第8期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年8月19日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館15F特別会議室

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策等について
  2. 研究開発課題の事前評価について(非公開)
  3. その他

4.議事録

【三島主査】
  皆様、こんにちは。定刻になりましたので、ただいまから第3回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催いたします。御多忙のところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
  本日は、今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野の方向性等について、各委員等からのプレゼンもありますので、積極的に御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  それでは、早速ですが、事務局から委員の出欠及び配付資料の確認をお願いしたいと思います。吉元係長、よろしくお願いいたします。

【吉元係長】
  事務局です。おはようございます。本日、19名御出席いただいていまして、北川委員、御手洗委員は御欠席です。
  配付資料の確認です。資料1-1として、「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策等について」、資料1-2-1として、予定表、今後の予定について、資料1-2-2として「科学技術に関する論点」、資料1-3として、射場委員の発表資料、資料2-1として、NIMSのプレゼン資料、資料2-2として、常行委員の発表資料。それから、議事3は非公開になりますが、委員の皆様方には、資料3-1として、施策ロードマップと事前評価票を配付しております。
  それから、人事異動がありまして、研究振興局の体制が変わっております。御紹介申し上げます。8月4日付で新たに研究振興局長として小松が、審議官として生川が、参事官として西條が、担当の補佐として、7月1日付ですが、尾西が着任しております。また、本日、科政局の岸本次長にも御出席いただいております。
  以上です。

【三島主査】
  それでは、開会に当たりまして、研究振興局、小松局長から御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願い申し上げます。

【小松局長】
  皆様、おはようございます。本日はお忙しいところ、また、まだまだ暑い中、この委員会にお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
  私、先ほど紹介がありましたように、8月4日付で研究振興局長に着任いたしました小松弥生と申します。前職は独立行政法人国立美術館におりまして、国立美術館から来たと言うと、皆さんにがっかりされるんですけど、頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  ナノテクノロジー・材料科学につきましては、「科学技術イノベーション総合戦略2015」におきましても、また、5月に総合科学技術・イノベーション会議の方で中間取りまとめがなされました第5期の科学技術基本計画に向けても、今後の新たな産業展開に向けて非常に大事な分野であるということで、国を挙げて取り組んでいくべき分野というふうに位置付けられております。特に、人工知能技術の急発展とか、また情報科学技術が予想もできないようなスピードで発展する中で、この分野におきましてもデータをうまく活用した材料開発、それからIoT社会などの未来社会を見据えた材料開発を推進していくことが求められているというふうに認識しております。
  また、そういうふうに非常に未来的には明るいんですけれども、一方で、8月5日にNISTEPから公表されました科学技術のいろいろな指標を見ておりますと、全体の論文数、それから被引用数におきまして、全ての分野で日本の位置が下がっていて、国際的に強いと言われているナノテク・材料科学の分野においても順位が下がっているということは非常に残念なことだと思っています。もちろん、論文のデータだけでいろいろなことが決められるわけではないと思いますけれども、出口を見据えると同時に、基礎的な部分もしっかりとやっていかないといけないのではないかなと思っております。
  本日の会議では、今後のナノテク・材料科学の方向性についていろいろ御議論を頂くというふうに聞いております。先生方におかれましては、忌憚のない御意見をくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

【三島主査】
  小松局長、どうもありがとうございました。
  それでは、議題次第、議題表を見ていただきまして、早速、議題(1)ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策等についてということに入りたいと思いますが、議題表にありますように2点です。初めがナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策ということですが、これは前期に作っていただいた研究開発方策に関してのその後のことですので、まずは事務局から御説明を頂きたいと思います。尾西さん、よろしくお願いいたします。

【尾西補佐】
  おはようございます。それでは、資料1-1、ツーアップの資料になっているものですけれども、こちらをごらんいただければと思います。座って失礼します。
  まず、研究計画・評価分科会において御指摘いただきました事項の中で、見え消しになっておりますけれども、文言の修正を4か所した箇所がありますので、それについて御説明させていただきます。一つ目は2ページ目になりますけれども、1の(1)の中あたりに「本年6月」という箇所がありますけれども、こちらは単純な時点更新というところで「平成26年」というふうに修正しております。
  二つ目は5ページ目になりますけれども、(3)我が国の強みを伸ばす戦略的な研究開発の推進というところの中あたりになりますけれども、三つ目の黒ポツに「マテリアルズ・インフォマティクス」というところがありますけれども、こちらのところを、「実用的なデータベースの構築やフォーマットを意識したデータ取得等の取組は十分でないと認識すべきである」というところですけれども、全く取組ができていないのではないかという印象を与えてしまうため、「より積極的な取組が必要である」というような文言がいいのではないかという御指摘を頂きましたので、そのように修正しております。
  続きまして、三つ目ですけれども、7ページ目に当たりますけれども、こちらの(2)です。研究開発法人を核としたイノベーションハブの構築のすぐ下になりますけれども、「独立行政法人物質・材料研究機構」ですけれども、こちらも本年4月より「国立研究開発法人」となっておりますので、時点更新として、そのように修正させていただいております。
  最後、4つ目ですけれども、8ページ目の(3)ですけれども、関係機関の総力をあげた推進体制の構築のところの一つ目のところの白丸ですけれども、既にスパコン「京」を活用してグランドチャレンジアプリケーションの開発とか、そういったことをして実績があるという御指摘がありましたので、「一層」という言葉を付けまして、一層積極的に活用するのが良いのではないかという御指摘がありましたので、そのように修正をさせていただきました。以上が修正点です。
  また、同じく研究計画・評価分科会において、研究開発方策の内容についての御指摘が4点ありましたので、それも併せて御報告させていただきます。
  1点目につきましては、全体論的なものに当たりますけれども、もう少し具体的にナノテクノロジー・材料科学技術というのを見えるように、目に見えるような形でアピールする必要があるんじゃないかというところの御指摘を頂きましたので、報告いたします。
  二つ目としましては、6ページ目のところですけれども、(4)の「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環のところの6ページですけれども、フォワードキャスティングやバックキャスティングのところで、ナノテク・材料科学技術をどのようにシステム化していくのかと、そういう議論がありまして、もう少し具体的に議論するとイメージが湧いてくるといいますか、出てくるのではないかという御議論がありました。
  三つ目につきましては、5ページ目の(3)のところですけれども、我が国の強みを伸ばす戦略的な研究開発の推進のところですけれども、その中あたりの三つ目の黒ポツのマテリアルズ・インフォマティクスのところで、先ほどありましたけれども、データの部分というところで、分野に固有なデータというところもありますけれども、技術的に共通なものといったものもあるのではないと、そういったところに関しては、データの共有、共通化することによって他分野との交流が可能になるのではないか。そういったことでオープンデータの考え方とか、そういったものを検討してはどうか、そういった御指摘がありました。
  最後、4つ目になりますけれども、6ページ目の(5)人材の育成・確保のところですけれども、データ駆動型が今後重要になるということに当たり、ビッグデータを活用できる人材、例えばT型とかπ型のような人材をどのように育成するのかというところで、これまでに加えて何が必要なのかということを明確に打ち出す必要があるのではないかといった御指摘がありました。
  以上のような4点の御指摘がありましたので、こちらについては今後、この委員会で随時具体的な御議論を頂ければというふうに考えております。
  以上です。

【三島主査】
  御説明ありがとうございました。研究計画・評価分科会の委員から頂いた御意見を反映した部分というのは前半でありまして、後半、4項目の御指摘があるということですが、特に、後半の部分の御指摘いただいた事項というのは、まさに今ここで、今後どのようにナノテク・材料関係の技術を次の目標として、第5期科学技術基本計画をにらんで、どのようにそこを盛り込んでいくのかという具体的な施策をこれから考えなければいけないという中で、大変ごもっともな御意見かなと思いますので、それを念頭に置いて先に進んでいきたいと思います。ありがとうございました。
  今の何か御質問、御意見がありましたらどうぞ。よろしいでしょうか。
  それでは、この推進方策につきましては、研究計画・評価分科会の大垣部会長にお諮りした上で、この研究計画・評価分科会の決定とさせていただくという手順にさせていただきます。
  それでは、次に、今後の第5期科学技術基本計画に向けた検討等ということで、議題(1)の二つ目のポツです。「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の方向性について」ということです。初めに、論点整理ということですが、資料1-2-1と1-2-2、今後の予定と論点の整理という形で西條参事官から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【西條参事官】
  ありがとうございます。8月4日付で長野の後任といたしまして、ナノ材担当の参事官に着任いたしました西條です。これからよろしくお願いいたします。
  それでは、座って失礼いたします。今、主査からお話がありました資料1-2-1、資料1-2-2に沿って簡単に御説明させていただきたいと思います。
  まず、資料1-2-1です。こらちの方は「第5期科学技術基本計画の検討に係る今後の予定について」ということで、一応今後の予定、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会と、それから文部科学省の中におけます総合政策特別委員会、ここにおいて、次期、5期に向けた文科省としての考え方や、取り組むべき具体的な内容を検討するというものと、それから一番右側には基本計画専門調査会とありますが、内閣府の方でまさに5期を取りまとめていくという形の委員会を書いた形になって、時系列に並べてあるという形になっています。最終的にはまさに基本計画、一番右側にあります基本計画の専門調査会の方にどういった形で入れていくのかというところが大きな流れになっていますが、先ほど局長からお話がありましたが、5月末に中間取りまとめ、6月18日が総合科学技術・イノベーション会議の方に報告されておりますが、これが出てきて、そこで基盤技術の推進の在り方をどういうような形で、今後、一番下にあります12月の基本計画答申取りまとめに向けて、どういった形で我々の方から発信していくのかということを今、当委員会の方で御議論いただいているところです。
  それで、全体のスケジュール、一番右側のスケジュールを見ていただきますと、10月29日のところに第13回というところで基本計画答申案の討議というところが出てきますので、そういう意味で申し上げますと、今回御議論いただいた上で、次回当委員会の方につきましては、第4回として9月28日を予定しておりますが、この段階である程度どういったものを打ち出していくかということを考えていかなければいけないというところが大体の大枠のスケジュールとなっていると捉えていただければと思います。
  それでは、次に資料1-2-2につきまして御説明させていただきます。前回の6月24日の第2回の議論、その際にも論点を出させていただきましたが、24日の前回の議論を反映した形で再度論点を整理させていただいたというのがこの紙になっています。まず、問題提起として、基盤技術としてのナノテク、素材の在り方についてどう考えるのか。また、IoT、人工知能といった流れの中で、具体的にナノテクに求められるのは何なのかという点でまとめていますが、一つ目の大きな丸、視点としては二つ大きなものがありますが、一つ目、超スマート社会の中で求められるナノテク、物質・材料研究について、基盤技術としてのナノテク、素材の在り方についてということですが、前回御議論いただいた中で出てきておりますように、IoT、AIといった流れの中で、これらを日本が強い材料に組み合わせて研究開発を次の段階にステップアップさせることが重要で、例えば、先端計測等のデータを集積し、AIを組み合わせることで、リアルデータとシミュレーションを統合していくような新たな研究手法の確立、まさにマテリアルズ・インフォマティクスの拡張、こういったものが重要ではないかということ。また、データをうまく活用するための環境整備も重要である。
  ナノテクノロジー・材料分野においては「先鋭化」「融合化」要素の集積を通じた高度な機能の発現という意味での「システム化」の三つの技術世代に複合的に取り組むことが必要だという御意見。また、ナノテクノロジーの研究から生まれてきた革新的な機能をシステムとどう融合させるかが重要と、こういった御意見が出てきております。
  それからもう一つ、下の黒丸になりますが、「システム化・統合化」の中で求められる物質・材料研究の在り方についてという論点ですが、ここでは、バックキャストとフォアキャストの均衡が必要であり、そのためにシステム側からの要請とともに、材料側が主導する「材料の機能からのシステム化」、例えば、官民対話といったトップダウン型とボトムアップ型の研究がお互いを知れる場の設定が必要ではないかという御意見を頂いております。
  また、加えて、次のページに参りますが、未来社会を切り開く製品に要求する機能を発現するためのデバイス、プロセス、又はそれを実現するためのバックキャスト的な課題抽出を行うための場やプロジェクトの設定が必要ではないか、また、良いものを組み合わせて新しいものを作る仕組みやそのために必要な最先端科学のグルーピング等が必要ではないかという御意見等を頂いております。
  このほか、物質・材料研究において「システム化」が有効な具体的事例について議論しなければいけない。また、「システム化」の観点から、現在の物質・材料研究の体制・推進方策等に不足しているものは何か。今後、具体的にどのような取組が必要となってくるかという議論が必要だというのを頂いております。
  また、そのほかに二つ黒丸をここに書いていますけれども、情報科学、ライフ等とナノテクノロジーの融合についてという論点で、ナノバイオ領域においては、例えば、新薬についても、化合物合成という発想から、求められる機能に着目しそれを可能とするシステムを、ナノテクノロジーを活用して実現していくことが可能であるというお話。また、このほか具体的な領域設定の進め方についてという御意見を頂いております。
  また、最後の黒丸は、日本の物質・材料研究が目指していくべき方向性について、こういったことを議論するのが必要ではないかという御意見を頂いています。
  一応、前々回、前回の中で頂いた議論を論点という形でまとめさせていただいた資料となっています。
  事務局からの説明は以上です。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  それでは、ただいまの1-2-1と1-2-2ですけれども、御質問や御意見がありましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  今後の予定、第4回にこの論点の中からある程度具体的に第5期科学技術基本計画にこちらから出したいというようなものをまとめていきたいという方向性ですが、論点のところもよろしいですか。橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】
  このとおりだと思うのですけれども、前回も申し上げましたように、こういう方向で国全体の施策が動く中で材料研究がどうあるべきかということです。実は私も材料研究者の一人として、こういうことをずっと最初から考えています。ずっと考えているんですけど、本当のことを言って、アイデアが浮かばないのです。そうやって考えてみると、これはやはり今違うフェーズが来ているということなのかと思うのです。つまり、何を言いたいかといいますと、我々だけで考えてもそんなに新しいものが出てこないような気がしてしようがないのです。そのために、ここに出ているように、IoTとかAIとかビッグデータの研究者と我々が真剣に議論するというようなことが必須であると思います。それと同時に、世界の潮流を見ても、こういうことをやっている人の多くは若い人で、30代からせいぜい40代の前半ぐらいなのです。私などはこの前還暦を迎えてしまいましたし、ここにいらっしゃる多くの方も50代というような方でしょうから、もちろんシニアの方の見識も重要なのですが、加えて、やはり若い人たちの考えを入れていくことが極めて重要なのだと思います。
  そうすると、あと1か月、2か月の間で何かするとなると、このメンバーで広げていくこともそれはそれで重要なのですが、併せて、そういう異分野の方とか若手の方を集めて、そういうところからアイデアラッシュをしてもらうというのを、ここと並行して早急に進めることが必要ではないかなという気がしています。時間がないところで大変厳しいのですが、そういうことも考えていただくのは重要かなと思います。

