第9期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成30年1月31日(水曜日)10時~12時

2.場所

3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度政府予算案について
  2. 研究開発課題の事後評価結果について
  3. 我が国全体の状況を把握するアウトカム指標について
  4. ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会の検討報告
  5. その他

4.議事録

【三島主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第3回目の第9期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催させていただきます。御多忙の中、多数御参加いただきまして、本当にありがとうございます。

 本日は議題が4つあります。まず最初に、文科省の来年度の予算案、そこで我々に関係のあるところを中心に御説明をしていただきます。続いて、研究開発課題の事後評価結果ということで、東北発素材技術先導プロジェクトの事後評価の結果について御説明を頂きます。3つ目は、政策評価に関して我が国全体の状況を把握するアウトカム指標についての検討です。これは覚えていらっしゃるかと思いますが、アウトカムとアウトプットがどう違うんだということが、各委員会によってばらばらだったということで、それをどうしていこうかということです。そして、最後の議題4が、これが肝心なところだと思いますが、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会の検討状況を中山委員から御説明頂き、御意見を伺うことで進めさせていただきたいと思います。

 それではまず、事務局から委員の出欠及び配付資料の確認ということで、丹羽さんによろしくお願いいたしたいと思います。

【丹羽補佐】  事務局、ナノテクノロジー・物質・材料参事官付で補佐をしております、丹羽と申します。

 本日は、五十嵐委員、館林委員、林委員、萬委員が御欠席となっております。また、梅村委員が転任をされまして、新たに射場委員が着任されておりますので、一言御挨拶を頂ければと思います。

【射場委員】  トヨタ自動車の射場です。去年までトヨタ電子の研究開発全体を統括していましたが、今年からそれに加えて材料の基盤も見ろということになりまして、またこの場でお世話になることになりました。よろしくお願いします。

【三島主査】  どうぞよろしくお願いします。

【丹羽補佐】  よろしくお願いいたします。

 また、事務局の担当局、研究振興局におきましても局長が交代となっておりますので、磯谷研究振興局長から一言御挨拶をお願いいたします。

【磯谷局長】  1月16日付けで関前局長の後を引き継ぎまして新しく研究振興局長になりました、磯谷です。よろしくお願いします。名古屋大学の理事・事務局長を1年ほどしておりましたし、北陸先端大学院大学、東北大学、そして、政策研究大学院大学、4つの国立大学の現場を経験してまいりました。いろいろなところで先生方には既にお世話になっておりますが、引き続きよろしくお願いいたします。

【丹羽補佐】  加えまして、議題3の観点から、弊省企画評価課より國分補佐にも御出席をいただいております。

 それでは、配付資料の確認をいたします。配付資料は、議事次第にありますとおり、資料1から4、それから、参考資料が2種類、机上に配付しております。また、御案内として、弊省、我々のナノテクノロジー・材料担当参事官付の事業に関連いたしまして、元素戦略と大型研究機器の連携シンポジウムに関する御案内、それから、ナノテクノロジー総合シンポジウムに関する御案内、2月に2件のシンポジウムがありますので、そちらの案内も机上に置かせていただいております。現在もまだ申し込み受け付け中ですので、ご覧いただきお申し込みいただければと思っております。

 資料の確認は以上です。

【三島主査】  どうもありがとうございました。資料、よろしいでしょうか。

 それでは、最初の議事に入ります。平成30年度の政府予算案です。事務局から御報告を頂いた後、少し質疑を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

【丹羽補佐】  それでは、続いて御説明いたします。資料1をご覧ください。ナノテクノロジー・物質材料関係の平成30年度の予算案という資料になっております。

 1枚おめくりいただきまして、予算案のポイントと致しまして、既に皆様には釈迦に説法かと思いますが、ナノテク・材料分野につきましては、エレクトロニクス、ライフ、環境・エネルギー等幅広い課題を解決に導いていく分野横断的な基盤技術でありまして、革新的材料を持続的に創出していくことが我が国における超スマート社会を実現していく鍵となるということで、未来投資戦略、また科学技術基本計画にも各種施策が盛り込まれているところです。これらを踏まえまして、財務省に対して概算要求を行ってまいりました結果を報告させていただきます。

 同じ資料の下の方、マル1、産学官連携と書いてあるところになります。こちら、グローバル連携拠点の構築によるマテリアルズイノベーションの加速として、29年度からNIMSにて取組が開始されました革新的材料開発力強化プログラム、こちらは昨年度の16億円から大きく拡大いたしまして19億円で予算が付いています。さらにその下、マル2、ナノテクノロジーに関する研究基盤の強化としては、ナノテクノロジープラットフォーム事業が、前年度16億円から約3億強の増額を勝ち取ることができまして、19億円ということで措置を頂いているところです。この2点を主要事項として今回書かせていただいておりますが、そのほかの事業も含めまして、次のページにまとめております。

 マル1の部分、中核拠点としてNIMSの予算を最初に挙げておりますが、30年度の法人全体の予算案としましては135億円で、前年度より億円以下の単位では5,000万程度の増額を頂いておりますが、同程度の予算ということで実施をさせていただきます。さらにその下、M3を再掲させていただいております。加えまして、今回補正予算でも少し機器について措置を頂いた次第です。

 マル2の先鋭的な研究開発領域として、元素戦略プロジェクトです。こちらは材料探索のフェーズが終わって、元素機能の理解を応用した材料創製を行っていくフェーズに入ったということで、さらに来年度は2度目の中間評価も行うという節目の年に当たります。これらプロジェクトの最終段階に向けて着実に進めていくこと、また、METIの未来開拓プロジェクト等とも引き続き連携しながら着実に進めていくこととしておりまして、前年度とほぼ同額の20億円頂いております。

 下の統合型材料開発プロジェクト、こちらは平成30年度が最終年度に入りますので、成果の創出に向けて着実に取り組んでいただくことを期待しております。具体的には、リチウム空気・全固体・ペロブスカイト型材料対応電池、こういった電池の特別推進チームについて引き続き研究開発を推進いただきます。また、28年度に併設させました技術統合化ユニットも引き続き並走させて事業を実施いただく予定です。

 最後は、ナノテクノロジープラットフォームの事業です。こちらは今年度の夏に中間評価を行いまして、皆様にもその結果を御報告させていただいておりますが、その結果を踏まえて、ナノテクに関する先端装置の共有化を引き続き進めること、また、バイオ分野やSociety5.0に対応した新たな機器の整備や人員の支援体制を強化することが示されましたので、それらを踏まえて増額要求いたしました。

 各事業の詳細につきましてはその後のポンチ絵に示しておりますが、説明は割愛させていただきます。

 以上です。

【三島主査】  この委員会に関連する平成30年度予算案について概略をお話しいただきましたが、何か御質問やお気付きの点がありましたら、御発言いただければと思います。何より予算、財務省の評価が大変厳しい中で全て現状維持又はプラスということですので、我々にとっては非常にうれしいところかと思いますが、その分やっぱりしっかりと成果を出していかなければいけないということになろうかと思います。

 いかがでしょうか。何か御質問ありましょうか。よろしいですか。

 それでは、議題2に進みたいと思います。まず、研究開発課題の事後評価の結果です。先ほども冒頭で御紹介いたしましたけれども、東北発素材技術先導プロジェクトの事後評価です。この件につきましては、事後評価検討会においてヒアリング等を実施していただいて、研究計画・評価分科会において最終的に決定する事業評価票の案を作成しているところです。本評価については、事業全体の評価を実施することになります。

 ということで、事後評価等について御説明をいただきますが、栗原委員と高梨委員におかれては利害関係者ですので、恐縮ですが、御発言は控えていただくようにお願いしたいと思います。

 それでは、資料2-1、2-2を丹羽補佐から御説明いただきます。よろしくお願いします。

【丹羽補佐】  続いて、資料2-1、2-2に基づきまして御説明をさせていただきます。東北発素材技術先導プロジェクト、こちらは平成24年度から5年間にわたって実施をしてきた事業ですが、震災からの復興ということで復興特別会計を措置いただきまして進めてきたものです。本年の秋から冬にかけましてこちらの課題が終了したことに伴う事後評価を実施しました。その結果を今回御報告させてきいただきます。

 事業の概要については、資料2-2の3ページをご覧いただければと思います。こちら、少々見づらいのですが、研究開発の概要ということでポンチ絵を付けております。簡単に御説明をしますと、東北地方は、もとより電子部品、デバイス、電子回路などの分野の製造業に強みを有する地域であったこと、また、東北大学をはじめとしてナノテク・材料分野に強みを有していたこと、これらを踏まえ、また、平成28年度以降の復興への提言、東日本大震災復興構想会議でも示されました提言を踏まえて、東北地方の企業と連携して実用化に向けた研究開発を加速すべきだと、こういった背景の下進められてきたプロジェクトです。

 具体的には、下に写真付きで示させていただいておりますが、低損失磁心材料技術領域、牧野先生、それから、希少元素の高効率抽出技術領域、中村先生、それから、本日も御出席の栗原先生に率いていただいた超低摩擦技術領域、この3つの領域に分かれて取り組んでいただいていたところ、また、それらを下支えする機構としまして、東北大学の産学連携機構、これらの4つが一体となって進めてきたプロジェクトです。

 評価の概要につきまして、1枚の紙、資料2-1に基づきまして御説明をさせていただきます。結論から申しますと、3領域とも設定された目標に対する達成度は十分であるとともに、地域企業との共同研究など、事業終了後の体制が構築されていて、さらに今後の復興への貢献も期待できるとして高い評価を頂いたというところです。また、産連機構におきましても、全体的な後方支援活動が認められて、今後も事業とそこから創出された成果につきまして積極的な貢献と創造的な戦略立案を期待するとされましたところです。申し遅れましたが、これは資料2-2の評価票本体を概要にまとめたものです。

 その下、2のところが技術領域ごとの評価結果を簡単にまとめたものです。超低摩擦技術領域におきましては、摩擦に起因する動力損出が、社会において、例えば自動車では3割から4割の動力損出が出ていると言われるなど、摩擦、摩耗に対する産業界のニーズは非常に強く、それらに裏付けられた技術課題に向かって3つの分野に取り組んでいただきました。3つの分野、具体的には、ピストンや軸受けなどのエンジンにおける機械部品の摩擦損失を減らす油潤滑の部分、また新エネルギーシステムを構築する水潤滑の技術、また、次世代の真空機器等における適用が望まれている固体潤滑のこの3つの分野です。

 3つの分野につきまして、低摩擦化技術では、潤滑油の添加剤を開発して、60%の摩擦低減を実現した、一方、水潤滑の技術については、ダイヤモンドライクカーボンを用いた廃熱発電システムを新たに開発、実用化したこと、また、摩耗耐久性を向上した樹脂の複合材の開発も実現し、従来品の1割程度の摩耗量を実現するなど、設定された目標は十分に達成されたという評価がなされました。また、それだけではなくて、東北経済産業局や東経連とも連携して活動するなど、復興に関する地域連携、また産業界との連携強化が有効に作用したと、こうした評価を頂いて、今後はエンジン部品以外の先導部品とか、自動車の生産設備等に関する展開に期待しますということが表明されました。

