原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第11回) 議事要旨

1.日時

平成18年6月19日(月曜日) 14時~16時20分

2.場所

経済産業省別館11階 1111会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 榎田洋一、柴田洋二、代谷誠治、田中知、田中治邦、前川治(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課課長補佐
日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長、他6名

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について

炉システムに関する質問への回答について

 原子力機構より、資料11‐1に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 2015年までにやる技術課題に抜けはないという理解でよいか。

【事務局】
 今まで委員からいただいた意見・考えは、今後の研究開発に当たって留意すべき点として報告書に載せたいと思う。FSのフェーズ2で残ったものは、優先順位をつけた上でフェーズ3に反映するものと思っている。

【委員】
 例えば、高クロム鋼は使う部位により製法が違うので、管材、板材、鍛造材など、それぞれ強度データをとる必要がある。どの部位の材料特性データをいつまでに取得し、どの部位が残るかを整理しているのか。

【機構】
 材料データについては、60年寿命を担保するために、10万時間をとろうというものであり、2010年までにデータはそろわない。製造方法や特性を見て、いけそうかどうかの判断に必要なデータは、2010年までに何らかの形でそろえておきたい。

【委員】
 今日、説明頂いた概念の機器設計や製造は不可能ではない、フィージブルであることは間違いないが、トラブルは、昔は大丈夫と思っていたところが大丈夫ではなくて起こる場合があり、どういう設計のポジションに立っているかというところから議論しないといけない。作業部会として優劣をつけて進めるのか、それとも、淡々と進め、比較論ではなく、設計コンセプトが成り立っていればよいとするのか。

【委員】
 前者だと思う。今後いかに研究開発を進めるかを策定するのが、この部会のミッション。審議した結果、大きな問題があるとなれば、異なった計画をつくることになるかもしれない。

【委員】
 どれが良いかという判断は非常に難しい。ユーザー側からの要請が強く、それを考慮して進めることは間違ってはいないと思う。

【委員】
 実用機器で実際に使う場合、最終的にどのように信頼性を確認するのか難しい。熱交換器や蒸気発生器については、実際にさまざまな不具合が起きたという経験が生かされ、少しずつ改良されている面もある。例えば、単管ヘリカルコイルのSGと直管二重管のSGで、今後どこで最終的に判定するのかがわからない。

【機構】
 最初に溶接部に欠陥が発生し得ることがわかっているので、溶接部の数、溶接部をいかに検査できるのか、亀裂進展の阻止の3点に絞って書いている。主要な破損が起き得る場所と、その検査に対する信頼度をどう確保するかという観点から、この辺ではなかろうかと考えた。

【委員】
 直管SGの管・管板接合部は非等方というか3次元の形状をしているが、これに対する構造評価手法の確立と、それを確認するプロセスが要ると思うが、どの程度済んでいるのか。

【機構】
 これからの開発課題だと認識している。

【委員】
 2010年あるいは2015年までに結論が出るような大型の構造試験を予定しているのか。

【機構】
 そうである。

【委員】
 熱膨張にはどのように対応するのか。

【機構】
 SGについては、胴ベローズが胴全体を伸ばす蛇腹になっており、伝熱管の膨張と本体の膨張との差をここで吸収しようという考えである。

【委員】
 データベースの整備等は、どこで使うかによって違ってくるが、スケジュール的に間に合うのか。

【機構】
 2010年の革新技術の判断には供せられるデータをこれからとる。2015年の技術体系の整備においては、60年寿命で大丈夫というところまではできないが、さらに5年間エクステンションして、充足性を高めたデータベースとしていきたい。ケース・バイ・ケースであり、材料や部位によって違いが出るものと思っている。

MOX(混合酸化物)燃料サイクルと金属燃料サイクルの比較について

 原子力機構より、資料11‐1に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 13ページで廃棄物発生量が単位発電量当たりで比較されている。六ヶ所の再処理工場の発電効率は何パーセントを仮定しているのか。また、縦軸のパーセントは重量なのか。また、どういう前提でこのパーセントになっているのか。高レベル放射性廃棄物はTRUを分離するかどうかで違うが、かなりの期間TRUの分離は、後のほうで入ってくることになるので、キュリウムのような発熱性核種を取り除いた比較だけでいいのか。

