原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成18年4月14日(金曜日) 10時~12時

2.場所

三菱ビル 地下1階 M1会議室

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会の今後の予定について

4.出席者

委員

 榎田 洋一、柴田 洋二、田中 知、田中 治邦、(以上、五十音順、敬称略)

文部科学省

 中村原子力研究開発課長、鈴木原子力研究開発課核燃料サイクル推進調整官、鎌田原子力研究開発課課長補佐
日本原子力研究開発機構
 佐賀山次世代原子力システム研究開発部門副部門長他5名

5.議事要旨

1.高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2について

1.中村課長より資料5-9に基づき説明後、質疑応答

【柴田委員】
 P5、6について、最近の諸情勢が変わってきたのは事実。フェーズ2を始めた当時は、FBRについて日本は最先端であることを前提にしたプログラム。しかし各国が開発スピードを上げてきていることを考えると、2015年、ということでなく、2050年までの実用化までの全体の道筋を示したうえで、日本が外国動向も踏まえ、この10年間どの様な研究開発スケジュールで行くのか、ということを考えるべき。世界的な意味で、あるコンセプトの採用が決まってしまえば、日本の開発がいかに進んでいても、それを採用せざるを得ない、ということがある。場合によっては、2015年より早い段階で概念設計や実証プロセスの試験施設の設計を進める必要がある。

【中村課長】
 様々な要素を考えねばならない。大綱は柔軟性を持った戦略を立てることを命題としている。一方、2050年は国内軽水炉リプレーススケジュールなどの国内事情で考えたものであり、海外がどうなろうとも、そのスケジュールはなかなか変わりづらい。しかし、海外での開発が進み、それによって日本における研究開発が影響を受けるというのは十分考えられる。よって、この2つの視点でご議論いただきたい。先ずは、機構から2050年までのくわしいロードマップの説明を次回以降に受け、海外の情勢を踏まえ変更すべき点がないか議論して報告書にまとめたい。

【柴田委員】
 2050年の実用化というのは、研究開発とは関係無しに、国内のエネルギー事情や電気事業者の事情で決まっているものであり、それをここで軽々に議論すべきものではない。しかし研究開発については、開発したものを世界に採用させるなど、海外動向も十分見据えた上で検討すべきと考える。機構からの説明があった時点で議論したい。

【榎田委員】
 P6の大局的評価について、柔軟な資源配分システムを働かせるためには戦略が重要。技術成果の公開、知的財産を外に出すものは出し、機微なもの・重要なものは日本の利になるように活用されるべく、戦略を立てるべき。この戦略のなかで人的資源について、積極的に技術者の確保・養成を行うのか、それとも社会システムにまかせて世の中がついてくるのを待つのかなど、前提としてどの様に考えているのか。

【中村課長】
 知財の範囲については、ご指摘いただければ報告書に盛り込みたい。ただし国の研究開発については、基本的に公開であり、例外は民間の知財に関わる或いは核不拡散の様なものがあった。今回は民間の知財に踏み込んで言及するかどうかがご指摘なのかもしれない。また人的資源については、原子力分野のすそ野を広げるあるいは特定分野の人材育成を行う、というようなものがある。また海外の計画に対して、国内の人材をどの様にあてこんでいくのかという問題もある。ご意見賜りたい。ただし、本資料には入っていない視点なので、事務方で整理しご議論いただけるようにしたい。

【田中(治)委員】
 国際情勢との関係について、実際にFBRの導入が現実にいつになるかはやってみないと分からない。しかし大綱の中では、2050年の実用化という目標を置いて、コンシステンシー(一貫性)をもって計画されており、それはそれで美しい姿だと思う。外国との関係については、宣伝合戦に負けているだけという印象を持っている。高速炉を持っていない国がいつまでに炉を作る、ということを声高に宣伝しているだけ。比して、日本においては、原型炉は既にあり、しっかりとしたFSという計画があって、地に足のついた仕事が出来ていると考える。しかしもんじゅが10年以上止まってしまったことは大きい。圧倒的なリードができたのに、その優位性を失う危機に瀕している。とはいえ、再起動さえすれば世界の先頭を走れるので、もんじゅでできることや、着実に今進めているFSの成果といったことを宣伝していくことが重要であると考えている。

【田中(知)主査】
 FSの目標に照らしてどうかというのは当然だが、情勢の変化もある。その辺も考慮しながら、評価していくということでよいのか?

