素になると思います。

 それから、共同研究です。これは国際共同は当然のことなんですけれども、学際分野、特に違った分野の人が同じ場所でやるというのは、非常に有益な体験を私たちはしました。凍土の分野の皆さんの常識が、植物生態学をやっている我々には全然わかっていなかった。あるいは、植物のことをやっている人間なら常識のことは、凍土や、そのほか、気候をやっている人たちには新鮮だったりするということが多々ありました。そういうのはやはりドグマを破る発想になったり、発見になったり、それから、自分たちが既に持っているデータの再解釈の非常に有効な場になると思います。

 こういったことを今後、私たちは心がけて、プロジェクトにも参画したいと思っていますし、ぜひこういうことが実現するような北極研究の場をつくることが大切だと考えています。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。シベリアを中心とする凍土と生態性の結びつき、これは非常に重要なプロセスだと思います。これはもちろん温暖化のインパクトということもありますが、同時に、カーボンサイクル等への影響も含めて、温暖化そのものへの影響も入るかと思います。どうもありがとうございました。

 次に、北見工業大学の榎本さんのほうから。

【榎本委員】  北見工業大学の榎本です。北見工業大学における北極研究の概要ということで資料をまとめてきました。私がここに呼ばれたのは、地方の大学、特に医学部を持たない、大きな北極圏の研究グループを持たないグループなんですが、どうにか北極研究にかかわっていっているという1つのパターンとしていろいろ紹介できるかなと思いまして、きょうは資料をまとめてきました。共同研究機関の方が何人かいらっしゃいますが、こちらはそちらに申し込む側の立場です。

 まず、1枚目の下にありますけれども、これは過去20年間において、北見工業大学が北極圏にかかわったいろいろなプロジェクト、あと、たくさん名前を書いていますけれども、これは人の名前です。

 左側上のほうに、国立極地研と書いていますけれども、90年代には、グリーンランド、スバールバル、セベルナヤ・ゼムリャというところに、極地研究所とともにこのあたりの観測を行っていました。氷河が中心でした。

 右上のほうにIARCと書いてあります。これは2000年代に入ってから主にこちらに取り組んでいるんですけれども、アラスカの陸上での南北を縦断する積雪の観測のモニターをずっと続けております。

 それと、毎年なんですけれども、北極海に名前が、2005、6、8、9とか書いていますけれども、北極海を縦断、あるいは広域を移動する砕氷船の観測にスタッフ1名を送り込みまして、陸上の観測と同時に海氷上の変動も見てやろうということで、ここに北極点からアラスカを縦断するトランセクトみたいなものを設定しまして、陸上、海氷上の両方とも見ているということをやっています。

 右下のほうは、シベリア、カムチャッカ、サハリンなんですけれども、これは大学、科研費、あるいはJAMSTECの方々と共同ということで、わずかな研究スタッフなんですけれども、こういったコミュニティーに支えられて、北極研究にかかわっているということがあります。

 ただ、それぞれ個人的な研究が多くて、あるいは短期間に終わってしまうものということで、一番最初のページの下の、「日本として」とか「長期戦略に立って」という要素が乏しくて、これが今回のこの会議の話につながってくるのかなと思っております。

 具体的な中身ですが、次のページを見ていただきますと、まず上が海の研究、下が陸上の研究です。両方ともわずか1人、2人ぐらいのスタッフでやっているんですけれども、先ほど言いました、いろいろなコミュニティーにかかわりながら実施しております。

 上のほうは、北極海に入る、下記の砕氷船の観測に人を送り込みまして、氷の厚さをはかっています。これは人工衛星の観測、JAXAの日本の衛星・センサーを利用した研究につなぐためでして、いろいろな研究機関が、国が衛星観測をやっていますけれども、その中でできていないところをねらって、ピンポイント的に改善しようというふうな取り組みです。

 出てきました結果としましては、右上の図に、ちょっと小さくて見にくいんですが、北極海の海氷が、季節海氷がどんどん薄くなってきている、もろくなって、動きやすくなって、消滅しやすい、そういう非常に危うい状態になっているということが出てきました。それを人工衛星のデータにつなぎますと、現場観測につなぎますと、左下、赤い色を塗った、北極海の絵があります。衛星観測とあわせまして、どこが薄くなってきているかということを推定するというふうなことに取り組んでいます。上半分の右下なんですが、氷が減ってくると、人間の活動として北極航路ということが話題になっていまして、確かに氷が減っているような状況なので、そこが航路に沿ってどういうふうになっているかということのモニターをやはり始めています。これが海のほうの研究です。

 一方で、陸上のグループは、手分けしまして、アラスカを南北に縦断するような感じで、やはり今までに得られていない積雪情報、これはNASAとかエンバイロンメント・カナダとかいろいろデータをつくっているセンターがあるんですけれども、まだまだ合っていなくて、これをモニターに使うのはまだまだできない。あと、モデルの入力にも、検証にも使えないという状態で、データがまだそういう状態であります。それより問題は、北方森林とツンドラという北極圏特有の状況なので、そこをどうにか改善するという方法をここでやっています。大分改善できるようになりましたというところです。

 右上のページに行きまして、これはサンプルとして、1つの共同研究例を持ってきました。陸上の積雪情報は、環境変化のモニターとしてそれ自体が重要なんですけれども、そのほかの環境変化因子に影響を与えるというところでまた重要になってきます。これは積雪の変化が凍土の状況に影響しまして、凍土の中の土壌分解にさらに影響して、CO2のエミッションにかかわってくる。それがちゃんとモデル計算できているかというところまでつなぐようなモデルスタディとして今始めようとしているものです。現場の観測からモデルへつなごうとしているのを、アラスカを舞台にひとつ、見ようとしているところです。

 それで、右上の、「北極高緯度土壌圏における近未来」というタイトルが入っている背景の衛星写真なんですけれども、ちょっと見にくいですが、真ん中に山脈がありまして、これは9月の上旬なんですが、山脈ではもう冷却が始まって、初雪が始まっています。そういうのが9月の上旬なんです。一方で、上にふわふわと海氷が浮かんでいます。これはまだ9月の上旬で、北極海の海氷はまだ後退時期です。後退の真っ盛りで、どんどん減っている。

 陸上の研究をしている人たちは、上に海氷があって、まだ減少しているのを実は見ていない。海氷の研究をしている人たちは、目の前で減っていく海氷を見ているんですけれども、陸上のほうではもう冷却が始まったということをまだ見ていないということで、ここにコミュニティーのギャップがあります。人工衛星は両方とも見られるんですが、ですから、両方ともこうやって見ることによって、陸上と海上は実は連動する大事な変化がタイムラグをもって起きているんじゃないかなという視点が、人工衛星、あと、両方の共同観測ということから生まれてきます。

 あと、最後の数枚になるんですけれども、組織的なところの話に。前回の会議でも出ましたけれども、コミュニティーとか戦略会議というものが出ました。それから、テーマとしては、北極圏、雪氷圏、海域、陸域と書きましたが、これは今お話ししましたように、別々のグループで行われているので、両方見る視点が必要だろう、両方をまたぐような観測拠点も必要になってくるだろうと。あと、大学の機能としては、後継者養成。研究所と違って、大学は学生が来ますので、例えば北極大学というようなもの。南極大学というのは北大にあります。ですが、北大の内部の学生だけの教育なんです。もっと共通でいろいろな学生を抱えて、北極圏に取り組めるような学生を教育するのは大学の使命かなと考えています。

 次のところは簡単に流そうと思いますけれども、北極研究組織構想、これは議題2になって入ってくるものかと思います。その中の観測センターというところに、観測設備、研究施設充実というところを黄色の枠の中に、下から3番目に書いています。実は先ほどの、砕氷船を使って北極海に入っていくという機会がすごく限られています。砕氷船も1つの観測拠点です。

 あとは、バロー、ニーオルスンには既に施設があるんですけれども、そういったものがまだまだうまく使えていない。もっともっと使うことによって、北極観測に日本が取り組んでいく、アクセスするポイントができるんだろうと。例えばカナダのレゾリュート、ニーオルスンをもっと活発化。あと、バローというところも使える。シベリアというのは、海岸線に達して、海の観測とつなぐということはなかなか難しいかもしれないんですが、それらの、今言った地域は全部、海と面していますので、陸域の観測と海をつなぐ場所として、そういった観測拠点の施設の充実が私たちは非常に欲しいなと思っているところです。

 その下にあります、文字がたくさん書いてあるところは、ちょっと最後、文字が消えてしまっているんですが、私たちのグループは何とか毎年のように北極海の海氷の厚さ測定に潜り込んでいますけれども、それは組織的なものではなくて、今回来ています、何人かのここの関係者の個人的なコミュニケーションの中でつないでもらっていて、いつ切れるかわからない。研究者が興味を持たなくなったり、向こうの都合でいつ切られるかわからないという状況です。というので、砕氷船観測は大変重要なんですけれども、そういった細い糸で、毎年不安定なまま、今年も行けるだろうかというのが4月にはわからない状態で毎年スタートしています。海の観測は、それをしっかりしたものにすることが重要だろうと。

 ちょっと長くなってきましたけれども、次のページ。これは左上が、写真がありますけれども、これは夏の海氷域でして、メルトポンドが広がっています。海氷の上に溶け水がある。夏の北極海は氷が減っているということですごく話題になっているんですが、この右側に二重丸、ドーナツ状に北極圏をかきました。白い部分は、右側の図は、冬の間にどうなっているかということでして、我々の衛星観測から出てきたものですが、赤いところはほとんど冬の間に氷が消えてしまったところ、黄色いところはどんどん減少してきているところという、20年間ほどのトレンドです。

 今、夏の北極圏の現象が話題になっていますが、別のところで、オホーツクなんかもそうですが、冬の氷も減少が起きています。冬の縁辺海域の減少、あと、夏の北極海の海氷の減少、それに挟まれた陸域で変化が起きていないわけがないだろうということで、緑の部分を今、塗りつぶしていますが、ここに何かこういった変化の状況を書き込めることができるような研究がこれから必要じゃないかと。陸と海を、海氷に挟まれた陸域の研究の連携という……。

