情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成20年3月12日(木曜日) 16時~18時15分

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.出席者

委員

 土居主査、大島委員、加藤委員、川添委員、吉良委員、坂内委員、佐藤委員、知野委員、平尾委員、表具委員、福山委員、松本委員、宮内委員、安岡委員、山根委員、吉川委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官、伊藤振興企画課長、勝野情報課長、関根スーパーコンピュータ整備推進室長、井深学術基盤整備室長、中井課長補佐

オブザーバー

(科学官)
 西尾科学官

4.議事録

【土居主査】
 定刻になりましたので、ただいまから、第3回次世代スーパーコンピュータ作業部会を始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回初めて出席していただきました委員の方がお二方いらっしゃいますので、ご紹介させていただきたいと思います。大島先生と安岡先生でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より、本日の配付資料につきましてご確認をお願いいたします。

【事務局】
 お手元の議事次第と照らし合わせて、資料のご確認をお願いいたします。資料1は、「次世代スーパーコンピュータを中核とした教育研究のグランドデザインに関するこれまでの意見の整理」です。資料2は、「研究中核拠点としての共用施設『ペタセンター』-個人的な観点からの期待像-」です。資料3は、「拠点における研究開発機能について(議論のたたき台)」です。参考資料といたしまして、「次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点形成について」を配付しています。また、議論の参考とするために、席上に緑色のファイルの「次世代スーパーコンピュータ作業部会参考資料集」及び灰色ファイルの「次世代スーパーコンピュータ作業部会配付資料集」を置いております。配付資料集につきましては、第1回と第2回の作業部会で配付した資料をとじております。適宜ご参照ください。これらの資料に欠落等ございましたら、事務局までお申しつけ願います。

【土居主査】
 よろしいでしょうか。欠落等ございましたら、その場ででもおっしゃっていただければと思いますので、議題に入らせていただきます。
 議題1が、次世代スーパーコンピュータを中核とした教育研究のグランドデザインについてでございます。前回は、工学院大学の小柳先生、それから海洋研究開発機構地球シミュレータセンターの佐藤先生に、それぞれご意見を伺ったわけでございますが、その場でいただきましたご意見をもとに、また次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点形成について、ご議論をいただいたわけでございます。この間のご議論をいただきましたことにつきましては、そこでいただきましたご意見等を、事務局において整理していただきましたので、それを事務局から、まずご説明をいただけますか。

【関根室長】
 それでは、お手元の資料1に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。今回、第3回目ということで、第1回目、それから2回目、特に2回目におきましては、今、主査からご紹介がございましたように小柳先生、それから佐藤委員に意見を述べていただき、それをもとにいろいろご議論をいただきました。それを項目ごとに少し事務局で整理をさせていただいたものが、資料1でございます。資料1の意見のところで、○につきましては、各委員からいただいた意見。それから、●につきましては、小柳先生、佐藤委員のプレゼンテーションの中でご紹介いただいた意見という整理をさせていただいております。
 簡単にご紹介をさせていただきます。整理といたしましては、拠点形成の基本的な考え方ですとか、研究開発及び利用者支援、人材育成といった項目ごとに整理をさせていただいております。まず1でございますけれども、拠点形成の考え方ということで、例えば、計算科学ですとか、シミュレーション分野を確立するような拠点形成をするべき。さらには、こういった学問の振興ですとか、新しい分野の創生といったことを企画、または推進するようなセンターであるべきではないか。それから、計算科学というのは、いろいろな分野にまたがるような横断的な科学であって、そういう意味では、共通の部分なども多いということ。例えば、モデル化、アルゴリズム、それから計算の手法、こういった観点のものなどは、知識を横断的に共有するといったことが重要ではないか。それから、計算機資源を切り売りするようなセンター、要するに、共用という機能だけではなくて、それ自体が研究開発を推進するようなセンターであるべきというような意見もいただいております。
 それから、下から3つ目の○ですけれども、拠点については、計算科学における教育研究全体のレベルを上げるといったような機能と、もう一つは研究の頂点を高める、そういった機能の両方を目指すべきではないか。さらには、研究者の人的資源を有機的に組織化をし、拠点形成を図っていくべきではないか。そういった際に、いかに拠点に魅力といいますか、インセンティブといったものを付与していくのか。それが非常に重要ではないかといったような意見をいただいております。
 それから、2ページ目でございますけれども、1.の研究開発につきましては、我が国では、これまで計算科学の重要性といった認識が、必ずしも十分ではなかったと。そういった観点から、意識をより持ったり、重要性を明示化していくことが重要ではないかといった意見をいただいております。それから、繰り返しになりますけれども、計算科学というのは横断的な側面があるので、異なる分野間での共通点、そういった点について、研究交流をより促進する。さらにはそれが分野全体に広がり、その相乗効果として、コンピュータ自身も発展するといったような、全体の構造、構図が成り立つようにしていかないといけないのではないかということでございます。
 それから、この次世代スパコンの利用を考える際には、大学の情報基盤センターなどの既存のポテンシャルの活用といったようなものも含めて考えるべきではないか。研究という側面が非常に重要である一方、例えば、企業などでは、製品開発といったような側面から、開発といったところが重要ではないか。そういう意味では研究とともに、開発ということをより意識をして、研究開発を進めていくべきではないかというような意見をいただいております。
 利用及び選定の部分ですけれども、共用施設という観点で、平等に利用することの重要性に加えて、さらにはいかに優れた成果を創出していくのか、そういった観点でのシステム構築をしていくべきではないか。それから、課題の選定に関しては、プログラムの実効性能に加えまして、その研究する価値といったものの視点から選んでいくべきではないか。それから、利用者のレベルというのは、ある意味非常に多様であるので、人材育成の意味も含めて、さまざまな利用者が活用できるような支援策といったものが必要ではないか。それから、公募枠という考え方に加えて、戦略的に活用できる仕組みも盛り込んでいくべきではないか。
 3ページ目でございますけれども、一方、次世代スパコンの特殊性というものを理解したときに、いろいろなレベル、多様なニーズを受け入れるというアプローチ等、より戦略的に、先鋭化しながら活用していくといったような考え方も重要ではないか。一方、企業など、先ほど申し上げたような、開発といった側面も含めていろいろなニーズがあるわけで、そういった意味では、有効利用の観点から、例えば、計算量の少ない計算のニーズも考慮しながら、制度設計すべきではないか。それから、計算機の資源の有効活用という観点では、地球シミュレータの例が参考になるのではないか。特に実行するプログラムのベクトル化ですとか並列化といったような、ある意味ハードルを決めて、高い利用効率を実現したと。そういった取り組みなども参考になるのではないかということでございました。
 利用者支援でございますけれども、利用者支援の重要性、それから一方で、ユーザー支援をする視点では、ユーザー側にも一定の技術力ですとか、知識、努力といったものを求めていくという視点も重要ではないか。さらには、アプリケーションについては、普及という観点での取り組みが今まで薄かったので、そういったところのサポートの重要性。それから、次世代スパコンで、共用施設のことも含めて、たくさんのアプリケーションをいかに効率よく実行していくか。そういったことが重要なので、いわゆる計算ジョブのスケジューリングという言い方をしておりますが、そういう調整というのが非常に重要で、自動的に割り振るのに加えて、人間間、ユーザー間での調整といったものも必要ではないか。そういう意味では、既存のシステムにおける経験というのが重要ではないかということでございます。
 それから、3の人材育成でございます。従来のディシプリンにとらわれた教育ではなく、横断型の計算科学を体系的に教育をするといったようなこと。それから、3ページの最後でございますが、アルゴリズムを開発できるような人材の育成ということの重要性も指摘をいただいております。人材育成策として、4ページの頭でございますけれども、例えば、コンテストを実施するといったような取り組みも重要ではないか。人材育成の視点として、スパコンが立地する関西地区のみならず、全国でこういった人材を育成していくという視点が重要ではないかということでございます。
 4の研究成果等の集約・蓄積・共有のところでございますけれども、次世代スパコンとそれに関連するデータベース、プログラム、またはノウハウといったこと、さらには既存の大学のポテンシャル、こういったことを含めて、重層的に考えていく必要があるのではないか。それから、計算科学の各分野において、共通の手法というのがあるということで、そういった意味では、共通の場をつくるということの重要性とともに、そういったことをアレンジをし、マネージをするような組織といった機能が必要ではないか。知的財産の蓄積といったところにも、特に目を向けていくべきではないかといったようなご意見もいただいております。
 理解増進につきましては、大規模投資への持続的理解という観点では、これまでの取り組みに加えて、今後の方向性といったようなことの重要性。計算科学については、理論、実験に次ぐ第3の科学というよりも、プライマリーな研究方法であるといったような視点から、世界に発信していくべきではないか。
 それから、その他のところでございますけれども、拠点の運営体制ということでご意見をいただいておりまして、特に地球シミュレータセンターの例を引き合いに出していただきながら、こういった機能論、組織論といったようなことのご意見もいただいております。それから、5ページ目の1つ目の○ですけれども、スパコンの特性として、高い性能を保っておける比較優位性が短時間で低減していくといったような観点から、運用開始後、直ちにいろいろなことが動けるような体制づくりといった視点が重要ではないか。非常に大きいプロジェクトということも含め、国益との観点で、いろいろな目標設定なども考えていくべきではないか。さらには、途上国との科学技術協力ですとか、情報セキュリティーや漏洩の対策、災害への対応といったところの重要性についてもご意見をいただいております。

【土居主査】
 これは前回頂戴いたしました意見を事務局にまとめてもらったものでございますけれども、新しいご意見は、この後またいただくことといたしますが、差し当たって前回のこの資料1に関しまして、何かご質問、ご意見等ございますか。
 よろしいでしょうか。このように、その都度その都度頂戴いたしましたご意見は事務局のほうでまとめていっていただき、最終的なところに向けて積み重ねていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日は福山委員に、拠点における研究開発機能についてご意見を頂戴することになっております。事務局から先生のほうに、事前に時間等のことに関していっていると思いますが、30分程度お話しいただきまして、あと30分程度、皆様方からご意見をいただきたいと思います。では、福山先生、よろしくどうぞお願いいたします。

