第7期地球観測推進部会(第3回) 議事録

1.日時

平成29年12月22日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. GEO本会合の結果等報告
  2. 地球観測データの利用事例に関するヒアリング
  3. 地球観測データの利用促進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

大垣部会長,春日部会長代理,赤松委員,岩谷委員,上田委員,甲斐沼委員,河野委員,小池委員,佐藤委員,寶委員,舘委員,佃委員,中田委員,箕輪委員,村岡委員,六川委員,若松委員,渡邉委員

文部科学省

大山大臣官房審議官,藤吉環境エネルギー課長,佐藤環境科学技術推進官,石橋課長補佐,直井地球観測推進専門官

5.議事録

出席者

【関係省庁】内閣府 太田参事官
【有識者】一般財団法人 気象業務支援センター、株式会社MTI


【大垣部会長】  それでは、第7期の地球観測推進部会の第3回会合を開催いたします。初めに事務局から出席者と資料の確認をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  本日は18名の委員の方に御出席いただいており、過半数に達しておりますので、部会は成立となります。また、本部会は部会の運営規則により公開となります。
 配付資料は議事次第に記載しているとおりで、メインテーブルには机上資料も配付しております。資料は以上ですが、不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。それでは、議題1はGEO本会合の結果等報告であります。本年10月にワシントンDCで開催された本会合について、事務局より説明をお願いします。
【佐藤環境科学技術推進官】  GEO本会合は年に1回開催されている非常に重要な会合で、今回は平成29年10月25日から26日まで、ワシントンDCで開催されました。出席者は約500名ということで、これまでで最も多い出席者でした。本会合には、地球観測推進部会の小池委員、村岡委員、若松委員も参加されておられます。私の報告の後、小池委員、村岡委員、若松委員から感想を一言いただければと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本会合の開催結果について説明いたします。
 まず初めにGEO事務局長であるバーバラ・ライアン氏から、GEO初期の10年は組織的、包括的、持続的な地球観測のために多くの時間を費やしてきたが、今後は理念の一部にある「決断と行動」に集中する時期である旨、言及がありました。また、データのユーザーと提供者のギャップを埋めることが重要であるということ。また、各メンバー国内でもGEOに関わる組織が多様化することが望ましいということ、データ共有によりキャパシティビルディング、教育、経済活動に地球観測データが用いられることの重要性について言及されました。
 この本会合では四つのパネルセッションが行われました。一つ目は公共政策における地球観測ということで、オープンデータは地域レベルでの発展に有用であること。また、専門的なデータ分析を行う人材の育成や正確なデータ観測が必要であるということが話されています。二つ目は、商業セクターにおける地球観測です。ここではGEOがデータを公開するだけではなく、プラットフォームとなることが大事であるということ。また、商業データと公共データの連携を促進することが大事であるということが話し合われました。なお、この商業セクターにおけるパネルセッションには若松委員が登壇されております。三つ目は国際開発における地球観測で、防災や森林破壊等の国境を越えた課題解決のためにデータ共有、統合が重要であるということ。また、データを活用できる専門家も必要であるということが話されました。最後のパネルセッションは国家的な地球観測ということで、米国、ベトナム、中国、英国の地球観測の代表者が登壇し、自国の地球観測活動及び計画に関する紹介がありました。
 次のページに移りまして、3)と4)については事務的な事項ですので、説明を省略させていただきます。
 5)は日本で開催予定の次回本会合についての紹介で、開催告知のショートビデオを上映するとともに、大山審議官から第15回本会合は来年10月下旬から11月上旬に京都で開催されることをアナウンスしました。その後、急きょ若田宇宙飛行士から来年の本会合への参加の呼び掛けをしていただきました。下にある写真ですが、左の写真は、JAPAN GEOの展示ブースで、ポスター展示やショートレクチャーを実施いたしまして、非常に好評でありました。真中の写真は、審議官から来年日本開催をアナウンスしたときのもので、若田宇宙飛行士も写っております。右の写真は本会合で小池委員から発言しているときの写真で、活発な意見交換が行われました。
 私からの報告は以上です。小池委員及び村岡委員、若松委員から感想を一言いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
【小池委員】  どうもありがとうございます。私自身、GEOの10年の実施計画を立てた側からすると、本当にうまくいくのかと不安ながら今回、会合に出させていただいたのですが、非常にうまくいっているという印象を受けました。村岡先生が委員になっておられるプログラムボードの議長も日本が中心になるというように聞いておりますが、プログラムボードを中心としたプログラム性というのが実質的にしっかり動いているということを認識いたしました。
 もう一つは、大山審議官からビデオを含めて、次回の招へいをされたときに、やはり日本に対する信頼と期待というのを強く感じました。それに、若田さんが飛び入りで出ていただいたのも非常によかったです。このようなイントロを作っていただいたので、来年、本会合を京都で開催することになり、それをGEOコミュニティの皆さんが認められたわけですけれども、新しい10年でGEOが本当に何ができるのか。4件のパネルディスカッションについては、すごくいいものもありましたが、焦点が少しぼけているものもありました。何かプロダクトが出るというような仕組みを是非日本でやれるといいと思います。それを積み重ねていくと、どんどんプロダクトが膨らんでいく。そんなことを日本開催のときには目指したいと思いました。
【村岡委員】  ありがとうございます。今、小池先生もおっしゃいましたが、ワークプログラムが動き出し、様々な活動が報告されています。今回のGEO本会合の各文書と、GEO Highlightsというレポートも含めた成果等々、GEOのホームページですぐに見られるようになっていますので、是非御覧いただきたいと思います。
 プログラム委員会としては、2018年のプログラム委員会のメンバーがこの前の会合で決まりまして、日本が3人の共同議長のうちの1人を担うことになっています。JAXAの落合さんにリードしていただきますが、プログラム委員会としても2018年はSDGsとSBA(Societal Benefit Areas)の2つに注目し、パリ協定及び仙台フレームワークに関してワークプログラムの活動のマッピング、分析を進めていこうという話をしています。同時に、このSDGsと仙台フレームワークとパリ協定は、GEOのエンゲージメント戦略の最優先課題になっています。これに加えて、アーバンレジリアンスとエコシステムアカウンティング、この二つも優先課題の四つ目、五つ目として入れることが決まっていますので、2018年はワークプログラムとこのエコシステムアカウンティング、アーバンレジリアンスをどうマッピングしていくか、関連付けながら分析して、更にワークプログラムをどう発展させていくのかをプログラム委員会でも議論していく予定にしております。来年早々、1月末にはプログラム委員会がジュネーブで開催されることになっておりまして、日本も参加して貢献していきたいと考えています。以上です。
【若松委員】  まず、貴重な場に参加させていただく機会を頂きまして本当にありがとうございました。私は、今まで民間の商業衛星の利用がメインで、ほとんど政府公共衛星を活用したビジネスというのは展開してきておらず、GEOについてもこの部会で一端を知るだけで余り中身をよく分かっていませんでした。今回、実際に参加して非常に多くの国から多くの方が参加され、熱心に議論をしているということを本当に肌で感じまして、小池先生もおっしゃいましたが、うまく進んでいく感じがあるなということをひしひしと感じました。
 私は、商業セクターにおける地球観測のパネルディスカッションに参加させていただきましたが、いわゆるオープンフリーのデータと民間気象衛星のデータをどううまく組み合わせて使っていくのか、それによって更に付加価値を高めたビジネスがあり得るんじゃないかということを熱心に議論していたことが印象的でした。あとは、民間ならではの話ですが、一つの機関が一つのデータをうまく使うのではなく、データを組み合わせてサプライチェーンとして民間側のビジネスプレーヤーとも連携しながらビジネスを作っていくという議論が非常に印象的でした。GEOはデータを公開するだけではなくプラットフォームになるのですが、プラットフォームもデータ利用のプラットフォームではなく、ビジネスを創り出すようなプラットフォームにもなるともっといいのだろうと思っております。実際、パネルディスカッションが終わった後も、パネリストの方から個別にメールを頂きまして、ビジネスのディスカッションにもつながっていますので、非常にいい機会を得られたと思います。ありがとうございました。
