参考資料

大強度陽子加速器計画評価作業部会(第3回)議事録(案)

1.日時

平成19年2月27日(火曜日)14時〜17時20分

2.場所

学術総合センター 特別会議室101、102

3.出席者

(委員)

井上(明)主査、飯吉委員、家委員、井上(信)委員、大野委員、長我部委員、金子委員、川上委員、駒宮委員、西村委員、福山委員、横山委員

(説明者)

下村高エネルギー加速器研究機構理事、野田日本原子力研究開発機構理事、林茨城県企画部技監、今瀬茨城県科学技術振興室長、永宮J-PARCセンター長、大山J-PARCセンター副センター長、山崎J-PARCセンター副センター長、大野委員(財団法人高輝度光科学研究センター専務理事)

(事務局)

大竹基礎基盤研究課長、木村量子放射線研究推進室長、他関係官

4.議事

  1. 第2回作業部会後の各委員からの意見に対し、永宮J-PARCセンター長、野田原子力機構(JAEA)理事、下村高エネ機構(KEK)理事からの回答があり、その後以下の議論が行われた。

    【福山委員】

      J-PARCセンターに配置される19年度のKEKの人員が、KEK全体の人数と比べて、170名というのは大変大きな数になっているのは、基本的にはほかに本務があり、センターのほうが兼務であるためだという事情は十分理解するのですが、現時点で、逆にセンターが本務であって、ほかの部分が兼務である人があってもよいのではないかという表現をお使いになったと理解しますが、今、センターが本務の方は何名おられるのでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     本務は私1人です。

    【福山委員】

     JAEAに関しては11拠点という場所によっての分け方と、場所に関係なく研究でつなげた、研究部門というすばらしいシステムをつくられ、これは大変印象的に思っております。その中にある量子ビーム応用研究部門とJ-PARCセンターの関係に関して、連携をとるという形で表現しておられると思うのですが、これはどう理解したらよろしいでしょうか。つまり、J-PARCセンターは、少なくとも現時点では量子ビーム応用研究部門の中には入っていない、別個のものなのでしょうか。

    【野田JAEA理事】

     おっしゃるとおりです。私どもは、いわゆるマトリックス方式というものを採用しておりまして、主に研究をする研究開発部門が、どこのサイトの研究開発の施設を使ってもよいということになっています。特に量子ビーム部門につきましては、各地に点在しております各種量子ビーム施設を横断的に使って、より成果を上げることをねらい、特に横断的な部門ということでデザインしております。そのため、中性子を用いた研究を主にやっている人たちは、J-PARCセンターと連携をして、例えば、ビームラインの整備とか、装置、またディテクター等のことについても、ユーザーの視点からしっかり使いやすいものにしていくとか、共同研究を組んで、J-PARCの先進的な使い方をより普及させていく。また、純然たる支援というものをやっていくということだと思います。

    【飯吉委員】

     永宮先生が最後に、KEKとJAEAから、まだ理解が得られていないとおっしゃったのは、どういう意味ですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     これは、J-PARCセンターの任務の中に研究を入れ込むかどうかという、随分長く議論されている問題です。現在は装置の開発研究等々は任務に入っていますけれども、実際の利用研究を行い、装置を製作・建設するのは、JAEAの場合は陽子加速器研究開発ユニットが主となり、KEKの場合は物構研、あるいは素核研が主となることに一応なっています。その他の人がやってはいけないというわけではないのですが。J-PARCセンターのミッションをどこに置くかということについては、やはりいろいろと議論があるところでございます。
     私としては、研究と維持管理というのは切り離せないものだと思っておりますので、J-PARCセンターに研究機能を入れないといけない、全部とは言いませんが、一流の研究者は入れ込んでやらないといけないと考えております。
     例えば、素核研の方(かた)も随分入ってきていますが、素核研の方のJ-PARCセンターにおける役割は、やっぱり施設の維持管理であり、素核研での役割は研究というふうに、今のところは分類されています。

    【飯吉委員】

     その辺は大事なところですね。

    【駒宮委員】

     世界に冠たる業績を上げることはやはり非常に重要なことです。利用者本位の使いやすい施設をつくること、分野間のバランスを一体どうやってとっていくかということですけれども、J-PARCセンターへの一本化とおっしゃいますが、実際、分野間のバランスをとっていくということは一本化とはちょっと逆の方向なのです。というのは、素粒子原子核、例えば、一番極端な場合はニュートリノの利用の場合と、産業界の利用の場合はやり方が全く違う。ですから、1つの表にはなっていても、それは果たして一本化と言えるかという問題です。もちろん、J-PARCセンターが、責任を持つという観点からは一本化すべきかもしれませんが、やはり素粒子原子核については、素核研の運営委員会の下に組織ができて、そこで課題の採択をするわけですよね。ですから、簡単に一体化とおっしゃいますが、それは現実的に、どういうやり方が一番よろしいかということを考えて、非常に緻密にやっていかないといけないと思います。

    【永宮J-PARCセンター長】

     例えば、原子核素粒子実験施設と物質・生命科学実験施設の間のバランスというのがあります。物質・生命の予算は主にJAEAから配分され、素粒子原子核の予算はKEKから配分されると思います。ある場合は、非常に興味的なデータが、3GeV(ギガ電子ボルト)の中性子から出る。あるいは別にニュートリノでそろそろノーベル賞をもらいそうになるとか、そういうときに、ある程度の資源配分とか人的配分をどっちかのほうにずらすというような判断をするときには、やっぱりJ-PARCセンターが、ある程度采配しないといけないと思います。臨機応変な対応ができるような体制をつくらなければいけないわけで、それを私は柔軟性と言っている次第です。