【三島主査】
  大変重要な御指摘かと思います。私もこういう論点、方針は分かるんですけれども、具体的に何を目標、バックキャストするにしても、一番もとになるこんなものができればというものを考えようとしてもなかなか出てこないというのは、確かにそういう部分がありまして、これを10月末の基本計画専門調査会に何か玉として上げるというのもなかなか難しいところかなと思っておりました。その辺に着目した御意見をいろいろ頂ければと思います。時間がないけれども、AIなんかを専門としている方との話し合いというのは割に今起こりつつあるんですが、まだまだ本格的にそういうことがされていない中で、一月二月の間にどうするかということも念頭に置ければと思います。ありがとうございました。
  ほかに御意見ありますか。

【岡野委員】
  1-2-2の最初の黒丸のところに「ナノテクノロジーの研究から生まれてきた革新的な機能とシステムとどう融合させるかが重要」と書いてあります。今、橋本先生から御指摘がありましたように、材料の個々の要素技術だけを議論していくと全体が明確になりません。シーズ側からだけ見ていると、見えないような機能のシステム化とか新しい応用に向けた展開に対し、ニーズとシーズをどうマッチングさせるかという仕組みが重要です。幾つか新しい材料で成功している分野というのはあるわけですが、シーズのみからのアプローチで開発を推進させてニーズを模索するという現状があるので、その辺はもう一度きっちりと戦略的なシーズ・ニーズマッチングについて整理していく必要があるのではないかと思います。
  材料自身の応用と言と、既存の応用の改善・改良に留まることになり、応用からの技術的フィードバックを繰り返して創造的な材料を開発するという側面を見失うこととなります。すなわち、これが本当に応用かどうかよく分からないんですが、利用されていったり、発展する中から、また材料の新しいテクノロジーに戻されていくようなフィードバック型の材料開発が世界的に期待されています。非常に純粋なシーズのみに目を向けた材料開発を中心としたナノテクノロジーの議論ではなくて、シーズ・ニーズマッチングの、あるいは融合型の研究開発の体制の問題について、もう一度幅広く議論できる状況を作り、新材料が新しいシステムや応用を創造的に作っていくことに挑戦すべきと思います。

【三島主査】
  ありがとうございます。その点も多分、具体的な例をとって考えていかないと、時間のない中でこれからやるべきこと、ターゲットとすべきことに結び付けるのはなかなか難しいかと思いますけれども、御意見ありがとうございました。
  ほかにありますか。片岡委員。

【片岡委員】
  この中で非常に大きなキーワードとして出ているのは「システム化」だと思いますけど、この方向は非常に正しいと思いますが、システム化ということの中身といいますか、余り厳格に定義する必要はないんでしょうけど、これはかなり曖昧化する可能性があるのではないか。つまり、単にシステム化というと、組み合わせというイメージにもなります。そうすると、いろんなものを組み合わせて何か作るんですかというようなイメージになってしまう可能性もあります。ここで言う「システム化」というのは、単なる既存のものをただ組み合わせるという以上の意味があると思うんです。「システム化」というのは何を意味しているのかということに関して、余り厳格に定義すると、逆に狭くなってしまうので難しいから、曖昧的な部分を残しておくのは必要かもしれませんが、余り曖昧にしてしまうと、言葉だけが独り歩きしてしまう危険性もあるのかなと、ちょっとそういう気もいたしました。

【三島主査】
  システム化に関する考え方というのは、たしか前回6月の委員会で少し議論があったかと思いますが、吉元さん、ちょっとその辺まとめられませんか。単なる組み合わせ等の考え方と、もう一つ、たしかそういったナノテクノロジーをただセットにするというのではなくて、むしろ、それこそバックキャストですかね。そういう意味で何と何を、半導体なら半導体みたいなものを含めてデバイスにするというような考え方よりもっと大きな異分野のものを結び付けていって、何か新しいシステムを作るというような議論と二つたしか分かれていたように思いますが。

【吉元係長】
  JSTの永野さんが以前プレゼンされましたね。

【三島主査】
  そうそう、そうだ、永野さんが、二つ、アメリカ方式と何かありましたよね。ちょっと覚えていらっしゃることで。

【永野フェロー】
  JSTの永野です。いわばナノテクノロジーの個別の要素や、融合的に出てきた技術を組み合わせてナノテクノロジーとしてのシステム化をするというものと、ある技術サービスや、産業システムといったレベルでのシステム化という、より大きな概念的なものとの二つのシステム化があります。それはそれぞれ大事であって、どっちかだけをやればいいという話とはちょっと違います。目指す方向とフェーズによってやるべきシステム化の議論というのは違ってくるものです。そういう話をさせていただきました。

【片岡委員】
  そうですね、私もそれ覚えています。ですから、「システム化」というキーワードだけ出ていくと、永野さんが意図したようなことと違う方向に行ってしまうこともあるので、永野さんの以前のプレゼン資料とセットにしていくとか、そういう工夫をした方がいいのではないかなと、そういう気がしました。

【三島主査】
  分かりました。ありがとうございました。射場委員、どうぞ。

【射場委員】
  先ほどの橋本先生のお話に関してなんですけど、民間でも、うちらは新しいアイデアが出なくて、ちょっと困ると若手ワーキングみたいなのをやって活動させるんですけど、やっぱり若手、いろいろおもしろいことを言うんだけれども、情報が少ないですよね。何かベクトルの合っていないような提案が出てきたりするので、やっぱりこういうところで大きい方向付けを示した上で、具体的に進める上の方策を若手に募っていくみたいな、パラで進めるやり方がいいのかなと思います。
  それの大きな方向付けという意味では、後で常行先生から御報告があると思いますけど、マテリアルズ・インフォマティクスのさきがけもキックオフしていまして、そこはまさにIoTとか人工知能を活用してという提案も出てきているので、一つの解としてはそれがあるのかなと思っています。

【三島主査】
  ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【栗原委員】
  私も前回、先端化、融合化、システム化のところで、ロボットを例にして分解と上からと下からのを、今言っているトップダウンとバックキャストと両方のフォアキャストということで説明をさせていただいていますけれども、私、今、機械と材料の融合ということで摩擦研究をやっていて実感しておりますのは、やはりバックキャストは非常に重要で、材料の開発の方向性が、すごく幅広く出ているものを、ボトムアップだけでやると、少し無理かもしれないと思われているようなことが、これが必要だということがはっきり見えると随分加速するという、非常に研究の加速が出口を考えることで速くなるということがあると思います。
  なかなか夢のようなことはできないんですけれども、それぞれのエンジニアリングの分野ではちょっと想像していなかったようなことがかなりできるようになったりということがありますので、材料という観点に立つと、出口を見ながら根気よくやっていくという両方の部分がすごく必要ではないかということと、基礎に戻らないと新しいアイデアの材料はなかなか出てこないので、繰り返し言われていることでありますけれども、バックキャスト、フォアキャストをやる適切な場というのは非常に重要だと思うので、一緒になって絶対やらなければいけないんだという場を作っていくということは――絶対やらなきゃいけないというのがいい言葉かどうか分からないですけれども――、それを必然的に考えるような場というのは非常に大事じゃないかと思っています。

【三島主査】
  ありがとうございます。小長井委員。

【小長井委員】
  大体同じ意見なんですけど、1ページ目の下のところに「例えば、官民対話といったトップダウン型とボトムアップ型の研究がお互いを知れる場」と書いてあるんですけど、私、実はほかの委員会で、若手でかなり活躍している人を集めて将来を語るような会をやりまして、5回くらいあっという間に、それこそ二、三か月でやったんですけど、そういうことであれば、これからでも二、三か月で多分できます。文科省の大きなプロジェクトをやっている若手で光っておられる方がいっぱいいると思います。一度そういう人を集めて話を聞くと思わぬことを言うかもしれないし、一度そういうことをされたらいいかなと思いました。

【三島主査】
  具体的な御提言、ありがとうございます。それでは、瀬戸山委員。

【瀬戸山委員】
  1番の書き出しが「超スマート社会の中で求められる」という書き出しになっていますけれども、じゃ、超スマート社会って一体何なのかというものがあって、だから今で見たときに、10年後、20年後の未来予測をどうするかという視点が絶対ないと、どういうふうなものを作ったらいいかということがはっきりしないんです。なので、これからどんなふうなシステムを作っていきます、こんなふうなことでやっていきますと言っても、そこの絵が最初にないと方向って決まらないんです。こういうふうに融合させてみても、それは多分、仲良しクラブみたいになっちゃうので、ある程度こういうふうなものを作りたいという方向付けみたいなものを未来予測の中から酌み取っていって、はっきりこれというんじゃないけど、まあこういうことだよね。だから10年後、20年後にはこれが必然としてあるよね。こういう方向でやっていけば間違いないよねというものをベースにして、そういうふうな材料を作っていく。
  そういう視点がないと、何か今あるやつを積み上げていくと、研究者は個で自分のやりたいことを、主張が強いですから、そこでどうしても沈埋しちゃうんです。なので、未来を予測するということをまずベースにして、それで自分たち、そのパーツ、パーツをどういうふうに集めて、更に消化させていいものをつくっていくかという、そこのところの一番最初のボタンの掛け方というのがすごく重要じゃないのかなというふうに思います。

【橋本委員】
  ちょっと情報提供で、関連していいですか。

【三島主査】
  はい、どうぞ。

【橋本委員】
  これは全然公式ではないのですけれども、第5期の策定に向けて内閣府の方も、特に経済界の方からどういう社会を目指すのかということが必要だということが繰り返し言われております。そういうことに対して、今言われたどういう社会を目指すんだということについて、あるイメージを作らなければという動きが今あります。これはまだ決まっていなくて、今議論されているところです。だから、そこの情報をうまく入れながら、事務的にも、西條さんはそういう情報を得られると思うので、それと併せて、ここの議論を持っていくというのがいいかなという気がします。我々がここでどういう社会を目指すんだと決めるのはとても重過ぎるわけです。だから、是非その辺の議論をうまく持ってくるといいかなと思います。

