第7期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成26年9月1日(月曜日) 15時~17時15分

2.場所

文部科学省東館 3F2特別会議室

3.議事録

平成26年9月1日

【川合主査】
 ほぼ皆さんそろわれたということで、定刻近くになりましたので、ただいまより第7回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催いたします。
 本日は、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
 本日は、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策という、とりわけ重要な議題を含んでいます。各委員におかれましては十分御議論や御知見を頂きたいと思いますので、一応3時から5時の予定でしたが、きちんと皆さんから議論をいただくということで、15分だけ延長させていただいて17時15分までとしています。最後までいろいろ意見交換よろしくお願いいたします。
 では、事務局から配付資料の説明をお願いします。

【吉元係長】
 事務局です。本日、伊丹委員、射場委員、北川委員、小長井委員、榊委員、橋本委員が御欠席です。
 配付資料の確認ですが、資料1‐1として、平成27年度ナノテクノロジー・材料科学関係概算要求、ポンチ絵です。資料1‐2として、概算要求主要事項。資料2‐1として、各委員からの御提出資料になりますが、大林委員資料、長我部委員資料、福島委員資料。資料2‐2として、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の今後の推進方策」検討に係る今後の予定について(案)、1枚紙です。資料2‐3として、ナノテクノロジー・材料科学技術の今後の推進方策について(論点案)。参考資料1として、ポンチ絵1枚ですが、ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について、参考資料2として、ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について(中間とりまとめ)になっております。以上です。

【川合主査】
 それでは早速、議事の1に入ります。平成27年度概算要求状況について、文部科学省より御説明いただきます。よろしく。

【立松補佐】
 失礼いたします。資料1‐1と1‐2を用いまして御説明させていただきます。
 まず資料1‐1、横紙のポンチ絵ですけれども、ナノテクノロジー・物質・材料関係の部分の予算につきまして抜粋させていただいております。そちらに事業を5種類のように書いていますけれども、左から、元素戦略プロジェクトにつきましては、来年度27年度の要求は29億円。括弧書きの中が今年度26年度の予算です。26年度が20億円に対して29億円が元素戦略。今年度12億円に対して来年度12億円での概算要求が東北発素材先導技術プロジェクトです。ナノテクノロジーを活用した環境技術開発で4.5億円の要求です。ナノテクノロジープラットフォームで20億円の概算要求になっております。物質・材料研究機構の運営費交付金は157億円で要求をさせていただいております。
 1枚おめくりいただきまして、特に物資・材料研究機構の予算につきましては、これまでマテリアルズインフォマティクスという題目と、また機能性材料という題目の二つにつきまして本委員会でいろいろ御議論いただいたところです。これらにつきましては、それぞれ2ページ、3ページにありますように、データ駆動型材料研究イノベーションハブあるいは革新的な機能性材料の研究開発ということでもって新規要求、増額要求をそれぞれさせていただいておるところです。特に2ページに記載のありますデータ駆動型材料研究イノベーションハブにつきましては、科学技術イノベーション総合戦略等に記載のあります研究開発法人をイノベーションハブとするという取組の一つとして大きく要求させていただいておるところです。
 資料1‐2に移らせていただきます。今の説明の続きですけれども、資料1‐2の2ページをごらんいただければ幸いです。2ページの概要のところの中にダイヤが四つ並んでおるうちの一番上です。研究開発法人を中核としたイノベーションの創造の場の形成ということで50億円の新規要求がなされています。こちら、今、NIMSのハブの要求を御説明したところですけれども、それとは別途、こちらはJSTに予算を計上するものです。研究開発法人制度という新たな制度移行を踏まえまして、研究開発法人を中核とした産学官の垣根を超えた人材糾合の場、イノベーションハブを構築するための経費といたしまして、各研究開発法人における取組の推進としてJSTの力を最大限に活用する、そういった研究開発法人の機能強化を推進するための経費が計上されています。こちらは競争的な経費になりますので、各法人がそれぞれにイノベーションハブの形成のための取組をして、JSTのフォローを頂きたいという法人はこういった経費にアプライをしていくと、そういった格好の予算のたてつけとして新規のものが要求されておるところです。
 私の方からは以上です。

【川合主査】
 それでは、ただいまの説明に関して、御質問、御意見ございましたらお願いいたします。27年度の概算要求の主要事項です。いかがでしょうか。何か御質問ありましたら。
 見ていただいて特別なければ、もうこれはこれで移りたいと思いますが、よろしいですか。

【常行委員】
 すみません。

【川合主査】
 どうぞ。

【常行委員】
 データ駆動型の材料研究イノベーションハブについて御質問だけさせていただきたいんですが、今これはNIMSのイノベーションハブとしての機能強化というふうに位置付けられていますので、この予算はNIMSに全て付けてという、そういう想定でされているんですか。

【立松補佐】
 ええ、そのように御理解ください。この分につきましてはNIMSの交付金ですので、この委員会で御議論いただいた中でも特にNIMSに役割を期待する部分についてNIMSの交付金に要求を付けているという格好です。そのほか、この委員会の中では、NIMSへの期待以外にも、産学官の知恵でもって同時並行的に進めるということがとても効果があろうということで御議論いただいていた分につきましては、また別途別の予算方策を新たに検討する。特に先ほど御紹介申し上げたような、JSTの力をかりながらという部分がうまく予算化されれば、そういった経費を使いながら日本全国の研究者とコラボレーションしながら、このNIMSの交付金とコラボレーションしながら施策として進めていくような格好が取れればいいんじゃないかというふうに期待しておるところです。

【常行委員】
 ありがとうございます。

【川合主査】
 ほかよろしいでしょうか。
 それでは、今日の主要議題である議事の2番目に入ります。議事の2、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策についてです。このことに関しては、前回の委員会で議論を少しだけしました。これを踏まえつつ、今日は特に産業界から見た今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野への期待について、本日御出席いただいている産業界御出身の4名の委員から御説明をいただきたいと思います。
 それぞれ10分説明して5分の質疑ということで、4名でほぼ60分になります。その後、事務局から今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策の案やスケジュールを御説明いただいて、そして、それをベースに総合討論を50分ほど予定しています。それで、5時15分までということになります。
 一番後ろの資料2‐2という1枚の紙があります。それで、右側、総合政策特別委員会という来期の科学技術基本政策の議論をする、そういう場所が10月3日に第4回が開かれるんですが、ここで途中経過として長野参事官が発表されるということです。そういう意味で、左側を見ると本当に今日1日だけの議論ということになりますが、日頃から皆さん、ナノテクノロジーに関してはよく考えていらっしゃると思いますので、今日時間いっぱいを使って今後の推進方策について十分御意見を頂きたいと思います。
 前回のときにそれまでの参事官と替わられて、いわば違う分野というか、ある意味で一般市民の目も持ち合わせていらっしゃるわけで、そういう目から見て、なるほど、ナノテクノロジー・材料というのは今後非常に重要なんだと思うということが重要ですので、それもちょっと頭の片隅に入れてお話しいただければと思います。
 それでは、産業界からの4人の方ということで、五十嵐委員からお願いいたします。時間をどうしても守らなきゃということで、9分を経過しましたらベルを鳴らして、10分で2回鳴らしますので、よろしくお願いします。

【五十嵐委員】
 それでは、私の方からは、「鉄鋼におけるナノテク・材料科学技術の重要性と今後への期待」と題しまして、鉄鋼の目でこの分野がいかに重要かと、それから、こういうことをしていただければというような話題提供をさせていただきます。
 内容はこちらに書いたようなものです。国際競争が非常に厳しくなっていると。技術のパラダイムシフトへ期待、その意味でこのナノテク・材料科学が重要であると。それから、産官学のイノベーション、共創という話が先ほどもありましたが、まさにそれをアピールしたいと考えております。
 こちらは経済産業省がまとめられた2010年のデータですけれども、日本の主要製品の世界のシェア、それから、市場規模を示したものです。こちらにありますのが、自動車、それから、電子機器、医薬品というようなところです。市場規模としてはこれらが100兆円規模と非常に大きいわけですが、シェアをごらんいただきますと、自動車がほぼ3割、電子機器が2割、医薬品が1割と、そういうような状況。これ、釈迦に説法かもしれませんが、現状こういう状況です。日本のシェアが高いものというのはなかなか市場規模としては大きくないのですが、例えば自動車の中でもハイブリッド自動車なんていうのはほとんど100%日本製です。
 また、鉄鋼に目を移していただきますと、実は100兆円規模で鉄鋼はあります。ところが、シェアとしては今や10%未満という状況です。ただ、その中でもハイエンド品と呼ばれております高機能のハイテン、自動車の軽量化に必要な材料は世界シェアがまだ8割ある。要するに、日本は今こういう形でどんどん新興国の追い上げを受けております。そういう中で例えば素材の技術力を見てやりますと、成熟産業で飽和してくる。ところが、新興国が追い掛けてきて、今や抜かれんとしている。こういう状況で何をすべきかと考えますと、新しい指導原理に基づいた新しい材料開発体系を構築するんだと。これによって国際競争力を確保していくということが求められております。
 このためには、従来の延長線上での開発では飽和してしまうということですので、新たなシーズ探索研究に基づいた新しい指導原理の開拓が必要です。このためには、まさにこの分野の基礎基盤研究が重要となります。また、それを効率良く進めるためには、産官学のイノベーション、共創が不可欠であると考えております。
 これは例えば自動車の軽量化の一例です。ボディから足回り、従来の鋼というのは強度としては余り高くなかったのですが、今やハイテンと呼ばれる高強度材がどんどん使われております。その背景としては、車体重量が軽くなれば燃費が向上すると。簡単に見れば10%軽量化すれば10%燃費が向上する。ただ、現状、目標に対してはまだまだ軽量化が必要だと。
 こういうものに対して鋼としてどういう取組をしているかというのをまとめております。これはナノ解析技術。鋼の組織というのは、ナノメートル、原子サイズで制御する。それを解析する技術、作り込みのところというのは製造メーカーが一生懸命やるわけですが、さらに見えないところはシミュレーションしてやろうと、こういうことを回してやりまして、より革新的な特性を引き出すということに現在取り組んでいるわけです。こういうところにナノテクノロジー、また材料科学技術は非常に重要になってまいります。
 それから、もう一つの例は、明石海峡大橋ですが、世界最大級のつり橋、桁間が2キロあります。この2キロを1本のワイヤーでつるしている。しかしながら、これは実際にはこういうサイズの太いワイヤーの束なんです。これをどんどんさかのぼっていきますと実は原子レベルにまで到達しまして、この部分で組織を制御する。ナノメートルで制御してキロメートルで作り込むというのが鉄鋼の現在の技術開発です。こういうところにもナノテクノロジーを是非生かしていきたいと考えております。
 では、産学官イノベーション創出に向けて何ができるのかということですが、先ほど申し上げたシーズ探索研究というのは、あらゆる可能性の探索は大学、それから、国研で是非とも継続していただきたい。それから、人材育成についても、やはり材料分野の人材をしっかり育成いただくというのが当然のことです。
 今日は時間の都合で、ビッグサイエンスへの期待ということで、放射光・中性子とスーパーコンピューターの話を少しだけさせていただきます。御承知のように、つくばの高エネ研あるいは播磨のSPring‐8に非常にすばらしい放射光があります。また、中性子につきましても、J‐PARCというのが世界最強のパルス中性子を発生します。これによって何ができるか。材料分野では反応のその場観察とか、特定原子の選択構造の解析、結晶の完全性の評価、あるいは表面・界面の構造評価、こういうことができます。こういうことを鉄鋼材料でも開発に生かしております。すなわち、ラボでは実現できない超強力なエックス線を用いて、こういう環境下での構造解析ができる。
 これをやることで何ができるのかということですが、まず材料開発に対しては、科学的メカニズムに立脚した新しい発想が生まれてまいります。また、プロセス開発に対しましても、いろいろな環境、素反応からプロセスの反応解析ができますので、それに基づいてより生産性向上、プロセス最適化、環境対策、このようなことに今、活用しております。
 これは高エネ研の例ですが、ただ、こういう設備は非常に巨大な設備が必要です。一企業では到底成し得ない。こういう設備をやはり国として是非タイムリーに造っていただいて、これを産業利用させていただくというのが非常に重要であると感じております。国の大型施設をイノベーションにつなげるために、私どもでは従来、材料開発の知見をデータベースに基づいていろいろイノベーションを図ってきたわけですが、より科学的メカニズムに立脚した新発想で、新指導原理に基づいた国際競争力につながる、そういう開発を目指していきたいと考えております。
 そういう観点で、こういうビッグサイエンスに対しても、高品質ビームを提供するという設備はもうかなり充実しておりますので、できればそれを材料やプロセス研究にいかに使いこなしてイノベーションにつなげるかと、そういう仕組み作りの方も是非考えていただければと考えております。その一つの提案ですけれども、これはNIMSの構造材料研究拠点あるいは機能性材料研究拠点に代表されるようなそういう共創の場を是非このビッグサイエンスの分野にも広げていただけないかなというようなことを考えております。
 それから、実を申しますと産業利用というのがなかなか容易ではないという現実もあります。それは課題の審査に二、三箇月要するとか、費用的にも高いというのもありまして、そういう意味では長期的、計画的に民間のそういう開発に使うというのはなかなかハードルが高い部分もあります。また、品質の高いものだけでなく、やっぱり利便性の良い、使いやすい制度の施設も是非、これは知恵と人材の交流という観点で実現いただければ非常にありがたいと考えております。
 これは既に走っております先端研究施設の共用事業ですけれども、これは本当に役に立つすばらしい制度だと考えております。例えばこれは一つの例ですけれども、東京工業大学の「TSUBAME」というスーパーコンピューターが利用できるようになったことで、産業利用にかなりの割合を割いていただいています。私どもでは2009年に初採択されたのですが、それ以降、400並列、これは「京」なんかに比べるとまだまだ大した計算ではないですが、企業の研究開発に十分使えるレベルのものが長期間うまく使える仕組みを作っていただいております。
 それから、「京」コンピューターですが、こういう戦略プログラムが走っております。そういう中で材料分野の先生方がこういうコンソーシアムのような研究体制を作っていただきまして、私どももそこに参加させていただいて、材料の研究にいかにこういうスーパーコンピューターを使っていくかというのをいろいろ情報交換しながら、こういうプロジェクトとも連携しながら運用していただいていると、これは非常にありがたい話です。こういう形で、ビッグサイエンス、放射光・中性子、さらにはスーパーコンピューターが民間にも利用しやすいような制度がさらに充実すれば非常にありがたいと考えております。
 こちら、まとめですが、ナノテク・材料科学がものづくり産業を支えていると。これは国際競争力に打ち勝っていくために是非必要なのですが、そのために技術のパラダイムシフト、こういうものを是非お願いしたいと考えております。御清聴ありがとうございました。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのことに関して、御質疑、御討議をお願いいたします。いかがでしょうか。
 後進国というのかな、ほかの国の追い上げに対しては、やっぱり新しいジャンプでその差をきちんと持たないとまずいですよと、それから、大型施設や大型計算機、そういうものの有効利用が非常に重要だと、そういう論点での御意見でしたが、いかがでしょうか。
 三島委員どうですか、少し専門にお近いですが。

