第9期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成29年4月28日(金曜日)10時~12時

2.場所

3F1特別会議室

3.議題

  1. 1.ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の議事運営等について【非公開】
  2. 2.ナノテクノロジー・材料分野の現状について
  3. 第9期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会における当面の審議事項について
  4. その他

4.議事録

【三島主査】  
  それでは、主査の三島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今日の各委員の御紹介を田村さんからお願いいたします。

【田村係長】  
  ありがとうございます。御出席いただいている各委員の皆様につきまして、上杉委員の方から順番に、簡単に自己紹介も兼ねて御挨拶をお願いいたします。
 まず、上杉志成委員。

【上杉委員】  
  京都大学のiCeMSの副拠点長と化学研究所の教授をしております上杉です。専門はケミカルバイオロジーです。よろしくお願いします。
【田村係長】  
  加藤隆史委員。

【加藤委員】  
  東京大学の加藤です。有機高分子材料・液晶材料等が専門です。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  菅野了次委員。

【菅野委員】  
  東京工業大学の菅野です。化学、無機化学の特に蓄電池・燃料電池分野を研究しています。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  栗原和枝委員。

【栗原委員】  
  東北大学の栗原でございます。私は界面化学が専門ですが、最近、トライボロジーを基礎から見直すということで、いろいろな活動をしております。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  瀬戸山亨委員。

【瀬戸山委員】  
  三菱ケミカルの瀬戸山です。特に今関心があるのは、エネルギーの領域です。よろしくお願いします。

【田村係長】  
  高梨弘毅委員。

【高梨委員】  
  東北大学金属材料研究所の高梨です。専門は磁性材料・スピントロニクスでございます。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  武田志津委員。

【武田委員】  
  日立製作所の研究開発グループの武田志津と申します。専門はバイオテクノロジーや再生医療でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  館林牧子委員。

【館林委員】  
  読売新聞の館林と申します。今は医療担当の編集委員をしています。よろしくお願いします。

【田村係長】  
  中山智弘委員。

【中山委員】  
  JST研究開発戦略センターの中山と申します。これまで研究開発の戦略を立案するような仕事をしてきました。今日も少しプレゼンさせていただきますので、また御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【田村係長】  
  納富雅也委員。

【納富委員】  
  NTTの物性科学基礎研究所の納富といいます。専門はナノフォトニクスで、4月からクロスアポイントメントで東京工業大学の方も兼任しております。よろしくお願いします。

【田村係長】  
  橋本和仁委員。

【橋本委員】  
  物質・材料研究機構の橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  馬場嘉信委員。

【馬場委員】  
  名古屋大学の馬場でございます。ナノテクノロジーとライフ・バイオの融合領域の研究を進めております。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  林智佳子委員。

【林委員】  
  NEDO材料・ナノテクノロジー部の林でございます。私、専門はバイオ、分子生物学を専門にしております。NEDOでは、植物や微生物を用いた高機能品の生産技術開発のプロジェクトというものがございまして、そちらのプロジェクトマネージャーをしております。どうぞよろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  前田裕子委員。

【前田委員】  
  株式会社セルバンクの前田裕子です。12月までブリヂストンにおりまして、高分子化学が専門です。セルバンクは再生医療のベンチャーになります。その他、産学連携を長いことやっておりましたので、得意としているのは、産学連携とか、電気化学、高分子化学です。どうぞよろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  湯浅新治委員。

【湯浅委員】  
  産総研の湯浅です。専門は磁性材料とスピントロニクスです。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  吉江尚子委員。

【吉江委員】  
  東京大学の吉江でございます。専門は有機高分子材料です。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  萬伸一委員。

【萬委員】  
  NECの萬と申します。ナノ及び量子系の研究開発の推進をしております。どうぞよろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  ありがとうございました。
 本日は、五十嵐委員、梅村委員、常行委員は御欠席となっております。
 以上です。

【三島主査】  
  それでは、委員の皆様、どうぞこれからよろしくお願い申し上げます。
 議事に入ります前に、今日は関研究振興局長が御出席でございますので、御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【関局長】  
  おはようございます。研究振興局長の関でございます。第1回目の会議ということで、挨拶をさせていただきます。
 委員の皆様には、大変お忙しい中、このナノテクノロジー・材料科学技術委員会の委員に御就任いただきまして、まことにありがとうございます。
 この委員会が担当いたしますナノテクノロジー・材料科学の科学技術につきましては、2001年から2010年までの第2期・第3期の科学技術基本計画におきましては、重点分野として位置付けられていたわけでございますが、2011年度からの第4期、そして、現在の第5期の科学技術基本計画におきましては、基盤技術として、その重要性が位置付けられているところでございます。
 4月21日に開催されました総合科学技術・イノベーション会議におきましても、科学技術イノベーション官民投資拡大推進費、いわゆる新型SIPのターゲット領域の一つといたしまして、センサやアクチュエータをはじめとしたフィジカル空間基盤技術が選定されておりまして、このナノテクノロジー・材料分野が大きく貢献できる領域であると考えております。
 文部科学省では、現在、御案内のように、科研費やJSTの戦略的創造研究推進事業、あるいは、産学官連携プロジェクト等における取組に加えまして、希少元素の革新的な代替材料開発を目指します元素戦略プロジェクト等による最先端の研究開発の推進、また、大学等が有します研究設備やノウハウの共用により研究基盤を確立するナノテクノロジープラットフォーム等を通じて、この分野の支援を行っているわけでございます。
 また、昨年には、物質・材料研究機構が特定国立研究開発法人として新たなスタートを切りました。国家戦略に基づきまして、世界最高水準の研究開発成果を創出し、我が国のイノベーションシステムを強力に牽引する中核機関としての役割が果たせるよう、この委員会での皆様の御助言も参考にしつつ、文部科学省として支援をしてまいりたいと考えております。
 さて、今申し上げましたように、現在の科学技術政策におきましては、基盤技術としてのナノテクノロジー・材料分野の重要性は認められているところでございますが、今後、我が国が進めていくべき具体的な方向性につきましては、必ずしも議論が進展していない状況ではないかというふうに認識しているところでございます。今般の第9期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会におかれましては、現行の第5期科学技術基本計画に基づく本分野の着実な推進ということに加えまして、さらに、中長期的な観点から、この分野の研究開発の進むべき方向性につきまして、様々な御意見、御助言を頂きたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【三島主査】  
  関局長、どうもありがとうございました。
 ただいまございましたように、もう第6期をにらんでといいますか、ナノテク・材料分野でこれからどこを伸ばしていくか、非常に重要な委員会になろうかと思いますので、よろしく御協力いただければと思います。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、まず、ナノテク・材料分野の現状についてということで、少し状況を委員の皆様に御説明したいと思います。はじめに、文科省の岡村参事官から、そして、その後、JSTの中山委員から少し御説明を頂きたいと思います。
 それでは、まず岡村参事官、どうぞよろしくお願いいたします。

