第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成20年6月18日(水曜日) 13時~16時30分

2.場所

金融庁 9階 共用会議室1

3.出席者

委員

 榊主査、魚崎委員、潮田委員、遠藤委員、岡野委員、長我部委員、川合委員、岸委員、北澤委員、小長井委員、竹山委員、田島委員、玉尾委員、樽茶委員、横山委員

文部科学省

 高橋ナノテクノロジー・材料開発推進室長、下岡室長補佐、松下学術調査官 他

オブザーバー

委員外
 澤岡プログラムディレクター(JST)、中山プログラムオフィサー(JST)、山下主幹研究員(松下電器産業)、立石フェロー(NIMS)、渡辺クリーンエネルギー研究センター長(山梨大学)、北口高温線材グループリーダー(NIMS)、三間レーザーエネルギー学研究センター長(大阪大学)

4.議事録

【榊主査】
 予定の時刻がまいりましたので、会議を始めたいと思います。ご多忙のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
 まず事務局より、委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、委員の先生方の出欠についてご確認させていただきます。本日、ご連絡いただいておりますのは、井上先生と大泊先生、片岡先生、栗原先生、田中先生がご欠席というご連絡をいただいております。
 それから資料の確認をさせていただきます。お手もとの資料でございますが、第9回の委員会議事次第ということです。資料1が第8回の議事録でございます。資料2が本日終了いたしましたリーディング・プロジェクトの事後評価をお願いいたしますが、そのヒアリングの対象となるプロジェクトのリストでございます。その後、クリップどめになっておりますが、資料3、4、5、6、7が本日のヒアリングの対象となっておりますプロジェクトの資料でございます。資料 7までございます。その後に、事後評価の資料リストというものと、最後に資料8で、今後の進め方ということでございます。以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。それではまず最初に、今ご案内のありました前回の議事録につきましては、皆さんごらんいただきまして、6月27日金曜日までに点検の上でご意見がありましたら、事務局までご連絡をお願いしたいと思います。
 それで議題に早速入りたいと思いますが、その前に何かご発言がありましたら、お伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
 それでは予定どおりに議題に入らせていただきたいと思います。ご案内のとおり、きょうは5つのリーディング・プロジェクトの事後評価が中心であります。ヒアリングを行って皆さんからご意見をいただいて評価を定めていくということであります。前回の会議でもご報告がありましたが、当委員会は研究計画評価分科会に属しておりまして、本日の評価結果は、この研究計画評価分科会に報告することになっております。その報告のまとめ方、評価の仕方につきまして、事務局よりご説明をお願いいたします。

