安全・安心科学技術委員会(第22回) 議事録

1.日時

平成22年3月5日(金曜日) 10時30分~12時15分

2.場所

文部科学省 10階2会議室

3.議題

  1. 安全・安心に資する科学技術の施策の現状について
  2. 安全・安心に資する科学技術の推進について(報告書)
  3. 科学技術と輸出管理
  4. その他

4.出席者

委員

板生 清 委員主査、岸 徹 委員主査代理、青木 節子 委員、土井 美和子 委員、奈良 由美子 委員、橋本 敏彦 委員、樋渡 由美 委員、堀井 秀之 委員、村山 裕三 委員

文部科学省

泉 紳一郎 科学技術・学術政策局長
岡谷 重雄 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)
竹内 英 科学技術・学術政策局安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

三角 育生 経済産業省貿易経済協力局安全保障貿易審査課長(説明)

5.議事録

<開会>

  •  配布資料確認

 (1)   安全・安心に資する科学技術の施策の現状について 

<安全・安心科学技術プロジェクト>

  • 資料1に基づき、竹内室長が安全・安心科学技術プロジェクトの現在の研究の状況を、テロ対策分野と地域社会分野について、まとめて報告した。
  • 安全・安心科学技術プロジェクトの本年度の成果等詳細については、来年度最初の安全・安心科学技術委員会で報告をいただき、また、終了した課題についての評価を行う予定である。

【岸主査代理】  (安全・安心科学技術プロジェクト推進委員会テロ対策分野委員長として)提案のときは、あれもできる、これもできるというような課題が多かったが、実際にできることに目的を絞ってもらい進めている。いくつかの課題が実証試験を行っているが、実用化に当たっては、誤報率をしっかり把握するという意味でも、現場でデータを収集するのが非常に大事である。継続の3課題については、あと1年でいい製品ができるように指導していきたい。

【堀井委員】  (安全・安心科学技術プロジェクト推進委員会地域社会分野委員長として)3課題とも予想を上回る成果を上げていると認識している。安全・安心科学技術が実際に地域社会に実装されるということが一番重要だが、ただ単に実装されるというだけではなく、その実装の方法論というものを構築してほしいとお願いしている。

 <安全・安心な社会のための犯罪テロ対策技術を実用化するプログラム>

  • 資料2、3に基づき、竹内室長が22年度予算案に盛り込まれた科学技術振興調整費「安全・安心な社会のための犯罪テロ対策技術を実用化するプログラム」について説明した。
  • 犯罪・テロ対策技術について、関係府省との連携体制のもと、具体的な現場のニーズに基づいたテーマ設定、技術開発、実用化に向けた実証試験を一体的に行うことを目的とする。

【岡谷戦略官】  このプログラムも含めて、総合科学技術会議から、振興調整費で社会システム改革と研究開発の一体的な推進のプログラムをするべしという指示があった。この分野は需要はあるが、政府調達くらいで非常にマーケットが小さい。今までの安全・安心科学技術プロジェクトでは、どうしても最後の段階で需要側、調達側のいろいろな注文が出てきたときに十分対応できなかったという反省のもと、調達側のニーズが場合によってはスペックダウンする可能性なども含めてもう少し繊細に入り込めるようなプログラムをつくり上げた。今までやってきた実績もある程度踏まえつつ、より早期に実装に移れる形をつくった。

【板生主査】  ユーザーニーズと技術とをできるだけマッチングさせ、必要とするものを実用化していくプログラムである。

【村山委員】  1つ注意しなければならないのは、政府がお金をかけて、政府が調達すると、下手をすると日本だけのシステムになってしまい、世界に出たら何も通じないということになる。そこをチェックするのは、国際協力、あるいは国際調達をどうするかということで、国際的に通じるものができれば、システム自体もかなり厳しく回っていくと思う。国内だけではなく国際的な視野も入れていけばもっと展開力が出てくる。

【竹内室長】  現在、アメリカ国土安全保障省とも情報交換をしている。アジアのテロ対策の展示会で、シンガポールが東芝の機器などに関心を示している。東北大学のボディスキャナーについてはインドネシアが関心を示している。情報交換をしっかりする中で海外にも出て行きつつ、一方で性能は海外製品にも引けをとらない形で、国内でも導入されていくことが望まれる。

 (2)   安全・安心に資する科学技術の推進について(報告書)

  • 資料4に基づき、竹内室長が6月の中間まとめからの変更点を中心に「安全・安心に資する科学技術の推進について」報告書案を説明した。

【板生主査】  中間まとめが、次の科学技術基本計画の中にも少し盛り込まれており、そういう意味では、委員会で議論したことが世の中に役に立つ方向へ動いている。中間まとめから最終案に関しては、その辺まで含めた形で答申案をまとめていただく。

