第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成20年7月23日(水曜日) 10時~13時

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.出席者

委員

 榊主査、井上委員、魚崎委員、潮田委員、遠藤委員、大泊委員、岡野委員、長我部委員、片岡委員、岸委員、北澤委員、栗原委員、竹山委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員

文部科学省

 磯田研究振興局長、倉持大臣官房審議官、大竹基礎基盤研究課長、高橋ナノテクノロジー・材料開発推進室長、下岡室長補佐 他

オブザーバー

(委員外)
 中山プログラムオフィサー(JST)、岡崎教授(名古屋大学)、長田特任顧問(理研)

4.議事録

【榊主査】
 それでは、予定の時刻が参りましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。
 本日は、毎回のことですが、忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
 本日、皆様ご承知のことと存じますけれども、7月11日付で文部科学省の人事異動がございまして、研究振興局の局長と審議会が異動されておられます。お二人からごあいさつをいただきたいと思います。
 まず、磯田局長、お願いいたします。

【磯田局長】
 おはようございます。7月11日付で研究振興局長を拝命しました磯田と申します。
 私は、この前は私学全般を担当しておりました。その前は、高等教育局審議官ということで、高等教育全体の担当をしておりました。さらに、その前には、岸委員と一緒の筑波で、筑波大学の理事として、財務、施設等々を担当しておりました。どうぞよろしくお願いします。
 本委員会につきましては、重点推進4分野として政府挙げて推進しているところでございますけれども、我々としては、大変大きな重要な分野の一つとして認識しております。これからも新しい施策、また、そのための必要な予算の確保について全力を挙げてまいりたいと思っておりますが、昨日の経済財政諮問会議においても非常に厳しいシーリングの議論が進められております。
 例えば、現在、科学技術関係は前年同でございますけれども、それをさらに2パーセント深掘りをするというようなこと、あるいは国立大学であれば、現在1 パーセントのシーリングですが、△(さんかく)1ですけれども、それを△(さんかく)3にするという議論が進められておりまして、来週の閣議了解に向けて、最終的な協議をしているところでございます。現在、高等教育を中心に、そのような深掘り、さらに厳しいシーリングの案とならないように努力をしているところでございます。
 さはさりながら、与えられた予算の中で評価を適切にしていただきまして、研究開発の集中と選択を効果的に行っていただき、資源の有効活用をぜひお願いしたいと思います。現在、政府におきましては、無駄撲滅という名のもとに、効果の高くない施策につきまして、順次、削減するという強い方針で議論が進められているところでございます。
 本委員会につきましては、これまで10回の議論を重ねていただき、さまざまなご意見をいただいていると伺っております。先般、総合科学技術会議が取りまとめました革新的技術戦略を受けた元素戦略や、環境エネルギー技術革新計画等を踏まえたナノテクノロジーを活用した環境技術の開発につきまして、本日いただいたご意見を踏まえて概算要求に臨むことを検討しているところでございます。ぜひ、先生方にこの委員会の中で十分ご議論賜り、また新しい意見を加えていただきまして、私どもの施策推進にご支援、ご助言賜ればと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 私、たまたま磯田局長が教員養成の特別講演をされたときに伺っておりまして、初等教育の人材育成の問題に大変造形の深い方で、カリキュラム学会の学会員までしておられるということで、人材育成という点で大変感銘を受けました。ナノテク分野はやはり人材育成が非常に大きな問題でございますので、そういった意味で、これまでのバックグラウンドをさらに私どもに生かしていただいて、ぜひリーダーシップを発揮していただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。
 倉持審議官は、途中からご出席の予定……今、ちょうどいいタイミングでいらっしゃいました。それでは、到着早々ですけれども、ごあいさつをお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【倉持審議官】
 恐縮でございます。11日付で藤木の後任で参りました倉持と申します。よろしくお願い申し上げます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局より資料の確認をお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、資料の確認をお願いいたします。
 テーブルの上の資料でございますが、1枚目は議事次第でございます。本日、第11回でございます。
 続きまして、資料1は、前回、第10回の速記録でございます。
 資料2でございますが、今後のナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発の進め方についての報告書でございます。
 資料3は、スーパーコンピュータのナノ統合シミュレーションソフトウェア開発の外部評価報告書概要でございます。
 資料4は、統合シミュレーションソフトウェアの外部評価の報告書そのものでございます。
 資料5、シミュレーションソフトウェアの報告を受けた資料でございます。
 資料6、シミュレーションソフトウェアの開発について、報告を受けてという文字の資料でございます。
 資料7でございますが、理研の長田特任顧問の生命分子の集合原理に基づく分子情報の科学研究ネットワーク拠点についての資料でございます。
 続きまして参考資料になりますが、参考資料1、これは片岡委員のナノバイオインテグレーション拠点についての資料でございます。
 参考資料2は、以前の当委員会におきまして、片岡委員がプレゼンテーションをいたしました資料でございます。
 資料は以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 もし、欠落があれば、事務局にお知らせいただきたいと思います。
 なければ、最初に、前回の議事録の確認をお願いしたいと思います。お読みいただいて修正の必要がある場合には、今月末の7月30日までに事務局にご連絡をお願いいたします。
 早速、本日の議題に入ってまいりたいと思いますが、その前に何かご発言があればお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。
 それでは、今回の議事は、ごらんのとおり3件予定されておりまして、まず第1は、ナノテクノロジーを活用した環境技術の開発に関する検討会の報告書についてでございます。皆様ご承知のとおり、研究振興局と研究開発局の合同検討会としてこの案件が議論されてまいりました。その結果、報告書がつくられつつあるわけですけれども、この検討会につきまして取り上げたいと思います。
 まず最初に、事務局から、審議の経緯と報告書の概要についてご報告をお願いします。

【高橋室長】
 それでは、資料2をごらんいただきたいと思います。
 こちら、今、主査からご紹介のありました検討会の報告書でございます。検討会につきましては、40ページをごらんいただきたいと思います。検討会の開催についてということで、この検討会は平成20年4月1日付をもちまして振興局と開発局の両方の勉強会、検討会という形でスタートしてございます。その趣旨は、環境問題を解決するためにナノテクノロジーを活用した技術開発で新しい材料、ブレークスルーを目指していこうということでございます。
 この検討会のメンバーにつきましては、41ページにございます。取りまとめは東京大学の橋本先生にお願いをいたしまして、このナノ・材委員会からも魚崎委員をはじめ幾人かの委員にご協力をいただいて、審議を進めました。
 審議の経過につきましては、42ページ、43ページにございますが、報告書の内容について簡単にご説明申し上げます。
 表紙を1枚めくっていただきまして、報告書の概要という紙がございます。ページは特に振ってございませんけれども、一番の目的としましては、ナノテクノロジーを活用して地球環境問題を解決していきましょうということでございます。政府といたしましても、環境エネルギー革新計画などを策定して、この方向で進めているということでございます。産業界からも、技術的ブレークスルーを目指す、その足場を固めるという意味で基盤技術の水準、向上、また新しい概念の創出、新しい材料の創成という基礎研究への期待が非常に高くなっているということでございます。
 環境技術につきましては、3.のところにございますけれども、さまざまな要素技術を含んだ複合的な領域でございますので、環境問題全体を見渡すという視点と、個別の技術課題、要素技術についてレベルアップしていくという視点、これをズームアウトとズームインという言葉で表現してございますが、この両方の視点がないと推進することは難しい。つまり、自分の守備範囲、専門の要素技術だけの観点で研究をしていても、環境問題の解決には結びつきませんということでございます。
 そういった観点から、4.でございますけれども、ズームアウトしていかにして技術を世の中の役に立てていくかということで、持続可能な社会システムの提案をしていきましょうということでございます。これは、科学技術に基づいた提案をしていくということでございまして、例えばエネルギーの利用システムを循環型の利用システムに変えていく。その中で、太陽光発電や二次電池、それからLED照明のようなさまざまな要素技術を組み合わせ、活用していくことが必要でございますので、そういう要素技術のシーズを持っている大学等研究機関からシステムの提案を打ち出していくということが、社会に対して求められているのではないかということでございます。
 研究の推進体制としましては、このようなシステムの提案ということでございますので、ある程度の規模を持ったグループでの研究ということになりますので、しっかりとしたリーダーシップのもとで日本型のドリームチームをつくっていこう。ドリームチームという意味は、複数の異なる分野のすぐれた研究者が集まってきて、一つの課題に取り組むチームをつくるという意味でドリームチームという意味でございます。このドリームチームの活動の足場として、共同利用型の研究拠点をつくっていきましょうということを提言しているわけでございます。
 1枚めくっていただきまして、ポンチ絵、図解でございますが、今、ご説明申し上げましたようなことを図でもって表現しているものでございます。循環型のエネルギーフローをつくってきましょう。真ん中の中盤にあります青い箱組みは、住宅をモデルにした環境技術の組み合わせでございます。燃料電池や太陽電池でエネルギーをつくる、それを二次電池でためる、エネルギー消費をどれだけ節約するのかという観点も必要でしょう。これは、いずれも既にある技術と思われがちですけれども、それらの技術をナノテクの力で相当効率を上げていかないと、実際、このようなシステムは組み上がっていきませんということでございます。これを支えるのが日本型ドリームチームでございまして、我が国のナノテクノロジー・材料技術のポテンシャルを活用してやっていこうということでございます。
 次のページは目次でございまして、今、ご説明申し上げましたような内容で報告書ができ上がってございます。
 報告書の内容について簡単にご説明申し上げますと、1ページが検討の背景と必要性ということでございまして、(1)はじめにということで、そもそもの環境問題について説き起こしてございます。また、その中で、既にナノテク・材料分野で進めております元素戦略という考え方も重要なんですが、特に(2)現代の地球温暖化の問題、特に温室効果ガスが原因と見られる地球温暖化の問題は、非常に大きな焦点になっているということが書かれてございます。
 2ページに進みますと、温暖化の問題についての国際的な取り組み、また我が国政府の取り組みが記述されておりまして、その他の環境技術についても、例えば水の問題なども重要だけれども、環境技術開発の必要性ということで技術開発をやっていきましょうというのが、3ページの(4)でございます。
 4ページ以降、ナノテクノロジーと環境技術ということで、ナノテクノロジーと環境技術がどう結びついているのかということでございますが、ここで先ほどご説明したズームアウトとズームインという考え方が提唱されてございます。地球環境にかかわる技術全体を俯瞰的に見るズームアウトの視点、それから焦点を絞っていって、そこで出てくるナノテクノロジーや材料の技術といったズームインの視点、この両方の視点を持って技術開発をやっていきましょう。要素技術の水準向上は不可欠ですけれども、それがどのような形で環境問題にかかわっていくのかという視点が非常に重要です。
 特に、(1)の最後の段落、一般的にというところがございますけれども、ここは研究者への、学会への問題提起ということで、研究者にはズームイン、ズームアウトの改革がやや薄いのではないでしょうかということを、あえて問題提起しているところでございます。
 (2)は、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発の必要性ということでございまして、ズームインした視点でのナノテクノロジーの重要性を書いてございます。特に、ナノテクノロジーで可能になりました物質の形状を、分子、原子のレベルで加工する、組成を自由に制御する、組織、構造を最適化する、このようなナノテクノロジーの技術で生み出される新しい材料、高機能の材料が環境技術のブレークスルーに非常に大きな意味を持っているということを説明してございます。
 5ページにまいりますと、そのようなナノテク技術におきまして、我が国は非常に高いポテンシャルを有している、研究水準が高いということでございますが、残念ながら、これらを十分に統合した形で環境技術に結びつける努力は十分であったのか、という問題意識でございます。
 5ページの下のほう、(4)環境技術をシステムとして組み上げていくことが必要だと提言しているわけでございます。
 7ページにいきますと、ここは、産業界からどのような期待が寄せられているか、また、そのアカデミアを牽引する文部科学省への期待というようなことがまとめられております。特に8ページから12ページまで、箱組みのところはエレクトロニクス、科学、自動車と、主に環境関係で非常に大きなインパクトを持っている産業界の方のご意見をまとめたものでございます。
 13ページにまいりまして、環境技術における技術課題の分析ということでございますが、一つはエネルギーフローからの分析整理があります。それは、14ページの図をごらんいただけるとわかりやすいかと思います。
 従来型のエネルギーフローというのは化石燃料を使うということでございまして、これをどんどん消費していくということで矢印が一方通行だったわけですが、これを太陽光を利用した循環型のエネルギーフローに変えていきましょう。ただ、一つの輪を完成させるためには、楕円で表現してありますようないろいろな技術のレベルアップが不可欠であるということでございます。太陽電池に始まりまして、二次電池、超伝導、燃料電池、あらゆる分野でナノテクノロジーの力を使った技術開発が必要になってくる。それをしないと、この輪が完成しないということを表現してございます。
 15ページをごらんいただきますと、今度はちょっと視点を変えまして、技術の階層性ということで、木の模式図でどのように技術が分布しているのかを階層的に整理してみました。一番根っこのところにあるのは、物理、化学、機械、材料、電子という学問分野があるわけでございますが、そこから立ち上がった幹のところでは、ナノテクの表面界面やナノ構造、そして触媒、結晶成長といった非常に基盤的な研究領域がございます。そこから、さらに枝のほうに進んでいったところに、いろいろな環境技術のシステムが形成されていくということで、ナノテクの技術の階層性、つまりナノテクがいかにこれらの技術要素の中で重要かということを整理したものでございます。
 16ページ、17ページをごらんいただきますと、こちらは概要のところでご説明しました、住宅を例にとった一つのシステムの説明でございます。これは、こういったものを我々が推進するということではなくて、こういう考え方で整理してみたらどうでしょうかという一つのサンプルとして提出しているものでございます。電気エネルギーをつくる、エネルギーをためる、エネルギーを節約するというさまざまな要素技術の組み合わせが必要だ。かつ、その中での要素技術のレベルアップも不可欠である。このズームインとズームアウトが両方ないと一つのシステムは組み上がりません、ということをここで申し上げております。
 18ページからまた箱組みのページがございますが、ここは要素技術につきまして、どんな技術の例が考えられるのかを列挙したものでございます。ナノテク・材料分野のさまざまな技術が、環境技術として関係してくるということをここでまとめてございます。
 22ページでございますが、研究推進の考え方ということでございます。先ほど来ご説明しておりますような目標を達成するために、どのような方策が必要かを整理したものでございます。一つには、技術的基盤をしっかりとつくることが必要であるということが22ページの(1)でございます。応用研究をしっかりと進めていくためには、それを支える技術的基盤をしっかりと固めていくことが重要であるということです。
 その下の(2)ですけれども、そういう基盤をしっかりと固めるためにも、システムとしての目標設定をしっかりとズームアウトの視点でつくっていくことが必要である、要素技術の研究で終わっていたのでは問題だということが書いてございます。
 その中で、23ページの(3)にまいりますと、このような研究開発を行うための知的、人的基盤をしっかりと構築する。これは、要は研究グループ、研究組織をしっかりとつくっていくということでございまして、ここで日本型ドリームチームということを提案しているわけでございます。研究チームを編成して、明確な目的志向を掲げて運営していきましょうということでございます。
 24ページにまいりますと、日本型のドリームチームの中での具体的な運営につきまして、どうやって分野融合を進めていくべきか。また、学生の人材育成はいかにあるべきか。研究者を他の分野の研究に、どうインセンティブを設けて進めていくのか。若手をどのような形で伸ばしていくのかというようなこと。それから、研究組織の運営に関してのリーダーシップのあり方が、今までの議論を踏まえて整理されてございます。
 (4)では、日本型ドリームチームが活動拠点として足場となる、物的基盤と称しておりますが、ここは研究拠点の中身についてご説明してございます。米国におきましては、このようなドリームチーム型の編成をした場合には、一つの研究所に研究者を集めてくるというアンダー・ワンルーフ方式がとられているようでございますが、我が国の実情から申し上げますと、一つの新しいところに集めてくるというよりも、共同利用型の研究環境を整備することで、そこにすぐれた研究者が集まってくるという形でやったらどうだろうかということをここでは提案してございます。共同利用型でございますので、例えば研究装置の利用などでも効率的な利用が図れると考えておりますし、そこに産業界の方が参画してくることも考えているわけでございます。
 26ページ、図4、想定される環境技術拠点のイメージということで、記述の内容を図解して整理したものがございます。中核となる機関にある程度の人材を集中させる。それから、しっかりとした出口の課題設定を行う。そして、施設については集中して共用化する。そこで、産業界とアカデミアがしっかりと手を携えた形での基盤技術の研究を行うということでございます。
 このような形で進めていく中で、国としても省庁の枠組みを超えた形でしっかりとサポートしていくことが必要だということが、26ページの(5)に書かれてございます。
 最後、28ページでございますが、まとめということで、今までの報告書の内容をごく簡単にまとめたものでございます。政府としての環境エネルギー革新計画などの取り組みもあるということでございます。それを受けて、環境技術にブレークスルーをもたらす材料の開発、これはナノテクノロジー・材料分野における高い研究水準を有する我が国の使命でありますし、持続可能な社会構築のために分野融合を進めていって、国際的にも牽引していきましょうということでございます。産業界からの期待、それから環境技術としてズームイン、ズームアウトの視点を持つこと、そしてエネルギー循環のシステムを考えていくために、要素技術を組み合わせた新しいシステムの提案が必要で、日本型ドリームチームをしっかりと形成して、その活動拠点もサポートすることで研究全体を進めていきましょうということでございます。
 29ページ以下は参考資料ということでございまして、検討会のメンバーが実際にアメリカに出張して調べてきた内容等も含めた、諸外国の環境技術での取り組みの概要。それから、36ページでございますが、こちらは我が国の大学等研究機関におきまして、どのような環境関係の研究開発が行われているのかということのサンプルといいますか、事例調査の内容でございます。
 報告書としては以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、今、ご報告いただいた内容につきまして、意見交換をさせていただきたいと思います。伺いますと、この報告書に基づいて、21年度の概算要求で新しい事業を立ち上げることを検討しておられるということであります。そういうわけで、今回は報告書の内容についての意見と、21年度の概算要求で進める具体的な事業を進める上での留意点などを含めまして、ご意見いただきたいと思います。
 40分ほど時間を準備しておりますので、さまざまなご意見をちょうだいしたいと思います。伺いますと、今回の報告書をまとめられた環境検討会の委員を、本委員会の魚崎委員、栗原委員、田中委員、小長井委員が兼務しておられるということですので、最初に魚崎委員あたりからコメントをいただけますでしょうか。

