第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成20年8月13日(水曜日) 13時~16時

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.出席者

委員

榊主査、井上委員、魚崎委員、潮田委員、遠藤委員、岡野委員、長我部委員、片岡委員、
栗原委員、小長井委員、竹山委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員

文部科学省

磯田研究振興局長、倉持大臣官房審議官、高橋ナノテクノロジー・材料室長、下岡室長補佐 他

4.議事録

【榊主査】  それでは、予定の時刻となりましたので、ナノテクノロジー・材料委員会を開催させて
いただきます。本日、毎回ですけれども、ご多忙のところ、また本来ですと夏休みのところお集まり
いただきまして、まことにありがとうございました。
 
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【高橋室長】  それでは、資料の確認をいたします。

 先生方の机の上には、1枚座席表がございまして、議事次第でございます。本日の議事のもので
ございます。資料でございますが、資料1は、23日の第11回の当委員会の議事録です。

それから、資料2-1の1、それから、2、3、4、5まであると思いますが、これはリーディング・プロジェクト
の事後評価の総合所見の資料でございます。これが資料2-1の1から5までです。続きまして、横組に
なりますけれども、資料2-2、これが1から同じように2、3、4、5までございます。これが先ほどの総合所見
のもとになっておりますリーディング・プロジェクトの事後評価の内容をそれぞれ取りまとめたものでござ
います。

 続きまして、資料3-1、これもまた1という形になっておりますが、3-1も1、2、3と3枚ございます。これは
キーテクノロジーの関係の中間評価の総合所見、これが3枚、資料3-1の1から3までです。
次が、また横組になりまして、資料3-2の1、2、3、これが中間評価の総合所見のもとになっております
それぞれの評価の内容でございます。

 次が資料4-1でございます。これは「X線自由電子レーザー計画中間評価報告書」のポイントをまとめた
ものでございます。そして、中間報告書自体は資料4-2ということでございます。

 続きまして、横組の資料になりますが、資料5-1、平成21年度概算要求(案)の概要ということでござい
ます。それから、資料5-2が研究課題一覧。資料5-3が、ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究
開発。資料5-4が元素戦略。資料5-5が電子顕微鏡の活用。そして、資料5-6が、ナノテクノロジー・
ネットワークの予算の資料でございます。

 配付資料は以上でございます。

【榊主査】 ありがとうございました。もし欠落があれば、ご指摘をいただいて、事務局までお知らせくだ
さい。

 それでは、引き続きまして、前回の議事録の確認をさせていただきます。資料1で既に配られております
けれども、もしも修正の必要があれば、8月20日水曜日まで、事務局までご連絡をお願いいたします。

 早速、議題のほうに入ってまいりたいと思いますが、先ほど事務局からご説明がありましたように、きょう
は皆様のご意見をいただいてまとめたリーディング・プロジェクトの事後評価、それから、キーテクノロジー
の中間評価、それからもう一つ、X線自由電子レーザーの中間評価につきましてご報告をいただくと同じ
に、意見交換をさせていただくというのが、まず前半から中盤にかけての計画であります。それで後半に、
概算要求につきましての現状をお話しいただいて、ご意見をいただくということになっております。
 
 それでは、早速、リーディング・プロジェクトの事後評価にまいりたいと思いますが、その前に何かご発言
があればお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
 
 それでは、皆様にご協力をいただきましたリーディング・プロジェクトの事後評価について取り上げたいと
思います。この結果は、本委員会の親部会が8月29日に開催されまして、この親部会は研究計画・評価
分科会と申しますけれども、そこに報告をすることになっております。そのための資料につきまして、事務
局から10分ほどでご説明をいただきまして、それから皆様にご意見を、10分か15分いただくということで
あります。それでは、阿部調査員のほうからご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【阿部調査員】  それでは、リーディング・プロジェクト事後評価についてご説明申し上げます。資料2-2
の1から5は、委員の先生方に評価シートにご記入いただきました採点とコメントをまとめたものでございま
すこれをベースにいたしまして、資料2-1の1から5に書きました総合所見の案を榊先生のお名前でつくっ
ていただきまして、これを今からご審議いただきたいと思います。時間の制約もございますので、全体評
価について読み上げさせていただきます。

 まず2-1の1、ナノテクノロジーを活用した新しい原理のデバイス開発。これは松下電器の山下主幹研究
員のテーマでございます。全体評価でございますが、半導体プロセスに、世界に先駆けてバイオプロセス
を取り入れたことは十分評価できる。新しいデバイスを提案し、ある程度の原理確立を行った点は評価で
きるが、デバイスとしての完成度は十分ではなかった。一方、ナノプロセスについては、ナノとバイオの融合
領域でのデバイス作成技術の一つの成果を示した。全体の整合性ある展開という点では、改善すべき点も
認められた。タンパク質を利用したことによるメリットが必ずしも明確ではなく、シナジー効果として何か出て
きたか示されるとよかった。バイオデバイスへの応用の道筋が、現段階では不明瞭で、開発されたバイオ
プロセスの使い道が課題である。今後はどのように発展させるか、奈良先端大の施設を有効利用し、応用
を豊かな発想で探索して、実用化を見据えた展開を期待する。これが本テーマに係る全体評価でございま
す。

 続きまして、2件目、2-1の2でございます。ナノテクノロジーを活用した人工臓器の開発。これは物材機
構、立石名誉フェローの研究テーマでございます。全体評価でございますが、ナノテクノロジーを活用した、
主要な人工臓器開発の基盤となる材料開発について優れた成果が得られた。個別課題を超える有機的
連携、共通要素技術の深化、技術移転などについて一層の配慮と綿密な連携活動が求められた。
中間評価で指摘された代表者のリーダーシップによる集中化がやや不十分であった。これがこのテーマ
に係る全体評価でございます。

 続きまして、2-1の3、次世代型燃料電池プロジェクト。これは山梨大学、渡辺センター長のテーマでござ
います。本テーマに係る全体評価でございますが、幅広い内容について、基礎・応用の両面で世界的に評
価の高い研究である。項目間で達成度に凹凸があり、革新的次世代技術の提案には至らなかったものの、
この成果が実用化を視野に入れたNEDOのHIPER-FCプロジェクトに発展した点は評価できるということで
ございます。

 続きまして、4件目、2-1の4でございます。超高感度NMRの開発。これは物材機構、北口グループリー
ダーの研究テーマでございます。全体評価といたしまして、新しい方式での超高感度NMR開発は有意義な
研究であり、科学的には十分成果が上がった。世界最高感度のNMRという所期目標は未達であるが、派
生効果は多く見られる。本方式の既存方式に対する優位性が必ずしも明確に示されなかった。物性実験
に供する装置開発であるにもかかわらず、積極的な実験のアピールが十分にできていない。実際にどの
ような応用分野が拓けてくるかは、今後の研究の展開による。今後はより幅広いユーザーとの共同研究
により、成果の実活用を図ってほしいということでございます。

 最後に、2-1の5、極端紫外(EUV)光源開発等の先進半導体製造技術の実用化。
これは大阪大学、三間センター長のテーマでございます。全体評価といたしましては、明確な目標と推進
課題を設定し、有機的な強い連携体制により確実に成果を挙げた。当初の計画に沿って、次世代露光用
EUV光源の開発と、設計指針を提示し、経産省のプロジェクトに引き継いだ。EUVの将来に期待が持てる
成果を生んだと評価できるということでございます。

 一応、以上、全体評価をご説明申し上げました。個別評価は省略させていただきます。

【榊主査】  ありがとうございました。この5つのプロジェクトにつきまして、今、全体評価を中心にご紹介を
いただきましたけれども、皆さんの個別の項目についての評価を合わせて、上の委員会に報告をすること
になっております。短時間ではちょっと議論するのが難しいかもしれませんが、お手元の資料をごらんいた
だきながらご意見をいただいて、必要に応じて修正などを加えてまいって、29日に報告したいというわけで
あります。

 何なりとご意見をいただければと思いますが、この横書きのほうについては、資料の目標達成度、進捗状
況その他について、A、B、C、Dの皆さんの採点の分布が出ておりまして、それを平均化した点数などもで
きております。それに対して、ここのコメントが記されているような形でありますが、ご意見をいただければ
と思います。

 ちょっと順番は順不同でも結構なんですけれども、できればこの5つについて、個々の1つずつについて、
ちょっとお気づきの点があればお伺いをしたいと思います。必ずしも順番に従う必要はございませんけ
れども、まず、第1の松下の山下さんの新しい原理デバイスの開発につきまして、今、全体評価をご紹介
いただきましたけれども、プロセスとして斬新なのが大変評価できるという反面、デバイスとしては必ずし
も完成度が十分ではないということとか、また、デバイスをこれから応用していく上で、タンパク質を利用
したこと、あるいはバイオに応用するというあたりについて、ポテンシャルはあるにしても、ちょっとまだ明
瞭でないということで、今後の発展を期待したいというようなことかと思いますが、いかがでしょうか。

 これについては、ちょっと名指しであれすると発言しにくいかもしれませんけれども、横山さん、いかがで
しょうか。大体いい形でまとまっているか、少しトーンの修正の必要があるかどうか、少しコメントをいただ

ければと思います。

【横山委員】  今、榊先生がおっしゃられたまとめ方で、特に異論はございません。

【榊主査】  実際に最後のほうで、奈良先端大のほうを活用して、さらに展開を期待するというようなメッ
セージがありますけれども、こういうメッセージは今後の期待ということであるんですけれども、プロジェク
トそのものとしては、ここで1つ区切りになるということで、あとは自助努力でというようなことになるわけで
すね、この辺は。

 どうぞ。

【栗原委員】  私、このヒアリングのときにはいなかったんですけれども、山下先生はわりと近い分野なの
で、このプロセスをつくるところを拝見していて、従来ですと、タンパク質を使って何かこういうきちっとした
ものをつくるということは、ほとんど夢物語みたいなところを、随分実際のデバイスをつくるところまでやられ
て、しかも不純物や何かがあって、それほど耐久性がないというところ、10万回だったか何か、そういう回
数を一応動かされたということで、私はこのお仕事、非常に1つの山を越えさせたお仕事だと思っているの
で、意外と総合点が低かったなと思って拝見していたので、ちょっとコメントさせていただきます。

【榊主査】  なるほど。これはご指摘いただいたように、どちら側から見るかによって非常に成果が高いと
見る見方と、デバイスということを最初の看板にといいますか、目標に掲げたために、それに対する達成度
といいますか、そういうのを比較的厳しい観点で見るという2つの観点があって、どちらから見るかによって、
少し評価が変わってくるかなと思います。

 大事なことは、ナノテクのかなりユニークなものが、次々と夢があるよと言っているんですけれども、実際
に適用してみたときに、どこまでいったのか、それから、どこが残ったのかということがかなり見えてきたと
いう点では、1つの進展かなと思いますけれども。これに関連して、何かご意見ありますでしょうか。いかが
でしょうか。田中先生、お願いします。

【田中委員】  私も、この評価には立ち会っていないんですが、前から彼の仕事は見ているんです。ここ
の評価の中に、「最初に半導体プロセスに、世界に先駆けてバイオプロセスを取り入れたことは十分評価
できる」というふうに入っているので、これはこれでよろしいかと思います。ただ、自己組織化プロセスをこう
いうのに応用するときの特徴といいますか、メリットと限界というものが非常にはっきりとあるはずなんです。
そういったものがはっきりしたのかどうかとか、あるいは、解決するような方法があったのかどうかというの
は、数行で入れられるのであるならば、入れておいていただいたらありがたいなと。
 そのあたりは、自己組織化というものについていろいろな見方がありまして、ほんとうにそれが使えるのか
どうかという厳しい見方をするサイドの意見が常にあるんですね。それに対して、どういうところまでいった
のかというコメントが、書いてあるといいかなと思うんです。あるいは、残された問題はこうであるとか、むし
ろそういう意味合いが強い仕事だと、僕は見ておったんです。これは確かにタイトルはデバイス開発となっ
ていますから、そういう面で見たら厳しい評価かもしれないんですけれども、我々ナノテクノロジーをやって
いる人間は、ボトムアップ型で、そういう自己組織化を、こういうものにどれだけ利用できるかというような
プロセスの新しい試みとしても見ていたところではあるので、そういったことを少し入れられるのであるなら
ば、入れておいていただければありがたいなと思います。

【榊主査】  ありがとうございました。少し事務局とも相談して、考えさせていただきたいと思います。どう
ぞ。

【魚崎委員】  この山下さんのやつは、中間評価のときにもちょっと議論になったのは、彼、CRESTをや
っていて、CRESTでは並べること、こっちではデバイスと、そういう切り分けをしているんだということにな
っていたので、やっぱりここでは全体的に山下先生の研究評価をするということではなくて、このリーディ
ング・プロジェクトとして掲げたことに対してどうするんだということで、中間評価でもそれは言われたこと
だと。最終評価では、逆にそこはあまり言われなかったんですけれども、そこはやっぱりもともと切り分け
て、ここではデバイスだと言っているわけですから、それはやっぱりちゃんとしておかないと、一般論では
ないんだと思うんです。

【榊主査】  ありがとうございます。ほかに何かありますでしょうか。よろしいですか。
おそらく仕事の把握そのものについては、大体皆さん意見が一致しておられて、今後の発展性まで見た
ときに、残された課題を明らかにしたという形で、やっぱりメッセージをはっきりさせて、それをプラスと見
るか残念と見るかは評価が分かれますけれども、何ができて何ができないかということについては課題を
はっきりさせるということで、その観点で、ちょっと一言できれば加えさせていただきたいと思います。あり
がとうございます。 それでは、1つずつやっているとちょっと時間がかかり過ぎるかもしれませんが、続き
まして、人工臓器の開発についてのお話に移ってまいりたいと思います。これについては、先ほどご指摘
のように、全体として評価できると。優れた成果を得られたということですが、有機的な連携というあたり
で、少し不足したかなというのがコメントかと思
います。達成度という観点から見ますと、かなり先ほどよりは高い評価になっているのかなと思います。
いかがでしょうか。何かコメントはありますでしょうか。
 特になければ、少し行って、後でまた全体を振り返ってコメントをいただきたいと思います。

 それから、燃料電池の山梨大学の渡辺先生のほうにつきましても、世界的に燃料電池を学術的にきち
んと研究するという意味では、大変ユニークなプロジェクトが推進されて、領域によって達成度に少しでこ
ぼこがありますが、優れた成果が達成されたということで、NEDOのプロジェクトにつながった点も評価で
きるということでありました。
ブレークスルーとしての大きな革新というよりは、個々の要素技術をきちんと改善していくことによって、全
体として何倍かの性能向上を確保するというストラテジーでいって、その線上で進んだというふうに評価し
ているんですけれども、いかがでしょうか。

 特に追加のコメントがないとすれば、一応この線でということで、後でまたご意見をいただきたいと思いま
す。

 それから、NMRのNIMSのものにつきましては、ユニークなピックアップコイルを開発して、それで今まで
とは違う計測条件で信号がとれるようなことで、ほぼめどがついたわけですけれども、既存方式の最高の
ものと比べると、まだ優位性が決定的には至らなかったと。しかしながら、ユニークな試みとしては評価が
できるということかと思います。ただし、せっかく開発したものが、物性実験も含めてもう少し多様に応用さ
れて、アピールできるとよかったのではないかということで、今後、活用を図ってほしいということをまとめ
ておりますが、いかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。これもまた後でご意見があれば伺いたいと思います。

 それから、その次の最後のものが、大阪大学のEUVの話でありますが、目標を非常に明確に立てて、ス
ズをターゲットにしたユニークな光源をきちんと開発したということで、これもある程度の進展が評価されて、
経済産業省のプロジェクトに引き継がれたということで、EUVの将来に期待が持てる成果を生んだというふ
うに評価できるということです。私も、この技術の国際的な背景その他については、必ずしも理解が十分で
はないので、その辺については必ずしもよく把握できておりませんが、今のガンシン方式の露光という技術
がしばらくはもって、これをさらに乗り越えるところで使うための技術としては、この線上の進展が必要であ
るという認識のもとで、それに沿った成果が達成できたと評価しておりますが、いかがでしょうか。

 この辺について一番お詳しいのは、やっぱり横山委員ですか。集中攻撃みたいになっちゃって申しわけな
いんですけれども。

【横山委員】  経済産業省のプロジェクトと連携して進められて、大変よかったという意見も聞いていまして、
実際に使えるようになればいいなという期待を込めた評価を、私もしました。

【榊主査】  ほかに何かありますでしょうか。よろしいですか。

 これ、非常に微妙な表現が、後々いろいろ影響を及ぼすことがあるので、気がかりな面は、研究者を励
ます意味でも十分かとか、あるいは、非常に大きな問題をはらんでいるのに、少しそれを見落とすような語
感が伝わると、これもちょっとぐあいが悪いところもありますので、少しその辺についてお気づきの点があ
れば、お伺いしたいと思います。

 遠藤先生、電池のことをいろいろお詳しいのであれなんですけれども、燃料電池絡みの話ってどんなふ
うに。

【遠藤委員】  いいんじゃないでしょうか。これはいいお仕事をなさったと思います。

【榊主査】  それでは、後半の話もありますので、とりあえず資料についてはさらにごらんいただいて、あ
とお気づきの点があれば、最後にもう一度ご意見を伺う機会を設けたいと思いますので、とりあえずリー
ディング・プロジェクト側につきましては、概略、原案のとおりで報告をさせていただくと。ただし、山下先生
のものについては、いただいたご意見で、幾分か書き足すようなことを少しさせていただこうと思いますが、
一応そういうことで進めたいと思います。

