参考5−2

次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループにおける意見の整理

平成18年6月22日
次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループ

 次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループは、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律第4条において文部科学大臣が定めることとされている特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を策定するに当たり、論点を整理し、その内容を検討するため、平成18年4月から6月にかけて4回にわたり議論を行った。
 本ワーキンググループの議論を踏まえ策定される基本方針については、今後次世代スーパーコンピュータの整備の進捗状況に応じ、業務の在り方等運用に際して必要な事項について検討を行うこととしている。その際、より具体的な検討が行えるよう、参考資料として、本ワーキンググループの議論における様々な観点からの幅広い意見を基本方針とは別に取りまとめることとした。
 この意見の整理が、基本方針の見直しの議論において有効に活用され、運用開始時における改正後の基本方針に適切に反映されることを期待する。

1.意義・目的に関する意見

2.施設利用研究に関する意見

(1)実施すべき施設利用研究

  • 国家的ミッションを構築し、それを達成することが必要。
  • 次世代スーパーコンピュータで何を計算するのかが本質的に重要。世界に向かって何がアウトプットとして出るのかが注目され、評価されるので、目標を明確にすべき。
  • システムのアーキテクチャの選択・設計にも大きな影響を与える可能性があるため、なるべく早い段階から、研究課題についてのフィロソフィー(原則)を明確にすることが必要。
  • 次世代スーパーコンピュータが一般の人の理解を得るためには、象徴的なアプリケーションがあるとよい。科学技術の推進を図る側から、トップダウンでチャレンジングな研究テーマの提案を毎年1つずつでも打ち出していくとよい。
  • 本プロジェクトが将来にわたり継続的に発展していくことが重要であり、将来を見越した課題選定方法や運営を担当する機関のあるべき姿を議論すべき。
  • 課題選定に当たっては、全体的視点から、分野間のバランスや海外の研究者の課題をどうするか、また、トップダウンかボトムアップか等、長期的な観点も含めてどのような課題に重点を置いていくかを決定していくプロセスが重要。そうしたことは、登録機関の課題選定委員会だけではできないであろう。
  • 分野毎の課題審査の体制の構築、個々の課題への資源配分(集中と分散の考え方)等について検討が必要。
  • コンピュータ・サイエンスの中には計算機科学と計算科学の両方があり、次世代スーパーコンピュータにおいてはこれらの研究がバランスよく行われるようにすべき。
  • 情報基盤センターからの「推薦ジョブ」のような枠を作ることが大事。
  • 安心安全な生活に直接大きく貢献する災害予測・防災、さらには産業製品開発への利用を考慮すべき。
  • この計算機にしかできないという大きな計算だけではなく、重要な成果が出て、それが日本全体をどのように活性化したかという観点からの評価も必要。
  • 計算科学の基盤を作るという観点からすると、次世代スーパーコンピュータを頂点だけの世界に閉じこもらせるのではなく、研究室レベルの計算機で行っている計算も取り込ませるべき。
  • 普通のPCクラスター等では計算できないような、大規模な計算に多くの計算機資源の割当を行うべき。
  • 他の機関ではできない大型の計算を優先しつつ、中型の計算を行う利用者にも一定枠の利用を許すシステムとすべき。
  • 大規模な計算を行えば規模に比例した数の論文が出るわけではなく、サイエンス的に画期的な成果は、新しい対象に対してあまり大規模でない計算を行った時に出てくるという側面もあるので、そういう計算を排除すべきではない。
  • 次世代スーパーコンピュータでしかできない先鋭的大型課題に限り、重要な成果があがるとしても、中規模なジョブや研究室レベルの計算機で実施している計算には割り当てないようにすべき。
  • 次世代スーパーコンピュータは大規模な計算を効率的に実施することを優先させるべきであるが、重要な成果が期待できる中規模ジョブを含める必要がある場合は、他のスーパーコンピュータも活用することにより次世代スーパーコンピュータの利用を数パーセントに制限すれば、そうした中規模ジョブについて考慮せずに次世代スーパーコンピュータのアーキテクチャの選択ができると考えられる。
  • 世界中に散在する多数のパソコンを結ぶグリッド・コンピューティングが今後10年程度で盛んになると予想されるが、次世代スーパーコンピュータとの役割分担、研究分野・テーマの住み分けが重要。
  • どの課題をどこのスーパーコンピュータで実施するか等の判断については、コミュニティの意見が大きな役割を果たすと考えられる。このようなアカデミアのコミュニティと産業界、行政が一緒に議論できる場があればよい。
  • 特定の研究分野、利用規模等の制限を設けずに、公平に提案機会が与えられるべき。
  • シミュレーションによる研究の特徴である、研究分野が多岐にわたること、異なる分野の融合が多いこと、理論と実験の両方にまたがる研究が多いこと、ネットワークを介して世界の研究者と同時進行が可能であること、等について、十分留意した選定が行われることが大切である。
  • 国内で開発されたソフトウェアを優遇するという配慮も必要。
  • 産業界としては、課題の選定に当たって選定委員会等に対してどのくらい内容をオープンにしなければならないかということが問題になるので、このあたりについても配慮した運用を考えてほしい。
  • 次世代スーパーコンピュータにおける海外の研究者の利用の方向性は検討課題の一つ。
  • 国際交流については、先進国とは対等な関係でよいが、アジア、アフリカ、南米等の国々へは支援的な要素も含まれるべき。
  • 課題審査の段階での国際性、国際的な意見交換の仕組みについては、メリットとデメリットを考慮することが必要。
  • 大きな施設の開発では、評価を国際的に行うかどうかについても検討することが必要。
  • どの国が計算機の速さで一番となるかではなく、各国が住み分けをし、それぞれの情勢に応じた得意な領域を先導していくスパコン研究体制を作り出すという基本的姿勢に立って、アーキテクチャの選択や運営の仕方を考えるべき。
  • 計算機を作るという観点では、アメリカと日本は競争関係にあって協力関係を構築するのは難しく、できれば国産技術を用いた方がよい。
  • 環境や流体等が我が国の得意分野となったのは、地球シミュレータが開発され、みんなで力を合わせてアプリケーションを作ったからだと考える。従って、現時点で米国が進んでいる分野は次世代スーパーコンピュータのターゲットにしない、ということはすべきではない。

