第7期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成26年8月1日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 東館11F省議室

3.議事録

平成26年8月1日

【川合主査】
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第6回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催いたします。
  本日は、御多忙のところ、しかも大変お暑いところお集まりいただきありがとうございます。
 早速ですが、事務局より委員の出欠及び配付資料の確認をお願いします。

【立松補佐】
 出欠ですが、本日は伊丹委員、射場委員、長我部委員、田中委員、橋本委員、三島委員が御欠席の予定です。
 配付資料の確認をさせていただきます。お手元、議事次第の下に座席表がございまして、その次に資料1といたしまして「NIMS機能性材料研究拠点構想」が1枚、資料2といたしまして「マテリアルズインフォマティクスの推進」、資料3‐1といたしまして「科学技術・学術審議会における委員会の設置について」とあるもの、3‐2で「ナノテクノロジー・材料科学技術に関する推進方策(中間報告)」、資料4‐1で「ナノテクノロジー・物質・科学技術分野の研究開発戦略」、資料4‐2「論文の動向から見る俯瞰対象分野」となってございます。また、後ほど参考資料を机上に配付させていただきます。資料については以上です。
 あと1点、人事異動の御連絡をさせていただきます。先週、7月25日付で新たに研究振興局長として、今ちょっと席を外していますが、常磐が着任しております。きょうは途中から遅れて参る予定です。どうぞよろしくお願いします。また、同日付で参事官として長野が着任しております。また、御紹介が遅れましたけれども、6月16日付で係長に吉元が着任しております。以上です。

【川合主査】
 それでは、開会に当たり、研究振興局の長野参事官より御挨拶をお願いいたします。

【長野参事官】
 おはようございます。長野です。このたび着任いたしまして、せっかくですのでちょっとだけ御挨拶申し上げたいと思います。
 私、実は前職の方が、局が違うのですけれども、科学技術・学術政策局で国際担当の方をしておりました。そういった中で、やはり今、世界の経済社会のグローバル化の中で、これまでの日米欧といった三極構造にとどまらず、いろいろな世界における競争の中で新興国の台頭ということが言われて久しいわけですけれども、科学技術の世界においても相当、中国をはじめとした新興国等、勢いが増している中で、我が国がこれまでずっと強いと言われていたナノテクノロジー、また、物質・材料分野、これにおいても、どういうふうに我が国として戦っていくのかといったことについて、こちらの委員会の方でも今後の在り方、それから、そのために我が国としてはどうすべきかといったことについて是非先生方の御助言を賜りたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 前田参事官から長野参事官に替わられて、長野さんは必ずしもナノテク・材料に関して非常にまだ理解を十分しているわけではないと伺っております。でも、これから文部科学省で御担当いただくわけですので、特に今日は委員の方々、なぜナノテクノロジー・材料が大事なのかということを新任の長野参事官が納得できるような、そういう議論をしていただければよいかなと思います。

【長野参事官】
 恐縮です。そういう意味では、私に限らず、ナノテク、ある意味社会の中でブームのような時代が長く続いていたというふうに認識しておりまして、その中で、今まさにこれから第5期の科学技術基本計画の議論が総合科学技術・イノベーション会議を中心とされる中で、なぜ今、さらにますますこの分野を推進すべきなのかといったことが常に問われている状況でございまして、そういったことも含めまして是非、御専門の先生方にいろいろ御知見を頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。

【川合主査】
 ということで、長野参事官を説得できなければナノテク・材料の未来はないということで今日の審議は進めたいと思います。
 それでは、議事の1番目、ナノテクノロジー・材料科学技術に係る今後の方向性についてです。前回の本委員会でNIMSの室町理事から御説明いただいた、NIMSのハブ化に向けた機能性材料拠点の構築等の取組について、現在の進捗状況を御説明いただきたいと思います。

【室町理事】
 室町です。それでは、時間も限られておりますので、早速資料1に基づいて御説明をいたします。資料1の1枚目、これが政策的背景ということで、これはよく御承知のことと思います。特に、26年度の科学技術・イノベーション総合戦略におきまして研究開発法人を中心とした国際的なイノベーションハブを作りなさいと、そういう要請がありました。それに応えるという形で私どもとしては機能性材料研究のオールジャパンの研究拠点を作りたいと考えております。
 1枚めくっていただきます。2ページ目に私どもの研究所の立ち位置が書いてあります。それをごらんになっていただきますと分かりますように、我々は文科省の傘下ということで、横串的な材料技術の基礎、基盤をちゃんとする、技術シーズをちゃんと作る。それを産業界あるいは受け渡し側の研究機関に受け渡していくと、そういう形の立ち位置を持っております。
 その次に行っていただきます。物質・材料研究機構の取組充実の方向性(ハブ化)ということです。2種類のハブ化を考えております。一つは、先端研究のハブ、もう一つが研究基盤のハブということです。先端研究のハブとしましては、既に私ども、構造材料研究開発のための拠点を立ち上げつつあります。これに引き続くものとして、機能性材料拠点の構築をしたいと、これが今日の話題であります。研究基盤のハブとしては、いろいろな装置の共用ですとか、情報を皆さんに使っていただくとか、そういう形での研究支援のハブとしての役割も果たしていくということを考えております。
 次をめくっていただきます。物質・材料研究機構の取組充実の方向性(ハブ化)ということで、ちょっとくどいのですが、私どもが今、力を入れております2種類のハブ化の具体的なものが書いてあります。既にナノ材料科学環境拠点というもの、それから、構造材料研究拠点というものができておりますが、これに加えて機能性材料研究拠点というのも何としても来年度立ち上げたいということです。
 その次に行っていただきます。これが私どもが考えております時系列です。左側が現状です。現状は、私どもの研究所の内部組織というのは運営費交付金プロジェクトを軸に回っておりまして、それを達成するための研究組織として3部門1センターを置いております。これ以外に国からの委託等を受けて、拠点を作っております。元素戦略磁性材料研究拠点、これは磁石の拠点です。それから、ナノ材料科学環境拠点、これは主として電池材料の拠点。こういう2つの拠点が委託費でできております。一方で構造材料研究拠点というのはSIPの受け皿として今、構築しつつあるということです。こういう拠点を部門の外側に作りまして、そしてその部門と、部門の研究者がそこに本籍を置いてこの拠点に併任するような形で、ある種の二重構造を作っております。4期ではこの二重構造を解消いたしまして、この拠点をそのまま中に内部構造として入れていきたいと考えております。つまり、4期では結局、拠点の集合体がNIMSであると、そういうような形を今、考えております。
 さらにこれを中でやる研究の内容から分類をした図がこれです。第4期の中期計画においては、機能性材料研究というものと構造材料研究というものを当然、主眼としてやっていきます。機能性材料研究の中の電池材料に関してはナノ材料科学環境拠点、既存の拠点があります。磁石に関しては磁性材料拠点があります。これに加えて機能性材料研究拠点というのを確立したい。それと右側の構造材料研究拠点の、この二頭立てで研究を推進していきたいと思います。一方、この機能性材料研究の基盤を支えるものとして、我々、MANAという組織、ナノテクノロジーの基盤研究をやる組織を持っています。この分厚い基盤の上で、この機能性材料の研究を進めていきたい。それから、計測等の共通技術に関しても、一つの組織としての研究所を作りたい。その下にさらに技術開発とか共用基盤部門というものがこの全体を支える、こういうような構造を今、考えております。
 次に行っていただきます。機能性材料研究拠点の体制、これはこれから少しずつ変わっていく可能性もあるのですけれども、今、このようなことを考えております。これはあくまで内部組織の話ですが、6個のラボですね。金属・無機系、それから有機系に関して、構造化、機能化、複合化というような形で専門の研究者を集めたようなラボを作りたいと思っております。また、すべてを統括する拠点長を設ける。それから、研究統括等を設ける。こんなような内部組織を考えております。
 次に行っていただきます。今の話はあくまで内部組織の話でして、次の図のNIMS研究者、NIMS内部組織というところです。これに対して民間の大学、公的研究機関、オールジャパンで研究者に集まっていただきまして、NIMSの研究者と一緒になって研究のクラスターを作る。これがオールジャパンの研究組織です。これ全体を含めて拠点だというふうに考えております。
 次に行っていただきます。機能材料が果たすべき役割、これはもう先生方に、特に多くを語る必要はないと思います。機能性材料の重要性というのはもちろん既に常識になっていると思います。
 次に行っていただきます。一つの具体例をここに書いてあります。左下に液晶の素材分野における日本のシェアというのが書いてあります。液晶、最終製品では韓国、台湾、中国に勝てない状況が続いております。しかし、素材分野では依然として非常に高いシェアを持っております。逆に言うと、ここで日本が負けたらもう全部おしまいという状況です。ですから、ここの部分を何としてでも守らないといけない。そういう意味でも機能性材料の重要性というのはあると思います。
 次に行っていただきます。じゃあ、NIMSがその拠点を運営するのに十分な実力を持っているか。我々はそれを持っていると思っております。左上にFWCI、フィールド・ウエーテッド・サイテーション・インパクトという指標が書いてあります。これは論文の平均の引用数ですが、分野ごとに平均の引用数は変わりますので、分野補正をした値です。それを見ますと、右側に水色と赤で書いてありますが、水色がNIMS全体の指数でして、1.63です。我々が調べる限り、これは日本で一番です。あらゆる大学、あらゆる独法に対して一番の値をとっていると思います。さらに、その右側にナノテクの基盤をやるMANAのデータだけを抜き出しております。これは非常に高く2.5です。世界的な一流どころと比べますと、日本の状況というのはまだまだ追いついていません。我々NIMSも追いついていません。MANAは追いつきました。ということで、MANAの基盤的なものをどうやって出口側に展開していくかということが非常に大きな課題になっております。しかし、我々としてはNIMSには一定の実力があるんだというふうに思っております。
 下の図を見ていただきまして、我々はいろいろな大学、それから産業界と様々な連携を今まで繰り広げてきました。産業界からNIMSに様々な形で派遣されている研究者の数をプロットしてありますが、非常に大きく伸びておりまして、もう100の大台にそろそろ到達しようとしております。こういう面でも拠点化が可能であろうと思います。
 それでは、NIMSの内部研究者と外部の方が一緒になって形成するクラスターとしてどんなものがあるか。光、熱、水、電機・電子、生体、こういうようなものに関してクラスターを作っていきたいと思います。一方で磁性とか電池材料に関しては既に拠点ができておりますので、そういうものはこの拠点からは除外されるという状況にあります。
 次のページに行っていただきまして、もうちょっとそのところを詳しく書いたものがこれです。我々、今、ここに書いたような5つぐらいのクラスターを最初立ち上げたらどうかなと思っております。このより詳しい説明が次のページに言葉で書いてあります。例えば、電機・電子機能材料クラスター、超電導材料ですとか、様々な半導体材料でありますとか、そのようなもの。光機能材料クラスター、これは光機能性の材料です。それから、アクア機能、これはちょっと新しい言葉ですけれども、水に関係したような材料。例えば水の浄化のための材料ですとか、生体関係の材料ですとか。それから、トランスデューサーですね。圧電素子とか熱電素子でありますとか、様々なセンサーでありますとか、それから、そういうものの基盤となるような基盤クラスターのようなものも考えております。今、我々の頭にあるのは、こんなクラスターを作って、オールジャパンで研究したらどうかなと。
 次のページに、NIMSの内部構造として作る、それぞれのラボが持っている技術シーズ、それがそれぞれ今申し上げました研究クラスターにどういうふうに関係するか。横糸、縦糸の関係でどういうふうに関係をするかということで、このラボの中からいろいろな専門家の人を集めて、その人たちと外部の人たちが一緒になって一つのクラスターを形成する。こんなことを想定しております。
 次に行っていただきます。一つの例として、光制御機能性材料クラスターというものはどんなイメージかということなのですが、我々のシーズとしては、例えばサイアロン蛍光体でありますとか、バルク蛍光体でありますとか、ナノ光スイッチ技術でありますとか、様々なものがあります。しかし、我々の持っていない技術シーズもあります。大学の持っている技術シーズみたいなものを合わせて、拠点化をして、その拠点の中で研究をする。そこにさらに企業の研究者に最初から入っていただいて、これを最後の企業の商品化研究までスムーズにつなげていくと。そんなような体制を考えております。A大学、B大学とか、A企業、B企業と書いてありますが、具体的な企業名も含めて今、検討をしております。
 次に行っていただきます。これで最後ですけれども、我々は国研の時代から数えますと、もう50年近くにわたっていろいろな形での技術シーズ、研究インフラ、それからデータベース等の蓄積を行ってきました。是非これを活用して、オールジャパンの拠点の形成につなげたいと思っております。以上です。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 これから10分程度質疑応答しますが、まず最初に今、国立の研究所の在り方というのが問われていて、例えば理研だと基礎的なところ、産総研ですと橋渡し機能というのが非常に重要。そういう中でNIMSが日本の中の国立研究所としてなぜ今後もさらに発展しないといけないのか、その一番基本的なところをまず述べていただけますか。

