第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成19年6月25日(月曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

学術総合センター 2階 中会議場4

3.出席者

委員

 北澤主査、遠藤委員、大泊委員、長我部委員、片岡委員、川合委員、岸委員、小長井委員、竹山委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員、横山委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官、高橋ナノテクノロジー・材料開発推進室長、下岡室長補佐、松下学術調査官 他

4.議事録

【高橋室長】
 それでは、予定の時刻でございます。皆さんおそろいでございますので、ただいまよりナノテクノロジー・材料委員会を開会いたしたいと思います。
 本日は、ナノテクノロジー・材料委員会第4期の第1回に当たりますので、新しくメンバーに加われた方もいらっしゃいます。
 開会に当たりまして、まず本日出席の委員の方を紹介させていただきたいと思います。大変失礼ですが、そちらから順番にご説明します。横山委員でございます。

【横山委員】
 横山です。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 それから樽茶委員でございます。

【樽茶委員】
 樽茶でございます。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 隣、玉尾委員はちょっと遅れておりますが、田中委員でございます。

【田中委員】
 田中でございます。よろしくお願いいたします。

【高橋室長】
 それから、竹山委員でございます。

【竹山委員】
 竹山です。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 それから、小長井委員でございます。

【小長井委員】
 小長井でございます。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 北澤委員。

【北澤委員】
 よろしくお願いします。

【高橋室長】
 それから、岸委員です。

【岸委員】
 よろしくお願いします。

【高橋室長】
 川合委員でございます。

【川合委員】
 川合です。

【高橋室長】
 片岡委員でございます。

【片岡委員】
 片岡です。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 長我部委員です。

【長我部委員】
 長我部でございます。よろしくお願いします。

【高橋室長】
 大泊委員でございます。

【大泊委員】
 大泊です。よろしくお願いいたします。

【高橋室長】
 遠藤委員でございます。

【遠藤委員】
 よろしくお願いします。

【高橋室長】
 それでは本日、開会に当たりまして、研究振興局の徳永局長から、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

【徳永研究振興局長】
 文部科学省の徳永でございます。まず、先生方には、このナノテク・材料委員会の委員をお引き受けいただきましたこと、深くお礼を申し上げたいと思っておりますし、また、本日ご出席賜りましたこと、重ねてお礼申し上げたいと思っております。
 ナノテクノロジー・材料委員会につきましては、もうこの委員会、前回から、あるいは前々回、もっと前からご参加いただいている先生方もたくさんいらっしゃいますので、私のほうからいろいろ申し上げることではないのかもしれませんが、私どもとすれば、大変大きな重要な分野の1つであると認識してこれからも新しい施策、またそのための予算を確保していきたいと思っているわけでございます。
 先生方には、私どもがこの分野での研究政策を展開する上でのさまざまな方向について、ご審議、ご指導いただき、その上で具体的なプロジェクト等の選定にもさまざまかかわっていただき、あるいはまた、特に現在では、きちんとした事後評価ということが大切でございますから、その評価もやっていただくということでございます。具体的な内容はまた後ほど、高橋室長等からご説明いただくことかと思っております。
 特に、最近の状況として申しますのは、非常に科学技術がどんどん進展してきたわけでございますが、少し予算的には昨年あたりから成熟期の傾向が出てまいりまして、成熟期というと言葉はいいわけでございますが、あえて申しますれば、かつてのように飛躍的に伸びないということでございます。
 歳出削減改革というものが、昨年の春に与党の中で決まり、それを受けて閣議決定をされ、また今年度の20年度の経済財政運営方針の中でも再確認されたわけでございます。そういった中で、科学技術については経済成長率の範囲内で予算を伸ばすということが決まっているわけでございますが、ことしの例を申しますと、実際に当初予算で伸びたのは1.1パーセントぐらいで、補正予算も入れてようやく二.数パーセントという経済成長の範囲内になったということでございます。
 ただ、そうは言いましても、ほかの分野の予算は軒並みマイナスでございますから、国全体で歳出が増えているのは、いわば福祉、年金の部分と科学技術だけの分野でございます。そういう意味で、我々は非常に厳しい財政状況の中、その中の税金を投入するという施策については集中と選択、具体的に厳しい評価の上で、そういったものを精査していかなければいけないんだと思っております。
 また同時に、限られた資源というものをより効果的、効率的に使うためにも、従来に増してさまざまな仕組みというものを工夫、考案をし、その中でできる限り、これは特に材料関係、ナノテクノロジー分野は大変広範な分野的な広がりがあるわけで、いろいろなお立場の方がこれにかかわっているわけでございます。そういう中で、できるだけ従来にも増して新しい手法、仕組み、スタイルというものを取り入れて、効率的、効果的に政策を展開していかなければいけないと思っております。
 ぜひ、そういう意味では、先生方にこの委員会の中で十分ご議論賜り、また新しい意見をどんどん出していただいて、私どもの施策推進にご支援賜ればと思っております。どうそよろしくお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、議事を進めたいと思います。
 まず、本委員会の主査の指名についてでございます。本委員会の主査でございますが、運営規則によりまして、研究計画評価分科会の主査が指名することとなっております。分科会の澤岡主査より、北澤委員が既に指名をいただいているところでございます。
 これからの本委員会の進行は北澤先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【北澤主査】
 お集まりいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、始めさせていただきます。
 まず、事務局からお手元の資料の確認をお願いいたします。

【下岡補佐】
 それでは、お手元の資料を確認させていただきます。
 資料1でございますが、本委員会の運営規則の案となっております。
 資料2‐1でございますが、文部科学省におけるナノテクノロジー・材料分野の予算についての資料でございます。
 資料2‐2ございますが、平成19年から開始させていただきましたナノテクノロジー・ネットワークという事業の概要となっております。
 資料2‐3でございますが、ナノテクノロジー支援検討会の報告書になっております。
 資料2‐4でございますが、元素戦略プロジェクトの概要となっております。現在、本プロジェクトについては審査中でございます。
 資料2‐5でございますが、理研の玉尾先生を中心に取りまとめいただきました元素戦略検討会の報告書となっております。
 資料3‐1でございますが、これが研究計画評価分科会に報告しますナノテクノロジー・材料分野の重点事項についての案となっております。
 資料3‐2でございますが、高度多機能チップ/デバイス創製のためのナノ基盤技術の開発という資料となっております。
 資料4‐1でございますが、本委員会における中間評価・事後評価についてでございます。
 資料4‐2ございますが、中間評価の対象となっております。
 資料4‐3でございますが、事後評価の対象となっております。
 資料4‐4でございますが、こちらも事後評価の対象。こちらはナノテクノロジー総合支援プロジェクトについてでございます。後ほど、私のほうから説明させていただきます。
 あとは参考資料となっております。欠落等ありましたら、ご報告お願いします。

【北澤主査】
 それでは、何かありましたらお手を上げていただくことにしまして、今後の議事録の扱いについて、事務局よりご説明お願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、本会議の議事録につきましてご説明申し上げたいと思います。お手元の資料でございますが、資料1をごらんいただきたいと思います。ナノテクノロジー・材料委員会の運営規則でございます。
 こちらの今回改正となりますところは、2ページ目をあけていただきたいと思いますが、第5条というところでございます。こちらにございますとおり、「本委員会の主査又は作業部会の主査は、会議の議事録を作成し、所属の委員等に諮った上で、これを公開するものとする」と。
 2のほうでも、同じように「議事概要」というところが「議事録」と変更されてございます。
 今まで当委員会におきましては、原則としては発言者の方のお名前を議事概要という形では外には出していなかったのでございますが、これからは発言者のお名前を議事録という形で公開させていただくということで、こちらは研究評価の全体、科学技術・学術審議会全体での申し合わせということで、進めさせていただきたいと思います。
 ただし、本件につきましては、運営規則のほうをごらんいただきたいのでございますが、1ページの最後の第4条、「会議の公開」というところでございますが、「委員会等の会議及び会議資料は、次に掲げる場合を除き、公開とする」ということで、逆にこの下で公開としないケースについて列記しているわけでございます。人事に関すること、行政処分に係る案件、また三ということで、前二号に掲げるもののほかということで、個別利害等の案件につきまして、議事を公開しないという扱いとすることができるようになってございます。
 当委員会におきましても、プロジェクトの中間評価でございますとか、事後の評価などにつきまして、個別の利害に関するような事柄を審議する場合につきましては、今までもそうしておりましたけれども、これからも会議につきまして、また議事録等につきまして、非公開という扱いとすることができるような形になってございます。
 ご説明は以上でございます。