【福山委員】
 理科大の福山です。今日、お話するようになった経緯を私が理解する範囲でまず最初にご紹介して、その後、ペタセンターとして、組織としてどういうのが考えられるだろうかということに焦点をあててお話しさせて頂きます。実は、既に参考にすべきケースが、幾つかあります。それをもとに、どういう枠組みが考えられるだろうか考えてみます。いろいろなご意見を既にいただいていますが、その枠組みの中でそれらがどういうふうに位置づけられるだろうかということも意識しながら、私見を述べます。マテリアルサイエンスという観点に立ってグループで議論した結果を踏まえてご紹介して、議論のたたき台にしていただければと思っております。
 まず、私がどうしてここでお話しすることになったかという経緯を、私が想像する範囲でご紹介します。私は、物理の物性理論をやっております。1970年に学位を取りましたが、そのころはコンピュータを使っていました。しかしその後は、ほとんど使っておりません。ですから、コンピュータの利用という観点からすると、アウトサイダーです。私の研究活動のバックボーンをつくってくださったのは、東京大学附置全国共同研である物性研究所(物性研)のすばらしい先生方でした。共同利用研というのは何かということを、若いころ、ほんとうに実地に勉強させていただきました。その後、東大に移りましたが、また物性研に移って、その後東北大に移りました。ここの波線の上の時期には、研究教育に専念していました。おそらくここでこういうお話をするよう文科省のほうからご指示があった理由は、この下側の、つまり研究の道を一時それた時期の経験に関わるのだろうと想像しております。
 1999年から2003年、六本木にあった物性研究所が柏に移るというとき、所長を引き受けることになりました。一度こういう種類のことを引き受けると、次から次へと同様な仕事が舞い込みます。文科省所轄並びに国立大学附置研究所長会議というのがありました。全国の100近くの大学附置の研究所の所長さんがメンバー。その議長がたまたま東大に回ってきて担当するはめになりました。これは法人化直前の旧国立大学の附置研究所はどうするか、特にその中で、共同利用研はどうするかという、難問をかかえた非常にクリティカルな時期でございました。さんざんいろいろ考えてアクションをとりました。メンバーの大変皆さん頑張られた。そのときにいろいろ出したメッセージは、今もって振り返ってみると、非常に意味があると自分では思っております。
 その後、IUPAP(国際純粋・応用物理学連合)のVice Presidentも務めましたが、今日のお話に関係するのは特に物性研での経験、それからその後、JASRI(高輝度光科学研究センター)での活動です。今日、吉良先生もお見えで、途中で間違いを言ったら吉良先生にご修正していただくことになると思います。また、数年前からJ-PARCの国際諮問委員会のメンバーになりました。つい10日前にJ-PARC国際諮問委員会があって、そこでもここと同様な問題が、別の観点から議論になっておりました。
 今のがバックグラウンドですけれども、そもそも先ほどご紹介しました東京大学に附置された全国共同利用研究所である物性研究所って何者か。これは大変ユニークです。個人的には、世界に誇るスキームだと思います。コミュニティーの要望によって、学術会議の勧告で設置された組織です。ですから、コミュニティーが最初にあって、研究所が生まれました。たまたま東大に設置されました。まず研究組織として独自な研究教育活動をします。しかし、東京大学に附置されているということは、東京大学のメンバーとして教育にもかかわります。同時に、ここがポイントなんですけれども、共同利用研究所として全国の研究者に、基本的にオープンです。
 具体的に見ていきます。これが組織表なんですけれども、所長の下に、研究部門というのがございます。これは物性研の実体です。いろいろ研究部門があって、そこに先生がいて、准教授、助教がいて、学生がいる。そこにはもちろん実験施設がございます。
 実験施設は、全国のユーザーに開かれています。全国の研究者と一緒に研究する、そういう役目が同じ組織の中にあります。こちらのほうの組織の運営の仕方に関しては、ここの共同利用施設専門委員会でいろいろ議論します。この委員会のメンバーは、ほとんどが外部委員です。内部の先生と外部が一緒に進めます。どんな研究組織でも、一番大事なのは人事。その人事でさえも、研究所所属の研究者だけで決めることはありません。すべて公募で、人事選考委員会の構成は所内外半々です。研究所内から5名、所外から5名、プラス所長です。文章でもいろいろ書いてございますけれども、要するに、1つの研究組織の中に、独自の研究部門と、その人たちが支える全国のユーザーに開かれた実験施設があります。
 SPring-8(大型放射光施設)を見てみましょう。これはホームページからとってきたものです。発足は、原研(JAERI、現在の日本原子力研究開発機構(JAEA))、それから理研、2つの組織が一緒になってつくりました。途中でJAERIが手を引いて、理研だけが、今、設置者になっています。吉良先生が理事長でいらっしゃいます財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)という組織があって、それと理研がSPring-8を構成している。理研とJASRIの関係が、ホームページを見るだけではよくわかりません。ちなみにこれは概念図です。特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律によって、理研と、先ほどのJASRIの関係が定義されています。理研は、あくまでも設置者です。JASRIは登録機関であって、そこに業務が委託されて、SPring-8全体がつくられる。
 登録機関JASRIの業務は、後でもペタの場合にすぐ問題になることですけれども、利用者選定業務から利用支援業務、これが法律で決められる。ところがJASRIの場合は、いろいろここにも書いてあるように、それ以外の法定外の重要な仕事をしておられます。これが理研とJASRIの関係です。
 組織図としては、理研、JASRIの間に共通の運営会議がある。ですけれども、あとは形式的には分かれている。JASRIのほうには選定委員会というのがございます。元来は諮問委員会という名前になっていましたけれども、数年前にこうなりました。この選定委員会には利用者の意見がいろいろ出てきます。
 J-PARC、これはKEK(高エネルギー加速器研究機構)とJAEA2つで設置された大きな加速器センターです。今、J-PARCセンターというのが設置されていますけれども、この組織論に関しても、先ほどのSPring-8と共通のところと違うところがありますが、現在いろいろな議論が行われています。
 以上のような例を見て、ペタに関しては、組織論としてどういう枠組みが考えられるか。組織の構図は大体決まっているだろうと思います。運営委員会が置かれ全体の運営方針や将来の戦略を議論する。その下に、先ほど申し上げました課題選定の仕事。ペタの場合ですと、いろいろ計算の提案が出てくる。分野別にいろいろ提案が出てくる。それを分野別に課題選定をして、選定委員会で審議して上に上げる、これが基本だろうと思います。ただし、それだけでは決してまともな動き方をしないだろうと思います。ここの選定をするだけですと、機械でも済む。それをちゃんと肉付けして、方向性を出すのは、別のステアリングコミッティーが必要です。ここに書いた供用・連携推進委員会というのは、そういうつもりです。これはほかの大きな施設の場合にはよくあることで、具体的な課題選定のほかに、ちょっとタイムスパンの長い戦略、方向性、将来計画等を議論する。ここの中に、ペタの場合ですと全国ネットをどうするのか、国際連携をどうするのか、産業界とどうするかという、そういう具体的な問題が当然入ってくるだろうと思います。
 先ほどのコメントにもございましたけれども、同時に計算機の施設としての大きなハードウェアのメンテナンスと、グレードアップと、ユーザーにとって使いやすくスタイルを工夫するというハードの面に軸を置いたような、そういう組織も必要です。これだけでは、まだ箱ものというか組織だけであって、具体的な内容があまりない。コアになる研究部門が必要ですが、設置者と外部研究者の線の引き方については、これからいろいろ議論があるところだろうと思います。
 先ほどの話に戻ります。ペタの場合、設置者は理研に決まっています。登録機関は、これから議論となります。登録機関の業務は、法律的には最小限のように見えますが、先ほどJASRIの例でごらんいただいたように、登録機関であるけれども、かなり広い部分を担っています。ですから、登録機関の位置づけというのは、やはり対応した施設にケース・バイ・ケースに決定されるのだろうと思います。そうあってしかるべきだと思います。この図中でわざわざグリーンに色付けしたのは、法律の文言からするとこの近辺だけに見えてしまう。ですけれども、それだけでは動かないのは明らかです。少し戦略を議論しなきゃいけない、検討もしなきゃいけない。
 実は、こういう表をつくりましたのは、きょうの席上にある配付資料集の第2回の参考5-2というものがございます。次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループの意見の整理というメモがございます。これは実は1年ほど前に、ワーキンググループの皆さんと一緒に議論させていただいたもので、ここではほんとうにいろいろなご意見をいただきました。一応ある程度整理してここに書いたわけですけれども、そういうご意見を踏まえて、図にするとどうなるかということを本日試みたつもりです。ただ、もちろん完璧ではございません。
 ペタの場合、情報というファクターがあって、それをこれにどういうふうに位置づけて、いいフレームワークをつくることができるかどうか、それは私は経験がないので、何とも申し上げられません。
 こういうことを言ったら怒られるのかもしれませんけれども、ペタの計画自身というのは、先ほどの物性研の誕生の歴史とは全然違います。物性研の誕生の歴史は先ほどご紹介しましたように、終戦直後、日本が疲弊したときに、物性科学が大事だというコミュニティーの強い意見があって、それを学術会議が受けとめて、科学技術庁、文部省に提案してできた。だから、最初から研究者のニーズ、強い希望がございました。
 ところが、ペタの場合には違います。しかし我々が関係しているマテリアルサイエンスのコミュニティとしては大変困難な課題であると同時に、すばらしいチャンスかもしれない。従ってチャンスにするためにはどうしたらいいかを議論しました。その結果がこれです。計算物質科学連絡会議というのをつくりました。これがそのホームページです。ここに会議の役割が書いてあるんですけれども、要するに、非常に広い計算科学コミュニティーの窓口として、次世代スーパーコンピュータプロジェクトを視野に入れて、ただし基本は物質科学研究教育活動で、全国的な意見交換の場を作ろうというものです。今までは個別でしたが、そういうことで、ペタの計画に寄与できるとは思えないということで、コミュニティーを超えて、意見交換する場をつくりました。それが計算物質科学連絡協議会です。
 第1回は2007年1月で、2月に7回目。例えば、これが議事録ですけれども、この議事録も、先ほどのホームページに出ておりますのでごらんいただければと思います。これが今の連絡会議のメンバーです。ごらんいただきますと、これはマテリアルに限っていますけれども、物理、化学なんていっていないです。材料も含めて、広く分野横断、組織横断している。興味ある方は、皆さん加わってきて、議論にご参加いただいています。例えば、平尾先生も一緒に議論してくださっています。
 これは現場から見たときに、こういう大きなスパコンができたときに、横につながるのが必須だということで、ホームページにはいろいろリンクが張ってございます。
 そういう観点から、これも非常に限られた範囲ですけれども、各分野にある大型計算機センター、さらにその下に大計センター、そういうのを全部視野に入れた総体としてのペタセンターをつくる、そういう素地をつくろうとしています。連絡会では、研究教育連合体という言い方をしておりますが、そこでどういうことをやるかという具体的なアクションプランのようなものを書いてございます。ごらんいただければと思います。アクションプランに近い形であります。
 そういう観点で、これからかなり具体的な議論になってくるだろうと思うんですけれども、そのときに設置者と登録機関の関係、登録機関にどういうものがあって、どこまでカバーできるのか、それがこれからほんとうに具体的な重要なテーマになるだろうと想像しています。以上、勝手なことをお話ししました。

【土居主査】
 どうもありがとうございました。いろいろな観点から、最終的には福山先生のお考えとしての、これまでのご提案のような形でお示しいただきました。これから30分位、皆さん方から今の福山先生のご意見を踏まえて、それぞれのご意見を頂戴できればと思いますが、まずは今の福山先生のご意見、ご発表に対しまして、何かご質問ございますでしょうか。

