平成22年7月6日(火曜日)10時00分~12時00分
文部科学省3F1特別会議室
安成主査 青木委員 阿部委員 五十嵐委員 石川委員 榎本委員 大畑委員 島田委員 野沢委員 原委員 原田委員 福田委員 藤谷委員 松浦委員 山内委員
藤木研究開発局長 森本審議官 田口環境エネルギー課長 谷環境エネルギー課推進官
赤祖父IARC名誉教授 井上総合地球環境学研究所教授
【谷環境科学技術推進官】 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の北極研究検討作業部会の第1回会合を開催させていただきたいと思います。
主査にお渡しする前、事務局のほうで議事進行を進めさせていただきます環境エネルギー課の谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日はご多忙のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。開会に当たりまして、研究開発局長の藤木より一言ごあいさつを申し上げます。
【藤木研究開発局長】 ただいまご紹介いただきました研究開発局長をしております藤木と申します。本日は、北極研究は夏が本チャンであるという時期であると聞いておりますけれども、その大変お忙しい時期にこうしてきょうご出席いただきまして、また、この委員会の委員をお引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。それほど長い期間のご審議にはならないとは予想しておりますけれども、的確なお知恵をいただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
環境問題、環境変動問題、気候変動問題というのは、この政権におきまして大変トッププライオリティーの課題でございます。先日も、これは成長戦略の観点からではございましたけれども、この政権の政策の基本を定めます新成長戦略、今後10年間の政策の基本というふうに考えて、基本的に4年、残り3年でございますけれども、というような長期の基本政策をつくっております。その最初に出てくるのがグリーンイノベーションという地球環境に大変意を重く用いた政策であります。前政権、鳩山政権でも地球環境問題はまさにトッププライオリティーで考えられておられたということでありますから、そういう観点から環境変動問題というのは国としての最も重要な課題の1つであるということでとらえております。
さまざまな環境問題に対する対策、対応は、各省庁いろいろ考えております。しかしながら、そういった対策、対応が非常に効果のあるもの、有効なものになる、そういったことのためには、それがサイエンスとしての確固たる基盤を持っていないといけないと我々は考えております。いろいろIPCCでもさまざまな疑惑の問題等も出ておりますので、そういった科学的にきちっと根拠があるのだということをベースにしつつ、我々、先にさまざまな対策を進めていきたいと考えているわけでございますので、その確固たるサイエンスの基盤というのをきちっと考えていくというのは、大学、研究機関、そして我々文科省の役割であると認識しておりまして、そういった努力の一環として、今回は北極についてのそういった研究をどういうふうに進めていくのかということで、今回の委員会をお願いしているわけであります。
極地、北極、南極は非常に地球の環境変動、気候変動の影響が出やすい地域とお聞きしております。特に北極は最近では非常に気温の上昇が大きくて、氷が非常に溶けているというような話もお聞きしておりますし、また、日本は北半球の国でありますから特にでありますけれども、北極の変動がその気候に影響するところは大変大きいという環境にもございます。また、北極振動という新しいとらえ方もされているということも聞いております。そういった最近の種々の北極研究の現状を踏まえながら、これからどういうふうに北極研究に取り組んでいったらいいのか。日本でもさまざまな研究機関、大学が取り組まれてきておられるわけですけれども、それが総体としてパワーを発揮していただく、そういうふうなことにするにはどういう形をしたらいいのか、文科省として何をしたらいいのか、そういったことをぜひ我々は考えていきたいということで、この委員会をつくらせていただきまして、先生方のお知恵をお借りする場をつくらせていただいたわけであります。
来年度の予算にもできれば反映させたいということもございますので、まずはここ一、二カ月あたりで大きな方向性を少しご議論いただいて、それに基づいて、我々、来年度以降の、少なくとも来年度の予算をどういう形にしていくのかということをぜひ考えさせていただきたいなと思っております。夏の暑い時期、冒頭に申しましたように北極圏研究であれば、本チャンの時期であるということでありまして、大変研究者の方々にはお時間、ご迷惑をかけるわけでございますけれども、将来の北極圏研究をより強くするという意図に立って、我々検討していただいた結果を真摯に踏まえて今後の政策を立ててまいりたいと考えておりますので、どうぞお知恵をおかりできればと考えます。冒頭申しましたように、まずは数カ月の勝負をしていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。
【谷環境科学技術推進官】 それでは、議事に入ります前に、事務局より本日の資料を確認させていただきます。
資料の確認の前に座席表をお配りしているかと思いますけれども、事務局の手違いで恐縮でございます。1点、訂正をお願いしたいと思いますが、傍聴席に近いところで井上総合地球環境学研究所の教授、また、赤祖父IARC名誉教授にオブザーバーで来ていただいておりますが、そのお隣に東委員にお座りいただいておりますので、訂正をお願いしたいと思います。
座席表をめくっていただきまして、本日の議事次第でございます。続きまして資料の1、当作業部会の委員の名簿でございます。資料の2が北極検討作業部会の設置について、1枚紙物でございます。続いて資料3-1といたしまして、温暖化の連携事務局からのインプットでございます。続いて資料3-2-1、これは国立極地研究所からのインプットの資料、文章で書かれたもの、続いて資料3-2-2がパワーポイントの資料でございます。資料3-3といたしまして、JAMSTECからのインプットの資料でございます。続いて資料3-4、JAXAからのインプットの資料。資料3-5といたしまして、IARCの取り組みということで英語の――1枚目が英語になっておりますが、資料を用意してございます。続きまして、資料3-6、北海道大学の取り組みでございます。また、資料3-7といたしまして、外務省からの説明用資料でございます。
それから、参考資料1といたしまして、地球観測推進部会の運営規則をお配りしてございます。また、机上配付の資料といたしまして、温暖化の連携拠点のパンフレット、また、21年度ワークショップ、雪氷圏のワークショップの資料。また、ワーキンググループで作成されました、これは冊子になってございますが、報告書第1号及び第2号を配らせていただいております。資料漏れ、抜けがございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。よろしゅうございますでしょうか。
では、引き続き進めさせていただきたいと思います。まず、本作業部会は、地球観測推進部会の運営規則に基づきまして公開といたします。また、会議資料、議事録についても公開となります。後日、文部科学省のホームページに掲載をさせていただきます。
引き続きまして、本日おいでいただいております先生方を私のほうでご紹介をさせていただきたいと思います。資料1に基づきまして、ご紹介をさせていただきます。
まず、気象研究所の青木委員。国立極地研究所の東委員です。東京大学大気海洋研究所から阿部委員に来ていただいております。宇宙航空研究開発機構から五十嵐研究領域リーダーです。北海道大学の石川准教授。北見工業大学の榎本教授。海洋研究開発機構から大畑プログラムディレクターです。それから、東京海洋大学の島田准教授。北海道大学の杉本教授、本日はご欠席でございます。国立環境研究所の野沢室長です。
【野沢委員】 よろしくお願いします。
【谷環境科学技術推進官】 北海道大学低温研究所の原教授。海洋研究開発機構から原田チームリーダーです。福山市立大学教授の福田先生です。それから、地球温暖化観測推進事務局事務局長の藤谷委員です。それから、森林総合研究所の松浦室長においでいただいております。それから、名古屋大学の安成教授に来ていただいております。国立極地研究所副所長、山内先生です。
【山内委員】 山内です。
【谷環境科学技術推進官】 続きまして、本作業部会の主査につきましては、これは運営規則に基づきまして地球観測推進部会長から指名されるというふうになされております。あらかじめ部会長の小池勲先生からは安成委員を主査として指名がされておりますので、ご報告をいたします。
それでは、以降の議事進行につきましては、安成委員にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【安成主査】 どうもよろしくお願いします。主査の命を受けました名古屋大学の安成と申します。非常に短期間にいろいろ重要な議論をするということで、かなり責任が重い仕事だと思っていますが、ぜひ皆様のご協力でうまく進めていきたいと思います。
さて、議事、まず最初に議題1として主査の代理の指名ということがございます。参考資料1の運営規則に基づいて主査があらかじめ指名するということになっているということであります。できれば山内委員にお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、今回のメーンの議題であります関係各省・機関の取り組みについてということで、今回と来週、非常にタイトなのですが、来週も同じこの火曜日の10時からということになっておりますが、13日にもう一度ございますが、この2回で今回の議論のベースとなります国内の関係各省・機関、大学等におけるこれまでの北極研究活動のご紹介をいただきたい。これはいろいろ議論のベースになっております。まず、事務局から本作業部会設置にかかわる背景等についてのご説明をいただいて、その後、各機関の取り組みについてのご紹介をお願いしたいと思っています。
それでは、まず事務局からということで、谷さん、お願いできますか。
【谷環境科学技術推進官】 それでは、資料2をごらんいただければと思います。北極研究検討作業部会の設置について、本年の5月10日付でございますが、地球観測推進部会のほうで当作業部会についての設置が認められた紙でございます。
まず、趣旨でございますが、冒頭、局長から申し上げたとおりでございますが、北極の重要性ということをパラグラフ1でご紹介をしております。温暖化による平均気温の上昇が最も大きく、地球上において気候変動による影響が最も顕著にあらわれると予測される地域ということで、エリアとしての重要性ということでございます。また、北極における変化、これはその当該地域のみならず、全球的な物質循環、あるいは気候システムに対して大きな影響をもたらす可能性があるということでございまして、したがって、気候変動のメカニズム解明ということからも非常に重要なところであるということをうたっております。
それから、総合科学技術会議のほうで示されております地球観測における推進戦略、これは地球観測の基本的な戦略文書でございますけれども、この中でも雪氷圏という書き方でございますが、気候変動に脆弱な地域での温暖化影響の観測ということについては、我が国が重点的に実施すべき取り組みというふうに位置づけられてございます。こういった状況を踏まえまして、北極における組織的かつ継続的な観測・研究体制を整備していくということ。また、北極研究に関する関係府省・機関間の連携をより一層強化していくということ、これが具体的な目標になろうかと思いますが、こういった観点から我が国における北極研究に関する検討を行うということで、当作業部会が設置されてございます。