【三島主査】
  その辺は、1ページ目の参考1のところに第5期科学技術計画を取りまとめているときに、超スマート社会が何かは別として挙がっている、センサー、ロボティクス、先端計測、こういったものが恐らく何となくぼんやりと、これからの社会の中で非常に重要な位置を占めていくということは大体議論されて、ここにあるわけですね。

【橋本委員】
  もう少しイメージを固めていこうという動きがあります。そんな表に出ている話ではない、私の感じている話です。

【三島主査】
  分かりました。ありがとうございます。
  ほかよろしいでしょうか。どうぞ。

【五十嵐委員】
  今、橋本先生におっしゃっていただいた、目指すべき社会があって、それに向けて技術のブレークスルーが必要だと。その技術のパラダイムシフトを起こすための駆動力がこのナノテク・材料だと思うんです。日本の強みを生かしてそういうブレークスルーをして新たなステージに行きましょうと。ですから、そういう提案につなげていければいいと思っております。

【三島主査】
  ありがとうございます。それでは、ちょっと先へ進ませていただいてよろしいでしょうか。
  それでは、これに関連いたしまして、射場委員からプレゼンテーションをしていただきたいと思います。今後のナノテクノロジー・材料科学技術の方向性についてということです。

【射場委員】
  皆さん、おはようございます。マイクがあるので座ってやらせてもらいます。事務局からの材料のシステム化、統合化について、何かしゃべれということですので、大体の話は、先ほどの西條さんの論点に沿った内容で、それの事例と思って聞いていただけるといいのかなと思います。
  最近、何がホットかなと思うと、よく出てくるのはインダストリー4.0で、皆さん大変よく御存じのことかと思いますので詳しい説明はしませんけれども、この「日経ビジネス」の別冊を見ると、ここに「トヨタが下請けに!?」と書いてありますので、これはやっぱり買いますよね。買って読んでみると、余り分からないです。インダストリー4.0って何というのはよく分からなくて、工場の生産設備をインターネットでネットワーク化してみたいなことは具体的に書いてあるんですけど、そんなことはトヨタの工場でも随分やられていますよと現場の人間に聞いたら言いますし、一体何が脅威かなと思ってよくよく考えてみると、今現状でそれぐらいの中身しかないのに、この「インダストリー4.0」みたいな名前を付けて、国家イニシアティブにして企画してくるドイツ政府の企画力は学ぶべきものがあるなと官の皆さんにはいつも申し上げています。
  あとは民間企業がそれに呼応して、競争関係にある民間企業が連携して進めましょうというのはやっぱりドイツの風土ですよね。そういうところは、日本企業は競争ばかりしていてできていない部分が多いので、学んでいかないといけないなというふうに思っています。
  弊社としては、一体どういうことをやっていますかというと、5年ぐらい前からTNGA(Toyota New Global Architecture)、今、会長の内山田なんかがすごくこういうふうにやれというふうな指示もありまして、自動車という製品は、競争部分で差別化する部分と協調して基盤で品質良く安く作りましょうという部分と両方が融合した商品ですよということで、その両方の進め方を兼ね合わせてということでずっと最近の技術開発はやってきております。その事例としては、この秋に出る新型のプリウスがTNGAの成果としての第一弾ということで、かなり協調化した、メーカー間で共通化したような部品を使いながら、プリウスで初めて使うような新技術も織り込んでということで皆さんに提供できるようになるかと思っています。
  あと、ここに書いていますのはトヨタ生産方式の基本コンセプトで、1個ずつ作るとか、売れるスピードでとか、これと同じことがインダストリー4.0でもコンセプトとして書いてあるんです。ですので、開発という意味では、余り今の時点でインダストリー4.0で具体的なアクションをすることはなくて、いろんなことがやられていますというところです。
  これも各所でお話をさせてもらう材料、基盤技術から社会につながるようなロードマップです。社会からブレークダウンしてバックキャスト型でというふうなことは、ここでお話しするまでもないことですが、トヨタの研究開発の事例に当てはめて言うと、こういう研究、先行開発、製品開発というふうな三つのフェーズに分けて研究開発をしておりまして、それのリソーセスのかけ方も、全体で1兆円の研究開発費を1対10対100に配分して、期間は、研究は長く、製品開発を4年ぐらいでやるみたいなマネジメントで進めています。研究を5年から10年かけてやるのは大体1兆円のうちの100分の1の100億円ぐらいで、このあたりの材料とか基盤技術の研究をしていって、そういうものを積み上げて部品を作り、部品を集めて製品を作って社会に提供していくというふうな大きい枠組みです。
  この中で、先ほど冒頭にドイツの事例で言いましたような垂直連携というのは普通の活動としてやるわけですけれども、車を作るためには部品を集めて材料を開発してというふうにしないといけないので、部品メーカーさんとの連携とか、材料メーカーさんとの連携は当たり前のようにやって、それの先に産学連携も含めて垂直ではかなりの部分はやられているかなと思うんですけど。これを「システム化」と言うのならば、民間としてはやられていますよというのですけれども、逆に、自動車メーカー間でどうですかとか、部品メーカー間でどうですか、材料メーカー間でどうですかというと、結構競争のマインドが起こってきやすくて、水平連携というものはかなり厳しい部分はあるのかなと。
  それが割と階層によってやりやすい業界とやりにくい業界とあって、自動車メーカーは国家プロジェクトなんかで製品ができてしまったようなところでは、割と水平連携をしないと規格なんか作れなかったりする部分もあって連携したりするのと、すごく先の研究開発なんかだと割と協調しやすいんです。それに対して、材料メーカーさんなんかだと、既にかなりブレークダウンされていますので、その時点で協調と言ってもなかなかお互いに議論も一般論にすぎないようなところでしかできないようなこともあって、我々から見ると、おのおのの材料メーカーさんがどんな研究開発をやっているということはすごくよく見えて、連携して進めた方がいいと思うようなケースもあるんですけど、そのことはお互いの機密保持の関係でなかなか言えない部分もあるので、なかなか民間からはそういうことが提案できないので、やっぱり官とか大学の先生方が中立の立場で材料のベースの水平連携みたいなことを推進していただけるとありがたいなというふうに思っております。
  それを進める上での一つのてこは、マテリアルを研究開発するための基本原理とか、プロセスとか、基盤技術、そういうものを共通基盤として持つということは一つの水平連携のてこになりますので、そういうところから始めて結果を共有するみたいなところに展開していければいいのかなと考えております。
  そこのボーダーで一つの指標としては、エンジニアリングのところは民間でいろいろとろ臭いこととか、泥臭いことがいっぱいありますから、そういうので製品を仕上げるところは民間がやりますので、サイエンスで民間がどうしてもやれないようなところを、学を中心に進めていただくとありがたいのかなというふうにかねがね思っております。
  じゃ、実際、今どんな現状ですかというと、ちょっとだけ車の宣伝をしますけれども、最近MIRAIも出て水素時代かという議論もありますけど、トヨタの技術開発戦略は基本的にハイブリッドの戦略で、MIRAIであってもバッテリーを使ったハイブリッド車であるので、基本のプラットフォームとしてはモーター、バッテリー、インバーターみたいな要素、要素を開発していけば、どういう時代、どういう地域にも対応していけるというふうな技術戦略でありまして、その中のバッテリーであればバッテリーの個々の要素の材料というのはたくさんありますけど、それの基盤的な研究であるとか、モーターであると磁石ですよね、磁石の研究であると。インバーターだと次世代の半導体のSiCとか、GaNとかはもう十分ナノテク・材料の議論の中とか、元素戦略の研究開発にも織り込んでいただきまして研究開発が進んできているので、それを垂直に統合して車を仕上げていくところはかなりうちらはやっていけると思っているので、そういう結果を水平に統合してデータベース化してみたいなところを進めていく必要があるのかなと思います。
  そのための一番分かりやすいところは基盤技術、国家基幹技術のSACLAなんかでも最近電池のデータもやっと出始めましたし、J-PARCもなかなか動かないですけれども、蓄電池の専用のビームラインもできて、電池を丸ごと解析ができるようにもなりましたし、そういうことが出てくる大量のデータも「京」を用いて解析するというのもどんどん進んできまして、こういうところは間違いなく世界トップにあるところですので、そういうところのデータを統合していくというのはインフォマティクスなのかなと。
  これはインフォマティクスで計算のシミュレーションの担当者に絵を描かせるとこういう絵を描くんですよね。マルチスケールシミュレーションとかいってナノのところから製品のところまで全部シミュレーションで解決できますというふうな絵をすぐに描くんですけれども、実際、開発サイドはそんなことを何も要求していないですよと。実験でどんどんやれるところは実験で物を作って壊してやっていくので、そうでない、実験でどうしてもやれないところとか、実験でやるにはコストが掛かってどうしてもできないというようなところを計算でサポートするというふうな取組がシミュレーションとしては重要なんですよと。そういうシミュレーションと実験、物を作ったものを解析するリアルなデータとを組み合わせたような材料インフォマティクスというものの構築が不可欠なのではないでしょうかと。
  この材料インフォマティクスのところで、最後に一つ意見として言わせてもらいますと、国家プロジェクトでこのあたりの材料の研究というのは、すごくいい成果がいっぱい出ていると思います。それは、その研究の初めのPlan、Doのところはすごくよくマネジメントされていると思うんですけど、実際その結果が出て、その結果を統合したところに集めるとか、結果を見て次にどういうアクションをしましょうかというところはなかなかできていなくて、例えばCRESTとか、さきがけとかでたまに我々が見させてもらうと、すごいおもしろい結果が出ているんだけど、なかなかそういうことがシステム化して次につなげるようなところがまだ十分やれていないのかなと。そういうこともインフォマティクスの中で統合して見えるようになっていくと、大変価値のあるプロジェクトの成果というものが有効に活用できる仕組みができていくのかなというふうに考えております。
  とりあえず準備したのは以上です。ありがとうございます。

【三島主査】
  どうもありがとうございました。いろいろなヒントが盛り込まれていたかなというふうに思いますが、御質問、御意見をどうぞ。

【長我部委員】
  大変示唆に富んだ御発表だったと思います。きょうの一つの議論はこうあるべきだという社会の像を描いて、それに対してナノテクがどういうイノベーションを起こしていくかが重要だということだと思います。その中でプロダクトの視点が、例えば今のお話では自動車ですが、重要だと思います。先ほどの階層図では、プロダクトから下は随分書かれたんですけれども、実はそのプロダクトからソサエティーに至る上のところには道路網のインフラストラクチャーがあり、情報網があり、データセンターがあり、アナリティクスがあり、ソリューションがありという、ソサエティーに至るところも何段かあって、ちょうどプロダクトというのが真ん中にいて、ソサエティーとマテリアルをうまくつないでくれるような好ポジションにあるんじゃないかと思います。その意味で、キープロダクトみたいなものを幾つか定義して、そこから見える社会、それからそこから見える必要なナノテクノロジーという見方をすると、社会とマテリアルがつながって見えるのではないでしょうか。ただ今のお話はいいものの眺め方の視点になるかなと思います。
  私たちの会社もいろいろなプロダクトから社会イノベーション事業に変わるということで社会に向けて、上から物事を見ようとして、地方自治体とか政府とか、あるいは国とお話しして、そこから事業を組み立てようとしていますが、時間も掛かります。今、持っているキープロダクトからいろいろ物を考えて、あるべき社会の姿、それをより一層イノベーティブにするための材料と考えると考えやすいので、そういう意味でまさに象徴的に自動車というキープロダクトからソサエティーとマテリアルを見るという、この発表そのものに結構考え方のヒントがあるのかなというふうに思いました。