【平尾委員】
 今、先生のほうでお示しいただいた総合機構でしょうか、そのミッションというんでしょうか、それはよくわかります。それから、その中にあります研究部門の神戸研究センター(仮称)、これも非常にある意味でよく理解できるんですが、問題はやはり、登録機関との関係。登録機関をどういうふうにするかというのは、私もやっぱり非常に悩ましくて、よくまだ理解できないんですが、先生の個人的な考えでもよろしゅうございますので、どういうふうにお考えか、ちょっとお聞かせいただければと思うんですけれども。

【福山委員】
 先ほども、論点がわかるように強調いたしましたけれども、平尾先生のご質問は、最初にグサリと核心を。確かに誰でも悩む、誰でもわからないことは、この図で、どこからどこまで登録機関が担当するかです。先ほどご紹介したように、法律の文面を読むと、おそらくこの部分は核になる。一方は設置者、これもはっきりしている。JASRIの場合は、吉良先生にご紹介いただいたほうがいいと思うんですけれども、私の理解する範囲ではこうなって、ここも何か部門がある。かなりの部分を担っておられます。それは確かに、誕生の歴史という経緯を踏まえてのところがあるかと思います。最初、旧原研、それから理研、2つの設置者のもとに何か1つ組織をつくらないと運用が出来ないのでJASRIができた。JASRIにほとんど大事なことが任された。その名残だろうと想像するんですけれども、JASRIが担っておられる仕事は多いです。吉良さん、何か。

【吉良委員】
 確かに我々、登録機関ですけれども、ほんとうに登録機関の法律に決められた任務というのは、ユーザーの選定と支援だけなんです。ほかの仕事は、理研から請け負いでやっているんです。昔は、以前の法律が改正される前は、JASRIにすべてそういう仕事をやらせるということになっていて、それでスタートしたんですけれども、法律の改正のときに、そこの業務も押し切られて、最初に言った2つだけは政府から直接お金が来て、あとは理研の仕事であるけれども、理研は当然それができるような構造になっていませんから、従来どおりJASRIにやらせているというのが、一番簡単に言って、今の状況です。
 ちょっと余計なことをつけ加えれば、そういう状況ですから、今、仮に登録機関を1つつくったら、その登録機関が本来するべき仕事というのは、国から頼まれてするべき仕事は、さっき言った2つだけ。利用者の選定と、サポートだけです。そのサポートをどこまでするかというのは、またいろいろ議論のあるところですけれども、それ以外、動かしたり、メンテナンスしたり、その他もろもろは、実は親の理研の仕事なんです。理研がどこかに請け負わせるという格好になるのが、今の法律の原則なわけです。それで、ここで何とかそれを直せるんだったら、運用でうまくやれるんだったら別ですけれども、まずそこから出発する話だと思います。だから、あそこに書いてあるうちの大部分のことは、実は、たまたま我々登録機関が、財団として登録機関であると同時に、財団としてほかのビジネスをやっているというふうにご理解いただきたいと思います。

【福山委員】
 そういうことで、ペタに関して、JASRIがやっているような業務を担うことのできる組織というのはあるだろうか。理研とそういう関係をつくれるような組織が、日本にあるだろうか。私は、正直言ってわかりません。つまり、仮にあれば、理研がJASRIに対してとっているような態度で委託することは可能です。しかしそういう組織、そういう能力があるところがないと、どうしていいのか。

【藤木審議官】
 登録機関の仕事ですけれども、今の特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)は、施設を共用することのために、基本的には理化学研究所がすべてをやることができるという建前でつくってあります。したがって、国は登録機関に、利用者選定業務と利用支援業務をやらせることができるというような規定になっております。したがって、できるわけですから、理研ができれば、それは必ずしもそこでやらなくてもいいということにはなりますけれども、実際には理化学研究所は、本来的には研究機関であります。したがって、利用者選定業務とか利用支援業務のところは、より適切な機関があればそこにお任せしたほうがいいだろうという考えに立って、いわゆる登録機関という規定を置いているわけでございます。
 以前はJASRIは指定機関で、国からこの機関を最初から指定して業務をやっていただくということにしていたものでございますけれども、全政府的な行政改革の一環として、指定機関制度というのは消えていっておりまして、すべて門戸開放ということで、登録機関制度、すなわちある一定の能力があるところについては、登録ということを許容して、その登録機関の中から国が適切と思うところに特定の業務をお願いするという制度に、今、変わっているわけでございます。
 したがって、登録機関があるかないかというのは、今この時点では、私どもも率直に言ってわかりません。わかりませんが、今後、この作業部会で議論していただく共用の考え方というのがございます。共用法上は、共用については、共用の基本方針を国が定めるということになってございます。共用の基本方針プラス国の共用法の文部科学省令というのを定めることになっておりまして、そこで登録機関の要件、どういう能力を持ったところが登録機関としてふさわしいかということを定めることになります。その要件等は、またこの部会で議論していただいて決めていくということになりますけれども、例えば、JASRIですと、例えば、ビームラインの支援者が、ある一定の能力以上の人が何十人いるとか、そういう数値的要件も一定程度ございます。どういう要件を置けばいいのか、その要件をどの程度のレベルに設定するのか、それはこれからこの場で議論していただいて決めることでございますので、それを決めていただいた後に、いわば国から指定する形ではなくて、民間から手を挙げる形で登録をしていただいて、その登録機関の中から、業務をお願いする登録機関を決めていくという順序になります。
 したがって、少し回りくどくなりましたけれども、福山先生のご質問、そういう機関があるかないかといえば、今はあるかないか、率直に言って我々の要件が示されておりませんので、そういう要件に定まった登録機関があるかないかというのは、今の時点ではわからないわけですけれども、将来的にはというか、多分そんなに長くなく、要件を定めていただければ、ここで議論していただいて、大体この要件ということが見えてくれば、それにふさわしい登録機関があるかないかというのは、逆に言えば見えてくるということになると思います。すみません、回りくどくなって失礼しました。

【土居主査】
 このような難しい状況なんですが、いずれにいたしましても、法律はSPring-8に関する法律を拡大して定めた形になっておりますので、法律上は、今のようなことになっております。それから、登録機関は1つとは限りませんよね。

【藤木審議官】
 そうです。1つとは限りません。

【土居主査】
 法律上、1つ以上になっておりますので、したがって、複数出てきたときどうするかなど、いろいろな問題も出てくるんだと思うんです。ですから、そんなことで、なかなか悩ましい問題があるんですが、いずれにせよ、中核機関としてのCOEをどうするか、研究、教育の機能をどうするかということと、運用をどうするかというようなことを含めて、ありとあらゆることまでもこの場でご審議いただいて、それをもとに文部科学省が作戦をつくるというようなことになっておりますので、できる限りのことをこの場で、短期間ではあるんですが、ご意見をいただいた上でまとめていくというようなことでお考えいただければと思います。したがって、JASRIの場合のものがそっくりそのまま適用できない。情報の視点要追加というのを福山先生はお書きになっていらっしゃいますが、そっくりそのまま右から左というわけにもいかないという面もあろうかと思います。そういうようなもの及び現状のJASRIが抱えていらっしゃる問題を、やはりそのまま踏襲するわけにもいきませんので、そういう点もこの場で修正し、センターとしてどうあるべきかというのをご議論いただきたいということです。よろしいでしょうか。
 それでは、ご質問に限らず、ご意見もいただければと思いますが、いかがでしょうか。

【加藤委員】
 今のご発表の中で、産学連携に何度か言及されていました。産業界として、スーパーコンピュータの利用促進を図る上では、「産業界が学とどう連携をするか」や、「産業界がセンターにダイレクトにアクセスして使う方向性」も重要かと思います。産業界からセンターにダイレクトにアクセスして使う場合には、センターとして、「産業的な利用の要件として知財面、あるいは技術面において、どのように扱うのか」など、産業界のスーパーコンピュータの利用促進を図っていく上で、支援も含めていろいろ対策を練っていただく必要があるかと思います。ぜひサポートをお願いしたいと思います。

【土居主査】
 極めて重要な点で、JASRIもビームのところで、産業界と直でやっていらっしゃいますよね。したがって、そういう点に関しましても、前例がないわけではありませんので。ただ、次世代スーパーコンピュータとSPring-8は、異質のものですから、またその点はこの場でご議論いただいて、うまい方向に持っていければと思っております。

【福山委員】
 実は、先ほどの私のパワーポイントの14枚目に、計算物質科学連絡会議のメンバー表が出ています。18ページにも書きましたけれども、そこの中に、高田さん、中村さん等、産業界からの方が毎回お見えで、毎回意見交換のときには、産業界でどう考えているかというのをご紹介いただいています。ごく最近の2月にあった幹事会のときには、百数十社でしたか、産業用何とかというグループがございますね。そこで意見を取りまとめつつあって、かなり具体的なアクションをとられているというふうに、私は理解しております。

【表具委員】
 今までのご意見の中で、特に産業界との連携の部分で、実はきょうも藤木審議官に出ていただきまして、私の地元での受け皿として、計算科学振興財団をつくりました。その趣旨というのは、あくまで今後のスーパーコンピュータがオールジャパンの中で、特に産業利用を進めていく受け皿をしっかりつくりたいなという思いがありまして、きょうも経済界の方に来ていただいて、スパコンを理解していただこうというセミナーを持ったところです。
 先ほどの登録機関のこともそうなんですが、どういう要件でどういう能力を持ったらいいのかというのも、地元としてもそれを一生懸命勉強して、できればそういった受け皿をしっかりつくっていきたいなと。その1つのスタートとして、財団を今、つくらせていただいております。今、加藤先生が言われたように、そういった産業界の利用を推進するために、今、ちょっと考えていますのは、次世代スーパーコンピュータ利用推進協議会というような形で、経済界の人に一定の会員として出資をしていただいてやれるようなスキームをやっていきたいなと。いろいろなチャンネルが、おそらくこれから出てくるかと思います。JASRIのときは、ある意味関西財界でいろいろ仕掛けて出捐を願って、1つの組織を一気につくっていって指定機関にしたわけですけれども、今回の場合、まだちょっとはっきりした状況が見えないので、とりあえず産業界の意識を高めて、利用できるんだということをもっと理解していただこうと。今はまだ、研究機関の人じゃないかということで、産業界でどう利用するのかというのがあまり意識されていない部分もありますので、そのあたりが、我々の役目かなと思っています。

