第3期地球観測推進部会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年7月10日(金曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 平成20年度の我が国における地球観測の実施計画のフォローアップについて
  2. 関係府省・機関の取組について
  3. 平成22年度の我が国における地球観測の実施方針について
  4. その他

4.出席者

委員

小池(勲)部会長、青木委員、井上委員、小池(俊)委員、杉本委員、瀧澤委員、中静委員、深澤委員、藤谷委員、堀川委員、本蔵委員、安岡委員、渡邉委員

文部科学省

谷地球・環境科学技術推進室長、西山地球・環境科学技術推進室室長補佐、石川地球・環境科学技術推進室専門職

オブザーバー

原沢内閣府参事官

5.議事録

【小池(勲)部会長】
 それでは、ただいまより科学技術・学術審議会研究計画評価分科会地球観測推進部会の第3回の会合を開催したいと思います。本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。
 初めに、事務局から本日の出席者の確認をお願いいたします。

【谷室長】
 本日は13名の先生方がご出席となっております。過半数に達しておりますので部会成立ということでございます。
 また、本部会につきましては、部会の運営規則により公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

【小池(勲)部会長】
 それでは、議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。

【事務局】
 お配りしております議事次第をごらんください。本日は資料を3つお配りしております。資料1が総合科学技術会議でおまとめいただいた「平成20年度の我が国における地球観測の実施計画のフォローアップ」。資料2が本日プレゼンしていただきます関係府省庁・機関の取り組みをまとめたものでございます。資料3が「平成22年度の我が国における地球観測の実施方針(素案)」ということになっております。
 以上でございます。

【小池(勲)部会長】
 ありがとうございました。
 本日は、お手元の議事次第にありますように4件の議題を用意しております。また、普通はこの会議、2時間の会議ですけれども、きょうはプレゼンテーションを行う関係で2時間半、12時半の終了を予定しております。よろしくお願いいたします。
 最初の議題に入ります。議題1は「平成20年度の我が国における地球観測の実施計画のフォローアップ」についてです。総合科学技術会議が平成20年度の地球観測事業の実施状況についてフォローアップを行いましたので、ご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【原沢内閣府参事官】
 内閣府の環境エネルギー担当の原沢でございます。フォローアップについて報告いたします。
 資料1をごらんください。フォローアップにつきましては2年前に一度やっておりまして、今回、2回目ということではあるのですが、かなり仕組みが変わったということもありますので、少し趣旨のところを詳しめに書いてございます。「地球観測の推進戦略」に基づいて観測を進め、その観測の進捗状況について総合科学技術会議のほうでフォローするという形になっております。平成19年の8月27日に20年度の実施方針が出されまして、それを受けまして翌20年の2月5日に実施計画ができております。今回、平成20年度のフォローアップということで、この実施計画に基づいて各省が進めた観測事業及びデータの活用についての進捗状況のフォローということでございます。
 2ページ目に総合科学技術会議の状況を書いております。平成20年度につきましては、第3期科学技術基本計画のフォローアップを進めたということがございますので、その結果も踏まえて、今回、フォローアップをしているということで、若干スケジュール的にはおくれ気味ですけれども、来年度以降はもう少し早くこのフォローアップを出すことになると思います。
 2.については実施計画のフォローアップをどうやったかということを書いてございます。平成20年度の実施計画につきましては、連携拠点についての記載はないのですけれども、これは非常に重要な施策ということで連携拠点の進捗状況についてもフォローアップをしております。実施計画は3章からなっております。2.2ですけれども、まず、第1章が喫緊のニーズに対応した重点的な取り組みということで、5つの重要な分野について取り上げておりますので、そちらについてフォローアップを行ったということでございます。特に観測事業の進捗状況と、加えてデータの利用状況についてのフォローアップを行いました。
 2.3については基盤的研究開発の推進ということで、実施計画の第2章に相当するところでございますが、そちらについても進捗状況についてフォローアップをしております。
 2.4については個別の分野における地球観測の推進ということで、推進戦略に各分野についての進捗状況のフォローアップであったということでございます。
 3.以降が進捗状況についてということで、各省庁が進めた事業について報告いただいた200ページ以上にわたる膨大な資料を環境PTのほうでご議論いただいてまとめたということでございます。概して20年度の観測実施の計画については、順調に進捗しているということと、さらにデータの利活用が進んでいるということでございます。
 簡単にその内容を紹介いたしますが、3.1は連携拠点の推進についてであります。連携拠点につきましては2つできております。地球温暖化分野についての連携拠点と、地震・火山分野に関する連携拠点ということで、いずれの連携拠点も進捗は非常に順調に進んでいるということでございます。例えば、温暖化に関する連携拠点については、さらにその活動を強化してほしいというような期待を書いております。地震・火山分野につきましては、従来から進められていることをさらに強化していただきたいというような期待を書いてございます。
 3.1.3に、連携拠点は非常に重要だということで、さらにいろいろな分野にぜひ広げていただきたいということで、具体的には、「水循環の把握と水管理」分野については、できるだけ早くこういった連携拠点を設置していただいてはどうかということを書いてございます。
 3.2、喫緊のニーズに対応した重点的な取り組みということで、地球温暖化をはじめとして5つの分野について進捗状況を検討いたしましたが、順調に進捗しているということであります。特に今回はいろいろなデータの利活用について見たわけですけれども、こちらについても順調に進んでいるということと、そのデータの利用を考えた観測事業の遂行といったことも行われているということでございます。
 少し細かくなりますのでそこは飛ばします。3.2.2水循環の把握と水管理、この分野につきましても観測及びデータ利用が順調に進んでいるということなのですが、特にこの分野の連携拠点については設置を強く期待するということを書いてございます。
 3.2.3対流圏大気変化の把握につきましては、国立環境研究所が設置した辺戸岬の大気・エアロゾル観測ステーションが非常によい観測のプラットフォームになっているということで、これをさらに活用して、かつ成果を世界中に発信していきたいということで、データの利用についてもこういった関係については進んでいるので、さらに進めてほしいということですが、研究観測の費用の確保ですとか、観測に従事する人材の育成とか確保について今後の課題も挙げてございます。
 3.2.4風水害被害の軽減ということで、こちらについては特に気象関係との関連も強いわけですけれども、観測関係は着実に進んでいるという評価でございます。
 3.2.5地震・津波被害の軽減ということで、こちらについても計画どおりに進んでいるということですし、さらにそのデータの提供や利用が進んでいるということで、これについてはさらに強力に進めていただきたいという期待であります。
 3.3基盤的研究開発の推進ということで、観測技術あるいは情報技術の開発というところの進捗状況についても計画どおりに進んでいるということであります。特にデータ統合・解析システムにつきましては順調に進んでおりますし、さらにこういったシステムの利用面をさらに強力に進めていただきたいということを書いております。さらにGOSATが1月に無事打ち上がりまして、データが利用できるようになってきたということで、こちらについての利用も確実にやっていただきたいということを書いてございます。
 3.3.2が共通基盤情報の整備ということで、こちらについては特にALOSのデータ利用が内外で進んでいるということを特に出しまして、こういったデータ利用の面をさらに進展させていただきたいということが書いてございます。
 3.4は、地球環境から始まりまして生態系、大規模火災等々について計画どおり進んでいるということでありますが、こちらについては説明を省略いたします。
 フォローアップの結論は、説明の中でも何回かお話ししたように、平成20年度の地球観測の実施計画については、着実に進捗しているということで、特に連携拠点による活動が進展しているのが(1)でございます。(2)は、観測データの提供や公表が進められているということ。
 (3)は、幅広いユーザーのニーズにこたえる基盤が整備されつつあることと、(4)には気候変動対策など環境問題の解決に必要な施策としてニーズに対応した観測データとデータ統合の重要性がさらに増しているということで、結論という形にしております。今後、こういったことを踏まえてさらに推進していただきたいということが真ん中に書いております。
 ただ、幾つか課題もあるということで、今後の課題として4.2にまとめております。まず、第1に長期継続観測に向けた資源の確保ということで、だんだん観測する事項が増えてまいりますと限られた資源でどの項目をどう測るかということが問題になってくると思います。そういった長期継続観測のための資源の確保というのは問題になってきているのではないかという話。
 14ページの上のほうですけれども、観測データ等の利用促進ということで、計画どおり進んでいるのですが、さらにこういったデータの利用を進めていく必要があるということを書いてございます。真ん中ですけれども、データ利用にもかかわりますけれども、GEOSSなどの国際観測ネットワークへのさらなる貢献が必要であろうということ。下のほうに行きまして、そういったところでは地球観測分野における科学技術外交の推進ということで、総合科学技術会議がうたっております科学技術外交といったものを使って、地球観測の事業を拡大、あるいはデータ利用を拡大していただきたいということです。
 最後のポイントですけれども、観測システムは使うにつれてだんだん陳腐化してくるというようなことが起き始めていますので、こういった観測システムの更新をどうするかといったことも、こういった計画の中でご検討いただけたらということです。
 以上がフォローアップの概要でございます。

【小池(勲)部会長】
 ありがとうございました。
 大変好意的なフォローアップをいただいたように思います。このフォローアップを踏まえて平成22年度の実施計画の議論を進めていきたいと思います。何かご意見がありましたらお願いいたします。
 井上委員。

【井上委員】
 直接この件ではないのですけれども、次回フォローアップするときに、例えば今年度、補正予算でいろいろ事業が進んでいるかと思うのですけれども、そういうものも含めるのでしょうか。

【原沢内閣府参事官】
 基本的には今回は平成20年度のフォローアップということで、平成21年度フォローアップは今年の3月時点の平成21年度実施計画が対象ということですが、フレキシブルに補正関係のものも取り上げられるのではないかと思いますが、基本的にはあくまでも平成21年度実施計画のフォローアップということですので、その中には補正そのものが入っていないので、そこは少し相談の余地があるということだと思います。

【井上委員】
 おそらく補正予算というのは実体がつかみにくいところがあるかと思うのですけれども、もしかしたらここに指摘してある老朽化の対策とか、そういうものに対する回答などがあるかもしれないので、そちらのほうか、あるいは事務局かわかりませんけれども、地球観測関係のそういう実態を把握しておいたほうがいいのではないかと思うのですけれども。

【原沢内閣府参事官】
 ぜひそうしたいと思います。

【小池(勲)部会長】
 ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ただいまいただきました報告、意見をもとに今後検討を進めていきたいと思います。ありがとうございました。
 次の議題に移りたいと思います。次は地球観測の実施方針の考え方に沿った関係の府省・機関の取り組みについてご報告をお願いしたいと思います。

【谷室長】
 それでは、この後、10の関係府省庁・機関からご紹介いただきます。これまで、平成22年度の実施方針についてご議論いただいてきておりますけれども、これまでの議論で抽出された重点分野、ここをしっかりやるべしという方向がだんだん見えてきており、その関係の取り組みについてご紹介いただくという趣旨でございます。したがいまして、お聞きいただく際には、関係府省庁・機関で実施されているすべての取り組みを網羅的に紹介するということではございませんということをご留意いただければ幸いでございます。
 少し短くて恐縮ですけれども、8分ずつということでお願いしたいと思っております。また、質疑も時間の関係から前半5つ、後半5つということで、それぞれまとめた形で進めさせていただければと思っております。
 それでは、早速でございますけれども、内閣府のほうからお願いしたいと思います。