【魚崎委員】
 特に大きなポイントは、環境を研究している人とナノ・材料を研究している人のずれといいましょうか、先ほどズームイン、ズームアウトという議論がありましたけれども、環境を研究している人は大きな話をされるわけです。一方、実際に光触媒であるとか、そういうことを研究している人は個別分野の中での議論になっている。そうすると、エネルギー、あるいは環境の最終的なところを実現する上で、ほんとうに役に立つのかどうかとか、どういうふうにつながっていったら実際のものになるのかという議論は抜きに、例えば使用率はこう上がりましたというような個別の議論になって、システム的というか、最終的な姿はあまりないのではないか。そこがかなり最初のころ議論されて、その辺をきちんと両方考えながら、最終的な姿まで持っていく。しかし、基盤技術をきちんと固めていかないと、ズームアウトした議論だけでは実際ところ何も実現されない。そういうところは非常に大きなポイントだったと、私は理解しています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 40分ありますので、自由にいろいろご意見をちょうだいしたと思うんですけれども、3名の委員がおられますので、まず補足といいますか、問題提起のような形でご意見を伺ってからいろいろ議論したいと思いますので、次に栗原委員、お願いできますでしょうか。

【栗原委員】
 環境は、今、環境技術が非常に話題になっているんですけれども、ナノテクノロジーはいろいろな意味で、最初から省エネとか省資源というのはナノテクノロジーの、特に材料系の場合はそういう利点があると言われていたと思うんですけれども、必ずしも応用する分野につながった人や、考え方のつながりがそれほど明確ではなかったのではないかと思います。今回、こういう委員会で両側の人が集まって議論したことで、大分そういうような接点が、クリアな報告書ができたのではないかと思っています。
 それから、ナノテクノロジー、大勢の研究者が日本中で研究しているので、もっと推進して、活用されるということは非常に貴重なことだと思います。そういう意味で、環境というのはいろいろな視点がありますので、いろいろな研究をやっている研究者が貢献できるという、できるだけそういう場がつくれるようなプログラムになるといいのではないかと願っております。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 それでは、田中委員、お願いできますでしょうか。

【田中委員】
 3点ぐらい申し上げたいと思います。
 一つは、環境というのは、課題設定型というか、政策で引っ張るといいますか、国家的なプロジェクトの代表的なものなんだろうと思います。それがズームアウト、ズームインという言葉で議論されました。これは、我々のセンターの安井フェローがそういう言葉で全体の環境の問題を指摘して、この報告書につながったと思います。そういう意味では、あらゆるものを統合して、ある一つのグローバルな問題を解決していこうというプロジェクトですから、まさに両方が必要である。特に、日本の場合は、全体を見てシナリオをつくっていく。それから、プロジェクト進行中に、全体のシナリオの中のどこをどう進行しているのかということを、リアルタイムでウォッチしていくという機能が必要だろう。そして、議論をして、それをフィードバックしていくことが必要で、いろいろな意味で試金石になるのではないかと思います。そういう政策課題的な、代表的なプロジェクトではないかと思います。
 第2点は、この委員会での議論は、私、なかなかおもしろい、よく問題点を摘出した、いい議論が展開されたと思いますけれども、そのためには、ぜひ府省連携といいますか、経産省その他との連携をうまくやっていっていただきたいと思います。それが第2点。
 第3点は、研究者がたこつぼに入り込むのではなくて、自分がやっている研究がどのように社会に貢献しているかということを、皆さんがそれぞれのレベルで理解するといういい課題だと思うわけです。そういう意味では、人材育成とか、教育といったものをよく意識して、プロジェクト自体がそういう側面によりきっかけを与えるといいますか、新しい人材育成の方法とか、人をそこに呼び込むとか、そういうようなことを意識したプロジェクトといいますか、プログラムになることを私は望みたいと思います。
 特に、アメリカではエネルギーとかバイオを始めるときに、例えば私がよく知っているのは物理学会ですけれども、アメリカの物理学会は常に大学院の学生に、バイオがこれから立ち上がろうとしたとき、あなた方の働く場所としてこういうすばらしい分野があるんだとキャンペーンをしているんです。こういうことは、エネルギーとか環境の場合に非常に重要なことです。これはグローバルの問題ですから、化学界とか、物理学会とか、日本の学会が率先してやっていくことが重要で、そういったことにもインセンティブを与えるようなプロジェクトやプログラムになればすばらしいと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 大変貴重なご意見をいただきました。いろいろ質疑があろうかと思いますが、どうぞ、いろいろご質問やご発言いただきたいと思います。

【岸委員】
 非常におもしろいというか、よくまとめていただいたと思うんです。ただ、これは最初に環境ありきで全部走ったんでしょうか。エネルギーが大きな表題には出てないんですけれども、ほとんどエネルギー問題かなという気がするんですけれども、これはいかがでしょうか。
 もう一つ、進め方なんですが、日本では現実にNEDOとかが非常に大きな力を持っているので、そことのことをよく、今、田中委員言われたようにタイアップ、もう一省庁で何かやるなんていう話は論外です。それはいいんですけれども、NEDOの調査も十分されて、これをやったと考えてよろしいんでしょうか。この2点、少しお聞きできたらと思います。

【榊主査】
 そのあたりはいかがでしょうか。

【大竹課長】
 1つ目の、環境と言いつつ、中はエネルギーではないかという議論があるんですが、一番最初に環境問題を考えたとき、もちろん環境技術でリサイクルだのいろいろあるとは思うんですが、やはりナノテクノロジーで一番大きくこたえられるところはエネルギーかと我々は思います。太陽電池ほか、ナノテクノロジーが代表的に役に立っている部分もありますので、そこでエネルギーの、14ページにあります従来のワンスルーからサイクル型にするようなことで、いろいろなところで役に立つ。まず、エネルギー面でのむだ遣いというか、その部分をなくすことが環境に一番大きく寄与すると思って、このようにいたしました。
 逆に、我々の途中の議論の中では、環境と言っているけれどもエネルギーのことばかり書いてあるじゃないかと言われまして、申しわけありません、その辺は少し往生したところでございます。

【榊主査】
 NEDOとの関連は。

【大竹課長】
 一応、いろいろな形で、委員会のほうにはオブザーバーで経産省の課長にも入っていただいて、インプット及び悩みの共有もさせていただいておりますので、そういう意味では幅広くそういう部分のことも視野に入っていると存じております。

【榊主査】
 岸委員、よろしいですか。

【岸委員】
 はい。

【魚崎委員】
 ちょっと追加してよろしいでしょうか。

【榊主査】
 はい、お願いします。

【魚崎委員】
 この報告書のはじめにのところに、4行目でしょうか、地球環境問題は温暖化、水云々といろいろあって、委員会の議論の中でも、結果的にはCO2(二酸化炭素)に絞るんですねという議論がありまして、はじめにがあって、その次、温暖化が来る。したがって、温暖化、CO2(二酸化炭素)問題になると、必然的にエネルギーにつながっていったということで、結果的にはこういう格好になった。ですから、最初のころにその辺の議論は結構やりましたけれども、文科省というか、そちらの方向性としてはここら辺に絞りたいということだったと思います。

【岸委員】
 だから、大きな表題にエネルギーは入れないというのは、最初からそういう方針なんですね。というのは、アメリカの政策を見ていただけばいいですが、きのう、我々のところでDOEの専門家に特別講演をやってもらったんです。ほとんどこのとおりなんです。環境なんてほとんど出てこない、エネルギーなんです。ですから、そこはちょっとそごが出てくるという気がするんです。日本は、断固環境で、最終的に環境だという言い方でやるんだという一つのポリシーになるかと思います。

【魚崎委員】
 もともと委員会自体、環境室とナノ・材室でつくった委員会ですから、環境は外せないということではないでしょうか。

【岸委員】
 わかりました。わかったことにします。

【大竹課長】
 こんな言い方もあれなんですが、今年、環境を主体にしたサミットも日本であったこともあり、それからもう一つ、エネルギーという観点でくくると、原子力発電とか、もうちょっと大きな話も出てくるのですが、ナノテクノロジーで対応するという観点では、環境を視野に入れてエネルギー問題、どちらかというと家庭であるとか、そういう形でやっておりますが、そういうところにフォーカスしていった。今、申し上げましたように当初は環境エネルギーと考えていたんですが、今年の政府の全体の流れからいって、まず環境ということにしたということでございます。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。ちょっと私のほうから質問で、CRESTの14年度から一斉に始まった中に10プロジェクトがあって、その中に環境的なものとか、エネルギー的なものがあったわけで、千葉先生など大変尽力されて、いい仕事をされたと思うんですけれども、改めて第2フェーズとして取り組むときに、今回、いろいろな新しい点を強調されたと思うんですけれども、類似の点が第1期でも幾分議論されて、うまくいった部分とそうでなかった分があるかと思うんですけれども、その辺についてはどんなふうに分析されたのか、田中委員、もしコメントしていただければ。

【田中委員】
 私、そのあたりの分析は直接関与しておりませんので、何も申し上げられませんけれども、いずれにしても、ああいう問題は10年足らずのもので解決するはずはないわけであります。環境問題は、それよりもさらに以前から我々は国として問題として抱えていたわけですから、私は、そこで出た結果を確実にベースにして、今後、伸ばしていけるものだと考えております。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいろいろご意見があろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【竹山委員】
 今、CRESTの話が出たんですけれども、本年度からCRESTでCO2(二酸化炭素)削減技術ということでスタートしていて、中身もこれに準ずるような形になってしまっている感じはあると思うんです。先ほども、環境という文字とエネルギーのところにお話がちょっとあったんですけれども、明確に出さないと、研究者の方というのは自分本意に考えますので、自分の分野がちょっと遠いかなと思っていても、近いということで組んでくるんですね。
 今、見ると、ここにはバイオ系の話はほとんどなくて、マテリアル中心のエネルギー、ナノテクなのでそうなんでしょうけれども、それでいいのかという部分もやはりありますけれども、中の規定がしっかりしないとわかりづらい。先ほど、エネルギーじゃないんですかとおっしゃっていたんですけれども、ほんとうにエネルギーのところに集中したいのであれば、きちんと明確に出すべきだと思うんです。材料系のエネルギーに関係しなくても環境の研究者はたくさんおりますので、そういう方々も注目して、特に省庁間をまたぐような大きなものをこれからつくろうということになると、随分興味をお持ちになる先生方多いと思います。そのときに、いろいろな人たちが課題を投げかけてくると思いますので、どこまでの枠にするのかということは明確にしてほしい。
 あと、先ほど言った、今年からもうスタートしているようなプログラムはどんどんつぶして一本化していくのか、小さい形で継続していくのか、方針をちょっとお伺いしたいと思います。

【高橋室長】
 私の説明が不十分だったかもしれないんですが、この報告書で一番本質になるのは、環境、エネルギー問題、環境問題を解決するとともに、日本型のドリームチームをつくろうではないか。出張で、アメリカのヘリオスプロジェクトとか、エネルギー関係が中心になるかもしれないんですけれども、様子を見に行ったときに、アメリカだと、新しい建物をつくって、組織をつくって、異分野の人を連れてきて、そこで融合的環境で融合研究をやって、開発、新しいブレークスルーを目指していこうというやり方をとっているようでございます。
 ほんとうは日本でもそういうことを、田中委員などのご経験では、かつて日本でも行われたこともあるのかもしれないんですけれども、そこまでやるのか。それとも、今の我々のできる範囲で、何かそれに近いような形で、日本のすぐれた専門家の力を活用できる方法はないものだろうかということで、日本型のドリームチームを何とかつくれないだろうかということが、実は環境の検討会でも非常に大きな議論のウエートを占めておりました。
 そういった意味では、いろいろな分野の先生方が環境というテーマで議論に入ってくる。その中で、いろいろな要素技術を組み合わせた形での出口のイメージをしっかりと提案していただく。そういったことができる、しっかりとしたまとまりを持った日本型のドリームチームをつくってみようじゃないかということが、実は研究会の冒頭からの議論の大きなところを占めていたわけでございます。
 エネルギーという言葉を入れないというのは、あえてそこをオープンにしよう。それから、環境という言葉で若干色がつき過ぎているのではないか。環境という言葉がバリアになって、いろいろな人が入って来られなくなっているのではないかというご指摘も非常にあったので、そこはあえていろいろな人が口が出せるような形に、オープンにしておこう。それをどう組み合わせて新しいものを出していくのかという可能性を、むしろ残していこうというか、その可能性にかけようという議論が検討会の中であったかと思います。そういった意味で、どんな方がここに参画してきても、環境問題に貢献できるという範囲ではウェルカムなんだと思います。
 それから、既存のさまざまな施策との聞き分けということでございますが、例えばJSTのCRESTというものがあるわけでございますが、ここでの日本型ドリームチームでの環境型の研究というのは、ドリームチームをつくる、そのドリームチームの足場となる拠点をつくることが大事でございまして、そこでどういう研究をやるのか、そこでの研究費はどうするのかという問題については、最低限の研究費というか、サポートはしなくてはいけないと思っていますけれども、ドリームチームのメンバーになれるような先生であれば、外部資金なり、産業界からの資金なりをとってこられるのではないかということを、私どもはある程度想定しているわけでございます。
 つまり、この報告書に基づく施策で、一つのドリームチームという枠組みというか受け皿を用意した上で、そこに集まった先生方が、例えばCRESTですとか科研費ですとか、その他の外部資金、NEDOのお金を使ってもいいと思うんですけれども、そういったいろいろなお金をマッチさせて研究を行う。そこに産業界の方も入っていただく。そういう一つの骨組み、枠組みの構造を、政府の直接支出するお金の予算の中で、内局予算と言っていますけれども、そこでつくっていこう。あとの外部資金、競争的借金については、CRESTやその他のお金を活用していく。
 この中でも書かれているんですけれども、それぞれの予算のファンドには、目的とか特徴、また得意分野というものがございます。一番わかりやすいのは、科研費とCRESTだと思うんですけれども、そういうものを組み合わせる形で支援していこう。その中に、当然、NEDOの支援も入ってくると思います。それのしっかりとした受け皿となるドリームチーム、そういったものが新しいファンドが出たときにドリームチームから手を挙げて、そのファンドをとっていけるような、そういうしっかりとした人材育成を含めた足場をつくっていきましょうということが、実は検討会の中で非常に議論になったところでございます。
 そういう方向で、我々としてもこれで予算を確保した上で、また環境に関するCRESTや別の予算の確保も考えてございます。そういったものを組み合わせてやっていきたいと思っております。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 どうぞ。