(2)適切な支援体制の構築

  • 運営を担当する機関は、アプリケーションの並列化やベクトル化等の利用技術支援を行うとともに、独自の研究機能や最新情報を利用者に通知する等の広報機能を有することが望ましい。
  • 運営を担当する機関が利用者と計算機のインターフェース機能を十分発揮できることが重要。
  • 次世代スーパーコンピュータで行う大規模なジョブは、十分チューニングされたものだけに限定することが必要であり、そのためにプログラム・チューニングのサービス等が重要。
  • 専門の相談員がいて常時相談が出来る環境が必要。
  • ある課題の解析のために利用できるソフトは何か、また、他からソフトを持ってきて計算できるようにするためには何が必要条件か等についての効率のよい利用法を指導できるような利用者相談窓口の設置が重要。特に、自分で作ったプログラムのみでなく、市販のプログラムを利用する場合や、大学等で作成されたプログラムを活用したい場合等の権利関係については、成果の取扱い等とも関係してくるので、運用側でも支援してほしい。
  • 計算機が高速であるほど、データ保管や可視化の環境がないと何も出来ない。リモートアクセスを可能とすることや環境設定の支援があること等が必要。
  • 産業界はアカデミアと比べるとスーパーコンピューティングに不慣れな研究者が多いので、一層のサポート体制が必要。
  • 産業界では、細かい計算について、ある時点で大規模に行いたいという要望が生じることがあるので、次世代スーパーコンピュータにおいてそういう計算も受け入れるような余地と、これらに対する支援があることが望ましい。
  • 計算機の開発者とアプリケーション側の研究者との橋渡しを行うサポート人材が必要であり、運営を担当する機関が利用者に対してプログラムの仕方まで支援すること等を通じ、そうした人材の育成を図ることが重要。
  • 運営を担当する機関においては、優れた研究者、研究支援者等の人材の育成のため、登録機関と他機関との間で人事交流を行い易くする仕掛けを作るとともに、国内外研究集会、シンポジウム等の開催も必要。また、その支援を行う者として、優秀な事務スタッフ及び産学連携の橋渡し役的な人材の確保が必要。
  • 支援人材の育成・確保のため、これらの人材のキャリアパスを社会的に認識・評価する仕組みも必要。

(3)施設利用研究の成果の取扱い等

  • 利用料金については、7大学の情報基盤センターその他のスーパーコンピュータや公的研究機関との整合性が必要。
  • 民間は、役に立つのであれば利用料金を払うことに問題はない。ただし、民間だけが支払う理由はなく、独立行政法人等でも目的によっては支払うべき。
  • 企業であっても、成果を公開して社会に還元する場合は、アカデミア同様負担はかなり低減されるべきであり、個別企業として応募する場合、企業集団として応募する場合、大学の先生方と共同応募する場合等いくつか選択肢が必要。
  • 国のプロジェクトとして、個人の成果というよりも国としての成果をあげることを目的とすべきであり、また、使用料金をとると、画期的成果のための利用者が減る恐れがあるため、産業利用であっても、成果が公開されるものについては無料とすべき。
  • 民間もまず試用して有効性を確かめたいので、お試し期間のような運営上の工夫があると使いやすい。

(4)啓発活動の実施

  • 研究会、成果発表会、年次報告書等により、情報発信を積極的に行うことによって、利用者の開拓を行うとともに、社会への説明責任を果たす必要がある。
  • 次世代スーパーコンピュータについて情報を提供するホームページを早急に整備し、そこに関係学会・産業界等の関係コミュニティもリンクを張って、統合的情報提供や意見交換等を可能とすることが必要。
  • 既存の関係者のメーリングリストや計算科学周辺のコミュニティを活用し、これらに情報提供するとよい。

(5)研究機能の構築

  • 本プロジェクトが将来にわたって継続的に発展していくという観点から、運営を担当する機関は、優秀な研究能力を持つことが必要。
  • 運営を担当する機関に計算科学技術分野の研究の機能を持たせ、大学の情報基盤センターの研究者と研究交流を行い、コミュニティの醸成、人材育成と利用技術開発を継続して行うことが重要。
  • 施設の継続性のためには、大学の研究者を次世代スーパーコンピュータの研究を行う者として併任する等、人材確保・育成の仕組みを考えるべき。

3.施設の整備に関する意見

4.施設の運営に関する意見

5.その他