【北澤主査】
 ただいまの説明に基づきまして、資料1の運営規則の2番、2ページになるわけですけれども、「議事概要録」となっていますけれども、そこのところを「議事録の作成」と改めて、公開することを原則として、困る場合には非公表とすることができるということになるわけです。これに関しては、この会の趣旨としましては、委員の方には言いたいことを言っていただくというのが一番重要なことですので、実はほかの会議でも議事録を名前を載せると言った途端に、では私は発言いたしませんということで、特にある組織にかかわる方が、ほかの組織のことをコメントするような場合に、非常に微妙なことが起こって、後で事務局がとても怒られたり、これまでもいろいろなことをいたしました。
 そういうことから、公表することが非常に有害であるという場合には、それをやらないことにしたいと思うんですが、その場合には、委員の方から、例えば自分が発言した部分について、委員名を少年Aという感じに、委員○○(まるまる)という形にすれば発言力を残してもいいという場合と、公開される場合には、こういうニュアンスをきちんとしたいと言っていただくということにしまして、その上でできるだけ公開するということでよろしいでしょうか。
 最終的は、委員からお申し出があった場合には、その委員が了解されなければ公開しないと。こちらで勝手には判断しないという原則でよろしいでしょうか。そのかわり、安心して言っていただくということにしたいと思います。
 それで、よろしいでしょうか。その辺が落としどころかなと思うんですけれども。
 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日はまず、19年度からスタートしました施策について、事務局からご報告いただきます。
 その後に、20年度概算要求を目指した施策についてご議論いただきたいと思います。
 最後に、本年度に実施すべき中間評価と事後評価について、その進め方についてご確認いただくということになっております。
 それでは、まず19年度のナノテクノロジー・材料関係の施策について、事務局より説明をお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、ご説明申し上げます。資料でございますが、配付資料の番号で申しますと、資料2‐1、2‐2、2‐3、2‐4、2‐5、この辺を参照していただきたいと思います。
 まず、資料2‐1でございますが、これが19年度のナノテクノロジー・材料分野の予算という全体をまとめたものでございます。最初に、1ページ目でございますが、研究基盤の構築ということでございます。これは、この委員会でもご議論いただきましたナノテクノロジーのネットワーク、ナノテクノロジー総合支援プロジェクトの後継施策となりますが、こちらの予算がございます。それから、研究基盤として重要な国家機関技術の整備といたしまして、X線自由電子レーザーの予算がございます。
 次のページをごらんいただきたいと思いますが、次のページはプロジェクト型の研究をまとめたものでございまして、ここでは19年度は新規に元素戦略のプロジェクトをスタートさせてございます。同時に継続課題も引き続き推進したところです。
 また、リーディング・プロジェクトとしまして、電子顕微鏡の要素技術の研究開発について実施しているところでございます。
 3ページ目は、独立行政法人等におきまして進められているプロジェクトについて整理したものでございます。本日は、特にナノテクノロジー・材料分野で重要な施策ということで、この委員会でもご議論いただきましたナノテクノロジー・ネットワーク事業と、元素戦略の事業につきまして、これから若干詳しくご説明申し上げたいと思います。
 ナノテクノロジー・ネットワークにつきましては、資料2‐2をごらんいただきたいと思っております。これは平成19年度から5年間の予定をもって行われます研究基盤の整備のための事業でございます。
 次の2ページ目をあけていただければと思います。ナノテクノロジー・ネットワークのポイントということでございまして、こちらは18年度まで5年間行われましたナノテクノロジー総合支援の後継施策として、3つの大きなポイントがあるのではないかと考えております。研究施設、設備の共用化によりますナノテク研究環境の整備・確立ということ。そして、日本の全国どこでもナノテクの研究が可能である環境づくりをしていきましょうということでございます。そして、異分野融合・産学融合を進めていくということでございます。
 この大きな目的のもとに、19年度から次の3ページをごらんいただきたいのでございますが、日本地図の上に北は北海道から南は九州まで、19年度からのナノテクノロジー・ネットワークに参画していただいている機関を整理したものでございます。ここの19年度の予算額が18億円ということでございます。
 全体、北から申しますと、北海道では北海道大学と千歳科学技術大学。
 それから東北地区にまいりますと、東北大学。
 関東では、物材機構と東洋大学等が連携した形になってございます。それから、筑波にございます産総研、東京にまいりますと早稲田大学、東京大学、東京工業大学というのが関東地区の参画メンバーでございます。
 名古屋のところでございますが、中部地区ナノテク総合支援ということでございまして、自然科学研究機構の中にあります分子科学研究所を中心にしまして、名古屋大学、名古屋工業大学、それから豊田工業大学と、この4つの機関が連携した拠点という形になってございます。
 関西地区は京都大学。京都大学は北陸と長野の両先端大学とも連携したグループと大阪大学のグループがございます。それから、放射光につきましては、SPring‐8を含めたグループが引き続き入っております。
 中国地方でございますが、広島大学と山口大学のグループがございまして、九州地区は九州大学を中心としたグループという形になってございます。おおよそ大体全国を網羅したような形でネットワークがつくられてございます。
 次の4ページ目をごらんいただきたいのでございますが、こちらのナノテク・材料委員会のメンバーで入っていただいている方も多いのでございますが、ナノテクノロジーのネットワークをこれからさらに効率的に進めていこうということで、このような形で運営委員会というものを立ち上げたいと思っております。
 メンバーでございますが、基本的にはこちらのナノ・材委員会のメンバーの方と、各機関の代表の方に入っていただくということで整理してございます。
 本日、この委員会の後にこの運営委員会も開催して、ナノテクノロジー・ネットワークもキックオフしていこうと考えているところでございます。
 それから、次の資料2‐3でございますけれども、昨年の12月までの5年間に行われましたナノテクノロジー総合支援につきまして、一番後ろの裏表紙という形になりますが、28ページに江刺先生以下、榊先生を主査とした検討委員会の方に集まっていただきまして、ナノテク総合支援の評価と新しいネットワークのあり方についてのご議論をいただいたものを取りまとめたものでございます。
 それでは、続きましてプロジェクト型研究で進めております元素戦略につきまして、ご説明申し上げたいと思います。
 これも昨年、当委員会でご議論いただきまして、元素戦略ということでプロジェクトを進めてきているわけでございます。
 表紙をめくっていただいて、2ページ目でございますが、この元素戦略のコンセプトということで、ピンク色の四角の中に、3つにまとめてございます。元素の持つ特性を深く理解して活用する。物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し、利用する観点からの新しい材料研究ですということでございます。希少元素等の問題についての社会貢献を目指していきますということでございます。
 このような考え方に立ちまして、下の図でございますけれども、さまざまな基礎研究、学問分野の研究成果を社会貢献に結びつけていこうというのが元素戦略のコンセプトでございます。
 次の3ページ目をごらんいただきたいのでございますが、一応、3つの研究の切り口ということで考えてございまして、豊富で無害な元素からなる高機能材料での代替。それから、有効利用、使用料を削減していきましょうということでございます。
 そして、元素有効利用のための実用材料設計技術の開発ということでございます。
 次の4ページ目をごらんいただきたいんですが、希少元素とはどのようなものか、有害元素とはどのようなものが考えられるのかということをここで整理したものでございます。
 特にこの中で、希少元素ということで下線を付してありますタングステン、ディスプロシウム、インジウムにつきましては、経産省のほうでも特に重点的に研究開発を進めようということになっているものでございます。
 それでは、その次の5ページ目をごらんいただきたいんですが、このような考え方に基づきまして、平成19年度から元素戦略の研究プロジェクトを進めるということで、具体的な進行につきまして、5ページ目にまとめてございます。検討会での議論もございましたが、19年3月1日に公募を行いまして、4月16日に公募締め切りということでございます。現在、どういう段階に至っているかと言いますと、先週審査が終わりまして、今、最終的な審査課題の調整を行っているという段階にございます。
 これが、元素戦略のご紹介でございまして、本日、具体的な採択課題等につきまして細かくご説明できればいいんですが、先週の木、金と審査が終わったばかりでございまして、まだそこまでのご説明ができないのでございますが、一応こういう形で進めさせていただいております。
 そして、資料2‐5でございますが、これは元素戦略につきまして、これもこちらの委員会をもとに、玉尾先生以下で検討会という形で検討していただいた内容をまとめたものをつけさせていただきました。
 19年度のナノテクノロジー・材料分野の具体的な施策としては大体以上でございます。

【北澤主査】
 ありがとうございました。それぞれの検討会のほうで、ナノ支援検討会のほうでは、田中委員をはじめ、ここからも委員が出ていただいていますし、元素戦略が玉尾委員ほかが出てくださっていますので、何かありましたら一言加えていただけたらと思いますが、コメントありませんか。

【田中委員】
 ナノテクノロジー・ネットワークはいわゆる世界のナノテクの国家プロジェクトの中で、主要国が直接の研究投資だけではなくて、それに並行して中長期を見据えて連携・融合を促進するために重視している部分なんですね。そういう意味では、第3期の科学技術基本計画の中に、投資の割合といいますか、インフラ、あるいは共用施設といったものをまとめて、投資比率を増やすということが必要であったと思うんです。研究費の総額を言っているんじゃなくて、全体の戦略として見た場合には、そこに少し投資を増やす必要があったのですが、それが結果としてはあんまりうまくいかなかったということであります。
 しかしながら、そういう制限の中で、このネットワークを文科省の中で重視していただいて、経営のやり方、その他も含めてサポートしていただいた、投資を継続していただいたということは、今後のナノテクを考えたときに、大変よかったことではないかと思っています。
 特に日本の場合は、国から来たお金を100パーセント使って、来なくなりますとそこで終わってしまうというところがあるんですが、この種のネットワークというのは継続性が必要でありまして、そういう意味では、それを引き受けた大学法人、あるいは独立行政法人が、みずからトップマネジメントがコミットして少しマッチングファンドを出すとか、課金制度で運営していくということを始めないと、後々の継続性が保てないわけですけれども、そういったことの基礎も文科省のほうでやっていただいたということで、これは総合科学技術会議での投資割合の検討が少しも話せなかったという背景はあるんですが、その環境の中でよくやっていただいたなと考えています。

【北澤主査】
 この支援センターのほうは、日本以外の国々ではナノファウンダリーという形で、非常に大きな何百億円というお金をつけて、ナノの支援が行われたけれども、残念ながら日本はそれができなかった。このことが今後、日本のナノテクノロジーにどういう影響を及ぼしてくるのかというのは、非常に大きな問題点を持っていると思いますので、その点は日本はナノテクが強かった。だけれども、そういうナノファウンダリーでの支援ができなかったということで、日本のナノテクがだめになってしまったのか、その辺は、ぜひこれからよく目を開いていっていただけたらと思うんですが。
 それでは、さらに元素戦略のほうで、何か玉尾委員からつけ加えていただくことはありますか。

【玉尾委員】
 この委員会でお認めいただいて、初めて経産省と一緒になって並行して、同時進行で募集をし、進めようということで実施してまいりました。岸先生にも中心になってやっていただいて、大きなシンポジウムも一緒にやって盛り上げてまいりました。
 実際、文科省に頑張っていただいて、予算はこれに書いてありませんが、4.1億円確保していただきました。それで、文科省関係では50件程度の応募がございました。
 今回はキーテクノロジーということで、企業の参画ということが1つの条件になっていましたので、そういう意味で少し少なかったかもわかりませんが、50件の応募があったというのは、非常に全体としてはいい方向に認知されて、応募があったと思っています。
 先ほどありましたように、先週の木、金にヒアリングを行いました。件数は、ほぼ7件を採択候補として現在のところ選択いたしました。傾向としては、ここに3つの大きな目標を掲げてやっていますが、大体それに沿った形で出てきているとは思います。企業参画ということがありましたので、どうしてもターゲットがかなりはっきりしたものがわかりやすいということもあって、やはりそういう形のものが多く採択候補になっていると思います。そういう意味で、なかなかこういうところには、ケミストリーのほうのかなりベーシックなところが出てきにくいというところが傾向としては出てしまったと言ったほうがいいのかもしれません。
 そういう意味では、今後この元素戦略という戦略を、もう少しベーシックな研究もできるような予算枠も確保し盛り上げていっていただくように、この委員会も含めてぜひ進めていただければと思っております。
 以上でございます。

【北澤主査】
 元素をほかの元素に置きかえていくというタイプの研究と、大事な元素を少なくても機能が高いという形の研究と、これはまだ極秘事項かもしれませんが、どっちのほうが主流なんですか。

【玉尾委員】
 どっちが主流か。置きかえていくということのほうがわかりやすいので、そのようなものがむしろ多いかと思いますね。それと、ものによるんだと思いますが、金属材料のようなものですと、既存の組成のものとも機能を高める手法を新たに提案するというものも出ております。

