原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成18年6月2日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 4階 宇宙開発委員会会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. 原子力システム研究開発事業(公募)について
  3. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 榎田洋一、柴田洋二、代谷誠治、田中知、田中治邦、前川治、山中伸介(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官
日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長、他3名

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について

  • 事務局中村課長より、参考資料9‐1、参考資料7‐2に基づき、FSフェーズ2報告書に関する原子力委員会の対応を紹介。当初、6月中に国の報告書の中間取りまとめを予定していたが、原子力委員会の意見などを踏まえた審議の時間を確保するため、中間取りまとめは少し先送りしたい旨説明。その後、質疑応答。

【委員】
 3月末にFSフェーズ2報告書が原子力機構より報告された後、国内外の状況の変化もあり、当初よりも検討項目が増えてきた。その辺りの整理が必要。

【委員】
 世の中のFBRに対する追い風の風潮の解釈だが、今やるべき足元の研究を堅実にやらなければ、むしろ計画が遅れてしまうという心配なのではないかと解釈する。また、原子力機構への予算措置が十分でなければ、計画が遅れてしまうという懸念もこれらの指摘には含まれているのかと思う。

  • 主査より、これまでの会合において、FSフェーズ2報告書の研究成果について、技術的実現性を詳細に評価するための時間が十分に取れていなかった事項について審議を行う旨説明。原子力機構より、資料5‐8に基づき炉の研究成果について説明後、質疑応答。

【委員】
 主概念のナトリウム炉に関して、2ループは革新的な考えだが、実現性の評価判断はどのようにしたのか。

【機構】
 2ループの内、1つのポンプが故障した際の問題については、設計対策と安全評価を行うことで評価可能。また、崩壊熱除去系については、主系統2ループへの崩壊熱除去系(PRACS)に加えて炉容器に浸積するDRACSも含めて3系統を設けることで十分と確認した。
 2ループ化に伴う大口径薄肉の配管構造における流動に関する問題については、高速域での流動試験を行い、振動特性が配管の健全性を確保できる見通しを得ている。
 2ループ化により、中間熱交換器(IHX)、ポンプ、蒸気発生器(SG)などが大型化するが、この大型機器の成立性についても机上の検討においては見通しがついている。今後、試験研究を行い、確証を得ていきたい。

【委員】
 大型薄肉配管における流速の高速域での振動特性について、よく研究をされているが、つまりクリティカルな問題にならないという理解でよろしいか。

【機構】
 はい。フェーズ2で終了した試験ではレイノルズ数1×(かける)10の7乗であり、実機の配管で想定されるレイノルズ数4×(かける)10の7乗には到達していないが、試験の範囲内では安定した結果を得ている。資料5‐8のP58に今のご指摘の説明をしている。配管のエルボ部分での流速が9.2m/sec(毎秒メートル)の場合に剥離により渦が発生するが、この渦によって振動が誘起されると問題になるのだが、渦の安定性についてデータを示している。
 図4にあるように、従来はレイノルズ数が2×(かける)10の5乗程度までしかデータがなかったところを10の7乗オーダまで試験を行い、配管のエルボ部の圧力損失係数を計算し、全体的な傾向をまとめた。圧力損失係数に加え、振動特性のデータなどを勘案したところ、流速9.2m/sec(毎秒メートル)までの傾向は、流速を10m/sec(毎秒メートル)程度まで上げた場合にも依存性はあるという見通しである。現在は、レイノルズ数を4×10の7乗まで上げても技術的実現性が担保されるかどうかについて、試験をもう一段階行うかどうかを含め解析検討を進めているところ。最終的には、実機条件に近い条件で、大きな試験をし、妥当性を確認する必要があると思う。

【委員】
 ポンプと一体型中間熱交換器については、革新的な技術だが、振動については何とかなるという判断なのか。また、メンテナンスはどのようになるのか。

【機構】
 振動の問題は今のところ何とかなると考えている。ポンプとIHXが合体したことで、メンテナンス性が低下することはないと考えている。IHXの伝熱管については、1次系、2次系ともナトリウムなので、蒸気発生器ほど検査をする必要はないが、検査可能な方法は別途検討中である。その他主要なところとしては、ポンプの軸などで、今までの分離型に比べてメンテナンス性が劣らないように設計を進めている。

