原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第14回) 議事要旨

1.日時

平成18年8月4日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 宇宙開発委員会会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズⅡについて
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 榎田洋一、柴田洋二、田中知、田中治邦(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課課長補佐
日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長、他4名

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズⅡについて

原子炉システムに関する設計研究、燃料サイクルシステムに関する設計研究について

 原子力機構より、資料14‐1‐1、資料14‐1‐2に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 「実証炉」という言葉が盛んに使われているが、「実証炉」という言葉はすでに意味合いがあり、日本語として定着している。実証プロセスをどうするかの議論がまだ行われていないので、これから「実証炉」という言葉をどのように使えばいいのか。資料の3ページに実証炉の予備的概念設計を2010年までにやるとあるが、プラント主要項目(研究開発課題)を選定するときに、実証プロセスはどうあるべきか、どのぐらいの規模のものをつくるべきか、実証とは何か、という議論は本部会で行うのではなく、別の場で議論されたものがあるという前提で考えてよいか。

【事務局】
 実証プロセスがどのようになるのかは確定していない。将来、個々の要素だけではなく、個々の要素を集大成したものとして1つの設計ができる。その要素として、形になりそうな1つの姿を、これからの5年間において、作り出すことが、その次に進むために必要。今までの計画の中では、個々の技術について、良し悪しを決めていくという色合いが強かったが、これだけではプラントの形にならない。そのときにできている技術でプラント全体を1つの形にする作業が重要。五者協議会が既に発足しており、その検討項目の中に実証炉のあり方という項目もあるので、これから議論をしていく中で、研究開発成果を適宜発表し、概念設計の作業の進捗も聞きながら、最終的に2010年の段階で概念をまとめるという形になると考えている。

【委員】
 設計は個々の技術だけではなく、全体の組み合わせになるので、端的な話を言うと、30万kWd/t(キロワットデイパートン)のプラントをつくるのか75万kWd/t(キロワットデイパートン)のプラントをつくるかでは全然設計の中身が違ってくるし、コンセプトも変わってくると思う。

【事務局】
 具体的な規模をどれぐらいにするかは、将来の実証の技術ステップとして、実証炉あるいは技術開発においてどこまで確実性を高めておくかにかかってくる。一概には言えないが、どの程度の規模の設計にするかは、五者協議会の中で議論をして、コンセンサスを得た上で、スペックを出していただく。これを踏まえて作業を機構の中で研究開発の一環としてやった上で、その結果については改めて国として評価をするのが2010年になると思う。

【委員】
 炉の資料14‐1‐1の2ページでは「実証炉の予備的概念設計」と書いてあるが、3ページでは「実証炉の予備的概念検討」と書いてある。3ページのほうが正しいと思う。FBRとFBRサイクルシステムが安全性、経済性において、その時代の軽水炉を凌駕するような性能を発揮できるということを確実に把握できなければ、導入する、しないの目処も見えない。それを2050年頃にできるようにするために、実証ステップとして、どこまで、どのサイズで実証炉をつくればいいかを検討することになる。8ページの2010年までの左側半分の仕事においては、「実証炉の予備的概念検討」というのが正しくて、右半分に行ったときに、「実証炉の概念設計」という言葉が出てくると思う。一方、サイクルのほうを見ると、実証燃料サイクル施設を何が何でも概念設計するという記述が、資料14‐1‐2の4ページ右側のフェーズ2にあり、実用サイクル施設の概念検討は、きちんと実用化できるのか極めて不安である。先にまず何かつくろうというイメージが先行するような感じでよくない。

【事務局】
 炉については、「予備的概念設計」より「予備的概念検討」が正確だと思う。一番大きな問題は、炉とサイクルで設計のイメージが2010年と2015年の段階においても違うということ。炉は、知見もある一定のレベルまで来ており、見通せる確度がサイクルより高いという議論があった。炉とサイクルの進捗の違いを考えたときに、2010年と2015年の目標として書くべきことが違ってくるのか、あるいは、進捗が違うが、これからは力の入れ方を変えることによって、同じレベルまで同じ時期に引き上げようというように持っていくのかが、判断を要するところだと思う。

【機構】
 燃料サイクルの開発として、全体の大きな流れは、ホット工学によって、きちんと技術を確認するステップを踏むというもの。その後、プラントの実証をするために実証燃料サイクル施設が必要。ロードマップでは、2030年頃というおおよそのポイントを示している。2015年度は再処理試験施設で、ホット工学が最初にあるが、その後に仕上げていくという観点から見ると、実用燃料サイクル施設は「概念検討」、実証燃料サイクル施設は「設計」という言葉で表現し、グレードが少し違うということを示している。