【内閣府(廣木参事官)】
 内閣府総合科学技術会議の廣木でございます。それでは、お手元の資料、気候変動適応型社会の実現に向けた技術開発の方向性の中間取りまとめということでご説明をさせていただきます。
 気候変動適応は世界、あるいは我が国の喫緊の課題ということで、総合科学技術会議におきましてもタスクフォースを設置いたしまして、今年の当初から集中的な議論を行ってきたところでございます。先月19日にこの中間取りまとめができましたので、それを報告させていただきます。
 2ページの下のほうでありますけれども、これは全体の状況認識ということでございます。気候変動対応の見通しということでございますけれども、IPCCの第4次報告書にもありましたように、温暖化の影響を防ぐためには緩和策だけではなくて、適応策の両者が両輪となって動いていく必要がある。特にこれから最も厳しい緩和策をとったとしても適応策が避けられないということがIPCCの第4次報告書でも認識をされてございます。特に我が国におきましては、そういった気候変動への対応をしつつ、少子高齢化など経済社会問題と一緒になった未来像を提示して、一体として取り組む必要があるのではないかという認識でございます。そういう意味で緩和策と適応策が両輪となった適応型社会の実現が必要だということでございます。
 その中で緩和策は低炭素化の視点ということで、まとめが既にできているわけでございます。ポイントはそれに呼応いたしました適応策について、どういう将来像を提示して、それに向かってどう進むかということを考えるということであります。このタスクフォースでは4つの柱を提示いたしまして、その1つ1つをどうするかということを考えてまいりました。1つは気候変動に柔軟に対応できる安全・安心な国土・都市づくり、次に健康で快適な国民生活と元気で豊かな社会の実現。そして、国民1人1人が行動できる環境づくり、適応型社会実現のための国際連帯、そういうのを緩和策と適応策、一緒になりまして、最終的に安全・安心で活力のある日本をつくりたいということでございます。
 3ページに参りまして、その具体的な考えをこちらで示してございます。まず1番の安全・安心な国土づくりでありますけれども、1つはやはり適応策で大きくクローズアップされてまいりました極端現象、豪雨や高潮、そういった災害、また、都市を直撃するヒートアイランド現象など、そういった影響を緩和しつつ、森林や自然生態系等の豊かで多様な自然環境を守るということで、そのためには土地利用、都市構造、社会システムを総合的に見直す必要があるのではないか、そういう考えでございます。そのために対応の方向性といたしまして、ハードだけでなくてソフトと一体となった柔軟に気候変動に対処できる国土をつくる。あるいは緩和と適応システムを社会に組み込むための都市構造の変革、森林と中山間地を社会全体で支えて保全していくといったようなことでございます。
 また、健康で快適な国民生活を支えるという意味では、1つは生活弱者を気候変動の影響から守る。あるいは地域の活力を維持、それから、さらに活発にするために多様な農業活動を展開、それから、公共交通のモビリティの改善、そういった経済、健康、福祉にわたる生活基礎を適応型に変換していくということでございます。そのためには、まず低炭素適応社会像を提示しつつ、地域産業を育てる。あるいは感染症予防・対策を推進し、生活上の不安を解消する。それから、快適な適応型住居を提供していくといったようなことでございます。
 4ページでございますが、そういったことを実施するためには、これは公共セクターだけがやっていくのではなくて、国民1人1人が適応行動に参加するということでございます。そのためには情報の共有化、国民参加への支援を社会の隅々までに行き渡らせるのが必要ではないかという認識でございます。その方向性としては、例えば学校、企業等で社会全体の教育プログラムの充実、意識高揚、あるいは国民の自主的な行動のために温暖化・気候変動に対する最新情報の提供、共有化。適応活動を知り、参加するための情報ツールの充実、あるいは適応型の社会の構築を引っ張るコミュニティリーダーの育成、そういうことで社会全体が適応に向かって1人1人手を携えていくということが必要ではないかということでございます。
 4ページの下でございますけれども、また、こういう適応行動というのは日本だけでなし得るわけではなくて、世界全体で取り組んで初めて緩和と適応の両輪となって働く、機能するということが達成されるわけでございます。そのためにアジア・太平洋、そういった地域他で適応連帯のネットワークを強化・構築していくことが必要ではないかという認識でございます。そのためには気候変動適応型の社会の実現に向けた対応を推進する、あるいは適応方針に関する科学的な情報・知見を各国が共有・活用できるようにしていくといったようなことが必要ではないかということでございます。
 5ページでございますけれども、そういうことを実施、今まで言った1から4の事柄を実施するためにどうしても必要な必須技術、あるいは必要な連携というのがございます。例えば適応策の計画実施に不可欠なモニタリング能力、宇宙から海洋まで力を合わせてモニタリングをしていくということ。あるいは気候予測モデルの長期、中短期、あるいは地域的な予測をするためのモデルの高精度化、あるいは国土基盤情報の整備の共有化を達成しつつ、在来技術と先端技術を統合するということが大事ではないかと考えてございます。
 その5ページから下は、そういう全体的な枠組みの中で特に急がなければいけないこと、例えば来年度予算でもってといったような、そういう身近なところで考えなければいけないところを特出しをしてございます。1つはグリーン社会インフラの強化ということで、緑の内需拡大というフレーズでございますけれども、3つの柱がございます。1つは安全・安心な水環境社会。例えば宇宙から海洋までつながった革新的地球観測技術、あるいは統合的水循環、巨大災害危機管理、ナノテクを駆使した低コストの水浄化技術、あるいは安全・安心な総合水資源管理技術、そういった安全・安心な水環境社会をつくっていくということでございます。
 水の次は豊かな緑環境社会ということで、農業の技術革新によります地産地消の推進や農作物、生産・流通・消費の革新化、あるいは遺伝子等の組み換えを使った品種改良等、資源循環型グリーンシステム、森林・生態系の再生技術の活用等でございます。また、持続可能なエネルギーがこれからますます重要になってくるということで、住宅やビルのゼロエミッション化を測りつつ、風力・地熱等の多様な代替エネルギー技術を開発していく。また、そうした開発したエネルギーを賢く使っていくということで、例えば都市のエネルギー管理ネットワークということをあわせて実施いたしまして、この3つでもってグリーンインフラ革命といったようなものの方向に進んでいく必要があるのではないかということでございます。
 また、世界をリードする環境先進都市、6ページでございますけれども、国民が住みたくなる未来都市の実現ということで、適応したから住みづらくなったということではなくて、適応したらほんとうに住みやすくなった、あるいはこういうところにぜひ自分の生活の基礎を置いてみたい、そういう都市をつくっていこうということでございます。1つはコンパクト都市ということでグリーン交通システム、あるいは新公共交通網、それから、変化予測技術を駆使した都市計画技術でコンパクトな住みやすい都市をつくっていく。また、従来のインフラに加えまして、さまざまな情報技術を使いまして気候予測、あるいは次世代GISと一体となった災害情報共通プラットフォームの構築、あるいは地震観測等のシステムと予測モデルの組み合わせ、そういったものでハードだけではなくてソフトも合わせて防災を達成していくということでございます。
 また、そういう中で暮らす人々の生活でありますけれども、複合健康影響予測システム、あるいはいろいろな病気の予防・防御システム、あるいは熱中症対策、パーソナルモビリティの工夫といったようなことで、いつまでも健康で長生きできる、そういう都市をつくっていきたいということでございます。こういうことを通じまして気候変動適応型の環境未来都市を構築していきたいということでございます。
 特に最後の2つのスライドでございますが、そういったものを使いながら、今後予算を、資源配分をしていく必要があるということで、これは今年度の資源配分方針の案でございますけれども、ここに気候変動適応型社会の実現を目指す適応策に資する技術開発ということで、こういった今まで申しましたようなことをこれからぜひ進めていっていただきたいということを示しているところでございます。
 以上でございます。

【谷室長】
 続きまして、文部科学省でございます。8ページから文科省本省のほうで推進しております事業を2つご紹介させていただきます。1つ目が地球観測システム構築推進プランでございます。これはGEOSSの10年実施計画と軌を一にいたしまして開始をしたもので、プロジェクトとしては大きく3つの内容になってございます。1つ目は地球温暖化・炭素循環観測研究プロジェクト、2つ目は、水循環の気候変動観測研究プロジェクト、3つ目は対流圏の大気変化観測研究プロジェクトでございます。
 GEOSSへの貢献ということを念頭に置きまして、先導的な技術開発、また、観測の空白域を埋めるということで取り組んでまいりました。特に平成22年度の方向性は、GEOSS全体の活動の進捗も踏まえまして、新たな展開をしたいと思っております。1つは、ラクイラサミット、それから、その後の主要経済国フォーラムでも非常に話題になっておりますけれども、先進国の2050年までの温室効果ガスの削減については、80%以上という目標を合意しております。こういった議論の土台になっておりますのは陸域、あるいは海洋のCO2の吸収というものが前提になっているわけでございますけれども、そこにはまだまだ不確定性があるということでございますので、その点についてはきちんと検証するという取り組みをしっかりやるということを1つの柱としたいと思っております。
 したがいまして、海洋生態系を考慮した炭素循環観測とモデル構築ということで、最終的にはモデルに持っていく必要があるということですが、海洋の生態系も考慮して炭素循環をきちんと高度化をするという取り組みを考えてございます。また、CO2のセンサの小型化という技術開発を進めており、現在はブイに搭載をするというレベルでございますけれども、最終的には例えばARGOフロートに搭載可能なレベルにまで持っていくということを取り組みの1つとして考えてございます。
 また、陸域の関係では、生態系の観測ネットワークの構築、それからモデル開発というものをもう一つの柱と考えてございまして、炭素循環観測は陸域では、今、相当程度進んでいるわけですけれども、生態系との関係ではもう少し広めに見る必要があるのではないかという問題意識でございまして、これも最終的にはモデル化まで持っていければということと、生態系の様々な観測データを電子化してデータベースをつくる、あるいはネットワーク化を図るというところを考えてございます。
 また、気候変動メカニズム解明のための海洋統合観測ということにつきましては、1つのキーワードとして海洋酸性化というのがあるわけでございますけれども、海洋の統合観測、物理量のみならず、生態系についても観測をするというものを現在、検討中でございます。
 それから9ページに、従来取り組んでまいりました成果を列挙させていただいております。先ほどご紹介させていただきましたCO2センサの開発でありますとか、あるいはライダーの開発、それから、観測網の展開をするといった取り組みをそれぞれしてきております。
 例えばインド洋のダイポールモードの観測、これは発生予測までできるという成果を出しておりますし、インドネシアでは海大陸のレーダネットワークの構築ということで、これは地元のキャパシティ・ビルディングにも非常に大きく貢献をした取り組みでございます。
 続いて2つ目の取り組みでございますが、データ統合・解析システムでございます。これは観測そのものというよりは、観測データをさらに社会に還元をしていくという部分の取り組みでございますけれども、観測のデータ、それから、気候変動予測のデータ、これは非常に多種多様にわたり、また、超大容量でございますので、そういったデータを組み合わせて社会に、あるいは行政、政治の意思決定に使える有用な情報としてつくり出していくという取り組みでございます。ペタバイトレベルの非常に大きな解析空間の整備を進めております。
 また、システムの整備と並行いたしまして、このシステムを使って実証的にどのような情報を生み出すことができるのかということを並行して取り組んでございます。具体的には10ページの下にリストでお示ししておりますが、大きく分けますと気候変動・地球温暖化、水・物質循環と流域圏管理、さらに生態系管理といった分野でそれぞれ記しておりますような課題、それから成果を出してきているということでございます。
 11ページ、12ページに少し詳しめの例をお示ししてございます。気候変動・地球温暖化分野の例といたしまして、温室効果ガスの発生源・吸収強度の推定に取り組んでいる課題でございます。衛星観測データ、再解析データ、地上観測データといったものを組み合わせることによって物質循環モデルをベースに二酸化炭素、あるいはメタンの発生源・吸収強度といったものを推定するというものでございます。
 11ページの下には、水・物質循環と流域圏管理分野ということで、気象予報データ、衛星観測データ、レーダ雨量観測データ、河川流量情報などの非常に多様かつ大容量のデータを使って河川流域の降雨予測を高度化する。また、それをもとに河川流量のモデルを構築し、最終的にダムの管理に活用していくという取り組みがされてございます。
 12ページは生態系の分野でございます。農作物の生産支援管理ということで、農地データ、これはフィールドサーバーからのデータといった非常にローカルで具体的なものも取り込むような形になってございますが、こういった多種多様なデータを組み合わせて、作物の栽培可能性予測を行うツールを開発してございます。
 さらに国際的な協力ということで、GEOSSの目的である国際的な統合に向けた取り組みの一例といたしまして、このデータ統合・解析システムを活用してアジアでの水循環を各国において具体的な流域を設定して、そこに適応していくという取り組みをされているということでご紹介させていただきました。
 以上でございます。
 続きまして、宇宙航空研究開発機構のほうからお願いいたします。

