4.我が国における放射性固体廃棄物埋設処分に係る放射線防護に関する基本的考え方
4.1 放射線防護の最適化における線量基準
○放射性固体廃棄物埋設地に起因する公衆被ばく
→線量限度1ミリシーベルト/年が適用
(原子力施設、放射性同位元素使用施設等と同様)
○放射性固体廃棄物埋設地の管理期間終了後においては、
- 管理期間中に行われるような埋設地の管理はなし
- 主に埋設施設の構造・設備や周囲の土壌、地層による放射線防護
- 管理期間終了後における埋設された廃棄物に起因する公衆の被ばくを前提にして、あらかじめ計画段階で計画しておくことが必要
→管理期間終了後における線量基準としては、「線量拘束値」の適用が適切。
○そのレベル値は、
- ある個人が受ける線量に影響を与える施設(埋設処分場、原子炉施設等)は限定的であると考えられる。
- 国際的な整合性(Pub.77)
<結論>
○我が国における放射性固体廃棄物埋設地の管理期間終了後の公衆の線量基準
- 線量拘束値 300マイクロシーベルト/年を上限とした値とすることが妥当。
- なお、防護の最適化の観点から、公衆の被ばく線量が設定された線量拘束値を下回りさえすれば放射線防護が十分であるとは限らず、当該線量が合理的に達成できる限り低くなるよう考慮が払われるべき。
4.2 長寿命核種による潜在被ばくを考慮した基準
(1)自然過程に適用する基準
- 自然過程における潜在被ばくの発生確率
→定量化は困難
↓
<結論>
○線量/確率分解アプローチ を用いた線量による基準を用いることが基本
- 線量拘束値: 300マイクロシーベルト/年
- リスク拘束値: 10‐5/年オーダー
(2)偶然の人間侵入
- 偶然の人間侵入の可能性: 完全には排除不可能
(余裕深度処分/地層処分)
- 影響を考慮すべき期間及び地域:極めて長期間・広範囲
→国際的な整合性が必要
↓
○一定のレベルを超えると介入が正当化されるという考え方
(Pub.81)の適用が妥当
○そのレベル値は、
- 埋設地における公衆被ばくの線量拘束値:
~1ミリシーベルト/年のバンド(Pub.103)
- 埋設地への偶然の人間侵入による公衆被ばくに対して介入が正当化されるレベル:
その上のバンド(1~20ミリシーベルト/年)
<結論>
偶然の人間侵入による公衆の被ばく線量が 20ミリシーベルト/年を上限として設定された値を超えないよう、計画段階で適切な防護のための設計が必要。
(参考)
【Pub.81】
・約10ミリシーベルト/年以下:介入が正当化できそうもない。
・約100ミリシーベルト/年超:ほとんどいつも介入が正当化される。
【Pub.103(ICRP2007年勧告)】
線量拘束値、参考レベルを3つのバンドに整理
~1、1~20、20~100ミリシーベルト/年