原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成18年5月24日(水曜日) 10時~12時

2.場所

古河総合ビル6階 F1会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズⅡについて
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 柴田洋二、代谷誠治、田中知、田中治邦、前川治、山中伸介(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課長補佐
日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長他4名

5.議事要旨

 冒頭、田中(知)主査から、本会合より、株式会社東芝電力システム社原子力技師長の前川治氏に議論に参加していただく旨説明。

(1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について

FS2報告書の評価について

 事務局中村課長より、資料8‐1に基づき説明後、質疑応答。

 <質問・意見等なし>

実用化ロードマップの加速ケースの検討について

 原子力機構佐賀山副部門長より、資料8‐2に基づき説明後、質疑応答。

【機構】
 米仏が発表しているかなり早い開発計画にあわせる形で再検討した。

【委員】
 基本的なスタンスを確認したい。中村課長の説明の中に、ロードマップのレファレンスを1つ絞り込むという表現があったが、作業部会は実用化ロードマップのどれがよいかということを決める場ではないと思う。ロードマップを複数考えたときに、技術開発スケジュールを検討し直さなくてはいけないということが分かってくるのではないか、それは必要に応じて2015年までに反映する、という立場と思う。
 これまでの審議を踏まえると、2010年には実機の概念設計に入らなければならないケースがある。2010年までに、研究開発上クリティカルなものは実機の設計に入れるまで開発レベルを上げなければならない。また、我々が開発しようとしているものを国際標準とするための戦略として何かということをもう少し議論をする必要がある。資料8‐2の加速ケースの検討については、疑問符がつく。ケース1についても、加速ケースの検討はしておくべき。

【事務局】
 報告書の研究開発計画はケース1、2、3の全てに対応している。ロードマップが複数あるのは結構だが、最終的には1つ決める事になる。そうでなければ、次年度以降何をやっていくのか不明確。

【委員】
 2015年までの研究開発計画を複数作る訳にはいかないので、その考え方には賛成。但し幾つかのロードマップの可能性を残しておくことが重要。

【委員】
 スケジュールの前倒しを考えた際に、2010年での判断(資料8‐1の17ページ中の黄色三角)において要求されるレベルや内容の質は、昨今の状況を踏まえて変わるのか。

【事務局】
 ロードマップによっては早く判断するものがある。FS報告書のロードマップを前提にしたケース1、2、3においても2015年以前に概念設計を行う。

【機構】
 2010年までの革新技術を決めるところまでは、どのケースでも余り変わらない。それが出来ないとその先がないので、確実に実施していかなくてはいけない。それ以後のやり方を加速ケースでは検討するということと考えている。

【委員】
 2015年ごろにはどういう炉をつくるかを判断しなければならないため、2010年の終わりごろが忙しくなるのでは。

【機構】
 世界情勢等もあるので、2010年にある程度の革新技術の設定し、その上で概念を詰める段階に入るため、その段階でのその後の進め方はある種のフレキシビリティーを持っていた方がいいと思う。

【委員】
 資料8‐1の7ページの説明の際、実用化までのロードマップのリファレンスケースを本日決めたいという話があったが、実際は意味をなさないと思う。2050年の導入というのは、厳密に検討して、2045年、2055年ではなくて2050年と決めたのではなく、この頃に天然ウラン需給の逼迫と、FBRの実用化技術が間に合うだろうとして、切りの良いところとして置いただけ。実際には、天然ウランの需給の逼迫や他の社会情勢等によって決まるもの。それまでのロードマップについては、FBR実用炉の設計がまず確定しなければ、炉のサイズやループ数、実証ステップのあり方等が決められないのではないか。我々は、まだロードマップを決めるだけの根拠を持ち合わせておらず、2010年ないし2015年の研究成果によって、初めて自信を持って言えるようになるのだと思う。そのため、ロードマップは3つあっても良いし、1つに決めるとしても、あくまで1つを仮定しておくというものとしてとらえたい。2015年までの研究をしっかり行うというのが、一番大切なことだろう。

【事務局】
 ロードマップを一つと申し上げたが複数であっても良く、また、あえて決めるとしても、1つを仮定する程度というご指摘は理解した。但しこの5年、10年間で何を行うのかは明確にしたい。

【委員】
 ロードマップは将来を見通して、近々のものを出来るだけ精度良く決める。そして2010年の判断によって、後ろの研究開発計画は変わり得る。2010年までは相当しっかり確定し、2015年までは不確定性があるがきっちりとさせ、2050年までの全体を示すべき。ロードマップは進捗にあわせて検討すればよく、今1つに絞ると身動きがとれなくなるので適切ではない。

【事務局】
 2010年までの集大成を見ないことには線表は選べないが、最終的にはどの研究開発課題をいつまでに行うのかということを決めたい。

高速増殖炉サイクルへの移行に関する検討について

 原子力機構より、資料8‐3に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 FSで議論をしてこなかった課題として、資料の9ページにあるような研究開発課題と研究開発計画が必要と思う。その前にFSにおける再処理というのは、FBRの平衡期を議論したもの。移行期を考えると新たな技術開発が必要で、ウランを粗取りする晶析工程の必要性や六ヶ所再処理工場の合理化の検討が必要であり、また、公募でのアイディアがあって、その中で何がベストなのかなど、まだ議論されていない。晶析法の大容量機器開発を決めるには、議論も知見もなさ過ぎるのではないか。

【事務局】
 回収ウランを高除染と想定するかどうかによって、高除染にするならば晶析法は難しいのでは、という指摘かと思う。他にも問題意識を挙げていただければ、今後の研究開発課題の検討の参考になると思う。