【高橋室長】
 それではご説明申し上げます。今、お手もとに「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」という、この白い冊子が配られているかと思います。それの18ページから19ページをごらんいただきたいのでございますが、18ページの一番下のところです。重点的資金による研究開発課題ということでございまして、そこに評価方法について定められております。重点的資金による研究開発課題は、用いられる資金の額は高額のものが少なくないため、評価実施主体は原則として審議会などによる外部評価を活用するとともに、科学的・技術的観点からの評価に加え、社会的・経済的観点からの評価を行うなど、より慎重な評価を行う、ということでございます。この指針に基づきまして研究計画評価分科会の評価活動は行われているということでございます。
 それでは本日のヒアリングの進め方を具体的にご説明申し上げます。資料3をごらんいただきたいのでございますが、この資料3は、松下電器の山下先生のプロジェクトにつきましてのヒアリングでございますが、このクリップを取っていただきますと、資料3ということで、成果報告書という形になってございます。この中に参考として、カラーのパワーポイントの資料がついておりますし、一番最後の横組の資料でございますが、これは山下先生のプロジェクトの成果につきまして、それぞれテーマごとにテーマの名前、達成目標、どういう目標を立てていたのかと。それに従って、どのくらい達成できたのかということを簡単にまとめていただいた資料でございます。こういったものがございまして、そして、その次についております、このパワーポイントは、本日、山下先生がプレゼンテーションをしていただきますが、そのスライドでございます。その次についております「バイオナノテクを利用したデバイス開発プロセス」、この資料は参考として山下先生からいただいたものでございます。最後にA3の縦長の資料がございます。これはチェックするような形で、それぞれの評価項目というものを設定しまして、それぞれ評価をしていただく。必要に応じてコメントを書き込んでいただくというものでございます。ちょっと不親切なのですが、裏面を見ていただきますと、裏面の一番上に総合評価がございまして、最後にお名前をいただくという形になってございます。
 本日は限られた時間の中でたくさんのヒアリングをしていただくということでございます。それから、それぞれのプロジェクトから、参考資料といいますか、補足的な資料を私どものほうにお申し出いただいておりまして、中にはもう既に先生方の手もとに郵便で送っているものもございます。例えば資料3の山下先生のプロジェクトに関しましては、全体成果報告書の抜粋、また知的財産リストといったものは、これはもう既に先生方のお手もとに郵送しているはずでございます。でございますので、本日は、基本的には説明、プレゼンテーションを15分聞いていただきまして、その後15分ぐらいの質疑の時間ということを設定してございますので、きょうはそこにとどめておいていただきまして、できればお手もとに既に郵送しました資料なども照らし合わせていただいて、このA3の縦長の資料を完成させていただきたいと思います。
 こちらは手書きということではございませんで、電子媒体のほうでお送りさせていただきますので、これを私ども事務局のほうに電子媒体の形で送っていただくと。もちろん締め切りがございまして、一応、7月4日金曜日でございますが、それまでに、このA3縦長のシートを完成させていただいて、お送りいただきたいと思います。電子媒体のほうは、後ほど事務局から先生方のアドレスにお送りいたします。
 そして、そのいただいた各シートでございますが、これは私どものほうで集約をいたしまして、これをこのまま機械的に集約するという形ではなくて、統合してとりまとめて文章の形に仕立て直しまして、主査ともご相談させていただきますが、最終的には8月13日の当委員会に最終的な評価の姿でお諮りすることを考えてございます。そして、8月13日の当委員会で、その取りまとめた結果をご議論いただきまして、最終的には8月29日の研究計画評価分科会のほうに榊主査からご報告いただくという段取りになってございます。
 基本的に昨年のやり方を踏襲してございますので、それほど目新しいことはないと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

【榊主査】
 ありがとうございました。今のご説明について何かご質問とかコメントはございますか。はい、どうぞ。

【川合委員】
 きょうじゅうにやってはいけないのですか。おいておくと記憶も薄れてしまうので。

【高橋室長】
 きょうは、聞きながらメモにして、もしご希望であれば……。

【川合委員】
 それを出してもいいですか。

【高橋室長】
 ええ、もちろん結構でございます。なぜ電子メールでということをお願いしていたかというと、事前に資料をお送りしていたということもございますし、実はきょうは結構、時間がタイトでございまして、まさに聞きながら書いていただくという形になるので、ちょっと忙しくなってしまうかなと思いまして、そういう形にしておりますので、もしそういったことがあればペーパーを我々のほうにいただければと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。ほかに何かご質問はありますか。
 それではもしなければ、早速入りたいと思います。各課題15分のご説明いただいて、質疑が15分ということですので、いろいろ時間のほうにつきましてはご協力をお願いしたいと思います。
 それではまず「ナノテクノロジーを活用した新しい原理のデバイス開発」ということで、研究リーダーの松下電器産業株式会社の山下主幹研究員からご説明をお願いしたいと思います。ご存じのとおり、発表時間は15分ですが、10分経過したところで一鈴がありまして、最後に2分前に二鈴が鳴りますので、時間内の発表をよろしくお願いします。
 それでは、山下さん、お願いします。

【山下リーダー】
 ご紹介ありがとうございます。松下電器の山下でございます。よろしくお願いいたします。
 皆さんのお手もとに、こういった資料を入れさせていただきました。これはリーディング・プロジェクトの関連……。