 最後の2枚ですけれども、学生が大学の研究にはたくさんかかわってきますという資料です。アラスカの地図上に実はずらっと名前が入っているんですけれども、黄色く書いているのはすべて大学院生の名前でして、この10年間ぐらいの間にかかわった大学院生です。これらが将来の北極研究のコミュニティーの主力メンバーになってくることを期待して、大学は少々頼りなくても学生を連れていっています。これが組織立ってできないかなということです。

 一番最後のページなんですが、既にそういう機関が外国にはあります。ノルウェーにはスバールバル大学がありまして、UNISという略称なんですが、ヨーロッパのコミュニティーがスタッフを出して、北極研究の学生、若手研究者養成をやっています。日本でも例えば北海道には北極圏にかかわるようないろいろな要素がありますから、そういったところでトレーニングできるんじゃないかということで、先ほどの北極大学というふうな教育機能も、日本の北極研究の中のどこかに後継者養成というところで組み込めればいいんじゃないかなと。

 あと、最後にもう1枚、会場で配られました資料なんですけれども、これは、私、何人かの研究者と、あと、名前は書いていないんですけれども、北見工大の内部でいろいろ相談しました。前回出ましたアメリカでの研究グループを組織する例、あと、それを日本風にはぴったり合わないかもしれないんですけれども、もしアレンジするとしたら、どんなことになるかなと。私は今、大学の職員の立場なので、大学にそれにかかわるとしたら、どのような形になるかなということで、たたき台として見ていただきたいと思いまして、最後に配付させていただきました。以上です。

【安成主査】  ありがとうございました。衛星と地上観測、それから、陸と海両方の観測が大事であるという話、それから、人材育成の話。体制の話はまたちょっと後から議論したいと思います。

【榎本委員】  はい。

【安成主査】  どうもありがとうございました。

 引き続きまして、東大の大気海洋研究所、阿部委員ですか、お願いします。

【阿部委員】  東京大学大気海洋研究所は4月から、もともと2つの別の研究所が合わさったもので、私は、元・気候システム研究センターの職員です。気候システム研究センターは、10人ほどでモデルによる研究を行って、核心プロジェクトなどに深くかかわって、将来予測、また、気候システムの振る舞いの理解といったことを目指した研究を行っております。海洋研究所のほうでは60人ほど職員がいて、私、まだ把握し切れておりませんので、そちらでは水産への影響評価など、船を使ったいろいろな研究などが行われておりますけれども、きょうの研究のほうではカバーできておりませんのでご了承いただきたいと思います。

 もともとの気候システム研究センターの関係で、北極というキーワードにかかわるものとしては、4つ取り上げております。1つは、日本の冬の異常気象などにもかかわっております、北極振動などの研究。これは木本、渡部が行っております。このような異常気象の研究は、将来の温暖化の予測と異常気象とのかかわりを理解する上でも、あるいはそれを切り分ける上でも非常に大事なので、それをモデルによる近未来予測などの研究と絡めて、また、基礎的な研究も行っているところです。

 2番目に、羽角などの海洋モデリンググループが中心となって、北極海のモデリングにかかわる基礎研究を行っております。

 3番目に、北極側、グリーンランドですけれども、グリーンランド氷床の変動将来予測や、あるいはまた、グリーンランド氷床と気候感度のかかわりについて、私が行っております。

 また、将来の予測のためには過去の気候の理解も必要ですので、過去の気候のシグナルを理解する。グリーンランド氷床というのは氷床コアがとれるということで東委員からも紹介いただきましたけれども、そのようなコアの解釈ということでも、また、気候システムの時代を超えたシステムの理解という意味でも、過去の高緯度の気候のモデリングが大事ですので、そういったことを私、阿部が行っております。氷期サイクルの要因とか、ミレニアム(D-O)サイクルのメカニズムとか、同位体のモデリングなども行っております。海底コアの解釈なども行っております。その部分はちょっと書いていませんけれども、そういうことも行っております。

 今後の課題としては、先に申し上げておきますと、当然のことだと思いますけれども、観測。それは地上から、衛星からと、それから、モデリングの連携が、当然なんですけれども、やはり改めて必要だということを確認しておきたいと思います。

 海氷変動等北極での現象のプロセスを解明することは、北極のみならず、全球気候的にも極めて重要であると我々は認識しております。観測するローカルなプロセスがどれほど重要であるかということは、やはり全球の気候モデル研究を通して初めて明らかになるということを確認させていただきたいと思います。そのような視点で観測とモデリングの連携した研究をもっとしなければいけないなと、自分たちもまだまだ力が足りていないと感じております。

 それから、北極域、海洋海氷については、常にデータが少なくて、モデルのバリデーションが難しいところでありますので、モデル、データを同化するということの専門家を積極的に取り込んでいくことが重要なんですけれども、我々は非常に小隊、少ない人数でやっておりますし、JAMSTECや国立環境研究所と協力はしておりますけれども、この部分の研究というのはまだまだ足りていないと感じております。

 それから、氷床変動に関する研究も非常に弱いところだと考えております。最近、海水準への影響に関して、氷床変動が過小評価されているのではないかということもIPCCで取り上げられているところではありますので、そういったところに向けた観測とモデリングの推進が必要かと感じております。

 また、氷床コアや海底コアなどの有効なデータ解釈のためにも、気候モデルとデータ解析の両者の連携が必要だと感じております。

 詳しくは次にいろいろ図を載せましたけれども、主に北極振動に関することは、木本が気象庁の異常気象の検討委員会などで発表した資料などを載せさせていただきました。

 それから、北極海モデリングに関しては、海の成層、中の構造に関して、それから、上にのっている海氷、その上の大気の構造に関するような、水平分布及び鉛直構造の理解がまだまだ足りていないということを一くくりに申し上げて、この文章は、時間がないですので、読んでおいていただければと思います。

 それから、先ほど、モデルが完全でないという話がありましたけれども、文章がずっと続いた次に、北極の海氷の図がありますけれども、気候モデルによる北極海氷の再現性と予測です。これはたくさんのモデルを時系列に1900年からずっと示して、北極海の海氷の面積がどれだけ減ったかということを示したものです。

 このように1つのモデル、我々はMIROCを提出しました。そのMIROCを矢印で、青点線で示してありますけれども、それはワン・オブ・ゼムで、これだけたくさんの世界のモデルが今、それぞれ独立に国を挙げてモデルを開発して、それと観測と突き比べるということをして、モデルの過小評価している部分などもいろいろ明らかになってきました。どういう点でそれが過小評価されているのかというのは非常に重要なんですけれども、その部分に関しては、モデルの研究者だけではとても問題が解明し切れておりませんので、やはり観測的な研究とモデル開発の部分をやっている研究者と両者でもっと重点的にやっていくべきかと考えております。

 同様に、下に挙げておりますのは、グリーンランド氷床の質量収支です。質量収支は大して変わっていないのではないか、あるいは方法による誤差のほうが大きいのではないかということで、前のIPCCまではいろいろはっきりとしなかったんですけれども、実際、今、2010年まで大分データを積み上げてきますと、2003年ぐらいから、レーザーアルティメトリーあるいはGRACEによる、重力計、重力をはかるもの、高度をはかるものなど、いろいろな異なる衛星観測でも質量が減ってきている、減り方も加速しているということもはっきりわかってきました。これに関しては、どのような解釈があるかということに関しても、今、非常に議論をしているところであります。

 次のページに行きますと、そこにまとめてあるのは、グリーランド氷床の寄与と、それから、グリーンランド氷床の寄与でも今までわかっていなかった部分、氷床のスライディングによる効果、つまり、氷床の力学的な効果、そういうふうなまだ含みにくかった難しい効果も重要だろうということで、まだまだモデルの足りていない部分があるという指摘はわかっておりますし、我々も問題としてはわかっているんですけれども、ここ数年で解決できるような問題ではないということもわかっております。

 とはいえ、氷床の質量収支と気候変化がどういう関係にあるかということを調べてみると、ちょうど今、問題になっているような温暖化が、これから3度とか4度とか上がるというのが、いろいろなパラメーターの不確定性、あるいは過程の不確定性、プロセスの不確実性を考えに入れても、グリーランド氷床がほとんど溶けてしまう、そこに向かっていくというセンスにあるということはほぼ間違いないかなと考えております。でも、それを不確実性の範囲なども含めて考えるようなこと、あるいはモデルの不確実性の間の違いなども含めて考えるようなことをしております。

 最後のページですけれども、そんなふうに氷床がなくなってしまうような将来、大きく変わるような気候の変化を問題にしているわけですから、やはり過去の気候をきちんとシミュレートしたり、あるいはそれを理解したり、あるいは、今の気候が長期的に見てどういう位置にあるのかという、位置づけみたいなことを考えることが重要だろうと考えて、氷床や気候のモデリングをしていることを申し添えておきます。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。北極海域のモデリングの重要性及び現状ということで報告していただきました。いろいろ問題点が、重要なポイントが……。

 次に、東京海洋大学の島田委員のほうから。

【島田委員】  東京海洋大学の島田です。今のところ、東京海洋大学が組織立って北極をやっているという、そういう状況にはありませんので、これまで多分、北極海洋に関しては私が一番かかわってきたかと思いますので、そういう歴史を踏まえながら、どういうふうに考えましょうかというような話をしたいと思います。

 資料も、つくり方が皆さんと比べると変だったかと思うんですけれども、北極海の海洋学というのは、冷戦崩壊がするまではほとんど進んでいませんでした。ほとんど海流の名前も与えられていないという状況下にあり、90年代、観測が再開されたような感じです。

 そこで、97年、98年当時、JAMSTEC、SHEBAという観測、北極海における表面の収支観測、そういうものに参加して、そのときに北極の海洋循環を知ろうとしました。当時は、太平洋から入ってきた水は沿岸に沿って太平洋に抜けると考えられていたんですけれども、そうではなかろうということで、北極海の海流を調査した、発見したというのがそもそもです。2007年の海氷現象は有名ですけれども、実は一番最初のトリガーというのは、97、98だと思っています。そのときに海洋が非常に温暖化しました。そういう海域で氷がなくなったということが端緒です。それを契機に、海洋循環だけではなくて、海洋が北極気候に与える影響、そういうような観測をするべきだということで行ってきました。

