情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成20年2月14日(木曜日) 10時~12時5分

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.出席者

委員

 土居主査、有川委員、加藤委員、川添委員、吉良委員、坂内委員、佐藤委員、白井委員、知野委員、平尾委員、表具委員、福山委員、松田委員、宮内委員、山根委員、吉川委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官、伊藤振興企画課長、勝野情報課長、関根スーパーコンピュータ整備推進室長、井深学術基盤整備室長、中井課長補佐

オブザーバー

(外部有識者)
 小柳工学院大学情報学部長

4.議事録

【土居主査】
 おはようございます。ほとんどの方がお揃いのようですので、始めさせていただきたいと思います。
 本日が、次世代スーパーコンピュータ作業部会の第2回になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。本作業部会に属すべき委員につきましては、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会の運営規則第2条第2項に基づきまして、情報科学技術委員会の主査が指名することになっております。第1回作業部会におきましては18名の方に委員にご就任いただいておりますが、本日より新たに2名の方にご就任いただきましたので、事務局よりご紹介お願いいたします。

【関根室長】
 それでは、ご紹介させていただきます。配付資料、資料1をお配りさせていただいておりますけれども、本日付で2名の方に新たに委員としてご就任いただいております。社団法人日本経済団体連合会産業技術委員会重点化戦略部会長代行で、株式会社富士通研究所常務取締役でいらっしゃいます、吉川委員でございます。それから、本日ご欠席でいらっしゃいますけれども、お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科教授でいらっしゃいます、鷹野委員でございます。あわせまして、第1回の会合でご欠席でしたけれども、本日はお越しいただきました委員の方をご紹介させていただきたいと思います。早稲田大学総長でいらっしゃいます、白井委員でございます。それから、東京大学副学長でいらっしゃいます、平尾委員でございます。

【関根室長】
 事務局からは、以上でございます。

【土居主査】
 ありがとうございました。吉川さん、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、事務局より本日の配付資料につきまして、確認をお願いいたします。

【事務局】
 お手元の議事次第に照らし合わせて、資料の確認をお願いいたします。資料1は、「次世代スーパーコンピュータ作業部会委員名簿」です。資料2は、「作業部会の検討課題及び当面の検討の進め方について(案)」となっています。資料3は、「次世代スーパーを中核とする拠点形成」という資料です。資料4は、「地球シミュレータの経験に基づく次世代スーパーコンピュータへの提言」となっています。資料5は、「次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点形成について(議論のたたき台)」です。こちらには、参考がついてございまして、参考5-1「プロジェクトに係るこれまでの検討状況」、参考5-2「次世代スーパーコンピュータ共用ワーキンググループにおける意見の整理」、参考5-3「計算科学技術推進ワーキンググループ報告書概要」、参考5-4「拠点形成に関する意見等について」でございます。最後は資料6になりますが、「前回の作業部会での主な意見について」というものをつけております。
 また、議論の参考とするために、席上に緑色のファイルの「次世代スーパーコンピュータ作業部会参考資料集」及び灰色ファイルの「次世代スーパーコンピュータ作業部会配付資料集」を置いております。配付資料集につきましては、第1回作業部会で配付した資料をとじております。適宜ご参照ください。欠落などがございましたら、事務局までお申しつけ願います。なお、第1回作業部会の議事録(案)につきましては、既にメールにて照会させていただいておりますが、科学技術・学術審議会より、原則として各委員の名前を明記し、発言内容もできる限り要約せずに作成するという方針が出されております。ご確認の上、お気づきの点がございましたら、2月20日水曜日までに事務局までご連絡ください。議事録は、資料としての配付は行わず、このメールにて照会させていただいた後、事務局にて修正内容を取りまとめ、必要に応じて再度皆様にご照会した後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
 以上でございます。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 最後に説明がございましたように、原則として各委員の名前を明記し、発言内容も、できる限り要約せずに作成したものが、最終的にはホームページに掲載されるということになっておりますので、どうぞ議事録(案)が参りましたときには、チェックしていただいた上で、修正等ありましたら修正していただきたく、お願いいたします。この場は公開ですし、いろいろな点で不都合が生じないとも限らないんですが、どうぞよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、議題1の「次世代スーパーコンピュータを中核とした教育研究のグランドデザインについて」に入らせていただきたいと思います。まず、今後の議論の進め方ですけれども、前回の作業部会におきまして、当面月1回程度の開催を予定ということ、及び有識者等のヒアリングや情報科学技術委員会等でのこれまでの議論を参考にしながら検討していただくということ、及び教育研究のグランドデザインにつきましては、本年6月ごろを目途に取りまとめを行うということについて、ご了解いただいております。
 そこで、第1回作業部会での議論を踏まえまして、今回事務局において、さらに整理してもらいましたものが資料2になっておりますので、この資料2の説明を、まず説明していただけますか。

【関根室長】
 それでは、資料2についてご説明させていただきたいと思います。「作業部会の検討課題及び当面の検討の進め方について(案)」という資料でございます。
 前回、今、主査からご説明いただきましたように、大枠の進め方につきましてはご了承いただいたものと考えておりますが、もう少し具体的なイメージということで、今回資料2ということで、まとめさせていただいたものでございます。
 まず、「1.検討課題について」ということでございますが、ご案内のとおり、この次世代スーパーコンピュータにつきましては、平成24年の完成を目指して整備を進めているということで、平成24年までに、一体どういうことが検討課題としてあるのかということを、まず、まとめをさせていただいております。それが、この資料2の1.(1)に書いてございます。まずは、その利活用についての基本的な方向性ということでございます。特に今回当面の検討課題とさせていただいております、次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点形成の必要性ですとか、拠点の有する機能についてということ、加えまして、次世代スーパーコンピュータは、ご案内のとおり共用施設でございますので、どういった理念、考え方で皆さんにお使いいただくのか、そういったことを、基本的な方向性としてご議論いただきたいと思っております。
 加えまして、具体的な事項といたしまして、3でございますけれども、拠点形成という観点で、例えば研究開発ですとか人材育成等の機能が想定されますけれども、では、一体その具体化またはその実現方策といった観点で、どういうことがあり得るのか、また、そういう方策としては、具体的に何なのか、そういったことを検討させていただきたいと思っております。それから、共用施設という観点では、課題の選定及び利用者支援、こういったことを行う登録機関というものが、法律上定められてございます。こういった機関の具体的な業務や体制、ひいては利用者支援としてどういったことが必要なのか、そういったことの具体的な議論、さらには研究成果の取り扱いですとか利用料金の考え方、それから課題選定の具体的な方法などが、共用に当たり必要な事項と考えております。
 そのほか、例えば5でございますけれども、プロジェクト全体の評価ですとか、その他、このプロジェクトを進めるに当たって必要な検討課題というのも別途あるのかと思っております。加えまして、「また」以降でございますけれども、現在法律に基づいた形で、共用の促進に関する基本的な方針、この次世代スパコン、共用施設ということで、どういった考え方で共用していくかといったことが定められておりますけれども、これにつきまして、平成18年の7月、おととしの7月に定められたということもございまして、このプロジェクトの進捗状況に応じて見直しを行うということになってございます。そういった観点から、現在いろいろなコミュニティに対しまして意見の募集を行っているといったようなことでございます。そういう意味では、本年の4月以降、その意見なども踏まえて見直しに着手するといったようなことも考えてございます。
 こういった状況から、この作業部会における当面の検討事項、特に6月ぐらいまでを念頭に置いたときには、今、ご説明させていただいた、利活用についての基本的な方向性といったようなところを中心にご議論いただき、6月以降、この具体的な事項についての深堀り、検討に着手していくといったようなことを想定しております。なお、基本方針の見直しの方法につきましては、この作業部会の議論の状況なども勘案しながら、適切に対応していきたいと考えております。
 続きまして裏面でございますけれども、当面の検討の進め方といったようなことでございます。資料2の裏面、印刷されておりますでしょうか。大丈夫ですか。「2.当面の検討の進め方について」でございます。これにつきましても、前回第1回でご説明させていただいた部分に沿ったものでございますけれども、毎回有識者の皆様からご意見をちょうだいし、ヒアリングといいますか、ご意見をいただくということと、それから、特定のテーマを絞って議論を進めていく、この2つを同時に進めさせていただきたいと思っております。特にテーマを設定し、具体的には、例えば拠点形成の考え方ですとか、研究開発、それから利用者支援、理解増進など、そういった観点でのテーマを毎回定めさせていただき、これについてのたたき台というのを事務局で用意させていただきたいと思っております。このたたき台につきましては、これまで情報科学技術委員会のワーキンググループなどでご議論いただいたものがございます。そういったものを事務局でさらに整理させていただいた上で、それをベースとしてご議論いただければと考えております。そういった意味では、1つの会合の中で、特定のテーマを含みつつも、広くご議論いただく、有識者の方からヒアリングさせていただくという部分と、よりスペシフィックなテーマを絞って議論いただく、この2つを同時に進めさせていただくといったようなことで、毎回議論を少し整理しながら進めさせていただきたいと思っております。そういった観点で、前回までの審議の状況などを整理させていただいた、いわゆる審議経過というものを毎回事務局で作成し、適宜検討の内容なども精査、整理しながら議論を進めさせていただきたいと思っております。
 (2)当面のスケジュールと書いてございますけれども、今、申し上げたような、毎回の議論の進め方をベースとしつつ、例えば第3回目以降、研究開発ですとか、利用者支援、人材育成、そういったことを、こういったテーマ設定のもとに進めさせていただいてはどうかと思っております。もちろんこのテーマ設定につきましては、ここでの議論の状況なども踏まえながら、必要によって適宜変えていったりということも、あわせて考えさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 というようなことで、時間があるようで、ないようなというような感じもございますので、1ページ目の(1)の1、2が、6月ごろまでで、それを踏まえた上で具体的な事項を6月以降にというようなところで、当面のスケジュールが組み立てられているということでございますが、いかがでしょうか。ご意見ございましたら、あるいはご質問ございましたら、いただければと思います。また議論が始まりますと、それなりにいろいろな点を加えていかなければいけないというようなことも出てこようかと思いますが、おおよそのところ、こういうことでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。当面、この予定に従って検討を進めさせていただきたいと思います。
 それでは、早速ですが、次に意見発表となっておりますけれども、いろいろなお考えを伺いたいということで、本日は工学院大学情報学部長の小柳先生に、「次世代スーパーを中核とする拠点形成」についてのお話をいただいた後に、前回ちょっと出ましたけれども、佐藤先生には、「地球シミュレータの経験に基づく次世代スーパーコンピュータへの提言」について、お話をしていただくということになっております。
 まずは、小柳先生、よろしいですか。ご紹介するまでもないのですが、数値解析、並列処理、ハイパフォーマンスコンピューティング、計算物理学といったようなところをご専門とされておりまして、東京大学ご卒業後、東大の助手をやって、それから高エネルギー物理学研究所、筑波大学、東京大学の後、現在工学院大学情報学部長でいらっしゃいます。
 発表時間は、事務局からお伝えしていると思います。お一人20分程度でお願いいたします。続けてご発表いただいた後、全体を通しましてご意見交換をお願いしたいと思います。
 それでは、小柳先生、よろしくどうぞお願いします。