【室町理事】
 まず、NIMSの対象としておりますのは材料です。材料というのはいろいろな出口に関係する。例えば、ロケットにも関係する、原子力にも関係する、生体にも関係すると、いろいろな出口を持っているわけです。つまり、横串的な技術ということで、しかも基盤になるような技術ということですね。そういうことで我々の存在意義があるのだろうと思います。ですから、我々が開発したシーズというものを例えば産総研に受け渡して、そこで例えばデバイス化をする、産業化をするという、例えばJAXAに受け渡して、それによってジェットエンジンの設計をするとか、そういう形で様々な出口機関に対して我々が横串的に関わると。それが一番重要な役割だろうと思っております。

【川合主査】
 日本の中心であるということですね。

【室町理事】
 はい。

【川合主査】
 御質疑、御討論、お願いいたします。いかがでしょうか。NIMSの機能性材料の研究拠点構想で、特に材料関係いかがでしょうか。

【五十嵐委員】
 新日鉄住金、五十嵐ですが、NIMSさんの機能材料に関しての研究拠点を作る構想は非常にすばらしいと思いますが、幾つか視点がありまして、拠点を4つ作られて、それぞれ目的に実用化まで目指した研究のハブ機能を持つとのコンセプトは非常にすばらしいのですが、民間企業の立場から言わせていただくと、そういうところに期待するのはアウトソーシングとして最先端のシーズを研究いただくということと、人材育成という、この2つの視点が大きいと思うのです。そのためオープンイノベーションのところは徹底的に最先端、世界中からそういう一流の研究者が集まって徹底的に議論して、そういう中からシーズ、技術がどんどん発信される、そういう状態になると本当の意味での材料科学の拠点になると思います。そういうところには企業からも是非若手を派遣して、育成の場として是非活用させていただきたいと。
 ただ、もう一方の視点で、やはり実用化のところで開発が進むとクローズドなということをおっしゃられたのですが、これをどんどん突き詰めていくと、本当にNIMSさんのリソースを使って、各企業の研究開発をどこまでできるんだというところがありまして、これに関しては出口まで見据えてやるというのはストーリーとしてはきれいなのですが、そちらに余り重点を置き過ぎると、例えば優秀な研究者がそれにリソースを分散して、実は5年ぐらい掛けて一生懸命シーズ研究したすばらしい、世界で誰もやっていないことができるかもしれないのが、実用化の最後のところを一生懸命お手伝いというようなことになると、そこに労力を割かれて、本来やるべき研究ではなく、だんだん、実用化はできたけれども余りインパクトがないとか、逆に、日本の競争力強化に対して本当に貢献できるのかなというのが少し心配になりますので、そこは是非うまく、やはり基盤をしっかりやるというのを第一に考えてやっていただければと思います。

【室町理事】
 大変重要な御指摘を頂きましてありがとうございます。第一の人材育成の件ですけれども、これは我々としても非常に重要な拠点の役割だと思っております。その人材育成も個別にやるんじゃなくて、いろいろなクラスター、いろいろな人が来たら、その全体で一つの教育の場を設けたらどうかと。だから、一つの専門にこだわらなくて、いろいろな分野の人と切磋琢磨できるような。MANAは今、非常にそういう雰囲気ができております。そういうものに学んで、是非教育とか人材育成の機能というのを高めたいと思っております。
 それから、もう1点も非常に重要なことでして、我々はいつもそこを肝に銘じなければいけないと思っております。ややもすると、どうしてもクローズになってしまうと、そこから情報は何も出てきません。そこに関わった研究者は発表もできないという形になりかねない。ですから、オープンで、ちゃんとベーシックなところをやる部分と、その中で本当に実用化を目指せるようなものが出てきた場合には、それに特定してあるクローズな関係を結ぶという、その両方をうまく組み合わせるということは非常に大事だと思っております。多分、具体的な案件、やり方は様々であろうと思いますが、そこは是非肝に銘じたいと思っております。

【五十嵐委員】
 よろしくお願いします。

【川合主査】
 栗原委員、学術会議で科学委員会などは材料に近いわけですけれども、機能性材料研究拠点、何かコメントがあれば。

【栗原委員】
 私は非常にこれはすばらしいと思うんですね。一つは、やはり基盤といいましても研究をやっていると、ある程度出口的な、応用的な視点がありますと、逆に自分たちの持っていることから具体的に広がりのある展開ができて、例えばAという材料をやっていたのを、BもCもやるということで、思いもかけないような性質が見えたりする場合があって、基礎が広がるということがしばしばあると思います。それで、その広がった基礎をまた全然違うことに使えるということもあると思いますので、抽象的に基盤をやるといっても、人の想像力というのに限りがあるときに、具体的な方向性を考えることで基盤が広がるということもあると思います。それと同時に、余り出口に近いと、というのは私も同感でして、なるたけジェネラルなものを求めつつ、出口も目指すということでないと幅広い基盤というのは育っていかないような気もしますので、その辺り是非幅広く、かつ深くということを、NIMSもありますけれども、日本の材料関係、みんな心掛けてやって、そういう意味でシンボリックでもあるし、是非こういう形の活動がより広がっていくということは大変すばらしいことだと思います。

【川合主査】
 あと、実際の材料の研究者という意味で北川委員、こういうハブ拠点ができて使いますか。役に立ちますか。

【北川委員】
 もちろん非常に重要だと思うのですけれども、まだ具体的なところが見えていないのではっきりとはコメントはしにくいですね。例えばオールジャパンというと聞こえはいいんですけれども、本当にオールジャパンでそんな制限してやっていいのかと思います。材料というのは、要するにサイエンスですから、インターナショナルであるべきで、グローバルであるはずですね。すなわち日本人だけでやっていいのかというと、非常に私は疑問に思います。MANAなんかはそういう意味では外国人を含むいろいろな人を雇用して進めている。だけど、これは時限ですよね。これが内部の人を組織し直してある程度時限でやっていくのか、それとももうきちんと新たに人材を雇用してやっていくのかとか、いろいろな問題があります。もし新たに雇用するのなら別にインターナショナルでもいいのではないかというような気がいたします。

【室町理事】
 オールジャパンというのは、日本人の研究者だけということではありません。日本にある様々な機関があります。そういうところと協力してやるという意味合いです。私どもはむしろどちらかというと外国人比率と女性研究者の比率は何としても高めたいと思っています。今おっしゃったとおり、MANAは既に外国人比率50%超えております。そこまで行けるかどうか分かりませんが、NIMS全体でも研究者の3割は外国人です。この拠点でもそういう意味で外国人研究者、女性研究者というのは是非最大限に活用していきたいと思っております。
 それから、時限かどうかということなのですが、基本的にこの内部の組織は少し長いスパンでがっちりしたものを作りたいと思っております。一方、このクラスター組織というのは、その状況に応じて、場合によっては新しく作ったり、あるいは2つのクラスターを一緒にしたり、分けたりとか、そういうフレキシビリティーを持たせたいというふうに思っております。

【川合主査】
 ほかに何か御意見はいかがでしょうか。

【小池委員】
 私は、昨年でしたか、MANAの記念シンポジウムにも呼んでいただいて、アクティビティーの高さに非常に感銘を受けました。そういう中で材料というものがオールジャパンでやっていく、その中で例えば光機能であるとか、先ほどの御発表の中では液晶の分野でもほとんど日本がやってきている。そういう中で材料からの発信ということを考えたときには、どうしてもただ優秀な人たちを集めてきても、今度、そこからどんな機能がということになると、それは今度はそちらの専門というか、そういう人との対等な関係でのコラボレーションがないと、もともと材料があると、このシーズがあって、これをどう応用するかということをこの中だけから考えることはなかなか本当にこれがいいんじゃないかっていう幾つかに対して、それが行けばいいんですけれども、ともするとそうじゃないところに陥ってしまうことがある。そうすると、これだけ日本をオールジャパンでやるときに、いろいろな大学の、餅は餅屋のそれぞれの部署がありますから、そことの対等なコラボレーションで、むしろダブルメジャーを考えるような、そういうことがすごく、特にこういった機能性材料については重要じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

【室町理事】
 おっしゃったとおり、私どもの中にもそれがありまして、これは構造材料でも同じなのですが、やっぱり産業界とかいろいろな大学とかを巻き込まないと、私どもだけでやっているものは、どんなに我々がいいシーズだと思っても、実際にはそうじゃないということが幾らでもあるんですね。そういう形で、最初から例えば、基礎基盤分野の研究をやる段階から産業界の人にも来ていただいて、そこでいろいろなインタラクションがあるということによって、展開は全く変わるのだろうと思っております。それがまさに我々だけがやるんじゃなくて、オールジャパンでの拠点を作る意味合いのかなり重要な部分だというふうに思っております。