【田中委員】
 関連してちょっとつけ加えさせていただきます。
 今回の議論の中で、いろいろな特徴がありましたけれども、その中の一つに、先ほど私が2番目の問題としてお願い申し上げた府省連携に関連するんですが、文科省の今までのプロジェクトの中で、やはり少し自己規制がかかっているところがあったのではないかというところがありました。
 例えば、太陽電池はNEDOが全部やっているから、こちらでもうやることないのではないかということが、ほかにもいろいろありました。二次電池や水素でもう100億円かけているからやることないんじゃないかとか、そういうことがありましたけれども、それを我々のセンターでワークショップ等で精査をしてみました。太陽電池の例をとりますと、NEDOは確かに大きなお金をかけ、そして基礎も含んでやっているし、大学の人にも入っていただいて、オープンにしていますということですが、精査をしてみますと、やはりNEDOの組織の特徴が出ていて、厳しい数値の目標があるわけです。そうしますと、基礎をやる余裕がないということが実態として非常にはっきりしてきたんです。アメリカのMRSへ行きますと、太陽電池の新しい材料に基づく提案が過去何十年の間に歴史的にあるんですけれども、最近、日本の大学の発表が猛烈に減っているという実態もあるんです。
 そういったことを考えますと、やはりそれぞれ府省の性格に沿って、得意な運営の仕方があるわけです。文科省は、新しい材料に挑戦するのであるならば、基礎をきちんと固めながら、長期的な視点でやっていくという点で補完的なプロジェクトは必ず組める。そういう立場に立ちますと、オールジャパンでやっていくために、文科省のやるべき仕事があるという認識のもとに僕らはやったと思います。
 それから、環境ということで、エネルギーが入ってないということですけれども、我々はフリーにディスカッションしておりますし、実際に太陽電池の議論はかなり詳しくやりましたし、バイオマスも中のほうに入っております。バイオマスについても、やはりの農水省、経産省ではできないことがあるということは、この間の我々のセンター内のワークショップでも気がついております。そういう意味では、トータルのシナリオで考えたときには、文科省がやらなければならないところは確実にあるという印象を、我々としては持ちました。

【岸委員】
 そこはほんとうに大事なところで、NEDOがやっているからということでちょっと手を引いていたところがあるんです。今、大きな見直しをやる時期だと思っています。
 それから、民間なんですけれども、これは私ごとになるんですけれども、トヨタと包括提携したんです。富士のすそ野に4,000人の研究所がある。これをやるまでに4年かかったんですけれども、ずっと精査すると、大学とか独法の研究をやっている人間は150人しかいないのに気がついた。これは非常に大事なんです。基礎研究は4,000人いてもやれませんということです。こんなことから、産学官、文部科学省、経産省、壁をつくる時代はほんとうに終わってしまった。思い切って一緒にやっていく。そうでないと、もうちょっと追いつかないという気がします。
 それから、やはり日本は基礎研究をやっていないという声が、今、またアメリカから上がり出しています。まさにきのうなんです。エネルギー関係でも、アメリカは七、八割は基礎研究だけれども、日本はちょうどその逆になっているのではないかという指摘が来て、80年代の基礎研究ただ乗り論に似たようなことが出てきているというのは、もう明白なんです。そんなわけで、今、田中委員もおっしゃったんですけれども、ほとんど材料の問題なんです。非常に基礎的な部分を大強化していただければという気がしますし、省庁の連携を非常に強くやっていかないといけない。
 とはいっても、やはり進んでいます。NEDOとか経産省、産総研は、常識はたくさん持っています。内容はちょっとあれかもしれないけれども、まあ、そんなところです。ぜひこれは、強い要望です。

【榊主査】
 ありがとうございます。

【栗原委員】
 環境技術ということですけれども、これはやはりナノテクノロジーが入っているということがすごく重要だと思うんです。普通、環境というと、自然環境とか、川の何とかとか、浄化とか、非常に限定したイメージが大きいので、もし、こういう形でプロジェクトが動けば、環境技術そのものとか、そういうもののイメージが非常に変わる可能性もあると思います。例えば、環境のフォーラムをやろうといったら、皆さんおっしゃるのは、自然とか、いろいろな浄化とか、非常に限定したイメージが大きいんですけれども、エネルギーも含めて、大勢の人がかかわる課題だということを、逆にこういうジェネラルな台頭で、うまく意図が伝わればアピールできる可能性があるのではないかと。

【榊主査】
 ありがとうございます。

【北澤委員】
 ちょっと飛んだ話になってしまうかもしれないんですけれども、私は、今年の秋から来年ぐらいにかけて、世界的に大きな地すべり現象が起きるのではないかと思うんです。それは、環境を軸に、地球環境イデオロギー時代がやってきそうだということで、地球環境イデオロギー時代というのは、ヨーロッパが仕掛けて、日本はヨーロッパに完全に同調するのが一番得策だと思うんです。地球環境イデオロギー時代に不利な国は、アメリカ、中国、インド、ロシアとなるわけです。そのときに、ヨーロッパはどういう作戦でいくかというと、地球環境を金科玉条に掲げて、そして輸入規制をかけるとか、そういう形で中国やなんかにも圧力をかけていく。原油の値上がりはアメリカを直撃することになると思うんです。
 そういう中で、これからどういう動きが生じていくかというときに、日本にとっては非常に有利な状況が展開していく。1974年、76年にオイルショックが2回あったわけですけれども、日本はトイレットペーパー戦争だとかいって大騒ぎした時期がありましたが、結果的に一番得した国は日本だったわけです。今回の原油の値上がりとか、地球環境の大騒ぎというのも、ふたをあけてみれば日本が一番有利な状況に立てるチャンスのような気がするんです。
 では、技術的にいろいろなことが一番そろっていたかどうかを見てみると、今現在、日本は結構そろっている。ただ、日本の場合、それを適用しようというモチベーションというか、お金というか、それが動かない。ここ15年間に、アメリカはGDPが2倍になったんですけれども、日本は全く動いていない。アメリカが2倍になってしまうと、15年前に日本がアメリカにほぼ並んだとか何だとか言っていたのが、半分になってしまうという状況に、今、なっています。その点でいうと、そこが動くかどうかというのが、日本の環境問題では一番大きいと思うんです。
 ただ、そこの部分と、我々が技術を準備しておくかどうかというところとは、今、ちょっと別の時限の問題になっているために、あたかも技術開発が、例えばナノテクの環境にかかわる技術開発が不活発だから日本がやっていけないとか、そういう印象が我々を覆っているようなところがあるのではないかと思うんですけれども、実は、そうではなくて、そこにきちんと投資が行われれば、いろいろな技術がどんどん出ていく状況にあるのではないかと思うんです。ですから、我々としては、そこのところをちゃんとポジティブに見て、それを発信していくことがナノテクでは非常に重要なのではないか。
 そういうことをすごく思いますので、私も今、それをデータとしてはっきりさせようとして、きのうあたりもちょっと書いたんですけれども、できれば皆さんにもデータとしてお届けして、その辺を訴えていきたいと思います。今現在、日本の状況の中で我々が縮こまってしまうと、次の展開が開けない。我々としては、こういう時期には、ナノテクノロジーってこんなすごいことをやっているんだぞと、守りの姿勢ではなくて、むしろ積極的に発信するほうに走ったほうがいいのではないか。そんなことを感じるということをちょっと申し上げたいと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【長我部委員】
 先ほどの田中委員の説明で、リニューアブルエネルギーの中で、NEDOとかぶる太陽電池がこれだけハイライトされている理由が非常によくわかりましたし、実感としても、今、化合物の太陽電池も幾つかのメーカーで実用化しようとしていますけれども、例えばCISなんていうのはインジウムを使っていて、インジウムはどうなるかわからないとか、いろいろな面でまだ基礎研究が必要だと。このピクチャーはよくわかったんですけれども、リニューアブルエネルギーだけで循環する世界と、現在の世界では、多分、まだ化石燃料を使わなくてはいけなくて、グローバルに見れば石炭火力がかなり使われる時代が相当長く続いて、そうすると温暖化ガスの問題で、CO2(二酸化炭素)吸収というところが最適の問題として多くなるのではないかと思います。
 そういう意味では、後ろのほうにCO2(二酸化炭素)吸収と書かれているんですけれども、その中でマクロ技術であるとか、ここに書かれてないようなバイオ技術とか、そういった技術でもナノテクが随分貢献できるというか、ナノテクでないと解決できない問題がたくさんあると思うんです。それも、基礎的なレベルからやる必要がある。そういったときに、この提言が見据える世界というのは、50年後のリニューアブルエネルギーだけの世界なのか、それとも20年、30年ぐらいを見越してリソースを投入するのか。どの辺のタイムスケールを目指して、技術をドリームチームでつくり込んでいくかということに関して、どんな議論があったのかをちょっと教えていただければと思います。

【高橋室長】
 今、北澤委員からもお話しありましたけれども、やはり環境の場合は社会経済的な観点が非常に大事で、特に日本のナノテク技術はここまでのことができるんだということを、ある程度世の中の人にわかってもらうというインパクトも大事かと、私ども思っております。そういった観点から、完全循環型みたいな、若干大げさなモデルもここの中には書き込まれております。
 そういう観点でございますので、その中で具体的に石炭の問題とか、CO2(二酸化炭素)吸着の問題があるのではないかということも、当然、遠い目標をクリアするための一つの仮定として必要なんだということは、この議論の中にも盛り込まれていると思います。そこは、一つ大きくナノテクノロジーを打ち出していくというところと、実際、ズームインして要素技術でしっかりやっていくところで書き分けというか、使い分けをさせていただいていると、ご理解いただければと思います。

【長我部委員】
 わかりました。

【榊主査】
 どうぞ。

【遠藤委員】
 先ほどの北澤委員のお話と少し似てしまうんですけれども、過去15年間の日本のGDPの伸びはほとんどゼロなんです。ところが、世界のGDPの伸びは 1,500兆円もある。結局、日本の得意だったエレクトロニクスは、携帯電話をはじめ世界市場ではほとんど競争力がなくなって、全く内弁慶になってしまっていたわけです。日本型の環境社会をつくるという点ではいいんですけれども、結果的にそれがグローバルに寄与するものでないといけないと思うんです。
 そういう観点が入っていると、文科省の基本的な予算でやるにしても、日本の企業もそこへ積極的に入ってくると思うんですけれども、これを見たときに、日本型社会をつくるという点では十分納得できるんですけれども、世界戦略性をもう少し入れたほうがいいのではないか。つまり、日本型環境社会をつくるということは、世界に向けて大きなアピールになって、中国やブラジル、例のBRICsをはじめ、ヨーロッパ、アメリカもこれを使っていくというシステムが入ってくると、日本の企業もうんとお金を出すのではないかと思うんです。
 基本的に環境技術というのは、コンセプトとして商品技術の中に入れるのは当たり前なんですけれども、それが逆にコストに反映されないという部分もあるんです。そうなってくると、また企業が積極的にお金を出して、そこへ入ってくるかという難しさも少し感じるところがあるんです。もう少しその辺、グローバルな視点に立って、日本の皆さんがここへ乗り込んでこられるような仕組みを一つ入れていただいたらいいのではないか。
 例えば、最近、話題になっていますけれども、アイスランドのようにほとんど石炭、石油を使わずに、漁船と自動車の燃料だけは石油に頼るけれども、あとのエネルギーは地熱とか、循環型エネルギーという社会をつくっても十分GDPは伸びて、小さい国ですけれども、豊かさは世界のトップクラスの国になれている。日本も、世界の人口でいったらわずか1.5パーセントぐらいの小さな国なんですけれども、そこで未来の人類に対して、未来社会の環境対応型の社会がこうやってできるんだという大きなひな形が示せるような、その技術が世界に展開していくようなメッセージがここに入っていたら、先ほど来おっしゃっている各省連携だとか、田中委員もおっしゃっていた政策提案型のすばらしい、久々に見るスッとする提案と、今、お聞きしたんです。一つ国がリーダーシップをとって、これに向かってやっていくんだと。
 実は、ナノテクは1期、2期の基礎研究で十分ポテンシャリティーを得たんです。あとは、出口をどこに向けて基礎技術、基礎科学を社会に発信していくか、そういう段階になったと思います。そのときに、まさに政策提案型の、環境とナノテクという旗が揚がったということは、我が国にとってもものすごく大きな一つのエポックになるような気がします。
 そういう意味では、米国がやる手なんですけれども、ナノテクノロジー・フォー・エンバイロメントというコンセプトが、要するに基礎科学は十分熟成した、その出口に向かって、今、日本型の環境対応技術に試行的に持っていくんだ。こういうメッセージがもう一つ強力にあればすごくいいなと、そんな感じを抱きました。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがしょうか。井上委員。

【井上委員】
 二、三週間前、G8グローバルユニバーシティーサミットというものにおいて、今、すべての大学、研究機関がどれだけのCO2(二酸化炭素)を排出して、それを改善するにはどうすればいいかといったこと等々、議論されたと思います。きょう、17ページで示された家庭のサイクル、これは非常に重要な視点だと思っています。
 ただ、2点ほどありますが、今もちょっとご指摘がありましたが、我々の大学で恐縮なんですが、CO2(二酸化炭素)削減と同時にCO2(二酸化炭素)を酸素に変えるといいますか、ナノバイオ的な技術云々ということで、森林をうまく活用する新しいナノバイオ技術というところで酸素を増やしていく。カナダの大学では、2050年の日本の50パーセント減をもクリアしている大学すらある。だから、こういう技術のほかに、もう少し総合的にナノバイオ的なことも含めたようにして、酸素をつくり出すといいますか、削減だけではない、何かそういうようなものがあればなと。
 それと、今の提案が全体のCO2(二酸化炭素)に対してどの程度貢献するのか。政治家だとか、特に財務省等で予算を決められたときにどれだけものがあるのか。今はもう数値が目標になっていますので、こうしていった暁にはトータルとしてどういう効果があるのか。これは削減の方向ですし、つくるほうにおいてもやはりナノテクノロジーが非常に活用できる。
 それと、やはり今もご指摘がありましたが、各大学等において、もちろん先端のテクノロジーをやられる人が多いいんですが、CO2(二酸化炭素)換算のときにも、どこの電力会社の何発電所から電力を買ってきていますかという算定をやるようです。そのときに、原子力発電だとのCO2(二酸化炭素)換算量がもともとぐっと下げられる。やはりこれからも原子力は避けられないとなりますと、原子力におけるナノテクノロジーといいますか、材料を含むさまざまな技術。あるいは、廃棄物等によるリサイクルという視点でのナノテクノロジーがあってもいいと思うんですが、この中には、そのような視点でのナノテクノロジーは必ずしも明記されていないようです。
 それと、17ページのワンサイクルはいいんですが、これを用いたもののリサイクルによるCO2(二酸化炭素)だとか、そのあたりも、今、いろいろ議論されていますので、政治家への予算の説得力ある説明においては、全体を見きわめたまとめ方の図面が一、二枚あったほうが、より説得力を持つのではないか。私、これは精読させていただいてないんですが、そういう印象を受けました。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 お願いします。

【北澤委員】
 これは質問なんですが、日本型ドリームチームという考え方は、私、大賛成なんですが、これを具体化することができるかどうかが勝負だと思うんです。もし、これをやるとすると、かなり本腰を入れて、それができるような方策を考えなければいけないと思うんですが、何か具体的には話し合われたんでしょうか。

【大竹課長】
 今までのいろいろなお話、報告書に加えるとか何とかということではなくて、政策の実施上で遠藤委員、井上委員からお話しあったときに、スライドなんかを追加しながら予算要求、それから今後の方策として考えていきたいと思います。
 今、北澤委員からご指摘のありました方策なんですが、先ほど高橋のほうからも申し上げましたとおり、巨万の富と巨万のゆとりがあれば、どこかに研究所をつくったり何なりするというのも一つの手なんですが、これは全く現実的ではないということであります。
 研究費、事業推進費という観点ではもろもろの資金があるので、おっしゃるようなドリームチームの、人が組めるような仕組みをつくろうということで、ここにも後ろのほうに書いてございますが、今、日本の場合、例えばA研究機関がこういうことをやるから皆さん動いてくださいといっても、なかなか動けないというシステム上の問題もあるので、むしろそういう方を持っている、擁している研究機関間でネットワークを組んでいく。そのネットワークを組む際に、勝手に組めばいいじゃないかということではなくて、やはり皆さん運営費交付金の削減もあって厳しいですから、そういう人の基盤的な部分をどう支えていくかを考えていきたい。その上で、研究費を多様に組み合わせていくのかと思っています。
 これから、こういうことについての制度設計を始めるのですが、既に幾つか先行して走っている例では、別の分野でネットワーク型拠点ということで仕組みをつくっています。これは研究費というよりは、むしろ拠点の基盤となるようなもの、特に若手の人材育成のいろいろな経費を盛り込んでやっていくということで、既に走っているものもあります。ナノテクノロジーの場合、そのままでいいのかどうかについては、これから概算要求も含めて積極的に考えていきたいと思っています。