【岡村参事官】  
  よろしくお願いいたします。岡村でございます。
 資料2-1で御説明をさせていただきたいと思います。先生方におかれましては、もう御存知のことも多いかと思いますが、1回目ですので、少々勘弁していただきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、4ページをお開けください。ナノテクノロジー・材料科学技術の動向とございますが、まず、こちらに書いていないことなのでございますが、よく最近いろいろな先生方のところに、ナノテクノロジー・材料の担当をしておりますと申し上げますと、「ナノって、あなたはどういう定義をしていますか。文科省はどういう定義をしていますか」というお問合せを頂きます。この点について、まず御説明を差し上げたいと思います。
 クリントン大統領が「ナノテクノロジー」と打ち上げた直後から、総合科学技術会議、文科省・経産省共に、ナノテクノロジーの政策を考え始めたわけでございます。こちらに実物を1つ用意いたしましたが、これがナノテクノロジーと材料に関しての最初の文部科学省の政策ドキュメントでございます。この中にも冒頭に位置付けてございますのが、ナノテクノロジーは、別に1ナノから数百ナノまでのサイズにこだわっているということではございません。当時盛んに議論になっておりましたのが、やはり半導体加工などでも、数百ナノから数十ナノに加工していこうと思うと、量子現象をどのようにマネージしていくか、この大きなサイエンスの壁があるということ。また、生物の方でございましても、逆に、単に無機的な原子であったものが、数十ナノ、数百ナノになってくると、生命現象になっていくという、まだまだ解明し切れていない様々なサイエンスであるとか技術がある領域ということでナノテクノロジーを位置付けております。文章では、ナノテクノロジーは、このように、従来の技術にはない新たな技術体系を築くと、こういうところを強調しております。ですので、扱う研究開発によりましては、当然ながら、マイクロの世界、こういうものもカバーしていいということになります。
 そのように、微細なものを見て、加工して、作ってというようなこと、そういう技術と、これを活用しました金属から、セラミックから、高分子から、生体材料まで、あらゆる材料、これを扱う分野、大変広い分野、これが当委員会の扱ってくださる分野であるというふうに御理解を頂ければと思っております。そういう分野でございますので、ただいま局長からも申しましたように、様々なものの基盤になっていくということになります。
 日本の競争力の一端となりますが、5ページに産業の動向というデータをリファーさせていただいております。当然ながら、自動車産業、日本は市場規模の大きい中で、非常に頑張ってくださっているということでございますが、楕円になっております材料関連の産業、ここは、シェアという意味で、日本企業におかれては非常に頑張ってくださっている、競争力を維持してくださっている分野であろうというふうに理解をしております。
 6ページをお開けいただけますでしょうか。では、競争力のリソースとなるナレッジを生む研究の分野はどうかと言いますと、まさにナノテクが始まった頃は、日本は世界の中でも、論文の数であっても、質、これは被引用回数で質を象徴的に見ているものですけれども、量でも質でも世界の2位であったところが、残念ながら、現在、現在といいましても、サイテーションは時間がかかりますので、最新のデータとして、2012年までとなっておりますが、質も量も世界の5位になっているという現状があります。徐々に右肩下がりになっております。ただ、ここで材料科学とさせていただいているものは、トムソン・ロイターの22分野に分けた論文の中の材料と、あとは複合領域の中での材料、この部分だけで見ております。ちなみに、化学とか物理で見ましても、同様の傾向、2~3位から、やはり4~5位に落ちてきていると、こういう状況でございます。
 そういう中で、何とかしっかりやっていかなければいけないわけでございますが、政府の科学技術政策の中での位置付けということで、8ページを御覧いただければと思います。まずは、私ども、科学技術の政策を推進するに当たって、一番のバイブルになりますのが、科学技術基本計画になります。これも先に局長から申し上げましたが、第2期、第3期といいますのは、ライフ、IT、環境と共に、4つ目の分野として、ナノテクノロジー・材料が推進されておったものでございます。横断的な重要性ということを認識されたわけですけれども、重点分野として推進されてまいりました。2011年からは、様々な他の領域に対しての横断的に用いられるものとしての位置付けをされてきているということでございます。
 9ページをご覧ください。第5期につきましては、第5期の柱といたしまして、冒頭に書かせていただいていますように、超スマート社会、これを実現するために、新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術ですよということの位置付けになっております。
 より具体的には、10ページ、Society5.0という、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会、これに続く新たな経済社会としてのSociety5.0、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることによって、どの方も、どの年齢の方も、どこに住んでいる方も格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供することで、経済的発展と社会的課題の解決をして、人が中心の豊かな生活を実現する。これを支えるための技術として、11ページの記載のように、様々な技術が、それにコントリビュートする必要がございますが、特にナノ・材料の分野でいきますと、①のセンサですとか、④のアクチュエータ、こういうようなところが非常に重要な役割を果たすのではないかと考えられております。
 少し飛ばしまして、13ページに行っていただきますと、これも先に局長から御説明させていただきましたが、官民研究開発投資拡大プログラム、産業界の投資も誘発して、しっかり進めていこうと。このプロジェクトの次期ターゲット領域の候補を3領域こちらに示しましたが、サイバー空間基盤技術、フィジカル空間基盤技術、そして、革新的建設・インフラ維持管理と革新的防災・減災技術、この3つが候補として決定されております。これらそれぞれにも、当領域が大変重要な役割を果たすものであろうと認識しております。
 これを技術の子細な分類と共にお示ししましたのが、14ページになります。
 さらに、総合科学技術・イノベーション会議におきましては、15、16ページにございますけれども、科学技術イノベーション総合戦略2017、これは毎年決定いただいているものですけれども、5年間の基本計画を、それぞれの年にしっかり重点を置くものを位置付けたものとして、策定されていますが、この中でも同様な方向として、例えば、15ページの左下のところに図がございますけれども、真ん中のところに基盤的なもの、AI、IoT等々の位置付けを書いてございます。ナノテクノロジーにつきましては、15ページ右の下のカラムの上から数行目のところになります、②プラットフォームを支える基盤技術の強化というところを御覧いただきますと、フィジカル空間関連基盤技術の強化ということで、ロボット技術、デバイス技術、素材・ナノテクノロジー、そして、光・量子技術等という位置付けをしていただいておるところでございます。
 さて、これが国全体の科学技術政策の中における当分野の位置付けの大まかなところでございますが、では、文科省はどんなことをやっているかということになります。18ページ、19ページに、文部科学省における研究開発計画がございます。これは、今年の2月に終了しました、この委員会の1期前、第8期のナノ材委員会で作っていただいたものでございます。先に申し上げました科学技術基本計画を踏まえて、文部科学省がどういうことをすべきであろうかということの項目を取りまとめております。こちらには項目だけ書かせていただいております。参考資料の方に、その本体はございますけれども、項目としましては、例えば、①未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進としては、どんな材料が必要であろうかということで、こちらに書かれているようなもの、また、次のページに行っていただきますと、広範な社会的課題の解決に資するものとしてはということで、アからカまで、それから、研究開発のやり方としましては、ローマ数字の2以降に、項目をこちらにお示しさせていただきますが、このような全体を俯瞰した研究開発計画、これを第8期の先生方におまとめいただいたということでございます。
 20ページからは、具体的に文部科学省の取組を少々細かく資料にいたしました。簡単にご説明したいと思います。
 25ページを御覧いただけますでしょうか。ナノテク・物質・材料分野から見た文部科学省関連施策(俯瞰マップ)とございます。こちら、左側が学術・基礎研究、応用、開発というフェーズ、それから、出口としては、健康・医療、エネルギー、インフラ、情報等々ございますけれども、これも、文部科学省は、科学研究費補助金、それから、JSTの基礎研究制度、イノベーションの制度等々持っておりますので、こちらに書かせていただいていますように、科研費、それから、CREST/さきがけ/ERATO/ALCA等々書いてあります。A-STEP、S-イノベ、こういうような研究開発、これが分野の定義ということにもよってきますけれども、数百億円程度の研究費が結果的にはそちらに行っています。結果的に採択された課題が、そのぐらいの予算規模ということでございますが、この分野として、今ここに、そのような競争的資金に加えて、やはり重点を置いていかなければいけないものということで、特に当委員会の所掌として、事前・事後・中間評価をやっていただくものとしましては、赤で示しているものがございます。
 元素戦略プロジェクト、これはレアマテリアル、地球上に存在の少ないものであるとか、使っているけれども毒性が強いものとか、元素を使う量を減らすにはどうやったらいいだろうかということを包含的に取り組むプロジェクト。
 それから、統合型材料開発プロジェクトと、これはちょっと難しい名前になっておりますが、これは、エネルギーに対してコントリビュートするために、例えば、太陽光パネルの材料でありますとか、それから、電池の研究開発として、次世代のものを作っていこうというプロジェクト。
 さらに、科研費でも、戦略創造でも、それから、今申し上げましたようなプロジェクトでもそうですが、何らかの研究をしようと思うと、非常に大きな装置であったり非常に特殊な装置で微細なものを見たり加工したりしていかなければいけない、そういうような施設は、一研究グループで持って維持していくのは非常に難しいし、有効ではないということで、これを皆様になるべく使っていただく、産官学の方々に使っていただくことを目的としたナノテクノロジープラットフォームがございます。
 更に加えて、やはりSociety5.0、この情報化時代に、材料の分野としてもきちんと取り組んでいこうということで、情報を活用した材料設計手法、これは物質・材料研究機構の方で実施をしているところでございます。
 さらに、一番下のところの赤いカラムでございますが、国立研究開発法人の物質・材料研究機構が、私ども文部科学省がお示ししている中期目標の重点の分野にしっかりと取組をしていただいていると、こういう状況でございます。
 その細かな一つ一つのプロジェクトの詳細な情報が、この前後に、24ページまでに付けてございます。
最後に、今期第9期の先生方へのお願いということで、26ページを付けさせていただきました。様々申し上げましたけれども、とにかく、この9期というのは非常にいい時期でございまして、第6期科学技術基本計画は、この後4年後からスタートする。すなわち、2年後から本格的な議論がスタートする。しかし、2年後に、こういうことが大切ですねという提案、これをタイムリーに発信していかなければいけない。産業界の動向を見ましても、非常に重要な分野であることは未だ変わりがありません。この分野について、第9期の先生方に、具体的に、こんなようなことをこういうふうにやっていかなければいけないというような御提案をどんどん頂くことを、第9期の委員の方々にはお願いしたいと、こう思っている次第でございます。
 以上、御説明とさせていただきます。

【三島主査】  
  ありがとうございました。
 御質問あろうかと思いますが、次の資料2-2と2-3も続けて御説明させていただきまして、その後でお受けしたいと思いますので、それでは、中山委員から、この2つの資料の御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。