【三島委員】
 やはり今、特に高エネルギーのビームのお話をなさいましたけれども、今まで私が現役でずっと研究した頃に比べると非常に進んだああいう技術がございまして、それを使って何かが出てくるというのは今は非常に期待できる、一番期待できるところですし、そこには非常に若手の研究者が特に必要な状況になっています。そういう意味の人材育成を兼ねて、こういう装置をいかに使いやすくして、そういう人たちが流動的に動きながらチームをうまく作りながらというようなそういう体制を作ることが何よりこの構造材料のこれからに重要です。
 今、自動車のハイテンのことをおっしゃいましたけれども、例えば耐熱材料みたいな、火力発電のコンバインドサイトの発電とかああいったものについても、後進国、開発に今追い付いてきている国がどうしても追い付けないものを絶対に守っていかなければいけないというところがありますので、そういう意味で、非常に精密な実験データ、解析、それから、シミュレーションを使った形で是非ともそれを作り込んでいきたいというふうに私も強く思うところです。

【川合主査】
 ありがとうございます。
 何か。

【五十嵐委員】
 先生のおっしゃるとおりで、一企業としてもちろんそういう差別化技術を開発しようと努力するわけですが、やはり日本はこれまでは全て自前主義でやってきたのです。でも、それでは、諸外国、新興国が組み合わせ技術でどんどんビジネスモデル、もうからなくてもどんどん彼らは物にしていく、そういうマインドがありますので、そういう新興国には競争に勝てないんです。そういう状況ですので、先ほど共創の場と申し上げたのですが、そういういろいろなシーズ技術を持っている先生方あるいは研究機関と企業、企業ももちろん鉄鋼だけじゃなくていろいろな素材メーカーあるいはデバイスメーカー含めて同じ場で議論をして、それぞれどういうふうにその技術を物にしていくかというのを一緒にやっていくというのがこれから本当に重要だと考えています。

【川合主査】
 ほかに御質問はありますか。

【岸本次長】
 すみません、よろしいですか。

【川合主査】
 はい。

【岸本次長】
 科政局の次長になりました岸本です。共用化設備は非常に評価していただいているんですけれども、これ、今後何かもう少し御要望とかあるんでしょうか。こうした方がいいとか。

【五十嵐委員】
 課題採択のときに、やはりこれ、オープンにしていいですか、どうですかというのが最初に問われるところなんですが、オープンにすべきところはどんどんやっていただきたいのですが、やはりクローズドでもちょっと長期的に試してみたい、リスクのある研究をやろうと思うと、例えばこれ、採択しました、でも、成果が出なかったら、その施設としては評価されないと、それでは困るわけです。実際にはそういう失敗の繰り返しが大きなイノベーションにつながりますので、失敗してもやはり目標とかターゲットが明確であれば採択されるような、そういう仕組みが出来れば非常にありがたいと思っています。

【岸本次長】
 要するに、企業側として情報をある程度公開できないものもあっても採択してほしいということですか。

【五十嵐委員】
 公開できない部分もあるし、それから、すぐに成果ですね。

【岸本次長】
 すぐ成果ですね。

【五十嵐委員】
 今回やった実験が論文にならないかもしれない、でも、それはその次にもっと大きなブレークスルーにつながるんだと、そういう課題も是非採択されるような、そういう仕組みがあればありがたいと思っています。

【岸本次長】
 あとは、イノベーションハブという議論が今あるんですけれども、企業側から国研とかそういうところに出向いていって、先ほどおっしゃったように、これからは装置はあるけれどもどうやって改善するかというところが課題だとおっしゃいましたけれども、そういうところにもう少し企業側からも人を出すということもあり得るということですか。

【五十嵐委員】
 それは十分積極的に検討すべきだと考えています。

【岸本次長】
 分かりました。どうもありがとうございました。

【川合主査】
 それでは続きまして、大林委員から御説明いただきます。今、五十嵐委員は鉄鋼、材料という立場でしたが、大林委員は機能材料という立場でお話しいただきます。

【大林委員】
 私ども、有機化学の方で材料を扱っております材料屋ですので、デバイスの方とはかなりニュアンスが違った話になると思います。ナノテクノロジーを使った我々の開発の考え方を御紹介したいと思います。我々、ナノテクの技術がいろいろ出てきたと。それを我々持っている技術と組み合わせまして、新しいナノの原理とか、あるいは特性を突っ込みまして、こういう分野にアプライしていこうという考え方であります。
 ここでは、構造精密制御をやったということの部分の一部を御紹介させていただきたいと思います。私どもは極限追求という思想がありまして、ナノ構造を極限まで持っていったらどうなるんやということ、それから、ナノ物質がいろいろ出てまいりましたので、それを使ったらどういうことになるのか、あるいは表面のコントロールができるようになったので、そういうものを使ったらどういうことができるかということをやってまいります。
 まずこれは何度も見ていただいていると思いますが、飛行機ですけれども、カーボンファイバー、最初はこの時代にほんのわずか使っていました。それが最近まで進歩してまいりまして、ほとんど全てカーボンファイバーで造るようになりました。これもよく見ていただいているかもしれませんが、初期のカーボンファイバーというのは、こういうあんまりきれいなものじゃなくて、欠陥も結構大きかった。その表面を非常にきれいにすると同時に、欠陥構造をいかに制御するかということが大きなことで、そのことにおきましていわゆるナノ分析、ナノ計測が非常に役に立ちまして、物が見えれば制御ができる、試行錯誤でなくてちゃんと狙って仕事ができるということで、今やナノレベルの傷まで抑え込んだことによって強度が上がってきたという例です。
 これはナノアロイという考え方でございまして、ポリマーは大体、異質のポリマーを混ぜますと混ざりません。大体相分離をいたしましてミクロンレベルで大きな塊になってしまうんですけれども、ナノテクノロジーを使いましてうまく混ぜてやりますと、きれいにナノレベルで組織構造が作れます。この場合はナイロンとゴムを使った例ですけれども、ナイロンの合成とゴムの弾性とをうまく組み合わせております。
 これがその例ですけれども、パイプを作っておきまして、これを上かドーンと落として衝撃を与える。そうすると、普通のナイロンというのはすぐ破壊されるんですけれども、今のようなゴム成分をうまくナノレベルで混ぜておきますと、クシャッと収縮いたしまして、通常は剛性を持っているんですけれども、衝撃時には柔軟に変形できる。これ、何に使えるかというと、もしもうまくいけば、例えば車の前面に付けておきますと、人にぶつかってもクシャッといって人に衝撃を与えないとかいう応用が将来考えられます。
 それから、フィルムの場合は、これをうんと薄くして、それを1,000層とか重ねてやるとどうなるかという、これもナノ構造制御極限追求の一種なのですけれども、あるレベルまでこれを小さくしていきますと何かしらナノ効果が出てくる。例えばこれ、ガラスの上にこのフィルムを貼っておきまして鉄球を落とすんですけれども、普通のフィルムだと貫通してしまうんですけれども、このフィルムだと貫通しないというような強度が出る。
 それから、その層厚を光のレベルでコントロールしてやりますと、全反射をするフィルムを作ることができまして、メタルを蒸着していないのに金属光沢というか、金属面相当の反射を得られるフィルムが出来る。これは例えば金属を使っていませんから電波の吸収がありませんので、透過します。だから、携帯とかに自由に使えるとか、いろいろな応用が考えられています。
 それから、ナノカーボンが出てまいりましたので、材料屋はこれを何とか自分のところへ引っ張り込みたいということでいろいろな細工をいたします。例えばカーボンナノチューブですと、透明電極とか半導体とか電池材料に使えないかということでいじってみるわけです。
 これは実はナノテクプラットフォームの御支援も頂いたのですけれども、2層のCNTをうまく使いまして、透明導電フィルムを作っております。今の金属系のものは柔軟性がないわけですから、コーティング材料でこういう非常に高透明で、かつ伝導性の良いものが出来てき始めまして、タッチパネルだとか表示体とかいうものに使えるようになってきたということです。
 これは今度はシングルの方のカーボンを半導体ポリマーと一緒にして、最初バンドルであったのを超音波できれいに分散いたしまして、それを塗ってやりますと、きれいな半導体特性を出します。オンオフ比で10の6乗、13ぐらいの伝導度を出せるというようなもので、将来的にはフレキシブルなアレイを作っていきたいと、あるいは使えるのではないかと考えております。
 それから、これは水の場合なんですが、これはナノ分析がいかに役立ったかということです。RO膜というか、水の浄化用の膜の表面というのはこういう袋状の突起がたくさん出ておりまして、それで表面積を稼いでいるのですけれども、その袋のこのところに小さな穴が開いております。その穴のサイズが問題でありまして、実はボロンが飲料水では非常に嫌われます。WHOから減らしなさいということを言われておりまして、じゃあ、穴のサイズを小さくしようよと。それで、これも経験的にとても大変です。何とか測れないかということで、陽電子消滅を使いますときれいにこの穴のサイズが測れました。測れて見えれば、開発が進むということです。
 これが最後です。DNAチップをやっておるのですけれども、私どものDNAチップは、表面に柱状構造を作りまして、その柱状構造の天面にうまくDNAをきれいに貼り付ける。このところにちょっとナノテクを使っている。さらに、それをかき混ぜるためにビーズを柱の間に使うということで、拡散速度を上げるということを使いまして、非常に高感度のものが作れるようになりまして、iPSの方でお使いいただいて、ある発見に貢献をさせていただいた。それから、ごく最近ニュースでやっておりましたけれども、1滴の血液で13種類のガンを検査しようというようなプロジェクトが立ち上がりましたけれども、そのことにこれを使っていただけるということになっております。
 くどくど申し上げましたけれども、有機材料をいざやろうとすると、我々は事業化するには材料の市場規模が非常に問題になりまして、将来的に大きくなるよという見通しがないとやれないんです。その一番大事なところは、発明・発見していいものが出来た、面白い効果があるよといっても、何に使えるんだと、アプリケーションの見通しが立たないことには先へ進まない。アプリケーションを見付けて、その後にさらに性能、あるいはコスト、あるいは生産に関わる行動をして初めて事業に至るわけです。
 我々の有機材料の開発にはナノテクのいろいろな要素が非常に役立ってきましたねということでありますが、今後、じゃ、どういう材料を開発していくんだということにつきまして、やはりここに方向性が必要であろうと。ここには書いてないのですけれども、やはり大きなベクトルを持って、日本国として勝っていけるというか、競争力のある分野を狙ってやっていかなければいけないということ。私どもで考えておりますのは、やっぱり環境、水、エネルギーでグリーンイノベーション、あとはライフの問題。それに対して、ナノテクノロジーでキー技術を創出していかなければいけないなということであります。
 こんなのが出来るよというのはいいんですけれども、実際に物を作ろうといたしますと、その中身が分かっていないと展開はできないし、それから、生産を継続する、品質をキープするということはできなくて、まだまだナノの分野のサイエンス、あるいはテクノロジーの中身、あるいは大面積を作るとか、そういうものが今後も更に必要であると考えています。是非、更にナノ物質、ナノ効果を発見、発明して我々に提示していただければと、物にしてみせますということです。
 とりあえずここまでです。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対して、質問などありましたら、よろしくお願いします。
 産業界の方から御質問いただいてもいいですよ、どちらの。
 はい、どうぞ。