【北澤主査】
 そうですか。
 ほかの委員の方から、何かご質問がありましたら、1つか2つ。

【玉尾委員】
 これはしばらくこの委員会で、実際に出てきたもの、採択されたものについては報告ということがありますね。

【高橋室長】
 はい。

【玉尾委員】
 またそのときに伺いたいと思います。

【北澤主査】
 そうですか。それでは、よろしいでしょうか。
 それでは、20年度概算要求を目指したテーマについて、これから議論させていただきたいと思います。特に本日は、新しいプロジェクトとして検討されていますナノエレクトロニクスを中心とした課題についてご意見を皆さんからいただきたいと思います。
 それでは、資料に基づきまして、事務局からお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、こちらは資料3‐1、資料3‐2をお手元にごらんいただきたいと思います。
 まず、19年度の説明でもございましたが、20年度につきましても、資料3‐1にございますようなナノテクノロジーにつきましては、研究基盤に関する施策と、プロジェクト型の施策ということの2本柱で進めていきたいと思っております。
 研究基盤につきましては、ナノテクノロジー・ネットワークを引き続きやっていくということと、国家機関技術としてX線自由電子レーザーの利用開発を引き続き推進していくということがございます。
 この下の黄色のプロジェクト型の研究ということでございますが、こちらにつきましては、今、玉尾先生からご発言もありました、元素戦略につきまして引き続き推進していくということもございますけれども、こちらで本年度、20年度に向けましては、ナノエレクトロニクス関係で、新しい領域を現在私どものほうで検討しているところでございます。
 本日は、今、主査からお話がございましたとおり、この新しい領域の考え方につきまして、先生方のご意見をちょうだいすることができたらなと考えてございます。具体的には資料3‐2をごらんいただきたいと思います。こちらが整理した資料でございます。
 こららの青い箱の中にございますとおり、高度多機能なチップ、それから高度多機能なデバイス創製のためのナノの基盤技術の開発ということでございます。
 具体的な中身につきましては、技術的な点も含めて松下調査官のほうから、ご説明申し上げします。

【松下学術調査官】
 学術調査官の松下です。よろしくお願いします。
 資料3‐2をごらんいただきまして、1枚目にはタイトル及びその中で取り扱う、1枚のチップの中に他機能を乗せた多機能集積チップ、右側にありますのは、そのチップの中にと言いますよりも、それらをチップとは別のセンサー等を組み合わせまして多機能な機能を持つデバイスと分けてご説明させていただきます。
 では、2枚目のほうをよろしくお願いいたします。一番上には、先ほど室長のほうからご説明がありました「高度多機能集積チップ/デバイス創製のためのナノ基盤技術開発」と書いてございます。実際の中身としましては、黄色い星印の中にありますけれども、SiCMOSのみではできない機能を実現しようと、そういうものを取り扱いましょうということになります。
 SiCMOSというのは何かと言いますと、半導体の技術の中で、ロジック回路ですとか、メモリに一般的に使われている代表的なデバイスでございます。それは技術的に非常に完成した演算回路ではあるんですけれども、それだけでは発光メモリ、アクチュエーター、センター等の機能は出し切れませんので、それらとCMOSとを組み合わせたものを構築すれば、それは非常に大きな可能性があるし、社会に資するものになるでしょうということです。
 目的の(1)、(2)と書いてありますけれども、(1)のほうが、SiCMOSに他機能の付加して1つのチップに乗せる多機能集積チップ。(2)のほうとしましては、SiCMOSとは別のシステムをつくってやって、それらを組み合わせたデバイスとする。ここは主にMEMSと呼ばれています機械と電気とが結合したようなデバイス等を念頭に置いております。
 そして、研究課題のほうですけれども、こういった多機能チップ、あるいはデバイス等を構築するには、ナノレベルでのプロセス技術が必要になってくるでしょうと。目的とするデバイスに必要となる機能を明確とした上で、それらを発現させていくのに直結するようなプロセス技術を対象としたいということです。
 細かくいきますと、3つありますけれども、1つ目がナノレベルで堆積・加工する技術。それから2つ目が、そういったナノ、あるいはミクロンサイズの構造体を設計・作製するプロセス技術。それから、3つ目が異なる機能を持ったデバイスを張り合わせて、また別のデバイスを構築するというのに必要なナノプロセス技術ということになります。
 これらのプロセス技術を融合、あるいは集積化しまして、当然それらを試行錯誤しながら、最終的に出口として先ほども申し上げました、1つのチップの中に他機能が含まれた多機能集積チップ、それから多機能のデバイスという出口が考えられるでしょうということになります。
 また後で出てきますけれども、多機能集積チップのほうの実際の例としましては、光をそのチップの中に組み合わせて、たくさんの情報量を一遍に取り扱えるようなチップをつくるとか、あるいはそういうチップをつくってやりますと、面積も小さくなりますし、低消費電力化も進めることができるでしょうと。
 多機能デバイスのほうとしましては、人の五感の機能を補うセンサーですとか、あるいは高感度のバイオセンサー、それからバイオ発電を使った電池レス化を目指すということができると思われます。
 左下になりますけれども、ここでは大学の知を主に活用しまして、基盤技術となるようなプロセス技術を開発したいということになりますので、製品レベルの非常に精緻な加工精度は要求されませんけれども、科学的探究心に触発されたような、非常に革新的なものを研究していただきたいと。
 そして、これは1つの特徴になりますけれども、大体その大学にそういう研究をお任せしますと、5年間夢に向かって進んだけれども、その先、出口までなかなかどうやっていくかわからないということが起こりますので、長期的な目標設定、ここでは5年掛ける3年、大体15年前後をめどに、製品化へつながっていくようなロードマップを現段階で描けるようなものを対象としたいということでございます。
 右下になりますけれども、先ほど申し上げたことと重なりますが、ここの対象としては、大学・独法を中心とし、企業とも連携した形としたいということになります。
 3ページ目をお願いいたします。ここにあらわしてありますものは、実際、プロセス技術としてどういったものがそれぞれ多機能集積チップ、あるいはデバイス等で関連してくるかということを並べて書いてありますけれども、左側の多機能集積チップとしましては、できたものが得られる機能としては、大容量データの高速処理。それは3次元の光結合したメモリとかを使った並列処理ということが絡んでくるんですけれども、それとか、小型化、長い駆動時間といった機能も当然期待できるでしょうということになります。応用例としては、重複になりますけれども、大容量画像が取り扱い可能な超小型・超軽量・低消費電力モバイル機器、それから、言語認識・送受信機能を一体化したような自動翻訳システムといったものも考えられると思います。
 一方、多機能デバイスのほうにいきますと、リモート制御されたアクチュエーターですとか、バイオセンサー、それから遠隔操作や長時間駆動といったものが可能になりますと、それをいろいろと組み合わせた上で応用例としては、マイクロ手術・治療ロボットですとか、自立制御インプラント型の人工臓器、あるいは血管内の診断をバイオセンサー等でやるようなものといったものができるかと思います。
 それらをいろいろ構築する上で必要になるものが下に並べて書いてありますけれども、当然、非常に薄い薄膜の成長技術ですとか、あるいはそれらを削っていくリソグラフィ/エッチング技術ですとか、イオンビーム加工についても、リソギラフィ/エッチング技術ほどの微細化はまだできていませんけれども、3次元加工が可能ということでそういったものが出てくるでしょうと。
 それから、バンプレスインターコネクトとありますけれども、これは表面の金属、あるいはセラミックス等の表面の数原子、数十原子層を除去してやって、非常に活性な界面を出してやって、室温で強固に結合できるという技術が開発されつつありますので、そういったものも役に立ってくるでしょうと。
 それから、多機能の集積チップとか、多機能のデバイスをつくるときは、多層化というのも1つのキーワードになってくるかと思いますので、埋め込み配線技術というものも当然必要になってくるということが書いてございます。
 4ページ目をお願いいたします。4ページ目のほうは、多機能チップについて、こういうものが考えられますねということで例を細かく書いてあります。
 次世代情報通信技術を支える超高速・高密度・新機能素子として書いてありますけれども、左側の4段ありますけれども、それぞれの中にメモリとプロセッサと、光通信素子を組み込んだようなものが層状に並んでおりまして、それぞれの層の間を光通信を使ってデータのやりとりをしてやると。こうしてやることによりまして、各メモリが同一のデータを保持できるようになりますので、全体として超高速の並列処理が実現可能になり、例えば非常に大容量な動画像が携帯の中でも自由に取り扱えるようなチップが可能になるのではなかろうかと。ただ、多層化していく中には、当然いろいろとプロセス技術で必要なものが出てまいりまして、十数ナノメートルレベル、あるいはもっと詳細なレベルでの加工精度、それはリソグラフィー/エッチングシステム技術が大事になってきますし、イオンビーム、現在のものはガリウムイオンをぶつけたりしていますので、それによって表面がダメージを受けるというものがあります。こういう繊細なものをつくるには、ダメージがないようなイオンビームの加工技術というものも要求されるのではなかろうかということです。
 それと、光通信素子を面位置をきちんと合わせて並べなきゃいけませんので、CMPとございますのは、ケミカル・メカニカル・ポリッシング、あるいは半導体技術の中ではプラナリゼーションということで、科学的に機械的な研磨の技術でございます。そういったものもより向上させていく必要がありましょうということです。あと、1つのチップにするわけですから、当然それらを取りまとめてパッケージングするといったことも、プロセスの温度等も含めて重要になってきますということです。
 次の5ページ目をお願いいたします。多機能デバイスのほうを念頭に置いて、こういう例が考えられますねというものでございます。安全・安心・快適な生活、あるいは健康に資するようなエレクトロニクス基盤ということですけれども、ここは人の五感の機能を担うセンサーの1つを念頭に置いて絵をかいてみました。
 この中では、いわゆる信号処理を行うICと、実際、センサーユニット、あるいはアクチュエーター等の部分を組み合わせてなるわけですけれども、もともとそれぞれのICですとか、センサーユニットにもいろいろなプロセス技術が必要になります。特にリソグラフィー/エッチング技術ですとか、あるいは非常に薄い膜を成長させるような技術、それから、センサーユニットにも平滑化してやる技術ですとか、イオンビームで加工した技術など、それぞれ重複はしますけれども、いろいろなプロセス技術が必要になります。
 これらをさらに一体化しようとしてやりますと、先ほども出てまいりましたけど、常温で接合させるためのバンプレスインターコネクトですとか、多層化をしてやるための埋め込み配線技術というのも、より精緻なものが求められるようになるでしょうということです。
 今度はそれらを一体化させてできるものとして、重力、傾き、振動、加速度を検知し、平行姿勢を維持するためのセンサーというものが考えられるということです。
 さらに、これらそれぞれのセンサー同士をネットワークして組み合わせた精査ネットワークという概念がございますけれども、そういったことも背景に踏まえながら研究を進めていく必要がありますということが言えるわけです。
 私からの説明は以上になります。

【北澤主査】
 どうもありがとうございました。それでは、この新しいプロジェクトのご提案につきまして、委員の方々のご意見をお願いいたします。

【小長井委員】
 1つ、よろしいでしょうか。

【北澤主査】
 小長井委員。

【小長井委員】
 今まで光エレクトロニクスなどを考えた場合に、まさにこういう方向へ行かなくちゃいけないなと思っていたことが提案されているので、非常にタイムリーな提案だろうなと思います。また、あわせて多機能デバイス、特に超感度バイオセンサー等、微細加工が非常に重要な分野が提案されているので、これもタイムリーだなと思います。
 1つ、これからご注意していっていただきたいのは、ここにかかれている絵というのは非常にわかりやすい応用の絵ではあるんですけれども、それとここで開発すべきナノプロセスとの間がまだギャップが大きいなという感じがします。
 例えば、光素子を使った並列処理のところにしても、ナノレベルで結晶成長する、加工するというのである場合、従来やってきたところとどこを変えなければいけないのか。これは20年、30年にわたって開発してきた非常に長い歴史があるわけですけれども、さらにプラス、加工という観点でどこをターゲットにするのか。そこら辺をもう少し明確にしてもらうと、応募するほうもより応募しやすいんじゃないかなと思います。