【中山委員】  
  JSTの中山でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 まず、資料2-2を見ていただければと思います。ナノテク・物質・材料分野の俯瞰ということで、お持ちさせていただきました。この資料は、お手元のナノテクノロジーナノテクノロジー材料分野の俯瞰報告書というちょっと重そうな資料をまとめたものです。この俯瞰報告書は2年に1度JST研究開発戦略センターが発行しており、環境、エネルギー、ライフ、ICT、ナノテク・材料に関してそれぞれ分冊になっておりまして、その中の1つが、当分野のものでございます。
 2ページ目、この報告書の全体像で、メインメッセージでございます。上から、技術革新の世界的潮流と日本の位置づけ、そして、挑戦課題ということでまとめております。最初のところで、先ほど岡村参事官が言われましたSociety5.0、内閣府でしっかり練っていただいたものですが、来るべきIoT/AI時代に活躍するデバイスおよび構成素材は先端ナノテクノロジーの塊になるということが前面に出てございます。そのような中、米国のクリントン大統領が出したナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)から今までおおよそ15年経って、成果が蓄積され、最初は目立っていた各々の先鋭的な成果が融合し、だんだんシステム化されていくという流れがございます。日本では、2カラム目ですが、元素戦略、分子技術、蓄電池の材料等、しっかりとした基礎が育まれながら、材料が産業に徐々に展開されてきました。一方、弱点としては、計算、あるいは、データ科学、ソフト・標準化・規制医療応用、水平・産学連携などがあり、政策面でのサポート等でも、まだまだ考えなければいけないところが多いと思われます。そのような中で、我々が見てきたこと、あるいは、多くの先生方から教えていただいたこと等から考えた挑戦的な課題の提案も、少し先の方でさせていただきます。
 3ページ目は俯瞰の全体像でございます。大きく2章に分かれておりまして、冊子の最初の100ページ相当分ぐらいで、分野の全体像を述べさせていただいております。本日のプレゼンの多くはその部分でございます。ほとんど触れませんが、第3章、400ページぐらいあるんですけど、ここで37項目に分けた領域の最新情報を詳述しております。諸外国と比べたベンチマークも行っています。
 次、4ページ目と5ページ目が、俯瞰的に見たこの分野の状況でございます。下の方が共通基盤です。加工とか、計測とか、理論とか、その辺がしっかり基盤として下支えをしている。そして、物質の機能をしっかり制御・設計して、さらに、デバイスや部素材へ展開し、社会へ実装していくという流れです。⑦のところが、それらのための共通支援策で、施策としての方法論や、どのような連携をしたらいいかということ等が記されております。
 次に、37の主要な研究開発領域が、6ページ目に書かれております。
 7ページ目、や材料等での議論のことです。ナノテクノロジーの最初の5年ぐらいは先鋭化です。とにかくナノテクノロジーで何ができるんだ、ナノテクノロジーでジャンプして新しい世界が築けるものは何なんだというところが真剣に練られたものが先鋭化のところ。それは今も続いております。そして、それらを融合させて何ができるんだというところ。さらに、それをシステムとして社会に実装、あるいは、社会の一部として活躍させていくにはどうするかというところ。今、このような3段階に分かれて、それぞれが進化し、連携しながら進んでいるというのが現状です。3つめのシステム化のところでは、より複雑なシステムが構築される中で、その中心としてナノテクノロジーが存在しているというフェーズに来ていると思います。システム化は、例えば、車や各種モビリティ、自動運転等においては、最先端技術の中にナノテクが塊となって息づいているわけですし水のシステムも然りです。大きなシステムとして考えた中で、ナノテクが中心的な役割を果たしているのがナノテクノロジーのシステム化だと考えております。
 次が、ナノテクノロジーの進化というところです。こちらも先鋭化、融合化、システム化へという流れの中で、最初はITや半導体が引っ張り、次に、環境・エネルギーとか、医療への応用とか、そして、持続的社会に対して何ができるかというような流れで来ましたという、歴史的な年表でございます。
 9ページ目が、ナノテク関連施策の変遷でございます。これも先ほどの3つのカテゴリーで分けてみました。諸外国が競うように施策を打ってきております。そういう中で、日本が何をしてきたか、そして、今後何ができるかということが勝負でございます。第2期から第5期の科学技術基本計画におおよそ対応しているわけですが、4期あたりから我が国は少し息切れしているようにも思われます。ここでこれからどうしていくかというところが、この委員会の一番のポイントと考えております。
 10ページ目、これはざっと見ていただけると分かりますが、日本が誇る社会的・経済的なインパクトのある技術で、この分野のものを中心に描いたものです。本日お越しいただいている湯浅先生のスピントロニクス等をはじめとして、そうそうたるものが世界の多くのシステムの中で活躍しているというのが現状でございます。
 次のページへ行っていただきまして、11ページ、どのようなシーズがこの10年程度で出てきたかということを挙げました。これだけではないですが、注目度が高そうなものを例として挙げさせていただきました。我が国として、このようなものを更に出していけるかどうかということが重要と思います。
 そして、次の12ページ、先ほどお伝えした俯瞰において、我々で37領域を全部見てディスカッションし、執筆している中で得られた世界的な潮流です。国際的なコミュニティにおいても多くのディスカッションをして、事例として挙げました。我が国でも既に取り組んでいるところもございます。例えば、バイオファブリケーションとか、脳計測とか、あるいは、トポロジカル絶縁体とか、オペランド計測とか、新しい流れとしてどのように取り込んでいくか、世界に後れを取らないためにどうするかということが戦略的に重要かと思います。ただ、1点1点やればいいというわけではなくて、こういうものも面で捉えて、全体としてどうやっていくかということが勝負かと考えております。
次が、我々CRDSが、先ほどの世界の潮流も意識しながら、今後どういうことをやっていくと世界と伍していけるか、重要だと考えたものを列挙したグランドチャレンジというものを挙げさせていただきました。分離の話とか、あるいは、革新的なコンピューティングとか、トポロジカルとか、あるいは、マテリアルズインフォマティクスとか、今後力を入れていったらいいのではないかなというところを、もちろんこれだけではないと思いますが、示してい、ます。
 14ページ目が、そのグランドチャレンジを3行ぐらいずつ書き下した説明でございますので、読んでいただければと思います。
 15ページ以降、少し各論に入り入りますが、Society5.0というものを我が国としてどうやって推進していくか。その中でIoT/AIがどう活躍するか。多くの科学技術がそこへ繋がっていくという話、社会へ向けて繋がっていくという話でございます。
 そして、16ページに行っていただいて、その社会へのつながりの中では、ナノテクノロジー・材料の技術というのは、様々なところというか、ほぼ全ての場所で息づいており、ここをしっかり強化し、競争力を付け、最先端のところにしっかりお金を投じるということがいかに重要かということを示しています。要は、上空や上辺だけにお金を投じても肝の部分であるナノテクや材料を重視しないと、競争力が出てこないということを表わしたつもりでございます。
 17ページ、これはCSTIの表をそのまま持ってきました。CSTIの参事官等とも連携しまして、重要な点を、我々とのディスカッションを経て書いていただいております。これはCSTIの報告書のものです。
 18ページ、システム化の流れの中で、自動車の事例でございます。自動車というのは、ナノテク・材料、そして、IoTの塊だと思います。こういうSystem of Systemsの競争力を上げるためにナノテクノロジー・材料をいかに考えていくかが、我が国の命運の一部を握っていると考えております。
 19ページは、世界のナノテク施策のリストでございます。この2年ほどで、多くの国において施策のアップデートが行われてきております。特にアメリカでは、第6次NNI、すなわち、National Nanotechnology Initiativeも6期目に入りました。当初からナノテクは分野の融合・横断が意識され、NNCO、National Nanotechnology Coordination Officeというのが、各省連携を強く進めて参りました。その色が更に濃くなっておりまして、省庁横断するテーマであるNanotechnology Signature Initiativesというのを施策の筆頭に持ってきて、省庁横断、分野融合・連携でやるということを強く明確に意思表示しています。さらに、他のストラテジック・プラン、例えば、National Strategic Computing InitiativeやBRAIN initiativeのような他の分野の施策としっかり連携することが重要なんだということが高らかにうたわれていて、非常に参考になるところでございます。
 また、EUでは、マイクロ・ナノエレクトロニクスとか、先進製造とかを強く進めておりますが、その中で、例えば、Graphene Flagshipに多額を投じたり、量子の施策を準備していたり、キーとなるポイントにきちっとお金を投じていくという流れがあり、迫力がございます。
 20ページ目、これはアメリカのNNIの予算構造でございます。右肩上がりで、クリントン、ブッシュときて、オバマで下がっています。しかし、オバマで下がっているのは、DODのところであり、むしろNSFとか、その他は増加傾向にございます。DODがどうして下がったのかは検証が必要ですが、より開発寄りにお金をシフトして、表に出てこないという見方もございます。この先、トランプ政権でどうなるか、今は様子見ということころです。
 その中で大事なのが、右下、ナノテクノロジーのコンポーネントエリアといいまして、日本と違い、どのカテゴリーにどれだけの割合を投じるかが、あらかじめ決まっております。その一番上が、Nanotechnology Signature Initiatives、先ほど触れましたけど、そのエッセンスが21ページにございます。こういうところにアメリカは注目しているということです。新しく、Water Sustainability through Nanotechnologyが入っているのもポイントかと思います。
 ヨーロッパでございますけど、22ページ、左下、黄色いところ、Key Enabling Technologiesというのがございます。これは、しっかりと製造業をやっていかないと、どんな産業も回らないよということ、そして、雇用の確保のためには何をやればばいいかというところでナノテクノロジー、先進材料、マイクロ・ナノエレクトロニクス、フォトニクス、バイオテクノロジー、先進製造が挙げられ、かなりナノテクノロジーや材料の分野の色が濃いのが欧州のHorizon2020の中身でございます。
 23ページには、日本の主な研究プロジェクトを示しました。また、この資料の一番後に付録として、日本のこの分野の大きなプログラムを全て書き出しております。こういうものも横に見ながら、ここでの議論ができればと考えております。
 24ページ目は、先ほど岡村参事官が御説明いただいたもの。
 そして、25ページ目は産業動向です。各種シンクタンクのデータから抽出したものを記載しております。ナノテクノロジーがコアになり、それがなければ実現できなかったものが、現在・将来にこのぐらいの産業規模になりますよということでございます。
 26ページ目は、我々が書きました俯瞰報告書のイメージです。各国を比較しどのような傾向にあるかということを、詳細に記載しております。その後はずっと各論の説明ですので、その議論になったときにまたお話しできればと思います。
 33ページあたりは、施策間連携に関する方策を、我々として考えたものでございます。ナノテクは、分野の中にこもっていては力を発揮できませんし、競争力も生まれない。そういう中で、どのような連携が大事かいうこと等を、この場で議論していければと考えております。
 34、35、36、37あたりは、先ほどのグランドチャレンジの御説明でございます。
 38ページ目、この報告書は、240名ぐらいの先生方とディスカッションし、ワークショップし、インタビューし、情報提供をしていただきまして作成されました。この委員会に来られている何人かの先生方にも御協力いただきました。大変感謝いたしております。 この資料に関しての御説明は、以上でございます。
 続けてよろしいですね。