【機構】
 先行の軽水炉再処理の場合の熱効率は35パーセント程度、FBRは42パーセント程度を想定している。縦軸は廃棄体の数である。ガラス固化体は1本150リッターとしている。ここでの検討はTRUのリサイクルを前提とした検討であり、FBRの平衡期を想定した形で設計をしている。FSの中では評価はしていないが、TRUをリサイクルしない場合のFBRの廃棄物は、発電量当たりで軽水炉より少し多くなる。MAをリサイクルした場合、軽水炉等でMAを除去した場合に比べると削減の効果は大きい。

【委員】
 計量管理は、高い測定精度が必要となり、開発に時間を要すると思うが、見通しはどうか。

【機構】
 1単位のボリュームが非常に大きく、不明物質のシグママフが大きくなるので、機器を小分けするのも一つの手である。経済性が少し悪くなるため、どの程度の精度が本当に要るのかを含めて、今後の検討課題である。

【委員】
 金属燃料の場合は被覆管内面の最高温度が650度になっている。金属燃料で達成するのは簡単ではないと思うが、そこのところはどうか。

【機構】
 650度は、炉外試験等で実際に三元系の合金と接触させた状態で温度を上げていき、界面に反応というか液相が出るかを、実際に実験したデータに基づいたものである。保守的に見て、プルトニウムの富化度が25パーセント程度以下で、内面温度を650度以下にキープすれば、液相形成は起きないと予測を立てた。

【委員】
 MA等が入ってくるときでも同じように予想されるということか。

【機構】
 MAが数パーセント入ってきても、温度設定は問題ないということで設定したものである。MAが増えた場合についても、確証試験的な照射あるいは反応を見るデータは必要である。

【委員】
 晶析で、ある核種のDFが問題となってきたときに、DFを高める方法はあるのか。それとも、成り行きで決まるのか。

【機構】
 DFを高くするような形で工程を考えることも対応の一つかと思う。条件によって変わるので、きちんと確認するのも今後の課題である。

研究開発課題の重点化について

 事務局中村課長より、資料11‐2に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 基盤的な研究と基礎研究とはどのように分けているのか。

【事務局】
 基盤的な研究は、高速増殖炉につながる研究開発であり、高速増殖炉開発の一環として取り組んでいくべきもの。基礎研究は、科学的な知見を蓄積する、いろいろな分野に貢献するなど、学術的な観点の強い研究と位置づけている。

【委員】
 今回基幹電源として実用化することを基本として今後の研究開発を行うことになったので、補完概念を定義し直して絞り込むことは賛成である。フェーズ2に書かれている代替技術以外にも、基幹電源として最も実現性が高くて安いものは何かという議論があると思うので、定義を変えて書いておく必要があると思う。

【事務局】
 代替技術の考え方は既存技術ということで変わっていないが、それ以外に革新技術の新たな芽という、新たなものがあり得るかもしれない。この委員会としては、代替技術とは、広い意味でとらえるつもりでまとめていただきたい。

【委員】
 ヘリウムガス冷却炉、先進湿式法再処理、被覆粒子燃料製造は、あまり議論しなかったため、補完概念から外すということか。

【事務局】
 開発目標に対する適合性を見た際に、基幹電源となり得るのかどうかという問題があった。高温熱源としての多目的利用については、HTTRでの研究が役立つので、今すぐ力を入れて研究開発をしなければならない状況にないと理解している。

【委員】
 国際協力にも利用できそうだから、補完概念としてやったらどうかとも考えていたが、基幹電源として本当に成立するかどうかという観点もあり、その辺の見方は難しいかもしれないが、どう考えればいいか。

【事務局】
 海外と研究開発協力を行い、知見を深めていくことが研究開発の進め方だと思う。この研究開発をやるべき意味合いがその先に見えているかどうかで整理し、研究開発すべき課題をどうやっていくのかという順番で整理をしたほうが、選択と集中はすっきりすると思う。