調査事項2.に整理をしてございます。まず、北極研究における重要課題。まず、北極が重要であるということは総論として異論のないというところだと思いますが、具体的に何をやらなければいけないのかということをまずあぶり出しをしていただくということがまず1点目でございます。その重要課題への対応として、どういった体制を考えるべきかということが2点目、3点目でございまして、特に2点目は国内の中核拠点の在り方、それから、オールジャパンとしての国全体として研究推進体制をどう考えていくべきかということをご議論いただきたいと思っております。さらには海外、各国も精力的に北極研究、観測をやっているわけでございますけれども、国際的な連携協力の在り方についてもご議論をいただきたいと思っております。
それから、設置期間につきましては、これはやや形式的でございます。地球観測推進部会の委員の先生方の任期を踏まえたものでございます。当面のスケジュールとしては、後ほどご紹介をさせていただきますが、夏をめどに一定の取りまとめ、場合によって中間的な取りまとめという形になるかもしれませんが、これをお願いしたいと思っております。それを踏まえて役所として概算要求等につなげていくという形。必要に応じてさらに詳細なロードマップ等を考えていくということになれば、秋、冬通じて年内ぐらいをめどに最終的な取りまとめまでという形を考えてございます。
それから、4.、最後は事務局、環境エネルギー課が務めさせていただきますということを書いてございます。
資料につきましてのご説明は以上でございます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
ただいまの事務局からのご説明、何かご質問とかございますでしょうか。進め方等につきましても、よろしいでしょうか。
それでは、時間も非常にタイトですので、早速、関係各省、機関、大学等からの取り組みについてということで、一応、きょうは7つの話題をお願いすることになっています。それぞれ時間が書いてございますので、時間厳守でお願いできればと思います。また来週も引き続きございます。きょうもそれぞれのご発表について、多分いろいろ質問等あると思いますけれども、まとめて後で質問等、議論をしたいと思いますので、まず最初に各それぞれの機関からの説明をお願いするということでお願いいたします。
それでは、まず最初は地球温暖化観測推進事務局から、藤谷委員からよろしくお願いします。
【藤谷委員】 推進事務局の藤谷でございます。それでは、お手元の資料3-1に沿いましてご説明いたします。経緯のところにございますように、地球観測推進戦略、総合科学技術で決められたわけでございますけれども、これに基づいて政策ニーズを踏まえた地球観測の総合的・効率的な実施を図るために関係府省・機関の連携を強化する推進母体として平成18年に地球観測連携拠点が設置されたわけでございます。連携拠点のいろいろな内容につきましては、お手元にございますこのパンフレットを後ほどごらんいただければと思います。
我々、その連携拠点の事務局をやっているわけで、いろいろな機能がございまして、そこにございますように、まず1としまして地球温暖化観測分野における地球観測へのニーズ等の集約というのがございます。これはどういう観測ニーズがあるかということを取りまとめるということで、事務局のもとにワーキンググループを設置いたしまして、ここに出席の何人かの先生にご参加いただきまして、ニーズの取りまとめを報告書にしてございます。お手元に大部の資料でございますけれども、これまでに2冊、報告書を出してございます。それぞれの報告書、例えばワーキング第1号、目次を見ていただきますと、目次のところにいろいろな切り口で、例えばデータ流通の促進でございますとか、データ標準化の促進等々、いろいろな切り口で分析して、それぞれのところに雪氷観測、あるいは雪氷圏、雪氷関係のどうのこうのというのが書いてございます。これはそれぞれのところを見ていただきますと、雪氷分野、いろいろな観測ニーズ、問題点等が記載されてございます。
それから、こちらのベージュ色の報告書、これは第2号でございますけれども、これのほうは逆にそれぞれの分野ごとにニーズ等を書いてございます。目次を見ていただくとわかりますように、第4章、雪氷分野というところで、ここに海氷でございます凍土、極域の氷河、氷床、中程度の氷河、凍土、雪氷圏に関係するほとんど、大体の分野を網羅いたしまして、観測ニーズでございますが、必要性、現状、課題と展望というのを取りまとめてございます。少し重い荷物で申しわけございませんけれども、後ほどお帰りになってから内容にお目通しいただければと思います。これが1のニーズ等の集約でございます。
それから、2の機能といたしまして、いろいろな計画実施状況の管理・報告とございます。それから、3としまして、いろいろな連携施策を進めるための情報収集の分析というのがございます。それで、実際には、今回はこの3の機能に従いましていろいろな情報を収集・分析したということでございます。2.のところに具体的な連携施策の実施状況調査ということで、これまでの地球観測の実施方針等で気候変動に脆弱な地域での温暖化影響観測という、その重要性が指摘されてございますけれども、特に極域、雪氷圏については、長期継続観測を実現するための機関間連携施策を推進することが必要である。
我々としましては、関係の方のヒアリング、あるいはワーキンググループの報告書、それから、お手元にこのブルーの横長の資料がございますけれども、昨年度、ワークショップを今年の1月29日にやってございます。ここで雪氷圏関係の観測の最前線というところで、1枚開けるとプログラムとございますように、関係する先生方にご講演いただくとともに、雪氷圏における観測研究の今後の展望ということで、総合討論をやってございます。その結果を取りまとめましたのがきょうの資料の1枚めくっていただきますと、平成20年1月29日という、これがその取り組みの取りまとめ案でございます。これにつきましては、先ほどもお話がございました5月に開かれました地球観測推進部会、第5回のところに提出してございます。
この取りまとめについて少し説明させていただきます。1.の背景にございますように、推進戦略で利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築を推進してございますけれども、地球温暖化にかかわる現象解明・影響予測・抑制適応は喫緊の対応が求められている分野の1つであり、気候変動に対して脆弱な地域での温暖化影響モニタリングには今後10年間を目途に取り組むべき重点的な課題・事項とされ、脆弱な地域の1つとして雪氷圏が示されてございます。21年度の実施方針その他に気候変動の現状と将来を把握・理解するための取り組みを提示して、具体的には広範囲にわたる雪氷や氷河、氷床の融解状況の把握が具体的な課題として取り上げられてございます。また、国際的にもそこにございますように、SAONでございますとか、その他でいろいろな取り組みがされているということでございます。
2.の取り組みの案でございますけれども、これは先ほど言いましたシンポジウムで取りまとめた結果でございますけれども、雪氷圏における温暖化影響の把握並びに気候システムにおける雪氷圏フィードバックの研究を推進するためには、雪氷圏における雪氷因子の持続的観測、関連する陸域・海洋の観測データとの統合解析並びに雪氷圏観測データのアーカイブを実現する体制の整備が重要と考えられる。地球温暖化観測事務局でこれら取り組みの推進方策と調査を行った結果、以下のような機関間連携による取り組みが効果的であることが明らかとなった。
1としまして、雪氷圏変動観測ネットワークを整備し、持続的観測体制の構築を図る。2としまして、雪氷圏観測データの品質管理・アーカイブを行う体制の構築を図る。3としまして、雪氷圏データと大気・海洋・陸域等の観測データの統合解析を実施する体制の構築を図る。上記の地球雪氷圏変動観測ネットワークが対象とする地域をこのちょうど裏側のところに図で示してございますけれども、詳細はこの別紙のところを見ていただければと思います。それで、こういうところはこれまで我が国の実績、それから、観測の空白域の視点から選択したものでございます。これらの地域には積雪・凍土・氷河・氷床・海氷などの特徴的な雪氷因子を含み、実際の観測に当たっては雪氷との相互作用が強い大気・海洋・陸域等との分野間連携による観測を実施することが望まれるとまとめてございます。
こういう取り組みをやりますと、3.にございますように以下のような成果が得られるということで、1としまして雪氷圏の現状及び変動に関する定量的把握の精度が向上し、IPCCで指摘されている雪氷因子に関する不確実性が低減される。2としまして、雪氷圏に関する長期かつ広域の把握手段として有効な衛星観測に関してデータ解析アルゴリズムの開発・改良が推進される。3としまして、雪氷圏に関するデータアーカイブ体制が構築され、雪氷分野のみならず、関係する多くの分野における雪氷圏観測データの利活用が促進される。4としまして分野間連携による各種データの統合的解析を通じて、雪氷フィードバック過程や雪氷圏と大気・海洋・陸域等との相互作用に関する理解が進み、気候モデルによる温暖化影響予測の精度向上に貢献する。
以上が効果ということで、このまとめました文章を推進部会のほうにインプットしまして、これから策定されておりますその平成23年度の実施方針に盛り込んでいただくということをお願いしている。以上でございます。
【安成主査】 どうもありがとうございました。ちょうど時間が10分ということで、ありがとうございます。北極圏研究の中でも雪氷圏というのは非常に重要な根本で、そういう議論をこれまでやってこられている。非常に重要なこれからの議論のベースになると思います。どうもありがとうございました。
議論、また質問とかあると思いますが、後からお受けいたしたいと思います。では、次に引き続いて国立極地研究所ということで山内委員にお願いできますか。
【山内委員】 それでは、山内からご説明いたします。北極圏が地球規模の気候環境への非常に重要なかぎとなる地域であるということは、もう皆さんよくご存じのことで、そういうものの実態解明、あるいは生態系影響、そういうものを進めるために北極域における宙空圏、大気圏、陸圏、海洋圏、生物圏に関する現地観測を軸にした研究を求められているということで、国立極地研究所、この研究所は1973年に創立されまして、大学共同利用機関ということで研究を進めてきましたが、特に90年の6月に研究所の中に北極圏環境研究センターというものを設置しまして、日本の北極研究の中核機関として北極における共同利用体制を整備することを目指してきたわけです。
このセンターが創設された時期、その1990年代前後といいますのは、国際的にも地球環境問題が非常に高まってきたとともに、ご存じのようにソ連の崩壊、冷戦構造の崩壊、それに伴って北極域に比較的自由に立ち入れるようになったという、そういうこともありまして、国際的に北極研究の機運が高まってきたという時期であります。国際北極科学委員会(IASC)というのが設立されまして、北極圏には8カ国という国があるのですが、それに加えて我が国も、それ以前の北極研究の実績、例えば中谷宇吉郎先生のT3、氷島での観測とか、昔から北極研究には実績があったということが認められて、91年からそのIASCに加盟が認められて以降、代表を派遣しているという状況にあります。
センターとしては、北極域における観測施設の共同利用体制の整備ということで、1番はスバールバル諸島、これはノルウェーが管理しているのですが、実は各国が自由に出入りできる場所、北極では非常に珍しい場所なのですが、そこのニーオルスンという場所に観測基地を整備しました。そのほか同じスバールバルのロングイヤービンというところでのスバールバル大学(UNIS)というのがありますが、あるいはアイスランドその他の施設を整備しつつ進めているということです。