 一方、低損失磁心材料技術領域につきましては、こちらは国内の電力消費量の3%を占めるとされている変圧器等の磁心損失、いわゆる鉄損と呼ばれているものですが、それへの対応として新たなナノ結晶磁性材料を作るということに取り組んでいただきまして、NANOMETという名称で現在実用化されておりますが、NANOMETを開発いただきました。こちらの材料は、企業とともに加工・実証に取り組んでいただきまして、従来の磁心材料であったケイ素鋼と比べまして72%もの電力損失の改善を見たところです。

 このNANOMETについては、東北での事業化を目指すという目標の下で応用実証研究で目標を達成し、加えて、NANOMETの開発の中のスピンオフとしまして、レアアースフリー磁石の新規開発にも成功したと、こうした成果について評価を頂きました。

 また、特筆すべきこととして、大学発ベンチャーとして東北マグネットインスティテュートという会社を設立しまして、実際にパナソニックの工場内に生産拠点を設けて成果展開される、また、それにつきまして産学官連携功労者表彰、文部科学大臣賞を受賞するといったことも見られまして、成果を継続発展する見通しが非常に明瞭になっているということにつきまして評価を頂いたところです。さらに今後については、商品化、マーケットインについて今後の取組に期待されたところです。

 3つ目、希少元素の高効率抽出技術領域につきましては、背景として、レアメタルのリサイクル工程において、中間処理、精錬のプロセスで高い効率で分離・抽出する技術が求められておりまして、その分離技術、抽出技術の開発に取り組んだというところです。下に書いてあるとおり、物理選別技術の高度化、それから、新規化学精製基盤技術の確立、それから、応用技術開発、3つの目標に対して十分に達成されていると評価されたところです。

 また、福島県や宮城県の中小企業、東北の企業を中心に支援を実施するなど復興への顕著な貢献も認められて、さらにこの両県では、リサイクル関連の協議会を率先して設置するなど、事業終了後のリサイクル産業の構築も見据えた活動を行っていただいておりまして、事業化に向けた今後の更なる発展に期待するとされたところです。

 最後になりますが、産学連携機構におきましては、この3技術領域のサポートに尽力をされたことが評価をされましたが、一方で、この事業が実際にメーカーに採用されて全国的な社会実装にどの程度つながるかどうかということ、また、それによって実際どのぐらいの経済効果が得られたかというところ、ここにつきまして試算・推計の取り方を含めまして今後の追跡調査に取り組むことが必要であるという意見が出されたところです。

 こちらの事業に関する評価の概要の説明は以上です。

【三島主査】  それでは、今、資料2-1によって事後評価結果を御説明いただきました。各項目、産学連携機構も入れますと4つの動きに対しては非常にいい結果が得られたという、評価が高いというふうに読み取れるわけですが、何か御質問、御意見がありましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

 射場さん、どうぞ。

【射場委員】  このプロジェクトは立ち上げのときに随分一緒にやらせてもらったので、内容はよく分かっているんですけれども、最終的な結果として、材料の研究だけにとどまらず、産業界への適用、実用化のところまで進んだというのはすごくよかったなと思います。特にナノ磁性の材料を大学発ベンチャーでやられていて、一体ベンチャーでどこまでやるのという議論を立ち上げのときも随分させてもらって、いいタイミングで民間にハンドオーバーすることを考えてくださいというふうにいろいろ議論させてもらったんですけれども、本当にそのようにされて、民間に適用されているというのはすごくいい結果だったなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。大変サポーティブな御意見だと思います。

 ほかに御意見ありましょうか。馬場先生、どうぞ。

【馬場委員】  本プロジェクト、私も一部成果は存じ上げていますが、非常にすばらしい成果だと思います。

 1つだけ教えていただきたいのは、資料2-2の5ページに、アウトプット指標とアウトカム指標が提示されています。後のアウトカムの議論の中でも出てくるのかもしれませんけれども、私自身はリーズナブルだと思いますが、これを選ばれた理由、これが本当に正しいという理由が、もし何かありましたら、教えていただければと思います。

【丹羽補佐】  こちらは、具体的に定量的に追えるものとしてまずどのようなものがあるかというところから議論が始まったというふうに聞いてはいるところです。確かに共同研究の民間企業数が増えること自体がいいのか、アウトプットと言えるのかとか、論文数について、これがこの事業に関して、例えばこの事業は復興への貢献ということを1つの目標、大きな目的にしているわけですけれども、それに照らして論文というところがどこまで効いてくるのかといった議論は確かにあろうかと思っております。これだけかと言われると、確かに参考指標の1つにすぎないとは考えておりますが、定量的に追える指標としてこれを挙げさせていただいたというふうに理解をしております。

【三島主査】  このアウトプットとアウトカムとの手法になるものの項目をどう選ぶかというのがやはり1つ大きな議論が前回あったところです。次の議題のところでまた少しこのことに関する考え方について御説明があると思いますので、そのときにまた併せて御意見頂ければと思います。

【丹羽補佐】  すいません、補足してもよろしいでしょうか。

【三島主査】  どうぞ。

【丹羽補佐】  補足ですが、事後評価の際には、東北大学の産連機構の方からこの事業の経済効果につきまして定量的に試算した値が出されました。ただ、その数値につきましても、この事業の目標として掲げていたわけではないものの、そもそも試算が楽観的なのではないかというような御指摘も多々頂きました。本日もナノ材委員会に御参加いただいている湯浅先生から頂いた御指摘ですが、そういった試算の取り方自体につきましても今後ちゃんと追跡していくべきだということは評価票の中にもコメントとして付させていただいております。

【三島主査】  それでは、今のアウトプット、アウトカムのところはよろしいですか。

 それ以外のところ。

 中山さん。

【中山委員】  ありがとうございます。本件、プログラムディレクターの澤岡昭先生と、プログラムオフィサーの嶋林ゆうこさんが非常によくやっていたなと、脇で見ており感心しておりました。そういうことも留意していただければと思います。

 あと、これは質問というより意見ですが、7ページに、福島県において福島県環境リサイクル関連協議会が設立され、事業終了後もリサイクル産業の構築を目指した取組がなされているということ、また、8ページの下から2つ目の段落で、東北大学の多元研に金属資源プロセス研究センターが新設されて、地域住民の生活と密接な関連性がある産業であるからリサイクルは大事だと書いてあります。リサイクルあるいは循環というのは、地域の産業との密接な生活とのつながりがあると同時に、サイエンティフィックにも非常に大事なところがあります。だからこそ多元研の中に研究センターが設立されたのだと思います。この部分、我が国としてサイエンティフィックにしっかり取り組んでいかなければいけないという視点も、どこかに付記、あるいは注目していただければと思います。以上です。

【三島主査】  御意見ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。事後評価検討に当たっていただいた湯浅先生、吉江先生、何か付け加えることがありましたら。

【吉江委員】  それでは。文部科学省の事業として、復興支援というところが題目の一番重要なキーワードとして入っているので、産業との密接な連携を多分先生方は非常に苦労されていたのではないかと思いまして、それを実際に非常に充実した形で仕上げられたように私は受け取りました。加えて、東北大学の産学連携機構が、非常によくやられていたという印象があります。なかなか最終的な評価書には書きにくいんですが、たくさんの努力をされていた結果としてものすごく多くのノウハウを積み上げられたと思いますので、今後が非常に期待できるのではないかと私は考えております。

【三島主査】  ありがとうございます。

 もし何かありましたら。

【湯浅委員】  先ほどのコメントにもありましたように、特に低損失の磁性材料に関しては、大型の実証プラントまで立ち上げて産業化に持っていったという点は非常に高く評価されるべきだと思っています。

 また、スピンアウトで出てきた高磁性、特にレアアースフリーの磁石はまだ基礎研究段階なんですが、これも非常に今後の発展が期待されますので、今後どんどん伸ばしていっていただきたいなと思っています。

【三島主査】  ありがとうございます。大変高い評価を得ている事業であったなと思いますが、ほかよろしいでしょうか。

 それでは、ただいま頂いた幾つかの御意見の中で文章の中に付け加えたりするようなものがあるかどうか、この辺私にお任せいただいて、研究計画・評価分科会での御説明をさせていただくことになろうかと思います。それでよろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、議題の3番目ですが、今のアウトカムの指標についてということです。本委員会の上部組織である研究計画・評価分科会から文部科学省の施策のPDCAを効果的に回していくために、本分野の我が国全体の状況を把握するための指標を検討するようにということで依頼をされているところです。そこで御意見を頂きますが、まずこの指標の検討に当たり、設定する目的と意義、それから、検討の経緯等について、研究計画・評価分科会の事務局の國分補佐にお越しいただいておりますので、御説明をいただいた後、意見交換をしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【國分課長補佐】  研究計画・評価分科会の國分と申します。お手元の方に資料3-1、3-2、参考資料1、2を御準備いただけますでしょうか。

 では、資料3-1を用いて、まずは説明申し上げます。まずこれまでの経緯ですけれども、第5期科学技術基本計画を踏まえ、昨年度、第8期の本委員会のメンバーになりますけれども、研究開発計画を策定いたしました。研究開発計画の中の中目標達成状況の評価のための指標、この指標の設定というのは、第5期科学技術基本計画におきまして、可能な限り定量的な目標値あるいは指標を設定するようにという動きがありまして、それぞれ可能な限り定量的な指標でアウトプット指標、アウトカム指標を検討し、設定したところです。これが先ほどの評価票にありましたアウトプット指標、アウトカム指標です。

 検討の過程で、指標に統一性がない、例えば中目標によって特許数がアウトプット指標に記載してあったり、アウトカム指標に記載してあったりするなどの御指摘がありまして、研究開発計画を策定後にも引き続き検討することとされております。また、その後、文部科学省の自己評価であります政策評価におきまして、施策ロジックモデルと申しまして、研究開発計画における指標と行政事業レビューにおける指標の接合を試みたものですけれども、こちらを作成してみたところ、施策によりまして指標が対応していないと考えられるものや、アウトカム指標の粒度に違いがあるということが明らかになりました。

 さらに、研究開発計画の中目標達成状況の評価のための指標ですけれども、文部科学省の実施した事業に限定されておりまして、施策の継続・見直しを検討するプログラム評価を今後実施することとしております。このプログラム評価を実施するに当たってPDCAサイクルを効果的に回していくためには、文部科学省の施策の成果・進捗のみでなく、当該分野に関する我が国全体の状況を把握することが必要ではないかという御指摘がありました。

 2番に、前回計評分科会で頂いた主な意見をまとめていますが、省略させていただきます。

 これまでの経緯を踏まえまして、検討すべき事項として大きく2つ。先ほどもありましたけれども、研究開発計画そのもののアウトプット指標、アウトカム指標を見直すべきであろうというのが(2)に書いてあります。今回御検討いただきたいのは、我が国全体の状況を把握するアウトカム指標です。