【大垣部会長】  それでは、ただいまの御説明に関しまして御質問あるいは御意見等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【大垣部会長】  それでは、次の議題に移りたいと思います。地球観測データの利用事例に関するヒアリングです。本部会では地球観測データの利用事例を基に、利用促進策を検討することとしておりまして、前回の発表に引き続き、今回は2件の事例紹介をお願いしております。1件目は気象分野の事例について、気象業務支援センターの三上室長代理から、2件目は海洋分野について株式会社MTIの安藤部門長においでいただいております。それぞれの発表の後に15分程度の質疑の時間を設けておりますので、活発な質疑、御議論をお願いしたいと思います。
 それでは、気象業務支援センターの三上室長代理から御説明をお願いいたします。
【気象業務支援センター】  気象業務支援センターの三上と申します。今日は気象観測データの民間における利活用を、当センターのデータ配信事業から見えてくる姿と言う観点から御報告させていただきます。
 気象庁の気象データ、この気象データには観測データ以外の数値予報のプロダクトも入りますが、これらは気象庁のウエブを通じてたくさんのデータが随時公開されております。一方、大容量の気象観測データあるいは予報プロダクトは、気象業務支援センターという一種の気象情報のハブ的組織を通じて配信されています。この仕組みは1993年に気象業務法が改正され、デジタルデータを使って数値的に予報を出すという技術が大幅に進歩し、当時は自由化、規制緩和という大きな国の施策の流れもあり、天気予報の自由化が目指されたわけです。気象庁は国民にあまねく予報情報を提供するのと同時に、民間が様々な特定ユーザーに向けて特定の予報サービスを提供する制度を準備しようということで、一つは、予報の自由化ということで気象予報士という制度を作りました。それからもう一つは、予報に使う大量のデータをリアルタイムで随時発信していく機能が必要となり、気象業務支援センターが設立されました。
 その場合、誰もが勝手に予報していいということではなく、予報業務を行える技術的な基盤や体制を持った組織に対して気象庁が許可事業者としてのライセンスを交付し、予報するという仕組みになっています。現在、許可事業者はこれだけたくさんありまして、大部分はいわゆる気象予報サービスを行っている会社と、それからマスコミ、テレビだとか新聞といったところが大半を占めております。これらの認可事業者に対して必要なデータを配信する仕組みとして、このセンターが様々なデータをリアルタイムで配信しています。特定のユーザーに対してデータを配信するので、どうしても費用がかかるのですが、必要な実費分を気象庁長官の認可を受けて徴収するという仕組みになっています。
 現在の気象データの配信ルートがこういう形になっております。学術的なデータベースなどは別のルートがありますが、今日のテーマは民間の利活用ということですので、その点については割愛させていただきます。
 気象業務支援センターから配信されるデータには、大きく分けると電文データと数値データがございまして、電文データは、いわゆる昔からある予報のテキストで、予警報、注意報といったものになります。いわゆる防災情報が主になります。一方、いっぽう数値データは予報を作る素材も含めて観測データや気象衛星の膨大なデータになりまして、特にひまわり8、9号が運用を始めてからは、分解能も時間解像度も格段に増えましたし、チャンネル数も16チャンネルのバンドを持っておりますので、飛躍的にデータ数が増えています。観測においても新しいウインドプロファイラーやフェイズドアレイレーダーのような非常にデータの密度が濃いデータが使われるようになってデータ量が増えていくことになります。予報についてもモデルの解像度が随時アップデートされているので、大量のデータをセンターを通じて利用者に配信しているというのが現状です。仕組みとしては、気象庁あるいは気象衛星センター、それから、万一の自然災害等の事態に対して本庁が仮にダウンしても大阪管区気象台が本庁の代わりとなって支えるという冗長性も確保しており、それに対応してセンターも送信システムを大阪においても運用しています。
 センターからのデータ配信事業を経時的に見ていくと、ある傾向を見て取ることができます。これはどれだけの利用者が使っているかを平成7年から28年にかけて示した図ですが、この色分けしている気象衛星の観測データが新たに追加されています。それから、緊急地震速報も平成18年から新たなサービスとして追加されていますが、従来からのいわゆるファイル形式と電文形式のデータにも非常に強い需要がありまして、いずれの要素もファイルと電文ともに利用者数が増えているというのが現状です。
 当初は許可事業者に対して予報に必要なデータを配信するという役割が重視されていましたが、この許可事業者数の推移を見ると、1980年代以降非常に増加しているのがわかります。事業者の数は増えてきたのですが、実は2005年辺りからほとんど横ばいに近い傾向になっています。当時は民間の予報業界のマーケットが飽和しているんじゃないかという分析をしていたのですが、どうもそうではないということが最近見えるようになってきています。それは、この後で御紹介いたしますが、まず技術的なバックグラウンドが変わってきているということが一つの背景としてあります。
 御存じのように観測技術は日々進歩しており、ひまわりのデータも爆発的に増えていますし、新たにGNSSを使った水蒸気量の利用も始まってきている。あるいは今後、新型レーダーという形で従来のレーダーよりもはるかに高密度の観測データが増えてくる。それから自動気象観測装置、いわゆるアメダスは気象庁が世界に先駆けて非常に稠密なネットワークを作っているのですが、それ以外に民間からもAWSのネットワーク、要はコンパクトで信頼性の高い測器が開発されたり、あるいはそのデータをネットワークを使って配信する技術も進歩してきまして、気象庁以外でもこういったサービスを展開するようになりつつあります。
 一つの例として、NTTドコモの基地局のスペースを使ってアメダス的な気象要素や、花粉などの環境要素も入っていますが、こういうものを民間でも展開するようになっています。アメダスは全国1,300か所で観測していますが、ドコモの基地局では4,000か所で、雨などの観測も入れると全部で2,500か所で非常に稠密な観測をやっておられる。こういった例がドコモに限らずいろいろな場面で見られるようになってきています。
 それから、気象観測で言うとモデルとの連携、いわゆるデータ同化技術が進歩してきており、いまやモデルの運用に不可欠の技術となっております。これは気象庁のハンドブックからコピーさせていただいた表ですが、気象庁の現業の予報プロダクトには、いわゆるオーソドックスなアメダスや地上の気象観測、ラジオゾンデといったデータ、これはWMOの枠組みの下で運営されているもので、世界的にデータ交換されております。これに加えてドメスティックなレーダーネットワークや近年ではNASDA等の宇宙開発機関、地球観測衛星のデータが飛躍的に充実してきており、これを使ったデータ同化、観測値を最適化して解析値あるいはモデルの初期値に使っていくという技術開発競争が世界レベルで進んでいまして、どれだけのデータを取り込めるかというのが予報プロダクトの性能に関わるような競争が行われているところであります。
 このようなデータ同化技術とともに、近年では、いわゆる防災の短期的な予報ではなく、地球温暖化に対する適応策が緊急な課題として挙がるようになってきまして、将来の温暖化予測をするためには過去の気象観測データを活用して精度保証する、あるいはモデルの性能を検証する、あるいはモデル結果を解析して気候システムの理解そのものを深めていくという形で活用されるようになってきています。
 この二つの要素はいずれも従来よりもはるかに大量の気象ビッグデータが必要になってきます。後で紹介させていただきますが、気象ビッグデータを活用したビジネス展開が、日本ではなくアメリカで展開されるようになってきております。これらを背景として、気象観測データについても一次ユーザーが少しずつ変化してきているのではないかと見ております。今はやりの言葉で言うと、G2B2B、そこの間を取り持つ一次ユーザー、ビジネスユーザー、あるいはG2B2Cという部分で官から民への流れが出つつあるのではないかということを感じる次第です。
 一つの例としてウェザー・ルーティングを紹介したいと思いますが、これは船舶をより経済的、安全に運航するための情報サービスです。1970年代あたりから日本でも民間の企業がサービスを開始してきていますが、2000年代の後半から地球温暖化対策ということでもウェザー・ルーティングをしっかりやるべきであるという声が上がってきております。この背景としては、国際海運のCO2の排出が全世界の排出量の3%を占めており無視できないだろうということで、国際的な条約の中でCO2の排出削減を図るための船舶の効率的な管理運営が義務付けられるようになってきまして、ウェザー・ルーティングが一つの大きな産業の分野として位置付けられています。