【三島主査】  
  どうぞ。

【中山委員】  
  ここまでは、ナノテク・材料分野を俯瞰した流れの話、多少消化不良かもしれませんが、お帰りになってからでもちょっとお読みいただければと思います。
 続きまして、ここまでご説明したような状況の中で今後の推進をどうするんだということです。先ほどの岡村参事官のプレゼンにも関係しますが、2ページ目で、ナノテク分野の施策の状況を記しました。一番左側、第2期科学技術基本計画に入るときにアメリカでNNIが出て、それを受ける形で我が国ではナノテクノロジー分野別バーチャルラボという、CREST・さきがけ10領域ができました。そして同時に、ナノテクノロジー総合支援プロジェクトという、しっかりと分野の基盤を支えるプラットフォームを作りました。そしてさらに、リーディングプロジェクトやキーテクノロジー研究開発の推進等の施策で、多角的に推進されて参りました。
 ちょうど2001年、2002年あたりで岡村参事官が担当されておられて、これらの立ち上げをされています。今、ここに責任を取りに帰ってこられたのかどうかは分かりませんが、しっかりもう一度一緒に歩ませていただくということかと思っております。私はキーテクノロジー研究開発の推進という施策の策定のあたりから、この文科省のナノ・材料担当の皆様と御一緒させていただいているという経緯でございます。
 当時はアメリカの強い流れもあり、我が国ではかなり多角的に推進されました。そして、次の第3期科学技術基本計画のときに、多角的な推進から少し重点化しましょうということで、元素戦略プロジェクト、そして、ナノテクノロジーを活用した環境技術という話が出て参ります
 第4期になって、科学技術基本計画の中では、ナノテクという文字はほとんど入っていないような状況になりました。我が国の中の状況とは対照的に、諸外国は更にアクセルを踏みこみます。我が国としては、既存の施策を淡々とやり続けるということが中心で、新規には、文科省の戦略目標を基にしたJSTのCRESTとさきがけが行われているのみということでございました。だんだん施策が薄くなってくるのが見てとれるかと思います。
 その先、第5期基本計画になり、文科省の施策は立たず、既存の施策とCREST・さきがけ以外に無いような状況になっておりこのままでいいのかとの問題意識がございます。今までの議論の流れでは新しいものは望めません。やめるのか、あるいは、できることだけやっていくのかということ、あるいは、しっかり練って新しいことを打ち出していくのかということを、ここで議論しなければいけないと考えます。この分野の位置付けも含めて議論しなければいけないという、非常に難しい局面です。こういう中で第6期基本計画における重点を、ほぼ何もないところから数年かけて議論して作っていくという流れかと考えています。
 次の3ページ目は、文部科学省の戦略目標の変遷です。文科省の内局で練られた施策に並行して、この戦略目標を基にしたCRESTやさきがけ等のJST施策が走っているということでございます。一番左上からずっと、おおよそ毎年1個ぐらいずつ、CREST等が出来ているという状況です。最初の方では、5年の施策の期間ぐらいではできないようなことが強調して書かれており、本当は、その言葉が今やっと掲げられるようなものが非常に多いなという印象がございます。一度言ったこと、施策になったことをなかなか二度言えないという、施策の世界のしきたりのようなものはやめてほしいと思うのですが、本当だったら、施策や目標を細切れにせず、大事なことをずっとやり続けるということが、重要なことでないかなとは思います。
 次の4ページ目、この分野の大きな流れを書かせていただきました。1970年代に理科大の谷口先生がナノテクノロジーという言葉を提唱され、その後、JSTのERATO等で様々なナノテクというか超微粒子のプロジェクトが行われ、さらに、経産省を中心にアトムテクノロジーという施策が行われておりました。その辺でナノテクの基礎がしっかり培われていました。片や、アメリカで、ドレクスラー等によりナノテクの重要性が指摘され、後にNNIの宣言が2000年に出されるということになります。米国でNNIの宣言が出されて、日本では呼応するようにナノテク支援プロジェクトやナノテクバーチャルラボができました。すばやい動きでございました。そうこうしているうちに、世界が様子見の中で、日本が元素戦略を2005年頃出しました。そうすると、アメリカがそれを見て、また5年後に、クリティカルマテリアルイニシアティブという元素戦略対抗策を出しました。と同時にもう一つ、マテリアルゲノムイニシアティブというのを出します。これは、日本の元素戦略で日本の製造業の競争力向上に対してしっかりお金が行っているが、アメリカが産業競争力や雇用を維持向上させるには、新材料開発のスピードを飛躍的に高めることで対抗しなければいけないという発想でした。そのためにはどうするかということで、米国のマテリアルゲノムイニシアティブがスタートしております。
 おおよそ、日本、アメリカ、日本、アメリカと施策のキャッチボールが行われて来ているわけですが、図のクエスチョンマークのところ、次の一手が日本としてはほぼ用意されていないような状況でございます。
もう一方、アメリカでは設備や計測機器の共用や研究基盤をしっかり構築する流れがございます。NNUN、すなわちナノテクユーザーネットワークという共用設備の施策が、NNIに先駆けて出されております。そういうものを見ながら、ナノテク支援プロジェクトが始まります。我が国には馴染みの無い設備共用と連係を意図した施策で当初は多くの苦労があったと思います。その後アメリカは、それをターンオーバーして、NNIN、National Nanotechnology Infrastructure Networkというものができる。それに対して日本では、考え方を発展させながら、ナノ支援プロジェクトからナノネットときて、また、ナノテクプラットフォームというような形で取り組まれています。アメリカは、更にNNCI、National Nanotechnology Coordinated Infrastructureという、更に進化させたものができてきています。こういう共用基盤のような施策も、ナノテクのもう一つの大きな流れとしてあるということを御認識いただければと思います。このような取り組みのキャッチボールの中で、日本は次にどういう手を打つかということを考える必要がございます。
 下のご説明です。ナノテクはナノエレが牽引して、その後、バイオとエネルギー応用にフォーカスされました。世界で先に結果が出たのはエネルギー関連ですね。そして、日本もそこで成果を多く出しました。先ほどの成果の紙にも書かれています。ただし、時間のかかるバイオ応用への投資は、諸外国では積極的になされましたが、日本ではなかなか投資が続かず、水をあけられてしまったというのが現況ではないかと思います。また、理論やデータ科学も、日本でもしっかりやっていましたがそこへの大きな投資ということではマテリアルゲノムをはじめとした初動での意思決定と投入額が諸外国の方が大きかったということで、後れを取りつつあるのかもしれません。
 あとは、半導体やICT関連ですが、産業の変化が起こると研究が低調になってしまうようなところが日本の悪いところではないかと思います。産業と研究は当然時差があるので、多分、一方が沈んだときこそ、一方は未来のために逆張りするのが戦略ではないでしょうか。日本はそれができていないと考えます。要は、流行っていると行うが、流行が終わると突然引くようなところがある。本当は、流行っていないときに手を打っておいた方が、諸外国としては怖いと思います。人のやっていることを見て、それをやるということでは戦略ではないでしょう。我が国としての真に戦略的なこと、あるいは先取りのことをやるべきではないかと考えます。
 5ページ目へ行っていただきまして、それでは何しようかなという話です。ナノテクというのは、融合・統合・システム化というのがまず大事だと考えます。あとは基盤が大事です。世界的な流れでも同様です。ただし、両方ともデマケーションされた「分野」にこもる話ではないのです。日本の失敗とは言いませんが、これまでよくなかったのが、縦割りの分野としてナノテクや材料が推進されてしまったこと。他の分野以外のところをナノテクはやりなさいのようなことです。ナノテク固有のことで何をやるんですかのようなことが問われてしまった。それに対してアメリカでは、連携や融合し、知見を集約して競争力を向上させることがナノテクでは重要だという流れです。これが決定的な差になって今出ているのではないかと思います。そういう考えで、マル1の青いところですが、ナノテクの本質は融合ではないかと思いが至ります。融合・統合化で、新たな付加価値があり、競争力があり、そこで新コンセプトを出して、更に産業へ展開していく流れを作るべきです。つまり、他分野と一緒にやることが第一、もしくは、他分野に傘をかける話ですね。悪く言えば、施策上では領空侵犯そのものではないか。それをしないと競争力も生まれない。それは他分野も多分そうなのではないかなと思います。
 ナノテク・材料分野で展開すべき案件としては、エネルギーの制御材料システム、これは、例えば、エネルギーをやっている別の部署があるからやれない、ではよろしくない。材料とエネルギーというのは相互に変換される、もう同値のものです。ものを燃やせば、エネルギーになるしというような、ここはもう当然やらなければいけない部分です。また、バイオシステムというのは、生命を切っていけば物質になっていくが、積み上げても生命にはなりません。でも、積み上げていくことによって、産業的な付加価値は大きい、人間の力とか、そういうものを拡張していく、あるいは、生命の利用のための国際的な競争が行われています。ここは産業的な付加価値が非常に大きなところでございます。
 あとは、ロボット・IoT。これは目的を持ったシステムの設計と構築で、人類が持っていなかったものを新しく作ろうという話であり、ここにはナノテクの塊の部分があると思います。
 あとは、分離で、元に戻す作業です。あるいは、ピュアリファイ、単離することです。エントロピーの上げ下げですけど、多くのシステムの根幹で、持続的な社会の基盤になります。何をやるにしても、こういう分離の話というのは大事だということで、基本の話だと思っています。
 あと、システムの話では、先ほど言いましたモビリティの話。System of Systemsの根幹をナノテクが支えています。あとは、水のシステムとか、書いていないですけど、農業とか、食とか、そういうシステム化のところをしっかり手を着けるべきであると思います。融合の傘のところがナノテク、競争力があるところに選択的にお金を投じていくのがナノテクなのではないかなと思います。
 もう一つ、研究開発の基盤ということ、これも横断です。計測基盤とか、研究開発基盤とか、あるいは、物質・材料の基盤、他の分野がしっかり使えるようなものを作っていくということです。物質・材料基盤とは、戦略的に革新材料を創出することを指しています。名前はさておきですが、ここに記したようなことをしっかり継続的にやっていかなければ、新しいものは出てこないということをやっていかなければいけないのではないかということだと思います。
これまでの施策として行われた元素戦略とか、空間空隙制御御とか、分子技術とか、本来は息長く行うべきものが、やってしまって終わりのような状態になっている。例えば、元素戦略も、施策の意義はレアメタルの代替に資するようなことだったんですけど、本来は、元素による機能創出、どうやって新しいものを作っていくかというような話でした。そういう根幹のところにフォーカスすると、まだまだ行うべきことは多く、成果も期待できると思います。逆に言うと、これから、この3つが大きく重要で本質をついており、次の新しいものはなかなかないなと、ずっと考えて参りました。継続的に、しっかり現況に即しながら、です。
 あとは最先端計測も、ナノテクノロジーと表裏一体なものです。しっかりやっていかなければいけないと考えています。
 あとは、微細加工です。トップダウンで行うMEMSとかNEMSとか、これは次の流れがもう来つつある、来ていますね。新しくしっかりこのエリアに施策を打っていくということが、産業競争力を向上させ、しっかりものを供給していくために必要です。あとは、ボトムアップの自己組織化、例えば、MOFとか、超分子の展開、いいところまで来ているけど、なかなか産業に行かないようなところ、本当に今後どうするんだと思います。我が国から出た秀でた研究成果も多いです。そういうものもしっかり展開させていかなければいけない。あとは、先進的な造形技術ですね。3Dプリントも我が国が最初だったのに、アメリカにしてやられたと理解しています。その先どうするかということも考えなければいけないです。次の手を打てているかどうか検討すべきと思います。
 あとは、研究推進の基盤。多分野を集わせ、そして、最先端の研究開発にいろいろな道具立てを供給するのは、ナノテクの役割だろうと思います。例えば、諸外国のIMECやMINATECなど、みんなが集う研究開発のプラットフォームでありながら、そこで、例えば、計測の技術も一緒に開発するようなこともやっている。こういう合わせ技みたいなことも考えていくべきではないでしょうか。あるいは、マテリアルズインフォマティクスに代表されるような材料と理論とシミュレーションの連携、それから、さらに新しいものを生み出していく流れというのも注視していくべきではないかなと思います。
 いろいろ申し上げました。先生方からの御注意も多くあるかと思いますが、こういう大きな流れの中で、我々が次に打つ手をこの場で考えたいというのが思いでございます。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【三島主査】  
  御説明ありがとうございました。大変多岐にわたる材料分野の俯瞰の前半と、それから、今後の推進に関する考察ということで、お考えを聞かせていただきました。
 それでは、先程の岡村参事官からのお話も含めまして、御質問、御意見等頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  
  こういうことにずっと関わってきた人間として、議論をしていただく前に、ちょっと私が感じていることを述べさせてください。
 私自身は、総合科学技術・イノベーション会議で、第5期の科学技術基本計画を作ってきましたし、それから、今、物材機構におりますので、実際の材料・ナノテク研究をやっている立場から、まずSociety5.0という概念を第5期で入れたと。それに対しては、今も御説明いただいたように、それは国として大きな方向性を決めましたので、これで進むということを決定したわけですね。これについては、我が国発の、我が国が出した概念として、実は、国際的に非常に認知度が高まっているんですね。御案内のようにというか、想像に難くなく、日本というのは、そういうコンセプトを出すのは非常に弱い国なんですが、珍しくというか、日本がそういうコンセプショナルな新しいことを出して、しかも、それがすごく良いという評判が国際的にすごく出てきておりまして。そういう意味では、大変良いポジショニングに今行ったということで、それで、そこについて、今の御議論が、そこをどういうふうに材料・ナノテクの分野で支えているかという話なので、それは大変いいことというか、ありがたいことなので、その観点から2点お話ししたいんです。
 まず1点目は、今のお話にあった、フィジカル空間と、サイバー空間と、それをつなぐという3つのレイヤーがあって、それぞれについて、何が大きくSociety5.0で違うかというと、ここから先は圧倒的に情報量が増えるという話なんですね。だから、今までもそういうつなぎはあったんだけど、これまでに比べて圧倒的に情報量が増える。だから、もちろん、つなぎのところのセンサであったり、アクチュエータであったり、その辺のところ、インターフェースのところは前と次元の違うレベルで増える。あるいは、情報処理をするサイバー空間の方でも、情報処理する方も、例えば、AIを支えるその頭脳のチップはどうあるべきかみたいなのは、多分、今までとは違った、半導体とは違った、そういうようなものが必要だろうという議論に持っていくとか、あるいは、フィジカル空間の方を支えるものについても、それがデータがデジタル化されて処理されていく、そういうものになっていく、それを支える技術としては、そういうふうに考えた形で、どういう材料なのかみたいな、こういうような観点で議論していくということで。そうすると、今、中山さんのお話にあったように、今まで、実は、ナノテク・材料でいろんなことをやってきているから、いろんな研究があって、たくさん紹介していただいて、日本もたくさんいいのを出していますよ、全くそのとおりなんですが、そこは、だから、そういう観点で、どんどん今のように圧倒的にデータが増えるという観点で攻めていけばいいと思うんですね。ですので、そこは、是非、国として大きなそういう方向性を出したので、これも、ここでの議論も、そこの3つのレイヤーに分けて、どういうことが重要なのかということを少し絞りながら、絞るというか、視点をある程度明確にしながら議論していただきたい。これが1点目です。
 2点目は、実は、ちょっとそれと違う、逆の視点なんですが、そうやって挙げていただいたのを見ると、例えば、中山さんに挙げていただいたのも、ほとんど電子材料なんですね。20年前にナノテクがすごく言われたとき、当然ながら電子材料、固体物理とか化学でも、電子材料を指向した研究がずっとされてきて、その方が学問として新しい学問がバックにあるから、すごく展開したようなんですが。実は最近、それに対して、反省とは言わないんですけれども、今、大きな潮流があるのは、構造材料が極めて重要だよという。これは三島主査の専門でありますけれども、構造材料が極めて重要で、しかも、ナノテクの知識を入れたことによって、構造材料が格段に進んだ部分もあるんですね。それは実は産業としても大きいし、エネルギーなんかの問題でも、省エネ材料とかに対して極めて大きな効果を示していて、今後もそこはものすごく重要だという認識がされているんですね。しかも、もっと重要なのは、そこの分野というのは、できる国がもう3つぐらいしかなくて、アメリカとドイツと日本ぐらいしかないというふうに。ナショナルセキュリティの問題とか、いろんなことがあるんですけれども、そういうようなことが世界で言われているんですね。実は、つい先週も、私、ある世界のトップのそういう企業の方と話したんですけど、彼らが言ったのは、日本はそこが圧倒的に強いのに、非常に損をしていると。技術は強いけど、生産の部分は全部持っていかれているとか、非常に戦略的に弱いということを言われていてですね。だから、ここの議論も、やはり構造材料の話が抜けているんですよね。構造材料、例えば、耐熱材料、三島先生の御専門でありますけど、耐熱材料というのは、省エネ等々に対して極めて大きな効果があり、しかも、戦略的にも極めて重要な分野であって。ただし、学問としてどれだけ新しいことがそこに入ってくるかというところが多分弱いんですよね。だから、文科省での議論では、どうしても後ろに持っていかれるんですよね。しかし、私、NIMSにいて分かったんですけど、構造材料って、ナノテクを入れることによって、ものすごく進展していますよね。そういう話が、こういうところに全然出てこないんですよね。なので、構造材料に対して、我が国は非常に強いポジショニングが今あり、しかも、今後もあるはずなんですけれども、そこに手を入れないと、ものすごく落ち込んでいく可能性があるんですね。そこは、Society5.0になっても、フィジカル空間をしっかり支えるところには、必ずそこは残ってきますので、その視点を入れないと、ついつい我々は、私自身もそうですけど、電子材料の方にずっと行ってしまって、いわゆる格好いい材料の方をずっと行くんだけど、もっと泥臭い材料も極めて重要で、かつ、そこに新しい知識が有効に働いている、それが次のSociety5.0を支える非常に大きなパーツであるということは忘れないで是非議論していただきたいなと思います。
 以上です。

