第7期地球観測推進部会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年10月6日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. GEO戦略計画推進作業部会の検討状況報告
  2. 地球観測データの利用事例に関するヒアリング
  3. 地球観測データの利用促進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

大垣部会長,赤松委員,岩谷委員,上田委員,甲斐沼委員,小池委員,佐藤委員,高村委員,舘委員,佃委員,中田委員,箕輪委員,六川委員,若松委員

文部科学省

大山大臣官房審議官,藤吉環境エネルギー課長,佐藤環境科学技術推進官,石橋課長補佐,直井地球観測推進専門官

5.議事録

出席者

【関係省庁】内閣府 太田参事官
【有識者】一般社団法人 漁業情報サービスセンター


【大垣部会長】  それでは,第7期地球観測推進部会の第2回会合を開催いたします。
 本日は大変お忙しい中,また少し寒くなりました中,お集まりいただき,ありがとうございます。初めに事務局から,出席者と資料の確認をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  初めに,人事異動がありましたので報告させていただきます。8月1日付けで環境科学技術推進官の樋口が異動となり,佐藤が着任しております。また,内閣府の田中参事官が異動となり,太田参事官が着任されております。
 本日御出席の委員は14名であり,過半数に達しておりますので部会は成立となります。本部会は,部会運営規則により公開となります。
 配付資料は議事次第に記載しているとおりです。メインテーブルには,机上資料も配布しております。資料は以上ですが,不足等ございましたら事務局までお申し付けください。
【大垣部会長】  資料はよろしいですか。
 それでは,議題1は「GEO戦略計画推進作業部会の検討状況報告について」であります。本部会の下に設置したGEO戦略計画推進作業部会の検討状況について,作業部会の主査である小池委員から説明をお願いしたいと思います。
【小池委員】  今期の作業部会は大変重要な仕事を拝命しており,来年我が国で第15回GEO本会合を開催することになっております。今月の25,26日にはワシントンDCで,第14回本会合がございまして,その中で大山審議官にインビテーションプレゼンテーションをやっていただくことになっております。資料1をごらんください。
 これは作業部会で議論してきた第15回のGEO本会合の骨格でございまして,GEOでは持続可能な開発のための2030アジェンダであるSDGs,気候変動はパリ協定,防災は仙台防災枠組に対応するもので,これらを優先連携3分野としております。アジアにおいては、アジア太平洋シンポジウムを開いておりますし,またアジア・オセアニア地域活動としてAOGEOSSというイニシアチブも動いておりますが,各地域,各コーカスがこの課題にどう取り組むのかを議論する場にしたいと考えています。この3つに対応したパネルセッションを本会合の中に設置して,地域を1つのキーワードとして,いろいろな人たちにお集まりいただきたい。特に民間セクターと若手というキーワードで,インクルーシブな会にしたい。
 それをイメージにしたのが資料1の裏面でございまして,世界のいろいろな地域の取組を,その中でも若手,民間も含めてインクルーシブにして,それを地域の力を集めてイノベーティブな観測,データ共有をして,SDGs,仙台防災枠組,パリ協定の3つに対応していくというような,ふわっとしたイメージを持っております。
 最初から固まったものを提案するというよりは,次の日に執行委員会がございますので,そこでもう少し議論させていただきながら,来年の本会合を設計していきたいということでございます。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明に関して,御意見あるいは御質問ございましたら,お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【赤松委員】  最後のところに民間セクターの取組の成果,サービスの好事例を取り上げるというのがございますが,これは公募のような形で集めるということでしょうか。
【小池委員】  公募というよりは,各地域でいろいろな取組がありますので,それを紹介してもらいながら,比較的リーディングしているような事例を紹介していくということになろうかと思います。いろいろな案が作業部会の中では出ておりますが,余りこちらから具体的なものを言うよりは,皆さんのアイデアを出してもらいながら固めていこうという方針で考えています。
【赤松委員】  分かりました。どうもありがとうございました。
【大垣部会長】  ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは次の議題に移ります。地球観測データの利用事例に関するヒアリングであります。本部会では,地球観測データの利用事例をもとに利用促進策を検討することとしておりまして,前回の若松委員の発表に引き続き,今回は3件の事例紹介をお願いしています。
 1件目は衛星分野のデータ利用について赤松委員から,2件目は気象分野について岩谷委員からの事例紹介でございます。また,海洋分野の事例として,漁業情報サービスセンターの淀江専務理事と斎藤部長にもおいでいただいております。それぞれの発表の後に,10分程度の質疑の時間を設けておりますので,活発な質疑,御議論をお願いしたいと思います。
 それでは早速ですが,赤松委員から説明をお願いいたします。
【赤松委員】  国際航業の赤松でございます。このような機会を与えていただきまして,ありがとうございます。「国際航業における衛星リモートセンシング活用事例のご紹介―社会実装への視点を交えて―」ということで,御報告させていただきます。ちょっと量が多いものですから,早回しになりますけれども御容赦ください。
 まず,会社のことを御存じない方もいらっしゃると思いますので,御紹介差し上げます。国際航業は,東証一部上場の日本アジアグループの中で,空間情報コンサルティング事業を担っている中核企業でございます。設立が1947年で,今年創立70周年,売上高は400億円弱,従業員数は2,000名弱ということで,こういったコンサルタント業界では世界的にも有数の規模を有しております。国内拠点は47都道府県をカバーしており,海外ではアジア,ヨーロッパに拠点を展開して,それからODA等を通じて全世界で事業を展開してございます。
 国際航業の事業領域は気候変動対策を中心としまして,G空間×ICT,まちづくりといった,大きく三つの領域から成っております。Save the Earth, Make Communities Greenを標ぼうしまして,安心で安全,そして持続可能なまちづくりで社会に貢献することを銘としております。
 国際航業は国際アジェンダとの関わりも多数持っております。例えば2015年は,仙台防災枠組,SDGs,パリ協定という大きな3つの国際アジェンダが採択されていますが,その中でUNISDR,国連グローバルコンパクト,国連気候変動枠組条約,世界経済フォーラムといった様々な場で活動をしております。
 国際航業は人工衛星のほか,ここに示しました航空機,ヘリコプター,ドローン,地上の車両,そして船舶といった,宇宙から海中までと申し上げておりますが,全てのレンジの計測をワンストップでサービスできるというところも特徴です。これはその例ですが,衛星のみならず,航空機やドローン,そしてMMSと呼んでいる計測車両等のプラットフォーム,そして,その中に載せているカメラやレーザー等のセンサーを保有しまして,様々な計測に対応しております。その計測したデータを解析・処理して利活用するというトータルのサービスをワンストップで提供できるところも国際航業の特徴です。特に,ユーザーに近い利活用の部分が手厚いというのも我が社の特徴でございます。
 それでは,具体的な事例を幾つか紹介してまいります。まず農業分野での活用例です。農業を取り巻く課題はいろいろあるわけですが,例えば作業性を向上させたい,作物の品質低下を何とかしたい,後継者がいない,システムの管理・運用の人材が不足しているなどがあります。それから,リモセンも検討したけれども欲しいタイミングでデータが取得できない,高い,費用対効果はあるのかという,いろいろな御意見があるわけです。こうしたユーザーニーズを起点にしたサービスの検討を行っていくということです。
 そこで,最初にまずFSを行います。これは牧草地診断の解析例ですが,衛星データから牧草,雑草,裸地等を区分し,その結果を牧草の良・不良に区分して,最終的にその圃場の中の比率を求めていくという処理を行いました。この結果をもとに,現地でユーザーを交えて効果や要望の確認をしていくというプロセスを踏んでおります。ここに示したように,JAの職員,関係機関・研究所の職員,生産者の方々と,現地で見学会を実施しまして,更に実際に出てきた解析結果を農協の組合員の方に提示して,アンケートを行うということも実施しております。このように,ユーザー開拓のための地道な普及活動も重要だということです。その結果,この分析結果については圃場の状況とよく合致している,更新対象圃場の選定が客観的にできる,肥培管理に利用できるなど,非常に良い評価を頂いています。更に要望に関しては,安価で継続的に情報を提供してほしいというニーズも頂いています。
 そこで,分野を拡大してまいりました。先ほどは牧草地の例でしたが,水稲のたんぱく含有率をマッピングしてみました。この結果を現地で確認したところ,施肥の結果確認や追肥の判断支援に使えることが分かってまいりました。さらに,小麦の穂水分・収穫適期判断にも展開して,ここでも使えるという評価を頂きましたので,それでは現地の日々の営農に使えるような形で,オペレーショナルなクラウドの診断システムを構築しようというところに入っていったわけです。この営農支援サービス,天晴れ(あっぱれ)と読みますが,これを構築しまして,10月3日にリリースしたところであります。プロモーションビデオがありますので,お見せしたいと思います。