【委員】
 主概念、補完概念以外の概念は、選択と集中の観点からやめようということだが、この時期に将来の芽を全部摘み取ってしまうことがいいのか、あるいは、長期のことをにらんでポテンシャルは残したほうがいいのか。

【事務局】
 選択と集中と、柔軟性のバランスをどこでとるかだと思う。基礎研究ということで続けるのは学問としてはあると思う。高速増殖炉を実用化するためにこの研究があると言えるレベルに達しているのかどうか。ここでその位置づけを明らかにするのは大事ではないか。

【委員】
 2050年~70年にかけて導入する3千万KW(キロワット)の高速増殖炉に対して、高速増殖炉用の再処理工場、燃料工場は、小型のものを分散してやるほうがコストメリットは出るというのであればそれでもいいが、一つしかつくれないと考えると、着実に採用されて、かつ世界に打って出ようとしたときに、海外においてどこにも再処理工場や燃料工場がないような炉を採用する国はないので、ここは思い切った決断が必要である。

【委員】
 選択と集中は、開発の上で必ず出てくることであり、それをしないと、進まないところがある。集中し過ぎると柔軟性がなくなるので、ある程度配慮をしてやっていく必要がある。原子力のすそ野を広げるのと高速増殖炉の実用化を必ずしも1対1に対応させる必要はないが、原子力としてすそ野をきっちりと持っておくことは必要である。

【事務局】
 社会システムの中では、加速器なりでMAを専焼するという概念はあると思うが、この評価が現在進んでいない。高速増殖炉サイクルの実用化戦略に対してどう取り組むかを考えたときに、実用化に向けて何に重きを置くかを整理をすることが、この報告書の趣旨と思う。それ以外のものは、基礎研究において、知的な財産を蓄えるという観点からそれなりの比率でやっていくのかと思う。

【委員】
 ADS等は高速増殖炉サイクルの実用化に含めないという解があると思う。廃棄物といったところまで含めた広い意味で考えれば、すべてここの中に押し込もうとすると、かえって自己矛盾を生じるような気がする。きっちりと仕分けをして書く必要があると思う。

【委員】
 代替技術は主概念にとって現時点では非常に重要だと思う。5年後ぐらいまでに主概念の革新的技術の開発も進むだろうし、補完概念も研究費を得て研究開発を進めていくことで、5年後以降、代替技術との比較などが必要になる。代替技術は、あくまでも現行の技術で実用に展開できる要件があることだと思う。代替技術をきちんと位置づけて、書いたほうがいい。また、候補概念の選定のところに、それぞれの代替技術が何かを明確化し、現時点での評価として記載したほうがいい。

【委員】
 代替技術は何かあるのかや、補完概念という言葉の意味をやや変えたところもあるとすれば、その意味を書いておかないといけないと思う。

【委員】
 11ページの3の3つ目と4つ目の間に、革新技術と代替技術等の研究成果や外国の情勢、ニーズとの関係等を踏まえて柔軟に主概念の実用化概念を決めていくこととなるが、主概念の中での柔軟性はまだまだあるという趣旨を書いておきたい。また、需要家の皆様から集めた電源開発促進税を投入するので、基幹電源となり得ないと今判断されるものについては、それ以外の予算で研究開発されるものと理解している。

【委員】
 「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」ということで、実用ということは入っていないが、より実用化を目指した高速増殖炉サイクルの研究開発方針であることからしても、主概念の中の革新技術が本当にものになるのか、新技術を革新技術たるものにするには何をしなければいけないのか、それをいかに柔軟に進めていくのかが一番重要な点になると思う。

【委員】
 これから開発する技術は、10年後あるいは20年後を見たときに、世界標準になっていて各国で採用されている技術でなければいけない。報告書の中で、ぜひそういうことを打ち出していただきたい。

【委員】
 報告書の骨子は、概ね事務局案で了解いただけたと思うので、今後は文章化する必要がある。

(2)今後の予定について

 事務局から説明。

-了-

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研究開発局原子力研究開発課

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