【榊主査】
 すみません。ちょっと聞きにくいので、お座りになって、マイクでお話しいただいたほうがよろしいかと思いますので、どうぞそういうことでお願いいたします。

【山下リーダー】
 お手もとに、こういう資料、「バイオのナノテクを利用したデバイス開発プロセス」という資料が入っているかと思いますが、リーディング・プロジェクトで最近のトピックスをまとめたものを、こういう形で用意しましたので、きょうの説明の技術的な内容について、もう少し詳しいことはここに書いてありますので、よろしくお願いいたします。それでは早速、時間もありませんので、発表させていただきます。
 これはまず、リーディング・プロジェクトの提案時の背景なのですが、当時は45ナノのCMOSから、さらに小さな方向へ向けて小型化が進んでおりまして、しかしながら、トップダウン加工の限界がそろそろ近づいているということは皆さんで認められていました。そういう状況で、私どもは、ナノ機能構造をつくる人工タンパク質によって、この壁を乗り越えるということを提案させていただきました。これはいわゆるバイオのボトムアップ技術をトップダウン技術と融合することによって、この壁を越えようというわけですが、その場合にタンパク質を使うことが、いろいろな問題点があるということで解決すべき点がたくさんあるということがわかっておりました。しかしながら、この解決点を越えることによりまして、実際にナノ構造が簡単につくれるようになりますので、モアムーアができますし、また電子交換デバイスを作成する可能性が出てまいります。また生物の情報処理を利用することによりまして、新しい原理の、ノイズを利用したような生物の情報処理をまねたデバイスができるという可能性を指摘させていただきました。そういうことで、バイオを使ってナノ構造をつくり込んでいく。シリコンでつくられた構造の中につくり込んでいこうというのが我々の最初の提案でありました。
 そこで何をするかということですが、これは起案時の資料ですが、ここに書いていますように、バイオとナノテクノロジーの成果を活用した全く新しい原理に基づくデバイス作成手法を開発すると。これはいわゆる私どもで言いますところのタンパク質を使ってナノ構造をつくり込んでいこうということです。それを使って、小型省電力デバイスを実現して、生物の情報処理原理を用いたチップ設計に取り組むと。この2つになっています。
 一番最初のバイオ系のところなのですが、実際には物をつくるといいましても、ターゲットが必要です。当時、エマージングデバイスとして言われておりましたナノドットを使いましたフローティングゲートメモリーをターゲットにさせていただきました。それはどういう構造かといいますと、MOS構造の上にナノドットを並べて、ここに電子をストアしようというものであります。そのためには、アルカリイオンフリーでタンパクを使って、ナノ粒子をつくって、それをタンパクによって高密度に並べて、最後にタンパクを除去して、ナノドット配列を得て、それを埋め込んでデバイスにするということが必要になってまいります。また、このやり方は生物系ですが、カーボン系ですので、シリコン系のものではできませんので、私どもとしましては、ナノドットを配列したものを究極のエッチングをすることによって、シリコンのナノディスクを開発しようということを一つ課題に取り上げました。最終的には、これらのものによってできるものがナノ構造であり、量子効果等、熱擾乱の影響を受けるであろうから、それを先取りして、生物の情報処理をまねた回路設計をしていこうと。こういう6つの課題を挙げて研究を進めてまいりました。そして、最終的には、この半導体プロセスとバイオプロセスの整合性を実証して、デバイスの作製に展開していこうというのが目標であります。
 体制は、このような体制になっておりまして、まず最初にナノ粒子をつくるところは松下電器の私、並べるところは東工大の原先生、私のところでもう一度、パターニングをやりまして、その後、奈良先端大で松下とつながりながら、共同しながら、フローティングゲートメモリー、または確率共鳴素子をつくっていきます。東北大学ではナノドットをマスクとしたシリコンナノディスクをつくり、阪大の柳田先生のところでは、ナノで量子ドットができたときにできるデバイスの動作原理、回路設計を行うという体制にしました。
 これが実際に皆さんがいらっしゃるところなのですが、ここで一番、私どもがありがたいと思いましたのは、奈良先端大に12年度の補正予算でつくっていただきましたバイオナノプロセス実験室であります。この1階がクリーンルームになっていまして、2階がバイオができるところになっていまして、特にこのクリーンルームがバイオ分子を持ち込めるクリーンルームということで、ここを中心にみんなが集まりながら、情報交換しつつ、サンプルを交換しつつ、進めてまいりました。
 これがリーディング・プロジェクトの計画であります。