 そのときに考えたことは、今、なくなったところの影響評価、氷がないところの影響評価も大事なんですけれども、今後どうなくなっていくのか、そういったものを先取りするような観測を考えてやってきました。そのためには、なくなった海域、なくなりつつある海域、まだしっかり氷が張っている海域、そういう海域をきちんと網羅しなければならないということで、この後ろのファシリティーに書いていましたけれども、当時、「みらい」という船が就航いたしました。ただし、砕氷船ではない。そういう意味で、砕氷船を多く保有しているカナダとの共同に踏み切りました。

 そのとき、大畑さんからも話があったかと思うんですけれども、その組み方はIOSという研究所と組むんではなくて、DFOという省庁と組むという形。当時、カナダは省庁再編がありまして、DFOの下に砕氷船を運航しているコーストガードも、研究機関も傘下に入るという形になったので、運行とサイエンスを包括的に進めようということで2008年までやってきました。1990年代は、太平洋側の北極海の海洋観測はほぼ皆無に近い状況で、言ってみれば、この10年間、北極域で最も変化が大きかった、変化のスピードも速かった場所での観測に成功したかと思っています。

 また、現在においても、ちょっと移動いたしまして、今後はというか、今なお、カナダの砕氷船で観測をしているということ、それと、西側、太平洋側北極海の全域をカバーするべく体制を我が国でとるんでなくて、世界の砕氷船運行機関なんかにも働きかけながら、特に今、韓国の砕氷船「ARAON」が北極に行っていますけれども、そういった韓国の砕氷船の観測の最適化等を模索しています。来年度からは韓国の砕氷船も使いながら、適材適所、重要ポイントはオーバーラップさせながら、あまりオーバーラップしないように、最適化するような方向で砕氷船が動いていけばと考えて、ちょっと海外でも活動しておりますよということです。あんまり長くなってもあれなので。

 今後の、サイエンスの部分でどういうふうに考えたらいいかと。これ、かなり偏った意見かもしれないんですけれども、これまで成功してきたクライメートサイエンスというのはどういうものかなと振り返ってみますと、例えば熱帯域――エルニーニョがあったり、インド洋ダイポールがあったり、インドモンスーン、それとの相互作用、MJO、最近では、中緯度域、北太平洋黒潮続流域での10年スケールの変動や大気海洋相互作用、そういったところがかなりかなめになっている。

 そういうところはどういうところに共通点があるかと簡単につくってみますと、大気海洋間のフラックスが大きい場所、また、そのフラックスの変化、変動が大きい場所になっている。北極海というのはまさにそういう場所になっていて、先ほど榎本先生からも話がありましたように、夏も冬も、低緯度側の氷はかなりなくなっている。そういったことを受けて、フラックスが大きく変わっているんです。トレンドとして100ワットぐらい変わっている。大気はかなり加熱されるような場所、海は冷やされる、相互にドライブされるような状況になっている。そういった大気大循環、海洋大循環の変調、変化によって気候変動は起こるので、まさに今、北極海は次なる気候変動のターゲットとなる地域になっているんではないかと考えております。

 あと、海氷が溶けるという話がありますが、実際、海氷というものは、大気と海洋に挟まれた、はざまにある存在で、氷がどうなるかということに対しては、温度ではなくて、熱が大事になります。熱の変化ということを考えますと、これ、ずっと90年代終わりからキーポイントで観測してきているんですけれども、90年代の冷戦崩壊直後からだと、250メガジュールという熱量が海洋では増大しております。一方、大気は10メガジュールぐらいです。250メガジュールというと、驚くことなかれ、大気が温度上昇すると25度分の熱的上昇が海洋の中では起こっている。そういった場所で氷がなくなっていることはわかってきて、そういったことを公表していますよということです。

 あと、北極振動、大気循環場の変調を考えるときにも、やはりその1つのきっかけは、バウンダリーコンディションといいますか、地球表面にあるかと思います。97年、太平洋側の東高西低、南風が吹くようなダイポールモードが氷を溶かしたという解説もありますけれども、実は氷の分布に従って大気場ができているんではないかと。そういった氷の分布をつくるものというのは、夏の大気場ではなくて、もっと前に海の中で起こっているものが決めているだろうと、そういったことも含めて、これから先、何が起こるかということをきちんと見通して、観測計画を立てる必要があるなと思っております。

 あとは、宣伝ですけれども、海洋大学でも……。

【安成主査】  時間がもうあんまりないので簡潔にお願いします。

【島田委員】  じゃ、終わります。

【安成主査】  よろしいですか。すみません。どうも。重要な話だと思うんですが、海氷の話は特に非常に重要だと思いますので、またちょっと後で議論をしたいと思います。

 それでは、最後になりましたが、地球研の井上さんから。5分程度でよろしく。

【井上地球研教授】  地球研では、自然科学だけの研究プロジェクトと違って、人間文化との関係においていろいろ調べていこうということでやっております。その中で幾つかのプロジェクトがこれまであったわけですけれども、ここは基本的に5年間のプロジェクトで、その期間内の研究なものですから、本来、長期に観測を続けるようなものは、ここで将来も行うというよりは、一時、ここで総合的な研究をやって、また、長期的な観測等はそれぞれの場所でつないでいくと、そういうふうな関係でやっておるわけです。前回もちょっと話がありました、白岩先生のアムール川の話もそのようなパターンになっております。

 きょうお話ししますのは、私が担当しますシベリアのプロジェクトで、ここでは東シベリアを中心にして、水循環あるいは雪氷圏の変化が人間の生活にどのような影響を与えるかということを中心に研究しております。それ以外にも、西シベリアのほうでは、これまで乾燥化が進んでいた湿原が湿潤化して、メタンの再増加が起こっているのはここが原因ではないかということでウオッチしておりますし、また、森林火災等が南の乾燥しているところでは多発しておりますので、この辺り、GOSATの衛星データを使ったりしてやっています。

 中心になるのは、ヤクーツクを基点としまして活動しておりまして、これからシベリアでは降水が増えるということで、水循環、水環境がどうなるのかという関心がありますので、新しくウスティマヤという南のほうの降雨の多いところにフラックスタワーを建てまして、ここでの長期観測は開始している。

 それ以外に注目していますのは、洪水の増加が非常に多いわけです。どのようなことをやっているかその辺りをちょっとご紹介しますと、次の、その裏側なんですけれども、もともとシベリアに住んでいる人たちは、寒冷な環境に適応して、例えば飲料水であれば、冬に氷を積んでおいて、それを夏にも使うとか、あるいは、輸送は、高速ハイウエーといっておりますけれども、雪の上あるいは氷の上を非常に有効に使っているとか、そういうことがあるわけです。

 ところが、雪氷環境が変化してきますと、それまでの生活パターンが壊されていくということが起きます。例えばそこにトナカイの写真等がありますけれども、この北のほうのツンドラ地帯にあります村では、トナカイの飼育が中心の生業になっているわけですけれども、湿潤化して、トナカイの移動ルートが遮断されて、食糧を確保することができない、放牧のルートが遮断されるというようなことが起きたりとか、それから、凍土の融解等もあるわけですけれども、洪水が多発しているということがあります。もちろんこのあたりは北極海に近いところですから、海水面の上昇もあるかもしれないんですけれども、全体としまして、非常に湿潤な環境になってきているということで、この辺りのリモセン等々を使った研究をやっております。

 その次も、やはり洪水の結果として道路が寸断されたり、町が壊されたり、そういうことも起きています。洪水のパターンを見ますと、どうも北のほうがまだ凍っているときに、南のほうから溶けていくわけで、氷のダムにせきとめられて水がたまって、それが崩壊して、一気に1日、2日で流れ出していくような、そういうパターンが中流域ではある、下流域では、全体として湿潤の状態が非常に長期に続くと、こういうふうなことが起きているわけです。そういうふうに、人に対する影響に注目しながら、雪氷環境の変化をいろいろ調査している、主に水循環に注意をしてやっているというプロジェクトです。

 シベリアに関しては私もまだソ連の時代からやっているわけですけれども、結局、ロシアで観測を続けるというのはいろいろな制限があって、現在、非常に難しくなっていて、日本以外の国ではかなり撤退しているところが多い。新しいことはほとんどできなくて、今まで継続しているならば、その継続ないしはその若干の手直しは認められるということで、私たちが今やっている、あるいは過去から続いてやってきた方々の調査研究をこれからも継続していくということは、これを絶やさないということは1つ重要なことだと私は思っております。特にロシアについてはそういう傾向があるということを申し添えておきたいと思います。

 最後に、北極研究のあり方についてですけれども、まずこのワーキングの上の地球推進部会のほうでは、北極に限らず、雪氷圏を対象にしてということで、ヒマラヤ氷河等、あるいは炭素循環、こういうものを含めるべきだという意見があったことを申し添えておきます。特にヒマラヤ氷河については、安成さんがカバーしているからいいのかもしれませんけれども、報告が来ないというのはちょっと残念かと思います。

 それからもう一つ、こういう雪氷はもちろんのこと、生態系、水循環、炭素循環を含め、さらにできるならば、そこの人々の生活とか開発――北極圏の開発というのは非常に進むだろう、これからもおそらく天然ガス、石油等の掘削が北極海に面したところで始まるだろうということで、その影響等も危惧されるところがたくさんありますので、これらを含めて対象にして、総合的に調査研究をやったほうがいいだろうと。

 それから、前回出てきましたコンソーシアム的な組織をつくるというのは賛成で、もしつくるのならば、長期的にそういうものを維持できる体制をつくる。例えば極地研だったらそういうことはできるんだろうと思います。そこでは、いわゆる情報交換以外に、成果の発信であるとか、研究方向の提言、データのアーカイブ、モデル研究所の交流等を行うことが好ましいだろうと。成果の発信というところは、やはり我が国はちょっと弱いところがある。というのは、全体としてまとまって出していないというところがその弱さの原因になっているところがあると思いますので、それを取りまとめて、強力な発信をやっていくというのは重要じゃないかと考えております。