【川添委員】
 もともとそういう話については、今ある7大学の昔の大型計算機センター、現在の情報基盤センター群で話をして、今年度から、文部科学省のほうからサポートいただきまして、7センターで、今、22課題を引き受けています。その方法には2つあって、1つのほうは、今、加藤さんがおっしゃるように、民間との共同研究という、今までの枠組みの中でやってきたものですけれども、もう一つは、民間のほうにお願いする。民間がお使いになるので、有料でもお使いになりますかと聞きながら、お金をいただくという方策も決めた上で。ただ、それについてはちょっと難しい点もあり、いろいろなことを考えなくちゃいけない。ただ、情報基盤センター群としては、文科省に描いていただいた絵でも、上のところに持っていくためにどうするか。僕らのは底の部分ですから、そこで練習をやり始めていますというのが1つあって、それなりにお使いになる企業の方もいらっしゃる。大学のレートですから、結構安くたくさん使っていただいているのが現状です。半年たって、それなりに評判がよかったんです。それで来年度は、もっと増やしていただくという話も、今、しております。
 それから、もう一つのほうは、地球シミュレータ。これもイノベーションといっています。ちょっと名前がわかりにくいというか、あまり関係ないようなイノベーション創出事業とかという名前でやっていますけれども、実際はスパコンの民間共用をやっています。地球シミュレータのほうも、ほんの数パーセントみたいなことを言うんですけれども、相当の時間を民間に提供しています。それも今、14課題。課題選択をやっているんですけれども、そこの中でも、お使いになっているのは結構大企業です。JRさんとかが新幹線の計算をするとか、そういうたぐいが多いのです。それでももっと広げていくという話をしています。3年目に入るので、やはりお使いになる人が来ると、毎回審査委員会では、お金を払ってでも使いますかと聞いています。相手はもちろんお金を払うようになるんだったら払いますと言いますけれども、ほんとうに払うかどうかは別です。とにかく今は皆さん、お金を払ってでも使いますという、ある意味で言質を取りながら、無償で提供しています。地球シミュレータに関しては、有料にするということを決めていただいているはずですよね。そろそろいつから実行するかという、そういうレベルに来ています。

【佐藤委員】
 はい。

【川添委員】
 ですから、イノベーション創出事業に関しては、2011年の前から、ある意味で十分練習を積んだ上でいけると考えております。

【土居主査】
 1つ確認させていただきたいのは、先ほどちょっと出ました、スーパーコンピューティング技術産業応用協議会というのは、東大生産技術研究所の加藤先生のところで、拠点としてやっていただいているシミュレーションを、要するに産業界へ展開しようということで、柘植さんが取りまとめをやっていらっしゃるものですよね。

【藤木審議官】
 スーパーコンピューティング技術産業応用協議会は、ルーツは昔のNAREGIプロジェクトとか、先生おっしゃいました、革新的シミュレーションソフトウェア開発のプログラムなんですけれども、今はさらにその視野を広げて、スーパーコンピュータの産業利用、あるいは、あそこには大学型研究機関も若干十数機関入っておりますから、そういったいわゆる科学利用も含めて、次世代スーパーコンピュータの利用を視野に入れた促進策を、いろいろユーザーの立場からご検討いただいているという組織に、今なっております。
 先ほど表具委員のほうから、さらに産業界に多面的にいろいろ広げるということで、計算科学振興財団のほうでも、産業界の意識を高揚されるさまざまな事業が行われているということでございますから、そういったいろいろな産業界の働きかけの流れが、いずれ大きな流れになっていくのではないかと思いますし、ちょうど今、川添先生からおっしゃっていただきましたように、産業界の方に、国の次世代スーパーコンピュータの政策をお話しする機会をいただきましたので、まさに今、川添先生がお話しいただいたこと、すなわち、いろいろ次世代スパコンを使えといってもハードルが高いので、現在の7大学の持っておられる計算機センターの資源、それから地球シミュレータの計算資源、そういったものの一部を国の費用でいろいろご相談に乗りつつ、開放しております。そこでまず、これは言葉が悪いけれども慣れていただいて、先ほど先生が、革新的シミュレーションソフトウェアで開発したプログラムを、今、フリーソフトウェアである程度使えるという話もご紹介いたしまして、それに改変を加えていくと、やっぱりある程度有償を考えざるを得ないわけですけれども、現在、国としても、いろいろ提供できるツールがそろってきていますので、そういうのをできるだけいろいろな方に知っていただいて、多く利用していただくということで、国としてもいろいろこれからも外向けに働きかけていきたいと思いますので、その点、この機会に述べさせていただきました。ありがとうございました。

【土居主査】
 各所で予行練習をやっていただいているのは、それはそれでその後、うまくこれに合致したようなものができるというようなことで、裾野は裾野でやっぱり保っていただく必要があろうかと思いますが、ぜひそこで得られました知見をこの場でご披露いただき、うまく取りまとめていけるようにお願いできればと思います。
 ですから、加藤さんがご心配の向きは、それなりに進んでいるようなことでございますけれども、さらなるご意見を、またいただければと思います。

【加藤委員】
 では、もう1点追加をさせていただきます。医薬品関係ではいわゆる市販というか、商用プログラムを昔から利用しております。そのプログラムの多くは、もとをたどれば世界の大学で作られ、それが10年、20年という歴史を持っており、なおかつバージョンアップされ、性能も上がってきています。企業が使うという観点から、わがままを言いますと、プログラムは長くサポートされ、より良いものになっていくというのが希望です。作られたプログラムはそれを維持・管理いただいて、より良いものにしていただければ、産業界としても、使いたいという機運がどんどん上がってくると思います。

【吉川委員】
 次世代スパコンの産業利用の話が大分出ているので、私自身が感じている議論が必要な4つのポイントを、ちょっと申し上げたいと思います。
 1つは、やはりコンピュータセンターなので、アプリケーションプログラムをどのように用意するかという話です。産業界のニーズというのは、既存のプログラム、あるいは市販で広く使われているプログラムをそのまま次世代スパコンで活用して、いい成果を上げたいというニーズがかなり大きいと思います。ただ一方で、市販のプログラムをスパコンでそのまま動かすということは、アーキテクチャやオペレーティングシステムが異なるのでそのままでは無理だろうということもはっきりしている。そこでどう移植するかという問題が、非常に大きな課題になるのではないかと思います。コンピュータセンター側で、ミドルウェアとかコンパイラーとかライブラリーを充実させるという方策もありますけれども、もっとダイレクトに、市販の有望なアプリケーションプログラムをポーティングする。当然、ソースコードに手を入れなければいけないわけなので、ISVの協力が必要になってくるわけですけれども、そこをきちっと立ち上げて、極端な話、世の中で広く使われているベストテンのプログラムを次世代スパコン環境に移植するというようなことを考える必要があると思います。これは当然、国のサポートが必要な施策だと思いますが、それをやるかやらないかで、産業界の利用の広がりというのは、大きく変わってくるんじゃないか。それが1点です。
 それから2点目は、秘密保持というものをどう考えるか。これは成果の公開と裏腹な話になるかと思うのですが、産業界の利用の場合には、当然企業のグローバルコンペティションの中での利用になるわけなので、シミュレーションプログラムの入力データ、それから、結果として出てくる出力結果についても、秘密保持というのは非常に重要な条件になります。また、離れたところに置かれたセンターに、ネットワークを使ってジョブを投入するとかということがあると思うのですが、ネットワーク回線上のデータの守秘性というものをどう担保するかというあたりが、非常にポイントになるかと思います。
 それから、3番目のポイントは、アベイラビリティーといいますか、当然すばらしいセンターができれば、研究者、産業界を含めて、利用希望が出てくるかと思いますけれども、それをどう調整するかという問題です。もちろんどこか特定のところが長い時間占有してしまうということが許されない、公平性というのは非常に大事になってくると思うのですが、一定程度の産業利用枠の確保というあたりを、考える必要があるんじゃないかと思います。
 4点目は、コストの問題です。当然企業活動の一環として行う場合には、投資とリターンとの関係で、費用対効果、意味があるということがジャスティファイされる必要があるわけなので、ある程度使うことに対する対価を支払うというのは当然だと思うのですが、リターンと費用のバランスというものが、やはり産業利用促進にインセンティブが働くようなレベルの仕組みというのが大事じゃないかと思います。以上4点、申し上げました。

【土居主査】
 また改めて、その一つ一つをどうするかというようなことをご議論いただかなきゃいけないような、重要なテーマだと思います。

【川添委員】
 計算センターをやっていて深刻なのは、上のほうから順番とかいう話で決められないということがあるんです。どのプログラムがいいかというようなことを先に決めて入れることをすると、そうでない人もいたり、プログラムを用意しておいて、お客さん、どうぞというのは、なかなかやりにくいところがあるんです。それで、今のところ、情報基盤センター群では、あまり市販のプログラムは入れていないんです。それはみんなで契約して、7大学全部で山分けするとか何かすればできるのかもしれないんですけれども、みんなが上から順番でやってもしようがないというのもあります。それから、やっぱりある意味で、競争的な話になってくると、いいやつはうちねという話になってくるかもしれない。今の話も、次世代スパコンで商用のプログラムの何を入れるかというと、どういうふうにするかという選定がすごく難しくなります。それから、民間に利用していただくとなると、価格がまるで違うんです。ハードウェアはいいんですけれども、ソフトウェアのライセンスに関しては、ある意味で、民間利用が高くなってしまいます。そこを全部用意しておいて、どうぞと言いにくいという面があります。
 その辺で、ちょっと躊躇するところがあるのと、それから、せっかく用意しても、例えば、先ほどの地球シミュレータとかイノベーション事業なんかでも、ドラッグデザインの会社の方は、基本的にはおいでにならないんです。それは先ほどおっしゃる費用対効果で、自分のところでやってももとが取れるというのと、セキュリティー上、僕らを信用していないというのは変な言い方かもしれないんですけれども、やはり自分の会社の中にデータベースか何かをセットされてやっていらっしゃる。ほんとうに民間で計算機で設計なさっている人たちが、お客さんとして来るのかということについては、セキュリティー上と、中にデータを残していいかとかいうのも含めて、計算が終わったら全部クリアしますなんて言ってみても、やはりすごく難しいと思います。
 そういうことをどうやってクリアしていくかという話が、重要な課題として残っています。経験上、大学の計算センターにも地球シミュレータにも、費用対効果の上がっていらっしゃるところからは、おいでにならないという実態はあります。

【土居主査】
 いろいろ問題はあろうかと思いますが、またその都度その都度お願いいたします。

【平尾委員】
 先ほどから、SPring-8の話が出つつあるんですが、やはりSPring-8と決定的に違うことは、次世代ペタコンができて、だけれども、川添先生がおっしゃったように、大学の基盤センターには、それには劣るけれども、かなり性能のあるマシンが入っていますし、物性研であるとか、分子研だとか、いろいろなところに同じようなスパコンが入っているわけです。ですから、そういう意味では、今回のペタコンができることによって、やはり日本全体で、計算機利用の健全な、重層的というんでしょうか、あるいは階層的利用を確立すべきだと思うんです。それで、先ほど川添先生がおっしゃったように、大学の基盤センターの大型マシンも、今、民間のほうで使っていただけるようにという形で、少しオープンになったわけです。そういう流れというのは、これからも広がっていくだろうと思うんです。ですから、そういうことも含めて、やっぱり大いにペタコンを使っていただくことは事実なんですけれども、さっき言ったような計算機利用の構造とか、あるいは情報ネットワークの構造というのは、きちっと構築する必要があろうかと思います。
 それから、私は今度のペタコンは、スーパーコンピュータでしか達成できない世界というのがあるわけで、それをやっぱり大事にしたいなという思いはございます。民間の方、産学連携で出てくる課題があったら、ぜひそういうのをやっていただいたらいい。けれども、何もかもあれでというのではなくて、やっぱりほんとうにあれで威力を発揮するものというのはあるわけですので、そこは大事にすべきじゃないかなという気はしております。