【委員】
 2重管SGを選択するというのは、重要な判断だと思う。そもそも、開発目的は2次系の削除だったと思うので、2次系を持ち2重管SGを用いるというのは、徹底的に安全性を重視しているという意味ではいいと考える。しかし、問題は、それによるコストアップの抑制。2重管SGは、どうしても直管でなければならず、そのため建物の高さが非常に高くなり、コストもかさむ。例えば、管の数を横方向に増やして高さを減らすという方法も検討してみてはどうか。

【機構】
 最初に、直管ではなく、2重管でヘリカルができないか検討したが、管のつなぎ部分の問題もあり、ヘリカルは技術的に難しいという結論に達した。
 現在の設計では、7,000本程度の伝熱管があり、2ループにするとなると、一つのSGで75万kWe(キロワットイー)相当を発生しなければならない。そうすると、28メートルに上下のマンホールを加えて全長35メートル程度としなければ、十分な出力が出ないのではないかと考える。高さを低くして本数を増やすという検討は、流動不安定の問題もあるのでもう少し検討を進める予定。

【機構】
 2ループ型でPWRの新しい炉であるAP1000のSGは、ヘリカルにして単管で作るのとほぼ同じ大きさになる。なので、2重管で直管にするのと、単管でヘリカルにするのでは、あまり大きな差はない。
 また、本数を増やし、管束の径を増やす方法も考えられるが、そうすると、一枚の板から管板を作れるサイズを超えてしまうため、管板を数枚に分けなくてはならない。海外の例としては、管束を分散させている技術として、ヨーロッパのEFRがある。管を長くして本数を少なくするか、あるいは、短くして管束の径を増やす方法のほうがいいのかは検討の余地がある。しかし、管のそれぞれの流量配分を均一化させることや、ナトリウムの流れを均一化させるということは、管束の径が増えるほど大変になる。その辺りも考慮しながら、一番いい設計は何かという検討をしなければならないと思う。

【委員】
 例えば、2次系は2ループでも、1ループあたりSGを2台にする方法で建物が低くなり安くなる可能性もあると思う。

【機構】
 おっしゃる方法もあるし、2次系のみ3ループ化や4ループ化する方法や分割する方法もある。これからの設計検討の範囲にとどめておいた方がいいかもしれない。
 ただ、建屋全体は低くなるが、値段の高いSGのコンポーネント数を増やさないほうが、安くすむ。技術的可能性や、費用の問題も含めて、様々な方法を検討していきたい。

【委員】
 建設工程について、建設期間が46ヶ月というのはこの時代の軽水炉の建設期間を想像すると相当長い。
 定期検査についても、標準で41日というのは長い。今後、軽水炉も検査方法を工夫するし、運転中に機器の状態を監視し保全する方法を導入する方向。そのためには、計測機器の設置に初期費用はかかるが、炉を止めるよりはコストダウンになる。このように工夫をしている次世代軽水炉と競うことが必要。定期検査におけるクリティカルパスを分析検討し、短縮できるように、建設工程も定期検査も追求すべき。今すぐにという話ではないが、将来、設計を進めるときに考慮してほしい。