【小柳先生】
 では、20分ということで。ご紹介いただきました、小柳でございます。
 スーパーコンピュータという語は長いので、どう略すかということなんですが、スパコンという略語が普通使われているんですが、私はどうもあの言葉が嫌いなもので、スーパーというふうに略させていただいております。スパコンというと、何かスポコンとかロリコンとか、何かそういうのを連想するので。これは冗談です。
 私も、この次世代スーパーの計画のときに、総合科学技術会議関係の評価とか、文部科学省の評価といろいろと関係してきました。その中で、いろいろと考えたことです。私も、数えてみると四十一、二年ぐらい計算機を使った物理学とか諸科学という問題に携わってきましたので、その中で、一体なぜ日本で計算科学が立ち上がるのに時間がかかったかと、そういうようなことを含めて、そういう中から、この拠点というのが果たすべき機能といったものについて考えていきたいと思います。
 最初に、やはり日本では計算ということに対する大変な偏見があった。そして、今もまだそれが残っているということで、そのために、物理とか化学とか、工学のいろいろな分野に任せておけば、計算機を使った利用が進むのではないかと思っている方が多いと思いますが、それではだめです。なぜ諸分野だけに任せておけないかという話から、拠点の役割の幾つかのポイントについて、お話をしていきたいと思います。
 先ほど言ったように、60年代後半から私もいろいろとやっているんですが、私は、最初は素粒子理論という分野をやっておりましたが、この中で、私を含めて数人がコンピューターを使った物理学の研究というのを始めました。素粒子では、多分最初だったと思います。隣の有馬朗人先生などは、もっと早くからコンピューターを使って原子核研究をやっていらっしゃいましたが。これは逸話ですが、そのとき私の指導教授の先生が言ったことは、「一流の物理学者はコンピューターを使わない」といって、我々に嫌みを言ったわけですね。
 だけど、考えてみれば、そんなばかなことはないわけで、フォン・ノイマン(Von Neumann)先生にしろ、フェルミ(Fermi)にしろ、アルダー(Alder)だのファインマン(Feynman)も、一流の物理学者がコンピューターを使って、いろいろと成果を出していることは、言うまでもないことであります。ただ、これが日本のサイエンスの中で、あるいは科学技術全体の中で、コンピューターというものに対する一つの感覚というものを代表しているのではないかと思って、ちょっと紹介したわけです。
 物理だけではありません。これはうわさで、あまりはっきりしませんが、化学のスペクトロスコピーの某大先生は、弟子に大型コンピューターセンターの利用を許さなかったといううわさを聞いております。ところが、スペクトロスコピーなんて、まさにコンピューターが一番必要な分野ですので、しようがないから、スペクトロスコピーの分析機に内蔵されたコンピューターをこっそり使って計算したということを聞きました。このような調子で、コンピューターに対する偏見というのが長く続いていた。
 それから、大分後の話ですが、数値計算の分野の大先生である、これも名前は秘しますが、よくおっしゃっていたことは、計算というのは士農工商の末端の仕事だと。つまり計算というのは、そろばんです。そろばんというのは、商人のものでしょう。これは、やはり士農工商の中で、位の低い人がやることだ。そういうような、個別には笑い話みたいな話なんですが、こういう話の中に、いかに計算というものが低く見られていたかということがあらわれているのではないかと思います。士農工商というのは、文化的に言えば朱子学ですよね。
 こういう感覚があるということで、例えば、今でも多くの分野の研究者は、実際にはコンピューターを非常によく使って仕事をしておりますが、多くの場合に、それについて語ろうとしません。もちろん、物理でしたら物理の分野ではもちろん物理の成果が大事なわけで、そういう場で、計算のことにあまり触れないのはしようがないと思うんですが、例えば計算科学といった、つまり計算機を利用したいろいろな分野の人が集まっている場でも、結局皆さんは学会発表してしまうわけですね。つまり自分の分野の発表をしてしまって、そのためのモデル化とかアルゴリズムとか、コーディング手法とか、あるいは計算機のアーキテクチャーの活用などについては語りたがらないという傾向がございます。JSTだの未来開拓だの、いろいろな計算科学のシンポジウムみたいなものに随分参加してきましたが、そのときに非常に痛切に感じたことであります。
 どういうことかというと、多くの研究者はプログラムを作ることは作るんですが高速化をやろうとしない。だれか、これを高速化してくれという、そういう態度が見え隠れするというわけであります。これではだめです。何でこういうことが重要かというと、計算科学の特徴は、例えば工学と理学などという違う分野でも、対象は全然違うんですが、数値アルゴリズムとかコンピューターの利用手法とか、そういう点ではかなり共通点があって、その共通点での研究交流をすることによって、この分野が全体発展するということが非常に重要なのです。これによって、またさらにコンピューター自身も発展するというピクチャーが成り立たないと、この分野は進歩しないと思います。
 というわけで、そういうバックグラウンドの上に立って、我々の次世代スーパーコンピュータの拠点というのはどんな機能を持つべきかということを、私の思いついた範囲で述べていきたいと思います。
 まず1つ、基本的機能ですが、これは、前に有川先生などと一緒に、大学の情報基盤センターのあり方というときにも申し上げたんですが、この拠点が、資源、例えば計算時間とか、場合によってはメモリとか、資源を切り売りしてユーザーに使わせるというセンターであってはいけない。そうではなくて、このセンターの持っている資源を使って研究開発を推進し、学術推進するというセンターでなければならないということを、最初に申し上げたいと思います。
 7大学の今の情報基盤センター、昔の大型計算機センターは、初期からずっと計算時間を切り売りするという傾向が強かったわけで、それが今、半世紀に入っているわけです。しかしそれではいけない。我々の拠点は研究開発を推進しているのだということです。例えば高エネルギー加速器研究機構には、加速器という資源があるわけですが、機構として加速器の運転時間を切り売りしているのではありません。機構は加速器を使った研究開発を企画し推進しているということであります。だから、単にユーザーからの要求を受けて順番にうまく対応するというような運営(これを私は「切り売り」と言っています。小さく切るということではありません。)ではだめだということです。これと同様に、次世代センターも研究内容にまで踏み込んでセンターとしての戦略的な利用を進めるということが大変重要なことではないかと思います。
 もちろん研究中心のセンターというと、センター内の研究者が勝手に使うセンターだというふうに誤解されることもあるんですが、そうではなくて、全国、場合によっては国際的な研究プロジェクトをいかに推進するかということが問題になるわけです。そして、いろいろな分野のアプリケーションだけではなく、それの基盤にある共通的なアルゴリズム、基盤ソフト、アーキテクチャー、場合によってはモデル化などの研究などを、この拠点が中心的に進めていかなければならないのではないかと思います。
 さて、次世代スーパーコンピュータがどういう特徴を持つかということです。情報はあまり公開されていないんですが、ベクトル部とスカラ部からなるということは発表されております。私の見たところ、今、ベクトルを使っているユーザーは、「我々のプログラムがそのまま走る」と思っている。PCクラスタなどを使っているユーザーも、「我々のプログラムがそのまま走るんだ、ラッキー」と思っておりますが、私はいずれも大きな誤解であろうと思っております。同じベクトルとかスカラとかいっても、我々が今、使っているようなベクトルやスカラとは多分大きく違うマシンであることは、計算機の技術の推移を考えれば、当然予想されるということです。
 それは何かというと、チップの中に非常に多くの演算器を実装した計算機、multi coreあるいはmany coreという計算機であるということは、火を見るよりも明らか。なぜかというと、「新しいムーアの法則」というのがありまして、チップの中のコア数は、18カ月で倍になるということです。半分ジョークですが、それは当たり前で、1つのcoreに使うトランジスタ数というのは大体決まっていますから、トランジスタ数が増えるということはcoreが増えるということになるんですね。だから、それが結局休みなく動作しないと性能は出ないわけでありまして、そのためには、それをどう制御するかというのは大変な重要な問題になるわけであります。
 それから、チップの中にたくさんcoreを詰め込みますから、相対的にチップの内外のデータ転送のバンド幅は当然小さくなりますね。多くの今のmulti coreのチップがそうであるように、多分チップ内にバッファメモリみたいなものが多分あるんでしょうが、今度はどういうふうに制御するかという問題が当然出てくるわけです。そこにはアルゴリズム、コーディング、モデル化の工夫等も大分考えなければいけない。というわけで、これを考えただけでも、今のマシンの単なる延長ではないということがわかると思います。ですから、当然超高並列処理というものを考えなければいけないわけで、それはチップの中のcore間から始めて、ノード内、ノード間、最後にはスカラ、ベクトルをもし一緒に動かすと、その間の分散処理ですね、そのためのソフトをどうするかといった問題が当然入ってくるわけであります。
 これについて、多くのユーザーの皆さんは、きっとコンパイラとかいう便利なツールがあって、そういう問題は全部やってくれるだろうと思っているかもしれませんし、パネルディスカッションやシンポジウムでも議論するのですが、コンパイラ屋さんは沽券にかけてもうまくいかないとは言いません、コンパイラに任せてくださいと言いますが、私の見たところ、あるいは今までの私の数少ない経験から推測するに、そんなことは当面望み薄であろうと思われます。つまり高性能を出したければ、いろいろな明示的な指示が多分必要であろう。これはあまり使いたくないですが、部分的に一番重要なコアの部分にアセンブリー言語を使わなければいけないとか言うことになるかも知れません。少なくとも何かのディレクティブを入れるとか、あるいはちょっと技巧的なコーディングとかいうことが必要になります。もちろんチューニング・ツールなどもある程度できるでしょうから、期待はするんですが、とにかくコンパイラに任せて済む話ではないことはほぼ明らかであります。
 じゃあ、だれがそれをやるかというということが問題になるわけです。センターに支援機能というのは当然あるはずでが、そこに持ち込めばとりあえず高速化してくれると、ユーザーは思っているかもしれませんが、それほど期待はできません。若干の助言は得られると思いますが、支援者だって、何百万行というプログラムを見ただけではわかりません。一番わかっているのはユーザーでありますから、ユーザーの努力、関与というものが必要であります。もちろん支援者も、ユーザーと近い分野の支援者、研究者の支援の場合は多分有効であろうと思われますが、一般には望み薄です。結局そういうことは、ユーザーと支援者との共同作業になることになるわけで、このためには支援者の高度化とともに、ユーザー側にも、一定の技術、知識が必要です。ましてや最高速、非常に高い性能をねらうには、ユーザーの努力が絶対に必要であるということであります。
 では、どういう利用者の像を考えるかということを考えたいと思います。幾つかの違ったユーザー層を考えなければいけないだろうと思います。これは半分ジョークですが、松、竹、梅としましょう。松というのは、ギンギンにチューニングされたプログラムを最高速でぶっ飛ばすというユーザーを当然想定しています。これはもちろん期待されるユーザーなんですが、ただ、このセンターの性質を考えると、そういう人だけに使わせるということでは、人材養成ということまで考えると、次が育ちません。その次には中間層として、ほどほどにチューニングされたプログラムを走らせる、竹クラスのユーザーがいるでしょうし、さらには、梅クラスという初心者に近いユーザも無視できない。こういうマシンにさわり、あるいは他のユーザーと交流することによって、竹や松にだんだん進化していくという人にもどんどん使わせるということで、いろいろな利用者像のバランスということが大変重要になってくるのではないかと思います。
 それからもう1つ、センターの運用体制です。これは、後で佐藤センター長の話にも出てくるかと思いますが、ジョブのスケジューリングが大変重要になると思います。先ほどから言っているように、超並列のハイブリッドのアーキテクチャーでありますので、スケジューリングというのは非常に複雑になることが想定されます。それで、普通スケジューリングというのは、ソフトウェアでやるんですが、次世代スーパーではスケジュールの効率化はそんなに簡単ではなくて、結局ある程度は人間の輪による調整といったものも必要になるのではないかと思います。高エネルギー研とか筑波大のシステムで、そういうことをやってきました。あるいは、多分地球シミュレータも似たようなことをやっていると思いますが。
 つまり、松ユーザーとか竹ユーザーの一部のように、大規模で高速なジョブを効率よく動かすには、ある程度人間が協議してスケジューリングするという必要がある。そこに、もちろんセンターの戦略といったものが反映されるわけです。とにかく人間間の調整というのが必要になります。もちろん先ほど言った梅ユーザーの小規模なジョブみたいなものは、ある程度自動スケジュールに任せてどんどん使わせるというようなことでいいでしょう。こういうようなことをいろいろなところで経験していると思いますので、そういう知恵を集める必要があるのではないかと思います。
 さて、最後に人材養成という話を考えてみたいと思います。昔はFORTRANの文法を勉強すればプログラムが書けるというのが、我々が最初に習ったことであります。だけど、考えてみれば、これは英文法を勉強するだけで英会話するようなものなので、これは十分ではない。当時は計算速度が遅くて、メモリ階層も単純で、メモリバンド幅も、演算器に比べれば相対的に大きかったので、文法を覚えただけでも、ある程度プログラムが書けて、そこそこの性能が出たということがありました。今は、そうではないということはご存じのとおりであります。これまではモデル化とか、アルゴリズムとか、コーディング技法などは、自己流のまま続けてきたという現状があると思います。あるいは、コードもほとんどブラックボックスで、研究室先祖伝来のプログラムを、中も知らずに使い続けるというのが、従来のこれまでの計算諸科学の分野の実情ではないか思います。それでは、この新しい施設のベースにはならないだろう。
 その後、80年代、日本でベクトル計算機が使えるようになったわけですが、ここでも、前のスライドで述べたようなことが、単に拡大されたという面があると思います。当時、ベクトル化コンパイラの性能は十分でなかったのでいろいろなノウハウが必要だったんですが、それでも、ベクトル化によって、あっと言う間に二、三十倍高速化できたんですね。この経験から、日本のユーザーは、ちょっとだけプログラムに手を入れれば、スーパーコンピュータは速く動いてくれるということになれてしまったわけです。
 ところが、並列はこういかないわけで、それが大変問題だったわけですね。ちょうど日本がベクトルを始めたころ、実はアメリカでは多くのベンチャービジネスが並列計算機をつくり始めたわけです。アメリカは、ベクトルが軍とか宇宙とか原子力などに限られていて、80年代、一般の大学のユーザーはなかなか使うチャンスがなかったので、こういう新しい機械をどんどん使ったわけです。日本でも、実は大学では並列アーキテクチャーや相互接続網が盛んに研究されていたけれども、日本の企業は、並列計算機は特殊システム、専用システムとしか見なかった。典型的なのは、例えば当時の通産省のスーパーコンピュータ大型プロジェクトというのが9年間続きましたが、ここでも並列計算機は専用システムという位置づけだった。で、応用分野のユーザーも並列処理を難しい技術として、あえて取り組もうとしなかったという現状があったわけです。
 90年代にやっと本格的に並列の時代に入ってきたわけですが、幾つかの日本のメーカーは並列処理の研究用のテストベッドとしていろいろと商品を出しましたが、なかなかこれを本格的な中核商品として位置づけなかったということがあると思います。
 そういう中で私達は、人材養成の一つとして、94年から2001年まで、並列ソフトウェアコンテストというのをやりました。これは、情報処理学会のJSPPというシンポジウムの併設プロジェクトですが、並列計算機を何台か用意しまして、問題を与えて、解かせるというようなことで、高校生まで頑張ってやりました。これは、早稲田の村岡先生が中心になってはじめました。それは、アメリカのスーパーコンピュータ国際会議にK-12という、幼稚園から高校生までスーパーコンに触らせるというプロジェクトがありまして、それに刺激されて始めたわけであります。このコンテストは、この時点で重要な役割を果たして、多くの若手に並列計算機の利用を進めたことだと思います。もしかしたら次世代スーパーの一部を使って、やってみるのもいいかもしれません。そうすると若手がどんどん伸びると思っております。
 さて、今までのをまとめます。結局今までの我が国の計算科学では、計算が重要な柱であるという認識が必ずしも十分ではなかった。シミュレーションというのは、ミクロの法則からマクロの現象を導き出すことですが、そうすれば、予期しない結果が出てくるという。このすばらしさの認識が十分でなかった。そのために、今後重要なことは、そういう計算という研究手法を、科学のいろいろな分野の人が意識化し明示化することです。そのためにはモデル化からアルゴリズム、それからプログラム開発技法から、さらには、場合によってはアーキテクチャーに即した最適化まで、いろいろなレベルがそれぞれ重要です。特にプログラム開発技法というものを無視して、とにかくプログラムが動けばいいんだというような態度がよくありました。今後は諸分野もんどんやっていかなければいけないのではないかと思います。
 というわけで、計算科学というのは独立の分野ではないわけですね。つまり理論、実験と並ぶ、第3の科学と言うんですが、これは手法としてそう言うわけで、理論という分野はないわけですね。そういうわけで、従来の分野とは違うんですが、じゃあ、物理とか化学とか生物などの中に埋没させておいていいかというと、そうではありません。新しい横型の横断型の科学として共通の手法があり、共有すべき知識が多いからです。その共有すべき知識の中身は、モデル化、アルゴリズム、計算手法、データ解析、いろいろとありますね。そういうわけで、とにかく共有を意識化することによって、こういう分野を発展させるというのが、この次世代スーパーコンピュータ拠点の非常に重要な役割になるのではないかと思います。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして佐藤先生からご発表お願いいたします。