 次に、資料3-2を御準備いただけますでしょうか。我が国全体の状況を把握するための指標についてです。まずこの指標が必要な目的ですけれども、研究開発計画では、中目標達成状況の評価のための指標として、アウトプット指標とアウトカム指標を設定しまして、文部科学省の施策の成果・進捗を測定することとしております。中目標の単位でプログラム評価を実施するに当たりましては、これらに加えまして、当該分野に関する我が国全体の状況を把握するための指標を設定することで、例えば国際比較であったり、国内の状況を踏まえた施策の評価に資することができるのではないかと考えております。そこで、我が国全体の状況を把握する指標を設定したいと考えています。

 3番に行きまして、指標の候補です。計評分科会の事務局として、可能な限り既存の資料で各分野の研究開発の状況、研究開発による効果等を把握できるものとしまして、候補1と2を考えました。まず候補1としまして、各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)ごとの論文数を考えました。施策として実施した研究開発の成果としての論文数だけではなく、当該中目標に係る分野の我が国全体の論文数を用いることとしたいと思います。具体的には、クラリベイト・アナリティクス社(旧トムソン・ロイター社)のデータベースであるWeb of Scienceにおける各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)の分類ごとの論文数、これの推移とか国際比較を共通の指標としたいと考えています。

 サブジェクトカテゴリごとの論文数は、実は文部科学省の科学技術・学術政策研究所が2年に1度公表している「科学研究のベンチマーキング」があります。これが参考資料1として付けてるいるものです。こちら、科学技術・学術政策研究所が2年に1回発行している「科学研究のベンチマーキング」のサブジェクトカテゴリの部分を抜き出してコピーしたものです。こちら、たまたま今年度からサブジェクトカテゴリごとの研究ポートフォリオ8分野ということで、新たにこういったサブジェクトカテゴリごとの論文の状況も見ていこうということで加わったものです。なので、これを利用できないかと考えております。

 こちらの参考資料1を見ていただきますと、これまでですと、一番左側の分野の科学、材料科学、物理学、計算機・数学といったような大きな分類でしか集計していなかったんですけれども、実はクラリベイト・アナリティクス社のWeb of Scienceには、実は200以上のサブジェクトカテゴリが存在しまして、ここでは便宜的に上位10のサブジェクトカテゴリのみを集計しています。

 皆様に御検討いただきたいのは、この上位10のサブジェクトカテゴリでしたら見ることはできるんですけれども、その他の中に埋もれてしまっているサブジェクトカテゴリの論文数を追いたい場合、事前に科学技術・学術政策研究所の方に依頼をしておけば集計できるということが分かっておりますので、各委員会において、その他に含まれるサブジェクトカテゴリも含めて、各分野でふさわしいサブジェクトカテゴリを選んでいただけないかと考えています。

 このサブジェクトカテゴリの具体的な一覧につきましては、参考資料2に付けてあります。アルファベット順になっていますので、必ずしも材料科学の分がまとまっているというわけではないんですけれども、こちら、全て200以上のサブジェクトカテゴリが記載してあります。これが候補の1番です。

 次に、候補2としまして、社会・経済的に生み出される価値の内容等による指標です。関係する論文が、Web of Scienceのサブジェクトカテゴリに広く浅く分散しているなどにより、サブジェクトカテゴリでは動向を把握できないというような分野も当然あります。そういった分野につきましては、研究開発の活動自体や、その成果によりまして社会・経済的に生み出される価値の内容、例えば産業データベースとか、温室効果ガスの排出量等によるような指標を利用することも考えられるのではないかと考えております。

 留意点と致しまして、候補1、候補2共通の留意点としましては、研究開発の成果・効果となるまでにはどうしても時差があります。なので、施策の実施の影響が含まれた状況とは異なっている可能性があるということには十分注意しなければいけないというふうに考えております。また、指標の設定根拠、評価においての活用方法を明らかにしておかないと、結局何のためにこの数字を見ているのかなということになってしまいますので、その辺りも御留意いただきたいと考えています。

 サブジェクトカテゴリを利用する場合につきましては、施策の対象としている研究開発とサブジェクトカテゴリの関係にはどうしても濃淡がありまして、どのカテゴリまでを含めるか判断が難しいところがあります。また、異分野との融合を積極的に進める分野、新興領域が次々と生まれる分野などは、関係するサブジェクトカテゴリをあらかじめ決めておくことが難しい。

 あと、候補2の留意点としましては、研究分野によって、施策の結果が実用化・産業化に結び付くまでの過程に遠近や、施策対象とする主体以外の主体の影響の違いが大きい、景気、為替レートの外部要因の影響を受けやすいということがあります。

 こういったような課題があるのですが、プログラム評価の実施に当たって、中目標ごとの特性に応じて我が国全体の状況を把握するためのアウトカム指標をまずは試行的に設定して、参考指標として国際比較、国内の状況を踏まえた施策の評価に活用していくこととしてはどうかということで、計評分科会の中で各委員会で検討していただこうということになっています。

 指標の活用ですけれども、サブジェクトカテゴリごとの論文数につきましては、科学研究のベンチマーキングが2年に1度公表されますので、これが公表された際に、私ども計評分科会の事務局から当分科会及び各委員会に御報告いたしたいと考えています。

 サブジェクトカテゴリの論文数を活用する場合は、中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組が関与するサブジェクトカテゴリごとの論文数の国際比較あるいは状況の変化を確認することによって、研究開発の取組の寄与度について評価していただきたいと考えています。

 研究開発プログラム評価においては、当該分野の状況を俯瞰し、当該分野の国際比較、国内における研究開発や産業・経済への貢献の観点についても検討するための参考の指標としたいと考えています。

 こちら、最後、重要なところなんですけれども、我が国全体の状況を把握する指標の候補としては、先ほど申し上げた留意点のような課題がありますことから、各委員会においては、これら以外にも、ほかの定量的・定性的なデータ、国際的な学会の最新の情報等から、研究開発の特性や規模に応じて、対象となる研究開発の国際水準を踏まえた評価を実施していただきたいと考えています。なので、指標につきましては試行的に設定はしますが、これのみで評価するものではないということを御留意いただければと思います。

 以上です。

【三島主査】  御説明ありがとうございました。

 まずこの件に関して、ナノ材料のこの委員会での対応を事務局と事前に相談させていただいております。その結果では、今御説明がありましたが、当委員会においては、材料分野の学術論文数として、今のWeb of Scienceの材料科学分野に含まれるサブジェクトカテゴリをこれまで活用してきておりますので、継続性の観点からも、今、資料3-2の候補1の材料科学分野に含まれるサブジェクトカテゴリ全てをあくまで参考指標にしてはいかがかと考えておりますので、御意見を頂ければと思います。

 ただいまの國分補佐からの御説明に対する御質問を含めまして、御意見を賜ればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 はい、どうぞ。

【橋本委員】  このアウトカム指標を立てることに対しては、第5期科学技術基本計画を作るときに随分議論になった。指標を出すとその数値だけにとらわれるので出すべきではないという意見も強くあった中で、最後、仕方なくこういう指標を入れることになった。ですから、これだけにとらわれないようにということを強く第5期の補足説明書の中にも書いているわけです。そういう意味において、今回御説明を伺って、最後に言われたこと、ほかの定量的なデータなどをきちんと見るべきだということをしっかりと書いていることは大変意味があると思います。今回のものも参考指標としてまずやってみるんだということで、第5期を作ったときの精神をしっかりと理解していただいていることはよく分かりました。

 一方で、やはりこうやって指標を出すと、使われるときは数値で使われてしまいます。そこは十分我々が認識しておかないと、研究者なり何なりが関わっているレベルでは分かって、それでいろいろなことを書いても、最後に使われるときには数値だけで使われてしまうということがあるので、それを分かった上で、最大限のいろいろな試みをしていく必要があると思います。

 そうやって考えたときに、候補1の各分野の研究は、これはもう仕方ないのでこうなるんだと思うんですけれども、一方で、日本の基礎研究力の低下の話が出るときに、NISTEPの資料でよく言われるのは、論文総数とかサイテーションの低下ということですけれども、もう1つ実は大きな軸があって、それは新しい分野への展開が日本の場合は極めて少ないということです。それは大陸型とかペニンシュラ型とかアイランド型とかいろいろな定義の中で、日本は大陸型はいいんです。しかし、ペニンシュラ型あるいはアイランド型はすごく弱くて、その辺が問題だと。多分、先ほど言った論文総数やサイテーションの話と、新しい分野への展開、この2つが両輪的に日本の基礎研究力の低下のときに言われていることです。

 そうすると、候補2は少し次元が違いますけれども、候補1を見ると、やはりナノテクとか材料は、NISTEPの分析を見ても大陸型のど真ん中にいます。そこはそれなりに強いのです。しかし、今言ったような意味において、大陸型から出ていくようなところの指標なりを見ておかないと、間違ってしまう。この指標の目的は、1つはやはり研究の誘導だと思いますので、それをどのような指標にできるのか。しかし、それが材料なり何なりナノテクが関わっていないといけないので、そのキーワードを入れた形での周辺分野への展開とか、アイランド型からの抜け出しとか、多分そういうものはNISTEPがいろいろ分析しているのではないかと思います。そういうものを指標に1つ入れておくというのは意味があるかなと思います。

今伺っていてと、いいアイデアがないのですが、少なくとも今の点は、これまでのCSTIの議論においても実は抜けているのです。アイランド型からそういう新しいところへ出ていくことを加速するための手段という議論が抜けているので、是非この評価のところにそういう視点を、問題を投げ掛けて、NISTEPにどういう指標があり得るのかというのを投げ掛けてみることは意味があるのではないかと思います。彼らは随分分析をしていますので、是非検討していただければと思います。

【三島主査】  大変貴重な御意見ありがとうございます。

 では、磯谷さん。

【磯谷局長】  橋本理事長、御指摘ありがとうございました。実は私もきのう、おとといJSTの濱口理事長ともお話ししたら、その話がまさにありました。いわゆるイマージングリサーチというか、ちょっと話が外れますけれども、この指標にとどまらず、やはりインプットの部分というか、ファンディングのところもきちっと機動的にできるような、それもデータに基づいた形でやっていく必要があるので、そういう意味ではファンディングと指標の検討とセットでやらないといけないかなと思っていますので、是非検討させてください。

【三島主査】  ありがとうございます。

 武田委員、どうぞ。

【武田委員】  新分野をどう捉えていくかということで、やはり重要となるのは、例えばサブジェクトカテゴリの中でその他に入ってくるようなもので、今は小さいけれども、経時変化を見たときに大きく動いているものだと思います。例えば海外についても、そういう動きをいち早く捉えるというのも非常に重要と思います。日本が新分野でリーダーとなっていくためには、海外の動向を含めてそういう動きをきちんとキャッチするということが重要と思います。

 それから、もう1つは、生産性とか効率という意味では、論文数に対する分母として、研究投資額や研究者数を考慮すべきと思います。各国でそこは大きな差がありますけれども、そういうものでの生産率、つまり効率も含めた指標として定量的な数値の出し方が重要になると思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 ほかに御意見。