【三島主査】
  ありがとうございます。どうぞ。

【射場委員】
  ありがとうございます。ちょっと電池研究部長という狭い観点からいうと、プロダクトはEVを作れば、車から排出するCO2はゼロになるでしょうと会社の中で常々言われていて、あんた方の電池開発が全てを握っているんですよといつも言われているので、どうしてもこのところの説明は省きがちになってしまうんですけれども、ただ単にEV、じゃ、充電をどうするかとか、ビッグデータを使って車の充電状況を総合的にモニターしましょうとか、そういう大きい社会のシステムとの連携は不可欠だと思いますので、社会全体を考えながら、水素社会ももちろんそうなんですけど、EV社会だってそういうことを議論しないと、具体的な研究開発には落ちてこないというのはおっしゃるとおりだというふうに思います。

【三島主査】
  それでは、福島委員。

【福島委員】
  今のお話にも関連するんですが、トヨタさんの場合は車という非常に磐石のキープロダクトというのがあって、一方、それに対して私どもエレクトロニクスなんかの場合は、例えばスマートフォンの次にどういうものがあって、それが大きく社会を変えようかという議論をすると、何か途端に漠然としてきてしまう。トヨタさんの場合でも多分、車以外の新しい仮想的なキープロダクトというのをお考えになっている方々もいらっしゃると思うんですけど、そういうときにこういう垂直連携とか水平連携とかがどうなっているか、あるいはどうなさりたいとか、そういう事例がもしあると教えていただきたいなと思います。

【射場委員】
  おっしゃるとおり、弊社は何十年も自動車という製品一個だけを売って、それをなりわいとしてやってきていますので、なかなかそういう議論が苦手な部分もあって、例えば住宅なんかをやるんだけど、余り商品力のあるものができなかったりする。最近だとロボットを作ったり、あと一人乗りのモビリティーみたいなものもプロトタイプとしてはあれこれできてきているんですけれども、どうしてもそういうことは技術開発のプラットフォームとしてやって、最終的には自動車の研究開発にアプライしていきましょうという話が優勢になってしまうんです。それはそれで技術の研究体系としてはいいんですけど、それを商品として市場に展開していくみたいな議論はもっとしっかりとやらないといけないと思いますし、そこは家電メーカーさんなんかと一緒に議論させてもらう部分でもあるのかなというふうに思っています。

【三島主査】
  ほかにありますか。瀬戸山委員、どうぞ。

【瀬戸山委員】
  この産のエンジニアリングと学のサイエンスといったときに、この界面、境界領域が多分あって、トヨタさんほど大きければ、いろんなサイエンスを集めてきて、その中で使えそうなものでエンジニアリングしていくという視点なのかもしれないんですけれども、ここってすごく重要で、そういう連携みたいなことを考えようとしたときに、このサイエンスは使えるエンジニアになるかどうかという、すごく重要ですよね。それを最初からそういうふうな仕組みにしておかないと、サイエンスで結構おもしろいものというので突っ走ってしまって、なかなか後戻りが効かなくなってしまって、あれっこんなはずじゃなかったというのは、僕、結構いっぱい例を知っているんですけども、それはどういうふうにマネジメントされているんですか。

【射場委員】
  ちょっとこの図が不適切ですよね。基本的にはバトンリレーだと思っていて、学のやったことを産が受け継ぐと思っているんですけど、そのバトンゾーンはものすごく長い。そこで二人三脚で走る部分を十分長くとらないと、そのサイエンスが使えるかどうかなんかは、その結果をちょっと聞いただけでは判断できないので、やっぱりある一定期間をお互いに知恵を出し合って苦労して、その上で初めてハンドオーバーできるかどうかが判断できる。電池なんかはかなりサイエンスのところまで歩み寄りつつ大分、いつになるか分からんようなゴールを目指して今一緒に走っているところです。全部の領域がそういうふうになっているわけでもないので、そこは領域ごとのマネジメントが要るのかなというふうに思います。

【瀬戸山委員】
  共同研究をやるときに、私は若い連中には、少なくとも5年は付き合えと。その先生の実力を見て、いろいろこっちからリクエストしたときに、どういうふうに対応するかということも含めて見るような、そういう視点での共同研究みたいなことをやっていけばいいんですけれども、結果だけ求めて、これでできるかどうか、イエス・ノーでやっちゃって、そこで関係が切れてしまうようなことを結構いっぱい物知らん人はやってしまっていて、お互い不幸なんです。そういうふうなものが場として使えるような仕組みが作れれば、多少機能するのではないのかなという気はします。

【射場委員】
  おっしゃるとおりで、そのことが人材育成にもつながるかなと思います。

【三島主査】
  それじゃ、片岡委員。

【片岡委員】
  それでは、2点。一つ目は感想に近いんですけど、非常に示唆に富むお話、ありがとうございました。特に最初のTNGAですか、Toyota New Global Architecture、これは車が例になっていますけど、これは僕の感覚では、今、産業化が非常に切望されている医療、これがまさにこういうふうにすべきではないかなというふうに感じました。図の一番下に書いてある小規模でも安く作るという発想は重要です。医療というと、みんな小規模で高く作って高く売るという発想があるんですけど、これは恐らく間違いです。医療の場合はオーダーメードですから、あの考え方というのは車だけではなくて、今後の医療を産業化するときに基本的なもので、特にナノテクノロジー・材料が貢献するとしたらこういうところなのかなという、そういう感想をすごく持ちました。
  それから、2番目のスライドです。これもすごく示唆に富んだスライドで、垂直連携と水平連携。感覚的には垂直連携が進むと効率は上がりますけど、進化が止まるというんですか、つまり、中に閉じてしまうので、それが問題なのかなと。競争と協調と書かれている、これも私、非常に賛成なんです。例えば材料という観点から見たときには、大学でも研究所でも企業でもいいんですけど、そことプロダクトとの関係を見たときに、水平連携というのは、つまり、材料の可能性を持っている研究室なり企業なりが、今度ほかのところにも展開していけるということだと思います。結果的にはそれが競争になる可能性もあるけれども、むしろそれによって進化を止めないという、そういうことがここには込められているのでしょうか。

【射場委員】
  おっしゃるとおりで、自動車業界は、これまではほかの業界、例えば航空機とか、鉄道とかで研究開発をしてきた材料を使わせてもらうような部分が多かったんですけど、今は、まず自動車で研究開発をして、ほかの業界に展開していくというふうな事例も出せるみたいな心意気で研究開発をしている部分もあります。そういう結果はしっかりとオープンにできることとクローズにできることはよくマネジメントして、オープンにできる部分をしっかり外に発信していけるようなことは考えています。

【三島主査】
  ありがとうございました。まだあるかと思いますが、ちょっと時間が押しておりますので、次に移りたいと思います。射場委員、どうもありがとうございました。
  それでは、議題(2)ですが、「マテリアルズ・インフォマティクスの推進方策について」ということで二つプレゼンテーションいただきます。
  初めに、JSTのイノベーションハブ構築支援事業に採択されたNIMSからの御発表です。室町理事、どうぞよろしくお願いいたします。

【室町理事】
  室町です。それでは、座らせていただいてお話をいたします。今、御紹介にありましたように、JSTの支援を受けまして、「情報統合型物質・材料開発イニシアティブを推進する新領域融合拠点」というものを4月1日付でNIMSの中に立ち上げました。この話をさせていただきたいと思います。
  これは概要ですけれども、三つのお話をいたします。最初に、情報統合型物質・材料研究の意義についてということで、これについてはもう既にマテリアルズ・インフォマティクスの御紹介、何回もこの場でもあったと思います。今回のプロジェクトの内容に即して、この点をお話ししたいと思います。今回のプログラム、非常に大きな特徴といたしまして、三つの具体的な出口課題を設定しております。一つは蓄電池材料です。それから磁性材料、あと伝熱制御材料。伝熱制御材料というのは、熱をよく通す材料、熱を通さない材料、それから熱電材料、そういうものを含んでおります。
  なぜ、こういう三つの出口課題かといいますと、これは我が国のエネルギー問題の解決という意味でどうしても避けられない材料の課題だというふうに考えているわけでして、今の射場委員のお話にもありましたように、プリウスも当然電池がないと走りませんし、磁石がないと走らないという、そういう状況になっているわけです。
  もう少しこの点を考えてみます。NEDOの蓄電池のロードマップに従いますと、現在、200キロメートル以下のEVの走行距離が2030年で500キロくらいまでに、実用レベルで問題にならないくらいまでに上げようと、こういう計画があるわけです。
  ところが、一方で、既存のリチウムイオン電池に使われている材料というのは、25年間ほとんど本質的な意味で変化がないわけでして、非常に細かな改良を積み重ねる形で現在まで来ていると。これが何倍も今からパフォーマンスがこの延長線上で上がるかというのは非常に疑問であるわけです。このマテリアルズ・インフォマティクスというものを是非活用して、何らかの形のブレークスルーを電池材料に起こそうと。それを効率的に進めようということで5年くらいの期間の短縮を行おうと、それだけの効率化を行いたいというのが大ざっぱなイメージです。
  同じことは磁石についても、熱電材料についても言えます。ネオジウムの磁石というのが発見されたのは1983年で、これにディスプロシウムを入れて高温で使えるようにしているわけですけれども、この基本的なものは変わっていないわけです。熱電材料に関しては、1950年代に見つかったものが唯一の実用的な材料になっている。こういう状況に対してブレークスルーを起こすというのがインフォマティクスの役割だろうというふうに思っているわけです。
  最初は、材料研究というのは実験と理論の二本柱で行われています。80年代にここに計算科学が加わって三本、第三の科学が加わって三本柱で行われています。現在ここにいるだろうと思います。ここにデータ科学というものが加わると、これによってある種のブレークスルーが起こるだろうというふうに期待をしているわけです。このデータ科学というのは今後、多分、例えば人工知能というようなものが大きく発展していって、ここの占める割合が非常に大きくなっていくだろう、こういう予想を我々しているわけです。
  それでは、こういうコンセプトの下で融合拠点を作りました。その概要についてお話しいたします。まず、拠点の目標です。三つのレベルの目標を持っております。第一義的な目標は、産業界の物質・材料研究開発課題に対して、有効なソリューションを短期間で開発・提供する。まさにそういうシステムを作って、そういうシステムづくりをするんだと、これが第一義的な目標です。これをやるためにサブの目標があります。サブの目標の一つとしては、こういうものをするために必要な様々なツール群を開発する、ツールの階層です。
  それから、こういうもののベースとなるデータ、これも従来よりもはるかに効率的に使えるようなデータベース、データプラットフォームと言われています。こういうデータの確保、蓄積、こういうものを図る。こういうことのベースの基に第一義的な目標を達成すると、こういうことになっています。
  したがって、この拠点というのは三層構造でできます。アッパーレベルとしては、三つの出口課題に対して具体的なソリューションを与えるようなシステムづくりをする。このために必要なツールやデータを下の階層が担う。こういう三階層の組織構成を考えております。この三層構造の強力なプロジェクトの推進体制の下に、これは我々だけでは到底できませんので、オールジャパンでの人材を結集する。大学、企業、研究機関から結集して、そしてできるだけオープンな立場で拠点を運営しようと、そういう考えを持っております。
  そのために、特にデータ科学、情報科学等、我々基本的なベースがありません。いかに必要な人材をこの拠点に集めるかというのがまさに鍵になっております。そのためにも、例えばクロスアポイントメント制度みたいなもの、我々既に確立しておりますので、こういうものをできる限り柔軟に使って、必要な人材を早急に集めるということで、既にいろいろなところと交渉が行われておりまして、これは非常にポジティブに進みつつあります。
  それから、材料の研究というのは、最終的に社会実装まで念頭に入れないと材料の研究になりません。これは非常に大事です。そのためには、課題の設定のレベルから社会実装を見つめるということが非常に大事です。そのために、例えば出口戦略会議でありますとか、市場調査委員会というような仕組みを拠点の中に設けようと思っています。
  一方で、トヨタからいらっしゃっていただける副プロジェクトリーダーでありますとか、JST所属のプログラムマネジャーというような方たちに是非コーディネーターとして活躍をしていただきたいと思っています。一方で、非常に深いレベルでの拠点への企業の参画というのが不可欠な条件でありまして、そのためにトヨタ自動車や日立製作所など、たくさんの企業に非常に関心を持っていただいて、多分相当数の企業がここに非常に深いレベルで参画していただけるというめどが立っております。
  一方で、拠点の外の仕組みとして、JSTの持っている様々なノウハウの活用でありますとか、国家プロジェクトとの連携でありますとか、NIMSの持っているシステムの利用でありますとか、こういうものを通じて社会実装を進めていきたいというふうに思っております。
  具体的な運営体制です。寺倉プロジェクトリーダーの下に、先ほどの三階層の組織をつなげる。そこに先ほどお話しした戦略会議でありますとか、様々な委員会をつなげて、このプロジェクトリーダーのイニシアティブの下で拠点の運営をしたいというふうに考えております。
  実際の具体的な推進方策について少しだけ言葉を加えます。先ほど言いましたように、一番上の階層はシステム化の階層であります。ここでは三つの出口課題に関して具体的なテーマをこのように掲げております。全固体電池材料、多価イオン電池用材料、それから磁石では永久磁石とスピントロニクス、伝熱制御材料では伝熱制御材料と熱電変換材料、こういう具体的なものに対して具体的なレシピを与えようということを目指しております。
  それから、ミドルレイヤーではそういうものに必要な共通的なツール群を開発するということで、例えば統計解析のツールでありますとか、機械学習のツール、あるいはシミュレーションのツール、ここはまさにオールジャパンで研究者に集まっていただいて、このツール作りをしたいと。これによって、これまで経験者のひらめきと勘のようなものに頼っていたところをデータ科学、計算機による高速で網羅的な探索を可能にしたいというのが基本的なコンセプトです。
  それから、ローワーレベルとしては、ここはデータのレベルですけれども、データベースの充実を図るとともに、ミドルレイヤーで開発されたいろいろなツール群を一緒にここに格納することでより高度なデータベース、それをプラットフォームと呼んでおりますが、そういうものの確立を目指したいと思っております。
  これが今申し上げたことの全体図です。最後のビューグラフですけれども、この提案の概要というのは、こういう具体的な課題に対して有効なソリューションを短期間で開発・提供する。これが基本的な目標ですけれども、そのためにオールジャパンで人材が糾合できるような拠点を形成する。それから、特に広範な企業の参画を図る。それから、3番目として重要なこと、情報統合型研究手法というもの、この拠点の活動を通じて、これを普遍化して、それによって材料科学技術に革命、革新をもたらすということで、場合によっては私どもNIMSで行っている研究が根底から変わるというようなことまで視野に入れたいと思っています。そのために、データプラットフォームの構築と公開ということも併せて行っていく必要があるというふうに考えています。
  以上です。

