資料2-4 平成27年度地球観測連携拠点主催ワークショップ「衛星による地球観測の現状と今後の展望」総合討論(地球観測における衛星観測の役割)取りまとめ(地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁提出資料)

平成28年2月4日
地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁

平成27年度地球観測連携拠点主催ワークショップ
「衛星による地球観測の現状と今後の展望」
総合討論(地球観測における衛星観測の役割)取りまとめ

1.はじめに

地球観測連携拠点(温暖化分野)では平成19年度から毎年、主に観測の視点からテーマを定めて、機関間並びに分野間の連携施策の検討に資するためのワークショップ(以下、WS)を開催してきている。平成27年度は、気候変動・水循環変動・生態系等の地球規模の監視・解析・予測に貢献する、我が国の地球観測衛星の現状と将来展望をテーマに開催した(別紙プログラム参照)。さらに、総合討論においては、地球観測における衛星観測の役割について検討を行った。

2.地球観測衛星をめぐる状況

平成20年5月に宇宙基本法が成立し、宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、宇宙基本計画が策定された(平成21年・平成25年・平成27年1月)。平成27年1月策定の新たな基本計画では、「我が国の宇宙政策を巡る環境認識」の一つとして、「地球規模課題の解決に宇宙が果たす役割が増大」を挙げ、その中で、「各国とも地球規模課題解決に向けた取組の中で、積極的に宇宙システムを活用している。」と、述べている。さらに、「我が国の宇宙政策の目標」として、「宇宙を活用した地球規模課題の解決と安全・安心で豊かな社会の実現」を挙げており、具体的アプローチとして、「測位、通信・放送、気象、環境観測、陸域・海域観測等の各種人工衛星及び関連設備を我が国として切れ目なく整備」するとしている。具体的取組として9項目の宇宙プロジェクトを挙げ、その一つとして「衛星リモートセンシング」を取り上げ、静止気象衛星並びに温室効果ガス観測技術衛星については、切れ目のない観測体制の整備や後継機の整備が明記されている。また、「現在開発中の災害予防・対応、地球環境観測や資源探査のための取組を着実に進める。」としている。それ以外の衛星に関しては、以下のように述べている。
「今後、上記以外の新たなリモートセンシング衛星の開発及びセンサ技術の高度化に当たっては、我が国の技術的優位や、学術・ユーザーコミュニティからの要望、国際協力、外交戦略 上の位置づけ等の観点を踏まえ、地球規模課題の解決や国民生活の向上への貢献など、出口が明確なものについて優先的に進める。その際、複数の衛星間でのバス技術の共通化や、国際共同開発、人工衛星へのミッション器材の相乗り、衛星データの国際共有等国際社会との連携を通じて効果的・効率的に取組を進める。」
このように新たな基本計画においては地球観測衛星の重要性は指摘されているが、具体的な工程表(平成27年1月策定)においては、例えば、現在進められている衛星による地球環境観測関連計画(水循環変動観測衛星、気候変動観測衛星、全球降水観測計画/二周波降水レーダ、雲エアロゾル放射ミッション/プロファイリングレーダ等)の後継プログラムについては記載されていない。なお、平成27年11月の改訂工程表においては、水循環変動観測衛星につて、「平成28年度より後継ミッションも含めた今後のあり方について検討を加速」と記載されている。

3.WSの概要

上記2.で述べたような状況を踏まえ、平成27年度は「衛星による地球観測の現状と今後の展望」と題するWS(別紙プログラム参照)を開催した。基調講演においては、我が国における衛星地球観測の現状と課題について、特に衛星観測の各分野での貢献についての詳細な紹介とともに、国際的な状況、国内の衛星観測の推進体制の課題等が示された。さらに、課題解決のために関係コミュニティの今後の活動の方向性についても言及が行われた。一般講演においては、平成27年度に運用が開始された静止気象衛星「ひまわり8号」、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」とその後継プログラム(GOSAT-2)、水循環変動観測衛星「しずく」について、その成果や今後の計画等が詳細に紹介された。また、総合討論では、水循環・気候変動のモニタリング計画の国際的な枠組みや社会的な課題への貢献の道筋、高解像度衛星観測の展望やデータ戦略等についての適切なコメントが行われた。
講演のポイントを項目別にまとめると以下の様になる。

(1)国際環境

・2015年に開催された主要な国際枠組み(例えば、仙台防災枠組み、GEO戦略計画、COP21等)において、衛星による地球観測の役割の重要性が認識されつつある。
・持続可能開発目標(SDG)の進捗を評価するインディケータに衛星の役割を位置付けることを関係機関と協力して検討中。
・グローバルな気象予報、災害監視、気候変動、水資源管理などに対して、国際的な期待も大きい。(注1)
・欧米・中国・韓国では、地球環境問題解決への貢献のために、活発に地球観測衛星開発を行っている。さらに、長期計画(2020年~2040年の期間)に関する検討が行われている。

(2)国内状況

・宇宙基本計画工程表では、2020年度から我が国の「その他のリモートセンシング衛星」のカテゴリーの地球観測衛星関連計画は空白期となる。
・宇宙政策委員会には、地球環境問題・観測に関する部会/小部会が無い。

