第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成20年1月28日(月曜日) 10時~13時

2.場所

文部科学省 16F 特別会議室

3.出席者

委員

 榊主査、井上委員、魚崎委員、潮田委員、遠藤委員、岡野委員、長我部委員、片岡委員、川合委員、北澤委員、栗原委員、竹山委員、田島委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員、横山委員

文部科学省

 大竹基礎基盤研究課長、高橋ナノテクノロジー・材料開発推進室長、下岡室長補佐、中井情報課課長補佐 他

オブザーバー

(委員外)
 石川理化学研究所放射光科学総合研究センター長、岡崎自然科学研究機構分子科学研究所教授

4.議事録

【榊主査】
 おはようございます。予定の時刻が参りましたので、第6回ナノテクノロジー・材料委員会の会合を始めたいと思います。お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
 まず、事務局より委員の出席及び手元の資料について、確認をお願いいたします。

【下岡補佐】
 本日ご出席の先生方をご紹介させていただきます。
 では、五十音順にご紹介いたしますが、井上委員。魚崎委員は所用のため少々おくれていらっしゃるそうです。潮田委員。遠藤委員と岡野委員も所用のためにおくれているそうでございます。長我部委員、榊主査、片岡委員、川合委員、北澤委員、栗原委員、竹山委員、田島委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員、横山委員。大泊委員と岸先生、あとは小長井委員がご欠席との連絡をいただいております。
 では、お手元の資料について確認させていただきます。資料1でございますが、第5回ナノテクノロジー・材料委員会の議事録(案)となっております。
 資料2でございますが、X線自由電子レーザーの開発・利用についてでございます。
 資料3でございますが、次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発拠点体制図となっております。
 資料4でございますが、自己組織化研究の今後の方向ということで、川合委員からプレゼンをいただきます。
 資料5でございますが、化学的エネルギー変換、貯蔵とナノテクノロジー、魚崎先生からご紹介いただきます。
 資料6でございますが、提案:環境・エネルギーに関するナノ材料テクノロジー戦略、栗原委員からご紹介いただきます。
 資料7でございますが、平成20年度戦略的創造研究推進事業戦略目標(案)となっております。
 以上でございます。お手元の資料、欠落等ございましたら事務局のほうまで--5は魚崎先生に持ってきていただきますので、今、お手元にないものとなっております。すみません、失礼しました。それ以外の資料で欠落等ありましたら、事務局のほうまでお願いします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、まず前回第5回の委員会の議事録が皆様のお手元にございます。これは点検いただきまして、もし修正の必要があった場合には2月12日までに事務局にご連絡をいただくようにお願いしたいと思います。
 それで、きょうの会合ですけれども、10時から1時までということですけれども、今回はご案内のとおり、X線自由電子レーザーの研究開発につきましてプレゼンテーションをいただいた後での質疑がございます。それから、前回、プレゼンテーションのありました次世代スーパーコンピュータについてのさらなるフォローがございまして、その後で有識者の発表ということで、委員の3名の先生からご発表いただく。それで議論をするということであります。よろしくお願い申し上げたいと思います。
 では、早速、予定の議事の第1番に入らせていただきたいと思いますが、X線自由電子レーザーの開発・利用につきましての議事をさせていただきたいと思います。ご存じのとおり、国家基幹技術としてX線自由電子レーザーの開発が進行しております。この自由電子レーザーはナノテクノロジー及び材料分野の研究開発に活用することが期待されておりまして、現在のこの開発の進捗状況と利用について、開発を担当されてこられました理化学研究所の石川センター長から15分ほどのご説明をいただいて、あと15分ほどの意見交換をさせていただきたいと思います。
 それでは、石川センター長、お願いいたします。

【石川センター長(理研)】
 理化学研究所の石川でございます。きょうはX線自由電子レーザーの開発・利用についてということで、では、資料2に基づいて説明をいたします。
 1ページめくっていただきますと、まずX線自由電子レーザーというのは何か。何かというか、今までレーザーのない、波長の短い領域にコヒーレントな光をつくろうというのがX線自由電子レーザーの計画でございまして、これは皆さんご存じのとおり、普通のアトミックなプロセスでは、このあたりの光はできないということで、加速器を使った自由電子によるレーザーを計画していたわけでございます。もちろん、短い波長というのは、物を見る場合の分解能というのは、ある意味で波長でリミットされるわけでございますので、短い光を使ってあげるということは細かいものが見えるようになるということでございます。
 もう1枚めくっていただいて、2ページ目にまいりまして、今、我々が考えておりますX線自由電子レーザー、X-ray Free Electron Laserを略してXFELというわけでございますが、この特性を考えてみますと、まずSPring-8からの比較で考えてみますと、Peak Brillianceという、そこの括弧の中に入ったような難しい単位になるわけですが、こういう量があります。これが10の9乗でございますから、10億倍ピークの明るさと考えていいのですが、これが強くなります。
 一方で、パルス幅は3桁、今、SPring-8がピコ秒であったものがフェムト秒までいくわけです。一方で、コヒーレンスという観点で申しますと、FELのコヒーレンスは100パーセントのコヒーレンスになりますので、今のSPring-8から3桁上がったような、こういうジャンプがあります。というわけで、X線自由電子レーザーの光の特質をまとめてみますと、非常に高いPeak Brillianceを持って、非常に狭い時間幅を持ってコヒーレンスが高いという、こういう3つの特徴がございます。
 次のページにまいります。そうしますと、今まで小さいものを見る光として短波長の放射光を使って、放射光でナノの世界の姿、形を見てきたわけでございますし、あと、非常に速いものといたしましては、超高速レーザー、これは波長は長いので空間的には平均したような形でございますけれども、そういうものを使って超高速変化というのを見てきたわけでございますが、この非常に短波長で速い光源、X線自由電子レーザーができますと、ナノの世界での超高速変化を時間、空間の関数として見ることができるようになる。これは別の言い方をしますと、構造と機能の関連、今までいろいろと見てきたような話をしてきたわけでございますけれども、その見てきたような話を実際に直接に観察する道具を我々は得ることになるのだろうと思っています。
 そういうわけで、次のページに行きますが、先ほどご紹介がございましたように、このX線自由電子レーザーのプロジェクトは国家基幹技術として進めなさいということで、平成17年にこの本プロジェクト、総合科学技術会議から国家的に重要な研究開発の評価というのがございまして、このプロジェクトを進めることが適当である。特に優先度の高い政策として位置づけられているわけでございます。
 次のページにまいりますと、そういうわけで、理化学研究所と、あとSPring-8を運営しております高輝度光科学研究センター(JASRI)の間で合同の建設推進本部をつくって、協力体制をつくった上でこの建設を進めているところでございます。今現在、組織としては、この5ページに示したような形になってございます。
 次のページでございますが、6ページにまいりまして、どういう計画かという計画のロードマップを示したものが6ページでございまして、平成18年度から5年計画で施設の整備を行う。ですから、平成18年から22年度までで施設整備を行って、その後、23年度からSPring-8と同じように共用施設として運用するということで、今、準備を進めているところでございます。
 これが一番上の実機と書いてあるところでございますが、実はこの実機建設の前にさまざまなR&D、あと原理実証を兼ねまして試験加速器という小さい、実機の32分の1のスケールのものをつくってございます。これは実証機としての役割はレーザー発振するということで果たしまして、今、実機のための研究開発と、あと共同利用、50から60ナノメートルのレーザー、非常に強いレーザーが出ますので、そのあたりの共同利用を今から始めようとしているところでございます。
 次の7ページでございますが、7ページに施設の配置の計画図をつけてございます。一番左にSPring-8が一部分見えているわけでございますが、SPring-8に隣接した形で、施設の長さとしては大体700メートルくらいの長さの施設になります。図の右側から電子が出て、これが線形加速器で加速されて、左側に向かって光を出すという形でございますが、この左側に向かって光を出した先で、SPring-8の光とFELの光が同時に使えるようなことが考えられております。
 一方で、この8GeV(ギガ電子ボルト)の線形加速器からSPring-8のシンクロトロンに向かったパスをつくって、ここでできました非常にいい電子ビーム、質の高い電子ビームをSPring-8に入れるということも将来的にできるように考えられております。
 次がプロトタイプ機でございますけれども、このプロトタイプ機は実機に入る前にいろいろと予想にはない技術を使っております関係で、その技術がしっかり働くことを実証しなさいということで、このプロトタイプ機をつくらせていただきました。このプロトタイプ機は、250Mev(メガ電子ボルト)の電子加速器を使った全長60メートルの自由電子レーザーでございまして、発振する波長は60ナノメートルのところで発振するものでございます。これが完成しましたのは2005年の8月に建物ができて、11月に加速器が並び終えて、それからほぼ半年かけてレーザー調整をやって、2006年6月にレーザー発振を観測しております。
 9ページがそのレーザー発振をしたときの様子でございますけれども、右上の図を見ていただきますと、青で書いてあるSpontaneousの光、これは500倍大きくしてありますが、それに比べてまた1桁上のFELの光というのが出てきております。これを光らせているチャージに対して光の量をプロットしてみますと、左下の図でございまして、発振していないとリニアに振れるわけでございますけれども、干渉が起こると、これが二乗で増えていく様子がここで見えてございまして、このことによって我々の方式でFELが間違いなく発振するということが確かめられたわけでございます。
 次のページが先ほどの図面をモンタージュにしてSPring-8と重ねてみると、どういうふうになるかという絵でございまして、SPring-8のわきに、ここに示したような直線の建物、かなり細長い建物でございますけれども、こういうものができ上がって、ここにX線自由電子レーザーが入る。この自由電子レーザーと、先ほども申しましたように自由電子レーザーの光とSPring-8の光を同じサンプルの上に乗せるようなことが将来的には可能になってくるようなつくり方をしてございますし、この自由電子レーザー用の加速器の電子ビームをSPring-8の蓄積リングに導入することも可能な形になっております。
 次でございますが、プロジェクト、日々非常な勢いで今進んでいるところでございますが、理化学研究所では、このプロジェクトのホームページをこのように整備いたしまして、広報に努めているところです。右側で赤丸に囲ったライブカメラというのがございますが、これは建設の状況を1時間ごとに写真に撮ってWeb上に公開しているということをやってございます。
 その次のページに、そんなに新しくはないんですが、1月9日現在のこのライブカメラの写真を載せてございます。これは1時間ごとに更新しているわけでございますので、今はもうちょっと進んでいるわけでございますが、これは線形加速器の一番根元の部分の床板の工事が終わって、今、シールド壁をつくるところに進んでいるというようなところが見えているわけでございますが、こういう形で進捗状況をオープンにしています。
 一方で、次のページでございますけれども、このX線自由電子レーザーはアメリカ及びヨーロッパでも計画が進んでおりまして、今、かなり熾烈な競争になっているわけでございますが、一方で、どうでもいいところは協力してやろうということで、3つの施設での協力体制というのを昨年の10月につくりました。ということで、CollaborationとCompetitionが、両方が競合していくような形で今進めているところでございますが、地球を回して、こういうふうに3つかいてみると、かなりきれいな正三角形になりまして、逆に申しますと、我々のFELはアジア、オセアニアあたりはカバーしなければいけないのかなと考えております。
 次のページが欧米と比較した場合の我々の計画の特徴でございますが、まず大きさが小さい。これは前から申し上げていることですが、コンパクトである。加速エネルギーが小さい。それにもかかわらず、発振波長は短い。全体を小さくしたのでコストは一番小さいということでやっているわけでございます。今、2010年の完成を目指しているわけでございますが、アメリカが2009年から10年の完成を目指すということで、アメリカとの間でかなり熾烈な競争になっております。
 利用でございますが、その利用するということは、前にも申しましたようにナノの世界をフェムトで見るというところが利用の基本でございますが、この利用の推進ということに関しましては、オールジャパンの利用推進協議会というのを文部科学省のもとに設けまして、ここで競争的資金の形で利用を進めるということで、いろいろな方にご応募いただいて進んでおります。
 ここではプロトタイプ機を使って開発するとか、SPring-8を使って開発するとか、いろいろなことが進められているわけでございますけれども、全体の利用のスキームといたしましては、その次の16ページにあるわけでございますけれども、平成18年度から始まりまして20年度までの間に要素技術の開発を行う。これは競争的資金の形で行って、この20年度までの3年間ででき上がった要素技術を21年、22年の2年間で統合システムとして組み合わせて、22年度に完成するXFELができ上がったら、すぐに利用が可能になるような計測装置を準備するというのがこのスキームでございます。
 この中には、全国からいろいろな大学の先生方にご参加いただいて、今、着々と進んでいるところでございまして、平成20年度が要素技術開発期の最後でございますので、ここでひとまとめいたしまして、21年、22年の利用研究のための計測装置をつくるところにつなげていくということを考えております。
 最後でございますが、17ページにまいりまして、今まで申しましたように、このX線自由電子レーザーというのはナノメートルの世界をフェムト秒で観察可能とする光でございまして、原子と電子ででき上がった物質がどのように働くかを明らかにするものでございます。この平成18年度に開始されましたX線自由電子レーザー施設設備は、平成22年度の完成及び23年度以降の共用運転に向けて、今のところ順調に進捗してございます。
 このX線自由電子レーザー、21世紀の科学技術の先端基盤技術設備といたしまして、日米欧で開発競争が行われているものでございますけれども、この中の共通基盤技術に関するものに関しては、研究協力を進めて、3つで振り分けていろいろ進めようということで、協力が進んでいます。利用に関しましては、文部科学省のもとにオールジャパンで利用技術開発を行う仕組みが整備されておりまして、完成後すぐに研究成果が出るよう準備が進められているところでございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発表に対する質問やご意見をちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【田中委員】
 こういう巨大な装置の完成後の運営形態というのはどういうふうにお考えでしょうか。これはお金のことも考えて、どういうふうに運営していかれるのか。それはアメリカ、ドイツの運営形態と比較してどういう特徴を持っているのか。
 私のこの質問の真意は、日本の共同利用施設の運営というのは、とかくお上のお金だけに頼るというところがあって、最近ようやくそれを引き受けた法人側の努力を促すというような、そういう課金制度、マッチングファンド制度、そういうのが少し出てきてはおりますけれども、こういう大型の装置はそれなりのやり方を今までもしてきていると思いますけれども、今後、相当にいろいろ考えませんと、後年度負担というのは大きくなりますよね。そういう意味では、競争力その他も含めていろいろな工夫が要ると思うのですが、そのあたりのことをお伺いします。

【石川センター長(理研)】
 運営に関しましては、基本的にはSPring-8と同じ運営形態をとろうとしております。そのSPring-8、今、高輝度光科学研究センターで運営しているわけでございまして、SPring-8は、ある意味で日本のこの手の組織の中では一番産業利用等、進んでいると思っておりますが、その中にこのFELの運営も入れたいと考えております。そのときのメリットは、1+(たす)1が2になるのではなくて、今のSPring-8を運営している組織を使うことによって、あまり全体として大きくしないで2つの施設が運営できるということが、多分、一番大きなメリットでございまして、そういう意味では運営費もそれほど膨らむことなく、全体を見ることが可能になるのではないかと思っています。

【榊主査】
 関連で、この時点では大変難しいですけれども、定性的な、それほど膨らまないという、「それほど」というのは分野によってどれぐらいのイメージを持てばいいのか、ざっと、三百数十億円といいますと、年間動かしていくことでもやっぱりかなりのお金がかかるということが実態ではないかと思うんですけれども、何かその辺の推定があれば、この時点では大変ご発言しにくいとすれば控えますけれども、どんなイメージを持てばよろしいか。

【石川センター長(理研)】
 イメージだけの話ですけれども、例えば加速器関連の施設というものの運営費は、建設費の大体15パーセントぐらいかなと思いますが、多分、10パーセントくらいでいくのだろうと。だから、370億ですと、人件費から全部含めて三十七、八億で十分やっていけるのだろうと思っていますが、これは、おまえ、言ったじゃないかと言われるとなかなか大変なことになると思いますが、今の私の感じではそう思っています。

【榊主査】
 わかりました。ありがとうございます。
 どうぞ。

【田中委員】
 よろしいですか。もう一つ、こういう装置を使って、最近、科学技術に大きな進展を見せているアジア諸国がございますね。そういうところとの交流を何か進めていくというような積極的なアイデアというのはあるんでしょうか。

【石川センター長(理研)】
 今、この施設には、細かいことはお示ししなかったんですが、最終的には5本のFELが1つの加速器からできるようになっておりまして、今つくっているのは2本でございます。実は台湾から5本のうちの1本をつくらせてくれないかという話が出ておりまして、それは我々としても真剣に考えていきたいと思っております。一方、中国、韓国では、我々のところにつくるのではなくて、自前でつくりたいので、これから協力を考えられないかという打診を受けております。

【田中委員】
 それはどういうふうに今後処理をされていかれるおつもりですか。

【石川センター長(理研)】
 それはいろいろ難しいところがございまして、中国、韓国は、日本の技術がよくても日本の技術は使いたくありません。これは新幹線と同じです。日本の技術はかなり群を抜いてよくなければ、多分、ヨーロッパ、アメリカのほうを向くだろうと思います。その中で、今、我々が考えているのは、無理に我々の技術を使ってくれというのではなくて、お互いにいいとこ取りをして、もっといいものを中国、韓国で考えてくださればいいなと。もしそういう方向を向こうがお考えになるのであれば、応援していこうという姿勢です。実際にはなかなか難しいと思いますが。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】
 おくれて来て申しわけないですが、運営のことについて、先ほどお金のことがありましたけれども、私もSPring-8とかPF、それから、グルノーブルとあるんですけれども、非常に大きな違いはテクニカルサポートが欧米のこういう大型の施設の場合、ものすごくよくて、例えば夕方にちょっとハード、あるいはソフトウエアがおかしいとか、あるいはこの軸がこうなった、すぐにワークショップの人が対応してくれるとか、そういうのがなかなか日本のPFにしても、SPring-8にしてもなくて、特にこういう新しいもので広げていきたいというようなときは、それがないとなかなか新しい人が入ってこれないし、世界的にもリードできるような成果が出ないと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

