原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力研究開発作業部会(第18回) 議事録

1.日時

平成19年8月10日(金曜日) 10時30分~11時30分

2.場所

文部科学省ビル4階 宇宙開発委員会会議室

3.議題

  1. 平成20年度概算要求における重点課題等の評価について
  2. その他

4.出席者

委員

 田中主査、柴田委員、代谷委員、吉田委員

文部科学省

 倉原子力研究開発課長、稲田原子力研究開発課課長補佐

オブザーバー

日本原子力研究開発機構
 上塚経営企画部長、他

5.議事録

【田中主査】
 お忙しいところ、皆さまにご参集いただきましてありがとうございます。本日は、平成20年度概算要求における事前評価について審議を行っていただきたいと思います。なお、本日、事前評価についての審議となっておりますので、原子力分野の研究開発に関する委員会運営規則第4条第3号に基づき、本会合は非公開とさせていただきますので、よろしくお願いします。議事に入る前に、委員の変更がありましたので、事務局よりご紹介いただきます。

【板倉課長】
 本日はありがとうございます。前回会議開催以降の本年2月以降、委員の交代がございまして、名古屋大学の榎田先生の後任といたしまして、吉田先生にご就任いただきました。本日ご欠席でいらっしゃいますが、電気事業連合会の原子力部長が田中部長から高橋部長に変更となってございます。このお二人が変更でございます。ご紹介いたしますと、左手から、日本電機工業会原子力部長の柴田先生、京都大学原子炉実験所の代谷先生、座長の田中先生、吉田先生。今日はご欠席でございますが、もう一名、大阪大学の山中先生。以上の方がこちらの作業部会の委員となってございます。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

【田中主査】
 ありがとうございました。それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【稲田補佐】
 配付資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第に配付資料とございますが、資料1-1から3が、今回ご審議いただきます事前評価の資料でございます。資料2でございますが、これは、既に中身については各先生方に確認していただいているところではございますが、委員会としての決定が済んでおりませんので、去年行いました議事概要の一式をつけてございます。参考資料としまして、この委員会の設置の根拠、評価の進め方、CSTPの評価に関する基本的な考え方等をつけさせていただいています。乱丁・落丁等がございましたらお取りかえいたしますので、お申し出ください。

(1)平成20年度概算要求における重点課題等の評価について

【田中主査】
 ありがとうございました。それでは、本日の議題である「平成20年度概算要求における事前評価」に入ります。最初に、評価の進め方等について、事務局から説明いただきます。

【稲田補佐】
 参考資料1と2は、この評価のやり方に関する参考資料です。この作業部会は科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力分野の研究開発に関する委員会の部会として、概算要求に先立ち、事前評価を専門的な観点から実施するということを任務とする他、原子力分野の研究開発に関する諸課題に関しての調査・検討を行うことを任務としておりますが、今回の審議は前者についてです。本日ご審議いただくのは、資料の内の事前評価です。具体的には、1固体廃棄物減容処理施設の整備について、2原子力技術の応用による低CO2(二酸化炭素)排出社会実現のための革新的事業の開発について、3アジアにおける原子力基盤にかかわる研究・協力の中核機能強化の新規事業の3課題についてのご審議をいただきます。本日の進め方でございますが、まず資料1の評価方法についてご審議をいただきまして、各評価のシートの評価結果を取りまとめていただきます。なおこの評価書に関しては、課題がどんなものであるかという課題概要、どうしてその課題が必要なのかという必要性、課題の有効性がいかがであるかという観点、施策としての効率性、そして5番で評価結果を取りまとめていただくことになります。本日取りまとめられました評価結果に関しましては、親委員会である原子力分野の研究開発に関する委員会において審議いただき、その上の研究計画・評価分科会、28日の開催予定でございますが、審議を経て、評価を取りまとめ、ホームページを通じて公表いたします。

【田中主査】
 評価の進め方について事務局から説明があったところですが、よろしいでしょうか。これは、部会毎に関係するところをやって、さらに上の委員会でやってということで、その第一歩のところですので、重要なところだと思いますが、よろしくお願いいたします。それでは、審議に入りたいと思います。まず1つ目ですが、固体廃棄物減容処理施設の整備についてであります。事務局から、評価シートの説明をお願いいたします。

【板倉課長】
 資料1-1でご説明させていただきます。固体廃棄物減容処理施設でございます。FBRの実用化研究開発は昨年度ご評価いただきまして、実用化に向けた研究開発が進んでおります。その中で、常陽などを利用いたしまして様々な照射試験を行うわけですが、その際に、高線量のアルファ廃棄物が出てくるという状況がございます。これはFBRの実用化のプロジェクトをやる前から、常陽によります、もんじゅ燃料等の様々な照射を行っておりまして、そういう照射試験によりたまってきた廃棄物が、着実に増えてきているという状況でございます。このままのペースで研究が進捗しますと、平成24年ごろには貯蔵施設の保管容量が満杯になってしまうことから、この固体廃棄物減容処理施設を建設しまして、その減容処理をしていくこととしたいと考えてございます。期待される成果でございますが、まず1つには、地元の意向もございまして、東海村、大洗町におきましては、新しい貯蔵施設をつくることはなかなか難しいところもございまして、廃棄物の保管容量の能力を十分に生かすためには減容処理が不可欠と考えてございます。また、この廃棄物問題を克服することが、今後の高速増殖炉サイクルの実用化研究を着実に行っていくということで、不可欠の課題と考えております。また、この施設の運転によりまして、減容処理技術の実証でございますとか、さまざまなデータというものも蓄積することが期待されておりますので、そういう研究開発の面から有効ではないかと考えております。事業期間でございますが、平成24年までに建設いたしまして、24年度から運転を開始するというふうに考えております。概要は以上のとおりでございます。評価結果でございますが、必要性につきましては、原子力委員会のほうで原子力政策大綱が平成17年10月に定められておりますが、そこで4原則、発生者責任、放射性廃棄物の最小化の原則、合理的な処理・処分の原則、国民との理解に基づく実施という原則が示されておりますが、この廃棄物施設をつくることによりまして発生者責任を果たしまして、廃棄物の減容ということで最小化を図り、また手法としても、合理的な手法で行うとともに、地元の方のご理解を得る。放射性廃棄物の貯蔵施設を増設するという手法ではなく、できるだけ減容して処理するということを達成できるということで、原子力委員会の方針にも沿った形であると考えております。有効性でございますが、今の試算では、この施設によりまして、廃棄物をおおむね3分の1に減容することが可能と考えておりまして、非常に有効な手段ではないかということでございます。効率性でございますけれども、この施設につきましては、焼却と溶融を、1つの炉を共有して行うということを考えておりまして、その専有面積の合理化、それによります経費の合理化等々を図るという効率的な施設というふうに考えてございます。この結果を踏まえて、評価結果としての事務局の案でございますが、「高速増殖炉サイクルの実現に向けた研究開発は最優先で実施すべきものであり、これに支障を生じさせないため、TRU核種を含む放射性固体廃棄物の保管量が限界に達する平成24年度までに、合理的な固体廃棄物減容処理施設を整備することは不可欠であります。このため、本施設は早急に整備すべきであります。なお、TRU廃棄物の処分方法が確定していない段階での処理にあたっては、将来の処分の動向をよく見極めた柔軟な対応を期待する」という評価でいかがかと考えております。説明は以上でございます。