【中村課長】
 そのようにお願いしたい。

2.原子力機構佐賀山副部門長他2名から資料に基づき説明後、質疑応答

【田中(知)主査】
 どこにフォーカスを絞って議論を行えばよいのか?

【中村課長】
 本日は資料の説明に時間を取られたことから、説明に対する質問を中心にお願いしたい。

【田中(治)委員】
 資料5-6 P3の高速増殖炉システムの設計要求の燃焼度と、資料5-7 P15のサイクル施設概念検討における燃料の燃焼度について、炉とサイクルで同じ燃焼度で検討しているのか。

【原子力機構】
 炉側の燃焼度は、ナトリウム炉プラス酸化物燃料のブランケット込みで、資源重視型が9万MWd/t(メガワットデイパートン)、経済重視型が11.5万MWd/t(メガワットデイパートン)であり、これらは、サイクル施設側の燃焼度の先進湿式法プラス簡素化ペレット法と同様である。また、炉側のナトリウム炉プラス金属燃料は、サイクル施設側の金属電解法プラス射出鋳造法の燃焼度と同じである。

【中村課長】
 資料5-7 P5などで、再処理システムごとに計算される個人の被ばく量を、システムごとに比較をしているが、そもそも年間処理能力が違うものを比較しても結果が異なるのは当然。何をもって比較しているのか。

【原子力機構】
 比較する際は、同等の処理能力に換算して被ばく量を比べる。例えば、年間処理量200トンの先進湿式法システム(個人被ばく量約6.6μSv(マイクロシーベルト))と、年間処理量50トンの酸化物電解法システム(個人被ばく量約1.7μSv(マイクロシーベルト))を比較する際は、1.7μSv(マイクロシーベルト)を4倍するというもの。

【田中(知)主査】
 資料5-7 P7で、安全性評価として、「発生頻度が10-6毎年以上の事象で大規模放出を伴うものはない。」とあるが、大規模の定義はなにか。

【原子力機構】
 資料5-7 P4注記に定義している。周辺公衆に放射線被ばくによる急性死亡を発生させうる規模の放出を伴う事象。

【田中(知)主査】
 例えば、P9で射出鋳造工程での臨界での放出放射能量4.2×(かける)1015Bq(ベクレル)は、大規模事象には該当しないということか。

【原子力機構】
 大規模放出量に比べて十分小さいので該当しない。発生頻度については10-6毎年を超えているが、放出量で大規模放出を超えていないのでこれには該当しない。

【原子力機構】
 燃料サイクル施設では、使用済み燃料を5年間冷却しており、放射能レベルが非常に減衰している。そのため、炉容器内の放射性物質量とは放射能量が2桁違う。よって、1つのセルが全量放出したとしても死亡リスクにいたるレベルにはならない。

【田中(知)主査】
 目標値はどの様な考え方で決めているのか。また、要求値は満たしており、目標値には少し足りないがいいというものはないのか。

【原子力機構】
 要求値と目標値の関係について、最低限必要なものを要求値として設定し、よりよいものをという観点で目標値を設定した。初めから高く設定したのではクリアできないということもあり、このようにした。また、目標値に足りなくてもいいものがあるかどうかだが、曖昧なものはほとんどなく、概ね明確な結果が出ている。

【榎田委員】
 GIFと目標が対応しているとのことだが、コストに関してはライフサイクルコストを考慮するとなっている。これに関連して、廃棄物処分や廃止措置を含む評価をしているのか。ヨウ素マイナス129やテクネチウムマイナス99などのLLFP核変換システムはすぐにはできない。現実問題として、コストを考えて何年頃の時代を想定して検討したのか。

【佐賀山副部門長】
 ライフサイクルコストは、処分や廃止措置の費用も全て含めて評価している。評価の中心は効果の大きいアクチナイド(キュリウム含む)元素を基本としている。長期的な考えとして、アクチナイドを中心にしながら、LLFPの短寿命化を検討し、これについては2050年以降しばらくは高い増殖比が必要なため、2100年ごろにできればよいのではないかというイメージであって、今後の検討の中で時期等についても明確化していけばよいと考えている。