【石川センター長(理研)】
 そのワークショップの問題はおっしゃるとおりでございまして、日本のこの手の施設ではマシンショップというか、そういうものを切る方向でずっと進んできてしまったということがございます。SPring-8のサイトにおきましては、実は中にはマシンショップは置かないというのが当初からのつくり方でございまして、そのかわりに何をしたかというと、実はあの近くというのは衰退した造船産業というのがございまして、その衰退した造船産業の工場を使うと、朝、物を頼むと夕方に持ってきてくれるというシステムがつくれるというか、でき上がっております。ですから、何か足りないものがあって、朝、あのあたりの昔船をつくっていたところに物を頼むと、夕方には持ってきてくれるというシステムをつくってございますので、そういう形で中のテクニカルスタッフを補うという形で今進んでおります。それをFELにもそのまま使いたいと考えています。

【魚崎委員】
 そのワークショップだけではなくて、例えばビーム担当者がもう少しコミットして、あるいは一緒に開発に参加してくれるとか、素人が初めてこういうのを使うとしたときに、なかなかいろいろ壁が大きいんですけれども、ほんとうに世界的なデータって、我々も5年とかかかっていたんですけれども、その辺がかなり違うなという。だから、ワークショップは外注でもいいんですけれども、そのつなぎをしてくれるとか、そういう体制がもう少し準備できるのかなと。

【石川センター長(理研)】
 ある意味で、フォトンファクトリーとかSPring-8とか、あの放射光というのは30年の歴史がございまして、我々が飛び込んだ二十数年前、どうだったかというと、そのころはみんな一緒にやっていたわけでございます。多分、FELは1980年ころの放射光と同じように最初は立ち上げていかなければいけないと思っておりまして、そのあたりは先生おっしゃるとおり、みんなでやっていかないといけないと思っています。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【横山委員】
 IT企業でナノテクの研究をしている者なんですけれども、SPring-8に関しては分析とか、それにも使えるということで積極的に使わせていただいておりますが、X線自由電子レーザーに関してはまだ不勉強ということもあって、ほんとうに何に使えるのかというのはなかなか見えないのが実情かなと思うんですけれども、この3ページの絵で特徴を書いておられるんですが、もう少し具体的に、こういうことができるんだぞというのをアピールしていただければ、もっと産業界も入っていけるのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

【石川センター長(理研)】
 多分、最初に使いでがあるのは、非常に速いものが見えるというところだと思います。そのあたり、フェムトの時間を追いかけるというところ、我々も今一番注力しているところでございますが、フェムトが見えると物によっては触媒関係ですか、触媒関係の中間状態とか、そういうものが見えるのではないかということで、かなり大学の先生方が、そのあたりの時間、速い、高速計測システムをやっておりますので、そこに乗ってくる産業材料というのはかなりあるのではないかと思っています。例えばスペクトロスコピーを非常にトランジェントな状態でXAFSをとってみるとか、そういうことはできるんだろうと思っています。

【横山委員】
 フェムト秒に関しては、フェムト秒テクノロジー機構というのが昔あって、かなり高速まで見られるようになっていまして、具体的にどういうふうに使えるかというのは、これからいろいろ勉強させていただきたいなと思っているんですけれども、そういった意味で、応用を考える組織の中に産業界がまだ入っていないような組織になっているんですけれども、もし可能であれば産業界も入って、どのように使えそうなのか、そのあたり検討させていただければなと思いました。

【石川センター長(理研)】
 その点に関しては、かなり広い産業界からそういうご要望がございますので、アカデミーだけでなくて産業界に向けた何かをやっていくということを今つくろうとしている最中でございますから、またご案内できると思います。

【榊主査】
 どうぞ。

【潮田委員】
 私も産業界といいますか、素材メーカーの者でございますが、こういう最先端のものというのは、今まで見えなかったものが見える、ジャンプアップがあるということで、メーカーからも非常に大きな期待があると思うんです。私が言いたいのは、先ほどの議論と全く同じで、どういう対象でどういうジャンプアップがあるのかどうか、そこら辺の情報をいただきたいということと、それから、体制表については15ページに書かれておりますが、これをそういう情報開示を含めて、やる気のあるところに手を広げていただけると非常にありがたいなという要望でございます。よろしくお願いいたします。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【長我部委員】
 日立製作所の長我部と申します。私も産業界なんですが、多分、SPring-8は産業ユースが20パーセントぐらいいっているということで、XFELに関しては、そういう数値目標的なものを立てるのか、あるいはかなり初期は基礎研究に集中するということで立てないのか、その辺のお考えをお聞きしたいなという話と、それからあと、先ほどの計画で21年に向けて計測システムをいろいろ開発していって、ビームを出すところだけではなくて利用していくというお話なんですが、そのときにどういう計測をやるかという、その装置のところもよく計画を練ってやっていただきたいなと思います。
 というのは、つい最近、ダイハツのインテリジェント触媒を開発された田中さんという方のお話を伺ったのですが、ペロブスカイト型の触媒で70パーセントぐらいにパラジウムの利用量を減らしたんですが、その方がやっぱりX線、XAFSを使っていて、ディスパーシブなXAFSがSPring-8ではできなくて、ESRFに使いに行ったということがございまして、質のいいビームを出すだけではなくて、そこに附帯する計測装置というのはほんとうにいろいろな観点からよく議論されて、予算化とか、研究者とか、そういうことを含めて今の段階から検討していただけるとありがたいなと思っております。

【榊主査】
 ほかにいかがですか。どうぞ。

【石川センター長(理研)】
 よろしいでしょうか。まず1番目のご質問の数値目標でございますけれども、具体的な数値目標というのは立ててございません。というのは、先ほども申しましたように、放射光のほうは30年の歴史の上に立って、いろいろどうやれば何がわかるということがわかった上に乗った産業利用だと思っております。一方で、FEL、とは言っても、昔と今と--昔というのは30年前と今と、基礎研究から産業応用に行く時間というか、距離というか、それが非常に縮まっているので、最初から、基礎のところからある程度インダストリーの方に入っていただいたような形で進めていくのではないかと思っています。そういう意味では、何パーセントにするという数値目標を決めるのではなくて、むしろ、最初から混成部隊をつくってやっていくのがいいのではないかというのが、私のかなり個人的な考え方でございますが、そう思っています。
 装置のところをよく考えなさいというのは、おっしゃるとおりでございまして、それはそうでございます。ただ、先ほどのダイハツさんの例でございますと、ある意味でディスパーシブのXAFSというのは第2世代の放射光をターゲットとしたような手法でございましたので、特にSPring-8では準備しなかったということもあるわけでございますけれども、ただ、いろいろなご要望が、特にインダストリーの方からは第3世代の放射光だからといって、第3世代の使い方だけではない。もちろん、ずっと昔できたやり方がいいのだということもございますので、そのあたりについてはかなり広い応用ができるようなやり方をとっていきたいと思っています。

【長我部委員】
 拝聴いたしまして、いろいろな広い意見を集めてご議論されてくださいという要望でございます。
 それからあと、産業界との接点に関しては、多分、SPring-8は産業利用の会議みたいなもの、70社ぐらいで多分つくっていると思いますので、X線に関しては何かそういうところ、既存の産業団体というか、協議会の枠を利用してやっていくというのがいいのではないかと思うんです。今回出ますペタコンですとか、J-PARCですとか、いろいろな国の利用に対する産業協議会がたくさんできてしまうとまた収拾つかないですし、企業の側でもなかなか対応が大変ですので、うまくX線に関してはそういうのを使ったほうが個人的にはいいのではないかと思っております。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【川合委員】
 今、連続して指摘があったように、僕はやはりこの15ページの協議会で、大学だけというのはまずいのではないかなと思っています。それは前のSPring-8のときも、この基盤課が中心になっていろいろな委員会で産業利用というのを進めようとしたときに、一番の問題点は既にある委員会でほとんど大学のスペクトロスコピーストばっかりが出ていて、絶対に入れない、権益を守るようなところがあったんですね。あれをもう1回やってしまうと非常に大変で、そのとき理解したのは、産業界、使わせてくれというんだけれども、ほんとうに低級な使い方しか申請してこない。普通の、いわゆる部屋にあるX線でできるようなことをSPring-8だというふうなところがあって乖離があったんですね。だから、やっぱり最初のときからかなりの部分入れて、長期的に見て、そこら辺スムースに行くようにされるといいと思っています。

【石川センター長(理研)】
 ご指摘のとおりでございまして、まさにその部分が最初から混成部隊でやらなければいけないのではないかというところとつながるわけでございます。

【川合委員】
 そうですね。だから、この15ページのは何か、大学ばっかりになっていて……。

【大竹課長】
 入っているんじゃないですか、委員会の資料の25の中に。入っていなかったですか。名前は言わなくていいですけれども。

【石川センター長(理研)】
 はい。入ってございます。大学の先生方が代表者になっているところにも、その中に民間企業が入っているという形のものもございます。

【榊主査】
 ありがとうございます。幾つかまだご意見があろうかと思いますけれども、時間の都合で、もう1つ、2つ、どうぞ、お願いいたします。

【大竹課長】
 いろいろご意見、ありがとうございます。まさに我々が心配しているのは、SPring-8が最初に研究を始めたとき、やはりおっしゃるような、別に企業だけでなくて、全体としてやはり新しいものが出てきたときに準備不足で、かなり労が少なくして、いい論文が書ける部分は欧米に持っていかれたという話を聞いておりますので、そういうことはないようにしたい。もちろん、労が少ないというのはあれだと思うんですが。
 あと1つは、先ほどの課金の問題というのは頭が痛いところでして、SPring-8自身も、今、90億ぐらいのお金を入れて運転をしているわけですが、収益が年間2億ということで、ましてやこの最先端の機械になって、もしこれを時間割にすると料金がすごい値段になってしまうので、その辺をどうするかって悩みの種なんですね。大体、今おっしゃられたように、これは年間、大型機器は、加速器15といいますけれども、大体10パーセントぐらいとみんな見積もっていて、四、五十億というところかなとは思っているのですが、その中で、いずれどれぐらいのお金を取れるようになるか。最初は、なかなか最初からガンとお金を取るというのは難しいのではないかなという気はしています。
 それから、幾つか重要なことを多分、言いにくいからおっしゃらないでしょうけれども、これは欧米との比較で言うと、これは1つ抜けている数値があって、繰り返し発振度数というのが、ヨーロッパのやつができると、ヨーロッパは日本のXFELの何倍ですか、600倍ぐらい頻度が上がるんでしょう。

【石川センター長(理研)】
 600倍ぐらいですね。

【大竹課長】
 ということは、ヨーロッパができるまでにいいことをやっておかないと、スピードの上では間に合わなくなるということがあるということはぜひご承知いただいて、これも前回、スパコンのときも出ていますが、やはりせっかくいいものができるので、トップのいい研究をここにエントリーするようにぜひ皆さんのご指導を仰ぎたい。
 もう一つだけ、ちょっと辛口なことを申し上げますが、ユーザーとしてはサポートとおっしゃるんだけれども、大学の先生方に特に申し上げたいんですけれども、こういうエンジニアリングのところに力を入れている人をちゃんと育てているでしょうか、大事にしているでしょうか。決して大事にしていないと私は思っていて、これから苦言を呈していこうと思っているんですが、縁の下の力持ちに期待をするなら、やはりいい人材がいなきゃいけないんだけれども、そういう人に日が当たるような日ごろの生活を送っていただきたいと。民主主義の世界ですから、誇りもなく奴隷のように働けと言われたら、だれも働かないわけで、そういう意味ではテクニカルサポートが必要だとおっしゃるんだけれども、ユーザーはユーザー相手してリクエストだけ出せばいいということではなくて、大学のような協議機関ではきっちりエンジニアリングの部分を支えていただかないといけない。
 そういう人材育成をぜひ大学全体としてはやっていただかないと、こういう機械はできても、建設しているところはフェイムがありますけれども、その後は非常につらい日々が続くわけです。そういう人のサポートもぜひ忘れないでいただきたいと。それはお金のほうは国である程度、細々ながら用意するけれども、人材の育成は大学にかかっていると思っています。よろしくお願いします。

【榊主査】
 それでは、北澤先生。

【北澤委員】
 SPring-8とこのX線自由電子レーザーと比べると、同時に計測のできる、ある一瞬を見たときのユーザーの数はどう違うんでしょうか。

【石川センター長(理研)】
 そういう意味では、丸いリングは原理的には62本、だから、62グループが一緒に計測ができるわけですが、FELの場合には原理的には5本に、非常に速く振り分けてあげると、5本、5つのグループが同時にできる。だから、かなり違うわけです。

【北澤委員】
 そういう意味からすると、ユーザーから見たときの計測コストというのは10倍ぐらいにはね上がると思っていいんですか。

【石川センター長(理研)】
 それはそういうことになると思います。

【北澤委員】
 わかりました。

【榊主査】
 私などちょっと分野が違う立場からしますと、実は繰り返しパルスのことは聞こうと思ったんですね。こういう種類の話は部外者にわかるようにエッセンシャルなことは全部書いていただいて、不利なことまで書いていただいたほうが、いろいろな面で、不利といいますか、問題点も含めて言ったほうが早目にいろいろな扱い方が広がりますのでお願いしたいということと、それからもう一つは、こういうものが利用されて、ここ数年、これも含めて達成された事例みたいなものをもう少しこれから一、二ページ入れておいていただいて、ナノ分野で、例えばX線自由電子レーザー、あるいは自由電子レーザー系でどんな応用例があったか。全く装置ができていなければ、ないなら話が別ですけれども、少しここは応用の例の何かイメージが具体性を欠くような感じがしますので、今、関係者の方にどういう利用の見通しがあるのかということについての事例を少し紹介していただくのもありがたいかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

【石川センター長(理研)】
 X線という意味では、2009年、10年に初めて出てくるわけで、ある意味でだれも見たことのない光になるわけです。ですけれども、数十ナノのところでは、我々のところとドイツでプロトタイプというXではなくてEUVのところの光を使ってございますので、そのあたりの事例は出せる。

【榊主査】
 それで結構でございます。

【石川センター長(理研)】
 ただ、そのあたりは光と物質の相互作用もX線と全く違いますので、逆にそこの事例で判断されてしまうと、えらいミスリーディングなことになるのだろうと。

【榊主査】
 わかります、わかります。しかし、全く新しいから新しいことが出るという言い方は、やはりある種の予測みたいなことを、期待というものがあると思うんですよ。ですから、そういうメッセージをやはり少し集めて、そういうお願いをしたいということで申し上げました。

【石川センター長(理研)】
 承知いたしました。そうしますと、今の先生のお話は、全く新しいEUVの自由電子レーザーからどういう新しいものが出ていますかということを今示せるのはそこでございますが、そういうものをお示しするという理解でよろしいでしょうか。

【榊主査】
 大体結構ですので、またその辺については別途お話を申し上げたいと思います。
 時間がかなりおくれておりますので、これで石川委員、ありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。
 それでは、続きまして、次世代のスーパーコンピュータについて、次の議題に移りたいと思います。前回の本委員会におきまして、次世代スーパーコンピュータのアプリケーションについてご説明をいただきましたけれども、本日はその後の検討結果として外部の意見も取り入れる方向で検討のアイデアが出されているということで、岡崎先生にご説明をいただいた上で、5分ほどのご説明で大変短くて申しわけございませんけれども、ご質問をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岡崎教授(分子研)】
 前回、拠点長の平田のほうからプロジェクトの全体構造、あるいは研究の詳細等についてご説明申し上げましたので、きょうは詳細はすべて省略させていただきまして、前回、いろいろといただきましたご意見等踏まえまして、きょうはまたお願いをさせていただきたいということでございまして、説明させていただきたいと思います。
 お手元の資料にございます体制図ですけれども、まず体制の概略をご説明させていただきたいと思いますが、まず拠点長が平田、前回、ご説明させていただきましたが、その下に副拠点長、隣におります物性研の常次先生と私、分子研の岡崎で務めさせていただいております。その下に、図としては下に書いてありますが、運営委員会というのがございまして、これが決定機関という位置づけになっております。さらに、その下に3つの研究グループがございまして、次世代ナノ情報機能・材料、次世代ナノ生体物質、次世代エネルギーとなっておりまして、応用分野的なグループのネーミングになっておりますが、すべてに通底する基本的な原理といたしましては、ナノスケールの構造形成、それから、自己組織化、さらにはそれにより発現される機能といったようなものを計算科学の立場から、また、それを物性、物理、あるいは分子科学の立場から研究していこうという構造となっております。
 これに付随いたしまして、いろいろなアクティビティーが必要となってくるわけですが、そのワーキンググループがたくさんできております。これまでは特にソフトの開発というのを中心にワーキンググループ構成がなされてきておりまして、中核アプリケーションの高度化、あるいは次世代統合ソフトウエアの全体構造はどうあればいいかというようなことを考えてきたわけですけれども、プロジェクトが始まりまして、もう2年経過しようとしておりまして、これから中盤から後半へと移行しようとしているときでございますが、CSTPからのご指摘もございまして、単に計算すればいいというだけではなく、ナノという分野のサイエンス、これが成功しないとあまり意味がないというようなご指摘もいただいておりまして、そのサイエンスの出口、もちろん産業を含めたものをこれから十分意識しながら開発を進めていかなければいけないという段階に至っていると理解しております。
 そこで、これからは十分ナノ、サイエンスという出口を意識しながら、このプロジェクト運営を進めていかなければいけないわけですけれども、そこで前回もいろいろご意見をいただきましたように、ナノテクノロジー・材料委員会の先生方のご意見をお伺いしながら、このプロジェクトを運営していかなければいけないということになりまして、つきましては、この図にございます運営委員会、それから、並びに、これから外部評価委員会というものも準備しているところですけれども、そちらのほうにぜひともナノの先生方からのご意見等いただきまして、それを反映させた形でこれからもプロジェクトを推進させていただければというように考えております。
 具体的には委員会活動といたしましては、今申し上げましたが、この全体構造、これからサイエンスという出口を意識して進めるに当たり、これまでの目標とか、目的とか、体制はいいのかといったようなことを評価していただく外部評価委員会、これは現在、委員は人選中でございますけれども、そちらのほうでぜひともご意見をお願いいただければと思っております。それから、さらに、それに基づきまして運営委員会で実際の活動をしていくわけですけれども、その運営委員会にもぜひともご参加いただいてご意見をいただきながら、私どもとしては、それを受けた形でプロジェクトを進めていきたいと考えております。
 それから、委員会とはまた別のものですが、2番目といたしまして、ナノとアプリ、あるいは実験と計算科学とでも申し上げたらいいのかもしれませんけれども、実験と理論といったような立場から、研究者レベルでの連携というものもぜひともお願いできればと思っております。この点につきましては、どういう形でどういうことといったような具体的なことにつきましては、これから一緒にご相談を始めさせていただければと思っておりまして、ぜひともご検討をよろしくお願いいたします。
 以上です。

