資料2−4

地球観測衛星技術分野、災害監視衛星技術分野の取組

地球観測衛星技術

 本技術は、災害監視衛星技術とともに衛星観測監視システムを構成する技術であり、平成27年度までに複数の衛星群によるシステムを構築し、気候変動・水循環変動等の解明に貢献する全球の多様な観測データの収集・提供を行うものである。

(1)陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の運用

必要性

 Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)と可視・近赤外光学センサ(AVNIR-2)を用いて、植生や森林の変化を広範囲に長期に渡って観測することにより、森林等の整備・保全、生物資源の持続的な利用、生物多様性の確保に貢献する。

効率性

 環境省(植生分布把握)、農林水産省(農耕地把握)による行政利用との連携のみならず、地域固有の情報との融合により地域組織の実際の活動に結びつくことを目指し、地方自治体等との連携を行っている。

有効性

 定常観測運用を継続実施中。

  • −地球全域の植生分布に関する高分解能データの取得・提供。
  • −環境省(植生分布把握)、農林水産省(農耕地把握)等への画像データ提供。
  • −全球規模の森林管理や炭素循環・炭素量変化モニタに必要となる、森林モザイク図等の高次成果品の試作検証。

などにより、社会に貢献している。また。世界各地のALOSノードへのデータ配付を開始し、世界中でALOSデータの利用が進みつつある。

(2)温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の開発・運用

必要性

 IPCCにより人為起源の温室効果ガス(二酸化炭素及びメタン等)が地球温暖化の主要因であると発表された。GOSATによりこの温室効果ガスの全球濃度分布を宇宙から観測、測定し、吸収排出量を推定し、国の温室効果ガスに係わる環境政策に寄与するとともに、京都議定書の第一約束期間における国際貢献を果たす。

効率性

 GOSATは、環境省及び国立環境研究所との共同プロジェクトであり、主としてJAXA(ジャクサ)が観測センサ及び衛星の開発、打上げ、運用、データの低次処理・校正、環境省が観測センサの開発(JAXA(ジャクサ)への契約)、温室効果ガス吸収排出状況の検証等への活用、環境研がデータの高次処理及び検証を行っており、効率よく分担している。また、GOSATサイエンスチーム及びユーザとの調整を高頻度に実施している。

有効性

 平成20年度の打上げを目指し、引き続き衛星及び地上設備等の開発を継続中。

  • −二酸化炭素とメタン濃度の全球的分布を、二酸化炭素1パーセント、メタン2パーセント(ともに相対精度)以下の精度で計測する。
  • −これにより、二酸化炭素カラム濃度の全球マップを作成し、週・月単位で変動状況を把握できるシステムを確立する。

これらから、京都議定書に基づく組織的観測の維持及び開発の促進に貢献するとともに、京都議定書第1約束期間(2008〜2012年)における先進国の排出量削減状況の把握や森林炭素収支の評価等の環境行政に貢献する。

(3)全球降水観測/二周波降水レーダ(GPM/DPR)の開発・運用

必要性

 国際協力計画であるGPM計画は、気候変動が降水に及ぼす影響、地球規模での水循環メカニズムの把握に貢献するため、全球降水の高頻度・高精度な観測を行うものである。JAXA(ジャクサ)は、NASA(ナサ)が開発するGPM主衛星に搭載する二周波降雨レーダ(DPR)を開発し、降水推定精度の向上に貢献する。

効率性

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との共同プロジェクトであり、センサの開発を適切に分担している。

有効性

 平成23年度に二周波降雨レーダをNASA(ナサ)に引き渡すべく、センサの開発を継続中。GPM国際ワークショップ及びGPM利用検討委員会を開催し、利用・研究者との情報交換を行っている。

  • −地球温暖化、気候変動
     気候変動に伴う降水量、雨域の変動の詳細なモニタリング
  • −天気予報・台風予想進路の精度向上
     準リアルタイムでの数値予報システムでの利用により、天気予報・台風進路予測の推定精度が向上
  • −洪水予測、河川管理、水資源管理
     高時間分解能の降水モニタリングによる洪水予測システムでの利用