 それをつくるとすると、それじゃ、そのほかの研究との関係、地域との関係はどうなるんだと。先ほどもちょっとありましたけれども、例えば熱帯林であるとか、乾燥地とかそういうところでの特徴的な地域があって、そこでの観測研究とどういうふうに相互的に位置づけられるのかということがほかの分野の方からおそらく出てくると思います。私は、観測の連携拠点が現在あるわけですけれども、それらすべてをカバーできるわけじゃないから、地域ごとにサブグループのようなものをつくって、そこが先ほど言いましたようなさまざまな活動をやっていく。それが北極ないしは雪氷圏とか熱帯とか乾燥地域とか、私が関係するのは陸のほうなのでそういうふうになっていますけれども、海洋もあるかもしれません。そういうふうな地域あるいは分野別につくっていくというのはいいんではないだろうかと思います。

 さらにカウンシルを設立するということは望ましいわけですけれども、これは全体とも合わせてできるんだろうかなと。もちろんできれば非常に強いものになると思うんですけれども、ちょっとクエスチョンかなというふうな印象を持っております。以上です。

【安成主査】  どうもありがとうございました。研究のあり方についても今、ちょっと話をされましたが、これまた後の議論で。シベリアは今、洪水が、これは多分、温暖化の影響ということで非常に増えてきていると。これももちろん、北極海へフィードバックとか、そういうこともあるかと思います。

 それで、一応、話題提供は終わりましたが、質問の時間等すべて省きましたので、きょうのご発表について、質問とかコメントとかありましたら、少し時間を設けたいと思いますが、ございますでしょうか。

【山内主査代理】  ちょっと質問です。環境研と、井上さんもいらっしゃるんですが、シベリアのメタンとかCO2なんかの観測、特に最初、観測研究というと、飛行機を使ったり、地上とか、シベリアでずっと前から観測をやっておられましたよね。それはかなりまだこれから継続できる体制?

【野沢委員】  そこまではちょっと私のほうでは聞いてこなかったので、もし井上先生のほうでまだわかるようでしたら。

【井上地球研教授】  地球環境研究センターでは、モニタリングの予算がありますので、これは運営費交付金で保証されているものですね。ということで、現在、シベリアで観測しています航空機の観測とか、地上でもやっておりますけれども、こういうものはまだ長期に続けられるものだと思っています。

 しかし、先ほども言いましたように、全体としては新しいことを非常にやりにくいということで、ちょっとでも新しい装置を入れようとすると、許可されないとかというようなことがありまして、難しい面がいろいろあります。このあたりは、非常に我が国と関係あるし、非常に観測が欠けているところですから、先進的にやってきて、いい関係があることを維持しながら、発展する工夫をいろいろしなければいけないのかなと思っています。

【安成主査】  今の……、よろしいですか。

【山内主査代理】  今の話と、さっき井上さんがお話しなった地球研とのプロジェクトは特に?

【井上地球研教授】  リンクしていません。

【山内主査代理】  していないんですか。西シベリアの湿潤の成果と書いてあるんですけれども、あんまり……。

【井上地球研教授】  これはデータ解析のモデルですね。

【安成主査】  多分、この後、研究体制とあり方の議論をすることになりますが、特に北極圏研究は、公海上の北極海でやる話はそれほど問題ないかもしれませんけれども、特に陸域でやる場合は、今のシベリア、ロシア、それから、樺太は当然、アメリカ、カナダとか、ほかの国がかかわるわけで、その辺も含めた国際的な研究協力も当然、重要な議論になるわけで、それをきちっとしないと実質的な研究はできないということにもなりますので、これ、重要な側面かと思います。

 それで、あと、どなたか。

 私、1つ、野沢さんにお聞きしたいんですけれども、20世紀の温暖化というのは、特に北極域の温暖化は人間活動の影響ではないかというお話をされましたけれども、実際に確かに半球スケールで見たときに気温が上がっていて、かなり対応しているということですけれども、例えば地域的な、特にどこに温暖化の上昇が顕著かとか、その辺になると微妙に何か違うような気が……。

【野沢委員】  もちろん、特に北極振動なんかに代表されますけれども、極域は内部変動の振幅もかなり大きいですので、そのシグナルを、それと、その変動の幅と、長期の人間活動によるトレンドの振幅をいかにうまく除去するかというのは問題ではあるんです。

 ですから、ここに1例、例えば私のスライドの9枚目、一番最後のページの上のほうに示しました、この絵になりますけれども、ここの丸にかいてあるのが、左側が観測の、過去50年ですかね、1950年から2000年の温度上昇のマップ、右側にあるのがそのモデルのマップです。比較的まだ合っているものを持ってきたんですけれども、要するに、ある例はこういう形になるんですが、違う初期値、ちょっとずらした初期値から計算を始めると、実は全然違うパターンがやっぱり出たりするので、それは、要するに、フェーズが違うという形。

 だから、やっぱりそこはうまくモデルの長期変動のフェーズを殺すようにアンサンブルをたくさんとるだとか、できれば、そこから先、これはちゃんとここの振幅は内部変動ですね、ここはそれとは違う長期トレンドですね、人間の影響ですよというのをきちんと仕分けられるようなサイエンスは絶対に必要だと思っています。ただ、それはなかなかちょっとまだ手が出ていない状況です。

【安成主査】  多分、北極圏に関しては特にシグナルが大きいということになっていますから、余計、この問題がいろいろな形で……。

【野沢委員】  どうしてもクローズアップされますから。

【安成主査】  いわゆる世間一般でもかなり問題になっているところで、やはり特にこれは観測のほうと、モデルのどこが問題かとか、それから、もちろんこのモデルは常に不完全であると言っておられますから、この辺はいかに、少なくとも北極圏の予測に関して不完全さをできるだけどう小さくしていくか、さっきのアルベドの問題も……、その辺が1つの方向かなという気がします。

【野沢委員】  そうですね。

【安成主査】  どうぞ、石川さん。

【石川委員】  松浦さんのご発表についてなんですけれども、凍土と森林の生態系の関連というお話でしたけれども、現状では凍土の分布が連続、不連続、点状というような概念でしか分けられていないと思うんですけれども、おそらく今後の発展としては、地下の氷の構造、分布、量とかというようなものをかなり考えていかなければいけないと思うんです。現状、そういうデータはほとんどないというのが実際なんですけれども、その辺について将来的に何かお考えのものがあれば、コメントをいただきたいんですけれども。

【松浦委員】  とにかく私は、シャベルを持って、凍土が出るまでしか掘れないので、その下はちょっと難しいんですけれども、例えば東シベリアと中央シベリアを調査した経験からいいますと、凍土の中の含氷率の性質が、結局は火災の後の状況を決めます。含氷率の多いところだと、アラスができる。あるいはアラスができた後に、降水量が少ないですから、北緯60何度でも、年間の雨が200ミリ、300ミリなので、土が塩類化してきます。アルカリになってしまいます。表面に塩が集積して、そこは森林になかなか返りにくい条件になってしまう。ところが、含氷率の少ない凍土地帯で火災が起こっても、なかなかアラスはできないので、カラマツにまた戻っていくというような、火災の起こったときに凍土の含氷率は非常に大きな影響を与えるというのは実感しております。

【石川委員】  そういう意味では、凍土の分布をやはり氷の目で見直すというのが重要なことと思います。

【松浦委員】  そうですね、含氷率というのが、予測にしろ、炭素の動態にしろ、非常に重要な側面になります。

【安成主査】  私もちょっと似たような質問になるかもしれない。凍土等から北方林の結びつきというのは非常におもしろい、しかも重要なユーラシアの森林生態系のプロセスだと思うんですね。そのときに、凍土そのものが、もちろんいろいろな攪乱があって、特に、温暖化とまた別の要因というか、気候的な要因というか、それで凍土自体が溶けていくという、そういう話もあるかと思うんですけれども、それが逆に、こっちの森林生態系、凍土の結合系にどう影響を与えているかというか、その辺の研究というのは進んでいるんですか。

【松浦委員】  まだほとんどされていないと思います。というのは、何ていったらいいですかね、北米もヨーロッパもそうですけれども、一回氷河をかぶって、どいたところのザクザクのところで研究されていますから、土の中の養分は比較的、1万年間の蓄積のものしかないわけです。ところが、北東ユーラシアは少なくとも3万年ぐらいは野ざらしの、氷河がなかった場所ですから、やっぱりもともとの土壌条件の違いがありまして、それをいかにモデル的に再現するかとかというのはまだ手がついていないと思います。

【安成主査】  そうですね。

 ほかにご質問とか。大畑さん。

【大畑委員】  野沢さんか青木さんから質問のあった、いわゆるGCM研究で、最近、うちなんかでも、海氷が合っていないから、海図を一生懸命つくっているとかやっていますけれども、目的によって答えは大分変わってくると思うんですけれども、気候モデルというのは、多分、方程式系の集まりと私は理解しています。例えば北極の今後の温暖化、まあ、この表現もそうですけれども、やっぱりうまくいかない。どのプロセスをより……、優先順位があるような気もするんですけどね。それで、野沢さんのところは、これ、何か氷河、表層凍土とかあるんですけれども、海なんかもかなり問題じゃないかなという気がするんですけれども、そこはどうなんでしょう。

【野沢委員】  そこは単に私が大気側の人間なので、抜けているだけで、それはもちろん承知してはおります。現状では、羽角さんのほうで北極海のモデリングは精力的にやられていて、それを全球モデルに入れ込むのかどうか、あるいはどういう形で取り組むかというのはもう一つ先の話かなと思って。

【大畑委員】  そうですか。

【野沢委員】  はい。氷床だとか氷河、凍土などとパラレルで優先順位をつけるべきものであるとは思っています。

【大畑委員】  そうですね、その辺が、観測をやる人間はいろいろやりたがっていくんですけれども、やっぱり日本として力を入れようということになると、やっぱりモデル側の意見を尊重しつつやらなければいけないし、その辺をクリアにやっていただくのが大事かなと思います。