【榊主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明にご意見、ご質問がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【潮田委員】
 これに対しても、計算科学につきましても産業界として非常に期待が大きいのですけれども、この体制表の下のところにスーパーコンピューティング技術産業応用協議会(174社)と、このようにございますが、計算結果の検証だとかいう意味でも大事だと思いますし、どういうところにアプライするかということでも、こういう協議会の役割というのは大きいと思うのですが、174社というのはいろいろな会社が入っていますので、これのマネジメントというのは非常に大変ではないかなと思うものですから、より効果を出すために、何か具体的に考えられている工夫等はございますでしょうか。

【岡崎教授(分子研)】
 この174社と申し上げますのは、物づくり、あるいはスーパーコンピュータを開発するそのものといったような部分もすべて含めての企業の数でございまして、当然、その中でいろいろと役割分担というのがございまして、私どもに関する部分といたしましては、ナノ統合部会という部会をつくっておりまして、そこには旭化成の方が主査として活動してくださっておりまして、特にナノ、ケミストリー、あるいはフィジックスに関係する部分の取りまとめをしていただいております。

【潮田委員】
 そうすると、分野ごと、部会というものを形成して、より集中した議論ができるようになっていると。

【岡崎教授(分子研)】
 はい。産業のほうは、そういうぐあいになっております。

【潮田委員】
 そういうことでよろしいですね。

【岡崎教授(分子研)】
 はい。

【潮田委員】
 はい。わかりました。

【長我部委員】
 多分、この174社の協議会はJEITAが基盤になってつくった産業界の組織でございますので、多分、産業界の側がどういうふうにマネージするかということを自分たちでちゃんと考えて、それで分子研さんとか、そういうところとコラボレーションしていくというところが多分本流なのかなと思っております。

【岡崎教授(分子研)】
 おっしゃるとおりです。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】
 先ほど触れられましたけれども、やはり実験の人とどう接するか、こういう研究グループもほとんど理論の先生方で、どうしても言葉もなかなか通じないし、ところが、外国の学会とか行きますと、我々の燃料電池とか電極触媒とか、そこでもかなり理論の人が第一原理計算から入ってきて、そういう意味ではずっと日本の計算科学、レベル高いと思うんですけれども、今ほんとうに必要なところでのインパクトというのが不足しているのではないかなと、いつも感じているんですけれども。

【岡崎教授(分子研)】
 もちろん、先生方個人個人の立場からは、もう既に共同研究といったようなことは日常的にやっておりまして、それから、実験の先生方とディスカッションしながら研究を進めていくというのは日常的なことになっていると思っております。それをいかに組織化してプロジェクトの方針として取り込んでいくかということが問題になろうかと思いますが、その1つの試みといたしまして、この図にございます物性科学ワーキンググループ、分子科学ワーキンググループと申しますのは、これはオールジャパン体制を目指そうということで、計算と実験、それから、産業、その3つの連携を目指してワーキンググループをつくらせていただきまして、会話を始めたところです。やっと組織ができたというあたりです。
 ここで委員会の先生方にお願いしたいのは、特にナノといった立場で、そういった個々の先生方から上がってきた、こういう方向でいきたい、ああいう方向でいきたいというのをもっと高い立場からご判断いただければというように思っております。もちろん、先ほど2つお願いした中の実験と理論の研究者レベルでの連携という部分に関しましては、これから実際の共同研究的なもの、あるいは連携というものがこれから議論されていくというように思っております。そうできればと思っております。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかに。遠藤先生、どうぞ。

【遠藤委員】
 今おっしゃっていた連携の部分、ものすごく大事でして、結局、計算機科学の皆さんがいろいろな計算をして結果を出しても、実際、物をデザインしてつくろうという人たちのところに情報が伝わっていないですね。意外とアメリカとか欧米の人たち、計算機科学の人たちの論文の書き方がうまくて、企業の人たちがこういう材料をぜひつくって、実際の物材を開発したいというときに持ってくる論文は大体欧米の人が多いんですよね。そういう意味で、これだけいいコンピュータができますので、単なる物理的な協議会だけではなくて、血の通った交流の仕方、皆さんが計算して、こんなモデルができた。これを実現したら巨大な水素、競争できますよなんていうアピールの仕方ですね。その辺の連携の仕方を上手にやっていけば、非常に社会の中で評価が上がっていくと思うんですね。
 ただ、今までのように欧米の一流誌に論文を出して、そして成果を出したというだけでは連携が、ほんとうに血の通った連携にならない。そこをどうやって企業の皆さんに、当然、174社の皆さんには非常にホットな、あるいは論文投稿段階の情報が伝わるような、そういうアドバンテージが与えられるのかもしれませんし、あるいはもっと論文に書かなかった、もうちょっと隠れた部分の1次データのようなものをご提供するとか、あるいはデータファイルを出して企業の皆さんがそこから発展的に計算したり、あるいは物をつくるような方向に持っていけるような、何か独特のそういったスキームをつくり上げていただくと、この分野は非常に日本の産業界の強化につながるのではないかと思うんですね。ですから、ぜひ血の通った連携というのを、どんな方法があるか具体的に提案できないですけれども、それがうまくいくか、いかないかが、この成果が社会的に評価されるかどうか、そこに落ち着くのではないでしょうか。ぜひ考えていただきたい。

【岡崎教授(分子研)】
 ありがとうございます。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 先ほどのX線の自由電子レーザーの話とか、あるいはSPring-8とも関係すると思うんですけれども、おそらくこの次世代のスーパーコンピュータができて、初めてできる計算の中にもすばらしいものがあると思うんですけれども、今の段階でできるものにもまだまだいろいろ山のようにあるのではないか。そういう面では、ここに結集される方があまり、スーパーコンピュータができて初めて解ける問題だけではなくて、その事前の問題だけど気がついていなかったすばらしい問題も同時に実験化とか、産業界と連携する1つのきっかけにしていただければなとお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【岡崎教授(分子研)】
 ありがとうございます。

【榊主査】
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、時間の都合もございますので、次世代スーパーコンピュータについては、ここで審議を終わらせていただきたいと思います。この委員会でこれからさまざまな形で連携をして貢献をしていきたいと思いますので、皆さんよろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、今回、有識者からのヒアリングということで、川合先生と魚崎先生と栗原先生からプレゼンをしていただくということになっております。お忙しい中、これにご同意いただきまして、まことにありがとうございました。
 進め方としましては、各先生に15分程度説明をいただいて意見を交換して、そうしますと、約12時半になります。12時半、食事をしながら全体の討議をするというような形で一応計画をしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、まず最初に川合先生からお願いしたいと思います。

【川合委員】
 パソコンじゃなくて、この紙でやるということですね。それでも結構ですけれども。

【下岡補佐】
 紙でお願いします。

【川合委員】
 はい。わかりました。資料4という紙です。タイトルは「自己組織化研究の今後の方向」ということですが、事務局のほうから何か話をということで、特に省エネルギー、環境というのを意識した場合に、この物づくりということの今後の方向を考えたときに、地球上のすべての生体をつくっている物のつくり方の原理である、自分で自然に組織化していくというふうな方向は、省エネというのと環境適合性という意味で非常に大事な物づくりの方向だということだと思います。そういう意味で、これは1つの側面ではありますが、少し雑駁な話ではありますけれども、今後の方向ということについて少しお話ししたいと思います。
 それで、最初のページに幾つか方向性が書いてありますが、歴史的に見ると自己集合という非常にシンプルな形で物が自然に集まるということ。それから、自己組織化、もう少し階層を超えてナノからマイクロ、マイクロからミリメートルというふうに階層を超えて、しかも、複雑化していくような自己組織化、そういう研究が進んできていますが、最近の大きな流れを見ると、さらにそこにはっきりとした自分で機能が生じる自己機能化、それから、材料だけでなくシステムとして働くようなナノシステム化というふうな方向に移っているというのが1つあります。
 それから、もう一つは、これは長期的な話ではありますが、やはり常に生物に学んで動的な自己構造化・機能化というのが1つの最近の方向です。動的というのは、要するに時間軸を含んで、時間とともに構造化していく、それから、いろいろな機能ができてくるというふうな、そういう時間軸を含むようなものです。さらに、最近1つの大きな方向性は、そういうものが生体では創発とか相転移に基づくような、環境に合わせていろいろ変化していくようなことがあります。そういうナノデバイスやシステムづくりということでアイデアが世界中でもいろいろ出ているというところです。
 最後に、メールで21年度のということも書いてあったので、少しこういうことをきちんと研究していくようなシステムズ・ナノプロセス研究センターという、こういうものがあってもよいであろうということでやっています。
 それで、最初のページですが、これはいかにも想像の世界のように思えますが、これはRossmannという人のT4ファイルのアニメーションです。これは全体が200ナノメートルぐらいで、これが例えば大腸菌の細胞の株の中に入っていって、それで、その中に数百ぐらいのゲノムをポンと出すというふうなものですが、一番言いたいことは、これは夢のような話と思うわけですが、実際にほんとうに起きているわけです。こういうのが自己組織化、ナノシステム化で、できて存在しているというのが重要なところだと思います。
 それで、この次のページは、そういうことで今度は少し飛躍して、こういった医療ロボットをつくりたいという話がすぐに並行して出てくるわけですが、これは非常に遠い話で、現在はそういうものを、現実にさっき言ったものがあるんだから、今できる範囲の自己組織化でナノ構造をきちんとつくっていこう。しかし、最初のページで言ったような幾つかの動的、それから、プログラム、環境に合わせるというふうな、そういうことでこういう方向に向かっているというものを示した図です。
 全体にとらえると、次のページにありますようにナノテクノロジーで融合するというのが重要だというのはよく言われてきました。バイオと融合してデバイスにフィードバックするとか、次に化学や物理、こういうところを融合するというのは、これはそのとおりなのですが、その融合した結果、やはりシステム化というものの方向が非常に重要で、強く打ち出されてきているように思います。システム化するには、現実の例えばトップダウンの技術、マイクロの技術などと組み合わせて、ボトムアップのナノの技術を使っていくということでシステム化は行われるわけです。
 ここら辺は、日本はわりあいそういうのが得意なところだと考えています。日本の強みとして、かつてはというので、「かつては」というのをほんとうは取りたいところかもしれませんが、半導体の微細加工技術を利用した製品で世界を席巻して、現在でもステッパーなどでは世界の最先端を行く。もう一つは、材料技術に関しては、やっぱりトップレベルですから、そこから派生する技術でナノテクの世界の先端を行くというふうなことです。こういうことを延長していくと、やはり日本の新しい強みとしては、材料を中心とするボトムアップ技術をシステム化にきちんと結びつけて、トップダウン技術と融合させて応用できるところから順次やっていくという方向が最も重要なのではないか。
 アメリカのほうでもNNIというのは、ほんとうにどんどん変えて進化させていくということで、第1世代の受動的なナノ構造材料、それから、材料の複合化やシステムに与える能動型ということで、DDSなんかも少し能動型になっているのが第2世代としていますが、第3世代では材料同士の相互作用によって新しい機能を発現するようなシステムとか、第4世代は原子・分子レベル、構築されるナノシステム材料というふうに、やはりこういった方向に向かっているということです。
 こういう全体の方向の中で、それでは実際に自己組織化、自己集合、こういったものが現実にどう使われつつあるかというと、最近、随分増えてきたと思います。そういう中でも、その次のページのエアーギャップを用いたマイクロプロセッサ、これを自己組織化プロセスでつくっていくというのがIBMから発表されて、これは非常に重要であるという認識はされています。この図にあるのは、IBM自身の出している図で、彼らが10年間で10のブレークスルー、銅配線から、SOIから、Strained Siliconとある中で、エアーギャップのつくり方を挙げているということからわかるところです。
 これは自己組織化を利用していって、その次のページにあるように、自己集合の高度なものだと考えていいと思うのですが、ブロックコポリマーを自己組織化プロセスで、左の下の図にあるように、ある大きさのナノメートルサイズの穴をあけて、これをテンプレートのような形にして、それで多層構造をつくっていって、それでちょうどエアーギャップで全体をするような、そういうCPUをつくる、動作させるというふうなことを実際のラインに乗せていったというところが重要なんだと。こういうふうに、かつてからほんとうに自己組織化、特に自己集合の高度なものは、ほとんどプロセスで使えればという希望はあったわけですが、こういう形で実際に乗ってきているという例があります。
 そういうことを振り返って、もう1回整理してみますと、次のページにありますように、自己組織化にはやはりある程度典型的なステージがあるように思います。第1ステージというのは、自己集合、セルフ・アッセンブリという言葉で代表されるように、要するに集まるということが強調された現象です。これも随分高度化されて、左上にあるような螺旋状のものをつくったり、蜂の巣状のようなものをつくったり、それから、もうちょっとプログラムを入れていくと、これはDNAでこういういろいろな複雑な構造をつくってきています。それが第1ステージだとすると、第2ステージとしては、そういうものをもう少しうまくプログラムして組み合わせて、階層を超えるという壁を突破したような場合だと思います。これが現在の状況ではないかなと思います。
 それがさらに進むと、最初のページで言ったように時間や環境によって、ある程度変化していく、創発をするような、相転移を利用するような形で役割が変化していくような、そういう動的なものに移っていくというふうな、こういったステージに分けられるのではないかと思います。
 それで、今、その次のページにありますように、ちょうど第2ステージが育ちつつあって、これはまさに最初に言った、いろいろな分野の融合で実現されつつあると思います。進化分子工学のようなものからできてきた部品を使うとか、バイオミネラリゼーションのような現象での部品を使うとか、それから、右の上のように分子設計をして、かなり大きなサイズのDNAやタンパク質や、そういうものをつくっていくとか、それから、右の下にあるようにトップダウンのやり方でテンプレートをつくって、そこに自動的に入れていくということで、より複雑で、結局、階層を超えていくというふうなものが、これはMRSの学会などに出ても相当な勢いで進んでいっているというところだと思います。
 こういうものが、例えば少しバイオという観点からすると、バイオチップのようなものには大きな進展をもたらしていて、次のページにあるように、これはUVのナノインプリント、これは熱のナノインプリントですが、そういうものでかなりの大面積のものを簡単にプリンティング、ですから、トップダウンの方法でやって、そこにこの蛍光性のリポソームを自然に供給するだけで材料設計をしておくと、この赤く光っているように細胞膜の二分子膜がパッと広がるような形で穴の中だけに広がったり、それから、今度は逆に少し基盤や条件を変えると、リポソームが丸い形で右のところに、きちんと1個の穴におさまっていくという形で、かなり階層を超えて、その反応部位だけをつくっていくというふうな形もできる。
 それから、その次のページは、そういうことがさらに進んで、こういうリポソームの、左上を見ていただくとわかると思いますが、あるナノ空間の中にきちんと並べたり、それから、その上に、もしくは間に二分子膜をラプチャーする形で並べたり、そうやって、より細胞の形に近いような形にしていくというふうなところまで進んできている。そういう意味で、第2ステージというのが今急激に進んでいるわけですが、第3ステージを目指した研究が必要ということで、その次のページにあるように、左の下に書いてありますが、時間や環境によって構造とか機能をある程度自発的に転移させるような、そういう能力をナノ構造体そのものにプログラムするということが重要だと思います。
 これによって何ができるかというと、右に書いてありますように外的環境を判断して、新しい構造をつくったり、それから、例えば電池のようなものであると、電源の負荷とか環境の変化、ペーハーの変化などによって自律的に能力を変えるようなものとか、演算部とメモリが融通し合うMPUとか、そういったいろいろな方向が考えられる。
 それは実際、次のページにありますように、部品としては結構、仕事関数の異なる金属をナノドットにして、そういう部品ができたり、それから、タバコモザイルウイルスの利用したような、そういうものをうまく右に示すような基盤の上に階層を超えて乗っけていくという技術と相まって、さらにこれが時間とともに変化していくという方向を目指しているというのがかなりの研究者の間でいるように思います。
 そういうのが、次のページにありますように、ある程度現実になりつつあるような時代ではないかなというのが学術的な背景ですが、自己組織化理論としてもまだ十分とは言えませんが、システム生物学の分野でいろいろな概念が分子系にもトランスレートされているとか、それから、素子分子の設計、これがDNAがタンパク質で相当複雑なようなものが、かつては考えられないようなものができるようになってきています。そういうソフトな系をうまく今、基盤の上にだんだんと乗せていけるというふうなことから、背景としてはそういうことができるようなときになってきているのではないか。
 その次にありますように、今後、おそらく世界でも5年から10年で、こういうことが利用されてエネルギー・環境や、情報や保健・医療分野でいろいろな成果が出てくると思います。これはもちろん今後の方向ですから、それを今後見ていくことになるんですが、おそらく外的環境を判断してドラッグを放出するようなナノ分子キャリアとか、演算部とメモリ部が融通し合うMPUとか、さっき言った電源負荷により蓄積エネルギーからの放出と発電を変化するようなものとか、そういうものがある。
 これはあくまで今後の例ではありますが、例えば電池関係で、例えば燃料電池を含んでもいいわけですが、右にありますように触媒として、例えば白金を考えると、その外にもう少し穴があいたり、消えたりするような自律的な動作をするものでくるんでやる。そうすると、このペーハーが変わるごとに、例えばアルカリ性になると、より白金が露出が増えて可視性が上がるとか、そういうふうな例が出てくるようになります。
 その次のページにありますように、現実には約20ナノメートルぐらいの、こういったバイオ部品を使って、その中に白金や、そういう触媒を閉じ込めて、これがペーハーによって穴があいたり、閉じたりするものがありますから、そういうことで環境の変動によってこれを調節するというふうな、こういった条件や環境によって変化する、自発的に変化するような形のものがある。
 それから、その次は外部環境を判断して構造相転移するDDSということで、これはおそらく次回、片岡先生もいろいろな、DDSに関しておっしゃると思いますが、DDSも非常に進んできて、最初は穴の大きさだけで透過する、しないというふうなDDSパッシブなものがだんだんといろいろ感応器をつけたり、抗原抗体反応を利用して、ある場所だけをターゲッティングするような形に進んできていますが、まだ今後進んでいくと思います。というのは、ここにありますように、例えば真ん中にあるいろいろな構造も、周りの状況や環境に応じて、例えば分解してより小さくなったり、形を変えるというふうな形のDDSに進んでいくんだろうと思います。
 そういう意味で、自己組織化的なものはもっと動的な変化をするようになるということで、時間の関係で省きますが、次のページにあるようにペプチドとか、高分子ポリマー、それから、場合によっては特にひげというか、スクリューのようなものをそこにつけて動くような、だんだんとナノマシンに近づくような形のものを、大阪大学の医学部でもそういうことをかなり真剣にやり始めているところです。
 ということで、ナノテクノロジーは基本的には融合とシステム化に向かっているということで、このページにありますように、さっきと同じですが、融合領域でいろいろなものが知識を取り入れ、もしくは技術を組み合わせているわけですが、よりシステム化、トップダウンの加工技術等を使って環境というか、プログラムをある程度つくってやって、そこにうまくボトムアップでナノテクを使ってシステムをより階層を超えたものにしていくということだと思います。
 そういうことをちゃんとやっていくには、その次のページにあるような、これは一応、真剣にそういう方向をきちんと日本としてやるにはというのを考えると、研究体制が必要で、自己組織化の構造形成、いろいろな要素技術の開発、それから、今言った理論的に伸びているところの基盤をしっかりさせる。それを半導体、バイオ、有機分子、そういったところで、それぞれの領域でうまく組み合わせていくことが必要ですから、そういった形の仕組みをつくって、それでエネルギー・環境、情報・通信、保健・医療分野ということに適用していくというシステムが必要なのではないか。
 これは最後の2枚ですが、そういう意味で、こういう方向のシステムズ・ナノプロセス研究センターというふうな、外部に開かれた、ここら辺の動的自己組織化を含むような、そういうもののいろいろなプロセスやシステムづくりができるファウンドリー機能と、それから、あくまで研究として日本独自のTrue-nano科学技術の創出をするような研究センターというのが必要ではないかなと思っています。そこではいろいろな自己構造化理論やバイオの情報を入れ、それから、先ほどもシミュレーションという話が出てきましたが、そういうものを組み込みながら、研究施設を持ち、そこでバイオの方面、それから、物質科学の方面から、ここにいろいろなアイデアやコンセプトなどを取り入れて、ここら辺の領域の研究を進めていくというのが重要ではないか。
 そこでは、最後のページにありますように、現実の産業に使えるものはどんどん使っていくということで、この図は真ん中の緑の部分は共通技術とか、そういうことを研究し、かつ、外にもそれを使ってもらうというものでもありますし、そこで独自のコア技術を開発する。それから、その外側では共同研究や各企業が独自性を確保するようなものということで、あるA大学のところだと、自分の独自のスペースを持って秘密保持をする。Bのところでは研究チームはやはり同じようにする。だけど、共通の部分は真ん中のところでここら辺を進めていって、全体、日本の科学技術をレベルアップするというような、こういったところが考えられるということです。
 ちょっと早口で雑駁でしたが、以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。大変夢のあるお話を伺わせていただきました。ご質問やコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。後でお話になる方が質問すると、後から質問されると思って遠慮しておられるのではないかと思うんですけれども、栗原先生、それを破っていただけると。少しコメントを。

