原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成18年4月27日(木曜日) 10時~12時

2.場所

三菱ビル 地下1階 M1会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 榎田 洋一、柴田 洋二、代谷 誠治、田中 知、田中 治邦、山中 伸介(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課課長補佐

オブザーバー

日本原子力研究開発機構
 向次世代原子力システム研究開発部門長、佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長他5名

5.議事要旨

1.高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズⅡについて

1.中村課長より資料6-1に基づき説明後、質疑応答

 <質問・意見等なし>

2.原子力機構佐賀山副部門長他2名から資料6-2、6-3に基づき説明後、質疑応答

【柴田委員】
 選択と集中をする上で、重点化の考え方を議論するときには階層構造を作らないと難しいのではないか。ある程度の所までは決め打ち、そこから柔軟性を考える、というような議論が必要。

【中村課長】
 基幹電源として我が国がどのようなFBRを導入するのか、ということが判断する上での基本。その上で多様性として熱利用等々がある。親委員会では、トリウムサイクルやADSについて、原子力の裾野を広げるという意味で必要と言われている。しかしその意見に対しても、FSの判断の基本は基幹電源であるとの説明をしている。
 今回の議論では、基幹電源としてどうかという視点で、ご判断いただきたい。また、それを進める上で必要な基礎研究が何かあるのであれば、補足的に付け加えることになるのではないかと考えている。

【榎田委員】
 炉及び燃料サイクルの検討過程については基本的に妥当ではないかと考えている。技術開発の実現性について、同じだけのリソースを投入したときにどの程度時間がかかるかということを指標にしていると理解。しかし国際協力を考えた場合、国内インフラがある場合、無い場合の両方が考えられる。早く自国の技術でものにすることを重視するのか、リスクはあるが国際協力で実現し技術導入の様な形で実現していくのかは別物なので区別する必要がある。
 開発目標は理解できるが、プラント全体のavailabilityや運用の仕方等を考えて検討しているのかが疑問。どのようにプラントのavailabilityを確保していくのか、何らかの検討が必要。
 燃料サイクルについても、説明はよく分かるが、実用には不向きなものが取り上げられているのではないかというところが心配である。例えば、一般産業界では沈殿法は均一性が得られないため避ける方向。晶析法等の工程は、製品の品質を確保する上で避けたい。その辺が妥当なのか疑問。

【佐賀山副部門長】
 開発目標全体としてのavailabilityを見ているか、ということについて、プラントとして概括的な所は見ている。しかしながら、あくまで概念構築レベルのため、より詳細に設計を行わなければ、より深いところまでは見られない。根本的に間違っているというわけではなく、やれるところまではやっている。今後の概念設計のステップでより深く検討していく。
 国際協力について、国内に技術の蓄積をしていかなくてはいけない。日本と共通の目標をもって研究開発をしている国が多く、開発の効率化や開発リスクの低減につながることから、国際協力を技術的実現性における大きなファクターとして評価した。我が国の技術を国際標準にしたいという話については、今後の戦略として考えていきたい。
 同一リソースと仮定して「どの程度時間がかかるか」を技術開発実現性の指標にしているのかとのお尋ねについては、そのとおりである。

【原子力機構】
 酸化物電解法の沈殿工程については余り使いたくない技術。しかしMAを回収する技術としてはこれが現状である。これ以上に均一性を向上させる等の改善を行うのであれば時間が必要。

【柴田委員】
 基幹電源ということで考えるとのことだが、ヘリウムガス冷却炉と鉛ビスマス冷却炉は窒化物燃料を用いる前提となっており、再処理や燃料製造を考えたとき、酸化物燃料、金属燃料と同様に議論できるレベルとは思わない。報告書には、N(窒素)15の濃縮やTiC被覆を破って再処理することについて可能性はある、とあるが出来ないと書いてはいない。ここは明確に同じレベルで評価できるように可、不可を明示すべき。

【原子力機構】
 燃料サイクルのP1の一番下に、「窒化物燃料については、酸化物から窒化物への転換など適切な処理工程を付加することで、先進湿式法再処理、ペレット燃料製造、ゲル化法粒子燃料製造などが適用可能である」と記載している。ガス炉燃料はSiCで固めている点に関し十分にデータを示せていないが、テクニカルジャッジメントとして、再処理可能と判断している。