 それでは、次の案件にまいりまして、キーテクノロジーの研究開発の中間評価であります。この結果につ
いても、研究計画・評価分科会に報告をいたしますので、事務局から資料についてのご説明をお願いいた
します。よろしくお願いいたします。

【阿部調査員】  それでは、説明申し上げます。ただいまのリーディング・プロジェクトと同じように、資料
3-2の1から3に示しますように、この委員会におきまして、評価シートにつけていただきました評点とコメン
トをまとめてございます。この結果及びPD、POからも意見をいただきまして、その結果をまとめたのが資
料3-1の1から3でございます。これにつきましては、全文読み上げさせていただきます。

 まず、資料3-1の1でございます。ナノ環境機能触媒の開発「革新的環境・エネルギー触媒の開発」。こ
れは東大の堂免教授のテーマでございます。

 全体評価。実用化までのタイムスパンが異なる3つの研究課題を、「固体触媒」という共通キーワードで
関係づけ、強い指導性と良好な産学連携により、ターゲットと実施内容を各々明確に設定して推進し、課
題間のシナジー効果も十分に発生している。この結果、進捗は順調であり、中間目標を概ね達成してイン
パクトのある成果を出している。今後とも将来の実用化にもつながる多くの成果が期待される、総合的に
レベルの高い研究であると評価される。触媒について、社会的必要性の高い課題を対象としており、大き
な社会的インパクトが期待される研究である。また、論文の発表数は十分で、オリジナリティの高い成果
が多く出ている。環境・エネルギー触媒分野で世界をリードしているといえ、科学的・技術的価値が高い。
さらに大きな技術的波及効果が見込まれ、成功への期待は大きい。

 2.課題。広範にわたるテーマであり、3つの研究課題が各々独立して連携も統一感もないまま実行され
ているように見えることが懸念される。実用化を念頭に置いたプロジェクト運営を一層推進する必要があ
る。

 3.具体的な対応方策。1.プロジェクトの統一性について。プロジェクトとしての相互連携と統一感に配
慮すべきである。多様な触媒の中からこの3分野が選ばれて研究されている必然性を明らかにし、全体
の共同体制について見直しつつ進めるべきである。メンバー、あるいはグループのミッションやその相互
関係をわかりやすくし、俯瞰的視点からのビジョンに立脚したプロジェクト全体としてのまとまりを念頭に
置いた運営を推進すべきである。プロジェクトの方向性を確認するための全体目標の設定、3分野を融合
するシンポジウムの開催などを行うべきである。

 2.実用化を念頭に置いた研究の運営推進について。最終目標の妥当性を再検討し、実用化に必要十
分で社会にインパクトを与えられる目標を設定し、追求すべきである。過去の研究例の精査も含め、十分
な可能性評価が必要である。また技術の汎用化を図るため、理論的アプローチを一層充実すべきである。
フィージビリティスタディを通じた経済性の評価と適正実験の検討、工業化ロードマップの作成、触媒として
のより安価な物質の探索等を進めるべきである。得られた世界最高レベルの研究成果をベースに基本特
許の出願を進め、さらに戦略的に国内外への特許出願を推進すべきである。

 今後、プロジェクトにおいて研究代表者を中心に具体的に今後の改善方策について議論を行い、プロジ
ェクト推進方針を確立すること。また、PD、POは適切にこの方針の実行を支援すること。

 続きまして、3-1の2でございます。ナノ環境機能触媒の開発「還元的酸素分子の活性化に基づく新しい
環境調和型物質転換」。これは九大・石原教授のテーマでございます。

 1.全体評価。従来のアントラキノン法と理念的に異なり、全く新しい過酸化水素の1ポットプロセスによる
オンサイト製造法の創製を目指す研究であり、実用化されれば大きな波及効果が期待できる。加えて想
定された成果以外にも派生効果が多く生まれている。研究課題をよく絞り込み、各グループが有機的に
連携して着実に成果を挙げ、所期の中間目標を十分達成している。また審査会の評価結果をうまく計画
に反映させて実行し、目標の再設定を行うなど、柔軟に対応している。独創性の高い研究であり、成果・
論文発表は十分なレベルである。基礎的成果は出ており、応用展開が今後の課題であると評価される。
今後の実用化に向けた課題も明確になりつつあり、良好な産学連携体制を背景に、それらの課題が解
決され、実用的なプロセスが創出されることが期待される。

 2.課題。ナノ触媒の機構解明や原理的な理解につながる研究が少ない。特許出願がなく、知財の確
保について今後早急なる対応が望まれる。

 3.具体的な対応方策。1.メカニズムの解明について。なぜPD-AUなのか、なぜ75%PD-25%AUで
ピークを示すのか等、ナノ触媒のメカニズムの詳細解明が必要である。その結果を基に、より高度な触
媒開発の指針を得て、別のより有用な成分系の探索を進めるべきである。ナノレベルでの研究開発の
視点が必要である。ナノテク分野とのより密接な関係を構築し、反応中途の表面分析等、触媒メカニズム
の解明につながる知見の獲得を目指すべきである。提案された計画に沿って、工業化を視野に入れた
基礎から応用までの一貫的研究を推進し、革新的なプロセスを構築するよう期待する。

 2.知的財産戦略の推進について。PD-AU系では特許は取れないのか、再度検討すべきである。もし
取れないならばPD-AU系以外で知的財産を確保できイニシアチブを取れる成分系を探索すべきであろ
う。開発目標と知財化方針とを一体化して、研究開発の後追いでない特許出願を図るべきである。この
観点から知財戦略の再構築が必要である。

 今後、プロジェクトにおいて研究代表者を中心に具体的に今後の改善方策について議論を行い、プロ
ジェクト推進体制を確立すること。また、PD、POは適切にこの方針の実行を支援すること。

 続きまして、3-1の3、組織制御構造体の開発「超高強度軽量移動体を可能にする複層鋼板とTiシー
トの複合構造」。これは東大・小関教授のテーマでございます。

 1.全体評価。将来の軽量で高強度の構造体の実現に大きく貢献でき、温暖化ガス削減の観点からも
重要な技術であり、経済的波及効果が大きい。また、複合化における界面の役割など材料設計からも興
味深い成果が挙げられている。計画変更により目標を絞り込んだ地道な研究の継続により予想以上の
高い成果が得られており、インパクトのある成果、実用化や基礎的な機構の解明への展開、新たなサイ
エンスをも生み出す多くの可能性が期待できる。産学独連携のもと、シミュレーションも含めての基礎研
究の成果を、論文・特許といった具体的な形で結実している。まだ産業化の道筋は見えていないが、実用
化に向けて企業からの引き合いがあるなど、今後産業化に向けた発展が期待される。

 2.課題。新奇な現象、高い成果の有効活用のため、機構の解明、サイエンスの確立を進め、これを材
料設計に活かすべきである。比較的小型のテストピースによって、常識を超える良好な材料力学的なデ
ータが得られたが、大型素材に拡張した場合のデータの信頼性と疲労効果に対する見通しを得ることに
努力すべきである。今後は産業化・実用化を意識し、数値目標を設定して研究開発を行い、同時に知財
確保に注力すべきである。

 3.具体的な対応方策。1.機構の解明について。ナノ界面を制御することにより、マルテンサイトの期待
以上の延性が得られるなど、世界的に見ても十分価値の高い成果が得られている。この成果をさらに活
用するためには、その機構の解明が必須である。波及効果を考えたとき、サイエンスとしての切り込みが
重要なあり、分析的な手法を駆使した解析を進めるべきである。

 2.産業化に向けた取り組みについて。今後の実用化に関して、今までの実績をベースにして、経済性、
安全性、汎用性などの観点から、クリアすべき数値目標を設定すべきである。実用性を有する研究であ
り、知財の確保は必須である。基本特許出願5件及び外国出願は評価できるが、機構の解明と連動して、
さらに基本特許の国内外での確保に努めるべきである。移動体用の軽量材料という観点では炭素系複
合材料などの発展も著しいことから、複層鋼板の優位性の確認・確保が必要である。

 今後、プロジェクトにおいて研究代表者を中心に、具体的に今後の改善方策について議論を行い、プ
ロジェクト推進方針を確立すること。また、PD、POは適切にこの方針の実行を支援すること。

 以上でございます。

【榊主査】  ありがとうございました。このプロジェクトにつきましては、中間評価ですので、今後に向け
て有用なコメントを提供するというのが主目的かと思いますが、全体評価、それから、具体的な方策と
の一貫性ということも点検をする必要があって、私自身もちょっと時間のいろいろ制約で、事務局の方
にご尽力いただきましたけれども、必ずしも十分に詰め切れていないところがありますので、遠慮なくい
ろいろご指摘をいただいて、改善をしてまいりたいと思います。

 これについても、一応第1、第2、第3のそれぞれについて、ちょっと皆さんにごらんいただきながら、
コメントをいただきたいと思います。まず第1は、堂免先生のプロジェクトで、ご記憶のとおり、3つのグル
ープがそれぞれユニークな研究を展開をしているということで、堂免先生のものについては、光触媒を
さまざまな形で材料を工夫したり、あるいは場合によっては電圧をかけたりとか、いろいろな試みをやっ
ておられることも含めまして、学術的には大変活発に進展しているというふうな評価をしていただいたと
思いますが、この3つのプロジェクトの連携その他については、今後、一工夫をしていく必要があるという
のが指摘であったかと思います。

 少し全体評価の表現については、「課題間のシナジー効果も十分に発生している」というような表現を
しているので、後ろの指摘と少しミスマッチがあるかなという感じもしないでもないので、ちょっとこの辺の
表現は、後ほど皆さんのご意見をいただいた上で、微小修正をしたほうがいいかなというような気もして
おりますけれども、それも含めまして、皆さんのご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 ちょっと電気科学の絡みで、魚崎先生、いろいろご意見をいただいたので、少しこの辺のまとめ方につ
いてご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【魚崎委員】  これ、革新的環境エネルギー触媒ということですから、堂免先生のやつは、最終的にどう
いう形になるかは別として、非常にはっきりとした課題なんですけれども、残りの2つについては、どういう
形で環境エネルギーにつながるのか。東大の水野先生のグループは、たしかエポキシをつくるとかという
反応でしたけれども、その反応がどれだけの意義があって、それができたらほんとうに環境へのインパク
トはどうなるんだというふうな辺が、ちょっとわかりにくいのかなと思ったのと、あと一応3つと言っているん
ですが、実は第3のグループはまた2つに分かれていて、単層の硫酸化みたいなやつと、もう一つはゼオ
ライトと。これもその中でもまた2つ、ほぼ独立に進んでいるような形になっているので、単純なグループ
の研究費を単にばらまいたという格好ではなくて、もう少しまとまりというか、説明が、この革新的環境エネ
ルギー触媒の開発という形で統一感がとれるということが、非常に大事だなと思うんです。

 それからもう一つ、ちょっとここは直接関係ないかもしれませんが、パブリケーションは非常に多いとい
うんですけれども、たまたま論文を読む機会があったんですけれども、必ずしもこれが触れられていない
というか、このグラントでやっているということがあまり明確に出ていない論文が、これの中心的成果であ
ると掲げられているのがあって、これはどういうふうになっているのか。科研費なんかだと、積極的に書け
と言っているんですけれども、こういう比較的大きなプロジェクトをやっているにもかかわらず、その姿が
あまり見えていないのではないかなという。ほかのところにも関係あるのかもわかりませんけれども、ちょ
っとそれは論文を見ていて気になったんです。ですから、たくさん論文がグループから出ているけれども、
このプロジェクトから出たのかどうかというのは、レジュメントにも何も入っていなければ、この研究なのか
どうなのかちょっとわからないのではないかという気がしました。

【榊主査】  ありがとうございました。先ほど申し上げましたように、これは中間評価ですから、今後、そう
いう観点でいろいろ点検していただきたいというようなことを含めたメッセージとしては書けるかなと思い
ますので、少しそれも含めてご意見をいただきたいと思います。

 玉尾先生、ここら辺はいかがでしょうか。

【玉尾委員】  魚崎先生おっしゃったとおりでして、1つには、採択時にこの3つの組み合わせに対して、
どういう期待感を込めて採択したかということにもかかわってくると思います。ですから、確かに異質なも
のが3つ入っているということは、どうしてもそこは表面的にそう見えますね。だから、そこのところをうまく、
この前申し上げたのは、固体触媒という形でもって、環境エネルギーという観点を強調しようとする方向
に進めているということではないかということを申し上げましたけれども。だから、今の2つ目に言われた
有機合成のエポキシ化などは、どれほど貢献し得るかというのはなかなか難しいところでもあるとも思い
ます。だから、一体となってどういう方向で進めていくか、指導力をもう少し発揮していただく必要がある
かもしれないという気はいたします。

【榊主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【玉尾委員】  なので、最初に「確かにシナジー効果も十分発生している」というのは、ちょっともう少し、
「さらにシナジー効果を発揮するよう期待したい」とか、そのぐらいであるほうがいいかもしれませんね。
そんな気がします。

【榊主査】  そうですね。私もちょっとこの辺については、少し言葉を改めさせていただきたいと。

【玉尾委員】  ナノの触媒のつくり方を、どこかにならってやっていますとか、その程度でしたね。もう
少し表現はと思いました。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。炭素のことに関しては、遠藤先生もコメントをいただいたような
記憶があるんですが、いかがでしょうか。

【遠藤委員】  そうですね、ですから、個々に見ると非常に成果を出していらっしゃるんです。ある部分
だけ見ると、シナジーも出ていたと思うんですけれども、全体をうまく引っ張っていくという点は、若干疑
問もあったんです。ですから、どなたか書いていらしたんですけれども、何か分野を統合したような大々
的なシンポジウムを、1つの成果を統合するような形でやるということも、もうちょっと中身がわかりやす
くなるのではないかということで、ぜひこれだけの個々の成果をとれば、世界的な成果も出つつあります
ので、そういうことでアピールしていただければ、もう少しミッションが明確になると思います。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

【魚崎委員】  ちょっとよろしいですか。結局、研究費の配分が、このときの使われているお金を見ると、
あるグループだと年に数百万しか行っていないわけです。そうすると、全部で億の金が行っていても、あ
るグループは数百万円しかもらっていないと。シナジー効果で一緒にやれと言われても困るというところ
もあるかもしれないし、その辺がなかなか難しいところではあると思うんですけれども、堂免先生は7割か
8割とっておられて、残りはおつき合い程度のつもりでやっている。けれども、論文は、一応そこのやつを
全部リストアップして、全部たくさん業績出ていますねという話になっていると、ちょっと難しいことになって、
そのウエートをつけて見るなり何なり、数百万ぐらいだったらやめちゃうということもあるのかもしれないし、
その辺の整理が要るのかもしれません。

【榊主査】  少し何と言いましょうか、組織としてのあり方について、もちろんシナジー効果を期待するわ
けですけれども、関与の仕方によっては、今、魚崎先生言われたように、少し整理をするとか、位置づけ
を変えるというようなことも考えられるかもしれません。

 では、この3-1につきましては、大体いただいたご意見で、特に全体評価について、シナジー効果につ
いて、もう一層の努力をしてほしいというような表現の方向に、少し事務局と作業を進めさせていただきた
いと思います。ありがとうございます。

 次に、九州大学の石原先生の3-1の2のほうでありますけれども、これについては、大変フォーカスされ
たもので、しかもPUとAUと3対1で組み合わせると、効率が特異的によくなるというような実験事実を発見
されておられますけれども、これのメカニズムについて、もう少しミクロな観点での考察をぜひしてほしい
ということと、これだけの効果があるとすると、知的財産権のほうでも一工夫してほしいというようなことで、
全く材料の組み合わせ自身はタッチの差でしたが、先行して外国のグループが出しているというようなこ
となので、容易ではない面があるようなんですけれども、それも含めてちょっと考えてほしいというのが皆
さんのご意見であったかと思います。

 これにつきまして、ご意見をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】  さっきのと逆に、すごくフォーカスされて、フォーカスされ過ぎていて、PU-AUありきでずっ
と来て、しかもそれが必ずしも100%オリジナリティじゃないということになって、このコメントとかを見ると、
知的財産権も弱いし、メカニズムも押さえていないということになると、結果はそこそこ出ているけれども、
なかなか深みに欠けるのかなというところがあるので、そこをやっぱりかなりもう一度きちっとやってほし
いというのがあります。結局、何でいいのかわからなかったら、次にどうしても、触媒開発たまたまよかっ
たというだけの話になるとフィードバックもできないし、そういう意味では、ナノテクノロジーにはなっていな
いということになりかねないと思うんですね。

【榊主査】  これはたしか井上先生、金属材料のお立場から、どんなふうになっているのかといろいろ
ご質問されたように記憶しているんですけれども、いかがですか。

【井上委員】  ちょっとそのときの記憶を今思い出しているんですけれども、確かにPU3-AUで電子線
回折も示されていたと思っているんですけれども、そのあたり、ちょっとお尋ねを。オーダー塗装までい
って、それがもしあれであれば、従来の特許を覆すことも可能でしょうし、新しい特許として出し得るとい
うことで、そのあたりを検討してみますというようなお答えだったと思いますので、ぜひそのあたりをウオ
ッチングしていただいて。それが一挙に解決すれば、そういうことで、そういうオーダー塗装をつくるよう
なもの、オーダー、ディスオーダー、変態をとるようなものであれば、ほかの材料の組み合わせも可能
になるんでしょうし、魚崎委員がおっしゃられたような点も一気に解決できる可能性を秘めているんだと
思います。もう一歩か二歩掘り下げると、大きく展開が違ってくる可能性があると思います。