【川添委員】
 定量的にいいますと、2012年になると、7大学センタープラス筑波大とか、東工大とか、物性研とか足すと、どっこいどっこいのパワーがあることになります。だから、やっぱりそこは考えなくちゃいけないところで、特別バーンととんでもなく大きくて、ほかのを足してもこれぐらいじゃなくて、掛けるn、およそ10あるわけですから、1けた違うのでも掛ける10になると同じになっているので、そこのシェアはちゃんと考えないとまずいと思います。大きな計算機を置いても、10人で分けて使う、全部で1ジョブを計算するわけじゃないですから、大きな計算機ができます、神戸にありますけど、シェアして分けると、その1個ずつ分けたジョブはほかでも動きますということになります。
 よく最近、地球シミュレータでないとできませんとかいうのを聞きます。地球シミュレータ全部使えば、ほかで動きませんは正しいんですけれども、実際に実行している場合には、全体を1ジョブのために使うというのはめったにない話なんです。そこについては、次世代スパコンも同じことが起こりますので、よく考えてやらないといけないと思います。

【土居主査】
 今、平尾先生もおっしゃられた重層的なというのは、ご記憶あると思いますが、総合科学技術会議でも、そういうような重層構造をうまく考えた上で運用を考えよという宿題も投げられているわけです。極端な話、地球シミュレータができたときも、10分の1、100分の1で展開しているわけですから、ぜひこの場でうまい形をとれるような方向に持っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【安岡委員】
 前2回出ていないものですから、もし前に議論されていたら申しわけないと思います。ユーザーの立場から、この計算機システムに、どういう種類のユーザーがいるかということで、2点申し上げたいと思います。
 佐藤先生が前回のときにお話しされたかもしれませんけれども、私は、地球シミュレータのペアになっている地球フロンティア研究センターを、その当時大学と併任していたわけですけれども、そこで感じたことが1つあります。地球シミュレータができてから、すぐに非常に高い効率で動き始めた1つの理由は、それができ上がったときにすぐ使いたいと口を開けて待っていたユーザーが、地球フロンティア研究センターにいたんです。地球シミュレータができる前に組織をつくって、これはエンドユーザーです。エンドユーザーが待ち構えていたという体制があります。このシステム自身のユーザーには、例えば、計算科学とか、計算機科学の方々がいるというのはもちろん非常に重要ですけれども、その方々とは別に、エンドユーザーのコミュニティーがしっかりできていないと、ほんとうの意味で重層的な利用ができないのではないかという気がいたします。それをどういうふうにネットワーク化して、この計算機ができるまでに口を開けて待っているような体制をつくるかというのは、結構重要ではないかという気がいたします。

【佐藤委員】
 今の安岡先生の論点、あるいは平尾先生の論点は非常に重要なポイントで、確かに全体のバックグラウンドを上げていく部分と、それから、非常に先端的といいますか、そういう形でやっていく部分をどういうふうにするか。そこの議論がほんとうに重要で、やはり大学に、先ほど10校と言われましたけれども、そのキャパシティは大体同じぐらいになるであろうと。そうしますと、その辺のすみ分けの部分をほんとうにちゃんとしておかないといけないだろう。
 安岡先生の言われたように、例えば、非常に大きなものとしては、1つはやっぱり地球シミュレータを使った人たちで、先ほど川添先生が、地球シミュレータしかできないものがないのかと。ほかでもできるじゃないかと言われましたけれども、やはり地球シミュレータでなければできないものもかなりあるわけです。それがやはり、世界をリードしていく部分だと。地球シミュレータの中にもそういうのがありますから、安岡先生が言われたように、そういったものをちゃんと今から育てていく、そういう体制というものをちゃんとしておかないと、できたけれども、ぼそぼそ使っておっては、数年たってもほとんど出てこないという結果になりかねないので、産業との問題も含めて、やっぱりすみ分けをどういうふうにしていくか。それはかなり大胆にしっかりと、情的な形ではなく決めていく。それだけの気構えを、例えばこの作業部会が持っていないと、すべてが一緒にどれもどれもという形になって、結局日本としては虻蜂取らずになる可能性が、なきにしもあらずだと。だから、そう意味では、かなりしっかりとその辺のすみ分け、使い分けといいますか、それは国全体のコンピュータシステムのあり方はグリッドでつながれているわけですけれども、そういった議論をほんとうにしっかりしていかないと、せっかくつくっても、かなり投資したものが生きてこないのではないか、そういう恐れはあります。

【福山委員】
 今の点、いろいろな観点から繰り返し我々の仲間の中でも、意見交換されてきました。今、佐藤先生がおっしゃったように、今の段階で既にそういうフォーラムをつくらなきゃいけないだろうと思います。ペタができた後、個別の課題を議論する場に加えて、分野をまたがってテーマを調整したり、ピックアップするという機能が必要です。それから、さらにそれを上に上げて、ペタでしかできないものをほんとうに戦略的に活用するようなタイプの、そういう意味でのステアリングコミッティーも必要です。その2つの委員会、あるいはフォーラム、何と呼んでもいいんですけれども、そういう意見交換をする場は、今すぐにでも必要だと思います。あの図の中で、ほかは自然に似たようなものができていくだろう。だけど、今、コンピュータができない前から必要なのは、その2つのステアリングじゃないかという意見はいろいろな段階で出てきています。
 ですから、国として、そういう意見交換の場をできるだけ早く、コミュニティーのエキスパートを集めて戦略を議論する場をできるだけ早く欲しいと思っております。

【松本委員】
 ちょっと中座して、もしかすると同じようなことを言うかもしれませんが、今おっしゃったポイントは私も全く賛成で、スパコンのユーザー、スパコンを使った科学をやっている方々というのは、各分野ほぼ独立して振興してきましたので、横のつながりというのは、なかなか今は希薄だろうと思います。物性関係は物性関係でやっておられますし、宇宙は宇宙関係、生物関係、生命科学関係、固有のソサエティーができておりまして、それらの間の横のつながりが希薄だという気がしております。
 神戸を中心に、少し関西地区で勉強会でもやろうかという話は進行はしつつありますが、これはやはり全日本で、どういうつながりをするかということは、ぜひ早い時点で、この委員会が主導してやっていただきたいと思います。多分、考え方の違いがかなりありまして、ハードウェアに対する要求も違いますし、シミュレーション科学であれば、それに対する考え方もそれぞれの研究分野で文化的な土壌が違うので、違うと思います。そこを十分にやっておいて、先生がおっしゃる上側の運営委員会で議論できるような体制を、これは多分一、二年はかかるだろうと思っております。よろしくお願いしたいと思います。

【福山委員】
 すぐにでも必要ですよね。

【土居主査】
 この点に関しまして、審議官、何かご意見ありますか。差し当たっては、おそらくこれ独立にという形にはなりません。今、松本先生がおっしゃられましたように、ここの作業部会のもとに、幾つかの必要なWGみたいな形でつくらせていただいて、そこで集中的に審議をしていただき、その結果をここに持ち上げていただくというのが差し当たって考えられることで、それらに基づいて、ああいうような形のものへ向けていくような形になるのではないかと思うのですが。

【藤木審議官】
 大変そこは私どもも悩んでいるところです。実は、この次世代スパコンのユーザーの範囲というのは、おそらく大変広いのではないかと思うんです。それはあらゆる科学分野で、シミュレーションというのが、プライマリーかもしれませんけれども、第3の分野になるわけですから、その広がりをどのようにとらえていいのか、実は大変悩んでおりまして、私どものこれまでやってきたことは、その中で、多分一番大きなユーザー層になるであろうと思われる、生命科学とナノテクノロジーあたりをターゲットに、3年後にマシンができたときに、きちっとしたアプリケーションソフトウェアが、その性能を十分に引き出せるような形で整備されていることを目標にやっているわけです。ただ、もちろんナノとライフがすべてではないわけで、宇宙もあれば核融合もあれば、それこそ物性もある、いっぱいあるわけです。地震もあるだろうし、気象観測、大気変動もあるだろうし、そういうものすごく幅広いユーザーの集まりを、どのように形成していったらいいんだろうかというのは、実は我々、ずっと悩みでありまして、率直に言うと、そういう全体をつかみ切れていないので、今、ライフとナノに絞っているという状況が生じているわけです。
 ちょうどこの話が出ましたので、その辺のユーザー層の方々の組織化みたいな議論が必要であれば、ぜひこの作業部会でやり方についてご示唆をいただければ、それは大変ありがたいと思います。ユーザー層の方全員にこのお話をしていくのに、どういうチャネルでやったらいいかというのは常に悩むところで、個別の学会になったり、個別の分野の集まりになったりしているのが現状ですから、大変重要だということを我々は認識をしつつも、どうやっていいのか、ちょっとまだ知恵が出ていないという状況なので、ぜひこの場でお知恵をかりさせていただければ、我々はそれに基づいて、アクションを起こすことについては何のためらいもありませんので、ぜひお知恵をおかりしたいと思います。