    【井上(信)委員】

     2点あります。1つは拠点とか研究所施設と同格というような言葉がいろいろ出てくるのですが、実態はどうかということです。どうもKEKの今までのパターンからいうと、実態がJ-PARCセンターは組織ではなくてプロジェクトだという意識の人が多いんじゃないかという気がするんです。組織というのは研究所などのことで、Bファクトリーというのがプロジェクトだというような、そういう感じでJ-PARCもプロジェクトだというような意識がKEKにはあるんじゃないかという気がするんです。そのために組織として割ってしまうことの違和感みたいなものがKEKの中にあるんじゃないかという感じがしました。その辺は内部で工夫していただくことだと思いますが。
     それから、将来の共同利用が始まったときの運営のシステムの話が今出されていますけれども、現在はまだ建設期ですよね。特に加速器の場合には、物の予算執行が終わったら、それで終わりではなく、コミッショニングの期間がかなりあるだろうと思うんです。そうすると、建設及びコミッショニングを含めて、当事者たちは建設体制としてやっていると思います。その4月からは何十人も人員配置されるというのは、建設体制だからだろうと思うんです。そういうときと、将来定常状態になったときのとはちょっと違うので、今こういう議論をしていると、KEKの加速器の人たちに混乱を与えているんじゃないかという心配が若干します。それで、割るだの割らんだのといったところにナーバスになっているのではないかというような気もします。
     具体的に言えば、例えば、これから50GeV(ギガ電子ボルト)のほうがかなりメインの建設期に入るのでしょうけども、リニアックや3GeV(ギガ電子ボルト)のところと違って、人数的に見てもこれはKEK請負と言っていい感じに近いですよね。むしろ請け負ってもらっているというぐらいのつもりできちんとやってもらうと。そのときに、センターの責任でどうとかと言うと、実態と伴わないようなところが出てくるんじゃないかという気もするので、その辺を上手にやっていただいて、建設期、コミッショニング期に現場が混乱しないように注意して運営していただきたいと思います。

    【大竹基礎基盤研究課長】

     例えば、SPring-8の場合、当時、理化学研究所と原子力研究所のジョイントベンチャーでやりましたが、理研と原研は放射光施設のユーザーでもあるわけで、SPring-8に関しては、そのユーザーが運営者になると共用ができないだろうということを想定して、JASRIという組織をつくって共用をゆだねました。したがって、JASRIに関して言いますと、基本は共用のための機能を有していて、そのうえで専用ビームラインをどう維持するかとか、どうやったら輝度が上がるかとか、といった研究開発を主としてやっているわけで、例えば、JASRIの職員がばんばんタンパク質の解析をやって論文を書くということではないわけです。
    J-PARCセンターについては、いわば小さいJ-PARCセンターと見て、JASRIのモデルでいう共用の部分だけやるのがよろしいのか、それとも、ここを1つ大きい研究所として、従来の高エネルギー物理学にあったように、KEKやほかの組織で共用しつつ、なおかつ、そこにいる人々が、具体的な研究、中性子を使ったいろいろな研究課題とか、原子核の基礎的な研究課題をやる形にするかどうかという選択だと思うんです。ですから、そういったところと、あとは2機関にまたがった形でしかつくれなかったという制約の問題との間で、どこまでJ-PARCセンターを位置づけるかという決めの問題で、逆に言えば、そういうところをよく議論していただかないと、J-PARCが単なる共用の、非常に悪く言えば、加速器を運転する技術者だけを集めてJ-PARCセンターを機能させるのか、それとも、そうではなくて、研究内容まで踏み込める人を持ってきて、センターの機能の維持をするのか、というところをよく考えるべきなんじゃないかと思っているわけです。したがって、大きい意味でのJ-PARCセンターなのか、維持管理の小さい意味でのJ-PARCセンターなのか、これは決めが必要で、両機関と私どもとよく考えてやらなきゃならないということを永宮センター長はおっしゃったのかなと思っております。

    【井上(明)主査】

     よろしいでしょうか。これは、ここで完全にこうだという整理をしてしまうことは不可能に近いと思われますので、今後の議論も踏まえた上で、そのあり方を最終結論の中に組み込むということで如何でしょうか。今の意見についても、最終的な結論の前にいろいろ考慮させていただくということで、先に進めさせていただきます。

  2. 各実験施設の利用方法や課題選定のあり方について、まず永宮J-PARCセンター長から、J-PARC以外の既存施設における現在のJAEAとKEK、それぞれの現状等について、続いて大野委員から、SPring-8の現状について説明があり、さらに永宮センター長から、J-PARCにおける各実験施設の利用体系と公募受付・審査体制及び審査の指針についての説明があり、最後に、今瀬科学技術振興室長から、J-PARCにおける茨城県のビーム実験装置の利用方法の考え方についての説明があり、その後、以下の議論が行われた。

    【井上(明)主査】

     論点といたしまして、J-PARCの利用体系と公募受付・審査の指針等について、現在のJAEA、KEK、双方の施設の利用体系や、国内の他の施設と比較・参考にして、どのような利用体系であることが適切かといった観点から議論いただければと思っています。