【榊主査】  ありがとうございました。貴重なご意見で、ミクロな理解が進むと、もう一つのブレークスル
ーにつながるというのが、やはり皆さんの期待かと思いますので、ぜひその辺を1つのポイントにして、
今後進めていただくということと、その結果次第では、またもう少し探索の対象を、場合によると少し広
げるなり、分散させるなりということも必要かということで、もうちょっと様子を見ていく必要があるかと思
います。

 ほかにいかがでしょうか。触媒という観点で、玉尾先生、この辺はどうですか。

【玉尾委員】  いや、あまり。あのときに、それとともに議論になっていたのが、コンバージョンが、要す
るに触媒が、過酸化水素の分解も促進してしまうので、そこのところの改良がどうしても必須であるとい
うことがあったと思います。だから、そこのあたり、技術的なことにもなってくるのかもしれませんが。だ
から、そういうサイエンスとともに、技術の開発もということが、もう少し実用的なプロセスが創出される
ことが期待されるんですけれども、しっかりとそこのところの技術を確立する研究も、ぜひ進めてほしい
ということがあるような気がしています。ちょっとこのあたり、そうだったように記憶しておりますが。どう
してもコンバージョンはどこかでとまってしまうんだということでしたね。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。もしあれば、後ほどお伺いするといたしまして、
3番目のほうにまいりたいと思います。

 3番目は、複層鋼板による大変ユニークな機械特性を持った材料の開発ということで、地道な研究の
結果、小さなテストピースに関しては、大変おもしろい成果と、それから、実用上の期待を抱かせる成果
が出ていると位置づけられておりまして、これをさらにミクロなメカニズムをはっきりさせると同時に、ほ
んとうに利用できる技術に、これから進化させていってほしいというようなことがポイントであったかと思
います。これについていかがでしょうか。ご意見いただければと思います。

 金属に関しては、岸先生がおられると非常に心強いんですけれども。田中先生、少しこの辺、ご記憶は。

【田中委員】  いやあ、どうもわかりません。

【榊主査】  そうですか。私、ちょっとよくわかりませんが、鉄の材料というのはほんとうに長い歴史があっ
て、いろいろ調べ上げられているということのようですけれども、こういう形で複層化した場合に、ここまで
従来の常識を超えるような特性が出てくるとは、どうも思っていなかったところがあるんですけれども、マ
クロに見ると、そういうことが出てきていると。それがなぜなのか。それと、今後それをほんとうに利用する
ときに、利用できるのかというようなことについて、検討が要るということです。井上先生、ちょっとこれをど
ういうふうに見ているかを。

【井上委員】  これ、ほんとうは聞きたかったんですけれども、私、ちょっと時間の関係上、この前に退席
させていただいて申しわけなかったです。これは言ってよろしいんですかね、私、これを採択するときの審
査員か何かを務めさせていただいていたんですが、今、ずっと読まさせていただいて、非常に界面効果に
よる延性が出ているといったような新しいデータも得られているということなんですが、審査のときの1つの
ポイントとして、自動車用鋼板的なもので、これはたしか新日鉄も絡んでいるテーマだったと思っております
が、そういう大きな鋼材メーカー、あるいは自動車メーカー、重工も少し絡んでいる会社もおられたのかもし
れないんですけれども……、ああ、潮田先生が。これの基礎研究がどこまで、わりとこういう種の材料は、
少量、あるいは小さなテストピースでいいということがわかったときに、なかなか次のステップには大きな谷
があるというのは、ある意味じゃ、この種の金属材料の宿命的なものもあるんですが、それは機能材料で
あれば比較的特性さえよければバッといくんですけれども、構造材料で、しかもチタンという高級、さらにコ
ストの高いものを含んでいるといったときにどうなるか。それとやはり複合化したときに、延性が出ていると
いうことですから心配ないんだと思いますが、やはり負荷絞りだとか、今の自動車用鋼板的なもの、そうい
う観点での総合評価のあたりがどうなっているのか。

 そのあたりをちょっとお聞きしたかったんですけれども、大変申しわけなかったんですが、このコメントを
読むと、そのことが少しは危惧される可能性があるかもしれない。まだこれからかなり研究期間残っており
ますので、審査のときは、そのあたりも1つのポイントであったと。そのあたりは十分に産業界との連携のも
とで、東京大学、これは横浜国大なんかも関係していたんだと思いますが、そういうような連携のもので克
服していきたいというようなコメントで採択になったと記憶しております。

【榊主査】  ありがとうございます。これについては、潮田委員がメンバーのほうに入っておられているん
ですけれども。

【潮田委員】  その立場なものですから。

【榊主査】  どちらかというと、今回は被評価者という立場よりは、技術的な情報をある面で補っていただ
くというような意味合いで、少しコメントをいただければと思いますが。

【潮田委員】  はい。委員長おっしゃったように、私、当事者だったものですから、審査から外させていた
だきました。ここに総合所見いただいていますが、私たちはこのとおりかなという印象を受けています。先
ほど来話にありますように、構造材に関するプロジェクトというのは、最近非常に少なくなっていると思いま
して、そういう中での非常に貴重なプロジェクトで、社会のインパクトは当然ながら非常に大きいわけですが、
どういう新しさが出るかということが、多分クエスチョンであったんじゃないかなと思うんです。非常に皆さん
の必死な努力といいますか思いで、何とか構造分野で新しいものを生む必要があるということで、こういう
発想のもと取り組んで、当初予想していた以上の強度、延性が出たと。もうちょっと具体的に言いますと、
そのとき出ていますが、通常マルテンサイトと一緒に硬い層は数%しか伸びないんですが、複層化します
とワンオーダー向上したという、そういうジャンプアップの結果が得られたということです。

 ただ、井上先生がまさにおっしゃったように、今後、ここにコメントされているように、工業化というものを
円滑に研究開発を進める必要があるわけですが、こういう複層鋼板を工業的に、現行材と比べてそれほ
ど大きなコストアップなしにつくろうというのは、非常に大きな山があると思います。通常の材料でも実用化
には10年かかりますので、こういう材料ですと、やっぱり20年だとか30年だとか、それぐらい我慢して継続
してやる必要があるんじゃないかなと私自身は思っています。

 そういう背景を踏まえて、やはりプロセスも含めて、あるいは構造材の部材としての総合的なパフォーマ
ンスも含めて、きっちりと将来を見据えた始動原理をちゃんと出すということが、やはり大きな目標、次の
ステップじゃないかなと私は思うんです。いきなり大きなサンプルをつくって強引にトライするというよりも、
やはり着実に進めるほうが、長期的に見れば賢明じゃないかなと。私自身、実行者としての印象でもある
んですが、そのように思っております。

【榊主査】  ありがとうございます。先ほどのAU-PUの話もそうですけれども、材料というのは、実際に
いじってみると予想外のことが非常に出てくると。それが魅力的な機能を持つというところまで現象論とし
てわかるわけですけれども、それのメカニズムといいますか、それをほんとうに理解しない限りは活用で
きないということで、ここでも少しそういう面で、なぜかというようなことをしっかりと押さえていく必要がある
ということだと思います。

 これに関して、ほかにいかがでしょうか。大体よろしいですか。それでは、この3つにつきましては、少し
今いただいたようなご意見で、字句は比較的微小修正になると思いますけれども、それをさせていただ
いてというふうに思います。どうぞ。

【井上委員】  先ほどの2点目の還元的酸素分子の活性化に基づくナノ環境機能、今、PU-AUの特許
がどうこうということで問題になっていますが、これは採択されるときに、この研究グループの方が、この
種の触媒、PU-AUかどうかわからないんですが、オリジナリティを持っておられて、それが評価されて
中心的存在で、これに採択されたという位置づけではないんですかね。そうだったら、先ほどの私、ちょ
っと詳しい背景わからないんですが、これで今とれなくても、そのもとになるオリジナルの特許は、この
先生は持っておられるということにはならないんですか。そうではなくて採択された?

【榊主査】  いや、私、その採択のほうについては……。

【魚崎委員】  玉尾先生もそうでした?

【玉尾委員】  いや、僕は採択のときはいないんですけれども。

【魚崎委員】  私はその審査員だったんですけれども、もともと1件の募集、鉄のほうと一緒に1つだっ
たんですけれども、触媒だから、さっきの堂免先生のやつのお金を減らして次をとりましょうということ
で、パラジウム、過酸化水素なんですけれども、その時点では特許云々というよりは、特許はとれるか
どうかという議論はありませんけれども、新しい、彼らなりのオリジナリティだということで、採択はされ
ているんです。中間評価のときに、特許はどうですかという質問をしたら、タッチの差でイギリスのグル
ープの論文が先んじたので特許にはならないんだという説明を、中間評価のときに受けたということ
です。

【榊主査】  競争相手の人がおられるということですか。

【井上委員】  鉄の場合には4件か5件ほど応募があって、その中でこの鉄の……。

【魚崎委員】  もちろん。

【井上委員】  ですよね。

【魚崎委員】  関係触媒はもっと多かったです。ただ、1件採択するよりは、先ほどの触媒のやつは、
もう少し少なくてもできるでしょうと。科学の場合はどうしてもそんなに大きく要らないということもあって、
その分でもう1件エクストラにとったわけですけれども、そのときの、2番目によかったわけですけれど
も、それは過酸化水素に非常に的を絞って、逆に言えば、金額も1つ目のに比べてかなり少なめにな
っていますから、絞ったやつがいいでしょうと。そのときに、触媒がいいんだということで、そういう説明
で採択はしています。だから、その時点で特許はもちろん出ていなかったんだと思いますけれども、も
ちろん自分たちのところが一番新しいんだということだったと思います。

【榊主査】  大体この中間時点で、この研究を取り巻く状況のほうについては正確に把握できたかな
と。今後残された期間を活用して、どういう形で最大のアウトプットにしていくのかというような意味合い
で、今、皆さんのご意見をいただいたのを研究者にお伝えするというのが、今回の目的だと思います。
一応、ここで書いてあるのを軸に微小修正をして送ろうと思っておりますけれども、後でごらんいただ
いて、もしもお気づきのことがあれば、数日中に事務局のほうにご意見をいただければ、そこにちょっ
と盛り込むこともできるかと思います。29日に報告をする必要があるということで、ぜひご意見をいた
だきたいと思います。 

それでは、この中間評価につきましての議論はここまでとさせていただきたいと思います。ありがとう
ございました。

 3つ目のほうにまいりまして、X線自由電子レーザー作業部会の中間評価につきまして、議論をさせ
ていただきたいと思います。これはご承知のとおり、平成23年の供用開始を目指して建設が進んでお
ります。この有効利用に向けて、当委員会のもとに作業部会を設置して評価を行ってきております。
この作業部会は、東大の雨宮先生が主査をお務めいただいておりまして、今回わざわざご出席いた
だいておりますのでご説明いただいて、それについて議論をさせていただきたいと思います。それで
は、ご説明をお願いいたします。

【雨宮教授】  雨宮です。それでは、資料の4-1、4-2に基づいてご説明させていただきます。

 まず、4-2の中間評価報告書(案)ですが、開いていただきまして、「1.はじめに」というところに背
景が述べられていますが、そのサマリーが資料4-1のところの背景に簡単にまとめてありますので、
そこを復習してから説明させていただきたいと思います。背景の1.の○ですが、X線自由電子レー
ザー(XFEL)計画は、国家基幹技術として、平成18年度から独立行政法人理化学研究所において進
められているプロジェクトである。本計画については、科学技術・学術審議会の事前評価等において、
プロジェクトが開始されてから一定期間が経過した後に、事前評価における指摘事項の反映状況等
について中間評価を行うべきであるとされている。3つ目の○ですが、これを受けて、本年が事前評
価実施後3年目に当たること等から、ナノテクノロジー・材料委員会にX線自由電子レーザー計画評
価作業部会を設置し、計画の進捗状況や事前評価における指摘事項への対応状況を確認するとと
もに、これらの状況を踏まえて、今後のプロジェクト推進のあり方などを示していくという観点から評
価を行ったと。これが今回の中間報告の背景であります。

 この報告書(案)の2ページに戻っていただきまして、中ほどの下のところに、「(評価項目・評価方
法)」について、この委員会でどのように評価したかということが書かれていますので、10行ばかり読
ませていただきます。

 「本作業部会においては、国及び理研が行っている本計画に係る活動全般を評価対象とし、計画
の進捗状況及びこれまでの事前評価等で指摘された事項への対応状況について、「開発」「利用推
進研究」「情報発信」「運用等」の4つの観点から評価項目を整理した。その上で、それぞれの評価項
目について、施設整備の実施者である理研や利用推進研究を推進するために文部科学省に設置さ
れた「X線自由電子レーザー利用推進協議会」(協議会)等から、活動の状況についてヒアリングし、
その状況について評価するとともに、今後の在り方について審議した。

 なお、利用推進研究については、事前評価等の指摘事項を踏まえ、既に協議会において、方針
の策定、課題の公募、選定、評価等が実施されている。このことから、個別の課題の詳細について
評価するのではなく、推進体制や課題選定の考え方等の利用推進研究の実施に係る大枠について
評価を行った」。

 これが評価の枠組みでございます。1ページに戻っていただきますと、評価報告書の目次がありま
すが、「はじめに」の次に、2.開発について、3.利用推進研究について、4.情報発信について、
5.運用等についてと、4つの項目について評価を行いました。まず、この委員会のメンバーと開催で
すが、ページの資料1というところから後ろに参考資料がついておりますが、18ページまでが報告書
のページですが、その後に資料1から資料48までページがありますが、資料2ページを見ていただき
ますと、この評価作業部会の委員の名簿が載っています。私が主査を仰せつかりまして、都合11名
の委員です。ここにいらっしゃる遠藤委員、竹山委員も委員の中に加わっていただいております。

 資料3ページには開催経過が書かれていまして、第1回から第4回まで行いました。第1回は、午前
中2時間に、それぞれの担当者から現状について説明をいただきました。その後、2回、3回、4回と。
2回目は最初から4時間の計画で、2回分を圧縮して行いましたし、3回、4回目も、実は予定では3時
間、2時間となっていますが、実質的には4時間、4時間と、非常に長時間にわたって密に議論をいた
しました。

 そして、次の資料4ページ、5ページに、評価すべき項目のさらに細かい項目がリストされています。
先ほど申し上げたように、開発、利用推進研究、情報発信、運用とそれぞれの項目についてと、さら
にサブ項目として、このような観点の項目で評価いたしました。その後、資料6から後ろのページは、
それぞれ現状について報告していただいたときのパワーポイントのコピーがつけられております。

 3ページに戻っていただきまして、まず、最初の開発についての現状ですが、細かいことはちょっと
時間的に申し上げることはできないので、基本的なところだけ申し上げますと、3ページ、4ページに
わたって実機の設計基本パラメータが書かれています。加速器のパラメータ、アンジュレータのパラ
メータ、レーザーのパラメータです。発生すべきレーザーの波長が最短で0.06ナノ、光子数密度が
1012photons/pulse/ミリ2、パルス長か0.1ps、ビーム径が0.2ミリφ、繰り返し周波数が60Hz、これ
が実機、最終的な目標のXFELの性能であります。建設の進捗状況についての説明がここに書かれ
ていまして、さらに計画の実施体制についての説明が書かれてあります。実機の前に、今つくっている
プロトタイプの仕様が、5ページ、6ページにわたって書かれています。プロトタイプのレーザーは、波
長が50~60ナノの真空紫外のレーザーです。

 この現状報告に基づきまして評価を行いまして、それぞれ加速器、アンジュレータ、利用技術がど
のように進んでいるかということに対する評価が6ページ。それから、開発体制における評価が書か
れております。

 そこのポイントをまとめたものが、資料4-1にありますので、今度はそちらを見ていただきたいと
思います。資料4-1の「2.評価及び今後の在り方の概要」ということですが、開発についてですが、
本計画が開始されて以来、装置の研究開発、実機の製作、関連施設の建設等は順調に進んでいる。
引き続き、これまでの推進体制を維持・強化しつつ、実機製作の段階で重要となる品質管理や設計
変更等に対するリスク管理等を適切に行い、計画を着実に進めていくことを期待する。このための予
算について適切に措置されることも重要であるということです。最後の項目の予算についてですが、
この報告書の中では7ページの真ん中、「今後の在り方」の少し上の段落の最後のところに、「特に本計
画は、国際的な競争の中で進められていることに鑑みて、世界に先駆けて装置を完成することは、成
果創出の観点からも重要であり、こうした点も踏まえ、国が適切な予算措置を講じていくことを期待す
る」という形で、予算についても織り込んでおります。

 あと、今後のあり方についてのコメントがありまして、8ページからは「3.利用推進研究について」です。
これについては、先ほど述べましたように、利用推進協議会というものがありまして、利用推進の方針
策定プロジェクトチーム、そのPDを務めている太田先生、さらに利用推進研究課題選定評価プロジェ
クトチームのPOの下村先生に来て説明をしていただいています。先ほど申し上げました後ろの資料で
いきますと、資料30ページから40ページまでが、利用推進研究における説明の資料となっております。
資料32を開いていただくと、X線自由電子レーザーの利用推進協議会の体制が書かれておりますが、
それぞれの主査、太田主査と下村主査に説明をいただいております。