【三島主査】
  御説明ありがとうございました。
  それでは、御質問、御意見を頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。高梨委員、どうぞ。

【高梨委員】
  ちょっと質問なんですけれども、三つの出口課題を設定されたのは非常によく分かるんですけれども、それぞれに対して、議論されているのかもしれないんですけど、目標とする、性能目標というかな、そこら辺のところの具体的なところはどのぐらい議論されているんですか。そういうのがはっきりしないと、レシピと言ってもなかなか具体的な議論にならないと思うんですけども。

【室町理事】
  それぞれに関してかなり具体的な目標を設定することにしております。例えば先ほど、これは具体的とは言えないんですけれども、ある程度の目標ですけれども、この目標を5年短縮できるくらいの材料の開発というものを図ると。こういうことが可能になるような材料のレシピを与えると。

【高梨委員】
  それぞれ磁石は磁石、蓄電池は蓄電池、それぞれでどういう性能にしなきゃいけないかというのはかなり明確に数値化されているということ。

【室町理事】
  例えば、磁石の場合は、一番の問題はディスプロシウムを含まないと。それで現在のディスプロシウムを含む磁石程度の能力があると、そういうところを目標に決めるということです。

【高梨委員】
  今はプロジェクトっていろいろ走っているとは思うんですが、そこにマテリアルズ・インフォマティクスを使うというところが、ある意味このプロジェクトのみそだと思えばよろしいわけですか。

【室町理事】
  はい。その目標自体は、多分ほかのプロジェクトの目標とそう大きく変わるわけではないと思う。その手法としてインフォマティクスを使って、そういう目標を達成するためのレシピを与えるというのがこのプログラムの目的だというふうに思います。

【高梨委員】
  ありがとうございます。

【三島主査】
  ほかいかがでしょうか。どうぞ。

【射場委員】
  今の御質問にも関連するんですけど、現行の例えば拠点型の元素戦略のプロジェクトの各拠点の報告を聞いていても、インフォマティクスをやりたいという話はよく出てくるんです。だけど、やる上でなかなかツールがないとか、やりたいと言うだけで、なかなか進んでいない部分もありますし、あとNEDOのプロジェクトなんかでも、かなりインフォマティクスの部分というのは蓄電池のNEDOのプロジェクトだと余り強くないんです。そういうところと連携して、ある程度の手法を提供するというふうなことも将来的には考えていっていただくといいのかなと思います。

【室町理事】
  おっしゃるとおりでして、我々も様々な国家プロジェクトとの連携というのは非常に重要だと思っておりまして、こういう国家プロジェクトのそれぞれでインフォマティクス大事だというふうに言われているんですが、分散してインフォマティクスというような新しいところをそれぞれのところでやるのは、とてもそれだけの力がそれぞれにはないので、そういうところを一緒にここの拠点でやると。ここで開発された様々な手法を是非広範に提供していきたいというふうに思っています。

【射場委員】
  多分そうやってやることが個々のプロジェクトの成果の統合につながってくると思うので、そのプロジェクトの成果がNIMSのデータベースに一括で管理されているみたいな状況があるべき姿かなと。

【室町理事】
  おっしゃるとおりで、こういうところで得られたデータを是非拠点の方のデータベースに蓄積をしていきたいというふうに思っております。

【山本委員】
  三層、三つのレベルで展開が進むということが具体的で分かりやすく思いました。ここでイメージしているシステムが、なるほどこういうふうな最終課題、こういった段階に到達するというのもシステム化なんだなというふうにおおよそ理解することができました。それで、先ほどからの「システム化」という言葉の定義がちょっと分かりにくい。私も一般の社会にメディアで届けようとするときに、システム化をどう表現したらいいのだろうとすごく悩んでいます。その意味で、理事の方としては、システム化というのはこういうことだよと定義するならどんなぐあいかお願いいたします。

【室町理事】
  ここで使っているシステムというのは、ちょっと今言われている材料を見たときのシステム化とは多少違う面があると思います。これは基本的に物質・材料の研究課題を入力したらソリューションが出てくるような、そういうトータルでのいろいろなシミュレーションとか、予測ですとか、そういうものを全部含めた形での一つのパッケージだという意味で、ここではシステム化ということを使っております。
  ですから、材料個々に、個々の性質をはかるとか、個々のものを何かするということではなくて、電池材料であれば、電池材料の電極材料として使えるもの、そのものに対するある種のレシピを出すような、そういうシステムと、そういう意味合いでここでは使っております。ですから、データの上にツールがあって、それを組み合わせた形でシステムまですると。ですから、ここでおっしゃられていたものと無関係ではないんですが、多少違った意味合いを込めております。

【三島主査】
  山本さん、よろしいですか。それじゃ、馬場委員。

【馬場委員】
  ちょっと観点が違うんですが、NIMSに人材を糾合する仕組みというふうに書かれていますね。実は大学でも今いろいろな形でプラットフォームとか言われていますが、やっぱり企業、それから大学、こういうところを合わせて人材を糾合しようとすれば、やはり大学よりはNIMSのようなところの方がシステム的にもやりやすいと思います。大学でもクロスアポイントいろいろやってみたんですがなかなか、国立大学の場合ちょっと動きが悪いというところがあります。具体的に分野融合とかいうことであれば、人が集まることが大前提だと思います。意外にシステムを作るときに、それよりも先に人を1か所に集められるようなシステムづくりをベースにした方が意外と結果が出やすいように思います。それで、具体的に今どういうことをやられようとしていて、実はどういうところが難しいかということがあれば教えていただきたいと思います。

【室町理事】
  具体的に今、10個くらいの機関と交渉に入っておりまして、具体的な人に対してクロスアポイントメントを結んで、年間どのくらいのエフォートを使ってこちらに来ていただく。あるいは場合によっては遠隔地勤務というようなことも可能にして、向こうにいながらNIMSの職員として働くというような柔軟なことも考えつつ、今、数十名の方たちをこのシステムを使って、この拠点の構成員になるという交渉を今進めている段階です。

【馬場委員】
  クロスアポイントメントをやられても、長続きさせようとすれば、意外と研究者に対するインセンティブがないと続かないように、その辺はいかがですか。

【室町理事】
  これもいろいろなインセンティブを考えておるんですが、一番いいのは給与という面でインセンティブが一番あれば、それをどうすればいいのか。ただ、私どもだけで解決できなくて、相手の大学のいろいろな規定等もありますので、その辺が交渉なんですけれども、できるだけその点も考えて、本人が少なくとも非常に苦労するというようなことがないような形でここに来ていただくというシステムを今考えているところです。

【馬場委員】
  はい。

【三島主査】
  それでは、常行委員。

【常行委員】
  先ほどの射場委員の御意見、それから今の馬場委員からの御質問に関連して少し印象を述べさせていただきたいんですが、前々からこの委員会でこういうマテリアルズ・インフォマティクスを進める上で非常にオープンな仕組みを作って、もともと人が余りいないようなところで、新しい分野から人が参入できるようなオープンな仕組みを作ってほしいと。そういうことを申し上げていて、今現在、私、NIMSの拠点の方、メンバーの一人として関与しているんですが、非常に努力をしていただいていて、これまでインフォマティクスに興味がなかったような人まで含めて、たくさんの研究者がここに参画しようとしている、そういう動きがあるということを高く評価したいと思います。
  それから、元素戦略との関わりなんですけれども、元素戦略の中でインフォマティクスに皆さん興味を持ちながら、これをなかなか実行に移せないというのは、データ科学の研究者が直接参加していない。そこが非常に大きくて、今回のNIMSの拠点については、データ科学の人を積極的に巻き込んでいらして、その会話が始まっている。例えば、最近でいうと、若手の自発的な研究会が始まっていたり、そういう若手の動きがあるというところが非常に期待できるところだと思っていまして、今、まだ整備し尽くされていないところがあると思いますので、引き続きNIMSの拠点としての御尽力をお願いしたいというふうに思います。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございます。じゃ、もう一つ、どうぞ。

【加藤委員】
  インフォマティクスとして情報統合されるというので、非常に期待したいところであります。それで、ちょっとお尋ねしたいのは、17ページのところで出しておられるように、既存のデータベースとか、あるいは情報センターとか、いろいろなところにあるのとどういう関連付けをされているのかなというのが、例えば結晶データでも要するに学術的にはいろいろあって、データベースや何かもあって、そういうのを新しくインフォマティクスとして統合して使えるようなシステムづくりをここでセンターとしてされるという考えでいいのでしょうか。

【室町理事】
  私ども今現在、多分世界的に見ても非常に大規模なデータベースを運用しておりまして、それを使っていただいておりますが、そういうようなものもこの新しいプラットフォームの中に位置付けて、より使いやすいような形に持っていこうと。

【加藤委員】
  それが新たなシステムづくりの形ということですね。

【室町理事】
  そういうことです。はい。

【加藤委員】
  ありがとうございます。

【三島主査】
  どうぞ。短くお願いいたします。

【片岡委員】
  人材を糾合して、かつ、いろいろな企業とか、いろいろなところから入って、マテリアルズ・インフォマティクスの研究開発を行うという点で非常に重要だと思うんですけれども、こういうスキームを作ったときに、例えば知財に対する考え方というのはどうなるのでしょうか。

【室町理事】
  知財に関しては、私どもいろんなオープンの組織を持ったり、企業連携の経験等がありまして、基本的な道筋は立っております。それで、この場合には個々にオープンな形で参画されてくる場合の知財に関しては、多分共有になると思います。必ずNIMSが知財を持つような形、それで企業も貢献に応じて一定の割合でシェアをするというような形が基本的になると思います。

【片岡委員】
  それはいいんですけれども、共願になった場合は、結局、両方に拒否権が発生しますよね。それで込み入ってくるというようなことはありませんか。つまり、共願がいっぱい出てきてしまうとか。

【室町理事】
  私ども共有の特許をたくさん持っておりまして、その場合の運用方法については当然契約をするわけです。例えば、その会社しか実施できないというような独占実施権みたいなものはどうするかとか、そういうようなことに関しては、もちろんいろいろな取り決めがあります。この場合には独占実施権みたいなものは与えないという形に多分なるだろうと思います。そうしないとオープンになりませんので。それは、今までいろいろな経験がありますので、かなり道筋は立っているというふうに判断をしております。