【委員】
 2重管SGに関して、徹底的なナトリウム漏えい対策として、2次系の2重配管や、空気冷却器も2重管とする熱交換器の開発を挙げているが、一方で、経済性のバランスも考える必要があり、開発できればすばらしいとは思うが、優先順位は低いと思う。
 なぜならば、「もんじゅ」が2次系でナトリウム漏えい事故が起きた後、長く止まった理由は、漏えいしたナトリウムの除去以外の要因である。今回、徹底的に抑制、防止をしたとしても、漏えいが起きれば、起きたことについての対策は必要になる。2重管SGを使うユーザーの方々にとって、本当にやらなければならないテーマなのか、もう一回評価が必要なのではないか。
 特に、2重管にすることで、直管SGしか採用できないわけだが、一方で、世の中ではヘリカルコイルなどの実績は多々ある。それと対比してどうなのか。例えば、2重管SGを導入することで、ナトリウムー水反応の検出器は一切削除し、水漏えいについてはフリーでいいというプラントコンセプトが成立するならば、経済性のメリットがあるが、そうはなっていない。空気冷却器についても、わが国は「常陽」は1重管の空気冷却器で、無漏えいでほとんどトラブルなしで運転しているという実績がある。そういう技術があるにもかかわらず、経済的にデメリットの大きい2重管空気冷却器をあえて開発しようとするのかについて、説明が必要。2重管配管についても同様。
 また、2ループプラントの安全面について、「もんじゅ」がなぜ3ループプラントを選択したのかを踏まえた上で、どのような対策をしたのかという十分な説明が必要。例えば、1ポンプトリップのときに、もう1台のポンプをトリップする時間を遅らせるとか、原子炉容器の入り口配管部分の逆流抵抗をある程度高い値に工夫するなど、「もんじゅ」に対してアドバンテージしているところが幾つかあるはず。その部分に開発要素があるのではないかと考えている。
 崩壊熱除去系について、EPRや次世代軽水炉は4トレンの傾向である。その方向が正しいかどうかは別として、将来のFBRが3トレンでいくなら、何か開発要素が本当にないのか疑問。
 大口径配管についても、高レイノルズ数で流動試験をされたとのことがだ、直径約1.3メートルで薄肉の配管、つまり非常にやわらかい配管に対する流動振動や製作性についても、何か検討することがあるのではないかと思う。
 最後に、IHXとポンプの合体について、これは非常に大胆な概念で、従来は熱交換器には極力振動を与えないように、また、ポンプでは極力熱変位を抑えてセルフスタンディングの状態にさせるというのが大きな流れであった。今回、それに挑戦するのは良いが、振動解析のみではなく、合体したときにどういう判断、設計のクライテリアを合格すればこの概念が採用できるのかという議論がまず必要だと思う。
 「もんじゅ」の1次ポンプについては、できるだけセルフスタンディングの状態に近い形で配管を引廻したり、ポンプ容器の剛性を上げるなど工夫をした記憶がある。IHXとポンプの合体についても工夫をすれば実現可能だと思うが、そのための研究開発が必要になると思うので、そのあたりについても今後の研究開発の中で明記してほしい。

【機構】
 2ループ化の根拠については、別途回答を用意する。
 高速増殖炉の崩壊熱除去系は、PWRでのLOCAのように冷却材注入と循環系統の作動という2つのミッションが必要な高圧系の崩壊熱除去とは異なり、単に自然循環をバッテリーによるダンパ・ベーンの制御で基本的に十分なシステムである。信頼性については、最も信頼性の阻害要因となる空気冷却器の出入り口を2系統毎に分割した2by2として、実質6系統とするなど、高い信頼性を確保できる設計としている。その辺りについては、確率論的評価とあわせて、将来炉と匹敵するような形にしたいと考えている。
 大口径配管については、ご指摘のとおり、フェーズ2ではレイノルズ数を中心に検討した。配管と振動の問題、配管入り口の流量分布、流速分布の問題、外乱がある場合の検討、コールドレグの2段エルボの効果などについては、これから詰めていく必要があると考えている。
 また、IHXとポンプの機器合体については、これまでの「剛」なポンプ構造ではなく、上から吊るす「柔」構造にするため、振動があまり伝播しない設計にした。それについての説明は技術報告書に書いたが、もう少しうまく説明できるように今後工夫する。
 SGの考え方について、炉を2ループ化すると7,000本という非常に大量の伝熱管本数があり、確率論的に、寿命60年間中に破損する可能性は相対的に高くならざるを得ない。伝熱管破損に気づいたときには破損伝播によりかなり破損が進展している可能性もある。そこで、信頼度を上げるためにも、SGは炉が2ループであれば2重管のほうがいいと思う。やはり、ナトリウムに対してどこまで徹底的にデメリット及びコストを抑え、メンテナンス性を担保できるかを念頭に考えている。
 それから、空気冷却器の2重配管に関しては、ご指摘のとおり。ただ、「常陽」の場合は20年で交換したが、将来の計画では60年での交換を考えているので、立地条件によっては外にむき出しており海水の影響も受けるため厳しい。実績を考えた場合、単管にするオプションは捨てていないので、将来的に安全に関わらない事項であればユーザーオプションとして用意できると考えている。