【佐藤委員】
 地球シミュレータの佐藤でございます。今、小柳先生が基本的なところを、やさしくだけれども、かなりクリティカルにお話になったというふうに、私は受け取りましたが、小柳先生の言われたところとかなり共通する点もございます。私のほうは、もう少し難しく書いているかもしれませんが。それと、小柳先生はFORTRANからお話しされたんですが、私は機械語からやっておりまして。

【小柳先生】
 私も機械語からです。(笑)

【佐藤委員】
 ですね。昭和37年に最初のコンピューターを使うという。それ以後、45年間ほとんど計算機、スーパーではありませんが、電子計算機と言いましたね、それを使って、一貫して研究していたという意味では、これなくして、私の人生はなかったのではないかと思います。
 地球シミュレータの運営がどういうふうにされたかと、そういうことからお話ししたほうがいいのではないかと。次世代スーパーを運営していく上で何らかのお役に立てればいいのではないかと思いまして、そこからお話しいたします。山根さんの質問に直接的な答えは、この話の中ではいたしませんので、もし後でご質問がありましたら、具体的な課題についてのご質問を受けたいと思います。
 それで、地球シミュレータといいますのは、地球シミュレータがほぼでき上がる、2002年の1月ぐらいから、当時は海洋センターの理事長のもとに地球シミュレータ運営委員会というものができまして、各界の重鎮の先生方が参加されまして議論されております。私もオブザーバーとして参加しておりましたけれども、そこで決められた基本計画、私はこれを憲法と呼んでおりますが、この憲法に基づいて、この6年間運用してきたということでございます。これは、平成でいいますと14年の3月にでき上がっております。
 これの骨子について、まず、お話しいたしますと、地球ということがついておりますし、海洋研究開発機構に設置されたということもありまして、この利用に関しては、地球環境変化の的確な評価、予測をする。そして、人類の持続的な発展に貢献しなさいと。これが第一義的な目的でございます。それだけではなく、地球シミュレータは、当時のスーパーの100倍以上の性能があったと思います。そういうことで、画期的なシミュレーションを用いた研究成果あるいは技術成果というものが得られるであろうと。そういった分野には、できるだけ広く利用を広げなさいと、そういうこともちゃんと憲法にうたわれております。したがいまして、環境だけではなく、ほかの分野にもということで、現在地球シミュレータというのは、環境だけの問題だと思っておられる方もございますが、必ずしもそうではございませんということを……。こういった扱い方というのは、私は非常によかったと思っております。
 それから、どういうふうに運営するかということに関しましては、この憲法に書かれておりますが、関係機関の研究者、有識者からなる、必ずしもシミュレーションだけをやっているというのではなく、もう少し広い見解、見地を持った人からなる利用計画委員会で利用計画の策定を行う。きょうはご欠席ですが、松本先生がこれの委員長をずっとしておられました。この2年ほど前、副学長になられてからは、多忙ということでおやめになられて、私も少し運営がしにくくなったわけですけれども、そういった利用計画委員会、後には計画推進委員会という名前に変えておりますが、ここで行う。これは、当初はセンター長の諮問機関ということになっていたわけですけれども、どのような分野に、どれぐらいの資源を分配するか、そういったようなことを、ここで行う、ここで策定するということになっております。それから、それ以外のいろいろな新しい状況の変化に応じても、この委員会で議論されて、そして答申を行う。そういう形で行われております。
 それから、憲法の中には、課題選定委員会を置きなさいと。これは、利用計画委員会から独立した形の委員会で、そこで研究課題の選定、それから計算資源量を決定するという形で規定されております。ここも、いろいろな分野の先生方からなっております。地球環境はもちろんのこと、それだけではなく、いろいろな先生方で構成されて、かなり微妙な、何パーセント使うと、そこまでここで決定しております。そして基本計画にのっとりまして、利用計画委員会あるいは課題選定委員会、そこから決定され、あるいは具申されましたことを忠実に具体的に実行する、執行していくものとして地球シミュレータセンター長があるという。当初は、こういう形です。
 それを表にしたのは、2ページ目でございます。私は非常に大切だと思ったのは、やはり全体のこの計画の一番上のところに運営委員会が存在しているということは非常に大切ではないかと。実は、これはその後1年ほどして消えております。そして、大所高所から意見を言うところがなくなりまして、その任務は、ここにおろされるという形になっております。3ページ目が、海洋センターが独立行政法人になったときに決まったもので、ここのご意見番がなくなりまして、ここに入るという形で進んでおります。それから、2年ほど前、18年4月からは、実はセンター長の権限はなくなりまして、理事長の直轄の形で計画推進委員会が運営されている形で、この2年間は進んでおります。この批判をしますと、こういうやり方は多分うまくいかないだろうというのが、私の。やはり研究シミュレーションというものをかなりわかった人間が統括していく。そういった人を選んで、そしてそこにかなりの権限を、ただし、独走してはいけないということで、ちゃんとしたお目付役がいるといった方式が重要ではないかと思っております。
 当初の資源配分は、こういったような形で、気候変動は当然これだけ使いますが、それ以外、地球内部あるいは計算機科学の進展。それから、先進プロジェクト。これは、エネルギー、原子力問題では核融合の問題、それから宇宙の問題、素粒子の問題、ナノの問題、バイオの問題、そういったような先進的なものにも15パーセント。それから、後で言いますが、戦略的資源、これは一応センター長の権限にゆだねられ、それを計画推進委員会がウォッチするという形ですが、非常にフレキシブルに状況の変化に応じて地球シミュレータを使えば、非常にいい成果が社会に還元できるだろうと思うようなものを適宜入れていく。こういったところは公募になるわけですけれども、公募に適しない、そういった課題もあります。それから、国際的にどうするかといった問題は、こういうところで処理するという形ででき上がっております。5ページ目は、今年度どういうふうにしたかということで、公募に関しては、1つにする。そして、特定プロジェクトは政府からの競争的経費といいますか、そういったもので賄うものとして、評価はそこでやられますので、これは一応地球シミュレータプロジェクトとはインディペンデントな形の評価方式に変わりました。それから、国際的共同研究等に、国内もありますが、15パーセント、それから有償という形で5パーセントという形で変遷しております。
 6ページ目、地球シミュレータが本当によく使われたのかどうかということを示す、一つの指標ですが、現在までのところ、始まったときから3年間程度、どれぐらいジョブがサブミットされたかということを縦軸に書いております。この1番目のラインが640のプロセッサー・ノードをフルに使ったときの資源の最高の供給源ですが、当初はもちろん少し少なかったですが、すぐにこれを完全に超える。このところのへこんでいるのは、ここでシステムが必ずしも非常に効率的ではないということで、MDPSという、非常に大きな外部記憶装置を導入するということのために少し減っておりますが、その後は非常にたくさんの投入がありまして、既に待ち行列。先ほど小柳先生が言われました、これをいかに効率よく処理していくかということで、スケジューリング。だから、スケジューラーも非常に重要になってきます。特に次世代になってきますと非常に複雑なので、スケジューリングにはかなり知恵を働かせないといけないだろうと思います。
 7ページ目は、100パーセント、640使ったときに対して、最初どれぐらいの実際の処理に使われているかということ、これが紫で、実際には非常に大きなジョブが入ってきますので、終わったジョブのデータを外に出さないといけない。先ほど言ったMDPSに出す。そして、新しいジョブのデータ等をコンピューター上にのせていく。そういうステージ・イン、ステージ・アウトということで使われている時間がこの緑でございますので、ほとんど100パーセント、常に使われている。ところどころこういうふうな白いのがありますが、これはメンテナンスだと理解していただければいいと思います。
 では、どれぐらいの数のユーザーが使っていたかといいますと、1,000人に少し足りないぐらいのユーザーが使っている。それから、どれぐらいの機関が参加しているかということで、2005年には200ぐらい。大体これぐらいのところで、レベルが決まっております。
 それから、地球シミュレータの、コンピュートニックというあだ名がついて、アメリカ、欧米を驚かしたのは、まさにこれの実効的なパフォーマンス。これをいかに上げるかということで、次世代は非常に難しいだろうというのが、小柳先生のコメントではなかったかと思っておりますが、地球シミュレータ、640、プロセッサー数でいきますと5,120ですが、これは一つの非常に優秀なるプログラムに対してはかったものですが、これが理論値、最高値ですが、65パーセントぐらいの、しかもリニアリティー、スケーラビリティーも非常にいいといったところが、この地球シミュレータの特徴である。次世代がどうなるかということは、つくって、やってみないとわからない部分もあります。
 それから、10ページ目に上げましたのは、名前は忘れてください。実際に使ったプロジェクトのリーダーの名前が書いておりますが、これは目をつぶっていただくとして、どれぐらいのノードを使ったジョブが、「GFLOPS(ギガフロップス)」と書いてありますが、どれぐらいの性能を出して動いていたかという表でございますが、薄い黄色ですが、これが100パーセント、理論値です。それに対して、こういったような形で分配している。これは、かなりいい効率で使われております。平均して30パーセント、ピーク時の30パーセントを、すべてのユーザーがこれぐらいの効率で使っている。ただし、小さな開発用の部分、16ノード以下のところは無視しておりまして試験をしております。ベクトル化率、それから並列化率、それをテストしまして、ある、閾値以上になったものだけがマルチプロセッサー・ノードを使える。そういう試験をやりましたおかげで、かなり効率がよくなる。こういう試験をやらなければ、おそらく10パーセントかそこらにおさまっておりますので、そういうことも考えることは大切であろう。それをすることによって、同じマシンが3つぐらいあるというふうなことにできるということをあらわした図でございます。
 11ページ目を見ていただきますと、後で山根さんの質問に、このグラフを使って答えられるかもしれません。国際共同というのは、先ほどの戦略的なというのでやりました。その1つは、アメリカのNERSC、エネルギー省の大きなスパコンの研究所ですが、そことの共同研究をしております。MOUを結んで。それが、アメリカの代表的な、いろいろな分野の、といいますのは、いろいろなアルゴリズムに基づくプログラムを持ってきまして、それをアメリカの当時のコンピューターと地球シミュレータとを比較するということで、流体、物性、核融合、一般相対論といろいろなアルゴリズムがあるわけですけれども、すべてにおいて非常にいい性能をあらわしているというのが、この結果でございます。
 12ページ目が、地球シミュレータがどういうものかということの一応概括ということで、では、ここから何を得たかということの教訓といいますか、それを少し述べたいと思いますが、まず、運営体制についてでございます。先ほども言いましたけれども、立法府、行政府、司法府を独立させるということが大切であろう。これが、一つの大きな知見でございます。世界的な情勢を的確に見通して、大局的見地に立った運営基本法則、いわゆる憲法をつくっていく国会といいますか、そういうものが必要である。これは常時開かれるわけではないんですが、やはり国際的状況に応じて、これを変えていくということも、これは完全に独立したものでないといけないと思うんですが、例えば登録機関とは独立した形で、こういうものが策定していく。
 そして、その策定された憲法に基づいて、実際にそれをどういうふうに実行していくかということで、かなり強力なる統括的研究リーダーというものが必要であろう。小柳先生のような知見を持った方がこれに携わることによって、この憲法の中でいかにプロダクティブに、世界を凌駕するといいますか、そういった結果が出てくるのではないかと思います。こういったものが、独立に必要であるということ。