 はい。

【瀬戸山委員】  全体が、文科省の話なので、サイエンスにすごく寄っていると私には聞こえてしまいます。科学技術というときには、科学をテクノロジーに変えていく、技術に変えていくというステップがあるはずで、それは企業でいうと特許という形で表われてくるわけです。実際にサイエンスの領域が特許になって、企業が研究するまでには5年10年やっぱり時間が掛かるんですね。なので、今、サイエンスでやっている部分が特許に反映するかというと、多分それは出ていない。ただし、5年前サイエンスですごくホットだった分野が、今になってみるとそこがちょっと特許が増えていると。今、経時的なという話がありましたけれども、そういうふうな経時的な流れがあるわけですね。

 この中に盛込むのは多分無理だと思うのですが、そういうことをちゃんと解析して、世の中でこういうサイエンスが今ホットだけれども、それは5年後になったときにやはりホットなままなのか、あるいはそれはあだ花だったのかという、そういう見方もできますし、それから、やはりしっかりしたものであれば、世界全体で特許として表われてくるはずです。そういうものはしっかりと追わなければいけない。国内の企業であれば、そういうものは本当にそれをやっているか、海外であれば、サイエンスからテクノに変わった分をいっぱい今投資しているかどうか、やはりそういうのを見ていかないと、日本の状況とか世界の状況は分からないと思います。論文の話はいいのですが、それが技術に変わるときの過程、変わった後ではなくて、その過程を追うようなことをしばらくやっていただいて、その解析を進めていって、どのようにやっていくかを考えていくべきではないのかなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 栗原委員、どうぞ。

【栗原委員】  この上の研究計画・評価分科会でもいろいろな意見が出たものを、大変コンパクトにまとめて出していただいてありがとうございます。

 そこでも、今橋本委員がおっしゃったような点は同じように議論になっておりまして、新しい分野あるいは融合分野をどういうふうに評価していくのかというのは、やはり何かもう少し工夫が必要なのではないかと思います。例えば化学を見ますと、サブジェクトカテゴリはすごくクラシックでして、化学、物理化学、有機化学、化学工学となっています。

 それなので、この辺りは、NISTEPとかで分野ごとの関係性等も今、非常に解析が進んでいらっしゃるところだと思いますので、うまくキャッチボールをしながら、これから新しい分野を育てていくんだという気持ちで始めることは大事だと思います。今、完璧なものを出すというのは、大変難しい話だと思います。しかし、何か始めないと何も始まらないというところもあると思いますので、十分に留意して進めるというのは適切だと思っております。

【三島主査】  それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】  私もこういったWeb of Scienceとか、海外の一番よく出来ているデータベースを使うので、頼るのも致し方ないと思いますが、今、栗原委員がおっしゃったように、分類が余りにもクラシックで、私から見ても時代に合わないですね。ですから、やっぱり日本が自らデータベースを作るまでいかなくても、もっと時代に合ったカテゴリを最先端の人に聞いて、もっと時代に合ったカテゴリで研究者を評価するようになれば良いと思います。やっぱりこの資料1の化学、私は材料化学ですけれども、やっぱり余りにも古典的で、50年ぐらい前の分け方ですね。これで評価されると、新しいものは出てこないです。全部その他になってしまいます。

【橋本委員】  しかし、科研費はある。

【加藤委員】  そうなんです。科研費も、いやいや、科研費も変わろうとしてますね。

【橋本委員】  しかし、変わった結果がこういうふうにまだね。

【加藤委員】  まだこれでも、もっとすごかったです。

【橋本委員】  だから、やっぱり自分たちにはね返ってくるんですよ。

【加藤委員】  はい。これは良くなる過程だと思います。これを批判というよりも、良くしていこうということですね。よくなっていくと思いますけれども、それでもまだ古いです。Web of Scienceのみに依存するのではなくて、自ら分野のカテゴリを我が国が主導して作っていく、これが新しい分野を作ることにつながるのだと思います。要するに、欧米の分野のカテゴライズに主導されたら、いつまでたっても新しい分野は作れないと思います。だから、我が国自ら作る。

 すいません、もう1つ、いいですか。それから、ゼロを1にする研究と、1を100にする研究は全然違うので、ゼロを1にする研究と、1を100にする研究を同じように評価したら全くだめだと思います。例えば有名な例ですと、今、有機エレクトロニクスを皆さんやっていますけれども、白川教授がポリアセチレンを作られたときは誰も気にしなかったんです。日本人は全く評価しなかった。だけども、ヒーガーとマクダイアミッドだけが評価したんですね。それで、ノーベル賞につながっています。白川先生の仕事は、あれこそまさにゼロから1の研究なんです。そのような研究をどうやって我が国として見つけて拾い上げるかということが重要と考えます。これは単純な指標では出てこないので、例えば今度は様々なタイプの研究者の評判とか、国際的にヒアリングを掛けるとか、そういったまた違う指標が私は必要になってくると思います。以上です。すみません、長々と。

【三島主査】  いえいえ。

 それでは、先に、今の御意見に対するお話だと、どちらを先に? じゃ、湯浅先生と前田さんと。

【湯浅委員】  関連がありますけれども、Web of Scienceの問題は、分野によってはWeb of Scienceにない成果・エビデンスを重視していますね。例えば情報科学なんかは、採択率の低い国際会議のプロシーディングスが一番重要でして、Web of Scienceに載っていないんですね。あと、我々の分野でも、例えば半導体デバイスですと、やはりIEDMのような国際会議のプロシーディングスが一番重要で、これはWeb of Scienceに載っていない。例えば産総研のエレクトロニクス領域という狭い領域でも、評価指標が全然統一性がなくて評価がなかなかできないという問題を抱えているんですね。グーグルスカラーなんかを使うと、情報系や半導体デバイスのプロシーディングスもカバーされていますので、もう少し広い分野が見られます。

 あと、国内独自のこういうデータベースという点では、たしかJSTがJDreamを作っていましたよね。こういうのを作って志は高かったんだけど、決して余り使われていないという問題もあるということを付け加えておきます。

【三島主査】  ありがとうございます。

 では、前田委員、どうぞ。

【前田委員】  カテゴリがまたがっていたりして、どちらに入るんだろうとか、新しいものとかやっぱりあると思います。ゼロから1の研究は、今のような、どのカテゴリに入れようとか、新しいものというのはあると思いますが、1から100になるのは、やはり産業界、世の中がそれを使いたいと思うかどうかだと思っています。やはり基礎研究は基礎研究でとても大事ですけれども、そこから先に世の中に出ていくという指標が絶対必要だと思っているので、ベンチャーが生まれた数とか、世の中でどう取り上げられているかということをもう少し測らないといけないのかなと。ベンチャー数でいいかどうかというのもあろうかと思うのですが、論文数だけではない指標を持っていないといけないのかなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 それでは、上杉先生。

【上杉委員】  この候補1のようなやり方は、慎重に考えてやるべきだと思います。芸術家の岡本太郎さんが、「本職は何ですか」と質問されたときにこう答えたそうです。「ばかばかしい。あえて言えば、人間だ。」 九大の新海先生がおっしゃられたことも印象的です。「専門は何ですか」と言われたときに、「専門がぱっと答えられるようでは、もうそれは新しくない」と言われました。私もそう思います。

 ですから、ここの候補1で、既存の分野にすぱっとはまってしまうことを数えていくと、革新性の乏しさがめだちます。他のやり方もあるのではないかなと思います。例えば、おっしゃられたことですけれども、融合度。ほかの分野との融合度をどのように測るかというのも、難しいことですが大切です。そして、ゼロから1を出すというのは、つまり、コンセプトを出すということです。コンセプトを出している論文をどのように数えるかも非常に難しい問題です。本当に新しいコンセプトの論文というのはすぐサイテーションが来ないのです。だから、いい論文だけどサイテーションが来ない論文というのは、実はゼロから1をだす論文かもしれません。こんなふうに言われる先生方もおられます。

【三島主査】  ありがとうございます。論文数だけではなく、いろいろな最新の分野、これから育ちそうな分野をどうやって捕まえるかって本当に必要だと思いますが、非常に難しいところもあります。例えば今出たのは、NISTEPとかJSTのCRDSがそういうデータを表に出しているかどうか、私、勉強不足でそこはすぐには分かりませんけれども、橋本先生、その辺は現状としては……。

【橋本委員】  NISTEPはすごく積極的にそういうことをやろうとしているのです。ただ、彼ら、やっぱりそういう学問的な分野の専門性はないので学会なり何なりと一緒にやりたいという意向をすごくNISTEPは持っています。だから、いいチャンスだと思います。磯谷局長が積極的にやってくださるそうですから、期待しております。

【磯谷局長】  科学技術政策局で新しい組織を作って、その辺を束ねてやるのがあるので、3局としてそれはきちんと対応していきたいと思っています。

【三島主査】  どうぞ。

【中山委員】  データの話はいろいろ出ていますが、もちろんデータも大事ですけれども、ゼロから1にするという加藤先生のところは、まさにデータが出ていないこれからの未来の部分です。そういうところを如何に拾っていくかということ、いかに網を張って、そこに投資していくかということもよく考えていくべきと思います。データが出ていて、各国でやっているから、兆しがあるからそこをやるというと、もうそれで既に後追いです。もちろん全部それである必要はないですが、後追いでなく我が国が世界に先んじるようなところにも目配りをしてポートフォリオを組むということが大事かなと強く思いました。

【三島主査】  はい、射場さん。

【射場委員】  2つあります。まず論文数を指標にすることは特に違和感はないですが、先日、特許庁と一緒にリチウムイオン電池の特許と文献調査をしました。そうしたら、文献はグローバルに調査をしているのに、その調査結果は中国の調査結果にしかならないんです。もうアメリカとか日本のすばらしい研究はもうバグでしか出てこなくて、ほぼ全部が中国の研究。ランキングを取っても全部中国になってしまい、我々が共同研究をしたいと思うような研究は中国にはほとんどないという状況があって、それは多分論文が指標として余りよく運用されていない最たる事例だと思います。やはり指標はいいのですが、一体どう運用するかはよく考えないと、間違った方向に進んでしまうかなと思います。

 あと、アウトカムの議論は随分もうここでされていると思うのですが、社会に貢献することをアウトカムと言うなら、材料だけでは社会に貢献しないですよね。自動車の場合は、材料が部品にアプライされ、製品にアプライされ、材料単体では何ともならないので、やはり社会に貢献するところから材料のマイルストーンに落とし込む、作業がないとだめで、その作業のところで議論に出ているような新分野であるとか、いかに基礎基盤のところまで落としてブレークダウンするかみたいなことをやらないと、本当のアウトカムが設定できないのではないかなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 ほかに御意見。

 馬場先生、どうぞ。

【馬場委員】  私自身もこれまで各委員の先生が言われたことに全て賛同できますけれども、特に湯浅委員が言われた、融合領域ですと、私、化学ですけれども、MEMS、機械系、電子系のグループと一緒にやっているのですが、我々の化学の分野は、まさにWeb of Scienceのペーパーを出さなければ全く評価されない。ところが、先ほど湯浅委員言われたように、エレクトロニクスとか情報の分野に行くと、国際会議のプロシーディングスに出さなければ評価されないということで、特に融合領域にいる人は、評価の観点から見たときに、非常に参入しにくい状況になっていると思います。今回もWeb of Scienceだけじゃなくて、ほかの評価指標が必ず必要で、特にどの国際会議を選ぶのかというのはなかなか難しいのだと思いますけれども、そういうところを是非御検討いただきたい。

