別紙3-1 ナノテクノロジー・材料科学技術分野に関する現状整理(案)

 ナノテクノロジー・材料科学技術を巡る状況や社会的位置付け、当該分野の推進の方向性、及び重点的に推進すべき研究開発課題について、「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について(平成23年7月ナノテクノロジー・材料科学技術委員会)」(以下、「第6期ナノ材委検討中間とりまとめ」という。)における記述ぶりと最近の政府方針として「科学技術イノベーション総合戦略2014(平成26年6月閣議決定)」における記述ぶりに基づき、以下の通り整理した。

1.ナノテクノロジー・材料科学技術を巡る状況・社会的位置付け

(1)第6期ナノ材委検討中間とりまとめ

  • ナノテクノロジー・材料科学技術は、科学技術の新たな可能性を切り拓き、先導する役割を担うとともに、複数の領域に横断的に用いられ、広範かつ多様な技術分野を支える基盤的な役割を果たすことから、「先導的基盤技術」と言うべきものである。
  • ナノテクノロジー・材料科学技術は、我が国が抱える資源、エネルギーの制約等の問題を克服し、東日本大震災からの復興、再生を成し遂げるために必要な革新的技術の創出の鍵を握っている。
  • ナノテクノロジー・材料分野における基礎的、基盤的な研究の進展により、材料関連のものづくりと大学等におけるサイエンスの距離が縮まり、基礎的、基盤的研究が応用に貢献する道筋が出来た。
  • ナノテクノロジー・材料科学技術の発展により、優れた研究成果が得られているものの、バイオテクノロジーや情報通信技術に比べて、社会における認知度が低い印象があり、目にみえる価値の創出につながるような技術的成果が不十分である。
  • 日本企業が海外の魅力的な研究開発拠点(例えば、米国におけるANT(Albany Nanotech)フランスにおけるMINATEC(Micro and Nanotechnologies Campus) 等)において研究開発を行うことによる、産業の空洞化、成果の流出等を懸念する声が年々強まっている。

(2)科学技術イノベーション総合戦略2014

  • 物質を原子・分子レベルで解析、制御し、求める特性や機能を持った材料やデバイスを創り出すナノテクノロジーは、我が国のものづくり産業の根幹を成す基盤的な技術として、重要な役割を担っている
  • 現在我が国のナノテクノロジー・材料分野の研究は、これまでの官民の取組により、国際的に優位な立場にある。今後も、政策課題の解決を支える分野横断技術として、我が国の産業競争力の源泉となることが求められている

2.ナノテクノロジー・材料科学技術の推進の方向性について

(1)第6期ナノ材委検討中間とりまとめ

  • 他の分野と並列に位置付けるのではなく、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型の研究、出口指向で基礎から応用、開発段階まで一貫して進めるトップダウン型の研究開発の両方の発展を支える「先導的基盤技術」として、戦略的に強化していく必要がある
  • ナノテクノロジー・材料科学技術に対する、社会からの期待を踏まえ、課題解決を起点として、研究開発課題を戦略的に重点化する必要がある
  • 基礎から応用、開発、さらに事業化、実用化の各段階へ一方向にのみ進むのではなく、問題の本質への理解の深化等を通じ、各段階での課題が基礎研究への課題へと翻訳され、基礎研究に立ち戻るような「循環研究」が行われることが、課題の解決とサイエンスの発展の双方にとって重要である。なお、「循環研究」においては、異分野の研究者が結集することにより、想定外の成果が生み出される可能性は大きいため、そのような成果の多様な展開を許容することが求められる。
  • ナノテクノロジー・材料科学技術を継続的に強化するため、先端研究設備の整備、共用化及びネットワーク形成の促進、優れた人材の育成、新たな研究開発モデルを提示する拠点形成等に国として取り組む必要がある。