    【井上(信)委員】

     初めに歴史的な観点からのコメントと、それから質問をさせていただきたいと思います。
     歴史的というのは、KEKとJAEAのそれぞれの共同利用というか、共用のあり方みたいなところに関係するんですけれども、ここで大学共同利用という言葉が使ってあるんですが、もともと旧文部省のほうで、全国共同利用という言葉が50年ぐらい前に使われるようになったわけで、そのいきさつはいろいろあるとは思いますが、加速器等がだんだん大きくなってきて、すべてのところにそんなものを造るわけにいかないから、それぞれのところから概算要求するのは我慢して、全体で1つ造ろうということで、東大の核研に附置はされたわけですけれども、全国共同利用ということで造ったわけですから、その装置は、東京大学が造ったものをほかの人が使いに行くという考え方ではなく、もともと各大学が欲しがっていたものを一緒に造って一緒に使うという考え方なわけで、共同運営ということが本質であったわけです。
     一方で、旧原研の場合は、原研にちゃんとした研究のミッションがあって、そのための装置を造ったのであって、それをほかに使わせるということは、そもそも考えていない。原研の研究と一緒のことをやりたい人を一緒にやりましょうという共同研究はあるけれども使わせるというのはないわけですが、実態的には、ある程度マシンタイムの余裕があるとか、コースの余裕があるということで、それは外部ユーザーにも使っていただくけれども、当然のことながら、本来のミッションではないのを便宜供与するわけですから、利用料はいただくということになるのが筋だったわけです。したがって、永宮センター長が説明されたように、大学ユーザーが使う利用料は、大学ユーザー個々では払っていませんけれども、東大の原総センターを通じて払っていたという歴史的経緯があるわけです。したがって、共用だとか共同利用だとかという言葉がいろいろ出てきているけれども、かなりコンセプトが違っていたものを、今回、J-PARCという枠でやることについて、文化というのは簡単に抹殺できないわけだから、どちらか抹殺して一つにするとかもできないし、双方を全く遮断して新しいものというのも難しいし、そういったことを背負いながら、両者の触れ合いの中で新しいものを少しずつつくり上げていくというプロセスをとる。これは実験場だと考えていただいて、やってみようということでいかざるを得ないんじゃないかと思います。
     それから、大学という言葉がついていますが、確かに50年前に全国共同利用を文部省がつくったときには、国立大学のユーザーに使わせるということになっていたと思いますけれども、実際には、私学の人も民間の方も使うということは起こっているわけで、大学だけが使うのではないということで、この表現だと誤解を与えるようなところがあるので、説明のときには注意されたほうがいいんじゃないかという気がいたします。
     質問のほうですが、資料6の4ページで、利用の体系には123というようなカテゴリーがあるような説明をされて、1の中にもKEKの大学共同利用とJAEAの施設共用とがあるのですが、これは具体的にユーザーとしては、窓口1本ということですから、どこかの窓口には出すんでしょうけれども、自分のはこれだというマルをつけて応募するようなものでしょうか。センター側で分けるのでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     そこは明確に決めていませんけれども、今までの慣習で、外部の方が出されるときは、ほとんど1しかないんですが、JAEA、KEKの内部の人が一所懸命に力を入れている共同研究的なものを1にするか、2にするかというのは、その場合によってトーンが変わってくると思います。だから、あまり明確に、そこが絶対かということはわからないところがあるんですけど、内部の人がより研究成果を上げるのに適している分類枠として2というのをつくったのであって、内部の場合、大抵1になるんじゃないかなと思います。
     それから、先ほどの大学共同利用、全国共同利用等々のことについてですが、適当な言葉があるかどうかわかりませんけど、これはユーザーファシリティーと思っていまして、幅広く世界のユーザーを相手にしたいと思っています。それを現在の枠組みに落としたときに、大学共同利用という枠組みがKEKにはあり、施設共用という枠組みがJAEAにはあるというので、その手段ということにしておこうという、仮置き場みたいな概念で使っていると思っていただければいいと思います。

    【大山J-PARC副センター長】

     ちょっと補足してよろしいですか。
     要するに、1のところですけれども、施設共用というのは、旧来の原研の共用ではなくて、独法化してJAEAとなったときに施設共用という業務ができまして、これはJAEAの人が入っても、入っていなくても関係なく、だれでも使えるという利用枠です。

    【飯吉委員】

     質問ですが、資料1の4ページのところの、今の問題になっている大学共同利用と施設共用について、これは大学中心に使うKEKのビームラインと、JAEAのビームラインではっきり分けられているんですか。要するに、外から見たときに、どういうふうにこの違いが見えるんでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     確かにKEKがつくったときには、大学共同利用という枠が多くなりますけれども、どこかがつくったときも、この1という枠は必ずあるんです。現存の施設に充てればそうなるというので、J-PARCとしては、1つの枠ということです。

    【飯吉委員】

     大学共同利用のほうは無償ですよね。施設共用も無償なんですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     成果公開型には無償にしようと思っております。
     後の議論にありますが、次の料金の考え方ということで、J-PARCとしては1つのスタンダードでやるということで、この枠はビーム料金に関しては無償ということに考えています。

    【飯吉委員】

     もしそうだとすると、今世界の共同利用にしたいとおっしゃいましたが、世界から、外国から見たときには、その違いはわからないですよね。

    【永宮J-PARCセンター長】

     おっしゃるとおりです。

    【飯吉委員】

     だから、ある意味では、何のためにこれを分けるんですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     分けるというか、一般的なユーザーが利用できる枠を、今の現存のシステムに投影したら、どういうふうになっているかということを説明しているわけです。

    【飯吉委員】

     実際始まったら、これはもう1つのものだということですね。

    【永宮J-PARCセンター長】

     そのようにお考えになって問題ありません。

    【飯吉委員】

     そのときに、これは別の視点からなんですけど、成果の評価という問題が出てくるんです。片一方は大学共同利用機関で、国立大学法人評価委員会の立場からの評価を受ける。そして、JAEAのほうは、また別の評価委員会から評価を受ける。そのときに、どの部分がKEKの成果で、どの部分はJAEAというのは、明確になるんでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     これはJ-PARCの一体の結果として、最大限に両機関の評価にお使いになればよろしいんじゃないかと思います。

    【飯吉委員】

     私はたまたま、そこのメンバーなんですが、評価委員会として評価するときに、私どもは大学共同利用機関としてのKEKの評価をするわけです。そのときに、評価の部分に、JAEAの部分の、ここの1の枠の評価が全部入ってくるわけですか。そうすると、逆にJAEAのほうの評価、独立行政法人評価委員会のほうの評価の中にも、KEKも一体のものだから入ってくると、こういう判断ですか。
     外国からの場合は、もう少し明確になると思いますけど、例えば、施設共用の方と大学共同利用の方の共同でやる研究というのはないのですか。それならば、わりとはっきりできるのですけれども。

    【永宮J-PARCセンター長】

     あまり片一方のカラーを出さないというのを意識的にやっています。それを分断するやり方というのであれば、KEKならKEKの考えで、ここまで自分たちのテリトリーであったと御判断になれば、それでよろしいと思います。J-PARCとしては、なるべく一色の形でやると思っています。答えになっていますかどうかわかりませんが。