などにより、GEOSSの9つの社会貢献分野のうち、主に水循環管理分野において、社会貢献できる。

(4)地球環境変動観測ミッション(GCOM)衛星の開発・運用

必要性

 地球環境変動観測ミッション(GCOM)計画は、気候変動・水循環を全球規模で継続的に観測する衛星システムを構築し、気候変動予測精度の向上、気象・海況の把握等での利用に資する。

効率性

 有識者によるGCOM総合委員会を組織し、ユーザとの調整を適切に実施している。主な利用者である気象庁、漁業情報サービスセンター、海上保安庁、気候変動研究者とデータ利用等について連携している。

有効性

  水循環変動観測衛星(GCOM-W)気候変動観測衛星(GCOM-C)の、衛星の開発、センサの研究等を継続実施中である。GCOMシンポジウム等を開催し、国民の理解増進を図った。GCOM-Wは平成23年に打ち上げ予定。

 GCOM-Wは高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)により海上風、水蒸気、降水、海面水温、海氷密接度等を観測、GCOM-Cは多波長光学放射計(SGLI)により雲、エアロゾル、陸域植生等を観測。

  • −GCOM-Wシリーズによる長期にわたる継続的な観測により、気候変動や温暖化に伴う積雪域・海氷域の減少、水蒸気量の増加、海面水温上昇など、主に水に関する実態把握と気候予測モデルの比較・検証
  • −GCOM-Cシリーズによる長期にわたる継続的な観測により、気候変動予測の誤差要因であり1温室効果をもたらす生態系によるCO2(二酸化炭素)の吸収・放出量2冷却効果をもたらす雲・エアロゾルの分布量を観測

などにより、GEOSSの9つの社会貢献分野のうち、気候変動及び水資源管理の2分野に貢献できる。

(5)雲エアロゾル放射ミッション/雲プロファイリングレーダ(EarthCARE/CPR)の開発・運用

必要性

 雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE)計画は、気候変動予測の主要誤差要因であり、地球温暖化に対する冷却効果を有する雲・エアロゾルについて3次元分布を観測し、相互作用を含めたその地球放射収支に関するプロセスを明らかにすることを目的とした日欧の共同計画である。JAXA(ジャクサ)は、ESA(イサ)の開発する衛星に搭載する雲プロファイリングレーダ(CPR)を開発し、貢献する。

効率性

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との共同プロジェクトであり、センサの開発を適切に分担している。また、EarthCARE委員会を組織し、ユーザとの調整を適切に行っている。

有効性

 平成24年度の打上げを目指し、レーダの研究を継続している。
 気候変動及び衛星観測の未来シンポジウムを開催し、国民の理解増進を図った。

  • −雲エアロゾルの鉛直分布および大気上端での放射収支を全球規模で観測する。
  • −観測結果から、雲エアロゾルの3次元分布とそれらの相互作用を明らかにし、気候変動予測に用いられている数値気候モデルについて、気候推定精度の最も大きな誤差要因であった、雲エアロゾルについての温暖化に対する影響力評価の誤差低減を実現する。
  • −これにより、数値モデル間の予測差を劇的に改善し、正確な気候変動予測を行えるようにする。

などにより、GEOSSの社会貢献分野のうち、気候変動分野において、社会貢献出来る。

<推進体制>

 以上の技術開発の実施体制については、JAXA(ジャクサ)に理事長直属の宇宙利用推進本部の下に衛星ごとのプロジェクトチームが設置され、明確な責任関係に基づいて研究開発が行われる。
 研究開発に当たっては、情報伝達と決定の迅速化を進めていくこととしているほか、観測データの処理、解析、提供、及びデータ利用者との連携について、宇宙利用統括及び宇宙利用国際協力統括が責任を持って実施することとしている。

災害監視衛星技術

 本技術は、複数の衛星群により高頻度かつ昼夜・天候を問わず災害監視・地殻変動監視等を行う技術、また、GPS補完・補強などの衛星測位基盤を確立するための技術である。我が国の防災機能を強化するため、国際災害チャータへの参加や国内外の防災関係機関等との協力を通じて、災害監視における衛星技術の有効性の実証を行う。