(ビデオ上映)
【赤松委員】  このように実際の生産現場に行き,そこでサービスを組み立て,ユーザーに評価いただいて,実用の世界に持っていっているという事例です。人工衛星やドローンで取得した画像を,クラウド環境の中で解析し,そこで得られる解析結果を現地にお届けするということをシステム化して実施しております。ここにありますように,現地の営農者の方とリンクしながら,サービスの組立てを行っていっています。現地の営農者の方からも良い評価を頂いておりまして,これから更に利用展開を図っていきたいと考えているところでございます。
 そして,このようなクラウドサービスを核にして,さらに,例えば準天頂衛星ですとかUAVによるロボット農業,そしてG空間情報センターとの連携等も進めていくことにより,最初に述べた農業上の課題を解決し,さらには海外,東南アジア等にパッケージサービスを輸出していくように進んでいきたいと考えています。
 次は森林分野での活用例で,ここではREDD+での活用事例を紹介いたします。REDD+は開発途上国における森林減少・劣化の抑制等による温室効果ガス排出量の削減に,森林保全を加えたプロジェクトです。REDD+では,国及び準国レベルの超広域を対象にすることから,衛星リモートセンシングが非常に重要なポジションを占めています。具体的にどのように使われるかといいますと,まず,過去から現在の森林減少の状況を把握し,レファレンス・エミッション・レベルを設定することに使います。また,現在の状況を詳細に把握するために,森林基盤図を作成するのに使います。それから,今後の森林の変化状況をモニタリングするために,レーダーの衛星等を活用した解析を行います。このように,REDD+ではいろいろな場面で衛星データが使われることになります。
 REDD+では,炭素蓄積量の推計も必要になりますので,リモートセンシングで把握した森林面積変化に,地上調査のデータを加えて蓄積量の変化を求めていくことになります。このように,衛星リモートセンシングと地上調査の連携が,REDD+では非常に重要となってまいります。
 リモートセンシング以外にも,REDD+では様々な活動が必要になってきます。例えば,森林保全計画ですとか,住民参加型の森林モニタリング,キャパシティービルディング,カーボンクレジット管理等の仕組みといったものを計画していくことも必要ですし,FS等での具体的な活動としては,利益分配に関する検討や地元コミュニティーへのモニタリングの指導,測樹調査,モニタリング計画の策定,さらには情報処理センターの建築や運営体制の整備といったところまで踏み込んでいくことが必要になってまいります。このように,現地ベースのコンサルティングや体制構築まで踏み込んでいくことが,実際のプロジェクト上は必須となってきます。
 このような活動を積み重ねた結果,国際航業では全世界で14か国にREDD+のプロジェクトを展開してきております。さらに,その結果に基づいて本邦初のREDD+の書籍を発行し,それからセミナーを開催する等の活動も行ってきています。このように,試行で終わらせずに定常的な業務につなげていくこと,プロモーションで社会的認知を獲得していくことが,社会実装を進める上では非常に重要だと考えております。
 次に,維持管理分野での活用例です。まず,干渉SARを用いたダム堤体モニタリングの事例を紹介いたします。これはロックフィルダムですが,このダムの沈下の状況を把握するものです。ここで黄色っぽくなっているところが沈下をしているところで,時間とともにだんだん沈降していっている状況が分かると思います。
 こちらの例では,上流側の面がある時期を境に非常に大きく沈降している傾向が捉えられているのが分かると思います。この結果を現地での計測,光波測量やGPS計測の結果と比較したところ,このグラフに示したように,非常に良く整合していることが分かってまいりました。その計測の誤差は,AダムでRMSEで2ミリ程度,Bダムでは5ミリから10ミリ程度ということで,定量的にも沈下状況がよく捉えられていることが分かりました。それから,この時点で大きな地震が発生しているのですが,その地震による急激な沈降もはっきりと捉えられていることが分かりました。このようにいい事例ができましたので,JAXA様で発行されているALOS-2のSOLUTION BOOKにこの結果を掲載していただきました。このような好事例のプロモーションや認知獲得も重要であると考えて活動しています。
 さらに,SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術の中で,衛星SARによる地盤及び構造物の変状を広域かつ早期に検知する変位モニタリング手法の開発が進められております。このSIPの中でも社会実装の加速化が求められており,我々の作り上げてきた技術が展開されて実用に供せられることを期待しています。
 もう一つ,同じ干渉SARを使った地盤沈下のモニタリング例を紹介いたします。環境省が平成17年に地盤沈下の監視ガイドラインを出しているのですが,ここでは沈下の状況を現地の水準測量で求めるようになっていました。ところが,現状では費用と人員の確保及び水準点の維持管理が非常に厳しくなってきており,なかなか十分に行われていないという実態もあります。そこで,補足内容として,これまでと同様の精度や成果が得られるのであれば,新たな観測技術を導入あるいは併用することができるとされ,これに対応できる方法論の構築を行ってまいりました。
 これが房総半島で実際に干渉SARを用いて解析した例です。左側は水準測量による結果で,右側が干渉SARによる沈下量の分布図ですが,両者はよくパターンが整合しているということが分かりました。また,統計解析を行ったところ,非常に高い相関が得られており,定量的にも良い結果が得られているということが分かりました。これは,干渉SARによる結果の上に水準測量点を配置したものですが,実は余り変動量が大きくないところに水準点が集中していて,変動量が大きいところに水準点が少ないということも分かってまいりました。左側はALOSの例で,右側がALOS-2ですが,より高分解能で見るとその状況が更に詳細に分かるということで,水準観測点の再配置のための基礎資料としても利用可能性が見いだされました。環境省が平成29年3月に地盤沈下観測等における衛星活用マニュアルを発刊しておりますが,この中に今回の事例も反映されています。このように,社会インフラとしてのポジション獲得・定着化までやり抜くということが,社会実装の上では非常に重要だと考えています。
 次に防災分野での活用例です。これは東日本大震災のときの例ですが,非常に広域で災害が発生したために,低分解能の衛星から高分解能の衛星まであらゆるリソースを駆使して,震災直後の広域的な被災状況を二,三日の間で迅速に把握し,関係機関に提供するということを行ってまいりました。その後,復旧・復興支援への活用ということで,例えばこれは高分解能衛星で瓦れきの分布状況を把握したものですが,復旧・復興のための瓦れきの撤去計画ですとか,保険業界では建物の被害状況,被害査定を行う上で,このような衛星データが一時的に使われたということもございます。
 当社では津波シミュレーションによる分析も行っております。発災当初は現地の情報がほとんど入ってこなかったので,津波シミュレーションの結果が正しいのかどうかがなかなか確認できなかったのですが,衛星データを見ることでその結果が妥当であるということが判明し,迅速に現地にその結果を提供することができたということもございます。
 当社はコンサルティング会社ですので,発災の直後から復旧・復興,そして次の災害に備えるという,災害のトータルフローに対応していくということも行っており,実は衛星が生きる場面というのは,発災直後から復旧の最初の辺りまでで,ここに衛星の活用場面を明確に位置付けて活用することで,非常に有効に機能したということもございます。このように,災害対応のトータルフローの中にしっかりと衛星の活用場面を位置付けることも重要であるということが,言えるかと思います。
 それでは最後に,今後の方向性と要望ということでまとめさせていただきます。
 今まで御紹介したように,我が社では宇宙から海中までということを標ぼうしており,ソリューションに応じて最適な観測リソースを適用して計測を行ってまいります。そして,計測から解析,利活用という一貫したサービスを組み立て,なおかつ各分野のスペシャリストの方々,企業,官公庁,NGO,研究機関の方々と連携・協働するハブとなって,このように社会ニーズのある多様な分野に,社会課題解決型のサービスを今後も拡大展開していきたいと思っております。特に,ユーザーまで届くラスト1マイルが,社会実装を進める上では非常に重要ですので,そこを頑張ってまいりたいと思っているところでございます。
 これまで述べましたように,社会実装の推進にはトータルサービスの中に衛星を位置付け,衛星はワン・オブ・ゼムと考えていくことが重要になってまいります。また,ユーザーに届くラスト1マイルまでをやり抜くことが大変重要です。そして,積極的なプロモーションにより社会的ポジションや認知を獲得していくことが大事だと思っています。ただ,まだまだそういう実績は不足していると考えております。こうした視点も踏まえながら,利用場面,出口の拡大をしていくことが,今後も大事なことではないかと思っております。
 そこで,具体施策の一つとして,日本(アジア)版のコペルニクスを作ろうということを提案させていただきます。コペルニクスは欧州の衛星利用のモデル開発プログラムですが,この考えを我が国に導入して国内利用を推進するとともに,将来的にはアジアにも展開していってはいかがかと思っております。オープンフリーの流れが今ありますので,まずは国策衛星を中心にして官需を喚起していってはいかがかと思います。サービスの開発時から官(民)ユーザー主導の運用体制を構築し,そこでシードマネーを投入して具体的な先導例,成功例を構築し,実装に向かっていってはいかがかということを考えております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