【川合主査】
 そうしたら、最後に1つだけどうぞ。

【榊委員】
 よろしいですか。

【川合主査】
 はい。また後の方でも時間がありますので。

【榊委員】
 15ページの内部組織とクラスターとの関係を示す箇所ですが、縦軸にはラボというものが設定されて、横軸に機能的なものが設定されています。機能の研究の立場から見ると、無機材料を中心的に使っていても、有機の材料も同時に対象とするような学際研究があり得ると思います。まさにナノテクはそうした学際的な流れや発想が重要でありこの点もお考えの上で組織を立案されたと思いますが、こうした学際性をどう考えておられるかお聞かせ下さい。また、有機、無機を分けるのは整理の上から言いますと妥当と思いますが、金属や無機材料の多様性を考えると、夫々のラボの規模は必ずしも同じではなくて、大きさにバラエティーがあるべきと思います。この点をどういうふうに考えておられるか御説明いただけるとありがたいです。

【室町理事】
 今、定年制研究者で大体このラボに参画する人間の数として150名程度を考えております。仮にこの5つのラボを作るとすると、30名程度です。おっしゃったとおり、実はでこぼこがありまして、例えば、私ども、金属の研究所及びセラミックスの研究所から出発しましたので、有機材料の研究者というのはまだ少ないんですね。そういう意味では有機系を少し厚くしていかなければいけないというような状況です。でも、大体の数としてはそのような感覚です。
 それで、おっしゃったように、これ、縦側はある種の専門で分けてあるんですね。横の方はいろいろな専門の人が集まって1つのプロジェクトをやる組織としてクラスターを考えているということで、実際に何かの研究の作業をやるときには、いろいろなところのラボの人が集まって1つの目標に対してやるというような形をとりたいと思っております。そういう意味で縦と横の関係をうまく使って、先生のおっしゃる学際化を実際のプロジェクトの研究の中では達成をしたい。そういうようなアイデアです。

【榊委員】
 学際的な研究の場合、両側の方に研究費が付くようにすることが望まれますが、予算や管理を適度に縦横に分散させ、柔軟に対応できる仕組みになるんですか。

【室町理事】
 基本的に今、想定をしておりますのは、運営費交付金を付けていただきたいということなんです。それで、今まで運営費交付金を使って拠点を作ったという例は余りないのですが、ただ、運営費交付金というのは、かなり私どもの裁量が利くお金です。そういう意味では、仮に運営費交付金でこれが運営できるということになると、相当に自由度があるというふうに期待をしております。

【榊委員】
 ありがとうございます。

【川合主査】
 そうしたら、まだ御質問があると思いますので、また後の討論のところでこのNIMSのことも含めて議論したいと思います。
 続いて、前回の委員会でCRDSより御説明いただいたマテリアルズインフォマティクスの現在の進捗状況について文科省の方から御説明お願いいたします。

【庄司調査員】
 文科省の庄司です。マテリアルズインフォマティクスの今の進捗状況について紹介させていただきます。ページをめくっていただきまして、1、2ページは前回お伝えしていることとほぼ同じになろうかと思いますけれども、まず1ページ目の部分では、現在、大量のデータというのがどんどん今まで蓄積されてきていて、一方で計算機の急速な進歩であるとかそういったものが背景にあって、その大量のデータというのをうまく活用できないか。うまく活用することによって大量データにうずもれた新材料や新原理を見付けていくということがインフォマティクスの目的になろうかと思います。具体的に右下に3つの項目を挙げさせていただいておりますが、1番目の項目、材料開発の時間とコストを大幅に短縮することを狙いたい。それから、こちらの方がより重要になろうかと思いますが、材料機能発現の指導原理、ここをうまく見出すというところがデータを使ってやっていけるところじゃないかということがインフォマティクスの狙いとなります。
 2ページ目のところに他国の取組のベンチマークということで、まず米国、Material Genome Initiativeというのが既にスタートしております。基本的には今のところ、計算機科学に基づいた自動データ生成の仕組みをうまく使ってデータベースを作って、そこからマイニングしていくということを重点的にやっているという状況です。ただ、実験のところに関してはなかなか取組がまだまだ進んでいないということで、そこの部分で日本との連携を強く求めているというような状況にあります。欧州はまだそこのところがこれから立ち上がるところで、日本に関しても同じ状況であります。ただ、日本に関しては、NIMSの基盤データベース等の強みがあるということで、ここをうまく使って米欧に先駆けてうまく体制を整えられたら一歩先んじられるのではないかというふうに考える次第です。
 3ページ目に移っていただいて、具体的にどういうイメージでやるのかというのを、一般的な事例を書かせていただいております。3ページの上のところですね。例えば楽天トラベルとか、そういったところで顧客データみたいな大きなビッグデータをどう使っているかということをイメージとして書かせていただいております。まず、顧客がどういうデータを使ったか、どういうことをやったかということをデータとしてどんどんため込んでいく。これがデータベースとしてためられると。このデータベースを解析していくと、実は20代、40代、60代、さらに女性、男性で何か趣味趣向が違うねとか、そういうことが出てくると。ここのモデル化の部分がまさにインフォマティクスの部分になります。ここから次に、実際に顧客が利用したデータというのがさらに生成されて、データベースにフィードバックされ、制度が上がっていくと、こういうイメージでデータがどんどん整備されていきつつ、より制度の高いモデルが作られていって、そこにはどういう市場原理があるのかということが見出されるという流れになろうかと思います。
 これを材料でやると、実験データ、計算データ、それから組成等々、そういうものが説明変数になって性能・物性・プロセス等が目的のデータになっていくと。ここに関して同じような、上は主成分解析ですけれども、重回帰解析のようなものを掛けてあげると、何か新しい、どこら辺においしいものがあるのか、どこら辺に突然性能が落ちるところがあるのか等々が見えてくるだろうというのが大まかなイメージかなと思います。
 4ページの部分に関しては、これはトヨタの事例をちょっと借りてきたのですけれども、トヨタの方で電池の固体電解質の研究開発をやっておりました。一生懸命、実験のデータを積み上げて、この辺がよかろうということで特許を出して、特許の公開前に、ある日、ぽろっと海外の、韓国の会社とMITの共著論文というのが公開されて、特許公開前だったというのが非常にポイントなんですけれども、計算でもって材料データの自動生成をやってマイニングをするという手法で、実験なしで、ほぼほぼ同じ領域がおいしいだろうというところが出てきたということで、こういった、もう既にインフォマティクス的な手法というのは世界、特に北米を見るともう大分進んできていて、今始めないとちょっと後れをとってしまうだろうという、そういう事例です。
 5ページ目のところは、概念的なイメージを書いておりまして、計算、実験みたいなことを一生懸命やって、経験者が経験と鋭い直感でやってきたことというのをうまくデータ、それから、そこからデータをマイニングすることで研究者の直感をデータで支援して、いわゆる天才的な頭脳を持っている人の頭脳をうまく模擬していくというようなことができると、いろいろなことが見出されるんじゃないかと。そういうイメージです。
 きょう御審議いただきたいのは、主に6、7、8、9、10ページのところになりますが、6ページのところ、1、2、3ということで戦略立案、研究推進、基盤整備ということで、それぞれこんなことをやりますよというのは前回、報告させていただいております。7ページのところはJSTの方々とさんざん議論して、この資料自身はJSTの方に作っていただいたのですけれども、おおよそマテリアルズインフォマティクスとしてこういうことを考えておかないといかんだろうということが書いてあります。データを収集する部分、連携する部分、活用する部分、ここのところをどういうふうな仕組みでやっていきますか。それから、司令塔をいかに機能させるかという部分が重要であろうと考えております。
 8ページ目のところに司令塔の部分だけを抜き出したときに、どういう課題がありますか、どういう検討をしなければなりませんかということが書いてあります。短期的なところで準備期間として今年のうちに決めておかなければならないであろうこと、それから、長期的な部分で継続的にやっていかなければいけないところということで、それぞれ3項目挙げさせていただいております。インフォマティクスをやっていく上でどういう専門性を持つ人材の構成をしていくかであるとか、タスクフォースがプロジェクトの司令塔となるためにどういう機能と権限を与えなければならないかというようなところが大きなポイントになろうかと思います。
 長期的なところは少し目を通していただきつつ、9ページ目ですね。ほかにいろいろ実際やっていく上でその他諸課題というのがありますので、それがどういうデータの流れと、それから、データベースを運営する上でなっているかというと、これは大体、矢印、若しくはその項目のところから吹き出しで書いてあります。こういった諸課題もあるということを御認識いただけるとありがたいです。
 10ページ目が、まだまだこれは素案の状況なのですけれども、ロードマップとして全体設計、それからデータ活用、データを集めてつなぐところ、5年後にはこうなっていなければいけないだろうとか、10年後にはこうなっていてほしいといったところを、今、想像できる範囲でとりあえず項目を挙げてあるという状況であります。ここら辺も大体5年をめどに統合データベースというのがちゃんと使えて、データマイニングというのがおおよそみんなできるようになっているということが大事だろうというふうに考えております。
 11ページ目に、特に御議論いただきたいことのポイントが箇条書きにしてあります。推進体制に関してはタスクフォースで議論すべきポイントと司令塔として付与すべき機能、この部分をどうするべきか。それから、研究プロジェクトに参画する研究者の構成に関して、ここのところはどういう構成がいいだろうかといったところ。それから、データベース運営組織の持つべき役割と担う研究者エンジニアの構成に関して。それから、マテリアルズインフォマティクスのプロジェクト遂行に当たっての諸課題に関する議論。
 あと、プロジェクトの進め方に関しては、ロードマップ、このような形でよろしいでしょうかということと、漏れ・抜け等々ありましたら、是非御指導いただきたいということになります。
 ちょっと駆け足で申し訳ございませんが、以上です。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。このマテリアルズインフォマティクスは今後の材料研究の一つの大きな柱になると思いますので、10分程度の時間ですが質疑応答をお願いいたします。いかがでしょうか。

【福島委員】
 先ほどのNIMSの組織の中で、材料だけではなくて、システム側とか、あるいはアプリケーション側から見て、それをどう活用していくかという御指摘があったのと全く同じことかもしれないのですけれども、結局、その材料だけがあって、特性とか物性だけを幾らデータベース化しても、それはなかなか使いにくいものであって、システム側から見て、その相性であるとか、これがどういう機能をどういうふうに発現させるかというところをどのように取り込んでいくかが非常に大きなポイントだと思います。実際、例えば私たち電機メーカーがシリコンデバイスの中に、ちょっと誘電率が高いものを取り入れようと、非常に単純な、そういった技術を開発するのに10年やって、結局、余りうまくいかないで、私どもの会社なんかはそこの事業領域から撤退してしまったというようなケースもあるのですけれども、それは完全に、シリコンのあるデバイスというシステムだったり、あるいはそれを使うアプリケーションから見て、材料というものの相性とか、そういうものが、もちろん我々、手を使って、頭の中で議論してきたのですけれども、十分反映されていなかった部分もきっとある。そういった事例が、こういったマテリアルズインフォマティクスの中でどのように構築していけるかなというのを私、ちょっと危惧を持っているのですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