 本文に戻っていただきまして、8ページの下から3分の1のところに、利用推進研究課題における現状
がまとめられていまして、9ページにいきまして、利用推進研究の進め方ということです。9ページの真ん
中から(2)の評価ということが書かれていまして、10ページからは「(3)今後の在り方」ということで、今
後のあり方について評価を行っています。

 ここに書かれてあることが資料4-1のところに要約していますので、そこを読ませていきますと、利用
推進研究。既に推進体制を整備し、XFELの完成後直ちにインパクトのある成果を創出すべく、必要と
なる要素技術の研究開発が進められており、一定の評価ができる。今後は、より広範な分野の研究者
や理論研究者との連携を図りながら、XFELの持つ大きなポテンシャルを最大限活かすべく、新しい分
野の研究や長期的な観点での研究を推進すべきであり、そのために新たな研究分野の開拓や、長期
的な展望に立った研究を遂行していくべきである。ここが主に評価のポイントであります。

 さらに補足させていただきますと、10ページの下から5行目のところから3行を読ませていただきますと、
「さらに、理研は、装置の開発のみならず、その活用においても、広範な分野の研究者を有する自然科
学の総合研究所として、XFELの新しい利用方策について、率先して検討することが重要である」と。この
意味は、XFELをつくるのは理研で、そしてまたつくられた後は、広く国内外に利用を求めるわけですが、
もちろんそれをオープンにするということと、これは決してバッティングするものではなくて、つくったものが
率先して利用するということとオープンにするということ、その2つのバランスが非常に重要であると。つくっ
たらおしまいという形ではないだろうということであえて、これは閉鎖性を意味しているものではないという
ことをご理解いただきたいと思います。この辺、どういうふうにして文言に盛るのかというのは、委員会でも
いろいろと議論がありまして、読み方によっては理研が全部使うんだという読み方に読み取れるというコメ
ントもあったんですけれども、これは決してそういうことではないと。ポジティブな意味でのコメントであると
いうことを補足させていただきます。

 次が11ページにいきますと、情報発信についてですが、最初に、情報発信の現状をまとめまして、その
後、「評価及び今後の在り方」について簡単にまとめてありますが、それも資料の4-1の1枚紙に戻って
いただきまして、その要約を紹介させていただきますと、情報発信。これまでも積極的に行われていると
ころであり、評価できる。引き続き、XFELの意義や状況をわかりやすく発信していくとともに、プロトタイプ
機の成果等についても発信していくことが産業界も含めた新たなユーザーの開拓という観点からも重要
ということであります。

 11ページの下からが運用等についての評価ですが、11ページ、12ページにそれがまとめてありまして、
その要約が資料4-1の「運用等」というところですが、今後、本格的な検討を実施すべき課題であり、
まずは、国において共用促進法が求める体制を構築するために必要な検討を開始すべきである。
ただし、それまでの間、施設の設置者である理研において、運用体制の在り方やユーザーニーズを把
握するためのシステムの構築に努めるべきであると、こういうふうに評価いたしました。

 最後は13ページに「6.総合評価」という形で、これまでの4つの項目を総合的にまとめまして、総合評
価という形で半ページにわたってまとめました。ここは音読させていただきます。

 「6.総合評価。平成18年度から本計画が開始されて以来、設置の研究開発、実機の製作関連施設
の建設等は順調に進んでおり、技術的な課題もほぼ克服しつつある。引き続き、これまでの推進体制
を維持・強化しつつ、実機製作の段階で重要となる品質管理や設計変更等に対するリスク管理を適切
に行い、計画を着実に進めていくことを期待する。

 利用推進研究については、既に推進体制を整備し、XFELの完成後直ちにインパクトのある成果を創
出すべく、必要となる研究開発が進められており、一定の評価はできる。今後は、より広範な分野の研
究者や理論研究者との連携を図りながら、XFELの持つ大きなポテンシャルを最大限活かすべく、新し
い研究分野の開拓や長期的な展望に立った研究を遂行していくべきである。

 情報発信については、これまでも積極的に行われているところであり、評価できる。引き続き、XFEL
の意義や状況をわかりやすく発信していくとともに、プロトタイプ機の成果等についても発信していくこ
とが産業界も含めた新たなユーザーの開拓という観点からも重要である。

 運用等については、今後、本格的な検討を実施すべき課題である。まずは、国において共用促進
法が求める体制を構築するために必要な検討を開始すべきである。ただし、それまでの間、施設の
設置者である理研において、運用体制の在り方やユーザーニーズを把握するためのシステムの構築
に努めるべきである。

 以上のように、開発等は順調に進められており、また、事前評価における指摘事項には概ね適切に
対応できていると評価できるが、国及び理研においては、本作業部会の評価やこれまでの事前評価に
おける指摘事項を踏まえ、引き続き、本計画を着実に進めていくことが期待される」と。これが総合評価
であります。

 14ページ以降18ページまでについては、用語解説ということで、この報告書の中に出てくる専門用語に
ついての説明がなされております。

 以上、非常に簡単というか、ちょっと急ぎましたが、中間評価の報告書(案)についてご報告申し上げま
した。ご審議よろしくお願いします。

【榊主査】  雨宮先生、ありがとうございました。

 それでは、これから10分余り皆様からご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 ちょっと私、こういう種類のものについてはあまりなれていないものですから、ナイーブな質問をさせて
いただきたいと思うんですけれども、23年に向けて2年ぐらい経過したところで、できぐあいの実機の完
成度のパーセントというのは、大体リニアに進んでいるものなのか。かなりの部分が先にできて、非常
に最後に調整するような形で進みつつあるという、この時点での進みぐあいって、どんなふうにとらえれ
ばよろしいんでしょうか。

【雨宮教授】  そういう意味で、すぐに実機というところの前の段階として、プロトタイプ機というのがあり
まして、プロトタイプ機が今、どの程度予定どおり進んでいるかということが1つのものさしになるかと考え
ております。それで、この委員会でもスケールアップするときに、何がハードルであるかというようなことに
ついても、そのプロジェクトを進める側といろいろなディスカッションというか、質疑応答を行いました。そこ
で、やはり1つのユニットをn個並べていくときに、それのばらつきとか、そういうことをきっちりとやることが
重要だということで、基本的には1つのユニットをきっちりと確立するということの重要性と。

 これは、確実にできるかということに関しては、プロジェクトを推進する側は、今のところは確実にできる
感触を持って進めているということでありましたので、今までのいろいろな経験というか、品質管理というこ
とをきっちりとやってほしいというようなメッセージを、この評価の中には盛り込んでおります。

【榊主査】  そうですか。わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。この辺、竹山委員とか、遠藤委員も入っておられるんですよね。少し補足的な
コメントをいただければと思いますけれども、どうでしょう。

【遠藤委員】  それでは、私、先に。雨宮委員長のもとで、非常に熱心なご議論を子細にわたってなさりま
して、大体私ども、希望、期待していることは盛り込まれておりますので、なかなかシビアなしっかりとした
報告書(案)になっていると。今、ご説明のとおりでございます。

 要は、やはりこういったプロトタイプ機を早くしっかりしたものをつくって、そして実機が動く前に、ナノテク
・材料分野の研究が、いかに世界的に特徴あるものが我が国から発信できるか、ここにかかっていると思
いますので、そういう意味では、このプロトタイプ機のいろいろな準備状況に対して、しっかり評価が今、こ
の報告書の中でなされたと思っております。

【榊主査】  そうですか。竹山委員、お願いいたします。

【竹山委員】  この委員会自身の位置づけとして、私なりの理解というのは、コアの機関である理研さん
に、責任が一番あるということを明確化させると。あと、やはりこういう公共のすごく大きなお金を使って
やっている限りにおいては、有効利用をどういうふうにしていくかと。以前にSPRING-8みたいなものを
つくっていて、あそこの横につくっているんですけれども、それを見ながら、ある意味税金を使ったものが、
サイエンスにどれだけ役に立つかというところを明確化するというところの2点が大きかったと思うんです。

 この報告書というか、提言みたいな感じになっておりますけれども、文言を調整するのはえらい時間が
かかりまして、いかに、だれに読ませるんだというところからありまして、当然文科省の中に出すんだとい
うことが一番初めにあるんでしょうけれども、その後、いろいろな人たちがこれを見て、当然理解できるレ
ベルまで持っていくのに非常に時間がかかったんです。見ると、個別論的な情報もありますけれども、そ
れよりも、ちゃんととやってくださいよという内容が多くて、特にこの文言にこうしろああしろと、後から今の
段階で、コメントは特にないんじゃないかと思う部分を感じますけれども、いかに広報して、公に使ってい
ただけるようになるか。なので、実際の実機ができているその過程の細かい作業に関しては、特に委員
会の中から、具体的にこうこうという話ではなく、いかにできたものを運用していくかと。いかにインターナ
ショナルに見せていくかというところで、理研を含め、プラス推進委員会がちゃんとコントロールしながら
やっていくかということを強力に推し進めるための、提言的な意味合いが強かったんじゃないかなと理解
しています。

【榊主査】  わかりました。ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

【栗原委員】  今、実際に装置をつくる部分と、利用推進研究の部分があると思うんですけれども、利用
推進研究のほうは、装置製作のほうにフィードバックされるような、何かそういう部分というのはあるんで
しょうか。

【雨宮教授】  将来できたときに役立つための基盤となる研究というのは、利用推進研究なんですが、資
料の32ページからそこが書いてあるんですけれども、大きく分けると、資料32ページの下を見ますと、ライ
フサイエンスのワーキンググループ、それから、ナノ・材料その他のワーキンググループ、それから、設置
側研究者とありまして、このテーマについても、ライフサイエンス、それから、ナノ、装置技術という観点で、
本機、実機ができたときに、すぐにそれが有効利用できるような形のテーマというものを募って行われて
います。それがどういう個別的なテーマが走っているかという例が、資料36ページから書かれて、36ペー
ジ、37ページ、39ページまで、どのようなテーマが走っているかということです。

 今まで3年間行っていて、36ページの上のところを見ていただくと、平成18年度、19年度、20年度にわた
って、全部で18の課題が走ってきていますが、平成21年度からそれをさらに絞り込んで、より実機ができ
たときに、実際に役立つようなものに絞り込んで、利用推進研究を進めていくという体制で行っております。

【林室長】  ちょっと補足で。資料の33の下にちょっと書いてありますけれども、「2.利用推進研究につい
て」の(1)の2段落目です。「理研においては、XFELの本体整備及びそのための研究開発を行う」と。利用
推進研究は、これと非常に密接な関係があることから、理研と両方で連携をとりながらやってくださいとい
うことを書いてありまして、具体的にはその前のページの32のところで委員名簿が入っておりますけれども、
ここにXFELを進めている理研の責任者である石川先生にも入っていただいて、利用推進研究の進捗と、
その実機の整備開発、あと切り分けというものも、連携をとりながらやるというふうな体制になっておりま
す。

【栗原委員】  ありがとうございました。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。

 これ、また素人的な質問なんですけれども、こういうふうに実機ができるのが、まだ3年後というような感じ
ですと、研究者の雇用状況で、成果が出せる立場、長期的に雇用されている方は安心してやれると思うん
ですけれども、昨今の比較的3年、4年で任期で、若い人たちが関与するような関連では、こういうものとの
つき合いといいますか、そういうのであまり問題がないのか、幾つか課題があるのか、ちょっとその辺のこ
とを教えていただけると。

【雨宮教授】  いかに人材を確保し、そして育成していくかという観点ですが、これは幸いSPRING-8と同
じで、やはりSPRING-8というのは広い分野に多くのビームラインを提供していると。やっぱりそことうまく
連携しているということが、このXFELはスタンドアローンで非常にピーク値を出しますけれども、ビームライ
ンはせいぜいできて5本と。そこでスタンドアローンになっていると、そういう心配はさらに顕著化されると思
うんですが、やはりSPRING-8と一緒になっているというところに、そのリスクはかなり低減される仕組みが
あるのではないかと。相乗効果ですね、その辺のところで。もちろん、こういうビッグプロジェクトというのは、
常に先生のおっしゃる問題があるんですが、SPRING-8との相乗効果ということで、比較的そういうところ
のデメリットを防げる仕組みがあるのではないかと。そういうところでこの評価にも、SPRING-8との連携と
相乗効果というところは、そういうサイエンスの部分のみならず、やはりパーソナルなところにおいても重要
なことかと考えております。

【榊主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】  こういう実機ができたらすぐに使えるというんですけれども、実機とプロトタイプというのはど
ういうものかよくわかりませんけれども、ないからつくるわけですけれども、結局、XFELレーザーの1つの非
常に重要な点は、超高速短パルスということでしょうから、そうすると、それならではというプロジェクトじゃ
ないとなかなか意義が出てこないと思うんですけれども、この中で、やっぱりそういう観点で選ばれている
んでしょうけれども、そうしたら今やっている3年先までの実験というのは、具体的にどうつながるようになっ
ていくんでしょうかというのが、ちょっと疑問なんですけれども。

【雨宮教授】  確かに今のプロトタイプの波長は、50~60ナノと。エネルギーにすると、20~25エレクトロ
ン。それに対して、一気に0.06、十数径に飛ぶわけですから、光の領域が全然違うわけです。そういう意
味では、最初にこの報告書の2ページにまとめているように、「XFEL計画は、まだ人類が手にしたことの
ないX線領域のレーザー光源を開発し」というところがあって、何かシームレスに準備したものが続くとい
うところはギャップがあるというのは、どうしても仕方がないところはあると。しかし、そのギャップをいか
に埋めていくかということを、今の段階でできることはすべしということが、プロトタイプで進めている推進
研究に対するいろいろな我々のメッセージ。あと、分野においても、さらに今まで利用推進研究に入って
いない分野も含めて情報発信をして、やはりどういう光のクオリティーが得られるかということを情報発信
して、潜在的なユーザーを掘り起こす情報発信が重要だということは、かなり強調したつもりです。

【魚崎委員】  ただ、今の波長領域でやっていることは、逆に言うとXFELレーザーでは使えないとか、違う
話になるわけですね。XFELレーザーだったら、回折とか、X線のそれを使ったものを、それこそフェムト秒
レーザーと組み合わせてやるんだとか、そういうことは非常に大事だろうと思うんですけれども。

【雨宮教授】  でも、サンプル回りの準備とか、あと光学系とか、やはり波長領域は違っても、当然必要で
なければならないだろうと思われることを、利用推進研究の中に、利用技術要素として入れ込んでいるとい
うことはありますが。

【魚崎委員】  だから、光源とかそういう基盤とかの研究のほうはいいんでしょうけれども、ターゲット的な
研究をやっているところは、ちょっとまたずれた形になるのかなという感じはするんですけれども。

【雨宮教授】  ええ。それはそういう意味で、今の利用推進研究と将来実機ができたときの利用研究とは、
少しカテゴリーが違うと。そういう意味で、今回のこの報告書でも、3番目は利用推進研究になっています
が、最初議論が、利用推進研究と利用研究が非常に混在して議論していたので、非常になかなか議論が
かみ合わなかったところがあるんですが、やはりおっしゃるように、利用推進研究と利用研究とは違う部分
があるということは……。

【魚崎委員】  だから、実際我々も、SPRING-8で表面X線回折とかやっていて、ダイナミクスも興味が、
一方では自分の研究室でフェムト秒レーザーを使っているので非常に関係あると思って、これも考えたん
ですけれども、全然話が違って、出すんだったら回折系からフェムト秒レーザーから全部持ってきてやっ
てくださいと、それはちょっと無理だなという感じがしたので、個人的な経験からしても、かなりギャップがあ
るんだなという感じはしているんですけれども。

【雨宮教授】  はい。そのギャップがあるということは、飛躍があると。それをどう受けとめるかというのが、
やっぱり委員会でも議論になりました。

【魚崎委員】  だから、ほんとうにX線フリーエレクトロンレーザーができたときに使える研究の人は、まだ
ちょっと入れないところがあるというような感じなんでしょうかね。

【雨宮教授】  利用推進研究の中で、そうですね、利用技術のところでは入れるけれども、全然波長領域
が違う方は。でも、やはりそうは言いつつ、主要回りをどういうふうに準備するかとかというところで、テクニ
カルなところでかなり準備しなきゃならない面については、今からでもポテンシャルユーザーは準備すべき
だというのが、我々委員会の意思であります。

【林室長】  この利用推進研究ですけれども、実機ができたときに、すぐインパクトのある研究ができるよ
うに、測定装置とかをきちんと基盤としてそろえておこうというためにやっておりまして、したがって、お金に
制限がありますから、すべてやりたいことができているということではないんですけれども、公募をかけて、
その中で、これを開発しておけばインパクトのある研究が、実機が立ち上がったらすぐできるだろうという
ことで、今、開発を進めております。

 したがって、ここで開発している人たちは、基本的にできた後、ここで開発した技術、基盤技術になるわ
けですけれども、それを利用して研究をする人たちなのかなという気はしております。もちろん共用施設と
して広く使われるようになりますので、課題としては当然公募を行っていくということなので、この利用推進
研究でねらっている研究と、その公募のあり方というのは、今度共用の運用のあり方を検討するときに、
少し調整するようなことを考えないといけないのかなということで、そこが我々国側としても、検討課題の1
つかなと思っております。