 それを私どものセンターのデータ利用から見ると、平成17年から28年の利用者数での統計では、予報モデルのプロダクトを使っている利用者がこのように増えてきているということです。予報のGPVを使って何らかの付加的なサービスを作る素材として利用が広がっていると同時に、全球や沿岸の波浪モデルの利用の増加傾向がずっと続いています。海面水温や実況の利用が増加しておりまして、これも北西太平洋を中心として利用者数が目立たないのですが、着実に増えてきているという現状があります。これはウェザー・ルーティングのデータ素材としての利活用が近年増大してきて、従来の気象の数値予報モデルだけではなく、全球と沿岸の波浪モデルやナウキャスティングの観測データなども利用が増えてきていて、それらのデータを使ったウェザー・ルーティングのシステムとして民間の会社から既に様々なシステムが構築・運用されている。これらは船舶と衛星回線を使って、センターとの間で観測データ、予測データ等の双方向のやりとりをして、経済的な運航をコントロールする仕組みになっております。それぞれの会社がシステムを作って自社内で運用するだけでなく、これをビジネスモデルとして展開されておるやに聞いております。この辺りについては、次の講演で詳しい説明、あるいは未来についてのビジョンも報告されると伺いましたので、ここでは簡単に御紹介するにとどめます。
 それから、先ほど御紹介した予報の認可事業者のある意味閉じた世界から、データ解析技術を持ったコミュニティに一次ユーザーが広がりつつあるという印象も持っております。二つほど御紹介すると、一つはIBMが全球モデルを開発するために、ザ・ウェザー・カンパニーという大手の気象情報会社を併合し、しかも米国のUCAR/NCARのコミュニティ気象モデルを結集して、それを改良してビジネスとしてグローバルな気象予報を進めるというような動きがあります。彼らの宣伝では、Most accurate forecast in the worldということを自信を持ってアナウンスをしていまして、日本でもサービスが開始されつつあります。従来、気象庁的な常識で言うと、IBMが天気予報をやるなんて考えていなかったわけですが、これまでと違う分野からの大手の参入があり、メディア、航空、エネルギー、小売といった様々な分野に対してソリューションを提案する一つのツールとして全球モデルの開発をやっている。
 もう一つはパナソニックで、アメリカにPanasonic Avionicsという子会社がありまして、ここがグローバルな気象予測プラットフォームを構築しています。私どもの世界ではヨーロッパのECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)が予報について非常にレベルが高いと言われていて、気象庁など世界の気象機関との間で予報精度の競争になっているわけです。そのような中、彼らはどうしたかというと、民生機にTAMDARというセンサーを全部付けたんですね。もともとはアメリカの政府主導の飛行機に氷が着氷するのを防止するためのモニター用の機械だったのですが、それを気象予測に利用できるということで、パナソニックがAir DataというTAMDARを運用していた会社を買収したわけです。ここでは気温とか風、湿度、乱気流、もちろん気圧も測っていて、それとGPSの位置情報を合わせて、世界中でこの機材を展開しているところです。彼らの宣伝を見ますと、例えば2015年のハリケーンホアキンについて、アメリカのNCEPの予報ではアメリカ大陸に上陸するという予報が出ていたのですが、ECMWFとPanasonic Avionicsは本土上陸はないという予報を出していて、実際にもそうであった。彼ら自身もworld best weather modelというふうに宣伝していて、こういう動きがアメリカでは起こりつつありまして、国際的なナショナルウェザーサービスの国連機関であるWMOも重大な関心を持って注目しているところです。彼らの会社は、途上国や中進国のナショナルウェザーサービスに対して、ビジネス活動をやっているということも聞いています。
 我が国ではどうかというと、気象庁が気象ビジネス推進コンソーシアムを立ち上げて、いわゆる気象ビジネスの啓発、普及、人材育成、あるいは調査というものをアイデアを出し合い、現在、二百数十社の組織が入っておりますが、こういう形で官民のデータ活用の推進、展開をしているところであります。
 最後にまとめと課題ということでもう一度復習させていただきますと、やはり利活用の促進という意味では、ユーザーに利便性の高い仕組みが必要であろう。それが新規業界の自発的参入を促していく。いわゆる制度を作るからそれに乗って気象庁が認可して、という形ではなく、民間組織自らが新しいデータ解析技術を大胆に取り入れて参入、というのがアメリカなどでは行われているわけで、こういうものを促す一つの仕組みが必要であると思います。
 それから、気象観測データは日々巨大化していく性質を持っています。このデータ自体は素材ですので運用を民間が全て支えるのは難しく、従来どおり国は防災情報としても責任を持って維持管理していくということが必要だと思います。そのデータの保存については大変な苦労が要るわけですが、保存と公開の仕組み、費用負担をどうすべきかが一つの議論になろうかと思います。こうしたデータの潜在ユーザーとマーケットの掘り起こしという点で言えば、適応策について来年度法制化の動きが新聞報道等で既に出ております。適応策というのは緩和策とは違って、各地域固有の問題で、様々な分野の問題に対する適応策を作っていく必要がありますので、地域ごとにユーザーがデータを解析して、政策化していくということが必要です。そのためには、プロジェクションのデータや、過去のヒストリーの観測でモデルの検証をするといった、短期予報とは違った長期のプロジェクションに対するユーザーと作り手同士のリテラシーをちゃんと作っていくことが必要であろう。
 それから、日本でも具体的な適応策の事例が余りないので、こういうふうにやれば成功するんだという例示を何らかの形で公開していくような仕組みも必要であろうかと思っています。
 気象ビッグデータの民間における利活用ということでは、既に北米系の企業が動いている、あるいは官民連携体が先行しています。彼らは、そのビジネスモデルを世界で展開しており、それが従来のWMO的な仕組みを脅かすような存在にまで今後成長していく可能性があると思っています。
 最後に、民間の利活用という意味では少し色合いが違いますが、過去のデータも基盤的には非常に重要だということで、データレスキューについて紹介させていただきます。国際的なデータレスキューの活動が幾つかあるのですが、過去のデータから150年の気候再解析をやろうという議論がされています。これは地球システムの仕組みを理解する上でも、将来の気候予測の精度を保証するためにも非常に重要なデータで、現時点では直接ビジネスにはならないのですが、今後こういう基盤的な整備というのがあれば、気象データの気候に関する技術的活用への発展を支えることができるだろうと思っています。
 以上で簡単ではございますが、私の報告とさせていただきます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして御意見あるいは御質問等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
【寶委員】  京大の寶と申します。8ページの図で、利用者数の推移をお示しいただきました。この利用者というのは、その前の7ページに書いてある事業者とか自治体とか、団体組織ですよね。数が延べで400ぐらいということですが、自治体というのは都道府県と考えておられますか。
【気象業務支援センター】  ごく一部に市町村でという例もあります。
【寶委員】  主として都道府県ですね。
【気象業務支援センター】  はい。
【寶委員】  実際には市町村でももっと使っているような気もします。特別警報なんかも実際にダイレクトにエンドユーザーの住民に報知するようになっていますよね。ということで、機関数がこう伸びているという統計も有意義だと思いますが、実際の住民、何千万、何百万、どれぐらいの人たちに情報が届いているかといった整理もしていただけると有り難いと思います。
【気象業務支援センター】  コメントありがとうございます。私どもでは、いわゆる中間生成物を二次ユーザーにそのままお流しするという業務を担当していますので、それがどう利活用されているかについては、よく見えないところがあります。それがどういう形で、例えば防災の警報、予警報につながっているかということについては、これから調べさせていただきたいと思います。
 基本的には、防災警報としては気象庁が直接各県、地方自治体に流すという仕組みができていますので、いわゆるこういうデータ情報サービスとは別の流れで伝達されていく形になっています。
【岩谷委員】  少し補足させていただくと、私は気象キャスターネットワークでNPOなのですが、この許可事業者になっております。先ほどは料金の話が余り出ていなかったのですが、大手と中小企業で料金が違っていて、小さい団体とか企業に対しては安く出しており、全部が同じ金額で出していないというのがあります。
 それから、二次利用が増えているのではないかということなのですが、実際に一次利用の気象会社から二次利用もできる情報になっており、実際にはかなり二次利用、三次利用という形で広まっているのではないかと思います。
