平成18年10月16日(月曜日) 10時~12時15分
三田共用会議所 第3特別会議室
主査 久保田 弘敏 委員 鵜飼 崇志 委員 大林 茂 委員 河野 通方 委員 高原 雄児 委員 星野尾 一明 委員 柳田 晃 委員 李家 賢一
文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当) 板谷 憲次 文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当) 池原 充洋 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 湊 孝一 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 萩原 貞洋
飯田 博文 矢邊 健吾 説明者 JAXA(ジャクサ)航空プログラムグループ超音速機チーム長 大貫 武
【久保田主査】
1989年頃から日本航空宇宙工業会で実施したJSRP(Japanese Supersonic Research Program)、つまり、日本の超音速機のフィージビリティースタディーに参加した。2002年に終了したが、当時のデータがデータベースにたくさん残っている。超音速機の社会経済活動への波及効果、需要性、市場性の検討にはそういうものを活用していったらどうかと思っている。
【河野委員】
今回の推進作業部会での検討は、具体的にどういうレベルまで考えて行えばいいのか。例えば実際の実用機を製造する段階では国際共同開発等方針が様々あると思うが、そういう全般的なことも扱うのか等、わかる範囲で説明いただきたい。
【板谷審議官】
私どもは、文科省の研究開発、他省の研究開発といった縦割り的なことは考えないようにしたい。そういう意味で、本日、関係省庁の方々にも来ていただき、一緒になって進めていくことができればと考えている。先ほど紹介した第3期科学技術基本計画、その中にある分野別推進戦略、これは政府全体のもの。この中において、戦略的重点技術ということで、静粛超音速機技術の研究開発も位置づけられている。次のステップを目指して、一つ一つ積み上げていきたい。実現に向けて、様々なところで多面的な検討が進められればいいと考えている。
現在、国産小型航空機の開発、全機インテグレーションを目指して経産省を中心に、関係省庁が取り組みを行っている。我が国の航空科学技術に関する研究開発は、まずそれを実現することが第一の目標だと思っている。さらに、将来を見据えた上で、航空科学技術・研究開発技術をもう一段上に持っていきたいということで、超音速機の計画を位置づけている。
超音速機について現段階で、開発費すべてを保証ができるのかと言われると、これは文科省だけでできる話ではない。当然ながら、経産省、国交省等、関係省庁と十分議論をしながら、それぞれの役割に応じて対応していきたい。
【久保田主査】
基本的には長期的なことも視野に入れて検討するものと考えている。その場合には、おそらく文科省だけではなくて各省庁の連携も必要であるし、企業との連携もユーザーとの連携も必要なので、それを考えながらできるものはやっていくことになると思う。
ただし、今回、研究機だけで終わってしまうのか、その先の実用機まで見通してやるかを最初に考えておかないといけない。研究機はやったが、役に立たないものになってしまったということになっては非常にもったいない話であり、将来、実用化するという意思でやるのであれば、どういう設計をするのか最初から考えながらやらなければいけないのではないか。その辺はまた後で議論させていただきたい。
【湊補佐】
1点補足させていただく。今、久保田主査から発言いただいたとおりと私どもも考えている。具体的には、この作業部会の中で他省庁、産業界との連携のあり方という方針も議論いただきたい。それを踏まえて、今後JAXA(ジャクサ)は具体的な研究開発の計画を策定し、そちらについては来年度の航空科学技術委員会で改めて詳細な評価を行いたい。具体的な実施については、議論いただいた方針を踏まえて、現在すでにあるSST関係の連絡会等も活用しながら関係省庁とも連携していきたいと考えているところ。
【久保田主査】
JAXA(ジャクサ)での研究開発は非常に進んでおり、先週JAXA(ジャクサ)で実施されたSST-CFDワークショップでも、ウーメラで行った実験において非常にいい成果が出ているという報告があった。今回の静粛超音速の計画についても議論があり、海外からも非常に印象的だとの評価があった。