【事務局】
 燃料サイクルの資料14‐1‐2の4ページにおいて、「2.工学規模ホット試験」は2010年までに基本設計、概念設計が終わっている段階まで来ているが、「4.実証燃料サイクル施設」、「5.実用燃料サイクル施設」は、2015年に成果を示すとなっている。実証燃料サイクル施設は、炉で言えば実証炉に当たるものだろうが、そうすると、燃料サイクルの工程と炉の工程では違ってくるが、やむを得ないということか。

【機構】
 ソフトワークも、まずはホット工学に集中し、その成果を次へつなげる。実証は、将来像を描いておかなければいけないので継続してやる。そういうことで設計の重点の置き方などを示している。

【機構】
 開発の仕方としては段階的にやるのが当然だが、炉のほうで言っている実用サイクル施設は、ある概念はそこで決めるようなデザインができ上がっていて、それを段階的にやるべく、まず実証サイクル施設なり実証炉を設計して達成していく。達成していった先に実用サイクル施設の設計がリバイスされることはあり得るが、もともとディフィニションがないうちに実証サイクル施設をつくるわけにいかないだろうという意味で言えば、こちらも同じようなフェーズではない。

【委員】
 サイクルが遅れているとすれば、資源をさらにそこに集中して、炉と早くペースを合わせる必要があるのか。それともサイクルのほうは炉より少し遅れても問題ないとするのか。その辺が随分と議論のスタートとして違うところである。

【機構】
 炉は、「常陽」や「もんじゅ」を作ってきた実績がある。サイクルは、小規模の実験室規模のテストはしているが、工学規模の試験はまだなので、ペースがやや遅い状態である。2050年時点では全体がそろわなければならないため、サイクルのほうがやや遅れぎみなら、2050年に間に合うように開発を進めなければならない。2015年のターゲットは、実用化像とその後の研究開発計画を出そうということで、2010年に革新技術の決定をするということは、炉に関してもサイクルに関しても、平仄を合わせた進め方をしたほうが望ましい。原子力委員会から指摘があったように、サイクル技術に関して、海外での技術や補完概念などもあるので、主概念に代替候補といったものをフォローアップしながら、2015年までに選択をより慎重にすることが望ましいと思う。

【委員】
 サイクルは資料14‐1‐2の4ページで、「4.実証燃料サイクル施設」の概念設計、概念検討等々が2010年から始まるのに比べて、「5.実用燃料サイクル施設」の概念設計が2007年から始まっているが、うまく合っていない感じがする。実証燃料サイクルの概念検討を早めにすべきではないか。革新技術を決定し、ホット試験をどうするのか、実証燃料サイクル施設をどう決めていくのかとなれば、選ぶべき技術は、早め早めに決めていかなければいけない。資源と人を集中しなければ、なかなか決まらないと思う。

【委員】
 原子炉システムについて、2010年と2015年の間の「実用炉の概念設計と成立根拠となるデータ類」の「成立根拠となるデータ類」はプラント概念の最適化の成立根拠となるデータ類だけのことを指しているのか、あるいは、読み方によっては、何か後付けでデータを詳細化して説明力を高めるのか明確でない。次に、燃料サイクルシステムについて、選択対象の範囲や、決定時期が現時点では決めづらいため、明確化が行き届いていないと思われる。現在考えられている燃料サイクルシステムは、2050年ごろからアメリシウムやキュリウムも使用済燃料からきちんと回収して、それを燃料にフィードして、なおかつ高速増殖炉の実用炉が入る時期の最初の段階から入れていくというシナリオだが、比較的それは現在の技術とのギャップが大きいのではないかと思う。回収技術を実証し、ある程度の回収をして、研究開発に役立てるということが重要であり、研究開発いかんによって、その後の4とか5が影響を受ける。現時点では仕方がないが、4ページの「採用する各革新技術の決定」の2つ目の代替技術等の評価ということの範囲を、明確化しておいたほうがいいと思う。「代替技術等」の「等」は読みにくいということ、9ページの2の概念検討の「また、ウラン粗分離技術などに関して海外技術を含めた」の「ウラン粗分離技術など」には、マイナーアクチニドが入るのかどうかというところは読み切れない。補完概念の乾式再処理の技術は、今後10年とか、あるいは実証燃料サイクル施設、実用燃料サイクル施設に入るのかどうかというところが読みにくく、決断を遅く、幅を持たせるという表記になりがちではないかという気がする。

【機構】
 「代替技術等」について、粗分離で言えばUREXの最初のところの分離の技術、あるいは、GANEXというフランスの一括回収技術もあるが、ここではモノアミドという溶媒を使っており、それによるウランの粗分離、あるいはMA回収についても、フランスなどが行っている。溶媒抽出法をベースにしたMAの回収などについても、ソフトワークで、評価し、その後の決定のためのデータとしようと考えている。