それからもう一つの動きは、国際的な体制の1つはEISCATという、これは欧州非干渉散乱レーダーという大型のレーダーで大気の上層、特に超高層、あるいは電離圏の観測ですが、そういうグループ、あるいは氷床掘削のグリーンランド深層掘削計画等にも参画して観測研究を推進してきたということで、そのほかセンターの業務としては北極情報の収集、ホームページの運用、あるいは北極ディレクトリーというものを、今、日本学術会議の中にIASC小委員会という対応の委員会を持っておりますが、そこの主導としてこういう作業をしているということです。
お配りしたもう一つのパワーポイントの図を見ていただきますと、最初の上のほうに大体、今の全体像を絵にしてありますが、一番活動している中心は大西洋側です。ヨーロッパ北極域のスバールバルを中心として、分野によってはそのほかの地点にも少し展開しているという状況であります。それから、先ほど言いましたニーオルスンの観測施設というのは、観測基地というほどたいそうなものではなくて、この建物1つを借用して、そこに観測機器を置いたり、あるいはここをベースにして氷河に出かける。あるいは海のほうに出かける、そういう活動をしているということで、このスバールバル、ニーオルスンというところは、もともとは炭坑の町だったのですが、国際的なそういう北極観測の拠点にしようということでノルウェーが開いているところで、現在は十数カ国、十四、五機関が参加して観測をしているというところです。
それから、めくっていただいて、さっきお話ししましたEISCATというのは、この大きいレーダーがスバールバルのロングイヤービンというところにありまして、この1つのレーダーの建設費をほとんど日本が負担して出すようなことをしていますが、そういうある意味のコンソーシアムに加盟して日本からも貢献するとともに観測の時間割り当てをもらうという、そういう動きをしています。そのほかアイスランドでは南極との共役性観測ということでオーロラ等の観測を行っている。
その下にBi-Polar観測と書きましたが、極地研究所はもともと南極の研究観測を重点にしていましたが、その地球規模の現象の理解には、やはりその両極の理解というのが非常に大事だという、特にBi-Polarの視点ということが1つの極地研究所の立場になっているということで、南極と北極のことを比較して見る。ここに例としてはCO2の年々の変動を書いてありますが、非常に違うようにも見えるし、かつまた非常に似ているところもあるということで、この両極を見ることが地球規模の現象を理解するのに非常に大事だという立場で進めております。
また文章に戻っていただきますと、先ほど申しました北極センターですが、非常に小さい組織で、研究所、私が今、今年度に入ってからセンター長をしておりますが、そのほか兼任で准教授、講師、助手、助教がいて延べ7名で、いろいろな事務的な作業を担う有期雇用職員1名、計9名でやっているということで、センターそのものは非常に規模が小さいので、実際の観測研究活動はセンター所属以外の極地研究所の教員、あるいは共同利用研ですので、共同研究所外部の方が非常に多数参加していただいて観測研究を進めているという状況です。
活動内容として、初期は文部省に国際共同研究事業だったと思いますが、2期にわたって北極環境変動観測、あるいは北極観測というものが進められたとともに、その次は1999年度から科研費の特定領域研究ということで北極環境という枠をとって、3期にわたってかなり大規模なプロジェクトが進められました。しかし、2004年度の後は、そういったものが認められておりませんで、そういう意味で活動が大分、規模が縮小している、そういう状況があります。そういう中で2008年度には科研費の新学術領域研究というのに応募はしました。ここにおられるかなりの方々に参加していただいて、そういう活動をしてきましたが、まだそれが実践するまでには至っていないという状況であります。
国際共同観測としては、大気の観測ではニーオルスンでの施設の観測を中心に温室効果気体、エアロゾル等の観測をしている。あるいはドイツが活発で活動していますが、共同で航空機の観測ということで現場の上空の観測、あるいは北極海横断の日本からの航空機観測等をこれまで行ってきています。それから、海の上でのCO2の大気-海洋交換の観測もグリーンランド海、バレンツ海で10年ほどやってきたということがあります。それから、雪氷の観測では環北極域にさまざまな氷河、小規模ですが氷河があるので、そういうのを全体像をとらえるという意味での氷床掘削を行ってきたこと。それから、グリーンランドは深層掘削ができますので、国際的なプロジェクトのGRIPですとか、NEEMというものに参加して氷床深層掘削をしている。それから、海洋は、今はあまり活動していませんが、かつてはNorth Water Polynya、これはカナダの北西、あるいはNorth East Polynya、そういうところでのさまざまの観測をしてきたということがあります。
それから、陸上生態系は今も活発に観測していますが、スバールバル、あるいはカナダ北極域、氷河が後退したようなそういう場所での生態系の変化、あるいは生態系の環境への役割、そういう研究をしています。それから、そこまではいわゆる地球環境研究ですが、少しジャンルの違う超高層物理の観測も極地研究所はかなり盛んにやっておりまして、アイスランドでのオーロラ観測、あるいはさっきのEISCATレーダー観測等をやっているということです。そういうことで国際的な観測研究プロジェクトにかなり積極的に参加してきていること。1つミスプリで、SAOSと書いてある。「SAON」です。SAONという北極観測網の展開の観測、それから、IPYの観測に参加してきたということです。
国際シンポジウムとしては、IASC主催のシンポジウム等に参加するとともに、極地研究所としてもこれまで3回のシンポジウムをしてきましたが、数年前よりオールジャパンで進めましょうということで国際北極圏研究シンポジウムというものを共催してきているという状況であります。
どんな成果があったかというのは、ずらずらと書いておりますので見ていただければいいのですが、3ページのグリーンランドと書いてあるところの末端のミスプリで、「過去数十万」と書いてありますが、これは「過去十数万年」です。グリーンランドは十数万年以降の古い氷はないということです。大気、氷床、陸上生物、海の生物、あるいは超高層の現象のさまざまな成果を得ているということです。
具体的にうちのセンターでどんな規模での仕事をしているか。先ほどの共同研究プロジェクトが今動いていませんので、極地研究所の中では非常に小規模ですが、予算を捻出して進めているということで、センターそのものの運営経費としては約五千何百万程度、それから、実際の観測活動については、各研究者の持っている競争的資金で何とか食いつないでいくというか、活動しているという状況があるということで、たまたま22年度はここにおられる東さんの研究、科研費の基盤Sというのが通ったものですから、その部分の氷床コアの研究はかなり進むのではないかと期待しています。
それから、今後の展望としては、北極気候環境が今急変している。これは最初のごあいさつにも伺いましたが、そういう状況がある。それからもう一つは、国際政治の面で北極評議会、Arctic Councilというのに日本がオブザーバー参加を表明されたということもあって、北極研究に対する関心が非常に高まっているということです。そういう中で、国際的観測研究プロジェクトに積極的に貢献していく必要があるだろうと。それから、二国間協力の強化。あるいはアジアとの北極研究の振興。これは今、アジア極域研究フォーラム、AFoPSというAsian forum of Polar Sciencesという、そういうグループをつくって活動していますが、日中韓、それにインド、マレーシアが加わってやっていますが、こういうものにもかなり積極的に関与していかなくてはいけないと思っています。
そういうためには日本の中での北極研究というのはかなり個々では積極的にやっておられるのですが、国全体としての姿がもう一つ見えないのではないかということもありますし、全体が一緒になって力を合わせて進めていくという、そういう体制がまだ弱いという状況で、何とかその辺を進めていかなくてはいけないという問題意識を持っておりまして、そういう面から、例えば北極研究コンソーシアムというような、北極研究の連携体制をつくって北極研究を強力に進めていく必要があるのではないかということが1つです。
それからもう一つは、観測体制としては、これはもう一つパワーポイントの地図を見ていただければいいのですが、パワーポイントの2枚目のほうに北極をめぐる状況、これは既にご案内のような北極域の気温の急変、海氷の急変、そして国際的緊張という意味では排他的経済水域の拡大の申請、そういうものがあったりしてロシアが北極点に旗を立てたりいろいろなことがあります。そういうことを受けていろいろな議論が高まっているということですね。
そういう中で、環北極観測網を拡充していこうという動きがさまざまなところでなされていて、この図はIASOAというNOAAのグループがつくった図ですけれども、北極をめぐる各点に観測所を整備していこうという動きですが、少し小さいですが、地図に書いてあります青い五角形で書いたスバールバルを中心とした部分は極地研究所、現在、かなり積極的に活動していきますが、もっと北極という意味では広く活動していく必要があり、ここにありましたシベリア域、あるいはカナダ、アラスカ、そういうところの拠点も何らかの関与をこれからしていく必要があるのではないかという思いがあります。
それから、パワーポイント、最後の紙に書いてありますが、共同研究体制の拡充ということですね。先ほど申しました北極研究コンソーシアムという意味では、例えば極地研究所で共同利用機関でありますけれども、特に今、北極研究をかなり中心的に進めておられるもう一つの機関であるJAMSTECとも連携をしつつ、そのコンソーシアムの事務的な機能を果たすような、そんな立場があるのではないかと考えておりまして、これまでの活動、今までの活動は極地研究所、かなり以前は進めていたのですが、今少しその活動ができない状況がありますが、そこを何とか先ほどの予算要求の話もありますが、積極的なものにしていって、我が国のこういう北極研究体制に貢献していければと思っています。
最後につけたパワーポイントの図は、以前、申請をした科研費の新学術領域研究、「温暖化-過去・現在・未来」というものの、この図にあるような構想をしていたということで、課題としてこんなものを挙げているということで、これは各機関共同で進めていこうと、そういう計画だったということです。
以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
最後に北極研究コンソーシアムというご提案もありました。この辺のところはまた後から議論もあるかと思います。
では、引き続き、大畑委員からお願いします。
【大畑委員】 JAMSTECの大畑です。私のほうはパワーポイントの図12枚で話をさせていただきます。最初の表紙のところなのですけれども、左側、なぜ北極をやらなくてはいけないかという、その背景として近年の全球の気温の上昇、それから、北極域での非常に強い上昇が見られて、それに伴う現象が起こっている。それで、右側では海氷の減少、それから、陸域の凍土の温度上昇、そういうものが発生している。我々の研究の主たる背景は、その辺にございます。JAMSTECは2004年に独立行政法人になって、去年、第2期の中期計画が開始しております。そのときに地球環境関係のプログラムが再編されて、現在、北極域の環境研究にかかわっているものをその下にリストアップしました。