 そして、これは知事とか、そういうふうな、きょうの議会なのかもしれませんが、この統括リーダーの諮問機関として、実際に、ここがあまりにも独裁者になってはいけないわけで、ちゃんとそれのご意見番がいないとということで、ご意見番をちゃんとつくっておく。常設的なものが必要であろう。そうすることによって、この委員会は資源の大枠みたいなものを、ベクトルとスカラ部があれば両方使う、あるいは1つずつ使う、そういったものを、どういうふうに資源を分けていくかということも含め、分野も含めて、その配分の大枠を決めていく、利用方式を決めていく。それを進言して、それをこの委員会が実行していくという。地球シミュレータのやり方は、私は非常によかったと。特に当初のやり方は非常によかったということを申し上げたいと思います。
 そして、具体的な課題の選定、配分等は、やはり独立した委員会を持って決めていくのがいいのではないか。そして評価も、これは少しこういうものとは独立に司法府を持ったほうがいいのではないか。地球シミュレータに関しては、形式的なものはございますが、これは常置的にはなかったところが一つの欠点ではなかったか。地球シミュレータそのものの評価に関しては、小柳先生も含めて、外部の立場の立花隆さんとか、そういった方々に入っていただいて、評価を一度やっております。その後はやっておりませんので、こういったようなものをちゃんとつくっておくことは非常に重要であろう。そういったものに基づいて、基本計画、統括リーダーの運営に反映できるような方式というものが非常に大切ではないかというのが、運営に関する教訓でございます。
 そういうシミュレーションを使った研究という意味で、地球シミュレータを6年間やっている中で、どういうことを得たかということを少し箇条書きにいたします。小柳先生は、第3の研究法という言葉を使われた。これは、Crayが出てきて、ベクトル機が出てきたところで、シミュレーションというのは非常に役に立つということで、第3という。当時は、先ほど言われましたように、お偉方は、おまえら、計算しているだけじゃないか、ただ、数値の羅列をプロットして論文に書いているだけで、何のサイエンスの発展にもならないじゃないかという、かなりきついおしかりを、私もいただきましたが、私はそうは思っていませんでしたから、ちゃんと答えておりましたけれども、それはコンピューターの大きさにもよるしというような話でした。
 それで、地球シミュレータは、今、第1の研究法になっているのではないか。これからの科学技術というものを進めていくには必須の、なくてはならない技術であると思っております。だから、第3というと第三者のように思いますので、第1あるいはプライマリーな研究方法と考えたほうが妥当ではないか。特に次世代に関しては、そういうことを世界に発信していくべきだろう。特に地球シミュレータを使って出てきた新しいシミュレーションに対する、あるいはコンピテーショナルサイエンスに対する革命みたいなものが起こっただろうと思います。
 これまではコンピューターの性能も小さいために、どうしてもシステムの部分を見るという、あるいは理想化されたもののシミュレーション、あるいはものをやるという。それが、全体、丸ごとと呼んでおりますが、丸ごとのシミュレーションというものを可能にしたというのが、地球シミュレータの一番大きな。それによって、システムの将来の発展を科学的に、根拠があって予測ができる。それを現在にフィードバックして、政策というものも打ち出せる。
 それから、産業界においても、丸ごとということで、これは自動車が一つの例ですが、その自動車丸ごとの衝突をやることによって、これまで何千台とこしらえて、ぶつけて、いろいろな角度から、そして不確実な形での測定器を置いてというものに対して、シミュレーションでありますと、あらゆるメッシュ点ですべての情報が残っておりますし、いろいろな条件を変えるということは自由自在になるわけで。これは、もちろん効率よくできるということは前提になりますが。
 そういうことで、シミュレーションという、特に次世代というものをほんとに効率よく使えるような環境あるいはアルゴリズム、あるいは基本ソフトができたならば、ほんとに産業界に対してもシミュレーションというもの……。これは公害にもいいんです。物を排出することがないですから。そういうもので、いろいろ条件を変えて、的を絞る。その後で実際のものをつくって、それで製品にしていく。そういうものが可能にしたということで、地球シミュレータの効能は非常に大きかったのではないかと思っております。
 それで、これは先ほど小柳先生が言われたことと一致するわけですけれども、それぞれの研究が独自にあって、機械に対応したプログラムの最適化を迅速に行える能力を備えることが必要であろう。先ほども言われましたけれども、ただ、プログラムを借りて、そこに持っていけばできるというような代物では、おそらくないと思いますので、各人がやはり連携しないとだめだろう。もっと重要なのは、アルゴリズム、小柳先生が言われました、アルゴリズムを新しくする、これは非常に重要だと思います。もちろん計算機、アーキテクチャーにもするだけではなく、その分野の物理的な性質、科学的な性質、そういったものをちゃんと理解した上で、どういう形でミクロとマクロの問題、計算機の能力を超えた問題をも解決できるような、そういうアルゴリズムも求めていかないといけない。それを開発できるような人間が必要である。これは、教育にも非常に重要になってくると思います。これから教育をちゃんとしないと、出来合いのものだけをもってやるという時代ではなくなった。これは、1,000倍、1万倍と効率が違いますので、こういったことが非常に重要になってくるだろう。これは、地球シミュレータから得た、一つの知見です。
 それから、公募枠、どういうふうになるか知りませんが、戦略的な資源といいますか、かなりフレキシブルに対応できるような、そういう資源というものを確保していくことが必要であろう。どれぐらいするかというのは、先ほど言いましたような計画推進委員会のようなところで議論して、そして、例えばリーダーにかなりの自由度を与えるということで、大きな発展ができるだろう。我々、先ほどアメリカのNERSCと共同して、地球シミュレータの性能というものは相対的に評価されるということで、地球シミュレータというものは、欧米において非常に高く評価された。日本は必ずしも評価されていないように、私は思いますが。欧米で非常にされたのは、そういった、地球シミュレータの場合は欧米が重要だったんですが、これからは、おそらく次世代スーパーも、アメリカやヨーロッパ、いろいろなところにも同じぐらいのものがわんさと出てくると思います。そういった中で考えられるのは、むしろこれから発展していこうとする、コンピテーショナルサイエンスあるいはテクノロジーで発展していこうとする、そういった途上国と何らかの技術的な協定を結び、提携していく。これは、非常に大切ではないか。こういったものは、臨機応変にできるような形で持っていないと、公募形式にしたのでは入ってこない。
 それから、それ以外に、例えば経済の問題だとか社会の問題、人間が絡んだ、法則性がそれほど一定していない、物理法則のようにユニバーサルではないような、そういった集団を扱うようなものだとか、そういったもの、我々の場合はメーカーがなかなか来なかったので、自動車というものに目をつけて、戦略的ワークで提供して、いい成果を得たわけで、萌芽、育成するための資源というものを置いておく必要があるのだろう。
 それから、実際に走っていて、1年間するのかどうか知りませんが、必ず足りなくなるわけです。余るところもありますが。そういったときに、かなりフレキシブルにリーダーあるいは計画推進委員会なり、そういったところが即刻判断して、増やしていくならば増やしていく。それを与えることによって、画期的なものができるというようなものに対して与えていく。そういったシステムがおそらく必要であろう。筑波大の宇川先生などのLatticeQCD、何でこんなものに地球シミュレータを使うんだという非難はありましたけれども、課題選定委員会でやると、やはりどうしても少なくなる。そうすると、画期的なものができないということで、私は独断によりまして、必要と思われるところをすることによって、正確なクオークの質量を求めるとか、そういうことができて、世界にかなり大きな貢献をしたのではないか。そういったようなことを考えますと、こういったフレキシブルなものを持っているということが必要だと思っております。
 それから、これは少しあれですが、固体地球の場合、必ずしもシミュレーションサイエンスといいますか、コンピューターサイエンスがそれほど発達していなかった。そういったところに、地球シミュレータができる前に、あれは振興調整費ですかね、されたことによって地球シミュレータができ、資源をある程度与えるような形になったときに非常に大きく発展した。また、そういう意味では、そういった、これから伸びるであろうところをちゃんと見て、そこに対して、これからむしろそれを育成するためにお金を与える。
 非常に先進的なところというのは、どこかからお金を取ってくるわけです。でも、現在のところは、どちらかというとそういうところが取っていくような、競争的経費ですから、どうしてもそうなってくるけれども、それは、ある意味では危険であるという例もあります。これは、先ほどの温暖化でございますが、ソサエティーが持っている、あるいは伝統的なコード、これは大きいです。だから、それを変えるということはなかなかできない。そうすると、どうしてもそれを使って、我々からいいますと、おそらくそこに対してメスを入れていたならば、30倍、40倍ぐらい効率は完全に出てきていると思います。事実、地球シミュレータから、できてからやったグループが、1年程度で数十倍ぐらいのリターンが早い。しかも、それほど性能的にも変わらないものをつくっておりますので、必ずしも旧来的な形だけでやろうとするところに、ネガティブに言うといけないので、もちろんこれは競争的経費の中でいきますけれども、そこだけに集中しては、今度できたときに、先ほども小柳先生も……、そのまま使うすると非常に効率が悪い。
 でも、大きなコンピューターで、資源がたくさんもらえますと、あまり効率化を考えずに使ってしまって、例えば地球シミュレータの場合、10キロメッシュということがうたい文句だったんですが、地球温暖化の場合100キロメッシュという形にせざる得なかった。だから、1,000分の1ぐらいの効率の悪さで走らざるを得なかったということで、世界的にほんとにリーディングするような結果に必ずしもならなかった。
 ゴアさんが、地球シミュレータを評価するような発言をされています。あるいは、NCARという、アメリカの大きなグループが地球シミュレータという資源を使って、アメリカの成果にかなり貢献したことは事実です。それは非常にいいことだと思うんですが、こういったことも非常に重要な。これはネガティブに言っているのではなくて、ほんとに競争的なものは競争的なものとして、その分野のサイエンスを伸ばしていくところで、こういうふうにしていくべきだけれども、それだけにかかってはいけないだろう。
 それから、先ほどの話のアーキテクチャーに応じた方法論の確立、それから先ほどの松竹梅が出ましたけれども、そういったものをちゃんと分けていく。どういうものを解くかによって、どのコンピューターがほんとにアーキテクチャーとしていいのか。そうしたことをちゃんと見抜いていくような仕組みというものが多分必要であろうし、新しく法則発見、まだ法則はない、そういうものの団体の運動がどういう法則に従っているかという、経済の問題もそうでしょうし、社会的な問題もそうでしょう。あるいはバイオにおいても、タンパク質などは物理のシミュレーションを、シュレディンガー方程式と、例えばMD、Molecular Dynamicsという形でかなり確立されているわけで、これはいかにアルゴリズムをうまくするかですが、新しい、バイオそのもの、例えば細胞、これは法則がわかっていないわけで、まだまだ実験の時代なわけです。だから、実験データがいっぱい出てくる中で、それをあらわす、非常に単純なる法則があるはずである。それを見出していこうと。そのモデルを検証し、それに対するシミュレーションを行い、データと比較する。そして、それを改良していく。そして法則化していく。そういうふうなシミュレーションも必要である。そのためには、どういうアーキテクチャーが必要かという。そういったようなことをちゃんと分類して、資源の割り当てをしていく。
 以上が、私のコメントでございます。