【庄司調査員】
 相平衡関係とか、界面の安定性だとかという、そういうところでしょうか。

【福島委員】
 材料同士のそういうことならいいのですけれども、実際にはそれをシステムに組み込んでみると、材料だけ見ていたのでは予期できないいろいろなイベントが起こってくると。それをこういったデータベースに取り込んでいくのは非常に大変だと思うのですけれども、それをどのように御計画になっているか。

【庄司調査員】
 そういうことですか。要は使われ方、それから長期的になったときにどういうことが起こるかだとか。

【福島委員】
 そうですね。

【庄司調査員】
 システム面から見たときのということですね。

【福島委員】
 はい。

【庄司調査員】
 その部分については、データベースからそこまで追い込んでいけるかというのは、実際、データがたまっていきました、ものが作られました、それをやっぱり試していくというところはもう避けられないのかなと思います。ただ、探す、要は候補材になるところをどう見付けていくかというかというところのスピード感を上げていくというところが、この取組は主になるのかなというふうに思います。

【福島委員】
 そこでまた問題になってくるのは、先ほど御指摘があったような、アプリケーションであるとか、そちら側から見た囲い込みというのと、このデータベース構築というのとの二律背反性みたいな感じが出てきちゃって、なかなか公開できない部分が増えてくると思うんですよ。それをどう克服していくかというのは結構大きな問題ではないかなと、ちょっと心配しています。

【庄司調査員】
 その部分については、いわゆるホットなデータというのは、なかなか公開データベースの中に取り込んでいけないというふうに考えています。その部分は極めて大事なポイントで、データをどう公開していくのか、それから、それをシェアするときのポリシーをしっかり決める、そういった議論をきっちりやっていかなければいけないのかなと。ただ、基盤データベース、公開されている部分は使っていただけるので、逆に開発するときに特化したデータ、プラスその基盤をうまく活用するような流れは作れるのかなというふうに考えております。
 いずれにせよ、そのデータの公開のタイミング、それから、そのポリシーというのはしっかり決めていくべき継続的な議論案件だというふうに考えております。

【福島委員】
 ありがとうございます。

【川合主査】
 ちょっとすみません、島津さん、今までの調査で、さっき言ったような問題というのは何か諸外国ではうまく対応はされているんですか。

【島津フェロー】
 まさに今のポリシーの問題は米国でも一番ホットな議論をされているところで、どうやってシェアしていくかというところですね。

【川合主査】
 じゃあ、今後の問題ということで。分かりました。
 それでは、どうぞ。

【五十嵐委員】
 マテリアルズインフォマティクスは材料開発を高度化する、あるいは効率化するという観点で、概念としては非常にすばらしいのですが、実際、これまで日本が材料開発をどうやってきたかというと、5年、10年掛けて、自社でいろいろなデータを、ばらつきも含めて蓄積して、その中にノウハウを蓄積してきた賜物なのですね。ですから、そういうデータを公開データベースに載せるということは、日本の競争力を放棄するということになるので、そういうことはあり得ないと考えます。
 ただし、今、公開データですとか、あるいはマイニングの方法とか、あるいはビッグデータの処理とか、そのアルゴリズムをきっちりと作って、それを例えば、企業の話ばかりするのは大変恐縮なんですけれども、中小企業でも、自分たちのデータをそれとくっつけたらどんなことができるんだみたいなことをトライアルできると、企業がカスタマイズできる。企業じゃなくてもいいのですが、大学の先生方でも、自分の持っているデータをそれにくっつけたらどういう新しいことが分かるのだという、そういうプラットフォームをしっかり作っていただいて、そこに是非注力していただきたいと思います。
 海外では材料を一から開発しないです。しないというのは、企業は大学とか研究機関に対して、例えば有望な技術が出てきたら特許を一時金を払ってすぐ使えるようにするんです。例えば、1万ドル払えば、特許がどんどん使えるという感覚です。それで、自分たちはその技術が自社のものとして使えるという判断をしたら、実際それをロイヤリティーを払って使うようにする。そういう仕組みが構築されています。でも、日本は基本的に自前主義というか、そういう形で技術を守ってきましたので、そういう状況に対してやっぱりインフォマティクスというのは非常にもろ刃の剣になりますので、是非高度なアルゴリズム、プラットフォームは作ってほしいんですけれども、カスタマイズのところは余地を残していただきたいと思います。

【川合主査】
 是非参考にしていただければ。

【庄司調査員】
 ありがとうございます。

【川合主査】
 むしろ、常行委員はそこら辺は何かお考えですか。構成に関して。

【常行委員】
 確かにデータベースをここまで誰でも使えるようにするか、公開するかというのは、私もよく分からない難しい問題なので、非常に慎重に議論する必要があると思います。一方で、論文のレベルのデータでも、今、それが我々、本当にうまく使えているかというと、決して使えていない。膨大なデータがほとんど無駄になっているというところがあって、それをいかにうまく使って、かつ、自分たちの企業の本当に時間を掛けて取った重要なデータと組み合わせて、いい材料を作っていくか、そこの技術を開発するというところがこのマテリアルズインフォマティクスの一番重要なところだと思うんですね。ですから、今までインフォマティクスという手法は、経験的に何となく多分、人間の頭の中でやってきていることだと思うのですが、それを非常にシステマチックな使いやすいものにして、実際にこういうプロジェクトを国が進めることで実例を作ってみせる。こんなうまく行った例がある。じゃあ、それはほかに我々の自分の会社ではこういうことに使えないかというふうに、そういうふうに展開していける種を作っていくというところは国の事業として非常に重要なところではないかと思います。慎重に進めるということは私も賛成です。

【川合主査】
 ほかに御意見いかがでしょうか。

【栗原委員】
 こういう非常に複雑なものに対して大変すばらしいと思うのですけれども、データを集めるとき、データの質とかそういうものを、特に性能というか特性に対してのデータのクオリティーというのをどう保証して、同じレベルのデータを集めるのかというのは、非常に難しいことのように思います。そうしますと、余りたくさんのものを一気に集めるよりは、データ水準の非常にそろったもの、あるいはどういうそろえ方をしていったら使える形のアルゴリズムの中に入っていくのかというようなことも大事な視点かと思います。私は決して情報の方が専門というわけではないのですが、例えば結晶データベースなんかでも、非常に測定条件について、ここの条件をクリアしていなければデータベースに入れないというようなことがあるんですね。多分、比較的、集めようと思ったらどんどん集められてしまうでしょうから、そこの辺りは最初のうちにやはり試行的にデータの集め方や何かを、あるいはどういう特性について集めるのかということを検討される必要があるような気がして拝見しております。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 1つちょっと私の方からもあれなんですが、先ほどの機能材料もNIMSに行って、これもNIMSで、NIMSは筑波で、なかなか皆さん行きにくいというか、使いにくいという人が結構いるんです。もちろん、このインフォマティクスなんかはいろいろなネットワークで使いやすくなるとは思うのですが、例えば関西であるとか北海道であるとか、いろいろなところの人が使いやすいという形を是非お考えいただくと大変ありがたいと思います。お考えになっていると思いますが。

【室町理事】
 もちろんデータベースは日本どこにいても使えるような体制にしております。

【川合主査】
 それでは、議事の2番目に移ります。第5期の科学技術基本計画に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の俯瞰についてです。先ほどの具体例よりももう少し大きな話にはなりますが、第5期の基本計画に向けたいろいろな動きが出始めましたので、まず事務局よりその策定に向けた現在の動向について御説明をお願いいたします。

【立松補佐】
 失礼いたします。資料3‐1をごらんいただければと思います。資料3‐1に「科学技術・学術審議会における委員会の設置について」というペーパーがございます。こちらにあるように、科学技術・学術審議会に本年6月、総合政策特別委員会を置くことが決定いたしました。こちらの中では、科学技術及び学術の振興に係る重要事項について、総合的かつ機動的に調査検討を行うということで、具体的には1ページおめくりいただきまして3ページですね。こちら、「検討スケジュールについて」というペーパーの中ですが、実際に具体的な検討の中身について記載されています。具体的には総合科学技術・イノベーション会議において、最近改組してCSTIと呼ばれるようになりましたが、今後、第5期の科学技術基本計画、平成28年から32年度の計画です。策定に向けた検討が本格化する予定です。第5期の科学技術基本計画につきましては、所掌事務の整理の関係で、内閣府、CSTIの方で検討することとなっております。そういった次期計画の策定に向けて、CSTIにおける議論に資するよう、文部科学省としても委員会を設置して議論を進めていくと、そういった趣旨で置かれた委員会です。年内をめどに中間的な取りまとめをするような格好で議論が進んでおります。
 また1枚おめくりいただきまして5ページです。その委員会の中でどういった検討が進められておるかというところですけれども、まだ1回しか開かれていない委員会ですが、そこで出た資料です。検討の視点としまして、事務局側からのペーパーですけれども、1、科学技術イノベーション政策の策定に向けて考慮すべき社会経済の変化等としてどのようなものがあるか。2といたしまして、関連する取組の実施状況や指標の推移の中から、「特に重要な課題」として挙げられるものは何かと。3といたしまして、こういった変化等を踏まえて、科学技術イノベーション政策で中長期的に「目指すべき国の姿」はどうあるべきかと。
 1ページおめくりいただきまして裏面ですが、4で、これらを踏まえまして特に重点的に議論を行うべき検討の視点として挙げられる事項は何かと。こういったことが議論されておるところです。
 具体的なスケジュール感としては次の7ページ目に挙げられていますように、本年中に8回程度行いまして、そのまま中間取りまとめをしていくというような動きになってございます。
 こういった動きを受けまして、本日はナノテクノロジー・材料科学技術委員会において、第5期に向けてどういった課題があるか、あるいは現状についてどのように認識されているか議論いただきたいと思っております。
 まず、この後、CRDSの方からきょうの議論のたたき台と申しますか、プレゼンを行っていただく予定ですけれども、参考といたしまして資料3‐2に、平成23年7月、3年前になりますけれども、本委員会で取りまとめた中間報告の概要をポンチ絵、横紙の1枚、カラーのもので付けさせていただいております。また、後から追加で資料をお渡しして配付させていただいたものに、この中間取りまとめのポンチ絵じゃない、本物の文書体のものを置かせていただきました。そういったものを適宜御参照いただきながら御議論いただければと思っております。以上です。

【川合主査】
 繰り返しになりますが、今、4期で、5期が28年から始まる。つまり、1年半後ですね。なので、この委員会で今年度いっぱい煮詰めて、それで来年度に総合科学技術会議や何かとやりとりをしながらというか、総合科学技術会議で決めていくと、こういうスケジュールだと思います。その中でこの委員会としては、特にナノテクノロジー材料の5期における在り方ですね。そういったところをきちんと議論していきましょうというところの第1回目みたいなものだと思います。
 それで、この5期の基本計画に向けたナノテクノロジー・材料科学分野の俯瞰について、JSTのCRDSより永野さん、お願いいたします。