 それから、報道局とかマスコミが許可事業者に入っているのですが、入っていないところ、やめたところも結構あります。というのは、データの利用や解説の範囲であれば許可事業者が要らないので、そういう意味では許可事業者という名前の看板が欲しくて取っているところもありますが、有効活用できないところはやめていったりしているのかなと思います。
 その上で一つ質問があるのですが、気象庁は防災機関の役目もあるので、どんどん無料でウエブで公開情報を出しているのですが、同時に気象業務支援センターでは有料配信をしています。気象庁の方で無料のもののデータが増えてきていて、うまくやろうと思えばダウンロードが結構できるんですよね。その辺の今後の気象業務支援センターとしてどのようにお考えなのか伺えればと思います。
【気象業務支援センター】  私どもとしては、気象庁がデータ配信事業をどうするかというコントロールの下で動いていますので、データ配信のシステム、仕組みを変えていくということは基本的にはできなくて、要望があった会社と契約をしてデータ量に応じた課金をやっていくという、どちらかというと受動的な立場で事業を行っています。
 ただ、先ほどからお見せしているように、その中で民間とかユーザー層が次第に変わりつつある。今、補足でコメントいただいたように、データの予報許可事業者が契約をやめていく、許可事業者を廃止するというような動きも、こういうデータ配信事業を通じて見えてきます。しかし、こちらが主体的にシステムを変えていくという立場とは違うところがありまして、そこは受動的にやっているというのが正直なところあります。
【岩谷委員】  この気象データをうまく運営していくためには有料化が非常に重要だと思うのですが、一方で、防災とか、必要に応じて無償で出していく部分が出てくると、そちらの方にユーザーが流れてしまって、実は有料配信が維持できなくなる可能性を私は心配しています。データをビジネスに活用したり有効活用するためにも、システムを維持する団体がないといけないと思うので、その辺がだんだん危うくなるんじゃないかと危惧しているところがあって、データをきちんと管理して配信する体制を維持できるというのが非常に重要だと思いました。以上です。
【気象業務支援センター】  おっしゃるとおりだと思います。基本的な気象庁の情報は防災情報として出すということですので、それについては国の責任において一般国民に安全・安心のための情報をタイムリーに的確に出すという任務があり、それは基本的に無料でお知らせするという仕組みが、気象庁の内部できちんと確立していると理解しております。私どもはむしろ一次データの利用者に対してそういう情報を配信し、そこで加工して特定のユーザーに向けての商品を民間が作っていくという仕組みの下でデータ配信事業が作られた経緯がございますので、現在そういうような形での運営になっておりますが、いわゆる気象データというのがもう少し違う、防災情報以外の様々な分野に使われつつある。例えば、農業の効率的な運営などがリモートセンシングとともに使われる例も出てきているように聞いておりますので、そういう部分については気象庁からの情報ではなく、何らかのデータの配信の仕組み、あるいはデータアーカイブがどこがどういう費用負担でやっていくかという議論の余地が残されていると思います。
【中田委員】  気象ビジネス推進コンソーシアムについて、これは気象庁の中にこのコンソーシアムを運営する仕組みがあるという理解でいいですよね。これを運営するためにコンソーシアム参加者から何らかの会費を取っているのかということと、どういう構成になっているのかを教えていただけますか。
【気象業務支援センター】  今は詳しい資料を持ち合わせておりませんので的確なお答えができるかどうか自信がありませんが、基本的に運営は気象庁がやっていて、費用は取っていないと理解しています。構成については、いわゆるデータの一次利用のユーザーが中心となっていると聞いております。
【春日部会長代理】  御説明ありがとうございました。アメリカの事例で、大学の連合体や個別の大学も巻き込んだビジネスで、ワールドベストの予報をしているというお話がありましたが、日本国内で学を広く巻き込んで、精度を上げたり、ビジネスを活性化させるような動きはございますでしょうか。
【気象業務支援センター】  具体的な組織とか活動が明確に位置付けられて運営しているというのは私の知る限りないのですが、北米の例を見ますと、多分、日本においてもそういう議論がそろそろ必要になってきている時代に入ってきているのではないかと思います。大げさに言うと、気象ビッグデータを制する者がマーケットを支配していく。しかもそれがインターナショナルな活動としてアメリカでは企業活動をやっていますので、日本も何もしないでいると、その傘の下に取り込まれることもないわけではない、我が国でもそういう動きも踏まえつつ、何らかの対応をした方がいい時期に差し掛かっているという印象を個人的には持っています。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
 それでは、2件目の株式会社MTIの安藤部門長からの御説明をお願いしたいと思います。
【(株)MTI】  MTIの安藤と申します。MTIといいますのは、外航海運の日本の事業者で800隻規模の船隊を運航しております、日本郵船の研究開発部門になります。
 簡単に自己紹介をしますと、12年前まで東大の工学部で助教授をしていまして、それで、こういう海運会社には運航している船のデータがたくさんあるけれども余り使われていないと、そういう中で、民間に移って、実際にデータの活用をしようということでやっております。先ほど三上さんがおっしゃっていた話と関連しますが、どうやって我々がビッグデータを活用していくかということを中心に据えてやっています。年間大体40件から50件程度のいろいろな研究開発プロジェクトをやって、郵船の課題を解決しているという、そういう部署になります。
 今日の議論を伺っていますと、どうやって気象データをビジネスに変えるかというところが一つの論点というふうに思います。気象データは非常に重要で、国で整理して配信するのは本当に重要だと思います。しかしながら、それをバリューに変えるにはいろいろな情報を集めてこなくてはいけないので、気象データ単独でビジネスになるのかと言われると、それはなかなか難しいのではないかというお話をさせていただきたいと思います。
 まずは海運の例ではなくて、鉱山開発の例をマッキンゼーがレポートを出しているのでそこから持ってきたものです。我々は今、デジタル化とかデジタライゼーション、ビッグデータでもいいのですけれども、いろいろな分野で取り組んでおります。そこでは、やはり価値を生み出すデジタル化ということが活動の中心になっています。そのアナロジーから我々海運がやっていることを説明したいと思います。
 まず、我々がやっていることは、よりよい意思決定。例えば、日本郵船では約800隻のいろいろな船種の船を運航しており、これをどのようにうまく動かしていくか、あるいはマーケットを見て、どこにその船を配置していくか、こういったところでビッグデータの分析が必要になります。それから、決まった航路をどう動かしていくのか。それこそ先ほど御紹介があったウェザー・ルーティングですね。気象の中でどううまく使っていくか、オペレーションを最適化するかということがあります。それから、船の上には推進プラントとか発電プラントがありますので、こういったものが故障すると船が止まってしまいますので、予防的にトラブルがないようにしていく。こういったところもやはりデータの生きるところであります。
 一方で、船そのものの安全性をより上げていくという意味で、自動化の取組であったり、あるいは実際に動かしている800隻の船の状態、パフォーマンスを見ていくということで、安全で安定したオペレーションに役立てる、こういったことにデータを活用していると見ていただいたらよろしいと思います。我々が目指していることは、我々が抱えているアセット、フリートのオペレーションを最適にすることで、船そのものの競争力を最適化していくということを追求していく中でビッグデータをどう活用するかということだと御理解いただいたらいいかと思います。
 これは他産業の例で、GEさんから持ってきたものですが、昨今言われているようにサイバーフィジカルシステムという言葉があり、デジタル・ツインの時代です。要するに、この風車村では、これも気象の中でどう風車の発電を最大にするかということをオペレーターは考えます。どの風車をどっちに向けると、この風況の中で発電量が最大になるかというのは、結局のところ、工学部やメーカーさんが持っているような、例えば流体力学解析のようなエンジニアリング知識がないとわからないのですが、今はオペレーター自身が風車のエンジニアリングの知識を求めていると思います。IoTの時代になり、今どれぐらい発電をしていて、どっちに向けて、どれぐらいの回転数で回っているか、こういうデータが全部分かるようになりましたので、その中で最適化を我々は追求しております。
 これは従来の言い方で言いますと、いわゆる工学部の知識、製品設計をするメーカーさんの知識でしたと。ところがIoTの時代というのは、その知識をオペレーションも欲しいと思っており、その中で何とか最適化したいと思っています。先ほど三上さんが御紹介されたPanasonic Avionicsさんの例のように、いろいろな形でオペレーションをもっとこうしたらインプルーブできますよと、そういう提案が従来では付き合いのなかった事業者も含め、わんさかやってきている、そういう時代になっています。