【宇宙航空研究開発機構(福田センター長)】
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)でございます。資料の14ページからでございます。私ども宇宙航空研究開発機構は、地球観測のうちでも宇宙から、衛星からの観測システムを開発、運用し、使いやすい形のデータに変えて提供申し上げるというところを担当してございますが、まず14ページの下のほうで全体の構造を書いてございます。当然のことでございますけれども、もともとの地球観測の推進戦略に基づいてそれぞれの衛星シリーズを考えてございますが、現在のところ、特に地球温暖化・炭素循環変化の観測ということで、温室効果ガス観測技術衛星GOSAT「いぶき」を打ち上げ、運用しております。それから、気候変動・水循環の分野では、現在、2つのセンサを運用しておりまして、それに引き続く衛星群の開発を進めているという状態でございます。
 それから、災害の防止・軽減分野では、現在、ALOS「だいち」を運用してございますが、ALOS後継の開発にも着手しているということでございます。こういう図表で書きますと、いかにもそれぞれの分野で分離しているような図になっておりますが、実際のところは、それぞれのデータというのは非常に有機的に連携しておりますので、また、この重点分野以外のいろいろな分野にもお使いいただけるということになってございます。先ほど内閣府のほうからもご紹介がございましたけれども、今後の気候変動適応型社会の実現に向けても、このような宇宙からのモニタリングというのは非常に重要な役割を担っていると認識しておりまして、今後これをさらに発展させたいと考えているところでございます。
 15ページのほうでございますが、上のほうは国際的なGEOSSの枠組みの中での整理を書いてございまして、これはご参考として後でごらんいただければよろしいかと思いますが、いずれにせよ衛星観測というのはグローバルな取り組みでございまして、それを種々の国際協力の中で進めているということでございます。例えば災害関係ではアジア地域での情報共有の仕組みでございますセンチネル・アジア、それから、世界全体で、宇宙機関同士で災害情報を交換する国際災害チャータのような枠組みで推進してございますし、そのほか米欧諸国との協力、あるいはアジア・太平洋諸国との協力のもとでそれぞれのプロジェクトを進めているということをご紹介してございます。
 15ページの下のほうのスケジュールでございますが、現状及び将来の計画を簡単に表示してございます。この表の中で緑色で書かれておりますのが現在運用中の衛星でございまして、上からALOS「だいち」、それから、降雨レーダと書いてございますが、これは熱帯降雨観測衛星、米国、NASAの衛星でございますが、それに搭載した降雨レーダの運用。それから、やはり同じく米国、NASAのAqua衛星に搭載いたしましたマイクロ波放射計を運用しております。特にALOSに関しましては打ち上げ後3年半たちまして、現状、非常に順調かつ健康な状態で運用を継続してございますし、TRMMの降雨レーダにつきましては、既に11年半を経過し、これも非常に正常に動いてございます。
 それから、マイクロ波放射計AMSR-Eにつきましては既に7年を超えているということで、いずれにせよ、このような安定して継続的なデータが蓄積、また、ご提供できているということは、特に気候変動のような長い視野で観測を継続しなければならないというところには重要なポイントであると思っております。一番下のところに今年の1月に打ち上げましたGOSAT「いぶき」が出ておりますが、GOSAT「いぶき」につきましては現在、初期段階の校正検証、キャリブレーションをやっておりまして、間もなくキャリブレーションが終了すればデータをお出しするというフェーズに移っていくと考えてございます。
 以上が現在運用中の衛星でございますけれども、いずれもその後継たる衛星の開発ないしは研究に着手してございまして、継続的なデータの提供ということに特に配意しながら計画を進めているところでございます。
 先ほど少し申し上げましたけれども、16ページの上のほうでこれらの衛星シリーズが、特に地球温暖化から水循環の変化につながり、それが極端現象等でまた災害等につながる場合もあるわけでございますが、そういう地球全体の仕組みの中で動いていくさまざまな現象をそれぞれの衛星シリーズによって連携しながら観測するということを図示してございます。もちろん、その観測だけということだけでは、それを最終的に社会で役立てていただくことはできないわけでございますので、このように連携して観測した衛星からのデータ、それから地上のデータ、モデルとの統合によりまして最終的に有用な情報を創出するという取り組みがなされておりますので、それらに対してお使いいただくのに適したデータの形に変換いたしまして、提供差し上げるというのを私どもの目標にしてございます。
 幾つかの取り組みをご紹介したいと思いますが、16ページの下のほう、これは全世界の雨の分布速報というものでございます。もともとこの世界の雨分布の速報のアルゴリズム、システム自体はCRESTの枠組みで開発されたものでございますけれども、現在、そのシステムの運用自体を私どもでお引き受けいたしまして、引き続き公開を続けております。これはグローバルな雨分布でございますけれども、実時間から4時間おくれのデータを1時間単位で更新して、これを公開するということでございます。後ほど土木研究所からもご紹介があると思いますが、このようなデータを洪水の予測、対策等に有効に使っていただいていると聞いてございます。
 それから、17ページのほうでございますけれども、これは生態系の観測の取り組みの例でございます。私どもは生態系の観測に有効なデータというものを提供差し上げる目的で、現在、GCOM-Cという衛星、これは計画中でございまして、今、開発に着手したところでございますけれども、これを使っていただくために、その同種のセンサである、現在、我々が入手できます米国のセンサを使いまして、例えば、光合成の有効放射量ですとか、あるいは地表面、海表面の温度、水分量、そういったような情報に衛星データから変換いたしまして提供するようなアルゴリズムを検討しておりまして、実際、米国衛星を使ったこのような情報については、既に公表して提供差し上げているところでございます。これについては、特に地上の観測との連携、共同というのを始めてございまして、これも国立環境研究所との共同研究を始めたところでございます。
 それから、17ページの下のほうでございますが、これはやはり長期観測の例を1つお示ししてございます。例えばオーストラリアの干ばつに関して、長期観測により、衛星データにより、かなり傾向がわかってくるというような例を1つご紹介してございます。
 以上でございます。

【谷室長】
 ありがとうございました。
 続いて、海洋研究開発機構のほうからお願いいたします。

【海洋研究開発機構(千葉チームリーダー)】
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の観測の取り組みについてご説明いたします。お手持ちの資料の20ページ、上の図をごらんくださいませ。まず、物質循環と生態系変動に関する時系列観測の計画についてお話しいたします。この図をごらんいただいてわかりますとおり、調査船、あるいは係留系、ブイなどを用いた自動観測を組み合わせることにより、物理、化学、生物過程の相互作用を総合的に理解することにより、適応策立案へ向けて資することを目標としています。
 次に下の図をごらんください。本観測の計画では日本の周辺、亜寒帯海域と亜熱帯海域、2つの海域に定点を設けて観測を実施します。この定点では異なる生態系構造、異なる海洋構造を有していまして、例えば温暖化でありますとか、塩素でありますとか、いろいろなスケールの気候変動に対するその応答メカニズムというのがこの海域によって異なることが予測されます。そして、このような地域特性をとらえることが将来的には全球的な生態系変動の予測をする上で重要となってきます。
 まず、20ページの下のほうですが、そうした気候変動に対して温暖化、酸性化、周期変動、さまざまな気候変動に対して生態系が変化しているというのは、これまでも私どもの研究などによりまして既に報告されていることなのですが、その生態系、あるいは物理環境の変化によってCO2の海洋による吸収能力がどう変わるのか、そしてその深海への輸送能力がどう変わるのかということに関しては、まだよくわかっておりません。というのは、生態系の振る舞いが複雑であるからです。その結果、生態系が変わった結果、地球環境にどのようなフィードバックをもたらすのかということに関しては、まず、私たちが喫緊に取り組まなければいけない課題である。そこを重点的に観測することを目標にしております。
 次に21ページですが、具体的な観測のアプローチとしては、これらの測定は季節変動が非常に大きいところです。ですから、季節を通した観測を継続して経年的に行う必要がある。22年度はまず秋と冬の観測を調査船「みらい」によって計画しております。具体的な取り組みと観測の取り組みとしては、係留系に設置した自動観測システムによる高頻度の連続観測、そしてそれでは測り切れない他項目に関しては季節的に「みらい」を持っていって現場観測を行う。この2つのアプローチを組み合わせて実施することにより、初めて詳細な物理、化学、生物過程の相互作用が明らかになるということです。
 次に21ページの下をごらんください。こちらが2つのアプローチのうち、自動観測システムによる高頻度連続観測の概要です。まず、現時点で2つの係留系を設置しております。右側のほうが、POPPS係留系というのは主に基礎生産に関するデータを自動的に昇降するブイシステムを使いまして、この基礎生産に関する断面図の情報を連続的にとるものです。左側のトラップ係留系は、沈降粒子の量を継続的に測り、その質的・量的な量を明らかにします。今後の展望としましては、化学・生物過程の自動測定をもっと強化する必要がある。ですから、そのための技術開発と運用が必須になります。具体的に言えば、今のシステムに加えて工学的に粒子を測るトラップを設置するとか、生物・化学成分の測定項目を乗せたARGOフロートの形のようなものを開発、運用するなどが考えられます。
 次に22ページの上のほうをごらんください。こちらは船舶による多項目集中観測、それから、生物過程のプロセス研究に関する概要です。左にリストアップしてありますように、生物過程というのは複雑ですから、いろいろな項目を一遍にはかる必要がある。また、現場で観測するだけではなくて線量で実験をして生物の速度、生産速度であるとか、そういうものを測る必要があります。そのためにはJAMSTECの内部のマンパワーだけではなく、公募課題によって外部研究者とのネットワークを強化して実施し、その体制を築くことが必要となります。JAMSTECはこの観測計画を主導し、それから、この「みらい」という船舶、この観測定点という理想的なプラットフォームを提供することによって、日本の海洋物質循環研究コミュニティのフォーカルポイントとなることを目指します。
 次に22ページの下をごらんください。時系列観測で得たデータというのは、あくまで点のデータ、空間的には点のデータであるのですが、その得たデータを衛星のデータ、あるいは4次元同化データと組み合わせることによってデータの時空間ギャップを補完します。また、長期変動研究をしているグループと連携することにより、季節から経年、数十年、数百年スケールの変動過程の理解を進めます。そして、変動とフィードバック過程の理解が進んだ上で得た情報をモデルのほうに提供し、モデルにインプットし、将来予測に向けて予測モデルの精度を上げ、適応策の立案へと資したいと考えています。
 さらに、私どもの研究観測によって地域的特性の理解が進みましたところで、右側の図なのですが、物質循環研究に関する、例えばOceanSITESのような国際定点ネットワークと連携しまして、地球規模の物質循環と生態系変動の理解へと向けていきたい。そのような計画であります。

【海洋研究開発機構(升本プログラムディレクター)】
 引き続きJAMSTECのもう一つの重点的な取り組みとして、気候変動の理解と予測に貢献する観測網に関してご説明いたします。ここで言う気候変動とは、例えば太平洋のエルニーニョ現象のような数年程度の気候変動、あるいは10年程度の時間規模の変動というものを考えております。このような気候変動というのは、我々の日々の生活、社会経済活動と非常に密接に絡むものです。
 23ページの上のスライドにそのイメージを描きましたが、この気候変動の直接的な影響は、暑い夏であるとか、寒い冬といったような数カ月程度の季節的なものとして、いろいろな影響を与えます。また間接的には、より時間スケールの短い集中豪雨であるとか、台風、竜巻といったような異常気象を引き起こす背景となるものとして非常に重要な役割を果たしております。この異常気象などを引き起こす気候変動ですが、熱帯域で非常に顕著なものとしてエルニーニョ、あるいはインド洋のダイポールモードなどが起こります。その影響が大気のテレコネクションによって地球全体に波及しますので、こうしたことの理解と予測というものが喫緊の課題になっております。
 この気候変動の理解と予測のための観測網ということで、23ページ下のスライドになりますが、我々では熱帯域、特に海洋水温・塩分場の4次元データを取得して、これを予測モデルへ組み込むという観測を取り組んでおります。特に太平洋に関しましては、TAO、TRITON Arrayと呼ばれるもので西太平洋部分をカバーしておりますし、インド洋ではRAMA Arrayと言われるものの一部を担い、特にインド洋のブイ観測の先陣を切ったということがこれまで取り組みとして挙げられます。
 このブイアレイの観測網に関しましては、時間スケールのさまざまなものを観測できるということと、海の中の4次元データ、あるいは大気との相互作用の観測項目を得られるという非常に重要な役割を担っております。この観測アレイの今後の取り組みに関しましては、一番下の右側に紫色の四角で囲ってある場所に、来年度だけではなく、より中長期的な視点も含めて書いてありますが、やはりこのブイアレイの維持、拡張というものが非常に重要なポイントとなっております。
 特に観測点の強化、また、インド洋の図で中が抜けている印で示されているものはまだ設置されていないブイですが、これらの地点に設置し、ブイアレイを完成させて熱帯全体をカバーするということが予測精度の向上に飛躍的に貢献すると考えております。また、欠測のないデータを提供することや、さまざまな物理量のデータを提供するということが予測精度の向上に非常に役に立つこと、また、このようなブイアレイの国際的な観測拠点を構築するということが効率化のためにも必要だろうと考えております。
 24ページの上に、関連するそのほかの観測について示しましたが、我々JAMSTECではARGOフロートの投入ということも積極的に推進しております。現在、ARGOフロートは全世界で3,300台以上が入っておりまして、そのうちの355台を日本が入れている状況です。このARGOフロートに関しましては、熱帯域以外の中高緯度域まで含めて海洋の4次元データを構築するという非常に基盤的な観測網となっております。また、右側に示した高精度船舶観測としては、海洋の深層まで含めた精度の高い観測を行って、海洋の温暖化、あるいは長期変動のシグナルを観測するということを実施しております。これに関しましては、地球化学的な研究、あるいは生態系変動ということに関する研究と連携して海洋の内部での変動ということを観測するということを目指しております。
 これらに関しましても将来的な方向性を右下に書きましたが、やはり観測網を維持するということと、ARGOに関しましては、さらに技術的な開発を経てロボット的な、自己判断のできるARGOフロートなどを構築することも必要かと考えております。これらの観測網の強化を通じて、気候変動の理解を促進することと予測精度の向上への貢献を目指すことが我々の来年度以降のねらいとなっております。
 以上です。