【永野フェロー】
 JSTの研究開発戦略センターの永野です。資料の4‐1、4‐2と2つ御用意させていただきましたが、4‐2の方は主にバックデータの一つとなる論文の動向についてのデータ集であり参考資料の扱いですので、御説明は割愛いたします。4‐1を使って御説明いたします。CRDSの活動については既に皆様、御案内のことと存じますけれども、科学技術分野全体の俯瞰というところから始まりまして、社会の期待を分析する、そして重要テーマを抽出して、戦略プロポーザルという形で提言書を発行しています。こういったプロポーザルや俯瞰の全体像を報告書として、各関連府省で御活用いただくという活動をしております。通常、研究開発の俯瞰を行うのは2年単位でロールオーバーしておりまして、昨年度から今年度にかけての2年間で俯瞰を更新して、第5期基本計画を含む向こう10年間程度の展望を議論する際の基礎資料としてご活用いただけたらと考えております。
 以下、復習の内容を含みますので、適宜割愛しながら御説明いたしますけれども、3ページ、ナノテクノロジー・材料分野の日本の科学技術政策は第2期基本計画以降、8分野の分野別推進戦略で行ってまいりまして、そして第4期では社会課題解決型の下で、基盤技術の一つとしてナノテクノロジー・材料が位置付けられて施策が進められました。
 4ページ。その中で現在、進行中の主要プログラムを見てみますと、内閣府の主導により開始したSIP、そしてImPACT、ここにはナノテク・材料関連のテーマだけを抜粋しております。そして、文科省及び経産省の、主にここにはアクションプラン対象施策プラスアルファ程度で掲載しておりますが、様々なプログラムが現在、進行中です。
 そして5ページには、これまで開始してきたもの、FIRST、WPI、そして先端融合拠点、こういったプログラムで様々な仕掛けを入れて、具体的な成果も上げてきたと認識しています
 6、7ページは、その一つの例として元素戦略の例を挙げています。文科省、経産省の府省連携のプロジェクトの全体像、それから、次世代蓄電池に関するプログラム、これはJSTのALCAについて記載していますけれども、これも全体としては経産省との府省連携施策ということで、オールジャパンの大きな枠組みを設けて、現在取り組まれています。
 8ページ、いわゆる競争的基準の公募型のタイプですと、一つの例としてJSTのCRESTで過去10年程度で発足させてきたものとしては、これだけの領域があります。最近ですと、特に材料の特性に注目したようなものや、構造に注目したものとして二次元機能性原子薄膜や、空間空隙構造の制御、こういった領域が立ち上がってきました。
 そのような中で9ページ、この10年間程度において、世界も注目する日本の代表的な研究成果の例として幾つか挙げさせていただきました。もちろん、これだけではないというのは当然承知しておりますが、非常に顕著な事例として、具体的な研究成果が出つつある、又は既に応用・実用開発や市場に出ているもの、そういったものをここには挙げさせていただきました。個別のテクノロジーについての御説明は省略させていただきます。
 そのような中で10ページ、現在の周辺環境をどのように認識すべきかというところでが、環境・エネルギー、健康・医療、情報通信、そして産業と、様々な観点がございますが、例えば環境・エネルギーに関しては、近年のシェールガスの登場であったり、原発事故を経て、これからのエネルギー・ミックスとの関係を日本として考えていかなければならない。世界全体の問題としては、地球温暖化がより深刻になっていく状況にある。こういった中でナノテクノロジー・材料科学技術に求められる役割はさらに高まっていると認識しています。健康・医療についても、ライフサイエンスの研究投資によって、IPS細胞を中心とした再生医療研究への大型投資、それから低コストのゲノム解析技術というのが大きく進展してまいりました。これを再生医療産業や、創薬スクリーニングへ応用していくということが期待されています。
 それから、特に大きな変化として情報通信関係ではIoT時代への備え、ビッグデータの処理・活用というものがすさまじいスピードで進展してまいります。こういったものと材料開発とがあいまって、そこから得られる価値をミックスさせて新しい価値を創出していくということが世界の流れになっていくと考えられます。
 産業構造の観点では、これまで日本は輸出産業として自動車、機械、そして電機が大きな柱でしたが、さらにそこに今、化学産業を中心とする部素材産業が大きく入ってきまして、この4本の柱は日本の輸出産業を構成している主要産業になっています。 11ページは詳細の説明はいたしませんが、過去20年間のグローバルな様々な変化の中で、ナノテクノロジーを施策として国として進めてきたのがアメリカのNNIです、ナショナル・ナノテクノロジー・イニシアチブによって戦略的な取組として始まったわけですけれども、そういう中で特にこの10数年、大きな変化の中にあります。
 12ページ、以上を踏まえ、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の体系をどう捉えるかというものの一つの枠組みの案を示しています。これをCRDSは俯瞰図と称しているわけですけれども、図の下側に、基盤となるサイエンス、そして共通的な基盤という意味での製造・加工・プロセス、計測・解析・評価、理論・計算・インフォマティクス、そして材料、こういったものから様々な産業応用分野に出ていくという構成にしています。健康・医療、環境・エネルギー、そういったものだけではなく、黄色で示したところに、具体的には書いていませんけれども、様々なものが想定されるわけです。こういったところを直接的な出口としているという意味です。そして、図右側の共通課題支援策、それぞれの研究開発を行うときには、ここに書いてあるようなインフラ、国際戦略、標準化、そういった様々なものをセットでインストールしていくということが国際的な競争力を得る源泉になるということを意識しています。
 13ページ、CRDSではこの2年間で俯瞰報告書をまとめるに当たって、39の今後の主要領域というのを、抽出しつつあります。もちろんこれにはサイズ感や、テクノロジーの切り口という意味では御議論あるところかと思いますが、現段階ではここに挙げさせていただいたような39の主要領域について、それぞれの研究開発動向と、これから取り組むべき課題をレポートに取りまとめている最中であります。
 15ページ、海外の動向もごく簡単におさらいしておきますけが、日米欧中韓、それぞれにおきましてナノテクノロジー及び材料の国家としての基本政策、又は国家イニシアチブというものが制定され、強力に推進されている状況です。
 めくっていただきまして、一例として米欧について御紹介いたしますが、米国に関しては現在、16ページ左下のピンクのところ、2014年度予算で1.6ミリオンドルの総予算の中で、8つのプログラムコンポーネントエリアを設けて、そこに予算を枠として指定しています。ここでの特徴は、6、7、8番において研究インフラ、EHS、教育・社会、これらに全体の2割の予算を投じて研究開発を進めていることにあります。それから、黄色のところ、5つのシグニチャーイニシアティブとして太陽光、サステナブルナノ製造、ナノエレクトロニクス、ナノ知識基盤、そしてセンサー、これらは省庁間の連携型で取り組む柱であるとして重点的に投資する。これがアメリカのナノテクノロジーの戦略です。
 そして17ページ、そういった戦略を作っていくための議論がNSF等で行われているわけですが、これはNSFのDr. Mihail C. Rocoが示したもので、例えば2020年以降から30年の10年にわたっては、Nano3,Technology divergenceという概念を作ってやっていこうというようなことが、研究者間で議論されています。
 18ページは先ほど文科省の庄司さんから御紹介がございましたMGIのイニシアチブ、19ページはDOEが設置した大型拠点、Energy Innovation Hub、その中でも特徴的なCritical Materials Researchというハブ、それからBattery&energy storage hub、これはいずれも日本の元素戦略に対応するものであり、そしてバッテリーについては日本の次世代蓄電池プロジェクトに対応するような位置付けの施策をやっているということです。
 20ページ、21ページ、欧州ではFP7に続く枠組みとしてHorizon 2020が開始しましたが、7年間で770億ユーロの予算であり、FP7のときが500億ユーロ強だったものを大幅に増額した計画になっています。特徴としては黄色いところ、Key Enabling Technologiesとして、ここにナノテクノロジ、先進材料、マイクロ・ナノエレクトロニクス、フォトニクス、バイオ、そして先進製造と挙げられていますが、これらほとんどはすなわちナノテクノロジー又は材料に関わるものとして、重点するということになっている。このナノテクノロジーの中だけを21ページで見てみますと、大きく12の構成になっていまして、アメリカのナノテクノロジーイニシアティブのプログラムコンポーネントエリアともやや近いですけれども、このような12分類で施策を展開するというような計画がされています。
 22ページ、極めて大きなプロジェクトが立ち上がった例として、去年からGraphene Flagshipというものが始まりました。これは欧州全体で126の研究グループで、10億ユーロ、約1,230億円の計画です。こういった枠組みでもって、欧州全体としてGrapheneの研究開発をおこなっていく。特徴として、産業界がこれをリードしているということがあります。Graphene Flagshipでは、エアバスやノキアがイニシアチブをとっているということです。
 23ページ、これまで、世界のナノテクは大規模な集中拠点化が進んできました。皆様よく御案内のことですが、IMEC、MINATEC、ALBANY、そして日本にはTIAがあるわけですが、中でも特筆すべきはALBANY NANOTECH、ニューヨーク州立大学の半導体の拠点です。ここは産業界が投資をすると同時に、州政府も投資をそこに重ねるというやり方をとって、すさまじい勢いで最先端のクリーンルームの拡大を行っています。450ミリウエハー開発のグローバルコンソーシアムを作り、そしてEUVを稼働させるということが徹底投資によって行われているというのがALBANYの特徴です。世界で最も競争力を持っている拠点の例で。
 24ページ、25ページですが、集中拠点とは別のもう一つ大事な拠点として、共用施設のネットワーク、すなわち共用拠点があります。共用拠点については日本は一昨年からスタートしナノテク・プラットフォームに代表されますが、世界各国でこういった共用の枠組みを設けて展開しています。この共用の枠組みにおいて極めて重要な役割を示すのが先端的な研究設備です。分析装置や、加工装置ですが、それを適切なタイミングでアップデートしながら外部共用していく。その共用の中で研究開発の投資効率を最大化して、融合・連携を進めていくということが競争のポイントになっています。
 26ページ。アジアでは、Asia Nano Forumというネットワークがあります。これは15の国・経済圏でやっていて日本も産総研とNIMSが参加しています。Asia Nano Forumでは、各国の政策や研究開発の情報交換ネットワークを作って、毎年サミットを開催し、そして若手研究者の交流をおこなうなどするなかで、アジア全体としてのナノテクノロジーの枠組みが進んでいます。
 以上、27ページはここまでのまとめですが、各国ともにナノテクノロジー又は材料を国家計画・国家イニシアティブとして重点技術として位置付けています。日本でもこれまでの科学技術基本計画の集中的な取組によって、今、様々な具体的な成果、産業につながるような具体的な成果も出つつある中で、海外では研究開発の集中拠点化や共用拠点ネットワーク化が進み、それ自体が競争力の源泉になっているということをご紹介しました。
 また、項目 5のように、日本でも先日のイノベーション総合戦略(2014)でナノテク・材料科学技術は改めて分野横断の技術として位置付けられたとところです。
 28ページ、29ページに、研究コミュニティの現在の動向の一つのデータを御紹介していますが、日本の主要材料関連学会を見ますと、過去数年において会員数が徐々に減少しています。この背景には、企業会員数の減少、そして外国人会員数の伸び悩みということがあると推察されます。
 一方、アメリカの主要学会、APS、MRS、そしてACSを見ますと、会員数を徐々に伸ばしています。そして、外国人会員数が確実に増えています。こういうような傾向の中で日本の学術界としても、考えるべきところに来ているのであろうと推察されます。29ページ、研究論文動向を見ますと、論文を執筆している研究者の数というのは過去10年間でいずれの国も増加しておりますが、増加の伸び率を見ると、相対的に中国、米国が大きく増やしている中で、日本は微増というよう状況にあります。ただし、、配布資料4‐2は詳しく御説明いたしませんけれども、論文の引用数等々、質の観点では、日本の研究は高い注目を得ている状況は維持されており、ナノテク・材料研究はトップ集団にいることは間違いありません。
 30ページ、31ページ、これは若手人材、又は技術専門家に視点の一つですけが、例えばナノテクノロジープラットフォーム事業では、技術のエキスパートを雇用して育成するという取組をしておりますが、彼らの安定的な雇用とキャリアパスの形成等々には、これから取り組むべき論点があるだろうと認識しています。
 また、31ページは、先ほどのマテリアルズ・インフォマティクスの話とも関連するわけですが、若い研究者がこういった新しい計算科学やデータサイエンスといったところと、物質・材料科学をどう接続して展開をしていくかというところで、ポスドク等々の力は非常に重要になってくると認識しています。
 32ページ、33ページについて。ナノテク・材料に関連するいくつかの主要学会では、緩やかに会員数が減少しており、その背景には産業界の会員数の減少があると考えられます。一方で、MRS等海外の主要材料系学会では、全体の会員数が増加傾向にあります。また、研究開発を行う中では、論文執筆だけではなくて、施設・設備、仕組み・ソフト、そういったところを運用していく高度な専門人材が大変重要になっているのであり、33ページの今後の方向性のところでは、ナノテク・材料は様々な応用分野に対して横串的な役割を果たし、技術融合によって不連続な革新をもたらす、そういった技術領域、分野であると考えております。また、技術融合をドライブして、技術シーズの市場化促進する産学官連携のナノテク・材料開発のプラットフォーム、そういった大きな意味でのイノベーションプラットフォームを考えていくタイミングにあります。
 また、協調と競争、グローバリゼーション対応力の強化、これは海外の集中拠点や、ネットワーク、また、欧州のHorizon 2020のような国境をまたいだ形での、域内としての競争力の強化、そういった世界の動きの中で日本はどうやって対応をしていくのかということが非常に重要であるという認識です。
 34ページは、ナノテク・材料のイノベーションプラットフォームというものを考えたときの概念図です。時間の関係で詳しくは御説明いたしませんが、シミュレーション、計測・加工・合成、そして研究データ取得・活用、こういった研究開発の基盤となるインフラをしっかり整えることによって、この環境そのものが競争力の源泉になるということであり、こういうものこそ、国が取り組むべきポイントになってくるのであろうと考えております。
 以下は参考ですが、35ページ、CRDSにおける、最近の俯瞰活動の結果のレポート、又は提言書のレポートの一例です。今後も俯瞰に基づく提言の作成ということで、下に掲げるようなテーマについて提言を作っていきたいと考えているところです。
 最後、36ページですが、研究開発の投資対効果を中長期的に高めるための論点として幾つか認識しております。ここに書かせていただいたものは、あくまで一部ですけが、例えば府省連携施策の実質的な連携と継続性、これは研究施策の参画現場において府省連携の戦略がしっかり共有されるということこそが大事です。また、例えば、川上から川下までの全体の戦略の構造化、これはよく言うとおり、テクノロジーを移転していく際、サイエンス、テクノロジー、そして産業界と移転していくに当たって、その垂直統合、又は水平連携を阻害する隘路にどう対応していくかということ。国際標準化活動、知財、マーケティング戦略、それからEHS、ELSI、こういった活動をプログラムを走らせる際に必ず併存させるようなことが求められるのではないかという観点。それから、官民による戦略的重点投資、これは公的投資と民間投資の接続性の問題、常に議論はありますけれども、先ほどの御説明の中で、例えば、拠点に官民が重ねて集中投資を行うといったような概念、こういったものを日本はどう考えるのか。また、学術・学会活動の活性化、これは先ほど御説明させていただいたとおりです。それから、国際共同。内外の投資をいかに日本として活用してやっていくのか。つまり、海外の資金・リソースをどう活用するのかという観点。それを先導できるグローバル人材の育成をどうするか。研究インフラの問題、既に御説明させていただきましたが、日本の場合、特に拠点における学の関与が恐らく課題であり、今まで日本はナノテク・材料の研究開発投資によって世界のトップ集団を形成したわけで、そのポテンシャルが現在もまだ高い位置にあります。今後の日本の将来、学術及び産業を考えていく上で、次の10年を考えたときにどのような構造が大事であろうかということを、是非皆様に御議論いただければと考えております。以上です。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 この後、総合討論はありますが、ただいまの俯瞰ということに関して御質問ありましたらお願いいたします。若しくは感想でもいいですが。