【栗原委員】
 私も自己組織化は研究しているんですけれども、大変夢のあるお話なので、どういうふうに--自己組織化はやはりバイオから材料までということで、非常に重要なキーワードであることは事実だと思いますので、大変大事な研究分野だと私自身も思って、それを研究しておりますので、そのことは、こういう1つの方向というのは、これは進むべき1つの方向だと理解しております。

【川合委員】
 センターのようなものができるということに関してはどう思いますか。ほんとにまとまった形の、まあ、箱物と言われるかもしれませんけれども、何かもう少しばらばらとされているようなところが気になっているんですが。

【栗原委員】
 それはナノテク全体のところもあるのかもしれないですけれども、自己組織性って、ある意味ではどこにでもあるので、それをどういう形でまとめていくのか、あるいは知識の交換をするのかということは考えるべきことの1つだと思いますけれども、それが今初めてセンターということを伺いましたので、それについて具体的なことは、もう少し慎重に考えてからでないと、私自身はちょっと意見が出せないんですけれども、魚崎先生、いかがですか。そっちに振ってしまいまして。

【魚崎委員】
 これを見て1つ思ったのは、これは研究者レベルの話が中心なんですけれども、結局、若い人をどういうふうに、それこそ組織化ではないですけれども、分野を超えた意識を植えつけているか、非常に大事で、今、我々でも学生を見ていても、学生のほうが保守的というか、自分の分野を非常に守ろうとか、そういうのが結構多い。それをどうブレークするかというのは結構大事かなと思っているんですけれども、その辺のところは、ここのこの絵の中では、絵というか、考えとしてはどういうふうに考えられているか。

【川合委員】
 人材育成、教育に関しては、この絵には全くしていません。だけど、実際はおっしゃるように、まさに領域を超えてやっていくような典型的な領域ですので、1つは大学の中で副プログラムとして、例えば機械だけとか、化学だけとか、物理だけというのではなくて、こういう新しい物づくりの方向としてやっていくというのは1つあると思います。
 もう一つは、こういうセンターや、そういったところでそういう若手の人材育成をある程度したり、情報を出していくというのも1つではないかなと。それで、これ、先ほど栗原先生がおっしゃったように、どこも非常に重要だと思ってそれぞれやっているので、それぞれのところである程度はあると思うんですが、それをある程度きちんとまとめた形で、目に見える形で、一番進んでいるのはここら辺だよというのを示すことが日本にとって重要ではないかなと思っているところです。

【魚崎委員】
 今、茅先生のプロジェクトでやっている中で、スクーリングってやっていますけれども、あれがかなり有効に働いていると思っているんですけれども、例えばこういうセンターにしても何にしても、そこで例えばサマースクールなりトレーニングを常時やるとか、そういう機能を持つと案外いいのかなと。

【川合委員】
 そうですね。僕は企業の方も、何年かいろいろ経験してきて、大事なものはなるべく外には言いたくないというか、独自性を保ちたいというのは本質的にあるわけですね。だけど、同時にある程度共通のものとか、進んだものというのはなるべく使わせてほしいとか、取り入れたいという意味で、ある程度二重構造のような形にして、共通の部分と独自の部分、そういうのをある程度やっていけるような、そういう場所があってもいいのではないかなと思います。

【榊主査】
 いかがでしょうか。横山さん、少し、どうですか。

【横山委員】
 もう8年前ですか、2000年ぐらいに私自身もナノとバイオの融合領域、すごい世界がありそうだということでいろいろグループをつくって検討した経緯があるんですけれども、ナノとバイオの融合の領域、3つあって、ナノ寄りのバイオとバイオ寄りのナノバイオと、あと中間がある。バイオ寄りのナノというのはなかなかうまくいったように思うんですけれども、ナノ寄り、例えば半導体のプロセスに自己組織化を使おうとか、なかなかどうも本物が出ていないような感じがしていますし、その中間的なところは、ぼやっとして始めたものはなかなかうまくいっていない。ターゲットをクリアにしているものは、最近、形になってきたかなという、今、そういった感触を持っているんですけれども、川合先生ご自身、この過去7年、8年、どういうふうに位置づけられているか。

【川合委員】
 僕も今、横山さんがおっしゃったのと全く同じ感想を持っていて、バイオ寄りのところと、それから、今度はむしろ半導体とか、そういうところでなかなか自己組織化って、一見重要そうだけれども、なかなか例がなかったなと。だけど、このIBMのこれであるとか、それから、量子ドットのようなところで、これはまだ自己組織化というよりは自己集合で、とてもバイオに学ぶなんていうものではないんですが、少なくともこういうのができるところから使っていくというところが増えてきたという、例が出てきたということ自身は非常にいいことではないかなと思っているんですが。

【榊主査】
 田中先生。

【田中委員】
 私もアトムテクノロジープロジェクトをやっているときに、十二、三年前ですけれども、自己集合、自己組織化に関する国際会議というのをオーガナイズしたことがあるんです。そのときはこういったアイデア、そのころからも実はあったわけですけれども、この十数年を見て、どういう成果が出たのだろうか、あるいはどういう成果が出ようとしているのかという目で見ますと、ちょっと不満が残るというのがある。横山さんの意見と、評価としては少し近いんですけれども、今までのCRESTの中から出てきたようなもので言いますと、超分子の設計とか、つまり、化学の立場でレーンさんが言っているような、ああいうプログラム化された自己組織化という、つまり、最終目標に向けては、日本は案外いいものが出てきているのではないかと思います。これは幾つか例を挙げることができます。ゲルも入れてですね。それが1つあるだろう。
 ただ、ナノエレクトロニクスについては、IBMのこういうものがどうして日本から出なかったのかなというのが非常に不満なんですよね。もしこういうナノシステムズ・プロセスセンターですか、こういうものがもしつくられるのであるならば、やはりターゲットを、課題をはっきりと設定しておかないと、融合は絶対に進まないと思うんです。皆さんそれぞれの領域に結局、同じ建物にいながら、自己組織化のおもしろさに駆り立てられて、そっちのほうへ行ってしまうということになるのではないかと思うんですね。こういうものをつくる、こういう機能を発揮するというような目的があって初めていろいろな方々が自分の領域の技術を融合し合ってやっていこうという、そういうインセンティブが生まれると思うんですよね。
 こういうものをおつくりになるのであるならば、僕は課題設定が絶対に重要であろうと。特に日本の強み、それから、今までの過去十数年ぐらいを振り返ってみて、どこが伸びそうであるかということの分析もきちっとした上でやることが必要ではないかなと思います。理論のほうも、これはやはり工学的に利用しようという立場で見ますと、まだ完成しているとは言えないですよね。バイオのほうはもちろんですが、あれはかなり難しい問題がたくさんあると思うのですが、そうでないものについてもまだ完成しているとは思えません。例えば自己組織化の1つの例として、広義に言えば含まれると思うんですけれども、スピノダル分解のようなものは、それはきちっとできていて、工業的にもいろいろ応用が今されていますよね。そういう段階にはないのではないかなと思います。ちょっと雑駁なあれですけれども。

【川合委員】
 今のに対するコメントなんですが、僕も全く賛成で、さっき言った、横山さんが分けたような分け方をすると、よりバイオ寄りのところに近いところというのは、医療応用というか、特にバイオチップで代表されるような、より生体に近いような構造を持つような診断のデバイス、そこら辺が1つの大きなターゲットになるのではないか。今度は逆に半導体とか、そういうところ寄りのもの、それはなかなかほんとにバイオのところまでプログラムがされていませんから、それはさっき言った、まだIBMのところからちょっと進んだぐらいかもしれませんが、それでもいろいろな化合物半導体などでより複雑な構造に持っていくというところが1つの大きなターゲット。
 それから、その真ん中のところがちょうど材料のところで、これはさっき言ったいろいろなポリマーや、それから、いろいろな素材で随分おもしろい結果ができていますから、そういうものがはっきりと産業に使われるようになるような、そういう道を開くというのは、おっしゃるように幾つかきちんとターゲットを決めて代表的なところをやるというのは重要だと思っています。

【榊主査】
 どうぞ。

【岡野委員】
 ナノテクノロジーが、田中先生ご指摘のように縦型の、従来型の領域の中からつくっていくのから横断型にしていく枠組みの変換だというふうに認識すべきだと思うんですね。日本はナノテクがどんどん進むにもかかわらず、旧来型の体制の中でしかこれに対応できていない。物理、化学、生物学、医学、これは全く従来型の縦型の中で、若い研究者は、その枠の中に入ってやるわけですからなかなか大変で、先ほど魚崎先生がご指摘のようにコンサバティブになっちゃうというのは、そこから考える必要があって、ナノテクは、きょう川合先生が構造から機能へ向けて、もう一度新しい体制づくりからこれに取りかからないと、ただやれることからやっていくのではだめではないか。
 既に1970年代の後半にアメリカではバイオエンジニアリングとか、バイオメディカルエンジニアリングという学部とか学科を50大学で、80年にはスタートしているわけです。そういうところで半導体をやっている人に遺伝子必修で教えていたんですね。私、そのころアメリカのほうにいまして、そういう人たちが十何年すると遺伝子チップというのを考えるわけですね。日本では遺伝子チップが出てくると、それはまねできるわけです。半導体の人と遺伝子をやっている人がいますから。だけど、そのコンセプトを出してくるというところにアメリカはちゃんと取り組んでいる。
 どうしてこういうのが日本から出ないのかというのは、まさに縦型の中での教育システムと研究システムしかいっていませんので、枠組みを少し変える、要するに体制づくり、教育のシステム、研究のシステムを従来型から、20世紀型から21世紀型に少しずつかじを切っていくということが重要で、私はナノテクノロジーこそが、その1つの先導役をやるべきフィールドだと認識しています。きょうの川合先生のお話は、まさにそれをプロモートしていく。ですから、これを今までの仕組みのままでこれに対応しても、成果は出ないのではないかと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 もう少しどんどん伺いたいところなんですけれども、時間が少し、後で30分、今、ジェネラルな話はぜひ後のほうに少し残していただいて、川合先生にスペシフィックな質問とかコメントで、栗原さん、最後にお願いします。

【栗原委員】
 少しだけ先ほどのコメントに対して、例えばこういう自己組織化のような研究のときに、私は、1つはもちろん岡野先生の言われた出口的な流れだと思うんですけれども、もう一つは基礎のほうで、今、物理でソフトマターの物理、少しずつ出ていますけれども、自己組織化をきちんと理解しようとして、そこのところがやはりきちっとつながらなくては理論がちゃんとできるというのはとても難しいと思うんですね。そういう意味では、今回の岡崎先生たちのコンピュテーションのプログラムもそうですけれども、物質としてどこまで自在に理解できているかということ、すごく大事だと思いますので、だから、全部つながるんですけれども、そのつながって研究を進めるということ、非常に大事だと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 これ、ぜひ最後に短いコメントとして、あとまだ時間がありますので、岡崎先生、どうぞお願いします。

【岡崎教授(分子研)】
 よろしいですか。

【榊主査】
 1分ぐらいでお願いします。

【岡崎教授(分子研)】
 申しわけありません。せっかくですので、今の計算の現状というのを少しだけ触れさせていただきたいと思いますけれども、今、川合先生のご提案の中にいろいろな物質が出てきたわけですけれども、全原子シミュレーションという意味では、ミセルの構造安定性、それから、脂質膜、それから、脂質膜でもリポソームはやっと計算が始まり出したというところだと思います。それから、ウイルスになりますと、ウイルスカプシドの接合構造、この安定性が次世代スパコンにやっと乗っかっていくかなというようなところですが、いずれにせよ、それはシミュレーションに乗っかり始めたということでありまして、一番重要な構造形成の原理の研究が始まったということで、先生が3つの段階を示されている中の第1ステージ。それから、後ろのほうのものだと、理論をつくっていく、そのつくる作業が始まったというような段階だろうと思います。ただ、非常に共通する物質がたくさんございまして、何か連携できれば一番いいなというふうに第一印象としては思いました。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 私、ちょっと矛盾するようですけれども、井上先生に一言コメントをいただきたい。井上先生ご自身、金属組織の自己組織化というような問題意識も持っておられたと思うんですけれども、お話を伺った上でコメントを。