【田中主査】
 ありがとうございました。ただいまご説明のありましたリードにつきまして、ご審議いただけたらと思います。ご質問、ご意見をお願いしたいと思います。それとともに、評価票の「評価結果」に、先生方からの意見をまとめまして、事務局案を作っていただいたところでございますが、それにつきましても検討いただいて、修文案がありましたら、それについても教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【田中主査】
 原子力機構は、大洗もあるし、東海村にあったり、最終的にはどうなるかわからないけれども、そういうところにあるところを、うまくこれを整合された形になっているのでしょうか。どこか1カ所に集めていったほうがいいのではないかという考えがあるかもしれないですけれども。

【上塚部長】
 廃棄物については、ご存じのように地元の関係がありまして、他のところに我々が自由に運び込むのはなかなか難しいところがあります。従来いろいろやってきた事業の継続の観点で、特に東海・大洗につきましては、それぞれの処理施設を抱えておりますので、基本的には、そこで処理していくのは合理的だということで来ています。今、機構全体でバックエンドのプロジェクトをどう考えるかということを検討しておりまして、TRUの廃棄物に関しては、将来的には、この減容施設を活用して、ここで処理をしていこうという形になると思います。これについては、我々の中でバックエンド推進評価委員会ということで、外部の先生方に入っていただいて検討していただきまして、その全体の廃棄物を今後どういうふうに処理していくのが一番いいのかということも含めて総合的に検討していただいた結果として、今回ご提案申し上げているものにつきましては、こういう形でやるのならどうであろうという評価の結果をいただいております。お答えとしては、最初と最後が違ったような形になりましたけれども、なるべく東海・大洗、他のところで一緒にして処理できるようなものは、将来的にはそういうふうにやりましょうという方向で考えておりまして、全体の事業の推進の仕方としても、そういう方向で、今、その企画も含めて、全体をそういう構想で進めているという状況です。これは、その中の非常に大事な施設という位置づけで、どうしてもお願いしたいというものです。

【稲田補佐】
 少し補足させていただきますと、バックエンド対策というのは、なるべく合理的、かつ安く済むということが非常に重要だと思っておりまして、この案をつくる前に十分検討いたしました。すなわち、他のところで集めて処理したほうが安いのではないか、あるいは処理場にためておいて、何か技術が開発されたときにあわせてやったほうが安いのではないかと、いろいろケーススタディーを行いましたが、このアルファ固化体の部分に関してはこれが最も安い、かつ処理方法としても合理的だという結論を得、国の施策としても、今回ご提案させていただいているところです。

【代谷委員】
 原子力機構の大洗のサイトのものはすべてここにということでいいですか。TRU廃棄物について、例えばJMTRとか、あの辺から出ているものもということで考えていいですか。

【機構(大久保)】
 JMTRからは、アルファ核種を含む廃棄物は、基本的には出てまいりません。現状ですと、常陽を中心とした照射試験に伴って発生してまいります。将来的にはもんじゅの燃料のPIEも考えてございますので、そちらからの廃棄物も対象になってくるということです。

【代谷委員】
 JMTRのところには金研があって、その関係で何か出てくるものがあるのではないかと思ったので。サイト的には同じところにあるのでしょうか。

【機構(大久保)】
 サイトとしては同じところにありまして、東北大、NFDといったところの廃棄物も受けてはおりますけれども、そちらの廃棄物は、基本的にTRUを含まない廃棄物でございます。

【柴田委員】
 この施設の必要性は大変あると思っていますし、この評価結果について特に異論はありません。この方法が、焼却と溶融を1つの炉でやるという、でき上がると非常によいものとなると思いますが、これまでの開発では溶融に関していろいろな技術課題があることが分かってきています。この限られた期間でうまく技術課題をクリアできる見通しを付ける事ができるのか心配しています。

【機構(大久保)】
 この施設につきましては、検討が開始されたのは非常に古くて、平成5年ぐらいから検討がなされております。その中で、現状の施設をうまく使いながら廃棄物の減容をするということを当初から考えてございました。それから、いろいろな廃棄物があるということ、それで放射性核種の組成がいろいろばらついているところもございまして、将来の処分を考えたときに、やはり溶かして均一化、安定化させる必要があるという形の中で、この溶融を選んでございます。焼却と溶融につきましては、この施設につきましては、高周波誘導加熱で加熱をすることを考えておりますけれども、まず可燃物につきましては、金属を種火といたしまして、そこで焼却をする。その焼却灰とともに、金属も加熱して溶かすという形の方法を、現在考えてございます。同じようなものにつきましては、既に電力、それから、今計画されていると聞いておりますけれども、日本原燃、こちらで、同様な処理方法で処理をするということで進んでおります。我々といたしましては、先行する電力からの情報、これは運転手法を含めて情報を入手してまいりました。そういったことを反映して、現在、設計を進めてございます。