【北澤主査】
 これは、例えば大学なんかでは、こういうことに応募できそうな大学はあるんですか。

【小長井委員】
 あると思います。例えば本学でも、4ページの図のようなことをこれから考えていかなくてはいけないと思っておりまして、まさにシリコンの上にいろいろ張り合わせをして、並列処理するということを考えております。ただ、今申し上げたように、この絵自体はそうなんだろうと思うんですけど、これはすごく大きなシステムですから、その中のナノという観点では、結晶成長、加工のところを主にされていると読ませていただきましたので、そことの整合性といいますか、その間にきっといろいろあると思うんですよ。そこら辺も考えていかなくちゃいけないと思うんですけど、企業さんも必ず連携した形でということですから、そこら辺は企業とうまく話し合って、役割分担してやるんじゃないかなと思いますけど、横山さんなんかはよくこういうことを考えておられると思いますけど。

【北澤主査】
 横山委員、何かありますか。

【横山委員】
 意見ですか。

【北澤主査】
 はい。

【横山委員】
 とにかくシリコンの微細化がとまりそうなのはもう目に見えていまして、プラス機能をつけるというのは、確かにその方向はあるんですが、ほんとうに機能をつけてどれぐらいのマーケットがあるんだろうというのを、今いろいろ試行錯誤しているところだと思うんですね。それで、おそらくかなり近いところで大きなマーケットがありそうなものから、それほど大したことないものとか、あるいは将来もしかしたらあるかもしれない、いろいろな分野があると思いますので、そのあたりを整理して、もし経済産業省と分担されるならちょっと分けて、遠くのほうは文科省とか、近いところは経済産業省とか、出口によって精度を考えたらどうかなと思うんですけれども。
 あともう1点よろしいでしょうか。

【北澤主査】
 はい。

【横山委員】
 例のところなんですけれども、例えば4ページの構造なんですけど、これは単にわかりやすい例ということで挙げられたんだと思うんです。この光結合で、メモリの中を共有するというアイデアは、もう10年ぐらい前に小柳先生方が出されて、実際に試作等をされているアイデアなので、もう少しリニューアルしてやられればどうかな。
 例えば、今はむしろメモリとCPUの高速の通信が必要になってきているので、そういったものとか、必ずしも3次元にとらわれなくてもいいかもしれないし、もう少しこの絵を最新のものにかえたらどうかなと感じました。

【北澤主査】
 ありがとうございます。大泊委員、何かありますか。

【大泊委員】
 先ほどもご紹介ありましたけれども、現在のシリコンテクノロジーは、いろいろな意味で限界に近づきつつあって、先日、実は日経新聞にも出ていましたけれども、新しい技術開発に約1,500億かかる。それから、新しいラインをつくるのに数千億、これは従来の3倍ぐらいになっているんですね。これはとても1社でやれる話ではなくて、ようやくここへ来て、半導体メーカーは大学の知をよほどきちんと活用しないとやっていけないと思い始めてくれたという感じがします。ですから、今は非常にいいチャンスだと思うんです。ですから、大学等の知がうまく活用されるようなあり方を構築できれば、きっとうまくいくだろうなと期待しています。
 また、いろいろなご意見の後で、私は申し上げようと思っていますが、基本的には今の課題を分類しますと、先ほどおっしゃった多機能集積チップは、いわゆるムーアの法則をそのままもう少し延長しようという方向だと思われます。これについては、クレスト等でも渡辺プロジェクトと、ことしからスタートするいいご提案がありまして、実は私は審査員で29件の書面審査をしましたけれども、なかなかいい提案もあったし、それに全くはまらない、つまりX印をつける、評価の対象外というのがあって、その中にも非常にいいのがあったんですね。
 2番目のご説明にあった、多機能デバイスのほうでは、多分これはモア・ザン・ムーアという、ムーアの法則から出て、シリコンテクノロジーの外側で新しい機能化ができないかという流れで、その流れに沿うようないい提案。例えば、シリコンの多面体を使った新材料をつかったシステムをつくるとか、グラフェンシートを使ったトランジスタ、ロジックだとかという、いろいろな画期的な提案がありまして、そういうことをきちんと分類、整理した上でシステムをつくるのがいいのかなという気がしております。
 とりあえずそんな感じ。

【北澤主査】
 はい、川合委員、お願いします。

【川合委員】
 3ページ目の多機能集積チップと多機能デバイスの言葉の問題なんですが、下にあるCMOSに多機能を付加するというのと、CMOSとは別のというのは、これはすごくわかりやすいと思うんですが、名前のほうが多機能集積チップと、多機能デバイスのそれに1対1に対応していないような感じで、わかりにくいかなという気がしています。
 どちらも重要なんですが、左のほうはとにかくCMOSをベースにして、できない機能は追加するといっている。題名もそちらにしたほうがわかりやすいかなと思うんですけれども。
 2番目のほうは、CMOSとは別の、MEMSとか、NEMSとか、アクチュエーターを入れるとか、そういう違いがあるので、多機能集積チップと、多機能デバイスが今のに対応しているかどうか、ちょっとわかりにくいから、そこはもう少し考える余地があるかなと。
 いずれも重要なわけですが、例えば左側も異種機能材料を成長するときに、どんなものかというイメージがもう少しはっきりしたほうがいいかなと思うんです。多分、有機物とか酸化物とか、場合によってはカルコゲナイドとか、そういったものじゃないかと。それぞれによってリソグラフィーの程度も、現状随分違うので、そういう意味でもう少しイメージをわかりやすくしたほうがいい提案になるのかなと思っています。
 そういう中で、さっき横山さんもおっしゃったようにかなり距離があるのと、それから市場と、この場合はそこら辺に何か示したほうが……。そうしないと、言葉は悪いんですが、くそみそ一緒という感じのがわっと出てくるような感じがするので、そこのところは整理する必要があるかなと思っています。

【北澤主査】
 最後のは、3ページの「シリコン等の基板上に異種機能材料を成長」という、この「異種」というところですね。

【川合委員】
 そうですね。それを例えば有機物とか、酸化物とか、カルコゲナイド、ある程度代表的な、なおかつ非常にチャレンジングなものというのを挙げるとわかりやすいかな。

【北澤主査】
 ほかにいかがでしょうか。片岡委員、お願いします。

【片岡委員】
 やはり3ページ、チップとデバイスが並んでいて、どちらも非常に重要だと思いますし、デバイスに関しては、出口がわりとバイオにずっとシフトしている。ですから、こういう多機能デバイスの出口として、バイオとか医療関係というのは非常に魅力的だと思うんですけれども、左側の非常に具体的な表現に対して、右側の表現というのはかなりあいまいというか、ある意味では漠然としているような印象がある。例えば、手術ロボットというのは既にありますし、ある程度バイオセンサーもあるわけです。ですから、こういうものをつくることによって、今までのそういうものではできない何ができるのかという具体的な応用例を書いておいたほうが、より説得力があるのかなという。

【北澤主査】
 例えば、バイオセンサーなんかはどういう書き方がありますかね。

【片岡委員】
 例えば、血管内診断といってもいろいろありますから、これがほんとうに必要なときに必要な場所で、必要な多項目診断ができるとか、あるいはインプラントにすることによって、何か治療効果の確認が非常に迅速かつ正確にできるとか、これも思いつきですけれども、何かこれをつくるとすごいなという応用例が出ていると、説得力があるかなという気がしました。

【北澤主査】
 ほかに何か。遠藤委員。

【遠藤委員】
 ここの3ページなんですけど、20から30ナノメートルレベルの加工精度というのは、今、ナノサイズで30ナノというのはある程度めどがつきつつある分野なんですね。さっき大泊委員がおっしゃっていたけれども、大体この分野になると、お金の投資競争で、大体1社1兆円必要だと言われているんですね。日本の企業でそれだけお金を集められるところがなくて、3社、4社の連合を組まないとだめなんですがなかなかできない。そうなってくると、世界でこのレベルの投資ができる企業というのは、数社しかないんですね。日本にはないんです。そういうところの話を聞くと、一番おびえているのは、それだけ投資をして、あるとき日本あたりからイノベーティブな技術が出て、その投資がむだになるということを一番怖がっているんですね。そういう意味で、このプロジェクトは、むしろそういうイノベーションを期待するというところだと思うんです。
 一番大事なのは、非常にナノ化した半導体チップで問題になっているのは熱なんですね。今のCPUのチップは大体発熱量が100W/cm2(ワット毎平方センチメートル)を超えていますので、これは一節にスペースシャトルのロケットノズルのレベルとほぼ同じと言われているんですね。2010年を超えたところで出てくるCPUというのは、10ギガヘルツのクロックで、大体数百ワット。そうなると、これは電力発電所のリアクターの中と同じエネルギー密度になるんですね。チップの上からいくと、熱的にほぼ不可能なんですね。ですから、熱の発生を伴わないデバイス構造とか素子というのは、今非常に関心が高まっていて、ところが、既存の技術の延長ではできない部分なんですね。ですから、そういう部分にこそ何か発想を生かしていただきたい。
 そうすると、熱という問題の中で、ちょっと言葉が出てこないんですけれども、今、少なくともチップの発展を技術的なところで阻害している一番大きい問題は別ですので、熱問題をどうやって解決するかというものに対するイノベーティブな発想というのも、どこかに具体的にテーマを入れていただくと、かなりターゲットがもう1つ見えてくるように思います。これは1つの提案でございます。

【北澤主査】
 多量の熱発生に対する何とかと、そういう感じですね。

【遠藤委員】
 そうです。熱伝搬とか、あるいは熱を発生しないチップの構造とか、そういうことだと思うんですけれども。

【北澤主査】
 松下さん、書きとめておいてください。

【松下学術調査官】
 はい。

【北澤主査】
 では、長我部委員。

【長我部委員】
 今、遠藤先生が言われたことと似たようなことなんですが、やっぱりEUVにリソがなっていくと、投資的に相当厳しいというのは、我々も相当認識しておりますので、多機能にするか、あるいは縦に積み増すか、いずれにせよかなりイノベーティブなプロセスを入れていかないと、その先はないです。それをやっておかないと、どこの国がやるかもしれないということがございますので、多分左側のほうはCMOSに多機能を付加してチップにするというのは、いくつかシナリオを書けるのはあると思うんですけれども、文科省のプロジェクトですから、少し本質的にプロセスの新しいものとか、そういうチャレンジングなものがあったらいいかなという気がします。
 それからもう1点、そういう意味で2ページ目の左に5年掛ける3年、15年後という感じで製品化というスケールが書いてあるんですが、大体これは、例えば我々の経験でタンタルオキサイドをシリコンのプロセスに入れるとき、ちょうど数えてみると、16年ぐらいかかっていまして、大体1つの材料をやろうとすると、このぐらいかかるのかなということなので、このプロジェクトをスタートしたら、次の5年、10年はどうやって面倒を見ていただけるのかとか、最後の5年は企業なんでしょうけれども、その次の5年とか、その辺の当たりをつけておくというのが必要じゃないかと思うんですけれども。

