資料6

平成20年度拡充課題に関する事前評価票

(平成19年8月現在)

1.課題名

 先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネットワーク)

2.開発・事業期間

 平成19年度〜平成23年度

3.課題概要

 先端的な機能を有する研究機関の施設・設備を共用化することで研究環境の整備を図り、イノベーションの創出を目指す「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の中で、ナノテクノロジー関連の研究施設の共用化を推進する。
 若手研究者を育成し、その活動を支援することは、科学技術の持続的発展のために、また知識・技術を世代間で連続的に継承していくために不可欠である。このため、長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年6月1日 閣議決定)で指摘されているように、ナノテクノロジー・ネットワークにおいても、若手研究者が先端機器へよりアクセスしやすい環境を整備する必要がある。これを実現するために、ナノテクノロジー・ネットワーク各参画機関の装置を拡充してマシンタイムの増加を図り、若手に優先的に割り当てる。

4.評価結果

(1)必要性

<ナノテクノロジー・ネットワークにおける若手研究者支援>

  • 1第3期科学技術基本計画
    • 「若手研究者に自立性と活躍の機会を与えることを通じて、活力ある研究環境の形成を指向する」
    • 「国は、このための環境整備(スタートアップ資金の提供、研究支援体制の充実、研究スペースの確保等)に組織的に取り組む大学等を支援する」
  • 2分野別推進戦略(平成18年3月28日 総合科学技術会議)ナノテクノロジー・材料分野
    • 「研究拠点の整備は、ナノテクノロジー・材料分野の基礎研究の推進策とともに、実用化に繋げる展開を図るための推進策としても重要な役割を担う。(中略)人材育成の場としても機能するよう運用に対する配慮が必要である。」
  • 3平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針(平成19年6月14日 総合科学技術会議)
    • 「若手、女性及び外国人研究者の活躍促進のための取組を充実・強化」
  • 4長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年6月1日 閣議決定)
    • 「多数の研究者が利用する基盤的かつ共通的な研究設備、学生の教育研究に必要な設備等の大学や研究機関における計画的な整備を図る。また、高額の研究設備等は不必要に重複して整備することのないようにするとともに、既存の研究設備等を含め、若手育成や民間利用の観点も含め積極的に共用を促進する。」

<先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネットワーク)>

  • 1分野別推進戦略(平成18年3月28日 総合科学技術会議)ナノテクノロジー・材料分野
    • 戦略重点科学技術「イノベーション創出拠点におけるナノテクノロジー実用化の先導革新研究開発」

    「ナノテクノロジーによるイノベーション創出を効率的に誘発するため、研究成果による試作拠点や共同研究センターなどの拠点の整備を進める。」とされている。

  • 2「ナノテクノロジー・材料に関する研究開発の推進方策について」(平成18年6月 科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ナノテクノロジー・材料委員会)

    「世界トップレベルの研究開発力を達成し、またそれを維持していくためには、最先端の研究環境を戦略的に整備・充実していくことが必要である。平成18年度で終了するナノテクノロジー総合支援プロジェクトで蓄積された設備・経験を効果的に活用し、研究分野の融合とイノベーションを推進するために、最先端施設・設備、研究支援領域、多様な利用形態を促進する運営体制等に留意しつつ、新たな研究支援体制の構築を図る必要がある。」と指摘されている。

(2)有効性

 多くの学問領域において、先端機器等を用いた測定・評価が研究遂行に必要不可欠のものとなっている。特に若手研究者は資金や人脈の蓄積がまだ比較的少なく、ナノテク・ネットワークで共用に供される機器に頼るケースも多い。しかし、現在共用に供されている非常に高度な先端機器は、既にオーバーフローの状態である。その一方で、必ずしもすべて非常に高度な先端機器でなければできないわけではなく、汎用性が高い機器で通用するものも多い。
 このため、汎用性の高い機器をより多くの若手研究者等が身近に利用しやすい環境を整備することにより、若手が機器の操作技術の習得を含めて様々な知見や経験を積む機会が増え、我が国が得意とするナノテクノロジー・材料分野の研究者の裾野の拡大、層の厚みの増大が期待される。また、自らの研究分野とは異分野の施設・設備にアクセスすることが容易になり、分野の融合が進展し新たなイノベーションが期待できるなど、ナノテクノロジーが基盤を支える全ての科学技術分野の振興が進むものと考えられる。

(3)効率性

 本事業は、オープンアクセス型の研究拠点の形成に当たり、大学等研究機関が既に保有する先端機器・設備等のポテンシャルを最大限活用することにより、分野融合研究、イノベーションの創出に不可欠な先端研究環境を幅広い研究者に提供するものであり、効率的・効果的であると期待される。

5.評価結果

 上記必要性により着実に実施すべき課題と判断する。
 また、有効性、効率性についても、現段階での計画として十分検討されているものと判断する。
 なお実施にあたっては、支援員の負担軽減及びキャリアアップについても十分に配慮する必要があるとともに、将来的な制度運営の在り方についても検討していく必要がある。