【三島主査】  
  ありがとうございます。重要な視点を頂きました。
 他にございますか。では、高梨さん。

【高梨委員】  
  今の構造材料の重要性というのは、蛇足になるのですけれど、私も非常にそれは賛同するところです。ただ、今、橋本先生おっしゃったように、今まで余り学問になりにくいというか、ちょっと泥臭い、はっきり申し上げて、三島先生が専門で申し訳ないのですが分野的に、サイテーションなどもなかなか取りにくいというような、そういうようなところもあったと思います。しかし、やはりそこら辺のところをきちんと考えて、日本の強いところというのは生かしていかなければいけないと思うんですね。
 そこで、何で泥臭いというか、そこのところを考えていくと、まさにマルチスケールというか、原子・分子のところをただ理解して、それで済むような話では決してなくて、それが本当にマクロなところに行くときに、これは構造材料だけではなくて、例えば、今の元素戦略の磁性材料なんかも、磁石なんかもまさにそういうところはあるわけですけれど、本当にアトムからマクロのところというのがちゃんとうまくつながっていかないといけないわけですが、なかなかそこら辺のところは本当に難しいので、もっとスマートな、原子・分子のところでもっと目を引くようなことをやっておしまいにしてしまうようなところがあったと思うので、そこが本当にマクロにつながる、まさにそこがナノテクノロジーの最も重要なところで、先ほど融合というような話がありましたけど、原子・分子からマクロへというところがやっぱりこれからは重要視すべきだということを非常に強く感じております。
 それで、中山さんのお話を聞いていて、融合ということで、ちょっと気になったんですが、ナノテクとか材料は全ての基本だと思うので、それで、私、8期もやらせていただいて、ちょっと感じているのですが、いろんな委員会が、ナノテク・材料だけじゃなくて、あるわけですが、この委員会の間のインタラクションというか、そこら辺はどうなんですかね。例えば、ライフサイエンス、環境・エネルギー、情報科学とか、量子科学もそうですし、全部にナノテク・材料は関わってくるので、そこら辺との間が、私はまだは余りよく存じ上げていないということかもしれませんけど、そういうところとの十分な意思疎通というか、一体化してうまくやっていかないといけない部分があるんじゃないかなというふうに感じています。
 以上です。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 今のところは、この委員会の上の委員会である研究計画・評価分科会、そこで各委員会の報告をし合っていくわけですけれども、やっぱりかなり縦割りになっているところがあって、今おっしゃられる、本当にどうやって連携するかというところは少し弱いかなというふうに思っております。それで、それぞれの委員会が今こうなっていますよというのを出して、それは聞くのだけれども、じゃ、それを相互に実際にはどういうふうに組むかというところまでなかなかいかないというところで、これも今回考えていく上で非常に重要なファクターになろうかと思います。
 どうぞ。

【中山委員】  
  先生方おっしゃっていただいた視点は非常に重要で、省内デマケって非常に危険なんですよね。ナノバイオだったらライフ課とか、IoTだったら情報参事官、エネルギーは環エネ課、研究プラットフォームとか計測だったら基盤課、光とか量子だったら量研室とか、みんなそういうところに散らばっているけど、今まで弱かったなと思うのは、総合性がなかなかなかったことで、力を合わせて競争力を高めていこうという方向性です。先ほども、評価はここをやりますよと言われたが、ここで評価をやっている以外のナノテク・材料の施策は非常に多いんですよね。例えば、JSTのCREST・さきがけが典型です。ここで評価しないからテーブルに乗らないけど、実際は、それを作るとき、推進しているとき、同じ土俵で議論しなければいけません。良かったものは、次続けなければいけないので、ここで考えるべきです。でないと弱くなってしまうので、変えていくべきではないかなと思います。
 あと、そういう他の施策との連携とか、他府省との連携ですよね。内閣府さんをはじめ経済産業省さんからのインプットも頂かないと、文科省の施策は決められないと思いますし、JSTのことを考えるのに、NEDOさんも、TSCやナノ部さんのパースペクティブも当然欲しいです。にここにインプットしていけないかなと思います。その中で、総合的に考えて、これが大事だよという戦略を練る場にできたらなと強く思います。