【谷室長】
 では、続いて、経済産業省からお願いいたします。

【経済産業省(汐川(財)資源・環境観測解析センター部長)】
 それでは、お手元の資料、26ページの下をごらんください。現在、経済産業省で運用しております観測センサは、ASTERとPALSARの2つがございます。ASTERは米国の衛星Terraに搭載されております光学センサで、下の図にありますように可視近赤外、短波長赤外、熱赤外、3つのシステムからなっております。その特徴といたしましては、可視では立体視の画像がとれること、短波長赤外と熱赤外では複数のバンドで観測をしているという特徴がございます。本年で10年目の運用に入っているものでございます。
 また、右側のPALSARはALOSに搭載しております合成開口レーダでJAXAと共同開発しているもので、世界唯一のLバンドのレーダでございます。いずれのセンサから得られるデータも既に140万、150万というオーダーのデータを入手しております。これらのデータを使いました幾つかの利用事例を蓄積しております。27ページの上ですが、資源探査の事例です。左側の絵はパキスタンの例なのですが、ここではASTERのスペクトルの情報から地質を分類し、なおかつステレオのデータから得られます標高データを用いまして、その地質の地下への連続性を推定いたしまして、左の下の赤で囲ってあるところにありますように、現在、生産中の石油の下にもう一つ有望な石油があるだろうということで、それから先の調査を進めているような事例でございます。
 また、右側の例ですが、これはアフリカのリビアで石油の鉱区を取得する際の意思決定に衛星データを利用した例でございます。特にリビアのような国は既存資料が非常に乏しい、あるいはその精度が非常に悪いということで、鉱区を取得する際に非常にリスクが高い地域でございます。こういうところに対しまして、衛星データを使い石油の有望地を抽出いたしまして、赤の四角で囲っているのが国際入札にかけられた鉱区の場所でございますが、そこの黄色でオーバーレイしたところを有望地といたしまして入札の意思決定に民間企業が使った事例でございます。残念ながら入札は成功には至らなかったと聞いておりますが、このような資源分野では衛星データは定常的に利用されております。
 それ以外に膨大なデータがございますので、沿岸環境の監視であったり、氷河のモニタリングであったり、ヒートアイランドであったり、さまざまな分野でASTER、PALSARの特徴を利用した事例研究を進めておりますが、その一例としまして27ページの下で、ASTERで撮影していましたオーストラリアの森林火災の事例をご紹介いたします。これは今年の2月に撮影したもので、メルボルンの北東の森林火災の例です。画像で白く見えますのは、火事から上がっている白い煙でございます。赤いところは森林のところです。下にあります青い紺色のところというのは、既に焼けてしまった、消失した森林を示しております。なおかつASTERは熱赤外も同時にとれておりますので、そのデータからの高温域を抽出いたしまして、そこを黄色で示したものをオーバーレイしてございます。すなわち、現在、一番燃えているところをこの絵で示している事例でございます。
 次の28ページですが、このASTERも10年目になりますけれども、この後継のセンサとして現在ハイパースペクトルのセンサというものを開発しております。これは熱赤外はないのですけれども、可視の周波数帯域から短波長の帯域まで185の連続したスペクトルバンドでとるというような先進的なセンサです。このデータから、その上の絵の右側にありますように、マルチスペクトルからは地上にあるものの分類まではできると思いますが、ハイパースペクトルを使いまして、その識別まで持っていこうというようなものでございます。現在、ほぼ同じような仕様のセンサがドイツ並びにイタリアでも開発が進められております。
 さて、そのハイパースペクトルのデータを使いますと、どういう利点があるのかというもので2つの事例をご紹介いたします。28ページの下が、これは金属の資源探査に使われた事例でございます。金属の資源探査の場合は、地表にあります粘土を細かく識別することが非常に探査上有効な情報になります。下の右側の絵はASTERで、この地域の粘土分類をしたものでございます。上にモンモリロナイト、下にアルーナイトと書いてありますが、それぞれが色で識別されております。ただし、ここはこのモンモリロナイトというような粘土そのものではなくてグループというふうにご理解ください。これだけでも非常に資源探査には貴重な情報なのですが、左の絵にあるのはNASA JPLのAVIRISという航空機搭載のハイパースペクトルセンサで観測したデータを解析した事例です。凡例で見てわかりますように、圧倒的に識別できる粘土が多くなっております。このように資源分野では、このハイパースペクトルのデータが手に入りますと非常に効率的に精度の高い探査ができると期待しております。
 また、29ページの上ですが、そのほかの分類として植物の細かな分類に使えるだろうということで研究を進めております。これは国内の混合林のところを航空機のハイパースペクトルセンサで撮影した事例でございます。左側は普通の目で見える可視画像ですが、これではあまり種類の分類はできませんが、それぞれの樹木のスペクトルの違いを細かく分析しまして、右側のように細かな分類結果を得られる可能性を得ております。
 以上が経済産業省の大まかな概要ですが、トピックスとしましてASTERのGDEMを紹介させていただきます。冒頭に申しましたようにASTERは立体視のデータをとることができる、なおかつ10年余りとってきたということで膨大なデータがございます。立体視のデータからは地表の高さの情報、DEMというものが取得できますので、これを全球のシームレスなDEMをつくろうという計画を立ち上げまして、NASAと共同で2年間かけて作成しました。ある地点ではASTERのデータというのは数十シーン既にとられていますので、それからつくられますDEMを重ね合わせることで精度が高くなる、あるいは雲があるというようなところを全部、欠損域をなくすことができるというものでございます。
 その結果、30ページの上ですが、緑の枠で囲ってございますが、現在、全球の陸域を30メートルのグリッドに1つの標高データを与えるというものが完成いたしました。これは現在手に入るスペースシャトルで使われていますSRTMのデータの90メートルの分解能からは9倍以上の精度になっておりますし、データの欠損域もはるかに少ないものでございます。30ページの下ですが、これらのDEMを使いまして我々はさまざまな分野での利用を期待しております。例えば火山の溶岩流のモニタリング、シミュレーションであったり、洪水とか、水管理のシミュレーション等に活用されることを期待しております。これらの事例につきましては、31ページの上にありますようにNASAと共同でGEOにもアナウンスをしております。
 最後ですが、先月の末にNASAと同時に公開を行いました。そこに書いてありますような手順で簡単に入手が可能で、1つのデータは緯度経度が1度×1度の約100キロ四方のデータとなっております。これは無料で手に入るということもありまして、現在まで10日余りしかたっておりませんが、非常に多くの方にダウンロード等をされているものでございます。
 以上です。

【谷室長】
 前半のご説明は以上でございます。

【小池(勲)部会長】
 それでは、5つの機関からご説明いただきましたけれども、一応、ここで切らせていただいて、今までのご説明に対して何かご質問、あるいはコメントがありましたらお願いいたします。

【井上委員】
 この委員会でも地球観測では長期継続的な観測の重要性を訴えていますし、今回の総合科学技術会議の報告でも問題点といいますか、課題として長期的な観測を保証するための資金の確保、人材、あるいは老朽化対策、そういうふうな点が述べられています。私もまさにそうだと思うのですが、今までの報告の中で長期観測のプログラムを持っていらっしゃるのはJAXA、あるいはASTERについては経産省もお持ちのようなのですけれども、気象庁は、おそらく最も長期にやるという覚悟を決めていらっしゃると思うのであまり指摘することもないと思うんです。JAMSTECのほうは、こういうふうな観測を長期にやっていく、そういうふうな長期的なプログラムというのはあるのでしょうか。それからこのあと、環境省等々の報告がありますけれども、そのときにはぜひそのあたりのことも述べていただきたいと希望いたします。
 以上です。

【小池(勲)部会長】
 JAMSTECのほうから何かコメントございますか。

【海洋研究開発機構(千葉チームリーダー)】
 物質循環と生態系変動の時系列観測ですが、もちろん時系列観測である以上、経年的に継続していくことが必須であります。ただし、それが計画が将来にわたって約束されているわけではもちろんございませんで、継続していくためのシステムとか、枠組みを必ずつくらなければいけないということを考えている次第です。

【海洋研究開発機構(升本プログラムディレクター)】
 また、気候変動の観測に関しましても、やはり長期のデータは不可欠ですので、長期に計測するということは考えに入っております。

【小池(勲)部会長】
 今、赤道域でブイを展開されていますけれども、これも何年かごとの繰り返しでずっと継続されているのですか。

【海洋研究開発機構(升本プログラムディレクター)】
 ブイそのものは毎年1回のペースで入れかえております。計画そのものはやはり予算の関係もありますので、数年に一度ぐらいのくくりで継続という形を今までとっております。

【小池(勲)部会長】
 これは太平洋の向こう側のほうはアメリカがやっていますけれども、アメリカと日本との間で長期的な運用に対する取り決めみたいなものというのはされているのですか。

【海洋研究開発機構(升本プログラムディレクター)】
 はい。アメリカ側はNOAAが担当しておりますけれども、NOAAとJAMSTECの間でのMOUのもとで長期に維持していこうという形で進めております。

【小池(勲)部会長】
 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。

【小池(俊)委員】
 今、井上委員からご指摘があったことなのですが、そこは非常に大事で、そのための枠組みをある意味でおつくりになっていると思いますので、少し加えていただいたほうがいいかなと思いますが、文部科学省の地球観測システム構築推進プランの中の幾つかがJICAとJSTの地球規模課題対応国際科学技術協力事業というODAを使って長期的に相手国のキャパシティ・ビルディングをやりながら動かしているという枠組みができておりますので、今の井上委員の指摘は、そういう枠組みでも展開されつつあるということは認識しておいたほうがいいのではないかなと思います。

【小池(勲)部会長】
 ただ、私が承知している限りでは、例えばインドネシアのレーダ網ですけれども、これはJICA/JST事業でたしか5年計画ですね。

【小池(俊)委員】
 はい。

【小池(勲)部会長】
 ですから、その意味では5年たった後は保証していないということになりますが。

【小池(俊)委員】
 基本的にODAの枠組みは相手国がそれを維持し続けるというのが基本的な枠組みですよね。ですから、自立発展性を相手国が持ち得る観測システムを、器材供用と人材能力開発をしながら、あるいは専門家を派遣しながらやっていくという枠組みです。日本の科学技術をそういう枠組みに使おうというのができておりますので、日本がずっと金を出し続けるという枠組みではないと承知しています。

【小池(勲)部会長】
 ほかに何か。深澤委員、どうぞ。

【深澤委員】
 今の長期の井上委員の発言に関してですけれども、例えばどんなものでも長期に測るというのは2つの面があると思うんですよ。つまり、測り続けることでその変動を押し出すために長期に必要である。それは非常に重要なことでどこかが続けなければいけない。ただ、それと同時に測ることに対するニーズと、それから、何を測るともっとよいのか。そして、最初に内閣府からの説明がありましたように、どんなものでも常に観測方法というのは陳腐化しますよね。
 それがどのくらいのスケールで来るのかということを考えたときには、やはり測り続ける意思と、それから、測り方というのはやっぱり別に考えざるを得ないのかなと思います。ですから、例えば今、熱帯海洋ではトライトン、アトラスという定置ブイによる観測網がありますけれども、これがこの後100年間、同じようなもので測り続けられるとは思わない。ただし、それが測っている要素というものは継続して測られるべき。それが多分、気候変動に対する測り方の考え方ではないかなと思います。それで、例えば衛星のGCOMが出てきたり、あるいはGOSATが出てきたり、そういう形で常にイノベーションがあって継続するという気がします。

【小池(勲)部会長】
 ありがとうございます。どうぞ、安岡先生。

【安岡委員】
 冒頭に話をされました総合科学技術会議の提案についてお伺いしたいと思います。適応型の社会をつくるということは非常に重要でぜひ進めていただきたいと思います。ただ、適応型の社会にするための観測システムそのもののあり方というのは、従来の観測とは少し違ってくるだろうと思います。それはなぜかというと、まず適応策を適応する場所というのがかなり地域的になってしまうということ。それから、その適応策がちゃんとうまくいっているかどうかという観測をした上でのフィードバックが要る。そうすると、従来のオープンループ的な観測に比べて適応を考えた観測システムというのはフィードバックの中に入れなければいけないだろうという気がします。この辺についての適応型社会をつくるための観測システムのあり方そのものについては、総合科学技術会議のほうでも検討はされるんでしょうか。

【内閣府(廣木参事官)】
 観測システム固有というわけではないのですが、全体の考え方として、予測というのは常にローリングしているものでありますので、今の観測結果でつくった計画というのは、また見直さなければいけない。5年後、10年後で見直したら、それで計画そのものがまた変化していく、そういう考えをとっております。ですから、その大枠の中でその観測というのもあわせてフィードバックしていかなければいけないというのが基本的な考え方でございます。それは今、中間取りまとめで大枠を示したのですが、今後、最終報告に向けて作業の中で検討されるということで、私ども考えてございます。