【安成主査】  はい、わかりました。ほかにどうですか。はい、青木さん。

【青木委員】  阿部さんに質問なんですけれども、グリーンランドの質量収支のモデルによる違いが非常に大きいということに関して、大畑さんと似たような質問なんですけれども、非常に大ざっぱに言って、モデル間の違いが出るのは何が違うのかということと、それから、モデルの立場からいくと、どのプロセスが一番はっきりわかっていなくて、どういう研究をやらなければいけないのか、観測をやらなければいけない、そういう話があれば、ちょっと。

【阿部委員】  説明を省いたんですけれども、これは一枚一枚の図で、21世紀終わりの質量収支の、これだけ違いがあるということを示したんですけれども、それを今度、時系列で示したのが、その真横にある「海水準の変化予測(グリーンランド貢献分)」というものです。スパゲッティーのような図がありますけれども、それが時系列でかいた、グリーンランドが溶けたとして、それが海水準にどれぐらい寄与するかというものです。

 モデル間の違いをいろいろ見てみたんですけれども、まず1つ違いがあるのは、これは全球のいわゆる温暖化の幅、それが21世紀終わりに2度上がるモデルから6度上がるモデルまでは幅がありますので、まずそれは一つ一つ、大きな要因なんです。ただ、それは50%ぐらいしか説明できません。つまり、北極特有の、全球にはよらない、また別の要因があります。

 それの残りを解析してみますと、一つには、モデルバイアスがどうしてもあるんですね。例えばもともと低温、20世紀は少し寒目にシミュレートしてしまっているモデル、暖か目にシミュレートしてしまっているモデル……、例えば暖か目にシミュレートしているモデルだと、最初からグリーンランドが大分溶けているところからスタートしますし、あるいは海氷が少ないところからスタートします。だから、そういうふうな、現在気候をいかによくシミュレートするかという基本的な問題が、海氷にしても、氷床にしても、北極にはもろにものすごく影響してくるんですね。ほんとうにそれは基本的なことなんですけれども、それが今でも痛い問題です。

 それから、次に、海氷の変化と、それから、ちょっと専門的になりますけれども、北大西洋の熱塩循環の変化というのが、それがモデルによって違うということがまた残りの半分ぐらいを説明するということを研究して、論文を書いたところです。

【青木委員】  やらなきゃいけない……。

【阿部委員】  ですから、海氷の変化というのがまたグリーンランドの予測にも非常に影響を与えるので、そういう面で、北極というのは非常に、グリーンランド氷床そのもののモデリングも大事ですけれども、システムとしてとらえて、海氷、海洋、大気、いろいろなところのものが少しずつ影響を与え合っているというところが現状です。

【青木委員】  わかりました。

【安成主査】  海氷の変化について、今に関連して、ちょっと島田さんに聞きたいんですけれども、最近、海氷がずっと、特に2007年が最小になったという、そういう話で、きょうのお話で、特に海洋の長期的なメモリーの話もされたと思うんですけれども、一方で、風の変化、大気循環、風そのものが海氷を、当然、エクマン層とかに影響して、密接度を変えるということだと思うんですけれども、それで減ってきているという、そういう研究もありますよね。その辺はどう思われますか。

【島田委員】  その辺、ちょっと後ろのほうに載せているんです。

【安成主査】  すみません。

【島田委員】  そのときに、今、現状の、アメリカから出している海氷モーションのデータというのは、夏場のデータが非常に悪いんです。実際には実用的ではないので、そこの改善を、五十嵐さんと一緒にまた、GCOM-Wのほうで今やっているところでして、動きによる現象と融解による現象と……。

【安成主査】  それ、図はどれでしょう?

【島田委員】  例えばこれだったら、38ページですね。

【安成主査】  38ページ。あー、これか。

【島田委員】  38ページにそういった評価を今しているところです。これ、昨年度やった仕事ですけれども、海氷融解に関していうと、2008年のほうが実は面積でいうと多かった。2007年は海氷移動による、ワイプして拡大するのが多かったという、阿部さんの、海洋データだけではわからないという、そういうこともありますので、いわゆる海というのはやっぱりサーフィスフォーシングで駆動されるので、そこのデータをきちんと押さえれば、中の断片的な部分もより説得力のあるものになると考えて、衛星データの高度利用みたいなものも進めています。これもSSMIのデータではなくて、AMSRの89ギガという高分解能のやつを使っているので、夏でもいいデータがとれるんですね。その前の36ページあたりには、我々がやったAMSR-EでモーションとSSMIが公開されている。アメリカのデータは、夏はもうだめです。

【安成主査】  そうですか。

【島田委員】  その辺を改善しながら、一歩一歩ですけれども、観測は続……。

【安成主査】  じゃあ、夏、特に最少になるのは9月ごろですか、そのころに当ててきているという話があるんですが、それ自体もちょっと怪しいところもあるということにもなるんですか。そこまでいかない?

【島田委員】  減ってきていることは、それは事実。

【安成主査】  それは事実で?

【島田委員】  それは事実ですね。動きが怪しい。

【安成主査】  ああ、動きがね。

【島田委員】  だから、意外と……。余計なんですけれども、今、WCRPとかでも、Polar Predictabilityをこの秋にも進めていくんですけれども、そのときに何を同化させるかというところで、中緯度だったら、それこそ海上風というか、quick-scatとかあるんですけれども、それこそSea-Ice Motionというものを入れれば、力学的なパラメーターが1つ入るのでどうかなということを提案しようかなと思っています。

【安成主査】  ありがとうございます。

 はい、どうぞ。

【福田委員】  井上さんの、このレナ川のせきとめによる洪水ですけれども、これは実は昨年、ユーコン川でも中流で大洪水が起こったんですね。ですから、これは東シベリアだけの固有の現象なのか、あるいは北極域で似たようなことがやっぱり起こってきているんでしょうか。

【井上地球研教授】  私が知っているところでは、いろいろなところで起きています。おそらく共通的なものだと思います。

【福田委員】  なぜでしょうか。

【井上地球研教授】  それがわからないからやっているんですけども。ものすごく降水が増えたわけじゃないんですね。降水というのは水の量だけじゃなくて、溶け方の問題というか、それがありますから……。

【安成主査】  いわゆる春先の融雪効果。

【井上地球研教授】  ええ。そういうこととか、あるいは凍土の融解というのも両方あるんじゃないかと思うんです。

【福田委員】  そうですか。

【大畑委員】  今のにちょっとコメントなんですけれども、先月、ヤクーツクの凍土研のところに行って、実際に調査にかかわった人と話してみたら、降水量が増えたという、それが一つ。それともう一つが、融解深が抜けたと。その現象は結局、温暖化で融解深が深くなって、それで、ちょろちょろ行っている河川が削られて、一気に抜けてしまったという、そういう説明をしていましたね。だから、温暖化と、温暖化によって、多分、低気圧活動が海氷現象で活発になった、その両方が重なって、こういう現象が起きているという話でした。

【福田委員】  ユーコン川とかマッケンジーですと、永久凍土地域じゃなくて、特に顕著だったのが、4月、5月の異常高温が起こって、一気に融雪が進んだ。ところが、下流はまだ川が凍っていますから、フラッディングが起こる。ですから、必ずしも凍土以外の、もっと大きな気候変動の影響があるんじゃないかなと、それでお聞きしたんです。

【井上地球研教授】  もう一つ凍土自体で注目しなきゃいけないのは、ホモジーニアスに考えるとなかなか溶けないはずのものが、非常にヘテロに溶けていく。特に表層が削られるとどんどん横に広がって溶けていくとか、そういうところが今まであまり強調されていなかったところがあって、熱伝導だけのモデルだったら、ほんとうに溶けないわけですけれども、実際には溶けているのを見ると、そういうヘテロジニティーがすごくきいているように思いますね。

【安成主査】  そういう意味では、温暖化、もちろん気温が上がっていることは確かなんですけれども、温暖化に伴って、降水現象が、特にこれは夏が中心、冬ももちろん雪がどうなるかということはありますけれども、先ほど、野沢さんの話に、降水の変動予測の話もありましたけれども、私、今のモデルがほんとうにどの程度予測できているか、これは多分、特にシベリアとか北極域の今後の大きな課題になるかなと。もちろん高緯度ですから、やっぱり降水が雪になることが多くて、それは当然、さっきのアルベドの問題とかにまた絡んでくると思うんですけれども、これはものすごく大きな問題を含んでいるのかなと思ってですね。特にuncertainという文書は、降水プロセス……、何かその辺、どうですか。

【野沢委員】  現状では、阿部さんがさっきちらっとおっしゃったように、北極域は特にモデルのバイアスが大きいところなんです。ただ、だからといって、じゃ、何もできないやとほっとくわけにもいかないので、バイアスがあることはあるけれども、承知はした上で、他方で、いろいろなバイアスが、モデルそれぞれによって顔つきが違いますから、それを「えいや」と束ねることで、そのバイアスをキャンセルアウトするような形でシグナルが出てこないかという形で今、この研究はやっている。

【安成主査】  マルチモデルアンサンブル。

【野沢委員】  マルチモデルアンサンブルという発想ですね。それはモデルの構造アンサンブルという言い方をするんですけれども、降水のプロセスをどういう形でモデル化しているかというところも違いますので、それらを統合しても、わりあい、みんな、大抵のモデルは、温暖化によって、CO2が増えることによって、極域で降水量は増えますよと、今はモデルはそういう予測をしてくる。

 再現性としても、図を見ていただくとわかるんですが、観測とそれなりに、モデルのほうがもちろん3倍ぐらい過小評価はしているんですけれども、ただ、傾向としては、非常によく似た方向性は示す。ただ、細かいことを言うと、先ほどの空間分布もそうでしょうし、量的にまず3分の1ぐらいしか出ていませんから、何かしら問題があるのは間違いない。

【安成主査】  多分、今度のIPCCのAR5でもそうだと思うんですけれども、やっぱり地域性が次の問題で、かつ、半球図形でありますよといっても、これはもう説得力にならないという状況ですね。多分、今のシベリアもそうですし、アラスカはどうかとか、カナダはどうかとか、そういう問題になりますよね。

【野沢委員】  そうですね。

【安成主査】  だから、その辺に対して、どこまで観測のコミュニティー、観測研究とモデルの改良というところをどうぐあいにやっていくか、これ、僕、大きなものだと思っているんですけどね。