【三島主査】  
  そうですね。
 岡村参事官、どうぞ。

【岡村参事官】  
  御指摘ありがとうございます。
 委員会の連携につきましては、第8期の最後の最後でも、たしか栗原先生から御指摘を頂いて、材料については、ライフサイエンスのところにも非常に重要なのに、何で何の記載もないのという御指摘を頂きました。そこで、担当課と相談をし、そして、ライフの委員会の方も、ナノ材委員会の先生方の御指摘をきちんと踏まえてくださいまして、向こうの政策にこちらの8期の先生方の御意向がきちんと入ったと、こういう実績もございます。
 それから、過去において申し上げますならば、実は私、十数年前に、このナノ材料を卒業して数年後に環境の担当になりました。今でいう環境・エネルギーでございます。そのときに、環境・エネルギーは、当時、地球観測衛星とかが主で、電池とか、そういう環境に資する材料が作れないのはおかしいなと。かといって、物質・材料の方では、当時は余り環境に資する材料をやっていなかったので、新たに環境とナノ材料委員会の共同のワーキンググループというのを設置いたしました。その結果が、ALCAですとか、この委員会では電池のプロジェクトが共同の問題意識でもって作られたという実績もございます。
 要するに、やれば何でもできるのでございまして、私ども、先生方のこういう御意見、もう本当に心から理解をいたしまして、関係課とは、全然壁もないので、そういうところともやってまいりたいと思います。実績としても、必要性があれば、ワーキンググループだって作れると。こういうこともございますので、どしどし御意見を賜れれば実行してまいります。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 中山委員からのお話にあった、いわゆる融合とかシステム化というところへ、そういう形のつながりを具体化していく一つのやり方かなと思います。
 他にも、委員の方から。まず上杉委員から。

【上杉委員】  
  いろんな言いたいことがあるんですけれども、2つに絞って話させていただきます。思ったことを言わせていただきます。
 1つ思いましたのは、ナノテク(という用語)についてです。実は、それはサイズの話ではなくて、新しい考え方とか、パラダイムシフトを起こしますよということでしたよね。ということで、もうナノテクという名前が、この会議では違うことを表わしていませんか、というのを思いました。中山さんは、実はナノテクの本質は融合であると。でも、それはナノテクというのと乖離した言葉ではありませんか、というふうに思いました。ですから、恐らく岡村さんが責任を取って、いろんなことを考える会だと僕は理解しております。
 それが1つで、もう一つは、ここで何か新しいことを考えなければいけない。キーワードといいますか。物質の基礎学問は非常に大切なんですけれども、大切だというのがよく分かるような言い方を皆さんで思いつく会だと私は認識しております。それで、玉尾先生が先導して思いつかれた元素戦略というのは、非常にうまくいった例だと私は理解しています。何か思いついて、それは本当に今やらなくてはいけないことなんですかと言われることもあると思うんです。でも、元素戦略の場合には、確かに今やらないと困ったことになるのではないかというイメージはあったと思います。レアメタルが入ってこない国だし、モノがないので、それを何とかしなければいけない、急がなければならない、この国でやるべきだ、納得できるというふうに思われたんだろうと思います。ですから、優れたものだと思う。だから、そういうのを思いつかなければいけないんじゃないかなと思ったんです。中山さんの話では、米国とのキャッチボールと言われました。(元素戦略を)受けて、クリティカルマテリアルと言われたんですよね。これって、元素戦略をまねたというか、投げて受けた。僕は、別に受けなくても、投げるだけでもいいと思うんですけれども。いろんなこうやって投げられるものがあって、他の国がそれをやるべきだなと思うようなもの、そういうのをうまいこと考えられたらなと思うんですね。できれば、元素戦略というのがそのまま英語になって、ゲンソセンリャクというのが英語になったらいいと思う。シンカンセンとキモノみたいになればいいと思うんですけれども。
 この2つを私は思いました。議論の参考にしていただきたいと思います。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 中山さん、何かコメントございますか。

【中山委員】  
  いえ、結構です。

【三島主査】  
  いいですか。
 それでは、続いて、加藤先生。

【加藤委員】  
  今のお話は、まずは、ナノテクノロジーが何かということだと思います。さらに、融合に対して、今、いろいろ意見がありましたが、結局、学問か、社会の問題を解決するための手法かということがあります。また、学問としては、今、ナノテクというのは、統合された教科書がありません。だから、中山さんは、融合して統合していこうと言われたのですね。どこの国もやっていないんです。もう分野が細分化されていると。そこをやろうという意味だと思います。さらに、ナノテクのいいところは、ただの学問ではなく、問題を解決する、社会に貢献するという視点が非常に強いということです。したがって、ナノテクの融合ということと、ナノテクの持つ、そういった問題解決の力というのをうまく組み合せて、新しいナノテクというのが創られていくと考えています。
 それから、橋本先生が言われた、今まで電子材料に偏っていたという話ですが、実際、エレクトロニクスの社会で、今、世界の人類が暮らしています。みんな、パソコンなどがないともう生きていけなくなっているし、情報もそうですね。しかし、電子材料だけじゃないよ。構造材料もあるよと。これは全く同感であります。
 さらには、非電子材料という視点がもう一つ必要だと思います。それは何かというと、例えば、電子でもない構造でもない材料という、新しい3本目の柱があると私は考えています。例えば、中山さんのお話の中で、分離技術なんていうのがありましたけど、膜などは、電子でもないし、構造材料でもないんですね。非電子の機能材料です。こういったものもナノテクとして、しかも、社会の役に立ちますしSociety5.0にも貢献できます。、電子過程を経なくても機能を出せるし、いろんなことができる機能材料があるわけです。
 そういったものを統合して、電子材料、構造材料、非電子の機能材料としたときに、そこに何を横串として通すかというと、やはりそこには共通するものがあります。どれも原子・分子からできているので、そこをどうテクノロジー、学問として扱うことができます。さらに例えば、界面であるとか、今少し話が出ましたけど、階層構造であるとか、材料の融合に関係する部分があると思います。例えば、構造材料でも、高分子材料と金属材料と複合材料が、やはり別々に発展してきたりしているわけです。ですから、そういったことを踏まえて、どのようにそれぞれの要素を考えつつ、統合・融合して新しいところへ展開していくかというのが、これからの基本になっていくのではないでしょうか。そういうことが、例えば、これからの人類の問題を解決することや、施策であるSociety5.0に貢献していくと考えます。すなわち要素で考えて、どうやって要素を組み合わせて、融合して、何を新しく生み出していくか、そういったことが重要なのではないかと思っています。
 以上です。

【三島主査】  
  ありがとうございます。瀬戸山委員。

【瀬戸山委員】  
  ちょっと視点を変えて、企業の内部留保というものが、今、日本はすごく増えていますよね。これ、なぜかということを考えたことがありますか。会社の上の方でいろいろ話をすると、言われるのは、日本の技術が差異化できていないんですよ。何か新しい投資をやるときに、怖くてできない。この程度のものであれば、まねられちゃうという、すごく危機感があって、だったら、本当に日本として世界の中で勝っていけるようなものという視点がなければ投資ってできないんですよ。だから、すぐ韓国、台湾、中国にコピーされてしまうようなものであれば、最先端ナノテクであっても、それは投資にならない。
 そういう視点があるんで、ナノテクということを考えたときに、ナノテクノロジーと理解しますけれども、まず最初にはナノサイエンスだと思うんですね。ナノサイエンスの段階で、少なくとも世界に勝っていけるものを、テクノロジーに落とし込んで、それで世界の中でどうやっていくかという戦略がやっぱり必要。これまでやってきているナノサイエンスというのは、僕は結構いいことをやってきていると思うんですよ。ところが、その中で、これではどうやって勝つのか。日本って、それで差異化できるのかという視点で絞り込んで、さっき構造材料の話がありましたけれども、この領域であれば世界の中でやっていけるよねということを多分アサインする必要がある、抽出する必要がある。そういう中で、これだったら世界の中で勝っていけるし、日本が豊かになる。
 超スマート社会という言い方をされるけれども、あれは僕から見たら、かなり内向きな言い方で、あれ、基本的にサービス業に近いですよ。サービス業に近いということは、あれ、お金を吐き出すんですね。じゃ、その吐き出すお金というのは、皆さんの懐が豊かになっていないと、財布の中は空っぽなんですよ。なので、少なくとも財布が豊かになるような経済政策につながるようなものでなければ、ああいう超スマート社会というのは内側しか向かない。なので、マーケットというのは世界にあるんで、その中で、日本でどんなふうな産業をつくっていけばいいか。そのためのテクノロジーはあるのか。そのテクノロジーを支える前のサイエンスとして、どれだけいいものができるかという視点でやっぱりやっていく。これまであるものは結構いいんで、そこの中から何が残るのかというような視点で見るのも1つのやり方ではないのかなと思います。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 他に意見。栗原先生。

【栗原委員】  
  ほかの委員の方々と視点は同じだと思うんですけれども、ナノテクノロジーとかナノサイエンスから従来技術を見直し、新たな技術体系をつくるという、そこに戻ることは非常に大事だと思います。そのときに、ナノサイエンスとかナノテクノロジーとかは教科書がないと言われますが、ずっとスケールをダウンすると、かなり共通のコンセプトがあるよねというのが今までの理解だと思うので、その部分は継続して深めていくということが大事だと思います。せっかくの今までの積み上げに対して、今回、Society5.0に対して、needs-drivenで、もう一度従来からあるいい要素を組み換えるとか、もう少し深めるとかです。中山さんがまさに言われた、最初の頃のバーチャルラボというのは、かなりSociety的なものが冠に付いてテーマを分割していたものなのだけれども、そのときには、まだナノサイエンス、ナノテクノロジーを本当に作るという段階だったので、そこのゴールにはなかなか行かなかったし、needs-drivenまで行かなかったんだと思うのです。今は、課題をもう少しブレークダウンして、新しく技術を見直す、システムを見直すということができるようになってきているので、幾つか、そういう例示をやっていって、きちっと要素を見直して組み上げていくとか――組み上げていくんだとseeds-drivenになるから、やっぱりもうちょっとneeds-drivenということをSocietyのためにやるということを真剣に見直して、日本の中にあるいいものを組み上げて、新しい技術体系をつくるというところに持っていくということもあるでしょうし、それと同時に、基盤であるということを、重点領域から外れても、重点分野ということはもう当然なので、やっぱりそれをたゆむことなく深めていったり、高度化していくということも大事だと思いますので、両面からいいものが出ていくようにということだというふうに理解しています。

【三島主査】  
  ありがとうございます。

【栗原委員】  
  すみません。ただ、施策としては、やはりシャープな方がいいから、あんまりたゆみなくと言うだけでなく、せっかく橋本先生の言われたSociety5.0を1つのキーワードにしてということだと思います。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 他に。それでは、馬場先生。