 もう1つは、今、射場委員も言われましたけれども、私自身は化学で、バイオに応用しようと思ってなかなか実用化は進まないのですが、エレクトロニクスは、エレクトロニクスの人たちの業績を見ると、もちろんトップジャーナルにもいっぱい出ているのですが、そうでもないジャーナル、国際会議のプロシーディングスに出ている中から実用化がどんどんされているように私には見えます。実際に社会に出ていくときに、本当にWeb of Scienceのペーパーが社会に出ていくのかどうかは、例えば今ですと、先ほど言われた電池の例とか、それから、以前ですとエレクトロニクスの例で、そういう分析をある程度NISTEPでやっているのでしょうか。そういうのがもしあれば、ここでどういう指標を選ぶべきかがもう少しクリアになるのかなと思います。以上です。

【三島主査】  ほかに御意見ありますか。

 はい。

【高梨委員】  先ほど射場さんが言ったことと、似ているのですが、指標は、結局どう運用するか、どう使うかということだと思います。どうやってもやはり指標というと結果の指標でしかなく、将来を読むような指標はなかなか難しくて、やはり今、ないしは過去の結果の指標になってしまう。もちろんデータベースのことは見直す。Web of Scienceだけだと問題だと思いますし、それから、分野も適切に見直す必要はあると思いますが、ある意味どうやってもそれは結果の指標であって、やはりそれをどう運用するか。余り指標ばかりにとらわれてファンディングが行われたりということではなくて、どう運用するか、やはりその後の受け止め方の問題と私は思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 ほかは。

 はい、どうぞ。

【納富委員】  私も国際会議とか出ていると、橋本委員がおっしゃられたように、新しい分野に本当に日本のアクティビティが減っているといつも実感しています。やはり新しい分野は、カテゴリには入っていないと思って、実際に我々が研究を新しい分野で始めようと思ったときも、カテゴリで検索するということはまずしないです。それはキーワード検索みたいなことをして、面白そうな分野を検索するということをやらざるを得ないので、結局、キーワードを全部ざっと網羅するのも多分難しいだろうと思います。日本の全体が新しい分野にどのぐらい進出しているかと、国力を見ることだけであれば、ある程度の数のキーワードをサンプリング的に集めて、そのキーワードに関してはどのように時間的に推移しているか微分を見ることをするのが、自分でやるのであれば、そのようにやるんだろうなと思うので、カテゴリではなくて、キーワードを各界の先生に選んでいただいて、それについて統計を取るというのも意味があるのではないかと思いました。

【三島主査】  ありがとうございます。ほかよろしいでしょうか。

 どうぞ。

【常行委員】  結局、評価の指標になるようなデータというのは過去のものでしかないので、評価には使えるんですけれども、新しいものを見つけるのは別の問題だということです。評価ということを考えると、新しい分野を作ったかというのは、例えば思い出すのは、細野先生の透明アモルファス半導体のときに、細野先生が最初に国際会議で発表されたときには、ほとんど関連の論文は何もなくて、そこから今、一大分野になって急激に成長しているわけですよね。だから、国際会議、どこかを契機にして成長した分野というのは、多分会議録とか、それから、シンポジウムがどういうものが企画されたか、そういうものをたどっていくと多分もとに戻れる話で、そういうところに、日本人がいるとは限りませんけれども、日本人がいたかどうかを評価に使うというのは意味があるかなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 それでは、大体意見はこのぐらいかと思いますが、Web of Scienceのカテゴリ別のものを評価に、結果としての評価には1つのやり方としてはあるけれども、しかし、それ以外の何か新しい芽が吹き出るようなところに着目していく。どう着目していくというのは非常に難しいそうな感じがしますけれども、先ほど栗原委員が言われたように、これからやってみないと分からない、やっぱりやらないといけないということは確かだと思いますので、NISTEP等の動きをもう少しちゃんと把握しながら、どういうふうにすればそういうファクターを取り込めるかということを考えていきたいと思います。

 それでは、それでよろしいですか。

 それでは、次の議題が一番今日のナノ材の委員会の重要なところですので、議題の4に移りたいと思います。これまで作業部会が4回にわたって開催されておりまして、ナノテク・材料分野の研究開発戦略について議論していただいているところです。その状況について中山委員から、机上配布資料の1から4について御説明いただきます。よろしくお願いいたします。

【中山委員】  どうもありがとうございます。中山から説明させていただきます。机上配布資料ということで、傍聴の皆様には本当に大変申し訳ありません。

 最初に、机上配布資料4を見ていただければと思います。これまで三島主査は4回とおっしゃいましたが、そのほかにワークショップやいろいろな勉強会等も重ねまして、毎月1回ほど、6月ぐらいからいろいろやっておりました。作業部会の委員の皆様にも多くの時間を頂いており、また、上杉委員には本当に多大な時間を頂いておりまして、一緒にここの内容を構築してきたところです。

 机上配布資料1をご覧下さい。「ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略のこれまでの検討内容について」というものです。まだこれでフィックスというわけではなくて、更に御意見を頂いたり、検討会を開催して内容を詰めたりする途中段階という位置付けです。ポイントだけを説明させていただいて、御議論をさせていただければと思います。

 まず1ポツです。ナノテクノロジー・材料分野を取り巻く状況の変化です。この分野は我が国が強みを有し、産業基盤を支える重要な位置にあると認識しています。また、本分野の発展が、その時代ごとに新しい価値を創出し、社会の変化を牽引してまいりました。

 その事例を下に記載させていただいております。例えば、微細ナノ加工技術、垂直磁気記録、トンネル磁気抵抗の発見等。材料のブレークスルーによって例えばスパコンとかパソコンが進化し、人工知能機能技術やビッグデータ技術が生活を豊かにしてきました。さらに、半導体製造技術、あるいは通信デバイスの発展がネットワークを支え、また、光ファイバーがインターネット社会を実現し、高度化させてまいりました。また、軽量材料あるいは鉄鋼等の構造材料が我が国の基盤を盤石なものとし、さらに、高分子系の複合材料など、航空機にも使われているようなものもあります。他にも触媒の話、蓄電池の主要材料、あるいは窒化ガリウム等の開発による照明の革新等が起きております。

 2ページ目に行っていただきまして、導電性高分子、あるいは有機ELの話、あるいは希少元素を用いない材料、こういうもので、資源制約を抱える我が国産業に材料技術は1つの方向性を示したようなところもあります。また、超伝導技術等も我が国からしっかり発信されています。事例もさらにブラッシュアップをしていきたいと考えております。

 (2)へ行っていただきますと、今度は研究環境の変化です。材料やハードウェアの進展・発展があらゆる科学技術の土台となってまいりました。今後もこの分野の発展は一分野にとどまらず、あらゆる科学技術分野の進展を牽引する横串的な起爆剤の役割を果たしていくであろうと。しかし、我が国の国際競争力の低下がいろいろ懸念されています。特に若手研究者の確保が難しくなる傾向にあったり、論文数の国際的なシェアが減少しているとか、研究開発投資の伸び悩み等があったり、研究開発の空洞化等も言われています。

 そういう中で、中長期的な国際競争力の確保が極めて重要な課題であると考えております。(2)の下から3ポツ目ですが、IoT、ビッグデータ、AIといったサイバー技術の進展によって社会構造が大きく変化している。そういう中で、データ駆動型の材料開発が従来にないスピードで材料開発を実現するというような新たな手法となる可能性がだんだん出てきております。まさにゲームチェンジが発生しつつあるという状況です。

 最後ですが、例えば旧材料あるいは想定される社会ニーズへの対応がイノベーションに直結するとは限らず、新しい社会ニーズを喚起するような新材料の開発を進めていくこと。例えばリチウムイオンの話とか、強い磁石とか、そういうもの、我が国からゼロを1にするようなもの、それが花開くようなものを出していかなければいけないということです。

 次のページ、3ページ目に行っていただきまして、(3)。ここは我が国における政策上の位置付け。もう少し書き込む必要があるかもしれませんけれども、第2期科学技術基本計画以降の流れを書かせていただこうと考えております。

 (4)です。我が国のナノテク・材料分野の強みということで、国際競争を勝ち抜く競争力を有していると考えております。我が国には優れた研究者がおり、企業の取組があり、そして、地に足の着いた施策がある。それらが一体となって競争力を維持・向上させてまいりました。

 また、例えば(4)の3ポツ目ですけれども、ナノテクノロジープラットフォームのような基盤となるようなもの、大規模研究設備、「京」コンピュータ、SPring-8、J-PARC等、そういう強力な研究基盤を有しているということ。そして、技術、経験、ノウハウ、勘、そういうもの、我が国にあるものが国際競争力維持に必要不可欠な武器となっております。さらに、良質なデータも我が国にはたくさんある。こういうものをきっちり強みとして生かしていかなければいけない。

 (4)の最後ですが、そういう中で、我が国の産業と大学等の研究機関が強みを有しているわけですが、更にこの両者が強く連携して、速やかに技術移転できたものが世界を牽引しているような状況が現在です。例えばリチウムイオンバッテリーとか、磁石とか、触媒とか、いろいろなものがあると思います。

 (5)です。諸外国の動向です。このナノテクノロジー・材料分野は、諸外国は産業競争力あるいは雇用に直結する重要な案件、分野として認識しています。他国の動きにも各国が敏感に反応し、次々に手を打っているという状況です。アメリカのMaterial Genome Initiative、それに呼応するように始まった中国のChina MGI、そういうものがこの5年間で急速に進んできております。また、欧州ではHorizon2020の中でのグラフェンフラッグシップなど非常に大きなお金が投じられています。また、このHorizon2020を見ていただくと分かりますが、かなり材料分野にフォーカスしているものです。これらの状況もしっかり見ながら、我々の戦略を考えていかなければいけない。もちろんまねではなくて、我々が先を行く戦略として。

 また、4ページ目に行っていただきまして、さらに欧州では、電気自動車等に向けた希少元素対応の研究開発を急加速させております。非常に大きなお金を投じている。また、アメリカはICT研究との連動、脳研究との連動、あるいは水研究をしっかりやろうなど、こういう強いメッセージと、新たな軸をそれぞれに打ち出している。そういう中で、我が国ならではの視点と戦略性も求められようかと思います。

 (6)です。そういう中で未来社会をどうやって作っていくかという議論の中で、Society5.0というようなお話が出てまいりました。大事なお話です。あと、SDGs、持続可能な開発目標、こういうものにもしっかりと対応していかなければいけません。そういう中で、ナノテク・材料分野は社会の潮流に対応していくための基盤であるとともに、新たなブレークスルーを目指す上での大きな期待が寄せられていると。例えば現在は、IoT、ビッグデータにおけるソフト面の研究開発が非常に重視されております。しかし、結局そこでの律速は何かというと、ハード面の研究開発であろうというような話。ソフトへ行って、またハードに帰ってきているような情勢もあります。そういうハードのところ、その根幹を支える材料のところが、デジタルイノベーションの創出の大きな壁となっているのも事実であり、このような壁を打破するために、材料・デバイスの革新をしっかり考えていかなければいけないであろうというのが考えです。