【曽根委員】
 東レさんのような大企業の基礎研究部門というのは非常に強力で、こういう新しい技術がどんどん生まれてくると思うんですけれども、これをどうマーケットに持っていくかというときに、まさに死の谷を越えるということでしょうけれども、自社の事業部門の方へ渡していくと思うんですが、そうすると、なかなかフィルタリングが厳しい。むしろ世の中に出して、ベンチャー化というか、いろいろな技術を物にする仕組みがあると思うんですけれども、そこら辺のところはどういうふうにお考えですか。多分こういうところでいろいろな新しい技術が生まれてくるんだけど、それをむしろ積極的に外へ出して、みんなと一緒にマーケットへ持っていった方がいいんじゃないかと、そういうものもたくさんあるような気がするんですけれども。

【大林委員】
 要は、どこへ持っていこうかというアプリケーション探しというのはとても大変で、自分たちで世の中を想定して、自動車業界に持っていこうとか、あるいはショーに出しますね。ショーに出して、自分たちが思っていない分野の方から声を掛けられるとか、やっぱりそういう露出をして、それでお客さん探しをするんです。それで、先ほど申し上げているのは、国としてもある方向性、ベクトルの方向があって、そこに向かって物事を進めていくということがあると、我々としてはそこに、こういうものあるよと持っていきやすい。

【曽根委員】
 マーケットとしては東レさんとしては小さくても、グローバルニッチで結構、特定するとすごく大きいと。むしろそういうときは、ここの研究部隊のほかのところと一緒になって外へ出てしまう、新しい会社、ベンチャーを作ってしまう、そういう仕組みも考えられると思うんですけれども、なかなかそういうのは難しいんですか。

【大林委員】
 私、研究の人間なので、そこはちょっと申し訳ない。もちろん我々の技術を、我々の事業分野外のところ、我々の隣の分野で是非やりたいということがあれば、我々の技術を出してやっていただくということは当然のようにあるわけです。それこそ飛行機というのは、我々、複合材料をやっていますけれども、飛行機はやっていませんから、そこへお持ちするとか、スポーツへ持っていくとか、いろいろなことをいたします。

【川合主査】
 ほかにいかがですか。
 はい、どうぞ。

【岡野委員】
 シーズに関してはこれでしっかりとナノテクの追求がされて、ここに指摘されているようないろいろな材料が出てくると思いますが、一番最後のところの御指摘のグリーンイノベーションとかライフイノベーションという21世紀に新しい方向にかじを切っていくようなそういうフィールドは、従来のシーズ開発を進めていっていれば出てくるというわけではありません。目標を達成するための新しい体制作りなく、従来のままの科学技術追求では成功しないことは誰もが考えているところです。
 それで、今の御質問にも関連するわけですが、やはり我々が意図的にグリーンイノベーションをどう作るかということと、現状の材料のシーズを目標の達成にどのように新しい概念と技術を融合、マッチングさせて、どう次に新しいデザインを実現するかというのがないと、実際にはグリーンイノベーションとかライフイノベーションというのは、空論になってしまいます。確かに誰かがこういういい材料があれば使ってくれるんじゃないかという期待の基に、今までずっと応用研究者、ユーザーに丸投げしてシーズ開発が行われてきたように思います。基礎と応用の連携がないため、必ずしもいい材料を持っているところが新しいシステムを作っていっているわけではないのです。
 特にアメリカの方は、むしろ出口側のニーズサイドの方から、グリーンイノベーションするために必要な項目を明確に示すことで、基礎作りに適切なフィードバックがあり、その中でどんな新しい材料が出てくるようにブレークスルーするかが目指されています。ちょっと出口設計的な方からの考え方に対して、シーズ側が自分の技術の単なる流用で行くという、今まで日本はずっとこういう形で開発が進められてきています。これでニーズ側の適切なフィードバックなしに、ずっとこういうシーズを開拓していくやり方で新しいものが切り開けていけるのかどうか疑問です。
 特に国家プロジェクトで国が何かやろうとするんだったら、もうちょっとニーズとシーズのマッチングのところを、新しい研究体制を作って取り組んで行く必要があります。ユニークで優れたシーズがその価値を十分に発揮できるためのシーズとニーズのマッチングのできる研究体制が必要であると思われます。優れた科学技術基盤を社会的な価値にまで進めて行く新体制を考えていくべきであり、現状の大学、従来の研究所でできることの追求から一歩前へ進めていくことが大切です。あるいはそれを生かすためにそういうプロジェクトを起こすというふうに考えるべきなんじゃないかなというふうに思うんですが、いかがでしょう。

【大林委員】
 明確なアプリケーションの目標があるというのは、これはもう私どもにとって非常にハッピーなことなんです。そういう方向性のある技術開発という分かりやすいのは、さっきの飛行機だったら飛行機に持っていくよということで、飛行機に持っていくためには、どこまでの強度があって、どこまでの材料設計が要るんだという、その方向性がはっきりしているからやっていける。だけど、そのことのためには、そのことを支えるための要素技術をちゃんと持っていないといけないということがあるんです。
 だから、2面あって、新しい分野に既存のものをアプライするのは、それは簡単な話で、そこは私どもはアプリケーションイノベーションと呼んでいますけれども、やれるんだけれども、新しい機能を生み出して新しい世界に投入していく、だから、両面で、やはり基礎的に種を作っていくという作業と、それから、これからの世の中で何が本当に必要なのか、そこに向かってどうアプローチしていくかという、両方の面を私どもは持たないといけないと思っています。

【岡野委員】
 今回の提案は前者だけですよね。後半の、じゃ、具体的にどういうふうに向けてやっていくかということが重要であると思います。

【大林委員】
 申し訳ありません。どうしろというところまでは考えがまだ至っておりません。

【岡野委員】
 是非そこのところを併せていくと、優れた材料開発がシステム全体を変革し、次の時代を切り開くと思います。グリーンイノベーションとかライフイノベーションをこういう材料を使ってどんなことが具体的にやれるかという、そのテーマ設定のところに新しい仕組みが必要です。21世紀型の研究所、大学院を作っていく必要があると思います。新しい研究者育成のためにもこの改革は進める必要があります。そのような新しい環境の中で、新しいプロジェクト編成により世界に先駆けた発展があり、今まで遭遇したことのないようなチーム作りが出てくると、大きな発展が実現する新しい力になると思われます。

【大林委員】
 私も同感でありまして、要するに、先ほどありましたけれども、新興国に追い上げられてきて、コモディティー化したものは大体どんどんやられていくわけで、次の世界に向かって我々は新しい材料を提供していかなければいけない。だから、じゃ、日本国は、我々はどっち向いていくんだと、そこを描いていかなくてはいけないという、誠にそのとおり、同感であります。

【川合主査】
 今の議論は、バックキャストのロードマップ、それから、フォアキャストのロードマップ、そことの接点というところで非常に議論のあるところなんですが、もし後で時間があればまたしたいと。
 ほかに何か御議論はあるでしょうか。よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは次は、長我部委員からお願いいたします。長我部委員は、産業界からのナノテク・材料科学ということですが、エレクトロニクスやIT関係のそういうベースに立ったお話だと思います。

【長我部委員】  それでは、総合電機という立場でお話しさせていただきます。まず、ナノテクを利用して製品になったものからレッスンラーンドを交えて御紹介します。
 左端のネオジム・鉄・ボロンという磁石ですけれども、ディスプロシウムという、非常に高価で中国でしか今のところ生産できないものを添加しないと性能を発揮しない磁石ですが、従来と同じ性能で、ディスプロシウムをゼロ、あるいは物によっては大幅にディスプロシウムの使用量を減らした磁石を製品リリースしました。これは、元素戦略でNIMSでやっている研究で、このドメインバウンダリーが従来非磁性だと思われていたところが磁性だということが分かってきました。そういう知見を基に、新しい製品をリリースすることができました。
 これは佐川さんが発明して、日本が世界一のシェアを持っている強い製品なんですけれども、バックグラウンドのサイエンスがあまりなかったんです。そのため、工場でいくら改良しようとしても結局試行錯誤の繰り返しでした。元素戦略拠点でサイエンティフィックなアプローチで背景となるのフィジックスが分かることによって大いに改良が進んだということです。改良ではありますけれども、同じようなアプローチは新しい物質系の探索にも使えるはずです。ナノテクをサイエンス面から進める、国のプロジェクトの重要性が分かりました。
 それから、この右端ですけれども、電子顕微鏡です。半導体の測長に使う測長SEM、CDSEM、Critical Dimension SEMと英語でいいます。80年代の終わりから90年代に半導体のプロセスをコントロールするのに寸法をちゃんと測らなければいけないということで、従来、光を使っていましたが、光の波長で追い付かなくて電子になりました。これは計測する装置の側のナレッジと、それから、半導体、あるいはそれのマスクに使っているレジストという材料の相互作用をよく知らないと電子で半導体を壊してしまうんです。したがいまして、材料サイド、ナノテクサイドのナレッジと、それから、装置のナレッジ、両方がうまく合わさることによって世界で差別化できる製品が出来あがりました。
 それから、DNAシーケンサです。これは成功と失敗が両方あります。これは和田先生の国のプロジェクトで、従来の平板ゲルを使った電気泳動に代わってキャピラリーアレイ型のDNAシーケンサを私どもの神原という研究者が発明しました。、ヒトゲノム計画の7割から8割はこの製品で解読しました。ところが、その後NIHがこの分野に大規模投資して、幾つかのシーズテクノロジーが大学で生まれ、それがベンチャーになって、今はイルミナという会社のNext Generation Sequencing、NGSと呼んでいますけれども、これが世界を席巻しています。
 そういうことで、1回目は勝ったんですけれども、2回目をやられて、次の世代が今、世界中でナノポアという新しいアイデア、ナノテクを使って試薬を使わないシーケンサを考えています。川合先生なんかのところでもやってらっしゃいますけれども、これもうまくローンチさせないと世界に負けるということで、シーズの技術までは来ていると思うんですけれども、これをどうやって次勝っていくかということで、これも成功と失敗が来ましたので、次、是非成功にしたいなというような例です。
 国の科学技術政策も、政策課題や社会ニーズと科学技術をつなげなければいけません。我々も総合電機として、社会のトレンド、社会の課題を知って、それを解決するようなシステムなりソリューションを作ろうとしているんですけれども、そこの革新には材料やデバイスプロセスが必要です。そうすると、ソリューションとナノ材料・デバイスの距離をどうやって詰めてこれを結び付けるかというところが一番課題になっています。それはやはりインターフェースレイヤーのコミュニケーションの頻度だと思っています。
 3Mで会長をやっていたジョージ・バックリーの話によると、彼らはシーズのテクノロジーはいろいろ持っていて、ニーズの情報やアイデアもたくさん持っていて、とにかくその間のミーティングをたくさんやるんだと。確かにこういうレイヤーとこういうレイヤーのコミュニケーションパスが非常にたくさんある。我々も大分やっていますが、まだ少ないかなと思います。、材料、ナノテクとその上のレイヤーのインターフェースのコミュニケーション機会をどれだけ増やすかということが一つ鍵だなと思います。