【村山委員】  海外に展開するときに法令で引っかかるものがあるかもわからないというが、それは外為法によるのか、あるいは武器輸出三原則的なものなのか。そのあたりに障害があるのだったら、規制緩和のようなことを盛り込む必要はないのか。

【三角課長】  法律上で規制するものは外為法である。外為法ではどのような貨物が規制されるかというリストがあり、そのリストのトップの第1項、武器項と私どもが呼んでいるところに、いろいろとあげられているもののうち、「軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの」が武器輸出三原則上の武器と解釈される。技術の提供についても、武器輸出三原則及び政府統一見解に準じて取り扱われるが、やはり外為法のリストがある。 武器輸出三原則は、外為法の運用に反映されているので、外為法を遵守してやっていただきたい。

【板生主査】  もう一つのメインの社会的イノベーション創出という観点から意見をお持ちの方にぜひ議論していただきたい。中期計画の中でも科学技術政策から科学技術イノベーション政策へ転換するとある。社会イノベーションというのか、科学技術イノベーションというのか、科学技術を用いて社会をイノベーションしていくのだという観点で、安全・安心の技術がどういうふうに社会イノベーションにつながり、役に立つのかということを掘り下げていく。そこをこの委員会は推進する形で意見を申し上げるというのも大事なところだと思う。

【堀井委員】  具体的に何が社会的なイノベーションかというイメージをつかむのが重要かと思う。例えばストックホルム市が交通渋滞を緩和するためにロードプライシングを導入した。それを仕込んだのがIBMで、IBMがセットで売り込みをかけて、画像からナンバープレートを識別してチャージするような科学技術システムを含めた提案をした。そういうことを導入することになると住民投票が必要になるのだが、住民投票もIBMの電子投票システムを売り込んだ。IBMのグローバルITセンターをヨーロッパにつくって、その後、ロンドンにも導入され、今、シンガポールに売り込みをかけている。そういう事例が描くべきソーシャル・イノベーション事業の姿か。そういうことをしていかないと、なかなか科学技術が大規模に社会に実装される、あるいは社会を変えるということにつながらない。だから、そういうことを実現するにはどうしたらいいか。安全・安心絡みでもそういう話は幾らでもあり得るし、安全・安心というものを例えば交通の問題とセットで進めていくことはあり得る。ストックホルムの例で言えば、ただ単に渋滞緩和だけではなく、犯罪防止やさまざまな観点からセットで考えることができる。そういうものを何か考えるところは日本にあまりないので、ここで考えていただけるならば有益なのではないか。

【土井委員】  書きぶりの点で、「ユーザーとなる関係府省等の出口側機関」というのが、ユーザーと出口側機関と両方混ざっているので、そこを考え直していただければというのが1点目。あともう1点が、「一方で、犯罪・テロ対策技術のうち、問題のないものについては、適切な貿易管理体制の下、海外への輸出を視野に入れることは」で、問題のないものが輸出されるというのは当然なので、わざわざ「問題のないもの」というのは書かなくてもよいということ。あともう一つ、カメラや画像を使う話では、個人情報保護法のあたりは地域によって扱いがかなり違うので、各国での規制等をよく知らないとできない問題があるので、「適正な貿易管理体制のもと、各国、それぞれ各地域での規制や制度等を考慮し」というふうに書き直すといいのではないか。

【板生主査】  報告書は皆さんの意見を全部いただいて修正し、主査預かりという形で最終的に取りまとめたい。

(一同了承)

 (3) 科学技術と輸出管理

  •  資料5に基づき、三角 育生 経済産業省貿易経済協力局安全保障貿易審査課長が科学技術と輸出管理について説明した。

【村山委員】  テロ対策機器を輸出する場合、エンドユーザーがしっかりしていたら大体許可が下りるという理解でいいのか。

【三角課長】  当該機器が武器でないことが前提。

 一般論としてのパターンで申し上げることはできないが、ケース・バイ・ケースで判断させていただくことになる。申請者には、軍用スペックでないことなどを説明いただき、その上で契約書などでそこを添付いただき、エンドユーザー、エンドユースについて説明していただく。私どものほうでそれをベースに審査させていただく。

【樋渡委員】  仮に武器輸出三原則がなくなった場合に、今の制度的なものに何か大きな変化があるかどうか。

【三角課長】  仮の話についてはコメントできない。

【青木委員】  客観要件の考え方として、まず用途要件を見る、そして需要者要件を見る。当たっていた場合にはもう一度その用途を見ていき、そこで判断するというよう筋道になるのか。審査を求めていく手順を見ていくと、必ずしもそうでもないように見える。