【北澤委員】
 その件なんですけれども、科学技術研究費が少し多くなったということで、科学技術関係では大量の任期雇用が行われて、研究者の雇用条件を非常に悪化させたわけですが、日本はそれを何とかしないと、ドリームチームどころか、はきだめチームができてしまう。
 どうやったらそれがほんとうにドリームチームになるのかということなんですが、ごく最近のイグザンプルで申し上げますと、これは皆さんもよくご存じかもしれませんが、筑波大学からある先生が宇都宮大学に引き抜かれました。なぜそういうことが起きるかということなんですけれども、これは民間企業が絡んでいるからできたことだと私は思っていいます。国になぜできないかというと、国のほうがはるかに大きなお金をつぎ込んでいるにもかかわらずできてないのは、何となく法人化以前の定員に対する呪縛がそのまま残っていて、新たに何かを、融合拠点みたいなものをつくったときに、必ず任期つきにして、5年たったらその人たちが職を失うという気持ちを与えて、みんなディスカレッジしながらやっている。これが今のところ続いているわけです。
 ここの部分を何とかしないと、文科省の政策は全部失敗するのではないかと私は心配しています。今、私たちだけでもやろうと思い始めているんですが、その中で、融合拠点だけが10年以上、今、10年を目標としてやっています。5年だと、はっきり言いましてそこでやるのはみんな嫌なんです。私も、そんなところに行きたくない。10年だと、ちょっと考えようかなという気になって、15年あれば、まあ、いいかなという気になる。そういう定量的な問題でもあるんです。まず、何で国の政策は5年なのか。
 それから、定員というものはなくなった、なくなったと言いながら、何でNIMSにはあるんですかというたぐいの問題なんですが、東大も定員がある。厳然として存在していますし、JSTにも定員があるんです。しかし、表向き的には、定員はなくなりました、法人化されたところの長は自由にやってくださいとか言うわけです。その辺をもうちょっと頑張っていただきたい。日本型ドリームチームを成功させる秘訣は、そこのところにあるような気がするので、その辺を非常に……。

【大竹課長】
 よろしいですか。

【榊主査】
 どうぞ。

【大竹課長】
 通常研究費は、確かに5年が多いんです。ただし、過去の例で言うと、きょう、玉尾委員いらっしゃいますけれども、今度、統合しました理研のフロンティアシステムが15年ぐらい、8年、7年という形でやってきました。5年を超える計画というのは幾つかあります。それから、先端融合イノベーション研究拠点という振興調整費でやっているものは、数年たつと評価して半分に減らすというものがありますが、10年を目指します。先ほど申し上げました研究拠点というのは光科学技術で、今年、2拠点で先行しようとしていますが、これは10年です。
 ただし、非常に大きな問題は、10年やりますと、その間をどうマネジメントをするか。役所側から10年間を完全にフォローするのはなかなか難しい。フロアディレクターのように何らかのファンクションを置いておきませんと、始めたはいいけれどもどこか行ってしまう。理研の場合は、理化学研究所という組織がありましたので、そこでフォローしています。先端融合イノベーション拠点の場合は、それぞれの大学なり研究機関にお任せしている。岸委員のところでやられている世界トップレベル拠点も一緒です。
 ですから、研究所、ファンディングエージェンシーというものに10年間お任せするときは、マネジメントをきっちり考える仕組みをやらなければいけない。ナノテクノロジーも、5年で切るのではなく、もう少し視野を広げたいと思っていますが、その部分のマネジメントスキームについては我々はちょっと悩ましく思っているところで、どうやったらいいか。特に、複数の研究機関が絡む場合の問題というのはこれがあると思っています。ですから、ここにも中核機関とか、幹事機関とか……。

【北澤委員】
 今、まさにお役所では5年以上は難しいという言われ方をしたんですが、その言葉はどういう法律から出てくるんですか。

【大竹課長】
 法律ではありません。例えば、私、10年のプログラムを立ち上げましたけれども、10年後まで私は同じポストにいられないからです。

【北澤委員】
 それはいいんです。だからといって、5年だっていないわけですよね。5年だっていないのに、5年といってつくられるんだから、じゃあ20年といってつくったらどうなのということなんです。

【大竹課長】
 5年というのは、先が見えるというところはあると思います。しかし、10年というのはなかなかほんとうに、5年ですと、委員会なんかを立ち上げても、事情を知った方は従来からフォローアップができる距離だった。ただ、5年を決めたわけではない。昔は3年もありましたし、2年もありました。少しずつ長くしてきていることだけはご理解いただきたいと思います。
 もう一つ、最初におっしゃられた定員の問題は、ここで議論するのが適切かどうかわかりませんが、総人件費改革ほかのいろいろな問題があって、増えないという事態が生じているのは、我々もあの手、この手を尽くして、法律や何かの関係でもその緩和を求めてはおります。一部それについて成功している部分もありますが、総枠として法人というのは減らすべしと。
 先ほど、局長からもお話しありましたが、今度のシーリングのベースになるであろう経済財政諮問会議のきのうの有識者ペーパーは、とにかく公的機関の定員を5年間で5.7パーセント以上減らすんだと、頭から数字ありきで来ています。公的機関と言われると、大学であろうが、法人であろうが、かかってしまうということが一つあって、これを例外とするかどうかという議論を今後していかなければならないけれども、そこには相当強い議論が要るでしょう。
 もう一つ、定員や融合組織にパーマネント職員を割り振れないというのは、個々の研究機関のご事情があるのではないか。まず、パーマネントの職を増やせば、それだけの人員をある定年年齢まで抱えるというプランニングが必要で、こういうものは結構難しいと思います。私が知る限りにおいては、しかも今後、定年制パーマネントというか、長期雇用としても、退職金を払うような定年制職員がいいのか、研究職では年俸制による評価ということになりますと、この辺のところはいろいろやりくりと、将来にわたっての人件費の中でのスコープが必要で、例えば理化学研究所では、知る限りにおいてはそういうことをおやりになって、市民研究員や何かの扱いを変えているはずです。
 ただ、理研のような研究機関、シンプルと言っては失礼ですが、比較的構造がシンプルな研究機関でも、これをやるには相当の経営スコープが要る。同じことを大学なり何なりでやれるかというと、非常に難しいと思っています。仄聞するところでは、部局間におけるいろいろなご意見の違いなどがあって、なかなか容易ではない。自治のある組織では、自治としてそういうことをお決めになればできる境界条件はあるんですが、難しさも十分わかる。きょう、井上委員もおいでになっておられるし、経営に携わっている方がおいでになっているので、その難しさはそんな簡単なものでないことはわかっております。ただ、少しずつ努力を重ねていくのではないか。
 実際、先ほど例の挙がりました幾つかの大学なり研究機関では、既存の定員をやりくりするなりして、新しい部門でも人をちゃんと長期間雇用できるように努力はされているけれども、なかなか容易でないということは理解しております。

【榊主査】
 ありがとうございます。大変大きな問題にかかわるところですけれども、こういう問題意識を持ちながら今後も議論させていただきたいと思います。
 実は、予定の時間を25分過ぎておりまして、この調子ですと1時を過ぎても会合が終わらなくなってしまうと思いますものですから、これでこの案件についての意見交換は終わりにさせていただきます。
 先ほど申しましたように、21年度の概算要求の案、きょうのご意見などもいただきながら事務局のほうで整理していただくことになりますので、状況に応じていろいろご意見をいただきたいと思います。
 お許しいただければ、2番目のほうに移らせていただきたいと思います。2番目は、次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発の外部評価についてであります。ご承知のとおり、次世代のスーパーコンピュータ整備に伴いまして、ナノアプリケーションの開発が進んでおります。これにつきましては、スーパーコンピュータの整備計画の中でナノアプリケーションの開発が議論されてまいりましたけれども、本年からは当委員会がナノ・材料の観点から議論に参加させていただくことになっております。
 ナノアプリケーションについては、22年度に実際に稼働して実証試験の段階に入ることになっておりまして、本年度と来年度が大変に重要な時期となっております。ナノアプリケーションが大変有意義なものとして完成することを目指しまして、プロジェクトの中に外部評価委員会が設けられて、議論を進めていただきました。この外部評価委員会の主査は魚崎委員が務めておられます。そこで、魚崎委員から、この委員会で議論についてまとめられた報告書を、約15分程度でご紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【魚崎委員】
 配付されています資料3と資料4をごらんください。資料4が報告書でありまして、資料3がその概要になっていますので、資料3を中心にご説明させていただきますが、時々、資料4を引用しながらやるということです。
 今、主査からご承知のようにと言われたんですけれども、どの程度ご承知になっているか。私も委員長になるまで、ここの位置づけ、それほどよく理解していませんでしたのであれなんですが、資料4の13ページ、付録なんですけれども、上の図がプロジェクト推進体制となっております。これがスーパーコンピュータ全体の推進体制だと思いますが、右のほうにグランドチャレンジアプリケーションというものがあって、全体を動かすハードとソフトということで、グランドチャレンジアプリケーションというのはソフトのほうで、その中のナノ統合シミュレーション分子科学研究所と書いているところが今回の外部評価の対象になった部分である。
 それに対応して、バイオ関連については理化学研究所でやっているということでありまして、今回の外部評価の対象はナノ統合シミュレーションということでございます。
 評価の概要、資料3を見てください。1枚めくりますと、0.概要と書いています。これか全体のまとめになっておりまして、一番上に書いてありますが、基本的には順調に進捗していることを評価しております。ただし、以下について改善が必要であるということで、幾つかポイントを指摘させていただいております。
 開発ソフト等については後から議論していきますが、我々が議論をした中で、これから大事であろうというところが後半部分です。(4)(5)(6)と書いてあるところでありまして、実験研究者、企業研究者との連携について、人材育成について、広報活動についてということで、プログラム開発は順調に進んでいるけれども、それを一般の研究者等に知らせて、より使ってもらえるようなシステムにしていくというところが、まだまだ不足しているのではないかということが全体的なトーンであります。
 それでは、中身について、1枚めくっていただきますと、1.はじめに、どうしてこういう委員会ができたかということですが、先ほど主査からもありましたけれども、外部評価をすることで最終年度に向けて指摘、提言を行って、今後の運営に反映させるためということで、実際の委員会は3回行いました。
 メンバーは、資料3の一番後ろに書かれております。私が委員長ということですが、この委員会からは栗原委員にもご参加いただきました。そのほかの学識経験者と言われる先生方は、ほとんど全員がコンピュータ関連の先生、塚田先生、樋渡先生、平尾先生、矢川先生。そのほかに、企業から、松下電器の高尾さんと、元住友化学の志賀さんというお二人が入っています。ということで、私と栗原委員は、どちらかというとナノに展開するためにはどうするんだという観点でかなり議論を進めました。
3.評価項目ということで、これは大きく分けて3つの点から評価をしたということでありまして、もともとの設定目標の妥当性、それに対してどの程度進んでいるかということであります。2年経過しているけれども、どの程度進んでいるか。それから、基礎科学への貢献がどうか。将来、産業技術へ貢献していけるであろうかということ。それから、実際の具体的なアルゴリズム、プログラム開発は進んでいるかという問題。それから、研究開発とは別にプロジェクトマネジメントは妥当に行われているか、特に重要であると思われる人材育成へどう貢献していったかが評価の項目ということであります。
4.評価報告(要旨)総論ということで書かれております。その下3行、研究開発計画はおおむね適切なものであり、順調に進捗している。今後とも、この分子研を拠点として、実験研究者や産業との連携を強化するという観点から、委員会体制等、一部改善を図りつつ、また若手育成に注力しながら、より一層強力に推進していくことが妥当である。先ほども申しましたけれども、若干不足した点をここでもう一回記載しております。
 次のページ、4.評価報告(要旨)の1.設定目標の妥当性、研究開発の進捗ということであります。もともとの設定、2年した現在でも妥当かということでありますが、ナノを基盤としたいろいろな課題を設定していますが、おおむね妥当であるという結論にしています。
 一方で、分野外、専門外、専門家以外の人々、つまり一般の研究者、ひいては一般の国民にわかるようにチャレンジングなテーマ、シンボリックなテーマの具体例を提示していくことが必要である。スーパーコンピュータ全体のプロジェクトは、今、非常に大きなお金を使って神戸に建設しているわけですが、それを実際に世の中に見せるというのは、ソフト、あるいは実際にプログラムを使うということですから、そういう意味では大きなお金のアウトプットがここに来ているということですので、やはりそこを見せていくことが大事であろうということ。最終的には、作業応用をしなければいけませんので、計算科学を企業研究に取り組むということで、一般の研究者だけではなくて、経営レベル、ある程度トップレベルの方が理解できる、経営判断のできるような説明が要るのではないかと言っております。
 それに関連して、(2)目標設定は妥当か。妥当ですが、専門外の人々の理解を深めるためにイラストを含めてアピールが大事であると言っております。
 その次、目標設定の妥当性、研究開発の進捗の1(3)次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアはグランドチャレンジ課題を解決するための統合ソフトとして妥当なものとなっているか、その開発計画は妥当かということですが、資料4の18ページをごらんください。下の図です。
 ナノ分野グランドチャレンジ課題、これが実際に展開している研究開発になっておりまして、最終的にナノ・材料、生体物質、エネルギーという出口を見据えつつ、今までやっているのは中核アプリケーション、基本となるアプリケーションと、それに機能を付加する周りにいろいろ散りばめられたソフト、それをつなぐ連携ソフトという3本で進んでいるわけですが、その辺がどう進んでいるかということで議論になっております。
 ですから、(3)は、統合シミュレーションソフトはグランドチャレンジ課題を解決するための統合ソフトとして妥当か、開発計画は妥当かということであります。
 その下に、中略と書いて、中核となるアプリケーションと書かれているんですが、このままではわかりにくいので、資料4の4ページ、下から10行目の部分がここに掲げてあります。中略の部分は、「ペタスケール環境下で稼働する、ナノ分野におけるコミュニティに支持された使い勝手の良いアプリケーションソフトの開発を目標としており、これまで確立された方法論、アルゴリズムに基づいて開発された」、ここから続きまして「中核となるアプリケーション(以下、中核アプリ)をより一層高度化し、さらには、様々なニーズに対応するためにこの中核アプリと組み合わせて用いることのできる付加機能ソフトの開発も着実に行っていく必要がある」。
 ちょっと文章がわかりにくいんですけれども、先ほどの図にありました基本的な中核アプリと、それだけではなく、関連したものをきちんと展開していく必要があるということで、後で出てきますが、中核アプリ等もきちんと進んでいるということであります。
 もともとの選定、開発計画、今、図にありましたいろいろな中核アプリを選んで開発しているわけですが、それはよかったかというと妥当である。それを実際にいろいろ使っていくための付加機能ソフトは、広くナノサイエンス研究に必要な機能を十分にカバーしているか。これもおおむね妥当であるが、実験研究者との連携の過程においても、さらに広く意見を求めていく姿勢が必要である。計算科学、あるいはコンピュータソフト開発の先生方だけが進んでいっている、実際使えるところには至らないので、きちんと実験研究者と連携をとりながらやってくださいということを指摘しております。
 連携ツールというのは、中核アプリと付加機能をつなぐものですが、これも妥当である。ただし、連結部分についても付加機能ソフトと同様、今後とも広く意見を求めながら、柔軟に開発を進めていくことが望まれるということを指摘しております。
 1枚めくりまして、基礎科学への貢献が十分なされているか、産業技術への貢献が十分見込めるか。これは、順調に進捗しているということにしております。
 その下の3アルゴリズム開発、プログラム開発等の研究開発は、順調に進捗しているか。具体的には、ソフトウェアがどう進んでいるかということですが、中核アプリについては順調に進捗している。中略と書かれていますが、資料4の6ページ、3行目から同じところがありまして、順調に進捗していると書いてあります。その次、中略と書いてあるところが、本文では、「それぞれの中核アプリに対して、基本的な性能と解決すべき課題が明らかにされ、課題の解決に向けた今後の開発の方向性が示されている」。中核アプリ、今まで開発された段階のものを、でき上がるであろうシステムに、当然、素材はまだ使えないわけですけれども、それを見越した計算を進めて順調に進んでいる。
 それから、ペタフロップスレベルの計算が可能であるということを確認しつつ進める。中には問題の部分もありましたが、課題の解決に向けた今後の開発の方向性も示されているということで、「そのための体制も整いつつあり、グランドチャレンジ課題を解決するという観点から、いずれの中核アプリに対しても次世代スパコンを用いた性能として十分な高性能が期待できる」ということになりました。
 (2)付加機能ソフトについては順調に進捗している。
 (3)連携ツールについても順調に進捗している。ただし、連携ツールは順調に進捗しているんですが、今後のことを考えると、計算工学者、計算機を使う工学者との連携を積極的にやる。だから、ソフトを使う面と、目的という面と、ソフトを動かすという両方で連携をより深めてくださいということになっています。
 プロジェクトマネジメントの妥当性ですが、委員会構成等について、(1)で一部改善を要すると指摘しました。一部入っておりましたが、ワーキンググループ、委員会等で実験研究者の構成が少なくて、計算科学者中心に行われていたので、もう少し実験研究者との連携、産業との連携を強化すべく、委員会体制について再編を含めた再検討が必要であるということ。
 (2)は妥当ですが、(3)オールジャパン体制が実現されているかというところで、これについても改善を要する。このプロジェクトを広く実験研究者に知ってもらうことが必要である、それから産業との連携も必要であるということで、これら実験研究者、企業連携者との連携の推進については、具体案を示して、現時点で可能なところから実際に活動に着手していく必要があると指摘しております。
 予算配分等は適切であるということですが、3.人材育成への貢献・成果の普及の妥当性については、次世代育成はかなり貢献している、研究者をかなり育てているということですが、より一層、大学と協力しながらやっていく必要があるということです。
 一方で、計算科学研究者に限らず、実験研究者等の周辺を含めたナノサイエンス分野全体の研究者のレベルアップに貢献できるよう、さらなる努力が必要である。これも今まで指摘したことと同じで、実験研究者、実際にナノ科学を研究している研究者にこのソフトを使ってもらうようになっていく必要があるということであります。
 一番最後のページは、その他の部分で、多様なシミュレーション機能と、それらを連携されるツールは開発されつつあり、ナノサイエンス研究の現場で必要とされる計算ソフトが一通りそろった専門の研究者にとって、使い勝手のいい統合ソフトが用意されつつある。ですから、計算科学のプロにとっては非常に使いやすくなってきたということですが、一方で計算科学の専門家ではない研究者に対しても、ある程度の簡単なトレーニングで利用できるインターフェースについて、ここで十分議論しておくべきである。プロジェクト終了後には、この議論に基づいて、これらの成果をパッケージ化して、維持、管理、改訂、公開していく仕組みが必要である。
 産業界へのバトンタッチについては、産業界側が主体性を持って研究を推進していく体制が必要であるが、その場合にも継続的に支援することが必要である。このプロジェクト自体はあと数年で終わるわけですが、終わった後、実際にそのまま使って、発展させていくための仕組みが必要ということであります。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 引き続きまして、実際にこのアプリケーションの研究を推進しておられる岡崎教授にご参加いただいておりますので、この報告書を受けて、今後の進め方などにつきましてコメントいただきたいと思います。15分ということですけれども、恐縮ですが、15分よりも短めにしていただきたいと思います。30分近くおくれていますので、申しわけございません、よろしくお願いいたします。