【馬場委員】  
  私、2つだけ意見を言わせていただきたいと思います。
 1つは、今日、岡村参事官も、中山さんも、融合化・統合というところが今後の非常に重要な課題だということで、ナノテクノロジー・材料分野は随分前からそういうことがずっと言われてきたと思うんですが、例えば、私自身の経験でも、ナノテク・材料とライフ・バイオを何とか融合させようということで研究開発を進めてまいりましたけれども、橋本先生はじめ、内閣府の方からSociety5.0という概念が出てきて、もう一度考え直しますと、まさに先ほど橋本先生言われたとおりなんですが、これまでの2つの分野の融合の目標値だと、Society5.0を実現できないんですね。例えば、非常に卑近な例ですと、バイオセンサを作るときに、今まで我々がやってきた性能だと、先ほど言われたように、圧倒的な情報量の増加ということに全く対応できないんですね。それをやるには、もう多分2つの領域では全然だめで、3つとか、4つとか、そういう領域を融合するような施策というのがひとつ非常に重要になってくるのではないかなと考えています。
 もう一つは、ただ、今も中山さんも指摘されていましたように、2つの領域でも融合するのはなかなか大変なのに、これを更に離れた分野を融合するために、どういう施策が必要かということが少し議論として重要なのかなと。
 それから、この委員会で議論すべきことかどうか分からないんですが、我々の大学でも、こういう新しい領域に向けて、人をどう育てるかというのは、いつも大学でも議論していますし、それから、企業や経団連の方からもいろんな意見を頂きますけれども、これまでいろんな大学で融合領域を盛んにしようというので、融合領域の人を育ててきたつもりなんですが、そうすると、今度は企業から、根本的なディシプリンが理解されていないという指摘も受けて、それをどう両立させるかってなかなかいつも難しいなと考えていまして、そういう人たちがきっと将来的にこういう分野を担う人たちになっていくと思いますので、ここで教育のことを議論するのがいいのかどうかちょっと分かりませんけれども、そういう人材育成という観点からも、2つ以上の領域、あるいは、複数の領域を融合するときに、どんな試作を打っていくのが一番いいのかというのが、今後、先生方と議論させていただければと思います。
 以上でございます。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 人材育成のところも、私も非常に重要だろうなと思います。
 それから、どうぞ、林委員。

【林委員】  
  2点ほど意見を述べさせていただきます。
 まず1点目は、今、文部科学省さんでやってこられた研究成果というものを、いろいろなスキームの中で企業と組んで出口につなげるという施策も打たれておられる中で、一方で、経済産業省がやってきている施策の中でも、文部科学省の方で出てきた成果というのを受け取りながら出口につなげていくということを併せてやっていけているのではないかなと。ただ、私、NEDOなので、政策の話を申し上げる立場ではないのですけれども、こういう議論をしている段階から、全体で出口につなげていくために、各省で、日本全体でどういうところをどういう形で手当てしていくかということは、一緒に議論をしていった方がいいのではないかなというのが1点目でございます。
 2点目ですけれども、いろいろな研究開発をやっている中で、先ほど中山委員の資料の中にも、研究開発基盤というところをきちっとやっていくべきではないかというような御意見ございました。私たち、NEDOがやってきた事業の中でも、10年前、15年前にやっていた事業の事後評価の報告書などを見ていますと、非常に先進的なことに取り組んでいるけれども、ちょっと早すぎたねというようなコメントを頂くことがある事業がございました。ですので、これまで取り組まれてきたものの中からも、重要なもの、これからの技術にとって必要なものというものを是非抱き起こしていっていただきたい。文部科学省さんの方では、人材育成であるとか基礎基盤というところは徹底的にやることができる省だと思いますので、研究開発の基盤という部分は、昔のものを抱き起こしながら、徹底的にやっていただけたらいいのではないかなと思っております。
 以上です。

【三島主査】  
  どうもありがとうございました。
 前田委員、どうぞ。

【前田委員】  
  ありがとうございます。
 細かくまとめていただきまして、ありがとうございます。このナノテクの分野というのは、一番産業界に近い学問というか、産業界の方の目線で、どう使うかというところが非常に重要になってくると思いますので、やはり皆さんもおっしゃっています様に、人材育成のときに、産業界の方の目線で、どのような分野の基礎研究に力を入れてもらう事が何に使えるのかと見据えて教育して頂き、上手に産学連携を活用して頂きたいと思っています。
 また、すごく沢山書いて頂き総花的であるような気がします。選択と集中と言ったら申し訳ないのでが、日本はどこに力をもっと入れたらいいのか、日本が勝てる分野、勝てる部分はどこなのかというところを、もう少し濃淡を付けてもいいのかなというふうに感じました。とても色々な分野に活用できるのは良く判るのですが、どこに日本は特に力を入れたいのかというのが、判らないかなと思っています。書きぶりは難しいのだと思うのですけれど、そのような目線で資料が作れたらというふうにも感じております。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 ほかに、よろしければですね。じゃ、まず菅野委員。

【菅野委員】  
  少し消化不良を起こしていますけれども、1点意見を述べさせていただきます。
 製造というのが1点中にありましたけれども、基本的に材料のサイエンスの部分、それから、産業として製品として出す、そこのキャッチボールを、いかに製造というところを通じて行うかというのが極めて重要なのかなと。産業側からすると、どういうネタがあるか、きちんとしたのを出してくれ、サイエンスの側からすると、これはいいのに産業側でピックアップしてくれない、そこのギャップは非常に大きいと思います。そこが、製造ということを通じて図ってほしいということになるんでしょうけれども、キャッチボールが必要である。先ほど橋本先生から構造材料の話がありましたけれども、要するに、金属の分野というのは、産業として非常に大きくなっている。それがもう一回サイエンスの方に戻っていく。サイエンスとして今出しているものが、製造を通じて産業になる。結局、逆の方向なんですけれども、そこで見る視点というのは同じであると。だから、そこのキャッチボールをいかにうまくするかというのが大変重要であるというように思います。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 武田委員。

【武田委員】  
  武田と申します。
 今、先生方、御議論いただきましたように、融合というのは、本当にいろんなレイヤーで重要であると日々実感しているのですが、技術の融合はもちろん重要ですし、今、御議論あったように、オープンイノベーションでも、産業界と大学がどう共に進めていくかというのは非常に重要で、私も実際オープンイノベーションで進めている立場として、企業も大学の中にラボを作ったりとか、そういう動きは出ておりますが、逆に、アカデミアの方も産業界に入ってくるというような、そちらのベクトルもやはり重要で、クロスアポイントメントなどの制度はあるのですが、まだ十分にできていないと思っています。名前はあって、そういうポジションにおられる先生方も多いのですが、そのあたりの人材的な融合。
 あと、戦略としては、これももう御議論あったことですけれども、technology-orientedで、テクノロジーを高めるというのはやはり重要で、それとともに、vision-drivenで、ヴィジョン側に立つ側と、その両者の融合で、その接点がやはり重要。その接点で一番高いところに持っていけるのは何か、日本で、その接点で一番強く行けるところって、やっぱりそういうところは何かとかというのをよく議論していくのが大事かなと感じておりますので、是非、今後、議論をお願いしたいと思います。

【三島主査】  
  どうもありがとうございます。
 それから、湯浅委員、どうぞ。

【湯浅委員】  
  先ほどの中山さんのお話の中で、日本は流行ばかり追わずに、逆張りの戦略も重要であるとおっしゃっていて、私もそのとおりだと思います。特に、私も経産省の人間ですが、経産省としては、なかなか技術の受け取り手が国内産業にないと研究開発投資ができないという事情がありますので、むしろこういう逆張りの投資ができるのは文科省しかないと思っておりますので、是非とも、文科省として、こういう、今はなかなか低調な産業界でも、そこを復活させるような逆張りの戦略を積極的に行っていただきたいなと思っています。

【三島主査】  
  ありがとうございます。
 他にありますか。それでは、吉江委員、どうぞ。

【吉江委員】  
  短く2つほど。
 1つは、今も出ておりますけれども、一度使ってしまったキーワードは使いにくいというようなお話が出ておりましたけれども、やはり文科省というのは、長期的な戦略に立った視点というのを、サイエンスを充実させるというのがミッションだと思いますので、是非とも、サイエンスとしてやってきたものが花開いたのだから、もう一回使う、堂々と、これこそうちの成果であるというふうに使えるような雰囲気というのをつくるのが大事なのではないかなと感じました。
 もう一つは、この会議のミッションではないかもしれないんですけれども、高校の化学の先生なんかとお話ししていると、ナノテクノロジーというのは物理じゃないか、そういうイメージが強いとおっしゃっていて、別にナノテクは化学だから物理じゃないでしょうと言うつもりは全くないんですけれども、もう少しいろんな分野が寄与してでき上がっている領域であるというようなことを上手に広報していくようなことも必要なのではないかなと感じております。
 以上です。

【三島主査】  
  それでは、萬委員、どうぞ。

【萬委員】  
  ナノテクというのは、新しい機能を発現してきた歴史というのがあって、そこが大きな魅力だとまずは思います。産業的に見たときに、その機能更新だけで本当に産業になっていくのであれば、それはいいですし、そういうものもたくさんあるだろうと思います。ただ、より広げるのだとすれば、やはり先ほど中山さんから出てきた融合、異分野との融合とか、全く違ったところとの組合せまで見渡すことが必要だと思いました。
 CPS(Cyber Phisical System)というのがSociety5.0のキーコンポーネントなんだと思いますけれど、CとPの融合であり、Pをナノテクで価値を高めるということだと基本的には考えています。しかし、C側がこのような新たな価値を活用してくれるかどうか、時間感覚の違いなどもあり簡単ではないでしょう。ですので、融合を試みるとしても、戦略的な融合をしっかり考えていかないと、たくさん良い機能があるのに取り残されてしまうということにならないかという懸念があります。そのような融合戦略の観点も議論されると良いと思いました。
 以上です。