【小池(勲)部会長】
 よろしいですか。

【安岡委員】
 はい。

【小池(勲)部会長】
 それでは、少し時間が押しておりますので、引き続きご説明をお願いしたいと思います。

【谷室長】
 では、国土交通省からお願いいたします。

【国土交通省(田中課長補佐)】
 それでは、国土交通省河川局でございます。33ページをお願いいたします。高解像度Xバンドマルチパラメータレーダによる局所的な大雨や集中豪雨の監視・観測の強化ということで取り組みを紹介させていただきます。
 34ページ目でございます。河川局におきましては、現場の河川の管理を持っており、最近多くなっている集中豪雨、また、局所的な大雨に対して監視をいかに強化していくかということで取り組みを進めています。34ページ目の下でございますが、近年の日降水量、時間雨量をまとめたものでございます。これは1900年からの30年と最近の30年を比較すると、日降水量100ミリを超える日数、200ミリを超えている日数が1.2倍及び1.5倍になっています。また、時間雨量50ミリ、80ミリ、100ミリという大雨についても10年のオーダーで見た場合、非常な増加傾向にあることを示しています。
 35ページ目ですが、こちらは昨年非常に大きな災害があったという例を幾つか載せております。35ページ目の上の図では、石川県の浅野川の氾濫で、時間雨量100ミリを超えるような局所的な集中豪雨が、また、愛知県の岡崎市においては1時間雨量として146.5ミリということで猛烈な降雨が記録され、非常に大きな被害があったものでございます。
 その下については、都賀川でございますが、こちらはかなりマスコミ等でも報道されましたが、結果として児童を含む5名が死亡しております。こちらは14時30分から15時、特に14時40分からの10分間、非常に強い降雨があったということで、この40分からの10分間に水位が1.34メートル急上昇し、その当時のカメラの映像を載せておりますけれども、40分で水位がマイナス0.33のところが50分には1.1メートルを超えるような水位になったというものでございます。
 36ページ目でございます。こちらは都賀川の事故の概要ですが、先ほど申したとおり、14時30分の段階では雨は観測されておらず、40分、50分と急激に大きな雨が観測されています。36ページ目は局所的な大雨や集中豪雨を、台風、前線、また集中豪雨、局地的な大雨という形でタイプ分けをしておりまして、特に都賀川や浅野川、岡崎の豪雨といった、まさに1時間雨量とか3時間雨量、こういったものに対してどう対応するか、また、中小河川など、観測がなかなか綿密に行われていないようなところでどのような対応をしていくかを重要課題として取り組みを進めています。
 次に37ページ目でございます。まず、国交省は既にCバンドレーダを全国に26基配備しております。こちらについては観測から情報提供までに約10分というサイクルで行っているところでございます。現状も、Webといった媒体を通じて一般の方々にも情報発信しているところでありますが、先ほど言いましたように、7月28日の都賀川のような局地的豪雨については現在、レーダ網での観測に限界があるというものでございます。
 このことから、Cバンドレーダによる観測とあわせて都市域等に非常に解像度の細かい、また、観測の間隔を非常に綿密にとられるXバンドMPレーダの導入を図っているところでございます。こちらにつきましては、詳細な降雨分布の監視が可能であり250メートルから500メートルのメッシュでのデータの取得、また、リアルタイム情報として、一、二分程度で一般観測をして情報発信を行っているということを今進めてございます。
 38ページ目はCバンドレーダとXバンドレーダをまとめたものでございます。局地的な大雨に対する監視の強化ということで、これまでCバンドレーダに加えて三大都市圏等にXバンドMPレーダを整備するということでございます。具体的には三大都市圏、東京、名古屋、大阪、また、去年の金沢の浅野川の氾濫もあったということで示しておりますが、北陸にこのXバンドレーダの整備を進めてございます。
 こちら、右下のほうに配置予定個所ということで、関東、北陸、中部、近畿の4地域それぞれに2基から4基程度、計11基程度を今年度末までに設置を進めるということにしています。また、本年度の補正予算でも予算をいただいておりまして、中国地方、九州地方等の大都市圏を中心に配備を進める予定です。
 今後のスケジュールといたしましては、21年度、上記の4地域についての設置を進め、来年度の3年間を試験運用として考えており、来年度から試験的に観測したデータを配信する予定です。3年間の試験運用期間の後、25年度から本格運用を予定しています。
 39ページ目はXバンドマルチパラメータレーダに関する技術開発コンソーシアムということで、XバンドMPレーダの研究開発について、非常に高機能なこのレーダの能力を使い切るということで、Xバンドレーダに関する産学官のコンソーシアムというものの立ち上げを今準備をしているところでございます。
 研究テーマとしては、レーダ観測データによる定量的降雨量等の推定、降雨予測技術の高度化、1時間程度先までの降雨予測技術や、また、それらを用いた流出・氾濫解析の高度化であるとか、また、いかに住民等に伝えていくかという避難情報等の活用、こういったものを研究テーマとして設定しまして、現在、コンソーシアムのメンバーの公募をしているところでございます。こういったコンソーシアムの取り組み等も進めながら、25年度に向けて進めていきたいと思っております。
 最後に39ページ下でございます。冒頭申しましたように観測史上の記録を上回るような局地的な大雨であるとか、集中豪雨等による洪水災害が多発していることから、今年度の4月に各地方整備局に水災害予報センターを開設しております。これによりXバンドレーダや、各種水位、雨量、気象のデータ等を一元的に収集、水災害の監視、予測の実施高度化、また、予警報、水位情報等に関する情報収集・提供、また、気候変動、気候変化による水災害への影響の分析評価ということを進めていくということにしています。また、都道府県等との連携といったものも視野に入れまして取り組みを進めてきているところでございます。
 国土交通省からは以上でございます。

【谷室長】
 では、土木研究所、お願いします。

【土木研究所(深見上席研究員)】
 それでは、土木研究所のほうから衛星を活用した風水害の被害防止・軽減の取り組みの事例をご紹介させていただきます。水災害・リスクマネジメント国際センターでございます。
 洪水予警報ということを申し上げるわけですが、42ページの下の図にありますように、洪水災害発生件数、世界的に増大に一途をたどっている。特に90年代後半から洪水が非常に増えているということがわかります。これは洪水氾濫原への人口の集中、都市化が進んでいるということがまず第一に挙げられますが、また同時に温暖化による災害外力の激甚化、そういうことも影響している可能性もあるかと思っております。
 そういった中で、真ん中の円グラフがございますが、アジア、アフリカ地域、発展途上国で非常に災害、死者が集中しているということもおわかりかと思います。こういった発展途上国では日本に比べまして、やはりどうしても治水インフラが非常に限定されておりまして、なかなか整備が進まない。そういった中でやはりソフト的な対策に頼らざるを得ないところがございます。
 迅速に犠牲者を減らすという意味では、この洪水予警報というのが非常に有効であるということでございまして、例えば中国の事例、バングラデシュの事例、バングラデシュは非常にわかりやすいですが、1970年、30万人の死者が出たというサイクロンの被害があったわけですが、2007年のときにはそれがかなり、もうオーダーが2つ減っているということでございます。これは予警報の整備というのが非常に大きい効果の事例でございます。
 こういうことでございまして、43ページに行きますが、例えば2005年1月に神戸におきまして、兵庫行動枠組み、国連防災会議が開かれまして、そこで5つの優先課題というのがまとまったわけですが、その中にも災害リスクの特定評価、監視、それをもとにした早期警報の強化ということがうたわれているところでございます。そういうことで、洪水予警報というのは発展途上国で進めていくべきところなのですが、いろいろ発展途上国特有の課題がございます。
 特に観測施設の整備・維持管理が十分でないというところがございまして、例えば1つの事例で言いますとメコン川流域、メコン川委員会というのがございまして、わりといろいろな管理が進みつつあるところでございますが、それでも例えばタイでも1,300平方キロに1台、あるいはラオス、カンボジアですと3,000平方キロから4,000平方キロに1台ぐらいしか雨量計がないということでございまして、これは言ってみれば、日本で言うと富士川とか、吉野川とか、そういった流域に1個しか雨量計がないといった状況でございます。そういうところでなかなか洪水管理というのが行き届かないということがございます。
 また、洪水予警報を行うためには流出解析モデルを構築する必要があるのですが、それのためのデータがないとか、そういういろいろな問題点がございます。そういった中で、我々、データがないということに関してどう対応するかということで、衛星雨量の活用があるのではないかということでございます。最初にご説明すべきでしたが、我々はみずから観測しているという話ではなくて、むしろ観測データを有効に活用するという観点からの観測データ利用促進といったところの話でございます。
 既にインターネットで無料で公開されているデータがございまして、44ページ下、JAXA GSMaP_nRTというものが非常に我々も注目しておりますが、水平解像度0.1度、約10キロ、更新時間1時間ということでございまして、ここまで来ると洪水予警報にも使われるのではないかということで、いろいろ研究に取り組んでいるところでございます。しかし、衛星データを使うツールというのがなかなか発展途上国で開発するのはコスト的にも人材的にも能力的にも難しいというところがございまして、そこのところで我々がIFAS、総合洪水解析システムというツールを開発しているところでございます。
 45ページ上ですが、こういう全体のイメージですけれども、衛星データを標準で入力する。それからあと流出解析モデルを構築するための必要なデータをグローバルなGISデータから推定できるようにしようということで、USGS、GTOPO30とか、GLCCとか、あるいは国土地理院の地球地図も最近読めるようにしたのですけれども、そういったデータをもとにモデルを構築して、世界中どこでも、いつでも洪水計算ができますよというツールを我々は開発したところでございます。
 もちろん、我々、衛星データだけで洪水予警報ができるとは考えておりませんが、実際、それを使ってもらうことで現地データと比較的して、まだまだ精度が悪いということが逆に現地の方にもよくわかっていただけるという中で、そうするとやはり地上観測システムを積極的に整備していかなくてはいけないということが現地の人にも気づいていただくということがございます。そういうことで現地技術者の自助的努力による精度向上努力を支援する、そういった側面、役割もあるかと考えております。
 以下、我々の開発したIFASのご紹介なのですけれども、衛星雨量を活用する。全世界で入手可能なGISデータを使ってモデルが構築できる。それのためのGIS解析のツールを中に組み込んでいるということで、アークGISとか、アークインフォとか、そういったソフトがなくても直ちに現地で解析ができる。そういった発展途上国の人がほんとうに現地で使えるということを優先して取り組んでいるシステムでございます。
 46ページ以降、具体的な中身をご紹介しておりますが、1つ新しい開発要素として興味深いと思われるのは、47ページの上のほうにございますが、衛星雨量の補正手法というのがございまして、そういうわけで衛星雨量は期待が高いのですが、残念ながら現状ですと、どうも、特に我々強い雨、洪水をもたらす豪雨を対象にしているわけですが、そういった強い雨に対してはどうも過小評価気味であるということがわかっておりまして、それに関しまして雨域移動情報とどうも関係があるということが我々の研究でわかっておりまして、雨域移動が速いとどうも過小評価の度合いが強いということがわかりまして、それを定量化することである程度補正ができるということを示したということがございます。ただ、これにつきましては地域によって関係が異なる可能性がございまして、これからさらに検証を進めていく必要があるかと思っております。
 下のほうに流出解析エンジン、2種類のエンジンを乗せていますということを書いておりますが、この2種類のエンジンによりまして中小河川――まあ、中小河川といっても二、三千平方キロ以上のスケールになるわけですけれども、そういったところ、あるいはまさに10万平方キロ以上のような大量スケールの河川における日本の洪水とは違う、例えば季節的洪水、そういったものにも幅広く対応できるようなツールを準備しております。
 時間がありませんが、そういうわけで先ほどGISツールを組み込んでいると申しましたが、48ページの上のほうにGISデータをもとに、そういう河川流域の切り出し、河道網の作成、そういったものがソフトウエア上で自動的にできる。結果表示につきましてもわかりやすくGoogle Earthなどにも重ね合わせる形で表示ができるといったことで、そういったところを追求しております。
 49ページのほうに行きますが、下のほうを先に説明しますが、トレーニングも開始しておりまして、エチオピア、バングラデシュ、ザンビア、キューバ、アルゼンチン、そういったところを招待しましてトレーニングを開始しておりますが、そういったところの事例を使って、49ページの上のほうにエチオピアとかバングラデシュの河川で適用した事例を載せております。現地の流量データの信頼性にも問題があると思っておりますが、衛星データを使っただけでここまでできるということが大きな進展ではないかと思っておりまして、さらにそれを現地データを組み合わせることで精度を改善していく取り組みを現地のほうで進めていただくということになろうかと思っております。
 それが50ページの上のほうにありますが、ローカルオーナーシップの醸成を通じた能力開発ということでございまして、こういったシステムをまず現地でとにかく容易に迅速に導入してもらう。そこでいろいろ誤差の問題を認識してもらって、現地でさらに観測データを追加して精度を高めていく、こういったプラスのサイクルが進むように進めていきたいと思っております。こういった取り組み、我が国の衛星観測技術、気象・水文解析技術、ここのすぐれた部分を統合して世界にアピールしていくといった取り組みでございます。そういうことで科学技術外交という意味でも我が国が貢献できる重要なテーマではないかと思っております。
 以上でございます。