【大垣部会長】  どうもありがとうございました。大変面白いお話でした。
 それでは,ただいまの御説明に関しまして,御意見あるいは御質問等ございましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
【甲斐沼委員】  非常に興味深い御説明をありがとうございました。
 最初に国際アジェンダの中で仙台防災とSDGsとパリ協定ということで,防災についてはいろいろ説明していただいて,パリ協定はREDD+関係ということで御説明いただいたかと思いますが,SDGsの評価にどのように使われるのかというのが,少し分かりませんでした。これは食料生産などに寄与するということで,飢餓が減るというようなところに持っていかれるのか,その辺の説明をお願いします。
【赤松委員】  実は国際アジェンダとの関わりは必ずしもリモートセンシングだけではなく,我が社はコンサルティング会社として幅広いカテゴリーの仕事をさせていただいております。その中で,ここに挙げましたようなことに協力していきたいということです。
 当然SDGsの中にも気候変動の要素はたくさん含まれているので紹介技術を適用していきますし,また,例えば土地利用の情報をどのようにモニタリングしていくかという部分や,それを使った農業、疫病などへの対応についても衛星が活用される場面は非常に大きいと考えておりまして,これから具体的な事例の構築に向かって進んでいきたいと思っています。非常に重要なポイントだと思っております。
【小池委員】  大変具体的に進んでいる事例を御紹介いただき,ありがとうございます。
 その中で,官民というのはよく出てきたのですが,産学はいかがでしょうか。実は,学術会議の中で防災に関する取組の会議を開くのですが,その中の一つのテーマが産学連携になっています。民間と学術でいろいろ分析すると,インキュベーションのところは割と学術が得意で,赤松さんがおっしゃったように,実装は民間の方が得意で,学術の方はちょっと弱いんですね。これをうまく組み合わせるといいので,二つのセッションで議論するのですが,国際航業は十分力を持っておられるので,学との連携などはそれほどということなのでしょうか。その辺の事例がありましたら,お聞かせいただけると有り難いです。
【赤松委員】  大変失礼いたしました。実はそういうつもりは全くなく,今日紹介した事例は,本当にラスト1マイルまで届いた瞬間を紹介しているものですから,実はその前の段階で,学との非常に緊密な連携を取りながら,方法論の確立を進めていっています。
 実はそこは非常に重要で,我々民間ですとどうしてもしっかりとした基礎技術を作っていくという部分はできないので,学の方々が作られているアルゴリズムなどをいかに取り込んで,社会への実装を早く進めるのかということが,我々も重要だと考えております。
 我々の役割はラスト1マイルのところで頑張っていくということですので,是非,学の方が作られている先進的なアルゴリズムを組み込むことで,世界に冠たるサービスに組み上げていきたいと考えております。
【高村委員】  ありがとうございます。国際航業さんは温暖化の講習にもサイドイベントなどで参加をしていただいていて,社会的な課題を真正面から据えて事業を行っており,大変尊敬しているのですが,実際に社会的なニーズから事業を組み立てて,空間情報の提供コンサルティングをされており,また,御自身で観測をしてデータを提供しているという観点から二つ質問があります。
 一つは,例えばREDD+や天候保険の観測でも研究者が入ったりして,同時に同じような展開をしているケースがあると思うのですが,そうしたところと連携,あるいは場合によっては競合があるのかどうかというのが1点目です。先ほどスライド24で土木研究所との取組を紹介してくださったので,いろいろな関係があると思いますが,特に小池先生の御質問を受けて,むしろ同じ分野での競合ないしは連携で具体的なものがあれば,教えていただければと思います。
 2点目は無い物ねだりかもしれませんが,社会的ニーズから事業を組み立てていらっしゃるときに,具体的に社会的ニーズがあると思われている分野があれば,御意見いただければと思います。
【赤松委員】  ありがとうございます。REDD+にしても維持管理の話にしても,先ほど述べましたように,いろいろな場面で実は学の方々とも連携をさせていただいています。我々はもちろん自分たちで解析作業もやりますが,プロジェクトをコーディネートしていくという部分の役回りが,民間事業者としては重要で,そちらの方を重視してREDD+の場合ではやらせていただいております。もう一つの維持管理の場合も,研究者の方々からもアルゴリズムを提供していただきながら,それをどのように実用化の中に組み込んでいくかという部分をやらせていただいているのが実態でございます。
 先ほど土木研究所という話もありましたが,国土技術政策総合研究所とも一緒にやらせていただいておりますし,アルゴリズムに関してはリモートセンシングの研究者の方々とも連携しています。小池先生への回答とも重なるかもしれませんが,我々自身が基礎の部分を作るというよりは,いかに実際の社会の中にアプライするかという部分を,民間としては頑張らせていただいているということで御理解いただければと思います。
 それからもう一つが社会ニーズですが,今日紹介したところが,社会ニーズが成熟してきているところと御理解いただければと思います。これからやらなければいけない分野として,気候変動にどのように対応していくのか,REDD+以外にもいろいろなアプローチの仕方があると思うので,考えていかなければいけないと思っております。それと先ほど御質問いただいたSDGsですね。例えば食料生産の問題とか,まちづくりや貧困の問題とか,そういうところに,どう我々の技術を適用できるのか,それをちゃんと社会実装として回る形に作り上げられるのかということが,非常に重要だと思っています。
 残念ながら我々は民間企業ですので,社会実装を回すための資金の仕組みも同時に考えていかなければいけないので,その辺も成り立たせられるように,これから気候変動やSDGsに関わる領域の中で頑張っていきたいと考えています。
【中田委員】  ラスト1マイルという,すごく印象的な言葉を使っていただきましたが,例えばスライドの12ページ目について,かなりユーザーフレンドリーな診断をされていますが,更に診断に基づいた処方箋というところに近付けていけると思うのですが,その辺は考えておられるのでしょうか。
【赤松委員】  今回は営農支援に資する情報をタイムリーに提供するところを組み上げてきました。恐らくこれから求められるのは,ただ解析情報を提供するだけではなく,どう施肥をしたらいいのかといったことまで含む情報サービスであり,解決策の提供も含めて総合的なサービスにもって行きたいと考えております。
 その意味で,現在も,実際の農業現場でこれをどのように使っていけば良いのかを把握するために,現場の営農者さんとお話をしております。シンプルな話,情報の出し方一つをとっても,これまでのようなリモセンの解析画像をそのまま出しても駄目で,この圃場はどうなのとか,こっちの圃場はどうなのとかという情報が出せないと,現地の営農者の方々は使えません。そのような視点での情報の加工や提示方法も含めて,更にサービスを充実させていきたいと考えているところです。
 この10月3日に,先ず最初のバージョンをリリースしましたので,これからそういうところにも踏み込んでいきたいと考えております。
【舘委員】  JAXAのデータをたくさん使っていただいて,ありがとうございます。先ほどのREDD+の話で,スポンサーなどいろいろ問題があるのではないかと思いますが,見通しはどうお考えでしょうか。
【赤松委員】  ここに資金ファンドとして幾つか書いておりますが,最初,省庁やJICAの資金をREDD+で活用させていただきました。この枠組みは今でも生きており,多くの地域で同時並行で準備段階の仕組み作りをやっています。その意味では,まだまだ準備段階の部分があり,これからやるべき地域もあると思いますし,一方でREDD+もこれから実施の段階に入っていきますので,そうすると,資金はもう少し違うところから持ってくるという形になると思います。
 これは国内省庁ですが,例えば世界銀行やアジア開発銀行などのファンドを使うとか,ここに商社とありますが,民間,それから銀行といったところの投資家の資金を呼び込んでいくことも,これからは必要になってくると思います。我々自身がREDD+の事業を回すことを考えて,そこに投資をしていただくというステージにも入ってくると思っています。
 ですので,これからより多様な資金を活用しながら,REDD+を進めていくということになると思います。
【舘委員】  もう1点,ラスト1マイルについては我々もすごく悩んでおり,一番難しいと思っています。欧州のコペルニクス計画,あれは衛星だけではなく,データを活用する方向にも投資をしています。是非こういうことをやるべきだと思いますが,それも国がやるという考えなのか,日本版ということで違った形でやろうと考えているのか,この辺りの考えがあれば教えてください。
【赤松委員】  コペルニクスもまだ完成に至っているわけではなく,これから本当の実装に向かって進めていくという話になると思っています。最後に書きましたように,シードマネーを投入していくというのが衛星利用推進に向けた国としての役割と思っています。実施の段階になったときは,その中で必要資金も含めて回るような仕組みを作っていく,そのために,最初からユーザーを巻き込んだ形でシードマネーを投入したFSを行っていくべきだと思っています。