    【駒宮委員】

     素粒子原子核のほうは非常に明確だと思うんですが、物質構造のほうは3つのカテゴリーに分けていて、なおかつ、いろんな分野がございますよね。その相互間の調整というのを、どうやっていくかは、非常に難しいですよね。
     例えば、ここにある123というカテゴリーそれぞれに関して、採択、不採択をやるのか、それとも、これを全部まとめて何らかの形でやるのか、設計上非常に難しいと思うんです。例えば、大学共同利用と施設共用は一体として見ても、それと、プロジェクト型はまた別個のものとして扱ってやるのか、それぞれの調整はどうなさるのか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     これは歴史的に3つの枠がもともと存在したんです。例えば、原研でいいますと、施設共用枠というのは外部の方だけでも応募できる。それからJAEA利用枠というのは、内部の方が主に使う枠です。それで装置グループというのは、また別にあって、3つとも全く違った審査基準で行われていました。例えば、JAEA利用枠というのはJAEAの内部だけで審査して行う。共用枠は外部も入れた審査を行う。J-PARCでは、利用者がどこの枠を使って応募したらいいのかなんていうことをいろいろ考えるようなことは、できたらやりたくないということで、もちろん既存のJAEAの枠でやっていただいてもいいんですけど、例えば、JAEA枠と別な枠とで同じような実験課題が出てきたとしたら、これは非常におかしなことになる。だから、なるべく枠を取り払い、1つのPACで全部審査をやりたい。将来的には、これは枠が全部なくなると思っていただいてもいいです。既存の枠がだんだん解消される方向でいきたい。

    【駒宮委員】

     それはわかりますが、しかし、このほかにも、いろんな分野があるわけですよね。それをあまり大きな審査委員会にすると、分野の専門家が非常に少なくなってしまう。そこのところを全部まとめてしまうのではなく、これはピアレビューできちんと採択しなきゃいけないことです。

    【永宮J-PARCセンター長】

     そうではなく、課題によって違う分科会をつくります。これは既にあります。例えば、生命科学と物質科学。磁性の研究とたんぱく質の研究と、両方に精通したエキスパートがいるわけではありませんから、そういう審査は別々にやる。

    【駒宮委員】

     それぞれの分野に関して、審査が幾つかあるというわけですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     ただ、専門性を考慮した分科会というのは、123として分けたものとは一致しません。
     素粒子原子核でも、エキスパートだけ集めたニュートリノのある分科会というのはつくっていますよね。だから、別の分科会もつくったりする。必要に応じてつくっているわけです。

    【駒宮委員】

     それはいいですが、この課題採択審査委員会というのがありますよね。ここに入るメンバーというのは、一体どういう人なのでしょうか。それぞれの分野ごとにそういうものがあるのか、それとも、全部まとめて、ひっくるめてやるのか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     まとめてやります。

    【駒宮委員】

     まとめてやったら、その中での各分野の人というのは、ほんの少人数になりますよね。実際、そういうので審査ができますか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     問題なくできると思います。例えば、SNSだって事情は同じです。中性子のPACは1つでやっている。

    【大野委員】

     多分、SPring-8が今やっております分科会方式と、基本的には同じでございますね。

    【永宮J-PARCセンター長】

     そういうことです。

    【大野委員】

     先ほど私が説明しましたのと基本的には変わらないのではないかと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     それで結構です。

    【飯吉委員】

     先ほどの、評価の話がまだちょっと気になるのですが、同じものに将来はしていきたいとおっしゃったときに、2つの評価委員会があって、それぞれの評価基準は違うんですよね。そうすると、ある同じ研究に対して違った評価が出てくる可能性がありますね。それはちゃんと受け入れられるということですね。

    【永宮J-PARCセンター長】

     それは受け入れられると思います。
     例えば、同じようなことが行われていても、JAEAのでは、産業利用がどれだけあったかとかというのは1つの評価の大きな対象になります。KEKのでは、むしろ、アカデミックな研究はどういったかが主眼になると思います。

    【飯吉委員】

     ですけれども、1つのものにするわけでしょう。そうすると、この中でKEKのほうの研究者が主体でやっている研究はアカデミックな評価をしてほしいわけですね。ところが片一方のほうは、むしろもっと実用的な観点からの評価をする。そうすると、KEKのやっていることは、あまり評価が上がらない、ということも出てくるわけです。そういうことでKEKはよろしいんですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     例えば、この評価部会にも、随分いろんな分野から皆さんが集まっておられます。アカデミアの方もおられるし、産業界の方も。そういう集合体で、きちっと中性子全体の評価をやっていくとお考えになればいいんじゃないかなと思うんですが。そのときに、どうしてもある分科会というか、ある部分に注目した評価をするんであれば、そのサブセットから、また意見を聞くとかいうこともあり得るかとは思いますけれども、これを分離しますと、そのデメリットというのが非常に多いと考えておりまして、利用者から見たときに、一本化して1つのところに持っていくというのが、やはりいいんじゃないかと思っています。

    【飯吉委員】

     そうしますと、あと2年ぐらいで、次の中期目標、中期計画に入りますね。そのときにKEKのほうの中期目標、中期計画と、JAEAのほうの中期目標、中期計画とは当然違いますね。それなのに、ここで1つのものに扱うことというのは、どういうことでしょう。この辺は、かなり精査をしておかないと、後で少し混乱しませんか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     飯吉先生が言われるのは非常に重要な側面で、逆に、それをどう入れ込むかというのを、これからよく検討しないといけないですね。正直言って、今はまだそこまで十分考えていないというか、これから検討に値する課題だということになります。

    【井上(明)主査】

     違った観点での御意見ございますでしょうか。違った事柄に関しての御意見をお願いします。

    【金子委員】

     茨城県のビームラインのことについてなんですけれども、4ページのフローの中で、相談のほうは、まずは茨城県のコーディネーターの方が相談を受けてくださって、その中で、時によっては放射光のほうがいいんじゃないかというような御助言もいただけるということですけれども、J-PARCセンターにもコーディネーターに位置づけられる人がいる。この際、連携ということで、できれば、ここも一本化していただけるとありがたいなと思っています。
     要は、茨城県が持たれている2本のビームラインというか、2個の装置と、ほかの装置の使い分けができるユーザーばかりではないと思うんですけれども、そこのところは、どのようなお考えでしょうか。

    【林茨城県企画部技監】

     基本的には、J-PARCセンターと一元的にやろうと考えております。今は仮称ですけど、ユーザーズオフィスが整備されて、その中にSPring-8の産業支援室と同じような形で、コーディネーターの方を何人か用意されると思うんですが、県の方に来られても、ユーザーズオフィスの方たちと一緒になって、このテーマはどの装置を使って、どうやったらいいかを判断して、そのコーディネーターの方が専門的にやる。もし、県の産業支援室の中でカバーし切れないものは、利用者協議会の外部の方に臨時に来ていただくということで、全体としては、J-PARCセンターと一元的にやろうと考えております。