 我々の場合は、2008年ぐらいからデータの時代だということでセンサーデータをとるようになりました。初めは船の運航性能に関わるデータをとっていたのですが、今はエンジンプラント関係の数百点から数千点のデータもとるようになっております。例えばin-situ観測という意味では、先ほどの飛行機の例もそうでしたが、船も風向風速計が付いていたり、波はなかなか測れないのですが、船体の動揺が測れたり、そういった意味では気象による影響をある程度データとしてとっています。これも有効なデータソースです。これが今、衛星回線、特にVSATと呼ばれる衛星が出てきたことによって常時接続が船でも始まり、2010年以降急速にデータが集められるような環境になっています。後でも申し上げたいと思いますが、民間の船からどういうデータを集めて、それをどう公共のデータと合わせていくかということも課題になると思います。
 その意味で言いますと、先ほどのビッグデータのお話のように、いろいろなデータが手に入る時代になり、例えばマニュアルの昔からのレポートのデータもあれば、AISと呼ばれるGPSの緯度経度情報、時間情報、コースと船速の情報など、安全のために設置が義務化されている情報を衛星で拾って、世界中の船がどこにいるかという情報を商売にされる方々が現れてきました。船の運航は気象に大きく影響され、スピードが落ちたり揺れたり、パフォーマンスや安全に影響します。その意味で気象・海象というのは大事な情報ソースですが、こういったデータがあって、ほかにもいろいろなデータがどんどん使える状況になっています。それを解析しようと思うと、先ほどのエンジニアリングの知識も必要ですし、ITのいろいろな道具が使えるようになってきたので、これらを組み合わせてビジネスの課題を解決したいというのが我々の状況です。
 ただ、ビジネス側が何を解決したいかという課題をちゃんと認識していないと宝の持ち腐れになりますので、大事なことは、何を解決したいのかという課題をちゃんと特定することです。そうしたら今の人たち、今の技術は何とかできます。ビジネスやオペレーションの現場の課題を良く理解して、それをデータやテクノロジーで解決するそういう時代なんだと思います。
 これは船が気象の影響を受ける一番典型例ですが、例えば向かい波、向かい風の状況で20メートルぐらいの非常に強い風を受けている状況ですけれども、天気がよければ14ノットぐらい出る回転数で走っていても、これだけの波の中では、波の抵抗を受けたり、風の抵抗を受けたりして、8ノットぐらいにまで落ちてしまうということがある。燃費の方も回転数に対してトルクが上がりますので、坂道を登っているような状況になります。トータルで言うと2倍とか3倍パフォーマンスが落ちるので、いかに天気の中で船を上手に走らせるかというのは非常に重要なイシューになります。
 こういうことを解決しようとすると、例えば造船所の設計者や、国交省さん系の研究所、大学の船舶工学などがこういう知見を持たれています。風波の中でどういう力を受けて、どういう力のつり合いになって、どういうモーメントのつり合いになるから、結果的には水力とつり合ってこれくらいのスピードになるといったことは工学部的な知識です。このような知識を昔は設計の人たちが使っていたのですが、先ほど申したように船のオペレーターもこれを使いたいということで、こういうのを道具にしていただいて、その道具の計算した結果をあらかじめ、その時々でシミュレーションしていると圧倒的に時間がかかって使い物になりませんので、その前にありとあらゆる遭遇しそうな何万ケースとかの状況を計算してデータベースにしておいて、それを取り出せるような格好にします。
 そうしておくと、例えばLNG船、アメリカからもシェールガスを運んできますけれども、例えば中東カタールから日本、上は中東からヨーロッパに運ぶときに、従来は天気のせいでどれぐらい余計に燃料を使い、どれだけ遅れるかというのは大体この程度を見込んでおけば良いよねと、一定の安全率を見積もっていたのですが、今は我々のところでも、例えばGPVのようなデータ、あるいはNOAAのデータをためていますので、その上でモンテカルロシミュレーションのような格好で、例えばバーチャルに毎週出帆したとすると、大体月ごとにどれぐらい余計な燃料を使うとか、こういったシミュレーションを回すことによって、じゃあどれぐらい燃料を積んでおくかとか、スケジュールをどれぐらいに見ておくといいか、こういったことを合理的に計画できるようになりつつありますし、こういったサービスを船会社に売るサービス会社も出てきています。
 更にそれが進むと、例えば経済がよかった2005年ぐらいに設計した船を改造して、荷物も少なくなり船のスピードも落ちた中で最適設計をやり直すと、船首バルブと言う船の鼻にあたる部分を小さくしたり、プロペラを取り替えたりするだけで、現在の経済状況に合わせた条件の中で、例えば20%を超えるような燃料費の削減ができるということになりますので、こういった形でハードの改善までに及ぶような活動をしています。
 こういったことを進め、ビッグデータの時代であり、我々だけではデータを活用しきれないので、今はシップデータセンターというのを日本では中立の日本海事協会に立ち上げていただいて、データを一旦そこに集めて、今度はデータの料理を上手にするサービスプロバイダーさんがいらっしゃることもある、あるいは製造メーカーさん自身がそれを利用するのが一番、例えば事故の防止のための状態診断にもいいというようなことで、従来は我々のデータ、今まではデータを外に出していなかったのですけれども、どちらかというと出して、もちろんオープンにはしないのですけれども、正しい人に渡すことによってどんどんデータの利活用を進めようという方向にかじを切っております。
 例えば気象データのうち、特に我々からすると波や潮流がものすごく重要なので、それを理解しているウェザーニューズさんのような気象会社さんが、先ほど御紹介があった気象庁さんのデータのうち、波や潮流のデータをどんどんダウンロードされて、我々がそれを使ったサービスをしているので、ダウンロード数が増えていると言うのは極めて合理的に聞こえます。先ほど言いましたが船体の運動とか抵抗とか、船体構造については、昔からこういう波を基準にして設計しましょうということで、全部できていますので、今の船体構造は丈夫過ぎる可能性があると思います。今は本当にどういう波に遭遇しているかが分かる時代になったので、もしかすると規則や基準そのものを見直せるかもしれない。それから、波浪中のいろいろな貨物の話やエンジン側への影響の話もあります。とにかく我々は今後更に船のエンジニアリングのモデルと気象を組み合わせてバリューを作っていこうとしているという時代と御理解いただければと思います。
 そういう中で、我々も今使っている以上の気象データがあれば、もっといろいろなことが分かるかもしれないと期待を持っております。船の場所と時間を特定したら、そこにひも付ける気象データ、観測データでなくデータ同化されたデータで結構なんですけど、データ数が増えてくると、それを今度はどう活用しようかというサイクルが出てくるかなという意味で、これはJAXAさんの海洋・宇宙連携委員会で、JAXAさんがお持ちのデータを我々の船の居場所にひも付けて出してもらうと、我々が今まで持っていなかったようなデータが取り出せるようになる。それをどう活用するか、そういう議論をしておりまして、この例に見られるように、気象データを、このように何かしら物理的や空間的、時間的に船のデータとひも付けると、そこから我々は価値をどう生み出せるかを考えたいと思っております。
 この2枚は先ほど三上さんのプレゼンにウェザー・ルーティングの話がありましたので追加したのですが、気象や海象で、風の中で、どう船を最適に走らせるのが一番経済合理性があり、しかも安全の上でということを民間のウェザーニューズさんなんかは、そういうサービスをされています。
 一方で、それを本当に彼らが使っている船のモデルと合っていたのかを見ていくことも重要で、船の位置や海象などリアルなパフォーマンスをウェザーニューズのような会社にフィードバックをすることによって、乗っている船長さんからすると、この人たちはよく自分たちのことを分かった上でレコメンドしてくれているよねと、そういうループを作り出そうとしており、その意味ではどんどんデータのシェアが進んでいます。
 それから、先ほどの話とつながりますが、民間のウェザーニューズさん自身が今度は船から観測データを取り込んで、気象庁さんのデータも使って、また彼ら自身がカメラを船の上に載せたりして、そこから自分たちで波高を換算したり、それらを全部突っ込んでデータ同化したものから、彼らが気象サービスをする、そういった状況が起こっているというのは確かにそうかなと思います。駆け足でしたが以上です。
【大垣部会長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して御意見あるいは御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
【小池委員】  MTIはこの図のどこを担っておられるのですか。