地球関係領域の中の7プログラム中、4プログラムが主に関与しています。一番大きいのが北半球寒冷圏プログラムということで、海、陸、それから大気の観測を主とした観測研究をしております。それから、物質循環ということで生態、温室効果気体等を扱っているところがあります。それから、地球温暖化予測でモデリング、氷床モデリング、そういうところでまた別の局面を研究しているグループ。それから、次世代モデル開発。それからもう一つ、領域とは異なって観測シミュレータセンターのほうでも作成しているモデルの改良で北極域を扱っているというふうに非常に多様なグループが北極域の研究に関与しております。総勢30名程度。それからもう一つの特徴としましては、一番下にIARC共同研究ということでアラスカ大のIARCと3つの分野で共同研究を実施しております。
次のページに一番大きい観測実施している北半球寒冷圏プログラムの概要、北極研究の背景というものが示されております。問題意識は皆さん持っていると思うのですけれども、海洋・雪氷・大気・陸域システム、それを総合的に解明して将来予測等に役立てるということで、下の左側の図の起こっている現象の幾つかの指摘を行っております。海氷の減少、海水の温暖化、それらの変化に伴う低気圧活動の活発化、それから、河川流量が長期的に増加しているという現象。陸では凍土の融解、氷河、それから積雪域の変化というものは顕著に起こっているということで、我々としてはこの北極海のみならず、周辺陸域を含めて、いわゆる年平均0℃等温線より北、いわゆる北半球の寒冷圏を総合的にとらえようということでやっております。その右側が主たる観測体制で、海と陸に観測ネットワーク、それから、海では航海を継続してやっております。
最初に研究基盤について話をしたいと思います。海洋の方法では、海洋地球観測船と称していますけれども「みらい」を98年以降運航して、13年間に9回の北極海航海をやってデータを積み重ねてきました。これは実際、国内の共同利用、それから、外国の方も乗船します。JAMSTECで航海を決めて公募して実施するということで、例としまして2009年、乗船課題が5課題あって、それから、乗らずに観測を委託するという形の7課題。それから、2010年もそういう形で、そういう意味では国内での海洋観測の共同利用を推進している唯一の機関と言えるかと思います。この「みらい」は、その左下のところに幾つかの外国の船舶の図がありますけれども、国際協調を図って北極海を満遍なく観測しましょうということで、一定の調整、情報交換がなされた上で観測が行われております。
次のページに移りまして、その「みらい」の観測とともに、個別にヨーロッパ、アメリカの研究機関と協力して実験的な観測を行っております。1つが北極海中央部でのブイを用いた観測。それから、バレンツ海での大気・海洋相互作用、その観測をノルウェーの船などに乗船して実施しております。それから、長期的な観測としては、かつてカナダと国際協力によって北極海西部の長期観測等を実施して、いわゆる海氷の急激な減少に関する一定の知見をここの繰り返し観測から得て、日本の北極海研究の成果として出しております。
次に研究基盤の陸域のほうをとりますと、これは以前のフロンティアというほうの流れで進んできたものでありまして、現在、4地点の水循環に関するスーパーサイトを維持しております。1つがティクシというシベリア、北極海沿岸の地点でして、陸面過程を中心に調査を行っている。さらに南の森林帯のヤクーツクというところでタワー2台を建てて、96年以降、継続的な森林での水・熱フラックス、雪氷観測を実施しております。さらに2002年からモンゴルの凍土南限域というところで流域をとって、そこでの水循環過程を調べております。それから、IARC研究の一環としてアラスカのフェアバンクスで今年から気候環境陸面状態の異なるところでさらに1点増やして、相互比較、総合的に北方陸域での陸面過程を解明しようということで観測網を張っております。
次のページに移りまして、雪氷というものはやはり北のほうでは重要な要素になります。雪氷に関しては、特にこの中期計画で力を入れ始めておりまして、少し北極海からは離れますけれども、亜熱帯地域での山岳雪氷、氷河観測を実施しております。それから、積雪は今のところ、さほど温暖化の影響を受けていないとされていますけれども、必ず今後変化するということで、積雪のトラバース観測を黄色いところ数カ所で実施しております。それから、凍土の分布型観測網を構築して地温の監視を実施している。それともう一つ、これらは先ほどのデータ、陸域のデータセットのデータアーカイブということで、ホームページに入っていただければわかりますけれども、データの公開に力を入れております。
それで、その次に研究基盤として観測とデータモデル開発があると我々は理解しております。データのほうに関しては、船舶データに関しては機構として整備していますけれども、残念ながら陸域データに関してはプログラム単位で保持しておりまして、現在のところ持続性に関して問題が発生しております。モデル開発、先ほど幾つかのプログラムで実施しているということがありましたけれども、それぞれのモデルの北極域の表現を改良するという形で、観測グループと協力して実施しております。それから、水文モデル、氷床モデルのような研究も行われている。
次のページに移りまして、ここ10年の主要な成果。多分、ここでは成果というより体制につながる話が主だと思いますけれども、北極海関係で海氷減少と海水温上昇の関係、それから、最近、バレンツ海での海氷変動が日本の気候に影響を与えるとか、幾つか重立った成果がこれらの観測をもとに出ております。それから、陸域関係でも、いわゆるシベリア凍土地温の上昇、それの原因としては水循環の加速が影響している。そういう成果も出しております。それとあとモデリングのほうでも、それなりの成果がJAMSTECから出ていると考えております。
最初に申し上げましたけれども、IARCとの共同研究というのがございます。これは1998年から始まっているわけなのですけれども、現在、3期目、2009年から2013年にかけての5カ年計画が始まっています。この5カ年ではほんとうの意味での共同研究を実施するということで3つの分野、全部で13課題について実施して、例えば海洋分野では相互補完的に海洋・海氷データを整備し、「みらい」のデータと、それからアラスカ大でとったデータを組み合わせることによって、よりクリアな北極海での変化を見ていく。そういう形での協力形態。それから、陸域分野ではアラスカ内に共同観測点を去年から設置し始めておりまして、そういう形での協力等々によってそれなりの成果が今後出てくるものと考えております。ただし、IARC共同研究には下に指摘したような問題点が幾つかあることも事実です。
最後の2枚は今後のことなのですけれども、JAMSTECとして北極域研究をどう考えているかということ、多分、ここで今後議論があるかと思いますけれども、経営陣と話をしたり、あるいは企画のほうでの考え方を聞く機会がありましたけれども、現在のところ、機構としては社会貢献につながる研究開発を重視する方向になりつつあります。それから、地球環境変動研究では、海洋及びそれにかかわる、関連した研究をしたいとする方向で実施する。研究基盤として幾つか考えられますけれども、それらの取捨選択が必要であろうということで、この辺はまだ機構としては検討段階だと思いますけれども、このような方向が示されております。
それから、最後に北極域環境研究に関する個人的な提案というのをつけさせていただいております。これ、一部は科学技術動向、去年発表させていただいた事柄で、そちらを読んでいただくと、よりよくわかるかと思います。やはり1番として今後の研究体制を考える場合、重要研究課題の抽出が必要であろう。それは何かというと、6月のIPYオスロという非常に大きな会議がありまして、今後の現在の北極域の問題、それから今後の問題、議論されたわけなのですけれども、顕著に変化が見られるのは雪氷である。海氷に代表されます。それから、氷河のほうが変化が大きいわけですけれども、それから凍土、それが変化していく。それによって水エネルギー循環・物質循環が影響を受けて、全体としてのシステムとして変化していく。それを北極域変動、それを全体的に理解するのは一番重要であろうという雰囲気を感じました。
それから、それらの変化が中緯度、全球環境に及ぼす影響の解明。これは当然、日本への影響、それから、世界的影響を考えていかざるを得ないという、多分、この2つが中軸にあるのではないかと私は考えております。それで、それを実施する上で、現在の国内の研究の体制を見ていますと、先ほど国立極地研究所から説明がありましたけれども、やはりそこが研究の中核を担うべきではないかと私は考えております。そのためには研究基盤と主要分野を整理して再編をする必要があろう。一例として、この極地研究、JAMSTEC、JAXAの一定の責任分担みたいなものを、この辺は議論があるところだと思いますけれども、いろいろなところを去年詳細に見てきて、こういうことかなという印象を受けました。
4番目として、先ほど山内さんからも話がありましたが、連携を強化する。いずれにせよ、連携を強化して全体として効率的・効果的な観測研究をしていくということが重要であろうと考えております。それらを実施していくためには、やはり基盤、人員、予算を充実させることが必要だろうと。個人的意見なのですけれども、最後にそれをつけ加えさせていただきました。
これでJAMSTECの紹介を終わります。
【安成主査】 どうもありがとうございました。JAMSTECの研究者も多いということで、いろいろな活動をやっているわけですが、いろいろな問題もあるということで、今、大畑委員から問題点、今後の方向も含めて報告をいただきました。
それでは、引き続きJAXAの五十嵐委員、お願いできますか。よろしくお願いします。
【五十嵐委員】 それでは、JAXAの五十嵐ですが、資料の3-4に基づきましてご紹介いたします。「JAXAの衛星観測ミッションと北極研究への取組み」と題しておりますが、まず、2ページにありますように日本の宇宙基本計画が2009年の6月に発行されまして、そこで5年間、あるいは10年を含めて展望した計画が出されておりまして、その中で衛星計画としましては、この下に書いてあります2つのAとBに大別されておりますが、上のほうは地域、Regional observationということで陸、海洋という観測ですが、主にALOSとか、リージョナルということではもう少し広い部分があるかと思います。それから、Bのほうがグローバルな環境ということで全球環境変動ということと気象観測という、こういうものを2つの系列として扱っております。
次の3ページに行きまして、GEOSSというこの世界の政府レベルでの協力によりまして、全球地球観測システムGEOSSを構築していこうという計画ですが、これにつきましては9つの社会利益領域というのがありますが、日本としてはこの災害、気候変動、水循環というところを重点的にということですが、ほかの部分も非常に関連が大きいということで、応用的な問題としてはすべてにかかわってくるところです。
それで、4ページですが、これはJAXAの観測衛星長期計画を2006年から2018年まで示しておりまして、ここで一番上が災害監視、資源管理に関するところですが、ALOSと、その後継機であるALOS2というところが、現在、運用中のALOSと2013年打ち上げ目標ということで、ALOS2が計画されております。それから、気候変動、水循環関係では、今現在、TRMMが降雨を観測しております。それから、Aquaが水関係の水利用を総合的に把握するということで動いておりまして、その続きとしましては、TRMMがGPMにつながっていく。それから、AquaがGCOM-W1、AMSR2につながっていくという計画です。それから、気候変動のところでは、GCOM-C1というのが2014年を目指して現在計画中です。それから、雲とエアロゾルの観測としてEarthCAREというのがESAとJAXAの協力で、現在、2013年をめどに計画しております。また、温室効果ガスにつきましてはGOSATが現在動いておりまして、CO2とメタンの計測を行っているところです。
