特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針に対する意見募集(平成18年7月13日〜平成20年3月31日)において、現時点で提出されている意見等のうち、拠点形成に関する主な意見は以下の通り。
1.拠点形成の考え方
- 次世代スパコンが研究者等に魅力のある施設となり広範な分野の多くの研究者等に活用され、我が国の科学技術振興や国際競争力の向上に寄与していくめに、CLOE(Cluster of Excellence)として全体構造を整備し運営がなされることが望ましい。
- それぞれの分野を担う大学共同利用機関等が中心となって分野の計算科学研究に責任を持つ分野拠点(分野ごとのCOE)を構成し、全国の分野拠点と神戸の拠点との緩やかな連合体としてCLOEを構成。
- 次世代スパコンを頂点とした全国の共用計算機資源を活用した研究推進と、計算科学全般の振興を図るためにCLOEの形成が必要。
- 高度なネットワークを活用することにより、設備の有効利用は設置されている場所には依存せず、地域格差のないAll Japanの研究体制の構築が可能であり、次世代スパコンを頂点とした計算機資源を階層的に構築し、配置される計算機資源を有機的に活用する仕組みを作ることが望ましい。
- 神戸に設置される拠点は、次世代スーパーコンピュータによって開かれる新しい科学技術・学術の総合的拠点として機能する事を期待。
- 当該施設は研究機能を持ち有能な計算科学者/技術者を育成する機関としての中心的役割を果たすべき。
- 次世代スパコンの圧倒的な計算能力に基づいたシミュレーション研究が、分野融合の学際的センターとしての役割を果たすことを可能とする教育研究拠点の確立が必要。
- 多様な大規模シミュレーションの研究開発分野間において研究情報や計算機利用技術が集積する研究センターとして機能するとともに、研究と教育を結びつけるハブとしての機能(連携大学院におけるインターンシップに対する窓口)を備え、かつ産学官連携に対する情報センターや人材供給としての役割をはたす事が望まれる。
- 神戸の拠点は以下の機能を果たすべき。
- −分野横断的研究の推進
- −計算科学と計算機科学の連携の推進における中核的役割
- −分野間交流、研究集会、国際協力、広報等の企画立案・実施
- −教育・人材育成
- −次々世代スパコンの研究開発
2.研究開発
- 各要素レベルのミクロ階層とシステムレベルのマクロ階層の相互作用を総体的に捕らえるシミュレーションの実現が課題。このため、従来個別要素的に開発されてきたモデルを相互に連結するための新たな計算手法の開発が必要であり、組織や分野を超えたシミュレーション科学の学際的融合領域を確立することが極めて重要。
- 産業応用としての課題は、パラメータ・サーベイ的な同種多数のシミュレーションを同時に行うものを多く含む。大量の計算に適した新たな計算手法の開発、同種多数のジョブの生成、投入、途中過程のモニタリング、大量のデータの効率的解析方法などの手法の開発も望まれる。
- 大型設備は独法研究所のものを活用するなど、関係機関との連携が重要。
- 次世代スパコンの国際的地位の確立、次世代スパコンの有効活用及び我が国の学術研究における国際貢献の観点から国際共同研究の推進は重要。
3.研究支援
- 施設や施設利用に関する最新情報の提供、企業等との共同研究推進のためのコーディネータの設置が必要。
- 次世代スパコンに特化した最適化・超並列化のサポートや数学ライブラリなど全分野に共通するソフトウェア基盤の提供が不可欠。
- 利用方法に関する専門的知識・情報・技術の提供が必要。
- 利用プログラムのチューニングに大半の労力が費やされることのないよう、相談窓口を置くなど、技術支援体制を整えることが必要。
- ネットワークを介したリモートアクセスによる計算機利用や技術支援を可能とすべき。また、計算機資源に関する階層的構築の第2層(大学等のスパコンセンター等)以下の設備をもって行う研究についても、利用支援体制が必要。
- 企業における研究開発においては、目的とする研究・開発に適した計算手法やソフトウェアに関する適切な情報の取得、計算を実行する際の技術支援、計算の背景の理論的理解についての支援などが必要。
4.人材育成
- 計算科学の学問としての国家的重要性や、その急速な進展が科学技術全体に及ぼす波及効果の大きさを考えるとき、人材育成と教育システムの整備は非常に重要な課題。
- 優れた人材の継続的育成を可能にする教育体制を整備し、世界で活躍する計算科学研究者が育ち、強力な計算科学者集団によるコミュニティーが世界をリードするようになって始めて、わが国の計算科学は確固たる地歩を固めることとなる。
- 専門性の高いアプリケーションの開発研究者、実践的なユーザの育成、融合分野や新領域を積極的に開拓出来る研究者を育成すべき。そのため、各分野拠点を中心に全国の大学、研究機関の協力が必要。
- 大学(国公立・私立)、研究所、企業の連携のもと、専門家を有する既存大学の教育システムを利用し、教員を派遣またはその機関において教育する「連携大学院」のシステムを活用して教育体制を整備すべき。また、大型設備は独法研究所と連携して活用すべき。
- 大学院教育の視点で検討すべき事項は以下の通り。
- −応用科学、計算機科学、数学をつなぐ学問体系の人材育成
- −実践的アルゴリズム開発の学問評価の向上(キャリアパスの拡大)
- −大学院教育におけるカリキュラムの作成
- −副専攻、単位互換、学位授与
- 大学院教育だけに限らず、幅広く計算科学における教育・人材育成を行う必要がある。
- −若手研究者育成プログラム(ポスドクとキャリアパスの拡大)
- −外国人(発展途上国)研究者育成
- −企業との関係:企業における人材育成および企業での実習
- 企業研究者の育成も連携大学院構想の重要な使命のひとつ。
- 並列化、データ解析、可視化など関連技術の人材育成も必要。
5.研究成果や知見等の集約・蓄積・共有
- 計算科学の研究振興のためには、関連研究に関わる研究者のコミュニティーを確立し、そのコミュニティー内での情報の交流と研究における連携の促進が必要。異なるコミュニティー間の交流・連携の促進も重要である。特に、巨大科学としての最先端設備の有効活用のためには、計算科学と計算機科学の交流・連携が必要。
- 研究分野固有のスパコンは、多くは全国共同利用の形態をとる当該分野の研究所に設置されており、研究者コミュニティーが形成されている。次世代スパコンの利活用に当たっては、研究分野のコミュニティーの果たしている役割を活用することが重要である。
- 分野拠点において適切なソフトウェアを開発し、これを維持・管理するすることにより、ネットワークを通じて遠隔利用出来る、なめらかで連続的な資源利用体制の実現。
- 大規模計算機システム技術や大規模シミュレーション技術および計算機から出力された科学技術データを公開・共有することが重要。大規模計算機システムや大規模シミュレーションを今後とも発展させていくためには、研究データをアーカイブし、公開、利用促進を促す枠組みが重要。CLOEがこのようなデータ情報センターとしての役割を果たしていくことを期待。
6.理解増進・成果の普及発信
- 技術立国日本の回復、向上に貢献するため、次世代スパコンの有意義性を国の内外にPR(周知徹底)し、産官学が一体となって推進することが必要。
- 研究会や成果報告会、広報誌、報告書等により情報発信を積極的に実施すべき。
- ホームページによる情報発信を実施すべき。