原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第12回) 議事要旨

1.日時

平成18年7月3日(月曜日) 10時~11時

2.場所

学術総合センター 2階 中会議場1

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズⅡについて
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 柴田洋二、代谷誠治、田中知、田中治邦、前川治、山中伸介(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課課長補佐
日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長、他1名

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について

 原子力機構より、資料12‐1に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 評価報告書の中では、技術の選択や研究開発課題の摘出等について、選択に関する透明性が非常に必要であり、十分に議論する必要がある。また、軽水炉の再処理、燃料製造で培われた知見をどのように反映させるかということが日本全体として資源を節約しながら研究開発を進める上で重要だと思う。これら2点の観点から発言する。
 まず、解体・せん断については、今まではラッパ管をとったりするのにレーザー法を使うということであった。大型のMOX(混合酸化物)の高速増殖炉の計画が断念されたが、そのときに米国で開発され、あるいはそれ以降開発されてきた技術を日米協力でやってきたものだが、研究開発がアメリカで行われていたころから20年ぐらいたっている。そのときの状態と現在の技術の条件で、どのように位置づけてこれを選択したのかが重要だと思う。
 レーザー法に比べて、機械式のせん断のほうが、非常にいい砥石ができるとのことだが、例えば1980年にはなかったが、現在はあるという説明が必要ではないか。
 溶解についても、東海工場や六ヶ所再処理工場の溶解槽の形式と同じものでは難しいという点について、どういう点が性能として最もよくなるのかを、従来の装置との比較で説明していくことが必要だと思う。
 プロセスについては、例えばモリブデン酸ジルコニウムの溶解槽などへの付着は、軽水炉の再処理でも問題となったことがある。高速増殖炉では、モリブデンやジルコニウムがウランとの比では当然増えるが、保守性などの観点から回転式の溶解槽は十分な検討が行われているのか。
 廃液の二極化について、今の再処理だと、NOx(窒素酸化物)の吹き込み等で、プラント全体としてリサイクルをしても硝酸は余る。そのため、回収酸の使い道をできるだけ作っても、硝酸ナトリウム等で処理しなければいけないが、将来の先進湿式法の再処理のプロセスでは、できるだけ硝酸が余らないようにする配慮されているのか。
 次世代再処理プラント全体を考えたときに、ガラス固化に対する考慮がどうなっているのか。例えば白金属元素のガラス固化体1本当たりの消化率が、発熱性核種を回収別途処理ということになると、増えるのではないか。現在でも高燃焼度化に伴って困っている白金属を、この中に入れるとすると、そのあたりも考える必要がある。

【機構】
 まず、六ヶ所や東海再処理工場のこれまでの知見をどう位置付けるのかに関しては、フェーズ3の中で詳細化を進めていくが、特に、東海工場におけるトラブルや保守等に関する知見を収集・分析し、可能な限りそれらの現状の知見をフィードバックできるように、今後の設計を進めたいと考えている。
 次に、レーザー法はアメリカとの協力研究で検討してきており、炭酸ガスレーザーから始め、最近ではコンパクト化も含めて、YAGレーザーを使った切断も行っている。例えばラッパ管を長手方向に切るようなプロセスがあるが、溶断する際に中の燃料ピンを傷つけてしまう可能性が避けられないなというのがレーザー法の問題点である。
 レーザー法が開発された当時の機械式の切断では、刃の摩耗などある種制限があり、機械切断では難しかったが、最近では、砥石の材質が向上しており、寿命という観点で相当改善されており、現状では機械式のほうがいいのではないかと考えている。
 それから、米国との協力の中で選択されてきた連続溶解槽であるが、高速増殖炉では、プルトニウムの冨化度が高いため、臨界制限が非常に厳しくなる。そうすると、例えば六ヶ所で使われているような非常に大きな回転式溶解槽の場合、大きなスラブの幅を狭くしなくてはいけなくなる。幅が非常に薄く、しかも半径が大きいものを扱わざるを得なくなると非常に難しい。連続溶解槽のドラム型は、回転式に比べると、臨界の幅と処理量が比較的うまくマッチングしている。ただし、処理容量を大きくしようとすると、ある程度限界があるので、これがどの程度長手方向に長くできるかといった点は十分考慮する必要がある。
 保守の点については、別途回答させていただきたい。
 次に、廃液二極化の目標の1つは、余剰硝酸をなるべく出さないような工夫をするということである。ゼロにすることは難しいので、残った余剰の硝酸をどうするかということも含めて、検討する必要がある。
 また、ガラス固化について、フェーズ2では、白金属を別途除去するという評価にはしていない。つまり、MAを除去することで発熱量が減ることに伴い、従来の発熱制限で規定されていた以上のFP含有率が可能となる。全体としてガラス固化体の発生量が、発電電力量当たりで軽水炉に対して6割ぐらいになると評価している。白金属やモリブデン等も除去する対象とするかどうかといったところも含めて、フェーズ3の中で詰めていきたい。