【委員】
 2050年ごろにだれがFBRを使うかということを考えると、メーカーがそのときに何社いるのかということも関係があるが、やはり最後は設計が少しずつ違ってくると思う。
 今は研究段階なので、電力の立場からすると、やはりナトリウムが気になるので、それに対して、2次系まで2重管にしてあるとか、SGが2重管であるということは、1つ大きな安心材料である。
 冷却材が漏れるということを、電気事業者はこれまでに多数経験しているので、そういう立場からすると、そこに対策を打ってあるということは、安心して採用できる原子炉ということになる。次に怖いのは、水‐ナトリウム反応で、それが起きないように、設計オプションを1つ持っているというのは極めて重要。
 最後に選択するときにはどうなるか分からないが、将来の選択肢を広く持てるほうがいいと思う。

【委員】
 配管の2重化の考え方だが、最終的に2重目の外側に漏れてこなければ、1重目は漏れてもよしという考え方の設計なのか、それとも、1重目が漏れた時点で2重化という概念が壊れているから、常に1重目をメンテナンスしていかないといけないのか。
 もし後者、要するに、あくまでもバウンダリーは1重目のほうがプラントライフを通じて維持していかないといけないという発想に立つのであれば、非常にハードウエア的に、あるいは建設的に難しいものになっていく可能性がある。
 2重化の定義を明確にしておかないと、私どもの今までの経験からすると、幾ら外側にいい容器があっても、内側である1重目に異常が検知された段階で、何らかのリペアを要求されてくる。これは国の考え方にも依存する話なので、ぜひ2重化というものが意味しているところを明確にしていただきたい。

【委員】
 材料開発、共通技術の話について。ODS、フェライト/マルテンサイト、水素化物、高クロム鋼で、それぞれ今後の課題が時期まで明確にされているのがODSである。ODSと水素化物については課題があるため明確にされているが、P83の高クロム鋼については、特に問題ないように受け取れる。その辺りを教えていただきたい。

【機構】
 前回、2015年までの研究開発計画で高クロム鋼のところを少し詳しく説明したが、クリティカルな課題というより、溶接やLBBの成立性の問題等々がある。あとは、2重伝熱管SGの管板部の信頼性という意味での、高クロム鋼の加工性、耐久性、靱性に関するLBBの問題がある。そういう意味で、まだこれから10年ぐらいは材料開発と試験データを蓄積して、それに合致した高温構造設計指針を作らなければ、実用に供するまでにはならないと考えている。

【委員】
 タンク型というのはもう選択肢から外されたのか。

【機構】
 フェーズ1のとき、つまり最初の2年間の段階で、ナトリウム炉の概念について、タンク型とループ型、ループの中でも2ループや3ループなど、様々な比較を行った。従来型の3ループとか4ループではループ型よりもタンク型のほうが安く、2ループ化にするとループ型のほうが安いというのが、非常に端的に言ってしまえば結論である。絶対的な大きな差ではないが、2ループシステムのほうが、メンテナンス性や経済性の点で望ましいとなり、2ループのループ型を選んだという経緯がある。
 これに関しては、GEN‐4などでもいろいろな意見があり、コンベンショナルなタンクはやはり高いからだめだという認識はある。そのため、タンク型の概念として、韓国が携わり、アメリカが検討を中断した「プリズム」の概念を少し変更したようなタンク型のコンセプトは出されている。
 国際的にもループ型の評価をしようという動きはあるので、最終的に選択される方向に持っていきたいと考えている。