【田中主査】
 旧サイクルの東海に、こんなものがなかったでしょうか。

【機構(大久保)】
 旧サイクルの東海のほうには、焼却のみ。可燃物を焼却する焼却炉は持ってございます。

【田中主査】
 将来、TRUの廃棄物は、地層処分になるものもあるのですか。

【機構(大久保)】
 現在、我々のところで調査してまいりまして、これまで出てきた廃棄物の放射能濃度の分布から見ますと、かなり広く分布してございます。例えば1トンあたり100ギガベクレルという形で線引きをいたしますと、やはり若干は地層のほうに回るものもございます。溶融によって濃縮されますので、そういう意味では、ほとんどは余裕深度と考えてございますが、一部は地層に回るものもあると考えてございます。

【田中主査】
 法律とか、考え方が大体煮詰まってきたところですから、実際に処分するときには、また電力のほうでの余裕深度、地層処分のあれとも、整合性というか、相談というかわからないけれども、やる必要があるのでしょうね。将来どうなるかについてもよく見極めた柔軟な対応を期待すると書いていますので、一旦作ったものを、もういっぺんまた引用することはないと思います。

【吉田委員】
 将来の処分の方法が確定していない段階での処理というところがありますが、具体的にどのようなものが想定されるのでしょうか。

【機構(大久保)】
 基本的には処分の区分がどう決まるかという話と、もう1つは、廃棄物を処分するときには、処分場の技術の基準あるいはその要件に従った廃棄体かという作業が必要になってまいります。現状、残念ながらといいますか、この余裕深度処分、それからこういった廃棄物を地層に埋める場合の基準が、まだ明確になっておりません。あるいは、どういう容器に入れて埋めるかということも明らかになっていないという状況がございます。現状、我々がここで考えているものは、溶融して固化体という形でいったんつくって、現在ある施設に保管をしておきます。それから、処分場が決定いたしまして、技術基準が決まった時点で、その技術基準に合わせた廃棄体という形につくって処分をしたいと考えております。動向を踏まえながら、あわせて進めていくというふうに考えてございます。

【板倉課長】
 今回の構想は、まず溶融したり、圧縮して減容して、また保管するところまでを含んでおりまして、将来的には、今度最終処分をするに当たっては、今説明のあった廃棄体化をしなければいけません。そこの、設備については、その基準が決まったときに整備できるように、まだ現在は整備をせず、場所だけはとっておくという構想かなと思います。

【田中主査】
 ありがとうございます。評価結果についてはいかがですか。特に修正すべきことはございますか。よろしいでしょうか。では、このままでいきたいと思います。では2つ目の、原子力施設の応用による低CO2(二酸化炭素)排出社会実現のための革新的技術の開発について、事務局から、まず評価シートの説明をお願いいたします。

【板倉課長】
 原子力技術の応用による低CO2(二酸化炭素)排出社会の実現のための技術開発ということでございますが、地球温暖化対策の必要性というのは改めてご説明するまでもないと思いますけれども、その中で原子力発電というものは、CO2(二酸化炭素)を出さないということで非常に有力な手段となっております。今回の研究開発では、原子力発電所では、電気という形でCO2(二酸化炭素)削減に貢献している原子力の力を、水素、燃料電池の水素製造、それから燃料電池の高性能化ということによりまして、そういう内燃機関にも、内燃機関といいますか、輸送ファクターにおいても、CO2(二酸化炭素)削減を、この原子力の力で図っていくということを可能にする技術を開発しようということが趣旨でございます。したがいまして、実際にやることにつきましては、右手の表に書いておりますが、今まで原子力機構が培った技術をもとに、高熱・高温を使いました水からの水素製造工程の飛躍的な向上、それから、その水素を使う燃料電池の性能向上ということからなってございます。具体的には、この下の開発線表でございますが、高効率のISプロセス、これは、ヨウ素と硫黄を使いまして、その熱分解、化学反応によりまして、自ら水素を作っていくというプロセスでございますが、そこの技術開発を行います。それに必要な素材の開発ということを1つ狙っております。また燃料電池の開発につきましては、燃料電池の水素発生の機序を、原子力機構の持っておりますJ-PARC あるいはJRR-3を活用して、まずはこの原理の解明を行います。その次に、そのデータをもとに、電解質膜の高性能化を図るための、これも量子ビームを利用した改良ということを行っていきたいと考えてございます。これが大まかな概要でございます。評価でございますが、こちらにつきましても、開発事業期間としては平成20年から24年度を考えてございます。評価結果でございますが、必要性につきましては、今年6月19日に閣議決定されました経済財政改革の基本方針2007の中でも、環境立国戦略の推進がうたわれてございます。この中には、京都議定書削減目標の達成に向けた取り組みを確保しなさいということが記述されておりまして、今回の研究は、今まで原子力機構が開発してきた高温による水素製造技術、あるいはJ-PARC、JRR-3などの中性子による観測技術といったものを、この環境立国戦略にのっとった環境問題の解決に役立てることがあるということで、必要性が高いのではないかと考えております。有効性につきましては、水の熱分解の研究につきましては、原子力機構でも、今までも着実に行ってきております。また量子ビームの応用によります燃料電池の効率化につきましても、達成すると、輸送交通機関でのCO2(二酸化炭素)削減に大きく貢献するキーテクノロジーとなるポテンシャルを有しているということから、CO2(二酸化炭素)削減に有効な政策手段ではないかと考えております。効率性につきましては、原子力機構の今までの蓄積、あるいはその施設の技術基盤を活用できるというところから、ゼロから始めるということではないということで、効率性も高いものと考えてございます。以上を踏まえまして、評価結果でございますが、「二酸化炭素排出増加に伴う地球温暖化防止の観点から、原子力エネルギーを原子力発電以外の多様な分野へ適用を拡大するための研究開発や原子力技術開発のスピンオフ技術を活用したエネルギー利用効率の向上のための研究開発は極めて重要であり、本課題を実施することは妥当である。なお、水素製造技術の開発に関しては、貯蔵、輸送等に係る問題も考慮しつつ実施するとともに、研究開発に係る費用対効果を十分に評価することが重要である」ということで、事務局案を考えております。