【三角課長】  リスト規制アイテム以外でも、大量破壊兵器に使うという話が明らかにわかっている場合は許可申請が必要。許可申請が必要という話と許可されるかどうかというのはまた別の問題。判断の流れとして、まず貨物がリスト規制対象であるかどうか、リスト規制対象であれば、リスト規制に基づく申請をしていただく。リスト規制に該当しない場合には、木材とか食品等でない限りは、用途をチェックしていただき、次に核兵器等の開発等に用いられることが明らかでないときは、次に需要者のチェックをしていただくといった流れになっている。

【青木委員】  外為法の25条の特に1項、2項が非常にわかりにくいので、25条をわかりやすく説明していただけたらと思う。

【三角課長】  広く大学の研究者などにもご理解いただけるようにすることは大事だと思う。フローチャートなどを用いると良いかもしれない。大まかに言えば、外国において技術を提供することであれば、相手方が居住者、非居住者関係なく、こちらも居住者、非居住者関係ないというところがポイント。さらに、国内であっても居住者から非居住者への技術の提供というのは、当然対象となる。さらに、25条3項により持ち出すときに許可対象になる。

【岸主査代理】  実際に市販品を売る場合に外為法にかかるのはわかるが、例えばプロトタイプをつくって外国のどこかでデモして持ち帰る場合も、やはりこれがかかってくるのか。

【三角課長】  技術仕様が規制対象に該当する場合などは、許可が必要であることは変わらない。

【岸主査代理】  そういう場合に許可を得るのに通常どれぐらいの日数がかかるのか。

【土井委員】  それぞれの部品がすべてどうかという点からやらないといけないので、その資料をそろえるのが一番時間がかかる。

【三角課長】  申請書類等の資料がそろっていれば、通常はさほど時間はかからない。

【土井委員】  だから、プロトタイプが一番大変。論文を書いて出すだけはいいが、デモが一番大変。

【板生主査】  これからテロ対策のいろいろな開発をした場合に、どういうふうにそれを外に売っていけるのか、出せるのかという問題は非常に大きな話なので、三角課長にはぜひこれからもよろしくご指導のほどお願いしたい。

 (4) その他

【泉局長】  次期科学技術基本計画の策定については、もう既に各省で議論するフェーズから、総合科学技術会議のほうでの議論のフェーズになりつつある。文部科学省は、その時点までの議論を集約する形で「我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて~ポスト第3期科学技術基本計画における重要政策~」をつくって、総合科学技術会議に、我々の立場としてはこういう認識であるということを申し上げると同時に、これをつくった去年の暮れには、川端文部科学大臣に科学技術・学術委員会の総会に出席いただいて、非常に重要な検討をいただいたのでこれを役に立てたいとご表明いただいた。基本計画の中に盛り込むべき具体的な研究開発の重点項目を議論していく上で、ここでの議論をさらにファイナライズしていくことが非常に有効であろう。我々もいただいた成果を踏まえてこれからの議論に対応していきたい。総合科学技術会議の議論もそういう方向に行きつつあるのではないかと認識している。今まで分野別の重点化というのはライフサイエンスとか、環境とか、ナノテクノロジーとか、技術のディシプリンから重点化を図ろうとしていたが、より社会的な問題、経済社会的な問題の解決に即した形での重点化を図るということが重要ではないか。もちろん、それのベースとなる基礎のところ、基礎科学力の強化に向けた研究の推進が非常に重要であることは言うまでもない。年末に出された新成長戦略の基本方針の中でも、グリーンイノベーションとか、ライフイノベーションとかという言い方で、健康で暮らせる社会を目指す、それから、低炭素社会というか、環境に取り組むとか言われたが、そういう課題に対応した重点化の図り方が必要ではないか。そういう意味で安全・安心というのは、どちらかというと技術分野というよりも、まさに経済社会的な課題に対応するために科学技術をどういうふうに糾合していくかというくくり方だと思うので、この委員会はほかの研究計画・評価分科会の下にあるライフサイエンスとか、情報とか、ナノテク・材料の委員会と違って、打ち出そうとしている方向を先取りした形でご議論いただいている委員会ではないかと、本日のご議論を聞きながら改めて思った。大きな政策のかじ、科学技術政策のかじ取りがそういうふうなことに向かいつつあるというようなことも少しご認識いただきながら、またこれからのご審議をよろしくお願いしたい。

【竹内室長】  次回の委員会で、安全・安心科学技術プロジェクトの今年度終了の3課題について、委員の先生方に評価をいただき、成果がどうであったのか、今後どのように社会実装に結びつけていくべきなのか、ご意見をいただきたい。それに加え、本日報告書案についてさまざまな安全・安心の方向性を示していただいたので、それを具体的にどういうふうに進めていくかということについてもご議論いただきたい。

── 了 ──

 

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電話番号:03-6734-4049
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(科学技術・学術政策局安全・安心科学技術企画室)