【井上委員】
 今の全体の話になって非常に教育、前に、もう五、六年前でしょうか、そういう教育、あるいはセミナー、外国への派遣等々で人材育成をかなり取り組まないとだめだ、全部フィールドにかかわるといったようなことで、その後、そのあたりの実態がどういうふうになっているのかということはあるんですが、大学等においてもかなり、我々の大学においても異分野融合的なもので、やはりそのあたり、そういう動きにも刺激されてナノテクの面で、いろいろな分野の融合的な、そういう人材育成、あるいは来年4月から、東北大学の場合は、例えば医工学研究科がスタートする。生命における医工学研究センターのほうも、そういう動きが大学でも動き始めてきているということで、何年か先、今、そんな流暢なことを言っておれるかどうかわからないですが、そういう動きは実際に始まってきているということがあるかと思います。
 これ、自己組織化云々において、材料の中での金属などでも、もちろん我々はそれを積極的にナノスケールのを利用してきているということで、そういう視点での整理というのは、金属屋さんはあまり今までやってこなかったんですが、そういう化学屋さんの、こういう整理法に刺激されて、今、金属分野でも自己集合化だとか、資源の析出化、成長というのもそういうことなんですけれども、そういう視点で物事を見てこよう。あるいはリーチングのテクニック等を利用することによって、その金属と化学との融合的な、そういう分野も今開けてきていると思いますね。
 だから、そういうことを考えて、今、いきなりこのセンターになるのか、あるいは最初は緩い連携的な、アライアンス的にこういうことが有効かどうかということの実証を踏まえた上で、さらにセンターに進まれるといったようなこと、それと今の大学における教育、人材育成システム、国大協、私大連携、私大連盟だとかいろいろある。そういうのを通してやはり人災育成の働きかけを行っていくといったような方向も、真にこのあたりの分野の人材育成においては、ここで文部科学省での1つの課等でやって、やはり文部科学省内でも高等局と連携するとか、もちろん研究振興局の中のほかのというような、総合的な何か人材育成システム、それとこのセンターがどうかかわるか。そういう視点での何かとらえ方ということが今後必要になる。その前には、五、六年前にスタートした、そのあたりの復習といいますか、それがあって、さらに次のステップに進まれるということが非常によろしいのではないかなと思ったりもしますけれども。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、また後で少しこの点に戻らせていただいて、次に魚崎先生にお願いします。議論が非常に盛り上がりそうですので、15分ぐらい、プレゼンテーションは厳守していただければと思います。よろしくお願いします。

【魚崎委員】
 私、前回、出席していませんでしたので、どういうことを話していいのか趣旨もあまり理解していなかったので、いいのかどうかわかりませんけれども、何となく教科書的というか、講義みたいな話も少しありますけれども、最初、化学的エネルギー変換ということで、化学反応が関与したというようなことなんですけれども、結局、今、一番下に化学と書いているのは石油とか、石炭とか、そういう化学物質が持っているエネルギーですけれども、右へ回っているのは熱、燃やして発電するということで火力発電ということですけれども、その化学的なエネルギーを直接電気に変えるのが電池、その逆反応が充電ということですし、左の太陽電池もありますけれども、きょうはここの燃料電池、それから、太陽電池でも化学的なものを少し紹介させていただきます。先ほどの川合先生のように何かを提案できるということにはならないかもしれませんが、一応、ご紹介させていただきます。
 次は分類ですけれども、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池と書いていますが、電池、電気の池みたいに書きますけれども、例えば燃料電池は、燃料電池そのものの中には何もたまっていなくて、エネルギー変換装置ということであります。
 それで、その次のページ、これも当たり前みたいな絵なんですけれども、下のほうに熱力学の式が書いてあって、化学物質を直接電気に変えるプロセスの特徴は、ともかく熱機関が入っていないということで、理論的な効率が高いんだということはよく言われているわけで、この10エネルギーが直接起電力に変わりますということなんですけれども、それは一面では正しいんですけれども、それは一番上の図で言う開回路電位という、仕事を全然していないときの電圧は高いということだけであって、実際に電流を取り出す、つまり、仕事をさせるといろいろなカーブが、青と黒と赤で書いていますけれども、結局、出力というのは電圧×電流ですから、このカーブによっては全然出力がとれない。
 これは何かというと、電流、つまり、電子の流れ、反応速度。ですから、反応をいかにうまく進めるか、化学反応を進めるかということが電池にしろ、燃料電池にしろ、何にしろ重要になるということになります。これが例えばソリッドステートの太陽電池などの場合の電子移動とは大分違うということになっています。
 次のところでは、まずリチウム電池なんですけれども、これは遠藤先生がいらっしゃるので、詳しいことを言いたくないんですけれども、前々回ぐらいの議論でありましたけれども、リチウムはともかく水素の次に軽いということですから、この今の表の次の図ですね。Energie Densityというようなことを書いていますけれども、結局、単位キログラムとか、あるいは単位体積でどれだけエネルギーがためられるかということを考えると、リチウムがやはり一番大きいということになる。これは本質的な問題、重さという問題です。
 リチウム電池で、今、充電、放電で使われている二次電池というのはリチウムイオン電池というもので、溶液があって、その両方に黒鉛とリチウムの酸化物、ここではリチウムコバルトオキサイドと書いていますけれども、今のシステムではリチウムイオンがその両方に出たり入ったりするということで電気がたまったり、充電されたりするということです。
 ですから、その下に電源の絵なども書いていますけれども、いかにこのリチウムを中に入れる、出す、界面での反応が非常にポイントになるということ。それから、その下に、これ、実はパワーポイントでやろうと思っていましたから、その下に別の図があったりして消えているんですけれども、可逆性と書いているのは充放電サイクルがいかに化学反応を厳密にやらなければいけないかということで書いてあるんですけれども、1回の反応効率は99パーセントだとすると、100回やったら36パーセントになってしまう。99.9パーセントの反応効率であっても100回で90パーセント、500回の充放電で60パーセントになるんだと。99.99パーセント、化学反応でもこれは非常に難しい。普通の化学反応ではこんなことはなかなかないんですけれども、それぐらいの可逆性が実は電池には要求されていて、こういう充放電を繰り返しているうちにどんどん下がる。今はものすごくよくなっているわけですけれども、それも結局、入れたり出したりを余計なことを起こさずにやるということが大事です。
 左側に書いているのは、これは現在では一次電池としてしか使われていませんけれども、リチウム金属を炭素のかわりに使えば、もう余計なものがないので、もっと軽くできるということですけれども、結局はリチウムの充放電は溶かすのとメッキするのを交互に行うわけですが、それの原子レベルでの制御ができませんから、変に成長するとショートする。あるいはデンドライトになっているのが放電するとき溶けると、その分は欠落して、今後、有効に使えないといったようなことが起こりますということで、このリチウム金属を使った二次電池というのは、今、実用化されていない。
 それからもう一つのポイントは、これは非常に大きな電圧がかかるわけですから、この電解質溶液が一部分解する。その辺のことも重要な問題です。結果的には、今、それが薄い膜をつくって安定化に寄与していると言われていますけれども、その辺のところはまだまだ非常に重要な界面の問題ということです。
 次の燃料電池、これはいろいろ企業レベルでもかなり研究されていますけれども、これも話すと非常に長くなりますから、1つだけの例で界面反応の重要性を指摘したいと思いますけれども、固体高分子型燃料電池、これは自動車積載ということで、今、非常によく研究されているわけですが、これは片一方で酸素を水にする、もう片一方で水素をプロトン等、電子にするということで、水素の燃焼反応を熱に変えるのではなくて直接電気に変えるということですが、この水素側を見ても、水素が来て、その触媒のところでプロトンと電子になって、プロトンは高分子電解質膜の中にうまく入っていかなきゃいけないし、電子はサッと炭素に行って電気に。それから、反対側では酸素が膜からプロトンをもらってというようなことです。
 その右側に触媒と書いていますけれども、結局、これは化学反応をいかにスムーズにやらせるかということで、水素側は比較的簡単に、白金を使うと水素の結合が切れて表面について、電子さえあげればプロトンになるということなんですけれども、酸素のほうは酸素、酸素、これは二重結合があって、金属によってはそのままプロトンがついて過酸化水素になる。それを水にしなければいけないということで非常に酸素のほうで触媒の開発が重要になっているということがおわかりいただけるかと思います。
 さらにメタノールというのが液体燃料ですから、そのまま使えていいんだということなんですけれども、そのメタノールの界面での反応を書いているのがその下ですけれども、これをここをばらばらにして、また酸素とくっつけてということですから、非常に多段階のプロセスできちっとCO2(二酸化炭素)まで持っていく。つまり、多機能の触媒をいろいろ組み合わせて順次行わせなければいけないということで、ますます難しいということになっているわけです。
 その次のページ、多元系触媒の必要性ということで、水素酸化はそういう意味では基本的にはそれほど大きな問題がなくて、今、白金量の低減ということがやられているんですが、実は現在、水素は炭化水素、石油の変換でつくっていますから、微量の一酸化炭素が含まれている。大体100ppm(パーツパーミリオン)とか10ppm(パーツパーミリオン)ですけれども、それが白金の上にバッとついてしまって反応を阻害するということで、COを、CO toleranceといいますけれども、それをどうするかということで2元系の触媒がまた必要だと。
 一方、酸素のほうはいろいろな、先ほど言いました4電子が必要だというようなことで、合金触媒、分子触媒が研究されています。実際には合金触媒が今やられているわけですが、この下は生体の中、我々が生きている基本ですけれども、我々、酸素を吸って水にしているわけですが、その一番右端の酵素は、下にあるように銅と鉄で酸素を4電子還元して水にしている。ですから、そういう意味では、先ほどのバイオナノではありませんけれども、とてもこういうところに至っていない。だから、本来的にはそれができていいはずなんですけれども、そういっていなくて、右端に原理がちょっと書いていますけれども、電子が順番に渡されて酸素を切ってやるということですね。
 生体の場合はこれで間違って過酸化水素ができてしまうと過酸化水素をつぶす酵素とかいろいろ入っているわけですが、こういう展開を考えなければいけないんですけれども、もちろんそういう研究もいろいろ行われていて、次にいろいろな例を出していますが、まだまだ安定的に分子触媒で酸素を実用レベルで還元するというところにはもちろん行っていない。ですから、これがまさに貴金属を使わない電池、触媒ということであります。
 それから、もう一つの大きな問題は安定性です。これも絵が実はこの下にあったんですけれども、パワーポイントのあれで消えてしまっていますけれども、例えば白金触媒は、今現在、炭素の上に担持していますけれども、運転しているうちに溶けたり堆積して、白金も貴金属ですから非常に安定な金属なんですけれども、この電気化学的な条件下で、しかも、酸性条件下ということで溶ける。溶けることによることもあるし、また、電位が変わることでまた析出するということで、触媒がだんだん大きくなっていくというようなことがあります。それをやはりきちっと調べる必要があって、何をコントロールしたらいいか。
 実際の黒鉛上の炭素、白金を調べるだけではなくて、もっと精密な計測も必要だというようなことで、ここではSPring-8を使った例を少し書いていますけれども、酸素が一たん金属の中に入ってまた出てくる。そのプロセスで表面が粗くなるというようなことも調べたり、その次はSTMでそういうことも調べたりするということで、実際のシステムと原理的な、かなり理想的なところの比較が必要ではないかと考えています。
 それから、最後、太陽電池なんですけれども、太陽電池は、その次のページにありますけれども、基本的には一番実用的になっているのはPNジャンクションを使ったものですけれども、有機化学といいましょうか、分子、あるいは化学反応を関与したものとしては幾つかありまして、1つは一番上に書いているElectrochemical Solar Cellと書いているのは、これはいわゆる藤島・本田効果をベースにしたものですが、これの場合、半導体そのものが励起されるんですが、最近、非常によく研究されていて、しかも、ある程度の応用的なことをやられているのが下の2つで、有機分子を励起されるものとして使うということで、比較的低コストでフレキシブルということで、それなりの用途を見つけるということで、色素増感型と有機の太陽電池。
 次に効率等を比較していますけれども、色素増感セルというのは、今、10パーセントぐらいですから、もちろんソリッドステートのものに比べると非常に低いんですけれども、低価格ということで、それなりの用途を見つけつつある。それから、有機薄膜セルはまだまだ低いところで5パーセントぐらいです。
 その次に種類を書いていますけれども、色素増感、それから、有機薄膜も蒸着とポリマーがありますが、それについて少しだけ現状比較をしますと、先ほども言いましたけれども、色素増感は10パーセント程度、それから、有機薄膜は5パーセント程度に来ているということですね。原理的なところが色素増感の次に書いていますけれども、これはどういうことをしているかというと、半導体そのものを励起するのではなくて、半導体の表面につけている有機分子を励起して、そこから半導体に電子を注入。一方、いわゆるホールに当たる部分は溶液の中のイオンが別の極から運んでくる、そういうことになっています。ですから、この場合、界面での電子移動、酸化チタン内部の電子移動、それから、吸着分子間の電子移動とか、いろいろなところでの電子移動が非常に複雑に絡まっています。
 それから、その次は有機太陽電池ですけれども、これはp型、n型のPNジャンクションと同様ですが、それを有機物で行っている。したがって、完全固体型ができますし、有機物ですからフレキシブルになるということで、原理としてはそういうことです。こういう有機物ですから、ホールのアクティビティーとか、当然、低いわけですので、さっと電子を集めるということでナノ構造をつくるということが今一生懸命やられている。この有機太陽電池というのは、最近、いろいろ出てきています有機ELの全く逆の機構でありまして、使っているものも似ていますから共通性があります。
 問題は、こういう有機のものを使ったときに、この先ほどの絵もそうなんですけれども、単純に電子が入ったり、性向が動いたりしているわけですが、その有機物と金属とか、有機物と半導体の境目の電子をどう動かすかって、これはかなり難しい問題で、その次のページに、これは全く別の研究なんですけれども、単分子デバイスとか、そういうことに関連して、単分子の電気伝導度測定をした例ですが、界面電子移動に及ぼす化学結合の重要性と書いていますけれども、これは金の上にチオールというSが末端の分子をつけますと共有結合ができるわけですが、それを両方にSをつけたもので上からはかる。
 金の粒子をつけてはかると、大体、電気伝導度が何桁も、3桁も4桁も変わる。つまり、共有結合ができていないと電気伝導は非常に低いんだと、そういうふうな観点での先ほどの有機太陽電池とかいうようなところも、そういう観点の研究がなかなか行われていない。つまり、電子デバイスの人はエレクトロンホールというだけで考えているんですけれども、そう簡単ではないのではないか。
 その次のページに、今言った3つのものの共通点としては界面電子移動なんですが、有機分子と金属、半導体の接合形成、界面電子移動と分子構造の決定といったことが大事です。
 それから、言い忘れましたが、今のページの真ん中、Figure2と書いているのは理論計算ですけれども、金属と硫黄とか、金属とCNとか、そういう分子の共有結合ができると、どの程度の電流が期待できるかという、これは理論で計算されていまして、その分子接合の重要性をここで言っています。触媒についても、これも非常によく研究されているんですけれども、どちらかというと改良研究が多い。白金・ルテニウムだった組成を少し変えてみるとか、そういう意味で合理的な触媒設計、それから、改良研究からの脱皮、基礎研究の必要性というのがここの分野ではあるのではないか。
 自動車会社の人と話しても、日本における触媒、燃料電池触媒の研究と外国における研究の姿勢の違いが結構あって、外国へ行って話を聞きたいというのがどうしてもある。日本では触媒学会というのがあったんですけれども、触媒学会は長いこと燃料電池には取り組まなかったんですね。これは電気がかかわることで電気化学会。触媒学会の人はどちらかというと乾燥したところでの触媒をやるというような姿勢で、そういう意味のおくれもかなりあったのではないかと私は思っています。
 最後に書きましたけれども、結局、化学の人、デバイスの人、計測の人、理論研究者が共通に研究をして、共通の言葉で語れるようにならないといけないと考えております。
 あと、最後の4枚ほどは、これはアメリカのアプローチなんですけれども、アメリカがこういう政策決定をするとき、常にワークショップを開いて、100人から200人ぐらい集めて、二、三日でそこの場でレポートを書いてしまうということで、いろいろな提案がされて、今言ったような共通点がいろいろ書かれています。
 最初のがNNIのエネルギーニーズに対するナノサイエンス2004年、その次は、これはDOEの水素、Hydrogen Economy2003年ですね。それから、2005年の太陽エネルギー、このとき私も行きましたけれども。それから、2007年には、いわゆる電気的なEnergy Storage。岡崎先生、ここにいらっしゃいますけれども、この後ろの2つ、前のもあれかもしれませんが、セオレティカルツールであるとか、シミュレーション等々が、常にアメリカのレポートでは強調されています。ここは日本でも一緒にやれるのがないかなと思っています。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ご質問やコメントをいただければと思います。田中先生、お願いします。