 これは我々の課題をいろいろ述べています。技術が多様化してきて、、しかもタイム・ツー・マーケットを早くしなければいけない。ということで多様化、短期化ということが起こっています。そこで、いろいろ企業だけでは解決できない問題があります。
 それから、3番目に書いてありますけれども、材料科学とかベーシックナレッジが不足しているがゆえに不具合を起こすという例がたくさんあります。認定・認証を取得するだけではなく、深いサイエンスを詰めておく事が必要です。
 それから、言うまでもなく、芽の研究の立ち上げ・長期的推進。これはやはり一企業では難しいので、産官学連携でやらなければいけない。
 実用化の段階では、安全性とか、それから、標準化、規格、こういったところを今押さえておかないと普及できないので、これは一企業だけではなくて、日本としてのストラテジーを持って進めたい。
 それから、さっきのインターフェースにも似た話ですけれども、いろいろなレイヤーでのコミュニケーション機会をとにかく増やさないと、デバイスとかナノテク・材料からマクロな社会システムまでつながらないということで、そういうものを相互活用し、あるいは相互コミュニケーションをする機会を増やしたいということです。
 提言として書いてありますけれども、特に大型設備、SPring‐8、KEKのPF、J‐PARC、「京」もそうですし、新しく出来るポスト「京」もそうかもしれません。是非こういった技術を使うことによって差別化をしていきたいと思っています。
 それから、意外と欠けていると思っているのは人材交流で、今、企業から大学へ行くというのは、あるんですけれども、逆が極端に少なくて、正確に覚えていませんが100対1ぐらいという統計を聞いたことがあります。これも過去を振り向いてみれば、我々の研究所にも大学からかなり人が来ていて、大学から民間という動きがあったんですけれども、これが減っていて、先ほどのシーズとニーズをつなぐ意味でももうちょっと活性化できないかなと思います。
 たった今の企業の状況は、企業文化とか企業の癖みたいなものがあって、そこに大学から人が来ることによって存分に働けるかというとなかなかそうでもないのかもしれないんですけれども、企業活動も大分グローバルしてきて、プラットフォームとして誰が来ても働けるようになっていますので、これは是非やるべきかなと思います。
 それから、国家プロジェクトの多様化というのは、大型のプロジェクトを立ち上げると同時に、芽のプロジェクトとか基礎研究を含めて多様性を持って、ポートフォリオを考えてやっていただきたいと思います。それから、政府支援という面では、先ほどの安全性のアセスメント、標準化、そういったところは日本全体として立ち向かっていくべきだと思っています。
 4番目は先ほどのコミュニケーションの話です。企業内でももちろんやっているんですけれども、公的機関をハブにしたいろいろなレイヤーの交流というのは、一企業がやるよりは更に広い範囲でコミュニケーションが取れると思います。雑駁ですけれども、私からのお話は以上です。 

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、何か御質問があれば。いかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

【松下委員】
 先ほどの御議論にもありましたように、例えばナノテクの大型装置というのは国で買うしかないものも当然あるわけで、それを産業競争力に応用していくには、スピードと、あとはクローズドシステム、この二つは不可欠だと思っているんです。日立様の場合には、それに加えてビジネスプレーヤーの交流もおっしゃっているんですけれども、人の交流の場合には更にクローズドが難しいような気もするんです。そういったことに関して、例えば諸外国様との交流はどうなってらっしゃるのかとか御存じだったら教えていただきたいんですが。

【長我部委員】
 交流もレベルによりますし、それから、クローズドでやることが必要であれば、そういう契約を結ぶことによって十分可能だと思っています。NDAベースでお話しする、あるいは数年企業に来て研究されるとか、こういうことは必要に応じてそれ相応の交流が可能な手段はあると思っています。

【松下委員】
 例えば中国や韓国のプロフェッサーが日立様のところに行くといった例というのは実際にあるんですか。

【長我部委員】
 あります。もちろんどこまでお見せするかはその契約に依存しますが。中国の大学とも共同研究はやっていますし、そういう意味では韓国の大学ともやっていますし、それは相互に来られますし、NDAの範囲内で我々も当然開示します。もっと言えば、海外の拠点でハイヤーした人は、やっぱりローテーションが日本の社会と違ってかなり早いので、ほかの会社に移ります。もちろん守秘義務はありますけれども、頭の中はなかなか縛れないので、そういう意味ではある程度知識というのは流通してしまうと思っています。逆に言えば、流通する速さよりも早く新しいものを作っていかないとやっぱり勝負に勝てない時代なのかなと。逆に言えば、流通した方がお互いに競争力は上がるんじゃないかと私は思っています。

【松下委員】
 ありがとうございます。

【川合主査】
 ほかにいかがでしょうか、長我部委員の。よろしいですか。
 じゃ、また多分いろいろあると思いますが。
 それでは、福島委員より説明をお願いいたします。福島委員は、東芝ということで、やはり少しエレクトロニクス、IT、そういった面からでのお話です。

【福島委員】
 福島です。今御紹介いただきましたように、長我部さんが電機全般ということでお話しくださいましたので、どちらかというとエレクトロニクスにフォーカスしてお話をさせていただきます。
 エレクトロニクスというと、基本、デバイスを小さくすることによってここ40年間繁栄してきたと申し上げてもそんなに間違いではないかと思います。この縦軸は、あるデバイスの大きさの時期にどれだけの会社がそういうデバイスを作れていたかということになります。現在この辺ぐらいになっているんですけれども、そういう最先端のデバイスを作れる、これはロジックデバイスに限っていますけれども、どんどん減ってきて、東芝もこの辺で落っこちて、今はこういうことができていないという状況になっています。
 これは一つは、最先端のデバイスを開発し作るコストが非常に高くなっているという経済的な理由もありますし、あともう一つ、実際に原理的な限界にも近付いてきているという部分もあります。そこで、私どもは例えばライフサイエンスであるとか、それから、メカニックスであるとか、そういうものと融合して新しい価値を持ったデバイスを作ろうという方向、あるいは全く新しい動作原理で動くものを作ってこの局面を打開しようと努めてきているわけですけれども、それはなかなか一朝一夕にはいくものではございません。
 これは一つは、なかなかそういう異分野間の融合が難しいということもあろうかと思います。この絵はJonathan Rothbergという方で、アメリカでは非常に有名な方らしいんです。どういうことをやられているかというと、1,000ドルでゲノムの全解析をするという会社をお作りになって、それを1兆円ぐらいで売って、そこの会社の社長をまだやっている。そういうことでむしろ経済界ではそういう理由で有名な方です。どういうことをおやりになっているかというと、カメラなんかに入っているCMOSセンサーの、それは数百万個のスイッチだったりセンサーが小さなチップの上に並んでいるわけですけれども、その上に検体のDNAを並べて、それで非常にスループットの良い全DNAのシーケンシングをしてしまうと、そういった会社を運営されている方です。
 でも、例えばエレクトロニクスの方から見ると、これは割合とありきたりのCMOSセンサーをお使いになっていて、我々のエレクトロニクスの最先端あるいはその先にどういうものがあるかというものを別にお考えになっているわけではない。逆にあちら側から見れば、エレクトロニクスの先はお分かりにならないし、実は我々がこの方の講演なんかを拝見しても、やっぱりライフサイエンスのどういった最先端の部分をお使いになっているかというようなところはよく分からない。つまり、エレクトロニクスとライフサイエンスだけにとどまらず、異分野間の本当の最先端、あるいはその先にどういうふうに技術を持っていこうかということについてはなかなか理解し合うことも難しいし、本当にそこで融合していくのにはまだまだ壁があるのではないかなというふうに私たちもいつも実感している次第です。
 そういったことを乗り越えようと思って一つ我々がやっている活動は、これ、International Nanotechnology Conferenceというのを毎年開催しています。これは日米、それから、欧州のこういった企業とかコンソーシアムが参加しているんですけれども、基本的には最先端のその先をお互いに理解しようということで、エレクトロニクスだけではなくていろいろな人たちをここに呼んでこようというのが当初の理念でした。
 実際に10年やってきたんですけれどもなかなかそういうことにはならなくて、残念ながら、ナノエレクトロニクスに関しては活発なんですけれども、その先の異分野融合という手はなかなか打てていない。この会議には文科省からも御参加いただくケースが多いんですけれども、ちなみに来年は福岡で、オーガナイザーのメーンはNIMSの知京さんがやってくださっていまして、そういった異分野融合に関する新機軸を是非展開したいと張り切ってくださっていますので、是非皆さんも御参加いただければと考えています。
 では、どうするかということなんですけれども、そういうことで割合と成功しているコンソーシアムの例としてベルギーのIMECの例を挙げさせていただくのがいいかと思います。これはヨーロッパですので、もともとアプリケーションに非常に強い人たち、企業がたくさんあって、そういうところの人たちの技術であったり、アイデアであったり、それから、こういったテクノロジーを持った人たちが集まってコンソーシアムを作っているわけです。非常に最先端のアプリケーション、それから、最先端の技術、そういったものを彼らは大きなファブも持っていますので、かなり実用に近いレベルまでプロトタイピングできるという意味で非常に成功なさっているんじゃないかと思います。
 ここに小さく書いてあるんですが、彼らは自分たちをどういうふうに呼んでいるかというと、talent magnet、つまり、世界中のいろいろな才能だったりアイデアをここに糾合することができるというようなそういう自負を持っておられると思います。こういうコンソーシアムが成功している一つはこの方のお人柄という部分も非常に大きいというふうに皆さんおっしゃっているんですけれども、もう一つ、この方は、私ども東芝にも前ずっと何年も何年もいらっしゃって、参加しないかというふうにお誘いをいただきました。非常に熱心というか、ちょっと失礼な言い方をすれば、非常にしつこい。お断りしてもお断りしても半年後にまた来てしまう。そういったことで、技術を世界中から集めること、それから、新しいアイデアを世界中からスカウトするということに関してものすごい熱意を持っておられると思うんです。多分そういった異分野を糾合するといった、こういった機能が、例えば日本の研究所であるとかコンソーシアムでもこれからそういう活動をしていただくことが非常に重要ではないかと思っています。
 これは、全部じゃないんですけれども、フランダース地方のお金が少し入っている。そういうところで世界中から人を集めてしまっていいのか、海外の人を集めてしまっていいのかなと、何度も東芝にいらっしゃっているときにこの方に聞いたことがあるんですけれども、ここに書いてありますように、優秀な人材が集結することは地域の文化と経済の発展にプラスになるんだからそれでいいんだというのがお答えでした。もちろんこれは公式なお答えというか、割合と型どおりのお答えをいつもなさっているのかもしれませんけれども、うーん、なるほどなというふうに感心した覚えがあります。
 そういったように、非常にいろいろな分野の技術者、研究者が集まるというのはほかにもいろいろあるんですけれども、これはスタンフォード大学のCISと呼ばれている、産学連携のコンソーシアムです。入っている会社がこういうふうにたくさんあります。ここに書いてある文章は、経済産業省の方が多分ここのリーダーである西先生にお会いになっていろいろお話を伺ってきたときのコメントだと思います。それをちょっと丸々書かせていただきましたが、非常に重要なのは垂直統合と、それからもう一つは、本当に何が必要なのか。西先生はビジョナリーという言葉が非常にお好きでして、おそらくビジョナリーなアプリケーションあるいは世の中がどういうふうに変わっていってほしいかというビジョンを持って技術を開発するのが大事だと。先ほど岡野先生がおっしゃったそのとおりのことなんですけれども、そういったことを我々はここでかなり学ばせていただいたと思います。
 あともう一つ、実はこのコンソーシアムは毎年2回、ラウンドテーブルミーティングといってもう少し小規模な、参加者各社が集まって研究方針とかに対していろいろな言いたいことを言うという会議があります。そこで一番楽しいのは、あるアイテムに対して、同業他社やコンペティターがどういうふうに考えているのか、どういう将来のビジョンを持っているのかというのが分かってしまうというか、ずっと話をしているうちにだんだん分かってくる。そういったことでそこが楽しいんですけれども、例えば日本でそれをやろうと思って日本の会社だけ集まると、今、半導体なんかをやっているのは非常に数が少ないので、おそらくそういったハッピーな状況にはならないんだろうと思います。そういったことも含めて、かなりオープンにしていくのが大事なんじゃないかなと思います。
 そういう意味では、ナノテクノロジーの位置付け、垂直統合でいろいろなところでナノテクノロジーを生かしていくという、このビジョンに関しては大変ありがたいものと思いますし、もう一つ大事なのは、具体的な仕組みを、特に先ほどから議論の出ています、将来の社会がどうなるかというビジョンを踏まえてどこをやるかというのを具体化していくということが非常に重要になるんではないかなと思います。そういう意味では、SIPとか、それから、ImPACTのリーダーの下にこれから御議論いただきたいと思います。
 ちょっと飛ばしますが、実はそういった非常に大きなビジョンの下で我々も仕事をしたことがあります。これは昔、ソニーと東芝とIBMとでCellというチップを作って、こういったゲーム機だけではなくて、それをネットワークで組み合わせてスーパーコンピューティングしようとか、多分そこにはビッグデータとかクラウドとかそういうものがもう15年ぐらい前ですか、そういったアイデアがありました。それはこの久夛良木さんという非常にカリスマ的なビジョンのある方にリードされていっていたんですが、次のステップを、これも成功しているコンソーシアムの一つと言われているニューヨークのニューヨーク州立大学のAlbanyのところでやろうとしたんですが、残念ながらこれは途中でだめになってしまった。
 多分ここで描いたビジョンは、かなりの部分、皆さんがお持ちになっているスマートフォンの中に入っているチップ、これはARMという会社が基本設計したチップが、今、携帯電話だけでなくて、ほとんどあらゆる電気製品の中に入りつつあると言ってもそんなに間違いじゃないと思いますけれども、彼らのビジョンというのは実は結構こういうのに近いものもある。そこはこのAMRという会社が立てていたビジョンなんですが、ちょっとそれは別のストーリーなので、今日はここまでとさせていただきます。
 最後はこういうふうになっていますが、やっぱり一番大事なのは、将来のビジョンをどういうふうに展開するか。そのためには、コンソーシアムであったり、研究所であったりの在り方についても、多分オープンで上下全部入ったものをこれから考えていく必要があるんではないかと考えています。以上です。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 御質問いかがでしょうか。