【岡崎教授】
 名古屋大学の岡崎と申します。このプロジェクトでは、副拠点長と事務局長を務めさせていただいております。本来でしたら、拠点長の平田がご報告申し上げるべきところですけれども、きょうは、大変申しわけありませんが、かわって私のほうから報告させていただきます。
 今、魚崎先生のほうから評価報告のご説明をいただいたわけですけれども、それを受けまして、拠点としてどのように対応していくかを簡単にご報告させていただきたいと思います。
 これが内容ですけれども、魚崎先生のほうからご指摘のありました中で、非常に重要な項目と思われるものを1.から6.に項目分けをいたしまして、それぞれについてご報告させていただきたいと思います。概要の0.に対応した形となっております。最後に、スケジュールにつきましてもご提案させていただければと思います。
 まず、課題の明確化についてですけれども、社会的養成が高く、またサイエンスとしても夢のあるチャレンジングなテーマ、シンボリックなテーマの設定を行う。これは、実はプロジェクトとしては既にやってきていることでございまして、それをいかに一般の皆さん方にわかりやすいように説明するかというスタンスのものだと理解しております。
 具体例としましては、この後ご説明させていただきますが、ここにある3つを挙げさせていただいております。同時に、長期的なもの、遠い将来を目指したテーマだけではなくて、ナノ分野の今日的な課題についてもきちんと述べていこうということで、この部分がおそらく実験研究者との連携も含めて非常に重要な位置づけになってこようかと思っています。この部分につきましても、プロジェクトの中では設定させていただいてきているつもりではございますが、これから実験の先生方と共同でこういった課題設定、その中でも特に重要なものについて課題設定して、これを実際に研究に取り込んでいくという活動を始めさせていただきたいと思います。これにつきましても、後ほど詳しくご説明させていただきたいと思います。
 まず、未来社会へ向けたと書いていますけれども、これは将来的な課題、長期的な課題、夢のある課題ということで、3つを挙げさせていただいています。1 つ目がナノデバイスの開発ということでございます。2つ目が、感染症の克服、これはウイルスの全原子シミュレーション。3番目が、先ほども少し出てまいりましたが、穀物ではなくセルロースからバイオマスエタノールの生成ということで、酵素反応の丸ごと解析という3つの課題を挙げさせていただきました。
 まず1番目、高速、高機能、省エネルギー電子デバイスの開発ということでございまして、こういったデバイスを丸ごと計算してしまう。ナノスケールのこういったデバイスに関しましては、大体10万個の原子の全電子計算が必要になってくるわけですけれども、それをスパコンで実現していこうということです。特に、こういった接合の問題であるとか、実際では輸送の問題であるとか、いろいろな問題が絡んでくるわけですけれども、そういったものをきちんと解析するようなものをつくることができれば、将来的なデバイスの開発に大きく貢献できるのではないか。これは、次世代スパコンで初めて可能となる計算です。
 2番目は、ウイルスの全原子シミュレーションということですけれども、現在は小さな断片でだけ計算がなされているわけですけれども、ウイルス全体でシミュレーションしてしまおうということですから、大体1,000万個の分子動力学計算になってくるわけですけれども、これを基盤といたしまして、さらには抗ウイルス剤がどのように結合して、どういうように影響しているか。あるいは、抗体とどういう特異な相互作用しているのかといった解析も、重エネルギー計算といったことから可能になりまして、ウイルスを克服するナノ基盤をつくっていくことができるのではないかという提案をさせていただいております。
 3番目は、エタノール生成ですけれども、これは酵素反応ということでございまして、セルロースの分解酵素とセルロースの化学反応の計算ということになりまして、これも酵素とセルロース、それから溶媒である水をすべて丸ごと計算していかなければいけない。電子状態も必要であれば、水を含んだ溶媒の効果も取り入れなければいけないということで、シミュレーションの技術をつくっていくわけですけれども、もしこれができれば非常に効率のいいエタノール生成を、穀物を使わずに、そこら辺の木質のものから、あるいは草といったものからつくっていくことができる技術に貢献できるのではないか。
 こういう3つの課題を設定させていただきまして、これをわかりやすく説明するつもりでこの図を改めてつくらせていただいたんですけれども、お手元の外部評価報告の図よりは少しはましになっているかと思います。こういった努力をこれから続けさせていただきたいと思います。特に、サイエンスの観点からと同時に、産業への応用という観点からの説明をわかりやすくさせていただくつもりでおります。
 今日的課題につきましては、また後ほど述べさせていただきます。
 これらの課題の中でも、特に若い人たちにアピールするような提示の仕方、さらには産業において、企業の研究者だけではなくて、経営者がいろいろな判断できるような資料づくりも心がけていきたいと思っております。
 こういった計算を実現するために、ここにありますような次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアをつくらせていただいているわけですけれども、これには中核アプリケーションと呼ばれる6本の基盤的なソフト、共通基盤的なソフトで、これがペタフロップスで稼働いたします。あるいは、ペタフロップスに近い性能で稼働するものでして、いろいろな機能を加えるソフトに非常に多様性を持たせるソフトがございまして、それを付加機能ソフトと呼んでおりますが、これがまたかなりの量ございます。ここには、主なものを書かせていただいております。
 こういった多様なソフトを連携することが重要になってくるわけですけれども、その連携ツールの開発も行っておりまして、3本立ての開発で初めて統合ソフトウェア全体が意味を持ってくるというものでございます。
 こういった開発の中で、先ほど魚崎先生から指摘がございましたが、マイルストーンをこれから明示させていただきたいと思います。まだきちんとした資料はできておりませんが、近々ご説明させていただければと思っております。
 それから、こういったソフトを使って何ができるようになるのか、何に役立つのかについて、より具体的に示させていただきたい。具体的な今日的な課題、あるいは将来的な課題の提示を通して、ご説明させていただくことになろうかと思います。
 中核アプリにつきましては、十分高性能が期待できる。特に3つのものにつきまして、おそらく1けたを超えるだろうという期待が持たれておりまして、それぞれのソフトに特徴的なものがございまして、最適な開発計画を個別に設定してやっていこう。付加機能は、多様なニーズへの対応ということで、柔軟な開発をしていこう。連携ツールは、特に密結合のツールに注力していこうという計画を立てさせていただいております。
 3番目の統合ソフトの将来的な運用、これはプロジェクトが終わって、めでたく開発ができた暁にはということですけれども、1番目といたしましては、維持、管理、改訂、公開を持続性を持って行うことのできるような仕組みを、ご提案させていただきたいと思ってとおります。
 2番目は、将来の産業界のバトンタッチにつきましても、先ほど期待されるということだったわけですけれども、お答えといたしましては、学術的、方法論的に企業研究者を継続的に支援するということになっております。
 3番目は、1番目、2番目は主に計算科学の研究者を念頭に置いたことでございますが、3番目としまして、必ずしも計算科学の専門でない研究者、つまり実験研究者も簡単なトレーニングで利用できる。さらには、不特定多数の一般技術者、研究者ですらない方へどう普及させていくかといったことについても、これから検討を始めさせていただきたいと思っております。
 4番目、これが一番重要なところですけれども、実験研究者、企業研究者との連携につきまして、連携の仕組みを分子科学ワーキンググループ、物性科学ワーキンググループというものを横断的につくらせていただきまして、そこを母体としてしっかりとやらせていただきたい。特に、産業につきましては産業応用協議会、実験研究者という意味では、まさにこの委員会の先生方にいろいろとご指導いただきながら、進めさせていただければと思っております。
 主に4つの事業を考えておりまして、1番と2番はソフトの講習であるとか研究会であるとか、わりと調査的なもの、教育的なものですが、3番目、4番目が研究にかかわる部分となります。
 1番の統合ソフト講習会ですが、これはかなりソフトができてきておりまして、今年度中に2007年度版を、途中ではございますが、公開を進める予定でおります。それをもとにいたしまして、例えば午前中に基礎的なこと、理論的なこと、方法論的なことをやった上で、事例研究、実際に適用した事例を紹介させていただきまして、具体的にプログラムをどう使うかという講習。最後は、実際にソフトを動かしていただくという実習も含めた講習会を東京に限らず各地で、しかも一つのソフトについて継続的に、何カ所かでやらせていただくということを、この秋ぐらいからやろうという相談をしております。
 2番目の連続研究会ですけれども、これが実験研究者、企業研究者、計算科学研究者の連携を特に重視したものでございます。これは特に魚崎先生のご提案によるものですけれども、専門家による、少人数で専門的にどんどん実施していって、その中でいいものを3番目の具体的な実証研究課題として取り上げていこうという話でございます。
 テーマ例といたしましては、この研究会、実はもう相談を始めさせていただいております。ここにいらっしゃる先生方、無断で名前を勝手に書かせていただいておりますが、少人数で相談しまして、10項目ございますけれども、ナノ、あるいは材料にかかわるような課題を挙げさせていただきまして、実験側の担当者、それから計算側の担当者を含めまして研究会を開いて、その中で課題を設定していこう。全部が全部設定、採択されるわけでもないとは思いますが、そういった活動をこの秋から始めさせていただこうと思っています。もちろん、これにこれからどんどん追加するという形で、あるいはもっとたくさんの先生方に加わっていくということで、充実させていきたいと考えております。
 こういった研究会に基づきまして、今年度、二、三課題を先行的にアプリケーション実証研究ということで、共同研究を先行実施させていただきたいと思っています。来年度からは、これを本格化いたしまして、公募の形式をとりながら進めさせていただきたいと思っています。
 4番目は、企業との共同研究ですけれども、これはもう従来からやっておりまして、産業、教育界と連携しながら、さらに継続実施させていただきたいと思っております。
 人材育成につきましては、若手の育成、先ほど北澤先生からのご指摘もありましたが、ポスドクの計算科学分野の定着というのは非常に重要でございまして、 5年やって終わりというのでは何にもなりませんので、こういったことに力点を置きながら、じゃあどうすればいいか。非常に難しい問題ですけれども、考えていかなければいけないと思っております。
 1番目はもちろん研究者ですけれども、2番目は研究者と計算機の中間に位置する計算工学、情報工学の知識も非常に重要になってきます。こういった技術者を養成していかなければいけないということで、これについても考えていこう。
 3番目は、実験研究者を育成する。すみません、おこがましいことを書いていますけれども、実験研究者もこういった計算を日常的に使いながら、研究を進めていっていただけるような形が実現すれば、このプロジェクトの大きな成果となっていくのではないかということで、実験研究者の方々にどのようにこういった成果を使っていただけるかという部分も、非常に重要なところではないか。
 広報活動の強化については、これをより普及していくということとプロジェクト内の話、こういったことでやらせていただきたいと思います。
 こういったことを実現するために体制が重要なわけですけれども、先ほど不十分である、改善を要するというご指摘をいただきまして、外部性の確保と連携の強化という2つの観点から全体を見直させていただきました。
 一番大きな特徴は外部評価委員会、どういう形かはまだご相談させていただいていませんが、継続的に外部から評価していただくという方針で、今、相談を進めているところです。それから、物性科学ワーキンググループ、分子科学ワーキンググループに実験研究者、企業研究者の方にたくさん入っていただきまして、先ほどの連続研究会、あるいはアプリケーション実証研究、共同研究の場とさせていただきたいと思っております。
 これが対応スケジュールですけれども、企画、計画的なものはおおむね今年度に済ませてしまいたい。できるところからどんどん実行させていただきたいと思っています。特にテーマにつきましては、1番目は資料をどうつくるかというあたりではあるんですけれども、2番目の今日的な課題は、ここの部分と、ここの部分です。連続研究会と全く連動しておりまして、これに基づいて、この2つがアプリケーション実証研究へと移行していくという計画をさせていただいております。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 これからお二人のご説明に基づきまして議論してまいりたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、具体的に21年度の概算要求に向けての検討などが、今の議論が大きな方針として進められるということを一つご承知おきいただきたいということと、ナノアプリケーションにつきましては、本年12月以降に、当委員会でプロジェクトの中間評価を行うことになっております。そういうわけで、中間評価をすることを念頭に置きまして、評価の軸として、今、ご説明いただいたような内容で問題がないかどうかという観点からも意見をお伺いしたいと思います。
 残念ながら、30分の予定がマイナス35分になっておりまして、10分か十二、三分でキーポイントについていろいろご意見をいただいて、次回でも引き続きご意見をいただくことができると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 ちょっと私のほうから質問させていただいて、幾つかのモデル計算のようなことを実施していくことを考えておられるようなんですけれども、本格的なスーパーコンピュータが実現する前に、今のようなものが実際に機械の上で走るのかどうか。それは、どういう位置づけでテストができるのか、その辺についてちょっとご説明いただけますでしょうか。

【岡崎教授】
 もう既にソフトウェアの開発というのはどんどんやっておりまして、従来の計算機、今、あります計算機で動くソフトはもうかなりの部分ができております。現実にそのソフトを使って、サイエンス研究も並行して進めさせていただいております。したがいまして、今回、提案させていただこうとしている今日的な課題も、決して新たに始めるものではなくて、計算科学サイドでは、少なくとも何年も研究を継続して続けてきている。その延長上に実験研究者との共同研究になるということで、決してモデル計算ではなくて、実際のサイエンス計算というようにご理解いただければと思います。

【榊主査】
 十分その辺はわかっているつもりなんですけれども、今回のアプリケーションのプロジェクトは、大きな計算機が実現したときに効果を発揮するというストーリーになっている関係で、早々と成果が上がるとそういう機械は必要ないのではないかという議論も含めまして、誤解がないようにしなくてはいけないものですから、どういう位置づけなのか。これは前に常木先生もお話になられましたけれども、100倍になったとしても原子のスケールはさほど大きくなるわけではない。コンピュータのハードが実現する部分とソフトが実現する部分の兼ね合いがやはりちょっと、本音をいろいろ聞かせていただいたりする必要もあるだろう。そういう意味で、どういうふうに位置づけたらいいのか。

【岡崎教授】
 わかりました。未来への挑戦と書かせていただきました将来的課題につきましては、現在の計算機では全く歯が立ちません。おそらく実行すらできないという大きな課題を設定させていただいております。これにつきましては、次世代スパコンが完成した暁に数カ月専有させていただければ、かなり研究が進むであろうという位置づけでございます。こちらのほうは、おそらく問題ないだろうと思います。
 もう一つのほうの今日的な課題につきましては、今の計算機で研究は可能であるけれども、それをやるには1年、2年平気でかかってしまうというものでございまして、今からやり始めると、次世代スパコンができるころには、幾つか問題解決に至りつつあるものができてくるだろう。ただし、次世代スパコンが実際にできますと、100倍、1,000倍の能率で計算が進むようになりますので、比較的短期間に研究が完成へと向かっていくのではないか。そういうように理解させていただいております。