 4ページの後半です。このようにSociety5.0あるいはSDGs等の社会を実現していくために直面する壁を、サイバー空間だけではなくてフィジカル空間もしっかり考えて、物質・材料・デバイス、マテリアルというふうに総称いたしますが、その発展で実現していければと考えています。そういうことで、将来における国際競争力の確保・維持に貢献していこうとこの分野は考えるべきかと思います。産官学のこれまでの努力によってこの分野は我が国が強みを有する分野となりましたが、一方で、諸外国においてもその重要性が深く認識されて、強力に研究開発が進められており、非常に競争が激化しております。そういう中での早急な戦略と対応が求められるということが書いてあります。

 次、5ページ目です。ナノテク・材料分野の推進に当たっての目標と基本的なスタンスです。前半部に大事なことが書いてあります。また何度も書かせていただきますが、Society5.0、SDGs等の実現に向けて想定される大きな壁を、本分野が新たな付加価値を提案する開拓者として次々と打破し、産業振興と人類の幸福の両方に貢献したいと。社会を引き付けるような魅力的な機能を有するマテリアルを生み出す領域の研究開発を推進し、例えば研究現場の生産性を向上させるラボ改革等により、材料開発基盤技術の飛躍を実現していきたいと。また、これらによって社会の変革を強力に牽引する、マテリアルによる社会革命(マテリアル革命)を実現したい。こういうところをもう少し掘り下げて考えていきたいと思っています。

 また、魅力的な機能をしっかりと創出し、そういうことを優先的に推進していくことを考えております。下の方には、魅力的な機能に関しての例とか考え方を記しておりますので、お読みいただければと思います。

 最後、6ページ目です。魅力的な機能を実現する具体的な研究開発領域及び基盤技術ということで、現在検討中あるいは議論中のものを書かせていただいております。新しい時代に求められる新しい研究開発領域ということはもちろん大事ですが、従来から取り組まれている研究領域等も戦略的・継続的に取り組んでいくことも大事だと多くの御意見を頂いております。施策が予定された切れ目で終わり、また新しい施策が出来て、また新しい考えで先生方が応募して、というのをずっと繰り返しているようなことでいいのか。そうではなくて、よいものは続ける、もちろん新しいものは新しく対応するということをきちんと場合分けして考えていかなければいけないと思います。

 例えばナノテクプラットフォームですけれども、3期15年近くやっている施策ですが、これだけ長くしっかりきちんと続けている施策だからこそみんなに理解され、ノウハウが集積し、新しいものがそこから生み出され、フィードバックされます。今回破格の予算増のようなことが起こるのも、大事なことをしっかり続けているからこそであるかと思います。

 3ポツの(1)です。そういう中で新しいことと致しましては、サイバーとフィジカルをきちんと融合させるような材料、あるいは、相反するような物性をくっつける、あるいは融合させて、新しい機能を出すような複合材料とか、あるいは非平衡状態・準安定構造を利用して材料の可能性を広げるような領域、あるいは生物のメカニズムをしっかり取り込んで生かしていくようなところ、あるいはラボ改革のような、研究開発のスピードアップをいかに実現していくかということ、こういう新しくやることがあるであろうと考えます。

 次は、引き続き取組を進めるべき、今までやっているけれども、更に取組を強化しなければいけないというところです。物質の循環とか新機能開拓に資するような次世代元素戦略は重視すべきでしょう。革新的なデバイスを作るところ、あるいはセンサーとかアクチュエータ、そういうところをしっかりやらなければいけないとも考えます。あるいは、バイオ材料工学とか、エネルギー変換・貯蔵をしっかりやっていくところ、微細加工、あるいはプロセス技術、あとは、計測技術、オペランド計測等。その辺もしっかりやらなければいけないことかと思います。それと、データ駆動型の研究開発です。諸外国がみんな始めた中で、我が国としてどういう手を打っていくかも考えていかなければいけないと思います。

 以上が、机上配布資料1の説明です。

 机上配布資料2です。つい数日前、いろいろな材料関連の団体等の皆様から御意見を頂いた内容を示しています。反映が間に合っておりませんので、ここに、机上資料2と机上資料3で御用意させていただきました。特に大事な意見だけ読み上げさせていただきます。

 机上資料2です。ナノテクノロジービジネス推進協議会様からは、新しい材料シーズ創出等の基礎研究のみならず、新しい物性を機能に導く理論と機能の評価技術、例えば深掘り基礎研究のようなものにもしっかり注力していくべきということ。あと、ナノテクプラットフォームの機能拡大が急務である、大事であるというような御意見を頂いております。

 分析機器工業会様からは、分析機器は研究開発を支える基盤で、投資効果、費用対効果が非常に高いということ。また、革新的デバイスの開発とか、電子とかフォトンなどの量子現象の解析、オペランド計測、計測ビッグデータの活用等、やらなければいけないことがたくさんあるということをお伝えいただいております。

 (3)の材料戦略委員会様からは、計算科学による材料設計のパラダイムシフトが必須であるということ、また、リサイクル・循環の話、あるいは元素の有効活用、新機能の開拓とか、そういうことが重要であろうということを頂いております。

 後ろ面に行っていただきまして、化学連合様からは、従来の設計指針あるいは空間制御――今、瀬戸山委員がJSTのCRESTで研究総括をしていただいておりますが、そういう超空間の議論に更に時間軸を入れたような考えも大事ではないかということで、例えばここではスペースクロノマテリアルのような概念が提唱されております。

 また、(5)応用物理学会様です。応用物理学会では、アカデミック・ロードマップを作ってきているということで、その御紹介がありました。そういう中で革新的な機能を有する材料をしっかり見つめていきたいということ、あと、これまでなされてきた元素戦略は大事であって、今後もそれをやっていかなければいけないということを頂いております。

 また、全体の議論の中では、何度もナノテクプラットフォームのお話が出ました。また、マテリアルインフォマティクスなどを重視した、材料の開発の時間の短縮に関する施策を打っていくべきということ。同時に、材料開発には時間が掛かるという認識ももつこと。そして、今のニーズではなくて、将来のニーズも先取りする、あるいはゼロから1にするような考えを重視した施策を打っていくことが必要ではないかと言われております。以上です。

【三島主査】  御説明ありがとうございました。

 それでは、どこからでも結構です。今まとめていただいた作業部会の動向につきまして、御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

 栗原委員、どうぞ。

【栗原委員】  非常に幅広くまとめていただき、どうもありがとうございました。この中で印象に残ったのは、谷や山を越えるというような、現状の壁を乗り越えるために、ナノテク材料を今後もきちんと推進していくことが重要だというメッセージがあらゆる場所に記載されているように理解しました。

 この点に関し、机上配布資料2に書いていただいたヒアリング内容の一番最初のところにある、「ナノテクノロジープラットフォームの機能拡大を期待」ですけれども、もちろんここに書かれている具体的ないろいろな領域も、新しい領域も、それから、引き続きの取組も大事だと思うんですが、ナノテクノロジープラットフォームの非常に大きな役割は、幅広い分野でそういうような活動を受け渡すことができるということだと思います。

 先ほど御紹介いただいた、評価を受けた私どもの素材技術先導プロジェクトにおいては、材料を見直して開発をするということで、5年間の研究で各テーマで企業に持って帰る材料を作り出すことができました。このようなエンジニアリングの飽和気味だと思われているような領域に新しい展開を導くことができるということが、やはりナノテクノロジー・材料の強みだと思いますので、そこをうまくキャッチボールするような仕組みとしてのナノテクノロジープラットフォームというのは、非常に貴重だと思います。

 ただ、その場合に、装置を設備して使っていただくということに関しては非常に広く受け入れられていると思うのですが、さらによりよくするには、どこをやったら本当により世の中の役立っていくのか、新しい材料、新しい分野の創出に貢献するのかということに対して、もう少し議論していただくということと、今後の広くいろいろな新しい分野を振興するというような観点とはかなり重なるのではないかと思って話を伺いました。以上です。

【中山委員】  ありがとうございました。先日ナノテクプラットフォームの評価がこの場でありましたけれども、それを受けて、今、新しいフェーズとして、ナノテクプラットフォームが自分で考えて推進しようとしているところだと思いますので、そういう御意見をとり入れて推進されるべきであろうと思います。

 また、あと4年ぐらいということで、あと一、二年たてば、次のナノテクプラットフォームどうしようかという話題も出てこようかと思いますが、そういう議論にも資するような文章をこの中に入れておき、煮詰めていきたいと思います。ありがとうございます。

【三島主査】  ありがとうございます。ほかにどうでしょう。

 前田委員、どうぞ。

【前田委員】  分かりやすくおまとめいただきまして、ありがとうございます。ちょっと観点が違うかもしれないのですけれども、各団体からのヒアリングの下から2番目、机上配布資料2の下から2番目に、「少子化・理系人材不足が進む中」と書いてありますが、人材育成が物すごく大事だと思っています。

 最近、大学の学科名とか、どうしても流行りの学科名に改組したり、いろいろしていると思います。こういう材料の研究はとても重要ですが、学生は流行りのところに行きがちだったりしますので、その辺、いかに面白い分野だよということを魅力的に語り掛けたり、また授業も、基礎をきちんと教えないといけないと思いますが、融合分野がとても大事になってきておりますので、異分野、他分野の人の授業も上手に入れていただいて、若い人の頭の柔軟性を上手に育てて、若い力で新しい発想を生み出せるような土壌を作っていただくことがすごく大事なのかなと思っています。人材育成というところをもっと盛り込んでもいいのかなと思っています。

【三島主査】  やはり何か新しいことにチャレンジしよう、何か自分の力で世の中を変えてやろうみたいなことを思う学生がどんどん出ると非常にいいんですけれども、教育のシステムとかやり方でいろいろ工夫が必要だろうと思います。

【中山委員】  流行りは人が作ったものですよね。世界に先駆けて、我が国のこの分野から流行りを作っていきたいです。先ほどの照明技術なんかもそうですよね。ガリウムナイトライドの話なども、それを作ったのは我が国ですし、そういうことだと思います。そういうことを若い人たちにも理解していただきたいと思います。

【三島主査】  はい、ほかには。

 常行先生、どうぞ。

【常行委員】  1つは質問、簡単な質問なのですけれども、配布資料1の5ページにあるラボ改革というのは具体的にどういうことをイメージされているのでしょうか。

【中山委員】  これはなるべく材料開発をスピードアップさせるという意味で、例えばAIを使ったラボとか、コンビナトリアルテクノロジーをしっかり使っていくところ、あるいは計算とかデータをしっかり使っていくところ、そういうものをいろいろ合わせて、場合によってはロボットを使って、研究者はルーチンワークではなくてその先のことを考えるような、そういう費用対効果を高める、あるいは人材の費用対効果も高めていくようなことを考えてもいいのではないかという意見があったということです。