【三島主査】
  それでは、まだあろうかと思いますが、もう一つ先に進ませていただきます。マテリアルズ・インフォマティクスがまだ続きますので。
  それでは、次は常行委員、さきがけでマテリアルズ・インフォマティクスの総括をやっていらっしゃいますので、よろしくお願いいたします。

【常行委員】
  常行です。それでは、少しお時間を頂きまして、これはNIMSで先日私がNIMSのインフォマティクスの勉強会の方で講演した内容を少しかいつまんでお話しするのと、それからさきがけの状況についてお話をしたいと思います。
  私自身は計算科学の研究者ですので、その立場、それからもう一つはアカデミアの立場というので、少し産業とは遠くなるかもしれませんが、そういう立場での期待というのが書き込まれております。
  計算科学の立場でいいますと、計算科学というのは、基本的には基礎方程式から出発して、そこから物質、あるいは材料の特性を予測すると、全て演繹的なボトムアップのアプローチです。こういう計算科学が計算機の発達、特に「京」コンピュータに代表されるような非常に速いスーパーコンピュータの発達によって非常に力をつけてきて、今まで、例えば20年前、あるいは10年前では考えられなかったような量が計算できる、予測ができる、そういう時代が来ております。
  そういう計算科学の手法を使って材料科学の研究を行うときに、実際の実用的な材料開発に計算科学が貢献できるのだろうか。そういうことを考えてみますと、まず第一にできることは、物資・材料を計算機の中で見る。実験では見られない部分を見ることによって何か気づきがあるのではないか。それから、アイデアを試すための仮想実験、これは材料の成分、組成を少し変えてみるとか、パラメータを非物理的ではあっても少しこちらに振ってみたらどうなるか、そういうことをいろいろ試してみるというのには計算機というのは非常に手軽です。
  それから、新物質、新材料の特性予測というのは、これはもし想定される材料があったとしたら、どういう特性か。分かったとしたら、それはどういう性質を持っているかというのをあらかじめ予測するというのは、ある程度できる時代になっています。新構造デバイス、これは複合材料でありますとか、デバイスの形状を想定したときにその特性がどうなるか。この予測もかなりできるようになってきています。
  ただ、問題がいろいろありまして、まず一つは多自由度とか、マルチスケールとか、非平衡の壁と書きました。これは組成が非常に複雑になった場合、自由度が増えた場合に物質を予測することができないとか、あるいはマルチスケールというのは、材料の中で起こる現象というのが、時間の意味でも、エネルギースケールの意味でも、空間スケールの意味でもマルチスケールであって、これは計算機にとっては非常に難しい課題であるということ。それから、もう一つは非平衡の壁という、これは熱平衡現象を予測することは簡単であっても、非平衡現象、時間に依存する現象を本当に実材料の時間、スケールで予測できるかというと、これは難しい。そういう問題があります。
  もう一つ、材料の開発についてかなりしんどいと思っていますのは、演繹的なシミュレーションだけでは欲しい特性を持った新物質、新材料の発見は困難である。これだけを頼っていては、シラミ潰しに物を計算していく、それ以外の道がなくて、これはなかなか新しい材料を見つけるのは困難である。これが問題です。
  そういう中で、私たちはデータ科学というものには非常に期待をしていまして、データ科学はどういうものかというのを概念的に1枚だけお見せしますと、基礎方程式が不明なときに、入力Xと出力Yのたくさんのパラメータのセットがあったときに、このデータを使って機能的にXYの関係を導き出す。この関係には、もちろんここには測定エラーとか計算エラーとか、いろいろなエラーがありますが、そういうエラーも含めてこういう関係式があって、関係Fというのを導き出そうと。さらには、入力パラメータXの中から出力を左右する重要なパラメータを抜き出してやろうと、こういうことをするのがデータ科学の役割です。
  これを見ていただきますと、この関係を抜き出すわけですから、ここには物理法則は必要ありません。入力と出力があればよろしいと。もうちょっと具体的な例をいうと、例えばテレビとか、ダイレクトメールとか、新聞広告など幾つかの宣伝のメディアがあったときに、どれを使うのが有効であるか。これを決めるとか、どういうふうに宣伝費を配分すればいいか。あるいは建物面積とか、公共施設からの距離とか、地域の犯罪発生率とか、そういうデータと不動産の適正価格を関係づけるにはどうすればいいか。それから過去の病歴とか、遺伝体質から薬の副作用を予測して安全な薬を選択するとか、あるいは劣化した画像データから元の画像データを予測する。こういうのは法則があるわけではなくて関係性があるということで、こういうことができるのがデータ科学です。こういう手法を使って材料開発を一層加速したい、これがマテリアルズ・インフォマティクスではないかというふうに思います。これはJSTの方でまとめられた資料から、ほぼそのまま持ってきたものです。データ科学の定義ではマテリアルズ・インフォマティクスの簡単な定義です。
  そこに我々は一体何を期待しているか。もちろん一番に期待するのは、欲しい機能を実現する新物質・新材料の探索、ここを今まで以上に加速して行いたい。ここが第一です。それから、物質構造と物性の直観的説明、後ろに説明がありますので、その各説明のページに行って御紹介をしたいと思います。
  まず、新物質・新材料の探索という意味です。これは京都大学の田中グループとシャープの共同研究の事例で、リチウムイオン二次電池の正極材料の開発に使った例です。新しい正極材料を、左下、ちょっと小さくて見えませんが、いろいろな化学組成についての網羅的な計算結果、幾つかの物理理論の計算結果、それからそれらの計算結果と電池の性能のどれが結び付くかというのを、この場合はある程度直観的な予想のもとに関連付けたという仕事でありまして、新しい化合物、実際に見つかった化合物が従来品に比べて、サイクル数に対する容量保持率が非常に高く保持されたままであったと。5倍ぐらい寿命の長い電池材料が作れそうだと、こういう研究成果が、これはつい最近、昨年発表されております。
  例えば、こういう新物質・新材料の探索に計算機シミュレーションで対応して、それから、そういう大量のデータと実際のものづくりとを結び付けた例です。物質構造と物性の直観的説明、これも非常に重要だと思っていまして、例えばここに挙げました例はイオン半径と電気陰性度という、これは科学をやる方であれば、誰でも御存じの概念、高校でも出てくるような概念です。イオン半径でしたら、これは1920年代にGoldschmidtとか、Carl Paulingとか、そういう方々が、天才的な研究者が見出した概念で、物質のイオン結晶、例えば酸化物の構造を理解する、あるいは予測する。こういう元素に入れ替えたらどう変わるだろうか。そういうことまで予測できるような、非常に直観的な考え方、そのデータです。
  あるいは、電気陰性度、これもPaulingなどの仕事ですが、あるいはMulliken、こういう方々が物質の化学反応まで予測できるような、非常に普遍的な概念を導きました。こういう概念というのは、膨大な実験データの蓄積の上に出てきたものですが、インフォマティクスの手法を使って、これに匹敵するような新しい物理概念、新しい材料の予測に寄与できるような概念が導き出せると、ここから先は人間がその概念を使って物を見つけ出す。そういうこともできるかもしれません。もちろん、そういう簡単な概念ではなくて、複雑な概念のままでAIを使って次の材料を探すということも十分あり得るかとは思いますが、それはまた次の時代ではないかと思います。
  ここから先は、余り従来のインフォマティクスの印象からは、皆さん想像されないことかもしれませんが、我々の立場からいうと、例えば高精度なモデリングでありますとか、非平衡プロセス、先ほどマルチスケールとか、非平衡の壁というお話をいたしましたが、そういうものを超えるような方法論がインフォマティクスのおかげでできるかもしれない。例えば、これ少し動いているのは、遠くの方はお分かりにならないかもしれませんが、これは熱電材料の候補物質です。非常に複雑な構造を持った物質で、動いているシミュレーションは、当然こんなものは「京」コンピュータを使っても普通にはできません。できませんが、インフォマティクスの手法を使ってモデリングという非常に高精度な第一原理モデリングをやった上ですとこういうシミュレーションができる。こういう時代になっています。これは我々のグループの仕事ですが、これをやると、熱電材料の特性の予測に寄与できる。こういうこともインフォマティクスの一つの役割かと思います。
  それから、これは射場委員からの御紹介にありました大型実験施設との連携という立場で言いますと、データとしてはたくさんのデータが簡単に手に入る時代になっていて、特に複雑な構造、アモルファスでありますとか、あるいは組織構造を持った材料のデータがある。ただし、それはデータとしては非常に分かりにくいデータで、これを解析するのに困難がある。そういう場合に、シミュレーション手法と大型実験施設のデータとを組み合わせて、そこにデータ同化という手法を持ち込む。データ科学的な手法を持ち込んで物質の構造を決めていく。今まで分からなかった情報を得ると、こういうこともインフォマティクスの一つの役割かというふうに私個人的には考えています。
  そのほかにも多自由度の最適化でありますとか、メゾスケールモデリングですとか、いろいろなところでインフォマティクスの果たすべき役割があると思っていまして、これら、ただ単に新しい材料を効率的に探索するというだけではなくて、いろいろな使い道があると考えています。
  最後に、さきがけですけれども、これは「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズインフォマティクスのための基盤技術の構築」という、こういう長いタイトルでさきがけの公募が始まりました。つい先日、8月4日に公募を締め切りまして、私が研究総括をしております。領域アドバイザーはこういう皆さんでありまして、射場委員にもここに参加を頂いています。この委員を見ていただきますと、専門分野は書いておりませんけれども、物性、化学、材料、情報科学、数学、そういうかなり幅広い分野の専門家の皆さんでありまして、ここはとにかく複合した、これまで一緒に話をしてこなかったような方々を一堂に集めて、そこで若い人たちを育てながら分野を運営していく。そういうところですので、いろいろな分野の方にアドバイザーとして参加を頂いております。
  これは説明会の方でした、こんな研究が求められるんですよという例でありまして、ここに幾つか具体例を書きました。ただ、これに限定されることはないと。若い人が考えていただいて、これまで年寄りには思いつかなかったような新しい取組があれば、それを歓迎しますということを説明会では説明してまいりました。
  もう一つ、この分野の特徴として、これは新しい試みですが、連携提案というのを受け付けることにしました。さきがけはあくまで個人研究ではありますが、その中でなかなか今まで日本で育っていなかったマテリアルズ・インフォマティクス、その分野で提案を出していくのは非常に難しいということを危惧いたしまして、あらかじめ提案者同士で連携する部分というのを提案の中に含めてもよろしいと。個人研究が主ではありますが、それプラスアルファで連携を書き込んでくださって結構です。そういうことを申し上げまして、実際にこういう提案も幾つか出てきております。
  こういう努力をいたしまして、幸い応募者は、私の予想よりははるかに多いたくさんの応募がありました。まだ審査中ですので、件数については申し上げられませんが、中を見てみますと、おっというような提案が幾つかありますので、期待できるのではないかと思います。さきがけは若手の研究者がここで育っていただくというのが非常に重要なテーマですので、さきがけの領域内での連携と、それからもう一つは、先ほど御説明がありましたNIMSのイノベーションハブ、こちらとの連携も積極的に進めさせていただいて、新しい領域をつくっていければというふうに思っております。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  それでは、御質問、御意見。はい、どうぞ。

【小池委員】
  非常にこれからの新しい方向だと思うんですけれども、例えば、今マテリアルの機能から新しいシステムを提案していくとかというところにマテリアルズ・インフォメーション、何か機能的にこういうものが更に5倍になる、10倍になるというのは予測できると思うんですが、新しい機能が例えばこういうインフォマティクスの中から分かるということができてくると、これはすごいイノベーションになるんじゃないかと思うんですね。そういう探索をする上で、例えば今、こういうITでのデバイスが必要だということに対して、既存のシステムを変えるような機能が材料として、こんな機能が出てこないか。今まで例えば電気でやっていたところの限界が光に持っていくことによってどうかとかという、例えばそんなような具体的なところにこういったマテリアルズ・インフォメーションというのは、どこまでチャレンジングができるテーマになっていくのでしょうか。