【委員】
 高レベル放射性廃棄物の処理についは、処分も含めて検討が必要だと思う。補完概念の金属燃料サイクル、溶融塩電解の評価では、高レベル放射性廃棄物の量が多いという点にかなりの比重があったようだが、処分場の設計をどうするかとの関係で、廃棄体の量だけで議論できる問題ではない。湿式においても、ガラス固化について、同様の問題があると思うので、フェーズ3で、その辺の課題があることを、技術を選ぶということの観点からのフェアネスは少し考えたほうがいいと思う。

【委員】
 溶解槽の保守性について、フェーズ2の中で検討したのか。検討したが、たまたま今は資料がないということか。

【機構】
 再処理工程、あるいは製造について、機器レベルでの設計までは十分になされていないというのがフェーズ2の現状である。サイクルの場合は、個々の機器の成立性は必要だが、いろんな機器を組み合わせてプラントを作るということであり、全体に対する設計成立性という意味で、炉に比べれば、個々の設計の比重は今の段階では、あまり大きくなくてもいい。まずはプロセスをきちんと固めるということが必要であり、そちらを重点的にやってきている。

【委員】
 先進湿式法再処理簡素化ペレット法という概念は、これがいいのではないかということだが、機器については、炉と比べると検討のレベルが違うということか。

【機構】
 そのとおりである。

【委員】
 MA入りのMOX(混合酸化物)粉をこれまでどれぐらい取り扱った経験があるのか。また、3ページに書いてある工学規模へ移行するときに、どういうような移行の仕方をされるのか。照射試験の結果を、製造条件にどのようにフィードバックするのか。

【機構】
 MA入りの燃料ピンの製造実績については、つい先日も、アメリシウム5パーセント、3パーセントのMOX(混合酸化物)燃料、あるいはネプツニウム、アメリシウムがそれぞれ2パーセントのものを、常陽で短期照射している。セルで作ったアメリシウムMOX(混合酸化物)燃料は、数十ピン単位でつくっていると思う。照射試験の結果のフィードバックについては、照射試験とその後のPIEの結果を見つつ、コード解析に反映していくことが考えられる。セル内の開発をどうするのかについては、今後、燃料をつくって、炉で燃やしていくため、量産技術が必要になってくる。量産技術開発については、低除染ではなく、高除染の体系で実施していくことになるが、そのときに遠隔も考慮した形で開発を進めていく。それと並行して、少し規模は小さいかもしれないが、実際にセルでMA入りの燃料をつくることになると思う。

【委員】
 それぞれの項目で、要求される技術仕様があるが、本当にこれが技術仕様なのか。技術仕様であれば、例えば機械的な切断のところであれば、何センチに切らないといけない等のターゲットがきちんと明確になった上で、開発をしていく必要がある。どの観点でこういうものを2015年までにやっていくかというのが、課題をスペック的にもう少し明確にしたほうが、よりわかりやすくなるのではないか。

【機構】
 5ページに、研究開発の中で、通常3センチから5センチぐらいのせん断とある。粉化率を向上するために、短尺せん断ということで、約1センチということで、スペックを考えている。

【委員】
 仕様の数字は文章に載っていないが、いろんなところを見れば載っているということか。

【機構】
 載っている項目もあれば、必ずしも数字がまだ確定していない部分もある。設計をした際のスペックというのがあるので、そういう意味では、どこを目標にしているかということは、技術検討書に記載されている。

【委員】
 技術の選択の透明性を確保することから、今回の報告書では大きな技術選択に関してはできるだけわかりやすく書いたほうがいいと思う。炉については、一番大きな論点になるであろう、ループ型とタンク型の議論を行った。燃料サイクルのほうは、ウラン粗取りの晶析法と、MA抽出の抽出クロマトグラフ法を使うということが、結構大きな選択ではないかと思う。ウラン粗取りとして、UREXプラスと比べて、晶析がどういう点ですぐれているのか、あるいは技術開発要素が低いのか、早く到達するのか等、フェーズ2ではやっていないがいろんな評価項目を設けて評価し、報告書に入れていただきたい。

【事務局】
 サイクルと炉では違う点が幾つかある。タイミングが違うからなのか、技術の中身が違うからなのか、わからないが、結果として、炉とサイクルで同じフェーズにまで到達しているのか、どちらかが遅れているのではないか、あるいは、遅れていないにしても、これから違うことを考えないといけないのではないかという点が出てくる。どう考えればいいのか。

【委員】
 現状では違うと思うが、ある時点においては同じレベルにしなければいけないとすれば、これからの研究開発について、ある時期で同じになるように、一方のほうを加速し、より現実性を持たせるようにしないといけないと思う。