 コペルニクスも,プロジェクトを実施するときの体制は,利用省庁や利用ユーザーがリーダーになっています。ですから,そういう体制を組まないといけないと思っています。日本の場合は,今までどうしても我々のような衛星のオペレーターやサービスプロバイダーがやっているというのが多いのですが,それを逆転させて,ユーザーを頭に据えてやっていくような形を取れれば良いのではないかと思っています。最終的には,それが社会サービスとして,その中でしっかり回るような形を作っていくべきだと考えております。
【若松委員】  具体的な施策まで頂いて,すごくヒントがいっぱいあったと思います。一方で,リリースされたばかりの営農支援サービスは,必ずしもこういう形じゃないように感じまして,あのサービスの場合はどうして最後まで,ラスト1マイルまでやり抜くことができたのか,若しくは,もっとこうだったら良かったというところがあれば,教えていただきたいと思います。
【赤松委員】  営農支援サービスをここまで持ってくるのに,実は5年ぐらい掛かっています。ですので,先ほど御質問いただいた中にも,もうちょっとサービスとして付け加えていくものがあるんじゃないかというのは,正におっしゃるとおりで,ここから更にもっと総合的なサービスというものを考えていくべきだと私も思っております。
 ただ,定常的なサービスの実現を通らないと次のステップには行けないので,まずここを突破していくことが重要だと思っています。これまでも農業の例はたくさんありますが,全部FSで終わっていると思います。ですので,ようやくオペレーショナルなところに行けたというのが一つの成果だと思っております。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。それでは続きまして,岩谷委員より御説明をお願いしたいと思います。
【岩谷委員】  NPO法人気象キャスターネットワークの岩谷です。よろしくお願いいたします。私は民間企業ではなく,NPO法人として普及啓発をやっている立場になります。また,ふだんの仕事として放送局で天気予報の仕事をしておりますので,テレビ放送局での利用であったり,あとは民間気象会社にヒアリングしたので,その話を交えながら,気象観測業務に関してお話をします。
 まず,放送局における気象観測の利用ですが,多くの方々が観測を一番身近に感じているのは,天気予報だと思います。将来の予報ばかりではなく,気象衛星ひまわりの画像や雲の様子,気象レーダーの画像といった実況の観測データを見せることがよくありますし,降水量や気温などもそうです。視聴者にとって,細かく見せていくことが気象情報の中で一番理解しやすい情報であると思います。
 世界から見ると,日本は非常に細かい天気予報をやっていますし,回数も多いです。海外では1日1回とか2回しか天気予報をやっていないところも多くありますし,世界から見たら狭い日本列島の中で,相当細かい予報を出していて,時間も3時間ごとであるとか,場合によっては1時間ごとの予報を出したり,そういったニーズがあって,日本人は特に気象に対して敏感なのだと思います。
 それは,気象災害が多い国であるとともに,生活の中で気象が非常に身近な国民性なのだと感じております。テレビ局では可視化できるものを好んでいて,このスライドの右上のような雲画像と気象レーダーを重ねてみたりとか,左下にあるように,雨量を色だけでなく棒グラフのようにして立体に見せるとか,こういった工夫をすることが放送局では多いです。
 一時期こういうCGがはやったときには,例えば雲画像を飛行機で飛んだように俯瞰で見せるとか,いろいろやりましたが,そういうものはとう汰されて今はなくなっています。私がこの業界に入って25年ぐらいになりますが,余り技術に頼った見せ方をすると視聴者は飽きてしまって,かえって情報として分かりにくいということで,最近はオーソドックスな情報の見せ方に落ち着いたと思います。
 また,右下になりますが,日本テレビでは国連広報センターの依頼を受けて,気候変動に関する映像を紹介することもやっています。日々の天気予報に加えて気候変動に関しても応えております。
 気象観測データの流れですが,気象観測データ,予報に関しては気象庁から一般財団法人気象業務支援センターに配信されて,そこから有料で民間気象会社であるとか,放送局で直接受けているところもありますが,そのデータを買って利用しています。気象庁のホームページ等では,もちろん無料で見られますし,データもダウンロードできますが,放送業務であるとか防災情報にリアルタイムで出すためには速報性が求められますので,料金を負担しつつ成り立っています。
 この負担金については,当時,配信データ利用者協議会があって,今まで無料だったものを料金を取るのかと,強い批判を浴びたそうですが,両者の話合いの中で負担金がまとまり,割と広く使ってもらえる金額設定になったと聞いています。それから,項目ごとに細かく料金を決めているのも一つのポイントかもしれません。全部のデータを使いたいところもあれば,一部分しか使わないところもあるので,そういった料金の区分けをしてあるということです。また,大手の会社や気象情報を専業でやっているところであれば,この負担金は大したことはないと思いますが,例えば地域に限定してやっているような会社だと,かなり厳しい負担になってしまうので,地域限定とした上で6分の1ぐらいの費用に抑えられるような軽減措置があり,中小規模の企業でも利用しやすい設定になっていると思います。
 それから話題提供の一つですが,気象衛星ひまわり5号の後継機,これは1999年に打ち上げを失敗しており,次のひまわり6号が上がるまでの間,米国からGOES-9号を借用したということがありました。私はこのとき放送を担当していたのですが,テレビから雲の画像がなくなるのは困るという意見を視聴者からもらったりして,気象衛星が上がるように擁護する報道をやった記憶がございます。その次の衛星に関しては,予算が取れないということはなかったようですが,やはりきちんと次の衛星を継続的させることの重要性を強く感じた一件でした。この問題を契機に,今では長期的な計画で衛星が上がっていますが,このときに本当にGOES-9号がなかったらどうなったんだろうと思います。当時,北京支局の担当者にインタビューをしたら,中国がその場所に気象衛星をあげてもいいという話もあり,気象衛星の場所を空けるというのは結構怖いんだなと思いました。中国が衛星を上げるならそこから情報をもらえばいいという話もありますが,重要なデータを他国からもらうということは危ういと感じました。
 以前,黄砂の観測を日中で協力してやった例がありましたが,政治的にもめると中国から観測データが来なくなることが起こり得るんだなと思いました。その意味では,重要な観測を計画的に,長期的にきちんと続けることが,防災上,また国家戦略的にも非常に重要なことだと感じております。
 もう一つ,観測を継続するのは非常に大変ですが,同時に品質を高くすることも重要です。かつて,1)に書いてありますが,京都の京田辺市で9月の最高気温が39.9度と出て大騒ぎしました。結果的には観測機器に植物のつるが絡まっていて,異常値と判明したのですが,明らかに周辺に比べて気温が高過ぎたので,当初からおかしいんじゃないかという意見もありました。観測点が1,300か所もあるアメダスの管理は大変なのですが,こういうことで気象報道の中で間違ったデータが放送されてしまうとか,観測データは本当に正しいのかというのが話題になりました。その意味では,維持管理が品質の高いデータを出していく上で重要だと思います。
 もう一つ,暑さの有名なところで館林がありますが,写真左下にあるように実は観測点の周りに消防署があり,目の前が駐車場になっています。反対側も道路になっており,四方がアスファルトに囲まれております。右上は気象庁の東京の観測所ですが,地面は芝生を敷いてあります。普通はこうあるべきなのですが,館林は芝生ではなく下は緑色のラバーのマットで,その緑もはげて,今は茶色くなっています。ですので,気温は上がります。観測条件が違うので温度が高いのは当たり前です。しかも,前向き駐車にしてくださいということは,以前は後ろ向きに止めていたということで,エンジンを掛けると気温が上がると言われておりました。こういう配慮は一応されていますが,決して観測条件のいい環境ではないということが分かると思います。これでも一応は基準を満たしているので,日本の最高気温によく挙がってきますが,本当にこれでいいのだろうかと思います。例えばこのデータを使って研究をしたりするときには,本当に正しいデータなのかと少し疑問に思う例でございます。
 もう一つは,東京都心の観測点が大手町から北の丸公園に移動しました。御存じの方は多いと思いますが,気象庁は高速道路が目の前を走っていて,非常に気温の高いところでしたが,北の丸公園は周りを緑に囲まれているので,平均気温が1度下がりました。同時期に観測を続けた結果,大手町より1度低いということが分かっている上で使っているのですが,気象庁のホームページを見ると,ここから先は観測所が移動したとか,データの連続性がないということを言っていますが,使い方を間違えると寒冷化したことになってしまいます。
 ですので,もし観測点の移転等があれば,その場所の観測データの扱いに気を付けなければいけないということをきちんと周知することが重要です。大手町の件は割と有名ですが,あちこちのアメダスでもよくあります。練馬もある年から場所が変わったことがあって,こういうものを周知していくのは結構難しいと思います。特に私たちの気象解説の世界でいうと,若い人たちはもう分からないので,当たり前のように気象のグラフを書いて,突然気温が下がっていますとか,普通に放送してしまうことがあります。データの管理,品質というのは非常に重要だと思った一件です。