    【長我部委員】

     関連しまして、料金に対する考え方ですけれども、公開、非公開、両方とも課金という形で茨城県はやられて、J-PARCセンターのほうは非公開のみ課金と。そのときの料金基準というのは、統一的にやったとき、一緒に設定するものなのでしょうか。それからSPring-8も兵庫県のビームラインというものがあると思いますが、そのシステムとJ-PARCの今のシステムの整合性はとれているんでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     まず、料金のことについては、基本的な料金は同じですけれども、茨城県がやっていただいているのは、やはり産業界を活性化するという目的がありますので、我々のほうでも考えなければいけないのは、当初は安くして、だんだん慣れた時点というか、生産的になったというか、役に立つようになったときにフルにいただくというような形にしないと産業界は来ない。それと同様な観点を茨城県は出されておられると思います。そこは不整合というよりは、そういう漸近的な考えで行っていると思います。
     それから、SPring-8とはどうなっているかということですけど、SPring-8のシステムは、大変よくできておりますので、なるべく近づけていく形になるのではないかなと感じております。

    【林茨城県企画部技監】

     県の場合は県の予算で装置を整備する関係があります。それと産業支援を厚くするということを考えておりますので、その分のお金は、やはりいただかないといけないというのが基本的な考え方です。
     全体的なお金をいただく仕組みとしては、SPring-8にあります兵庫県のビームラインと同じような考え方で料金体系は決めていきたいと考えております。

    【長我部委員】

     産業利用のときの審査基準ですけれども、この審査基準を見ると、実験ができるかとか、安全かという、価値判断がほとんどないような審査だと思えます。そうしますと、多分、優先順位というのは来た者順とか、そういう形になるかなと思われるのですが。利用数が少ないうちは、それでいいと思うんですけれども、利用数が多いときには、何らかの優先順位をつけなければいけない。例えば、ほかでやっているナノテク支援とかで、大学の解析施設や加工施設を産業利用するときに、やっぱり何らかの価値判断をして、産業利用でも優先順位をつけたと思います。初期には少ないでしょうが、今後、長い目で見たときには、どう審査されるおつもりでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     我々は当初産業利用25パーセントを目標に掲げていたんですけど、SPring-8でもなかなかうまくいかない。だから、ここしばらくは産業界に知っていただいて、なるべく産業界を誘致するということが主眼で、そこまでタイトなところに達する方法については、この作業部会でも御検討いただけたら思っております。

    【川上委員】

     きょうの体制についてのお話で、最後、永宮センター長から、利用者本位の運営という言葉がありまして、ほかのシステムも参考にされて体制をつくられたということで、非常に期待が持てると思っています。
     私自身は、創薬のところで中性子回折を利用しようかということで、茨城県のビームラインに非常に期待していまして、そこを今後利用しようとは思うのですけれども、この体制の前に、今日も少し議論が出ていたと思いますが、研究の部分をどうするかということです。中性子線回折に関して言えば、まだまだ基礎研究段階のもの、そういうものが重要で、今、JRR−3を使って中性子線回折は行われているわけですけれども、今後、J-PARCができて、パルス型の中性子でどう結果が違うのか、どういう利点があるのか、という基礎的なところをきちんとやっていただいて、それで、我々は基礎研究というよりも応用なので、その基礎的な結果をもって、たんぱく質と医薬品分子との複合体の構造を見ていくという方向に行きたいと思うので、是非研究分野の充実というか、それを含んだ形で体制をとっていただければと思います。

    【金子委員】

     装置のことですけれども、我々が今ある装置でできることは、このシステムでいいと思うのですけれども、例えば、新たに何か装置を一部つけた形で測定がしたいとかいうような場合、これまでだと先生方と共同研究等の形をとってやってきましたが、そのような場合は、課題申請とは異なる気がしますけれども、それはどうしたらよろしいでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     既にMLF施設利用委員会というのがございまして、これが実験装置の審査というのをやっております。ここでまず装置に関しては、毎年1回ぐらいの公募をこれまでに何回かやっていますが、既に25件から30件ぐらい、もっとあるかもしれませんけれども、審査をしております。そこである程度了解になってから、皆さん、お金を要求するなり、何らかのプロセスに入るということになっておりますので、一般的なことは、そこからスタートします。

    【金子委員】

     現存する装置に一部手を加えるような場合は、装置の責任者の先生と一緒にやるような形になるかと思うのですけれども。

    【永宮J-PARCセンター長】

     非常にマイナーな変更であれば、別にそこまで持っていくことはないと思います。ただ、ビームライン1本をデザインするというときには、委員会を通していただかなければいけないと思います。

    【西村委員】

     何よりも莫大なお金を投資してやることですので、やはり世界に冠たる成果というのがポイントだと思います。
     ただ、やはりKEKとJAEAの2つの組織が、タイアップという言葉がいいかどうかわからないけど、そういう形でコンバインして、協力し合いながらやるということですけど、やはり将来的には、これは国のほうの御意見を伺わないといけないのかもしれないのですけど、これは独立した形で、きちっとした体系のもとにやっていかないと、組織論として、なかなか難しいなという感じがしております。

    【井上(明)主査】

     おそらく、この件に関しましては、さらに将来の議論になっていくものと思われます。
     それで、今日ここで、一応、公募受付・審査、指針等に関しましては、今、飯吉先生から評価体制、これは簡単に言えば、両機関に理論的説明が要求されるのだと思います。そのあたりの点も踏まえた上で、唯一、この資料6の4ページ目、の123が少しわかりづらい。ただ、それは今のSPring-8と同じであるということであれば、利用者側にとっては、大きな違和感がないのかもしれない。大きな両機関が一体となって行われるということで、評価等においては、今後、いろいろ御検討いただき、もちろん後に修正等はいろいろ行っていただくとして、大まかは、本作業部会では審査等はこの方向で進めていただければよいといった感触かと思われます。

    【福山委員】

     先ほどMLF−PACに関して、いろいろ御紹介いただいて、状況は大分わかったのですけど、中性子の利用に関しては、既に原子炉、JRR−3がすぐ脇にあるということ、J-PARCとJRR−3を同じように、両方視野に入れてPAC、オールジャパンの運営を心がけるような、そういう仕組みづくりを、是非御配慮いただきたいと、それが現場からの声だろうと想像いたします。よろしくお願いします。