今回の静粛超音速機技術の研究機が研究機として終わるものか、将来的には実用機までつなげていこうとしているものか、わからないところもあり、実用機までつなげるとすると、この研究機をやっている間に、早いうちから実用機としての機体コンセプト等も考えておかなければいけないと思っている。そういうこともここで検討していくことが、作業部会としてのミッションであってもいいと思っている。将来的なことも含めてここで考えるということでいいか。
【池原参事官】
この作業部会で基本的にお願いすることは、航空科学技術委員会の評価で指摘された留意点について具体的に審議いただくことが一番のミッション。それを踏まえて、JAXA(ジャクサ)でさらに具体的な概念設計をしてもらい、来年の夏頃に航空科学技術委員会で再度事前評価を実施し、基本設計に着手してもらうことになる。ただ、できれば実用化に向けて研究開発の成果が生かされればいいと考えているので、是非そういう幅広い観点から作業部会で審議いただきたいと思っている。また、SST連絡会や4省庁協議会の場も活用して、ここでの成果を関係省庁や航空産業界とも情報を共有しながら、具体的な新しい動きにつながっていけばいいのではないかと考えている。
【久保田主査】
そのためには、ユーザー、エアラインの方の意見も必要になってくると思うので、それも5回の会合の間に出してもらうことになると思う。
【湊補佐】
現在調整中だが、できれば次回に、エアラインの方、またシンクタンクの方にそういった観点から意見をいただきたいと考えている。
【河野委員】
資料2-1の6ページで低ソニックブームに関する特許が取得されたとあるが、こうした成果について、広報の活動としてどのように発表されているのか。
超音速機は環境に悪いということで毛嫌いする人もいるが、とてもすばらしいことだと評価している人もいる。広報をしっかりとやっていくことも非常に重要だ。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
ソニックブームの低ブームを実現させるための機体のコンセプトの特許がちょうど取得できたところ。これは成果の一つとして考えている。今まで技術研究を継続していた成果で、今回、静粛において技術を実際に実証し、特許及びデータといった成果とともに皆さんに公表するというのが私どものやり方の一つだと考えている。ウーメラで実施したロケット実験機については、先週、国際的なワークショップを行い、その場でデータを出し、国際的にも出席者の皆様から高い評価をいただいた。もう一つ別にプロモーション的なところもあるが、それも大事だと認識している。
【河野委員】
是非お願いしたいのは、本日のプロモーションビデオもそうだが、一般の人にはわからないのではないか。家族等の身近な人に見てもらってわかるかどうか、まずそこで判断していただき、そういった方でもわかるものを作っていかなければいけないと思う。是非わかりやすく広報してほしい。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
気をつけるようにしたい。
【久保田主査】
この作業部会のミッションの一つは、社会にどうやって受け入れられるか、社会にどうやって広報していくかを提言していくということなので、今のような話は十分検討をお願いしたい。
それに関連して、ソニックブームと言うものが、どういうものか世の中ではわかっていない。おそらくソニックブームの音を聞いた人はあまりいない。では、それをどうやって知らせるか、これもまた非常に難しい話になる。一つの方法としては、ソニックブームシミュレータというものがあるので、そういうところに入って体験してもらうというのも手だと思う。難しいかもしれないが、そういうことも十分検討の余地はあると思っている。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
今後計画の中で、ソニックブームシミュレータ整備と、これを用いたソニックブームの受容性評価に関する検討の行うことは計画をしている。また、私どもの研究者が、現在、アメリカでソニックブームの受容性の評価に力点を置いて研究を行っており、研究者が実際に参加してソニックブームを聞いてきた。
【河野委員】
本日の調査は平成13年度までということだが、その当時と今とどの辺が変わってきているのか。
【SJAC(柳田委員)】