 それから,民間企業における気象情報の利用の活発化ということで,気象庁が中心になって気象ビジネス推進コンソーシアムというものが設立されました。これは気象会社向けだけではなく,流通や保険といった企業に気象観測データを広く使ってもらいたいという趣旨で立ち上がったものと理解しています。この設立の前から気象庁では,例えば右下の図が描いてありますが,スポーツ飲料は何度から売れるようになるとか,アイスの販売であるとか,ホットコーヒーとか,服が売れるとか,こういったものを独自に気象データとの関連性を調査し資料を公開しています。気象庁のホームページを見ると,いろいろな企業が使いやすいように公開しており,同時にホームページから気象データを簡単にダウンロードできるようになっています。気象業務支援センターから配信を受けると,それなりにデータを受信して計算するということが必要なのですが,それも要らないぐらいの,ある意味個人商店でも使えるようなデータも出しております。これにはお金が掛からず,ある程度分析までした上で,使ってくださいねというようなやり方をして広げようとしているのが,今の気象分野の在り方なのかなと思っています。また,気象データのフォーマット形式がありますので,そこも勉強会やセミナーを開催したり,気象衛星データのフォーマット形式などを紹介しているようなページもあります。
 それからウェザーニューズの例ですが,気象庁のデータだけではニーズに十分応えられないと,例えばゲリラ豪雨について,一般の方々がスマートフォンで写真を撮ったり,右側の写真のような家で花粉を観測できる機械を1,000か所ぐらい無料で渡して観測してもらったりしています。ビジネスになる,ユーザーがいると思うところに対しては,気象庁以外のデータもたくさん集めて,独自に観測もしています。最近は小型衛星を打ち上げて,北極海域の航路の活用を考えています。この会社は船舶関係にも情報を出すので,こういったもので海氷情報のニーズが高まっている中で,独自の観測も必要であると考えているわけです。
 ヒアリングの際,地球観測推進部会があるというお話をしたところ,もっと出していただけるなら,もっと使いたいというのが本音だと。ただ,ウェザーニューズの社員の方が言うには,私たちはこういう情報に,使える情報があるかどうかも知りませんと言っていたので,多くの会社に知ってもらうということも大事だと思いました。気象分野では,気象ビジネス推進コンソーシアムができましたが,地球観測分野においても新たにプラットフォーム的なものがあると良いと思っております。
 最後になりますが,NPO法人気象キャスターネットワークの役割について少し紹介します。私どもはもともと気象キャスターであった人たち,若しくは今出ている人たちが,有志で集まったところですので,特にどこかの省庁が設立したというものではなく,独自に立ち上げた組織です。国土交通省,環境省,気象庁などから情報や予算を頂いて普及啓発を主に行っております。もちろん,気象キャスターはテレビで気象情報を放送するというのが一つの役割でもあるのですが,同時に,講演会であるとかイベントで,直接,市民に伝えるという役割も担っています。特に私たち気象キャスターやその経験者は分かりやすく伝えることに関してはプロだと自負しております。例えば地球温暖化防止のコミュニケーター事業では,学校の先生は気象や地球温暖化の話を教えるのは非常に難しいというニーズもあるので,小学校,中学校に出向いて授業を行っています。予算的に運営していくのは難しいのですが,企業や国の予算を使いながらキャスターや気象予報士を派遣しております。
 学校でいうと,累計4,000校ぐらいはやってきており,左の方に写真がありますが,テレビでよく使われるブルーバックを使ったクロマキーシステムにて,気象衛星画像と人を合成したものを体験してもらったりしており,観測データである気象衛星画像はよく使わせていただいています。防災や環境を知ってもらうこと,これは防災教育の一環でもありますが,同時に気象観測の重要性を理解してもらうことにもつながりますし,将来の研究者の人材育成にもなると思います。将来,気象を勉強する大学に行きたいとか,地球環境のことを研究したいという子供たちの声を聞くこともあります。
 私たちが作ったものの紹介ですが,これは防災ハザードマップで,自分たちのまちを子供たちが歩いて,写真を撮ったり危険な場所を見つけるのと同時に,気象レーダーの画像もそこに重なるように作ったりもしています。いろいろな研究分野の方々や企業とも協力しながら,もっといいものができたらと思っています。私たちNPOの力ではこの程度しかできませんが,こういうコンテンツをもっと上手に作れるところがあれば,私たちは伝えることの方が得意なので,そういったところで協力できるところがあればうれしいと思っております。
 最後にまとめですが,気象データは防災情報の一つである天気予報の中で,非常に重要なものです。特に長期的な温暖化などを研究するには,長期的かつ高品質な観測が欠かせないと思いますので,観測をしっかりやっていただくというのが,重要だと思います。
 また,観測データの品質に関する情報みたいなものを開示していく,知ってもらうのも重要だと思います。ただ,限られた予算の中でどう優先順位を付けるかというのは,社会実装できるもの,ビジネスになるもの,国がやるべきこと,研究所がやるべきことというのはもちろんあると思います。こういう優先順位をきちんと付ける,評価する仕組みがあるといいと思います。短期的なビジネスになるものと,温暖化など長期的に続けていかなければならないものなど,その区分けは必要だと思いますが,こういったものも重要だと思います。
 情報の配信に当たっては,適正な金額も重要だと思います。ビジネスが成り立たないような金額設定をすると誰も利用しないですし,使いにくいものになります。また気象データの配信形式も,以前は気象会社が間に入らないとできない,使いにくいデータでしたが,だんだんと利用しやすいようになってきたと同時に,気象情報を扱う特別な知識がなくても使えるような取組も気象分野では行われてきましたので,こういったものも参考になると思います。
 先ほども紹介したように,既に独自観測をするような企業もあります。これは大手だからできるのですが,大手であっても利用できる観測データがあれば利用したいという声もありましたので,研究機関で観測しているデータも含めて,広く適正な金額と利用しやすい配信形式があれば,もっと広がるのではないかと思います。
 最後になりますが,観測を多くの国民に知っていただくのも重要だと思います。気象衛星は非常に理解しやすいものですが,ほかのデータだとなかなか理解が得にくいものもあるかもしれません。多くの方々に知っていただくのが,実は教育であったり,普及啓発の活動の一環だと思っていますので,是非そういう分野で,私たちも一緒になって協力していきたいと思っております。学校教育は非常に重要で,この中で観測の重要性も理解してもらえると良いと思います。
 もう1点だけ最後に言うと,学校教育の中に私たちのようなNPOが入ろうとすると,例えば環境省から委託を受けていても,学校側が文部科学省の許可が必要であると言われることがあり,文部科学省と環境省の連携はどうなっているのかと思うこともあります。学校側も来てほしいのに,実は出前授業を実施しにくいというのが学校教育分野の現状なのかなと思いますが,この辺も何か手立てをしていただけるとうれしいと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して,御質問あるいは御意見等ございましたらお願いします。
【小池委員】  貴重な御報告をありがとうございました。2点お聞きしたいことがあるのですが,学校に行くときは,大学の先生が使えるんじゃないかと思います。スライドでは,気象研や国立環境研究所とは協力しているようになっていますが,NPO法人気象キャスターネットワークで,大学の教員とリンクするような場はあるのでしょうか。
 二つ目はコメントですが,ひまわり5号からMTSATのギャップがございましたが,その後上がったひまわり8号の経緯は御存じでしょうか。
 8号を企画したときに当時の運輸省が,衛星の相乗りをやめると言って,予算が半分なくなったところ,JAXAに一緒にやりませんかと言ったら,急に言われてもと言われて断られています。そこで気象庁の方が相談に来られたのですが,長官の下に懇談会を作り,4か月ぐらい掛けて概算要求のための書類を一緒に作りました。そして最後は総理決裁でひまわり8号・9号の予算が認められたという経緯があります。ひまわりは地球観測衛星の中で最も使われている衛星だと思いますが,そういう状態だったということは,情報としてお伝えしたいと思います。
【岩谷委員】  詳しい話をありがとうございます。すごく苦労されたんだと,私も伺っておりました。
 前半の研究者との協働ですが,研究者は個々にアウトリーチという形で,学校であるとか,普及啓発もされていると伺っておりますが,一緒になってやる場面は,実は余りありません。企業の場合には私たちが半分やって,後半は企業の担当者がやるというような組合せはやったことがあります。あと,国土交通省では研究者の方と組合せで,イベント的にやった例はありますが,学校ではないですね。割と個々でやっている感じです。
【小池委員】  大学の教員も,サイエンスコミュニケーター的な能力を持った方と……。
【岩谷委員】  いらっしゃいます。
【小池委員】  自分の研究成果をアウトリーチしていくときに,一緒にやるという気持ちはすごく強いと思うのですが,そういう方がそもそもいらっしゃらないので,今回大変いい機会を頂いたと思っており,そういうネットワークを是非,前に進められるといいと思います。先ほど来年のGEO本会合のことを説明しましたが,次の若手を育てないといけないという強い思いがありますので,このようなネットワークと地球観測のグループが協力しながら,普及啓発を是非進めていければと思います。
【岩谷委員】  私も思います。ありがとうございます。
【佐藤委員】  一つは情報共有としてのコメントで,もう一つは質問です。
 一つ目は,衛星観測の継続性,連続性は,研究者側としても非常に深刻に考えており,日本は必ずしもそれがうまくいっていないということです。これに関しては,今年7月に学術会議から「我が国の地球衛星観測のあり方について」という提言を出しております。是非一度お目通しください。