【野沢委員】  そう思っています。とりあえず降水データだけを比較するというのが今までだったんですけれども、やっぱりそれだけでは不十分で、なぜ雨が降ったのか、なぜ増えたのかというところを含めて、別の、例えば大畑さんがおっしゃったような、低気圧活動が増えただとか、循環が大きく変わっただとか、あるいは蒸発量が増えたから、降水量が増えただとかというような、複数の観測なりを組み合わせて、多分、同じようなことを積み重ねていかないと、合ってこないし、説得力がないと。たまたま合ったという可能性はやっぱり排除できないので。

【安成主査】  特に影響評価というときに、これはやっぱり地域性というのも、気温もそうですけれども、それはかなり大きい問題なので。

【野沢委員】  聞いてみます。

【山内主査代理】  そのことからすると、モデルの議論はあるんでしょうけれども、観測そのものも、降水はいいんでしょうけれども、降雪の測定がほんとうにどれだけきちんとしたデータが出ているのかというのが、まだですよね。それ、議論があるところで……。

【安成主査】  その結果としての積雪深そのものもすごく大きな問題で、さっきの青木さんのお話で、やっぱりほんとうに人間活動でそれが……、もちろん人間活動がなくても、粒径の変化である程度変わるというところもありますけれども、それにブラックカーボンとかその影響が入ると結構問題にはなると思うんですが、積雪そのものが今、例えばGCMなんかでもどこまできちっと再現されているかというと、私はかなりまだ問題があるなという気がしていてですね。

 観測のほうももちろん問題で、観測は、一つは、今、熱帯のほうはTRMMとかああいうものが出て、かなり大きく変わってくる。GPMも、あれ、いつですか。2013年だね。GPMという、高緯度までカバーできる衛星が13年に飛ぶということになっていますが、そういうデータもある程度想定して。

 ただ、やっぱり、榎本さんが言われるように、現地の観測との対応というのも絶対要ると思うんですね。例えば、極地研がシベリアで積雪調査を一度されましたよね。あのデータを積雪の同化に使うと随分よくなったというのをうちのJAMSTECのメンバーが出したりしているんですね。だから、やっぱり現地の観測データも非常に大事だと。それ、面積的に結構大きいですから、非常に重要なプロセスだと思います。

【榎本委員】  積雪データ関係なんですけれども、アラスカで南北に1,000キロ弱ぐらい縦断して見てみますと、現在、きれいにマッピングされて信頼できそうに見えている衛星データがどれだけ合っていないかというのが見えてくるんですね。森林は雪が多いはずなのに少な目に、ツンドラは少ないはずなんだけど多目にという、逆センスで表現されていまして、それを信じてモデルを発車してしまうと大変なことになる。

 今後、GPMが飛んで、広域の降雪もカバーできるようになると思うんですけれども、65度までなので、私、先ほどかきました二重のドーナツの、ちょうどアラスカの南端が北緯60度、北端が70度なので、その真ん中、あの二重丸の南側半分までは多分、GPMが期待されて、ですが、北側半分の、北極海に面するあたりは、やっぱり空白のままになります。

【安成主査】  実質的に、きょうのメニューでは、重要な課題についてという話、その話にかなり入り込んで議論していくんだと思うんですが、それも含めて、今後の課題……、最初に、たしか、青木さんが、今回の北極圏研究の枠組みということで、例えば特に北極圏、高緯度を中心とする温暖化のメカニズムそのものの問題、それから、やっぱりそれのインパクトの問題。ただ、この2つはかなり密接に絡む部分もあるんですね。特に積雪とか凍土とか、それから、森林生態系のことも含めて、カーボンサイクルの話も絡みますので。何がイシューかということはかなり出てきているかなという気はいたしますが、それについて、その議論も含めてやりたいと思いますが、どなたかこれは……。

 はい、じゃあ、原田さん。

【原田委員】  先週、今週、皆さんの取り組みを聞いていて、もう一つ、あまり触れられていない重要な点があるんじゃないかなと考えるのは、北極海の海洋生態系の変動なんです。北極海の場合は、皆さんもご存じのとおり、世界で一番深刻に酸性化が進んでいるという一方で、海氷がどんどんなくなって、光環境が改善しているので、生物にとっては非常にいい状況と悪い状況の両方が同時進行して、非常に混沌としているんですね。ですので、炭素循環を明らかにしていくという視点でも非常に重要なのと、それから、サケ、マスの回遊ルートが今、どんどん北上しているという生態系モデルの研究者の研究成果もありますので、生物資源、魚資源等がとれるような海になっていく可能性という、この2つの視点で、やはり生態系研究も重要じゃないかなと考えます。

【安成主査】  確かに。わかりました。

 今後の重要な課題についての議論も含めて進めたいと思いますけれども、ほかにこの際……、じゃあ、福田さん。

【福田委員】  今、ここに来ていらっしゃる方々がカバーしていない研究分野で実は非常に重要な部分があって、固体地球物理なんですね。ご存じのように、アラスカの周りとそのサブダクションゾーンで、最も地殻変動の大きな影響が出る火山活動とか、それから、アイスランドの方向とか、そこには海底地震の研究とか、結構、日本の研究者が前からやっていて、蓄積もあるんですね。それから、国際的な研究ネットワークも、カムチャッカ沿いとかアリューシャン列島沿いのサブダクションゾーンでの共同観測というのを、アメリカと日本とロシアで続けている。これは地震の発生のメカニズムとか、大きな問題にも絡んでいるのと、それから、今回のアイスランドの火山噴火の問題とか、噴出した火山灰の動きとか、実は地球内部から起こるテーマというのも、北極域というのは非常に重要な研究領域だと思うんですね。

 ですから、そういった意味では、今は私たちの話は、どちらかというと、地球の表面と上っ面のほうとか、せいぜい生えている植生とか、永久凍土の話ですけれども、実はもう一つ重要な、固体地球物理を含むような、やっぱり内部の研究というのも重要な、我々が考えるべき研究課題じゃないかなと思っています。

【安成主査】  確かに、この委員のメンバーを見ると、そちらのほうの方がほとんどいない。どちらかというと、北極圏の環境研究、それを中心とした形。その辺は私もちょっとよくわからないんですが、方向性としては、確かに北極圏研究ということですから、すべて入るということにはなるんですけれども、その辺は文科省のほうの……。

【森本大臣官房審議官】  今ご指摘いただきました地震とか火山、これは非常に重要な課題だと思っております。それで、今はISTCという、ロシアとアメリカも含めて、そういう枠組みの中で、日本の研究者とアメリカのUSGS、ロシアの極東の地震学の研究所、そういったところが一緒になって研究をしておりますが、観測網が十分ないということと、それから、やはり日本国内の地震の防災につなげるという視点が非常に中心になっているものですから、固体地球の物理とかそういう観点での研究が、正直言って十分でない面がございます。

 ただ、シミュレーション技術もかなり進歩してきましたので、地震波の伝播であるとか、あるいは今回のアイスランドあるいは火山の噴火といったものに関して、衛星画像を使ったり、あるいはその影響を評価したり、そういったことも少しずつはやられているんですけれども、とりあえずここの場は、メンバーシップをごらんいただくとおわかりのとおり、温暖化とか、やっぱり流体の地球というところと表層に焦点を当てていただいてはいかがかなと思っております。

【安成主査】  ということで、大きな形では、やっぱり現在の温暖化、それに伴う環境変化が非常に北極圏は大きい。これを結局、予測も含めて、研究をどう進めていくか、それから、そのためには具体的にどんな観測研究が必要かという、私もそういう枠組みが1つの方向性かなとは思っていましたが、確かに北極圏研究という意味ではまさに、福田さんが言われるように、固体系は当然、必要な部分。それと、特に火山とかは、もろに大気とか気候にも影響する部分もありますので、その辺はどの程度含めて考えていくか、今後の課題かなという気はします。

【山内主査代理】  その意味では、最初にちょっと紹介しましたが、もっとずっと上のほうのオーロラとか、電磁研、地震研の話も、北極というのはかなり大きいテーマではあるんですけれども、やっぱり今の固体と同じように、ちょっとコミュニティーが違う、またすごく大きいコミュニティーがあるんですよね。ですから、そういう意味では、何らか触れる必要はあると思うんですけれども、メーンのものではないかなと。今回はどちらかというと、やっぱり地球環境みたいな範囲で繰り入れられるところでしょうかという気が……。

【安成主査】  その辺のところは、今のような理解でよろしいんでしょうかね。基本的には、北極圏研究ということですが、大きな柱としては、北極圏の環境変化に関連して、今何をするか、あるいはどういう体制をとるべきかというぐあいに私も実はそう理解していたんですが、確かに北極圏はいろいろなプロセスがある。もちろん表層のプロセスということで、超高層も実は、赤祖父先生が言われたように、オーロラなんかも、ある意味で表層の気候とか環境にかかわってくる面ももちろんあると。今回、そういう人がメンバーにおられないので確かにその辺の話がないんですが、その辺のところをどう入れ込むかは1つの課題であるかなとは思います。

 それで、いわゆる環境変化というようなところに絞ると、問題点はかなり浮き彫りにされてきたかなという気はいたします。特に今後数年間とか10年間のスパンでやるべきことというのは、やっぱり1つ、温暖化が進行しているというのはほぼ事実である。それがほんとうに人間活動によるものかどうか、あるいはどういう形であらわれるかというようなこと、それから、それが北極の海も含めた生態系等にどう影響するか。あるいは、それが逆にフィードバックということも当然あるということですね。そこら辺を……、それだけでもかなり大きな仕事なので、相当なエネルギーが要るかと思います。

 もう時間が押してきましたけれども、今後、そういう研究をいわば統合的に進めていくにはどんな体制をとるべきかということで、既にその辺についてのご意見もいただいていますけれども、これについて、特にまず一言お話ししたいというようなことがありましたら聞きたいと思うんですが、特に国内の体制、まず、中核拠点推進体制について、この辺の……。