【中村課長】
 資料5-7 P27での廃棄物発生量の比較について、先行軽水炉では800tHM/y(トンヘビーメタル毎年)に対して、NEXT法では200tHM/y(トンヘビーメタル毎年)であり、800tHM/y(トンヘビーメタル毎年)換算をすると、廃棄物発生量が多くなるということか。そうであれば、高速増殖炉体系になると廃棄物が減るという話と矛盾する。数字の意味の説明をしてほしい。

【原子力機構】
 単位発電量あたりの廃棄物発生量で規格化しているため、このグラフで比較可能である。

【田中(治)委員】
 立ち上げ時はブランケット込み、安定化後がブランケットを除いて評価すべきだと思うが、ここで仮定した高速増殖炉サイクルの燃焼度はいくらなのか。

【原子力機構】
 P15のサイクル施設概念検討の設計条件で行った結果である。また、資源重視型の炉心ベースで行ったもの。

【田中(治)委員】
 ブランケット込み資源重視型で9万MWd/t(メガワットデイパートン)の燃焼度と、プラントの熱効率の向上とで、800tHM/y(トンヘビーメタル毎年)の軽水炉再処理施設とMOX200tHM/y(トンヘビーメタル毎年)のNEXT法が同等となるというのはつじつまは合うのか。

【原子力機構】
 評価したサイクル施設のスペックを載せているだけなので、規格化する際に処理量、燃焼度及び熱効率はノーマライズされている。

【田中(治)委員】
 わかった。資料5-7 P20の経済性について、金属電解法プラス射出鋳造法の処分費が他の方法に比べて多いのはなぜか。

【原子力機構】
 金属電解法の場合は、高レベル廃棄物をP25に示すようなソーダライトをベースにしたものにガラスを混合して固化する。これが含有できるFP量が4wt(ウエイト)パーセントと少ないため、全体の廃棄物体積が大きくなり、処分費が大きくなる。

【田中(知)主査】
 別の処理方法は検討するのか。

【原子力機構】
 金属電解法の大きな課題であり、補完技術としてやっていく場合には何とかしないといけないと思う。

【田中(知)主査】
 資料5-7 P20のシステム毎の燃料サイクル費の比較のグラフで、先進湿式法プラス簡素化ペレット法で50トン毎年と200トン毎年があるが、処理能力50トン毎年と200トン毎年の施設の間で再処理・燃料製造にかかるコストはリニアに減少していくのか。

【原子力機構】
 リニアではなく曲線になる。湿式法自体が非常にスケールメリットが効いてくる手法。FBR導入後58GWe(ギガワットイー)のリプレース後は、400~500トン毎年の再処理量があれば日本全体で十分との計算があるため、その半分の200トン毎年の処理能力の施設を検討した。

【中村課長】
 その曲線の、処理能力に対するコストの変化は下に凸なのか。

【原子力機構】
 下に凸である。処理能力100トン毎年で0.8円程度。ただし、300トン毎年など大きい値では計算していない。

【田中(治)委員】
 FBRの導入を考えると、2050年からのリプレースが第1世代で、第2世代のリプレースが2090年ころ。その段階で設計が変わるかもしれないので半分の処理量200トン毎年は妥当かもしれない。

【田中(知)主査】
 今後の進め方ですが、どの様にするか。

【中村課長】
 FSの評価については、これまでの5年間、つまり過去の結果についての事後評価はこの様な形でいいと思う。研究開発方針については、このような形では難しいため、主査とも相談しながら行って参りたい。

【田中(知)主査】
 まず過去を評価して、視点を変えて今後のことを評価するということで。今後のスケジュールはどうなっているのか。

【中村課長】
 過去について2回、将来について2回、取りまとめ2回で6月の中間とりまとめの時期となる。審議の進捗をみながら時間の配分は調整させていただきたい。

【田中(知)主査】
 今後の審議を考えますと、「研究開発から実用化への橋渡し」という観点から商業施設の建設の実務に携わった方など、委員を追加する必要があるかと考えるがいかがか。人選については事務局で検討し、早々に調整していただきたい。

2.今後の審議スケジュールについて事務局より説明

-了-

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研究開発局原子力研究開発課

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