【田中委員】
 有機太陽電池、あるいは色素増感を含めてなんですが、この分野の太陽電池側からの考え方と、それから、電気化学電池の立場、例えば光触媒を利用して水素をつくるという、そういう技術もございますね。これはかなり技術的な類似点がありまして、12月の末に我々のセンターで両者を合わせてワークショップをやりました。これは太陽電池側がほとんど物理関係、それから、水素をつくる人工光合成、これは無機、有機全部含めてですけれども、化学が大体主体であると。大変おもしろいワークショップでして、よくわかりましたのは、魚崎先生ご指摘のように、お互いのことをあまりよく知らない。これをエネルギー率として位置づけた場合には、両方とも両者それぞれ相手方の特徴を知っていないとほんとうはまずいんですけれども、それを知らないということがよくわかりました。
 そういう意味では、これを全体としてどうやって進めて融合を進めていくのかということは、相当に研究のファンディングの仕方、あるいはその研究の推進の仕方、そういうことを考えなければいけないということ、そういう感想も改めて持った次第なんです。特に技術的なものについて申し上げますと、有機薄膜の太陽電池の中の活性層は、今お話にありましたように、化学のメスを入れる余地がものすごくたくさんあるんですね。そして、やられていない。人口的に言いますと、有機ELその他、あるいは有機のトランジスタ等、日本には人口はかなりいるんですね。あるんですけれども、エネルギー変換といいますか、エネルギーを創成する太陽電池のほうには人口が今非常に少ないという面がございます。
 これは人材がいないわけではなくて、そこをどうやって向けるか、そちらのほうに誘導していくかという意味で、私は研究のファンディング側で一工夫、やり方があるだろうと。今後、急いでやらなければいけない幾つかの問題があるのではないかなと思っています。アメリカのほうは、ご存じのようにいろいろエネルギー省も共通の研究所を新しくつくりまして、アンダー・ワンルーフでいろいろな方が、そこに異分野の方が入って、そして新しいものをつくり出していこうということを政策的にやっているわけですね。エネルギー、環境というのは、まさにナノ以上にある意味では融合が必要だと思います。その1つの典型が、僕はこの有機関係ではないかなと思っています。

【魚崎委員】
 1つ関連して、私もこの最初の藤島・本田効果のような、それでドクターを取ったんですけれども、外国でドクターを取ったこともあって、外国の学会へよく行っていましたけれども、そうすると75年ぐらいでもアメリカは物理の人がこの半導体、電気化学に中心に入っていたわけです。そうすると、共通の言葉をつくらなければいけない。半導体の人はフェルミ準位というわけですけれども、電気化学の人はレドックス・ポテンシャル、それをどうつなぐか、溶液中のフェルミ準位とはどういう意味だとかいうようなこともかなりディスカッションをして、それなりのことを当時は説明書とかも書いたんですけれども、今やまたそれがあれになって、だんだんまた縦割り構造に終わって、昔の教科書の話になる。
 それから、STMも私はやりましたけれども、そうするとやっぱり、どうして電気化学、溶液の中だったら電極が3本要るんだとか、普通の真空だと2極ですけれども、その辺の意味とか、そういう意味でともかく共通の言葉をきちっとつくって、やはりアメリカの場合はお金があるところに人が集まるということで、分野を超えたプロジェクトケース。日本の場合は1つ1つのプロジェクトが小さいせいなのか、例えば燃料電池、NEDOなどもやっていますけれども、みんな「あ、この人ももらっているんだ」という感じ、アルバイト的にと言うと失礼ですけれども、これでも出せるやというような感じで、個々のリストはたくさんあるんですけれども、それがワークショップというか、一応はやられているんですけれども、本気の共同研究にはなっていないのかなという感じですね。それはやっぱりお金の出方の違いだと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

【田中委員】
 もう一言、よろしいですか。私、これで出ないといけない、申しわけない。

【榊主査】
 どうぞ、どうぞ。

【田中委員】
 すみません。もう一言申し上げますと、これをエネルギー問題として考えた場合、日本は経産省がリードをとってやっているわけですね、太陽電池関連は。しかしながら、この有機を使ったものというのは相当に基礎をやらなければいけない。そして、今、低いんですけれども、変換はもちろん低いんですが、低コスト化という点では塗布法その他でかなりの可能性を持っているわけです。そういう意味では、基礎研究をやる余地がたくさんあって、そして、将来のことを考えたときに低コスト化の可能性もあるとなれば、これはオールジャパンで考えた場合に大学がもう少し入っていかないといけないと思っています。これはかなり緊急な問題だと思っています。
 それは僕はやり方はいろいろあると思います。太陽電池だけではなくて、例えば人工光合成、植物の光合成を模倣して水素をつくるという、そういう反応の段階だけを考えてみましても、例えばアンテナ分子を持って光を有効に吸収し、それをいかに電化分離していくかという点では太陽電池と同じような問題を持っているわけですね。そういう超分子をどうやって設計するかということについては、ナノのほうでかなりいい成果を今まで出してきているわけですから、私は日本の強みを生かした正しいやり方というのがそこにあるのではないか、おのずからあるのではないかなと思っています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 遠藤先生、どうぞ。

【遠藤委員】
 魚崎先生、うまくまとめていただいたんですけれども、もうちょっとイノベーションをこのエネルギーデバイスで起こすには、異分野の融合というのは絶対必要だと思うんですね。大体、ファンディングの方向を見ると、専門会議に出ているんですね。それはかつて燃料電池の論文を書いた、リチウム電池の論文を書いたという人も出ているんですけれども、それは多分、改善というのは通用すると思うんですけれども、イノベーションにはちょっと行かない。ですから、ファンディングの仕方として3分の1ぐらいは、ちょっとこれ、博打じゃないかなという人にぜひやってほしいんですね。
 というのは、リチウムイオン電池なんていうのは日本で開発されて、日本で発展したすばらしい電池技術なんですけれども、結局、今、話題になっているのはプラグイン自動車ですね。強力なリチウム電池を積んで、夜充電しておいて、昼間、五、六十キロ運転する人はそれだけで走れるわけですね。今のプリウス型のハイブリッドというのはエンジンの力をギアでタイヤに伝えたり、それから、モーターを回して動かす。両方ケッドが入っているんですね。プラグインというのは、もうギアをとっちゃって、全部エンジンで発電して、その電気でモーターを動かして自動車を動かす。あるいは電池だけで動かすと、こういうことなんですね。
 これをやったのは大学の先生なんですよね。最初、その電池をつくったのは。日本ではリチウムイオン電池は非常に高いので、コンピュータ、携帯電話、公衆が使わないとみんな思っていたんですね。ところが、大工さんや工事屋さんが使う電動ツールにリチウムを積んだ人がいるんですよ。これは邪道ですよね。ニッケル水素とかニッカドでいいわけでしょう。ところが、建築屋さんが使う電池というのは、軽くて長時間持てば、屋根の上で長い間働けるわけですね。しかも、ポケットに2つずつ入れて屋根で工事する。そうすると、パソコンとか携帯電話用のリチウムとちょっと違うんですよ。パワーが出ないといけないですね。そういう発想で電池をつくった。
 それがあっという間に電動ツールが伸びていきまして、いや、待てよ、この電池、自動車に積むには、携帯電話やパソコンのリチウムよりずっといいじゃないかという話で、それをつくったアメリカがものすごく元気になって、結局、ブッシュさんがてこ入れして、それをビッグ3に積むんですね。そうすると、一気に日本でつくられたハイブリッド自動車の上を行く自動車が米国でできちゃったんですよね。でも、この発想のもとは大学の先生なんですよね。
 ですから、日本でもぜひ落ち穂拾い的な発想と、もうちょっとビジネスに使えるようなところ、それから、どうなるかわからないけれども、この人にやらせてみようという、そういういろいろなファンディングの仕方を1つ考えて、イノベーションというものをどうやって出すか、その辺のところから考えていくと、特にこのエネルギーの分野は、例えば今、自動車メーカーが考えているのは、燃料電池を積んだ自動車というのは高いですけれども、大分先ですね。しかし、500万台以上売らないとなかなかもうからないんですね。そんな時代はなかなか来ません。
 しかし、500万台売ろうとすると、日本とかアメリカで売ってもそれにはならないんですね。やっぱりアフリカとか、南アメリカで売らないとだめなんですよ。アフリカとか南アメリカで燃料電池自動車がどれだけ売れるかという問題もあるんですけれども、加湿器を使ってガソリンからつくるんですね、水素。そうすると、南アメリカやアフリカでどうやって燃料電池自動車を使うかというと、夜、テレビを見るために使うんですよね。ああいうところは電力インフラがありませんので、そうすると、燃料電池自動車というのはものすごく意味があるんですね、社会インフラとして。
 それから、カリフォルニア州で、今ものすごくプリウスを使いたがっているんですね、あのシュワルツェネッガー知事。20万台、カリフォルニア州で買おうとしているんです。どうしてかというと、地震が来たときに道路がみんな寸断しちゃいますね。そうすると、あの中越地震でもそうでしたけれども、皆さん自動車の中で生活している。そうすると、プリウスは発電して、そこからコンセントがとれれば、とりあえずパソコンでインターネットは使えますね。電話も使えますね。テレビも見れますね。それから、ちょっとした料理もできますね。そうすると、あれは社会インフラとしてはまたすばらしい発想の使い方ができるんですね。そうすると、ものすごい夢、機能が広がってくるんですよ。
 それをトータルで見たときの、このエネルギーデバイスというのは、これをしっかりつかんでいれば、日本は7割持っていますから、リチウム電池は。世界の、かなりいろいろな意味でキーになれるんですね。ですから、ぜひイノベーションを出すためにいろいろな可能性をファンディングで出していただきたい。これがお願いでございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。大変元気づけられるコメントで。
 それでは、時間の都合がございますので、魚崎先生の講義、どうもありがとうございました。
 それでは、栗原先生、引き続きお願いします。

【栗原委員】
 私、数年前から、みんな研究者は少し環境というキーワードを研究の中のどこかで考えながら研究テーマを設定したらいいのではないかと考えておりまして、今回、何か話す機会をということでしたので、そういうものに少し肉づけした形で、少し意見を述べさせていただきます。
 それで、どういう形でまとめたらいいのかと思って、資料をネットで探していましたときに元素戦略のパワーポイントが出てきまして、それを参考にさせていただいてまとめましたので、その点、お礼申し上げます。少しその形に沿っていますので、その辺に私の考えていることを載せさせていただきました。
 次に、2ページ目に少し背景として、これは釈迦に説法かもしれないんですけれども、現在、環境・エネルギー問題は人類の存続にかかわる社会的課題として大きな関心を呼んでおりまして、産業の現場のみならず、暮らし方のすべてにわたって見直しが日常生活においても行われるようになってきている。テレビもそうですけれども、家庭の主婦が読むような雑誌でも非常にこういう環境問題の特集なども最近の『クロワッサン』にも出ていましたけれども、そういうことがございます。
 一方、科学技術の研究においても、環境・エネルギーの視点からの見直しは、すべての分野で行われているというわけではないと思いますので、今後の環境・エネルギー問題の解決には今までのナノテクノロジー研究開発で蓄積した知見・技術を活用して、CO2(二酸化炭素)削減を図るための広範な科学技術分野での革新が必要とされているのではないかと考えています。
 大きくはエネルギーの利用減少によるCO2(二酸化炭素)削減とか、石油資源、あるいは炭素資源材料の効率的な利用によるCO2(二酸化炭素)削減というようなことがあると思います。実際、こういう環境と経済の両立を実現するための環境・エネルギー問題を解決する多様な革新技術は世界的にも求められていますし、それと同時に研究の新しい切り口として、環境・エネルギー研究に対してナノテク的な考え方を入れる、あるいは普通、ナノテク的な研究をやっている人たちが環境・エネルギーというような字句を入れることによって、また新しい研究というのが出てくる可能性があると考えます。
 今、ここで一応、背景までご説明したつもりです。
 めくっていただいて3ページ目ですが、環境・エネルギーについてナノテクノロジーの、もし目標があるとすれば、エネルギー変換並びに効率的利用技術、今、魚崎先生がお話しになったような部分も含んでおりますけれども、石油エネルギーにかわる発電技術、自然エネルギー変換技術、エネルギーの効率的な利用技術を開発することにより、CO2(二酸化炭素)排出規制の影響のない持続可能な社会の確立に貢献する。一般的な言葉使いになっておりますけれども、先ほどそういう元素戦略のフォーマットを少し参考にさせていただいたので、そういう表現になっております。それから、低石油、あるいは低炭素経済確立に資する材料技術として、石油の使用量を低減できる材料技術、あるいはその機能を担う代替技術を実現する。
 3のところからは、具体的なターゲットとなり得る科学技術の例として、多少いろいろな、どんなものがあるかということを挙げてみました。少し広く挙げたほうがいいと思いましたので、非常に研究の進んでいるものも、あるいはこういうものがあったらいいのではないかと考えるものをもう少し幅広く挙げてございます。
 まず、太陽エネルギーの有効利用で、これはやはりエネルギー問題はエネルギー変換ということを避けて通れないと思いますので、長く研究されている部分もあるんですけれども、高効率太陽光パネルの開発、今、お話しいただいたような光増感電池、太陽光パネルの開発としてはいろいろ要素技術があると思いますけれども、先ほど議論されたようなところも含むような、そういう太陽エネルギーの有効利用。
 それから、材料として、例えばこれができるのかどうかわかりませんけれども、石英からシリコン結晶、まあ、ポリシリコンをつくるような、そういうような試み。酸化金属の中には加熱するとO2(酸素)が抜けて金属だけが残るようなものもあるそうでして、炭ができるようなプロセスというのもあるんだそうですけれども、SiO2(酸化ケイ素)の場合はそういうものはできないのかもしれませんけれども、現在より何か効率的にできるようなことがあればいいのではないかということで、これは頭の体操かもしれませんけれども、そういうようなことも思いつきましたので入れております。
 それから、太陽エネルギー以外のエネルギー利用というので、廃熱利用、熱電変換というようなこと、これは後で研究例をご紹介したいと思います。低い温度は現在利用されていないけれども、ナノにすると、ZTというのは熱電変換の変換効率ですけれども、それがあるものがあるということでございます。
 エネルギーの有効利用として、ほかに考えられる形としては、次の4ページ目ですが、(3)として高効率電池、それとか高効率エンジン、電気エンジンとか、ディーゼルエンジンとか、そういうようなことのためには、あるいは触媒開発とか、エンジンの構造を少し耐熱温度の高い材料の開発とか、そういうことがあるのかなということで、そういうものを挙げさせていただきました。
 それから、摩擦制御、身の回りにはたくさんモーターがあるわけですから、摩擦制御によると随分、GNPの数パーセント、一、二パーセントぐらいエネルギー効率は上がるというような推算がございますので、摩擦制御というようなこともあるかもしれません。
 それから、あとは低エネルギープロセス材料の開発ということで、これも従来から言われていることですけれども、蒸留にかわる膜分離のようなもののプロセスの推進とか、次は少し想像的な、まだイマジネーションの部類かもしれませんけれども、液体輸送などをするときになるべくエネルギーを使わないように濡れとか、毛管力とかいうのはありますけれども、そういうようなことを考慮しながら移送するというようなこともあるかもしれないと思います。
 それから、(5)のところは、環境・エネルギー材料ということで、少しでも環境・エネルギーにやさしい材料とか、有効な材料ということで、たくさん使う材料として、例えば建築とか、自動車とか、プラントのいろいろなプロセスというものを改良していかなければいけないのではないかというような意味で、こういう項目を挙げております。石油以外の原料、材料とか、あるいは高分子ですと軽い、有機材料にかわるような無機材料というと、例えば少し軽くするにはどうしたらいいとか、可塑性を持たすにはどうしたらいいかとかいうようなことがあるかと思います。
 また、表面を使うと、そのものが持っている特性よりもはるかに強調されたような材料加工というのも可能ですから、そういういろいろな、先ほど自己組織性という言葉も出ましたけれども、材料の持つ可能性を極限まで使うというのはどういうことかということを考えるということの、そういうようなアプローチがあるかと思います。
 それから、(6)は、これはグリーン・ケミストリーとしてよく言われていることですので、何か細かい項目立てを書きませんでしたけれども、環境負荷の小さい合成、例えば従来ですと、溶媒を水にするとか、超臨界液体を使うとか、触媒の工夫とかいうのもございますし、私どもの研究所ではメカノケミストリーといって、例えばPVCから塩素を抜く場合に、ゴリゴリとこすって、高分子と酸化カルシウムを混ぜてこすれば塩素が抜けて、水で洗うだけでCHだけの高分子が残る。
 それが低分子化しているので、加熱すると水素が出てくるなんていう、そういうようなプロセスも私どもの齋藤所長、研究しているんですけれども、そういうような環境負荷の小さい化学反応というのもあるかもしれませんし、最近はレーザーなどでペンキを使う--ペンキというか、例えばパソコンのキーボードなんかのああいうところに字を書くのは、ペイントで塗るのではなくて、レーザーで印字するというようなことも溶媒を使わないということであるそうですので、いろいろ大きなところから小さなところまで、いろいろ環境負荷の小さいプロセスというのはあるのかなと思います。
 それから、(7)はミクロ実験、あるいは先端計測というようなことで、どのぐらい小さな、適正な実験規模とか、あるいは小さな検出設備とか、マイクロデバイス、そういうようなものも広い意味では入るのではないか。安全分析というようなことで書かせていただきました。
 その次の5ページ目ですが、そういうような研究振興の観点から見た今のような研究を進めるということの意義ですけれども、これも前の2つのご発表のところにも出てきた視点で、同じ共通する部分が大きいですけれども、ナノテクノロジー、ナノ材料研究というのは、材料研究を環境・エネルギー問題を解決するための重要かつ魅力的な研究分野とするため、環境というのは1つのいい切り口ではないか。それから、いろいろな意味で環境という分野にナノテクノロジーや材料研究で培った潜在能力が使えるということで、先端分野、産学連携とか人材育成に資すると考えます。
 研究を進めるには、非常に短期的な課題と、それから、非常に長期的な課題とを合わせて振興するのがいいのではないかということで、そういうことが研究振興の観点からはあると思います。
 それから、実用化や社会貢献としては、基盤となる研究を振興するということでは、大学やアカデミクスの役目というのは、技術とか科学のバリエーションをつけることだと思いますので、そういうバリエーションを増やすということもあると思いますし、実現可能な、あるいは産業に近い分野ではなるべく具体的に実用化を目指すような研究の方向もあるのではないかと考えております。
 一応、それが5ページまででございます。
 最近の研究がどんなものがあるかというイメージを幾つか、身近なところからとってご紹介させていただければと思います。研究例1は、太陽エネルギーを利用した水の分解の例でございます。これは東京理科大の工藤先生のご研究ですが、先ほど田中先生のほうからも出ているような例ですけれども、2つの触媒を使って水の分解をする。この場合の特色は、可視光を当てて水の分解をするということで、こういう分散系でやると非常に効率よくパネル化ができるとか、そういう特色があるそうです。かなり最近、効率が上がってきたというふうに聞いております。
 下のグラフ、書いていないんですけれども、赤が水素の発生量で、左下のグラフですけれども、青が酸素の発生量です。ここでのナノテク的な要素というのは、1つは微粒子ということだと思いますけれども、その表面に助触媒を担持するとか、それから、最近、去年のドイツからの論文には、従来こういうものには使われていないような半導体の微粒子を使って、表面に酸化層のようなものがあれば、そういうものがないと非常に分解しやすくて、長時間の利用に使えないけれども、表面をコートすることで非常に寿命が上がる。ですから、まだ従来検討されていない材料も、そういうナノという視点から考えて、まだ大分新しい材料が出てくる可能性があると思います。
 研究例2ですけれども、これは熱電変換材料という、熱を電気に変えるというシステムについて、どのぐらい現状があるかということでございます。それで、左側は無機物、右側は有機物の、多分、現在の最高の例に近いものだと理解しておりますけれども、左側は九大の大滝先生で、これは多分、CRESTのナノバーチャルの中の研究の一部です。ZTという変換効率が1までなれば、このZTというのは熱電の変換の効率なんですけれども、熱から電気に変わるところの効率と、それから、熱伝導度と導電率みたいなものが関与しているケースなんですけれども、それが1になれば実用的なレベルなんだそうです。10年で10倍ぐらい性能が向上したと。この大滝先生の研究は、つくり方を工夫して中にナノボイドといって空気層を入れると熱伝導率が下がって非常に効率が上がるという、そういうところにナノが使われる可能性がある。
 それから、右のほうは山口東京理科大の戸嶋先生の有機熱電材料ですけれども、これは縦軸がログで、最高のものでも0.1ぐらいの変換効率なんですけれども、室温でのデータだというところが、左側の無機物のほうは1,000度とかいう値のデータですので、それに比べると、室温でこのくらいまでいっている。この10年で1,000倍ぐらい、そういう効率が上がった。有機物ですと資源もあって安価で、加工性もいいので、いろいろなところに使えるのではないかということで、こういうものも例えばハイブリッド化とか、そういうような点でかなりナノがまだ寄与できるというか、ナノがこれからどんどん寄与できる余地があると思います。
 それから、3番目のは摩擦と省エネルギーということで書かせていただいたんですけれども、摩擦を制御するとGNPの1~2パーセントの経済効果があるというエスティメーションが1960年代にイギリスのジョストリポートというので報告されて以来、そのフォーマットを使って各国でやられております。日本でも最近までそういう値が出ておりまして、いろいろばらつきはありますけれども、1~2パーセント、現状で経済効果があるような報告がございます。
 こういうものをナノで研究できるようになってきたという例で、これは私どもがやっている研究なのでちょっとあれなのですが、例えば液膜の厚みを2つの金属、あるいは無機物でも何でもいいんですけれども、2つの固体の間の液膜の厚みを1ナノとか、別にもっと厚くてもいいんですけれども、そういう分子のオーダーではかりながら潤滑性とか摩擦を評価できるために、例えばこういう1ナノメートル以下の水が、潤滑性がやっぱり、粘度は3桁ぐらい上がるんですけれども、それでも潤滑性があるとか、だから、潤滑剤を使える可能性というのをかなりはっきり示したデータですけれども、そういうものがございますし、あるいはハードディスク用の潤滑油が2つの基板の間でどんなふうに並んで、そういう場合にどのぐらいの潤滑性があるかとかいうことも定量的に評価できます。これはそういうこともサイエンスとしてできるようになってきているという例でございます。
 例えば摩擦ですと、水着なんかの表をどういうふうに加工するかというようなこともあると思うので、低流体摩擦とか、それから、これは今の液体に関する場合とはちょっと違いますけれども、摩擦接合なんていう技術もあるようなので、いろいろな技術を見ると、いろいろな可能性がまだあるのではないかということで挙げさせていただきました。
 研究例4ですけれども、これは膜による分離技術では、膜の厚みを薄くすれば非常に効率が上がるということは、もうずっと議論されていることです。私が学生のころも聞いていたと思うんですけれども、実際にようやくということだと思いますけれども、ナノメートルではかれるような膜ができてきたということで、これは理研でなさった国武先生のご研究ですけれども、厚さ30ナノメートルの大きな膜がつくれたと。
 これは直径が6ミリメートルのガラス管の端っこに張って、左の写真はエタノールを3センチ入れて水が垂れている。水というか、エタノールですけれども、液体が垂れているという絵なんですけれども、30ナノメートルでも3センチのエタノールを支えるということで、こういう材料も出てきたので、非常に大きく技術を革新できるような可能性があるのではないか。超薄膜であるために生体膜と同様に少ないエネルギーで物質の膜透過が可能で、ナノ先端材料として海水淡水化、燃料電池など革新的な次世代機能膜に寄与できるということでございます。
 研究例5は、同じ材料でも表面の形状を変えると随分特性が変わるという例でございまして、北大の辻井先生のご研究ですけれども、撥水性というのは、例えばテフロンなどで非常に表面エネルギーの高いものでも接触角で見ると150度だか140度だか、それより上がるような水の接触角というのは出ないということになっています。それを表面の幾何学的な形状を変えると、180度に近いような接触角が出るというようなことで、これは接触角の例ですけれども、形という要素を入れることによって表面の特性をいろいろ制御できる可能性があるのではないか。先ほどの流体摩擦のようなことも、少しその中に入るかもしれません。いろいろな、これはまだ耐溶媒性と耐熱性は実用レベルまでいっているのだそうですが、耐機械性がまだちょっと弱いということを伺っていますけれども、こういう技術も幅広く材料に使える可能性があると思います。
 「おわりに」なんですけれども、材料ナノテクノロジーというのは、私の理解では今までマクロで、全体のマクロな性質で理解、あるいは議論していた材料という研究を分子や原子レベルで研究するというようなパラダイムシフトがあって、それですべてがナノだねというような言い方につながっているのではないかと思っています。もちろん、従来からミクロだったものもあるんですけれども、幅広い材料でということで、科学から技術、あるいは技術を科学することが現状で可能になったのではないか。
 ですから、そういう材料ナノテクノロジーがつくり出した、こういう学術、あるいは知見とか計測技術というものを使って、環境課題へ応用すれば汎用技術のイノベーションになると思いますし、今、非常に重要とされている環境課題にとにかくナノテクノロジーというのは、今の科学技術の先端技術ですから、それをうまく生かすことができるのではないか。
 これもいろいろな議論で、今回、いろいろな先生がおっしゃったことですけれども、いろいろな分野が融合して研究するということは大事ですし、ナノになると無機も有機材料もないということも、これもよく言われておりますので、そういうことで総合工学という言葉もありますけれども、もっと理学も含んで新しいユニバーサルな融合研究領域ができるのではないかと、最後、大きい言い方ですけれども、私自身がふだん考えていることを少し肉づけしてまとめさせていただきました。ありがとうございました。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 これでプレゼンテーションが終わったんですけれども、私の司会の不手際がございまして、多分、1時までで、皆さんいろいろご都合があるので、もしお許しいただければ、お弁当を用意しておりますので、それを皆さんにお配りして、召し上がりながら質疑をさせていただく。栗原先生には大変申しわけございませんけれども、ご了解いただければと思います。その準備が進行している間の時間も使いたいと思いますので、いろいろご質問、コメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 玉尾先生、どうぞ。