【田中委員】
 よろしいですか。

【川合主査】
 はい、どうぞ。

【田中委員】
 今お話しいただいた中で、世界的なエレクトロニクスの拠点としてIMECとかAlbanyの話がありました。日本も総合科学技術会議が今、総合科学技術・イノベーション会議ですか、CSTIがかなり力を入れてTIA(つくばイノベーション・アリーナ)というのをやっているわけです。今の福島委員のお話の中にはTIAは一言も出てこなかった。それから、大学のことについては、これはAlbanyのCNSEというカレッジですか、これは確かに面白いと思うんですけれども、日本の大学との連携とかそういうのは全く興味がないということなんでしょうか。 私は非常に心配なのですが、TIAという組織を一体どういうふうに見ておられるのですかね。日本の特にエレクトロニクスの今、トップ、頼りになっているのは東芝さんと言われているわけですけれども、そういう立場から見たときに、TIAというのはもう箸にも棒にもかからないような存在なのか。あるいは、CSTIはかなり力を入れているはずなんですが、組織としては欠陥が確かにありますよね。トップの企業から見て何が問題なのかということをズバッと言っていただく必要があると思うんです、こういう委員会では。

【福島委員】
 ちょっと言い訳めくんですけれども、つくばはまだ出来て10年に満たない。IMECはもっと、30年ぐらいの歴史を持っていますので、一つはそこの差かなという気が致します。私どもはもちろんTIAには非常に大きな期待を持っていて、人も送らせていただいていますし、そこで新しい技術を展開しようとは努めているんですけれども、まだまだやらせていただいているアイテムも少ないし、特にアプリケーションについてはなかなかTIAから来るというのは難しいのかなとちょっと思っています。

【田中委員】
 つまり、私、申し上げたかったのは、例えば産学連携にしてもアメリカはもう1970年代に一つの企業が基礎研究を抱え込むのは無理だということに気が付いて、80年代から産学連携について相当に政府がいろいろな面で施策を始めたわけですね。例えばバイドール法は1980年に始めているし、それから、大学との連携を促進するために共用施設、日本ではナノテクノロジープラットフォームが今頑張っていますけれども、ああいうものなんかも含めて総合的にいろいろ始めたわけです。日本はそれに対して20年後れてしまったわけです。また、最近の動きを見ていると、更に30年後れるのかという気がするわけです。
 今、国はとにかく幾つか効率的に資金を投入したいですよ。それに対してやはり現実を見てどうすべきなのかということは、やはり日本の企業のリーダーとして何かやっぱりこういう委員会でも具体的に提言をしていただいた方がというか、そうしていただかないと政府は結果的にやっぱり無駄に今後も金を投入し続けるんじゃないかと心配です。これはこの後で議論すべきことかもしれませんけれども、そういう歯に衣着せぬ提言をしていただきたいなと私は思います。

【福島委員】
 御指摘のとおりなんですけれども、これは私の純粋に個人的な考えですが、やはり最大の問題点は企業側のオープンイノベーションに対する考え方。特に東芝はそういう点ではまだまだ外側に対して十分開けていないし、外の技術なり学理を導入するということに関しては、まだ自分たちでできるんだと思っている部分が今まではかなりあったというのが正直申し上げて事実だと思います。
 ただ、やはり先ほどからアプリケーションであるとかそういうことに関しても十分ではない、世の中の先が十分見えていないというのも最近分かってきたというのもありますので、もちろんつくばなりそういうところに参加させていただきたいという気持ちはどんどん強くなっています。ただ、まだ十分慣れていないので、さっきIMECが人柄がいいと言ったんですけれども、やっぱりしつこく引っ張ってくださっている方、西先生もそうですけれども、そうやってこちらから入っていくのを待つだけじゃなくて、引っ張ってくださる方が絶対必要だと思います。

【田中委員】
 一言だけよろしいですか、最後。つまり、それは、リーダーをきちっと選べということですか。

【福島委員】
 そうです。もちろん今のリーダーは皆さんそうやってくださるんですけれども、それはやっぱり企業側の気持ちももっとくんで、ヘジテートするのを無理やり引っ張っていくようなそういうところまでは多分なかなか日本じゃ難しいと思うんですけれども、そこを超えないとそうならないと。

【川合主査】
 同じことを僕も聞いたことがあって、TIAは早い話、上から目線で見て、何かしたら報告書を出せとすぐ言うものだから、それで嫌になってしまうという話は聞きました。ちょっとそういうことも。

【福島委員】
 東芝に限っていえば、はっきり言って、大学との関係、それから、そういったコンソーシアムとの関係も従来、お付き合いという部分が正直言って大きかったと思います。でも、だんだんそれではやっていられないというのもこれまた事実だというふうにも我々思っていますので、変わっていくことを期待しています。

【川合主査】
 ほかに御意見はありますか、今の福島さんの。よろしいですか。

【福島委員】
 あくまで今日のは個人的な意見でありますので。

【川合主査】
 4人の方に是非お伺いしたいんですが、これは国がどういうふうに関与するかという問題についてです。企業の方は、自分たちでできるところはなるべく国に逆に関与してほしくなくて、全部自分の中でやってしまいますよね。大体、国に関与してほしいというのは、一つは非常にリスキーで、やっぱり自分の会社だけではできない、だけど、将来有効になるかもしれないので国に関与してほしいと。でも、実際はそうじゃなくて、リスキーで、なおかつ将来性もないけれども、社員が騒ぐから国にちょっとやってもらおうかというふうな、そういう例も結構あるんですね。
 そういう意味で一言ずつコメント頂きたいのは、このナノテク・材料分野において、今後どういうふうに、またどこまで、どんな形で国が関与するのが望ましいと思われるか、是非一言ずつ言っていただけるとありがたいんですが。向こうからでも結構ですかね。

【五十嵐委員】
 一言でというのは難しいのですが、人材というお話をしましたが、やっぱりこの分野の人材が枯渇するというのが一番怖いんです。自前でやるにしても、あるいはシーズをどんどん生み出すにしても、人材が必要です。そのためには、やっぱり大学にはそういう部門があって、そういう学部があって、研究開発で世界最先端のことをやっている先生方がいて、それで、いつも学会もにぎわうし、それから、そういう分野の会社も競争力が持てる。
 ですから、そういう意味で、そこにやっぱり国が関わらなければどんどん、例えば金属系材料の学科というのは、金属という名前がどんどんなくなっていますよね。でも、金属材料は今でもやっぱり素材の重要な柱の一つだと考えていますので、これをどうするかというのはすごい大きな問題じゃないかと思います。金属の次にはシリコンあるいはそれ以外の素材にもどんどん波及しますので、材料というのはやっぱり重要だというのが分かるようなそういう施策を是非お願いしたいなと。それによって人材が活性化して、その分野も繁栄すると、そういうふうに考えています。

【川合主査】
 材料分野における、とにかく人材育成でその分野を伸ばしていくというのが国の関与の重要な点だと。
 では、その次、大林委員、いかがでしょう。

【大林委員】
 先ほどから申し上げたのは、物を作るということも大事なんですけれども、ベーシックなサイエンスをきちっとやっぱり作り上げないといけないなということを一面には申し上げております。それで、ちょっと言葉悪いんですけれども、先生方が世の中に出せるようなものづくりをされようとしても、それはちょっと申し訳ないですけれどもとてもじゃないけど物にはならないので、それよりも原理原則、新しい材料を生み出すとか、それから、こういう原理があるんだよとか、そういう部分をやっぱり特に文科省の関係の先生方にはやっていただきたいというのが私どもとしては……。

【川合主査】
 分かりました。ベーシックなサイエンスをちゃんとやることでものづくり産業の大きな下支えになるということですね。
 では、長我部委員。

【長我部委員】
 国の関与をどこまでにするかということを考える上で、企業の側がまず何をクローズすべきで、何をオープンすべきだという戦略を我々の立場でクリアにすべきだと思います。事業を伸ばすにはどこかオープンしなきゃいけない、じゃ、全部オープンにするとすぐまねされる、それは自分たちで仕切りを意識していることが大事だと思います。
 その上で国に関与してほしいのは、先ほど大林さんもおっしゃっていましたけれども、人材の循環です。学から産への動きって非常に少ないんですよね。逆はあるんですけれども。共同研究はもちろんあるんですけれども、産業界に来られる方が少ない。その人材の頭脳循環はもっとあるべきだなと思います。
 それから、大きなリスクテーキングなところは、当然国が関与してやるべきだと思いますし、サイエンスをしっかり掘り下げないと、後の問題につながる。ベーシックサイエンスに基づいたアプローチはしっかり国で押さえていただきたい。
 それから、コンソーシアムのような出会いの場は、本来は企業がイニシアティブをとってやるべきじゃないかと私は思います。ヨーロッパの企業はかなり上手ですけれども、本来は自主的に企業が、標準化のメリットなどを考えて、コンソーシアムを作るなり、オープンにしていろいろな知を入れるとか、そんなことをやるべきかなと思います。
 そこまで一足飛びに企業の側としてもマチュアになっていないので、そこはうまく国にリードしていただければイノベーションの場として機能するんじゃないかと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 では、福島委員、一言お願いします。