次のページですが、地球環境変動観測ミッション(GCOM)といいますが、これは先ほどGCOM-Wという水循環変動観測衛星とGCOM-Cという気候変動観測衛星という、この2つを継続していこうという1つの計画といいますか、コンセプトになっております。それで、これは下の6ページに行きまして、こういったGCOMを使いますと、ここにあるような、現在、AMSR-Eで観測しているような海氷分布、あるいは海面水温ですとか、陸域の反射率、そういったものが総合的にデータが得られるということで、1つのClimate record dataという、WMOとか、そういうところでも言われておりますが、こういう気候をあらわしていくという総合的なデータセットがとれるようになってくるということになります。
それから、その次の7ページですが、これは北極周辺ということですが、積雪粒径と温度の分布ということですが、これは先ほどもありましたようなアイサール・ウェド・フィードバックですとか、そういうもののプロセスを理解するというところで継続的なデータが必要であるということで、現在、GCOM-CのSGLIでプロジェクトの中で計画を立てております。
次に8ページ、ALOS「だいち」ですが、これはもともと4つのミッションを持っておりましたが、その中の1つがRegional observationということで、地域をシステマティックにデータをとっていくということがありまして、その中には森林のマッピング、あるいは海氷のマッピングという広域にわたる地域をカバーするものをとっていくというのがありまして、その1つが次の9ページにありますが、PALSARを使った500メートルのブラウズモザイクプロダクトというのが1つありまして、これはIPYのときに期間限定ということで集中観測をやりまして、こういった詳細な海氷分布を出しましてAMSR-Eとか、そういうマイクロ波放射計のような中分解能、低分解能のもので頻度が高いものと相互に使うことによって正確にバリデーションができるということをやっております。
10ページにまいりましてGOSATですが、これは全球をカバーする5万6,000ポイントということで、地上のサイトではとれなかった部分をギャップを埋めて、しかも、高頻度で3日ごとにCO2、メタンを気柱量で出していくということで、現在、運用中です。
次の11ページですが、これはCO2の気柱平均の濃度、CO2濃度をあらわしておりまして、上が日本側のチーム、JAXA、NIES、MOEの処理の1つの例です。それからもう一つが、ほかのグループですが、やっておりまして、これはデータが違いますが、冬と夏というところもあります。ということで、これはまだ現在、プロダクトを改良中ですが、これがかなり高緯度のところまで出てきますと、CO2の吸収、排出といったところの解析ができるかなというところです。
次のページに参りまして全球降水観測ミッション(GPM)ですが、これはTRMMの後継機と考えておりますが、TRMMの場合は熱帯降雨観測ということで35度までの緯度しか撮れませんでしたが、今回のGPMでは65度まで上げておりまして、高緯度をカバーします。65度といいますと、ちょうどフェアバンクスのあたりまで通りまして、この2周波レーダーというもので降雨だけではなく、雪の降雪についても観測できるということで、これの実証というようなことが次の継続観測につながってくるところかと思います。
それで、次のページですが、丸い地球の周りに衛星がいっぱい飛んでいる絵ですが、これは気候変動、温暖化、水循環変動予測への貢献ということで、幾つかの衛星センサを統合的に利用しながら、気候モデルとまた連携を組んでやっていこうという絵でして、それぞれの衛星がそれぞれのプロダクトを出していくという計画です。
そして14ページですが、これが国際北極圏研究センター(IARC)における研究の話になりますが、1999年、アラスカ大学フェアバンクス校の国際北極圏研究センター(IARC)というものを日米でつくったということで、共同研究を開始しました。それで、北極圏の陸域、海域における気候変動、主にその影響の評価といったところが多いと思いますが、これを中心課題としております。それで、2004年のアラスカ大森林火災、また、2007年に観測史上最小を記録しました北極海の海氷の縮小ということがありまして、全球の気候環境変動との関連性、社会的影響などに関心が集まったところでして、現在、重要な研究課題として続いているところです。また、JAXAですが、関連する個別の研究領域を横断的に統合する研究計画を支援しまして、衛星データの提供、あるいはデータの解析用の計算機利用の環境を提供しております。
次のページに参りまして、15ページですが、現在、第3期の北極圏研究体制を組んでおります。これは2008年度から2010年度、今年度までになっておりますが、プロジェクトの中に研究部分としましては陸域の研究、海域の研究があります。陸域のほうのテーマが複数衛星センサ及び現地観測データを用いた北極圏森林火災の影響評価ということで、リーダーが日米、日本がHonma先生、アメリカがHinzmanさんとFukudaさん。それから、海域研究につきましては、テーマが複数衛星センサ及び現地観測データを用いた海氷変動、急激な変化、減少です。これの把握と海洋生態系へ影響評価ということで、リーダーが日本側がSaitoh先生、アメリカがHinzmanさんとWalshさんということで、現在、継続してやっております。また、システム、IJISと書いてありますのが衛星データの処理とか解析、可視化、数値モデル計算を行うための計算設備ということで、JAXAが整備したというところです。
次のページに参りまして、北極海氷・林野火災のモニターということですが、これは一般向けにWebサイトを公開しておりまして、日々変化する海氷、あるいは林野火災の分布について提供、データを外にオープンにしております。
17ページに参りまして、北極の海氷と林野火災データの提供にかかわる部分ですが、上のほうが林野火災モニタリングによるアラスカ消防局へのデータ提供ですが、これは初動としまして、JALのパイロットが通報して、MODISによる火災検知を行って森林、林野火災のモニタリングデータとして提供するということで、現地の消防活動に役立てまして、その結果、地上でどうなったかというのを逆にフィードバックしてもらって、火災検知のアルゴリズムを改良していくという、そういうループを組んでおりまして、また、現地の地域の社会貢献にもなっているという形です。
下の枠ですが、これは国際極年、IPYのときに観測航海支援の準リアルタイムデータの提供というのを行いまして、このときは、2008年のときには中国の「雪龍」という砕氷船、それから、北大の「おしょろ丸」、JAMSTECの「みらい」、こういった船が観測に入っていまして、それらに対してAMSR-Eの準リアルタイムデータを提供して、観測海域の決定、あるいは航海の航路の選定に利用されております。これはそれ以降、また続けております。
それで、最後ですが、我が国の北極研究の在り方ということですが、全球地球観測システムGEOSSの社会利用領域の1つである気候変動は、日本の主要な取り組み課題であり、環境影響の軽減、適応策等に必要な気候情報サービスの重要性が見直されているというところがあります。これはWCRPですとか、そういったWCC3ですとか、そういったところでも議論になっておりますが、宇宙機関のCEOSのグループの中でも非常に今、Climate essential valuablesという、そういう観測量を定義しながら横並びで評価してやっていこうという動きもあります。
また、次のポイントですが、JAXAの地球観測衛星ミッション、ALOS、GCOM-W、C、GOSAT、GPMなどにおきましても、北極圏、北極域は重要な地域規模の観測対象になっております。それで、北極海の海氷、大陸上の積雪・氷河・土壌水分、植生バイオマス、森林火災等の変動を観測して、観測データ・プロダクトの生成・提供によって、衛星と現場観測、現場観測データ、それと数値モデルとの連携を行いまして、比較検証、研究、利用という、そういった社会ニーズに貢献していこうと考えております。
以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
北極研究における衛星データの利用というのは非常に重要だと思います。またいろいろコメント、ご質問があるかと思います。時間が非常にタイトになっていますので、引き続き福田委員からIARCにおける活動、よろしくお願いします。
【福田委員】 ここに資料3-5というのは英文でたくさんあるのですけれども、これは最初にある今年の3月にマイアミで開催された「STATE OF THE ARCTIC」という全米全体の北極研究に関するミーティングで私がスピーチした内容を参考のためにつけました。きょうはこれを全部お話しするわけではありません。このSTATE OF THE ARCTICというのは、これは私たちにとっても参考になると思って、これを紹介したいと思います。これは5年に一遍、全米の北極研究者、あるいは研究機関、NSFとか、NOAAとか、NASA、USGS、すべての関連機関と研究者、大学人です。これが集まって4日間にわたって過去5年間の研究の総括をまずやりまして、それに基づいて次の5年間、どこを重点的に研究するかというのをここで議論する。毎年ではなくて、5年に一遍開催するという非常に重要な会議でした。
その初日に、この矢印で書きましたけれども、午後のプログラムで海外での活動について説明せよという要請を受けまして、フランスと私とロシア、この3カ国がおのおの研究ハイライトを説明したと。私が説明しましたのは、日本の北極研究全体はカバーできないので、IARCの玄関にあるような、星条旗と日の丸があるように日米が共同で設立したIARCにおける陸域研究の説明をいたしました。そのうちの次のページを開けてみますと、そこにありますようにプログラムというのは北極における森林火災と、それに対する衛星の活用という点に絞ってあります。それに至るまでの、なぜこういう研究テーマが抽出されたかということが何枚かありまして、1999年に、ちょうどIARCができた年にFrost fireという人工森林火災実験というのが開催されました。第1回のそのときに我々は参加して、いろいろ観測して、その結果を、知見を得たわけです。
その後、その流れの中で2002年から2004年に私がJSTのCRESTのプログラムで、今度はシベリアで同じような、ほんとうは火をつけたかったのですが、つけてはいけないと怒られまして森林を切って、切る前と切った後でどういうふうに炭素循環が変わるかというのを観測しました。しかし、もっと徹底的に大きな影響を観測したいと思っていましたら、そこにあります2004年に過去50年間で一番大きな森林火災がフェアバンクス周辺で発生しました。そして、その火災の絵の下のところにありますように、2005年から2010、今動いているプログラムがそこに書いてありますように北極の火災がどういうふうに変化するかというのを火災前から火災が起こっている最中、起こった後、その後の変化、それをライフサイクルのようにP1からP5というフェーズに分けてグループ研究をしている。
そのうちの1つが火災によって何が起こるかという重要な課題が永久凍土の影響です。そして、サイトを決めて、毎年行って集中的に永久凍土がどのような影響を受けていったかということを観測している。その辺が書いてあります。途中のところに土壌の水分の変化をどうやって検出するか。これはALOS、PALSARを使ってLバンドのマイクロウェーブを使って土壌水分を検出する実証をしようと。そのためにフィールド、ツンドラ地域を設定して、そこにあるようにリフレクターを置いておいて同期観測をJAXAに申請して、その飛んでくる日にちを指定して、その場所で待ち受けて実際に現場でさまざまなパラメータを観測し、それから、移動式のマイクロウェーブを持ち込んで、その実際の表面の反射化の特性をとらえる。それによって、ALOSのPALSARによって遠隔的に土壌水分を検出するアルゴリズムをつくろうと、そういうプログラムを実施しているところです。