 2点目は観測の品質管理ですが,まず,気象庁はドキュメントに情報は全て残してあって,観測地点の変更等はきちんと記録されています。あとは見せ方と見やすさの問題かと思います。一方,民間でも一般の方々の参加による観測データが新たな情報源となってきているわけですが,その品質管理には厳しいものがあるように思います。かといって,そういうデータを捨ててしまうのももったいないですし,アーカイビングの問題もあると思います。その辺りはどのようにお考えでしょうか。
【岩谷委員】  おっしゃるとおりで,民間が観測したデータをそのまま信用して,全部使うのは非常に難しいと思います。私たちは気象データを扱って放送するのですが,そもそも気象庁の観測データの中には,自治体が観測したデータを入れていないんですね。私たちは,大雨が何ミリ降りましたという話を放送しようとするときは,例えば東京の場合は東京都の観測データのページを見に行かないと見られない。なぜ一緒に入れないのかという質問をしても,品質が違うということがあります。
 防災情報を扱う国土交通省の中だと,割と一緒に見られるようになっているらしいのですが,気象庁は気象観測データの品質にすごくこだわっていて,一緒に載せていないというのがあります。防災情報の観点からいうと非常に扱いにくく,なるべく多くのデータがあった方が有り難いということはあります。
 あとは,民間はそういう意味ではログも残っていませんし,例えば先ほど花粉の観測を紹介しましたが,あのデータはかなりデータとしては怪しい。本人たちも言っていましたが,初年度は吸い込み口がちゃんと取れなくて,全然花粉が入らなかったとか,雪やほこりが観測されてしまうとか,その意味で,飽くまで参考データになっています。ただ,それをビジネスとしては使えるという扱いでやっていますね。例えば人が観測した,雨が降っていますみたいな情報もありますが,わざと間違った情報を入れる人がいます。でも全体を見ていると,明らかに違うデータは排除できるので,ビッグデータを扱うときのやり方だと思いますが,数多くあった方がいいという扱いで使っているようです。
【上田委員】  ここで紹介されているのは,国内の気象情報を利用しているということですが,国際的な気象情報の利用はされているのかということと,これは岩谷委員にお尋ねするべきかどうかちょっと疑問ですが,もし国際的な情報を使った場合,先ほど,たしか雲画像が消えそうになったということもありますけれども,恐らくそういう利活用が進むことによって,非常に情報自体が価値を持つようになる。そうすると,例えば政治的な問題が起こったときに情報が出なくなるようなことが起こり得ると思います。今後利活用を進める上では,どう対応をしていくべきだとお考えでしょうか。
 それともう1点,品質については今は非常にきっちりしているわけですが,今後,人口が少なくなってきたときに,人の目が必要な部分については品質管理が難しくなる可能性があると思います。その対応について何かお考えを聞かせていただければと思います。
【岩谷委員】  ありがとうございます。
 世界のデータですが,気象庁は世界のデータも取り込んでおり,例えば高層観測を全球的にやっていたりしています。確かに気象衛星の画像は,例えば以前だとインドの衛星の画像が公開されていなくて,地球全球に雲画像を描こうとすると,インドの辺りが抜けてしまうとか,ヨーロッパと日本とアメリカの衛星で,何となく雲があるように見せているようなことも行われていました。
 ですので,その観測をしている国がどういう政治的な関係なのか,国との関係が良好なのかどうかで,データが得られるかがすごく大きく,重要なデータであればあるほど,言い方が余り良くないのですが,国の関係が悪いと情報が得られなくなることがあると感じております。
 品質管理について,例えば気象庁のアメダスについても,管理のための人件費や予算は減ってきていると思います。それでつるが絡まったり,定期的な点検の回数が減らされたりということになってしまうのだと思います。正しいデータをきちんと取り続けるところには,予算をかけていかなければいけないと思います。気象観測データを色分けして,高品質,中品質,低品質の管理というようなデータの分け方もあるのかなと,私は考えております。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
 それでは続きまして,漁業情報サービスセンターより説明をお願いいたします。
【漁業情報サービスセンター】  漁業情報サービスセンターの淀江と申します。本日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。私ども漁業情報サービスセンターは,都道府県と水産団体を会員として設立した一般社団法人でございます。業務の内容は,水産関係者,特に漁業者に関心の高い情報が三つあります。海の状況である海況,どこで魚が取れているかという漁況,それから,幾らで売れているかという市況。この三つの情報を中心に収集・分析して配信しているのが,私どもの主な業務です。その中で本日は衛星データを中心に,それらが漁業でどう活用されているかについて説明をさせていただきます。
 水産分野で衛星データが活用されたのは,1980年代がスタートでございます。活用内容は非常に広範囲ですが,4点ほど挙げました。1番使われているのが,海水温情報を見て漁場を探索するというもの。それから,潮流情報で漁具をどういう方向で敷設するか,また航路を選択するというのが二つ目です。三つ目が,漁船は火を使いますので,可視画像で漁船の位置を把握すること。四つ目が流氷の位置。こういった分野で活用されております。
 特に使われているのが海水温情報による漁場探索です。右の写真が漁船の無線室ですが,非常に雑多な中にパソコンを置きまして,私どもが配信する水温情報などを,インターネットを通じて見ています。当初からスムーズに活用できたわけではなく,パソコン等に不慣れな漁業者が多いものですから,当初は一緒に電気屋さんに行ってパソコンを購入するところから始めました。この写真は操作方法を教えているところですが,このように普及を図ってきたということです。
 先ほど水温情報が一番重要だということを申し上げましたが,具体的な事例を見てみたいと思います。これは私どもが作成した表面水温に,実際どこで漁場ができているのかを重ね合わせた図です。この図で漁場ができているのは主に2か所で,これは非常に特徴がありまして,等温線が狭くなっているところです。一つは対馬暖流系の暖かい水の,舌のような「暖水舌」の先端部分。それから暖かい水と冷たい水が接する潮目で,いずれも等温線の間隔が狭く,その温度差が障壁になって魚が集まりやすいということです。一様に海の上に漁場があるわけではなく,船頭さんが出港する前に等温線図を見て,漁場はこの辺だなと目星を付けていけば,無駄な探索がなくなります。したがって,表面水温が一番使われている情報になります。
 次は北の方の漁場で,これはサンマ漁場です。三陸・道東沖の昨年9月22日ということで,今年も大不漁ですが昨年も不漁な年でした。しかしながら,漁場は特定の場所にできており,漁場は親潮系の冷水の第1分枝と第2分枝沿いにできるという特徴を持っているのですが,暖水塊の周りにぐるっと親潮冷水が巻き込んだその上に漁場ができているということで,漁師さんにとってもこの表面水温情報は,なくてはならないものになっております。ちなみに,サンマ漁船は日帰り操業ではなく,沖泊まりをします。したがって,毎日私どもが配信する水温データはまだかという電話が直接私どもに掛かってきます。また,昨日は当たっていたとか,そういうのを言われたりして,うちの職員はサンマの時期は,毎日勤務評定を受けているような緊張感を持ちながら配信しているのが実態です。
 こうした水温図をどう作っているかといいますと,ここでは代表的にGCOM-Wの「しずく」を挙げておりますが,JAXAから専用回線で頂いています。さらに,ビルの屋上に受信アンテナを設置してNOAAの衛星も直接受信し,更に現場で実際に測った水温図を提供してもらっています。具体的には190隻くらいの漁船と契約して,実際に漁場で測ったデータを合わせて補正をしながら,独自の同化技術で水温図を作り,インターネットを通じて漁業者あるいは試験研究機関に配信しています。このシステムは,漁業の神様からエビスくんという名前を付けまして,普及を図ってまいりました。
 次に,魚の中には表面ではなくイカなどのように中層を泳いでいるものもいます。そのため,漁場を探索する上では,下層水温が有用ということがあり,私どもでは衛星から得られる海面高度から下層水温を推定しております。上のグラフは海面高度のプラスマイナスを表示しており,青系が平均海面高度より低いところ,暖色系が高いところで,星印の直線で切断して,作った断面図が下の図になります。この下が海底になるわけですが,上と比較すると,海面高度の高いところは暖水がずっと深いところまであります。右上のグラフでX軸は海面高度,Y軸は水深200メーターの水温で,実際に測定値をプロットすると大変高い相関関係があり,海面高度を基に下層の水温も推定しております。
 次が天皇海山がある北太平洋の海域ですが,アカイカというイカの漁場になっているところで,これは私どもで推定した200メーターの等温線です。これに実際の漁場をプロットすると,特定の等温線の上に漁場ができているということで,ある程度漁場実態を反映した下層水温になっているのがわかります。
 以上が水温情報で,これに加えて潮流情報も業者は非常に関心がございます。これは海面高度計から潮流を描画して配信している図ですが,二つほど例を挙げております。これは漁業者から聞いて,なるほど,こういう使い方をしているんだなというものですが,省エネ航行に使っております。一つ目は,気仙沼を基地にしたカツオ漁船ですが,行きは時計回りの暖水塊の上のへりを通り,帰りはその下のへりを通って帰ってくるということで,大体1ノット速度が向上します。計算値ですが,8%ほど燃油の削減につながっているということになります。もう一つは,銚子を基地とするマグロ漁船ですが,非常に遠いところに漁場があり,行きは黒潮に乗っていき,帰りはそれを避けながら帰るということで,大体2ノット速度が向上し,17%の燃油の削減ができます。