【榊主査】
 わかりました。ありがとうございました。
 ほかにいろいろご意見があると思います。いかがでしょうか。

【魚崎委員】
 中核アプリなんかについては、でき上がったら実際この程度ができるんだということを、今のコンピュータで走らせてテストをやっています。

【榊主査】
 そうですか。わかりました。
 樽茶委員、お願いします。

【樽茶委員】
 実験研究者との連携の仕組みというところなんですけれども、実験研究者は、ソフトができますからやってごらんなさいと言われても、きっとやらないと思うんです。具体的にどういう仕組みを考えておられるのか。問題を持っている実験研究者の人に、サポートをするということなのか、共同研究で進めるということなのか、どういう形なのか。

【岡崎教授】
 いろいろなケースがあろうかと思いますが、一番多く出るのはおそらく共同研究だろうと思っています。先ほど課題を幾つか挙げさせていただきましたが、例えば燃料電池であるとか、ドラッグデリバリーであるとか、分子素子、分子エレクトロニクスといったようなものは、おそらく実験の先生方とも共通の課題であろうと思っています。そういったことを、既に計算側としても、計算側なりに研究を始めさせていただいておりまして、まずは研究会で、今、計算はこんなことができるようになりました、次世代だとさらにこんなことができるようになりますというご提案をさせていただいて、一方で研究の先生方からは、今、こういうことが問題になっているんだということをお伺いして、一種のお見合いとでも申しますか、これは何とかいけるのではないか、おもしろそうだということになれば、それでお見合いが成立するということで、共同研究の検討が始まっていくというパターンを想定しております。ですから、計算を実際に実施するのは、まず第一には計算科学側の人間だろうと思っております。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。
 もう一つ私から聞かせていただいて、こういう種類の計算の場合には、米国の研究の状況とか、ヨーロッパも含めてですけれども、そういったものとの補完性、あるいは相互の対比みたいなことも当然視野にあると思うんですけれども、その辺については、今、どんなふうに考えていて、中間評価のときにはどんなことが話題になりそうか、ちょっとご説明いただきたいと思います。

【岡崎教授】
 アメリカは、もう皆さんご承知のように1ペタフロップス、理論ピーク性能で、次世代スパコンの10分の1規模ですけれども、それが既に稼働を始めております。ナノの分野につきましても、プロジェクトがオークリッチあたりを中心に出発しておりまして、いろいろな大学でもいろいろなことをやり始めている状況です。
 ソフトウェア、理論方法論に関しましても、正面からぶつかり合う部分もございます。競争的になっている部分もございますし、逆に日本の理論、日本で開発された方法論でしかできない独自の部分もございます。そういったあたりの対照表というのは、追々ご報告させていただければと思っております。日本が突出してすぐれている、方法論的に突出してすぐれている部分と、計算能力、あるいはプログラム能力という意味で火花を散らしている部分と、この2種類がございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、少し議論が中途半端かもしれませんけれども、時間の制約がございますので、今回、いろいろご説明いただいたので、我々、理解を深めさせていただいたということで、次回の委員会でもこの関連の議論はいたしますので、資料などをお読みになりまして、いろいろ関連の質問がありましたら事務局に投げていただいて、それを整理して、またご検討いただくというような形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、第3の議題に移らせていただきたいと思います。移る前に、もし第2の議題でご意見があればお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。申しわけございません、ここで一気に20分ぐらい挽回ができました。ご説明いただきました岡崎教授には別途ご意見が寄せられる予定ですので、よろしくご検討のほどお願いしたいと思います。
 続きまして、議題(3)に移らせていただきたいと思います。今後のナノバイオ拠点の連携強化に向けた取り組みについてということでございます。ナノバイオ研究拠点は、茅特任顧問を中心とするネットワーク型の拠点と、片岡委員を中心とする東大の拠点が施策として進められております。片岡委員の拠点につきましては、昨年度、と申しましても今年3月ですけれども、当委員会において中間評価を行いました。一方、茅特任顧問のネットワーク拠点につきましては、ネットワークの形成に重点化したプロジェクトとして、フィージビリティースタディーの議論を踏まえて進めております。
 この両拠点に関して、大きくナノバイオという政策のくくりとして推進していく方向が、3月の当委員会で片岡委員から提案されまして、当委員会としても、既存の両拠点の連携を進める中で、新しいナノバイオの研究の推進を模索していく方向で話がまとまっております。その際の片岡委員の資料は、参考資料として皆様に配ってございます。
 実際には、片岡委員と、茅拠点を代表する長田特任顧問を中心にして、両拠点が力を合わせて進めていける方法をご検討いただいております。本日は、長田特任顧問においでいただきまして、連携の進め方についての検討状況をご報告いただくということでございます。片岡委員もご出席ですので、必要に応じてご発言をいただこうと思います。
 この議論は、もう一方の形としては、茅拠点の中間評価という性格を持つものでもあります。つまり、先日のキーテクノロジーのプロジェクトの中間評価でもそうでありましたけれども、中間地点での成果状況を評価する視点があるということで、プロジェクトの後半をどういうふうに進めていくのかを当委員会として、メッセージとして発信することが必要であります。そういうわけで、茅拠点のこれからの進め方を検討する際に、いかにして片岡拠点との連携の中で進めていくのかということにつきまして、議論をさせていただきたいと思います。
 それでは、長田特任顧問、お願いいたします。

【長田特任顧問】
 理化学研究所の長田と申します。
 今、榊主査のほうからご説明ありましたように、このプロジェクトは平成17年度より茅特任顧問を拠点長といたしまして活動してまいりました。今回は、これからの活動の仕方、連携のありよう、さらには日本のナノバイオを研究するのに、どういった考え方で進めたらよいかというようなことを話しするようにということでありましたので、私、長田がその考えの一端を紹介させていただきたいと思います。
 同時に、文部科学省から、これまでの活動の要約もするようにというお話をいただきましたので、トータルで20分ほど時間をちょうだいいたしまして、前半、なるべく簡略に、これまでの活動の復習を改めてさせていただきまして、後半にこれからの活動の考え方を述べさせていただきたいと思っております。
 改めてここでご紹介するわけですが、私たちの考え方は、物質科学、生命科学、それから情報科学、これらを融合しまして新しい分子情報生命科学をつくり上げたいというわけであります。具体的に、どういうふうなことをするかということでありますが、ここに書いてありますように生命機能を定量的な情報として取り出す。その情報をもとに数理解析をする。それから、生命情報機能の伝達物質を設計し、創成する。それから、大事なことですが、階層を超えて物質機能を設計するための研究、最終的にはデバイスの研究を視野に入れております。
 中間拠点は理化学研究所でありますが、サブ拠点としまして九州大学、北海道大学、大阪大学、合計4チームで、それぞれの連携をつくりまして活動してまいりました。本日は、それぞれの拠点を代表する先生方にもおいでいただいております。
 平成17年度に、真っ先に阪大に連携研究センターをつくりまして、ある種、連携のためのヘッドクォーターをつくりました。19年度には、九州大学、北海道大学につくりましたので、一応、4拠点が連携のためのオフィスを持ったということになります。
 4つの拠点、理化学研究所、九州大学、北海道大学、大阪大学が、それぞれ固有の得意分野を研究ターゲットとしております。詳しくは申し上げられませんが、ここに書いてあるような課題について研究総括を行う。それから、それぞれの大学に拠点長を置きまして、連携研究しているということでありまして、それぞれの部門には客員の研究員を数名配置するという形でやっております。
 この中から、中心的な課題を拾い上げるような形で展開してきたわけですが、昨年、平成19年1月に文部科学省の審査会がありまして、2年半ほど過ぎた段階での活動の状況をご報告させていただきました。
 そこで幾つかの指摘を受けました。1つは、研究リーダーによる研究進捗のマネジメントと参画メンバーによる情報の共有。定常的、恒常的な研究者間の意思の疎通を図ることに努める。さらに、必要な課題を精選し、若手研究者が各研究機関を移動しながら連携を一層図るようにという指摘を受けました。
 それを受けまして、昨年1月以来、それまでの活動にプラスして、その趣旨を実現するための努力をしてまいりまして、先ほど申し上げましたように、連携研究センター4つ加に加えて、メディエーターという若手の研究者を各拠点に2名から3名ずつ配置いたしまして、彼らがフットワークよく、連携の研究テーマとか、活動の連携の研究テーマをつくるようなことをしてきたわけであります。
 その結果といたしまして、研究テーマをさらに絞り、連携によって生まれた先鋭的な研究課題、後ほどご紹介いたしますが、そういうことをしてまいりました。交流によって生まれた若手発案の研究サポートも、昨年度からしております。
 ここにまとめた図があります。一部重複になりますが、4つの拠点、理化学研究所、北大、阪大それぞれにサブ拠点全体のリーダー、きょう、おいでいただいております茅特任顧問であります。サブ拠点には、それぞれの分野を代表するような先生方を配置し、そこに特任の助教ですとか、流動的ポスドクを全体として 10名ほど配置いたしまして、連携を進めるようにいたしました。
 その過程で、これを一層強化するために、理化学研究所の中に分子情報生命科学推進グループというものをつくりました。さらに、19年10月には、これは研究室ですから、分子情報生命科学研究ユニットというものをつくりました。19年12月には、理化学研究所の中に北大の電子研の連携研究室をつくり、一層の連携を進めてきたわけであります。平成20年には、4拠点での研究協力協定を結んだわけであります。こういうふうに目に見える形、見えない形で連携を進めてきているわけです。
 本日は詳しい話は申し上げられませんが、この4拠点で、ここに書いてありますような相互の研究課題を持ち寄って、若手の方を含めた連携の研究活動をしてきたわけであります。
 極めて簡単にご紹介をいたしますと、こういうような4拠点がそれぞれ交差した形でやっているんですが、例えば分子モーター、阪大では生体のF0、F1 モーターという分子のH(水素イオン)で、回転するような実質のモーターがあるわけですが、それの合成版としまして九州大学ではダブルデッカーのこういう分子をつくって、これは100パーセント合成でありますが、回転の仕組みとか、動き方から生体のほうにフィードバックする。あるいはその逆とか、そういうことをやっております。
 これは、九大と阪大の連携の例です。分子の表面にブラシ構造を入れると、摩擦係数が10のマイナス4乗とか、10のマイナス5乗とか、ほとんどゼロミューのレベルまで摩擦が下がるという発見をいたしましたので、それを高分子のゲルですとか、高分子の表面のカシとか、これは東京大学でもやっておりますが、MPSという分子をくっつけまして、将来のマシンシステムで不可欠な摩擦を低減させたシステムを構築するということでやっております。
 これは理化学研究所の原さんたちが、粘菌に光を当てて、粘菌は光を嫌がるわけですが、嫌がるときにどういうパターンで、どういう形で嫌がって、公的な場所に移動していくかということを研究しております。ポイントは、そういうマクロの現象をどんどんさかのぼっていって、アクチミオシン、さらにはカルシウムの分泌という階層を超えたプロセスを統一的に理解しよう。そのプロセスを東大の数学のグループ、それから柳田先生の阪大のグループと連携をしながら、階層を超えて解明していこうという、このチームならではの解決の仕方をしてきているわけであります。
 本年2月には、4拠点が北大で会合を持ちまして、ここに書いてありますような調印式を行いました。新聞でも報道されております。
 これまでの活動は、毎年1億3,000万円、昨年度は1億円ぐらいいただきましたが、その経費の多くは、先ほど申し上げました若手のメディエーターを雇用した経費、それに伴う旅費が大半であります。研究を実質的に推進する額が書いてありますが、そう多くはない形で、むしろメンバーの方々が自分の外部資金を、別で獲得した経費をあてがって、この活動を3年間維持してきているわけであります。
 人材育成という観点が非常に重要なわけでありますが、この4拠点がネットワークで活動する。片岡先生のグループとは違った形での活動をしております。それなりの苦労もあるんですが、工夫もできるわけであります。例えば、3年の間に締めて7回のスクーリングをやっております。第1回目は阪大、以下、理研、九大、北大と順繰りに回りました。メディエーターと言われる30代後半から40代半ばぐらいの方々が中心になって、プランを立てて、運営をして、研究の課題を推進するため、平成18年でしたら、フェーズ1、全体の活動の概要を理解するための会合。昨年まででしたら先端技術の習得、今年は実践技術の習得及びそれらの展開と、課題を絞って活動してきているわけであります。
 これは、運営から推進、すべて若い人たちがお互い泊り込んで合宿をしてやったり、数日間の議論とか、セミナーとか、シンポジウムを通じて、共有する意識とか、価値観とか、課題を確認し合ったわけであります。
 これは、今年3月に北大でこういう雰囲気でやって、大勢来てやっているわけです。今年は、この9月に理化学研究所でやる予定であります。
 こういう若い人たちから提案をしていただきまして、ただし、必ず異なった機関にまたがって共同研究という課題で分子情報生命科学――こういう学問はないわけです。私たちが新たに提案して、こういう分野をつくろうというわけですから、むしろ若い方々がその内容を詰めていってほしいという希望からやったわけですが、こういう形で幾つかの機関が一緒になって、1課題について300万円ぐらい差し上げて研究を推進しているわけであります。
 ここには、3年ほどの間に発表した論文が入っております。こういう形で多彩な活動をしてきたつもりであります。
 一つの拠点で装置を集中的に集めて活動するのとは異なった苦労なり、課題なりを私たちはこの3年間に持ちました。しかし、連携をすることによって新たに生まれた研究課題も、同時に出てきております。3年過ぎたところですが、これをベースにさらに発展して、日本のナノバイオの新しい核になるつもりで、これからも活動していくつもりであります。
 ここまでがこれまでの概略でありますが、これからどうするか、多少の私見も交えてご紹介させていただきたいと思います。
 現在のナノバイオロジーというものを一言で言いますと、たくさんの生物的な特性のうち、今、多くの研究者が注目しているのは、正確な分子認識とか、正確な構造形成とか、そういったものだということができると思います。それがゆえに、例えばこれは一本鎖のDNAですが、DNAの末端のほうを加工しますといくらでもつながっていくわけです。それによって、DNAの折り紙なんて書いていますけれども、DNAの構築物をつくることができる。同時に、核酸の相互性を利用したセンサーとか、フェリチンというのは鉄を特異的に吸着する分子です。その大きさを利用しまして、ナノ粒子をつくったり、TMVのチューブを使って、そこにプラチナを包摂させる。
 これはワイヤですとか粒子ですから、次のデバイスのもとになるわけでありますが、ここで使われている特性というのは、今、申し上げたような項目でありまして、生物が持っているより高次の、例えば自己の複製とか修復とか運動とか、そういう機能についてはまだ手が及んでいない。次の時代は、やはりそういうところに行かなければならないのではないかということを痛感しているわけであります。
 言いかえますと、現在の生命科学というのは、生命の扱い方、理解のアプローチの仕方というのは、やはり機械的要素の組み合わせ、つまりマクロな生物対応ですね。階層を通じてマクロからミクロへ、さらにナノへと行きますと、最終的な要素は何か、その役割は何かという考え方からアプローチしていると言ってもいいのではないかと思います。
 そうしますと、その要素というのは、実際には固定したある具体的な分子だったり、分子の集合体だったりするかもしれませんが、それとそれの関係は何だろう。あるいは、反応物質のAとBの関係はどうか、そういうことを言っています。それがわかると、それに基づいて反応経路なり、反応のプロダクトなり、お互いの関係を探索していく。
 これを続けますと、生命体というのは要素が限りなく多い、組み合わせも限りなく多い。そうすると、当然、生物科学を研究対象とする人間は天文学的な数字になる。結果的に、生物科学は難しい、複雑だということになる。
 そこで、根本的に考えなければいけないわけです。その重大な誤謬は、細胞は頻繁に間違えるということです。例えば、細胞が生まれかわって、卵が分裂していくことを考えますと、その卵が分裂するときのシグナル分子は1,000個ぐらいが要素になっている。その要素の揺らぎというのは、大体そのルートですからルートの10の3乗ぐらいになる。誤る確率はその逆数ですから、1回、卵が孵るときには3パーセントぐらいの誤りを持っている。これは非常に大きな誤りなわけです。この辺が人工物のシステムとは根本的に違う。
 それを繰り返していくと、100回も繰り返すと正しく行くルートはゼロに近くなってしまう。こういう考え方では、生物の理解は正しい方向に行かないということになります。今のやり方ですと、深刻な袋小路に入ってしまうという矛盾を抱えているわけです。機械論的な考え、あるいは精密科学のエクステンションとしては、こういうことになるわけです。
 そこで、これに対する別の考え方が最近出てきております。それは何かということなんですが、その前に考えなければいけないことが幾つかある。今あるエレクトロニクスと違って、情報のキャリアがH(水素イオン)とか、イオン、ホルモンとか、ずっと大きな分子であるということ。それから、それが個性を持っているということです。実際に動くのは、熱の揺らぎである、KTのオーダーだ。変形だとか反応に関与するのは、ナノオーダーなわけです。それがインテグレートされて、大なきプロセスになったり、大きな変化になっている。分子の変形が集積していくプロセスというのは、全くわかってないわけです。そのプロセスの過程で何が起こるかというと、考え方、とらえ方によっては、非線形的な現象になって見えたり、シンクロナイゼーション、同調して一つのことが同時に起こってみたり、あるいは階層と解されたときに、下の階層では理解できないような現象が起こったり、その形として散逸構造、パターン形成とか、こういういろいろなことがある。
 こういう考慮を入れた生物全体のとらえ方があるだろうか、ないだろうかというところから、日本のナノバイオは進まなければいけないと考えているわけです。
 そういう兆候は、今、既にありまして、例えば構成論的生物学とか、そこで実際に何が行われているか、どういう物質であるかは別にしまして、アプリオールにネットワークを考えるわけです。ある機能を付与させて。そのネットワークと生物の最終的な出口との関係を見ることによって、生物の機能、生物はどういうものであるかを理解しようとする考え方であります。
 そういうものは、弾性的なネットワークの理解の仕方で生物を眺めようということで、構成論的生物学とか、複雑系生物学と言われているわけです。そういう考え方こそが、次の時代のナノバイオの中心的な考え方であると我々は思っておりまして、それは実は3月に片岡グループが中間報告なさったそうですが、私はおりませんからわかりませんが、何回かの片岡グループとの会合とか議論を通しまして、そこは基本的には同じだということです。私たちは、それをナノバイオシステムとしてとらえる、片岡先生のほうはインビボサイエンスであると考えている。
 そういうことはどういうふうに考えたらいいか。新しい考え方として、ここにネットワークができている。これはフィードバックをいろいろ考えてはいるんですが、考えてないのはシンクロナイゼーション、これはアクチミオシンですけれども、ナノオーダーで起こっているんですが、マクロでは同時に起こらなければいけないわけです。同時に起こるとシンクロナイゼーションが起こるというプロセスが、今のネットワークの考え方にはないわけです。
 先ほどの粘菌ですけれども、光を当てると粘菌は嫌がって別の形になっていく。だけど、別の形は一通りではなくて、自分で嫌がった過程を通じて、何通りもの答えを出していくわけです。えさを求めなければいけないから、一点に安住していたら生き物としては生きられない。だから、幾つかの多様性を持たなければいけない。その行動パターンと、カルシウムの分泌とか、アクチミオシンの振動だとか、ミクロの運動はどう関係あるかを解明していけば、次の時代のシステムとか、エンジニアリングになるだろうと、私たちは考えているわけです。
 ですから、ナノバイオシステム、あるいはインビボサイエンスを展開していくと、エンジニアリングが生まれる。特に、今、我々は環境問題とか、資源とか、エネルギーという重大な問題を抱えてしまっているわけです。これを根本的に解決する一つの方法が、ナノバイオではないかと考えています。時間がありませんからご紹介しませんが、ここに書いてあるようないろいろなエンジニアリングのシステムへの展開が、両グループの研究を進めていくとできていくだろう。
 現に、今、活動している我々のグループと、東京大学のSNBIをどういう分野でやっていくかを整理しますと、たくさんの分野を両方のチームでやっているということがわかります。分類すると、エネルギーの分野とか、資源の問題とか、情報とか、医療とか、たくさんの分類ができてくるわけです。我々、2チームが十分に連携しながら、研究をできる要素を持っていたということになるわけです。1分子から階層をこうやっていきますと、いろいろなところで双方が共通の課題を持っている。やり方は多少違うんですが。
 これも、東京大学と理研を拠点の核とした、グローバルナノバイオネットワークと書いてあります。時系列で、最初の1年から3年、4年から7年、8年、10年まで、こういうようなプログラムを私たちはきちんとつくることができているわけであります。
 何をしたらいいかということですが、私たちは連携センターを中心とする今までの我々のグループのベースを発展させて、ネットワークをつくっていく。大事なことは、先ほど言ったカタストロフのこととか、分岐の連鎖反応とか、パターン形成とかありますから、数理科学が非常に重要である。それに重きを置いて展開していきたいと考えております。
 例えば、理化学研究所の今のグループ、サイエンス、東京大学のほうは主にエンジニアリングです。両方が連携してやっていくと、ナノバイオに関する基礎のところから実際の社会に接するところまで、非常に系統的に、シームレスに研究ができるだろうと考えております。
 以上でありますが、これは東京大学のほうから非常に強く提案しているものであります。インビボサイエンス、つまりエンジニアリングをつくるには生命原理の理解、これは理化学研究所を中心とする我々のグループでありますが、それとデバイスの材料が連携することによって新しいサイエンスかつくれる。津波のように社会に影響を及ぼしながら発展していくだろうと、私たちは考えております。
 こういう考えをベースに、これからも両方が共同の活動をしていこうということで合意しております。ここに書いてありますように、シンポジウムをやるとか、東大の雑誌、ニュースレターに共同の記事を掲載しようとか、合宿をやろう。最終的に、オールジャパンの融合のネットワークの形成を考えていきましょうと、そういうところまで来ております。
 以上であります。時間を超過いたしまして申しわけございませんでした。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発表に基づきまして、茅拠点、片岡拠点の連携の今後の進め方を中心にして、皆様からご意見をお伺いしたいと思います。同時に、お昼の時間になりましたので、事務局でお弁当を用意していただいておりますので、お願いをいたします。準備が進んでいる間も時間がもったいないので、意見をいろいろお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。片岡委員、お願いします。