それからもう一つは、大きな課題は、実はこれも衛星を使うのですけれども、虫害です。今、アラスカ地域、あるいはシベリアもそうですけれども、温暖化の影響を受けて、今まではそこにある虫害の影響という地域が限られていたのですけれども、それがどんどん拡大が来ています。特に影響を受けているのは、アラスカの一番南のケナイ半島というところで、著しい虫害が起こっている。その虫害の度合いの検出と、虫害が起こると木が立ち枯れして火災が起こりやすくなる。火災が起こると、その木が防御のためにヤニを出すのですけれども、そのヤニが誘引物質でまた虫を引きつける。そういう悪循環が起こる。
そのためには現地で一体何が起こっていて、それが将来どう予測できるかということを集中的に観測しようと。現地観測をして、あわせて火災の、虫害の影響を、これもALOSを使いまして、AVNIR-2を使いまして抽出して、どの地域が虫害の影響を受けているかをマッピングしようと。そして、抽出してみましたら、その抽出した場所が、その1週間後にそこで実際に火災が発生しました。ですから、火災と虫害の影響は非常に密接な関係がある。そういう結論を得ることができました。
そういったさまざまな、そこにサマリーと書きましたけれども、陸域、特にアラスカ地域や北極圏で今非常に深刻化している温暖化の影響の火災のインパクト、それがエコシステムにどう影響するか。あるいは水循環にどう影響するかをさまざまな側面から集中観測する。そのときには現地観測とリモートセンシング、衛星の活用を組み合わせる。そういうプログラムを実行しています。同じようなことを実は海でもやっていて、さっき五十嵐さんが説明したように、海氷が縮小することによって海の生態系にどういう影響が起こるかということを集中観測しようと。ですから、片方は森林火災によるエコシステムの影響とかいったこと、もう一つは海氷が縮小することによる影響、そういう海と陸で2つのトピックスを抽出して、現地観測及びリモートセンシングから問題を抽出していこうと。そういったことをやっております。
それで、将来の研究に関して非常に、この間のマイアミのSTATE OF THE ARCTICでヒントを得たのは、研究に関しては5年ごとに集中した総括をします。総括した上で、じゃあ、次の5年間、どこを重点的に研究を展開するかを5年ごとに徹底した議論をして、総括して、全員が合意の上で次の方針を決める。アメリカの場合にはNSFとか、NOAAとか、NASAは、みずからが研究するというよりは、研究の中心は大学です。大学の人たちがおのおのそこに申請を出して、大きなプロジェクトマネーをもらって展開する。それによって何が得られて何が不足するかということは、5年ごとに徹底した議論をした上で次の5年の方針を立てる。オールUSAという体制を常に考えている。ただし、その5年の間は毎年、AGUのミーティングのときに彼らが集まって、中間的な情報交換をしたり、評価を繰り返す。その繰り返しで次々に新しいプログラムをやるというのを展開していました。
今年の議論を聞いていますと、この最初のところにありますように、これ、あいさつを見ると、いきなり最初にあいさつに立っているのはNSFの長官です。それから、NOAAの長官とか、それから、Wieslaw Maslowskiというのは、これは上院議員の予算副委員長です。そういう人たちが集まってきて、これからの研究の重要性と、それから、何を展開するのか。ちょっと数字は忘れましたけれども、たしか年間予算が300億円とか、400億円ぐらいだと思いますけれども、それぐらいのお金を投下して北極研究を行う。重要視している。そういった意味ではやはり国として一体何をこれから推進するかということに関しては、よく議論した上で方針を立てていく。しかも、それをさらに中間評価して次のプログラムを立てる。そういったやり方は、私にとって非常に参考になりました。
以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。アメリカでの北極圏研究の進め方ということで、特に何年間に一度、総括をして、次に新たな計画を提案という非常に参考になるお話をいただきました。どうもありがとうございました。
引き続きまして、原委員から北大における取り組み、よろしくお願いします。
【原委員】 それでは、北海道大学における北極圏研究の概要ということで、北大の低温科学研究所の原からまとめて紹介させていただきます。先ほど福田さんと大畑さんから説明がありましたけれども、お2人、何年か前までは低温科学研究所におられたので、そのお2人の研究内容以外の点について、今回、ご紹介させていただきたいと思います。
1ページ目の2つ目のスライドなのですが、これは北大における広域北極域研究拠点ということで、北大の各学部、部局がどういったところで重点的に研究を行っているかということをあらわした地図です。時間の関係上、詳しい説明は省略させていただきますが、次、めくっていただいて3つ目のスライド、これは同様に北大における広域の北極域研究地点と、その研究内容を示しています。白抜きの丸が海氷の研究、そして薄い緑色が生物生産、そして薄い水色が気候変動とか、永久凍土、植生、そして物質循環、そして北大の1つの特徴としては、スラブ研究センターをはじめとする人文社会科学の研究も北極域研究の中に組み込まれているということになります。
次の4つ目のスライドなのですが、これは北大における広域北極域研究の大型のプロジェクトを表にしたものですが、まずIARC、JAXAとの共同研究ですとか、JAMSTECとの共同研究、そしてその他といいますのはJSTのCRESTの研究ですとか、あるいはCOEのプロジェクト、そういったものがここに含まれています。具体的な詳しい内容は次からご説明したいと思います。まず、私が所属しております低温科学研究所のプロジェクトなのですが、福田さんと大畑さんもここで一緒に研究を進めてきたわけなのですが、その森林火災と、あとシベリアの水循環、その辺の詳しいお話は先ほどお2人からご紹介があったばかりです。
まず、低温科学研究所、1995年に改組が行われまして、それ以降、最初にオホーツク海を中心とした海洋動態の研究、海氷動態の研究が低温研の機関誌用ですとか、CRESTの研究を中心に行われました。その次にオホーツク海を取り巻く陸域、北方林を中心とした陸域の寒冷圏区域の研究が行われました。これもCRESTですとか、幾つかの連携するCRESTのプロジェクトですとか、21世紀COE、そういったもので行われています。
その後、地球研の京都にある総合地球環境学研究所で行われたアムール・オホーツクプロジェクトというのがございます。これは低温科学研究所から研究代表がそこに出向して、ここでプロジェクトを行った。これは陸海空の相互作用プラス人間活動の影響も含めて全体を統合するような解明を行っていこうという目標で始まった研究プロジェクトで、今年の3月で終わったプロジェクトです。あと、今後の展開としては、上記(1)(2)(3)の統合モデルを目指して、人間活動の影響評価をさらに詳しく解析していこうということで、環オホーツク観測研究センターという低温研に設けられたセンターで、現在、展開されています。
まず、具体的な研究例としましては、次の6枚目のスライドなのですが、オホーツク海氷の実態と気候システムにおける役割の解明ということで、いわゆる若土CRESTと言われているものなのですけれども、これで解明されたことは、右上のグラフをごらんいただければと思うのですが、これが中層水の最近50年間の温度上昇のトレンドをあらわしています。赤いところが温度がたくさん上がったというところです。その赤い部分がオホーツク海のほうに集中しています。サハリンとカムチャッカの間のオホーツク海あたりに集中しています。
その下のグラフを見ていただければと思うのですが、これは赤い折れ線がオホーツクの風上の気温偏差で、青い折れ線がオホーツク海の海氷の面積です。少し注意していただきたいのは、オホーツク海の海氷面積、上に行くほどマイナスになっています。減少しているということを通常のグラフとは逆転してあらわしています。これはオホーツクの風上の気温偏差の上昇のトレンドと重ね合わせて見やすくするためということになります。こういったように気温上昇、そしてオホーツク海の海氷の面積の減少といったようなことが、減少がわかってまいりました。
その次にめくっていただきまして、ページ数がなくなっていますが、次のスライドなのですが、これは私自身がやったCRESTのプロジェクトなのですが、寒冷圏における光ストレスと北方林の再生・維持機構ということで、低温ですとか乾燥といったような寒冷圏独特の気象要因の中で北方林がどういうふうに天然更新して森林が維持されているかということを植物の生理生態学的な観点を取り入れて解明しました。
その結果、低温とか乾燥で増幅されるような、いわゆる光ストレスといったようなものが、そういったようなストレスが森林の大量開花ですとか、種子生産といった繁殖戦略にとっては非常に促進的な影響を与える。しかしながら、幼木の生存率というのは抑制する。つまり、生存率が下がるというような影響を与える。さらに落葉樹と常緑樹が混交している森林の形成といった生物多様性に関しては、そういったようなことを創出するようなファクターとして働いているという、そういったような気象要因から来る森林の天然更新・維持機構に対する制御のメカニズムの解明ということを行いました。
さらに、地球圏のアムール・オホーツクプロジェクトでは、その下のスライドなのですが、北東アジアの人間活動が北太平洋の物質生産に与える影響評価ということで、我々が最初に立てた仮説としては、その一番下に書いてあります字のところなのですが、北東アジア、極東シベリアの人間活動がその地域の森林、そして湿地に変化をもたらし、その結果、アムール川の流量、アムール川の動態が変動して、その結果、アムール川からオホーツク海に流れていく鉄の動態に影響を与える。その結果、北太平洋の生物生産、鉄というのは植物プランクトンの光合成にとって非常に重要な物質ですので、その重要な物質の鉄がどういうふうに人間活動の影響の結果、北太平洋で変動するか。
プランクトンの生産がどういうふうに変わるかということを我々最初に仮説として考えましたが、この仮説を約8年、7年のプロジェクトの結果、7割ぐらいは実証できたのではないか、さまざまな傍証を重ねまして、100%こうだということは、もちろん数学以外は言うことができないのですが、7割ぐらいは実証できたのではないかと考えています。こういったようなこれまでの研究成果を発展させる形で、低温研・環オホーツク観測研究センターでは、さらに陸-海-空の統合モデルの開発及び人間活動の影響評価のさらに詳しい解析を目指しております。
これで低温研のご紹介は終わりますが、次に北大の地球環境科学研究員の北極域に関する研究を紹介したいと思います。これは1つはGCOE、グローバルCOEで行っている研究なのですが、観測研究を通じて次世代を担う若い人の大学院の博士課程ですとか、留学生、そういった人たちの人材育成を行う。それを通じて長期観測網、100年の観測網を築き上げていこうという壮大なプロジェクトです。実際に観測しておりますのは、そこの写真にございますようにタイガ-ツンドラ境界のチョクルダ、そして平地タイガのヤクーツク、ユーラシア永久凍土帯の南限に当たるモンゴル、その3地点で実際の観測研究を行っております。
次にページをめくっていただいて、上のほうのスライドなのですが、人材育成のために、それではどういったような観測研究が行われているかということが、そのスライドに紹介されています。北極域の永久凍土の実態把握と生態系・物質循環の変化ということで、永久凍土地温の長期観測ですとか、表層の温暖化ガスの放出、そして吸収の速度、そういったような長期観測を通じて、このような北極域、永久凍土の実態把握と生態系・物質循環の変化に関する長期観測の研究を行っているということです。