【北澤主査】
 おそらくおもしろいという見通しがつけば、いろいろ拾い上げられるプロセスはあるとは思いますけどね。

【徳永研究振興局長】
 最近、うちのほうでは、いろいろよく自民党・与党なんかで議論を紹介しているのは、研究のフェーズごとにさまざまな政策手段を投入すると。したがって、1本の政策手段ではなくて、連続的な支援は必要だと思いますが、フェーズごとに適用される政策手段は別々なものだろうと考えております。

【北澤主査】
 おそらく長我部委員が一番心配になるのは、行政側からすると、とにかくシームレスにやりましょうということでやってくださる。ところが、ここの研究グループは、終わりに近づくにつれてものすごい恐怖感に襲われる。それで、みんな散り散りばらばらになってくると。これが実態なんです。だから、ここでどうなるかわからないために困ってしまうという問題が起こっているんだと思うんです。これは我々も今、JSTでも非常に大きな問題で、そこをどう切り抜けるかというのが大きな問題になっていましてあれしていますが。

【徳永研究振興局長】
 そこは、もちろん試験研究独法みたいな、開発法人のほうは別のものとして、大学関係で申し上げれば、いつまでも研究費的なアプローチだけでいいのかという問題がありますから、既に附置研の所長をされている方なんかはお聞きかもしれませんが、私なんかは、逆に言うと、いつまでも研究費の問題じゃないだろうと。研究費の問題がある程度発展していったら、そこでは大学の組織関連を持ち込んでいかなきゃしようがないんじゃないのということもありますから、そこはそこでうちのほうでもっと大きなところで、学術分科会のほうで新しい大学の研究体制みたいな議論もありますから、それはそれで逆に発展した段階ではまた全然別な形での組織をつくっていく。
 同時に、そのことが研究だけではなくて、後継者養成という意味での教育機能もなっていくというようなことで、最近では特に藤木審議官を中心にした脳科学研究なんかの場合は、明確に新しい研究体制の問題とか、脳科学に関する大学院を新しくつくっていくんだといったところまで踏み込んでおりますから、こういう計画・評価分科会の中でも、そこの基本はあれですけど、そこはそこでさまざま大きな発展の中ではいろんなことが考えられる。ただ、逆に今の段階でプロジェクトをそこまで保証しないと着手できないということだとなかなか大変だなということであります。

【北澤主査】
 この辺は確かにまだもうちょっと工夫を要するところでもあるので。
 ほかにいかがですか。

【大泊委員】
 今、局長から研究体制のご発言があったので、それに関して申し上げますと、先ほどちらっと申し上げましたが、多機能デバイスのように、これは多品種少量生産の時代の要請ですよね。実は、半導体メーカーの多くはそれを嫌がるんです。昔の少品種多量生産で大もうけした記憶がまだしっかり残っていまして、なかなか新しい時代に即応していないと。ですから、我々が例えばセンサーネットワーク等をつくろうということを申し上げたときも、なかなか乗ってこないですよ。
 しかし、これから必要なことは、この資料の2ページ目でしたか、大学の知を活用し云々とありますけれども、なかなか大学の知というのを生かしていただけない状況にあると。ですから、ほんとうの意味で産学連携をやらなくちゃいけないフェーズに来ていながら、どちらの意識もそこに至っていないというのが大きな問題だと思います。
 そこで申し上げたいのは、基礎研究から出口までを貫く研究体制というのはできないだろうかと。従来のような拠点方式というのはだめなんじゃないかと思うんですよ。僅差で落ちたところにはもう優秀な人もいるわけだし、通るか通らないかで天国と地獄ですよね。それではこの国は勝てないんじゃないかと思っていまして、むしろ後の資料に出ていましたけれども、マックス・プランクがかなり有力で、ノーベル賞学者を三十数人抱えているという組織ですが、あそこは拠点ごと小さな集団がいるだけなんですよ。全体としてマックス・プランク協会という名前をつくっている。
 そういうことを考えますと、日本の中にプロジェクトごとに一気通貫で基礎から出口までやるような、目ききの存在が前提ですけれども、そういうシステムが要るんじゃないかという気がいたします。ですから、拠点にお金をつけるというやり方はもう通用しないだろうと。基本的に、オールジャパンでないと、この国は外国に勝てないと思います。

【川合委員】
 それに関連してですけれども、多分徳永さんが意見を持っていて、ちょうど先ほど言った大学の附置研なんかの今後の方策としては、拠点というのは1つだけじゃなくて、やっぱりあるところが中心にはなるんだけど、ネットワークという形で、それに重要な研究者同士、もしくは場所同士を結んで一つのものにしていくという、そういう方策が重要だというのは出します。それでよろしいんですよね。

【徳永研究振興局長】
 そういうことで附置研の役割は大きく改正したいと思っていますけれども。

【田中委員】
 体制の問題については、大学だけのネットワークだけではなくて、関係省庁、それから産官学のネットワークをうまくつくる必要があるわけで、そういう意味では、この一、二年は、先ほどの元素戦略の例でも出ましたし、このナノエレクトロニクスもそうですが、少なくとも経産省と文科省は、一応シナリオづくりから同じテーブルに着いて議論を始めるというような画期的なことは始まったわけですよね。これがすぐにうまくいくとは僕は思いませんけれども、しかしながら、それはやらなかった時代に比べると全く違うことがいろいろ起こってくるはずなんです。そこを起点にして、少し大学から外に出た形での拠点づくりといいますか、ネットワークづくりといいますか、そういうことを考えるべきではないかと。
 今、残念ながら日本は、地方政府は赤字財政で苦しんでいますのでなかなか難しいですけれども、本来はもうちょっと地方の、中央政府とのマッチングファンドを考えるとか、大学当局の法人になって、獲得した経営の自由権をうまく使って、大きなプロジェクトをみずから仕掛けて政府からファンドを引っ張り出すとか、そういった動きも多分必要になってくる。そういうことに向けての基本的な動きが今始まったんじゃないかなという気がしているわけです。そういう意味では、向かうところは、オールジャパンで何をすべきかという目標をあまり低劣にしないで、きちんとやっていく必要があるんじゃないかなと思います。
 もう1つそれに付随して重要だと思っているのは、人材の問題なんです。これは私なんかよりも皆さん、多分当事者としてお困りになっていることだろうと思いますけれども、工学部の志願者がものすごく激減している。この間、東北大学の岡田先生に聞きましたら、かつての3分の1になっていると。そういうことと、これは東大の電気・電子が最低点になっちゃったと。駒場から本科は本郷へ行くと。こういう現状と、中国の今猛烈な勢いで伸びている大学の人材、そういうものを比べたときに、我々はここだけで議論をしていていいのだろうかという心配がありますよね。国際的な協力というのはどういうふうにするのか、その場合のIPUをどういうふうにするのかといったことも考えていかないと、お金を入れても人材がいないというのは困ると思うんですよ。これは大学が中心になって、法人として相当に考えていかなきゃいけない問題じゃないかなと思います。

【玉尾委員】
 この連携の件は、今、どんどん進めようというようなご意見をいただいて、大変に心強く思っています。2年ぐらい前ですか、理化学研究所も含め、附置研の幾つかが一体となって、機関連携で物質科学の基盤的な機構をつくりたいというようなことで予算の獲得を目指したりしたんですが、なかなかうまくいきませんでした。そのとき、機関化も含め、基礎基盤化、そういうことで大分私たち、両方でお願いし、闘ってきたんですけれども、あのときにはなかなかそういう仕組みがありませんでした。今、田中先生も言われたとおり、大学、附置研だけではなくて、もっと広く機関連携でやっていくという仕組みをぜひ導入していただきたいと思っています。
 それともう1つ、先ほどの長期プロジェクトのような形の5年、5年で切れてしまわないかというようなことで、長期プロジェクトのこともぜひ実現できるような仕組みを導入していただければと思います。今はまだ長期プロジェクトの仕組みというのがどこにもないですよね。これは環境基盤部会のほうでも大分やりましたよね。だから、ぜひ長期プロジェクトの導入の仕組みと、機関連携のようなものをうまく組み込めると非常にオールジャパンでうまくいくようになるのではないかと。難しいんですか。

【徳永研究振興局長】
 先生、基本的に公財政支出ですから、プロジェクト資金ですから、5年という今、第3期科学技術基本計画のスパンぐらいがいいところで、逆に科学技術基本計画ごとに新しい意思決定をするわけですから、それを超えて行うということ自体、今ここで決めても5年後には法的に言うと10年後待ち。
 逆に言うと、そういうことをこれまで長期プロジェクトというふうに、プロジェクトと組織というものを峻別で考えるからそういうことになるわけで、逆に理化学研究所に脳研究センターをつくったということは、組織をつくるということは、いわば中期計画の期間を超えてものをするという。従来、日本でも5年や10年で終わらないものをやっていくためには、多分組織をつくってきたわけです。ですから、あまり研究経費だけのプロジェクトで15年も何とかということではなく、もうちょっとそこはいろんな仕組み、組織という概念も踏まえて考えていかなきゃいけないので。研究事業だけで15年保証してくれと言われても、多分それは我が国の議会制民主主義では無理だと思います。

【玉尾委員】
 プロジェクトだけでという意味でね。もう1つ、だからおそらく連携の機構のようなものが1つのやり方のように思いますね。

【藤木大臣官房審議官】
 今、長期のプロジェクトの話が出ましたけれども、今、局長から話が出ましたように、脳センターというのはもともとプロジェクトだったんです。

【玉尾委員】
 あ、理研の。

【藤木大臣官房審議官】
 脳科学研究プロジェクトというプロジェクトだったんですけれども、そのために20年近くを見渡した計画が必要と。そのために、あれはパーマネントの職は1つもありませんから、全部流動性で人をこれぐらいの規模で集めてというプロジェクトを考えたときに、やはり組織的なものが要るだろうという発想でああいうセンターが今存在しているわけで、10年たったわけです。だから、プロジェクトの中身によって、5年で一定の成果が期待されるものと、20年ぐらい見通してやっていくものというプロジェクトがあって、20年近くやるものは必然的に組織的なものを考えないで対応はできないという考え方なんです。
 玉尾先生は理化学研究所ですけれども、理化学研究所のセンターというのは、ある意味ですべてそういう考え方に立っていますから、組織としてつくられたものではなくて、ああいうのはすべてプロジェクトだというふうに見ていただいたほうが、ほんとうの性格をあらわしていると私は思っていますし、そういう意味で、ああいうところにパーマネントの職員は今、全くつけていないという考え方なんです。
 だから、今ここで長期の考え方を議論するときも、この研究活動の中身がほんとうに長期という性格のものであれば、長期に対応すべく組織も考えるという順序で物事が進むのではないかと理解していますけれども。

【玉尾委員】
 それでおそらく、今後、一機関にそういう組織をつくっていくというのがますます難しくなるんじゃないかなと。それで連携という形の組織づくりというのも1つのやり方ではないかなというふうに思います。

【藤木大臣官房審議官】
 そこで先ほど川合先生からありましたように、ネットワーク型の拠点というのがまさにそういう考え方に対応して出てきている考え方だと思うんです。