【榊主査】  ありがとうございます。どうぞ。

【竹山委員】  バイオ系のほうからのお話だと、私もこの委員会に入ったときに、原理のところと分野が
私、全然違うので、入ってもどうですかと言ったら、利用者の立場に立てるほうとして委員会に入ってくだ
さいと言われたんですね。委員会はいろいろと非常にマテリアルの機械のいろいろな具体的な話はすご
かったんですけれども、私のほうからだと、バイオ系ですので、利用するときが一体いつなのかなと、同
じような疑問があって、具体的にお伺いしたら、採択されている、例えば、実機ができたときにわかるも
のというのは、SPRING-8などではできなかった、タンパクが複合体をつくってどうやって反応しているか
も見れるという状態で、そういうのはバイオ系からすると、そのものを見たいというところで採択されてい
る方が入っていらっしゃるんです。

 ただ、今から彼らが何をやっているかというと、やはり実機ができたときに、すぐ使うときに、今までの
調整の仕方では、多分すぐは見れないと。要するに、サンプルのですね。それを前の段階で、機関を置
いてやっていただくと。要素技術の開発をしていただいて、その技術を皆さんに広く見せることによって、
次の人がすぐそこに実機ができたときにスタートできるような技術開発をしてもらうということで入ってい
らっしゃるとうことで、逆に言えば、ほんとうに実機ができたときにスタートするメンバーでもあるし、その
前の要素開発技術というところで入ってきている。バイオ系にしても、そういう人たちも採択されていると
いうことでご説明いただいたので、それで何となく理解したというような経緯があります。

【榊主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 それでは、やや時間の制約もありますので、今回のX線自由電子レーザーの件につきましては、これ
でご説明と質疑は終わらせていただきたいと思います。雨宮先生、ありがとうございました。今後とも、
研究開発のほうでいろいろなご協力をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次に、平成21年度の概算要求についての議論に移りたいと思います。ご承知のとおり、ナ
ノテクノロジー・材料分野の概算要求で、今回の大きな柱は、ナノテクノロジーを活用した環境技術の開
発事業が1つ。それから、革新的技術戦略に対応した元素戦略の拡充というのが2本目の柱。それから、
ナノネットの制度改正というようなことがございます。それでは、事務局のほうから、それぞれの事業ごと
に説明をしていただいて、順次議論をしたいと思います。まず、環境技術の開発についてのご説明をお
願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【高橋室長】  ご説明申し上げます。資料5-3をごらんいただきたいと思います。横組の資料でござい
ますが、ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発ということでございます。

 1ページ目は、先日、先生方にもご報告しました報告書の概要でございます。簡単に申しますと、ナノテ
クノロジーを使って大きなブレークスルーを起こしていこうということです。そして、基礎研究と出口の関
係をしっかりと結びつけましょうと。それが3番目の「ズームアウト」と「ズームイン」ということで表現してお
ります。研究の推進体制ということで、日本型ドリームチームといったような研究グループが、しっかり活
動できる基盤を整備していきましょうということでございます。

 具体的な事業の内容といたしましては、それを1枚めくっていただきますと、これは事業を進める上での
考え方ということになってございますが、この真ん中の四角でございますが、ナノテクノロジーを活用した
環境技術による社会システムの例ということで、住宅用の電力供給システム、省エネ自動車、高効率発
電プラントとございます。

 これはこういったものを実際に行うということではなくて、こういった1つのシステムを考えてみましょうと
いうことを表現しているわけでございまして、4ページ目をごらんいただきたいと思いますが、例えば、住
宅用の電力供給システムはどうなっているかということで、ちょっと大きく整理しておりますが、エネルギ
ーを創る、それから、エネルギーを貯める、節約すると。結局、太陽電池や燃料電池によりまして、化石
燃料を使わずにCO2を出さないような形でエネルギーをつくると。これは太陽光などを活用しますので、
当然夜の間はどうするんだという問題もありますから、つくったエネルギーをとりあえずためておくという
ようなことも必要でしょうと。また、現在の照明、それから冷暖房といったもののエネルギー消費をどれだ
け減らすのかということもありますが、これは現在の既にある技術かもしれませんけれども、これをナノ
テクノロジーでもって現状性能をアップさせていくと。例えば、10%アップというような言い方などもありま
すけれども、それはなかなか厳しい大変な目標ではあるわけですが、これを達成することによって、1つ
の住宅での電力需要というものを十分賄えるだけの技術が可能になるであろうと。そして、ナノテクのそ
れぞれの技術要素というのが、青とピンク色の箱で書いてありますけれども、こういった技術要素があり
ますということです。

 5ページ目は、自動車について同じような考え方で整理しております。自然エネルギーを動力源にして
やりましょうということですので、これもエネルギーを創る・貯める、そして駆動力に変えていくといったよ
うなものでございますけれども、それぞれのところでナノテクノロジーの技術を使うことによって、新しい
自動車を考えていきましょうと。

 6ページは発電のプラントでございます。高効率発電をやっていくためのプラントで、例えば、火力発電
所を大幅に高効率化していくということでのCO2削減ということも考えていこう。例えば、効率を上げてい
くために、タービンブレード材料や配管、それから、出てきたCO2を実際に利用するといったような点が
ございますし、これを送電する際には、超伝導の材料を活用しましょうということでございます。このよう
なそれぞれの要素技術をしっかりと組み合わせて、それぞれの要素技術のレベルアップで、トータルと
して環境に貢献できるような技術を開発していきましょうといったようなシステムをつくっていきましょうと
いうことでございます。

 ちょっとページが見にくくなっていますが、7ページ目、これはちょっとパワーポイントでページがつぶれ
てしまっているわけですが、研究拠点のミッションと機能ということでございまして、このような環境技術
の開発をやっていくための研究拠点、研究グループというのはどういうものか。まずはしっかりとしたイ
ンフラが必要だろう。研究施設、設備の集中的整備、そしてこれを共用化していこうということでござい
ます。そういった拠点に人が集まってくるということでございます。そして、産学連携でもって、しっかりと
した課題設定をやりましょうということでございます。中核機関を中心として、参画する機関が幾つかあ
るといった形で、このようなチームをつくっていきましょうということでございます。

 この研究開発につきましては、8ページでございますけれども、進めるに当たっての進行管理をしっか
りしていこうということでございまして、内容を評価して、その内容についてチェックしていく運営作業部
会、これは仮称でございますけれども、こういったものもございましょうし、あと各省での政策をコーディ
ネートするための連携のためのこのような会議、連携のための機関というのも必要でしょう。こういった
ものでしっかりと課題設定や研究の進捗状況について、適宜チェックしながら研究を進めていきましょ
うということです。

 9ページに、具体的な予算をどう組み合わせるのかということを図にしておりますけれども、私ども、こ
の事業におきましては、一番下の太い矢印でございますけれども、研究基盤を形成するために、この経
費を使っていこうと考えているわけでございます。じゃ、その具体的な研究費はどうなのかというと、例え
ば、ここの研究グループに入っている先生方が科研費をとる。そしてさらに、JSTのファンドやNEDOのフ
ァンドというふうに、実際のプロジェクト型のファンドというのは、競争的資金がさまざまございますので、
また民間との共同研究というようなこともありますので、こういったプロジェクトの経費をさまざまに組み
合わせることで、出口に向かって進めていくと。こういった先生方の活動を行うための基盤としての研究
設備を、しっかり整備された拠点をつくっていくための基盤形成経費として、この予算を使っていきたい
と考えております。

 最後でございますけれども、具体的な事業を進めるに当たっての留意点といいますか、考えなくては
いけない点としましては、やはりドリームチームということですので、有名な先生が集まってきてチーム
をつくるということになりますと、例えば、10年から15年先のブレークスルーを目指した研究をやってい
くということでは、ちょっと高齢化してしまうのではないか。やはり若い、実際に研究をやっていく先生方、
研究者を中心にしたチーム構成にして、ある意味、チームの中でしっかりと競争的に研究を行っていく
と。切磋琢磨してチーム全体のレベルアップを行うというようなことも必要なのではないかと考えており
ます。

 また、自由発想に基づく、いわゆる科研費的な研究ではございません。これは環境問題解決に資す
るシステムを提案していく研究ですので、しっかりとしたトップダウンの研究課題の設定ということをやっ
ていきましょうということでございます。

 それから、プロジェクトとして、ある程度の規模、それから、研究のコーディネートが必要でございます
ので、これはマネージャーと言っておりますが、専任の研究チームを切り回すマネージャーのような方を
しっかりと置くと。つまり、野球で言いますと、プレイングマネージャー、選手をやりながら監督をやるとい
う形ではなくて、ある程度監督、あるいはフロントみたいな仕事を専門にやる人をしっかりと1人置いて、
その人がチーム全体の活動を支えると。研究をする研究者は研究に専念するといったような形が必要
なのではないかと思っております。

 4番目でございますけれども、拠点ということで、装置を整備するということは必要になってくるのかもし
れませんけれども、各研究室、各研究者個人に研究装置が配分されるといいますか、ばらばらに配置
されるということになりますと、チームとしてのまとまりも出てこないだろう。やはり装置をきっちりと集中
的に配置して、これをみんなで使うということで効率的に使っていこうということだと思います。また、そう
いう際には、例えば、研究機関のほうで、装置を集中する際のスペースを出してもらうですとか、場合に
よったら既存の研究機関が持っている装置を再編成するような形で、この研究グループをサポートして
もらうというようなこともお願いしたいと考えております。

 それから、行政的な面からいうと、省庁の枠を超えた連携が必要である。特に環境エネルギー関係で
いいますと、経産省やNEDOのほうがございますので、これとの枠組みということをしっかりとつくってい
きましょう。それから、国家基幹技術やJ-PARCなどの大型の研究インフラの整備というのも計画的に
進められておりますので、こういうものも積極的に活用していこうと。そういったことで、新しいブレークス
ルーを目指していきましょうということでございます。

 概要は、大体以上でございます。

【榊主査】  ありがとうございました。ただいまのご説明に関して、いろいろご質問やコメントをいただき
たいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【横山委員】  この環境技術の中に、エレクトロニクスも入っているんでしょうか。

【高橋室長】  先ほど申しましたように、あくまで例としてここに3つ挙げているわけでございますので、
例えば、大幅に省エネのエレクトロニクスというんですか、そういったものも1つの環境技術には入って
くると思います。ただ、それを個別の研究をするというよりも、トータルなシステムとして提案していただ
くということになるかと思うんですけれども、対象には十分入ってくると思います。特にそれは、この横組、
ちょっとページがあれで申しわけないんですけれども、3枚目を見ていただくとわかると思うんですが、環
境の技術を、全体を木の形で表現したものでございますけれども、今、先生がご指摘のようなものは、
右側の省エネシステムというところの、いわゆるグリーンITなどと言われているようなものをイメージされ
てご発言なんだと思いますけれども、こういったものも、やはり非常に有力な技術の1つであろうと考えて
おります。

【榊主査】  よろしいですか。

【横山委員】  はい。ありがとうございます。

【榊主査】  ほかにどうぞ。

【魚崎委員】  具体的なイメージはまだよくあれなんですけれども、ドリームチームとして、それを集める
お金をつけるということですか。つまり、人件費等も込みの話をしているということですか。

【高橋室長】  はい。

【魚崎委員】  ドリームチームといっても、これは恒久的なものではないから、任期つきみたいな格好の
人を集める?

【高橋室長】  はい。

【魚崎委員】  そうすると、なかなかドリーム……。

【高橋室長】  いえ、これは一応、今我々が考えているのでは、10年ぐらい継続させるような形で考えよ
うと思っていますので、例えば、任期つきではなくて――任期つきではなくてというのは変ですけれども、
しっかりとしたチームが活動する拠点となる大学なり研究機関に、10年間ぐらいは、ある程度人材を集中
できるような形で支援を続けていくと。もちろん途中で見直しとか、中間評価みたいなことはあるんだと思
いますけれども、そのぐらいの期間を考えております。

【魚崎委員】  そうすると、今、WPIなんかがやっているのが大体10年で、しかも年間予算が大体10億と
か何かだから、そういうようなイメージなんですかね。

【高橋室長】  はい。それで課題解決型でやっていこうと。

【魚崎委員】  そうすると、この予算規模からすると、1件ぐらいを念頭に置いていると。これはまだ概算
要求ですから、もっと値切られたりとかすると。

【高橋室長】  ええ、そこはかなりの不確定要素があると思います。

【魚崎委員】  だから、目指している大きさに比べて、ちょっと予算規模とか何かは小さい感じはします
よね。社会を変えるぐらいのことを書いているわけですけれども。

【高橋室長】  それで具体的には9ページのような形で、実際の研究費については競争的資金で確保す
ることを考えましょうということになっております。

【小長井委員】  済みません、よろしいでしょうか。私もこれ、議論の途中でいろいろ加えさせていただい
たので、よくわかっているつもりなんですけれども、大変いい案をつくっていただいたなと、私、思います。
特に今回は、「ズームイン」「ズームアウト」という議論をして、やっぱりエネルギーの人は、どちらかという
と今まで非常に狭い範囲しか見ていなかったものを、もうちょっと広い立場から見るという、そこから始ま
るということが非常に重要で、こういう新しいエネルギーが使われ始めてきた今こそ、そういう大局的な立
場で物事を考えられる人を養っていかないといけないと思うんです。ただし、実際に研究するときは、どう
しても細かいところでやるわけですから、ズームインしてやるという、これは大賛成でありまして、これはぜ
ひうまくやっていただきたいなと思います。

 私なんかも太陽光発電で30年以上やっているものですから、ここの最後のところに書かれているように、
若手中心でというところは、ぜひそれを実現したほうがいいと。今まで、例えば太陽光発電も、立ち上げに
かかわってきた人は大体年取ってきているんです。ですから、何をやっても大体いつも同じ人しか出てこな
いという状況になるわけで、今こそこういうものを使って、若い人の裾野をどんどん広げていかないと、やっ
ぱり先の技術開発が難しくなるかなと思いますので、10年、15年最低できる人というのは大賛成ですので、
そういう方向でやっていただきたいなと思います。

 あとは前から議論している、エネルギーの中での融合領域ですね。前に田中先生といろいろと議論させ
ていただいて、ほんとうに太陽電池をやっている人と燃料電池やっている人は全く別の世界にいて、一緒
に話をしたこともないわけです。つい最近、私ども、グローバルCOEが採択になったものですから、エネル
ギーの関係で。それは太陽電池というよりも燃料電池が主な内容なんですけれども、つい数日前に、その
関係者全部、何をやっているか話を聞いたんですよ、30人ぐらいの話を。そうしたら、15人以上も燃料電
池をやっている人がいて、あの人もこの人もやっているのかということで、意外とやはりそういう人の話を
聞くと、新しい芽も出てきそうな感じがしますので、ぜひ融合領域を立ち上げていっていただきたいなと思
いますけれども。

【潮田委員】  よろしいですか。こういう環境エネルギー分野というのは、やはり国としては非常に重要な
分野で、ぜひとも強化をしていただきたいと。非常にすばらしい提案だと思うんですが、前回もちょっと議
論になりましたが、これだけ重要であるが故に、文科省はもちろんやりますし、先ほど、省を超えた連携と
いう話がございましたが、経産省、あるいは農水省だとか、国のいろいろなところでこういう大きな課題に
アプローチするんじゃないかなと思うんですが、そこら辺の全体としてのシナリオといいますか、役割分担
といいますか、そういうのは明確になっていて、文科省として何をするのかということは、フォーカスされて
いるんでしょうか。

【高橋室長】  実際にはこれから、各省とそういう相談をしていく体制をつくっていくということになると思う
んですけれども、内々というか、相談していく中では、縦に割るのではなくて、横割りというんですか、文科
省のこういったチームをつくるならば、基盤的なところといいますか、先取り的なところをやると。そういっ
た意味では、例えばNEDOなどは、もう少し出口に近い、応用に近いところを中心にやるといったような形
で、組み合わせていくことはできるのではないかなと考えております。

【潮田委員】  そうですか。そういう時間軸の話ももちろんあると思いますが、今、文科省のほうで考えら
れているのは、例として自動車だとか、住宅だとか、あるいは発電だとか、そういうどちらかというと具体
的な市場をイメージした横串と、一方では、すばらしい要素技術があるわけですから、そういう市場の課
題を解決するためにいかに活用するかという、そういうマトリックス運営をうまくやろうというふうに見える
んです。それは非常に私、重要な話だと思うんですが、市場として、今、例として3つということなんですが、
この市場自身は、例えば、自動車も経産だとか、いろいろかかわりがあるわけですから、そういう1つの
市場において、省を超えたような形での要素技術のアプローチというのが全体として見えると、わかりや
すいように思うんですけれども。

【高橋室長】  ここでこういう住宅とか自動車の例を挙げておりますのは、先ほどちょっと話がありました
けれども、要素技術をそれぞれにばらばらに追求していくと。例えば、触媒なら触媒をやるというようなプ
ロジェクトが今まで文科省は多かったわけですけれども、今回はそうではないんですよと。触媒を使って、
こういうものをつくりましょうということを提案していただくというか、そういうイメージを持ってシステム化と
いうか、出口を見据えたイメージを持った研究をやりましょうということでございますので、はっきり言って、
確かに我々の力で自動車とか、そういった製品まででき上がるということは考えているわけではないんで
すけれども、そういうでき上がりのイメージを持って研究を進めていかないと、また今までずっと繰り返し
てきたような要素技術の追求になってしまうので、そこはちょっと視点を変えていきましょうというところで
ございます。