 きょう、これ、榎本さんの資料として、これは米国を事例としてということですが、ちょっと、じゃあ……。

【榎本委員】  前回、先週の会議の中でも、アメリカの事情、福田先生からIARC関連ということで紹介されまして、アメリカのUS Arctic Research Commissionの話とか、あと、State of the Arcticという会議に参加されたときの現場の様子が紹介されました。非常に米国はアクティブに、研究者層も厚くて、それをうまく組織立てて、立案から、評価、ふだんのコミュニケーションというところを分担してうまく実施していっているという話がありました。

 これはそこら辺のお話、いろいろな人の資料を集めてきたような資料なんですけれども、途中に、全米北極会議、State of the Arctic、これが福田先生が参加されたもの。それで、そのときの会議のプログラムが先週も配られましたけれども、福田先生の陸上の話のすぐ後には、フランスの研究者、DAMOCLESという、海氷のモデリングに対する開発研究を促進するという大きなプロジェクトの代表者もそこに出ていまして、いろいろな情報がそこに集中しているというふうなものがありまして、大変参考になったと。アメリカの話ですので、全部が日本には適用するわけではないと思うんですけれども、大変参考になるだろうと。

 国内には、日本の中でそういうものがつくれるのかなというところが次に話題になっていくかと思うんですけれども、例えばState of the Arcticの中では、例えば島田さんとかは運営委員側もやられていましたよね。

【島田委員】  State of the Arcticの母体というか……、僕が話さないほうが……、えーとですね……。

【榎本委員】  ほんとうに、いろいろ情報がここに、いろいろな人が関係する情報を実はお持ちで、こういうことで口火を切ると、きっといろいろな方の議論が、話が出てくるかなと思います。それで、おさらいみたいな感じで、State of the Arctic。

 あと、Arctic Research of Consortium of US、ARCUSというのが、ニュースレター、あと、いろいろなエデュケーションから始まります。エデュケーションから、いろいろな情報交換、アウトリーチ、あと、State of the Arcticのためのいろいろな情報を流すという役割で、ここは職員は主に事務系の人が中心になっているんですけれども、全体を科学的な意味づけができる職員と、うまい情報を携帯で流していく、そういったグループの組み合わせというふうになっている。

 日本にもそういうグループがあればいいなということで、どういうことが可能かということで、1ページ目の下の6行部分と、次のページ、例えばということで、いろいろな評議会みたいなものがあって、いろいろな情報を収集したり、提供したり、評価を行うという、これまでやられていなかったことの仕組みが必要だろうと。名称とか組織の構成はきっと議論がたくさんあると思うんですけれども、ちょっとそれが欠けていると。前回の議論で既に紹介がたくさんあったと思うんですけれども。

 例えば、私は大学なので、大学でこういう役割を担うとしたら、普通の教育と一緒にやるのは大変でして、独立した作業形態にしないと、これはできないだろうというふうなことです。それで、ここでは、大学に置くとしたらということで、独立して何かをつくるというふうなことを例えば紹介してみました。人数とか、どこに置くかというのは議論になると思います。というふうなところです。

【安成主査】  どうもありがとうございました。1つのたたき台をいただいたと思うんですが、これについて、あるいはまた別のアイデアも……。

【榎本委員】  ちょっとだけ紹介しますけれども、島田さんが、運営委員側の、内部の、日本と違う事情あたりは何かご存じだと。

【島田委員】  その辺は僕の資料の28から29ぐらいにあります。今現在のIASC、北極科学委員会の下で動いている委員会というと、ISACという、International Study of the Arctic Changeというのが動いております。これの主要メンバーというのは、先ほど出ましたフランスのジーン・クラウド・ガステロ、あと、SEARCHのチェアのピーター・シュロッサ、そういう意味で、各国の研究者であり、プロジェクト代表みたいな格好になっていまして、このISACというのが設立される前からも、AON、Arctic Observing Networkという、アメリカでプログラムが走っていたんですけれども、その合同シンポジウムみたいなものが何回かありまして、そういう形で、欧州とアメリカが中心となるような連合体、そういう格好の、それが中心となった国際委員会になっているのが現状です。

 その発端というのは何かというと、29ページのほうを見ていただくと、IARCの下では、ICARP2という、10年ぐらいのスパンで北極の長期計画を考えようという会があります。2005年にデンマークのコペンハーゲンで、総まとめの会議をやっています。それがこういう形でIPYを迎えて、その後が、ISAC、そのUS版みたいなのがAONだと思っていただければいいかなと思うんですね。

 ただ、最近の傾向としては、ICARPの時代というのは、かなり分科会、ワーキンググループ1、2、3、4という、今回もいろいろな方がいらっしゃると思うんですけれども、海洋と海洋生物、生態系とか、あとは、ディープベースンというか、固体地球を考える分科会、そういう分科会ごとに、今後5年、10年やるべき中長期計画という指針を出してきたんですね。IPYを迎えて、山内先生の話のSAONとかというのは、どちらかというと、Arctic Councilが主導しているような感じで、すべて総花的になってしまって、結局、北極のコミュニティーの中でも、こんな幾つも提言書をつくってどうするんだ? という、ちょっと混沌とした状況にあります。

 ISACに関しても、この間、オスロでちょっと会議をやったんですけれども、ほんとうにICARPのときのように、何かサイエンスベースをきっちりつくって、それをどこかに出して、物を動かしていこうという感じではないのが残念なところですね。そういう意味で、世界的にも今、ちょっと混沌としています。

 IPYを迎える直前のほうが、ICARPがあり、ACIA、Arctic Climate Impact Assessmentという、ケンブリッジのUAFのホームページ、ああいう形でかなり真剣に、こうやるべしというのを分科会ごとにつくった。なので、今やもう一度、北極全体で考える――雪氷圏なのか、北極なのか、何かその辺のところをきちんと区分して考えないと、同じようなことになるんではないかなという気がしています。だから、ちゃんとその辺を整理することが今、国内的にも国際的にも……。

 あと、国際的な窓口をちゃんと日本の中につくっておかなければいけなくて、IASCの体制というか、この分野であれば、日本の代表はこの人ですよという、コンソーシアムでもカウンシルでもいいんですけれども、そういうきちんとした国内対応体制が今、ないのが現状です。だから、何となく、この分野だったらこの人という感じで動いてしまっていて、それを日本の国内の北極研究こうあるべしというところに反映できないような仕組みになっているというのが、大きな1つの問題かと思います。

【安成主査】  どうもありがとうございます。非常にいい……、これは既に国際体制の話も含めてということになっていますが、北極圏研究は国際的な枠組みとちゃんと連携してやらないとできないというのは確かですね。そういう意味で、国内対応の、これは今、ISACというのがあるということと、ちょっと私の聞き逃しですが、このICARP2というのはもうなくなったんですか。まだこれ……。

【島田委員】  ICARP2は……、ICARPは大体10年に1回ですね。前回、2005年にデンマークでありましたので、実質上は二〇一三、四年ぐらいに個別というか、各分野ごとに多分議論して、そのときも、ある場所に3日間泊まり込みで、徹底的にみんなで文章をつくるようなことをしましたので、そういう時期がもう二、三年後ぐらいには訪れるかと思います。

【安成主査】  あと、サイエンスの話をされましたけれども、確かに国内対応の枠組みなり体制をつくるときに、やはりサイエンスオリエンテッドにしないと、ある意味でいい形の機能的な体制にはならないんじゃないかなという気がちょっとしているんですね。先ほどの、福田さんからあったように、固体地球の話とか、それから、超高層とか、いろいろな分野があると思うんですね。だから、確かに、国内もその辺をどういう形で入れ込んだ体制にするかと、そこのところもちょっと重要な1つのポイントかなという気はしています。この辺……。

【山内主査代理】  1つ、今、ここにIASCと書いてあるので、そのことをお話しいたしますと、とりあえず国内の体制としては、学術会議に、地球惑星科学委員会のもとの国際対応分科会、その下にIASC小委員会というのがあって、形としては対応しているんですよね。そこの委員長は、前の、うちの北極センターの神田さんなんですが、IASCの日本代表として、そこから出るという形にはしているんですが、IASCは今、非常に大きな変革期にあって、かなりサイエンスをちゃんとそこでもやっていこうということになって、いろいろな分野の常置分科会みたいなものをつくろうとしている。そうなると、単に日本から1人、2人行けばいいというんじゃなくて、もっと実質的なサイエンスのかかわりを、IASCという枠組みでも議論することになると思うので、その辺、もっと効果的な対応をしていく必要が出てきているということです。

【安成主査】  そうですね、その辺の議論をちょっともう少し続けてやる必要があるかなと。特に温暖化絡みのサイエンスというのは、もちろんいろいろな側面はありますけれども、クリアな意味でやるべきことというのは幾つかもう出てきているかなと思うんです。メカニズム、それから、影響評価を含めてですね。

 実際にこういう体制をつくるときに、特にオールジャパンでやるというのが今回の趣旨だと思うんですが、機能させるということも……。これ、国際対応で、今、ISACというのと、一応、学術会議に小委員会があるということですが、やはり多分、これも国際的にも、ある程度、サイエンスとしてどの辺を柱にするのかという、そこが1つの大きなポイントになるかなと、私はそういう気がしています。

 きょうは時間が来てしまいましたが、この引き続きの議論というのは、3回目というのがあると考えてよろしいんでしょうか。

【谷環境エネルギー課推進官】  今まで相当なインプットをいただいておりまして、必ずしも十分でないというふうに思いますが、議論を集約していただく方向で、少し紙で書いたもので具体的に論点を挙げさせていただいて、ご議論をさらに深めていただきたいということで、次は考えさせていただきたいと思います。

【安成主査】  私、それで気になるのは、一応、この委員の中で議論していますけれども、確かに北極圏の環境ということに限っても、まだここだけで取り上げられていないようなテーマはおそらく幾つかあると思うんですね。まずその辺のインプットも、これは多分、委員を通して、ちょっと補充していただくというプロセスはあってもいいのかなとは思っています。それで、重点課題といいますか、それを絞り込んでいくということになるのかなと思っていますが、その辺どうでしょうね。