次に、北大の水産学部が行っている研究に関してなのですが、その下のスライドです。IPYの参加クルーズ・北極海のクルーズが挙げられます。北極海、亜寒帯縁辺海における海洋生態系の気候変動への応答、現場観測で先ほど何回か出てまいりました「おしょろ丸」、そして「みらい」といった船による北極海のクルーズです。北極海洋リモートセンシングといったような研究もこれには含まれております。
【安成主査】 すみません、手短にお願いします。
【原委員】 すみません。最後のページなのですけれども、その他、北大が担当したIARCとJAXAの北極圏研究プロジェクトでは、これまでにご紹介いただいた幾つかの研究にも我々の北大の研究者が分担者として参加しております。最後に、最初にご紹介しましたように、北大の特徴としては北大のスラブ研究センターを中心とした北極圏に関する人文社会科学的な研究もそのように行われているということです。
少し長くなって申しわけありませんでした。以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。北大のいろいろな多彩な研究成果、活動を紹介いただきました。
最後に外務省のほうから報告をいただくということで、よろしくお願いします。
【日高海洋室長補佐】 では、外務省国際法局海洋室の日高と申します。ほんとうは室長の加藤が来る予定だったのですけれども、やむを得ない急用で来られなくなりましたので、恐縮ですけれども、補佐であります日高から説明させていただきます。
北極問題というのは、国際的に見てもさまざまな側面や論点を有しておりますけれども、外務省では国際法局海洋室が中心になって、特に北極評議会への対応を中心として取り組んでおります。
では、ペーパーに沿いまして説明させていただきます。北極評議会とは何かというと、先生方のほうが重々ご承知とは思うのですけれども、まず、ざくっと説明させていただきますと、1996年の宣言に基づいて98年に設立された国際フォーラムでして、政府間の協議体として設立しております。目的としましては、北極圏に係る共通の課題、特に持続可能な開発と環境保護という2つを大きなテーマとして掲げておりまして、それに対して先住民社会との関与を得つつ、北極圏諸国間の協力・調和・交流を促進することという目的のもとに活動を繰り広げているフォーラムでして、加盟国というのが、まず北極圏に領土を持っている8つの国、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国、この8つの国に固定されております。
それと、このフォーラムの特徴的なものとして、常時参加者と訳していますが、Permanent Participantsという人たちがいまして、これらの北極圏諸国、8つの国にまたがりつつ、大体がそうなのですけれども、居住している先住民団体というのがこのPPと略称しておりますが、PPになることができまして、今、6つなっております。ここに挙げたようにアリュート、アサバスカとか、グイッチン、イヌイット、RAIPON、サーミがなっております。北極評議会というのは少しおもしろい国際フォーラムでして、8つの国とこれらの先住民組織というのが常時参加している国等の団体という位置づけでして、それ以外の国や機関などはオブザーバーという形で参加ができることになっております。
今、オブザーバーの資格を持っている国や機関というのがあるのですけれども、次のところで挙げておりますとおり、今、国としてはフランス、ドイツ、ポーランド、スペイン、オランダ、英国がなっておりまして、そのほかに最後に注1、注2ということでつけましたけれども、9団体、11団体というのがオブザーバー参加をしております。オブザーバーというのが、北極協議会、Arctic Council、ACと略しますけれども、そのACの活動に貢献するとAC側が考えたものに対してオブザーバー資格というのが付与されることになっておりまして、今なっている6カ国や20団体というのは、そういった審査を経て認められたものなのですけれども、これに対して日本も昨年の7月にオブザーバー参加の申請をいたしました。
その申請の経緯を後で説明しますけれども、その前に、前後してしまうのですけれども、3番の各種会合というほうを見ていただきたいのですけれども、このACというのが国際フォーラムとして存在しておりまして、そこの中で定期的に会合がありまして、トップの会合が閣僚会合というのがありまして、これが2年に1回しか開かれません。議長国が順番に回っていって、今、デンマークがなっているのですけれども、その閣僚会合によって議長が交代するとなっておりまして、去年の4月に、当時、ノルウェーが議長国でしたのでトロムソでありましたのが最終会合で、次回会合というのが来年の5月に予定されております。これはグリーンランドでやる予定なのですけれども、それが2年に1回のトップの会合。
閣僚レベルというのはこれだけでして、次に位置するのが副大臣会合というのが、実は今年の5月、先々月、5月に初めての副大臣会合というのが開催されました。これはそれまで閣僚級の会合、政治レベルの会合が2年に1回だけだったのですけれども、その合間の年にも政治レベルで話し合いをしようということで始まったところなのですけれども、それがありました。これから恐らく隔年開催されていくのだろうと。その下にSenior Arctic Officials meetingというのがありまして、局長級だとか、各国ですとロシアとか、デンマークとかですと北極担当大使みたいな人がいますので、そういった人が集まってくる会合があります。これがおおむね半年に1回開催されます。それが前回が4月にありました。
その下にもっと日常的に活動を繰り広げているものとして、分野別作業部会、ワーキンググループというのがありまして、これが今6つございます。この3ページ目の(4)のところに挙げているのですけれども、漢字で見るとあまりわかりにくいのですけれども、Contaminantsのプログラムだとか、Monitoring and Assessmentだとか、Conservation of Arctic Flora and Faunaとか、Emergency Preventionとか、Environmentとか、あとSustainable Developmentだとか、こういったものに特に注目して活動するものというのがあります。これは会合の開催についても、その作業部会それぞれが決めることができる形になっております。
ここでもとに戻らせていただきますけれども、我が国が今、オブザーバー参加を申請しております。これが最初は去年の4月に副大臣から南極条約の締約国会合との合同部会があったときに表明したのですけれども、我が国としてACのオブザーバー参加に関心を有しているというのを公式に表明いたしました。それが4月だったので、すぐに閣僚会合が予定されておりまして、ノルウェーだったのですけれども、余りに近過ぎてそれは出ることができなかったのですが、そこでノルウェーからデンマークに議長国が交代した後に、引き継ぎ作業などあっていろいろ聞いていた後に、7月に文書としては公式にオブザーバー申請いたしまして、今、その申請の承認待ちの状態です。
閣僚会合が2年に1回しか開かれないですけれども、オブザーバー参加を認めるかどうかというのが、その閣僚会合でしかなされないというふうになっている関係で、一番早くても来年の5月に予定されている閣僚会合で認められるという見込みで、その予定に向けて頑張っているところでございます。ただ、このオブザーバーというのは、6カ国と20団体しかなっていないのですけれども、あともう一つ、アドホックにオブザーバーで参加するということもできまして、我が国もオブザーバー申請をした後にいろいろな会合にアドホックに参加させてくださいと一々申請をして参加してきて実績を積んでおります。
2枚目の真ん中に我が国の参加実績ということでまとめましたけれども、これはみんな私が出てきたのですが、去年の11月にSAO会合、デンマークであったのを皮切りに、あとはそのときにワーキンググループにも出てきました。それから、2月にももう一つワーキンググループ、これはJAMSTECの大畑先生にも出ていただきました。それから、4月にまたSAO会合がグリーンランドでありまして、5月に副大臣会合がありました。
副大臣会合のときには、これも初めてだったのですけれども、インフォメーション・デーと称しまして、オブザーバーになっている国や機関及びオブザーバー申請中の国々の北極の関連の活動の紹介をするという日が設けられまして、そこでもJAMSTECの大畑先生に徹底いただいて、我が国の研究活動について紹介をしてまいりました。このようにしまして実績を積みつつ、来年の閣僚会合でのオブザーバー承認に向けて活動しているところでございます。この申請をするに当たっても、我が国の活動の紹介のペーパーを出したりだとか、あとは今も申し上げたとおりに会議に出ていって紹介してもらったりとかいうことで、文部科学省を通じて極地研だとか、JAMSTECだとかの皆様にいろいろ協力いただいておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いしたいと思っております。
以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
北極評議会のご説明、それから、現在の経緯のご説明をいただきました。これできょう予定されていた関係機関等のご報告は一応終わりました。時間は非常に少ないですが、これまでのご説明に関しまして、ご質問とかご意見、非常に短いですが、特にいろいろ事実関係でどうかというようなことも含めて、5分から10分程度しか時間がありませんが、もし何かありましたらばご発言をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
【山内委員】 1ついいですか。
【安成主査】 どうぞ。
【山内委員】 質問、コメントと両方なのですが、JAXAでご紹介いただいた衛星、いろいろ当てていただいたのですが、北極研究の在り方の18ページというところですが、書いていただいて、衛星ミッション、ALOS、GCOMその他書いていただいたのですが、その前にご紹介いただいた中で出てくるEarthCAREというのがあるのですけれども、実は私もこれに少し関連して、雲・エアロゾルの観測なのですが、特に北極域は熱収支その他に海氷との絡みも含めて、その雲の分布というのは非常に重要な課題なのですけれども、ご存じのように赤外とか可視の普通の画像の観測ですと非常に雲が見当てにくいんですね、海氷の上の雲というのは。そういうことで、アクティブなライダー、あるいはレーダーを積んだ衛星、今、アメリカ、ヨーロッパは少しずつ上がっていますが、日本のEarthCAREというのはそれをそろえて観測する計画だということで、極域にも非常に役立つ衛星ミッションだと思っていますので、ぜひそういう位置づけをしていただければと思っています。
【五十嵐委員】 どうもすみません。
【山内委員】 実は南極のほうでも昭和基地で、きょうはお話ししていませんけれども、非常に大きいレーダーをつくる予定があるのですが、そういうものとこの衛星の観測、同期させた計画もしていますし、北極域でも今さまざまな地上からのリモセン、随分やられようとしていまして、さっき超高層の分野でお話ししたEISCATというレーダーがあるのですが、実は将来的にはもっと下のほうにもその視野を伸ばそうとしていて、そういうものとの同期的な観測も期待できるので、ぜひそういう位置づけをしていただければありがたいと思います。
【五十嵐委員】 少し入れ忘れてしまいまして、EarthCAREも非常に重要で、CPR、雲とエアロゾルと降雨の関係、降雪の関係というのがありますので、それは北極でも重要な観測になると思います。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
あとまだ次回、来週ですが、今回、説明し切れなかった関係機関の取り組みについても説明の時間もありますので、またそこでさらに議論を深めていただきたいと思います。