【玉尾委員】
 そう思います。

【川合委員】
 ただし、1つだけ気になるのは、僕は、やっぱりお役人はしょせん理解できないなということは非常によく感じます。つまり、サイエンスは5年、10年、15年とほんとうにかかっていくというのを、体験的にはお役人はわからないんですよ。だから僕は、言ってもむだじゃないかなと思っています。
 それで、やはりここはさっき言ったように、わかりやすく組織という形にして何とか存続させるとか、それからほんとうに大事なものというのはコミュニティーで、シリコンのこんなのは非常に大事ですから、そういう声でうまく長期的に行くような工夫をしないと、役人に任せても絶対無理です。

【北澤主査】
 この点では、片岡委員が今まさにその苦労をしておられるんじゃないかと私は思うんですが、片岡委員の場合には、ああいう大きな施設というか、組織というか、そういうものを今東大の中でつくりつつありますね。

【片岡委員】
 はい。

【北澤主査】
 それは、研究プロジェクトでサポートされていますね。それで5年たったときに自殺しないで済むかどうという、そういうことについて僕は、これは結構大変なことをわりとうまくやっておられる典型例じゃないかと思うんですが、その辺の点で今の皆さんのコメントに対して何かありますか。

【片岡委員】
 率直に言うと、そこまで考える余裕がなくやっているというのが今のところなんですけれども。確かに、拠点というのが、まず英語だとセンターということになるんだと思いますけれども、いろんな考え方があると思うんですね。ネットワーク型にするのか。それから、アメリカの場合にはどっちかというと、マッチングファンド方式といいますか、ですから例えば、カリフォルニア大学で今度カリフォルニア・ナノシステム・インスティチュートという非常に大きな研究所が立ち上がりますけれども、これは州の政府が半分出して、基本的にはそこのインフラストラクチャーと一部の雇用を保証して、研究資金は国が外から取ってくるというやり方です。
 多分、今度の世界拠点というのも、今文科省でやっているそういう形なんだと思います。ですから、そういう点では、先ほど審議官もおっしゃったように、ある意味ではパーマネントではないという1つの緊張感があるので、これはやはりある意味では必要なんだろうと思います。
 だから、以前のように組織が硬直していて、そこにプロジェクトを10年もつけると、多分同じメンバーでずっとやることになるので、これはやはりだんだんマンネリ化するんですけれども、逆に人が動くという仕組みがほんとうに日本の中でどんどんできてくれば、基本的にはプロジェクトがあって、組織があって、そこの人が常に入れかわっているという形でやっていただくと存続できるのではないかと。だから、ちょうどその過渡期のような気がします。
 我々の場合には、どちらかというと、まず物材機構と産総研というのが入っていますけれども、ナノバイオという分野をどうやってつくろうかというときに、1つの考え方は、やはり今あるものをより強くするというプロジェクト、それからもう1つは、異分野へ入っていくときに、特に若手の人が何かをやろうとするときに何が必要かというと、やはりいい共同研究者といい場所と設備が必要だと。そうすると、例えば全然違う半導体をやっている人がバイオの研究をやろうとしたときに、すぐにそこにアクセスできるかというと、なかなか難しいと。だから、そういう枠をつくる必要があるし。そうなると、やはり近いところにいるというのは非常に大きなメリットです。例えば、学生のやり手の人を採るということ。ただ、それがまずは第一段階だろうと思うんです。
 次が、そういう開かれたプロジェクトと組織が一体化した拠点ができてきたら、今度は拠点間でネットワークをつくって、それでオールジャパンといいますか、そういう形で広げていくというふうな形になるんじゃないかなと思います。だから、あまりお答えになっていないですけれども、これからあと5年間という中でどこまで行けるかというのは、我々自身、まだ回答を持っていないというのが正直なところですけれども、まずそういうプラント部分をつくって、次はネットワーク化をして、それでこういうナノバイオの分野で日本というのが一定のプレゼンスといいますか、そういうふうになればいいなと思うんですが。

【北澤主査】
 片岡先生のところは、私も実は見に行かせていただいたんですが、大変なことをやっておられるなとすごく思いまして、5年たってそれで評価がよくて、しかし途切れるというようなことになると、とっても大きな損失があるということがよくわかったんですけれども。その意味でほとんど皆さんは、ここに来ておられる委員のような方はそういう問題をいつも抱えておられて、やはりプロジェクトが終わる1年前ぐらいの評価によって、その後を考えられるような新しいシステムをきちっとつくっていかないと、なかなかうまくいかないんじゃないかなと。さっき大泊委員が言われたこともかかわるかと思うんですけど。
 そうでないと、結局はあとは確率的に、7つも8つもお金をもらっていて、それを確率的につないでいくというのがもう1つのやり方なんですけれども、実は昔はそれをやっていたんです。細かい科研費をたくさんもらって、数で平均に達するということを多くの研究室でやっていたわけですけれども、今はなかなかそれが難しくなってきました。そうなりますと、当たるも八卦当たらぬも八卦で、どんと終わったらその後というのがとても大変と。
 この辺もファンディングエージェンシーである私のところも、これは大きな課題として、1年前審査で次のプロジェクトへつなげる新制度というのを考えなくちゃいけないなと思っています。それは、その前にやってきたプロジェクトに応じてうまくできるようにしておいたほうがいいのかなと思いますけど。この辺、遠藤委員も大変な思いをしておられると思いますけれども、何かコメントありますか。

【遠藤委員】
 僕たちは、日本国内の企業といろいろ連携をして、基礎科学の成果をそういう企業にトランスファーして、そういうところから資金運用といいますか、それで5年後とかプロジェクトが終わった後につないでいきたいというのをすごく、民間企業にも活力を使ってほしいと思っているんです。これが一番確実で、2年目ぐらいから成果が出だすんです。ですから、これは1つの点で、だだ、そこで問題なのは、中国とか韓国からぜひ我が国のと依頼が来るんですけれども、逆に中国あたりの企業と手を結んで、日本の先端技術がそういう国々へリークしていってしまうんじゃないかと。そういうことについてあまり快く思わない部分もあると思うんです。そうすると、ちょっとその辺考えないといけないなと。
 実は、ヨーロッパ、EUというのは、かつてフランスもドイツも犬猿の仲でしたけれども、最近すごく仲がいいんです。科学というのは共同作業が非常にやりやすい分野なんです。それで、国を超えて共同研究、例えばスリーカントリーのコラボレーションとか、EU全体のコラボレーションをやって、これが任意の融合化というのにものすごく役立っているんです。
 そうすると、例えばスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、フランス、ドイツ、これが連携を組んでいるんですよ。それで、一気に人々の友好が深まっているんです。そういうプロジェクトがほんとうは文科省さんが、安倍総理が中国へ行って日中の科学技術交流を深めましょうということをおっしゃっているんですけれども、一方で米国あたりが中国に先端技術を云々ということがあると、なかなか先端技術の分野でうまい連携がとりにくいんです。
 しかし、ほんとうの意味でのアジアのリーダーを創出するには、やっぱり科学の分野で連携して、その成果がアジアの国々に反映されていくことが友好促進という意味で一番近道だと思うんです。ですから、そういう2つの側面をどうやってバランスをとって、かつアジアの中で日本がリーダーシップがとれるかというのは、文科省あたりがしっかり方針を出していただけると、我々は非常に対応しやすいんです。ぜひアジアの時代を見据えた、日本がアジアのリーダーシップたる科学技術政策、こういうものを出していただいて、そしてこの辺である意味での基礎科学でしっかりした連携のプログラムを提案しながらやるという、そういう何か構図がはっきり国として打ち出していただけると非常にやりやすい。
 それで、我々も韓国、中国あるいはタイ、インド、非常にたくさんの要求が来るんですけれども、その前にどこまで対応していいのかというのが若干ジレンマを感じてはいるんです。ただ、時代が、日本の国内企業だけを相手にする時代はもう終わっていますので、そういったアジア全域に連携の枠を広げていくというのは1つの方向だとは思うんですけれども、一方でジレンマがあるということで、ぜひそういうところも何か方針をお示しいただけたらありがたいと思っています。

【北澤主査】
 大泊委員、何かもう一言ありますか。

【大泊委員】
 これは、もともと今の議論は、次のナノエレクトロニクスをどうするかというお話ですよね。それで、多分財務省が相手にいろんな企業の輸出があると思うんですが、3ページを拝見して、特に右側の多機能デバイスのところのキーワードは、先ほどもどなたかご指摘がありましたけれども、なかなかこの話につながらないと思うんです。実は、センサーとCMOSをつなげるというだけでも、技術的には相当難しい。
 それからもう1つは、昔、スタンフォード大の西教授が言った資料で、2000年代には周期表の45元素が扱われる。昔は、17ぐらいでよかったんです。材料が入ってくると、先ほど長我部さんがおっしゃいましたけれども、とにかく入っただけではたちまちプロセスが変わってきますし、めちゃくちゃたくさんな基礎研究が要るわけで。ですから、そういうことの重要性を理解して、きちんとしたプログラムに仕上げるという視点が要るかなという気がいたします。
 ですから、古い話ですけれども、表面や海面の問題とか、異種材料の混合の例えば活量の問題とか、そういった問題をきちんと理解するような話、それからプロセスの整合性。そういったものをきちんと踏まえて、かつ出口イメージを明快に持っている。それから、企業の大艦巨砲主義を直していただくように働きかけると。絶対直さないとだめです。その辺が具体的な手法かなと思いました。