【田中主査】
 ありがとうございました。ご意見、ご質問等がありましたら、お願いいたします。また評価結果についても、修文等がありましたら、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

【代谷委員】
 量子ビームの応用の件ですけれども、燃料電池の話が量子ビームの応用のところに書かれています。この評価結果の最後のところで、貯蔵とか、そういう関係のところで、同じようにJRR-3とか、J-PARCを使われるのであれば、その構造、要するにどういう閉じ込めの機能になっているのかを見るときには非常に有効な手段だと思うのですけれども、これを見せていただいたときには、それがあまり入っていませんでした。燃料電池の機序のところだけが書かれているというのは、何か理由があるのですか。

【上塚部長】
 確かにおっしゃるように、我々は、水素の製造、利用のところでは、輸送とか貯蔵についても検討しておりまして、実際、非常に基礎的なところでは、今回のご提案とは別にやっている部分があります。それは例えば、播磨のSPring-8等放射光を使いまして、水素貯蔵合金という観点で、別の観点で開発を、それはそんなに大きな規模ではないのですけれども、そういう研究開発もやってはおります。ただ、今回はもう少しざっくりしたところで、まず製造というところで、今、我々が一番技術蓄積したところをさらに高度化していくという非常に大きな部分と、やはり利用の観点では、水素社会を見たときに、我々が一番取り組みたい、あるいは取り組めるポテンシャルがあるなというところは、その燃料電池というところが一番大きな問題ですから、今回はそこに絞った形で提案させていただいているということです。今、先生がおっしゃったように、これはまだ非常に基礎的なところで、貯蔵に関連した研究もやっていますけれども、それが少し芽が出てきたといいますか、もう少し手を広げて、あるいは本格的に開発をやったらいいなというフェーズになれば、このプロジェクトの中にあわせて展開していくことは考えられると思います。

【代谷委員】
 ここで考えられているのは、ある程度実用化ということで、今現在のところで、ある程度実用化が見込めるものだと。そのように考えられるものとしては、発生のところと、燃料電池の改良というか、そういうところだと。そういうことで、これをやっておられるということですね。

【上塚部長】
 そうです。環境立国あるいは地球温暖化防止の話で、ある程度見えているもので、2050年までに確実に社会的に大きな貢献ができるというところで考えて、その製造のところと、利用では燃料電池というふうに比較的絞ったところで提案させていただいているものです。余談ですが、燃料電池に関して言うと、産業界も随分関心を示しておられまして、開発については、燃料電池の中で水素イオンの動きと、それから水もできますから、その水がどういうふうに分布していくかというところを実際に見てみたいというところで、そういうニーズ、あるいは希望が非常に強いという点でいくと、中性子をうまく使おうと。我々は、例えば水に関して言うと、中性子ラジオグラフィの高度化で分解能をもっと上げるというところと、それから水素イオンの動き等に関しては、J-PARCなり、 JRR-3もそうですけれども、小角散乱法とか何かをさらに高度化して、それをターゲットに開発していこうという研究開発のフェーズも合っていますので、これをそれなりに国に位置づけていただければ、産業界としっかりタイアップした形での研究開発も進められるだろうということで、わりと具体化する可能性の高いところという形でまとめているということです。

【代谷委員】
 今、言われたところでの、量子ビームを応用しようとしたときに、例えばJ-PARCのビームラインとか、あるいはJRR-3のいろいろな機器とか、それとの関係はどうですか。例えば、こういうものをつくらないといけないとか、あるいは、今、計画されている、その中でやっていこうとされているのか、その辺はどうですか。

【上塚部長】
 それは両方あると思いますが、JRR-3に関して言うと、既に中性子ラジオグラフィという、我々が、現状、分析に使っている道具立ては持っています。ただし燃料電池というところで、非常に細かい水の分布等々を見るという観点でいくと、分解能はまだ10分の1ぐらい、もっと高精度化しなくてはいけないという認識がありまして、今回、これがお認めいただければ、そういう形で、さらにラジオグラフィ装置の高度化に進みたい。J-PARCに関しても、これはビームラインの整備がそんなにできていないのですけれども、将来的にこれがしっかりした動きになれば、J-PARCだからできるという能力がありますから、そこに必要な分析装置を組み上げていきたいと思います。

【代谷委員】
 今、ラジオグラフィとかを高精度化するためにということで、ネックになっているのは中性子フラックスということはないですか。もし中性子のカレントだとすると、例えばJRR-3を使う際、それを増やそうとしても、非常に難しいですよね。その辺はどうなのでしょうか。

【上塚部長】
 私もその辺は十分把握していないのですが、ただ、これにかかわっている現場の技術者、研究者と話をしたことはありますけれども、JRR-3でそれをやり得ると言っていますので、今、おっしゃったカレント、フラックスの話は、JRR-3の最初、出口のところ、どういう構造か承知していませんが、多分そこをうまく確保することによって、高精度化のほうにJRR-3でも使えるだろうという見通しは持っていると思います。

【機構(酒井)】
 補足ですけれども、フラックスの問題もありますが、検出系の感度が上がれば、フラックスが低くても高精度に見えるということではありませんか。

【代谷委員】
 そうだと思います。

【田中主査】
 別の質問で、水素製造のところ、これは、今、高温ガス炉でIS法については、現在の中期目標・計画ではどうなっているのかと、それとの整合性はどうなっているのでしょうか。