【常行委員】  分かりました。大体想像していたようなことだったので。ありがとうございます。

 データ科学とかも大分取り上げられているので、そこについて言うと、今、例えばNIMSでやられている拠点の方で、かなり若い人がたくさん集まっていて、しかも情報系の方で全く今まで材料のことなんか知らなかった人たちがそこに参加していたり、材料系でも、実験をやっていた人が情報系の方法を使ったりということが始まっています。Mi2iのプロジェクトが動いている間は多分それが原動力になって継続すると思うんですけれども、あと2年後ですが、終了したときに、その後がどうなるかというのは実はちょっと心配しています。

 大体、情報系の人というのはいろいろな新しい分野のところを探して、そこを絨毯爆撃でやって、また次に移っていくというようなタイプの方が多いので、そうすると、うまいこと人をつなげていかないとまた結局、技術が継承されないというようなことも起こり得る。

 データ科学もそうですし、それから、計算科学もそうですね。計算科学も今、実験系の研究室の方が普通に使うようになっていて、とは言っても、新しい材料の性質をシミュレーションしようと思ったら、新しい技術開発も必要で、最先端の方法を使わないといけないので、そこをうまくつなげるところの工夫が必要です。

 例えばナノテクプラットフォームというのは、新しい計測装置を使ったことがない人が使えるという環境としてすごくいいと思うのですが、例えばそれは計算科学とかデータ科学とかも同じで、データ科学の新しい方法は、使ったことのない人が使ってみるときにどうしたらいいか、それから、計算科学のプログラム、ソフトウェアを何を使ったらいいか分からない人たちがどうすればいいか、そういうところをうまくサポートできるような仕組みがあるといいかなと思います。

【中山委員】  大事なことを頂きました。ありがとうございました。やったことをやりっ放しにしないというのが非常に大事だと思います。きちんと評価はするのですが、評価が次に生きてないのが我が国の施策の悪いところです。評価でいいものは次にしっかりつなげ、大事なことを終わらせないというのも非常に大事です。諸外国で聞くと、日本は5年たつと施策が終わっちゃうから、結局、その先に勝ちにいけるよねみたいな、そんなこともささやかれたりもしていますので、よいものも悪いものも終わらせるというよりは、よいものをしっかり続けたい。だから、MI2Iを今後どうしようかということもこういう場での大事な議論の1つになってこようかと思います。

【三島主査】  ほかに。

 馬場先生、どうぞ。

【馬場委員】  大変難しい問題を非常に多くの努力をしていただいてまとめていただきまして、ありがとうございます。

 机上配布資料1番の5ページですけれども、2番の目標と基本的なスタンスというのが1つ非常に重要なポイントかと思います。6番目のポツですかね、私はここに書いてある内容は全てそのとおりだと思っているのですが、開発してきた「魅力的な機能」を研究者自らが用途イメージを持ちというのが、非常に難しいというのが以前からの議論だと思います。社会が必要としているもの、あるいは将来必要とされているものを技術開発の段階からイメージできるのかどうかというのが非常に難しくて、特に大学ではここがなかなかできていないというのが以前からの議論ではなかったかと思うのですが、どのように進められるかという議論がもしこれまでになされていたら教えていただきたい。それと、これを本気でやるには、何かやっぱり企業と大学との連携のするような仕組みがないとうまくいかない、なかなか難しいのではないかと。それから、用途イメージを持ち過ぎるがために、魅力的な機能が出てこないという危険性もあるのではないかと、少し心配です。

 その下の、コスト意識・大量生産性をあらかじめ考えたマテリアル設計、これももちろん重要だと思うのですが、これも最初からこれを考えると、本当の新しい機能が出てくるのかというのが少々懸念されます。そこをどういうふうに両立させるのかというのを是非御検討いただきたいのと、大量生産性というのが、企業の規模によって大量生産の「大量」の数がもう桁違いに違うので、それもどういうイメージなのかというのをまた、どういう検討状況かという、この2点を教えていただければと。

【中山委員】  ありがとうございました。最初の御質問はなかなか難しいところですけれども、今、馬場先生におっしゃっていただいた産学の連携もそうですし、異分野の先生方の意見をしっかり聞いて一緒にやるとか、この分野をもう少し深めていかなければいけないんですけれども、新たな用途あるいは用途イメージというのは、自分だけで必ずしもやる必要はないかとも思います。ただ、もちろん自分でしっかり考えてという先生方もいますので、多種多様なパターンはあるかと思います。こういうマインドはしっかり持っていなければいけないということかと思います。

 あと、コスト意識・大量生産性、もう少し議論をしたいと思います。片や、例えばラボでちょっとだけいいものが出来ましたと。でも、それを企業に引き受けてもらおうとすると、それじゃ全然量が足りませんということで、間で死んでいるようないい材料、いい物質はたくさんあると思うのです。お金が投じられた上で死んでいる材料たちですよね。それをゼロから1が出たものを、1から10あるいは10から100、数は分からないですけれども、その間のところをどうやってつないでいくかというような施策は、材料分野の費用対効果という意味では高いかなという議論を致しました。どうやって実現していくかというのはまだこれからですが、そういう大事な議論もありました。

【三島主査】  上杉先生、どうぞ。

【上杉委員】  中山委員と作業部会を担当しています上杉です。最初の部分についてちょっと付け足しをさせていただきます。魅力的な機能というところですが、皆さんこれでよろしいでしょうか。苦肉の策というのがよく分かっていただけると思うんです。魅力的な機能というのは、大きく分ければ、私は3つあると思うんです。1つは、これはお金になるのではないかなというもの、もう1つは、これは予想外だな、新しいなというもの、もう1つが一石二鳥だなと思うもの、この3つに主に分けられると思うんです。

 お金になるな、一石二鳥になるなというものは、用途イメージを持っています。もう1つの、予想外だな、新しいなというものは、確かに馬場先生が言われるように、イメージを持ちにくいと思います。なぜならば、新しいからです。でも、魅力的だなと企業の方々に思っていただければ、こういうことに使えるかもしれないと手を上げる企業が現れると思います。そういうイメージです。「魅力的な機能」として一挙に書いていますけれども、実は2つに分けて考えるべき問題だと思います。

【三島主査】  はい、橋本先生、どうぞ。

【橋本委員】  この報告書は、非常にとがったものにするのか、あるいは全体をある程度広めにカバーするのかという観点で分かれると思います。これを見ると、とがったものにするよりは、やっぱりナノテク・材料分野の将来全体をという視点で書かれているというように思いますので、その観点から2点申し上げます。

 1つは、やはりナノテク・材料研究分野が、我々――我々というのはアカデミックな人たちという意味で、文科省施策として求められているのは、将来の日本の産業の基盤としてのものをしっかり出すということを強く求められていると思うのです。そうすると、明らかに今重要なのは、今日も議論に出ましたけれども、アカデミアと産業界のコラボレーションの機会を格段に増やすということだと思います。そういうような仕組みが重要です。

 私もいろいろ現場に行って分かったわけですが、思った以上にプラットフォームがアカデミアと産業界の出会いの場として機能しているのです。これはナノテクプラットフォームもそうですし、あるいは次世代電池プラットフォームもそうですし、あるいはデータ科学もこれから多分、非常に難しいのですけれども、データプラットフォームを作っていこうと。今はまだ、皆さん興味だけで寄ってきていますけれども、そういうところで材料研究分野において、産業界とアカデミアの出会いを格段に加速するものとしてのプラットフォームの位置付けが明記されて間違いないと私は思っています。それは多分施策的にも非常に期待されることではないかと思います。これが1点目です。

 2点目は、こういう比較的広くなったときに是非入れてもらいたいのが、実は古くて新しい構造材料です。特に複合材料ですけれども、これは自動車であったり、航空機であったり、ものすごく実は研究が要求されている分野です。しかも、5年後10年後の話じゃなくて、例えば20年後とか30年後を目指した研究が今から求められているのです。

 ところが、非常に問題なのはそこの分野の研究者がいない。先ほど前田委員も言われましたけれども、構造分野には若い人が本当にいないのです。実は私たちNIMSで新人採用の面接をちょうど今やっているのですけれども、驚くぐらいいないのです、この分野は。これは大変な問題です。海外の大きな、こういう材料を使う会社と私たちは付き合いがあるわけですけれども、そこで、こういうことを将来に向けてやってもらいたいというようなことがすごく要求されますが、絶対数として全然人がいないのです。

 何を言いたいかというと、構造材料は、将来に向かって、長期的にも絶対になくならなくて、しかも新しいものがどんどん求められていくのです。次世代、次々世代、次々次々世代みたいなことまで実はもう求められていて、かなりベーシックな研究を求められています。

 本当にデータサイエンスとかそちらの方ばかり学生は行ってしまって、こちらの重要性があるにもかかわらず、日本として非常に損失を被ってしまうことがありますので、この形でまとめるのであれば、是非そこの重要性を、強く入れていただく必要があると思いました。

【中山委員】  ありがとうございます。

【三島主査】  ありがとうございました。大事なポイントです。

 はい、武田さん。

【武田委員】  私はバイオロジーを担当しているのですが、やはり生物由来の材料、あるいはバイオテクノロジーを駆使した新材料の開発が1つの重要なポイントだと思っております。SDGsやSociety5.0でも掲げられているような、より豊かで、より健康な、人類が幸福な社会をどう形成するかという議論において、持続可能な未来社会が形成できない可能性があるから、そういうことが言われるのだと思います。

 なるべく早く地球に戻せるような材料を活用していろいろなものを作っていくことが重要です。高機能・高性能が大変重要な軸で、その軸に沿ってこれまでも材料開発されてきて成果が出ているわけですけれども、それだけではなく、やはり環境負荷の低い、本当に真の意味での豊かな社会の形成に貢献できるような基盤材料の開発はやはり外せない要点かと思います。そこも是非検討項目に入れていただけたらと思います。

【三島主査】  よろしいですか。ありがとうございます。

 射場委員、どうぞ。

【射場委員】  橋本先生のお話のように、構造材料は、自動車の軽量化はもうずっと最重要テーマで弊社でも取り組んできているのですが、ここに来てEVになると、電池を400キロも載せます。そうすると、車体をもっと軽くしてみたいな議論はありますが、それを載せるにはもっと強い材料が必要で、ニーズはどんどん膨らんでいくのですが、それに応えられるシーズがなかなか継続的に出てこない。材料メーカーさんなんかも結構シーズがなくなってきていて、なかなか提案も頂けない状況があります。

 一方では、ここでも議論されてきた、元素戦略の拠点型で、構造材料をもっとベーシックなところから振り返って取り組んでいくと、相当まだまだやられていないことはいっぱいあります。だから、そこら辺りを、SIPもそうですが、もっと進展させ、今のニーズのところまでつなぐことを強力に推進してほしいと民間サイドも思っています。

 データ駆動形、マテリアルインフォマティクスの件は、以前に私が出席させていただいた頃も随分強くお願いした内容で、相当取組は増えてきたと思いますが、今、民間の研究開発現場で何が起こっているかというと、どんどん活用は進んでいます。機械学習であるとか、ディープラーニングであるとか。活用が進んでいるのは、製品開発とか市場問題の川下サイドでビッグデータがあるところです。そこはどんどん若い人たちが最新の手法をアプライして、いい結果をいっぱい出すのですが、川上の研究フェーズのところはビッグデータがありません。