【北川委員】
 コメントでもよろしいですか。

【川合主査】
 はい、結構です。

【北川委員】
 海外の学会に比べて日本の学会の人数が減っているということに関しまして、2つあると思っています。一つは、今、調べられたのはアメリカが出ているのですが、アメリカが非常にハイインパクトの質の高いジャーナルを発刊している。英国も質の高いジャーナルを持っています。例えば化学の分野をみると明らかです。ドイツも一部あります。そうすると、日本はそれを持ちきれていないので、余り入るメリットがない。もう一つは、日本の国内の学会は基本的に日本語で開催しますので、来ても分からないというところで言うと、メリットが余りありません。そういうところが非常関わっているということを認識する必要があります。今、永野さんが非常に克明にやられた中のうちで、これを参考意見としてコメントさせていただきたいと思います。

【川合主査】
 今のことだけに限ると、小長井先生、何かありますか。

【小長井委員】
 小長井です。私も応用物理学会の会長を2年務めさせていただいたので、ちょっとコメントさせていただければと思うんですけれども、問題意識は今おっしゃられたとおりで、全くそのとおりだと思います。ただ、私どもも数年前からきっちりと対応を始めておりまして、特に国際化ですね。これについては今、いろいろと手を打っておりまして、そろそろ成果が見える頃だとは思っているのですが、ただ、会員については、しょせん、先ほどおっしゃられましたとおりでありまして、海外の人を増やすにはどうしたらいいかというと、今まで日本に来た留学生をいかにとどめさせるかというところが一つポイントだと思っております。それはかなり手を打っています。
 それから、一番の問題はやはり企業さんとの関係といいますか、企業のメンバーがかなり減ってきている。これはそのとおりであります。もともと応用物理学会は産業界からのメンバーが多いというところが特徴にして、物理と工学を結び付けてきているわけですが、一頃は4割以上あったものが、今、それでもまだ35%あるわけですね。企業様の会員がですね。やはり産業構造が変わってくれば、自動的にそこら辺も変わってくるのですけれども、要は、あとはテーマの取り上げ方。応用物理学会もかなりカバーしている部分は広いのですけれども、例えば、今、話題のパワーデバイス、パワー材料というような形で考えますと、驚くほど企業さんからの参画が多いんですよ。つい最近、パワーエレクトロニクス、パワーデバイスについても、研究会活動を分科会活動に昇格させて、数日前に研究会をやったら、担当の者が「いやあ、先生、びっくりしちゃった。参加者の9割以上が企業さんでした」なんていうことがありまして、これはやはり我々としてもそういう方向に少しずつ持っていかなくちゃいけないというふうに考えています。要は、企業さんが期待しているところと学会のマッチングですよね。そういうものを考えていきたいと思っています。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 俯瞰に関する御質問なりコメントなりありましたら。

【岡野委員】
 ナノテクノロジーはどちらかというと従来のタテ型の学問の分類に加えて、横断型の仕組みを新たに構築していく挑戦です。ですから、20世紀に出来上がった縦型の学問領域を横串に刺していくという、そういう観点での新しい試みと見ることができます。我が国に戻って、拠点形成という形で異分野間の連携とか、横断型の連携を主体とした拠点というのは幾つかできつつあるのですが、なかなかそれを定着させることができていません。プロジェクトが終わると研究体制が終わってしまうような仕組みの中で、最先端研究を目指す研究者は苦しんでいます。一方、海外ではセンター・オブ・エクセレンスで学際的、横断型の体制を作って、それが大学の中に継続的にしっかりと根付いていくような仕組み作りをしているのです。日本はやっぱり古い、20世紀型の基盤の上に新しいことをやろうとしているのですが、古いものの既得権力が優先され、新しいものが壊されて行っています。研究のフロントはいつも消耗的な戦いに疲弊しており、作っては壊し、作っては壊しで、日本の実力を飛躍させることに失敗しています。本当のところの21世紀に必要とされる横断型の仕組み作りというところになかなか出ていけていないところがすごく気にはなるのです。その点に関して日本と海外で新分野をどう作っていくか。その違いについて議論して行くことが大切です。
 特に、アメリカは新しい学科作り再編成を着実に進め、物すごい勢いで先端科学技術を支援しています。学科再編成が物すごい勢いで進んでいるのですが、日本は全く逆であることの意思決定のあり方について考える必要があります。

【永野フェロー】
 ありがとうございます。全体の傾向を表現するのはなかなか難しいのですが、やはり一つ一つの海外の大学、又は拠点は、特徴を強化しているわけです。例えば、それはアメリカや中国ですが、中国の蘇州にあるナノポリスでは、そこに研究開発投資ではなくて、インキュベーション機能ですとか、知材や弁護士、戦略の専門家、そういった人たちを集めて、街全体として一つの生態系をそこに作るんだというようなことで取り組んでいます。大学の場合ですと、その大学が特に強みとして持ってきた分野、例えばアリゾナ大学における光研究の拠点など、そういったところと、そこに参画したいという産業界が、産学官でお互いにそこに投資を集中させるということを最初の段階で合意するというのが特徴になっていまして、これが日本ではどうしても、いわゆるデマケーションのような話があって、産業界もなかなか本気でそれをリードしないというところがあるかと思います。この差は確実にあるのではないかなと認識しています。

【川合主査】
 総合討論に移ろうと思います。今、お話のあった俯瞰、それからもちろん具体的なNIMSやマテリアルズインフォマティクスを含めてのことですが、総合討議としては第5期の科学技術基本計画に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の在り方についてということです。ほぼ30分近くありますので、いろいろな委員の方から御意見を頂きたいと思います。なるべく長くしゃべらないで、是非いろいろな委員の方から伺いたいと思います。
 まず最初に、きょうの冒頭でも申し上げたのですが、今後、特に第5期に向けて、なぜナノテクノロジー・材料をやらなければいけないのか。例えば、グリーン、環境問題とか、それからライフとか、それから復興再生とか、国土の共用、そういう非常に具体的な課題がある中で、ナノテクノロジー・材料を日本としてなぜ推進しなければいけないか。それを専門家でない方にも十分納得していただけるようなことというのはすごく大事だと思いますので、まず委員の方から、一つのやり方ではありますが、参事官も新任なされたことですから、参事官を納得させられるような御意見がありましたら是非コメントを頂きたいと思います。お願いします。どなたでも結構です。じゃあ、大林委員ですか。