【土居主査】
 どうもありがとうございました。
 小柳先生から、一般的な見地から計算科学のあり方といいますか、これからのあるべき姿というようなこととか、運用にかかわるお話をいただき、佐藤先生から、地球シミュレータから得られた教訓とか知見をご開陳いただいたわけでございますが、何かご質問あるいはご意見等いただければと。ご自由にご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

【平尾委員】
 平尾でございます。
 お二人のお話を聞かせていただいて、非常に共感するところというんでしょうか、それが多くございました。私自身、シミュレーションを専門としている者でございますけれども、シミュレーションが科学の第3の方法論かどうかは別として、やはりシミュレーションは従来の実験とか理論とは異なる、新しい研究手法を実現しておりますし、科学にブレークスルーをもたらすものと期待されております。
 理論か、計算か、シミュレーションかという言葉で言いますと、1929年にポール・ディラックというイギリスの物理学者が、彼は量子論をつくった人、創設者の一人でございますが、量子論ができて、物理学の大部分と化学の全部はもう既にわかったという言葉を残しているんですね。確かに原理的にそういうことがわかったとしても、私たちほんとに科学の問題とか、宇宙の創生から生命の誕生まで、いろいろなことに対して知りたいことがたくさんあるわけですね。ところが、原理的にはわかっていても、それがどうなっているかということをやるのは、実際にシュレディンガー方程式にしろ、ディラック方程式では解けないわけですので、それをいかにシミュレーションでやって、現実の課題にトライするかというのは非常に重要でございます。
 私は、やはりシミュレーションというのは、ほんとに見えないものが見えてくるということが非常に重要だと思いますし、科学の未踏分野を切り開くでしょうし、私たちが今、抱えている人類的課題の解決に向けても非常に重要な役割を果たすし、そういう意味では、我々人類はほんとに新しい強力なツールを手にしたのではないかと思っています。それで、お二人の話を聞きながら、私も思ったことでございますが、今度こういう次世代のスパコンが神戸の地にできる。そのことを契機にして、私たちはやはり我が国の計算科学あるいはシミュレーションの学問を一段とというか、飛躍的に確立するような形で拠点形成を図らないといけないのではないかと思っております。
 それで、小柳先生が言われた拠点の基本的機能の中で、資源を切り売りするセンターではなくて、研究開発、企画、推進するセンターでなければならないということをおっしゃっておられます。私も、まさにそのとおりだと思っています。要するに、計算センターではだめだ。計算センターではなくて、やはり計算科学とかシミュレーションという学問を振興するというセンター。あるいは、さらには新しい分野を創生していくというんですか、切り開いていくという拠点。あるいは当然のことながら、人材育成というのは非常に重要だろうと思います。そういうことを企画、推進するセンターでなくてはならない。そういう位置づけで、拠点をやはり考えていく必要があるのではないかという気がしております。
 それから2つ目は、計算機というのは、10ペタフロップスの計算機をつくっても、当然のことながら何年か後には、実は次から次へと新しいものが出てまいります。そういう意味では、比較優位性というのは比較的短時間で失われてしまうものですので、そういう新しいマシンができて、運用が開始されると思うんですが、そのときに、直ちに動けるような体制をとっておかないといけない。できてから拠点をつくり、そして人材を養成しとかということでは、私はもう間に合わないと。ほんとに我々が次世代にそんなにすばらしいマシンをつくるのであれば、つくるというか、できるのであれば、それがもう直ちに活用できるというスピード感が極めて重要だと思っております。それが、拠点に対する、私もお二人のお話を伺いながら感じた共通認識でございます。
 それからもう1つは、計算機利用に当たって、人材育成というのはやはり非常に重要でございます。これまでもシミュレーションというのは、物理とか化学とか工学とか、いろいろな分野で使われていたんですが、正直言いまして、横のつながりというのはなかったんですね。大学のカリキュラムを見ても、私の大学を見ても、いろいろな学部でいろいろな人たちがシミュレーションをやっているんです。ですが、必ずしも横の連携というのはございませんでした。これが、今、多くの大学で見直されております。やはりシミュレーションあるいは計算サイエンスというものがこれだけ重要な役割を果たすようになってきて、人材育成も非常に重要であるということで、従来のディシプリンにとらわれた教育ではなくて、横のシミュレーションとか計算科学に相当するところをきちっと体系的に教えませんかという、ある意味で新しい教育改革がスタートしていますので、こういう努力をうまく、センターといいましょうか、拠点がくみ上げていけば、私は人材育成にとっても非常に重要な拠点になるだろうと思います。拠点にとっては、そこで、いい人を選んで、アトラクティブなこともやらないといけないと思っていますので、その意味では、先ほど2つ述べました企画、推進するセンターでないといけないということと、スピード感を持って、直ちに動けるというか、それが非常に重要だなという感じをいたしました。
 以上でございます。

【坂内委員】
 私も小柳先生の、この来るべき拠点が研究開発を企画、推進するセンターでなければいけない、それから、ユーザーも松、竹、梅とおっしゃった、そういうものをダイナミックに育てていかなければいけない、その時点で非常に同意するんですけれども、私、前、おりました東大の生産研も、スパコンの利用に関しては随分アクティブなところで、計算機センターにスパコンを置いて、それで土木とか建築とか、いろいろな分野の研究室がそれを使って、今も活発にやっているんですけれども、その研究室に行くと、そのスパコンを活用して成果を上げているだけではなくて、プログラムをいろいろなものを用意していたり、データベースを用意していたり、それからノウハウをためていたりというようなことが一緒になって行われている。スパコンを研究開発とか日本の産業にも役に立てていくような形で活用していくためには、ドメインがアクティブになっていかなければいけない。そうすると、拠点というものは、この来るべき、非常にすばらしいスーパーコンピュータと、それを活用するものをどうやって拠点の中に1個にしていくかということだと思うんですけれども。
 それを全部一カ所に集まれば、これは一つの理想であって、言われたように、また次の拠点ができたら、どっとそこに物理的に変えていくというのは理想だと思うんですけれども、やはり現実問題としては、それぞれのドメインの知というか、知識、知は、いろいろなところに分散して、現にある。例えば地球シミュレータも、こうやって見ると、いろいろなことをやっておられますけれども、やはり地球に関する気象とか、マントルとか、そういうところに関する知が相当蓄積されてきている。それぞれいろいろな共同利用研とかいろいろな研究室でやっておられたところも、そういう知がたまってきている。そうすると、そのドメインの知がダイナミックにそれを活用することと、今度はコンピューティングリソースの知が発展して、それと融合していく仕掛けをどうやってつくっていくかということが非常に大事だと思いますので、やはり計算リソースとドメインというのを一体にしてイメージを持っていかないといけないのではないか。
 かつ、先ほどから小柳先生のいろいろな地球シミュレータのリソースの活用も、実際スパコンはあまりばら売りをしたら性能が上がらないわけですから、非常に性能の出る使い方をすると、松、竹、梅でない、いろいろなすそ野をどうやって、これを機にアクティブにしていくかということを考えると、やはり大学の基盤センターとか研究室、そういったものの計算リソース、それからいろいろな活用すべきドメインのソフトも含めた活用を一体にするイメージ、それが一つのバーチャルな拠点機能というので。その中で、シンボリックなスパコンの拠点、あるいは計算リソースの拠点、少し重層的に拠点というのを考えていく、いい機会ではないか。平尾先生も同じようなことをおっしゃっていたと思うんですけれども、人材育成についても、そういう形で、発散させるわけではなくて、このフォーカスされた次世代スパコンというプロジェクトと、より大きな、それが影響すべき、ここで言う、きょうグランドデザインというテーマですので、そういうデザインというのは、そういうことをイメージしつつ個別のものを考えていったらどうかなという気がします。