【北澤主査】
 岸委員から何かありますか。今までの議論で。

【岸委員】
 難しいところですね。皆さんの意見、ほんとうにまともだという気がするんですけれども。プロジェクトを長くするというんですが、例えばなんですけれども、けさ、たまたまハーバードのアシスタント・プロフェッサーの話を聞いていたんですけれども、一銭も給料をもらわないんです。全部自分で稼いだもので、自分の給料まで払っていると。それで17年滞在しているなんて話を聞かされまして、やはりそういう状況が強くするのかなという気もしたのが1つなんですよ。
 そうしたら今度は、昼にEUの人が来て話を聞いていたんですけれども、55ビリオンダラーと言っていましたね。7年間で7兆円使うので、1兆円お金があるので、日本とぜひ一緒にやりたいんだというような話をしていましたね。そして、そのときはプログラムもきちっと組んでいくんだと。だけど、どうせ国際的なことをやっても、そんなにうまくいかないでしょうなんて私はよく言っていたんですけれども、そうじゃなくて、非常に中はうまくいったので、次はアメリカと日本が大ターゲットなんだということでした。
 そういうことからいってほんとうに大事なのは、やはり組織論の前に何をやるか、研究として何をやるかを煮詰めに煮詰めないで、組織論が時々先走るのが今の日本の悪いところで、先端融合プロジェクトとか、そういうシステムが先に走っちゃうと難しい面がありますね。ロケットを上げれば、必ずみんな一緒にやらないと上がらないわけですよ。ですから、そこの持っていき方を少し考えて、やはりこっちのテーマが一番大事なんです。そしてそのときに融合があるんだというふうに持っていかないと。ちょっとシステム論が先走るといけないなと。といって、日本がシステムというか、融合が特別弱いというのは大問題だなという気がしているので、それの組み合わせだと思っています。
 それからもう1つ、ナノと材料の話なんですが、秋に出るらしいしんですが、EUから非常に大きなホワイトペーパーが出ます。ナノと材料の扱いだったんですが、完全にナノテクに推移しています。ナノテク中心の材料という感じに今大きく切りかわろうとしています。材料はどこへ飛んじゃったんだといいますと、構造材料は、ナノ構造材料と読まれているだろうと、タイトルだけ見せてもらったんですけれども、10月か11月に分厚いのが出てくるんですけれども、EUが今そういう意味では非常に戦略的にやってきているのかなという気がしたんです。これは大きいものと。
 それからもう1つは、とことん大きな設備とナノを結びつけていますね。放射光と結びつける。ですから、各省ごとにワーッと項目があって、それはもう今たくさん書いているんですけれども、すべての項目に放射光と中性子線の解析が入ってくるんです。それがおもしろいなと思ったんです。
 それからもう1つは、産業別の項目が非常に明確なんです。自動車とか飛行機とか化学工業とか、そしてナノというような感じで取り扱って、それが大きな章になっているということで、特にわざと出おくれていたように、あまりナノは触らなかったドイツが急激に今移行してきたというのが非常に強い。先週ちょうどドイツへ行っていたんですけれども、非常に強く感じている次第なんです。
 そんなわけで、私の意見も少しはっきりしないんですけれども、やはり研究のターゲットをつくったシステム、融合・統合、それから周りの状況をよく把握という意味で、今EUがこの五、六年では初めてナノで大きく動き出したなという気がしているので、それをちょっとお伝えしておきます。

【北澤主査】
 なるほど。
 藤木審議官、何か意見ありますか。

【藤木大臣官房審議官】
 どうもありがとうございます。先ほど遠藤先生から、アジアとの連携という話をいただきましたので、その点だけ触れさせていただきたいと思います。今回の経済財政諮問会議の骨太方針の中に、従来になかった新しい区分が1つ入っておりまして、これは科学技術外交をしっかりやらなきゃいけないという考え方なんです。今まで科学技術は日本国内でしっかりやって、あと海外とは連携だという考え方はもちろんあったわけですけれども、それが政府の最高方針の中でそういうのをしっかりやれという方針が明確に打ち出されていますので、それに対する何らかの政策がこれから夏にかけて後半はしていかなきゃいけないと、そういう時代にありますから、まさに国際連携をどうしていくかというのは、今政策の大きな課題の1つであると。
 その中で、私ども、これまでやってきましたのは、必ずしもアジアだけではなくて、欧米先進諸国等も含めてどうやっていくかということではあったんですけれども、ただ、やはり科学の進歩の伸び率からすると、中国とか韓国とかの伸び率が非常に大きいというのがあるし、ナノの分野では、この間片岡先生のところでナノバイオの開所式をやったときも、たしか中国の方が来られてお話をされていたような記憶がありますから、この分野では特に中国は大変力を入れているということだろうと思うんです。
 そういったところと連携ができる部分は大いにしていきたい。そういう意味では、特にアジア重視というのは我々よく言っています。言っている一方で、この先端分野ですから、先ほど遠藤先生がおっしゃったように、競争の面も大変強いわけで、これは例の企業秘密みたいなものを大変厳しく管理するようになってきています。学生さんにもそういうことはきちっと守らせなきゃいけないとか、そういうことも大分管理が厳しくなってきていて、そういう面でほんとうに全部さらけ出して協力できる分野というのは、ある意味で先端分野では限られてしまうということは一方であると思います。
 そういう制約はもちろん前提とした上で、しかしお互いにさらけ出すところはさらけ出して一緒になってやろうという考え方は、我々、大いに必要だと思っておりますので、これから夏にかけて科学技術外交という側面ですけれども、特にアジア重視というのも我々は従来から言ってきていることですから、ナノに限りませんけれども、大きな考え方は先生がおっしゃったようなことで大いに共有していると我々も思っています。ナノの分野というのは大変先端ですから、競争の部分をどう考えるかというのは、この委員会でもご議論いただければありがたいなと思います。

【北澤主査】
 科学技術外交ということなんですが、科学技術外交は、ほっとくと何になるかというと、大体感染症とか、きっとそういうのになると思うんですが、私は、ナノってすごく科学技術外交のときにはほんとうはいいと思うんです。例えば、アフリカを考えたときに、アフリカというのはもうどうせヨーロッパに全部やられちゃっているわけですから、その意味で日本が出ていっても、普通の外交をやっていたら、まあ、ヨーロッパには絶対かなわない。それで日本の存在感なんてそんなに出てこないと思うんですけれども、そういうときに、例えばナノだったら日本が強みを持っていて、科学技術的にヘゲモニーが握れる分野というのは絶対に得だと思うんです。
 それで、イグザンプルとして申し上げれば、例えばサハラ砂漠の中でソーラーブリーダーなんていうプロジェクトを推進しようとしている人たちがいます。サハラ砂漠に太陽電池をある量持ち込んで、その太陽電池から出てくるエネルギーだけでサハラ砂漠の砂を使って太陽電池が増殖できるかどうかというような実験を日本の技術で、シリコンをつくるところから太陽電池をつくるところまで、そして発電してその電力でまたさらにつくるという、そこまでを実証してみせるのは、アフリカ人もとっても夢を持って見れるし、日本人にとっても大きなかけだしというような、例えばそういうたぐいのことがあると思うんです。
 それで、例えばナノチューブをどうするかというのを考えたときに、何かそこでの国民に夢を与えながら、それで日本の技術が、あるいは科学がとても生きるというようなことでやれば、ほんとうの科学技術外交になるんじゃないかなと私は思うんです。だから、そういうのもぜひここの委員の方々、そういうきっとおもしろそうなテーマを持っておられると思うので、まだ科学技術外交はあんまりきちんとしたアイデアは出てきていませんよね。これからですよね。

【藤木大臣官房審議官】
 これからです。

【北澤主査】
 おそらくこれからなんですが、この間G8がドイツであって、来年7月には日本でG8ですから、そのころまでにはいろんなアイデアがどんどん出されて、いろんなディスカッションがされると思うんですけれども、遠藤先生なんかはぜひご本体を出していただくというあれがあるんじゃないかなと思いますよね。

【遠藤委員】
 そうですね、ODAでお金だけあげるというのはやめていただいて、やっぱり科学の成果をアジアの諸国に渡していくと。例えば、今自動車会社が考えているのは、ハイブリッド自動車にすごくいい電池を積んでいると、アフリカへ持っていって電気のない地域がいっぱいあるんです。夜にハイブリッド自動車を動かしておくんです。ガソリンは世界中に流通しております。とても静かです。発電して電池で蓄え、夜に家庭でテレビが見れるんです、電気のないところで。冷蔵庫も夜に動かして氷をつくっておくんです、プリウスで。500ワット出るんですよ。そうすると、冷蔵庫、テレビ、インターネット、大体賄えるんです。そして、夜に充電しておきまして、昼間は大体遊びに出たり、うちを離れているので、夜はすごいインフラをつくれるんです。
 そうすると、ハイブリッド自動車というのは、使い方によっては先進国の環境自動車だけじゃなくて、アフリカの奥地に行って非常に有効性を発揮できるんです。ここでできれば、私たちは電動自転車を積んで、アフリカの人たちが昼間、今度はそれでその近くをいろいろ動ける。そうすると、電池つきの自転車もまた非常に意味が文化上あると。
 そういう文化と技術とハイテクとという、こういう組み合わせをするのも、工場があんまり競合しなくて、結果として日本の企業にメリットがフィードバックされるような考え方を、技術というんでしょうか。ただ、ほんとうに安くていい電池というのがまだないんです。そういうものもできているから、そういうテーマも。
 これは鉛電池でやると、現地の人が使えなくなった鉛電池を川の中とかジャングルへ捨ててくるんです。そうすると、これはまたものすごい鉛公害、この中にもうたっていらっしゃいますけど、鉛電池の中に添加剤を入れると電池が2倍長持ちするんです。そうすると、世界中で数百万トンという鉛の使用量が激減できるんです。これも元素代替戦略といろいろ引っかけていくと、科学技術外交で日本の技術や科学は、アジアだけじゃなくて、世界に寄与できると。

【北澤主査】
 日本にも、研究という意味でのインセンティブが日本の研究者にあったほうがいいし、というのはいろんな意味で、今みたいなことを趣意書にいつも持って歩けるような、なんかそういうものがもしあったら、ぜひつくっておいていただけるとおもしろいんじゃないかと思います。特に、ナノの分野は日本が進んでいますから、だから独自性が出せるんじゃないかなと思います。
 ほかに、話はちょっとずれてきたところもあるんですけれども、やっぱりこれはナノテクノロジーの日本の今後の研究開発を話し合う場としては、なかなか得がたい場ですので、つい脱線はしていますけれども、私としては非常におもしろい話が続いているかと思います。
 ほぼ時間が来てしまったんですが、きょうまだご発言いただいていない方もおられますので、樽茶さんと竹山委員と、何か一言ずつお願いした上で、それから小長井委員にも、きょうの平成20年度に向けての話は小長井委員にも非常に関係が深いと思いますので、最後にコメントしていただいて終わろうと思います。

【樽茶委員】
 大体意見が出ているのであまり言うことはないんですけれども、多分プロジェクトの長期化という意味では、川合先生が言われたように、コミュニティーの中でうまく育てていければ、そんなに心配することはないなと思っているんです。この2つのテーマというのは、シリコンのMOSにしろ、ノーシリコンのMOSにしろ、非常に重要なテーマで、ここ10年以上必要なテーマだというのはみんな認識しているので、それぞれの階層に従って、階層というのはどのくらい実用化に近いかという階層に従いまして、最初に採用するときに十分認識がなされていれば、それに沿った評価もできますから、そんなに実用化までひどく遠い成果しか得られていないというような、そういう一律の評価ではなくて、階層に従って評価をしていけばなくなってしまうということはあり得ないと私は思っています。
 もう1つは、独立行政法人と大学と企業の連携というオールジャパンという意味では非常に重要で、大泊先生が言われたように、企業のほうがもうちょっと考えを変えてくれなきゃいけないというのは、もうほんとうにそう思うんですけれども、多分プロジェクトを組むときに産学連携ですると、チームを組むのは簡単なんですが、チームの中でほんとうの連携ができるかというと、非常に難しいです。それぞれのテリトリーがあって、そのギャップがなかなか埋まらないです。
 最初のプロジェクトを採用するときに、こういう基本線に沿ってここまでやってほしいというような、最初に採用するときに方針を決めてしまわないと、チームをつくる段階で概要がいいからといって採用してしまうと、後で直すことができなくなってしまう。一度採用して動き出したものは後で方針変更はできないので、一番最初の採用するときに、こういう基本方針でお互いがかなりのところを譲り合って進めるということを最初に決めないとだめかなと思います。
 最後にお願いしておきたいのは、大学の中でこれに沿って仕事をしていくというときに、学生諸君は非常に重要な戦力になると思うんですけれども、最近心配しているのは、学生にとって研究に対するインセンティブがだんだん薄れていっているような気がします。それは、ポスドクの人とか助教の人というのがそんなにハッピーな生活を送っているようには見えないです。そんなに豊かな将来を抱えているようにはどうも見えないというのがほんとうのところで、大学院に入ったときから就職のことを考え始めるというような状況になっているので、そういう人たちがハッピーな生活を送っているように見えるように、ほんとうにうまくこういう研究が将来につながっていくんだということを強力に教えてあげられるような仕組みというのが、人がどんどん動いていってくれれば非常にいいわけですが、停滞する場合が大学の中では結構ありますので、そういうのをうまく改善する仕組みをどうしてもつくっていってくれないと、あすの人材は育たないのかなと思います。