当時はマッハ数2以上で、複合材も耐熱複合材等を積極的に使用し、最先端の大型SSTを念頭に、経済的に成立するものを確保しようという考え方だった。それに対して現在産業界は、速度をもう少し下げること、例えばマッハ1.6ぐらいにすることによって高価な複合材を使わなくて済むのではないかといったこと等、現状の技術か少し延長程度の技術で何とか経済的に成立する機体があるのではないかということで検討を進めている。
【河野委員】
開発費についてはどうか。
【SJAC(柳田委員)】
現状の開発費はまだ試算をしているところ。
【久保田主査】
今の話は技術的な話だったが、社会的な要請は当時と比べて強まっているか、弱まっているか。例えば、コンコルドは退役してしまったが、それは必要でないからなくなったのか、それとも経済的に引き合わないからなくなったのか。いろいろな分析があると思うが、そういう社会的な要因は平成13年からどのように変わってきたのか。
【SJAC(柳田委員)】
SJACの立場だけで言うのは難しい。個人の感覚が入っているが、まず環境的に受け入れられないものについては、いくら便利なものでも社会的に受け入れられないと思っている。そういうこともあり、コンコルドは飛行時間が半分以下になるという非常に魅力的な部分があっても、社会的に受け入れられないということがあって、終わってしまったと思っている。
もう一点、世の中のニーズの中で、先に出てくると思われるのがSSBJだという点がある。SSBJの方が大型機に比べると開発費も低く、技術的にチャレンジする項目も少なくなるといった議論がある。いきなり大型の機体が実現するというのは、まだブレークスルーすべき技術的な課題がたくさんあると思う。そういう点も含めて、今回の実証がうまくいけば、次に小型ビジネスジェットクラスを狙って、その後大型に行く。こういうステップアップをしていくことは非常にいいことだと思っている。SSBJだとアメリカの市場が主体になると思うが、実際にこういうものが出現すれば、世の中で必要とする方はたくさんいるので加速はされていくと考えている。
【鵜飼委員】
私自身はSSTを念頭に置いた調査は直接担当していないが、広く民間旅客機の市場調査をやっている。毎年、世界各国の主要なエアラインを訪問して意見を聞いている。その中で、メインの議題ではないが、行くたびにSSTについてどう考えるかという質問をしている。
最近の傾向を見ると、例の9.11テロの後、航空会社の経営状況が非常に厳しくなってしまったこともあり、当時のSSTの需要予測の前提としていたエアラインの状況は、現在ではかなり悪化しているという印象を受けている。その中で、環境問題があり、世界各国の空港の基準もかなり厳しくなりつつあるので、SSTの環境に対する適合性が、今後ますます重要になってきているという印象を持っている。
ただ、時間短縮に対する効果は各エアラインとも認めており、こういった環境の制約に合致し、なおかつ経済的に引き合う機体ができれば、お客はいるはずだという意見は聞いている。それをまとまって定量的に予測することはまだなされていない。どうしてもエアラインの立場としては、個人的な感想という意見が多くなっている。
【河野委員】
今の観点は、非常に重要だと思う。環境への適合性や時間的な短縮効果といったものをしっかりと数値で表すことは難しい。SSTの推進に賛成ではない方はこういった面で非常に厳しい意見を持っている。そこをどうやって説得していくかという戦略もある程度必要なのではないか。そういうことは今後の課題という感じがする。
【久保田主査】
作業部会の仕事として、目標数値の詳細な検討を行うことがあるので、環境の問題と経済性についても何かしら検討していこうと思う。おそらく高速性ということから言えば、新幹線効果、誘発効果といったものはかなり大きいとSJACの調査にもあったので、その辺の具体的な検討もできればやっていきたい。
【河野委員】
そうなると、航空機としての安全性のようなことも関係してくるのではないか。
【星野尾委員】
安全性を非常に重く見ると、技術的に乗り越える課題が高くなりうまくいかなくなる可能性も含まれる。ただ、少なくとも安全性というのは大前提として必要だろう。
【久保田主査】
井川委員より文書でコメントをもらっているので紹介する。