【機構(日野)】
 現在の中期目標では、将来の実用化に向けて技術を確証するというスタンスです。今回のこの申請におきましても、そのスタンスは十分守られております。

【田中主査】
 これは平成20年度から24年度ですね。だから、現在の中期目標・計画が、途中で次のものにかわります。

【上塚部長】
 中期計画に関しては、ISプロセスの実証をやるという観点でいくと、それは今の反応も含めて全体の反応をちゃんとしっかり解明して、うまくバランスをとった形で、その反応全体が進むということを実証しますというところで、おそらく中期目標の計画というものは達成し得ると思いますけれども、ここでご提案しているのは、今までの技術開発をベースにして、さらに高効率化、高性能化という点でいくと、例えば高圧の反応をやりましょうとか、もっとうまい工夫はありませんかとか、そういうアイデアが幾つかあるのですが、そういうところをしっかり追求していきたいというのが、この提案になっております。

【田中主査】
 中期目標、中期計画とも整合がとれているし、これがもし認められて、始まることによって、次の中期目標、中期計画のところに、悪い意味、いい意味での影響がないと。

【上塚部長】
 影響がないといいますか、展開が開けると思います。

【田中主査】
 ここに引っ張られて、悪い意味で言うと、そっちのほうも引っ張られるのかなと思いました。

【板倉課長】
 中期目標期間中は、今説明があったように、今の中期目標を達成しということですが、今回の構想では、24年まで、もう少し高度なところまでやろうという目標を政策として立てているということでございます。ですから、この中期計画・目標が着実に達成すれば、次期中期計画にも、当然、次の段階が盛り込まれるということになるかと思っております。

【吉田委員】
 原子力エネルギーを発電以外の分野に応用するというのは、私は非常に重要だと思うのですが、ここでやろうとしています、熱のエネルギーを利用して水素製造をすると、その熱エネルギーを発生させる意味でも、コストもかかってくると思いますし、それに見合う水素製造の発生の効率というか、そのようなものについてどのようにお考えでしょうか。それから、この水素製造の分野は競争が非常に激しいと思うのですが、特に魅力的な分野にするためには、例えば光触媒などによる水素製造などとの比較、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

【上塚部長】
 後者からお答えしますと、水素製造の競争については、基本的に我々は、CO2(二酸化炭素)フリーということを考えています。つまり、今、現状やられている水素製造というのは、化石燃料を使った水蒸気改質法で水素をつくるというやり方、要は化石燃料を使うやり方と、それから水の電気分解でやっているところもあると思うのですけれども、今回の提案は水の電気分解のほうで、従来やられている手法と今回のIS分解法で得失がどうかということを検討した上で、現状、私どもが得ている感触としては、電気分解でやった場合の全体の効率は、電気分解そのものの効率と、それから例えば電力を使いますから、原子力発電とは3分の1とかいうのを掛けあわせて、現状ではせいぜい20パーセント程度の熱効率だと言われています。それは、電気分解をさらにぐっと高度化していって、さらに効率を、今、60数パーセントと見ていますけれども、それをたとえば80パーセント、90パーセントに上げたとしても、 30パーセントぐらいが多分限界だと。一方、私どもが、今やっているISプロセスというのは、現状のレベルで40パーセントに若干満たない程度のところまで見通しが得られているということがありまして、今回提案している技術がうまくいくと、それをさらに理論効率に近いところまで、50パーセントとか、その程度までできるという期待を持っていますので、そういう意味で、CO2(二酸化炭素)フリーの水素の製造法としては、これは非常にすぐれています。今おっしゃった光触媒を使ってというのは、多分世の中にいろいろ提案があると思います。ただ、大規模に、かなりの量の水素を製造するという観点では、そのあたりはどうなのかなと。

【吉田委員】
 今のことですけれども、例えばCO2(二酸化炭素)を出さないというものは、光触媒ももちろんそうです。バイオマスにしても、いろいろとあると思います。ですからそこは、確かに電気分解とかには随分説得力がありますけれども、CO2(二酸化炭素)フリーのほかの技術に関しては、やはり効率をどれだけうたうかというのが大事だと思います。

【上塚部長】
 そうだと思います。

【機構(日野)】
 今のご質問の光触媒というのは、まだ数パーセントにいくかいかないか、基礎研究の段階ですので、まだ効率というところにまではいっていません。もう1 つ、バイオマスに関しましては、今、ガス化ということで、合成ガスとか、あるいは水素をつくる。要するに1,100度ぐらいまで上げて、そこまでつくろうというのが世界的にされていますけれども、技術としてはこれから、まだ研究開発中のものであるというスタンスになっています。将来的には、水素社会ということで、いろいろな水素製造法を組み合わせたものでやっていかなければいけません。どれか1つというもので水素社会は構築できませんので、今、こちらで提案しておりますISプロセスというものも1つの方法であって、バイオマスも組み合わせる、いろいろなものを組み合わせた上で、ミックスした上で、そういうものが必要かと思います。

【吉田委員】
 最初の、熱エネルギーに対しての精度の効率というのは、これは有効利用という観点なので、熱エネルギーというもののコストは、あまり意識されていないということですか。

【上塚部長】
 これは、もともとISプロセスの研究を始めたところで、高温ガス炉というものを考えていまして、ISプロセスはISプロセスで、独自で成立するような技術ですが、CO2(二酸化炭素)フリーで、大量に熱を持っていくという観点で言えば、高温ガス炉をうまく活用してやるのがいい。高温ガス炉であれば、熱効率的にいけば、非常に高温を出すという観点でいけば、非常にすぐれているツールだと思っていますので、それは別途、別の研究を実施しているとお考えいただければいいと思います。