  • 原子力機構より、資料5‐8に基づき燃料サイクルの研究成果について説明後、質疑応答。

【委員】
 遠心抽出器について、非常に細かなスラッジ、あるいは固体のものを、かなり気にして研究開発をしてきたということで、同じようなことは晶析のプロセスでも予想される。
 2つ気になることがあり、1つは、晶析に入る前に、どの程度清澄するのかということ。晶析の前後の関係の検討を十分していただく必要があるが、どの程度、十分査定されているのかということ。
 もう1つは、十分に清澄したとしても、溶液中に、パラジウムやヨウ素などが増加し、これらは軽水炉の再処理のときも問題になったが、化学反応が複雑で、細かい粒子ができる場合とそうでない場合がある。そうすると、これらについては、やはりCPF、あるいはホットの施設を使った知見が非常に重要になり、日本の中では、おそらく原子力機構しか知見を持っていないと思う。海外とのネットワークなどを通じて、そういうところも詰める必要がある。一つの単位操作だけでの良し悪しの判断は、実際の非常に燃焼度が高いものを溶かした溶液を扱うときには、まだまだ予想されない部分がある。その辺りを含めた十分な検討がされているという説明を、少し例を示して行ってもらえれば安心すると思う。

【機構】
 ご指摘のとおり、技術的課題は認識している。清澄についても、遠心清澄機というものを晶析の前に入れ、従来の清澄性能と同等のものを得ようと検討している。しかし、スラッジが晶析に全然来ないわけではないため、今後検討していきたい。今後はその辺りにポイントを置き、試験結果、あるいは評価していきたい。

【委員】
 燃料の話だが、原子力委員会から、MA入り燃料というのは長期的なオプションとして考えてはいかがか、基礎研究をしばらくするようにというコメントが出ていた。MA燃料を実際に使うメリット、デメリットをどう考えているのか。また、燃料そのものは多少消耗品的なところもあるので、最初に使う燃料と遠い将来使う燃料が違う形でもいいかと思う。軽水炉で言うと、いいものができれば、アップグレードのようなもので炉の温度を上げていくような考え方も可能な気がするが、いかがか。

【機構】
 まず、MAについての理想は、MAがちゃんと回収されて、サイクルの中に閉じ込められる技術を確立すること。それに向かって今までもやってきている。基礎を固めるという認識で行っている。
 まず扱えるものとしては、ネプツニウムあるいはアメリシウム。照射実験によって挙動を見るという基礎的なところと、それ以外の基礎物性も含めて確実に押さえていきたい。
 キュリウムについては、技術的に厄介である。量としては非常に少なく、燃料で言うと0.2パーセントぐらいだが、中性子源、あるいは発熱源としては非常に大きい影響を持つ。これについてはもう少し段階的にやっていきたい。

【委員】
 アメリシウムが数パーセント入った燃料は、あまり物性も変わらないだろうし、「もんじゅ」の長期貯蔵された燃料の照射結果がフィードバックされる可能性がある。燃料に20パーセント含有という数値が資料にあったが、20パーセントだとかなり物性値も変わるため、もう少し長期的な基礎研究が必要な気がする。
 また、燃料の焼結技術については、セラミックスの分野で新しい焼結法として、造粒しなくていいとか、焼結温度が非常に下がるといった焼結法も出てきているので、セラミックスの技術開発も眺めながら、展望されたらどうかと思う。

【機構】
 新しい焼結法については当然、我々も見ていかないといけないと思う。
 それから、MAが大体どれぐらい入っていればいいんだということで、評価でございますが、FBRが一定の場合、移行から定常期に入った場合には大体1パーセント程度のMAを目安にしている。ただ、軽水炉からのMAについては、移行期の問題として完全なマスバランスはとれていないが、大体目標として5パーセント以内を考えている。発電しながらだと、最大5パーセントを目標に、アメリシウム5パーセント含有などの基礎物性を調べている。20パーセントはあり得ない。

【委員】
 5パーセント程度だとあまり神経を使う必要はない。

【機構】
 今は世界的なレベルで均質装荷ということになっていて、5パーセント以下が一つの大きな流れにもなっている。我々としても、当然5パーセント未満を考えている。

【委員】
 では、P147の20パーセントという記述は削除したほうがいいと思う。

【機構】
 了解。

【委員】
 2030年、40年ごろに、どういうふうにMAを分離して、また入れるのかなど、議論がまだあると思うので、もう少し地に足をつけた、燃料の領域研究ができていくと思う。