(1)陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の運用

必要性

 平時における観測データを蓄積し、これを発災が予測されるあるいは発災後のデータと比較することで、災害の予測及び被災域の特定等を行い、防災及び被災者の救護、被災後の復旧などに役立たせる。宇宙からの観測により、日本のみならず、アジア、オセアニア地域を初めとする世界各地での災害に対応することが可能である。

効率性

 関連省庁、防災機関、地方自治体等と連携し、「だいち」の観測データの利用実証実験を継続実施中である。

有効性

 平時は、世界中の陸域について常時観測を行い、データを蓄積している。また、内閣府、防災機関、国際災害チャータ等の要請に応じて災害時の緊急観測を実施し、防災あるいは被災状況の把握等に貢献している。昼間の可視データによる詳細な観測に加え、レーダを利用したセンサ(SAR)により荒天時、夜間あるいは危険地域の観測が可能であり宇宙からの観測による効果を上げている。
 今後は、「だいち」の観測データの利用実証実験を継続し、災害予測、災害状況把握等の判別技術の向上を図り、社会に貢献する。

(2)準天頂高精度測位実験技術の実証

必要性

 災害発生時は、建物が倒壊したり、道路が寸断されたり、あるいは山間部などでは被災者の位置把握が容易でない場合がある。これに対し、高仰角で移動する準天頂衛星による測位を用いれば、山間部やビルの谷間などでも正確な位置測定が可能となる。

効率性

 総務省、国土交通省、経済産業省と連携し、開発・実験を行う。

有効性

 平成21年度の打上げを目標とし、衛星の開発等を継続実施中である。

 衛星測位は、安全・安心、セキュリティを含めて様々な利用の途が開かれており、無償で提供されている米国のGPSの民生利用信号を補完する機能が国の役割であり、さらに、米国のGPSシステムの補完、補強により、GPSシステムだけでは都市部や山間地など利用可能な衛星が不足しがちであるが、準天頂衛星システムによってより広範囲でより正確な位置測定が可能となり、災害発生時の被災者の位置特定、災害救助隊の迅速な派遣、救援物資の円滑な供給、被災地のライフライン復旧の効率化等に貢献できる。

(3)災害監視衛星

必要性

 ALOSの設計寿命が平成22年度までであるところ、その観測を継続するための衛星として災害監視衛星が必要である。ALOSが1機であるため、同一地点の観測には数日を経なければならないところ、複数の衛星群により観測を高頻度で行うことにより、迅速な災害情報の提供が可能となる。

効率性

 内閣府を中心とする防災に関する省庁連絡会を定期的に開催し、関連省庁、防災機関、地方自治体などのユーザとの連携を諮るとともに、ALOSによる実証実験結果等を研究開発計画に反映することで効率化を図る。

有効性

 平成24年度の打上げを目指し、センサの研究等を継続実施中である。

  • −ALOSと比較して高性能なセンサにより広範囲を高頻度に観測することにより、平時および災害時の観測データを国や地方自治体の防災情報システムに対して提供することで、防災活動や災害対応における定常的な利用に貢献する。
  • −ALOSで確立した国際災害チャータやセンチネルアジアへの貢献を継続するとともに、衛星性能・機数・頻度等の向上に伴い、貢献度を拡大する。
  • −センチネルアジアに関して、衛星観測の防災・災害対応業務適用に関する国内の実証結果をアジア防災センターを通じてアジア各国に提供することにより、アジアの災害観測における主導的地位を確立する。

などにより、安全・安心な社会の構築に貢献出来る。

<推進体制>

 以上の技術開発は、地球観測衛星技術と同様に、JAXA(ジャクサ)理事長直属の宇宙利用推進本部の下に設置された衛星ごとのプロジェクトチームが行うこととしており、明確な責任関係に基づいて研究開発が行われる。
 研究開発に当たっては、観測データの処理、解析、提供、及びデータ利用者との連携について、宇宙利用統括及び宇宙利用国際協力統括が責任を持って実施することとしている。