【事務局】
 報告書とりまとめ作業においては、機構から紹介のあった線表で妥当と思われるものを、報告書の参考資料にしようと思っている。報告書にそもそも載せないというのも選択肢としてあると思う。

【委員】
 サイクルのほうは、2010年までに革新技術の決定があり、これについては代替技術をどのように使うかの評価等々があり、何か試験をしながらということが重点になっている。そういうのが実証燃料サイクル施設、あるいは実用燃料サイクル施設にどのように関係してくるのか、いつも念頭におきながら革新技術の決定をしなければいけないと思う。

【事務局】
 炉の資料14‐1‐1の7ページ、6ページに書いてあるものでいうと、実証シナリオが原子力機構から3つ、委員から1つ出され、少し前倒しにしようという意欲も込めて、1つの例として火力発電所を使うケースをとりあげたと思う。出力など、議論の結果でも確定できないところは明記しないが、何らかの例として、報告書に載せたほうがわかりやすいと思う。

「もんじゅ」の性能試験と研究開発について

 原子力機構より、資料14‐2に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 10ページの最初の78体燃料取りかえが完了した段階で、13ページのような余剰反応度は、180度の条件で何パーセントΔK/K(デルタケーオーバーケー)ぐらいになるのか。

【機構】
 ぎりぎり臨界、若干プラスになるというレベルである。温度を上げれば未臨界という状態であり、ゼロ出力でしか運転できないという状況である。

【委員】
 年間0.3パーセントΔK/K(デルタケーオーバーケー)ぐらい落ちていくが、臨界時期が遅れることで、さらに遅れるという悪いフィードバックが働かないようにしなければいけない。

【機構】
 78体の新燃料集合体は10年以上前に製造され、保管されているもの。「もんじゅ」の炉心内に装荷している燃料と同様にPu(プルトニウム)‐241はディケイしている。そういった燃料を入れて運転の再開の時期との関係で、ほんとうに臨界になるかというのは、実は当事者にとっては非常に切実な問題である。臨界にすると宣言して、制御棒を引き抜いても未臨界だったという事態にならないよう、ぜひ慎重に準備したい。

【委員】
 各段階で地方自治体との了解が要るのか。

【事務局】
 はい。

【委員】
 そういうのが順調に行くように、国としても、何かしら支援みたいなものができてこないと、燃料をつくっても、また臨界にならないと遅れてしまう。ぜひよろしくお願いしたい。

【委員】
 「常陽」の燃料については、ある程度少量についてはCPF等で使っているが、「もんじゅ」の燃料については、まだ再処理等の研究もしていないと思う。実際の燃料を使って再処理に移行できそうな時期の計画というのはどのように考えておけばよいか。

【機構】
 具体的なことは今後の課題であるが、少なくとも集合体規模の使用済燃料を処理するということになると、ある程度の規模の燃料サイクル側の施設が必要になってくる。最初にそれが与えられる機会というのは、ホット工学試験施設ということになるが、その規模も、具体的に決めるのはこれからである。そこでどの使用済燃料を使うかも、これから議論していくことになる。「もんじゅ」の使用済燃料を再処理して、TRUを含む燃料を取り出すことができるということをデモンストレーションするということが求められれば、そういうことは別途検討する余地はあるが、もう少し先の段階。当面、使用済燃料はサイトに保管しておくということになると思う。

国際協力について

 原子力機構より、資料14‐3に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 さまざまな国際協力があるので、各々国際協力の目的が違うと思う。すべての国際協力に同じような対応をするというよりは、目的を特定化して我が国が何をするかが大事である。

高速増殖炉サイクルの研究開発に関する必要資金について

 佐賀山原子力機構副部門長より、資料14‐4に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 終わりから3番目の実証試験施設の内容に関して、将来の計画の中の実証にかかわる施設の設計の費用はここに入っているということか。それ以外に、施設の運転費用も、場合によってはここに含まれるという理解で間違いないか。

【機構】
 設計費用だけである。

【委員】
 これは、文部科学省のサイドのほうだけ入っているのか。

【事務局】
 ここにあるものは、今回の実用化戦略調査研究で書かれている研究開発テーマで必要とされている資金を書いているので、これをどういう予算に分けて手当するかというのは、別問題と思う。

【委員】
 本日あった議論について、評価報告書に議論を反映させていただく。

第6回、第7回議事概要(案)について

 第6回、第7回の議事概要(案)についての意見等があれば、8月11日までに事務局あてに提出することとなった。

(2)今後の予定について

 事務局から説明。

‐了‐

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研究開発局原子力研究開発課

(研究開発局原子力研究開発課)