この最初に局長のごあいさつにもありましたように、この北極研究の在り方、これがこの作業部会の一番メーンの議題です。特にサイエンスとして何が重要かという議論、これは私、非常に重要だと思いますので、もうきょうは時間がありませんので、ほんとうの頭出し的なことになると思いますが、もう次の議題の3番目の北極研究の在り方について、これまでの各機関の取り組みに絡めたご質問も含めて、自由な、ほんとうにあと10分ぐらいですが、ブレーンストーミングをお願いしたいと思います。最初にというわけではございませんが、せっかくアラスカから赤祖父先生が来てくださっていますので、もし何かコメントでも、ご意見がありましたらお願いします。
【赤祖父IARC名誉教授】 3分だけください。私は長年、日本の北極圏研究を外から見てまいりました。皆さん個々には非常に立派な研究をされていますので、これを北極圏研究として総合し、進展させるためには何か新しい組織が必要ではないかと思い、文科省の皆さんとお話ししてきましたが、このミーティングができたこと、私個人、非常に嬉しいわけでして、開発局の藤木さん、それから、谷さんに非常に感謝しております。
これから皆さんが十分情報交換された後に、日本の将来の北極圏研究をどのように進めるように話し合って、特に皆さんが全体で日本としてユニークなプロジェクトを立てていただければ、私としては非常に嬉しく思います。私はこの組織については、これ以上何も申し上げることがありませんので、皆さんの北極研究のご成功をお祈りしたいと思います。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
今回、北極圏の研究、いろいろな研究が既に確かに行われている。しかし、これを統合した形で、特に現在、現時点で何をすべきかという、特に温暖化の問題が非常に大きいかと思うのですが、それに絡めて特にどの辺の研究をやっていく必要があるか。そのための連携、取り組みの在り方はどうすべきか、そういう議論をここで、限られた時間でインテンシブに行わねばならないということだと思いますが、あと残り5分から10分程度ですが、来週の議論に向けて幾つかのご提案もありましたので、例えば北極圏コンソーシアムというものがまず必要ではないかという話、それから、特にその研究のプロセス、アメリカがやっているような形のレビューと新たな提案、そういうサイクルを考えていくという、これも私も非常に重要かと思います。その辺でどうでしょうか、何かご自由なご意見。
福田さん。
【福田委員】 今回のマイアミでのミーティングで、じゃあ、次のアメリカは5年間で何をねらっていくのか。一言、言います。共通した認識として北極における環境の脆弱性でした。非常に脆い。特に人的な活動、Human dimensionによる影響を受けやすい。それは温暖化も含めて。そういったところをもっと統合的にやるべきではないかという意見がたくさん出ていました。それはご存じのように資源開発の問題ですとか、さまざまな問題を絡めて、認識としては北極環境というのは非常に脆いものである。そういう認識に立った立場での研究を推進しようというところに落ち着いていました。
以上です。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
北極の環境というのは非常に脆いという話、これに関しては、私、座長ですが、個人的に意見を言わせていただきますと、特にアメリカの場合はアラスカというのが非常に大きいと思うのですが、日本の場合はアジアでユーラシア大陸、シベリアを含めてそこの問題というのは結構大きいかなと。特にもう一つ、シベリアがどうなるかということは、特に今、日本の気候への影響ということも密接に絡んでくるのではないかなという気がしています。その辺、ご存じのように、いわゆる暖冬というのが1980年代から続いているわけですが、現にシベリア高気圧が弱くなっている。こういったことも非常に大きな意味での北極圏研究の一環として重要かなという話があるかなと私は個人的には思っていますが、いろいろ皆さんご意見あると思うのですが、どうでしょうか。
きょうはわりと観測ベースの話が多かったと思うのですが、特に温暖化予測という話になりますとモデルが重要です。特に極域のモデルのいろいろな問題、不確定性とか、この辺も結構大きな問題。それに絡めて、逆にどういう観測をせないかんかとか、モニタリングをしないといけないか、そういう問題もあるかと思いますが、何かそういう、例えば阿部委員などは何かご意見ないですか。
【阿部委員】 モデルの話は――きょう、少し声が枯れてしまってすみません。まず、観測に関してでもですが、先ほど脆弱性ということで、陸域、海氷そのものの脆弱性もありますけれども、それでユーラシアが日本にとって近い関係にありますが、ほかに遠方への影響として海水準というのがあります。きょうはそのことに関して観測がどのくらいされているのかなということを聞いていたのですけれども、やはり氷床という言葉が出てくることはくるのですけれども、実際に観測という面では日本はこれまでやってこなかったというのが実際のところだと思います。ちょうど先週、IPCCのワーキンググループ1の作業に先立ちまして、最初のワークショップとしてIPCC関連のいろいろな課題があるのですが、ワークショップとして特別にCレベル& ice-sheet instabilitiesというのに出席してきました。
これに関して、ice-sheet Instabilityというのは特に不確実性が大きいということで、あえてそういうふうなワークショップをほかとは別に行ったということで、次のIPCC第5次報告では大きく取り上げていることになっているのですけれども、その点に関して日本としてどう取り組んでいくのかなというのは、私は気になるところです。私自身は、モデルのほうから今紹介が挙がりましたように、全球モデル及び氷床モデルを使ってできることをやっているのですけれども、それに比べて観測の部分はグリーンランドに行ってコアを掘ってはいますけれども、氷床コアを掘ってはいますけれども、過去のシグナルオイルを拾おうということはしていますけれども、過去と現在をつなげる、あるいは将来をつなげるのに、そして私たちモデルもやっておりますけれども、その部分のモデリング及び氷床の監視、観測という面では、非常にほかの分野に比べて、日本での取り組みはおくれていると感じております。
今回のこの会合がどういうふうに進んでいくのか、私は経験不足でわからないのですけれども、現在までの実績があるところ、あるいは実際にもう動き出しているところを強化して、ほかの部分はある程度選別して、強化するところにどんどん補強していく方向に行くのか、それとも今まで取り組んでいなかったようなところにも世界からの要請があれば取り組むという方向で行くのか、どういうふうな力の配分を文科省として考えておられるのか、あるいはそれをどうやって決めていこうとしているのかというところに私は個人的に興味があります。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
今のCレベルへの影響ということと氷床、北半球、南半球、南極とグリーンランド、両方ありますけれども、今の話はもちろん両方込みでという話ですか。
【阿部委員】 ええ、もちろんそうです。しかし、グリーンランド及び氷河、北半球氷河の影響もかなり無視できないレベルになるということが、急速に情報が増えてきておりますので、その点についてですね。
【安成主査】 はい。わかりました。
時間がもう12時になりましたけれども、最後に北極圏、これから連携研究を進めていくためにコンソーシアムというのが山内委員から、きょう少し提案がありましたけれども、もう少し、多分、来週の議論にも続くと思うのですが、具体的に大体どんな形というのは、何かイメージございますでしょうか。
【山内委員】 そうですか。将来的には、もっと研究機関の整備、あるいは組み直しとかいろいろなことがあると思うのですが、とりあえずは今皆さんが取り組んでおられる形がそのまま継続というか、そういうものを母体に日本としてのまとまりがもう少し見える形をつくっていくのがまず課題ではないかと思って、そういう意味では、極地研究所は共同利用機関だから、ある意味でそういう制度になっているわけですけれども、あえて北極研究ということでもう少し目的を明確にしたくくりをつくって、日本のある意味でオールジャパンの集まりでこれからを議論していく。例えばこの会は、ある意味でそういうものの前のプレフェーズの会議であるような気がするんですね。
ですから、こういうのをもう少し実務的といいますか、定常的に進めていけるような、そういうある意味で会議、そこで例えばこれからの北極研究をどう進めていくかを議論して、計画づくり、あるいは予算をつくるとか、そういうものを進めて、かかわっておられるそれぞれの方の集合体として何か研究がもっと進められるような、そういう体制をつくったらいいのではないかというところまでしか考えていませんけれども、それで、極地研究所、あるいはJAMSTECなどは、これまでのいきさつもあって、その辺の事務局的な取りまとめの役割を担っていったらどうかなということを考えたところです。
【安成主査】 わかりました。
大畑さん。
【大畑委員】 去年の極地研とJAMSTECの連携の話で幾つか議論したのですけれども、必要性はあろうと。それに対して大学等ほかの機関の方々がどう考えるか。この会でできたら、そのコンソーシアムについては少しイメージを上げたほうがいいのではないか。そういう必要性があるのか、それぞれの研究グループはどういうものを求めているのか、その辺少し今後できたら議論していただけたらなと思います。
【安成主査】 今の件に関して――どうぞ。
【福田委員】 これもまた参考ですけれども、アメリカの例ですとアーカスという組織があります。これはまさにコンソーシアムの事務組織です。ご存じのようにアメリカは大学が中心に研究を推進していますので、ファンディングソースはNSFとか、NOAAとか、それから、すべての決定権の権限はArctic Research Councilというグループがあります。これは大統領が直接任命する極めて力を持ったところです。そこがすべてを決定して、その傘下に事務組織としてアーカスというのがありまして、そのアーカスでいろいろな事務連絡をしたり、予算配分の決定とか、それを推進する。ですから、私はそこが1つのひな形ではないだろうかと考えています。
【安成主査】 どうもありがとうございました。
この辺の議論をまた来週引き続きということになると思いますが、私、個人的に考えますと、まずサイエンスをそこで議論するというのは非常に大事で、その場合に確かに福田委員が言われたように、例えばこれから5年とか、場合によっては10年ぐらいで特に何をやるのが重要か、特に日本がすべきこととしてですね。それを一種のプライオリティーみたいな議論、当然、要るかと思うんですね。それを含めたコンソーシアム的な活動というのは必要かなという気はいたします。
もう時間が予定より大分過ぎましたので、ここらで一応、きょうの議論は打ち切りということにしたいと思います。それでは、また来週、引き続き議論をするということで、ぜひ来週もできるだけ多くの方のご参加をお願いします。
それでは、事務局のほうにまた移したいと思います。よろしくお願いします。
【谷環境科学技術推進官】 どうもありがとうございました。
本日の議事録につきましては、後日、事務局からメールで先生方にお送りさせていただきます。修正等ございましたら、ご指摘をいただきたいと思います。それを取りまとめまして、主査とご相談をさせていただいた上で公開をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、旅費手当等、確認について1枚紙をお配りしておりますので、お帰りの際、事務局のほうへご提出をお願いしたいと思います。本日はまことにありがとうございました。
【安成主査】 それでは、本日の会議はこれで終わりとします。どうもありがとうございました。
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