【(株)MTI】  私が今お話ししたのは大所高所みたいな立場で話をしましたので、非常に分かりにくかったと思うのですが、我々は船会社の一機関でありますので、例えばIoTのデータ収集のための装置を我々としては作っており、それを船に乗せてるというのを2008年ぐらいからやりました。また、我々がやっていることが陳腐化するとしようがないので、これのISOの標準化みたいなものも業界団体と一緒になってリードするということを、私が座長になってやっており、来年の8月にISO化になりそうです。それから、一番の役割は、船会社としてフリートのパフォーマンスをよくしていかなければいけないというところのサービスプロバイダーの役を我々がやっています。例えばそういう感じです。
【小池委員】  私はDIASをずっとやらせていただいてきて、こういうデータを集積するだけじゃなく、価値を生み出すことによってそこからまたデータが入って、更にまた高い価値が生まれていくというループが作られていくことが非常にすばらしいと思っていたのですが、まさにそれをやっておられるので、いろいろまた勉強させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【六川委員】  私も非常に面白いお話だと思ったのですが、先ほどの春日さんの質問と関連するのですが、例えば昔の船舶・港湾科ですとか、要するに大学における教育とか研究から見たときに、こういうジャンルの取組が遅れているという気がしているのですが、業界の立場からしたらどんな感想をお持ちでしょうか。
【(株)MTI】  こういう時代になるとますますいろいろなシミュレーション技術が重要になると思っていまして、例えば30年前、40年前の論文に書いてあることがすごく重要になってくるところがあります。今までは例えば船舶工学科でやっていたらあくまでも水槽の模型試験で例えば摩擦抵抗であったり造波抵抗を計測していたのですけれども、今は実地のデータが手に入るようになっています。是非そのようなデータを大学にお返しして、そのデータを使ってもう1回過去の研究で出てきた式だとかのパラメータを見直していただく、そういうコラボができたりすると、非常にリアルなものを正しくシミュレーションするための支配方程式ができてきて、今度はそれをもう一段、多分、ツールまでのレベルに誰かがしないといけないと思いますが、それを使った新たなビジネスの改善といった連携ができるとすばらしいと思っています。
【大垣部会長】  ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、三上さん、安藤さん、大変興味深い御発表をありがとうございました。今日の御発表と議論を受けて、今後の事例取りまとめに反映させていただきたいと思います。
 それでは、次の議題3に移ります。地球観測データの産業利用促進方策についてであります。事務局から説明をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  資料3に基づいて説明させていただきます。資料3は地球観測データの産業利用促進方策の骨子案として、これまでヒアリングさせていただいた内容、及び皆様から頂いたコメントを基に骨子案としてまとめたものです。構成としては、初めに1として背景と現状を記載しており、2として地球観測データの利用促進に向けた取組を記載してございます。この骨子案を基に肉付けをして、具体的な産業利用の実例や、そこから見えてきた課題、それに対する対応策のような形で報告書としてまとめていきたいと考えています。
 まず背景と現状ですが、一つ目の丸にありますように、地球観測推進部会で昨年取りまとめた提言では、CSTIや関係省庁、関係機関に対する提言を行っておりますけれども、民間企業等に対する事例ですとかニーズについて踏み込むというのをもう少しやった方がよかったのではないかという御意見を頂いているところでございます。
 これに対して、2番目の丸のところですけれども、平成27年に本部会で取りまとめた地球観測の実施方針では、課題解決型の地球観測を志向しており、その中では地球観測の成果を産業利用も含めた社会実証につなげることを検討する必要があるとしております。
 また、三つ目の丸のところにありますように、本年5月には「宇宙産業ビジョン2030」がまとめられ、また、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ利用推進基本計画」も5月に閣議決定されておりまして、官民データの利用とデータ連携のためのプラットフォームの整備が言及されているところです。
 これまでのヒアリングでは、地球観測データの産業利用例として衛星分野、気象分野、海洋分野など、既にサービスとして展開している例が出てきているものの、産業利用という面で言うと、いまだ限定的な状況ではないかということでございます。
 最後に、企業においてはCSVの観点からもパリ協定、SDGsなどへの貢献が期待されており、その中で地球観測データの活用が必須になっていることが背景・現状として書いてございます。
 2.地球観測データの利用促進に向けた取組については、(1)として産学官の連携の在り方、(2)ではデータ提供の在り方、(3)その他というように分けて記載しております。
 産学官連携の在り方につきましては、一つ目の丸にありますように、産学官連携をして、観測の計画段階からユーザーの視点を取り入れていくなど協働の仕組みが必要であるということ。二つ目に、セクター間の適切なブリッジ機能を持つような連携をする仕組みが必要であること。そして、三つ目の丸にありますように、企業のノウハウを活用してユーザーの利用まで、ラストワンマイルというような言い方がありましたが、つなげていくことが重要だということがあります。
 2番目のデータ提供の在り方については、一つ目の丸ではデータの利用の敷居を下げて、もっとデータを使いやすく提供することが重要であるということ。そのためにもデータハンドリング機能や、データプラットフォームの構築、ITの専門家との協働の場を作るということが必要となるということです。
 二つ目にデータをオープンにするということ。そして、民間の活力をそぐことのないように適切な形でコントロールされたデータポリシーを設定することが必要だということ。そして三つ目は品質管理されたデータを提供することと、データの継続性というものが重要であるということを書いてございます。
 (3)その他については、一つ目にデータ利用の積極的なプロモーションや解析の事例の紹介などを行うことによって潜在的なユーザーの取り込みを行うこと。そして二つ目は、産業として成立できるビジネスモデルを確立することが重要ということで、国によるアンカーテナンシーやシードマネーの支援も有効な手段であること。三つ目として、産学官が一体となってデータの活用の拡大及び新たなデータの価値を見いだすことが必要だということ。そして最後の丸では、教育現場等も含めて様々な場で普及啓発をしていくということが重要だということを記載してございます。
 これは骨子案として記載していますが、ある程度課題も含めて記載しているものでありますので、これらの課題を克服するためにどのような取組をしていくべきかについてより具体的な御意見を頂けると助かります。
 3ページ目以降は、前回御説明した論点ごとに、これまでに頂いた御意見をまとめたものになっています。資料については以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に関して皆様の御意見を頂きたいと思います。本日、この骨子案を決めるわけではなく、自由に御議論を頂いて、それを受けて事務局で取りまとめるという段取りでございます。
【河野委員】  海洋研究開発機構の河野です。今回の御発表等を聞いていて感じたのですが、データがどう使われているかについての分析をする機能がないような気がしました。最初の発表では、データを二次利用者に正確に渡すことが業務であって、どういう分布になっていて、何に使われているかを調査する機能は持っていらっしゃらないと。2番目の発表では、実はウェザー・ルーティングは船会社がやっているIoTの中の一つであって、全体的に目指しているところはフリート全体としてどうするかということで、お話にないのが市場規模です。国の施策としてやったときに市場規模が小さいところは大事ではないとは申しませんが、できれば市場規模が大きいところに効率的にデータを提供していってイノベーションにつなげたいというのが筋だと思います。
 例えば、日本郵船はグローバルな船会社ですので、必要としている気象データは決して日本近海の沿岸のデータだけではありません。ということは、もし国としてそういうグローバルな事業をやっている日本の会社に対してデータなりを提供したいと思ったときに、じゃあ、今の官庁が持っている、例えば気象庁が持っている日本のデータを与えることが有利になるのかというと、必ずしもそうは思えない。
 今日のお話になかったのですが、船体の詳細なデータと航行のデータを同時に取れた場合、ドック時にどこを整備するべきかというのが分かって、船齢の延長にもつながりますし、結構市場規模が大きいと思うんですね。なので、民間側が何を求めていて、どういうことのために使われていて、その市場規模がどのぐらいで、それに対して我が国では適切なデータ提供ができているのかという観点の分析があると、例えば論点の方で言えば、障壁以前の問題としてニーズがきちんと分析されていないとか、あるいは取組のところの(1)の丸のところの一番最初、連携して、施策の展開以前にどういう施策のところに重点を置くべきかという分析が可能になってくるのではないかと思いました。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。貴重な御指摘でございます。ほかの御意見いかがでしょうか。