【福島委員】
 今日お話しした内容に沿ってお話しするとすると、やっぱりマルチディシプリナリーな研究者であったり研究所、そういうものが多分新しいイノベーションを生む場を提供してくださるんだと。もちろんベーシックサイエンスが確立するというか、そこをしっかりやっていただくのは当然なんですけれども、その間の融合が活発に起こるような、基本的に大学というのはそういう場だと。人材ということだけから見れば、多分一つの大学の中にそういうふうにそろっているはずなんですけれども、多分そういう部分は必ずしも学科間あるいは学部間の連携とはなかなかならないのが現実ではないかなと一つ思います。例えば大学以外の研究所であっても、そういったような多様な研究が一緒にされているという場が欲しいなというのが一つです。
 それからもう一つ、そうはいっても、縦軸の非常にビジョンのあるアプリケーション、それから、世の中をどう変えていただきたいかというビジョン、そういうことに関してはなかなか難しいんですけれども、多分これはテクノロジーとか理系のサイエンスだけの話じゃない部分もあるので、そういうところも含めていろいろな御議論をしていただけることを期待したいと思います。
 それから、出口ということに関しては、今、長我部さんがおっしゃったように、なかなか出口を期待していただくのは難しいし、特に日本ではベンチャーという形態が非常に難しいというのも一つあるかなと思います。大体、東芝とか日立とかに入ってくる人たちに、「ベンチャーとして何か外に出てやらない?」と言っても、そういうものを嫌う人たちが多いので、はっきり言ってそれはなかなか日本の会社では機能しないというのも事実かなと思いますし、なかなかそこは難しいので、これからちょっと考えていきたいと思います。

【川合主査】
 分かりました。今、四方に話していただきましたが、続きまして、事務局から、今の四方のをベースにしたわけでなくその以前から作っていたんですが、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策」というのをたたき台として作っておりますので、その案とスケジュール、それに関して御説明いただきたいと思います。お願いします。

【長野参事官】
 それでは、資料2‐2と2‐3で簡単に御説明申し上げます。
 まず資料2‐2の方ですけれども、この委員会の最初の方で川合主査から言及ありましたように、本ナノテクノロジー・材料科学技術委員会でこれから、今回の回、それから、次の10月では学会の関係の委員から御意見頂く回、それから、その次の11月には、これまでの議論を基にして今後の推進方策についての中間まとめに係る審議をいただくというふうに予定しています。
 ただ一方で、基本計画全体の議論に係る議論を別途、総合政策特別委員会で進めておりまして、今年中に大体の中間取りまとめをするというふうに聞いておりますので、10月の総合政策特別委員会ではコア技術に関するような議論があります。まずここで当方の委員会での議論の途中経過を報告するということになっております。
 それから、最終的に当委員会での中間取りまとめ、11月中にはと思っておりますが、それの結果についても、最初のものについて総合政策特別委員会に12月中にインプットするというような全体の流れを考えております。
 次に、資料2‐3です。ちょっと先走りではありますが、前回の委員会での自由討議、それから、本日での御意見等も若干先取りしながら、事務局の方で、今後の推進方策についての論点案、たたき台になりますけれども、御用意させていただきました。これも参考にしていただきながら、こちらの委員会の方で御議論いただければと思います。
 まず2ページ先におめくりいただいて、別紙1の方にありますけれども、別紙1、3枚目ですが、こっちに現状整理(案)としています。これは今回初めてこの推進方策について議論いただくわけでも決してありませんで、平成23年7月の際に、第4期の基本計画での反映も含めながら、この当委員会で一旦報告をおまとめいただいているものがあります。それから、最近の政府全体の戦略としては、科学技術イノベーション総合戦略2014が6月に閣議決定されておりまして、こういった従前の記述についてこちらで整理しております。
 全部で3本柱になりますが、まずナノテクノロジー・材料科学技術を巡る状況・社会的位置付けについて、平成23年当時、従前の認識と、最近の戦略に関する方針があります。それから、次のページで2ポツ目として今後の推進の方向性につきましても、3年前の報告書での認識と、それから、(2)にありますが、イノベーション総合戦略における方針があります。それから、3番目に、重点的に実施すべき具体的研究開発課題についてということで、これも3年前に示された課題、環境・エネルギー、医療・健康、科学技術基盤、それから、震災からの復興といった政策課題に対しての重要研究開発課題が整理されております。
 それで、実は事務局の方では、一番右の欄で、対応する主な施策、現在の文科省関係の主なものを挙げています。それから、最後に、科学技術イノベーション戦略の方で挙げられている課題と、こんなふうに整理しています。
 その次のページは、別紙2になっておりまして、これは今、何ら参考ですけれども、前回の委員会での主な指摘について事務局で整理させていただいております。こういったものを含めながら、また事務局でのこんな、今までの委員会での御議論なども踏まえながらたたき台を用意しておりますのが1ページ目以降です。
 簡単に読み上げさせていただきます。全体の柱としては、ナノテク・材料を巡る現状認識と、それから、推進方策というふうに分けております。現状認識についてですけれども、まずナノテク・材料科学技術の果たす役割として、エネルギー、社会インフラといった様々な社会的課題の解決に資する鍵として大きな期待を背負う国家基盤技術であるということ、それから、地球規模課題、これが多様化していくといった中で、分野横断的な基盤技術として更に新たな役割が期待されるということ、それから、いろいろな応用分野に対する横串的役割を果たすと。また、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらすもの、また、我が国の基幹産業を支える要として機能しているということ、また、社会・産業の新たな潮流を踏まえた革新が期待されるということ、また、科学技術の面でも新たな可能性を切り拓き先導する、また、広範かつ多様な技術分野を支える基盤的な役割を果たすというふうに書いてみております。
 それから、各国の戦略・動向についてです。各国を見ますと、前回の委員会でもCRDSの方から御提示ありました、そういったものも踏まえてまとめております。欧米を中心に官民による重点的投資が過去10数年にわたって継続的に行われていると。例えばアメリカのAlbany、フランスのMINATECといった大規模な集中拠点化を官と共に産学が牽引するということで、技術、人材をグローバルに吸引しているといった取組があります。
 中国、韓国といったアジア各国では、国家イニシアティブとして政府投資が劇的に増大しておりまして、人材・技術も台頭しております。アメリカでは、最近の動きとして、基礎から実用に至る期間を半分に短縮するといったことを目指した国家計画として、マテリアル・ゲノム・イニシアティブも開始しております。各国とも基盤ということで先端共用施設のネットワーク化を推進しているということ、それから、欧米、アジアともに国家標準化戦略とかEHS・ELSIといった対策について研究開発の初期段階から官主導で推進しているというものがあります。
 それから、2ポツ目になりますけれども、具体的な推進方策ですが、こちら、三つの柱でまとめてみております。
 一つ目として科学技術の面ですけれども、圧倒的な広がりのある基礎的、基盤的研究としての振興ということで、ナノテク・材料科学技術は、ほかの広範な分野が次のステージへ進むために必須の基礎的、基盤的研究であって、その広がりを意識した研究振興方策を取るべきであること。
 それから、材料の機能からシステムを提案するといったことが非連続的なイノベーションを創出する鍵になる。セレンディピティを生み出しやすい環境を整えることが重要である。
 特に機能性という面では、革新的な機能を実現する材料の創製のために、機能に着目しつつ材料横断的に研究を推進することが重要。
 構造材料という点では、新規材料の創製に加えて、点検診断・補修・劣化予測といった、その技術をパッケージにしたインフラ維持管理マネジメントシステムの構築への期待といったことを念頭にした統合的なアプローチが必要である。
 また、新しい流れとして、材料データ群の徹底した計算機解析による、情報科学と材料科学を融合した新しい材料設計手法を確立して、未知なる革新的機能を有する材料の短期間での開発につなげることが期待されるということが一つ目の柱です。
 二つ目の柱としては、これは前回平成23年の報告書でもありましたが、「基礎から応用ヘ」、「応用から基礎へ」の循環を改めてまとめてみております。一つ目に、各段階での課題が基礎研究への課題と翻訳されて、基礎研究に立ち戻るような循環研究が行われることが課題の解決とサイエンスの発展の双方にとって重要である。また、戦略作り、これも産学官総がかりで実施するということ、それから、個別のプロジェクトについても、初期段階・企画段階から産学官が膝詰めで議論、協働を行うということ、こういったことが重要である。また、国際標準化戦略、EHS・ELSI対策の取組、国際対応といったことを研究開発の初期段階から並行して推進する。また、研究開発法人の有する強みを生かし、産学官の英知が結集するイノベーションハブを形成することが重要であるといったことで書いてみております。
 それから、最後の柱ですけれども、関係機関の総力をあげた推進体制の構築ということです。国内外においてネットワーク型で研究を推進することが重要。また、異分野の研究者、レイヤーの異なる研究者の交流によって新たな価値を創造する研究推進体制の構築が必要ということ。
 それから、ナノテクノロジープラットフォームの取組というのは、強固な研究基盤を形成する非常に重要な取組であるということ。また、それ以外にも、大学共同利用機関法人とか、SPring‐8、スパコン「京」といった大型共用研究設備など他の共用フレームワークも積極的に活用し、研究資金を効果的・効率的に活用することが期待される。
 また、産学官の力を結集し、次世代の人材を育成する取組、これは技術者の研修とか、それからまた、初等・中等・高等教育といった縦型の連携策があるかと思いますが、そういった形での人材交流の活性化が必要であるということ。
 それから、各省連携ですけれども、現在、SIPが始動するなど府省連携の取組が進んでおるところですけれども、関係各省が所管する施策についても、府省の枠を超えて有機的な連携が可能となる仕組み作りが期待されると。
 こういったことで事務局からたたき台として用意させていただいております。よろしくお願いいたします。

【川合主査】
 ただいまの御説明に対して何か御質問なりあるでしょうか。この後もちろんこれをベースに議論をしていくわけですが、今の説明自身に対して何か御質問はよろしいですかね。
 そうしたら、議事の3として、今の長野参事官の御説明をベースに、今後の推進方策を少し議論したいと思います。骨子としては、ちょうど今説明あった資料2‐3の1ポツ、ナノテクノロジー・材料科学技術を巡る現状認識、ここら辺でいろいろな御意見があれば是非頂きたいということ。
 それから、2ページの2ポツでナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策ですね。ここでも今御説明ありましたけれども、いや、こういうのが必要ではないかとか、こういうところはもっと強調しなければいけないとか。
 それから、もう一つの点は、更にめくっていただいて別紙1の3ページ目に、一覧表になった重点課題があります。ここは少し具体的なものですが、こういうところでも最近の動向としてこういう技術やこういう科学、ナノテク・材料なんかで社会に対する影響も非常に大きいよとか、そういったことで事務局にいろいろなコメントをしていただければありがたいと思います。
 どの項目というふうにわざと分けないで、もう時間も実は40分を切ってしまったので、もうとにかく時間のある限り御意見を頂きたいと思います。どなたでもどの項目でもいいですが、いかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

【松下委員】
 すみません、若輩者が述べさせていただきます。まず1ポツの(1)のところのところで最初に「資源」という単語が出てくるんですけれども、この資源に対応する推進方策として2ポツの方を拝見させていただきますと、逆に資源に関係する言葉がパッと見は出てこないんです。もちろん私どもは実際に、機能性材料研究というこの機能性材料が多分触媒若しくは触媒単体だろうというふうには認識できるのですが、この文章からだとすぐは分からないので、資源に関係する施策も我が国はちゃんとやっていきますよといったことが分かるようなふうにしていただけると大変ありがたいなと感じます。

【川合主査】
 具体的にはどういうふうな言葉を入れるといいということですか。

【松下委員】
 触媒ですかね。「革新的触媒」という単語が、実はお手元の資料であれば、3ポツの従前の認識の後の(2)最近の政府戦略において示された視点というところで、革新的触媒というのがこちらの2枚目の右側の上の方にあります。具体的には、「シェールガス革命や環境・エネルギー問題を解決する「革新的触媒」等の新たな機能を実現する材料の開発」という言葉がありますので、これを2ポツの方にも入れていただければ、資源の方も頑張ってカバーしていくんだよというふうなメッセージになるのでないかなと期待いたします。以上です。

【川合主査】
 ほかにいかがでしょうか。別にこれのベースでなくても、第5期としてここだけはちゃんとやらなきゃいけないという本格的な御提言でも結構です。

【長野参事官】
 すみません。

【川合主査】
 どうぞ。

【長野参事官】
 今、事務局の方でたたき台として出させていただいた資料の中では、ナノテクノロジー・材料科学技術が果たす役割そのものに関わる認識と、それから、推進方策という、具体的にここに書かせていただいているのは、方向性的なものとか、やり方、そういったことに着目したものまでしか書けていませんので、そういった意味で、今、松下委員がおっしゃったような中身というのは、多分これ、3ポツに当たるのかもしれませんけれども、重要な研究開発課題ということで、これについても先生方にどんどん御意見頂ければと思います。