【白井委員】
 私は専門家ではないから、あれなんですが、きょうお二方のお話を伺って、感じが大体予測されるというか、そういう意味では非常に参考になったし、考えがまとまったんですが、坂内さんが言われたこととも重なりますけれども、そういう日本全体の底をきっちり上げるということは、いわゆるソフトウェアサイエンス全体が低いし、こういう分野も低いということは事実なんですね。だから、それをどうするか。学問的に認知されていないからというのは、やや……。小柳先生のお話もあるけれども。やはりそれに参加して、全体のレベルを上げる組織的活動が教育、研究全般に低いということは事実だと思うんですね。だから、それのために、これが非常に役に立つというのは大賛成だけれども、その面と、それからもう1つ、佐藤さんも言われたように、このセンターが最高に機能を発揮するということと、やはり相当二兎を追わなければならないわけですよね。
 そのときに、どこが大事かというと、それはマシン自体も非常に大事だし、あれなんだけれども、こういう大型プロジェクトでは、ややもすると、つくることを一生懸命になっているというものが、確かにたくさんあるわけですね。だから、今のご意見、まさにそうだと思うんだけれども、これができ上がるときには、もっと日本全体の、これで何をやるのか、それから、これの周辺として、今、まさにネットワークでみんなつながっているんだから、いろいろなスーパーコンも一緒に使えるわけですよ。そうすると、ある計算は、何もここでやらなくたっていいんだというものは、多分、山ほどある。結果的には、そうなる。そうすると、それを面倒を見るような、教育的な、あるいは研究的なサービス組織とか、そういうもののほうにお金をかけるべきだ。それをしないと、いつまでたっても底が上がらないと思う。
 だから、ここに1,000億かかるというんだったら、もうあと1,000億ぐらいは、そういうところにかけなければいけないというのが、私は……。そうでないと、ほとんど底が出てこない。もちろん性能は出るかもしれないけれども、いいこともできるのかもしれないけれども、それで終わっていると、いつまでたっても、今みたいな議論は出てくると思うので。これ、どういうふうにシステムとして組み上げるのか、小柳さんも最後に非常に言われた、共有を意識化するべきである。まさにそうだと思う。その共有は、意識化する道具はできている。ネットワークは、今、すごいですよ。そういう共通の場をつくることは簡単なんだ。そんなにコストはかからない。だけども、それを面倒を見る人は、猛烈にコストかかる問題です。その面倒を見る人が、どうやって報われるかということも考えなければいけない。そういう組織をつくることが絶対の成功というか、日本の底上げのために役に立つと思うので、ぜひそういうシステムをつくることを考える。

【川添委員】
 10ペタと、とても速そうに言っているんですけれども、使っている僕らからすると速くはないんですよね。どこの計算センターも10倍速くなると、みんな10倍使ってくれる。先ほど、確かに地球シミュレータの佐藤先生がおっしゃったように、15倍の需要があるというんですけれども、それは課題を選択しても15倍になったということです。では、本当にどれくらい使いたいんだと言われると、利用者は幾らでも速いのが欲しいと言っているのであって、絶対的に速い計算機というイメージを持たれると、利用者としてはちょっとつらいものがあります。しかも、今から5年後に10ペタが速いんだと言われるのは大問題ですね。
 そのときに、やはり15倍利用者がいたら、選ばなければいけないことになります。先ほどの松竹梅の件、悪口を言うわけではないんですけれども、優れた課題というのは何かという話になると、計算機に合わせてチューニングされている課題は、計算機側から見ると良い課題ですけれども、さっぱりチューニングされていないけれども、これは重要ですぐに計算したいというたぐいのものがあります。やはり2種類用意しなければいけないんですね。1つは、徹底的にチューニングして、今、地球シミュレータなどでも、RSS21みたいに、ぎちぎりまでチューニングしたものを皆でシェアして使うというたぐいがあると思います。もう1つのほうは、プログラムは作ってあり、チューニングはしていないが、今、計算しないと研究上意味なくなり、しかも1回、2回しか使わないものだと思います。課題の研究内容について選定するというのはすごく難しいと思います。みんな、おれのが一番だと言うに決まっているからです。だから、研究内容の値打ちのほうを評価しないと、科学技術として間違ってしまうと思うんですね。そこは何とかしていただきたいと思います。
 そのときに、先ほどから問題になっている、どういう人材育成をするかという課題になります。シミュレーションが出来る人材といった場合に、例えば僕の業績などでもハイリーサイテッド何とかいうような話で考えると、先進的なはずのアメリカでさえ、今でも分野ごとに評価するんですね。で、あっちにもこっちにも論文出している研究者は、トータルにはそれなりにやっていても評価点は低くなります。物理、化学、機械も何もというふうに学際的に仕事をする人材を育成したら、その人の評価はどこでされるんですか?今のままだと、米国のそういうたぐいのところにも載ってこないという事実を考えていただかないと、そこに入った人がかわいそうな状況になってしまいます。この点は慎重にやっていただきたいと思います。

【福山委員】
 このたぐいまれな、すばらしいマシンを切り売りしたら、結局、何もならない。全くそのとおりで、それを戦略的に使わないといけない。佐藤先生、それを随分強調された。佐藤先生のパワーポイントの4ページに書いてある、ここで、計画推進委員会の役割を非常に強調されました。そこのメンバーをどういうふうに選ばれたか存じ上げませんけれども、そこで的確にサイエンスの動向を見通して、あるアドバイスをして、それがセンター長に行って、センター長がかなり、場合によっては周囲の反対を押し切ってチョイスをした。それが、いい結果を生んでいる場合がある。
 結局そこの仕組みづくりが、今回1つ上のレベルで、4ページに書いておられる、このような構図を1つか2つ上のステージに持っていって、このセンター長に対応するものがオールジャパンのダイレクター、それに対してサイエンティフック・アドバイザー・ボードのような計画推進委員会、そこにちゃんとした機能、ちゃんとした見識、政治でなくてサイエンスがわかっている人、そういう人がいて、それをセンター長が、個人なのか何か、今度どうなるのかわかりませんけれども、ヘッドクオーターが吸収して、それを、今度実施に移す。そこに、今度は課題設定委員会ですか、これはきっとソサエティーのベースになるという。つまり両面、トップダウンとボトムアップがうまくきちっと融合して、戦略的に計画を進める。それが仕組みとしてないと、この千載一遇のチャンスを生かし切れないだろうと思うんです。そういう意味では、デイ・ファースト、デイ・ワン、最初に、これぞ次世代だという成果が見せられるようなテーマを選択する、そのヘッドクオーターづくり、こういう機構が、これはやはり国のレベルでちゃんとつくっていただかないと、きっとこの施設は機能しないのだろう。そこを、できるだけ早く仕組みづくりをご検討いただくのは大事なことなのではないかと思います。

【佐藤委員】
 おっしゃるとおり、そこまではきょうは言えないので、比較的に技術的な話をしました。まさにそれは、人材というのは、決めていく人間を選んでいく仕組み、そこが、私は一番重要だろうということを。

【福山委員】
 戦略ですね。

【佐藤委員】
 はい、まさにそこです。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 まだまだご意見おありになると思いますが、この手のご意見は、今後ともいただくような場は幾つも出てくると思いますので、本日、もう1つご審議いただきたいといいますか、ご意見をちょうだいしたいというものがございますので、本議題に関しましては、これで仮に閉じさせていただきたいと思います。小柳先生、佐藤先生、どうもありがとうございました。小柳先生、引き続いて、どうぞいていただいて、お時間がよろしければ。

【小柳先生】
 では、最後まで。

【土居主査】
 それで、両先生からいただきましたご意見、及びこの場でいただきました先生方からのご意見は、今後の審議に使えますように、事務局のほうでまとめていただきたく、お願いいたします。ありがとうございました。
 それでは、続きまして「次世代スーパーコンピュータを中核とする拠点形成について」ということで、まずは事務局からご説明いただけますか。