【渡邉委員】  この方策でカバーしている産業には、農業も入っていると理解してよろしいのですよね。御承知のように、我が国の農業について言えば、農家の減少や高齢化などで土地持ち非農家と担い手とに二極化するような動きの中で、強い農業を作っていくのが国の方針ですが、その中でICT、IoT、AIの導入が強く求められていて、ニーズもあって実際に進んでいます。そういう中で、農業は自然空間に広がっているので、農業を考える場合は農村もセットで考えないといけないし、情報を使っている人がコンシューマーというかエンドユーザーという特性も考えた利用促進を考えていく必要があるというのが一つのポイントです。
 そのときに、例えば、トラクターの配置を気象予測と農地の状況を配慮して行ったりして、また自動走行も広がると思うのですが、こうした展開によって、どこでどういうトラクターが動いているのかというデータが、リアルタイムで集積されていきます。こうした双方向性での利用促進していくような方策も大事であると思います。
 もう一つ例を挙げると、気象予測を基にして水田の水の取入口の操作をする自動化のプロジェクトが進んでおり、こうした試みは様々な点で有効だと思うのですが、今度は逆に、それがどこでどういう水の使われ方がされているかという広範囲の詳細なデータが上がってくる入り口にもなります。こういう利用促進方策も考えていく必要があるのではないかと思います。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。先ほども市場規模とかデータの需要のところを明解に分析する必要があるという御意見が続いておりますが、ほかはいかがでしょうか。
【赤松委員】  幾つか御指摘をお願いしたいのですが、まず、2ページ目の一番上のところに、セクター間に適切なブリッジ機能を持つ連携を実現する仕組みとあります。これは非常に重要なことだと考えており、今日は三上様から気象に関するコンソーシアムの話がございましたが、あの枠組みは一つ参考になると思います。まだ学の参画が足りていないという部分もございましたが、気象は大分先行していると思いますので、あのような先例を参考にしながら、その他地球観測のところにどう展開していくかということを考えていくべきと思いました。
 それから、(2)データ提供の在り方のところで、最初のパラグラフの一番下のところに、IT専門家との協働の場も必要となると書かれていますが、先ほどのGEOの報告にもありましたように、どうやって付加価値を付けた情報を提供していくかという部分が出口を作っていくときは大事だと思いますので、データ解析ですとか付加価値を提供する専門家との連携もここに書き込んでいただいてはどうかと思いました。
 それから、データ提供の在り方の最後のパラグラフのところで、観測の継続性の観点が書かれていますが、先ほど気象のデータ提供の話を伺った中で、観測だけでなく、そのデータをどうアーカイブして提供し続けていくのかが非常に重要だと思いました。ですので、ここには観測とともにデータをどうアーカイブして提供も含めて継続していくのかということも書き込まれてはいかがかと思います。
 そして、その他の第2パラグラフのところで、シードマネーの支援も重要な手段であるという記述があります。先ほどのデータ提供と関わるのですけれども、やはりデータ提供等の維持管理をどう保障するのかということも重要だと思いましたので、予算措置として維持管理を、継続をどのように担保していくのかということも必要になってくるかと思います。
 最後に、本方針に盛り込まれている幾つかの仕組みを束ねる前例として、欧州のコペルニクスがございますので、これを参照すべき事例として書き込まれてはいかがかと思いました。以上でございます。
【佃委員】  この方策は基本的には今までの流れもあって、公的データをいかにオープン化して使いやすくするか、維持管理するかということだと思うのですが、今日の三上さんのお話によると、民間が独自に提供を始めている場合もあります。民間のデータであれば、より継続性の問題やデータの信頼性の問題、メンテナンスの問題、気象計測となると当然トレーサブルに機器の認証体系が出来上がっていると思いますが、それをどういったポリシーの下でやるのか、その辺の議論もしていいのではないかと思います。以上です。
【寶委員】  防災の観点から、災害事象を検知するために地球観測は有用ですが、災害リスクを防ぐ、あるいは実際に災害が起こった後、業務の継続計画をやっていくときに、産業界の一つとして保険会社、再保険会社も一つの視野に入ると思います。2010年のアイスランドの火山噴火で航空会社がかなり被害を受けて、航空会社を使っているビジネスも被害を受けています。それから、2011年のタイの洪水でも日本の企業450社が被害を受けて、保険会社、再保険会社も大変な保険料を払ったという事例もあります。そういう保険会社、再保険会社と、それにある程度依存しているグローバル企業、自動車産業や先ほどお話があった海運会社もそうだと思いますが、そういったユーザーにどのような形での情報提供できるのか、これはリアルタイムもあると思いますし、事前に広域波及災害のシミュレーションをしておけば、どれぐらいの規模の被害になって、どれぐらいの保険料が要るのか、どれぐらいの期間営業停止になるのかということも可能になると思います。自然現象、災害現象に起因するいろいろな影響をシミュレーションして、それを産業界、民間に知らせて、よりよい対処ができるような方向性をだしていく、そういった視点も必要ではないかなと思いました。以上です。
【若松委員】  私からは、民間セクターがどうやってビジネスとしてデータを利用するかという観点でお話ししたいと思います。
 5ページの論点5の下の方に、いわゆるオープン化の議論があり、オープンじゃないところにビジネスチャンスがあるという話が書いてあります。ここを本当にどうするのがいいのかが悩ましいところだとは思っていますが、ちょっと逆説的なお話をしたいと思います。これまで地球観測データの利用という観点からは参入障壁をいかに下げるかという議論をずっとしてきたと思います。一方で、ビジネスという立場、若しくはビジネスでうまみのあるビジネスをやろうと思うと、参入障壁を作ることにこそ意味があって、そういうやり方を考える必要もあると思っています。
 具体的なやり方とすれば、例えばある企業がビジネスコミットメント、それは先行的な研究開発であったり、ビジネスアイデアをいち早く提示してやるであったり、付加価値製品を作る権利を独占的に有するだとか、若しくはあるマーケットフィールドに対して独占的な権利を有するだとか、そういったある種の参入障壁を作って、その人たちからは逆にビジネスコミットメントとしてデータのメンテナンスの利用料負担なのかもしれないですし、あとはよく民間で最近あるのは、そこで培ったサービスをレベニューシェアしてデータプロバイダー側に返すだとか、そういったやり方で囲って、その中でビジネスをやっていくというのも一つのアイデアとしては考えていくべきだと思っています。
【舘委員】  JAXAの場合は人工衛星ですので、日本だけではなくグローバルに観測しています。そうすると、グローバルにデータをどう展開していくかというと、やはり今、NOAAとかUSGSもアマゾンのAWSを使って世界展開していくというようなやり方をとっていまして、我々も最近はそういうITジャイアントのプラットフォームを使ってデータを展開しようと思っております。一部、グーグルエンジンを使ってデータの公開を始めました。こういう形でデータを使って、本当は加工までできればいいのでしょうが、さすがにそこまではできないので、データをいかに使ってもらうか、それに従ってデータを提供していくという、世界的な流れの中で取り組みを考えていただいたらいいと思います。
【小池委員】  これまでもいろいろな御説明を頂いて、成功した事例等でやり抜くことが大事というようなキーワードも出てきて、非常に勉強になりました。今日の安藤さんのお話も私にとっては大変魅力的で、先ほど河野さんがお話になったこととも関係するのですが、イノべーティブな価値を生むために幾ら投資するかというのを我々は設定すべきではないか思います。そうでないと、この論点の中にもシードマネー投入が書いてありますが、文部科学技術政策でCSTIのIを興して活性化するために、今、産業利用促進の枠組みですので、国として幾ら投入するのかを決めることが非常に大事なような気がします。
 今日、その話を最初にされたので、僕ははっと思ったのですが、これまで我々はどちらかというとスタティックなデータでものを考えてきたけれども、リアルタイムで、しかもマッシブな情報がこれまでほとんど扱いきれなかったものが、かつ多様なものが扱えるようになったときに、もともと持っていたシミュレーション技術と組み合わせると、新たなものが出てくるというお話をさせていただいて、私自身もそういうことを目指して、我々は防災の分野ですけれども、そこのカップリングを投資によって進めるということが大事だと思いました。