(3)地球観測衛星の成果

・地球観測衛星は最先端科学開発の発展と,気候変動の影響などによって生じる様々な社会の抱える課題等の解決に役立つ。
・GCOM-Wに搭載されているAMSR2は衛星搭載マイクロ波放射計として、現時点での世界最高性能を誇り、これに、大気・海洋変動のモニタリング、メカニズム解明・プロセス研究、および観測データを用いた研究成果を一緒に活用することで、課題解決のために極めて重要なツールとなると認識されている。

(4)今後の展望と課題

・GPM計画、GCOM-C計画は、水循環、気候変動のモニタリング、社会課題へ本格的な貢献を目指す。
・気候変動モニタリングや実利用を通した社会貢献には、ミッションの継続性が重要である。
・現時点では、GCOM-W衛星の後継機の具体的な見通しは立っていない。早急な対応が望まれる。
・継続的な衛星観測を実施するためには、持続可能な観測システム構築への努力が必要である。
・衛星計画の立案・検討にあたっては、関連する複数の衛星をシステムとして捉え、一体的に検討する必要がある。

4.総合討論の概要

上記3.に示した講演並びにコメントを受けて行われた総合討論においては、(a)「宇宙基本計画」、(b)宇宙政策委員会「中間取りまとめ」(注2)、(c)「工程表」(平成27年改訂素案)、(d)TF提言等の論点を中心に検討が行われた。
この中では、長期的な衛星計画の立案の体制、関係機関の連携の在り方、開発システムの在り方、我が国とヨーロッパの衛星計画の検討体制の相違、衛星計画に対する関連の国際的な枠組み・計画等の支援の必要性等が議論された。このうち、特に重要なものを取りまとめると、以下の様になる。
●GCOM-Wを含む、2020年以降の地球観測衛星計画について、直ちに検討に着手する必要がある。そのために、関係部局に働きかけを強化する。
●工程表に準拠した衛星計画の推進に当たっては長期的ビジョンに立った柔軟な運用が不可欠である。さらに、省庁連携、国際連携が重要であることから、特に、内閣府を中心に省庁横断型のシステムを作ることが重要である。また、宇宙政策委員会の中に地球観測関連の部会あるいは小委員会を設置する必要がある。

(注1)日米首脳会議ファクトシート(平成27年4月)
「グローバルな気象予測のために必要なデータの利用に空白が生じることを回避するため,地球環境変動観測ミッションの後継ミッションにおいて協力。」(外務省仮訳)
(注2)宇宙政策委員会「中間取りまとめ」(平成27年6月)
2.検討すべき項目とその方向性
(2)(衛星リモートセンシングの)利用ニーズの各プロジェクトへの反映
農業、防災、地図作成等の各分野における利用ニーズを継続的に掘り起こし、我が国が保有する各種のリモートセンシング衛星が一体として対応し、また政府全体として利用ニーズを踏まえた衛星開発を行うべく、宇宙政策委員会における評価・検証の取組を平成27年度から開始する。

 

別紙

平成27年度地球観測連携拠点主催ワークショップ

「衛星による地球観測の現状と今後の展望」

開催趣旨

地球観測連携拠点(温暖化分野)では平成19年度から毎年、主に観測の視点からテーマを定めて、機関間並びに分野間の連携施策の検討に資するためのワークショップを開催してきている。
気候変動を予測し、人間社会や生態系への気候変動の影響を評価する上で、地球環境の実態を把握することは非常に重要であり、そのためには地球観測データの充実が必要不可欠である。特に衛星による観測は、全球規模での分布を短い時間間隔で長期間測定することが可能であり、詳細な変動の状況を把握するのに極めて有効である。また、近年の技術革新により温室効果ガス、植生などの様々な要素の観測が可能になってきており、従来の観測と組み合わせることにより、地球温暖化をはじめとする地球環境研究が大きく進展することが期待されている。
そこで、本年のワークショップでは、気候変動・水循環変動・生態系等の地球規模の監視・解析・予測に貢献する我が国の地球観測衛星の現状と将来展望について紹介する。

主催:地球観測連携拠点(温暖化分野)(地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁)
後援:内閣府、文部科学省(予定)、宇宙航空研究開発機構、国立環境研究所地球環境研究センター
日時:平成27年11月19日(木曜日):13時00分~17時00分
場所:千代田放送会館ホール
(〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1-1 電話:03-3238-7401)

プログラム

○開会挨拶(13時00分~13時10分) 気象庁
○基調講演(13時10分~14時00分) 「衛星地球観測の現状と課題」:中島映至(宇宙航空研究開発機構)
○一般講演(14時00分~16時00分)
・地球環境観測衛星としての「ひまわり8号」(14時00分~14時35分):操野年之(代読:大野智生)(気象庁)
・温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の観測の現状と今後(GOSAT及びGOSAT-2)(14時35分~15時10分):横田達也(国立環境研究所)
休憩(15時10分~15時25分)
・GCOM-W観測データによる大気・海洋変動のモニタリング-メカニズム解明と社会貢献(15時25分~16時00分)):江淵直人(北海道大学低温科学研究所)
○総合討論(16時00分~17時00分) 地球観測における衛星観測の役割
・コメント1 GPM、GCOM-C等による水循環・気候変動のモニタリングと社会課題への貢献(16時00分~16時15分):石田 中(宇宙航空研究開発機構)
・コメント2 高解像度衛星観測の展望(16時15分~16時30分):岩崎 晃(東京大学先端科学技術研究センター)
・討論(16時30分~17時00分)

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

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