【川合主査】
 いかがでしょうか。
 まず、田中先生いかがですか。いわゆる大所高所から見て、5期どうあるべきか、一番総総論から是非お願いします。

【田中委員】
 気が付いたこと、大きなところで言いますと、中長期でどうするかということ、誰がどこで計画するかというのはいつも問題になると思っているんです。出てくるものは大体は短期的なものが多いですよね。予算要求なんかそういうのが非常に多いので。
 中長期的なものとして最近目立つものとしては、ナノテクノロジープラットフォームではないかと思うんです。あれは今後、各国の中で日本は特に科学技術への予算の投入はそう期待できないわけで、かなり厳しくなっていくわけです。その状況下で、仕組みとか、中長期のシステムの工夫とか、あるいはファンディングの工夫とか、そういうことなしにお金を投入していたら、それは多分じり貧になってしまうと思うわけです。
 ナノテクノロジープラットフォームはそういう意味では、非常に高価な機器を、全体を統合して皆さんがそこにアクセスして効率的に使うというわけで、予算の効率的な使用という意味では、あるいは将来、そのプラットフォームをプロジェクトで必ず共通して使っていくというようなことを考えれば、予算の効率的な利用の仕方あるいはそれを実現するシステムとして大変重要になります。ここに拡充と書いてありますけれども、実際に強化していくことが必要でしょう。そういうメリハリのある方針を持っていかないと、本当にもうじり貧になってしまうと思います。
 例えばその観点から言いますと、推進方策の最初のページですけれども、2番目の現状認識の(2)グローバル社会における各国の戦略と動向のその中に、1ポツ、最初のポツですが、Albany Nanotechとか、あるいはMINATECのことが書いてあります。ここの大きな問題として特徴としては、そういうところに非常に多くの大学院学生がいるという事実があるんです。それは将来の人材育成ということを考えたときに、戦略としてはとても重要な意味を含んでいるわけです。
 ところが、例えばこれに相当するかどうかは別にして、今、TIAというのがありますけれども、そこには学生は非常に少ないんです。ほとんど数えるぐらいしかいないわけです。それで、施策で時間的にも規模的にも後れた上に、将来の若い人材を育てるという面でのシステムもそこにビルトインされていないとなると、これは戦略として成り立たないんじゃないかという気がするわけです。そういったことを全てにおいてチェックしておく必要があるんじゃないかなと思います。
 それから、日本がすごく後れていることについて申し上げますと、ナノテク・材料の国際化標準戦略とか、あるいはEHSとかELSIの政策の問題ですけれども、ナノテクというのはいろいろな意味でのリスクが実は最初の頃から議論されております。それは薬として危ないというようなことだけではなくて、うんと小さい、例えば目に見えないぐらいの送信機や受信機が出てきたときには、それを個人の家にばらまいてプライベートを全部暴くことなんて簡単にできるわけです。そういったことに対するやっぱり倫理性、将来の危険性を未然に防ぐためにはどうすればいいかということまで含めて、いろいろな問題がナノテクにはあるんです。これは全てのナノテクのプロジェクトに関して、例えば一、二%あるいは5%、何%か分かりませんけれども、予算の一定比率を確実にそれに当てて、その問題を議論させるとか、そういった新しいファンディングの仕方が僕は必要じゃないかと思うんです。
 特にリスクの問題というのは、私は10年ぐらい前にしかけたことがあるんですが、文科省、経産省、厚労省、環境省というように各省が個別にバーッとみんな関わっていて、なかなかうまくいかない面があるわけです。それらの人たちを全部集めてシンポジウムをやったことがあるんですけれども、縦割りを解決するためには、私はそのように、あるパーセンテージを決めて、ナノテクあるいはリスクに問題のありそうなものについては必ず予算の一定比率を充当して検討させるというようなことの工夫が必要です。
 あとは、また気が付いたら申し上げますが、ここにも書かれておりますけれども、府省連携をやはり相当に一生懸命やっていただきたいという気がするわけです。第3期、第4期は、第3期のときにナノテクの専門分野、専門委員会の方から府省連携プロジェクトが出て、それがその後、全体の連携施策群か何かに発展したということがあります。ナノテクはそういう意味で縦割りを壊すための一つの政策の実験として非常に面白い分野だと僕は思うので、そういうことをずっと継続していただきたい。日本の場合、大抵一過性で5年たつとまた消えてしまうということが多いわけです。実際、その連携施策群は現在、消えてしまってなくなっているわけです。そういうことは常に頭に入れながら、CSTIにも働き掛けていく何なりというようなことが僕は必要じゃないかなと思います。とりあえず。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、私の方から一つ言いますと、まず1期、2期、3期、4期をそのまま振り返ってみると、1期は基礎科学をちゃんと推進しようと。2期から重点分野という考えが出てきて、4大重点分野、それプラス4で8が2期、3期と続いて、今度、4期のときは、逆にそうではなくて課題解決というので、分野やITとか何とかそういうのは逆に一切出さないで、課題解決という、そういうふうに変わったと。それで、5期どうするかというふうに来ている。
 この現状認識を考えると、4期は失敗だったのではないかなという印象はあります。なぜかというと、課題解決と言いながら、結局、研究者にその課題を解決するためにどういう科学技術がというところまで翻訳し切れていないものだから、何か科学者も、あんまり関係ないやという感じで、それより予算もらえればいいやというところもあったと思います。さっきから出ている真の意味の、岡野先生おっしゃっているような、本当の意味でどういうふうに技術にブレークダウンするかというところがちゃんとされていなかったし、先ほどの議論にあった、西先生のビジョナリーなところから来るというのもないままに何か4期が終わろうとしていると。
 だから、やはりそういうところのバックキャスティング的な課題を解決するところで技術に落とし込むところと、それから、やっぱりフォアキャスティング的に、科学技術として発展してこんなすごい新しいのが出てきているよというのをある程度突き合わせて、それで本当にここのところは日本として攻めるべきだという、そういうのを5期はちゃんとやらなければいけないんではないかなという印象は持っていますが、一つの提案ではあります。
 はい、どうぞ。

【岡野委員】
 「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環というところで、この循環研究が行われることが課題の解決とサイエンスの発展の双方向にとって重要だと、これは非常に的を射たポイントのように私は思います。さて、これを実行するときに、学部間の壁というのはどう取るのか工夫が必要です。
 今の大学のシステムというのは縦型になっていますので、それぞれのフィールドの縦型の領域の中にはめ込まれていますから、その中でやっぱり生きることの方が、本人にとって安全で安定です。そこで生きていれば十分という社会からの脱却こそが重要ですが、一方既存の中でそれを既得権というように作用しているのも事実です。個々の優れた能力を最大限に発揮することを目指さない体制を払わないとこの国が次の時代のリーダーを作り出すことができません。ここは是非文科省のリーダーシップで従来の縦型の仕組みを、その良さを維持しつつ、新しい横断型の体制をどのように作っていくかが望まれます。学部間をまたいだとき、医学部と工学部が一体になってやらなければならないとき、あるいは経済とか文化系のところも入ってこなければいけないようなとき、今はそういう連携プレーはむしろやらない方が成功者となり、やるとその支援の仕組みがないため大変な苦しみを背負うこととなってしまいます。ここのところのポイントは重要なので、そこを是非大学の在り方の中でもう一度考えるべきであると思います。
 やっぱり中世の大学の在り方というのは、縦割りでそれぞれの専門家を作っておく、それぞれのフィールドの教育をさせるというところから大学ができています。今のような、グローバルに戦って、出口もちゃんと作っていかなければいけない時代になってくると、それがかえって今、足かせになっているといいますか、大学の限界を、ですから、非常に優秀な人たちが集まれば新しいクリエーションができるのに、その集まることのインセンティブがなくなっているわけです。そこがやっぱりこの国の大学、大学院のあり方を根本的に考える重要な局面になっている認識が大切です。
 大学の役目というのは、私は、知識の継承とか伝承ということだけでなく、クリエーションをするということが極めて重要と考えています。今はどちらかというと、ティーチング、既存の技術とか知識を教えることが主体になっていまして、クリエーション(創造)の方に少し力を入れないと、このことは実現できません。そうすると、今の大学と大学院の一体型の仕組みでこのことができるのだろうかの見直しが必要です。大学院の仕組み、あるいはクリエーションをどうしていくのか、そのことと今度、産学連携がどうあるべきかについても考えるべきだと思います。
 非常にクリエーティブな種を持った学者たちが、それを企業に持ち込んでいきながら新しいプロジェクトを起こしていくというような新しいうねりを作っていくと、今度、人の流れも、それから、学者の評価の仕方も、今までのようにティーチングではい上がっていく仕組みとは別に、あるイノベーションを起こしていくようなタイプの研究者をどう評価するかという、そういう問題も一緒に含まれてきます。創造力のある研究者はティーチングで作ることはできません。学生が教授と一緒に未知の問題を考え、研究を進める中で初めて養うことのできる能力なのです。
 ここは文科省の腕の振るいどころといいますか、21世紀型の仕組みでむしろこのことの実行をもっとやりやすくできるようなことにつなげていくと、まさにこの「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」というこの循環型の研究をスムーズにやっていく、これを産業にまでつないでいく仕組み作りにつながるんじゃないかということで、私としてはこれは是非、制度的な問題から考え直して、是非実行できるような体制を作っていただければと思います。

【川合主査】
 はい、どうぞ。

【三島委員】
 岡野先生おっしゃられたことは私もまさにそう思います。先ほどの企業の方からの御提案の中の議論にもありましたけれども、結局、産学連携といっても、マインドがちゃんとそういうふうにしっかりした組み方ができるような体制に、企業側もそうかもしれませんけれども、大学側もそういうふうになっていて、結局はやっぱり次の世代、新しい世代をそういうことができるように教育していくって、ちょっと時間が掛かる、遠回りなようでも、それをやらないとどうしてもだめだろうと思うんです。それで、まさに今の大学の教育システムを変えなければいけないというのは私もそう思っています。
 それから、私も実はこの3月にMITとカリフォルニア大学のチャンセラーを呼んだ国際シンポジウム、これからどういうふうに若者を理工系で育てるかという話をしたときにも、MITの先生が、MITの学生はみんな世の中を変えたいと思っているんだ、世の中を何か自分の力で変えられないかと思っているけれども、Tokyo Techの学生もそうだろうと言われて、ちょっと絶句したんです。
 今の日本の大学生は、やっぱり卒業して就職するというところにもう道が決まってしまっているようなところがあって、彼らが科学技術の力を何かを世の中に自分の力で残すんだというようなマインドを持つようにしなければいけないし、そのためにまたもっと重要なのは教員のマインドセットもありまして、今おっしゃったように、ティーチングというか、あるいは自分の弟子を作るようなイメージの教育をしているところ、そういうところからやはり直さなければいけないという意味で人材育成というのはものすごく重要な場面で、すぐにでも手を付けないと間に合わないし、それができてこその産学連携じゃないかなと私も思いました。

【川合主査】
 ほかに。
 はい、栗原さん。

【栗原委員】
 今の点ですけれども、私もこの「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環は大変大事なことだと思っております。それで、多くの工学分野、特に産学連携で大学が役に立ちたいと思いますと、それを担うような学の方が常に新しいクリエーションができ続けているということがすごく大事だと思うわけです。それに対して、もちろん新しい融合分野を作っていくということもあると思いますが、ナノネットとか、いろいろな今やられている施策の継続によって従来の分野を刷新していくということもあると思います。
 そこが第4期のこういう出口ということで、かなり基礎的なナノテク分野に対して、従来ですと余り関与していなかったようなエンジニアリングの分野が、そういうものを使いやすいとか、使おうというマインドがかなり出てきたと思いますので、是非その部分を継続して、産官学が連携できる形が出来てきたところを、田中先生の御意見にもあったのですが、それをうまく継続して育てていくのが大切だと思います。
 従来だと例えばエンジニアリングの人たちが非常に基礎科学的なテクニックを使いたいと思っても、自分のところに装置を買うというのはなかなか大変ですし、できにくかったのが、比較的やりやすいと。それから、今後、常行先生が御提案になっている情報のインフォマティクスなどにしても、今まで専門家でなかった人たちも使いやすいということを目指しておられると思うので、全部新しくクリエーションするのは大変なので、従来分野を刷新していくんだという視点も大事じゃないかと思います。
 大学の研究者という視点でいきますと、私も基礎の研究者なんですけれども、最近エンジニアリングとの融合ということで少しずつ研究をさせていただいています。知らないことが分かるのは基本的に大学の研究者は楽しいんです。なので、その場合に特に課題の分解というところを産業界の方々とうまくできるといいと思うんですけれども、かなり多くの場合、これを解決してほしいんですと言われて非常に応用的な課題を基礎の人にバンとぶつけられることが多くて、そこはもう少し両側でコミュニケーションの仕方等も今後あり得るんじゃないかなと思います。そういう意味では、同じテーブルに着いて一緒に動き出しているところも多いと思うので、諸外国にいいクリエーションの場があるとすれば、是非いい形で日本は日本らしいクリエーションの場が作っていけるといいんじゃないかなと私自身は思っております。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 では、曽根さん、その次、小池さん。