【谷室長】
 では、気象庁、お願いいたします。

【気象庁(後藤調査官)】
 気象庁でございます。資料の52ページの下でございますけれども、気象庁は主に気象や地震、津波、火山、地球環境・海洋のそれぞれの分野におきまして観測・監視、あるいは技術開発、情報作成・提供、そして国際貢献ということを日々の業務として長期継続的に実施しているという組織でございます。この場では、地球環境・海洋に関する分野について話をさせていただきます。
 53ページの上、スライド内の左半分に小さく囲っておりますが、観測・監視、情報作成・提供、そして国際貢献についてお話を差し上げます。53ページ下でございますけれども、観測・監視におきましては気象庁は日々の業務として長期継続的に実施しているものでございます。図にありますように陸海空とそれぞれのところから観測をしております。例えば100年以上におけます地道な観測によりまして、気候のトレンド等々が見えてくる。そういった形で貢献をしていけるものと思っております。また、海洋におきましては、例えば観測船によるCO2の観測等も行っているところでございます。
 54ページでございます。長期継続的な観測の成果の1つでございますけれども、過去の蓄積された観測データを数値予報システムを用いまして、過去の長期にわたります3次元の大気の状態を解析する取り組み、これは長期再解析と呼ばれるものでして、気象庁はこういったものにも取り組んでおります。本日の資料では再解析期間が1979年から2004年のJRA-25というものを紹介していますが、このほかにも解析期間を直近まで延ばしましたJCDASというものもございますし、また、再解析を50年以上前のものから行うJRA-55というプロジェクトも開始する予定です。JAR-55では、50年前の伊勢湾台風等々の時期もカバーできるようなデータセットをつくりたいと考えております。
 また、若干観測とは離れるかもしれませんが、気候の予測に関しては、気象庁は気象研究所において技術開発等も行っております。例えば54ページ下、気象庁・気象研究所におきましては、予測のモデル開発も行っております。
 また55ページ上でございますけれども、気象庁は、作成した情報に関しては、国民、社会への貢献ということで積極的に情報提供しております。例として、資料にオレンジ色で塗ってあるところでございますけれども、気象研究所などの気候モデルの成果は、例えば気象庁本庁におきまして、地球温暖化予測情報といったような形で国民に対して情報提供をしているところでございます。
 55ページ下、気象庁の国際貢献の話でございます。気象庁の国際貢献、主に世界気象機関(WMO)という枠組みの中で行っているものが多くございます。世界気象機関は、国連の専門機関で世界気象機関条約によって設立されているものでございます。そして、日本の常任代表は気象庁長官が務めさせていただいております。ただし水文関係については国土交通省河川局長にご指導を仰いでいるところでございます。WMOには各国の国家気象機関が参画しておりまして、日々のデータ交換など密接に協力関係を築いているところでございます。
 次のページでございますけれども、WMOにおける観測協力の例の1つでございます。WMOには全球大気監視計画(GAW)というものがございます。こちらにおきまして各国気象機関等と連携しまして、オゾン、温室効果ガス、エーロゾルの観測を全球的に実施しているところでございます。また、その中で気象庁は温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)をはじめとする各センター機能を有しておりまして、これをもってGAW計画にも大きく貢献しているところでございます。
 また、56ページ下でございますけれども、アジア太平洋気候センター、こちらは気象庁の中の組織でございますけれども、今般、WMOにおきましてアジアの地域気候センターという形での位置づけがされました。これによりましてアジア各国の気象機関に対します気象情報提供、あるいは人材育成支援、そういった形でのコア的な役割を果たしたいと考えております。また、57ページ、右上でございますけれども、先日、東京会議というものを開かせていただきました。この中で地域気候センターの役割について議論がされたところでございます。
 また、57ページ下でございますけれども、JICA研修といたしまして、アジア各国から研修生を迎えて、例えば気候のシミュレーション結果について、精度の検証や評価の技術というものの習得、といったことなどについてもご協力させていただいているところでございます。
 58ページ、最後でございます。先ほども若干お話が出ておりましたけれども、地球観測の連携拠点についてでございます。温暖化分野に関しましては、環境省と気象庁が共同で地球観測連携拠点を設置しています。その運営を行っております事務局は国立環境研究所に置かせていただいておりまして、機関間、分野間の連携の促進を図っているところでございます。最近の動きといたしましては、昨年の12月にワークショップを開きまして、その結果については今年の3月の地球観測推進部会においても、チキュ温暖化観測推進事務局より説明を行ったところでございます。
 気象庁からは以上でございます。

【谷室長】
 では、環境省からお願いいたします。

【環境省(清野室長補佐)】
 環境省地球環境局、清野です。環境省における地球、それから、我が国全国規模の観測、モニタリング関連の取り組みをご紹介いたします。
 60ページ下連携拠点については、今、気象庁より説明があったとおりです。61ページ上、GOSATです。こちらは環境省、国環研、JAXAの共同プロジェクトで、本年1月に無事打ち上げが成功しました。目的はCO2及びメタンの全球分布とその時間的変動を観測すること、それから、地域ごとの吸収・排出量の把握を行って環境行政へ貢献することです。右側の枠にありますとおり、温室効果ガスの濃度分布を全球観測して、まず観測の側面から統一性を持たせ、そのデータを今度は予測に、モデル等に活用し、精度の高い予測を行って、行く行くは気候変動枠組条約や、IPCC等への貢献を期待しております。
 アメリカNASAの同様の観測衛星が失敗に終わったので、今、CO2、メタンを見ることができる世界唯一の衛星でございまして、世界的にも注目されています。結果につきましては、5月28日に記者発表をしております。これはまだ未校正のデータですけれども、CO2とメタンの分布状況をこの小さい図にあるような世界地図スケールで公表いたしました。年末に向けて校正データを発表する予定です。
 それから、その下、気候変動影響評価パートナーシップ推進事業です。こちらは2008年2月に日本、中国部分については日中科学技術協力協定の協力プロジェクトとして位置づけられました。我が国の実施機関は国環研と慶応大学、先方のパートナーシップの相手は中国、モンゴルの研究所です。中身は温暖化影響の早期観測ネットワークを構築するというもので、MODISデータを使いましてアジア地域の植生、土地利用、氷雪被覆等のモニタリングを行う。それから、モンゴルの凍土変動について観測、それから、影響要因を解析。それから、中国における黄河・長江流域での水収支の解析等です。政策等の側面におきましては、将来的には適応策が効果的に行われているかという部分にも焦点を当てていきたいと考えております。
 それから、次、62ページです。地球環境保全試験研究費、これは一括計上という枠組みでございますが、施策の概要です。国の研究機関を対象に地球温暖化問題の解決に資する科学的知見の集積を通じ、行政課題の解決を科学的側面から支援することを目的に設立されました。特に中長期的な観点から関係行政機関が主導的かつ着実に進めるべき研究を行っております。
 具体的には、現在12の事業が動いています。継続1、それから、モニタリング支援型というものが6、新規が5つです。関係している省庁は、我が省のほか国土交通省、農林水産省、経済産業省、厚生労働省、関係機関も国立環境研究所、農業環境技術研究所、気象研究所、森林総合研究所、産業技術総合研究所、国立感染症研究所等となっております。
 こちらは平成18年度から地球温暖化の原因物質や直接的な影響を的確に把握するという観測体制の整備のために地球観測モニタリング支援型という枠を設置しました。行く行くは長期的な観測を行うということはもとより、IPCC等への科学的知見の提供も期待しております。
 それから、その下、モニタリングサイト1000、こちらは我が省の自然環境局というところが主体としてやっております。左下の箱にありますとおり、生態系タイプごとにモニタリングサイトを設置します。具体的には陸域、陸水域、アマモ等、藻場等の海域で、今、合計1,023のサイトを設置しております。その中でチョウ類等を主体とした指標種を設定しまして、その変動を見ていくというものです。成果につきましては、専用のサーバとデータベースシステムを用意しまして、速やかな情報提供を進めているところでございます。
 期待される成果としましては、ピンクの四角に入っていますが、100年以上にわたる長期継続調査を目指しております。調査を継続することで自然環境の変化を把握し、それから、精度の高い自然環境情報を蓄積して、その変化を踏まえた保全対策を可能な限り迅速に検討、展開していくということです。
 それから、最後はアジア・オセアニア地域におけるサンゴ礁保全に向けた情報基盤整備事業。これはモニタリングがコンポーネントの一部になっているとご理解ください。下にありますICRI――国際サンゴ礁イニシアティブというものがありまして、その中でとり進められている取り組みです。具体的にはALOSのデータを使って画像解析をし、それから、グランドトゥルースをとってサンゴ礁の分布図を作製し、十分に保全されていないサンゴ礁域を抽出します。ICRIの考え方として海洋保護区というのが効果的というスタンスに立っているところ、その保護区の設定の促進費、さらに保護区同士のネットワーク戦略というのをつくろうと。最終的には来年10月にあります生物多様性条約第10回締約国会合で我が国の貢献として打ち出していきたいと考えております。
 それから、最後に井上委員から長期的な取り組みが重要とのご指摘がありました。予算につきましては、100年先の予算を今保証できるものではなく、基本的には数年単位の取り組みでございます。ただし、サブスタンスについては切れることはございません。これは継続性、安定性の観点から、これまでやってきた調査、研究、観測を発展的に別な事業につなげていく、あるいは既存のものを土台として次のものを立て付ける。当然、そこにはそのときの社会のニーズ等を反映してサブスタンスを引き継いでいきます。あるいはこれまでやっていた研究の成果をほかの研究や観測にもつなげていくという形で継続性を担保しております。
 以上です。

【谷室長】
 では、国立環境研究所のほうからお願いいたします。

【国立環境研究所(三枝室長)】
 国立環境研究所の三枝です。アジア陸域の炭素循環観測と生態系観測の統合に基づく地球温暖化の影響評価について報告いたします。資料は66ページと67ページです。きょうご紹介します内容は、気象庁と環境省の担当者の方からご指摘のありました温暖化分野の地球観測連携拠点が取りまとめ、今年3月の地球観測推進部会にて報告しました陸域炭素循環観測と生態系観測の連携に関する取り組みについてという内容に基づいております。
 では、資料の66ページをごらんください。分野間連携の取り組みの必要性について簡単にお話しいたします。アジアの気象や生態系、人間社会への地球温暖化の影響を評価するためには、陸域生態系を介した炭素循環や水循環の変動を正確に把握し、予測することが必要です。同時に気候変動に伴う生態系のフィードバックを実測によって確認し、それをもとにして将来予測の精度向上を図ることがぜひとも必要です。これが私どもの分野で多くの研究者が直面しており、ぜひ乗り越えなければならない課題であると認識しております。
 このため陸域生態系における物質循環及びその物質循環に直接かかわる生態系の機能の変動を観測することはもちろん重要なのですけれども、そこからもう一歩踏み込みまして、それを担う生物の多様性との関係を同時に観測及び検証しながら、生態系変動の気象学的、生態学的要因を解明するということがぜひとも求められていると考えます。こうした課題を解決するために必要な取り組みが、炭素循環観測・水循環観測、生態系及び生物多様性に関する観測、衛星地上検証のための観測を同一地点で長期的に行うプラットフォームを整備士、分野間連携の取り組みにより共同利用することのできる新たなフレームワークによる生態系観測の体制を確立する、こうしたことではないかと考えます。
 具体的にどうするかについて、67ページをごらんいただきながら説明したいと思います。取り組みは、例えば気象学、水文学、生態学といった分野間の連携の取り組みによる観測を同一地点で長期的に行うプラットフォームをつくり、これを共同利用するということが趣旨です。その基盤となりますのは、既に運用している複数の陸域生態系観測のネットワークを利用し、このネットワークの重なる点、地上観測のプラットフォームを共同利用することです。例えば、国内にタワーを使った、熱、水、二酸化炭素フラックスを観測しているサイトが、JapanFluxというネットワークをつくり、およそ28の観測点を持っています。日本における長期生態学研究、JaLTERというネットワークはおよそ40の観測点を持っています。環境省モニタリングサイト1000は生物多様性の観測をカバーしながら、日本国内に1,000点の観測点をつくることを目標にしています。さらに生物季節の観測や衛星の地上検証を目指す観測が国内で多数行われています。こうした陸域のさまざまな分野の観測ネットワークをただばらばらに推進するのではなく、それらの連携を極めてよくとることによって、国内幾つかのサイトにおいてはこれらのすべての観測ネットワークが重なる、そういったプラットフォームをつくることが効率よく総合的な陸域の観測データを取得するネットワークをつくる上で重要であろうと考えます。これが第1段階です。
 次に第2段階としまして、共同利用するプラットフォームにおいては、分野間連携の取り組みにより陸域生態系への温暖化影響を検出するための総合的観測データを取得します。例えば陸域の炭素循環・水循環への影響、生物季節や養分動態などへの影響、生態系の生産・分解・種子散布といった重要な機能への影響、それから、生物の種の変化、生息域の変化といった生物多様性に対して重要な影響、こういったものを総合的な観測データから検出することが必要であると考えます。また、長期の観測を継続すると同時に、別の枠組みを利用しまして、研究レベルで各種の温暖化操作実験などを組み合わせていくことによって、最も効率のよい、最も大きな効果を生むことのできる陸域の地球温暖化の影響評価、その影響の要因の解明といったことが進められるであろうとも考えます。
 それでは、こうした共同利用のプラットフォームができますと、どんな効果があるかについてごく一部ですけれども、例を挙げて紹介したいと思います。67ページの真ん中にある折れ線グラフをごらんください。これは国内の森林で既に分野間共同利用が進められている観測点において、タワーを使ったフラックス観測と、それとは独立に行われた生態系プロセスの観測によって森林が年間吸収した二酸化炭素の量を求め、その年々変動の様子を記したグラフです。
 赤い丸で書いたのはタワーで測ったフラックス観測による二酸化炭素の吸収量、青い三角で書きましたのが独立に行われたプロセス観測による結果です。これを見ますと、絶対値として合っているところや合っていないところはありますが、年々変動の傾向がだいたい一致している。こういったところまでこの分野の研究が進んできました。
 こうした観測データをさらに総合的に整えていくことによりまして、例えば合わないところの理由を突き詰めていくことによって観測精度を相互に向上することが可能になります。また、森林の生産力が年々変動する、その要因を解析していくことによって、予測モデルの精度向上に大きく貢献します。さらにそもそも森林の生産力が気候の変化に伴って変動するということが、生態系の健全性や持続性といった意味でどう解釈されるのか。私どもの研究はその答えを出すレベルにはまだ至っていないのですけれども、そういう方面にも研究を進めることによって、将来は生態系サービスの脆弱性評価、それから、生態系のさまざまな新規的な評価軸の構築にも結びついていくだろうと考えています。
 最後に取り組みの3段階目としまして、衛星観測と直接対比できる空間スケールを持った地上観測データを整備することによって、生態系機能の広域評価を行うと同時に、蓄積された技術をアジアへ普及していくということができると思っています。
 以上のような取り組みによって得られるものを一言で言いますと、67ページの一番下のところにまとめましたが、温暖化影響下での生態系のさまざまな機能の変化及び生態系フィードバックを実測によって検出することができ、それによって陸域生態系モデルの予測精度を大幅に向上させることができると考えます。
 また、こうした観測データは、これから進めていかなければならない分野であります生態系サービスの脆弱性評価の手法開発及び私たちがまだ気づいていないかもしれない生態系の価値まで考慮に入れた新規的な評価軸の構築にも貢献すると考えます。このような観測を実現させるために、今、分野間連携の取り組みをこの分野において集中的に進める必要があると考えます。
 以上です。