【山根委員】
 この外から産業その他、取材をさせていただいている立場からいくと、やはりこの次世代スーパーコンピュータは、世界における日本のプレステージ、科学技術力、あるいは世界への貢献の大きさを示すためのものすごく大きなものであって、そういうことに大きな投資額を上回るぐらいのアピールを、日本というのはやはりやるなと世界に言わせるような仕事をしていただきたいんです。安岡先生がさっきおっしゃった、口を開けて待っていらしたと。温暖化問題なり、地球の気象関係の貢献は、実際にものすごい大きなものがあったわけですから、もちろん皆さんいろいろな分野でお使いになりたいというのはそれで結構なんですけれども、あらゆる分野で、世界で今、まだ解けていない課題を世界が待っている。こういうマシンがあればできるという課題が必ずあるんだろうと思うんです。
 1つは、やはり地球シミュレータは、名前がよかったと思います。最初に地球シミュレータという名前があって、地球が抱えている非常に手がつけられないような大きな課題を克服していくぞ、解明していくぞという気概を名前から覚えたんです。そろそろこの次世代スーパーコンピュータも、スパコンなんて言わないで、何かいい名前をつけていくと見えてくるかなということが1つと、やはり世界にアピールするために、例えば、物質の根源の解明とか、あるいは太陽系か銀河系の新しい謎が解けますとか、ある意味で一般受けするわけなんですけれども、ただそれは、その仕事によって、次世代スパコンを使った研究者の方からノーベル賞級の人たちが出る。ノーベル賞がいいというわけじゃないです。それぐらいの仕事が出てくるということを、最初から設定をしておくというのが3つぐらいあってもいいんじゃないかと思うんです。
 今、どういう形でそういう課題を集めればいいかということの、藤木さん、お話がありましたけれども、ここのところがどうしてもわからないんだ、これをどうしても解きたいという課題は、それぞれの分野で皆さん持っていらっしゃると思うんです。素粒子なり、もちろん温暖化の問題でもまだ十分ではありませんし、それから、私は地球シミュレータで非常に感銘したんですけれども、それは佐藤先生には簡単な仕事だったのかもしれませんが、新日鉄で、製鉄所の高炉の内部のガスや温度の動きというのは、絶対見ることができないわけですよね。周りにたくさん温度計を置いているんですけれどもわからない。これは地球シミュレータで、たしか4分の1でしたっけ、全体までは計算できなかったんですけれども、4分の1ぐらいで中身が見える、可視化できたんです。これはものすごく大きなことで、こういうものが進むと、今、製鉄部門というのはCO2(二酸化炭素)の排出の3分の1なんですけれども、そういうところの削減にもつながるような新しい高炉とか、製鉄の設計とかが出てくる可能性があるんです。そうなったら、非常にこれが社会に貢献しているということになるわけです。あのとき、どういうアプリケーションを使ったのか全然わからないんですけれども、ごく最近それを見まして、こんないいことをやって、こんなにわかりやすくいい成果が出たのかと思ったんです。
 ですからそういう意味で、今、生命科学とナノテクとおっしゃいましたけれども、生命科学とナノテクは、科学の中でも一般の人たちにとって特にわかりにくい分野なんです。ですから、これがメーンでもいいですけれども、わかりやすい分野で、小さくてもいいんですよ。これからこれが出たというアピールが、ものすごく大事なんです。
 例えば、神戸を考えると、加古川とか製鉄所がありますよね。そういうところの高炉1個と、次世代スパコンがいつも仲よく連携しながらずっと実験やっているとか、何かそういうものもあっていいんじゃないですか。大した能力を使わないで済むと思うんですよね。それこそ、これほどのスパコンは要らないかもしれませんけれども。そういう意味で、日本は、特に例えば製鉄所で言うと、今、世界の資源の質がものすごく悪くなっていて、鉄鉱石もコークスも、ものすごく質が悪いんです。どうやって効率的に高炉の中で還元反応を行うかというのは、非常に難しくなっているんです。そういう世界が直面している問題、産業界が直面する問題にも大きな貢献ができて、それは僕は、先ほどのセキュリティーの問題ではなくて、鉄の業界全体が世界の産業界に貢献しますよというように、1つ国家目標ぐらいの感じでやってもいいんじゃないかという気もちょっとしているんですけれども。その辺からやっていかないと、温暖化問題って解決できないだろうと。温度がこれだけ上がりますといっても、それは解決じゃないわけで、日本はいよいよ産業界のそういうところで解決の新しいノウハウを見つけていくというようなことを、最初に言ってしまうと。それをやると、日本っていいことをやっているねと言われるんじゃないかと思うんですが。

【土居主査】
 冒頭におっしゃられたネーミングについてはあちこちで出ておりまして、地球シミュレータといったような、ああいううまいのをどう考え出すかというのが、我々にかかっている使命の1つでもあるんだろうと思っておりますので、お願いいたします。

【吉良委員】
 今の山根先生のご意見の後半を、ちょっとセカンドしたいと思います。SPring-8でも、最近産業利用をやったおかげで、かなり世間の評判がよくなってきているんですけれども、結局こういう大きな元手をかけているもので、社会に一番訴えるのは、今おっしゃったように成果が見える部分で、SPring-8もいっぱい仕事はあるんですけれども、そのうちの何パーセントがやっている産業の成果だけをまとめて見せると、政府も業界も納得してくれるというような面があります。私の目から見たときには、やっぱり産業利用が入ってくるときは、ルーチンの仕事をやるとか、産業の要望に合わせるというのが2番目で、こっちの経営側からのセンスでいったら、やっぱり世間との接点が非常に強く持てるというところがポイントだろうと思います。

【西尾科学官】
 先ほど来、山根委員のおっしゃられたこと、例えば、3つなりの課題を考えるということは、私も非常に賛成なんですが、言うまでもないことなんですが、そのときに、先ほど川添先生もおっしゃられた意味で、今までの7大学、あるいは10大学のスパコンの練成なり統合ということではできないもの、やっぱり次世代スパコンを使わないとできないというもので、3つぐらいを考えていただけると、さらにインパクトがあるんじゃないかと思います。

【宮内委員】
 先ほどのSPring-8が一番一般的に知られたというのは、毒カレーの事件がありましたね。あのときに一般の人が、こんなふうにしたら分析できるんだと。だから、そういうふうな事件があったらちょっと大変なんですけれども、山根委員が言われたみたいに、世界的な課題でこんなのに使えるんだというようなことがあれば、すごく皆さんにも理解されやすいなという点と、あともう一つ、どうやって協力を求めるかということで、大学の先生方が研究されたりするのに使うのは、学会とかいろいろなところで普及していくようなお話をされていったらいいと思うんですけれども、じゃ、産業界を巻き込んでどういうふうにアピールしていくかというときに、わりといろいろな産業界、組織があるんです。
 例えば、私もメンバーなんですけれども、経済同友会っていろいろな委員会があったりとか、産業懇談会があったりとか、いろいろなところで結構講師を求めているんです、話してほしいなと。ところが、そういうところってなかなか気がつかないジャンルだったりしますので、そうしましたら、そういったところにお話をするような、広報担当というか、そういった方をどなたか1人決めて、一般の人があっと思うような、それなりの肩書を持った方じゃないと--それなりというのは失礼なんですけれども。この人が話せば納得できるみたいな、そういうような広報の担当の方を立てて、それでいろいろなところの講演会とか、勉強会とか、セミナーとか、経済界のいろいろな方が集まるところでお話をされていくと、そこでじゃあ、自分の企業ではどういうふうにというようなことで、この人もというふうな形になるんじゃないかなと、そんなふうに思いました。

【大島委員】
 私もきょうが初めてなので、既に議論されているかもしれないんですけれども、先ほど、安岡先生がご指摘になったユーザーとしての立場から、もう1点、ちょっと私もつけ加えさせていただきたいんですけれども、実際に今、ペタコンの生命現象の中に、私もメンバーとして加えさせていただいていて、それこそペタコンができたらすぐに使いたいというユーザーの1人なんですけれども、そのときに問題になるのは、やっぱりデータがかなり大きくなりますので、そういう意味での使い勝手というか、どうしてもシミュレーションというと、わりと皆さん、ソルバーのところをいかに速く、また大規模にするという考えで、そちらに集中する結構があるんですけれども、それに伴って、どうしても扱うデータ量が大きくなりますので、それをサポートするような体制というのは、なかなか見落としがちになるんですけれども、そういう点を、ぜひ何らかの形で強化するような形にしていただければありがたいなというのが1点です。
 あともう一つ、全然違う観点で、広報のことが先ほど出たんですけれども、最近、特に国のお金を使って、こういう大型の研究をやっている際には、研究者自身のアカウンタビリティーというのを一般の方に提供して、理解を得るというのが非常に大事で、研究者がやるのは、そのトレーニングがきちんとされていないので、やっぱり限界があるんです。先ほどご指摘があったように、そういう道のプロの方がきちんと魅力あるような形で、研究成果も含めた情報を外に発信するという体制というのも、結構見落としがちなんですけれども、重要な観点だと思うので、その点をぜひ強化していただけたらなと思います。

【山根委員】
 さっきの広報のことで、いますぐにということじゃないんですけれども、ぜひこの神戸のセンターができたときに、中にプレスルームをつくっておいていただきたい。SPring-8は、実はものすごい成果があったわりには、中央で新聞の記事になることが非常に少ない。これはどこでしたっけね、地元の某大手新聞の支局長さんと話したときにものすごく嘆いていて、どんどん記事を東京に送るんだけど、地方発ということで、東京側で記事にしてくれないんだということをすごくおっしゃっていました。それは支局の方がとことこ出かけて支局から出すからであって、ここにプレスルームを置いておいて、これも記者クラブ的なものか、あるいは外国のジャーナリスト、外国人記者クラブにも枠を置いておくというものがあったりと。ただの部屋ではだめで、結構アメニティーがいいということはすごく大事で、記者たちが、あそこは快適だよと。そこで研究していらっしゃる方と懇談できるようなサロンみたいなのがあるとか、何かそういうものがすごく大事。これはインターナショナルな場所ですから、世界中から来たらいつでも、極端なことを言えば、宿泊もサービスしますよというぐらいなことで、世界中のジャーナリストに門戸を開くというようなことを、最初から考えていただいたほうがいいと思います。

【松本委員】
 藤木審議官がおっしゃったポイントに戻りたいと思います。キャッチコピーが必要であるとか、産業用も視野に入れてきっちりやるべきだという山根委員のご意見、全くそうだと思いますが、大事な点を1つ言いたい。一応「学」の立場から申し上げますと、学術は、我が国の土壌を形成しています。学術土壌論というのを私は言いたいんですけれども、そういう観点から、この次世代コンピュータも、既存の大学の大型センター中心にやっておられる計算グループがありますよね、先生やっておられる。ああいう部分の継承として、きちっとした議論をやる必要がある。
 先ほど福山先生がおっしゃったのは、そういうポイントじゃないかと思っておりますが、やはり学術にせよ技術にせよ、これは積み上げ、経験ということが最も物を言いますので、そういった視点を忘れずにやるという意味で、あるときにわかりいいからとかいうだけで、ある特定の分野だけ選んでしまうというのは、土壌を耕すという観点からいうと、大変大きな過ちを犯すことになろうかと思います。それは用意があって、どうしたらいいかということを提案してくれというお話だったと思いますので、私はそういった意味で、大型計算機センターでずっとやってこられた、ほんとうにプリミティブな時代から、シミュレーション科学は何だというふうにそれぞれの分野で考えてこられた方々、今は多分、世界でトップで競争しておられると思います。そのときに、山根委員が言われたキャッチコピーまでちゃんと出せるような、つまり、グランドブレーキングな成果が出るというのを競い合っていただく必要があろうかと思います。
 そういう意味で、ワーキンググループをちゃんとつくっていただいて、その分野の代表選手に来ていただいて、お互いに競い合っていただく。同時に、それを批評をするメンバーも置いておいて、どれがいいかということをきちっとやった上で運営していただく体制を急いでつくる必要があると、そんなふうに思っておりますので、福山先生の視点はそこにあるんじゃないかと思いました。

【宮内委員】
 これは実際の経験のお話なので、山根委員のお話を受けてなんですけれども、地方にプレスルームをつくりますと、やっぱりローカルでしか出ないというのが基本的にあって、兵庫県の方も今、出席されていますけれども、実は私も兵庫県の関係のプレス関係のことをお手伝いさせていただいた経緯があって、そのときに、兵庫県内のプレスルームの方々に発表しても、なかなか記事にならないんです。それで国のほうのプレスルームを一度お借りしてさせていただいて、全国の記事で、そんなに大きくはないにしても、全国の全紙にいろいろ取り上げていただいたと。そうしましたら、地元のプレスの方がすごく怒ったんです。というようないろいろな、プレスルームって非常に難しいことがありまして、全国に発信したいと思うと、やっぱり東京は情報の発信の能力が80パーセント、90パーセントと言われて、東京で発信しなかったら記事にならないことって結構いっぱいあるんです。
 そこで非常に重要なポイントが、山根委員が言われたように、中央の方も来られて、宿泊もできて、記事を書いて、世界各国からもぷらっとやって来て記事を書けるような。それと人間関係のパイプをどういうふうに、東京のプレスの方々と持つかと。そして、プレスの方は東京のほうでも集めて何か発表会をするとか、そんなこともしないと、なかなか全国には出てこないなというのは、実感として感じております。