【大林委員】
 私どもは有機材料を扱ってものを作っています。最近、私どもで一番分かっていただきやすいのは炭素繊維で飛行機を作れるようになったことです。1960年代ぐらいからずっとやってきて、構造を作ってきたのですけれども、その中の強度を上げていくことに対して、ミクロンでしか見えなかった時代がナノで見えるようになった。繊維の中に結晶領域をどう作り込むか配向させるか、結晶化度を上げるかとか、その構造をどう制御するかなどが一つの重要な焦点です。それが見えなくて、マクロの特性レベルで、これがいい、悪いと選んでいたものが、ちゃんと中が見えて、それを成形できるようになったということです。ナノの威力というのは非常に大きいのです。
 それから、欠陥です。ガラス繊維がなぜ折れるかといったら、微少な傷がどこかにあるからで、無ければもっと強度があるはずです。その欠陥レベルが、ミクロンレベルの欠陥だったのか、ナノレベルの欠陥レベルまで押さえ込んだのか、そのことによって強度が非常に上がるのです。そういう有機材料を扱う、これは炭素繊維だけの話ではなく、もっとほかにもいろいろ有機材料、特に高分子材料を作る上では構造設計においてナノというのは我々にとって非常な武器になっているということを申し上げておきたいと思います。

【川合主査】
 一応、かみ砕きますと、日本の産業の非常に強いところである材料を他国に対して優位性を保つためには、今のナノに関する科学技術、これが決め手になったということで、今後、5期に対しても必要ですと、そういう御主張ですね。

【大林委員】
 ええ。それと、もう1点だけ申し上げたいのは、先ほどの御説明の中で、テレビもディスプレーもみんな取られてしまったけれど、材料は日本がやってるということです。それは要するに50年、100年抱えてきて、御説明がありましたけれども、その中にため込んでいるものが山ほどあるのです。そういうベーシックがあるがゆえに勝てているのであって、見て、分析しただけで作れるものじゃないという強み、そこなのです。

【片岡委員】
 きょうの議論で日本の技術、まずナノテク・材料の技術が非常に世界に後れをとっていないというのは明白なんですけれども、ですから、イノベーションはここから生まれると。ただ、イノベーションというのを技術革新というふうに訳したりとか、これは間違いですよね。イノベーションというのは新しい社会経済価値の創造なので、やっぱりそこを間違えちゃうと、ひたすら技術だけ革新していれば問題は解決すると。ますますそれは難しくなっているんじゃないかと。
 そうすると一つは、やっぱりいろいろな材料があるわけですけれども、感じるのは、大体、材料というのは基盤ができて、そこからシグモイダルに発展していくわけですけれども、そのカーブがやっぱり出口というんですか、応用によって随分違うんじゃないかと思うんですよ。ゆっくりとイノベーションが起きていくのもあるし、非常に速いものもある。だけど、先ほどの議論で、例えばいろいろな機能材料がある、電子材料がある、生体材料がある、構造材料がある。それが全部同じように行って、同じようにシグモイダルで行くというイメージがあるんですけど、多分全然違う。ですから、やっぱり出てくるイメージに応じて、どのぐらいのスピード感でこの分野はやらなくちゃいけないかとかいうのを全部、計画に反映しないと、みんな5年計画で同じようにやるんだというふうになると、こんなはずではなかったというふうになるんじゃないかということと、それから、やっぱり、さっき学会の話がありましたけど、もうネットワークが物すごく大事になっていると。ネットワークワーキングというのは、結局、例えば医療の分野というのは特にそうですけれども、やっぱり国際標準化というのを取らないと、これは要するにやってみたけれども標準がずれてしまって、結局没になっちゃうというのが結構出てくるのだと思います。
 ですから、ハードの開発と同時に、やっぱりそういうソフト面というんですか、つまりそういう国際標準をどう取るのかとか、それから、学会なんかもこれはネットワーキングが物すごく大事になっているわけですから、別に学会がやらなくてもいいと思うのですが、要するに、そういう国際標準化と絡めて、そちらの方の政策も同時にやらないと、先ほどため込んでいるというのももちろん大事だと思うのですが、それがないと何も生まれないですから。ただ、本来、それがため込んでいるんじゃなくて、表に顕在化しなくちゃいけないので、そこはやっぱり方策として何か考えていった方がいいのではないかなと思います。
 これは確かほかの先生がどこかで言われたのですけれども、ゴールドラッシュが終わったのに、まだ同じような方法で金を探していると。だから、そういうふうにならないような仕組みというのは、今のようなネットワークワーキングなり、情報をうまく世界レベルで入れ込んでいって、標準化を勝ち取っていくという、何かそういう方法が必要なんじゃないかなと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

【小長井委員】
 材料開発がこんなにインパクトを与えたかという例を一つ御紹介したいと思うんですけど、私は専門は半導体、具体的に言えば太陽電池をやっているのですけど、シリコン太陽電池ができたのは、最初に発明されたのは1954年で、今年ちょうど60年になるのですけれども、私ももう既に40年以上こういう分野におりまして、太陽電池材料はシリコンから、効率が高いガリウムヒ素の関係から、白川先生と有機半導体もやったことがあるんですけど、いろいろ、もう全て、あらゆるものを手掛けてまいりました。
 四十何年やっていますと、今までの経験に基づいて、もう太陽電池は新しい材料なんか出てこないんじゃないかとずっと思っていたんですけど、この1年でそういう考えをまっさかさまにするような出来事が起きました。
 それは、皆さん聞いたこともないかと思うのですけれども、ペロブスカイトという材料なんですね。シリコンの太陽電池も60年研究してきて、現在は4,000万キロワットぐらいの生産量まで行っているわけですけど、こいつがその間に5%、6%から、今、25%ぐらいまで来ているわけですけれども。ところが、このペロブスカイトというのは、この半年の間に17%とか18%ぐらいまで、ぴゅっと、こう、上がったんですよ。その結果何が起きたかというと、今まで有機半導体をされていた方、色素増感を太陽電池でされていた方、大変大勢おられるんですけど、かなりの部分の人がずっと今、動いておりまして、もちろんNIMSもかなりそういう方向になっているかと思うんですけれども、そういうことが起きているんですね。
 ということはやはり、もう今までの経験則によらないところから、そういうものが出てくる可能性がすごくあるということなんですね。太陽電池でもそうなので、多分、ほかの分野とかいっぱいそういうことが起きていると思うんですけれども、僕はやっぱり材料やらなきゃいかんなという感じが非常に強くいたします。この数年、相当な部分になると思います。
 じゃあ、なぜそれができなかったかと、すぐに発見できなかったかということですけど、材料自体は30年も40年も前から知られていて、光物性とか調べられたんですけど、それを太陽電池に使ってみようという人がいなかった。それを最初にやった方は非常に幸いなことに日本人だったんですよ。でも、それに気が付いて、わーっとやったら、今度、外国の人が多くて、今、効率的には韓国とか他の国にちょっと負けちゃっているところがあるんですけど、やっぱり日本で出てきた、最初に使った人が日本だということもあって、ここは非常に力を注いでいかなければいけない分野だなと思っております。非常に材料というのは大事だということですね。
 もう一つ言いたいことは、ある程度、構造が決まると、それこそマテリアルズインフォマティクスじゃないですけど、どういう組み合わせがいいかって出てくるんですけど、じゃ、ペロブスカイトがいいっていうのは、やっぱりインフォマティクスをやっていても出てこないんですよね。そこが非常に重要なんです。でも、両方重要だと思いますから、両方の観点から検討していかなくちゃいけないんだと、つくづく今、思っております。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 ほかに。

【小林委員】
 今、小長井先生のおっしゃった材料については、私たちは少し注目していた時代がありまして、それで今、その物質がそういった太陽電池として極めて注目されているというのを伺って、ああ、やはり面白い物質だったのだなとつくづく思っています。ともかくやはりペロブスカイト型のものというのは誘電体であれ何であれ、非常に有用なものが出てくるのだなと思います。
 そういう基礎的な研究が基になって、その中からやはりその次の世代を支えるものが出てくる例として、液晶について言えば、今日NIMSの機能性材料研究拠点構想という書類の中の10ページに、日本の素材分野における極めて高い世界シェアというのが載っていましたけれども、これは液晶はもう100年以上前から知られているものですが、その当時、今これだけ使われるようになるだろうと思った人は全くいないだろうと思います。しかし、今、どこを見ても液晶は使われていて、重要なものです。何十年とか100年とか、それぐらいたってから使われるような材料というものが、今現在開拓している中から出てくるという、そういうことを目指して私たちはやっていかなければいけないのだと思います。
 NIMSの重要なこととして、基盤の基のところ、材料の本当の基礎となるような、そういうところに力を入れてやるのだと言われましたけれども、それは非常に大事なことだと思います。中国がすごい勢いでいろいろなところで力を発揮していっていることがあると思います。ほかの国もそうだと思うのですけれども、ですが日本の強みである基礎的なところに重点的に力を入れて、それで10年、20年、もっと先を目指した材料というものを何とか出していく。それがやはり国の経済を支えるような、産業を支えるようなものを生み出すのであって、そこに日本は懸けないといけないのではないかと思います。論文数が減っていくだとか、今日御説明のない資料を、ちらちらと見ましたけれども、どこを見ても何か減っているとか、書いてあるのですけれども、それは数ですね。だからクオリティーで勝負していかなければいけないのだろうと思っています。それが日本にはできるだけの基盤がやはりあるのではないかと思いますので、是非基盤の基のところに力を入れてやっていただきたいと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 例えば参事官の方から、逆に委員に、こうではないかと、ここら辺はよく分からないというのを聞いていただいてもいいと思います。それとも、きょうはずっと聞きますか。