    【永宮J-PARCセンター長】

     冒頭に申しましたように、井上主査の諮問等もありましたので、現在、原総センターの田中センター長と物性研の吉澤教授等々と話も始めております。次回、吉澤さんが来られるときに、何かそういう御発言があるかもしれません。

  3. J-PARCにおける利用料金の基本的な考え方について、まず永宮J-PARCセンター長からJAEA、KEKを含む国内外の大型施設の利用料金とJ-PARCの利用料金体系の考え方について説明があり、続いて大野委員(財団法人高輝度光科学研究センター専務理事)からSPring-8の利用料金の考え方について説明があり、その後以下の議論が行われた。

    【川上委員】

     基本的にこの料金体系というのは賛成です。企業ですと、成果非公開ということが原則ですので、これまでもPFとかSPring-8では有償で実験を行ってきたということで、これはいいと思います。
     しかし、ちょっと考えていただきたいのが、これまでの放射光を使ったたんぱく質の構造解析で我々がやってきたものは、例えば、1シフト、SPring-8でいえば8時間であり、物によっては10検体から15検体、そのぐらいの構造は解けるわけです。ところが、中性子線回折になりますと、多分、世界最高性能の装置ができると期待はしていますけれども、それを使ったとしても、おそらく二、三日、またはそれ以上かどうかわからないのですけれども、そのようにタイムスパンが違うのです。そういった場合に、我々が最初から有償で利用するとなった時に、2日と言われると400万円という話になります。最初にPFができた時に、我々は十何社か集まって、ビームラインを造るので初期4,000万円払って、その後、毎年400万円払う、それだけで使えていた。SPring-8に関して言えば、初期投資が2,500万円で、その後、毎年500万円プラス、それぞれ非公開でやる場合には、1回の実験当たり何らかのお金を払うという形でやってきていたのですけれども、そういうものに比べると、かなり金額が違ってくるかなと思います。そこのところを何か考慮していただければと思います。こういう応用研究がアカデミアに対して影響を与えないかというと、そんなことは決してなくて、我々が初めにPFで使い始めて、やはり創薬におけるたんぱく質の構造解析というものの重要性がわかってきて、それが現在進められている「タンパク3000」という国家プロジェクトにつながっているわけです。ですから、中性子回折に関しても、必ずやアカデミアの方にも恩恵が行く、科学的な興味というものを起こすことができるだろうと思っていますので、最初の敷居を下げていただく意味でも、料金はちょっと考えていただければと思います。払うのはやぶさかではないので、そこのところだけ、ちょっと考えていただければと思います。

    【永宮J-PARCセンター長】

     コメントとして承りたいと思います。
     我々は個々の場合に応じて、例えば、先ほど申しましたように、運営開始初期の利用促進策をとるような場合には、かなり安い値段でできるようにすることも考えておりますし、本当に中性子が役に立つかどうかということを見極めるまでは、いわゆる成果公開型的な研究というのもあるのではないかと思います。本当に成果を非公開にするときには、やはりそれなりの生産性がないと非公開で考えておられる企業の方も利用されないのではないかと思いますので、その辺は両面のやり方があるのではないかと思います。我々も、たんぱく質について、どれだけ役に立つかということも十分考えなければいけないと思っています。

    【金子委員】

     資料8の6ページの追加料金のところの注2に、「高度な技術支援等により生じる料金」とあるのですけれども、私が聞いたところによると、ESRF等に関しては、実際に支援をしてもらった後で、これだけの時間支援をしましたという追加料金等が発生するというようなこともあると聞いています。そういうような形で、最初はそういうつもりはなかったけれども、いざ助けてもらう場面になったときに、後から払うというような、そういう設定もあるのかどうかを教えていただけますでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     かなり具体論なので、即答はできないのですけれども、もともとは、どうしても実費を取りたいということではなくて、やはり実費的なものを残しておかないと、いろんな場合に対応できないということもありますので、そうしているだけです。今のような場合は最初に十分な話し合いが必要で、追加的に、支援をしたから、後で払えというような、そういう無茶なことをしようとしているわけではない。

    【井上(信)委員】

     先ほどの追加料金のことですけど、追加というふうにきっちり打ち出すと、J-PARCセンター側のサポート体制を担保しなきゃいけないですよね。そのサポートする者は、みんなが研究者であったり、他の業務を抱えている人であったりといった、研究業績を上げないといけないといった使命感を持った人がやった方が、開発的なことだから実はうまくいくことが多いわけですよね。けれども、現状ではそれはセンターの任務じゃないし、やっても評価もされないということもあり得ますよね。その時に、本当に熱心にサポートをやれるかどうかという、その仕組みをお考えいただく必要があるのではないかという気がします。

    【永宮J-PARCセンター長】

     すべてについてお答えできないのですが、技術者が来たからその給料まで追加料金として全部払ってもらうというようなことを言っているわけではありません。

    【井上(信)委員】

     私が言っているのはお金のことではなくて、センター側の人の配置というか運営のことです。お金が幾ら必要かという話ではなくて、料金を取るとなれば、特にサポートする人を置くことが義務化されることになりますよね。それがうまくできるのかというようなことを聞いているのです。

    【永宮J-PARCセンター長】

     最初のプレゼンで申しましたが、例えば分析センターですね、試料さえ送っていただければ、あとはデータを返すというような、そういうサービスもしなければいけない。これは技術料としていただかなければいけないと思います。そういう方は、日常的にやっておられるわけで、それがその方の業績になるかどうかはわからないですが、中性子利用という観点からは、非常に重要なことをやっておられるわけです。だから、そういうシステムを入れ込まなければいけないのではないかと思っています。それを昇進とか、内部の中でどういうふうに位置づけるかというのは、明確ではありませんけれども、そういうことはバリエーションの中に入れ込まなければならない。そういうことでしょうか。

    【井上(信)委員】

     そのような日常的な業務でないところで、むしろ助けてほしいところがあるのではないですか。

    【大山J-PARC副センター長】

     1つの考え方としては、技術スタッフと研究スタッフを組み合わせるということで、かなり研究スタッフの方の負担を軽くするということで対応できるのではないかとは考えています。そういう意味で、支援スタッフ、専任スタッフというのも充実させていくということも必要だと考えています。