【土居主査】
 時間がなくなってまいりましたので、本日いただきましたご意見、あるいは論点は、事務局のほうでまとめていただいて、それで次回、またそれに基づいて議論を深めていくというようなことにさせていただきたいと思います。まだまだご意見等おありになるかと思いますが、本日はこの辺までにさせていただきたいと思います。
 続きまして、次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点における研究開発機能についてということで、事務局から用意していただいております資料3がございますので、説明をお願いできますか。

【関根室長】
 それでは、資料3についてご説明させていただきたいと思います。
 ご案内のとおり、次世代スパコンにつきましては、共用施設ということで、いろいろな方にお使いをいただいたり、いかにその成果が出るような形で制度設計をしたりしていくかという側面に加えまして、これだけ世界最先端の施設がつくられるといったようなことで、ここを中核として、機能集積みたいなものも一方で図っていく必要があるのではないか。そういった問題意識で、ではそういった機能をどうやって議論していただき、または考えていくのかという視点で、少したたき台をつくらせていただきました。そういう意味では、このたたき台で決まっているというものではなくて、ぜひこのたたき台をもとに、皆さんのご意見なども頂戴し、我々事務局としても、そのほかの方々にもご意見を賜っていきたいという趣旨でございます。
 資料3、拠点における研究開発機能についてということで、この次世代スパコン、世界最先端の性能を有するマシンとしてどうやって活用していくか。または、その施設を中心にしながら、どういった研究開発を今後進めていくべきか。そういった視点でたたき台をつくっております。
 まず1.で、推進すべき研究開発についてということで、例えば、次世代スパコンを用いて研究開発を行うといった観点では、ここに書いてございますように、シミュレーション研究、それからコンピュータシステムに関する研究、いわゆる計算機科学という言い方をしておりますが、そういったものがあるのではないか。例えば、例示といたしまして、シミュレーション研究、いわゆる計算科学でございますけれども、ご案内のとおり、今、福山先生からもご紹介をいただきましたように、いろいろな機関でシミュレーションということ、ツールとしていろいろ研究開発がなされております。例えば、物質・材料の分野、それから生命科学、地球環境・防災、エネルギー、航空・宇宙、こういったいろいろな分野でシミュレーション研究が行われております。
 シミュレーション研究をもう少しわかりやすく分解すると、例えば、研究対象をモデル化し、そのモデルをどうやって解いていくか。いわゆる数値アルゴリズムというものを考え、さらにはそれをコンピュータ上で解いていくアプリケーションを具体的に開発をしていく。それを実際に計算機、コンピュータで回して、その計算結果を今度は解析をしていく。こういった一連の流れがシミュレーション研究ということになろうかと思います。それから、例えば、従来個別的に研究、または開発をされてきたモデルを相互に組み合わせるとか、そういった新たな計算手法といったものが、1つの研究開発の例として考えられるのではないか。
 それから、計算機科学、いわゆるコンピュータシステムに関する研究として、どんどんコンピュータの能力が上がっていくと、例えば、並列処理の問題、それから実行処理をどうやって最適化していくか。または計算結果を、膨大なデータが出てくるので、それをどういった形で可視化していくのか。さらにはネットワーク、こういったものが今後の研究開発の項目として挙げられるのではないか。さらには、シミュレーション研究と計算機科学の融合的・学際的な研究開発の分野として、例えば、計算機の設計とリンク、連携をしたシミュレーション研究ですとか、逆にシミュレーション研究のニーズを踏まえた計算機の設計、こういったものもあるのではないかということが考えられると思います。これにつきましては、もう少し具体化が必要ではないかということも、一方では考えております。
 加えまして、2.でございますけれども、研究開発の進め方ということで、例えば、次世代スーパーコンピュータを用いて行う研究開発については、既にある研究組織のポテンシャルを活用して分散的に推進をしていくものと、例えば、拠点を形成して、ある程度集約的に推進していくといったような分野があるのではないか。2つ目の○ですけれども、例えば、物質・材料ですとか生命科学、そういった各分野のシミュレーション研究については、先ほど福山先生からもご紹介があったように、いろいろな大学ですとか、関係の独立行政法人、または先端的な企業において実施をされております。次世代スパコンを用いたシミュレーション研究という意味では、こういった関係機関ができるだけ速いネットワーク、連携をし、研究開発を進めるといったようなことが1つあるのではないか。
 それから、計算機科学についてですけれども、例えば、次世代スーパーコンピュータそのものが、ある意味非常に最先端のアーキテクチャーであり、またはマシンであるということを考えると、それ自体がもちろん研究開発の対象でもあるといったようなことも言えると思います。そういった意味では、次世代スーパーコンピュータを活用した計算機科学の1つの例示として、次世代スパコンの利用者と密接な連携をとった形で、こういったアーキテクチャーとかを研究していくといったようなこともあるのではないか。
 それから、別の切り口の議論として、シミュレーション研究のうち、例えば、アルゴリズム、開放を考える部分ですとか、またアプリケーションに具体的に落としていくような部分というのは、実は分野横断といいましょうか、ある意味共通基盤的な部分ではないか。さらには、計算機科学においても、例えば、シミュレーションと密接に関連した部分などについては、従来から行われているような各分野におけるシミュレーション研究ですとか計算機科学の研究、こういったものの枠を超えて、横断的な取り組みといったようなものが、ある意味効果的、効率的な部分があるのではないか。
 それから、2ページ目の上から3つ目の○ですが、一方でシミュレーション研究を考えたときに、実は、取り組んでいただいている人材というのは、いろいろな分野に広く分布をしているということが言えると思います。特に異なる分野のシミュレーション研究においては、コミュニティー間の交流、これはもちろん実際にもあるんですが、決して十分とは言えないのではないかというご指摘も、一方ではあるかと思います。それから、高性能の計算機の開発ですとか、より大規模な数値計算の効率的な実施という観点では、今まで以上にシミュレーション研究と計算機科学のより強い連携が望まれている。さらには研究交流や技術移転といったことも含めて、産学官のセクター間でのより強い融合、連携というのが望まれているのではないか。こういった観点から、共同研究などの研究交流を推進するための拠点といったものの必要性が、あるのかないのかという視点もあるかと思います。
 いずれにいたしましても、次世代スーパーコンピュータを用いて行う研究開発のうち、どの領域をどのように推進するか、これが非常にポイントになろうかと思うんですが、これを考えていく上では、我が国の現在行われているシミュレーション研究ですとか、計算機科学に対する取り組みの現状、それから、その課題といったものを俯瞰的に把握をした上で議論していくということが、まず1つのアプローチではないかと思っております。
 そういった観点では、例えば、我が国におけるシミュレーション研究の実施体制ですとか実施課題、それから、次世代スパコンを用いて取り組むべき研究開発課題、さらにはこれらの研究開発課題を推進していく上での体制面といったものの具体化。そういったことを早急に把握をし、その上で研究開発の推進体制などについて、具体的な議論を進めていってはどうかというようなことを考えております。
 説明については以上でございます。

【土居主査】
 この一つ一つがかなり大きな問題ですので、本日すべてこれについて、べきではないかという答えが出るとは思わないんですが、いずれにせよ大きな問題ですので、ご議論いただければと思います。どこからでも結構です。

【川添委員】
 先ほど気になっていたんですが、地球シミュレータでなければできないとかという話は逆で、大きな計算機で小さい計算はできるんです。基盤センター群としてとても恐れていたのは、要らなくなるんじゃないかという話なんです。ハードとしては明らかにそうなんだと思います。ただ、計算機には3種類あって、自分のパソコン、研究室のクラスターなどの、好きに使える計算機、それから、シェアして使っている大きな計算機、それからもう一つは、地球シミュレータもそうなんですけれども、目的的なもの、金属材料研究所のもそうです。今回のは、2番目の大きな計算機でみんなでシェアするというので、難しい問題になります。そこでさっき、重層的とかいろいろな言葉をおっしゃるんですけれども、そういうふうにはならないというか、大きな計算機が小さなものを含む、大は小を兼ねるということがあるので、非常に難しいんです。
 その場合に、今までサービスしていた、さっき松本先生がおっしゃるところの、好きにちょこっと計算ができたので、日本のシミュレーション研究は進んだと私たちは認識しています。それに対して今回のは目的的というか、これをというのをやらないとインパクトがないとかいろいろなことをおっしゃっている訳です。大学の研究者は、自分の好きなことを、幾らかお金を払ったりするかもしれないですけれども、基本的には好きなときに好きなことに使えるという意味で、図書館に行って本を読めるのと同じようにスパコンが使えたというのが、今までの日本の計算機でした。それでシミュレーションがすごく進んだということです。他国、アメリカに比べても、抜群の環境なんです。
 そういうのを大事にしていくということで、ちょっと目的的なことだけ言われると引っかかるところがあります。そうなるとみんなどうなるかというと、1つは、自分の研究用の計算機を自分で買い込むという話になったり、もう少し集中して効率を上げるというところもうまくやっていかないといけないんですけれども、今言った情報基盤センター群としては、課題選定というのはしないのが基本なんです。基本的には、皆さんがお使いになるのを好きなだけサポートしたいと。もちろん皆さんいっぱい使いたいというんで、シェアしていただくために調整はしますけれども、基本的には選択はしない方針でをやってきました。これを実行せよと上から決めるのに対しては、ある意味で僕らは、すごく違和感を覚えます。将来、研究しているのが、今うまくいっている対象なのかというと、そうでもありません。ほんとうに基盤的で、今は何でもなさそうなことも、やはり大事なことを含んでいます。
 そういうことを、やはりどこかでちゃんと考えなきゃいけません。面倒を見るところがあるとか、人材育成するとか、そちらのほうも含めて総合的な話をしないといけないと思います。大きなものができるという話題になっちゃうと、どうしてもそこを使ったらどうするという話が中心になり、残りのやつらはシェアしてねという話になっちゃいますよね。そういう問題ではないような気がするので、少しお考えいただければと思います。

【吉良委員】
 今のご意見なんですけれども、私、コンピュータのことを全然わからないので、細かいことは言えませんけれども、これはある方針を決めたらそれだけということではないと思うんです。SPring-8は、前にも申しましたけれども、50本ぐらい使えるビームラインがありまして、それで時間もかなりあるわけです。そういう目的的な研究、戦略的な研究と、それから一般公募の研究と、大体ある時期半々ぐらいにしていたんです。一番最初は、今おっしゃった大学型の好きなことをやる研究だけで100パーセント押さえるような格好にして、それで学者の感覚で審査したから産業界が締め出されて、そこから騒ぎが起きたんです。ですから、特に学者は1・0主義で、まあ、コンピュータは特にそうなんでしょうが、1・0主義でいっちゃだめなんで、大きさがある場合には、ある程度やればいいんで。それで私は、学者の反対を押し切って、産業界が20パーセントまでは使えるようにしようといって、それに5年ぐらいかかっているんです。ですから、最初にここでそういうことをちゃんと決めて、むだとか何か、価値観の違う人はいっぱいいますけれども、ここは2割、ここは3割とかと決めるのが、多分一番合理的な使い方だろうと思います。