【潮田委員】  やっぱりそれが非常に私も大切で、そういうことを通して要素技術のレベルが上がると思
うものですから。具体的には、プロジェクトはそういう市場分野ごとに、プロジェクトマネージャーといいま
すか、プロモーターみたいなものを置いてリードしていくという運営を考えておられるんですか。

【高橋室長】  はい。

【潮田委員】  わかりました。どうもありがとうございます。

【榊主査】  どうぞ。

【片岡委員】  この運営体制、10ページは非常によくできた体制だろうと思いますし、こういう形でむしろ
基盤をきちんと整備して、ほかの競争資金をうまく活用してやっていくというのは非常にいい形ではない
かと思います。なおかつこれは文科省の研究ですから、出口イメージはもちろんあるわけですけれども、
理解としては、3ページ目のナノ表面界面、ナノ構造というところをきちんと掘り下げつつ、しかし出口を持
ってやっていくという理解でよろしいんですよね。

【高橋室長】  はい。

【片岡委員】  それで、若手中心でやるというのはすごく重要なんですが、やはり監督は置くわけですか。

【高橋室長】  はい。

【片岡委員】  ですよね。だから、逆に言うと、予算規模にもよりますけれども、監督の人選というか、そ
れがものすごく重要になってくるんじゃないかという気がいたします。それから、ほんとうに1人でいいのか
と。多分、一個間違うと、監督のためにみんなが動くという、つまり監督の考えているコンセプトとか、そう
いうものをみんなでやるというふうになってしまうと、おそらく一将功成りて万骨枯るというふうになっちゃっ
て、うまくいけばいいですけれども、いかない場合には何も出てこないと。僕はやっぱりこういう場合という
のは、むしろそれをマネージする人が、自分の研究は自分の研究としてやるんだけれども、全体を必ずし
も自分の研究、あるいは自分のコンセプトに全く同じでない、あるいは違うものも許容するという形でやっ
ていかないと、多分、思ったことと出てくる結果が違ってしまうんじゃないかという懸念もあるんです。

 ですから、そういう点では、この拠点をつくるときに、多分1人だけでは済まない。確かに監督をそろえた
ドリームチームは無意味なんですけれども、かといって全く監督1人で、あと若い人が30人ぐらいでできる
かといったら、それは多分、ERATOなんかもありますから、やっぱりそれと違うイメージというんですかね。
ERATOはそれに近いと思うんです。ですから、そういうのとは少し違うイメージを、もう少し明確に出してお
いたほうがいいんじゃないかと思います。つまり、あくまでも基盤をつくって、そこから次々と、言ってみれ
ば将来の監督になるような人とか、スタープレーヤーをどんどん出していくというイメージかなと思います。

【榊主査】  どうぞ。

【栗原委員】  研究として言えば、ナノテクノロジーとか、そういう研究が大分進んだので、材料というの
が従来から考えられるよりは、随分実際に現場で扱っていらっしゃる材料のわからない、アンノウンのと
ころが実際の基礎研究から、随分答えられるようになってきていると思うんです。ですけれども、そういう
ものが必ずしもつながっていないし、基礎研究の研究者にそういう課題が、必ずしも明確に伝わっている
わけではない場合も多いので、環境技術という非常に幅広い要素の中で、技術とナノテクの場合は非常
に基礎と技術の距離が近いので、そこがうまくつながって、そういうつながっていく例が幾つか出ていけば、
全体的に非常に材料技術が変わる可能性があるんじゃないかと思うんです。

 以前、井上先生が、結晶化も最近は自己組織化だとおっしゃって、非常にそういう意味では、マクロの
材料をナノの視点から見ると考え方が変わって、違う見方というか、今までよりは一層か二層か深く理解
できるようになってきているので、それで今回もいろいろテクノロジーの評価のときに、メカニズムという話
が随分出ましたけれども、そこをうまく、ゴールを見ることであまり抽象的になり過ぎずに、課題が拾える
と非常にいいんじゃないかなと思います。

 それから、先ほど片岡先生の言われた、若手と経験のある人のうまい組み合わせというのは必要だと
思うので、若い人だけがやればいいというわけでも、年寄りがやればいいというわけでもないと思います。
気の若さはとにかく一番大事かもしれないけれども、そこのあたりはあまり極端にならないような、いい按
配というのがやっぱり必要だと思います。

【片岡委員】  年寄りは、もう一回ポスドクやればいいんですよ。

【栗原委員】  そうですね。原点に戻るというのは、常に大事かもしれません。

【榊主査】  どうぞ。

【樽茶委員】  これは環境という出口イメージがすごく明確になった、大変斬新なプロジェクトだと思うんで
すけれども、これは多分、デバイスからシステムまで非常に広範な技術分野をカバーしていて、ある意味
で言うと、X線自由電子レーザーと同じぐらい大事なんじゃないかと思うんですけれども、そのわりには予算
規模は全然違っていて。これで若手ドリームチームが構成できるか、大変疑問だと思うんです。

 もう少し何とかするような施策はないものでしょうかというのが1つと、もう一つは、実際に、例えば大学の
キャンパスとかに、WPIと同じような形で置くとすると、人材のステータスというか、ポジション自身はどんな
形になるんでしょうか。実際に大学の中に所属するということになるんでしょうか、文科省の所属になるん
でしょうか、どちらで。

【高橋室長】  まず、2つ目のご質問に先に答えますけれども、基本的には大学なり研究機関の職員の
方という形になると思います。文科省が直接やるとか、そういう形ではない形になります。簡単にイメージ
していただくと、東大で、今、片岡先生がやられている拠点の例がありますけれども、あれは1つの私ども、
これを考えるときの参考にさせていただきました。あれは医工連携ですけれども、ああいった形で大学の
ほうに1つのスペースを用意していただいて、そこに装置を集めてくると。そこにいろいろな関係する研究
者が集まってきて、融合研究をやると。片岡先生の場合は、ああいうナノバイオという方向性でやってい
ますけれども、あれと同じような形で、環境のシステム何らかをテーマとして取り上げて、ああいう形でや
ったらどうだろうかということを考えております。

 その話と逆に予算の話なんですけれども、全く更地に、例えば、いわゆる研究所みたいなものを新しく
建てていくというようなことを考えているわけではございませんで、ある程度ポテンシャルのある研究機関
に、そこにいる人材を活用して、ある程度そこの機関の物的なポテンシャルも活用してやっていこうと。
そういう人たちがそこに集まるためのサポートを国としてやれば、既にある大きな大学や研究機関のポテ
ンシャルを持ってすれば、ある程度の力は発揮できるのではないかということをイメージしてございますの
で、予算額も全くゼロのところから立ち上げていくということではないということで、こんなところかなと。も
ちろんそれは多ければ多いほどいいのかもしれませんけれども、ある程度そういうところを前提にして考
えているということでございます。

【榊主査】  いかがでしょうか。どうぞ。

【玉尾委員】  僕、もうひとつイメージがちょっとわからないんですけれども、これは1カ所だけをイメージ
しているんですか、ドリームチームというのは。

【高橋室長】  それはですから、予算額がどのぐらいになるのかによると思いますね。

【玉尾委員】  よりましょうけれども、もともとのイメージはどうなんですか。もうちょっと複数ではないか
というイメージを持っているんですけれども。

【高橋室長】  いえ、複数であれば、もちろんそれが一番ベストであると思います。

【玉尾委員】  のほうがベストであるという考え方ですね、基本的にはね。

【高橋室長】  ええ、それは。はい。

【玉尾委員】  それのほうがわかりやすいなという気はしておりますが。わかりました。

【榊主査】  どうぞ。

【魚崎委員】  この絵のところでは、7ページを見ると、この中核機関があって、参画機関があるような絵に
なっていますよね。研究拠点のミッションと機能。これはだから、今、茅先生の連携型拠点みたいな絵なの
かなと思ったりもするんですけれども。

【高橋室長】  ちょっとこれ、絵が誤解を招く……。もうちょっと中核機関の……。

【魚崎委員】  中核機関1個だけでもいいと。

【高橋室長】  それはいいと。

【魚崎委員】  だから、片岡先生みたいなやつを……。

【高橋室長】  ただ、片岡先生のところも、別に東大の先生だけじゃなくてということなので、分散型を指向
しているわけではないということです。

【魚崎委員】  だから、予算、複数、10億満額とれたとして、2つとったら5億ずつで、ほんとうにそれこそ
ますますドリームチームって、ドリームを見るだけのチームみたいな話にならないかなと。

【片岡委員】  ちょうど今話題になっていますナノバイオ拠点が、年間5億ぐらいです。ですから、5億で研
究はできないと。ただ、現実問題としては、そこにプラットフォームをつくって、そこに装置を集めて、そこ
にある程度人がいて、お互いにインタラクションやって、融合研究やって、若い人が、例えばさきがけとか、
そういうものに応募していくと、多分5億の基盤で、何倍かわかりませんけれども、おそらく相当の額には
なるんだと思うんです。逆に言うと、こういう基盤のところに何十億円も入れるというのは、やっぱりナンセ
ンスだろうと。つまり、そうすると、それこそ日本中のお金をそこに集めることになるので。かといってあま
り少ないと、先生言われるように、ドリームチームはつくれないという感じなんでしょうね。

【魚崎委員】  だから、結局、ナノバイオと環境というか、エネルギーというか、ここに書いてある、ナノバ
イオが小さいというわけではありませんけれども、ここに書いてあることというのはものすごく大きい話で
すよね。エネルギー、日本の社会が変わるとか、世界が変わるとかというような話なんだけれども、それ
の基盤ということですかね。

【高橋室長】  もちろんそうです。ちょっと説明が……。

【魚崎委員】  だから、何か省エネハウスとか、省エネ自動車とか、省エネプラントとか、出口が見え過
ぎていることもあるのかもしれませんね。

【高橋室長】  そういったものをつくっていく基盤を、大学の中にしっかりつくっていきましょうということ
です。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。これは大変チャレンジングな構想で、自前の予算を持っている人が
集まらないと、予算的には動かないと。しかも、若い人たちの集団でありたいというようなことで、しかもそれ
が連携がとれているというようなことで、大変チャレンジングだと思うんです。それをやっぱり各大学がどう
いう形でやれば実現するというふうに考えるのか、知恵を多分求められていると思うんです。ああ、これだ
という形は、多分存在しないんじゃないかと思うんですよ。ですから、そういう面で、非常にいい考えを何と
かみんなで絞り出してもらって、それのいい提案があれば、そこに投入するということだと思います。

 多分このドリームチームというのが、日本中の一番のベストの人たちをそこに集めてくるというのには、
やや無理があるかなと。むしろ1つの大学を中核にして、こういう構想で一番いいものをつくって、10年
続くとすれば、その中で人の動きがいろいろ徐々に起きたりというようなことだと思います。ですから、
研究現場を知っている人であればあるほど、困難な点と可能性と両方見えていると思うので、ある面で、
1つみんなが知恵を出して、なるほどと思うようなものを出すと。これ、公募はいつごろになるんですか。

【高橋室長】  これは21年度予算ですので、21年度に入ってからです。

【榊主査】  入ったらということで。なるほど。そうすると、これから各大学でいろいろ知恵を絞ってやっ
ていくと。

【高橋室長】  ええ。今、先生がおっしゃったように、非常にハードルが高いので、そういうことがある
程度はっきりわかるような形で、公募要領の中で十分に文字化していくというか、そういう作業を我々
もやらないといけないなと思っております。

【榊主査】  わかりました。どうぞ。

【田中委員】  この提案はやっぱり画期的な提案なので、ハードルが非常に大きいということは画期的だと
言ってもいいのかもしれないんですけれども、最初は難しくても、何とかここに掲げている夢に向かってやっ
ていただきたいなと思います。

 それで、経産省というか、旧通産省でやった融合研とか、あるいはアトムテクノロジー研究体の経験で
申し上げますと幾つかありまして、1つはリーダー体制。先ほど、片岡先生からご指摘ありましたけれども、
少し大きくなるぐらい、あるいは産学独連携がはっきりする場合には、それぞれのバックグラウンドを持っ
た人が、やはりマネジメントの中枢にいたほうがいいと。単独でないほうがいいと思います。

 我々のJRCATのときには産官学の体制だったんですが、これは学のバックグラウンドを持っている寺
倉さんと、それから、産業界の丸山さんと、国研の私ということで、プロジェクトリーダーと副リーダー2人
という形で組みました。もちろん全権はリーダーにあるんですが、重要なことは必ずその3人で動いている
ということをやったわけです。これは運用と、実際の決断のプロセスというのは微妙なバランスがあるんで
すけれども、そういうことを10年やったんですけれども、後半はそれをさらにスイッチして交代するというよ
うなやり方をしました。

 それはプロジェクトの性格によって、十分に考えられたほうがいいと。独裁に走って大きな問題になると
いうことは、やっぱりあるんです。我々のプロジェクトは、相当にいろいろなもめ事がありまして、一番もめ
事の多いプロジェクトと言われたんですが、ただ一方、もまなきゃならんことをもんでいるプロジェクトだと
も言われたんです。ですから、それは1つの学習だろうと思います。

 それから、府省連携ということはここにうたっておりますけれども、十分に省の側でいろいろと話を進め
ていただきたい。あるいは、府省連携会議でそのことをクリアすることが必要だろうと。特にいろいろな機
器で、マルチハンド方式でやろうとした場合には、NEDOで買った機器とか、あるいはJSTで買った機器と
か、それから、経産省の中でも、NEDOと違うところで買ったものとか、そういうものを一緒につなげたりす
るというのはなかなか難しいとか、いろいろなことがあるんです。それは制度上の低さの問題をちょっと学
習をして取り除く努力も、同時にしていただきたいと思います。これは一気にはできないと思うんですけれ
ども、問題点だけは早く抽出して、そして何年かかけてそれをクリアしていただきたいと思います。それを
無理してやると、懲戒を受けるとか、訓告を受けるとか、こういう世の中はおかしいと、僕は実は思ってお
りまして、そこは少しフレキシブルにできるように、制度的な検討もぜひやっていただきたいと思っていま
す。

 それから、プロジェクトだから、お互いに協力してやるという相談も、多分一部分ではおやりになってい
ると思うんですが、そういういろいろなマルチファンドでやりやすいような環境づくりを、ぜひやっていただ
きたいと思います。若い人を育てるためには、やはり一緒のところに集まるというのは大変重要で、そう
いうことはここにも書かれておることですけれども、若い人の場合には、特にそれが重要だと思います。
特に課題設定型のようなプロジェクトの場合には、若い人は多分夢を持って進みやすくなるだろうと思う
ので、これはそういう意味からも、成功させていただきたいプロジェクトではないかと思います。

 それから、ここにも書いてありますけれども……、どこかに書いてありましたよね。研機関側が必要な
サポートをしようというようなことですよね。ここもとても重要なので、募集のときにいろいろ工夫していた
だいたほうがいいですよね。やはり研究機関が重要だと思ってサポートいたしますと、その継続性も担
保しやすくなります。以上、コメントです。

【榊主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【井上委員】  これがもし大学にというあれで、大学側の立場からちょっと何点かお聞きしたいんです
けれども、まず、このドリームチームのマネージャー、これは今のあれでは、このマネジメントに専念と
いうことは、大学の教員でもないんですね。第三者の何かそういう、大学のどういう位置づけ。教授の
場合には、教育、研究ほかに専念がありますから、マネジメントでないと。だから、新たに国立大学法
人としては、こういうポジションの人をつくるというイメージでとらえたらよろしいんでしょうか。あるいは、
これはNEDOとかそういうふうなのでも、集中研として招致して、大学の中に入ってきていますね、産学
官連携で。その場合には、大学の先生等がそれを兼ねてやる。そこには補助的にマネジメントに専念
する人。多分、創造科学なんかは今も大学の中に、昔はだめだったんですけれども、今は大学の中
にできて、そういうのがあるという、それのイメージなのか。あるいは、全くこれは違う新しい目で、しか
も大学の責任者も、相当これを10年、15年とやるべき、場所だとかいろいろなことを含めて支援する
ということを、大学としては約束しないとだめなのかということ。

 それと、実際に来られた研究者は、仮に10年だとしても、ほかの准教授、あるいは助教等に比べて、
そういう名称はつかない。あるいはついたとしても特任助教だとか、特任准教授的な、少し任期制が
敷かれたポジションになる。そうなると、やはりドリームチームということが、ほんとうにそういうことが
実践できるのかどうかだとか、そういう実際問題として、それは大学の自由で、大学の学長の裁量権
のもとで。

 ただ、このプロジェクト、プログラムを見る限りは、大学の責任者がそうすべきだとも何も書いてない
し、これはどういうふうに実際にとらえて……。そこも自由だと。そこもオリジナリティあるプランニング
が出ることが、採択の条件だということになるのか。それと、もし5億だとしても、例えば、NEDOプロジ
ェクトだって年間5億とか、そういうのはたくさんある。あるいは、創造科学だと、今でも人件費入れて、
年間10億とか15億ぐらいですか、そういうプロジェクトになっている。だけれども、これは文部省から、
今、プロポーザルされているから、特別扱い的に、やはり大学としては最大限協力しないとだめだと
いう位置づけなのか。このあたりがちょっと実際問題として、現場のほうの責任者の立場から見ると、
このあたりがよりクリアになっておけば、より魅力的なプロポーザルに映るような気がするんですけ
れども。

【高橋室長】  今ご指摘のようなところは、公募要領上ははっきりさせていかなきゃいけないと思っ
ているんですが、1つ、マネージャーのところですけれども、ここは私どもが書いたのは、プロジェクト
に関して自分で研究している先生が、このプロジェクトの責任者でもありますということだと、マネジ
メントに専念できないといいますか、自分の研究の一環としてこのプロジェクトをやりますというマネ
ージャーでは、ちょっと困るであろうということを言いたいわけでございまして、特別の職を大学が設
けなければいけないということではなくて、このプロジェクトをマネジメントする人は、このプロジェクト
の中で自分の研究を中心的に推進するということでは、マネジメントに専念できないのではないでし
ょうかと。場合によったら、今、井上先生がおっしゃったような、外からマネジメントを補助するような
人材を、このプロジェクトのために入れるというようなことは、1つ有効なのではないかと思っておりま
す。

 それから、大学はどのぐらいこのプロジェクトにコミットしなければいけないのかという点かと思いま
すが、その関与の度合いというのは、ほかのプロジェクトと比べてどうかと。あと、予算の規模から比
べてそれほど魅力的なのかという議論はいろいろあると思うんですけれども、やはりこれはある程度
機関のほうでサポートしてもらうというか、その機関としての裏書きがないと、なかなかこういうプロジ
ェクトをやっても効果が上がらないと思いますので、それは一定のお約束というか、そういったものを
お願いすることになると思います。

【片岡委員】  よろしいでしょうか。今の井上先生のと関係あると思いますけれども、我々のところではプロ
ジェクトマネージャーという形で、どういう方に来ていただいているかというと、物質・材料研究機構のフェロ
ーの堀池先生にお願いしています。というのは、今までマネージャーというと、悪く言うと一段下みたいな感
じで、お手伝いという意味だったんですが、やっぱりそれだと暴走してもとめられないと。例えば、堀池先生
なんかの場合は、ご自身で国家プロジェクトをやられていますし、それでかなり大所高所から見られて、逆
に言うと我々が暴走するのを防ぐというか。だけど、ご自分が拠点の中で研究をされるわけではない。だか
ら、多分そういうイメージのマネージャーじゃないかなと思いました。

【井上委員】  東京大学の中では、堀池先生には特別のポジションを与えているというわけではない?