【山中委員】
 資料6-2のP4のハードルの数と高さは妥当。しかし先ず飛び始めねばならないハードルは何かという観点が抜けている。これだけではよく分からない。いずれの炉についても被覆管や燃料についてはまず超えねばならないハードルではないか。その辺りをしっかり押さえることが重要。軽水炉については、初期の1970年頃に比べて、被覆管の性能はあがっているが燃焼度はたかだか倍程度にしかなっていない。なぜなら、実際に燃やさなくてはわからないからである。現在の研究開発では、まだ、燃料は燃やさなくては分からない。お金を多く注ぎ込んだとしても短くなる研究開発と短くならないものがあることを認識して欲しい。まずどのハードルを飛び始めねばならないか検討してほしい。

【田中主査】
 ハードルの図の横軸は時間軸ではないと考えるが。

【原子力機構】
 時間軸ではない。向こう10年間で技術的実現性を見通すために最低限飛ばなければならないハードルを示した。ODSや高クロム鋼などは時間がかかる。窒化物燃料は大きなハードルであり、やるのであれば早く開始しなければならない。

【佐賀山副部門長】
 ハードルは時間軸の考え方が入ってはいない。時間がかかるものは今すぐにでも始めねばならない。それぞれの課題にいつから取り組むかについては、研究開発計画で表している。そちらとの連携でご理解いただきたい。

【代谷委員】
 ハードルは分かり易いが、実現できていない技術であって、まだこの高さで良いかどうか分からない。いざ飛んでみると思いの外高かったということはよくある。先の窒化物燃料については未だ研究されたことがない。やってみたら案外低い、と言うこともあり得る。このような不測の事態に対応するためにも、多様性は重要である。つまり、この研究開発の中で行われる研究ではなくても、FSに組み込めるようなシステムを考えて欲しい。選択と集中は大事だが過度の集中は良くない。
 設計要求については、増殖比が幾つか並んでいるが必ずしも数値が一緒でない。ノーマライズして、同じ土俵に立ってなければ評価は困難。燃料サイクルまで含めて考えると、それで妥当なのか、サイクルの中で失われていく量等々まで考えて検討しているのか。

【佐賀山副部門長】
 材料についてはご指摘の通り、その様なことが多々ある。今はナトリウム炉を主概念としているが、検討の中に代替技術を入れてあり、今後5年間で判断し、代替技術を用いるかどうか等の見通しを立てる。また、そもそもナトリウム炉でよいか、という話になった場合は、他の炉型になる可能性もあるが、これまでの研究開発を踏まえると、個別の技術のバックアップで対応可能と考えている。

【原子力機構】
 炉心性能を表す増殖比だけでは、システムとしての増殖性能を評価しているとはいえないが、燃料サイクル側での検討を反映し、サイクル全体のシステムとしての検討を行い、そこで確認を行っている。

【原子力機構】
 増殖比については炉外時間でのディケイ等の損失を考慮しても大体1.03程度あれば、1を超えるサイクルで廻ると考えている。

【代谷委員】
 余剰Pu(プルトニウム)が出てこないのか。

【佐賀山副部門長】
 高速炉サイクルの中で扱っているのはTRUの低除染燃料である。ストック量の議論は必要だが、ブランケットの調整などFBRのフレキシビリティーにより、かなりの幅で調整可能と考えている。

【田中主査】
 「実現性を見通すことが可能」と「高い確度で見通すことが可能」の言葉の使い分けの根拠は何か。また、ODS鋼や蒸気発生器の研究開発が大事だと書かれているが、今後の研究開発によって高い確度で実現性を見通せるという根拠は何か。先進湿式で抽出クロマトが中レベルのハードルでよいのか。

【原子力機構】
 「高い確度」とは課題が整理されて明確ということであり、高いハードルのものは代替技術を用意しそれによる性能低下を評価している。ODSは代替技術としてPNC-FMS材でバックアップして経済性を評価している。2重管蒸気発生器は研究開発を始めたばかりで課題は多いと認識しているが、その代替技術であるもんじゅや実証炉の単管ヘリカル蒸気発生器の技術についても大型化などの課題があると認識している。

【佐賀山副部門長】
 「高い確度」という表現は、革新的技術がダメだったときに、コンベンショナルで十分推測の付く技術がバックアップにあるときに用いている。

【田中主査】
 2ループ化に関する課題についてはどのように考えているのか。

【佐賀山副部門長】
 2ループ化に関する課題は配管や熱交換器の大型化にともなうものと考えている。

【田中主査】
 基幹電源として考えたときに、大型化すれば、2ループ化が非常なハードルになってくる。FSフェーズ2ではその様なことはあまり検討されていないのか。

【佐賀山副部門長】
 元々4ループから始め2ループ化を検討しており、ハードルは高い。しかし、軽水炉ではAP-1000で2ループシステムを考えており、ほぼ実現しようとしている。ハードルは高いがねらいは悪くない。もし2ループ化がうまくいかなければ3ループ化してSGなどを小型化することになろうかと考える。