【関根室長】
 資料5をお開きいただきたいと思います。先ほど資料2で、今後の議論の進め方ということでご説明させていただきましたけれども、その部分のうちの、少しテーマを絞ってご議論いただきたいということで、この資料5というのが、今回拠点形成についての議論のたたき台ということで、事務局のほうで用意させていただいたものでございます。
 実はこの資料をつくらせていただくに当たりまして、どういった考え方に基づいてつくらせていただいたかというのが、参考5-1以降でございます。参考5-1をお開きいただきたいんですけれども、実はこの作業部会の前の段階で、情報科学技術委員会等々でご議論いただいた経緯もございます。参考5-1の赤丸が3つほど書いてございますけれども、例えば計算科学技術推進ワーキンググループということで、平成16年の8月から18年にかけて開催させていただいた、開発推進体制ですとかアプリケーションの普及、人材育成等についてご議論いただいたものなどがございます。加えまして、共用の基本的な方針を策定するに当たりまして、共用ワーキングと呼んでおりますが、平成19年にご議論いただいた共有ワーキングでのご議論などがございます。また、この基本的な方針、先ほどもご説明させていただきましたけれども、今、意見募集ということをさせていただいております。この意見募集につきましては、実は来月いっぱいが意見募集の期限ということでございまして、まだまだ意見募集中ということでございますけれども、この場の検討に非常に有益、参考になるといったようなものにつきましては、事務局のほうで適宜整理させていただいた上で、事務局側の参考資料という形でご提供させていただきたいと考えてございます。
 実はこの3つにつきましては、参考5-2、5-3、5-4ということでお配りさせていただいております。これにつきましては、今回、お時間の関係ございますので、詳細にはご説明させてはいただかないですけれども、お目通しいただければと考えております。実はこういった資料などをもとに、今回資料5、議論のたたき台というようなものをつくらせていただいております。そういった意味で、今後3回目以降も、事務局のほうから、こういった形で議論のたたき台といったようなものを用意させていただきたいと思っております。
 資料5、拠点形成についてということで、事務局でつくらせていただいたものを少しご説明させていただきたいと思います。今回ご用意させていただきました資料につきましては、そもそも拠点形成の必要性といったようなところ、それからその拠点の有する機能ということではどういうものが必要なのか、さらには、形成していくに当たって、基本的な考え方というのはどういったものなのか、そこについて少しまとめさせていただいたものでございます。
 拠点形成の必要性のところは、今のお二人の有識者の方からご説明いただいた部分など非常にダブる部分もあるんですけれども、特に今回の次世代スーパーコンピュータなどは、広範な分野における研究開発に非常に貢献するということが期待されております。そういった観点で、この研究成果を出していくといった意味におきましては、人的資源、こういうものを集積したり、機能という意味でも集積していくといったようなことが必要ではないかと考えております。
 例えば、具体的にどういった機能が、拠点の有するものとして必要なのかといった部分が、2.でございます。これまでの議論などを参考に整理させていただきますと、1つは研究開発の機能。特に国際的な拠点形成といった観点で、シミュレーション、アプリ、アーキテクチャー、さらには計算科学、計算機科学、情報科学技術といったような部分と、それから分野の研究開発、そういったものとの融合的な部分、こういったものを推進していくような拠点形成というのが必要ではないか。さらには、いろいろな研究機関との共同作業といったようなものも必要ではないかと考えています。
 それから、研究を支援する機能ということで、専門的な知見を有する技術者による支援ですとか、最新の技術情報の提供、それから共同研究などのコーディネートといったような機能が必要だと思っております。
 人材育成でございますけれども、当然最先端の研究施設である次世代スパコンを活用して、いろいろな人材、特にハードウェアの開発、アプリ、利用者支援といったような観点の人材の育成というのが重要ではないか。さらには、機関ベースとして、もちろん大学を中心とした部分、それから公的な研究機関、企業、こういったものの連携による人材育成、またそういった組織体における人材育成、そういったものも必要ではないかと思っております。さらには、それに付随したものとして、共同研究ですとか、融合領域の研究開発の人材交流、こういった機能も具備していくべきではないかと思っております。
 研究成果ですとか知見の集約、蓄積、共有、特に、例えばアプリケーションの維持管理ですとか、次世代スパコンのような大型の計算機システムの運転経験も非常に貴重な知見というふうに思います。それから、研究コミュニティーの形成ですとか、形成支援といったようなことも重要な機能ではないかと思っております。
 理解増進、成果の普及、発信といった観点で、国民に対する理解増進、それから、研究会、成果発表会、年次報告等による情報発信といったようなことが、機能としては必要なのではないかと思います。
 それから、3.の拠点形成の基本的考え方でございます。1つ目の丸では、いわゆる集約という観点ですけれども、全国各地に散在するハードウェア、それからソフト、それから計算機の利用者、こういった資源を結集するといったような視点が1つ。それから、次世代スパコンの特性、特徴といたしまして、ネットワークによる遠隔利用というものが可能であること。またスーパーコンピュータという意味では、大学ですとか研究機関等が有している部分もある。これは、先ほど議論が出ていた部分かと思います。こういった部分との役割分担、連携、こういった部分が必要ではないかということでございます。
 そういったことを考えますと、1つは、次世代スパコンの立地エリアへの機能集積といったような視点と、もう1つ、全国の大学ですとか研究機関等との連携、こういったことをあわせて拠点機能として形成していくべきではないかといったようなことが、1つの考え方としてあり得るのではないかと思っております。
 事務局からの説明は、以上でございます。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 先ほども小柳先生、それから佐藤先生にご意見をちょうだいしたところでございますけれども、この中核拠点をどのように形成するかということ、それから、それに対する機能だとか、あるいは基本的な考え方を一応事務局でたたき台としてまとめてもらったものでございます。
 実は、本日はともかくも、この場ですぐというわけにはまいりませんが、今後とも審議を効率化するためにも、参考の5-2、これは一番裏をごらんになっていただきますと、実は福山先生主査のもとでご検討いただいたものの意見を整理したものですし、5-3は、裏から2ページ目のところだと思います、矢川先生に主査になっていただいて検討していただいたものをまとめたものというものがございます。この場でまたオールスクラッチからということになりますと、効率が非常に悪うございますので、こういうようなことはぜひお目通しいただいて、今後の審議に備えていただければと思います。
 本日、あと20分弱ございますが、資料5に基づきましてご意見を賜れればと思いますが、いかがでございましょうか。

【坂内委員】
 短くやります。資料の5の3で、基本的な考え方、主にこういう方向だなと思うんですけれども、この中で、先ほども白井先生が、最近ネットワークがすごいのでというようなお言葉だったんですけれども、ネットワークによる遠隔利用が可能だというのは、何かこう寂しい言い方だなと。だんだん研究リソースというのは仮想化されて、それを共有するのが当たり前、それを称してグリッドとかいう言い方をしますけれども、そういうようなリソースの共有化、仮想化という中で、これが非常に図抜けたものと位置づけるという、大きな。遠隔利用というと、何かボンとあって、時々というか、もうちょっとオープンな感じが出るといいかなという気がします。

【土居主査】
 ありがとうございます。もともとこのプロジェクトそのものの構想の中には、ネットワークが前面に出ていて、次世代スーパーコンピュータはその一部というような形をとられておりましたので、もう少しということで。

【白井委員】
 先ほども言いましたから、あれですが、やはり二兎を追ってはいただきたい。しかし、これは質問なんだけれども、これまでの地球シミュレータをはじめ、地球シミュレータは一番代表かもしれないが、かなり精度の高い評価、どういう性質のプログラムの、どういう動き方をして……。いろいろなプログラムありますからね。そういう中の、どういう特殊利用が、どれだけ資源を有効に使ったかというような、かなり精密な、マクロなものはいろいろと、時々伺うんだけれども、私はちょっとよくわからないんですよ。今度のアーキテクチャーも、そういうことを相当考えて、もちろんやられているわけですよね。
 そうすると、今度のアーキテクチャーがどういうふうなものに対して極めて有効になって、どのぐらいのことが行われ得るかというのは、もちろんある程度は予測がつくわけです。そうすると、ここで最高性能を出して、やってくれる目的の計算というのは、もちろんある程度限定もされるし、量的にも制約があるでしょう。そうすると、そこで徹底的にこれを使い切るということと、それからもう1つ、先ほどから言っている、広く、こういう計算科学というものを伸ばすという両面を、何とかしてマネジメントのほうで追って、そのマネジメントを強力にすべきだ。先ほど1,000億と1,000億をマネジメントでやれというのはちょっと極端だとしても、少なくともサポートの予算は年間10億ぐらいは毎年きちっと。電力代より安かったら、絶対にだめと思います。

【土居主査】
 ありがとうございます。今の件につきましては、白井さんが今、おっしれられたのは、現場としては地球シミュレータ、佐藤先生のところがあると思いますし、次世代ということに関しましては、アプリケーション側からいろいろと検討して取りまとめていただいて、それを反映させたのが、実は主査をされたのが平尾先生というようなことでです。

【平尾委員】
 私、資料5の「2.拠点の有する機能」という、ここに上がっている項目というのはいずれも非常に妥当で、ぜひ推進していただきたいと思っているんですが、実は大学とか研究所とか、あるいは企業においても、既にこういう計算科学あるいはシミュレーションをやっている人たちがたくさんいらっしゃるわけです。非常に活発な活動をされていて、それぞれ非常に長い歴史を持っているところもあるわけでございます。そういう人たちとの連携というんでしょうか、それが非常に重要で、限られた優秀な人たちがそんなにたくさんいるわけでは決してなくて、そういう人たちをうまく拠点に引き寄せるというのは非常に重要でございますし、大学にいる人たちなどを考えますと、先ほどのネットワークの、これだけ発達しますと、やはり自分の研究室でペタコンを使うということが多分多くなるのだろうと思います。
 そういう意味では、この拠点にいかに魅力を持たせるか、インセンティブを持たせるかというのが、ある意味で非常に重要だと思うんですね。もちろんこういう機能とともに、先ほど白井先生が言われたように、少し予算的にも優遇して、いろいろな形をやるべきだというようなこともございましたけれども、ここを、より魅力的にするにはどうしたらいいかということはやはり考える必要があるのではないかと思います。既にもういろいろなところで拠点ができているわけですので、そういうところで、ある意味で資源をお互いに取り合うというようなことだとつまらないですし、日本、オールジャパンで神戸のセンターというのを一つのトップにして、いかにそれを盛り立てていくかという魅力を付与するということは非常に重要だろうと思います。

【有川委員】
 今のことにも多少関係あると思いますが、資料5の2枚目の3.にある3つの○のうち最初の○の一番終わりがけについてです。各地に散在する開発者とか研究者等、そういった人的資源を結集となっていますが、これは、後の○とか、実際のことを考えますと、結集というよりも、有機的に組織化するといった方がいいのではないと思います。これを結集された理由は、何かあるのでしょうか。

【土居主査】
 要するに物理的に集めるのか、バーチャルに集めるのか、この心はどういうことだということのご質問。

【有川委員】
 遠隔利用というような言い方をすると、どうでしょうか。

【関根室長】
 すみません。結集、ここは、例えば3.の丸1と丸2というのは、ある意味の1つの拠点というか、物理的に集める部分と、一方で、各地にありますコミュニティーも含めた、そういう機能、これが有機的にうまくつながればいいという意味の、少し強調した書き方をしてしまったというところぐらいでして、そういう意味では、結集という意味で、今、有川委員がおっしゃられたということの意味ととらえていただければと思います。

【有川委員】
 よろしいのでしょうかね。

【関根室長】
 はい。

【有川委員】
 ほかでの議論などとの整合などを考えますと、そういったことかと思ったのですが。

【坂内委員】
 新幹線に乗って、集まれということではないんですね。

【関根室長】
 ええ。ただ、一方で、ある部分、神戸の拠点形成というのも必要ではないかと。

【川添委員】
 日本の国のいろいろなことで忘れられつつある一つの重要な事実として、計算機をある意味で自由に使えたという環境のことです。大型計算機センターは、先ほどのお話に出た、40年前とか三十何年前にできました。日本の国にある計算機のおかげで、というか大型計算機センターのおかげで、僕も含めて、あまりお金を払わないでシミュレーション研究が出来ました。センターとしては、もちろん利用者から幾らかはいただいているんですけれども、東北大の計算センターの例で言いますと、年に、みんなで5,000万ぐらいしか集めていません。今の運営費交付金で払える程度のお金で、みんなで、ある意味でバランスしながら使ってきたのです。むちゃくちゃに使うやつも出ない程度で、(ただだと無限大に使ってしまいますから)、みんなで協力しながら、あまりお金を払わなくても計算ができる環境を持っているというのは日本独自のものです。この点は、やはり覚えておいていただきたいですね。
 その中では、実は課題選択という言葉はなかったんですね。つまりみんなが立派なことをやっているというか、お互いに理解した上で計算するというベースでやってきました。こういう良い環境があったため、日本の中にはシミュレーション計算する人がたくさんいましたし、育ってきました。今回、稼働率とかいうことをベースに課題を選ぶというのはすごく危険で、みんなでそうやって理解しながらやってきたという体制を忘れないでいていただきたいと思います。最近の議論を聞いていますと、何かちょっとその辺が薄まってきていると感じます。みんなでやっていくという、お互いを信じる状況が少なくなってきて、おまえ、何ぼ?とかいう話ばかりが表に見えているような気がします。これでは寂しいと思うので、研究者を信じて良い課題を実行していただくということの重要性、その辺もお考えいただきたい。

【知野委員】
 最先端の計算科学技術確立の千載一遇のチャンスであるというのはよくわかりますが、ただ、この拠点の必要性などを読ませていただきますと、やはり科学者、専門家にちょっと偏り過ぎているかなと感じます。やはり企業が、例えば製品開発に役立てていくというようなことも、この2の資料などにも書かれていますけれども、納税する側としては、これがその後、何につながっていくのかというのが少し見えてこないと、あまりに科学的、専門的過ぎるかなという気がします。研究中心過ぎると。ということで、拠点の必要性のところにそういう要素が欲しいと思います。それから、先ほど来議論になっているリソースを有効に使おう、分散させてはいけないということがありますけれども、あまりハードルが高くなり過ぎて、企業などが使うのを妨げるようなことにならないような仕組みづくりを考えていく必要があるのではないかと思います。