【片岡委員】  特にありません。

【井上委員】  ないわけですね。

【片岡委員】  というか、特に堀池先生の場合は、物質・材料研究機構のフェローですから、逆に東大で、
例えば給料を払ったりとか、そういうのはかえってできないという形です。

【井上委員】  東京大学の中にその先生がおられて、どうこうされるにおいての許可というのは、東京大学
の教授会が与えているという形ですか。

【片岡委員】  いや、教授会は特に関係ありません。

【井上委員】  でも、何かの籍を……。今は何の籍も置かなくて、大学の中に居室を……、いいのかな。

【片岡委員】  だから、研究拠点という場所を、大学からもらっていますから。

【井上委員】  拠点の中の1人だということですね。

【片岡委員】  その中の場所のだれが何を使うことに関しては、教授会は一切関係ないです。

【井上委員】  今回の場合は、その方が責任者になりますよね。責任者も拠点ごと、大学の長が拠点ごと、
拠点長も含めて大学の中に取り込む。どういうポジションを与える、与えないは各大学の裁量に委ねられる
という位置づけですかね。

【片岡委員】  はい。それから、ポジションに関しては、最初、やはり特任の方の場合、専従義務があると。
これが大きな問題があったんですが、それはエフォート管理で。ですから、要するに、この拠点の専従義
務は、例えば80%。20%は、ここに来る間接経費から払います。だから、間接経費というのがものすごく
重要で、これもさっき申し上げたかったんですけれども、こういう拠点をやるときに、やはり間接経費をほ
んとうにこの拠点のために使うような体制になっていないと、僕は動かないと思います。つまり、そういう
プロジェクトマネージャーのこともありますし、それから、そういう特任教員の専従。例えば、ほかのプロ
ジェクトをやるといっても、ここに100%専従している人はできない。だけど、それを半分にすればできま
すから。ただ、その場合の給料をどこから払うのかというと、僕は間接経費しかないだろうと。ですから、
ある意味では、間接経費の使い方というのも、かなりこの拠点にコミットする形でないと、多分いかない
でしょうし、それを最初から、僕は確約すべきだと思うんです。そうしないと、多分これはできないんじゃ
ないかと思います。

【榊主査】  これ、ほんとうは1時間か2時間議論して、いろいろ公募要領に盛り込む材料をつくっていく必
要があると思いますけれども、幾つか時間の制約もありますので、今いろいろ出てきたようなことを含めま
して、こういうときはどうだというようなことを、事務局にどんどん出していただくと。そうすると、いろいろ知恵
が出てくると思います。あるいは、逆にこうしたらどうかというようなことを出したらと思います。私も、今伺っ
ていると、マネージャーというのと、それから、プロジェクトの責任者と、あるいはディレクターといいますか、
そういったものとが一体どういうふうに関係してくるのかということをもう少し整理しませんと、ちょっと議論
ができないんじゃないかという気がしまして。ですから、幾つか片岡先生がやっておられるようなモデルも
活用しながら、ちょっと組織のあり方について詰めていく必要があろうかと思います。

 ちょっと時間の制約がありますので、ここの話については、皆さんの中でいろいろ考えていただいた質問
とか知恵を事務局のほうに送っていただくということで、とりあえず一区切りさせていただきたいと思います。
よろしいでしょうか。

 それでは、最後に時間が許せば、またここに戻ってまいるといたしまして、次に、元素戦略の拡充につい
てのご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【高橋室長】  資料5-4でございますけれども、これは19年度から推進している元素戦略でございますけ
れども、2ページ目をごらんいただきたいんですけれども、このたび革新的技術戦略ということで、レアメタ
ル代替・回収技術といったものが、総合科学技術会議のほうで採用されているわけでございます。

 これは具体的にはどういうことかと申しますと、環境負荷を少なくしていくために、さまざまな製品に使わ
れているレアメタルについて、レアメタルというか希少元素ということだと思いますが、これを代替していく。
もしくは、回収してリサイクルしていくといったことをやっていきましょうということでございます。この総合科
学技術会議の戦略に対応しまして、元素戦略の中でも新たに3ページをごらんいただきたいのでございま
すけれども、レアメタルの代替や回収ということに焦点を絞ったプロジェクト型の研究をやっていこうと考え
ております。

 ここの図のところで説明をしますと、非常に単純化しているわけでございますけれども、材料を組み上げ
て製品にすると。この製品をスクラップにして、さらにそのスクラップからリサイクルをしていくという流れが
あるわけでございますけれども、そもそも材料をつくっていくという中で、この希少元素をなるべく使わない
でやっていきましょうと。これが元素戦略なわけでございますけれども、こういうことをやっております。さら
に、スクラップのものから希少元素をリサイクルしていくという中で、我々元素戦略ができることがあるので
はないかということでございます。

 4ページをごらんいただきたいのですが、具体的な研究開発のポイントとしましては、1つは、リサイクル
しやすい材料設計を考えてみたらどうだろうかということでございます。そして、もう一つは、2番目でござ
いますけれども、希少元素を回収する技術。効率的な回収・リサイクル技術開発ということがあり得るで
あろうと。それから、3つ目でございますが、回収された材料といいますのは、不純物が混ざると若干低
品位であるという問題がございますので、そのような低品位な材料でも、ある程度の性能特性を発揮で
きるような技術開発をしたらどうだろうかということでございます。この3点は、今までの元素戦略に新た
な視点としてこれを加えて、プロジェクト型で推進したらどうかということで考えておりまして、今、元素戦
略に配分されている額が6億円程度でございますが、これを増やしまして、新しい課題を採択していこう
と考えてございます。

 5ページ目以降は、その研究の課題の例として考えられるものを、事例として紹介しているものでござ
います。5ページ目は、リサイクルしやすい材料設計の例でございまして、構造材料を例にとってござい
ます。6ページは、その回収技術のところでございまして、分離・回収する際の新しい技術開発というこ
とでございます。最後は、低品位材料での新たな機能開発というものでございます。

 概要は以上でございます。

【榊主査】  ありがとうございました。このご説明についての、いろいろご意見やコメントをいただきたい
と思いますが、いかがでしょうか。この資料によりますと、3つの切り口で、ほぼ5,000万円規模の課題を
4つ採択して、額としては2億円ぐらいの額で、3つの新しい切り口に対応していくというような計画かと思
います。いろいろコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【玉尾委員】  1つだけいいですか。4ページの一番上の、全部がリサイクルが基本になっていますが、
一番上の「リサイクルしやすい元素による材料設計」の、例えば2つ目に書いてあるようなユビキタス元
素であるとかいうようなキーワードが出てきますと、リサイクルの容易なというだけではなくて、基本的に
リサイクルは不要なものも含めるという基本的考えでよろしいですか。

【高橋室長】  はい、そうです。ですから、この1番は、今までの元素戦略と非常に近いものになってい
ます。

【玉尾委員】  近いですね。代替も含めた基本的な考え方でよろしいですね。

【高橋室長】  はい。

【玉尾委員】  はい。わかりました。

【榊主査】  そうすると、先ほどの玉尾先生の話とすると、少し言葉を工夫したほうがいいかもしれない
ということですかね。

【玉尾委員】  はい。ちょっと最初のところは少し変えていただいたほうがいいですね。

【榊主査】  注意深く読めばいいんですけどね。

【玉尾委員】  そうなんですけれども。はい。

【榊主査】  しなくてもいいという。

【玉尾委員】  このままだと、必ずリサイクルが含まれるようになっているので、そうでなくてもというのを、
ぜひお願いしたいと思います。

【高橋室長】  はい。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。

 この辺については、今までの元素戦略のいろいろな議論に拡充するようなプランですので、わりとイメー
ジがはっきりしていて、この線で、より強化されるとすれば、大変いいことではないかというのが皆さんの
受けとめ方じゃないかと思います。先ほどのほうは、非常に新しいシステムなものですから、どういうふう
につくっていくのか。まだあと時間が許せば、ちょっと議論を続けたいと思っているところなんですけれども、
この元素戦略絡みのほうについて、あと数件ご意見があればお伺いして、また次のほうに移っていきたい
と思いますが、いかがでしょうか。特になければ、これについてはこういうことで、概ね結構であると。少し
言葉について、検討いただくということにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、時間の都合もありますので、この元素戦略のお話については概ね理解させていただいて、
概略結構だというのが委員会のコメントで、言葉の検討をお願いしたいということにさせていただきたい
と思います。

 それでは、次に、21年度に向けた事業がもう一つ考えられておりまして、電子顕微鏡関係の事業について

、ご説明をいただきたいと思います。お願いします。

【松下調査官】  この案件は、現在、リーディング・プロジェクトという形で、次世代電子顕微鏡要素技術
開発というもので、18年度、19年度で7件採択しまして、1件、19年度で終了しておりますが、残りまだ6課
題、開発を進めております。その要素技術を開発しているというのがリーディング・プロジェクトでやって
いることなんですけれども、それらをシステム化した上で、さらにこれまで電子顕微鏡が不得手としてきた
ような観察対象等にまで活用領域を広げるというようなことに着眼して、主に内容が組まれております。

 タイトルを申し上げますけれども、電子顕微鏡の新規活用領域の開拓と技術開発というタイトルでござ
いまして、一番最初のナノテクノロジー研究における電子顕微鏡の重要性というのは、皆様ご存じのよう
に、電子顕微鏡というのは、直接原子スケールで物が見えるという強い観察ツールでございまして、加え
て産業界側から見ますと、品質管理等で非常に重要な基盤技術でもあるという位置づけがあります。

 2番目の電子顕微鏡活用の新しい可能性ですけれども、そのように直接観察可能なんですけれども、
以下のような不得手な観察対象とか、特性を改善すべき観察条件が存在します。1つ目としましては、
化学構造・電子状態の動的な計測。2つ目が、電子線照射によって構造が破壊される「柔らかい」物質
をどうやって入れるかというような方法。それから、3つ目が、深さ方向次元分解能を上げてやるという
ことが必要だろうということです。これらを克服しまして、電子顕微鏡が活用されるような領域を広げて
やることで、我が国の基礎・応用科学の分野におけるイニシアチブを高めることは、ひいては産業分野
での国際競争力の強化につながるだろうということです。

 3番目のLP、リーディング・プロジェクト「次世代電子顕微鏡要素技術開発」と、JSTで今やっておりま
す「先端計測機器開発」との関係については、これは役所の中の切り分けの説明ですけれども、一番
下の青いところを見ていただきますと、この研究開発は、リーディング・プロジェクトで得られた成果を
生かしつつ、化学変化・電子状態のその場観察、あるいは損傷を受けやすい有機材料や無機非晶質
材料等のソフトマテリアル、あるいは分子構造・DNA等の検出を行うなど、電子顕微鏡が不得手として
いる点を克服するということで、新たな活用領域を開拓するものだとご理解いただければと思います。

 2ページを見ていただきますと、実際の活用の事例ということで4つ挙げてございまして、例の1が、先ほ
どの資料の1に相当します、化学変化、あるいは電子状態変化の可視化をするもの。例2のほうが、2番
目にありました、電子線照射で構造が壊れやすいような柔らかい材料をどうやって見るかというような内
容。3つ目が、前ページの3に相当します、深さ方向での情報も、電子顕微鏡で取り込んでやろうというよ
うなことになっておりまして、例4としてありますのは、例2のソフトマテリアル観察のうち、特に位相差電子
顕微鏡を使いまして、DNA等を一括で読み取ることによって、超高速でのDNAシーケンサーというものを
活用できるという、新規な応用というようなものを開発してみてはどうかということが挙げてあります。

 以上です。

【榊主査】  ありがとうございました。今のご説明の質疑をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。

【長我部委員】  言葉の問題なんですけれども、1ページの下に、「LP、リーディング・プロジェクトで得ら
れた成果を生かしつつ」というのがあるんですが、これはその前のプロジェクトに参画している機関でな
くても、別に応募できるわけですよね。

【松下調査官】  そうです。

【長我部委員】  ちょっとそこが引っかかったような気がしまして。

【松下調査官】  わかりました。

【長我部委員】  あと済みません、もう1件、2ページ目にいろいろな例があるんですけれども、例4のシ
ーケンシングが書いてあるんですけれども、DNAを対象とすることはわかるんですが、ちょっとここを読
みますと、ハイスループットのシーケンシングみたいなことがうたってあって、ちょっとフィージビリティとし
て例を出すには苦し過ぎるんじゃないかと思うんですけれども。と申しますのは、この技術をシーケンシ
ングに流用して、今、いろいろやっているような大規模パラレルとか、それを凌駕するようなというような
というイメージが非常に持ちにくいんですが、何か具体的なあれはございますでしょうか。

【松下調査官】  この4番目については、2からあえて取り出して入れてありますのは、いろいろな研究
者の方々にお話をお聞きしている中で、米国で1,000ドルゲノムというのがございますね。あれは2015年
までということで開発して、一人一人分のゲノムを1,000ドルで解析できるようにという話なんですけれど
も、それに対抗し得る我が国の独自技術だけで、それに対抗するようなシーケンサーというのはでき得
るという、まだ実践できていないのであれなんですけれども、あくまでも1つのモデルとしてこういうのがあ
り得ますよという研究提案がございまして、それも含めて、例として挙げたらどうかということで、あえて
独立して4番目に入れたという事情をご理解いただければと思います。

【長我部委員】  1,000ドルシーケンシングの話はわかりますし、実際、ベンチャーがかなり製品を出し
ていて、キャピラリーアレイから変わりそうになっているし、それに対して日本の独自技術というのもわ
かるんですが、出すんでしたらもっと違ったコンテクストといいますか、バイオの研究の範疇でやったほ
うがいいのかなと。あるいは、言ってみたほうがいいのかなという気がしまして、電子顕微鏡のアプリケ
ーションとしてやるには、ちょっと無理があるんじゃないかなという感じが、個人的にはいたします。

【松下調査官】  わかりました。

【榊主査】  私はこういう分野のことに疎いものですからあれですが、ちょっとその辺検討いただいて、
なかなかこういう事例というのは出しにくいもので、多分簡単にできるものだとすると、何が新しいのか
と。一方で、大変難しいと、そんなことができるのかというようなことで、その辺、ちょうど頃合いのよさ
そうなものをリストアップできるかどうかということかと思います。少し事務局で検討いただいて、コメン
トについて。

【松下調査官】  わかりました。

【榊主査】  どうぞ。

【魚崎委員】  この電子顕微鏡だけを特に取り上げる、こういうことを聞いていいのかどうかわかりま
せんけれども、例えば、ソフトマテリアルとか何かだと、走査プローブ顕微鏡がものすごく進歩してきて、
走査トンネル顕微鏡だとか、原子間力顕微鏡だとか、ノンコンタクトだとかいろいろなものが発達して
いるわけですけれども、電子顕微鏡が不得手とするものに無理にやる、さっきのDNAの話もそうなん
ですけれども、やっぱり向かないものを無理やり向かせる必要があるのかどうかということもあるんで
すけれども、その辺の考え方はどうですかね。もっとソフトマテリアルだと言い切ったところで、生きた
状態で水の中で原子、分子レベルの分解能で見れるようになってきている中で、あえてどこまでやる
んですかということです。電子顕微鏡というのは、ものすごく特別のもので、これはずっと……。