【玉尾委員】
 栗原先生にコメントというわけではないのですが、全体的な分野の連携の重要性というのは、どのテーマでも強調されていると思います。それで、ぜひそういうファンディングを考えていただければと思っています。これはここの委員会でも以前にも既に何度かお話ししたかもしれませんが、茅先生を中心にして全国の5研究機関が物理と化学の真の融合を目指した電子相関の研究を5年間やってまいりました。それでもって初めておそらく物質科学における物理と化学が1つ、一体となってやってきたことかと思います。非常によい方向になっていると思います。若手にも次のそういう取り組みが伝わっていっていると思っています。ぜひこういう取り組みを、このときには5つぐらいの機関でやったんですけれども、今後、こういう物理と化学、それから、バイオと理論、こういうものの連携というものをしっかりと進められるような形で、国がサポートしていただければと思います。
 以前からずっとお願いはしているんですが、なかなか実現がしていませんで、数年前に、3年ぐらい前に理化学研究所のプロジェクトをもって総合科学技術会議のヒアリングに行ったときに、ある先生は、こんな友情だけでつながっているようなのでいいのかねというようなことまで言われて、これはやはりファンディングがしっかりと、国がファンディングをきっちりとするというような体制が必要ではないかということの発言だったと思っております。ぜひそのようなものをつくっていただきたいと思っております。
 それから、先ほど来、田中先生やらも含めて有機化学、合成化学、新しい物質をつくる自己組織を持ったようなものをつくっていくものの重要性ということも強調していただきました。私どもも、我々が思っているのは、物理の先生方は、もしかしたら新しい物質群はどこかから自然発生的に出てきていると思っているのではないかとすら思われないこともないんですが、決してそうではありません。科学者はほんとうに日夜努力して、新しい物質づくりに取り組んでいます。日本化学会も4年前から新しい物質科学の将来像というので、北澤先生などもご参画いただいておりますが……。

【榊主査】
 どうぞ、召し上がりながら。

【玉尾委員】
 はい、そうですね。すみません。取り組んできていまして、今年もまた、先進分子技術ということで分子というものがどんなふうに使われていくのかということで、科学者の中でもやっぱり勉強しながら進めようということで取り組みを進めています。岡野先生にもお願いしたいんですが、別のところでご講演ということもあって残念ながらあれですが、そういうことで、全体のというか、やはり物理化学、バイオ、理論、今度のペタコンの岡崎先生などのやっておられるようなこともきっかけにしつつ、何か新しい取り組みを、ぜひファンディングをお願いしたいと思う次第です。全体的なコメントをさせていただきました。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。せっかくあれで、ご発言いただいていない樽茶先生。

【樽茶委員】
 さっきからずっと聞かせていただいて、融合領域での研究の推進、大変重要だと思うんですけれども、さっきもお話がありましたけれども、教育というのはすごく大事で、学科横断的、あるいは領域横断的な教育プログラムは大事だと思うんですけれども、かといって、反面、大学の中にそういう融合領域的な研究の学科だとか、カリキュラムを組み込むというのは、そんなに簡単ではないと思うんですよね。
 まず第1に、すごくこういう融合的な分野というのは学問体系があまりしっかりしていないので、トピカルなものを寄せ集めて話していくというような形になって、教育としてもすごくやりにくいし、学生としても何をどう学んでいけばいいのかって、すごく矛盾があると思うんですよね。そういうところを何かうまく、どこかから強力にサポートしてもらわないと、体系ができないと思うんですよね。
 そういうところでやっぱり文科省の果たす役割はすごく大事だと思っていて、積極的に、例えば理学部の物理専攻にこういうものを入れると非常にサポーティブなことがありますよというような形で積極的にうまく餌をチラつかせてやっていってもらわないと、なかなか前へ進まないものだと思っていて、ナノ技術ってすごく将来を向いているから、学生を養成していくというのは必須のことだと思うので、みんなで何かうまい方策を考えていきたいと思いますけれども。

【榊主査】
 どうぞ、北澤先生。

【北澤委員】
 今、樽茶先生が言われたのは、私も中間的な立場になってみると実によくわかってきたことがあるんですけれども、大学がそのつもりなら文科省は幾らでもできる。そういう面があるのではないかと思うんですよ。文科省が言っても大学が動かない。これが今まであったことですし、それですから、ナノでそれをやっていくときに、基本としてはスクラップ&ビルドなんですね。それで、大学はスクラップと言った途端にものすごい抵抗する。ただ、そのスクラップしながらビルドするという案が出てくれば、これはやりようがあるのではないかというのがまず1点なんですね。それで、例えば最初に川合先生が提案されたことも、現実の実際にやるという段階にしたら、じゃあ、何をスクラップしてあれをつくるのかというときに、スクラップするものを差し出せばできるのではないかと思うんですよ。今、先生が言われた融合も、それはできるのだと思うんです。
 それで、この点では僕は柳田敏雄先生が言われていたことがすごい印象に残っているんですが、日本だって融合は幾らもできると彼は言うんですね。それで、それは融合というのは学生から起こる。先生からは起こらないというわけです。学生を集めて、それで2人の先生が教育するようなシステムに、まあ、実際に柳田先生は阪大の中にそういうものをつくったわけですが、そうすれば融合は起きる。学生は二、三年もたてば融合しちゃいますよというのが柳田先生の言うことだったんですね。確かに柳田先生はそういう融合領域というのをつくられたと思われるんですけれども、じゃあ、それを具体的にはどうやったらやることができるかということで、それで、魚崎先生もここにおられますけれども、前にファンディングだけで融合領域をつくろうとしたことがあるんですよ。北大と理研と阪大だったかな。
 ところが、魚崎先生自身が言っておられるように、ファンディングだけでは融合するといっても名ばかりだ。お金だけ取っていって、お金が切れたらそれでもうおしまいというような、そういうことになりかねない。それで、これは非常にやり方としては下手なやり方だったかなと私も、具体的にどのプロジェクトとは申しませんけれども、そういうこともあるんですね。それで、田中一宣さんが先ほどアンダー・ワンルーフと言われましたよね。アンダー・ワンルーフの融合だったらほんとうに融合ができるかどうか。その辺が1つ、柳田先生は組織もつくりかえて、そこで学生は、そういう名前の研究科ないし専攻に入って、それで複数の異分野の教員に教育を受ける。これでなければだめなんだという柳田先生のやり方と、それから、アメリカみたいにアンダー・ワンルーフで、とにかく人を集めてしまって、これからはそこで一緒に生きていくんだ、そういう方式にするというのは第2の手だと思うんですね。
 第3の手は、ファンドだけで、当面、ある年限、共同研究をやってもらう。これは第3の手だと思うんですけれども、どの辺を具体的に考えられるかによって、私たちもやり方が変わる。それで、JSTでも実は融合のことは、この間もナノの、CRESTが今年10領域終わるんですが、そこの領域総括の先生方からも、とにかく融合という観点から、このナノは非常に大切な、いろいろなところと融合できる、あるいはしたほうがいいから、やったらどうかというふうに言われたんですよ。そこから新しい何かが、学問も生まれてくる。ところが、じゃあ、どうするかというとき、これは結構しんどいよというふうにも言われて、じゃあ、本気で取り組むにはどういう方法があるかということを、今、実は真剣に考えているんです。我々、悩んでいるんです。
 それで、例えばやり方としては、CRESTみたいなもので融合しますということを真っ先に標榜して、だれとだれが何を融合させるのかというのを例えば共同提案みたいな形にしたものだけを受け付けるというのは、そういうナノ融合領域としてのものをつくっていくというのが1つの例なんですね。
 それから、もう一つの手は、日本の場合にはとにかく人が動かない。だから、アンダー・ワンルーフにすることを強制的にやってしまう。これはドリームチーム形成型みたいなもので、例えば玉尾先生が理研に行ったとしたら、それを利用して理研に玉尾先生みたいな研究に結集するような人を異分野から集める感じにして、ドリームチームをつくり上げる。それを例えば10年とか、そういう期間、CRESTは今5年ですけれども、例えば10年というやつをつくって、それでファンドを続けて、人件費も出せるようにして、それで少なくとも数名のチームをそこにつくってしまう。
 それで、かなりリーダーシップを発揮してもらう感じにして、それで10年ぐらいやると、まあ、10年人件費が出れば、そこから後の組みかえとか、そういうこともできていくかなというような、まあ、そんな感じでドリームチーム型とか、いろいろ考えているんですけれども、この問題は教育をやらなきゃいけない、組織をやらなきゃいけないって、常に出てくるんですけれども、じゃあ、具体的にどうやったらできるかという、そこに踏み出さないと現実の問題にならないような気がするので、その辺、もうちょっと議論していただくと、我々も、じゃあ、どうやって受けてやっていくかという提案が具体的にできるかなと思うんですけれども。

【田島委員】
 まず最初に、栗原先生のほうのご発表に1つだけコメントなんですけれども、超伝導材料研究というのもぜひ環境の中に入れていただきたいと思います。自分の研究のあれで、1回も出てこなかったので寂しいなと思って、それが1つコメントです。
 それから、今の融合領域の教育の問題なんですけれども、確かにお金をつければ何かできるというふうには私も思わないですね。今、すごく小さな例ですけれども、大阪大学の理学部で物理、化学を入試で選択した人間を生物学科として受け入れるという特殊な入試を今年度から始めました。それは物理化学を専門にやってきた人を生物の世界に引き込むというための戦略的な1つの学科形成なんですけれども、それをやるにしてもどういうカリキュラムを組んだらいいかということを議論している間にわかったことは、やっぱりそれぞれの専門の足腰がしっかりして初めて融合ができるので、最初からごちゃ混ぜに教育したときに一体何が専門かわからないような人間ができ上がるという、それはやっぱりよくないので、融合するのは、少なくとも学部は学部でそれぞれの専門をしっかり勉強した後、その後、本来は融合するのが私はいいのではないかと思うんですけれども、ただ、学生の興味が自分の専門のところにしか向かなくて、他分野に向かないというふうな状態にならないように気をつけるような教育が大事かなと思いますね。
 それから、そういうふうな学科をつくろうと思えば、大学の中で今できますので、特別なファンドがなくても、やろうと思えば融合はできる。むしろ、教員のほうがどういう融合をしたいかという強い意思を持つことのほうが大事かなと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。