【原子力機構】
 抽出クロマトについては、分析手法として多用されている技術。溶媒についてはCMPOの実験を実施しており、SETFICS法による性能を確認済みである。実際小規模試験をしなくても、可能であると考えている。

【田中主査】
 実際に装置としてプラント化していく際に、安定性、メンテナンスや放射線影響など他のファクターが出てくる。

【原子力機構】
 大型化は、工学的な試験を行っていけば適切な値が得られると考える。物質的には抽出剤の実験や基材はウラン濃縮で使われているものであり可能と考える。

【原子力機構】
 放射線の影響については、γ線の照射を行って大きな影響がないことを確認している。CMPOの溶離は問題ない。分離塔の流量の均一性が問題になってくるが、既にノウハウがある。支持体の多孔質シリカについては、旭化成でウラン濃縮研究の一環として行われた実績がある。

【榎田委員】
 旭化成が作ったものは、多孔質であるため、非常に比重が小さい反面、体積が大きい。アメリシウムやキュリウムを使った後、多くの廃棄物が発生し、適切な処理処分をする必要がある。抽出クロマトは、溶媒抽出法よりも廃棄物が少ないとあるが、そのような観点も含めて評価をお願いしたい。
 六ヶ所再処理工場のような実用工場では、再処理受入前の冷却期間を申請上の最短時間よりは長く取ることになる。実際のFBR再処理でもそれによって影響がどの程度現れるかを検討する必要がある。
 炉システムと燃料サイクルの組み合わせの中で、燃料を炉から取り出してから再処理を行うまでの時間について、従来よりは現実的な期間が設定されているが、一般的に見て金属燃料の場合は湿式法より短くできるのではないかと考えられる。崩壊熱がある程度高いものでも、組み合わせによっては再処理できるというメリットがある。この点についてFSの中でどのように考えたのか。

【原子力機構】
 支持体の多孔質シリカの廃棄体については、抽出クロマトでは何回か繰り返して利用した後、低レベル廃棄物として処分することを想定している。廃棄物コストや環境負荷低減性は評価の際に検討をしているが、指摘のあった点は今後の課題であると考えている。

【佐賀山副部門長】
 再処理の冷却期間については設計時に設定した期間より長ければよいと考えている。設定期間よりも長くおいた場合、プルトニウムバランスに影響があるかについては、現在は増殖比1.1で計算しているが、元々ポテンシャルはもっと高い(1.2程度)ため、フレキシビリティで吸収可能と考える。

【榎田委員】
 乾式再処理の方が湿式再処理よりも、炉取り出し後の冷却期間を短くできると一般的に考えられているが、FSの中ではどのようにスタディし、その結果についてどう考えればいいのか。

【原子力機構】
 冷却期間として4年を再処理の前提として設定して評価した。乾式で行って短くできるかと言うことについては、発熱による塩の交換頻度の増加など、機器の制限がある。

【原子力機構】
 4年という時間については、輸送に関する制限の2kW(キロワット)までに崩壊熱が減少してくる期間、という設定で行った。金属燃料の場合だけコロケーションにより期間を短く想定して、と言う評価はしていない。

【田中主査】
 技術的な妥当性を評価するということから、もう少し時間をかけた方が委員からコメントが出ると思う。

【中村課長】
 本日だけでは審議時間が十分でないと考える。今の議論は、今後の研究開発における設計要求の内容に踏み込んできているように思える。残りのご意見については、事務局までいただきたい。この5年間の研究成果を基に回答するが、将来計画へ反映すべき内容もあろうかと思われるので、その両面で対応したい。

【田中主査】
 いただいたご意見を事務局にて収斂後、また検討したい。これまでの5年間については、それらの意見を見つつ、また報告書の取りまとめの過程で再度検討したい。

【中村課長】
 国としてとりまとめる報告書では、機構の報告書の妥当性と過不足について言及することになる。そして次の5年間で研究開発に取り込めるものについては、取り込んでいくことになろう。

【田中主査】
 委員の追加について説明して欲しい。

【中村課長】
 実用化に向けてということなので、軽水炉のプラントの建設に携わった方を追加して、どの程度の技術的知見の蓄積が必要かについてコメントをいただけると考えている。また、プロジェクトの進め方、コンサルティングという観点からも委員の追加を考えているところ。

-了-

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