【松下調査官】  特別扱いしていいかどうかということですね。

【魚崎委員】  ずっと保護していかなきゃいけないのかということなんです。

【高橋室長】  これはJSTの事業で、先端計測機器の大きな事業が走っております。それの中で、かな
り今、先生ご指摘のような計測機器についての対応ということもやっているんだと思いますが、ここで最
初のページにありましたLPの要素技術の技術開発という中で、我が国の電子顕微鏡産業ということをか
なり強く意識したプロジェクトをやったわけでございます。その中での成果もあるわけでございますが、
今回はそういうLPを発展させるというような考え方で、この事業を組んでいるということです。ナノテクノ
ロジーの中で、電子顕微鏡が今まで果たしてきた役割ですとか、そういったことを踏まえて、電子顕微鏡
の重要性は特に高いというような考え方で、今回は特に内局予算でこういうことを考えているということで、
先生がおっしゃったような点は、先端計測機器の事業などのほうで、ある程度カバーできているのではな
いかなということもございますので、よろしくお願いします。

【栗原委員】  電子顕微鏡の利用で、ここで出ているような化学構造とか、ソフトマテリアル観察というの
が、従来のレベルを超えてほんとうにできれば、非常にチャレンジングな部分があるんじゃないかと思い
ます。実際には、非常に単純なことかもしれませんけれども、普通だとチャージアップなんかすれば有機
物は壊れてしまうので、もしそういう部分が何か解決されるような、実際にそういう技術とか、色収差補正
とか、そういうものに対して新しい要素技術がもし開発されているのであれば、そういうものをある程度収
拾されてこういう提案がされているのであれば、従来の使い方から超えている部分があるんじゃないかと
思います。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、この件に関しては、従来のリーディング・プロジェクトとのかかわりということが1つ背景にあり
ますけれども、今度の計画については、今のコメントを少し生かして検討いただきいたと思います。

【松下調査官】  ありがとうございました。

【榊主査】  はい。ありがとうございます。

 それでは、次の件に移らせていただきますが、ナノネットにつきまして、制度改正が検討されているとい
うことですので、どんなことが予定されているのか、簡単にご説明をお願いいたします。よろしくお願いい
たします。

【下岡補佐】  ナノテクノロジー・ネットワークにつきましては、事業としては全国の26機関の大学や、独
立行政法人が保有しております最先端のナノテクノロジーの研究施設を共用化することによりまして、ナ
ノテクノロジーの研究基盤の強化や、あと異分野の融合を図るといった事業でございます。こちらの事業、
昨年度の予算でございますが、17.3億円、ことしこの事業規模を維持するという観点で、また同額の17.3
億円の概算要求をする予定でございます。

 ことしから概算要求の方針としましては、今まで委託費という形でやっていたんですが、補助金化して概
算要求する予定でございます。補助金化することによりまして、各補助機関の財政、委託費というのは、
各国の事業を代行してやっていただくという性質のものであったんですけれども、補助金化することにより
まして、各事業やっていただいているところに対する財政援助となります。これによりまして、彼らの活動
の自由度が向上するということでございますので、平成21年度はそういう形で概算要求することを考えて
おります。以上です。

【榊主査】  ありがとうございました。額を維持して、かつ自由度を増すように尽力いただくというようなの
が、今回の枠組みの中心かと思います。これについて、いろいろご意見いただければと思います。いかが
でしょうか。

【田中委員】  よろしいでしょうか。

【榊主査】  どうぞ。

【田中委員】  導入いたしました課金制度の状況についてちょっとお聞きしたいんです。どなたか覚えて
いないんですが、実際はなかなか予算によって、課金に使えたり使えなかったりするという不便があって、
なかなか動きにくいんだというようなのを聞いたことがあるんですが、今、どのような状況になっています
でしょうか。

【高橋室長】  課金制度はそれぞれの機関、ちょっと資料配らなくて申しわけなかったんですけれども、
実際に導入が進んでいるわけでございます。実は、課金制度の一番のネックは委託費であったから、課
金がうまくいかないということなんです。つまり、委託というのは、100%国がお金を出すというのが原則な
わけですので、それにもかかわらず課金しちゃうというのは何かおかしいわけですけれども、今回は補助
金化ということなので、これはその機関のある程度の負担ということを前提にしたサポートという形になっ
てくると思います。ですので、そこにかかわる人の人件費の扱いや、エフォート管理の扱い、それから、課
金という形でその事業にどうお金を入れるのかというのも、委託費のときよりは若干規制というか、クリア
しなければならない手続が緩くなるのではないかなと思っております。

【榊主査】  ほかにいかがでしょうか。

 第1期から考えますと、これで5年プラス2年でしょうか、ちょうど8年目を迎えるところで制度が新しく変わっ
ていくということで、米国のいろいろあれを考えますと、30年近く前から始まって、いろいろ試行錯誤で大分
システムががっちりしてきたと思います。文部科学省のご尽力のおかげで、そういう面でこれももう一皮む
けて、本格的な運用ということになろうかと思いますので、いろいろご注意いただいて、ぜひいい形に進め
たいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それで、きょうは先ほどちょっと議論したことも含めまして、概ね検討すべきこととご報告すべきことはこ
れでカバーされたんですけれども、ほぼ予定時刻になっているんですけれども、先ほどの議論の中で、や
はりドリームチームをめぐる議論については、エンドレスの面はあるんですけれども、せっかく皆様お集ま
りになっておられるので、お許しいただければ、あと10分ほど少し追加の質疑をさせていただいて、いろい
ろ事務局でこれから立案をされるのに参考になることがあろうかと思いますので、再度ちょっと皆様、ご意
見、あるいはご質問があればお伺いをして、10分ほどして会合を終わりにさせていただきたいと思います。
いかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】  最後に片岡先生がおっしゃったことが非常に大事だと思っているので、強調したいんです
けれども、結局、間接経費で支援するということが行われないと、ここに絵にかいてあることはほとんど実
現できないんです。基盤はつくって、その人たちがほかの科研費とか何とかに応募して、研究費は自分で
稼ぎなさいということですが、プロジェクト予算で雇われている人は、100%雇われていたら、専念義務があ
ってほかに応募してはいけないということになっていて、ですから、エフォートを80%か何かにして、残りの
20%は自由にするんだということにしないと。少なくとも、それは文部科学省が変えてくれればいいのかも
しれませんけれども、専念義務ということがきつく言われていてですね。ですから、先ほどの言われたこと
は非常に大事だと思いますので、強調したいと思います。

【榊主査】  ちょっとそのことに関しては、井上先生が質問されたこととも全部かかわってくると思うんです
けれどもね。つまり、大学での雇用というものと、こういうプロジェクトの中での役割がどういう形で整合す
るのかということで、1つの考えは、全部間接経費で雇って、大学とはある面で、大学の研究……。

【魚崎委員】  ちょっと違うんですね。つまり、このプロジェクトで直接経費で雇われた人は科研費に応募
できないということで、大学の先生はいいんですけれども、そうじゃなくて、このプロジェクトで、今、若手を
雇用すると言っていますよね。それでこのプロジェクト予算の直接経費で雇用されてしまうと、このプロジェ
クトに専念義務がありますから、ほかの研究費に応募してはいけないということになる。

【榊主査】  ああ、そちらのほうの話のですか。

【片岡委員】  ですから、0-100である必要はなくて、これは文科省が決めることでもなくて大学が決める
ことで、文部科学省のほうから言われたのは、エフォート管理すれば、別に専念義務は関係ありませんと。
ですから、直接経費から100%給料を払うと、それは専念義務が発生しますけれども、給料の80%をプロ
ジェクトから払って、残りの20%は大学が払えば、その20%のエフォートに関しては、一切何をやろうと自
由ですと。それは今でもできるんですね。

【榊主査】  そちらの意味合いで、今、言っておられるんですか。

【片岡委員】  だから、大学がそれをやってくれないと、少なくともプロジェクトで雇用された特任の教員は、
ほかに応募ができないということです。

【榊主査】  ああ、そういう意味合いでですか。

【片岡委員】  ですから、そういう意味で、間接経費でなくても別にいいですが、大学の支援は必要だとい
うことは間違いないと思います。

【榊主査】  ただ、ちょっといいですか、今、私もちょっとわからなくなったところがあるんですけれども、こ
の予算自身が、ほかの研究費を想定しているという仕組みだとすると、これで雇用されたとしても、ほかの
研究費にアクセスすることを禁止しないでやるというやり方もあり得るんじゃないですか。

【片岡委員】  ですから、それは別に禁止していないんですね。つまり、大学の間接経費を使えば……。

【魚崎委員】  100%でもできるんじゃないかということです。

【榊主査】  いえいえ、そうじゃないです。100%であってもですよ。

【片岡委員】  それはもちろん、それができればいいですが、それは……。

【榊主査】  いや、ちょっといいですか。いろいろ議論が少し詰め切れていないところがあって、
それが……。

【高橋室長】  ただ、これは委託費なので、先ほどのナノネットの議論と同じなんです。委託費というのは
100%委託するということですから、当然100%、委託された方はそれに専念していただかないといけない。
論理的に当然のことなんです。

【榊主査】  そういうことですか。

【魚崎委員】  そうすると、この科研費に応募して何とかかんとかというのにはつながらないと。

【高橋室長】  だから、それはそういう方法をとっていただくというのは……。

【榊主査】  結局、そういうことになるわけですか。そうすると、雇用に関してはそういうことであるということ
ですね。わかりました。幾つかおもしろいし、また検討しなくちゃいけない点かなと思います。

 もう一つは、井上先生が先ほど言われていました、大学で雇用されている教授とか、そういうポストの
人が、仮にですよ、仮に教育に専念して雇用されている教員がいるとしますね。それと同様に、研究の
マネジメントのために雇用されている教授というのは、今の枠組みの中ではあり得ないのかあり得るのか、
その辺はどうなんですか。

【井上委員】  学長といいますかが、そういう人を雇うと言えば可能です。

【榊主査】  今のところ可能であると。

【井上委員】  はい。ただし、教授の場合には、ルール上、教授はどこかの部局に属さないとだめなん
です。本部の事務で教授相当、こういうようなことは簡単にできますが、ほんとうの教授の場合には、我
々の大学は、少なくともどこかの部局に属さないといけない。となると、部局の教授会の議を経る必要が
あります。

【榊主査】  それさえオーケーになればというような感じですか。

【井上委員】  そうですね、可能です。ですから、そのときの部局長が、どうしても部局の戦略上、教育、
研究の従来のオーソドックスな教授以外に、マネジメント的な人を教授とすると言えば、それは可能です。

【榊主査】  そういうことですか。

【井上委員】  はい。それは可能なんです。だけれども、数は少ないし、この場合にどうするかといった
ようなこと等々。それと、場所を相当とりますので、今、文部科学省は新築の建物等は大変厳しい状況で、
自前の資金でやらないとだめだというときに、かなり大きなスペースをとったときに、そのリーダーの人も、
大学外から来られてとなると、ほかへのね、そういうことも、やはり全体的なバランスとしては、ちょっと考
慮する必要はあるかもしれないです。ルール上は、法人はかなり長の裁量のもとで可能になってきていま
すから。

 ただ、私はそれよりは、ほんとうにドリームチームを集めようとすると、もちろんヘッドの人よりは、若手
のほんとうに研究される人が、やはりオーソドックスというか、正規のパーマネントに近い形での准教授、
助教というポジションではなくてということになりますと、往々にしてほんとうに優秀な人が来て、腰を落ち
着けて研究できる環境。それと、やはり10億というのは、設備なんかをどの程度。設備が含まれていたり
すると、微々たるものになります。管理、人件費だけに使えるお金なのか。このあたりによっても大分違
うと思うんですけれども、ちょっと各大学においては、いろいろ戦略上考えることは多々あるんだと思いま
す。できるだけそういう疑問点はQ&Aで、WPIのときもQ&A集というのが出ましたから、そういうふうなの
で対処できれば、多分問題は少ないんだとは思いますが。

【榊主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【片岡委員】  済みません、今の件で。本部、特任教授の雇用に関しては、我々の大学は、教授会の部局を
経ずに……。

【井上委員】  特任教授はいいんです。特任教授は報告だけです。ただし、今の場合には、だからリーダー
の人も、特任教授になりますと教授会も出られないし、こちらに専念するということであれば、やはり特任
という名前は本部の人事簿には特任という名称はつけているんですか、各先生が名刺を配るときには特
任をとってもいいというルールにはしたんです。やはり特任となりますと、3年か5年ぐらいの腰掛け的とい
う感じで、どうしても普通の教授とは違う。審査も非常に軽く、甘く、ほとんど審査がない。だから、そういう
ような形で、ドリームチームは、やっぱり正規の同じように審査されて選ばれた人がなっているという形を
とったほうがいいようにもとりますし、しかし、それはまた柔軟性に欠けるということにもなりますから、柔軟
性があって、なおかつ非常に高いステータスで選ばれているという、こういうことをいかにつくり出すか。大
学もそれに協力する、支援するという形をうまくつくり出せればなと思いますけれども。

【片岡委員】  ですから、僕らの経験からすると、確かに5年だと、多分先生が言われたような懸念があり
ます。現実に我々はそうなんです。だから、この施策をもしおやりになるのであれば、やっぱり10年という
のは絶対必要だろうと。10年というのは、今までの時限の研究所とかセンターはみんな10年ですから、
そこにいる方たちは、原理的には10年任期になっています。ですから、多分それと同じになるので、それ
なりに。それから、その間に専任になったりとか、あるいは、専任を外れて特任になる人もいるかもしれま
せんし、そういうことはできるかなと。ですから、これが5年とかそういう期日だと、多分成り立たないと。

【井上委員】  10年というのは、東京大学の先端研だとか、そのあたりは10年云々ですけれども、ただ、
一般の附置研ないし共同利用型研究所は、10年とかそういうのは各大学の自由で、パーマネントなとこ
ろが今でも大部分だと思います。

【榊主査】  遠藤先生。

【遠藤委員】  このドリームチームは非常におもしろいと思うんです。今回、1つの概念で、各省連携って
入っていますよね。ぜひ制度を、小さく産んで大きく育てようという、これぐらいの新しいコンセプトを盛り
込んでほしいんです。

 例えば、1つ例として、ドリームチームの中に企業人を入れたいというケースもあると思うんです。例えば、
ある分野で、非常に国際的な活躍をしている企業人を大学へ連れてきて、一員としてこのプロジェクトを
持っていていただくと。そうすると、今のような制度がちょっと問題になってくる。例えば、企業に籍を置いた
状態で、大学が給料を払うということが必要になってくるんです。その場合、年金の問題だとかいろいろ
あって、とにかく大学へ籍を置いて、大学から給料を払う。本人にいくようにしちゃうと、企業に籍を置けな
くなっちゃうんですね。その場合にどうしたらいいかというと、1つの手として、企業に籍があるけれども、実
質、大学勤務すると。給料は大学から企業に払って、企業で差分を補てんして本人にいくと。これだとでき
るんですけれども、今のシステムは、それができないんです。

 これはものすごくいいこと、ドリームチームって提案しているんですけれども、例えば、企業のものすごく
優秀な方を大学に一時的に連れてきて、このプロジェクトのために社会貢献を果たすと。そして、またい
ずれ企業に戻っていくという仕組みを、もしこの中に入れ込むとしたら、今の公務員とか大学の独立行政
法人の枠組みの中ではできないんです。今、文科省から、例えば企業に行って、また文科省に戻る、これ
は経産がやっていますよね。一時的に企業の部長さんなんかで出ていって、また戻ってくる。米国もそれを
やっているんですよ。ある時期NPOに出て行って、社会貢献を果たして、社会の仕組みをよく理解した上で、
またいろいろな政府機関に戻ると。

【魚崎委員】  文部省もやりますよ。

【遠藤委員】  やりますよね。これ、大学と企業との間の行き来という点では、このプロジェクトに盛り込め
るんですよ、そういう非常に先進的なモデルが。ところが、そういった1つの壁を打ち破らないと実現できな
いんですけれども、この辺、室長はどんなふうに考えていますか。

【高橋室長】  もちろん独法制度上のそういった点は、十分こちらでも検討しまして、なるべくそういう不都
合がない形で。制度上難しければ、どういう方便があるのかということも、十分に考えさせていただきたい
と思っています。

【遠藤委員】  ぜひそれが入ると、小さく産んで大きく育つという、いろいろな意味でのブレークスルーに
つながっていくと思うんです。ぜひご検討いただきたいと思います。

【榊主査】  ほかに何かありますでしょうか。よろしいですか。

 それでは、先ほど申しましたように、この件に関して、またお考えや質問があれば、事務局のほうにメール
で送っていただいたりというようなことで、ぜひご協力のほどお願いいたします。

 きょうの会合で予定いたしましたものは、これで一応全部終わりであります。議論の結果は、月末に開か
れます研究計画・評価分科会に報告をいたします。それから、このナノテク・材料委員会の活動としまして
は、今回の会合で一区切りということに相成ります。任期その他の都合で、この委員会での活動が、きょう
で一応、会合としては終わりということになると思います。長らくご協力をいただきまして、ありがとうござい
ましたということを申し上げますとともに、まだちょっと、先ほどのメールその他でご尽力いただくことが残っ
ておりますので、引き続きよろしくお願いしたいということを申し上げまして、これで閉会とさせていただきま
す。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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研究振興局基礎基盤研究課

(研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室)