【委員】
 アメリシウムの問題は炉心燃料の成立のために非常に問題。しかし低除染燃料に対する代替技術というのは無くて、絶対にやるということか。アメリシウムの問題はこの5年間、10年間で度のように解決されるのか教えてほしい。

【機構】
 アメリシウム、キュリウムを燃料に混ぜることはできると考えている。割合としては、軽水炉からでるマイナーアクチニドの量が多いため移行期を多く、FBRの平衡期は1パーセント程度を考えている。どこまで混ぜ込むことができるのか、今はペレットを作って照射をしようとしているところ。

【委員】
 例えば、ネプツニウムまでは製造は楽だが、アメリシウムが入ってくると格段に異なってくる。データ数が少ないので、アメリシウムだけ別プロセスとする考えがあるのか。

【機構】
 アメリシウムだけを別プロセスにすることは考えていない。アメリシウムは量が多いと発熱が多い。キュリウムについても発熱が多い。発熱しているところでの燃料の製造や取り扱いについては課題だが、解決する手段は持っていると思う。

【委員】
 資料9ページに「2010年に向けてより具体的に検討することが有効」とあり、高速増殖炉サイクルへの移行のために、研究開発課題と研究開発計画が今後の課題とあるが、具体的にはどのようにするのか。

【機構】
 今回の資料にあるように計画までは示していない。問題点の例示はあるが、報告書にも示しておらず、具体的にはこれから決めるもの。

【委員】
 軽水炉の使用済燃料は長期貯蔵された後に、再処理されることになるのでプルトニウム241は既になくなっていてほとんどがアメリシウムになっていることを前提に研究をお願いしたい。

2015年までの研究開発計画について

 原子力機構より、資料8‐4‐1、資料8‐4‐2、資料8‐4‐3に基づき説明後、質疑応答。

【委員】
 第2再処理工場の検討項目はこの中に入っていないのか。

【機構】
 次世代プラントの設計研究の一部に入ってくる程度。

【事務局】
 資料中の2015年までの研究開発計画ロードマップは、ケース1、2、3、電工会、加速ケースの5つのケースに対応しているのか。

【機構】
 ケース分けは基本的に炉の開発についてのものなので、燃料サイクルは全てのケースに対応している。ホット工学試験を当初ステップ1、2に分けようと考えていたが、今は前倒しでまとめている。

【機構】
 炉は加速ケースを示しているが、2010年までの計画は変わらない。2010年以降については、個々で考えていた試験を大型施設で実施することを考えている。

【委員】
 一つの論点として、ナトリウム主概念について、全ての課題を2015年までに全て目途を付けるとされている。またロードマップの関連から言うと、世界的にはロシア、中国、インド、フランスが2015年頃にはタンク型を打ち出す可能性が高いことを考えると、日本の選択がそれなりに説得力があるということを示さなくていけない。資料で示した13課題の中でも、枢要技術があると思うが、課題1 2 3を優先し、課題9の2重管SGはプラントコンセプトによらず、将来のテーマとして良いのではないか。研究開発課題の色分けが必要なのではないかと思う。

【委員】
 炉の13課題は、各課題パラレルで研究を行うようなイメージが見られるが、実際はウェイト付けを行うと思う。このあたりの色分けはどのように考えているのか。

【機構】
 13課題全てがすべて同じ重要度とは考えないが、全てが整わなければ概念が変化する。特に、課題9の2重管SGについては、ループ型とタンク型で課題は変わらない。我が国は大型、2重管、直管の経験がない。SGの大型化ができなければ、2ループのコンセプトの根幹がゆらぐ。そういう意味で、2重管SGは重要課題と考えている。

【事務局】
 資料8‐4‐1の3ページの計画では、課題ごとに達成時期が様々である。計画的に研究開発を行うためにも、2015年にデータを一度揃えて議論できる状態にしなければならない。重要か重要でないかという観点だけではなく、一定のレベルで判断できるようにすることで、線表を伸ばすか縮めるかの結論を出してもらえばいいのではないかと考える。

【委員】
 2重管SGは2050年までに目処がついて、それが1重管SGに比べて経済的、保守性にすぐれていれば自動的に置き換わるもの。2015年までに無理に行わなくてもいいと思う。潤沢な予算があるのであればよいが、そうではないので、重点的に成果を出すべきものとそうでないものを検討すべき。

【機構】
 ロシア、中国は古いコンセプトのままで、本当に経済性を考えてコンセプトを変えなければならないと考えているのは日、仏、米のみ。2010年から2015年までにどういう戦略で望むかの判断をどの時点に設定するかの議論は重要。ループ型かタンク型かの炉型の議論があるが、本当に経済性をあげるには2次系まで含めた2ループ化が大きなポイントとなる。経済性を達成するためのキー技術については、着実に進めるとともに、アピールポイントとすることが、世界に対しても効果的だと思う。

【委員】
 原子力機構が世界に対して実用炉の絵を示した。他のFBRと比して、安全は当然ながら、経済性の面で大いに勝っていると世界に示すことが重要。最終的にどのような形になるかは分からないが、国際的に、日本のループ型への流れを作ることが大事。2015年以降の絵を描くことよりも、炉については、ここにある13個の課題を本当に2015年までに示された項目を達成させることが、ロードマップを加速させる最も重要なベースである。これら炉とサイクルの課題を国家基幹技術として全て実現すべき。また予算の措置がなされるのか、非常に不安。

【事務局】
 予算については、別途議論する。計画の方向性が示されれば、それをもとに予算化が必要な額を計算する。その際、体制、国際協力によって進捗もかわるはず。7月以降に体制を議論していただき、10月には報告書をまとめるというスケジュールで考えている。

(2)今後の予定について

 事務局から説明。

─了─

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研究開発局原子力研究開発課

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