【三島主査】  
  どうもありがとうございます。
 では、今まで出た御意見に対して、中山委員、何かコメントがありましたら。

【中山委員】  
  まとめてということではないですが、岡村さんの御説明で最後に言われた、第6期に向けて歩み出すなら今だという大きなメッセージがございました。そのためには、研究コミュニティが一丸となってというか、みんなやりたいことがたくさんあって、その中でどうやって戦略をもってやっていくんだというような大きな流れって必要だと思うんですよね。
 例えば、三島先生が御苦労されてきた材料戦略委員会というところとか、化学連合とか、物理系の学協会とか、あるいは、NBCIとか、JACIとか、みんないろんなことを考えているところはばらばらあるんですけど、そういうところの声もなかなか届いていません。あるいは、もしかしたら声をあげるのを止めているのかもしれませんが。そのようなところの声をここに渦巻くようにできないか。その中で連携とか、融合とか、あるいは、先鋭化してやっていくところとか、みんなでが当事者として考えていくような流れが第6期につながると思います。多分、その仕掛けのタイミングが今なんじゃないかなと。あと2年ぐらい経って、その場にあるものだけを集めてぽんと出す第6期基本計画には絶対ならないようにしたいなというのは、岡村さんの先ほどのメッセージで強く感じたところでございます。
 あと、先生方のコメント頂きまして、ありがとうございます。先生方と一緒に苦労させていただければと思います。

【三島主査】  
  そうですね。
 大変いい御意見をたくさん頂けたと思います。この第9期のナノテクノロジー・材料科学委員会をどういうふうに進めていくかという多くの示唆を頂いたかと思いますので、ありがとうございました。
 それで、今後の進め方につきまして、1つ、事務局の方から。

【橋本委員】  す
  みません、1点だけ、もう一つ問題点、さっき言おうと思って、忘れていたものですから。
 大変重要なのは、今も議論ありましたけど、たくさんあるから、やっぱり選択と集中が重要だ。全くそのとおりですよね。一方で、選択と集中ばっかりし過ぎているからだめだという非常に大きな議論もありますね。両方正しいんですね。両方正しいんです。これをどのように両立させるかというか、どのように配分していくのかという、配分の問題だと思うんですね。ここは、是非、ナノテク分野においても、そこの部分は正面から取り上げた方がいいと思うんです。
 両方が選択と集中が重要だ。こっちは選択と集中ばっかりしているから、だから、論文が薄くなっているんだって、今、両方が言い合っている状態なんですよ。両方とも正しいので、でも、両方は追えないので、そうすると、どのような配分でやるべきなのかという、こういう政策決定なんだと思うんですね。それをやるのは、やはりこういうところで、第一線で研究をやっている先生方、両方やっている先生方の意見を聞きながら、政策判断を文科省が行うということだと思いますので、是非、それは正面から取り上げていただきたいと思います。

【三島主査】  
  分かりました。ありがとうございます。
 それでは、当面の審議事項、それから、これからの事業評価の計画のスケジュール等々、尾西さんから御説明いただきたいと思います。資料3-1から3-3でございます。

【尾西補佐】  
  それでは、まず資料3-1を用いまして御説明させていただきます。
 まず1ポツとしまして、文部科学省における本分野の研究開発の評価につきましてですけれども、平成30年度の新規・拡充事業の事前評価をさせていただく。また、ナノテクノロジープラットフォーム事業の中間評価をさせていただく。そして、これは栗原先生も代表研究者の一人としてやっていただいた東北発素材技術先導プロジェクトの事後評価。そして、これは翌年度の平成30年度になりますけれども、元素戦略プロジェクトの中間評価を予定させていただいております。
 また、先ほど先生方から非常に活発に御意見を頂き、コメントも頂きましたけれども、今後のナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略の検討をやっていきたいと思っていまして、これによって、第5期基本計画によって掲げられたSociety5.0の実現に向けたもの、また、更なる未来社会の実現に向けた今後の研究開発戦略を議論していきたいと考えているところでございます。
 そういった大きな二本柱を掲げまして、本委員会で御議論いただければと思っております。当面の審議スケジュールといたしましては、本日が第1回でございますけれども、下のところに書いてありますが、第2回は6月頃を予定しておりまして、今後のナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略を検討、そして、第3回、これは概算要求前になると思いますけれども、7月~8月上旬にかけまして、今後の同じく検討、及び平成30年度の新規・拡充事業の事前評価、また、ナノテクノロジープラットフォーム事業の中間評価を予定しておるところでございます。
 各々の研究開発計画につきましては、次の3-2-1の資料になりますけれども、こちらに、どういった評価をどういった形でやるのか、評価の目的でありますとか、対象の課題でありますとか、評価の方法、また、留意事項につきまして記載させていただいている細かい資料になってございますけれども、こういった形でやらせていただこうと思っております。
 時間も限られていますので、簡単に申し上げますけれども、評価の目的といたしましては、必要性、有効性、効率性の観点から評価を行いまして、その推進、修正等を行うという形、また、継続課題、つまり、中間評価等の課題につきましては、進捗状況を評価しながら、効果的な実施の観点から研究内容の見直し等の提言を行っていただきたいと考えているところでございます。そういった形で、こちらの評価を進めていければと考えているところでございます。
 スケジュールにつきましては、資料3-2-2になりますけれども、こちらの方で、今、どういった事業が我々のところで動いておって、それの平成29年度はどういった状況の評価をするかでございますけれども、こちらのポンチ絵に、赤色で塗色しております2017(平成29年度)のところでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、東北発素材技術先導プロジェクトの事後評価、また、ナノテクノロジープラットフォーム事業の中間評価を予定しているところでございます。また、具体的に事前評価は本委員会で、また、中間評価、事後評価という形でなりますと、また評価委員会というのを別途設けさせていただきまして、それに基づいて、またこちらの方にフィードバックして、御議論を頂ければと考えているところでございます。
 そして、最後、資料3-3のナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会の設置についてでございますけれども、先ほど中山委員から、今の現状、また、今後の推進に関する考察のお話を頂き、また、多くの委員の先生方から非常に重要なコメントも頂きました。そういったことを踏まえまして、本委員会だけではなくて、機動的に審議を実施するため、先ほど作業部会の設置に関する運営要領等がございましたけれども、それを活用させていただきまして、設置の目的といたしまして、先ほど参事官の岡村からも説明させていただきましたけれども、今の我々のナノテクノロジー・材料科学技術分野の位置付けを踏まえまして、Society5.0や更なる未来社会の実現に向けまして、当該分野、つまり、本ナノテクノロジー・材料科学技術分野の現状や今後の進むべき方向性等について整理・検討を行うための作業部会を本委員会の下に設置させていただきたいと考えているところでございます。
 そこで、2ポツ目になりますけれども、主な審議事項といたしまして、ナノテクノロジー・材料分野の現状把握や整理をし、そして、今後のナノテク・材料分野の意義・役割及び推進すべき具体的な研究開発について検討させていただきたいと考えているところでございます。
 そういった形で進めさせていただきまして、3ポツの当面の予定としまして、この審議の事項につきまして、半年以内を目途に、論点整理をやらせていただきたいと考えているところでございます。
 簡単でございますが、説明は以上でございます。

【三島主査】  
  それでは、ただいま資料3-1から3-3まで、まずこの委員会でどういう事項を審議していくかということが3-1でございまして、3-2が、評価に関する方法と手順、それから、今年度どういう項目についての評価があるかということ、それから、資料3-3でございますが、この委員会の作業部会を作って、検討していただきながら、またここで議論を進めていくという方法について御説明がございました。これにつきまして、何か御質問がございましたらと思いますが。
 それから、今の作業部会を設置するということでございますが、これは運営規則で、作業部会を置くことができるということになっておりますが、設置を御承認いただけるかということでございますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【三島主査】  
  そうしますと、作業部会を設置いたしますが、この委員でございますが、これはナノテクノロジー・材料科学技術委員会の運営規則(第2条第2項)で、主査に一任ということになっておりますので、私が早急にメンバーを決めたいと思います。
 そして、この作業部会は、当委員会からも数名の方には委員になっていただくことになるかと思いますが、委員とならない場合でも、御希望がございましたらオブザーバー参加も可能でございますので、事務局から事前に御案内を差し上げますので、御希望を出していただければと思います。
 それでは、ここまで、今の3-1から3-3までと、それから、作業部会につきまして、何か御質問、御意見がございましたら、どうぞ。高梨委員、どうぞ。

【高梨委員】  
  大したことではないのですけど。スケジュール、なるべく早目に決めていただけると。日程、まだ6月のも決まっていないですよね。なるべく早く。その方が、日程調整もこちらも。三島先生お忙しいから、なかなかそれは大変なのかと思いますが、ちょっとお願いで、よろしくお願いします。

【三島主査】  
  分かりました。では、早急に日程調整に入らせていただきます。
 どうぞ。

【中山委員】  
  先ほど評価のスケジュールに関して記載がございましたけど、要望と言ってはなんですけど、今までの経験上、評価が評価で終わっているというか、評価してプロジェクトが終わって、いい評価でよかったね、計評分科会に報告して終わりみたいな感じでした。たぶん、ここで時間を割く意義というのは、評価を受けて何を作っていくか、これを参考に、これを反省に、あるいは、良かったことはどうやって繋げていこうとか、そういう議論だと思うんです。そういうことを話し合えるような時間を、評価のときに取って頂きたいです。そして、戦略のポートフォリオにインプットしていく。常に次を見るような、そういうたてつけにしていただけるというのが大きな望みです。評価が、評価だけで終わらずに、先ほど言った違う施策のものもしっかりこの場にインプットして、この場の総合性と求心力のようなものをしっかり担保していただければなと思います。よろしくお願いします。

【三島主査】  
  ありがとうございます。

【岡村参事官】  
  特に事後評価、これの活用で、次の政策につなげていくということ、心して取り組みたいと思います。ありがとうございます。

【三島主査】  
  それでは、他、よろしいでしょうか。
 それでは、もう一つあります。その他、田村係長から、事務連絡が幾つかあるかと思います。よろしくお願いいたします。

【田村係長】  
  第2回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、高梨委員からも御指摘ありましたが、早急に日程を調整して、できるだけ早目に決めたいと思います。
 一方で、先ほどの資料3-1で御説明させていただきましたスケジュールでは6月と書いてありましたが、作業部会の進捗の状況によって、このスケジュールが多少前後するということもあり得るということをあらかじめ御承知おきいただければと思っております。
 また、議事録と資料につきましては、事務局で案を作成しまして、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開させていただきます。
 本日の資料につきましては、封筒にお名前を書いて机上に置いていただければ、後日、事務局から郵送いたします。
 以上でございます。

【三島主査】  
  よろしいでしょうか。それでは、本日の委員会、以上とさせていただきます。御協力、どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)