『コメントを1つだけ文書で提出する。内容は、今回の実験を含めて、科学技術の研究開発にはスピードも欠かせない。世界的に競争が激しい航空技術の分野であればなおのこと、課題を次々に克服して、最終的な試験にまとめるよう計画を立案し、実行することが必要と考える。着実さも重要だが、それを言いわけにした遅延は研究開発の意義さえ失われる結果となることもある。御承知のとおり、航空技術分野では痛い前例もある。今後、そうした観点から意見を申し上げたい。』
こういう意見をいただいている。
【李家委員】
今回の静粛機の計画に関しては、将来的に超音速機の実用化を目指してすべてを満たすようにするのか。それとも静粛、特にソニックブームと、離着陸の騒音という点にピンポイントで注目してやっていくのか。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
このプロジェクトの中では、小型SST実現に向けた鍵となる技術ということで、すべての技術を対象としているわけではない。ソニックブームの低減、揚抗比の改善、軽量化、離着陸時の騒音の低減、大きく言うとこの4つに特化して推進する。
【李家委員】
無人機で、離陸して超音速飛行し、それを着陸させることは難しい点が多数あると思う。これがうまくいけば実用化に向けて進むと個人的に思っている。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
無人機で実験を行うので手段として無人機のためのシステム統合技術は必要になる。将来のSST実現に向けた技術ということでは、先ほどの4つだが、無人機のためのシステム統合技術は、航空機の安全性、信頼性を向上させ、将来的な無人機化技術につながるものだと思う。
【久保田主査】
技術を特化し過ぎて、実用機になったときに飛ばないような飛行機は作らないでほしいという意見だと思う。十分検討していただきたい。
【高原委員】
2012年を一つのターゲットに置かれているが、これはどういう理由か。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
様々な要因から2012年に飛行実験を行うことが決まっている。関連するものを紹介すると、総合科学技術会議の第3期科学技術基本計画の中で、2012年までの技術目標として挙げられていることが一つ。大幅な予算を投入すれば、技術的にはもう少し前倒しで実現することは可能だという検討はしているが、JAXA(ジャクサ)の資金の現実性などを考慮して、現在の線表を引いている。
また、海外でも、アメリカの超音速ビジネスジェットの開発計画が公表されており、それらが2012年、2013年に市場投入するというスケジュールとなっている。それらに先立って飛行実証を行うことを狙っている。
【高原委員】
もう一点、技術目標に離着陸の騒音低減とあるが、これは機体側だけを考えるという話だった。以前実施したHYPRやESPRのようなエンジンに関する研究も、JAXA(ジャクサ)でやっていると理解しているが、今後、エンジンには一切手をつけず、機体側だけで騒音低減を図っているという考えなのか。コンコルドについては、アフターバーナーをつけて飛んでいると理解していたが、アフターバーナーをつけた状態では騒音低減は大変難しいと思う。軍用機の世界でも超音速はアフターバーナーをつけずにやる流れがある。
【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
離着陸時の騒音に係る超音速エンジンという観点では、ESPRの技術でかなり騒音を低減することが見込まれている。JAXA(ジャクサ)においてはさらに低騒音化の研究も継続しているところ。ここで提案をするのは、それに加えてさらに機体側でも低騒音化を狙うこととしている。エンジンを一切やらないということではない。
離着陸時のアフターバーナーだが、当然のことながら騒音の制限が厳しくなっており、アフターバーナーをたいたのでは今の環境基準をとてもクリアすることができないと考えている。
【大林委員】
研究計画について、最終的な実験機ばかりが強調され過ぎていて、並行して行われる研究開発のマイルストーンがはっきり見えない。特に途中で実施する模型飛行機による実証実験や、ソニックブームの計測技術に関する新しい研究開発要素等があると思うので、最終的な成果だけでなく、途中の研究開発で出てくる成果についても適切なタイミングでまとめられるように計画を組んでいただきたい。
-了-
研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付