【委員】
 ダイ潤滑成型というのは、打ち込む前に毎回塗るのか。

【機構】
 はい。ダイの中に噴霧できるような装置、ノズルをつけておき、霧吹きのように塗る。それによって、前準備の必要がなくなるということ。

【委員】
 実績はあるのか。

【機構】
 ある。手作業だが、効果があるのを確認している。

【委員】
 やってみて効果があるというのはわかるが、実際の設備を作るのが可能か心配。それから、遠心抽出器は、遠心分離機のノウハウは原燃に確立しつつある。情報のコントロールに機微な部分があると思うが、オールジャパンでやるために、旧動燃の方もいるので、設計に関するレビューをしてもらってはどうか。

【機構】
 ボールベアリング、セラミック軸受けなど、やはり同じ悩みなので、1回レビューしてもらった。今後も機会を持って、教育してもらえればありがたい。

【委員】
 遠心抽出は、抽出クロマトに代わる技術としてこれがいいという話か。

【機構】
 まずは、単サイクルという、ウラン、プルトニウム、ネプツニウムを分離するところに使える。それから、仮に抽出クロマトをやらないときのオプションとして、先ほどSETFICS法を説明したが、溶媒抽出にこれを使うことはあり得る。

【委員】
 下から中性子の吸収剤を入れてきて、下のほうが窮屈になったときに、ものすごく微妙な圧バランスで液体が入ってくる。なおかつ、もしかしたら処理量が結構小さくなってきたときに、その辺に難しい技術があるのではないかと思う。

【機構】
 その辺は非常にノウハウがある。これからまだやらなければいけないところ。

【委員】
 中に中性子吸収材を入れないとだめという状態なのか。その部分の体積を排除したら、それぐらいで臨界量が減るという話ではないのか。

【機構】
 遠心抽出器が回っている分には、壁に張りついている状態なので、絶対に臨界は起こらない。止まったときに、下におりて溜まる。今8センチ径をやっているが、それぐらいであれば臨界は大丈夫。ただ、今後性能をアップしようとすると径を大きくすることになり、これ以上大きくすると、だんだん臨界形状が大変になる。それで中に中性子吸収材が要るだろうということ。

【委員】
 中性子吸収材というのは回さないのか。

【機構】
 これは固定である。

【委員】
 軽いものであれば、要するにその体積だけ排除することで済むなら、吸収材ではなくても、中を空洞にしておいて一緒に回す方法もあるのかなと思った。

【機構】
 空洞と同じで、その中に、詰め物としてボロン入りのコンクリートとかを入れるようなことを考えている。

(2)原子力システム研究開発事業(公募)について

 事務局中村課長より、資料9‐1に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 まず、FBRサイクルの研究開発の全責任を負っている原子力研究機構にとって、別紙1の項目が、今後の研究開発に本当に役立つものなのか心配。

【機構】
 列挙した課題は、我々の革新技術を進める上で必要なものと認識している。当然、列挙した課題以外の課題もあるが、既に我々で行っているものもある。

【委員】
 12課題のうち、各開発課題で1件程度採用ということだが、それぞれの課題の中に小項目がいくつかある。いくつかある小項目の内、応募課題はどれでもいいという考えなのか。

【事務局】
 どれであっても構わないと考えている。公募になじむ研究課題としては幾つかあるだろうと思っている。この中で、最もいいテーマとして出てくれば、小項目のどれか一つになるかもしれないし、あるいは複数のものを同時にやるという提案かもしれない。そのため、そこまで範囲は絞らずに、いいアイデアを募集したい。

【委員】
 そのときに、選ばれたものから抜け落ちる項目については、どこで行うのか。

【事務局】
 おそらく機構が行うか、あるいはほかの制度を使って行うという検討が必要と考えている。研究課題として列挙したものは確実に実施が必要なので、抜けた項目についてのやり方は改めて、例えばさらに先の年でいいのかも含めて、検討したい。

【委員】
 もう一つ。1件4億円というのがあるが、課題公募として最大が4億円程度で、例えば2億円のものが2つ出てきたら、2課題採択するということはあり得るのか。

【事務局】
 あり得る。4億円というのは、あくまで上限。その上限を若干超えるものが出てきても構わないし、1億円程度のものが出てきても構わないと思う。件数も1件と限ったわけではない。結果として、予算の範囲内でできるだけ多くとるということを考えている。