【柴田委員】
 2点あります。最初に、今の議論に関係しているのですが、原子力のエネルギーを使って水素製造をするというのはいろいろな方法があります。今回のIS法はもちろん1つの有力は方法だと思うのですが、先ほど言われた電気分解法というものも、やはり1つの有力な方法だと思っています。今、言われた効率で言うと、確かに原子力発電のエネルギー効率がリミットになって、電気分解法はそれ以上はよくならないのですが、別の意味で大きなメリットがあるのは、高温ガス炉を使って水素製造をする場合に、非常に大量に1カ所でつくらざるを得ないというところがあります。水素の貯蔵とか輸送問題というのが、まだどれだけの技術課題と、あるいは社会インフラを要求するかもわからないという不確定さがあると、水素社会が来たとしても、場合によっては、社会的な投資効果から考えて、水素製造は分散的な装置のほうが現実的だということになる可能性もあります。その場合、電気分解法というのは、必ずしも、その装置単体の効率ではなくて、社会で受け入れやすいという意味でメリットがあると思っております。ですから、例えば最初の課題概要のところの3つ目のパラグラフで、得られるエネルギーを電気の形で供給することには限界があるという表現がされていますが、これは、社会的には必ずしもこう言い切れないと思いますので、もう少し公平な書き方をされたほうがいいのではないかと思います。この研究の意義を否定されるものではなくて、幾つかの代替案を出すという意味では意義があるわけですので、それが1つです。もう1つは、先ほど田中先生がご指摘になったことと関係するのですが、今度この研究がスタートして、ご説明がなかったのですが、席上に置かれている資料を見ると、20年度は数億円というレベルですけれども、今後、この期間中に、予算的にどのぐらいの規模までになるのでしょうか。今、機構は、FBR開発とか、J-PARCとか、核融合とか、非常に大きなプロジェクトを持っておられて、それをとにかく効率的に進めなければいけないという中で、私がメーカーの立場で申し上げるのも何ですが、それぞれのプロジェクトが予算的に大変だ、つらいというお話が結構聞こえております。この研究の意義を問題にしているのではなくて、時間的に何を最優先でやっていくかといったときに、少なくともこれは、基盤技術的なベースの位置づけだろうと私は思っています。そういう意味で言うと、将来これがどのぐらいの予算負担になるものかということも確認させていただきたいと思います。

【板倉課長】
 機構には機構のいろいろ夢があるだろうと思いますが、文科省としては、原子力機構の関係では4つの柱がありまして、FBRですとか、高レベル廃棄物処理・処分の研究ですとか、あとはJ-PARCの話、それから核融合という、そこを重点目標にしています。したがいまして、私どもの考えでは、大体このぐらいの、現在、数億円規模の予算規模で進めていきまして、これは24年で終わりということではないと思いますので、そこで達成できた技術をまた評価しまして、次にもう少し実用化に近づく段階に移れるかどうかと。移れるのであれば、次に当然予算を増やすかどうかという議論につながっていくと考えております。

【上塚部長】
 それで結構かと思います。

【田中主査】
 ざっくばらんな話をすると、原子力発電所をたくさんつくって、負荷追随運転も頑張ってやるか、あるいは夜間の安い電気を水素製造に使うほうがいいのかどうかとか、高温熱源を高温ガス炉でやっていくときに、電気とガス、水素をそれに使うのは両立するのかとか、いろいろまだ解決しないところがあるかと思います。だから、ここに評価結果を書いていただいているのですけれども、貯蔵、輸送等に係る問題も考慮しつつ実施するということ、これはそれでいくと思いますから、これは、原子力による高温熱源の成立性みたいなことにも注意しろとか、そんなことを書く必要はないですかね。特にどこにも高温ガス炉という言葉が出てきていない。そちらのほうは中期目標に書いていますか。

【稲田補佐】
 この研究自体の軸足というのが、高温ガス炉というところを前提にしているわけではなくて、水素技術というところに焦点を当てています。したがって、お金云々というよりも、理念を明確にするという意味で、熱源が何であるかというところを明示するよりは、何を目指していくのかということを示したほうがよろしいのかと存じます。柴田先生からご指摘のあった、限界があるというところでございますが、具体的な修文として、「代替することについて課題がある」でいかがでしょう。

【柴田委員】
 そうでしょうね。電力会社は、今、電気自動車を盛んに言っていますから、内燃機関の代替になると主張されているかと思います。

【上塚部長】
 確かに原子力から派生したいろいろな研究で、これを展開していきたいと思っていますけれども、熱源としては、例えば製鉄メーカー等の転炉から出てくる非常に高温なガスを熱源としてISプロセスがうまく展開できないかというお話もありまして、実は共同研究をやっている部分もあります。展開としてはそういうところもありますということを申し添えておきたいと思います。

【代谷委員】
 今お話の出た共同研究とか連携の話というのが、ここには出てこないのですけれども、基盤とかに関係するところは、積極的に連携するという姿勢はあるのですか、ないのですか。そういう形であれば、むしろ出されたほうがいいような気がするのですけれども、いかがでしょうか。

【代谷委員】
 この関係の研究者は、大学とか何かにも結構いますし、いろいろなところ、もちろん企業でそういうことをやっておられる方もいるし、ひょっとすると、もう少し目を転じると、アジアとか、その辺の後ろの話と関係してくるのですけれども、そういうこととも関連してくるのではないかという気はします。

【上塚部長】
 現実的には、連携という点でいくと、先ほどの燃料電池ということに関して言えば、まさに産業界との連携は当然成立しますし、我々もやっていかなければいけないと思っています。それから、一例として、ISについても鉄鋼メーカーさんとの連携等々も申し上げました。代谷先生がおっしゃったことに関して言うと、これは文部科学省のお考えによると思いますけれども、効率性のところに、そういう連携、具体的にもありますし、書けるのかなと思います。