(2)科学技術イノベーション総合戦略2014

  • 政策課題解決にどのように役立てていくのか明確な出口戦略を描きつつ、分野横断技術がゆえに課題分野を超えて科学技術イノベーションを誘起するようコア技術に磨きをかけて、中長期に渡ってその強みを維持し競争力の源泉を生み出していくことが重要である。また、この際、分野横断技術を下支えする数理科学やシステム科学、光・量子科学の活用を十分に図る必要がある。
  • 政策課題解決にあたっては、以下の2つの視点から捉えることが必要。
    • 最終的な出口を見据えた上で重要となる具体的な課題を特定し、新たなデバイス・システムで政策課題を解決する「新たな社会ニーズに応える次世代デバイス・システムの開発」の視点
      新規の技術を開発するだけでなく、有用な既存技術の組み合わせを含めてシステムとして最適化することが重要分野横断的技術が、政策課題を解決する応用技術と重なり合うことで、産業競争力のある新たなデバイス・システムを生み出す可能性がある
    • 要素技術の深化や研究者の自由な発想から生まれる新たな材料で政策課題解決をする「新たな機能を実現する材料の開発」の視点
      新たな機能を実現する材料開発と、生産へと展開するための欠陥制御・高信頼化等の技術開発や、ナノシミュレーションやデータベース、計測、解析、評価、加工技術、マテリアルズ・インフォマティクス等の基盤的技術を一体で強化することが重要。また、研究者の自由な発想を生かす、セレンディピティを生み出し易い環境を整え、新たな発想で世の中を大きく変え、次代を切り拓く芽を育てることも必要である
  • 国際競争が激しいナノテクノロジー等の分野において、研究開発法人を中核として、行政機関の縦割りや産学官相互の垣根を越えた連携体制を構築し、世界に伍する国際的な産学官共同研究拠点及びネットワーク型の拠点の形成を進める。特に、大学、公的研究機関、民間企業が集積している地域において、イノベーションハブの形成を加速することで、我が国のイノベーションシステムを変革するエンジンとする。
  • 人材育成・人材確保・持続的研究推進等を効果的に行うための研究開発拠点・共用拠点プラットフォームの構築、加えて、スーパーコンピューター「京」やSPring-8等の最先端大型研究施設等の積極的活用体制の構築

3.特に重点的に実施すべき具体的な研究開発課題について

(1)第6期ナノ材委検討中間とりまとめ

  • 第四期科学技術基本計画が示した課題領域毎の重要課題は以下の通り。
課題領域 重要課題 主な研究開発課題
環境・エネルギー 安定的なエネルギー
供給と低炭素化の実現
・電気エネルギー生成・変換・貯蔵技術
・低損失で安定な電力供給を実現するための技術及びシステム
・太陽エネルギーを化学エネルギーに変換する技術
・未利用エネルギーを電気エネルギーに変換する技術
・高感度、高選択な環境用センサー          
エネルギー利用の高効率化とスマート化 ・省エネルギー材料
・バイオマスによる燃料及び化成品の創製
・画期的な触媒材料
・省エネルギー、低環境負荷の製造工程の実現
・エレクトロニクスの省エネルギー化、多機能化 
社会インフラのグリーン化 ・希少元素代替材料 等
医療・健康・介護 革新的な予防法の開発 ・化学と生命科学の融合
新しい早期診断法の開発 ・体内埋込型診断治療機器
安全で有効性の高い治療の実現 ・ドラッグデリバリーシステム
・細胞内治療
・再生医療材料
科学技術基盤   ・三次元計測、界面及び内部計測
・ナノ加工プロセス
・ナノ・マイクロ印刷技術、三次元ナノ製造技術
・物質材料設計及び制御技術 等
震災からの復興、再生及び安全性の向上   ・震災被害を最小限にするために必要となる劣化抑制技術や信頼性予測技術
・構造体の安全性維持、長寿命かに貢献留守材料技術 等

(2)科学技術イノベーション総合戦略2014

  • 省エネルギーを実現する「パワーエレクトロニクス」や、バイオセンサやマイクロセンサなど生体情報を集め健康長寿を支える「高機能センシングデバイス」、生体模倣(バイオミメティクス)デバイス・システムやドラッグデリバリーシステム、生体との相互作用を持つバイオデバイスのような「ナノバイオデバイス・システム」など、新たな社会ニーズに応える次世代デバイス・システムの開発
  • 高強度・軽量・耐熱といった過酷な要求を満たす「構造材料」、シェールガス革命や環境・エネルギー問題を解決する「革新的触媒」等の新たな機能を実現する材料の開発と、ナノシミュレーションやデータベース、計測、解析、評価、加工技術、マテリアルズ・インフォマティクスなどナノテクノロジーを支える基盤技術の推進

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ナノテクノロジー・材料企画・機構係

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