【小池(勲)部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、後半、ご紹介いただきました5つについて、コメント、ご質問がありましたらお願いいたします。どうぞ。

【中静委員】
 今の炭素循環の観測という、非常に新しく分野間の連携でいろいろなことができるようになったというのをよく説明していただいたと思うのですけれども、温暖化に関する、いわゆる炭素循環に関する部分のネットワーク化って、かなり進んできたと評価できると思います。一方で、モニタリングサイト1000で生物多様性、生態系のかなり国内の組織化は進んだとは思うのですが、実はまだ農水省関係の観測網ですとか、それから、きょうはお話になりませんでしたけれども、国交省河川局でも大きなデータを観測システムとしてお持ちだと思います。それから大学関係などでも非常に大きな観測をしている。個々にやっているわけなのですけれども、それを考えますと、もう1段階大きいレベルで連携拠点というものの整備をしていただくことというのが非常に重要になるのではないかと思います。
 というのは、モニタリング1000は最初から電子化とか、共有化というのをにらんでやっていらっしゃいますけれども、国交省のデータですとか、農水省のデータなどが、いまだに電子化されていなかったり、共有化が進んでいないというような実態を考えますと、それを進めるということが今後の温暖化適応の問題などを考える上でも非常に重要になるかと思います。
 GEOSSで生態系観測、生物多様性に関してはGEO-BONという動きが具体化していまして、それに関しても環境省では、アジアでそういう生物多様性のネットワークをつくろうというふうにやっていただけるということなのですが、それの動きをにらみながら日本国内、さらにもう一言言えば、アジアも含んで観測の拠点化というのを農水省、国交省と環境省、あるいは文部科学省と一緒になってやっていただけると大変ありがたいと思います。

【小池(勲)部会長】
 私もその最後のお話で、プラットフォームの共同利用化については、これは進めたいということであって、国環研が責任を持ってこれからやりますということでは無いということなのか。これはどのように考えればよろしいんですか。

【国立環境研究所(三枝室長)】
 この取り組みの一部分については、例えば環境省の地球環境保全試験研究費などでネットワーク化及び標準化、プラットフォームの共同利用が一部は進んでいます。ただ、きょうお話しした内容全部を網羅しているわけではありません。一部分の進んでいるところをコアにしながら、中静先生がお話になったような努力を進めながら、何とかしてこれから連携の施策を進めていく必要があると、そういう趣旨です。

【小池(勲)部会長】
 はい。ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。

【小池(俊)委員】
 2つございますが、1つは中静先生がおっしゃったので、連携を強化する非常にいい実例を、進行中の例をお示しいただいたと思います。こういうことを進めるときにデータ統合・解析システムのフォーラムが一昨日ございまして、そこで分野間連携はどうやったら進むのかという議論をさせていただいた中で、こういう示唆がございました。高次の目標を設定すると、それにかかわるいろいろな府省がそれぞれのミッション、ある意味でそれぞれの得意分野といいますか、そういうものをうまく連携させながら進むことが可能となるというようなことがございます。
 三枝さんから書いていただいているタイトルそのものが、地球温暖化の影響評価という非常に大きな枠組みがあって、そこに生態系と炭素循環という、より具体的なものがある。こういうものを示していただいて、こういう分野連携を進めるというのは非常に効果的であるし、かつうまくいくのではないかなと思います。地球観測の推進戦略が決まったときに、この分野間連携をどうやって進めるのかというのは非常に大きな課題でありましたけれども、こういう具体的な事例が進みつつあり、今、中静先生のほうから、さらにそれを強化する枠組みが必要というお話がございましたが、ぜひ来年度、22年度の実施方針の中にこういうものがクリアに出るようにしていただければありがたいと思います。
 2つ目は国際的なビジビリティということですが、きょうご紹介のあったGDEMは、非常に大きなインパクトがあると思います。ヨハネスブルグの地球観測サミットでこれを日本政府が提案をして、アメリカからもこれをともにやるんだという応援演説があって進み始めたわけですが、それが次のサミットの前にこういうふうに実現するというのは、日本の非常に大きな貢献であろうと思います。
 同じようなことを土木研ICHARMのほうからお話をいただいたIFASでもやっておられて、これは先ほどのこととも関係しますが、JAXAと連携されながら、雨の実時間に近い観測データを使って、洪水予測のところまでつなげたという非常にいい事例だと思います。こういうものをぜひ国際的に地球観測の枠組みの中でもビジビリティを示していただきたいと思いますが、例えばきょうお話のあったGDEMとIFASが協力されると非常にローカルな地形情報が得られるわけで、そうしますと洪水予測にも非常に効果的に使えるというようなことも考えられますので、あるいはこれはまだ先かもしれませんが、今は観測値を使ってやっておられますが、気象庁との連携によって予測値を使いながらさらに進めるということも今後考えられるのではないかと思います。
 もう一つ加えますと、IPCCの枠組みで極端事象、特に水に関する極端事象のレポートがまとめられることになっておりますが、IFASでは主に現在気象のことが中心になっていますが、その気候変動の部分もいろいろな分野と連携をされるとさらに進むのではないかなと思うんです。
 国際的ビジビリティでちょっと1つ、私、残念なことがあるのですが、これはきょうJAXAのほうからお話しいただいた「だいち」なのですけれども、非常に有用であるという国際的評価が高いのですが、そのデータポリシーによって少し損をしているところがあるように思います。これについてはぜひ今後お考えいただいて、ASTER GDEMのようなデータポリシーというものもお考えいただくようにすると、国際的ビジビリティはさらに上がるのではないかと思います。
 以上です。

【小池(勲)部会長】
 今の最後の件でJAXAのほうから何かコメントございますか。

【宇宙航空研究開発機構(福田センター長)】
 今、データポリシー自体は宇宙開発戦略本部のほうの議論になっておりまして、そこで十分議論させていただきたいと思っておりますが、ややALOS「だいち」が高分解能のほうに相当進んだということもありまして、やや商業的なリモートセンシングとの境界領域がありますのが、小池先生がおっしゃるような、ある程度データポリシーの不自由さにもつながっているという面もございますので、それも含めて検討させていただきたいと思います。既に「だいち」に関しましても、「だいち」のデータをもとにつくったグローバルなデータセットに関しましてはフリーに出しているようなところもございますので、何らかの解はあるものと考えております。

【渡邉委員】
 国土交通省、あるいは土木研究所に伺いたいと思います。小池委員も指摘されたように、雨やその他の利用できるデータを非常にうまく統合されてこられた努力と成果はよくわかりました。それはお続けいただいたらいいと思うのですけれども、例えば結果としてあらわれるような河川流量の観測システムの今後の推進や公開などはどんなふうにお考えでしょうか。コストがかかるので経済的に、また技術的にも社会的にも非常に制約が多いのは理解しているところですが、先ほど安岡委員がご指摘になられたように、これからの適応社会を考えていくことを頭に入れたときには、大事な観測のターゲットではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【小池(勲)部会長】
 お答えは。

【国土交通省(田中課長補佐)】
 今、ご質問いただいた件ですが、河川流量や水位について、気候変化による影響がどういったものかということ等のモニタリングもしっかりしていかなければいかんと思っておりまして、例えば河川流量、水位をより密に観測を行うなどコストや、メンテナンス技術も含めた技術開発を進めているところでございます。これらの河川への試験的な導入を進め実河川に導入を進めまして、その検証やモニタリングに力を入れてまいりたいと考えております。

【深澤委員】
 先ほど井上委員から指摘もありましたけれども、長期観測というのは大事なわけで、気象庁には非常にお世話になっています。GCOS、あるいはIPCC。それで、53ページの絵で少しわからなかったのですけれども、この地上観測の強化、海洋観測の強化、衛星観測の機能強化とかありますけれども、例えば海洋観測の強化というのは具体的にどのようなことを指していらっしゃるんでしょうか。

【気象庁(後藤調査官)】
 強化といいましても、長期継続的に観測を行うことが主眼でございまして、例えば海洋に関するCO2観測機器のアップグレードなどを想定したものです。大規模プロジェクトみたいなものを意図しているわけではなく、むしろ長期継続的にやっていく中で少しずつ強化していく、との趣旨でございます。

【深澤委員】
 わかりました。どうもありがとうございます。

【小池(勲)部会長】
 それでは、まだあるかもしれませんが、少し時間が押しておりますので、以上で各府省からのご説明は終わりたいと思います。それで、ただいまご紹介いただきましたご発表を踏まえまして、実施方針の検討を進めたいと考えております。
 次が平成22年度我が国における地球観測の実施方針についてです。時間が大分少なくなってしまったのですけれども、前回のときの議論をもとに事務局のほうで素案をまとめていただきましたので、まず事務局のほうからご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【谷室長】
 資料3に基づきましてご説明をさせていただきます。あらかじめ委員の先生方には送らせていただいておりますので、要点をかいつまんでご紹介をさせていただきたいと思っております。全体、まず構成でございますけれども、「はじめに」というところで基本的な考え方を少し書きました上で、第1章、気候変動への対応のために必要な地球観測の在り方ということで、これまでの議論を踏まえまして気候変動というのを1つの焦点とし、それを中心に整理をするということで第1章をまとめてございます。
 具体的な中身は、第1節が気候変動のプロセス・メカニズムの理解のための地球観測ということで、気候変動の直接のプロセス、あるいはメカニズムを見るという観測。それから、第2節は気候変動との関係のより深い分野といたしまして、水循環・風水害、また、生態系・生物多様性という分野を取り上げて、気候変動への適応のための地球観測ということで整理をしてございます。また、個別の課題ではなくて分野横断的な点についてもきちんと整理をする必要があろうということで、第3節は分野横断的なデータの共有と融合というふうに整理をしてございます。
 第2章につきましては、推進戦略に示されております基本戦略に基づいた3点についてのまとめをしてございます。第1節が利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築、また、第2節が国際的な地球観測システムの統合化、また、我が国の独自性の確保とリーダーシップの発揮ということでございます。第3節は、アジア・オセアニア地域ということでの整理をしてございます。第3章でその他、分野別の推進戦略に基づく推進というふうに整理をしてございます。
 おめくりいただきまして2ページ、第1章で気候変動への対応のために必要な地球観測の在り方でございますが、冒頭のところ、少し最新のラクイラサミット等の動きを反映させる必要があるかと思いますけれども、国際的な状況を踏まえて気候変動への対応というのは大きな政策課題だということで、気候変動を中心に整理をしたということを書いてございます。
 具体的に3ページに参りますけれども、第1節、気候変動のプロセス・メカニズム理解のための地球観測でございますが、気候変動のプロセス・メカニズム理解のために特に取り組むべき課題として炭素循環の解明、それから、雲物理・降水過程の解明、対流圏大気変化の把握、海洋への影響ということで4点に分けて整理をしてございます。これらの課題は地球システムの理解のみならず、次節の気候変動適応のためにも必要になるということで、ここの第1節のところに整理をしてございます。
 炭素循環の解明のところは、例えば将来の炭素循環のフィードバックの大きさの決定が解決すべき課題ということで炭素循環というのは1つ大きなテーマ、課題として掲げてございます。また、地球観測連携拠点で整理をされた論点につきましても、ここに付記をしてございます。
 また、雲物理・降水過程の解明というのが2つ目の整理論点でございますが、これは具体的にいきなり観測すべしということではなくて、現状も踏まえつつ、衛星による観測を開始することが必要であるという書きぶりにしてございます。
 また、対流圏大気変化の把握のところにつきましては、二酸化炭素以外の温室効果ガスの大気寿命に重要な影響を及ぼすといった観点も書いてございまして、静止衛星への搭載を目指した大気環境観測センサの研究の促進。まずセンサの研究を促進ということを書いてございます。
 また、4点目でございますが、海洋の深層水形成メカニズムの理解ということで、これは深層水の形成量の変化という大きな論点がありまして、これはCO2の海洋深層への移送量にも影響するということで、その実態とメカニズムの解明、さらには気候モデルの応用を可能とすることが求められているということを書いてございます。
 第2節で気候変動への適応のための地球観測でございますが、先ほど申し上げましたとおり、水循環・風水害、生態系・生物多様性ということでまとめてございます。
 水循環・風水害ということでは、まず1点目が水循環・気候変動・気象の統合衛星観測による水災害の軽減ということを書いてございます。いきなり衛星を上げるということにはなりませんので、水循環の衛星観測技術基盤の高度化と統合的利用、それから、数値気象予測モデル・気候予測モデルと衛星観測データの統合的利用などについて今後の推進が必要であるという書きぶりでございます。
 2つ目は集中豪雨などの極端降水現象の発現メカニズムの解明ということでございます。これもまずメカニズムの理解のためには統計的な把握が必要であるが観測頻度が不足ということで、そのためGPMの推進、あるいは衛星観測と地上観測、また、モデルの利用研究との連携といったところで、メカニズム研究を充実することが必要だということをまとめてございます。
 それから、水循環の最後のところは、総合的流域土地水管理システムの構築でございます。これは基礎となる詳細な土地利用情報の整備が不十分ということで、そのための長期継続観測やデータ整備が求められているということを書いてございます。
 生態系・生物多様性につきましては、2つ挙げてございます。温暖化に伴う生態系・生物多様性の変化とその適応策の監視ということでございます。これは気候変動に伴いまして生態系サービスとの複合的モニタリングというものが重要になってくるということで、現在、例えば炭素の循環などについては連携が進んできていますが、先ほどもご議論がございましたけれども、生物多様性、水循環、生態系、ほかの生態系データとも連携が必要だということでございます。また、個別、独立な観測を集約化するということもございますし、実施主体としては拠点をつくることが必要であるということをまとめてございます。
 それから、海洋酸性化のメカニズムの理解と水産資源への影響評価というものを2点目として挙げてございます。海洋現場での酸性化の実態と生態系変動との相互関連についての知見は極めて乏しいということで、速やかに海洋酸性化と生態系の構造、機能の変化に関する観測研究を開始するべきということ。また、影響評価の必要性について書かれてございます。
 それから、第3節は分野横断の議論でございますけれども、前回のご議論いただいたものを踏まえて記載をしてございます。9ページのところ、特に具体的にはと書いてありますが、異分野のデータを統融合し、それから、有用な情報を創出して、その成果を関係府省・機関の連携によって社会に還元していくということを指摘してございます。
 第2章でございますが、観測の基本戦略に基づく地球観測等事業の推進ということで、大きく分けて利用ニーズ主導の統合された地球観測、それから国際的な観点ということで3つに整理をしてございます。これは先ほど来議論が出ておりますが、連携拠点の話が長期継続観測の話と並べて整理をされてございます。
 フォローアップでの議論もございましたけれども、連携拠点の設置に向けて、特に水循環・風水害、生態系・生物多様性についてはまだ拠点がございませんので、その設置に向けた取り組みの一層の進展が期待されるということでございます。既存の連携拠点については、成功事例を創出していくといった期待がされるということを書いてございます。
 それから、第2節でございますが、GEOSSの関係、GEOSSの努力の加速の話が書いてございます。特に最後のところでございますが、次回の閣僚級会合、これは22年の秋、アジアで開催予定でございますが、そこに向けたイニシアティブの発揮を期待ということを書いてございます。
 第3節、アジア・オセアニア地域との連携強化ということで、GEOSSのアジア太平洋シンポジウムの話を書いてございますが、その取り組みを世界に発信していくということを指摘してございます。また、アジア・オセアニア地域ということがタイトルとしては書かれているわけですが、内容的にはアフリカ地域といったものも科学技術外交との観点から非常に重要で、国際共同研究等の推進が期待されるということを整理してございます。
 最後でございますが、第3章で分野別の推進戦略ということで、今回、気候変動を中心に取りまとめをいたしましたけれども、推進戦略で整理されております15分野につきましても関係府省・機関は推進戦略に基づき、引き続きその取り組みを推進することが期待されるということを整理してございます。
 最後に地震・津波・火山分野についての付記をさせていただいております。雑駁でございますが、以上でございます。