【委員】
 高速増殖炉の成立性と軽水炉の成立性は違うと思う。高速増殖炉の場合はリサイクルが前提で、全体のシステムが非常に多岐にわたって、どこかが止まると全体が止まってしまうという恐れがある。高速増殖炉のサイクルの場合も、遅れている部分があったときに、そこがボトルネックとなって、どこかが止まると、全体が止まってしまう恐れがあり、そこの部分の解決について考えておく必要があると思う。再処理、あるいは燃料製造と炉のほうで、フェーズが違うようだということは、全体としてのインテグレーションをどのように考えるかという観点から考えるとき、課題だと思う。できればそこについて作業部会の総意としてこう考えるということを、うたっておく必要があると思う。

【委員】
 3ページの全体のバーチャートを見ていると、サイクルについては、炉と比べて相当時間がかかりそうである。実規模大で動かしていくという観点に立ったときに、個々の要素技術の成立性を確認できるのは、とても5年では無理で、2015年でようやく確認できるということになると思うが、そこのところを教えていただきたい。機器開発は、主要工程の機器の製作、機器性能試験というのは、この上はプロセスだけだろうから、スケールアップの影響等確認のための枢要プロセス試験というのは、機器開発とあわせて2015年ぐらいまでかかってしまっているということと、燃料製造も、簡素化ペレット法による照射実証というのは、2015年までにはやられないということなのか。2050年までには十分時間があるが、FBRの実用化は、天然ウランがだんだん逼迫してきて、値段が上がってきたから入るだろうから、軽水炉の場合と違って、サイクルが回らなかったら燃料がなくなり、原子炉が導入できないというか、原子力発電をやめなければいけないことになる。そのため、サイクルはすごく重要だが、2050年までは時間があるとしても、2015年までに革新技術を確認できるかというのはどうなのか。

【機構】
 資料にある開発計画よりはもう少し前倒しでやることを考えている。例えば、スケールアップの影響という部分は、工学規模ホット試験という開発課題に相当する。枢要プロセス試験は、特に晶析、MA回収について1kg/h(キログラム毎時)ぐらいの規模でスケールアップ影響を確認するものである。その後予定している統合試験も前倒しすれば、2015年ぐらいには到達できないかと考えている。資金等も含めて検討はする必要はあるが、前倒しでの計画は可能と考えている。照射の話は記載していないが、簡素化ペレットによる実証については、燃焼度が最大のところまで行くかどうかというのはおいても、MAを含んだ照射燃料の挙動の情報は得られるので、その都度得られた照射情報を加味して、全体としては2015年に体系を整備するのは、十分可能と考えている。

【委員】
 照射の燃料の熱機械的な物性を確認するのは、比較的少数体でもできると思うが、マイナーアクチノイドでの核データがどれだけの精度があるかというのは、大量に使ってみないと多分わからない。それも、本当は課題の1つ。軽水炉ですら、ナトリウムを入れた設計を早まったこともあるわけで、ウラン濃度が、核断面積測定を実験室の中でやったデータに基づいて炉心の設計をしてみたら、ちょっとした差が随分大きな差になってあらわれるということがあった。プルトニウムについても、炉心を組んでみて、大量に入れてみると、そういうことが初めてわかってくるということもある。10年でわかる話ではないが、大量にMA入りの燃料をつくって、大量に炉心に入れて、運転して初めてわかることなので、そういうこともあるというのは忘れないようにしたいと思う。

【委員】
 スケジュールの少し加速的なことも考えているということだが、第二再処理工場の検討はどこかで始まるだろう。その議論に、こういう議論が有効に反映すべきと思う。資料3ページを見ると、小規模ホット試験でCPFはホット試験をしながらやっていく等々で、この辺のところでかなり見通しがわかるはずである。

【機構】
 プロセス的な部分というのは、その辺で十分わかると思う。

【事務局】
 今回の委員会での議論等を踏まえて、加速すべきものは加速するということを考えなければいけないと思う。今の線表とは違うものを改めてお示しして、この委員会として、今後の計画を定めていくことを考えている。

【委員】
 技術開発、研究開発をする者が一番大変で、難しいことを一番よくわかっていると思う。それを無理やり2015年に何が何でも間に合わせるようにもっと加速せよと強く言うつもりはない。むしろ、研究開発は大変だということを我々が正しく認識することが少なくとも必要と考えている。その上で、加速できるものはすべきだが、無理やり加速して失敗するのはよくない。

【機構】
 そのとおりだと思う。それぞれの課題、キーポイントとなるところをできるだけ可及的速やかに入れていく。多くのデータをとらないとわからない部分は当然あるが、実証設備等の経験も踏まえて、最終的に実用化する中でやっていく話と整理して考えていけばいいと思う。

(2)今後の予定について

 事務局から説明。

-了-

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研究開発局原子力研究開発課

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