【常行委員】
  おっしゃることは非常によく分かりますし、私もそういうことができるといいと思いますが、現時点で私の理解するインフォマティクス手法というのは、全く今までにない新しい機能を実現するという方向よりは、今機能としてはあるけれども、それをいかに実現するかという、そちらの方向を伸ばすのが先決かというふうに思います。ただ、この先には、AIというのは、今まで人間がぱっと思いつかないような複数の要素を組み合わせるということもあり得ますので、そういう方向に将来的には発展があるのかもしれません。ただ、それは少し時間が掛かるのではないかと思います。

【三島主査】
  高梨委員。

【高梨委員】
  非常に分かりやすい御説明で勉強になったんですが、ちょっと私勉強不足なのでもう一つ教えていただきたいのは、世界の中での日本の位置付けといいますか、今世界の潮流がどんな感じで、このマテリアルズ・インフォマティクスがですね。あと、日本がこれからやっていくのに、どういうところに特徴が出せるとか、そこら辺のところのビジョンというか、あれば教えていただきたい。

【常行委員】
  まず、世界の中で見ると、正直申し上げて、日本はこの分野はかなり後れていると思います。先日、さきがけの領域の最初のアドバイザーの皆さんに集まっていただく会議がありまして、そこである委員から意見が出ましたが、まずは世界に追い付くということ、アメリカに追い付くというのか、そこも大事ではないかという意見が一言出ました。私自身は、できればこれを機会に、日本らしい世界の後追いでないものを作りたいとは思いますけれども、一方で、例えば大量の計算データを自動計算を行って、その中からデータを抜き出してくるような、今までアメリカなんかでも行われてきたような、そういうところもきちんと積み上げていくというのが大事かと思います。
  一方で、それは自動計算とか、コンビナトリアルな手法を使って、それと通常のデータ科学を結び付けるというのは、筋道としては非常に分かりやすくていいんですけれども、何か新しい発展としては物足りないような気がしていまして、例えばそこに、きょうお話しした例でいうと、二つ目以降の新しい物理概念を見つけるとか、そういうところを付け加えていくと新しいものができるのではないかというのが私の考えです。

【高梨委員】
  当然、データは世界じゅうのデータからとってくるわけですよね。

【常行委員】
  まず、計算データについて言いますと、アメリカでマテリアルズゲノム等でやられている計算データはかなり公開されている部分があります。ただし、それはやろうと思えばいつでもできるところでして、むしろ日本にもあっていい部分と言えば、企業が大量のデータを持っていて、重要なデータを持っている。ただ、問題は、そんなに外に出していいものではない。ちゃんと利益は守らなくてはいけないというところで、そこはどういうふうに扱っていくかは、さきがけというよりは、むしろもっと上の方で全体で考えていただかなくてはいけないことだと思います。

【三島主査】
  よろしいですか。じゃ、片岡委員。

【片岡委員】
  きょうお話になった内容というのは、バルクとしては均一、同じ組成ですよね。一方、例えば金属とか高分子の場合は、界面方向に組成が偏析するとか、それから相分離が起こりますね。そういった多層構造とか、あるいは材料の中での組成の偏析がある場合とか、そういう場合でもこういった計算というのはかなり今進んでいるのでしょうか。

【常行委員】
  ちょっといい例が今入っていませんでしたが、まず、「京」コンピュータのような大型計算機の一つの重要な貢献というのは、そういう界面ですとか、大きな系ができるようになったと。残念ながら、今の「京」コンピュータではそれを数回やるというのが限界であったとしても、次のポスト「京」では、それをパラレルにたくさんの材料、組成でやるとか、あるいはたくさんの初期データでやるとかいうことができるようになります。そういう意味では、複雑な界面、あるいは組織構造を持ったものについても計算がいろいろできることは間違いありません。
  一方で、それで十分かというと、やはり計算機シミュレーションでやれることは限界がありまして、そこに実験データとか、それと組み合わせるでありますとか、あるいは複雑になると計算結果の解析すら難しいということになりますので、そこから重要な情報を引き出すというのはデータ科学の役割かと思います。

【三島主査】
  はい、どうぞ。

【栗原委員】
  今、伺って大変夢のある、可能性がたくさんあるものだと思うんですけど、今、設定されている課題以外にも、今後こういう分野をより活用していこうということになると、先生の御説明になった中での物質構造と物性、直観的説明の中のどういうパラメータがこういうデータの中から新たに取り出してこられて、それが物性予測につながっていくかということは非常に大事ではないかと思うんですが、特に既存のデータベースをどう活用していくのか。あるいはここではどういう新しいデータベースが作れる可能性があるのか。あるいは新しいデータベースを作るよりは、既存のデータベースを新しい目で見るようなはパラメータ化についての検討いただいて、それをオープンにすることで新しい可能性が広く使われるようになるのか。そのあたりはどういう方向性をお考えなのでしょうか。

【常行委員】
  新しいデータベースを作るというより、今のデータベースを充実させて、不足している部分を補って、それをいかに使うかの使い方のところだというふうに私は考えています。ディスクリプターという言葉がありますけれども、どうやって記述をするか。何を持ってくれば記述ができるのか。例えばイオン半径というのは、非常に簡単に概念で、パラメータ1個で原子ごとに1個ずつ値があるようなものですが、もしかすると次の例えば金属管材料の設計をしようと思ったら、そういう簡単なものでは済まないかもしれません。それがなかなか今、人間の頭では見つからないで困っているわけですが、そういうところに新しい、これとこういうデータを組み合わせると、この二つぐらいを組み合わせると次のものが予測できますとか、そういう新しい指標が生まれるといいというふうに考えています。

【栗原委員】
  大変楽しみだと思うので、そうしますと非常に幅広い物性予測とか、機能材料設計につながるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

【三島主査】
  それでは、山本委員、最後にさせていただきます。

【山本委員】
  最後の方におっしゃったAIについてお伺いします。AIがどんなものかということを簡単にお願いして、それがこの分野の場合にはどう絡んでいく可能性があるのかというところをお願いいたします。

【常行委員】
  AIについては、私もまだ勉強不足で余りはっきりしたことは申し上げられないんですけれども、今すぐ思いつく範囲で申し上げると、例えば、今、大量の実験データ、あるいは実験に関する論文があります。その論文がとても処理できない中で、論文全てを我々が理解できない中で、たくさんの論文の中から必要なものを見つけてくるとか、そういうことは人間すぐにはできないと思うんです。機械もAI以外の技術を使うとなかなかできないので、そういう文脈の理解であるとか、そういうことが利用できると、すぐに役立つことかなと思います。私自身はAIが余り進むと仕事がなくなるのでちょっとどうかなという気もするんですけれども、そこから我々の役に立つ新しい発見があると、それはそれでうれしいかと思います。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  五十嵐委員、先ほど質問を止めちゃいましたけど、今何か。よろしいですか、最後に。

【五十嵐委員】
  後ほどで結構です。

【三島主査】
  よろしいですか。分かりました。
  それでは、まだあろうかと思いますけれども、かなり時間が押していますので、ただいまの件はここまでにしたいと思います。常行先生、ありがとうございました。
  それでは、議題(3)研究開発課題の事前評価についてということになりますので、これにつきましては、事前に御案内のとおり当日非公開ですので、委員及び事務局以外の方は御退席を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

(傍聴者退室)

【三島主査】
  それでは、ちょっと時間が押しておりますけれども、3番目の議題に入ります。資料3-1、3-2、3-3に基づいて、西條参事官から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【西條参事官】
  それでは、新規課題の評価ということで御説明させていただきたいと思います。資料3-1と3-2を見ていただきますと、まず、3-1ですけれども、これ自身施策のロードマップと書いてありますけれども、当部局の方でやっている施策の全体の俯瞰を書いてあります。その中における今回の施策ということですが、上の方にあります環境・エネルギーの中で、これまでナノテクノロジーを活用した環境技術開発という項目で、先端計測や計算科学、材料開発、こういった異分野の人材が集結する拠点を作って、太陽光発電、二次電池、燃料電池、こういった研究開発をやってきたところですけれども、今般、きょう御議論いただいたような、まさに将来どういうものが必要になってくるのかというところをしっかりとバックキャスティングして取り組んでいく新たな手法が必要ではないかということで、この取組を更に発展的に拡充するような考え方で、ここに書いてありますように「統合型材料開発プロジェクト」、ここに関しましては、まさにバックキャスティングという意味でシステム工学的な手法も組み入れて、これまでの異分野の人材が集結するところに、更にシステム工学的な手法も組み合わせたような形での新たな手法を導入するという研究開発をやってはどうかということで今回提案させていただいているものです。
  資料3-2を見ていただきますと、これは事前評価結果(案)ということでこちらの方で作成させていただいておりますが、まず、資料の3ページ目にポンチ絵があります。背景、それから目的ということで、先ほど来議論がありますが、IoT社会等の未来社会を切り拓くため、特定の材料機能の高度化、まさに局所最適のみを目指すのではなくて、未来社会からバックキャスティングと物質・材料研究の循環を統合的に行って未来社会を確実に変革する全体最適を目指した研究手法、こういったものが必要だということ。さらに、これをまさにこの本プロジェクトにおいてはシステム工学とか、先ほどちょっと議論がありましたAI等の情報科学も活用して材料開発を実施することによって、将来社会にインパクトの大きい「システム×革新材料」、こういうものを開発するとともに、更に若手からシニアまで工学系研究者のマインドの変革を目指していくと。こういった仕組みを導入してはということで提案させていただいております。
  その次の、ちょっとイメージ的には下のところで具体的な推進体制ということで書いていますけれども、材料科学・要素技術からシステム化まで工学のシームレスな統合。個々別々の材料の局所最適から、システム化まで包括したデバイスとしての全体最適の設計法というものを、いわゆるシステム工学、今ある材料を組み合わせて将来のものをつくるというのではなく、またシステム工学側からこういった新しい材料があれば、こういった未来を切り拓けるというところで、いわゆる今の材料科学とシステム工学をうまく組み合わせる新しい仕組みを導入するというための研究開発の仕組みづくりということを目標としています。
  次のページの4ページですが、各施策の連携ということで、まだこれもきれいに描けていないんですけれども、現在の取組と他省庁との連携みたいなものもここで整理していますが、今回のプロジェクトにつきましては、先ほど来御説明がありましたマテリアルズ・インフォマティクス、こういった取組もちゃんとベースにして、これをここに役立てていく。その際にも、先ほどAIの話がありましたけれども、文科省の中で今議論が進んでいますAIのプロジェクトについても、ここもイノベーションハブとマテリアルズ・インフォマティクスとの連携をしながら、こういうものと連携しながら新しいプロジェクトを進めていきたいというふうに考えています。さらに、各省、内閣府や経産省の方でも取組がありますので、こういった各省との連携もしながら、ある意味無駄のない効率的な活用をうまく図っていきたいと考えております。
  実際の評価票に沿って御説明をさせていただきます。5ページをごらんください。課題の概要ですが、先ほど来御説明したとおりのことですが、下のところにありますように、3.の2パラ目になりますが、本事業では、将来社会におけるインパクトが大きく、材料等要素技術の革新に対して、「システム化」志向の一貫した研究の効果が大きい「材料開発とそのシステム化のパッケージ群」を採択する。課題の実施に当たっては、例えば、「システム科学/工学者」、「情報科学/工学者」、「材料科学/工学者」によるチームを編成して、材料科学からシステム化までの循環型の材料開発を実施する。さらに、中心機関を設置いたしまして、データを活用した研究に係る知見の横展開や、各機関との連携のコーディネートを実施するということを課題の概要として書いてあります。
  4.各観点からの評価ということですが、(1)必要性ですが、第5期基本計画の中で、1パラの後半部分になりますが、「新たな社会においては、個別の製品や要素技術のみならず、これらが有する個々の機能を組み合わせ、一つの統合体として機能させる「システム化」によって、新たな価値が生み出される」と。こういう指摘があるものを踏まえまして、その中で、一つ目としては、本事業では、大学、独法等の研究機関が、社会課題に対する材料研究の寄与を明らかにするシステム工学手法を材料開発で取り組む。つまり、バックキャスティングして材料開発で取り組むことで、従来の個別最適型研究とは異なり、全体最適化を自律的に行う材料開発を推進するものとして、未来社会を切り開く新しい「材料×システム」のコンセプトを提示することを目標としているということ。
  それから、加えて、先ほどもちょっと申し上げましたが、本事業を通じて、産学において未来の材料開発を担う若手研究者等の材料開発に対するマインド変革も企画していて、そういった観点からしても、我が国の将来の材料手法の革新を図るものとして、国が支援する必要があるものと考えられるという必要性を書かせていただいております。
  ただ、考慮すべき事項ということで、その後ろにありますが、サイエンスとエンジニアリングのより良い関係を築いて、国のプロジェクト発の科学技術国家戦略の指針作りなど波及効果も含めて、拡がりのあるプロジェクトを目指すことが必要ということを付言させていただいております。
  次の評価項目、評価基準については書いてあるとおりです。
  (2)有効性ですが、ここでは本事業の中で、システム工学者や材料科学者、情報工学者のチームによる未来社会における使われ方を想定した材料開発の実施例及び成果を横展開することで、産業界、アカデミア双方における、三つ視点を書かせていただいておりますが、システム科学/工学及びデータ科学/工学と、材料研究を融合した新しい方法論の創出。さらに、効率・効果的な研究開発体制の在り方。三つ目として、研究機関における材料研究者のマインド変革。こういったものについて新たな潮流が創出されるものと期待されるという形で書かせていただいております。
  ただ、考慮すべきという点になると思いますが、材料研究とシステム科学/工学の一体的な取組によって研究課題の設定に関する評価と改善、特にPDCAのCAの部分をしっかりと適宜行いながら研究開発を推進することが重要というのを付言しています。
  三つ目の効率性です。ここにつきましてはシステム科学/工学者とデータ科学/工学者、あと材料科学者、この連携によってシステム・デバイスレベルでの有望性を踏まえた適切な課題設定がなされているか、適宜、中心機関が評価をして、必要に応じて研究課題を抜本的に見直す等、新陳代謝性を備えた研究開発プロジェクトを推進することが重要というふうに書かせていただいています。
  最後の1から3を踏まえた総合評価として、積極的に推進するべき課題と判断するという案で書かせていただいております。また、有効性、効率性についても、現段階での計画として十分検討されているものと判断するという形で書かせていただいております。ただし、考慮すべき点として、現段階で検討されている事業設計方針に基づいて、中心機関におけるコーディネートが重要であるということ。それから、中間評価については事業開始から3年目をめどに、事後評価については事業終了後に実施する。特に3年目の中間評価はチェックをしっかりとして改善を掛けるということについて書かせていただいております。
  概要について、説明は以上です。