【谷環境エネルギー課推進官】  ちょっと補足をさせていただきますと、必要な議論といいますか、北極ももちろん非常に広く考えるということができるわけですけれども、当然、どういう議論をしていただくか、その場合に必要なご見識をお持ちの先生方にお集まりいただくということで、基本的には、お集まりいただいている先生がカバーしている領域がまさにご議論いただきたいものということで、事務局のほうで考えているんですね。ということであります。

 まさに例えば北極での重要課題ということを考えたときに、いろいろな重要なことはもちろんあると思いますので、そういうものを全く排除するつもりはありませんけれども、限られたリソースとか、限られた、いろいろな制約がある中で、優先順位を絞って考えていったときに、どこまで手を広げるかということで、まずここでというふうに範囲を事務局のほうで考えましたのが、今、お集まりいただいている先生方がカバーされている領域、こういうことでご理解いただければと思います。その上で、どうしても優先順位で非常に高いところにあるものが抜けているということであれば、ご指摘をいただきたいと思っております。

【安成主査】  はい、わかりました。そうしたら、大体、きょうの議論については……。あっ、1つ、国際協力について、大畑さんのほうから何か、できればちょっとインプットが……。

【大畑委員】  資料2で、これ、私が去年書いたものがありまして、事務局のほうで、これ、参考になるんじゃないかということで、ちょっと手を加えて、示しています。

 要は、科学の情報というのは比較的透明なんですけれども、こういう体制に関する情報というのはどうも探しにくい、人によって言うことが違う。そういうことで、クエスチョンマークがあったり、なしがあったりするんです。北極海に面した国3つと、それから、その下、ドイツ、中国、日本――非北極国と私は呼んでいるんですけれども、それについての国内での委員会のあり方、中核機関、観測拠点、砕氷船。今後、我々の選択を考える上での参考になるかと思います。

 米国に関しては、今、榎本さんが説明しましたけれども、ほかの国とかなり異なって、中核機関がないけれども、政府直属の委員会がしっかりしていて、それから、コンソーシアムがあると。それから、当然、国内に観測点があり、それから、砕氷船を利用できる環境にあるという特徴があります。

 それ以外の国は、大体、中核の機関がありまして、そこを中心に動いていると。国によって、関連する機関の数は大分違いますけれども。

 ロシアの場合はどうもよく見えない。ただし、情報を得た範囲では、IPY委員会とか、アドホックに、アカデミーの中に、小委員会ができて、計画づくりをしている。そういう中核機関としてはありとか、観測点、砕氷船がありと。

 ノルウェーも北極に面しているんですけれども、NPI、極地研究所が中心になって、特に北極に力を入れていると。当然、スバールバルにあって、砕氷船を持っている。

 非北極国のドイツ、これは日本に比較的似ているんですけれども、アルフレッドウエーゲナー極地海洋研究所、そこが中心になって、あと、生態関係の極地の研究所があるようですけれども、スバールバルと、それから、ロシアに観測所を持っている。砕氷船「ポーラー・ステルン」を運航して、それで、いろいろな議論は、SCAR/IASC合同委員会というところで主として行われているということです。

 それから、中国は、北極・南極局の下の極地研究所、そこが中核で、主として海洋関係が強いところだと思うんですけれども、スバールバルに基地があって、砕氷船を以前は運航していましたけれども、ちょっと最近はよくわからない。

【山内主査代理】  いや、今年は……。

【大畑委員】  うん?

【山内主査代理】  今年も行……。

【大畑委員】  今年も行っていますか。

【山内主査代理】  これ、中国……。

【島田委員】  今年は何かヘリが落ちて、行けないと。

【大畑委員】  ああ、そう。

【山内主査代理】  政府委員会と国家海洋局の下に、この北極・南極委員会というのが……。

【大畑委員】  委員会ね。そうですか。これ、ちょっと……。

【山内主査代理】  海洋局に属しているんですね。そこが微妙。科学院と別なので、また複雑です。

【大畑委員】  そうですね、その流れが2つになって。

 韓国も比較的、中国に類似したイメージを持っております。

 日本は、先ほどあったように、一応、中核研究機関として、極地研があることになっているというか。それで、IASC委員会というのがありますけれども、これは学術会議で、学術会議はやはりあまり活動ができないということがありまして、一部、極地研が引き受けてやったり、あとは、それ以外の北極に関連した委員会で、北極の議論もあわせてやっているという状態です。

 それで、研究拠点についてはスバールバルにあって、意外と日本は外に出てやる傾向がありまして、日本ほどいろいろなところに出没する北極研究者はいないんではないかなという気がいたします。

 砕氷船についてはちょっとまずい状態であって、やはり現状を考えると、かなり深く考えなければいけないことかと考えています。

 以上で。特にこれについてはあまりコメントを加えるというより、去年の分析ではこうでしたということで、もし間違っていたら、これ、訂正いたします。

【安成主査】  どうもありがとうございました。もう時間が来ていますので、これにてういては、また次回この議論を続けるということで、きょうの議論を踏まえまして、次回の議論を集約する方向で、中間取りまとめの草案を事務局に準備していただくということでお願いしたいと思います。

 それでは、最後に、事務局のほうから何かございますか。

【谷環境エネルギー課推進官】  本日は長時間にわたり、ありがとうございました。次回は7月27日の火曜日、10時からの開催を予定させていただいております。場所は追ってご連絡をさせていただきます。

 それから、本日の議事録は後日、事務局から先生方にお送りして、確認をいただき、その上で公開をさせていただくというふうにさせていただきたいと思います。

 それから、旅費、委員手当等確認の紙をお配りしておりますので、お帰りの際、事務局のほうへご提出をお願いいたします。以上でございます。

【安成主査】  ちょっとお願いなんですけれども、議事録、先回の分、まだ……、もう出ています?

【谷環境エネルギー課推進官】  まだ、先週の火曜日だったものですから。

【安成主査】  できれば、前回の分と今回の分を、27日の議会までにとりあえずのものがあれば、それで議論が助かるなと思いますので、私からお願いしたい。

【谷環境エネルギー課推進官】  はい。でき次第、先生方のほうへお送りするように。

【森本大臣官房審議官】  すみません。1点よろしゅうございましょうか。今後の議論の進め方についてですけれども、我々としては、IPCCという科学的成果を集約する国際的な場にどういうふうに日本として貢献していけばいいのかというのが1つ大きな課題としてございます。

 それで、北極域の重要性というのは、世界的な共通認識だと思うんですけれども、やはり現実と理想の間のギャップをどうやって埋めていくか、特に観測データがまだないところ、そして、もっと連携が必要な分野――特に海と陸であるとか、雪氷圏の生態系と地面とか、あるいは氷と気温の関係とか、いろいろ、今まで試みられてはきたんだけども、まだ不十分な点がさまざまあると思うんです。そういったところを、ギャップを特定して、そこに重点的に資源を投入していくと、こういうやり方ができないかということを考えております。

 そういう意味で、今まで研究者の方々がいろいろご苦労を重ねてこられたと思うんですけれども、それを組織的、体系的にしていくために、あまりにも領域が広いし、分野も広いものですから、そこのどこを特に重点的にやっていけばいいのかという観点で、ご議論を次回以降していただいてはいかがかと。これは事務局の提案でございます。よろしくお願いいたします。

【安成主査】  ありがとうございました。

【阿部委員】  すみません。IPCCの中にワーキンググループ1と2と3があって、先ほどから、影響評価、さらには政治経済への影響ということもあったんですけれども、文科省としては、基本的にはワーキンググループ1対応だと考えてよろしいんでしょうか。

【森本大臣官房審議官】  そうですね。

【阿部委員】  今、話を、北極圏の研究ってどこまで広げるかというので、基本的には、基礎科学への投入と理解してよろしいんでしょうか。

【森本大臣官房審議官】  日本の強みを生かして、IPCCの中でそれなりの日本の存在感を出していくというときに、一番近道といいますか、貢献し得る分野ということだと思いますので……。

【阿部委員】  いえいえ、だから、ワーキンググループ1と2と3と3つあるわけですけれども……。

【谷環境エネルギー課推進官】  単純に、ワーキンググループ1、2、3に対する役所の役割分担というのは、ワーキンググループ1が文科省、気象庁という形になっているというだけであって、北極研究の成果自身は、これはワーキンググループ1のアウトプットにも成果にもつながると思いますし、ワーキンググループ2の成果にもつながり、さらにはワーキンググループ3にもつながると思っておりまして、そこの北極研究の全体の強化をここでご議論いただきたいと、こういう趣旨であります。ですから、ワーキンググループ2とか3の担当を……、これは担当といいますか、単純な事務的な省庁の分担だけでありまして、別にここの研究の成果が使われないとか、ここの議論はワーキンググループ1に限るとかいうふうに考えているわけではありません。

【安成主査】  きょうの議論にもありましたように、特に生態系の問題、陸も海も両方だと思うんですけれども、やっぱりこれはIPCCの枠組みと、むしろワーキンググループ2に、結構、影響評価みたいなところに入っていますけれども、僕はやはり事務局が言われるように、特に北極圏ということで、まず実際にどういうことか、どういうメカニズムかと。これはもちろんワーキンググループ1に関係していると思うんですけれども、同時に、IPCCの仕分けでいくと、2とか、場合によっては3も含めた形で、必要ならば議論していくということは大事かなと、私は個人的に思っています。

【東委員】  すみません。もう1つ質問なんですけれども、重要な研究課題を出すということですが、どのぐらいの時間スケールでお考えですか。何年間で成果が出せるとか。

【安成主査】  それも1つのポイントだと思うんですね。一応は、だから、今、森本審議官が言われたように、IPCCということを一つ考えると、今、次の第5次報告書に向けてというのが現実に動いていると。それへのできるだけのインプット、まあ、可能な範囲ですね。当然、次もあると思うので。どうでしょうね、私は、5年から10年ぐらいのスパンでの重点課題かなと個人的には思っているんですが、その辺どうですかね。

【森本大臣官房審議官】  これは成果が出るまでに時間がかかるものだと思いますので、やはり5年から10年のスパンで考えないとうまくいかないかなと。

【安成主査】  よろしいでしょうか。ほかに特にご質問……。

 じゃ、次回は27日ということで、よろしくお願いします。

 それでは、これで作業部会第2回会合を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

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