【長野参事官】
 はい。

【川合主査】
 ほかに御意見は。

【栗原委員】
 私は、化学でコロイドと界面化学というのが専門ですが、もともとナノテクノロジーの基になっている分野だということで、ナノ粒子などはもともとこの分野にあったものですけれども、今のナノテクノロジーの進展によってできたことは、原子・分子で今までだったらバルクで考えるようなことをみんな原子・分子で考えるようになって、それが分かるようになったということは、大林さん、皆さんがおっしゃっていることだと思うのですけれども、私は今、低摩擦化のプロジェクトというのをさせていただいていて、摩擦研究者と材料そして計測の研究者が一緒に研究をするということをさせていただいております。それの中でナノテクノロジーがいかに大事かということをどう理解しているかということを少しお話しさせていただきたいと思います。摩擦というのはあらゆる機械、動かすものにあるので、非常に技術範囲が広くて、課題もたくさんあるテーマですけれども、従来型の経験でやっている技術開発は壁があって、もうそれ以上進めるところはなかなか時間が掛かって大変だというふうに皆さんおっしゃっているところでした。
 実際に、私ども、材料の方から一緒にやりますと、随分手間も掛かり、エネルギーも要るのですけれども、先端的な研究の考え方というのは自分でやってみることによって、こんなことがあるんですねと、理解したり、従来ですと全体がまとめて見られていたようなことを分解して見ることで新しい方向性とか考え方が少しずつ出てきております。まだこれは今、半ばなので、後半にそれによって頑張らなくちゃいけないと思っておりますけれども、特に出口から考えるときに先端的なものにつなげられるという意味でナノテクのプラットフォームとか装置の共用化というのはすごく貢献していると思っております。私たちは小さな拠点ですけれども、大学の中ですと、ここで何かやりたいと、次こういうことを測ってみたいというと、今ですとほとんど装置の共用により、いろいろなやりたいことが非常にスピーディーに新しいトライアルができるということで、企業の研究者の方にとってはそれが非常に楽しいと。皆さん、派遣元が心配するぐらいに遅くまで、とにかく考えていたらすぐできるというようなことが実現しておりまして、横串を刺すという活動がだんだんに日本全体に非常に広がっていったために、そういう課題解決型の拠点をやらせていただいているところでそういう活動ができているということは、これはNIMSのいような大きな拠点ですともっとスムーズかもしれませんけれども、そういうネットワークをうまく作って、地方でもどこでも同じレベルでの活動ができる、そういう活動がより継続的に作っていけるといいのではないかと思っております。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。

【曽根委員】
 産業の日本の競争力という観点からちょっとナノテク材料を考えてみたいと思うのですけれども、最近いろいろな新しい動きがあるのでそこも含めてですけど、要するにナノテク材料というのは素材のイノベーション、そこで新しい特性、機能を生み出してと。それが最終的にはいろいろな製品の付加価値につながっていく。ナノテクが生み出す新しい機能を製品に盛り込む、新しいよりよい特性を製品に埋め込むという形で製品の競争力になると。日本は素材のところで非常に強い力が産業としてもじわじわと顕在化してきている。それは大林さんがおっしゃったように何十年スケールの蓄積があったからだと思います。そのポジションがこれからもキープされていくのかどうかということなのですけれども、素材は強い、一方、製品はいろいろうまくいっていない部分もありますけど、それは多分、ビジネスモデルですとか経営の問題があって生じている、しかしながら非常に重要なのは、その付加価値を生んでいるのは素材だと。
 海外を見てみると、今、新しい動きがあるんですね。ドイツがものづくりにすごく力を発揮している。今、米国の繁栄というのはIT革命の恩恵ですよね。それに我々が目を奪われている中で、じわじわと日本が得意だったところのものづくりのところの覇権をドイツが握りつつある。そこでは産学連携をうまく機能させている。フラウンホーファーが活躍している。そういった意味で、日本のポジションが危なくなっている。もう一つは、マテリアルズインフォマティクス、先ほど議論がありましたけれども、アメリカもものづくりのところにものすごく最近、力を入れようとしているんですね。その競争力、牽引力になろうとしているのがマテリアルゲノムイニシアチブで、ITはアメリカが圧倒的に強いですよね。ものづくりのところにあの技術が入ってきたら恐ろしいことになるんじゃないかなと。彼らもそれを期待している。
 五十嵐さんがおっしゃったように、確かにものづくりはいろいろなノウハウがそこに入れ込まれているのだけれども、材料を開発した材料単独で見るんじゃなくて、巨大なデータの空間の中で、周辺材料との関係の中で見ると、全然違った見え方になって、目的の性能、機能を持った新しい材料が一気に見つかる。それを先行して特許化してしまう。そういう新しい時代の流れがある。こういうところでやっぱり日本は後れをとると大変なことになると思います。そういう意味でナノテクをベースとしてしっかりキープし、さらにそれを発展させていくいろいろな新しい仕組みを作っていかないといけない。そういうふうに思っています。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 あと5分程度なので。
 大林さん、今のことに対してですか。

【大林委員】
 ええ、ちょっと一言だけ。

【川合主査】
 じゃあ、先にどうぞ。

【大林委員】
 マテリアルズインフォマティクスも込みでなのですけれども、材料屋がものを作るときに、改良型を作りたいのか、新しい機能で新しい産業を興したいのかということ、それから、今、曽根先生がおっしゃられたように、既存のものに対して全く違うコンセプトでもってそこを革新するのか、その目的によって狙いが違うのです。やはり日本国はどこを向いて、どこを強くしていくのかという、その目標感がないと、その目標を本当に持っていけないということが重要なのです。日本の産業をどこへ、どう持っていくんだっていう目標感に対して、どういう材料体系を持っていくんだ、新しい素材を作ったときにどのアプリケーションに持ち込むんだという視点です。企業はそれを製造して利益を出さないといけないのですから、そこまで持っていく。その努力をお考えになっていただきたいです。以上です。

【小池委員】
 私もまさに今、大林委員が言われたことを申し上げたいと思ったのですけれども、先ほどNIMSの室町理事の方からの一つの例として、また、小林委員からも10兆円産業を支えた液晶は日本にまだ技術があると。私はでも、これに対しては、このまま行くと日本の未来はないんじゃないかなと思えるんです。それは、まさに今、大林先生が言われたように、10兆円産業を築いた液晶の構造って、もともとは極めてシンプルなものなんです。液晶セルがあって、2枚の偏光板がある。そういう極めてシンプルなところからスタートしたのですが、どんどん、どんどん、明るくしなくちゃいけないとか、横を見ると色むらがあるからやらなくちゃいけないと。そのたびに材料をシステムデザインの人が主導になって、これ、色むらがあるから何とかしてくれよということで材料が来る。そのたびにアドオンされていくんですね。今、気が付いてみると、今の液晶テレビ、4Kはこれでやろうというテレビは10枚に及ぶフィルム群が入っているんです。これは私たちの機能から見ると、複雑怪奇なものであって、どこかいじるとまたおかしくなる。だからまた足していくのか。最もシンプルじゃなくてはいけなかった液晶が、今は複雑怪奇なそういうものになっている中で、じゃあ、これどうするかってなると、もう材料が分かってくると、これは韓国でも台湾でも中国でも、その材料さえ購入してそれをやれば同じものができてしまう。だけど、まさに日本の材料が強かったところは、材料の機能、そういうものが今、出始めているんですね。そうすると、今まで必要だった位相差フィルム、そういうものも要らないとかっていうことになると、液晶であって全く違う3分の1ぐらいの構造になるものが今できようとしているんです。そうすると、コストは当然下がる。じゃあ、安いものが今、インドや中国からって。だけど、そういう新しい日本からの発信した材料の機能から提案する液晶ができればコストも無理なく安くなる。性能もよくなるっていう、この原点に戻る必要があるんじゃないかと思うんですね。
 システム主導であるということ、これは決して否定することではない。だけど、それは本当のイノベーションではない、連続的なインプルーブメントが徐々に重なってくると。しかし、歴史を見ても、本当の大きなイノベーション、今あったフィルムが、例えばこれが要らなくなるんじゃないかとかっていう提案は、我々マテリアルサイドの、そういうナノをやっている我々が主導になって連携していく、まさにそういうことが問われる。特に2020年にはスーパーハイビジョン、誰もがタブレットやテレビにおいてもスーパーハイビジョン、4K、8Kというものを享受するものがもう前倒しで来ようとしている今こそ、大きなチャンスであって、10兆円産業を日本が主導で築きながら、気が付いてみたらアジアの外に行ってしまった、それを取り戻す絶好の好機ではないかなと思っています。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。

【五十嵐委員】
 すみません、一言だけ。短く。
 ナノテク材料はこれからの日本の資源エネルギーの分野に絶対貢献すると、考えています。これはもちろん構造材料もナノメートルで制御して、キロ、トンで作り込む、そういうことをやるのですが、これ以外にエネルギー創出のところに非常に寄与している。例えば水素分離。水素を作る。あるいは燃料電池の動作をさせるための触媒、これもナノメートルサイズで触媒を制御してやっているわけです。
 ですから、今後、このナノテク・材料の分野というのは、日本の一番大きな課題の資源エネルギーのところにも大きく貢献するということで、是非促進していただきたいと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 きょう、むしろ第1回ということで、第5期に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の在り方に関しては、今後も何回か議論を進めたいと思います。そういう中で、委員はナノテクの専門家なので、専門家だけで通じるというのでなくて、ほかの分野の人、若しくは一般の人にも分かるような形で方向性が出せれば非常にいいと思います。
 今後、恐らく重要なことは、5期のナノテク・材料の在り方ということですが、きょうはもちろんまだ十分議論はできていなくて、ちなみに、先日、CRDSの会議で吉川センター長が、第5期は科学者を大事にする5期であってほしいと。今までの4期は科学者は基本計画、誰も読んだ人がいないんじゃないかと。それと、みんな知らないでやっているので、これではまずいんじゃないかと。一つの方向性だと思いますが、そういうことも含めて、ナノテク材料の5期に対する在り方というのは今後も議論していきたいと思います。
 それで、ちょっと遅れて新任の常磐局長がいらっしゃいましたので、挨拶をしていただければと思います。

【常磐局長】
 貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。7月25日、先週の金曜日から研究振興局長として仕事をさせていただいております常磐です。今の直前は実は高等教育局に3年間ほどおりまして、そこでは国立大学の問題、それから私立大学の私学部長というのも6か月させていただいたわけです。そういう意味で、きょうの御議論の中でも、岡野先生の方から日本の大学の学科はなかなか変わらないじゃないかというお話もありましたので、大学あるいは大学院での人材育成ということも非常に重要だと思います。そういう点で是非大学政策との連動ということも含めて考えさせていただければと思っております。
 そして、きょう、まさにナノテクノロジーと材料科学について、私も非専門家ですので、非常に貴重なお話を承ることができました。そんな中で、特にこの分野、非常にもちろん重要であることは言うまでもないわけですけれども、その分野がこれから日本の社会において果たす役割も含めて、非常に先生方の真摯な、また、熱い思いもきょう聞かせていただきましたので、第5期の科学技術基本計画に向けてこれから議論をまたさらに深めていただくということですので、私どもも是非先生方と力を合わせて、日本国のために有意義な計画になるように、このナノテク分野、特にその中心だと考えておりますので、我々もしっかり努力させていただきますので、引き続き是非御指導をよろしくお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局より連絡事項がありましたらお願いいたします。

【吉元係長】
 次回の委員会についてですが、概算要求直後ということになりますが、9月1日、15時から17時を予定しております。よろしくお願いいたします。

【川合主査】
 それでは、本日の委員会はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

ナノテクノロジー・材料企画・機構係

(ナノテクノロジー・材料企画・機構係)