【吉川委員】
 経団連の中の議論でも、産業界の次世代スーパーコンピュータに対する期待というのはかなり高くなっている、そういう観点から、今の知野さんのご意見に非常に賛成です。それで、研究開発と一言で言っても、いわゆる企業の中のユーザーでも、研究をやっている部隊が、自分でプログラムを開発してチューニングする能力を持った専門家が使うケースと、実際に事業の開発のフェーズで、計算科学、シミュレーションというのは、もうなくてはならない存在になっているので、その利用者が活用するケース、やはりこの二つのケースでは利用のパターンが違うのではないか。せっかく開発する次世代スーパーコンピュータを有効利用するためにも、研究の側面は大事ですけれども、同時に開発の側面も意識したような拠点形成というのは大事ではないか。
 その場合には、多分プログラムは、今あるもの、市販のプログラム、今、使っているプログラムをそのまま使って、高性能なリソースを有効活用して、今までできなかったようなシミュレーション結果を求めるとか、あるいは精度を求めるとか、そういった期待もあるんだと思います。そういう意味では、先ほど切り売りするなというお話があって、一般論としてはそうだと思うんですけれども、部分的には複数の企業ユーザーが部分的に使うというような、切り売りのニーズ、それをむしろ有効に使えるような仕組みというのも、拠点形成の中に一つの大事なポイントではないかと思います。

【山根委員】
 先ほどから議論を、枠組みを絞っていくという、これはすごく大事なことなんですけれども、その一方で、全く枠組みなく、ここでフリーディスカッションという会が一回あってもいいかなと思うんですよ。
 それで、その中でぜひ皆さんに考えていただきたいことがあるんですけれども、これが果たして次世代スーパーコンピュータの仕事なのかどうかわかりませんけれども、やはりこのプロジェクトというか、社会に役に立たなければいけないということがすごく大きくて、僕も、今おっしゃったように、例えば次世代の新しい鉄の開発のためにというような、そういうメーカーにぜひ活用していただきたいと思うんですけれども、今、社会が最も求めていて、最も困っているコンピューターの問題は何かというと、年金問題だと思うんですね。これは、日本という国が、コンピューターのシステムで社会を維持しようとして破綻した、大変重要な出来事だと思うんです。これは、僕はコンピューターを扱う方たちの、あらゆる人たちの責任でもあるだろうと思うんです。NTTさんにもちょっと聞いたんですけれども、それは、社会保険庁のオーダーが悪かったので、我々がそれに合わせたプログラムをつくったとか、そういう。なすり合いと言ってはおかしいですけれどもね。1億人に対してダイレクトメールを出すとか考えると、その1億人の1人に対しての、そういう処理のコストが1,000円とすれば、それで1,000億円ですよね。そうすると、この次世代スーパーコンピュータのお金ぐらいが簡単にぶっ飛ぶわけで。
 僕はこれの検証作業をどうやってやっているかというのはよくわかりませんけれども、1つは、紙のデータというのが膨大なものがあって、それをデジタル化するときのさまざまな問題があった。それは、多分人間というものが行う作業の、現象というのが、異常気象を調べていくような、あいまいなものを、非常に現象として見えない、いろいろな要素が入っているものなんだと思うんですね。そういうものを、ですから、例えば、今ある紙のデータをすべてOCRの完璧なもの、これはハードも含めて全部読み込んで、データの一元化をやるために、どういう、先生おっしゃったアルゴリズムがいいのかとか、そういうことを、このコンピューターをどう使うではなくて、これから次世代のコンピューターの社会をつくっていくという中にそれを組み入れていって、それで、例えばあの年金のあいまいなデータをエラー補正していくようなアルゴリズムが多分あるだろうと思うんですね。人の名前が違うとか、年月が違うとか、コード番号が全くミスしているとかというのも、多分どこかアルゴリズムを見つければ、ダーッと行くし。
 それはそんなに次世代スーパーコンピュータを使うほどのものではないのだろうと思うんだけれども、ただ、これはそういう一つの次の時代のコンピューターの新しい時代を開くという意味のプロジェクトとして、それを私たちはやりますよというようなことがあったときに、そういう貢献を、実はしてほしいなという気がするわけです。最後のほうにちょっと、佐藤先生のところにありました。社会的な問題に、社会というテーマ、社会科学にどう使えるかというのがありましたよね。この部分で先進的になってほしいなというところもあるんです。これは、だから、ここでの話ではないかもしれないんですけれども、僕は、国として、コンピューターシステムの破綻だという認識を持って、皆さんでやっていただきたいんですが。いかがでしょうか。

【宮内委員】
 ちょっと極端な表現になってしまうと思うんですけれども、次世代スーパーコンピュータというのは、ある意味では機械と機能だと思うんですね。で、機能では抜群の魅力があるということは、もうすごくよくわかっているんですけれども、やはりそういった機械とか機能に息を吹き込んで、心というか、魂を入れるのは人だと思うんですね。ですから、目的と使い方を今、いろいろな形で明確にしていっているんだと思うんですけれども、あともう1つは、魅力づくりの中に環境というのがとてもあると思うんです。それは、1つには、人、いろいろな方々が集まって、そこにいつも元気なエネルギーがあって、活性化しているという、人が集まりたくなるような環境づくりということが非常にあって。人はやはり、いい人がだれかいれば、そこに行って、一緒に話したり、交流したりすることによって創造性をかき立てられて、さらにまた現場に帰って、また集まってくるという、そういう人というものと、あと、場をつくるということで。
 コンピューターとか何かしている人の、私の偏ったイメージなんですけれども、空間の中に閉じこもってしまって、自分がそこでフロー状態になって、ぐうっとはまっている人が多いようなイメージがあるんですけれども、それだけでは息が詰まってしまうので、自然環境をちょっとどこかに取り入れるとか、呼吸が楽になる、例えば光とか風とかにおいとかを感じられるようなものをつくるというようなことも必要で。たまたま兵庫県の神戸市にできて、わりと近くに海があるんですね。そこの潮騒であるとか、光であるとか、においとか、風とかを、ちょっと道をつなげて、散歩して、そこでたむろって、パラソルでもあって、そんなイメージなんですけれども、そんな環境づくりも重要かななんて思いました。たまり場的に。

【土居主査】
 ありがとうございます。私は、こういうものをつくるときには、前のときからとにかく梁山泊をつくろうよと言うのですが、つくるのがなかなか難しいんですが。

【吉良委員】
 私、今、いろいろな議論を聞いていて、ちょっと感じたことは、次世代のスパコンであるという特異性と、普通の大型コンピューターとのディファレンシーエーションをもう少しちゃんとして、ここで議論しないといけないのではないか。そういう意味で、お二方の講演のところは、むしろ高いほうを目指すという観点がはっきりしていたと思うんですが。実は私、SPring-8をやっていまして、SPring-8は、ほかに類似の機械があまりないんです。実はありますけれども。それで、全部の要求が、高いものから低いもの、全部受けなくてはならなかった。それで、スパコンは、私はそれをしなくてもいいのではないかと思うので、もっと戦略的に精鋭化するという議論がもう少しあってもいいのではないかという感じを受けました。

【土居主査】
 ありがとうございます。もともとのところ、及び総合科学技術会議からの注文も含めまして、とにかく物をつくるという、要するにスーパーコンピュータをつくるということまで含んで、とにかく重層化して展開せよというのがありますので、何も一番上のF1だけをということを考えて、その他のことを置き去りにしてという話ではないと思います。ですから、そういう面を含めた上で、先ほど坂内先生でしたか、同じようなご意見をいただきましたけれども、そういうのをどうあるべきかということを踏まえた上で、ここはどうあるべきかというような形になろうかと思いますね。ありがとうございました。

【松田委員】
 素人なもので、恐縮なんですけれども、資料5の2.の「(1)研究開発機能」で「国際的な拠点形成」という言葉があって、非常にすばらしい言葉だと理解しました。ただ、その裏のところの最後に「オールジャパンの体制」という。これは、ある意味で相矛盾したところがございまして、少なくとも私の乏しい経験で、コンピューター、特にアーキテクチャーまで組もうとすると、ほんとに国際的でないと世界トップになれないと思います。が、オールジャパンというところと、具体的にどういう方向を目指されようとしているのかというのが、ややアンビバレントな感じがしましたので、そのあたりを明確にしていただければ、よりいいのではないかと思いました。

【土居主査】
 わかりました。ありがとうございます。すみません、まだまだあるかと思いますが、やはり時間との兼ね合いをもう少し考えたほうがいいね。それと、先ほど山根さんからいただいたように、フリーディスカッションのような、とにかく自由にご発言いただくというような場もやはりちょっと考えてください。

【関根室長】
 はい。

【土居主査】
 とにかくやらなければいけないことが、山ほどあるということだけはわかっているのですが、そういう点もご配慮いただいてと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それで、もう定刻に、時間が来てしまいましたのですが、全体の進め方は、冒頭でお話ししたようなことで、差し当たっては進めさせていただくということで、いただきましたご意見は、その都度その都度事務局で取りまとめていただいて、また今後の審議に活用させていただくということで、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最後にその他という議題がございますが、何か。

【表具委員】
 改めて、きょうの議論を聞いておりまして、地元としてやらなければだめなこと、相当あるなというので、特に新たに出てきたのは、平尾先生が言われたように、でき上がったときには、もうすぐに機能しておかなければだめだというスピード感、これは、これから地元としてもぜひ頑張っていきたいと思っております。スーパーコンピュータの神戸の拠点センターと同時に、私どものほうも、それを支援するための計算科学振興財団というのを立ち上げました。1月に立ち上げまして、このセンターと協力して、特に先ほど知野先生が言われましたように、産業界との連携ということを意識しつつ、一般の人々への、できる限りコンピューターサイエンスというのか、計算科学サイエンスをもっとアピールしていくようなことも含めて頑張っていきたいと思っております。
 時間がかかる部分もあるんですが、3月12日、実はこの作業部会と同じ日になってしまったんですが、作業部会が始まる前に、2時から東京で、ぜひこのスーパーコンピュータ活用トップセミナーをやろうと思っています。藤木審議官にもしゃべっていただきますし、あと、今回のプロジェクトリーダーであります渡辺さん、そして東京大学の加藤先生という形で、スーパーコンピュータの産業利用を進めるためのセミナーをやらせていただきますので、ぜひ皆さん方、時間ちょっとダブってはいるんですけれども、参加していただけたらありがたいな、あるいは、声をかけていただけたらありがたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

【土居主査】
 ありがとうございました。ちょうどこの日が4時から、場所はここですか?

【関根室長】
 場所はこちらです。

【土居主査】
 あの辺に見える建物ですけれどもね。ちょっと離れておりますが。どうぞ周りの方にもお伝えいただければと思います。ありがとうございました。
 ほかには何かございますか。よろしいでしょうか。そうしますと、事務局からの連絡事項、何かございますか。

【事務局】
 次回は、今、お話がございましたように、3月12日午後4時より6時まで、本日と同じ、この会議室にて開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、第4回以降の作業部会の開催につきましては、4月から5月のご都合をお伺いするメールをお送りいたしまして、日程調整を進めたいと思います。22日までお返事をいただければと思っております。なお、メールを添付しましたのと同じ開催日程調整表を席上にも配付させていただきましたので、もしこの場でご記入いただける委員がおられましたら、閉会後、事務局へご提出いただければと思います。この日程につきましては、調整後、事務局より別途ご連絡申し上げます。
 なお、席上に配付しております参考資料集及び配付資料集、グリーンとグレーのファイルでございますが、席上にそのままお残しいただきたいと思います。ご自宅等でご参照するためにお持ち帰りいただいても構いませんので、その際は事務局までご連絡いただければ幸いです。
 以上でございます。

【土居主査】
 ありがとうございました。
 それでは、本日の作業部会をこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

-了-

お問合せ先

研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室

(研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室)