    【横山委員】

     ちょっと広い視野での質問になるのですが、今ここで決める料金体系というのは、J-PARCセンターにおいて、非常に長い期間使うことになりますでしょうか。というのは、この料金体系というのは、次の検討課題である国際的に開かれた研究施設の考え方というのに非常に密接に関係してくるのではないかと思われます。
     例えば、20年後にアジア諸国のどこかの国がこういった施設を使うようになって、そちらの国の使用時間が非常に増えた場合に、こういった規則を変えないで、国際的な学術支援という立場で、国際的に開かれた運営体系でやっていけるのかどうかというのも、現時点で一度、検討するとよいのではないかと感じております。現に海外の研究所において、日本人の利用時間が非常に増えた場合にそういった検討事項が行われたということも伺っておりますので、その観点からのお話も、是非伺いたいと思います。

    【永宮J-PARCセンター長】

     国外の方がJ-PARCにビームラインを造られたり、あるいは使いに来られたときにでも、成果公開型の場合は無償にしているのです。ですから、今は成果を非公開にするときだけの料金を議論しているだけで、その料金を一度決めたら変えないかというと、必ずしもそれは分かりません。あまり高いから、だれも寄りつかなければ、また考えなければいけないこともありますし、その逆もあるかもしれません。だから、どこかの国が、あまりお金もないけれども、非常に使いたいというような時は、いろいろな特別の措置ができない訳でもないと思います。料金は一種の算出基準をきちんと決めませんと、むやみやたらと取っている訳ではないということを、きちっと示したいというのが今回の趣旨でありまして、値段がどうなるかといった、現実の問題というのは、もう少し弾力的に対応できる面がない訳ではないと思います。

    【大野委員】

     参考までに、SPring-8は一度改定いたしました。これはやはりビームラインの数が増えてきたとか、あるいは使用時間が変わってきたとか、いろんな要件がございますので変えております。そういうことで、多分、J-PARCも数十年後になれば、やはり変わっていくものであろうという気がいたします。

    【横山委員】

     大変よくわかりました。ありがとうございます。
     私が特に伺いたかったのは、ラザフォード研究所の例が非常にわかりやすい例かと思うのですが、ラザフォードでは国内の利用者だけを優先的にして、国外の利用者と分けています。J-PARCは日本にある研究所だから、ラザフォード研究所のやり方を取るという方針にはならないことを、今ここできちんと決めて、将来に向かって国際的に開かれた研究所であるための料金体系というのを、そういった精神の下に、ここで決めていくということを確認するという質問でした。

    【永宮J-PARCセンター長】

     先回の評価部会でも申しましたが、人種、国とか何かを問わないで料金体系を設定するというIUPAPの基準がありまして、ISIS、ラザフォード研究所は、その基準を取り入れていないのです。一方、SNSはIUPAPの基準に沿う方針にしています。だから、我々はむしろSNSに近いと思っており、ISISの方針は取らないというふうにしたいと思っています。

    【井上(明)主査】

     他に何かありませんか。よろしいでしょうか。それでは、今の御意見をお伺いしておりますと、この利用料金の考え方等においても、ほぼ原案に沿っているようです。
     ただ、今日いろいろ議論し尽くせなかった点、あるいはその後にいろいろ気づかれる点等あるかと思いますので、また意見があれば事務局の方に出していただくということにします。

  4. 物質・生命科学実験施設における産業利用の促進について、まず大野委員からSPring-8における産業利用の促進のための取組について説明があり、続いて事務局から文部科学省における産業利用を促進するための支援方策について説明が行われ、その後以下の議論が行われた。

    【金子委員】

     大野委員から御説明がありました、6ページのSPring-8の新システムの方なのですけれども、ユーザー側から見ると、大変によくできたシステムになっていると思いまして、要は、自分たちでできるようになってしまえば、通常の課題申請方式でいいと思うのですけれども、そこに行き着くまでは、コーディネーターや技術指導員の方たちの支援が必要な共同研究型というか、ある種、手取り足取り教えていただけるような、そういうシステムが、やはりJ-PARCにも必要だと思いますので、是非、こういうような形のものを、先ほどの技術移転推進プログラムでコーディネーターがありましたけれども、こちらの方は、多分、SPring-8の共同研究とはちょっと違うと思いますので、このシステムの支援を期待したいと思います。

    【永宮J-PARCセンター長】

     私も伺っていて、非常にいろいろ学ぶところがあるなと思いました。産業利用に関しては、本当にSPring-8の方がずっと先輩ですので、いろいろ良いところを取り入れていくべきだと思っています。

    【井上(明)主査】

     この産業利用に関しての検討は、今回、ここではじめて議論いただくものですか。J-PARCの方では、少しは検討を開始された状況なのですか、それとも、まだ全く白紙の状態なのですか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     例えば、トライアルユースをJRR−3でスタートしたり、産業利用に関しては去年の春に文科省の方でJ-PARC等の施設の利用に関する検討会をつくっていただいた時に、産業利用のやり方等々について議論して、いろいろな提案などもいただきました。ただ、我々現場がそれに十分対応できているかというと、これはなかなか、そこまで至っていない状況です。

    【大野委員】

     参考になるかどうかわかりませんが、私どもは産業利用については正直申しまして、平成9年に運転開始する時には、このような状況まで持ってこれるかどうかは自信がなかったのです。やはり二、三年たってから、いろいろ情勢が変わってまいりまして、特に兵庫県、中性子の場合は、茨城県が非常に御熱心で、2本のビームラインをお持ちになるようですが、放射光の場合にも、兵庫県が、1本のビームラインに3本の分岐、事実上、3本お持ちになる。新しくもう1本、計2本で、4本でおやりになっているという。その中で、コーディネーターとか、あるいは技術陣の相互の交流をものすごく頻繁にやったのは事実でございます。これは、この五、六年間、必死になって交流いたしました。これは参考になればと思います。

    【長我部委員】

     この議論の前提なんですけれども、J-PARCの支援システムの構築に際して、幾つか、先ほど事務局の方から、いろいろな現在の事業の御説明があったのですけれども、既存の事業の公募型の枠を使って、こういう新しい支援システムを構築しようという議論なのか、それとも新規にJ-PARCのために支援事業のようなものを企画して立ち上げるという議論なのか、どちらのスタンスで、今後動いていくことになっているのでしょうか。それとも、まだその辺は決まっていないのか、教えていただけますか。