【田中主査】
 熱源で言うと、鉄鋼もあるし、セメント会社もいっぱい使っていますね。そういうところから研究費をくれない。まだ国のほうからずっと出ていないとか。

【上塚部長】
 効率性のところに、文言としては「産学官の連携」と書いております。

【田中主査】
 特に高温熱源の話は、ここではなくて、視点が違うということで、別に書かなくていいですね。今、委員からご指摘のあった「限界」のところは、「課題」とか何で、そういうふうに加えて。評価結果のところは、これでよろしいですね。3つ目にいきますが、アジアにおける原子力基盤に係る研究協力の中核機能強化、大変難しい名前になっていますけれども、よろしくお願いします。

【板倉課長】
 背景事情といたしまして、近年、アジア諸国の原子力導入の動きというものが出てきておりますが、やはり原子力先進国である日本の技術的ポテンシャルを利用してリーダーシップを発揮していく。これでアジアにおける原子力基盤の貢献をしていくということは大きな意義があるのではないかということが背景としてございます。そういう中で、今、日本原子力研究開発機構におきまして、JMTR、材料試験炉の改修を行っているところでございますが、この改修を行うに当たりまして、アジアの方と一緒に改修の場において研修をしていただく。あるいは、アジア諸国でも役に立つような技術開発も、JMTRで行うことを考えておりますので、そういう場にもアジアの方々の参画も得て行っていくことが重要ではないかと考えているところでございます。したがいまして、具体的には、 JMTRにアジアの方の参画を経て、改修、それから関連技術の開発をしていくということが、この政策の内容となっております。事前評価票でございますが、開発期間、事業期間が平成20年度から平成26年度となっております。概要はご説明したとおりでございますが、評価結果でございますけれども、必要性につきましては、アジアのエネルギーの逼迫状況を踏まえれば、原子力発電導入のための協力を進めていくべきだということがまず考えられます。また、国の官邸のほうで進めておりますアジア・ゲートウェイ戦略会議の報告書におきましても、協力研究のネットワークを活用していくということの指摘がございまして、この JMTRを中心としたアジアの研究開発の拠点づくりということに意義があるのではないかと考えております。有効性でございますが、JMTRは、今、改修期間ということでございますので、ここでアジアの方々と一緒にいろいろ検証していくということは、アジア諸国の方々に対する基盤を与えるとともに、この JMTRの改良にもつながっていくという両方の利点があるのではないかと考えております。効率性につきましては、これも同じような観点ですが、JMTRの改修に19年度から着手しているところでございまして、この改修期間に行うということで、ふだん得られない知見をアジアの研究者の方々に提供することができるのではないかと考えております。以上を踏まえまして、評価結果といたしましては、これもまた読み上げさせていただきますが、「アジアにおけるエネルギー需要の増加に伴う地球温暖化等の問題の克服はアジア共通の課題であり、これらの問題は、アジア各国と協調して対応していくことが必要である。このため、JMTRをアジアの中核的な原子力基盤研究拠点として位置づけ、技術開発を通じてアジア諸国の原子力人材育成を行い、アジア諸国への原子力導入のための基盤の形成、技術力の向上に貢献することは重要であり、本課題を実施することは妥当である。なお、『材料試験炉としての機能の高度化に関する技術開発』と『アジア諸国の人材育成』の効果的な連携方策については、計画段階で十分に検討することが必要である」。事務局からは以上でございます。よろしくお願いします。

【田中主査】
 ありがとうございました。中核的な原子力基盤研究拠点というのはたくさんあるのですか。日本のこういう大型施設、設備で、アジアにおける中核的な原子力基盤研究拠点。

【上塚部長】
 J-PARCはそういう位置づけがあります。あるいは世界3大中性子の施設という形で、これは国際的な拠点ですが、特にアジアにおいては、これが拠点という形で、実際に国際協力でもそういう方向で進んでおりますし、そういう位置づけになっていると思います。核融合に関しても、JT-60が、今後、どういうふうに活用していくかというのは別の視点があります。

【田中主査】
 60のSAがBAのあれに半分ぐらい入っている。

【上塚部長】
 はい。あと軽水炉に関して、いろいろな研究アクティビティーはありますが、JMTRというのは、その施設もそうですし、今後の人材育成も絡めて、その拠点になり得ると考えています。

【田中主査】
 その拠点というのは、何か登録するのですか。

【板倉課長】
 特段そういう登録をするわけではないです。

【田中主査】
 原子力基盤研究拠点という、何かそういう看板を張るとか、そんなことはしないわけですか。

【上塚部長】
 そういう看板をかけることができればいいのですけれども。

【代谷委員】
 例えばもんじゅも国際研究拠点と言っています。東海のほうは教育を主体にやっているところがあります。研修センターも、ある意味では拠点となっています。アジアにおいて、むしろ拠点というか、設備はそうだけれども、設備は人が集まってくるところだけれども、原子力機構としては、ほんとうに拠点的機能を持って、原子力機構全体がやらないといけないのではないかと思っているのですが、JMTRだけを言われると、何かものすごく異様な感じがします。どうして JMTRだけで言うのかという。ほんとうにたくさん持っておられるのだったら、それを全部融合して、原子力機構そのものが、ほんとうの意味の研究、あるいはそういう人材育成の拠点になるという構想を立てられるほうがいいと思います。ぽつん、ぽつんとやられると、お互いの関連とか、また実際に経費を使われるときにも、その中だけのやりくりじゃないけれども、資金運用とか、そういうことをより有効にやれるような形になると思います。

【田中主査】
 人材育成、アジアとの連携について、何かありますよね。今、研修所の話とか。

【代谷委員】
 そうです。その辺との整合性がとれているのでしょうか。このままだと、FNCAとかに、すっと頭がいく。FNCAに引っ張り出される関係もあって、これが出てくると、あれと思ってしまいます。

【田中主査】
 この辺が、この評価結果の後半部分に、JMTRの「高度化に関する技術開発とアジア諸国の人材育成の効果的な連携方策については、計画段階で十分に検討することが必要である」とコメントは入っています。