【三島主査】
  御説明ありがとうございました。ということで統合型材料開発プロジェクトという新規プロジェクトを動かそうということで、そのプロジェクトの内容、有効性、効率性等についての事前評価の案です。御意見いただければと思います。橋本委員。

【橋本委員】
  私は、これは大変重要なプロジェクトであり、かつ、実は今後の材料研究の方向性を大きく引っ張るというか、変えていく可能性のある非常に大きな課題だと思います。書かれていることは全くそのとおりで、評価も含めてアグリーするのですが、実は中身がないのですね。ないというのは、最初に私が申し上げたコメントと実は同じことで、これは新しい分野なので、一所懸命我々が考えたって中身そんなに出てこないのです。ただ、方向性は絶対間違っていないと思うのです。ですから、実際に今後、来年度の予算でとるのかどうか分からないにしても、是非ともこれの評価に関わることと、中身を議論する場をしっかりと作る必要があると思うんです。そのメンバーは、先ほど言ったことの繰り返しになりますが、このメンバーも必要なんですけれども、それ以外の分野の方をお招きして、それと若手を入れて議論することが重要だと思います。中身は簡単に出てこないと思いますし、ここでの議論は決定的に将来の我が国の材料研究の方向性に影響を与える可能性があると思いますので、是非そのことも総合評価の中に入れ、具体的な中身の検討を早急に進めるといいますか、そういうことが必要かなと思います。
  以上です。

【三島主査】
  非常に建設的な御意見、ありがとうございました。
  ほかに御質問、御意見ありますか。五十嵐委員、どうぞ。

【五十嵐委員】
  私、が最初に質問しようとしたのは、このプロジェクトが、例えばデータをみんなオープンにしてやっていくとか、オープンイノベーションハブでやろうという、その考え方は全くそれでいいんですが、企業が持っているデータ、大学で出てくる、これから新しく出てくるデータなり、知見、アルゴリズムというのは全て知的財産だとご認識いただきたいのです。これを特許にするかどうかというのはまた別問題なんですが、これから出てくるものは全て知的財産であって、日本の国際競争力向上に資するものだと。その視点を是非忘れずにやっていただきたいと考えます。ですから、NIMSのハブにしても、知的財産についてはまだこれからというようなお話でしたが、そこを明確にして、データをどこまでオープンにするか、知的財産として何を守るべきか、そういうのは是非検討していただきたいと思います。

【三島主査】
  ありがとうございます。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】
  全体として非常に重要なプロジェクトだと思いますけれども、ちょっとだけ気になったところで御質問させていただきたいんですが、要するに広く視野を持てという意味でマインド変革という言葉が結構過激に使われているような気もするんですけれども、若い人に逆にマインド変革をしろと言うんじゃなくて、若い人はさらの状態なんじゃないかというふうに思って、マインド変革するのは今の人たちなのかもしれないというふうに思うんですが、だからちょっと何となく書き方が気になりました。特に、4ページのところの図で出されているところで、ピンクで一番重要なところで、「工学系研究者のマインド変革」と書いて、それも別にわざわざそんなふうに書くのかなというところが、特に工学系と書かれているので、研究者全体はもちろん、視野を広く持てと言われるなら、それはそうだと思いますが、そういう書き方のところだけちょっと気になったんですけれども、いかがでしょうか。

【橋本委員】
  これは視野を広く持てというよりは、私が読んだのは、材料研究の方向性が今までのようなボトムアップだけではだめで、違ったアプローチを早急に取り込まないといけないというメッセージです。そういう意味ですね。

【西條参事官】
  はい。

【加藤委員】
  もう一回教えてください。

【西條参事官】
  つまり、今までのようなボトムアップ、きょうもたくさん議論していただきましたけれども、今までのボトムアップだけではなく、未来の、今回まさに未来像というのがどうなるか。ここが非常に重要で、恐らくそこは、先ほど橋本先生からもお話があった、総合科学技術会議が取り組んでいる話とリンケージしていかなければいけないと思うんですけれども、そういった将来のあるべき姿からバックキャスティングしてきて求められるものというものを開発するという、ボトムアップ型との融合という意味での、ある意味おもしろいからこれをやっていきましょうではない世界をしっかりと作っていくというのが重要ということを言いたいところであります。

【橋本委員】
  世界「も」ですよ。

【西條参事官】
  世界も。

【加藤委員】
  分かりました。バックキャストであるべき姿をちゃんと見ろよということですね。

【西條参事官】
  はい。マインド変革というと、今までのを全部否定してという意味ではありません。

【橋本委員】
  そこは重要で、「も」と「を」は違います。研究者側の受けるイメージが全く違いますので、是非そこは気をつけてください。

【西條参事官】
  分かりました。

【三島主査】
  ほかに。どうぞ。

【吉江委員】
  私もこれすごく大事なことで、ここに書かれていること、至極もっともだと思うんですけれども、先ほどから、本日マテリアルズ・インフォマティクスということを非常にコンパクトにまとめていただいて、やはり意を強くしたのは、この分野というのは非常にあれこれ、今まで個々にやられていたあらゆる分野を統合していくというようなことになるので、ネットワーキングというのが非常に大事だと思うんです。分野融合ですとか、連携とかというのは使い古された言葉で、皆さん言っていて、だけど、意外となかなか本当の意味での融合が必ずしも進んでいない部分があるような気がしていて、そういう意味で、これを進めるときに、特に研究者間のネットワークですかね。そういうものを強く作るような何かポイントというのがあったら、是非御説明いただきたいなと思うのと、もしなければ、そういうのを考えていただけるといいのかなとちょっと思ったというような次第です。

【西條参事官】
  ちょっとしっかり説明しなかったんですけれども、今回の研究開発、確かに中身を、今仕組みとしてこれを作っていきたいというところで御提案させていただいているんですが、その中で、領域がどのくらいになるかというところの予算の関係もあるとは思うんですけれども、中心機関を置いてしっかりと横のネットワーキングは作っていくというのが、この構造に組み込んでいきたいというふうには考えています。ですから、そういった意味で中心機関を設けて、それ以外のチームとの連携もしっかり図れるような形で、変な言い方じゃないですけど、領域ごと個々にあるのではなく、そこら辺のものをしっかりと固められるような形は作りたいと考えています。

【吉江委員】
  そういう意味で、もう既に拠点を立てられていて、多分そういう方向に進めたいのだろうなというのは非常によく分かったんですけれども、多分今までと同じようなやり方ではなくて、もう一歩進んだ何かを是非こういうのを機会に進められたらいいんじゃないかなというふうに思います。

【西條参事官】
  ありがとうございます。

【栗原委員】
  拝見していてちょっと分かりにくいと思うのは、システム科学/工学者というのは、どういう人をイメージしているのか。これ、議論している内容からしますと、どちらかというと、エンジニアの中でもシステムとしての、例えば自動車だったら自動車を扱っているような方とか、そういう出口の部分を扱っているような人をシステム科学者と言っているのか。あるいはシステム化の研究をやっていらっしゃるような、そういう工学の中でも少しフィロソフィー的なことをやっているような、そういう人たちも交えて、あるいは両方入っているのか。いかがでしょうか。

【西條参事官】
  イメージとしては、前者のいわゆる出口を見据えたというところで、そういった方々というのは、今ある材料をベースにソリューションを考えるというところを、更に未来に対して、そのソリューションを考える上でバックキャスティングすると、こんなものが出てきたらいいよなというのが材料学者の方にまた入ってくることによって目指す方向がくっついてくるというところを狙いたいというふうには考えています。ただ、限定をかけて、これじゃだめということは考えていないんですが、一応考え方としてはそういう形で考えています。

【栗原委員】
  文脈からすると、そういうふうに思ったんですけど、何かシステム化のシステム科学者ってどこかにいるのかというようなイメージにも受け取られるかなと思ったので御質問しました。

【西條参事官】
  きょうもちょっと御議論あったように、システム化と言っても、言葉がどうしても走ると、幾つかのきょう片岡先生から御指摘がありましたけれども、そこは私も来て読みながら、どっちのシステムだったのかなというのはよくあるので、そこは定義とかは、いわゆる議論する上でベースがそろっていないと議論にならないところがあると思いますので、そこは気をつけた形でやりたいとは思っております。

【三島主査】
  それでは、もしよろしければ……、どうぞ。

【瀬戸山委員】
  これ、いろいろな情報が出てくると思うんです。そこから何を抜き出すかという、そもそも目利きが必要で、その目利きから出てきた具体的なものを今度はどういうふうな方向性にしていくかというところの方向性を作るところがないと、システムを作ってみるけれども、一般的には情報は集まるんだけど、そこから加工するという部分がすごく重要なんですね。そこのところの仕組みをもうちょっと上手に作ってほしい。だから、ある意味、そういう方向付けするためのマネジメントというのが物すごく重要で、研究統括に当たるような人なのか。先ほどのNIMSさんの例でいうと副PLでしたっけ、ああいうふうな形でどういうふうな方向付けに持っていくのかという、そこを作る、作らないでほとんどプロジェクトは決まっちゃうと思います、答えは。なので、そこのところをどういうふうに織り込んでいくかというのは、具体的なところでブレークダウンしていただきたいと思います。

【西條参事官】
  ありがとうございます。

【三島主査】
  それでは、いろいろ御意見を頂きましたので、これを24日、来週の月曜日に研究計画・評価分科会がありまして、そこで私が御報告することになりますので、今いただいた御意見をできるだけ反映させて進めさせていただきたいと思いますが、私に一任ということでお認めいただけますでしょうか。
  ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。
  では、最後に事務局から事務連絡等ありましたら、よろしくお願いいたします。

【吉元係長】
  次回は来月になりますが、9月28日を予定しております。本日の議事録、公開部分だけですが、委員の皆さんにお諮り次第、ホームページに公開いたします。
  また、本日の配付資料については、机上に置いていただければ、後日事務局から郵送いたします。
  以上です。

【三島主査】
  それでは、ちょっと時間10分ほど超過してしまいました。申しわけありませんでした。本日の委員会は以上です。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)