 次に,気象情報の例です。魚をいかに取るかに加えて大事なのは安全に操業をしなければいけないということで,気象情報も重要になります。気圧配置図や台風の予測図は当然使っていますが,ここで紹介するのはポイント予測という工夫をいたしました。例えば,ここの海域をクリックすると,そのポイントの1週間先までの予測が表示されます。データは気象業務支援センターから購入したもので,1週間先までの風向風速,波高といったものを表示することで,漁師さんはいつまで安全に操業できるかを予測できるので,効率的な操業につながっていると思います。
 実際にどれぐらい普及しているかを示したのが次で,エビスくんの利用隻数は平成28年で670隻ぐらいまで普及しております。平成19年頃から始めたのですが,そのときは60隻ぐらいでしたので,10年で10倍くらいになっています。ただ,漁業種類を見るとサンマやイカ,マグロ,カツオということで回遊性の魚になります。底魚は海底地形に依拠するということもあり,水温には敏感ではないため,回遊性魚種を対象にしています。表層回遊魚を対象とした沖合漁船のうち,半数程度がエビスくんを使って操業しているという状況です。
 エビスくんは非常に役に立っているというのをよく聞きますが,実際にどれぐらい役に立っているのかを数値化してみたのが次です。エビスくんの効果ということで,150隻ほどから回答を得ています。漁場探索時間が短縮した,漁獲量が増加した,給油削減率が削減したという三つが効果としてあげられると思っております。
 PRというわけではありませんが,平成25年に第1回宇宙開発利用大賞が創設され,その中でも最高の賞だと言われている内閣総理大臣賞を受賞しており,産業貢献が認められたと思っております。それから白書にも,人工衛星を活用して燃油を削減する漁業情報サービスセンターということで,紹介していただいております。
 要望などあればということでございましたので,人工衛星「しずく」の後継機についてお話させていただきたいと思います。二つの図は,同じ日の左がNOAAの衛星による画像,右が「しずく」のAMSR2による画像を並べたものです。一目瞭然ですが,雲があっても「しずく」のAMSR2の場合,マイクロ波ということで雲の影響を受けずに観測が可能になります。冬の日本海,それから梅雨どきは雲が多いため,「しずく」で水温データが取れるのは,非常に有り難く大いに活用させていただいております。ただ,若干弱点もありまして,これも左がNOAAの画像,右が「しずく」ですが,解像度が低いというのがあります。左のNOAAのような微細な海水の動きは解像度の限界があり,ぼやっとしてしまうということで,これが改善できれば,もっといいなというのが1点でございます。
 それからもう1点が,岸から100キロくらいまでの沿岸域です。NOAAは観測できるのに対し,「しずく」の場合は陸面からの強い放射がノイズとなってデータが得られておりません。沿岸ではもっと多くの漁船,漁業者がいるので,沿岸域の観測ができれば沿岸漁業の振興に大きく貢献するだろうと思います。昨年水産庁が行ったアンケート調査でも,漁業者はこの2点の改善を強く要望しているところでございます。
 「しずく」は平成24年に打ち上げられましたが,いずれ運用停止するわけです。これは昨年改訂された宇宙基本計画工程表の抜粋で,GCOM-Wの後継センサーの開発について,GOSAT3号機,これは温暖化ガス観測衛星でございますが,これとの相乗りの打ち上げについて調査・検討を29年度に実施し,それを踏まえて今後の対応方針を作成するとなっております。それでスケジュールを想定すると,「しずく」は平成24年に打ち上げて現在運用中なので,仮に前機種の運用実績と同様に打ち上げから9.5年で運用停止した場合は,平成33年に運用が終了することになります。
 先ほど申し上げたように,後継機についてはGOSAT3に相乗りということがもし決まれば,これは平成34年に打ち上げということになっておりますので,初期校正を考えると打ち上げてすぐ運用できないため,その間,空白期間が生じるのではないかと懸念しております。
 非常に頼りにしている状況なので,観測の空白期間が生じないこと,それから,後継機センサーについては沿岸域の観測の実現と高解像度化を目指した技術開発を,強く要望しているところでございます。
 最後に,人工衛星の活用は,勘と経験の漁業から,IT漁業への移行を加速しました。探索時間の短縮,燃油費節減に大きく寄与しました。それから,これも大きいと思って書きましたが,漁業への新規参入が容易になるのではないかと思います。船頭さんの職人芸,漁場探索などは正にそうだと思いますが,それが,こういったデータを利用した探索が可能になれば,素人の方でも容易に参入できるのではないかと期待しております。
 それから,衛星データだけではなく,水温データの船舶による実測,気象情報の配信も,高精度化や安全操業に貢献しています。「しずく」については全天候型で非常に強力な観測衛星で,その運用に空白期間が生じないようにということと,技術開発については沿岸域の観測の実現,高解像度化を強く要望しているということでございます。
 駆け足で御説明しましたが,以上で私の説明を終わります。ありがとうございました。
【大垣部会長】  淀江さん,斎藤さん,どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明に関しまして,御質問等ありましたらよろしくお願いいたします。
【中田委員】  どうもありがとうございます。
 初めのところで,海況,漁況,市況の三つを対象にしたサービスを行っているとおっしゃっていました。エビスくんは主に海況だと思うのですが,例えば市況と組み合わせれば,どこに入るかにまで展開されていくと思うのですけが,そういうことは考えているのかということをお伺いします。
【漁業情報サービスセンター】  確かに海況が中心ですが,市況も漁業者の要望があり,どこに行ったら今高いのかという情報も載せております。全魚種というわけにはいきませんが,マグロ,スルメイカなどは載せております。
【小池委員】  説明の中で,よく獲れたよという情報が来るというお話でしたが,水温や海面高度から,ここが漁場になるだろうという情報を出されて,あるいはそれを漁師の方が読み解いて,ここは本当に当たったか,たくさん獲れたかという情報は,センターに届くのでしょうか。
【漁業情報サービスセンター】  よく獲れたかどうかは,仲間,グループではお互いに共有することはありますが,なかなかそこまでは,オープンにうちに来るということはございません。が,水温データを頂くときに位置が入っていますので,大体どこにいたかというのはわかります。
【小池委員】  以前,アカイカの場合は比較的に我々研究グループにも漁獲量が来て,4次元データ同化で出した推定値と漁獲量から,こういう形で役に立つという研究が進んで,その情報は共有できたのですが,高品質の魚種になればなるほど,全く出ないということで,それ以上研究が進まないということがありました。
【漁業情報サービスセンター】  僚船の中ですら暗号でやったりしているので,オープンにやるというのはなかなか難しいと思います。ただ,研究を進める上で重要だというのはよく分かりますし,私どもも水温情報などのデータが正しいのかどうかを検証する上でも,参考にもらうことはございます。データの扱いは難しいと思います。
【中田委員】  沿岸は今のところ余り対象になっていないと思いますが,例えば「しずく」の後継で高精度化されたセンサーが搭載されたとすると,その辺に広がっていく可能性があると思います。そうすると,例えばレジャーであるとか,漁業以外にもユーザーが増えてくると思いますが,その辺の戦略はどうお考えでしょうか。
【漁業情報サービスセンター】  私どもの業務は漁業者が対象になります。確かに今,衛星データが欠如しているということが大きいと思いますが,なかなか沿岸には普及していません。ですから,「しずく」の後継機で沿岸の観測ができるようになれば,非常に有り難いと思っていますし,いろいろ沖合とは違う問題もありますけれども,沿岸への普及は加速していくと思いますし,そうしていただきたいという思いでございます。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 本日は3件,具体的なデータ活用事例を御説明いただきまして,この部会にとって大変有意義な議論ができたと思います。今後の事例取りまとめに反映していければと思います。
 それでは,次の議題に移りたいと思います。地球観測データの利用促進方策取りまとめの方向性についてであります。事務局から資料の説明をお願いします。
【直井地球観測推進専門官】  資料3に基づいて説明させていただきます。これは地球観測データの民間利用促進方策の論点素案ですが,まず背景から説明させていただきますと,昨年度の地球観測推進部会では,第5期科学技術基本計画の実施に当たって必要となる地球観測の重要性について提言を取りまとめていただきました。それが参考として記載している部分です。この提言は,主にCSTI,文部科学省,関係省庁や関係機関に対する提言となっておりますが,民間企業に関する内容にまでは踏み込むに至っていないという現状がございます。
 そしてもう一つ,平成27年に本部会で取りまとめていただいた,今後10年の我が国の地球観測の実施方針につきましては,地球観測の実施に当たっての基本的な考え方という項目の中において,地球観測の成果を産業利用も含めた社会実装につなげることを検討する必要があると記載しており,産業利用の重要性についても実施方針の中で言及されているものでございます。
 このような背景の下,今期の地球観測推進部会では,主に民間企業等を想定して,地球観測データをどのようにしたら利用促進できるか,その促進方策について取りまとめることとしております。