【片岡委員】
 ちょっと補足ではございますが、我々のところでは、3月に発表させていただきましたようにナノバイオの分野というのは、今までナノテクノロジー・材料というのは、半導体にしても、材料にしても、既存の部局があって、そこにのっかってやっていることが多いんですけれども、ナノバイオの場合は部局がありません。ですから、一番に我々が考えたことは、既存の組織がないところで、言ってみれば思いがけない出会いという場をどんどんつくっていかなくてはいけない。
 それで、私たちがやらせていただいているのは比較的歩ける距離、海外でもスタンフォードとか、いろいろなところにそういう形のものができていますが、そういう場をつくって、そこにできるだけ研究施設を集中させて、新しい津波というんですか、そういうものを起こしていこうということでやってきました。
 これはこれで非常にうまくいってきたと思うんですが、一方において、一つの組織の中で閉じるというのは本来あり得ない話でありまして、そうなると、やはり連携、さらにネットワークをつくっていく。これは外国でもそうだと思います。
 長田特任顧問のほうは、逆にネットワークをつくるところからスタートしたということと、今回のお話でも概念を主導的にやってこられた。私たちのほうはどちらかというと、そういう場をつくるということですから、目標がないと非常に散漫になってしまうということで、医療を革新するという形で目標を設定して活動してきました。
 そういうことから違う方向からスタートしたわけですけれども、この半年ぐらい、お互いの考え方とか、いろいろな連携をしていく過程である程度わかってきたことは、一つは、ナノバイオの分野はバイオが一番の問題だ。バイオに学び、バイオを考えてやるならば、最後の機能はバイオの中で確かめなくてはいけない。僕は、これがインビボだと思うんです。つまり、体の中で機能するということは、そこで考えたことはある意味で正しく機能することだろう。それでインビボサイエンスと。
 一方において、長田特任顧問が言われるように、体の中のいろいろな分子情報とか、ネットワークがわかってないと当然動かない。そうすると、やはり分子情報ネットワークという科学がものすごく重要になってくるだろう。その辺のところから、まず考え方のすり合わせをして、できれば応用、つまり出口ばかり求めていると種がなくなってしまいますし、種だけやっていると出口が非常に散漫になってきて、何にでも使えるけれども、何に使えるかわからないという状況になってしまう可能性もある。それを相互にうまく補完しながら、最後にちょっと図が出ましたけれども、まさにサイエンスとエンジニアリングという形になっていますが、そういう形で次のナノバイオの拠点なり、ネットワークができたらいいなということで、今、議論を進めている最中です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ご意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。北澤委員にちょっとお伺いしたいんですけれども、拠点とネットワーク的なものとの、これが補完的にうまく動けば一番いいんですけれども、ネットワークというのはなかなか難しいところがあって、先ほど話題になった議論もある面で、新しいオールジャパンの組織をつくるのに相当な工夫が必要であるという共通認識だと思うんです。今回の枠組みは、そういうものをちょっと先行的に実験をしてみたと。それで、難しいことも、可能性もいろいろわかってきたという位置づけではないかと思うんですけれども、このあたりについて、今の発表を聞かれてどんな意見を持たれたか教えていただけますか。

【北澤委員】
 これは難しい問題なんですけれども、当初、理研も、メンバーであった北大、阪大、九大それぞれがリーダーたちで、自分自身が拠点みたいなものだったわけです。それをつないで拠点にすると、一番最初に言われたわけです。それによっていいことがあるから、そういう拠点をつくるんだと言われたことに対して、お金を出すことがいいのか悪いのかということが随分問題だったかと思います。先生は、もちろんよかったとおっしゃるわけですけれども、さて、ほんとうかなと。私も、先ほどからお話を伺いながら、何がほんとうなんだろうというのはなかなかよくわからない。
 確かに、お話になられることはすばらしいことだと思うんですが、いいことか悪いことかというのはどういう意味かというと、理研も北大も阪大も九大も、それぞれに今のような研究に対して資金調達を図られて、その上に連携した拠点なんだといって、さらにお金をもらう。そのお金は、もっとほかに行ったほうが有効だったかどうかということとの比較になるわけです。だから、これは早々簡単には結論は出ないんです。
 その意味で、つなぎ合わせて拠点だというのと、というか、私が先ほどから高橋室長や大竹課長にお伺いしていた理由は、そういうことをやるということで日本にも拠点、日本型ドリームチームができたと言うことはまやかしではないか、と私は思っているからなんです。つまり、日本は仕方がないから、そういうことをやってドリームチームができたんだと言っていると、アメリカに全く追いつかないということになりはしないかという意味で、これを長田特任顧問に聞くのはちょっと筋違いで申しわけないんですが、どうやったらできるかということとの兼ね合いでお伺いしたい。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 お弁当が全員に回りましたので、ぜひ召し上がりながら議論していただきたいということと、この問題は今回のプロジェクトだけではなくて、大変大きな、難しい構造的な問題があって、今後のことも考えますと、どういう知恵を出せばいい形でいくのかとみんなで知恵を出さなくてはいけない問題だと思うんです。そういう意味では、長田特任顧問、いろいろご苦労になった部分で、メディエーターだとか、流動ポスドクですか、いろいろなものを入れられておりますので、そういうことの有効性なども含めまして、少し意見交換で理解を深めたいと思います。
 まず、北澤委員からの質問に対してお返事をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【長田特任顧問】
 結論めいたことを私の口から言う段階でもないし、その立場でもないから、私、長田個人の印象みたいなものだと思って聞いていただきたいと思います。
 北澤先生おっしゃるように、4つの拠点で十分に活動していた人を集めたのではないかということであります。もちろん、そのとおりなんですけれども、こういう拠点のネットワークをつくることをお認めいただいたのは、アメリカやヨーロッパの研究の仕方とは違った研究の仕方を日本が模索するための一つの布石といいますか、一つのチャレンジではないかと思ってみたわけです。
 卑近な例で、あまりよくないんですが、読売ジャイアンツは4番バッターを集めているわけです。吉と出るか凶と出るかはわからない、だけど4番バッターが 1番から8番までそろえれば、ともかく強いチームになるだろうということは言えるわけです。しかし、巨人はまだ低迷している。ということは、どこかが悪いのではないかという気がいたします。ポイントは、今の巨人が弱いからあのやり方はだめだということではないと思うんです。言ってみれば、打順のオーダーの仕方とか、個々のバッターの性格づけをもっと明確にするとか、そういうことが重要だと思うんです。
 今、4拠点の代表になっている方々は、それぞれ十分なお力を持っているけれども、4つがチームを組んだときに、それぞれは1人の山ではなくて、チームを組んだときにはそれぞれの役割分担があると思う。そのときは、拠点長としてというよりも、一つの側面を持つ4分の1なりの役割になるはずだと思う。そういうことを、多分、ナノ・材料委員会は期待なさったんだろうと思うんです。それは、日本が今以上にナノテク関係で、文字どおり世界のトップに、あるいはそれを超える有力なやり方だと私は判断している。ですから、この委員会のそういったご判断は大変な英断だなと、私は受け取っておりました。
 おっしゃるように、まだ道半ばには違いない。だけど、私が今、申し上げたようなことを、もっとそれぞれ役割分担なり得意分野を伸ばすことをやっていけば、そういうふうになるのではないかと思っています。
 具体的な考え、例としては、数理科学をもっと使う。先ほど、私、この中でも述べましたけれども、物事を、やり方も要素にどんどん分けていくと、決定的に破綻することは見えているわけです。では、どうするかということで、非常につたない説明だったけれども、それにかわるようなある種の漠とした考え方を述べさせていただきました。そうしたときに、それを支えるような方々をチームの中に入れるとか、そういう人のチームをメンバーとして入れるとか考えたときに、これまでの3年間の我々の、十分ではないにしても、そういうチャレンジは生きるのではないかと、私は思っております。
 それは、今までの生物科学の考え方を覆すものになる可能性があると思っていますし、北澤先生はJSTの理事長ですから、例えば日本が2,000億円の科研費、JSTのほうも数百億円ですよね。私もきのう、理化学研究所で話したんですけれども、先生が日本の実験研究のあり方を考えてみられたときに、フランスなんかの研究の仕方と大いにやり方が違うのは明確にあるわけです。日本の場合、こう言っては何ですけれども、私も罪から逃れることはできないと思いますけれども、実験データを出すとか、せっせと研究に励む、学生を巻き込んで研究データを出していく、ペーパーを書く。日本の平均の実験研究のデータが、長い科学の歴史の中での賞味期限といいますか、寿命は一体何年あるだろうということを、フランスやアメリカの研究の平均値と比べたときに、日本は極端に狭い、短いのではないか。これは、日本のお金のむだ遣いとは言えないけれども、やはり変えなければいけないことだと思う。そういうことまで私は考えて、こういうチームをつくっていくことの意味をずっと考えてきたつもりです。
 その一つの答えが、もっと数理科学と実験研究をペアにする。先ほど大型計算機の話がありましたけれども、計算機は一つの道具でありますけれども、計算機を動かすためには、数学とか数理科学があって初めてそういうことになる。そういう形での体制づくりが必要ではないかと思っていますし、ナノバイオというのはそれにふさわしい課題だと思います。

【榊主査】
 皆さんいろいろご意見があると思いますので、とりあえずありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 私のほうから、生物系のことについては無知なものですからあれですけれども、確かに今のお話を伺っていますと、柳田先生が前からいろいろ提唱しておられるような、生命系のユニークな仮説のようなものを、より大きなコンテクストで証明できるといいというような方向性は感じられるんですけれども、何となく証明したい仮説自身が、まだ2年半たって漠然としたままの面があるのではないかという感じがして、それは本質的に難しいので漠然としている部分と、議論が足りなくて漠然としている部分と、両方あるのではないかという感じがしています。
 といいますのは、ミオシンとか、ああいうものがいろいろエラーをしながら、熱エネルギーを受けながら動作するという話を常にコンピュータでやりますけれども、実はコンピュータも電子一つだけ使うと間違えをするんですね。その間違えを1万個の電子で動かすことによって回避させていくという、かなり系統的な設計理論に基づいてやっているわけです。そういうコンテクストをもうちょっと入れれば、生物系で間違いがたくさん動くことによって回避してみたり、あるいは間違いのままになったりとか、ほんとうは議論ができるところなんですけれども、何となく私、この辺の議論はまだ詰められてないような印象を受けまして、これから残りの時間にそういうことをなさると、かなり進むのではないかと思うんです。
 ですから、私の印象は、仮説の検証のモデルが、ちょっと議論が足りないのではないかということと、やはり皆さん忙しいので、物理的に共有している時間がどうしても少なくなる。共有の時間をどうやって増やすかということの試みとして、メディエーターだとか、流動PDをやられたんですけれども、前半については、私、勝手にコメントを申しましたけれども、後半のメディエーターだとか流動PDに関しては、どこまでの動きをされて、どういうふうな手ごたえを感じておられるのか、少しお伺いしたいと思います。