【曽根委員】
 時間も限られているので、ちょっと別の話題ですけれども、今、NNIの重要課題というので、Nanotechnology Signature Initiativeですか、あるいはHorizon2020、両方とも結構一丁目一番地に持ってきているのはものづくりなんですよね。ナノマニュファクチャリングという技術を非常に重要視している。
 実は最近、私、三島先生がさっきおっしゃったコンバインドサイクルのガスタービンのタービンブレード、それを造っている工場を見学したんですけれども、そこではレーザー加工、それから、溶射、接合技術、いろいろな技術を駆使している。ブレードは一品一品本当に手作りなんですよね。最近、3Dプリンティング、アディティブマニュファクチャリングですか、ああいった技術、そういう新しいアディティブマニュファクチャリングみたいな技術がここで十分通用するなという印象を持ちました。だから、新しい技術の流れもある。
 ところが、ここら辺のところはドイツにかなりやられていて、レーザー加工なんてドイツの方が圧倒的に技術が高いですよね。同時に、さっき金属学科という話が出ましたけれども、こういうところはなかなか大学のところでも劣勢になってきている。やっぱりここは日本が本当に強かったところで、ここを失うと大変なことになるんじゃないかなと。それから、あとは、プリンティングだとか、バイオインスパイアドマニュファクチャリングだとか、新しい技術もどんどん出ているので、やっぱりものづくりというのを日本はもっと大事にしないといけないと考えます。今回、マテリアルズ・インフォマティクスの研究を活性化することで、材料がかなり強化されると期待しているわけですけれども、これをプロダクトにしていくには、やっぱり新しいものづくりの技術でもしっかり日本が世界の先頭に立つような状況を作らないといけないんじゃないのかなと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは、小池さん。

【小池委員】
 特にナノテクの分野での産学の連携の在り方ということについて考えますと、これ、私自身が大学で研究をしていることに対していろいろな面で限界を感じたりすることがあるんですが、例えば先ほど企業の方々から産学ということに関してお話がありましたけれども、企業が一つのプロジェクトを成功させて売り上げを上げていくという中には、極めて戦略的に方針を決め、そして、周辺の技術を取り込み、基本特許を取りということをやってきている。それはすごく真剣なものである。
 それに対して大学側からの提案というのは、どちらかというと、我々は論文を書いていかなければいけない、それも何かオリジナリティーという論文を書いていかなければいけないために、ともするとエポックメーキング的なことであるとか、何か単発的なものであるとか、そういうことが出てくる。
 そして、そういう中でこれからどういう日本の在り方、方向性をというときには、むしろそういう委員会では大学の先生のエポックメーキング的な、これからはこういう分野を、こういう分野をと出てくることが、私はここ10年20年見ていて、必ずしもそれが当たっているかというと、そうじゃないんじゃないかと。どういう方向を目指すべきかということのその方向性というのは、企業の方々というのはやはり相当考えられてやられている部分がある。やっぱりそこは真剣度が違うんじゃないかということを感ずる部分が一つあります。
 一方、今度、じゃ、大学の方はいいかげんかというとなかなかそうでもなくて、ただ、それは戦略的にやる企業のそれと比べて、全く異質なものだと思うんです。それはなかなか予測のできないようなもののディスカバリーが出てくることがある。特に材料の開発というのは、連続的に、まずこれをやって、こうやりまして、これをナノでこうやるとこうなります、こうなりますという段階をもし踏んだとすると、それは結構陳腐なアイデアであって、誰でもそれは行き着くところのものであって、それはある意味イノベーションということではないんじゃないかと。材料の機能というのは、企業なんかが考えていても、実はそうじゃない原理であるとか材料の機能、そういうものが一たび出てくると、今までの連続的に積み上げて考えていることがともすると根こそぎ変わっていってしまう。
 そういうものがイノベーションであって、例えば米国の大学は特許収入が年間150億あるとか、日本もそれにならえということで特許をどんどん取っていって安くライセンスなんていう、私はそれも何か非常に瑣末な感じがしてですね。海外のパテントというのは、スタンフォードにしてもどこにしても、よくそれだけの収入があるなと思って見てみると、意外と1大学に基本特許が1件あるとか、たまたま一つのものが非常に基本的なものであって多くをカバーするために、ある産業の根幹の基本特許になっているというようなものが出てくる。
 だけど、それは毎年毎年1個ずつ出てくればいいんですけれども、そんなことはないわけであって、本当にやらなければいけない今のナノテクのイノベーションというのは、不連続であるけれども、ここに書かれてありますけれども、それはなかなか予測することができないものだけれども歴史を見ている中では必ず起きてきて、それが大きく産業を変えていく、そういうイノベーションというのは、ここのところにも材料の機能がシステムを変えていくというようなことが書かれていますけれども、それが私はまさにナノテクノロジーの今我々が取り組まなければいけない姿勢じゃないかなと思います。

【田中委員】
 ちょっとよろしいですか。

【川合主査】
 どうぞ。

【田中委員】
 先ほど三島先生、それから、栗原先生から非常に貴重な話がありましたので、私がふだん考えていることをちょっと具体的に申し上げます。岡野先生の方もそうですね。
 一つは、大学の方はかなり縦割りが強いと。これは大学に限りません。日本の社会はそういうふうな構造になっていますけれども、工学部ってもともとあらゆる科学のいわゆる異分野の知識を総合して組み合わせて、そして、新しい技術を作り出すというものですから、工学部というのは本来、融合が本質なんですよね。だから、工学部が専門を細分化しているという現実は非常におかしいんです。それをとにかく壊さないといけないというのも明らかです。それが一つです。
 それから、もう一つ、三島先生から出たのですが、内向き、あるいはグローバルな認識が薄いという点では、学生だけじゃなくて若手教官もそうなんだと。これは時間が掛かるけれども、とにかく始めないとだめだと、これはとても重要なコメントだと僕は思うんです。こういう代表的な二つの問題が僕はあると思うんです。特に学生だけじゃなくて若手教官もとにかく海外に放り出して、自分の肌でいろいろな経験をさせて、そして、グローバルな環境がどういうものであるかということを理解させるということがとても重要なわけです。
 こういうことをどうやって進めるかということについては、これは大学の自主努力は絶対に必要だと思っているんです。もちろん日本の組織的な特徴がいろいろあって、なかなかそれが進められないということがあるんですけれども、大学のまず自主努力が必要である。それは私立だったらもちろんできますし、それから、国立でも、法人になったわけですからある程度の裁量権が与えられているわけで、法律を読みますと、その法律の範囲内ではかなりできることになっているわけです。しかし、日本の慣習的な要素がいろいろあって、現実になかなか踏み出せないという面もあります。しかしながら、その自主努力がまず必要だということ。
 それから、その自主努力を促すような行政側のインセンティブを与える施策というのは、日本では極めて重要だと僕は思っています。とにかく若い人は外に放り出すとか、あるいは違う学科の融合を条件にしないと採択しないプログラムとか、いろいろな工夫が僕はあると思うんです。そういうインセンティブ付与のプログラムを作る行政側の努力と、それから、大学の自主努力、両方考えて、先ほど言ったような縦割りをどうやって崩すか、それから、若手あるいは学生たちのコミュニケーションの能力をいかに増やすかということをやっぱり加速するようなシステム作り、あるいは環境を作っていっていただきたいと思います。

【川合主査】
 あと3分ちょっとですけれども、そちらの方から聞きたいこととか、御意見。

【山脇審議官】
 事務局、まだ準備が不十分なところがありまして、かつ、しかしながら、短期間で御審議いただくという御無理を申し上げていて申し訳ございません。今日議論ありました点をしっかり踏まえて、もう少し詰めていきたいと思います。
 大学のいろいろな問題の課題の点について、先生方から御指摘いろいろ頂きました。事務局は学長とかに遠慮して書けなかったのかもしれませんが、しっかりとこの辺りは、大学政策とか学術政策とかも連携した形で科学技術政策を考えなければいけないというのは全体の方針で考えていますし、科研費や競争的な資金にも関連する部分もあるかと思っていますので、その辺りについても今後検討していく課題として捉えられないかということと、なかなかナノテク分野に収まらないような議論もありましたので、そこをうまく考えていきたいと思っています。
 それから、前半でいろいろ議論のありました点、非常に参考になる点があったと思います。人材の問題は共通でもありましたし、特に異分野交流、マルチディシプリンな場、各層、レイヤーごとのコミュニケーション、インターフェースの場作りということについて、今日はあんまり時間がありませんが、何らかの形でどういう形で具体策が出来るのか、各省連携のことも関連してくるかと思うので、その辺りも考えていきたいと思います。
 それから、何より、主査がおっしゃいましたように、第3期と第4期を比べるとかなり政策の重点が変わって、課題指向型を第4期はとりましたが、その点についての評価については、私も主査と同じような感覚を持っています。そのバランスというか、点が非常に重要かと思っていますので、そこを重点化してどう捉えていくのかということをよく考えていきたいと思います。
 それから、小池先生もおっしゃった、根こそぎ変わるようなイノベーションということで、私としてはナノテクノロジーという言葉もいつまで行くんだろうかというのもありまして、それを超えるような概念、コンセプトがあれば、それも打ち出すとか、そのようなヒントも与えていただければありがたいなと思っております。ちょっと短期間であれですけれども、もう少しこの辺の議論を詰めて、今後の具体策につなげていきたいと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 では、小林委員がどうしても一言ということですので、手短によろしく。

【小林委員】
  今日はまだ何も言っていなかったので申し訳ありません。マテリアルズインフォマティクスということを挙げられて、これは第5期に向けて非常にいいことではないかと思います。日本の情報科学というのがちょっと後れているというようなことを前から聞いているんですけれども、非常に大きな、素粒子だとか、天文だとか、あの様に日本が大きな成果をあげている分野においても、大きな分解能の高い望遠鏡を造る技術的な面とかでは日本はすごく貢献しているし、大きく発展してきているのですが、外国と協力してやらなければいけない部分として、データ解析であるとか転送であるとか、そういう辺りが非常に弱いというような話を最近聞きました。マテリアルズインフォマティクスを打ち出す事は、こういった情報科学が非常に重要であるということを示すもので、今後日本が力を入れてやっていくべき方向じゃないかなということを思いました。
 それからもう一つ、すみません、ナノテクノロジープラットフォームでの大型装置の利用の話が出ました。今日の御講演にもあったのですが、SPring‐8等の大型装置はすばらしい装置だけど、だいぶ長時間待たなければ使えないし、産業利用には採択に関して厳しい点があるというようなものでした。SPring‐8の評価のところで私は経験したことがあるのですが、まだ十分に活用されていない点があるように思いました。つまり稼働時間をもっと増やせるのではないかと言うような問題があるように思いました。それから、中型放射光の装置は、長時間待たなければ使用できない大型装置よりも使いやすいかもしれないと、そんなことを思いました。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。本日の議論は、先ほど山脇審議官がおっしゃられたように、ナノテクノロジー・材料科学技術の今後の推進方策に反映させていただきたいと思います。その反映した案を事務局から9月中に委員に照会した上で、主査預かりとして、事務局から説明が先ほどありましたが、来月の3日の総合政策特別委員会に途中経過として報告するという、こういう手順で進めていこうと思うんですが、それで大体よろしいでしょうか。

(「はい」の声あり)

【川合主査】
 では、そのように進めていきたいと思います。本日、お忙しいところ、本当にありがとうございました。
 事務局から事務連絡を最後にお願いします。

【吉元係長】
 先ほど御案内のとおりですが、次回の委員会が10月17日金曜日、それから、次の委員会ですが、11月13日木曜日となります。よろしくお願いいたします。

【川合主査】
 それでは、これで終了いたします。ありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

ナノテクノロジー・材料企画・機構係

(ナノテクノロジー・材料企画・機構係)