【北澤委員】
 じゃあ、ファンドは要らないの? 今言われたのは教員の意識だけだと、そういうことですか。

【田島委員】
 まあ、多少は。

【魚崎委員】
 やっぱりお金がないとなかなか人は向かない。いや、それは別として、融合、例えば我々の例をちょっと言いますと、化学専攻なんですけれども、だから、その名前自体は何も融合していないんですけれども、実は大学院ではメディカルドクターが2人、研究所の人ですが入っていて、化学の学生が行って、遺伝子病制御研究所というんですけれども、そこはもともと医学部の学生が来る研究室と化学から来る学生がいるんですけれども、化学の学生が来るとすごくいい。最近もちょっと新聞に出ていましたけれども、ピロリ菌の何とか、ネズミでやってどうのこうのというのが出ていましたけれども、それをやったのはうちの卒業生というか、化学科で学部までやってマスターから、化学専攻ですけれども、お医者さんと一緒にやっているわけですね。ですから、組織の中でも頑張ればもちろん融合はできるんですけれども、そこをもう少し頑張ったら頑張っただけの何かが欲しいなとか、それを導くものがあるともっといいのではないかと1つ思います。
 それから、北大の理学の大学院は、今、大学院共通とかいってやって、私は物理の学生もいる前で、例えばこういう燃料電池触媒であるとか、あるいは非線形分光だとか、そういう話をしたときに、彼らのアクションは、それは化学であって物理じゃないと言うわけですね。ところが、一方、我々の同僚、ミュンヘン工科大学でも、アメリカにも何人かいますけれども、物理で教授、同じ分野で物理で教授をしている研究者も何人もいるんですけれども、これは日本、まあ、北大の学生がもっと悪いのかもしれませんけれども、非常に狭く考えていて、物理はこうだ。こんな関係なんていうのは物理の世界を超えているんだとか、さっきもちょっと言いましたけれども、学生は保守的だというのはそういう、まあ、先生のせいもあるんでしょうけれども。
 ですから、その同じ中でも人事をやる中で狭く狭くやる組織と、広げていく組織があったときにやっぱり、大学、やる気があったらできるなんていうのは、まさにそこはそうなんですけれども、それをどう誘導するか。今の各学科が勝手に人事をやっているだけでほんとうに、よくなるところはよくなっていくでしょうけれども、それができない集団の人がまたそこで人事をするわけですから、どんどん縮小的に狭く狭く行っちゃう可能性があって、その辺を広げたら得すると言うと変ですけれども、それがすごくプラスになるんだというのをどう示せるかという感じはしています。

【榊主査】
 栗原先生、お願いします。

【栗原委員】
 先ほど北澤先生の言われた3つぐらいの形ですが、融合というのは、多分、1つだけのやり方というのはないのではないかと思うんです。それは例えば今、私が申し上げた環境・エネルギーでも、ゴールが非常にはっきりわかっていれば、それに合うチームをつくれば非常にいいと思うんですけれども、今度、なるべく新しいものも出てほしいということであれば、それはあまりストラクチャーが最初からわかるわけはないので、先ほど言われた、遠藤先生、3分の1ぐらいは白紙の人にというような部分も必要だと思いますので、あまりスパッと割り切ったようなものからは、むしろ融合は出にくいのではないかと思います。
 それから、そういう意味では、違う分野の人が新しい課題に入っていくためには、やはりどういうことが課題だということを広くみんなが知ることというのは非常に大事だと思いますので、そういう意味では共同研究というのはいい形だと思いますし、今いろいろシンポジウムとか、必ず研究を広く結果をアピールしなさいと言われている、こういう方向がそういうことを1つ助けるのではないかと思います。
 あと、これはこの時間が迫ったときにあれなんですが、私は化学なんですけれども、東北大学の前は名古屋の応物におりまして、そのときに学生さんに物理と化学が合わさった新しい領域をつくると言っても、全然、学生にアピールしませんでした。それで、いや、これは新しい物理なんだと言うと、学生さんは何かすごい興味を持って聞いてくれるというのがありまして、ですから、そのあたりの先生の気持ちもそうですけれども、例えば融合が大事なんだという理解をお持ちの先生が大勢になれば、そういう分野に学生の方が来られるでしょうし、でも、逆に言うと、やっぱり物理が大事なんだ、化学が大事なんだという気持ちを持つ学生さんがいるということも大事だと思いますので、これも単純ではないんですけれども、みんなが意識を高く持って、そういうことをアピールしていくということがすごく大事だと思いますし、おもしろい例というか、学生さんがワクワクする例をたくさん出して一緒にやっていくということなんだと思います。

【榊主査】
 どうぞ。

【竹山委員】
 今、いろいろな大学、私も今私立に移りましたけれども、その前に国立にいまして、私国立の連携とか、私同士での連携とか、大学間の連携がすごく盛んになって、文科省のほうもそれを促進しているということもあるんですけれども、思ったのは、先ほど田島先生もおっしゃいましたけれども、あまり中途半端なところで異分野をかじると全部中途半端で、結局、いろいろなことを知っているけれども、実は深堀ができない学生ができちゃうというのがあると思うんですね。研究者養成としては、今、ドクターをとらせるというところで、最終、一番の学歴に行くんでしょうけれども、今、連携の中でダブルディグリーとか、そういうものをどんどん促進していこうと。そのかわり、2つ目のディグリーをとるときにまた3年とか5年かかっていると、ほとんど出たときに老人になってしまうので、それではまずいから。
 やはりあるところをガッと深堀して、化学なら化学、物理なら物理、すごく専門でガチッとやっていて、次にバイオに来たときに、そのときには1年とか1年半とか、すごく短い時間でできると。研究志向でガッと来たときに、そこでダブルディグリーをとれたときに、相当な専門家になってきて、相当知識も深いしというような気がするんですね。少しそういう、何か日本ではまだダブルディグリー的な考え方ってフィックスしていないんですけれども、アメリカのほうは当然のごとくどんどん動いていって、ダブルディグリーをとっていって、逆に言えばビジネスのまでとっていって、だから、そういうベンチャー的な思考もできる研究者が出てくるというところがあるので、そういうところの発想を少し広げられればなという気はしています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 大変重要な指摘が次々とありまして、これ、ほんとうはまた新たに数時間いろいろ議論して次のプログラムにつなげていきたいところですけれども、時間の都合がございますので、きょうのいろいろいただいた意見をメモいたしまして、それを少し整理した上で、また次回以降の会合に幾つか生かしていきたいと思います。
 どうぞ。

【大竹課長】
 今の話は非常に重要なんですが、ちょうど今、第3期科学技術基本計画なんですが、もう第4期の話をいろいろ議論し出しているところがあって、まさに今まで重点4分野といってど真ん中ばっかりやってきたんですけれども、特にナノは共通性が高くて、実はITでもあり、環境でもあり、エネルギーでもあり、バイオでもあるわけですね。そういう意味で、True-nanoというのもいいんですけれども、真ん中に閉じこもらないで、やはりどんどんしみ出していくような議論をされるのはいいと思うんですね。
 おっしゃるようなダブルディグリーみたいのが日本はないものですから、一番困っているのは、例えばアメリカはお金さえ出せば、そこへサイエンスのベースがわかった人が移動するわけですね。日本は壮麗なる俳人がいっぱい出てですね、なんて言うとひどいんですが、役に立たない人が残っちゃって、こっち側の人だけ忙しくなるという状況が起こるわけですね。そうならないようにダブルディグリーや何かの話は、ご議論、第4期基本計画、そういうところにインプットしていくといいと思うんですね。
 あくまで大学の自治というのは、文部科学省がやれと言ったら皆さんおやりになるのかというと、そんなことではないし、自治は重要だし、もうちょっと大学人というのはやっぱり、最高の知識人ですから、自分の周りだけではなくて、日本の置かれた国際状況も考えて振る舞っていただきたいわけで、そういうような自発的なご意見が出てくることが重要だと思います。大学のマネジメントは、そうなるようにやろうと思えばできるようになっているわけですね。大学の中で議論をしていくしかない。あとは、それはサクセスストーリーが一、二出れば、まあ、みんなフォローするかなという気はしているんです。すみません、余分なことを申し上げました。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 高橋さん、何か。どうぞ。

【高橋室長】
 時間が……。

【榊主査】
 どうぞ。

【高橋室長】
 本日いただいたさまざまなご意見、ナノテク・材料の分野でどうしていくかということは、昨年ですか、元素戦略というようなことで考えたということもございますので、また勉強会的に先生方に集まってもらって、そういうキーワードが幾つか、きょう出てきたと思いますので、そういったことを検討させていただきたいと思います。また、こちらの会議にもご報告させていただきながら進めたいと思っております。

【榊主査】
 それでは、今、お話がありましたように幾つかのことを整理いたしまして、次回以降にいろいろ生かしていきたいと思っております。
 それで、次回の会合につきまして、今。

【高橋室長】
 お手元に1枚、日程確認表という形でお配りさせていただいておりますが、とりあえずなるべく早目、早目にというような観点で、3月の日程についてお伺いするようなものをA4、1枚でお配りしておりますので、もしきょう可能であれば、○(まる)、×(ばつ)をつけていただいて残していただきたいと思います。

【榊主査】
 あと、よろしくお願いいたします。
 それから、次回のこの3月の会合の日程が決まりましたら、そこで引き続き専門家からのプレゼンテーションということで、前回、片岡先生にお願いするという話もありましたので、片岡先生にもお願いしようかと今思っております。内諾も得ておりますけれども、きょうのような問題意識で委員の方々にぜひ引き続きいろいろ問題提起をしていただきたいと思っております。きょうは時間の都合で、どなたにということを決めることはできませんけれども、ぜひこういうことなら一言プレゼンテーションしたいというようなことをどんどんご提案いただければと思いまして、事務局のほうに申し出ていただいて、もしなければこちらのほうからもお願いいたしますけれども、そういう形で進めさせていただきたいと思います。
 それで、大体、きょう審議すべきことはこれでほぼカバーされたかなと思っておりますけれども、高橋さん、先ほど元素戦略の関係で、別途組織が動きつつあるというお話ですが。

【高橋室長】
 いえいえ、これからの。

【榊主査】
 これからのほう。計画をしておられるということ。

【高橋室長】
 はい。

【榊主査】
 わかりました。
 それでは、何か閉会の前にご発言ありますでしょうか。どうぞ。

【大竹課長】
 あと1つ、こちらのほうに先ほどX線自由電子レーザーの話、X線自由電子レーザーのパンフレットと、それから、SPring-8の産業利用のまとめたのがございます。こういうものをどんどん私どもつくっていこうと思いますので、ちょっと幼稚な部分もまだありますけれども、だんだん精緻に上げていこうと思っていますので、いろいろなところで必要ならおっしゃっていただければ、ご活用いただければと思います。よろしくお願いします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 玉尾先生、どうぞ。

【玉尾委員】
 北澤先生のご提案のようなものをぜひ、どんどん試行していっていただいたらどうかなと思いますね。先ほど栗原さんが言われたとおり、これがベストというのなど、なかなかないんだろうと思うので、やっぱりいろいろなものをぜひお願いしたいなと思います。

【北澤委員】
 そうですね。なるたけアイデア段階から皆さんにも少しずつ相談しながらやっていきたいと思うんですけれども、結構、やるとなったら迅速にやらなきゃいけない面がありますので、そういうふうに。

【玉尾委員】
 おそらくテーマによってやり方もまた間違うのかなとも思いますので、ある程度のテーマを絞ってそのやり方を、こういうやり方、こういうやり方というのでもいいのかなという気がしていますね。

【北澤委員】
 材料室のほうから、我々が考えているようなこともニュースとして流していただけるように、我々、話し合って、それで皆さんの意見もお伺いしながらやっていくということにしたいと思います。
 それと、私、ちょっと質問があるんですが、この前のこの委員会でX線自由電子レーザーとか、量子ビームとか、そういうのが入ってきてもナノテクの予算は減ってはいないという、そういう材料室からのお答えがあったんですが、あれは予算の申請段階ではそうだったということだったと思いますが、結果的にはどういうことになったんでしょうかということを一応ちょっとお伺いしたいと思うんですが。

【高橋室長】
 概算要求、つまり、20年度の政府の予算案の資料がありますか。20年度の概算要求の結果、どういう政府案になったかというのは、きょう、資料を用意してございませんで、申しわけありません、ここでは、後日、資料を送付するような形に……。

【北澤委員】
 次回でもいいんです。

【高橋室長】
 ええ、すみません。ちょっときょうは。

【北澤委員】
 実際に大竹課長もおられるということもあって、あえてちょっと申し上げている面もあるんですけれども、自由電子レーザーとかペタコン、あるいは量子ビーム、いろいろなそういうビッグサイエンスと言えるようなもの、大切なこと、よくわかるんですけれども、そういうものをスモールサイエンスの中に投げ込むととんでもないことが起こるという、そこのところは何というか、特にここの委員会なんかはそういうことをちゃんとウォッチする責任があると思いますので、その辺がどうなったかということも見ながら、また来年のことにも、いろいろあると思いますので、ぜひその辺、はっきりさせながらやっていけたらと思います。よろしくお願いします。

【大竹課長】
 何でX線自由電子レーザーがナノの中に入っているのかというのは、この間、総合科学技術会議の某委員から聞かれて、え、あなたのほうでそう決めたんでしょうと私はお答え申し上げたんだけれども、要するに重点4分野みたいなのをフィックスして、共通部分を拾うような基本計画の書き方になっていないという大問題があるんですね。X線自由電子レーザー、確かにナノに最も寄与すると想定されるのは事実なんだけれども、そういうものを全部、4分野以外にお金をつけないというような財務省に対して、塩を送るようなことを総合科学技術会議はやっているんじゃないかって、私は不信を持っていて、そこは今後の第4期に関しては少しああいうところをガラポンしないと無理だろうと。それが1つ目です。
 それから、もう一つ、今、お配りしたんですけれども、実は概算要求で見ていると、競争資金のたぐいは概算要求のナノの予算に入っていないものですから、それで集計しちゃうと非常にナノテクノロジーをあたかも我々がビッグサイエンスでつぶしているように見えるんですが、実は、これ、きょうお配りしたのは19年度で比較していますが、北澤理事長のところの戦略創造も含め、科研費他でナノテクノロジー分野に近いところに充当されている経費というのがあって、こういうものを全部足し上げますと、必ずしも米国に遜色のあるようなものではない。もちろん遜色がないからそれでいいというものではないと思っていますが、強いところをもっと強くしなければならないというところはあると思っているんですが。いろいろその辺のところもご考案いただいて、我々も努力はしておりますということを、ちょっと方便っぽいですけれども、申し上げておきます。

【北澤委員】
 これ、アメリカのX線自由電子レーザーは。

【大竹課長】
 外に出ています。

【北澤委員】
 これは、この右側にあるやつがそうですか。

【大竹課長】
 ええ、これはナノの外へ出ています。だから、この部分が今X線自由電子レーザーの分は100億ぐらいが積まれた格好になっていますが、これでナノ全体がすごくゆがめられているということではないと思います。引き続きいろいろな形でいい予算をとっていくことは重要だと思っています。それに、目のかたきにしないでよく使ってください。

【北澤委員】
 いやいや、これは目のかたきにしているわけでは全然なくて、この方式そのものを日本が続けると、ナノの予算は日米ほぼ同じでやっていますとか、そういう政府答弁になってしまうので、そこのところはやっぱりごまかさないでやっていってもらいたいということなんです。

【大竹課長】
 もちろん。

【北澤委員】
 これはやっぱり、全体の政策を考えるときに重要なことですので、これは都合がいいという感じで、何となくそこのところをごまかしてしまうと、この委員会でも何を議論しているんだかわからなくなってしまいますので。

【大竹課長】
 そう。ただ、1つほんとうに重要なことは、多分、先生方もお気づきだと思いますが、ここ10年間、大学が法人化してやってきて、大体、総工費100億ぐらいの装置というのがだんだんつくりにくくなってきている。これは運営費交付金でバーッと横並びにまいちゃったものですから、そういう特別研究経費の対象になるようなものがなかなかつくりにくくなっているのは事実です。X線自由電子レーザーはそれの4倍ぐらいの規模ですけれども、その際、最も高いほうにあって、ほかのもので言うと、例えばすばる望遠鏡とか、ああいうものと大体値段的には双璧するんですね。
 ですから、そういうもの、1つの分野ではなくて、分野横断的に必要なそういうようなインフラみたいなものをどうやっていくかというのは、ぜひそのスモールサイエンスの側からも、スモールサイエンスで全部責任を持てというのかと。そうではないでしょうと。やはり国のインフラとして整えるやり方をということをいろいろな形で第4期に向かって言っていかないと、我々、予算のルール上はS、A、B、Cだ何だという話でプライオリティーエリアの中に入っていないと予算がとれないという格好になって、変な形のことが起きてくるということはご理解いただきたい。それを変えられるのはやっぱり、サイエンスの分野からの意見だと私は思っていますので、よろしくお願いします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 これからの会合でも今のようなことでいろいろまた意見交換をさせていただきたいと思います。きょうは私の不手際で大変時間が延びましたけれども、これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

-了-

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