【長田特任顧問】
 前半につきましては、少なくとも問題意識は榊主査と全く共通でありますので、そういう機会なり、議論の場を深めたいと思っております。
 メディエーターですが、あなた方の研究は、研究者としてではなく、よその分野と連携して、新しい課題を議論を通じて見つけたり、探し出したりすることが大事な仕事ですよ、ミッションですよと言っているんですが、やはりご自分の研究に追われてしまうというのが実際なんです。これは、彼らを責められないわけです。30代真ん中から40歳ぐらいですから、ペーパーを出すとか、開発とか、追われているわけです。ですから、一概に責めることはできないんですけれども、4拠点の中でも随分とそこに対する血の熱さと温度差があります。例えば、ここに魚崎先生は私の昔の同僚ですから、彼の人となりはよく知っているんですが、北大にいる若手は声も大きいし、血も熱い。これは魚崎先生の影響かわかりませんけれども、ともかくバシバシとよその拠点に対して意見を言って、これはではいけないんじゃないか、これではいけないんじゃないかと。その辺は、むしろ魚崎先生のほうから言ってくださったほうがいいくらいであります。
 別のところですと、そういう議論をするよりも自分の研究を進めるほうが、というか余裕がないと言ったらいいのかもしれない。あるいは、そういうことに対する問題意識が薄いのかもしれませんが、現実にそういう落差がある。九州も、かなり熱かったですね。九州大学の若手も、ものすごく議論をしてくれました。極端に言うと、北海道と九州が理研と大阪を仕上げるような、多少そういう側面もあった。これはよかったと思っています。
 ですから、これから議論を通じて、そんな多くはないんですが研究費を差し上げて、チームをコンセプターでつくっていますから、その活動をサポートしたいと思っております。

【榊主査】
 魚崎委員、お願いします。

【魚崎委員】
 関連してですけれども、先ほどの北澤委員のコメントとも関係あるんですけれども、このプロジェクト自体、最初は5年でスタートしているんですけれども、 2年のフィージビリティーでスタートしています。そうすると、流動ポスドクの人も2年後にはクビになるかもしれない。先ほどの5年どころの騒ぎじゃないんです。2年でクビになるかもしれない、1年過ぎたところから就職を探しているわけです。実際、2年終わったところで流動ポストは全部入れかわります。フィージビリティースタディーが終わって、もう3年ありますということになって、初めて九大とか北大にメディエーターという特任助教がついた。それから、ここは非常に動くようになったと、私自身、認識しています。
 阪大には、流動ではなくて特任の先生が最初から3人いたんですけれども、1拠点にだけ専門のプロパーの人がいて、あとは偉い先生ばかりがいるということでは、やはりなかなか動かなくて、拠点ごとにプロジェクトに専念して、それをちゃんとしよう、それが自分のキャリアにもつながるんだと思う人を置かなければやはり動かない。だから、ドリームチームといったって、長田特任顧問のことを言うわけではないんですけれども、口が立つとか、そういうことだけで人をいっぱい置いているだけではだめで、自分のキャリアも考えながら拠点を動かしていく、若手研究者とのセットが必要だ。
 そういう意味では、流動ポスドクは最初からいましたけれども、その人たちも時限のこともあってなかなかあれだったんですけれども、各大学で一応認めてもらった連携研究センターを置き、そこがオフィシャルに認められている。しかも、そこの専任の教員であるということになると、かなりやる気もあります。そういう意味で、北大と九大の若手の特任助教がこのプロジェクトをすごく積極的に動かして、新しい提案もしということだと思います。
 個々のところに置いているのと何か違うかというと、茅特任顧問の思いが非常に強かったわけですけれども、結果として普通ではできないことが動くようになった。我々も自分の研究費でやっていましたけれども、それではできないことが、今まで知らなかった世界に、学生もそうなんです。スクーリングという形でも行っていますし、若手の先生も行って、お互いに行き来することなんて今までできなかったり、考えなかったことが非常に動くようになって、それはなかなか時間のかかることではありますけれども、繰り返しになりますけれども、各拠点に専任の教員がついたことと、時間をかけながらスクーリングをやったことで、全く新しいフェーズが生まれてきたということが、この試みのよかったところではないと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。

【北澤委員】
 ですから、私の言っていることは、具体的に考えると、もし、この拠点にお金を出さなければほかの拠点に出せたわけです。ほかの拠点というのはどういうことかというと、そこにほんとうに人を集めて拠点をつくるというリアルな拠点と、こういうバーチャルな拠点と、どちらが正解なのかという意味で、こういうバーチャル拠点のよさを、今、魚崎委員に具体的にお話を伺って、本来、拠点になっているところがバーチャルな拠点でやられたことのメリットを少し感じ始めたんですけれども、ほんとうにつくってしまうアメリカ型リアル拠点と、日本では新しいものがどうしてもつくれないということで、仕方がないといっていろいろなことをやっているわけですけれども、そういうこととどちらがいいかというのは、今後の文部科学省がほんとうに考えなかったら、日本はいつまでたってもよくならないのではないかと、私、心配になるところがあるものですから。

【岸委員】
 リアル拠点は片岡プロジェクトでしょう。

【魚崎委員】
 ええ。ですから、片岡委員のところはリアル拠点を始められたわけですね。

【岸委員】
 始めたんですね。その2つが、今度、結びつくというところがまたおもしろいんですね。

【魚崎委員】
 そうですね。

【榊主査】
 すみません、茅特任顧問にコメントをいただいてから皆さんに。

【茅特任顧問】
 ほんとうは発言してはいけないのかもしれませんが、実はきのう急に呼ばれて、よくわからなかったんですが、私、申し上げたかったのは、これが評価委員会であるならば、当然、私が責任者として話すべきなので、榊主査が評価委員会とおっしゃったのは違うと思っております。評価委員会だったら私が責任を持ってやりますし、ご批判に耐え得るところでございますが、きょうはそういうことでなく、未来志向の、2つのプロジェクトをどうこれからやっていくかという問題、をもっと議論していただきたいと思っているんです。
 というのは、我々のプロジェクトがよかったか悪かったかはちゃんとやっていただきますが、それ以上に、ナノバイオロジーに関する日本のプロジェクトにほとんど資金がないこと、それから将来性が見えてないという大きな問題があります。ナノテクノロジー、エレクトロニクスに比べて、ある意味で重要になるかもしれないこういう分野をどうするかという議論が全くされないで、例えば榊主査が自分のご経験からエレクトロニクスの話をして批判されるのは構わないけれども、ほんとうにバイオロジーのことをご存じない、知識が完全でない前提でこういう議論をされるのは、バイオロジーの方にとっては非常に迷惑な話だと思う。
 ぜひそのことを含めて、ちゃんと未来志向のお話をしていただきたいと思います。私、もうこれで帰ります。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 これはとても大事なことで、委員会のミッションとして、茅特任顧問、誤解がないように一つ申し上げておきますが、評価という言葉は不適切だったかと思うんですけれども、現状を分析をして、打つべきことを認識しなくてはいけないという意味合いでの評価とお考えいただいて、それにしても評価という言葉は適切ではなかったかと思います。今後、連携をしていくという方向も含めまして、どちらかというと、いいとか悪いということではなくて、現在の問題点と可能性を正確に把握するという意味合いでのことですので、まずは私の言葉が足りなかったことをおわび申し上げたいと思います。
 そういうわけで、きょうはまだ中間時点ですので、今後のことがありますので、ぜひご意見をいただきたいと思いますし、あと10分、15分は時間があるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【片岡委員】
 未来志向のお話を。
 自分の個人的な意見でもあるんですけれども、理想としては、やはりナノバイオという分野があって、ある程度人の集まった個々の拠点があって、だけど、それが戦国時代の大名のようにお互いに争うというイメージではなくて、やはりネットワークになっていて、人材が交流したり、あるいは共同研究が行われたりというのが理想の姿ではないかと思います。
 そうやっていく上で、私自身の考えではセンターというのはプロジェクトと違うので、なるべく個人が出ないほうがいい。片岡拠点というのは僕はあまり好きではなくて、だれがそこにいても組織がちゃんと動いていくというのが一つのセンターで、そこで非常にいい研究をやっている。一方において、センター同士のネットワークをするときというのは、顔の見えないセンターだとうまくいかないのではないか。ですから、長田特任顧問が言われたように、ある意味では非常に個性の強い方がネットワークをつくって、そこで相互に関連が出てくる。それが一つの方向である。
 もう一つ、我々がやってきたことというのは、土台をつくって、プラットフォームをつくって、なるべく個人を消す。個人を消すというのは、1人が引っ張るということではなくて、そこでいろいろなものが出てくるということをしてきました。だから、次のステップとしては、今のネットワーク型の拠点というのは、そういう形になっていけば一番いいと思っています。ですから、理研なり、阪大なり、九大なりに人が集まるプラットフォームの拠点ができて、そこでナノバイオの研究がやられて、かつ地域ごとに拠点を開放して、いろいろな大学の分野の人が、特にインビボの場合は動物実験をやったり、いろいろな設備が要りますから、個々の研究室が持つなんていうことはナンセンスですから、それをみんなが使えるようにする。そういう形で次のステップが行ければいいというのが、未来志向といいますか、そういうイメージではないかと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにコメントいただきたいと思います。田中委員、お願いします。

【田中委員】
 私は、融合とか連携とか、そういうことはかなり意識して、この二、三十年やってきたんですけれども、限られた経験からコメントさせていただきますが、まず第2は、そういう大きな目標を持って皆さんを集めて、かなり優秀な方を集めて、そして国際的なリーダーシップをとろうといった目標を持ってつくった拠点であるならば、そこに参加する方々のエフォート率は相当高くなければいけないというのが大前提だと思います。
 私が参加をいたしました、特に2つ目のアトムテクノロジープロジェクトの場合は、アンダー・ワンルーフ型であって、そこに参加する方々のエフォート率は原則100パーセント、併任を認めないというやり方でした。大学の場合はそうはいきませんので、そこに参加していただきました先生方はもちろん併任を認めましたけれども、拠点といいますか、チームは同じ筑波の融合研の中につくっていただきました。これは、まず絶対条件だと思います。エフォート率を高く、特に100パーセント近くになりましたら、皆さん必死にやるわけです。これが第1点であります。
 第2点は、それを運営していくときに、引き受けた研究機関とか、ファンディングした側が、そこの拠点がうまく動くように運営上の工夫をサポートしてあげることが絶対に重要だと思います。アトムテクノロジープロジェクトの場合は、幸いなことに工業技術院や通産省は、前例のないことを、制度の工夫によって運用上できることをいろいろトライして、考えてくれて、そのために行政が動かしてくれるというところがありました。これはファンディング側が相当に強力にサポートしていた。
 それから、受け入れた研究所側、融合研、あるいはそれに参加した幾つかの研究所があるわけですが、そこもマネジメントが徹底的に動きやすいようにサポートしたということです。ですから、そこに参加した方々は、新しいプロジェクトを始めることによって、それに付随するアドミニストレーション、いろいろな雑事から開放され、研究に専念できたところがあります。これもとても重要なことだと思います。
 私、きょう、お話を聞いた中では、片岡委員のところのナノバイオインテグレーションですか、あそこはよくお話を聞いていて、理解をしているつもりなんです。あそこは、かなりアメリカに近い運営の仕方が実現されていると思います。実際に東大のマネジメントは、いろいろな特典、場所を与えるとか、予算の申請をダイレクトにできるとか、いろいろな工夫をしてあげて動くようにしています。
 第3点は、もしネットワーク型というものを成功させるのであるなら、ネットワークにかんでいる、能動に当たる大学とか、研究所のマネジメントの方々は、よほどにサポートしてあげないとまずい。エフォート率との関係も全部入ってくるわけですが、そこはとても重要です。
 そして、10年終わった後に、何とか継続していきたいと参加した人が思う、あるいはそういうインセンティブがわくような運営を、ファンディング側も、受けた研究所側のマネジメントも考えていかないと成功はしないと、私は思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 これは、大変大きなチャレンジをしていただいているんだと思います。ですから、幾つか可能性も見えたと思いますし、ご苦労も初めて見えたと思います。それを関係者が共通に認識をして、後半の連携を進めるためには何をしなくてはいけないかということを見出すのが今回の我々のミッションですので、そういう観点で、ちょっと言葉が足りなくて不快な思いをされたかもしれません。その辺はご容赦いただきたいと思います。

【岡野委員】
 すみません、いいですか。

【榊主査】
 時間の関係があるので、恐縮ですが、少し短めでお願いいたします。

【岡野委員】
 どうもありがとうございました。
 バイオテクノロジーとナノテクノロジーの融合というのは、やはり世界中で最大の関心事で、ここをどういうふうにやっていくかというのは、きょう、環境の話がちょっとあったんですが、特に水系で、生体の中ではいろいろな反応が起きているわけで、それをちゃんとイミテイトできるテクノロジーが確立されていけば、環境問題はかなりの部分、解決できる問題があって、きょう、ご指摘のナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合の中には、そういう問題も含んだ新しい試みであると私は認識していますし、今後、ますます大きく発展していってくれなければ困るフィールドだと思うんです。
 多分、一番ご苦労されているのは、片岡委員もそうだと思うんですが、システムとしては、旧来型の縦割りのシステムの中で何か遂行していくときに、プロジェクトで入ってきて、今まではテクノロジーだけでやっていた人が、バイオへ出ていってやるというご苦労の中で、こういうチャレンジがされていっているんだと思うんですが、若いほうの人は、まさにそういうフィールドで住み着いてやっていかなくてはいけない。それで、田中委員ご指摘のように100パーセントのエフォートでやってもらいたい。そういう人がこれからどんどん出てくるときに、やはり社会のシステムがそういう人たちをきっちりと受け入れていくといいますか、それを支えていくという社会システムと同時にこういう拠点が育っていかないといけないと思うんです。
 そのときに、これをやることによって、本来、自分1人でやっていたときと、これをやったことによってどういう点が変わってきたかを発表のときに、こういう融合が起きて、こういう新しいコンセプトができて、こういう新しいテクノロジーができて、こういう結果が出たということをぜひサマライズしていただいて、何が融合する本質的な問題なのか。どうしても2者が、テクノロジーの人と一緒にいると融合のような、議論すると一緒にやっているような勘違いはあると思うんです。議論していると、何となく寄ってはいくんですが、新しいテクノロジーとか、新しいコンセプトまで落とし込むには、やはりもう一つ重要なポイントがあると思いますので、こういうプロジェクトの中で、ぜひそういうご指摘をしていっていただければと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 北澤委員、最後にお願いいたします。

【北澤委員】
 私も、2点、期待ということで申し上げたいと思います。
 その第1は、やはりこれは理研がかんでいるということで、理研は日本のいろいろな研究施設の中では最もフレキシビリティーなことをやれる。融合と言うからには、人が行ってしまわないといけないという感じで、ここの助教授とこちらの助教授と交換してしまうとか、そのくらいの何かを大幅にこの拠点で試みられれば、ただ単に学術の交流を図ったとか、そういう感じだったら、それは別に融合拠点なんて言わなくたって、いくらも交流はできるわけです。人的な意味で2 年間行ってしまうとか、そういったことを実質化することがもし図れれば、これは日本にとってかなり画期的なことになるかなと思います。これが1点。
 もう一点は、先ほど榊主査もちょっと言われかけた、生物がやっていることというのはとてもむだが多いようで非常に効率がいいという話と、エラーの話は統計物理学的には決着済みの話だと、私は思います。統計物理学の人たちとライフサイエンスの人とケミストリーの人が、そういう場面に当てはめて、それがどういうことを意味しているのかということをもうちょっときちんと詰めていただいて、答えを出していただくと、この件は国際的にも結構話題になっていることなので、それを突き詰めることができるのではないかと思います。そういうことをお願いしたいと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 もう少し議論を続けたいところですけれども、時間の制約がございますので、この件についてはこれで終わりにしたいと思います。
 長田特任顧問、茅特任顧問、ありがとうございました。これで終わりにしたいと思います。
 最後、議題(4)その他でございます。次回の会議につきましては、8月13日の13時からですので、よろしくお願いしたいと思います。次回は、21年度の概算要求につきまして、本日議題となりました環境検討会の報告書に関する施策、それから元素戦略の新しい施策についてご説明をいただいた上で、議論をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 最後に、何かご発言がありましたらお伺いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。どうぞ。

【岡崎教授】
 実験と計算との連携、共同研究ということで、これからこの委員会を通じましても、また先生方、個別にもお願いすることが多々あろうかと思いますけれども、その節はよろしくお願いいたします。

【榊主査】
 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、これにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室

(研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室)