【委員】
 分野としては異論なく、ぜひやっていただきたい。ただし、P1の下から2つ目の項目の4「既に国の予算で研究開発を実施しているもの」については、当たり前のことであり、あえて書く必要はないと思うので、削除した方がいいと思う。

【事務局】
 削除する方向で調整する。

【委員】
 各課題につき1個選択するとなると、例えば別紙1のP1(3)「システム簡素化のための燃料取扱系の開発」というときに、4つの小項目の中で、重要なものと、今すぐやらなくてもいいものが混ざっている場合、採択のときにはそういう判断をできる人がいるのか。単純に事務的な処理で選ばれてしまうと怖い。

【事務局】
 公募の制度としては、POと審査委員で審議することになる。その方々にある程度能力があると信用しているが、ご指摘の点をさらにはっきりさせるのであれば、各課題につき項目を1つに絞るのも一つの手かと思う。ただ難しいのは、(3)の場合、小項目の上から3つと最後の1つは大分印象が異なり、上3つの課題を同時に提案してくるかもしれない。そのため、項目を絞るのは避けたいと考えている。

【委員】
 提案が4件出てきて、各々1億だったらちょうどいいということになるかもしれないので、出てきた提案を見て判断するようなプロセスがあるといいと思う。そういう作業をぜひ入れてもらいたい。

【事務局】
 我々とJSTで、審査の過程にどのようなクライテリアを入れられるか、できる限り相談したいと思う。

【委員】
 公募については、来週月曜日の原子力分野の研究開発に関する委員会でも検討するのか。

【事務局】
 今日ご意見をいただければ親委員会での資料に反映し、親委員会で基本的な考え方を議論してもらうときに紹介したい。それ以降でも、ご意見をいただければ検討する。
 最終的には、募集開始は7月10日からを予定。6月20日ごろにある親委員会までにコメントをいただければ最終的には間に合うスケジュールになっている。
 公募を考えている方に、できるだけ我々が考えていることを事前に知ってもらうため、現在の案を出した。20日ごろに親委員会にて了承が得られれば、募集要項を決定する。

【委員】
 原子力委員会のコメントを見ても、燃料サイクルに関するコメントばかりで、炉よりもサイクルのほうが間に合わないのではないかということを暗に意味しているように思う。例えば最後の図2枚のうちの2枚目で、黄色く塗ってあるところは少ないのがいいのかどうか。少ないほうが、公募とは別にしっかり予算を確保するから大丈夫、白い部分こそ予算が確実に確保される、というならいいが、そういう意味で、参考1、2という絵は、黄色く塗られていない部分はきちんと予算が確保されるということですねという確認をしたい。
 それから、今、FBRサイクルを前倒しにせよ、と周囲から言われている中で、この制度については、電気事業者は前から疑問符であり、既に走り出してしまっている1年目と、2年目の件名についても選択されてしまっている。少なくとも1年目に選ばれたものはどういう研究の内容、項目かぐらいは公表されているが、電源開発促進という目的で需要家から税金として集めていることにマッチしている内容かどうかという点は、ぜひ一度評価すべきではないかと思う。できればこの作業部会がいいが、審議の場は任せる。

【事務局】
 参考1、2の黄色に漏れたものについては、進め方として公募にふさわしくないことから、落としたところでして、公募以外のところでやるという趣旨である。
 それから、公募で採択されて実際に研究している課題についての評価方法は、一般的には中間評価と終了時の評価をやるように義務づけられている。今考えているのは、中間評価段階で委員会を構成し、先生方に評価してもらい、評価結果が悪いものについては打ち切ることも念頭に置くということ。

【委員】
 田中委員のご意見は、評価の視点の中に、お金の本来の出どころをうまく反映するような評価項目を1つ入れるようにということか。

【委員】
 目的税として徴収している以上、重要な観点だと思う。違うところに使われないよう、許容範囲内にあるかどうかは、説明責任があると思う。
 また、文科省については、周囲から厳しい意見が多い中、予算に余裕がないと思うが、使い方に問題があれば、本来投じるべきところに投ずるよう見直す必要があると思う。

(3)今後の予定について

 事務局から説明。

─了─

お問合せ先

研究開発局原子力研究開発課

(研究開発局原子力研究開発課)