【板倉課長】
 おっしゃるとおりです。原子力機構としては、全体的には、東海研修所もございまして、今もアジアの方もいらっしゃって、研修などもやっておりまして、実はJMTRを拠点化したいといいますか、そこにアジアの人にも来てほしいということで、機構全体として見ると、東海にございまして、原子力機構が持っているさまざまな研究炉ですとか、あるいは放射線利用なんかも含めて、全総力を挙げて拠点化をしていくということであると思います。ですから、逆に、ここを原子力機構の拠点というよりも、JMTRにアジアの人に来てほしいという意味です。

【代谷委員】
 それはわかるのですけれども、この書き方だとJMTRだけがというように見えてしまいます。

【上塚部長】
 昨年、この作業部会でもJMTRの改修という点でいろいろご議論していただいて、認めていただいたのですけれども、そのとき、あるいはその前段階では、いろいろな利用検討の中で、JMTRを改修した後、どう使っていくかという大事な視点の中で、国際協力をどう考えるか、そこでアジアをどう考えるかという課題をいただいていまして、私どもは、今回、アジア・ゲートウェイという話もありますし、具体的にJMTRを活用していく1つの我々自体のポリシーとして、こういう形で打ち出していきたいということで、今回、お願いしているという事情もございます。

【柴田委員】
 タイトルと中身がマッチしないなという正直な感じです。中身は十分意義があると思うのですけれども、その看板がちょっと。もう少し、JMTRを中核に置くようなタイトルができると良いと思います。

【吉田委員】
 例えばJMTRの特色をもう少し打ち出して、ここにアジアの方を呼ぶという書き方をされるとか、あるいは、このJMTRを1つの例として、今後、開発機構の中で基盤となるようなシステムに構築していくとか、そういう将来に対する展開のようなものも書いてあってもいいのではないかと思います。

【板倉課長】
 将来的には、このJMTRも1つでございますし、またこういう取り組みを通じて、これ以外にも東海の研修所でいろいろ研修を行っています。いろいろなニーズも今後出てくると思いますので、そういうニーズを踏まえて、今後、ほんとうの意味で、原子力機構全体として、こういうアジアの方々との連携をどうしていくのかというのは、確かにつくっていかなければいけない課題かなと思っております。

【稲田補佐】
 先生のご指摘を踏まえて、例えば修文ですけれども、評価結果の中で、材料試験での開発とアジアの人材育成の効果的な連携と書いてありますけれども、これに、既存の研修施策との効果的な連携施策についてもという形で、ほかのものに付加されていくというイメージを出すというのは、1つ今来のやり方としてあって、それが先生のおっしゃっている、これ1個でどうなの、その後残るかというところに対しての解決にもなろうかと思います。

【田中主査】
 材料試験炉的なものは、いろいろな研修とかにもいいだろうし、ちょうど、今、改修しているところだから、こういう中核方式と、またさらに、その機能強化にはいろいろといいと思います。

【代谷委員】
 読んだときは、人材育成というものがメインに出てくるようだったのですけれども、例えばJMTRそのものの機能、アジアにおける機能、それは照射炉としてのということを前に出すという方法もあるのではないかと思うのですが、そういう位置づけはできないのですか。

【上塚部長】
 照射炉も、そうですね。

【稲田補佐】
 もちろんアジアの照射炉についての重要性というものはあります。

【代谷委員】
 技術的に何とかという格好で議論をすると、非常にどこかで詰まってしまいます。

【田中主査】
 大きく予算をとってきて、有効に、予算をいかにとってくるかと、この観点から。

【稲田補佐】
 修文として、「JMTRをアジアの中核的な原子力基盤として位置づけて」という、このJMTRに修飾語をつけて、ここのところが照射基盤として非常に重要なものであって、だからアジアの中核的原子力基盤と位置づけるのだという、そういうところを修文させていただくということでよろしいですか。

【代谷委員】
 そうしていただくだけでも、かなり変わると思います。

【田中主査】
 随分違います。

【稲田補佐】
 具体的な文章は、後ほどご相談させていただきたいと思います。

【田中主査】
 早い話が、計測とかも含めて、高度照射技術なのですね。

【代谷委員】
 そうすると、ここに出ている後ろのこれらがわかってきます。ちょっと見ると、この上の部分だけが見えて、上部分のだけしか書いていないというふうにも見えてしまいます。

【田中主査】
 JMTRに高度照射、高度照射技術にしておけばいいのかな。その開発をすることによって強化しという感じで。研修の話もプラスして。

【稲田補佐】
 具体的な修文は、先生のご指摘を踏まえまして、「このため高度照射技術等を付加することでJMTRを何々として位置づけ」ということで。最後のところは、「アジア人材育成」の後に、「及び『既存の研修施設施策』を、効果的な連携対策については、計画段階で十分……」。

【田中主査】
 それでいいかと思います。3つにつきましては、修文もございましたけれども、この作業部会としては、そういう形で決めさせていただくということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

(2)その他

【田中主査】
 次の議題ですが、前回までの議事録の確認です。

【稲田補佐】
 昨年、例のFBRの研究開発方針をご議論いただくのに、1カ月に2度、3度というハードスケジュールで議論いただきまして、事務局から先生方のほうに、議事録の修正のご依頼をさせていただきまして、既に確認をいただいていますが、今日、そのオーソライズをさせていただこうと思っております。既に意見をいただいておりますが、特段のご意見がありましたら、後ほど事務局にお伝えいただければありがたいと思います。

【稲田補佐】
 本日の会議の議事録は個人名を含め公開といたしますので、公開の前までに確認をいただければと思います。

【田中主査】
 今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。

【稲田補佐】
 今後の予定でございますが、今年は開発方針等をつくることはございませんので、基本的にはこれでおしまいと思っておりますが、次回以降、何かありましたら、その都度ご相談させていただきますので、事務局よりご連絡を差し上げたいと思っております。

【田中主査】
 これにて終わりにしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局原子力研究開発課

(研究開発局原子力研究開発課)