 そこから出てくる価値は二つあると思うんですね。安藤さんのお話で、センサーをみんなが付けていくので、そこからデータが上がってくるとカップリングのモデルがよくなっていくと思うのですが、それともう一つおっしゃったのは、船長さんがよくケアしてくれているという、ここもSociety5.0の中で非常に大事と言われているトラストとかアカウンタビリティーというようなものが生まれてくると、非常に強い開発利用母体ができていくんじゃないかと思いました。
 大変いい御発表を頂いたなと思います。一番大事なのは投資で幾ら投資するかで、それによってどう回していくかということを是非考えていただきたい。今の原稿は何となく受け身ですよね。何か、攻め込んでいこうという感じがなかなか感じられないというのが印象です。以上です。
【佐藤委員】  三上さんの御発表を聞いて驚いたのは、気象予報そのものを民間が始めているということです。これは、これまで気象庁が予報モデルを使って作成したデータに基づき、民間がきめ細かい予報を行うというレベルではなくて、気象庁なりECMWFといった公的機関が担ってきた予報のコアの部分を民間が行うということですので、注意すべきポイントがあるのではないかというように思いました。
 例えば、これまでは、公的機関でやってきたので、そこで培っているアルゴリズムや技術が自然に共有化できてきたのですが、民間がそれをやるということになると、特許などの問題が生じ、技術の共有化に支障が来される事態が生じるのではないかと想像されます。予報に使われる観測データのほとんどは国民の税金で取得されたものですから、当然、国民は自分たちの生命、財産を守る予報のデータも享受すべきなのに、それがうまく回らない可能性が出てくるのではないかと懸念されます。そういう事態が生じる前に、つまり、今のうちに、その辺りを整理し、対応策を考える必要があるのではないかと思いました。
【春日部会長代理】  小池先生の御意見に関連するのですが、もう少し積極的にアクティブな姿勢を盛り込むべきというところに私も賛成で、こちらの委員の中にもいろいろな分野の方がいらっしゃるわけです。上田先生の健康分野ですとか、中田先生の水産分野ですとか、それから先ほど渡邉先生から御意見のあった農業への応用ですとか、産業活用の先をもっと幅広く積極的に捉える必要があるのではないかと感じました。
【甲斐沼委員】  先々回、若松委員から非常に細かい3次元データを使って、いろいろな解析ができるようになっているという御紹介がありましたが、私は今までそのデータについて全然知らなくて、周りの人に聞いても知らないということだったので、そういうことをもう少し一般の方に紹介していくことが重要と思いました。
 あと、ビジネスエコシステムとかアンカーテナンシーというのが、私にとっては余り聞きなれない単語で、その前のビジネスモデルのところは産業として成立できるというようなことが書いてあるので、このビジネスエコシステムのところも業種業界の垣根を越えて共存できるようなビジネスエコシステムといったように、説明を書いていただければ分かりやすいと思います。以上です。
【上田委員】  気象業務支援センターの三上さんの発表をお聞きして、健康の分野に少し関わりがあったので感想と気付いたことを述べさせていただきます。
 一つは、健康にもし使うとしたら、ビジネスというよりはむしろ健康を予防するための公の立場からの部分の効果が見込まれると思います。具体的には、健康被害を予防するために何らかの予報をするとか、熱中症を予防するといったことに役立てることができるかもしれない。そのためには、予報が必要になってくるわけですが、本日の発表を見たときに、公の部分、そして情報提供したそのものがもし仮に違った場合、そしてそれによって予報がもし仮に外れてしまった場合の法的な問題はないのかというのが懸念としてありました。データを提供して、それを有償で用いました。ですけれども、その結果として外れた場合はどうなのかというのが気にはなっています。
 それに関しては、今回のこのデータの骨子のその他の部分にはなると思うのですが、恐らくその不確実性の部分については、データの精度が非常に重要になってくる。そうすると、今はデータを提供することに重きを置かれていますが、同時にフィードバックがあってデータの精度を向上するといった、そういうシステムについても言及もあった方がいいのではないかと思います。以上です。
【岩谷委員】  気象観測データの産業利用促進の中で、民間と官の役割というのは、観測データの利用の中で変わっていくと思っています。気象データの品質の維持は非常に重要で継続性も重要なのですが、一つの例として、気象データや予測について、今まで官がやっていたものがなくなっていったものもあります。例えば、スギ花粉の予測はもともと環境省がやっていたのですが、民間が育ってきたので予報をやめてしまいました。桜の予報も気象庁がやっており、国民的には結構重要な情報だったのですが、ある気象会社しか出せないということになって、マスコミ的には結構苦労しました。要するに、ある気象会社からデータをもらえない放送局は困るんですね。公的に出す意義は予測とか気象データの中にあります。ある程度育って民間に移行するのはいいことでもあるのですが、同時に困る部分もあったりします。
 その意味では、民間がどんどん観測を始めて、それで対応できるのであれば公的機関は観測しなくてもいいということになる可能性もあるのですが、実はデータの信頼性とか継続性を考えた場合は、しっかり根幹の部分をやっていくというのは非常に重要なのではないかと思います。
 その一方で、昨今、スマホのアプリはどんどん一般に使われており、天気予報なんかもアイデアとしてはいろいろなものが出てきていて、そういうものはどんどん活用した方がいいと思っています。こういう観測データを特定の企業や大学など、余り狭い範囲にしてしまうといろいろなアイデアが生まれにくいと思うので、利用しやすいというのは非常に重要で、かつ、個人に近いところも出した方がアイデアはいろいろ出てきて、産業が活性化するという意味では非常にいいと思います。
 天気予報は海外のいろいろなモデルを使って、アメリカとかヨーロッパの情報を使って日本国内にスマホで出しているところがあります。気象庁の予報認可の縛りがありますが、マスコミでは普通に出てしまっていますね。台風予報が三つも四つも出てきたりしていますので、使う側というのは便利な方に流れていくので、いいところがある反面、防災上の品質はどうなのという問題が同時に起きてくる可能性があるというふうに思いました。以上です。
【赤松委員】  全体に関わってくる話なのかもしれませんが、今日の三上様の発表にもありましたように、気象予報という業務は1993年に規制緩和され、民間ができるようになっています。衛星を使う場合にはやはり今までの方法と違うものを社会のシステムの中に取り入れていくということになりますので、その点の規制緩和が非常に重要であると私は考えております。今までこの方法でやっているから、この方法以外は取り入れないという規制が、特に公共事業の中には多いのですが、そこを緩和していくということを本方針の中にコメントいただきたいと考えております。
【佃委員】  地球観測だとグローバルな視点が強調されますが、先ほど三上さんの御発言だったか、地域にとってもローカルな詳細なデータが活用されるべきだと思いました。そういったときにキーワードは地域振興であったり、地域の新たな産業創出になる。農業の分野だと知識と経験でよそにはないものができて、それが差別化されて価値が上がるということにつながる。観測データも含めていろいろなデータが使えるようになれば、その地域で新しく産業を興そうという人たちが出てくることも期待できると思います。そういった地域振興の視点に観測データも使われていいのではないかなと思いました。
【大垣部会長】  ほかはよろしいでしょうか。
 この資料3の表題にありますように、「地球観測データの」という書き方をすると、地球観測データが孤立して存在していて、それをどう利用するかという感じになりますが、実際は今、御指摘のように、産業的な価値、社会的な価値、公的な価値、あるいは先ほどの桜ではありませんが、文化的価値とも結び付けて考察しないといけないというような御意見があったかと思います。ただいまの御意見を取り入れまして、今後の取りまとめに考慮していただきたいと思います。また、追加で御意見がございましたら、事務局へメールでお送りいただければ、今後の取りまとめに反映させていただきたいと思いますのでよろしくお願いを申し上げます。
 本日の議題は以上ですが、そのほかの議題について何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  事務局から連絡させていただきます。本日の議事録は後日、事務局よりメールで皆様にお送りいたします。各委員に御確認いただいた後、文部科学省のホームページで公表させていただきます。また、旅費の書類をお配りしている方は、内容を御確認いただき、そのまま机の上に置いておいてください。
 次回、第4回部会については改めて日程調整の上、御案内させていただきます。以上です。
【大垣部会長】  以上をもちまして地球観測推進部会の第3回の会合を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

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