【松本委員】
 今の先生の意見にセカンドしたいと思います。地球シミュレータでも、佐藤センター長がそういうことをきちっとやっておられまして、産業界に確保するというのは大変難しい。特に大学の研究者というのは、いくらでもCPUが欲しいという話で、分野ごとの割り振りというのは、私も多少お手伝いしたことがございましたが、大変苦労をいたしました。やはりそういう英断が必要だろうと思います。山根委員がおっしゃったように、やはりこれはこれで国民の税金を使っているわけですから、見える産業界応用というのは、当然やるべきであると考えております。
 私が先ほど申し上げたことは、しかし学の世界もきちっと継承して、大計センターを中心にやってこられたもの、それから地球シミュレータで育まれたものを継承していく必要があるという観点で申し上げました。

【山根委員】
 私が見えるものをというのは、今の数字で言えば、大体2割から3割。あとは黙って、皆さんやりたいことをやる。言ってみれば、それをやるために2割か3割目立つものをやるということです。

【加藤委員】
 産業界からの利用という点について、コメントをさせてもらいますと、決して利益を生むものばかりに目がいっているわけではありません。個人的には例えば、物質の融点、沸点を計算で求めてみたい。それらが、スーパーコンピュータで求まるのであれば、期待が非常に大きいと思います。専門以外のところにも、ニーズが多くあるはずなので、そこを拾っていっていただければと思います。

【土居主査】
 この○を退治するのも、実は、なかなか大変なんですよ。人材1つとりましても、全部ここへ集中すればいいという話になろうはずがないですし、集中しちゃったらほかのところどうするんだという話もありますでしょうし、それじゃあ何が適切かというようなこともあったりもしますので、一つ一つの○を、やはりそれなりのところまで退治しませんと、立ち上げるときが大変だろうと思うんです。ですから、そういうようなこともお考えになっていただいた上で、何かご意見ございませんでしょうか。

【平尾委員】
 今いただいた資料3の裏面の3つ目です。シミュレーション研究のうちに共通基盤的なものが多いのでということなので、前回、小柳先生もそういう共有をもっともっと意識すべきだということをおっしゃったんですが、私はある意味でこれも正しいと思うんですが、ただこういう形で人材育成をすると、ややもすると、例えば、シミュレーション学科のようなもの、あるいは専攻のようなものをつくったらいいんじゃないか。それでこういう分野の人たちが育つんじゃないかと。私は、それは無理だと思っているんです。シミュレーションというのは、あくまでツールであって、もともとはやっぱりサイエンスなんです。サイエンスをやって、その中でシミュレーションという手法を使うということですので、もちろん共有を意識することも大切なんですが、そればかりを追いかけると、肝心の基盤のところがすべってしまいますので、その辺は非常に難しいところじゃないかという気がしています。それが1点です。
 それからもう1点は、さっきから広報の話がずっとあって、わかりやすいと言ったらおかしいですが、私もそういうテーマがあれば一番いいなと思って、分野としてナノとかライフサイエンスというのは、一般の方にわかるようなグランドチャレンジがなかなか見つかりにくいということがあります。ただ、そういう分野であっても、私は明確なサイエンスの到達点というのは、一般の方にはなかなかわかりにくいかもしれないけれども、それでもきちっとした明確なサイエンスの目標設定というのは必要だろうと思います。それは必ずやらないといけないと思います。
 それから、さっき福山先生が出されたステアリングコミッティーというのがありましたよね。あそこはほんとうに重要なところで、あそこは計算機センターじゃなくて、ほんとうの意味の戦略を考えるセンターであれば、あそこをどういうふうにするかというのが非常に重要だと思います。選定という言葉がございましたけれども、これはどちらかというとボトムアップで上がってきたものを選定するんだろうと思いますが、分野によっては、これから随分伸びるような分野を早く見つけて使わせるとか、あるいは、産業界にある割合で使ってもらうとか、ほんとうに潜在的な優れたユーザーを掘り起こすとか、そういうことも、やっぱりああいうところでやらないといけないんだろうと思うんです。そういう意味では、戦略委員会というとおかしいんですが、そういうところをもう少し定義づけるということが非常に重要かもしれないという気がします。

【藤木審議官】
 この資料3の一番最後に、ちょっと小さく提案をさせていただいておりまして、これは実は、先ほどの私がなかなか道が見つからないと言ったところをここに書かせていただいているわけですが、ちょうど先ほど松本先生からお話をいただきましたように、いろいろ幅広く、どういう分野があって、どういうふうに取り組んでいけばいいのか、コミュニティーはどういうものを持っているのか、そういうのを把握したいと、率直に思っております。
 したがって、ここの最後に提案させていただいておりますのは、ユーザーの広がりを、我々何らかの手段できちっととらえて、それぞれのユーザーの広がりがどういうお考えを持っておられるのか、少し探っていく手段を持ちたいということでございまして、先ほど松本先生から、ワーキンググループみたいなものを置いて、少しユーザーの方々をお呼びしてお話を聞いたらどうかというお話がありましたので、一番最後の小さいこの辺の3つの課題ですね。もしお許しいただければ、この作業部会の中、あるいは下、あるいはこれに密接に関連した形で、こういうご提案いただいた会をやって、今、平尾先生からも、共通基盤的なところは意外と多くないかもしれないというお話もいただきましたし、その辺も一体どの辺の位置づけで我々は考えていけばいいのか。それによっては、ここで分散的にすべてやっていけばできるのか、ある程度拠点化していくのがいいのか、その辺の感覚も生まれてくるのではないかと思うので、これは中身の議論ではございませんで、やり方についてのご相談ですが、何らかの形でこの委員会の下あたりに作業部会の作業部会みたいなものを置いていただいて、そこでいろいろなユーザーの方のお話を俯瞰する形の何らかの資料をつくっていくということを、先生方のご協力をいただいて客観的な根拠がつくれれば、我々としては大変ありがたいと思いますので、その点、少しご検討いただければありがたいと思います。

【土居主査】
 途中でちょっと申し上げたことと関連があるかと思いますが、今のようなことで、要するに、実態、分野横断的な形で、我が国はどういう形になっているかということを把握する上でも極めて重要な話だと思いますので、この下に、皆さん方のお知恵を拝借しながら、構成等々も考えなきゃいけないかと思いますけれども、こういうチームをつくって早急に進めていただくというようなことでいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、審議官、ぜひこの下にそういうメンバーをそろえていただいて、お進めいただくような形でお考えいただければと思います。

【藤木審議官】
 ありがとうございます。メンバーについては、主査とご相談させていただく形でお願いいたします。

【土居主査】
 はい。

【福山委員】
 今のことに関して、実は、ワーキンググループをやりました。第2回目の資料の参考5-2をごらんください。
 矢川先生とか、ここにおられる何人かの先生方と一緒だったんですけれども、そこの最後をごらんいただくと、その委員会でも随分気になったことで、情報をできるだけ広い範囲で集めたいということで、ネットワークづくりを随分試みました。別添のところについています。その時点でできる範囲で、つながるところをピックアップしました。実は、最後をごらんいただくと、このほかにも環境とか、材料とか、ネットワークが考えられると。「本リストへの追加情報をお寄せください。適宜追加・修正の上、公表いたします。連絡先、文科省」となっています。こういうデータがちゃんとそろっていると、今の情報を集めるきっかけにはいいかと思いますので、ご利用いただければと思います。

【藤木審議官】
 ありがとうございます。

【土居主査】
 ありがとうございます。

【西尾科学官】
 1点だけ。いわゆる次世代のスーパーコンピュータのプロジェクトを概算要求等々していく過程においても、例えば、3つポツあるうちで、次世代コンピュータを用いて取り組むべき研究課題、開発課題に関しては、例えば、矢川先生のもとで、今まである程度そういうことを議論するワーキング等々がございましたので、そこでいろいろ議論をされたことがあるという前提のもとで、今だからどうするのかという次のステップのワーキングになることが大事ではないかと思っておりますので、その点、また考えていただければと思います。

【土居主査】
 今日、頂戴いたしました福山先生のご意見も、今、ちょうどご指摘がありましたように福山委員会(次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループ)ができていて、いろいろご検討されている。と同時に、そのとき並行して走ったと思いますが、矢川先生の委員会(計算科学技術推進ワーキンググループ)があって、おまとめいただいたというようなことを踏まえて、今のスーパーコンピュータのいろいろなことが進んできたわけです。こういうような結果をオールスクラッチでやるというのはむだなことですので、そういうことを踏まえた上でステップアップしていくというようなことで、ぜひさせていただきたいと思います。

【西尾科学官】
 そういうことでお願いいたします。

【土居主査】
 はい。ぜひさせていただきたいと思います。

【佐藤委員】
 1つ重要なのは、そのところで抜け落ちている部分がかなりあると思います。その部分は、やっぱりちゃんと拾い出さないと、また同じような議論が続くんじゃないかと思います。

【土居主査】
 そうですね。極めて重要なことだと思います。
 それでは、時間になりましたので、今の事務局から提示していただきました○、及びきょうご議論いただきました中で出てまいりましたいろいろな課題を、事務局のほうで改めて取りまとめていただいて、また次へ出していただき、議論を深めていくというような形をとらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。その過程では、メールを使ってやらせていただくようなことも起こり得ると思いますので、ぜひご協力いただきたく、お願いいたします。
 それでは、最後になりましたが、全体にわたりまして、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から、連絡事項等ありましたらお願いいたします。

【事務局】
 次回の作業部会でございますけれども、4月22日火曜日、午後1時より3時半まで、文部科学省3階の1特別会議室にて開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。また第5回の作業部会は、5月21日水曜日、午後3時より5時半までの開催を予定しております。それから、席上に配付しております参考資料集及び配付資料集は、次回以降も使用する資料ですので、机上にそのままお残しいただきたいと思いますが、ご自宅等で参照されるためにお持ち帰りいただいても構いません。その際には、ご連絡ください。
 なお、第1回作業部会の議事録につきましては、文部科学省のホームページに掲載される予定です。また、第2回作業部会の議事録(案)につきましては、現在メールにて照会をさせていただいておりますので、お気づきの点がございましたら、3月14日金曜日、今週末までに事務局までご連絡ください。

【土居主査】
 よろしいでしょうか。4月22日の午後1時から3時半まで。それから、5月21日の午後3時から5時半までというようなことで、ご予定いただければと思います。場合によりましたら長引くかもしれませんので、よろしくどうぞお願いいたします。
 それでは、本日の作業部会は、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

-了-

お問合せ先

研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室

(研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室)