 先ほどの御報告の中にも、日本には材料の良質なデータがたくさんあるのに、それをバインドしてビッグデータにするような仕組みや取組がほとんどされていない。例えばSPring-8のXAFSのプロファイルなどすごい有効なデータだと思いますが、全部データが散在してしまっています。それらを束ねてビッグデータの仕組みづくりをするようなことも研究として評価されるようにお願いしたいと思います。

【三島主査】  ありがとうございました。

 高梨先生。

【高梨委員】  橋本先生おっしゃる構造材料のことですけれども、前も橋本先生、ここで構造材料の重要性をたしかおっしゃって、私はそれはもろ手を上げて賛成したのですが、ただ、何か今日のように余りにもいないとおっしゃられると少し抵抗がある。それは足りない、少ないということだと思うのですが、NIMSさんにももちろんいい研究者はいらっしゃると思いますし、東北大も指定国立大学法人の中で、構造材料というのは非常に重要な、研究力強化の中で重要な分野と位置付けているし、本所、金属材料研究所も、まさに構造材料は重要な、もっとも重要な分野の1つと思っているので、これからまさに更に強化しなければいけないと思います。

 それとは全く観点の違う、横道にそれたコメントですが、幾つかの団体、関連する団体のヒアリングをされているのですが、この関係団体というのは、恐らく中山さんが幾つか関連のあるところをピックアップしたという、そういうことなんですか。

【中山委員】  そうですね、参事官付の皆様とか、あるいはこの中の皆様にいろいろ御協力いただいて上がってきたところ。できないよと言われたところはやっていただいてないですけれども。

【高梨委員】  私はこれを見ていて少し感じたことは、日本は材料で本当に総合的な学会がなかなかなくて、多様な学会があり、三島先生は金属学会のことを非常に御存じですけれども、金属学会あり、鉄鋼協会あり、軽金属学会もあるし、それからあと、MRSもあるけれども、全体を束ねるような状態になっていない。あと、化学系でもいろいろな学会があるのですが、やはり日本で材料全体を俯瞰するような学会がないというのは、やはり1つ問題かなと思っています。

 先ほど人材育成のお話も出て、あと、融合分野というか、材料科学の中でもいろいろありますが、その中の横断分野というか、そういったものをもっとこれから発展させていく意味でも、何か今かなりばらばらになっているので、何か全体を束ねるような、俯瞰するような学会がやはりあるといいなと、これを拝見していて感じました。

【中山委員】  材料戦略委員会はやはり材料系の学協会が集まっているようなところで、もうちょっと活性化していけばそういう機能になるかもしれない。また化学連合も化学系の学協会がたくさん集まっていて、材料戦略委員会と重複もあるんですけれども、そのぐらいがかなりカバーしてくれるといいなという思いはありますが、それがどのレベルかというのは皆さんが御評価されているところかと思います。

【三島主査】  それに、確かに金属学会なんかでも会員がどんどん減ってきているという状況も非常に顕著なので心配ですけれども、やはり構造用材料の重要性が指摘されるところで、もう一度構造材料をやっている先生方が元気を出して、今の新しいやり方みたいなものを見つけながらやっていく、そこに若い人を巻き込んでいくというようなやり方ができればいいなと個人的には思っております。

 栗原委員、どうぞ。

【栗原委員】  そういう意味では、射場委員の言われた、新しい見方で見ていくと新しい視点が出てくるということであれば、従来の構造材料の方でなくても、複合材料であれば、基盤的な研究をやった人たちに少しずつ経験を積んでもらって、新しい材料が、あるいは新しい対象がこなせるような力をつけるとか、そういうアプローチを評価することを視点としてやっていけばできると思うので、その辺りを少し幅広く捉えて人材育成というのも考えたらいいと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 じゃ、加藤先生、どうぞ。

【加藤委員】  すばらしい報告書をまとめていただいて、ありがとうございます。私がコメントしたいのは5ページです。配布資料1の5ページで、先ほど話題になりました魅力的な機能というところです。今、材料というのは、瀬戸山委員からもありましたように、ゼロ1も大事ですし、さらに、1から100に展開するときは産業界との協働というのがとても大事だと思います。ここにいろいろ良いことが書いてあるのですが、それでは具体的にどうするかということが重要です。

 例えば、少し話が細かくなって恐縮なのですが、現在、私はJSTの「さきがけ」の分子技術の研究総括をやっています。若い人を43人面倒見ていますが、彼らは、平均年齢37です。聞いてみると、これまで、1回も研究者として企業の人と話をしたことがないという人が結構います。この委員会の先生方は人生経験豊富だから、皆様、学者は産業界と交流があると勘違いされている。ですが、30代の人でも、1回も話をしたことない人が結構いるんです。

 それで、仕組みを作って、例えばJACIという化学系のほとんどの大手企業が入っている主要業界団体で講演会をさせていただきました。何人か「さきがけ」の研究者を連れていって、割と基礎的な研究の話でしたが、やはり面白いと企業の方が大勢来てくださって、極めて好評であり、共同研究につながったりしました。それから、JSTとサイエンス・フォーソ・サエティという取組を始めて、無理やり若手の研究者に企業を回ってもらって、「私の材料が使えますか」とかいって聞いてくるように仕向けたのです。そしたら、「こんなの使えるか」と、ぼこぼこに言われて、一応落ち込むんですけれども、そこでまた工夫したりして皆さん成長しました。

 やはり材料というのはいろいろあって、狙いを定めて数撃ちながらシェイプアップして、どれかが確率的に残っていって、社会のニーズに合致したものが使われていくということだと思います。魅力的な機能というのを、社会にとってもそうですし、特に産業界にとっても、どう考えるかということは重要です。こういう御提言に加えて、仕組みづくりみたいなものを、特に若手のためのものを作っていただければと思いますので、よろしくお願いします。

【三島主査】  ありがとうございます。

 じゃ、菅野先生、先に。

【菅野委員】  すいません、同じようなことですけれども、この5ページ目の真ん中辺りで「谷」を越える工夫が必要というところです。どうやって谷を越えるかという、この具体的なところがやはり大変問題だなと。今も話がありましたけれども、ゼロから1にするというのは多分これまでの施策で多分いっぱいあると思います。そこのゼロから1になったところで、非常に運のいい材料が多分1から10ぐらいになる。先ほど10ぐらいで区切られていましたけれども、10から100にするのは多分産業が強いので、それは問題ない。だから、1から10にするところを、多分これ、先ほどの非常に努力されたという、魅力的な機能という、いかに産業側から魅力を感じるかというところが今、1から10にするポイントかなと。だから、ゼロから1、1から10、10から100を、先ほどお話のありましたように、お隣の国ではもう混然一体となって、大量の人材と資金でもう力わざで乗り越えるというのもありですけれども、多分日本ではそれができない。1から10をどうするかというところが多分ポイントかと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 瀬戸山委員、お待たせしました。

【瀬戸山委員】  今のお二人の話を聞いていて、やはりそうだと思っているんです。マテリアルゲームといっても、アメリカにしても、中国にしても、日本にしても、やっていったら方向は多分収れんしていって、同じような課題を多分やることになってしまう。その中で本当に人が少なくて、予算もない中で勝てるかって、多分勝てない。

 といったときに、魅力的という言葉はすごくやはりいい言葉で、新しくて魅力的って何なのかと考えたら、多分それ、絶対必要なのは気付きなんですね。だから、こんなふうな使い方があるかという気付きみたいなものがあったときに初めて、彼らが思っていないような日本独特のものが生まれるのではないかなと。

 それというのは、大学の先生方がいろいろやられて、使いみちはまだ余り、応用は余り気にされない段階のときに、企業の方で見たときには、あれはできないよなという先入観とかがあって、なかなか分からないんですね。だけど、そういう潜在的な問題というのを抱えていて、それを、あれ?こういうふうな切り口で見たら答え行けるかもしれないなというのが生まれるのが私、気付きだと思っているんです。

 今、菅野先生がおっしゃったような話って多分そこ辺のところがあって、産業界の人間が、これって確かに役立つかもしれないなという気付きが絶対必要だと。それをやるには、先ほどの、30代の研究者が企業の人間と全然話したことがないってこれは全く論外な話で、そこのところの垣根をどうやって低くするかというような、やはりそこの仕組みだと思います。なので、そういうことを意識したような組織体なり、仕組みなりというのを作っていただいて、我々が少なくとも入っていって、思っていなかったようなことを見て考えるような余地ができるようなことをやはり考えていただくと、日本独特のものが生まれるのではないのかなと思います。

【三島主査】  ありがとうございます。

 それでは、最後の1つお願いいたします。

【吉江委員】  非常に美しくまとまっていると思ってずっと見ていたのですけれども、これ、ふと思ったのですが、これが非常にうまく進んでいったときに、先ほどのサブジェクトカテゴリで評価したときに、これが上手にどのように評価されてくれるのかなという。その辺が、サブジェクトカテゴリがこれに当てはめて考えると少し大きいのではないかなというのを少し実感として思いました。すいません、これは少し蒸し返すようなお話で。

 ここで今申し上げたいのは、皆様がおっしゃっていたようなことは一々全部、私も合意なのですけれども、1つ私がポイントとしてもう1回挙げたかったのはSDGsです。これに対してやはりナノテク・材料というのは非常にプラスの貢献をたくさんしていますし、これからもしていかなければいけないですし、あと、残念ながら、多少ネガティブな貢献もしてしまっているところもあって、その辺も踏まえて、このSDGsをもう少し取り上げる方がいいのではないかなというのが私のコメントです。

【三島主査】  ありがとうございました。大体時間が来ましたので、きょうはここまでにいたしますけれども、大変貴重な御意見をたくさん頂きました。Society5.0を実現していくための問題と、それから、第6期にどういうふうなナノテク・材料を入れていくかということと並行しながら考えますが、今日は割に仕組みづくりというんですかね、何か研究者あるいは産業界とがどういうふうな仕組みを持ってやっていくかというところに何か大きなブレークスルーがあるかもしれないなというふうに思って伺っておりました。ありがとうございました。

 それから、何よりこの作業部会をやっていただいている先生方、中山さんがリーダーで、上杉先生も、ほかにもこの中にいらっしゃるかもしれませんが、大変な御努力だと思います。これ、よくまとめていただいたので、これをベースにいろいろな御意見をまたこれから頂いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、事務局からこの後のことを。

【丹羽補佐】  本日は時間一杯まで活発な御議論いただきまして、ありがとうございました。

 次回の委員会につきましては、現在日程照会させていただいております。追って、メールにて御連絡を差し上げます。

 本日の議事録は、これまでどおり、ホームページの方に確認後掲載させていただきたいと思います。

 また、資料につきましては、封筒にお名前を書いて置いておいていただければ、また郵送もできますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。

【三島主査】  それでは、本日のナノテク・材料委員会は以上です。御協力ありがとうございました。


―― 了 ――


お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)