【北澤主査】
 今、事務局から、もう1つ議題があるのでと言われまして、竹山委員と小長井委員、ちょっと短めにお願いします。すいません。

【竹山委員】
 では、短めに。この分野のいろんな先生方がいろんな考え方でいろいろと進めていらっしゃるところに、やっぱり企業のミッションというのはすごく大きいというように日常から考えておりますけれども、5年間というところで企業さんと一緒にやっていくときに、ものをつくるというのは意外に簡単で、ある程度先に行ったときに、つくりますよと約束したものは何かしら形ができるんですけれども、その先に、実際にそれがほんとうに使えるものなのかというと、ほんとうにそれでマーケットが広がるのかといったときにすごくギャップがあるみたいで、それ以降が進まなくて、その先が頓挫しているという。
 今、ほとんど応用系というのは、デバイスはメディカルのほうに偏重している部分がやっぱりあって、非常に需要度は高いということだけじゃなくて、逆に偏重しても、その先、アプリケーションを使うときに、ほかの厚労省管轄とか、いろんなことがあって、もうクリアできない。だから、一生懸命つくってもだめだと。それで、だんだんそれが企業さんのほうも、やるけど、国からお金をもらっている範囲以外はやれないという話になってしまうところがちょっとあるんです。
 メディカルは重要ですけれども、それだけじゃなくてハードルの高くない例えば環境とか、そういうところも今また新しい分野になってきていて、今までのやり方ではなく、デバイス系をうまく利用した新しい環境ウオッチングなんかが国として求められている部分が大きいと思うんです。ですので、そこら辺のところを少しやりやすいところにもナノテク、ナノバイオ的なところを広げていただくということが、企業がもうちょっと活力を持ってやれるところにあるんじゃないかと。
 それぞれ、ここの場だけで話をして、経産と文科だけで話をして済む話では、どうも最後の出口がないようなことの嘆きをすごく聞くんです。だから、そこら辺のところをちょっと考えた上での全体のつくりということを皆さんにも考えていただきたいというのはございます。

【北澤主査】
 これは非常に大きな宿題になっているんですけれども、いずれ片岡委員にこの辺のところをどう考えられるか、ご意見をお伺いしたいところでありますが。
 じゃあ、小長井委員。

【小長井委員】
 私、東工大に研究戦略室ができてからずっとそこの手伝いをしておりまして、学長が相澤先生になられてからずっとそこに残ったんですよ。ですから、そういう意味では国の科学技術政策をずっと勉強する機会もありまして、きょうはコメントしたいことがいっぱいあったんですけれども、もう時間もないので特にきょうは申し上げませんが、次回からお話ししたいと思います。
 本題のナノ基盤プロセスについて、最後に一言ということですが、結局最初と同じになるんですけれども、多機能集積チップ、多機能デバイスという出口イメージは、一般の国民においては非常にわかりやすい形で絵はかいてあると思います。ただし、そこに行き着く過程のどういう技術を開発したらいいかというのは、この場合はやっぱりまだ非常にわかりにくいし、特に超薄膜結晶成長技術なんて書いてあっても、これは一体何なのと、20年前からやっていることとどこが違ってくるかという、そこのところをもっと明確にして混合すると、非常にいいプログラムになるなというふうに思っております。
 異種機能材料というのも、先生は有機だというふうにおっしゃられて、僕はそれこそインジェムニとか、ああいうのをやるのかなとかいろいろ思っていたんですけれども、そこら辺のことがこのままだとよくわかりませんけど。そこら辺の技術課題も計算していくといいと思います。
 これは、ほんとうにこう書かれていく数行の技術といのは、最初のウォーレンクライの技術なんだうと思うんです。その先はまだ、2ステップに行かないと、出口イメージに近いものは全然できないと思いますから、そういうロードマップですね、15年必要としたら。そういうものをやっておいてもらいたいなと思います。

【北澤主査】
 可能性をつぶさないでおいたほうがいい面もありますね。そのときに有機とオキサイドだけとか言わずに。

【小長井委員】
 ええ、それはもちろんそうですね。

【北澤主査】
 それでいいですね。

【小長井委員】
 私は、いろんな材料があって構わないと思います。

【北澤主査】
 それでは、失礼しました。私がちょっと間違えていたんですけれども、次に、19年度に実施する中間・事後評価の進め方について、事務局よりご説明お願いいたします。

【下岡補佐】
 資料4‐1から4‐4、そして参考資料3をごらんください。ナノテクノロジー・材料委員会における中間評価・事後評価でございますが、参考資料3でございますが、研究計画・評価分科会では、文部科学省の各施策について、事前評価、中間評価、事後評価をすることとしております。本委員会で評価していただいたものは、上の親部会であります研究計画・評価分科会のほうに報告していただくこととなっております。
 資料4‐1をごらんください。本年は中間評価としまして、産学官連携型で2つ、研究拠点形成型として1つ、中間評価をしていただく予定となっております。また、事後評価としまして、平成18年で終了しておりますが、こちらは電子顕微鏡の施策がございますが、3本事後評価をしていただくこととなっております。
 資料4‐2をごらんください。こちらは、今回中間評価をしていただく施策でございますが、産学連携型2つ、NIMSの青野フェローと、井上先生の2つの施策について、そして研究拠点形成型については、東大の片岡先生のプロジェクトについて中間評価をしていただきます。
 資料4‐2の後ろのほうをごらんください。こちらのほうは、別添としまして1‐2ということで、産学官連携型と研究拠点型、それぞれ非常に似てはいるんですけれども、中身が若干変わっております。研究拠点型は、異分野融合ということをちゃんと念頭に置いて研究しているかどうかということを評価の対象にさせていただいておりますので、先生に見ていただきまして、もしコメントがあればこちらのほうまでいただければと思います。
 資料4‐3をごらんください。こちらは事後評価でございますが、リーディング・プロジェクトのほうで進めておりました電子顕微鏡の施策でございます。こちらが評価の対象となりまして、後ろのほうにつけさせていただいております別添でございますが、こちらの様式にのっとって先生方に評価をしていただくこととなります。こちらのほうもコメントがありましたらよろしくお願いします。
 そして最後に、資料4‐4でございますが、こちらはナノテクノロジー総合支援プロジェクトでございますが、平成18年で終了しておりまして、今継続的にナノテクノロジーネットワークという事業に引き継がせていただいております。
 資料2‐3でございますが、こちらのほうにナノテクノロジー支援検討会報告書という形で先生方に取りまとめていただいたものが、昨年の12月に取りまとめられております。この評価につきましては、こちらの報告書について先生方のコメントをいただきまして、そちらを反映する形で親部会のほうに報告していきたいと考えております。
 以上でございます。

【北澤主査】
 評価が矢継ぎ早にいろいろとあるんですけれども、そのやり方について、今ご説明いただきました。きょうの討議すべきことは、その中でどういう項目で評価をし、それを4段階評価するとか、そういったことについて特に問題があればという、そういう議題かと思われますが。委員の方から、ここのところはどうしてもこういうぐあいにというような、そういうことでのご意見はありますでしょうか。
 このあたりは、どうしてもいろいろ性質の違うプロジェクトその他を同じ様式でやりますから、どうしてもある部分は無理が出たりしますけれども、そこは審査員の方にちゃんと読んでいただくということになるかと思います。
 それから、評価がここで特にかわった、ここが心配というような、そういうところはありますか。

【下岡補佐】
 事前に先生方にはごらんいただいているかと思いますので、本日以降のコメントがありましたら、こちらのほうにいただければと思います。特段、今の調整段階ではないものと考えております。

【北澤主査】
 特に今、大きな問題は抱えていませんね。

【下岡補佐】
 はい、大丈夫です。

【北澤主査】
 ここを3ランク評価にしないと困るんじゃないかとか、そういうたぐいの。

【下岡補佐】
 今のところ、そういうものはございません。

【北澤主査】
 わかりました。

【高橋室長】
 ここの一番のポイントは、ちょっとご説明しましたけれども、プロジェクト型の研究と、片岡先生のところの拠点型の研究と、ここは評価の観点を変えないといけないと思いまして。

【北澤主査】
 それで違う様式になっているんですよね。

【高橋室長】
 ええ、それは違う様式になってございます。あとは、基本的にはそれほど問題なく、標準的な形の評価シートで整理させていただいておりますので、特段留意事項はないと思います。
 なお、5年間やってきましたナノテク総合支援については、ご説明申し上げましたけれども、昨年検討会で一応ヒアリングも含めてご議論いただいて報告書をまとめていただきましたので、これはきょう、資料としてお配りしていますけれども、これについての内容は加筆修正というようなコメントをいただきまして、これをもって評価という形にしたいということでございます。

【北澤主査】
 川合委員、何かございますか。

【川合委員】
 別紙1‐2のようなシートがいつもありますよね。これはいつも気になっているんですけれども、このシートを見てみますと、各項目があって、計画の妥当性とかがあるんですけれども、例えば計画の妥当性で、研究開発の目的、目標設定は適切であったかというのを聞いているんですが、これは今ごろ聞かれても困るんじゃないですか。これは選ぶときだったらわかるんですけれども、一応、適切なので選ばれたと思うので。これはいつも思うことなんですけど、中間評価のときは、それにふさわしいやつをもう少し工夫したほうがいいんじゃないかなと思っていますので、ご検討いただければいいと思います。

【北澤主査】
 わかりました。ほかに何かコメントありますか。
 それでは、もしありましたら後で事務局のほうにお知らせいただくことにしまして、これにて議論を終わりにさせていただこうと思いますが、よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議題、すべて終了したことになりますが、どうも失礼しました。
 それでは、事務局から次回のことについて承ります。

【高橋室長】
 それでは、次回の日程についてお知らせ申し上げます。次回は、7月25日の水曜日でございまして、時間は18時から21時でございますけれども、今、最後にご議論いただきました中間評価の対象課題につきましてのヒアリングを行いたいというふうに思いました。また、あわせまして、ナノエレクトロニクス関係でございますが、20年度の施策についてもご議論いただきたいと考えてございます。

【北澤主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは、きょうこれからこの委員の中の半分近くの方が、さらにこの後委員会があるということで、ナノネットの運営委員会、第1回を行いますので、帰ってしまわないように、忘れて帰らないようによろしくお願いいたします。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。

─了─

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研究開発局基礎基盤研究課