【小池(勲)部会長】
 ありがとうございました。
 今ご説明いただきましたように、平成22年度の観測の実施方針は気候変動というところに焦点を当てて、その中に水循環、風水害、生態系というものを取り込んだような形で書かれております。これは8月の前半ぐらいまでには最終的な取りまとめをしたいということなので、あと1カ月ございますけれども、とりあえず何か。たくさんあるとは思いますけれども、どうぞ。

【井上委員】
 私、読んだときにはすごくそれでいいのではないかと思ったのですけれども、この委員会の役割として、前年度の推進状況の報告をして、それを科学技術会議のほうからフォローアップの指摘があって、それをその次の年に反映するということを考えると、長期観測にかかわる資金の確保云々のところは若干あるのですけれども、人材の育成確保とか、指摘事項の中で反映されていないものがあるのではないかという気がするんです。具体的にそれをどうするのかというのも見えてこないので、どう書けばいいという案はないのですけれども、少なくとも我々の委員会の役割としては、フォローアップなどで指摘のあったところというのは反映するような書き方をして、その実現を目指すということが必要なのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

【小池(勲)部会長】
 どうぞ。

【谷室長】
 ご指摘のとおりだと思っております。フォローアップについて本日お話しいただきましたので、次回、取りまとめに向けてはこれを反映した内容にする必要があろうかと思いますので、先ほどのご指摘のとおり、例えば人材の育成といった観点についてもきちんと書き込みたいと思っております。

【小池(勲)部会長】
 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。

【小池(俊)委員】
 22年度は気候変動に向けたということで、焦点を当ててやるということで大変結構ですし、井上先生もおっしゃったように非常によくまとまっていると思います。
 それで、きょう内閣府の廣木参事官から最初にご紹介がございました中間取りまとめの中に記されていた国民1人1人が行動をするということがこういうものの本質的なところになるのだというお話がございましたが、今のこの実施方針を拝見していますと、実はそういうことが幾つか中に盛り込まれてはいるんですね。6ページの風水害のところにも産業や生活環境に与える云々とか、7ページのところにも健康や生態系、食糧生産とか幾つか盛り込まれてはいるのですが、それをもう少しまとめた形で適応、2節の頭のところに何かやっぱり、こういう方向が必要であるということを主張してはいかがかなと思います。自然科学と社会経済的なデータとか、情報の融合もありますし、それが具体的な施策に反映されるというようなことをもう少し明確に書いてはいかがかなと思います。

【小池(勲)部会長】
 それに関しては、よろしいですか。

【谷室長】
 はい。基本的に適応との関係で申し上げますと、例えば第1章の第1節の前のところに少し書いておりますが、もう少し内容を充実させる必要があるかなということと、第2節の頭のところは確かに、ここはまさに適応のための地球観測と言っているわりには一般的な書き方にとどまっていますので、もう少し充実させることを考えたいと思います。

【小池(勲)部会長】
 ほかに。どうぞ。

【杉本委員】
 全体として非常によくまとまってはいて、よく書けているなというのが、最初に印象です。
 私のコメントは、うまく言えるかどうかわからないのですけれども、これまで継続してきている観測を基本的にこれからも継続するときにいろいろな連携をやっていかなければいけないということで、多分、いろいろなものが進んでいくと思うのですけれども、幾つか考えておくことがあります。その1つは、例えば国内で観測をする場合に、日本の河川の観測や気象観測に関しては、日本の国民がそれら観測から出てくる結果の利益を受けるということになると思うのですけれども、そうではないような観測もたくさんあって、例えば最後に国立環境研究所の報告がありましたけれども、国内で炭素循環の観測や、生態系の観測をするといった場合、非常に限られた小さな地域、エリアでの代表性ということになりますので、地球全体にどう観測結果が出ていくのかということがすぐには見えない状況にあると思うんですね。
 ただ、そういう場合でも、それは全然意味のないことではなくて、三枝さんがおっしゃったように1つのモデルとして連携を図っていく、手法などをここで立ち上げることによって、それを世界の全球の観測網に生かしていけるというようなことがあると思いますので、地球観測を行うという視点で、それが直接的にはだれが利益を享受できて、間接的には、あるいは結果として全球の観測にどういうふうに貢献していけるのかという視点、利用ニーズということでだれが利益を受けるかということに関して少し記述があるといいなと思いました。

【小池(勲)部会長】
 あと1つ、私からのコメントですが、この素案には観測から、それの利用、データ統合といろいろ書いてありますが、基本的に観測と、それを用いたデータ統合、モデル予測、それの社会還元というのが1つのサイクルになっており、それをずっと回していくということが、今、温暖化にしろ、他の環境問題で非常に大事になっています。既に観測というものが、ある特定のある時期の観測ではなくて、この先かなり定常的にやっていかなければいけないものになってきたというような表現なり意識が欲しいという気がいたします。そうしないと先ほどの長期的な観測とかいうのが、どうして長期的なのが必要かということがあまりはっきりしてこない。ですから、できたらそのようなニュアンスをどこかに入れていただきたいと思います。
 ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。どうぞ。

【深澤委員】
 少し細かいことになりますけれども、きょう総合科学技術会議の環境プロジェクトチームからのフォローアップもあって、それでこの書き方を考えると、もう少し再考が必要かなとも思います。少し気になるのは分け方です。総合科学技術会議のほうもそうなのですけれども、水循環、水管理というのを一緒に扱う場合がかなり多いのですが、確かに水循環があって、風水害、あるいは水の利用ということで生活に結びつくということから水管理というのは自然に出てくるものなのですけれども、今度は逆に気候変動の仕組みを見ているほうから考えると、大気に関する限りは、水循環そのものは、水循環、熱循環そのものですね。
 ですから、むしろ水循環というのは気候変動に入ってしまうんですね。そこをシームレスにつなげるという形では、この分け方おもしろいのですけれども、実はこういうことが水循環の連携拠点をつくることの難しさにもつながっているのではないかなという気がします。ですから、総合科学技術会議の分け方を変えろというわけではもちろんないのですけれども、何らかの配慮が必要なのではないかなというのが、この今回の素案、それからフォローアップを見て感じたところです。
 以上です。

【谷室長】
 ご指摘の点につきましては、今回のフォローアップ、それから、実施方針、いずれも総合科学技術会議のほうでつくられました推進戦略に基づいて、いろいろな整理をしてございます。推進戦略の整理に基づいているものですから、そこでの整理がまずは必要なのかなという気がいたします。そこはある種の整理学の話でございますので、その整理学ということを踏まえた上で、具体的にどういう課題をやっていくかということをきちっと見極めていくということが重要になってくるのかなと思っております。そういう意識で、今回の実施方針の素案をつくらせていただきました。

【深澤委員】
 はい。わかりました。

【小池(勲)部会長】
 どうぞ。

【小池(俊)委員】
 連携拠点のことではないのですけれども、今、室長がおっしゃった推進戦略に基づいてこの実施方針を書くということが枠組みなわけですが、実施をしていく中で推進戦略をモディファイしないといけない部分が出てくることはよくあるわけで、それがフィードバックされて戦略に反映されるべき、そういうマインドは持っていたほうがいいと思います。
 そういうことで言うと、2章の第1節の中で社会インフラとか、産業経済とか、人間の行動とか、こういうことは実は推進戦略の中にあまり踏み込んで書いていなかったんですね。だけど、こういうことがもう問題として出てきているからやらなければいけないというのは、むしろ実施方針のほうから推進戦略のほうへ出すとか、先ほど室長がおっしゃったアフリカというのも、この流れの中で出てきておりますので、こういうものはこちらのほうから総合科学技術会議のほうへ提言していくということも必要ではないかと思います。

【原沢内閣府参事官】
 きょうの資料にも頭書きのところに推進戦略を必要があれば見直すということがあるのですが、この見直しそのものが重たいものですから、運用で何とかできる部分があるかと思います。先生がおっしゃったように非常に世界の動きが早いものですから、それに応じた形で地球観測もやっぱり検討していく必要があるということで、運用でできる部分と本格的に見直さなければいけない部分というのがあるかと思います。その辺はぜひご議論いただいて、またいろいろご意見をいただければ、第4期の科学技術基本計画が1年半後に始まったりするタイミングではありますので、そういう機会をとらえてということもあるかと思います。ぜひご議論いただければと思います。

【小池(勲)部会長】
 それでは、少し時間が過ぎてしまいましたので、ここで議論を打ち切らせていただきます。これはこの後、実施方針の案文を作成していくわけですけれども、この後のやり方について事務局のほうから少しご説明をお願いします。

【谷室長】
 それでは、本日の議論を踏まえまして、事務局のほうで実施方針の案文を作成してまいりたいと考えております。委員の先生方、それから、各府省にもメールになりますけれども、事前にあらかじめ照会をして意見をいただきたいと思っております。最終的には8月7日に第4回の観測部会を予定してございますので、そこで確定までしたいと思っております。
 したがいまして、きょうの素案について、大きなコメントがございましたら適宜いただければと思います。事務局のほうでは、きょうの議論を踏まえまして改めて案文をきちっとつくってご紹介はさせていただきますが、その前段階でもしコメントがございましたら、いただければありがたいと思っております。
 以上でございます。

【小池(勲)部会長】
 それでは、事務局からきょうの総合科学技術会議のフォローアップ、それから、きょうの議論を踏まえた改訂案を事前に配られるということですね。いつごろまでに送っていただけますか。

【谷室長】
 2週間ぐらい後にはお送りできるようにしたいと思っております。

【小池(勲)部会長】
 そうですか。そうしたら、とりあえず1つのステップは、きょうコメントできなかったことでありましたら、2週間以内のうちにまず事務局のほうにお送りいただきたいということです。それから、事務局のほうから、それを含めた改訂案が送られてきますので、それに関してコメントをいただきたいという2段階でよろしいですね。

【谷室長】
 はい。

【小池(勲)部会長】
 それでは、これをもちまして地球観測推進部会の第3回の会合を終わりたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室

電話番号:03-6734-4143
ファクシミリ番号:03-6734-4147

(研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室)