 資料3では(1)から(6)まで記載がありますが,(1)では,地球観測データを用いた民間ビジネスについて,どのようなニーズがあるかということ。また,どうすればニーズを掘り起こして先鋭化できるか,潜在的ユーザーの発掘についてはどうかということで,例えば,以前御紹介しておりますデータ統合・解析システム(DIAS)においては,ここに記載の防災や食料・食品・物流,エネルギー等の分野ごとに,それぞれのデータ活用に興味を持つ民間企業を集めたコミュニティーフォーラムやシンポジウムを開催したり,また民間企業を含めたフィジビリティースタディーを実施したりしております。このようなユーザーの発掘について,どのような方策をしていくのがいいかということが,1番目の論点でございます。
 二つ目が,地球観測データをビジネスに用いる上で,どこに,どのような障壁があるか。括弧の中に,具体的にはというところで記載しているように,国内・海外データの入手のしやすさですとか,価格,データポリシーの整備,解析環境の提供などということが考えられるのではないかということで記載しております。
 三つ目の論点が,地球観測データをより広く社会で活用するためには,どのような民間企業等の関与の仕方が効果的かということで,これは実施方針の中にも記載されている項目ではありますが,例えば官民一体となった観測体制やプロジェクトの構築,また市民参加型の観測ということが考えられるのではないかということです。
 四つ目の論点が,様々な目的で取得した観測データや既存の観測システムの更なる連携を促してイノベーションにつなげるためには,具体的にどのような取組が必要かということで,これもDIASを例にさせていただきますが,DIASのようなデータを統合・解析するためのプラットフォームの提供などが考えられるのではないかということ。
 そして五つ目の論点,これは先ほどの赤松委員の発表の中でもありましたが,オープンサイエンスですとかオープンデータの流れの中で,民間企業等が利用しやすいデータの提供の在り方はどのようなものが考えられるかということ。括弧の中に記載の,宇宙産業ビジョン2030や,経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」等が現在動いている衛星データの利用・活用等の具体的な事例として参考になるのではないかということ。この中では,衛星データのオープン&フリー化と言っておりますが本当にフリーがいいのか,若しくは,先ほど岩谷委員の発表にもあったように,適切な対価を頂くのがいいのか,そして全てオープンにするのがいいのかどうか,その辺りについて,論点として記載しているものでございます。
 資料の説明は以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいま説明のありました各論点について,あるいは関連して,その論点以外でも結構でございますが,皆様の御意見を頂きたいと思います。
【小池委員】  2点申し上げます。今日の赤松委員からのフレーズで一番いいなと思ったのは,やり抜くということです。私はDIASの水アプリでダムの実装を民間の方と一緒にやらせていただいていて,本当に最後までやり抜くというところを経験しています。その中で,なかなかこういう体制になっていないと理解しております。ですから,先ほど漁業情報サービスセンターから,パソコンの使い方まで教えながらやっている,そういうことで実は進むんですね。そういうやり抜くというところはやはり必要ではないかと思います。
 二つ目は,最後に直井さんがおっしゃったオープンについてですが,これも先ほど漁業情報サービスセンターの方にお聞きしたのが正にそこで,実は,全てはオープンではない。そのオープンでないところに,ある意味のビジネスチャンスがある。そこをよく理解して,地球観測側は多分オープンなんだけれども,その相手先は必ずしもオープンにならないということを理解しながら進めていく方法論を考えないといけないのではないか。
 今,十把一からげでオープンになってい過ぎるような気もします。そうすると,サイエンスは良くても民間と一緒にやるときは,必ずしもそうではないということを感じました。
 以上です。
【赤松委員】  今の小池委員の意見にも関係しますが,先ほど申し上げたように,最後までやり抜くためには,個別の機関の努力だけに頼っていると難しいところがあります。我々もそんなに大した力があるわけではないのですが,頑張って,頑張って,あのくらいのことが何とかできるということで,国の衛星をフルに活用するためには,もう少しシステマチックにやっていく必要があるだろうと考えております。先ほどコペルニクスという例を挙げましたが,ああいったことを機関連携のもと戦略的かつ機動的に実施することで,初めてその動きが出てくるのではないかと思っております。
 それから,小池委員からオープンの話がありましたが,私も全く同じ考えで,全てをオープンにすることがいいとは思っておりません。ただ,基本的なデータはなるべくオープンにして,特に国で観測しているデータに関してはオープンにしていく。そこからどうやって付加価値を付けるか,サービスにつなげていくかというところには競争を取り込んで,より良いものを作っていくというのが,我々のような民間の役割になるだろうと思っております。
 協調領域と競争領域とよく言いますが,協調領域としての基本的なデータの流通はオープンにして,競争領域のところはそれぞれが,よりすぐれたサービスを作っていくように委ねていくというやり方がいいのではないかと考えております。
 以上でございます。
【舘委員】  私も赤松さんがおっしゃったとおりで,まずラスト1マイルの在り方として,二つあると思います。一つは,やり抜くという形でのサポートが,最初の取っ掛かりとして国,あるいは我々がやらなければいけないポイントだと思っています。
 一方で,我々は先ほどのGCOM-Wにしても,全てフリーでオープンに出しています。ただ,フリーでオープンで出したからといって使えるわけではなく,それを例えば海面温度に直していく過程が要るし,精度も高くないといけない。レベルがばらつかないように品質を高める作業が必要で,そういうところにお金を投資しないと,品質がばらばらなものが出てしまうので,この2点がキーだと思っています。以上です。
【佐藤委員】  先ほどGCOM-Wのお話が出ましたが,宇宙基本計画の工程表の中で,GCOM-Wの後継機がちょっと遅れそうで,空白ができそうということがありました。民間活用の視点から考えると,空白期間ができそうなデータは非常にリスクが大きいため,これが民間活用の発展を妨げている面もあると思います。ですので,衛星観測も含め,民間に使ってもらえそうなデータの利活用を更に推進するためには,空白期間が生じないような政策が必要だと思います。
【佃委員】  今までの皆さんの御意見と同様ですが,ここでいう民間の利用の促進という,最終的に社会実装するという言葉が使われましたけれども,それを実現するためには,ある程度指標化が必要だと思います。例えば,国や公的機関がやって,国民にサービスすることができれば,あるレベルではそれは社会に実装された,役立ったと言ってもらえると思います。ただ,ここで目指しているのは,民間のコンサルティングであれ,気象ビジネスであれ,産業として成立するようになるということだと思います。だから,そういった新しいビジネスが出てきたとき,それはどの程度の規模で,将来どの程度見込まれるのか,そういった指標も考えておく必要があると思います。
 気象ビジネスであれば,当然のように相当のビジネスとして成立しているので,今後どのくらいになるのか,漁業,森林,農業などの分野においても,今日のお話をお聞きすると,相当期待できる新たな社会サービス産業が出てくると思いますので,そのような指標を見付けて,可視化ができるような努力をしたらいいと思いました。以上です。
【中田委員】  先ほど,漁業の情報がなかなかオープンにならないという話がありましたが,研究の現場にいても,それは実感しているところです。私どももFSみたいな形で,漁業者さんの協力を得て実際の漁獲データをもらい,海洋の情報も含めて配信するということをやったことがあります。それは非常に評判が良かった。
 なので,そういうものがあると,どれだけ皆さんに益になるかというところを丁寧に示しながら,観測にまた回していくということが,すごく重要だというのをそのとき感じました。今後のここでの議論にも入れていただければと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございます。ほかはよろしいですか。
 それでは,頂いた御意見のほか,追加で御意見があれば,後から事務局へメールでお送りいただければ,事務局で取りまとめた上,次回部会等で検討に生かしていきたいと思います。特に御説明いただいた3者の方々,どうもありがとうございました。
 それでは,本日の議題は以上になりますが,その他の議題について,何かありますか。ないようでしたら,事務局にお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  事務連絡をさせていただきます。本日の議事録は,後日事務局よりメールで皆様にお送りいたしますので,御確認いただいた後,文部科学省のホームページで公表させていただきます。旅費の書類をお配りしている方は,内容を御確認いただき,そのまま机の上に置いておいてください。
 次回第3回の部会は,12月22日金曜日,10時を予定しております。開催案内につきましては改めて連絡させていただく予定です。以上です。
【大垣部会長】  大変有意義な御説明と,また審議をありがとうございました。これをもちまして,地球観測推進部会の第2回会合を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

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