    【木村量子放射線研究推進室長】

      SPring-8がそうであったように、SPring-8の場合は放射光利用の成熟度に従って、いろんな制度を当てはめていったのです。多分、中性子でも同じようなことが言えると思うのです。まず、平成18年度に原子炉を使った中性子利用のトライアルユース制度を始めましたけれども、多分、それをJ-PARCの方にも、まずは拡大していく方向で考えていくのが自然な方向性だと思っていまして、基本的に、段階に応じたメニューというのは、今御紹介したように揃っていると考えています。ただ、中性子利用特有の何か新しいものを作らなければいけないということになれば、それはまたその時に考えなければいけないかもしれません。

    【長我部委員】

     わかりました。

    【川上委員】

     今盛んにトライアルユースということで行われているのですけれども、放射光施設のトライアルユースとは、多分、かなり違う部分があると思うのです。放射光の場合ですと、例えば、我々産業界も実験室型のX線装置を持っていて、それの限界というのがあるので、大型の放射光を使えばどうなるかということを試すということになります。ところが、中性子に関して言えば、全くそういうものがない。トライアルユースで使えるのがJRR−3ですから、実験室型の装置を使ってみて、例えば、X線とかとどう違うことがわかるのかというところを見るというところなので、むしろ、今、JAEAに研究室が幾つかあると思うのですけれども、文科省から予算を出していただいてもいいのですけれども、そういう方を支援して、そこら辺の基礎実験をサポートするところだと思うのです。
     産業界にとっては、このJ-PARCができた後に、本当の意味でのトライアルユースが始まると私は思っているのです。そこで初めて、自分達の試料を持っていけるかどうかというところを試すと思うので、おそらくJ-PARCができたとしても、すぐにはそこまでの測定実験はできないと思うので、今後5年後ぐらいが多分始まりかなと思うので、こういう予算というのも、ここ二、三年で終わりとかというのではなくて、もっともっと長期的な視点に立って、支援策という意味で是非やっていく方向で考えていただければと思います。我々も本当にJ-PARCが本格稼働したときに、トライアルユースが使えるような形を望みます。

    【木村量子放射線研究推進室長】

     今、川上先生がおっしゃったように、放射光というのは、X線なんかを使って、ある程度の知見があるから、さらにSPring-8を使えば、これぐらいのことができるのだろうなと予測はついているし、多くの方は自分たちも当然ユーザーの一員だと思っているのです。そういう点では、中性子とは全くスタート地点が違うと思うのです。だから、今やっているトライアルユース制度というのは、今現在、中性子を使おうと現に思っておられる方には多分満足のできない段階のものになっており、まずは中性子ってどんなものなのかというのを見てやろうと考えている方に、もしかしたら使えそうだなと思ってもらえるような制度設計になっています。
     ただ、今回、平成18年度も50数件の課題を実施していまして、多分、来年もそれ以上になってくると、J-PARCが運用を開始するまでには、多分、2ラウンド、3ラウンドぐらいのトライアルユースを重ねていくと思うのです。そういった中で、多分、放射光のレベルにまでは行かないかもしれませんけれども、ある程度、段階を踏んで、トライアルユース制度の中身というのも少しずつ変わっていくのだろうとは思っているし、もし、そういう段階になれば、当然、変えなければいけないと考えています。

    【西村委員】

     トライアルユースの考え方なのですけれども、SPring-8の場合は、特に創薬関係者としては、GPCR(Gたんぱく共役型受容体)の構造が私らの目の前に初めて見えた。やっぱり、これで「お、創薬に使えるじゃないか」というのが大きかったと思うのです。そういう意味合いで、この中性子線に関しても、ベースとなるデータはほぼ皆無に等しいとしても、このトライアルユースで、いわゆる無償でデータをとって欲しい。そうなると、それはゼロから1と言ったら極端かもしれませんけれども、1のデータがあると、産業界というのは10、100の実験をやろうかという話になるわけです。
     こういうことができるというのを、基礎の、いわゆるトライアルユースの段階で、特に先生方に、無責任な言い方ですけど、出して欲しいと思います。もしうまくいくようでしたら利用は爆発的に増すと思います。

    【駒宮委員】

     非常に時間がかかる話かもしれませんが、産学協同で、まず中性子等を使えるような人材をいろいろと育成して、それを核にしてそれぞれの企業に持ち帰って中性子利用をやるというのが1つの形じゃないかと思います。
    J-PARCを先端融合領域として、文部科学省から支援経費を出してもらう。多分こういう考え方を使ってやれば、ある程度はできると思います。
     もう一つは、施設を利用するとこういう成果が得られるということの宣伝がきちんと行き届いていないということなので、それは様々な潜在的なユーザーを発掘するというのが非常に重要ではないかと思います。それは成果非公開というものがネックになっていますので、成果非公開でもある程度時間がたったら、それをどんどん公開していただいて、これだけ良い成果が得られるのだということを、しっかりと企業が認識していただくというのが非常に重要じゃないかと思います。

    【金子委員】

     コーディネーターの件についてですけれども、現在は、多分、各装置等の先生方がコーディネートされていることが多いと思うのですけれども、今後、J-PARCの中に、今の産業支援みたいな室を作るとすると、そのための専任のコーディネーターが必要になってくると思うので、トライアルユースの頃からコーディネーターの育成も同時に進めていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

    【永宮J-PARCセンター長】

     おっしゃるとおりだと思います。本当にこれは前々から、コーディネーター及び、先ほど駒宮委員も言われた宣伝というか、どういうふうに中性子が使えるのかという利用案内みたいなものをそろえるとか、SPring-8は随分いろんなことをやっておられるので、我々、見習うところが多いのですけれども、まだそこまでの領域には残念ながら達していないので、これからの大きな課題だと思っています。

    【井上(明)主査】

     産業利用の促進に向けた仕組み作りに関しましては、先行事例としてSPring-8の非常に成功事例がございますので、それを十分に参考に、今日の各委員の御意見等を踏まえて、J-PARCにふさわしい、産業利用の仕組みをつくっていただければと思います。

―了―