 ここに成果を1枚ものでまとめさせていただきました。まずフローティングゲートメモリーをターゲットにしておりましたので、ナノドットを並べるということなのですが、まずナノドットをつくるところ。それは化合上のタンパク質をつくりました。直径が平均的に非常に均質にできたナノドットがタンパクの中につくることができました。直径は今のところ、7ナノと4.5ナノの2種類ができるようになっています。10種類以上の金属類のものができるようになりました。つくるのはここでつくって、この場合もアルカリイオンフリーで実現しております。次にそのアルカリイオンフリーで、今度はタンパクの外側の相互作用を制御いたしまして、この場合は無機材料を認識するペプチドをタンパクの外側につけることによりまして、大型の二次元結晶をつくることに成功しました。これは100平方ミクロン以上のものができるようになっています。また100ナノメートル級のパターン上にナノドット配列、規則配列をつくることにも成功しておりまして、静電相互作用を利用することによって、これらの遺伝子操作によって、タンパクの外側の性質を変えることによって、1個ずつ配列ということもできるようになりました。また、そういったねらったところに置けるというセルハライメントを利用しまして、SET構造の作製にも成功しました。こういった要素技術を集めることによりまして、フローティングゲートメモリーの試作にも成功いたしました。この場合はナノドットをつくって並べて、タンパクを除去して、タンパクを除去する条件も我々は見出しまして、完全に除去することができまして、アルカリイオンフリーで、このプロセスを通すことによって、実際に動作するメモリーを作製することに成功いたしました。これらの成功に支えられまして、さらに実際に確率的な動作をするであろうと予測される回路設計をいたしました。後で、これは実際にどういうものであるかをお見せいたします。
 そして、発展形としましては、ナノディスク、いわゆるシリコン側のナノ構造をつくるということで、これはナノカラム、ドットを並べておいてからエッチングしてつくったナノカラムなのですが、この中にナノディスクをつくり込むことができまして、そのナノディスクは、室温でクーロンブロックを示すようなりました。直径は約8ナノメートルで、厚さが1~2ナノメートルオーダーになります。さらに今回、全く予定してなかったのですが、モノシリコンにニッケルのナノ粒子をタンパクによってつくらせて配置したものを利用しまして核形成させますと、このような大型のポリシリコンの薄層ができまして、TFT用に最適であるMILCという手法が完成するようになりました。これらの成果が出てまいりました。実際に簡単にこれらの成果についてさらに述べたいと思います。
 まずタンパクを使ったナノ粒子です。これらは一例でして、約15種類ぐらいをつくることができております。これは混ぜるだけでできる。そして、その後、アルカリイオンフリーにすることができます。実際に我々は今、50ppm(パーツパーミリオン)のレベルまで下げることに成功しておりまして、ITRS ロードマップでも150ppm(パーツパーミリオン)(2013年規制)を十分クリアしておりまして、フロントエンドでも使えるという状況になっております。
 このアルカリイオンフリーのナノ粒子を使いまして、今度はタンパクの外側に無機材料認識ペプチドを使うことによって、先ほど言いましたように100平方ミクロン以上の大型の二次元結晶や、またそれを使った乱数発生とか、パターン状の二次元結晶がつくれるようになっております。一個配置では、これを利用した位置決めをしたCNT成長もできるようになりましたし、また、でき上がったナノドットが実際に電子をたくわえられるということをAFMによって測定することによって実証することもできました。
 また、そういうふうに一個一個が実際に導電性化して、電子をたくわえられるということで、それを折り込んだ、これはフローティングゲートメモリーの特性なのですが、ここに書きましたように、実際につくりましたものを書き込み/消去を10万回やりまして、このウィンドウの変化を見たところ、劣化はほとんどないということがわかりまして、またシリコン系とほぼ全く同じ特性が出てまいりまして、このようにバイオによって簡単にナノ粒子がつくれて、並ばせることができて、実際に動くものができたということは、バイオを実際にシリコン系のプロセスに導入することが実証できたと自負しております。
 また、同じデバイスでも、小型のものをさらにつくるということで、今まではナノギャップにナノドットを置いて、シリコンSET構造をつくるのは大変苦労していたわけですが、我々の場合は、タンパクが自動的に認識して、ここにアラインしていくといったような構造で、これもSET構造が簡便につくれるようになりました。このほか、シリコンでも、実際に室温でクローンブロケットが出ておりまして、これをこういった量子効果、もしくは熱擾乱のある状態をうまく利用することによって、新しい情報処理ができるという回路設計をいたしました。これは実はベクトルマッチングをしている回路を示しているものなのですが、熱擾乱を少し入れたほうが、ないときよりもパフォーマンスが上がるということを実際に計算で示したと同時に、実際にこういう回路設計をすることによって、これは粘菌の動きなのですが、これをシミュレーションして、生物が行われるのと同じような判断ができる素子ができたと考えております。
 実際、それをさらに発展させてデバイスレベルでどうやって実現していくのか。まだ途中段階ではありますが、二次元結晶をつくっておいて、それをナノドット配列したものに電極をつけて、こういう二次元ドット配列の間に、横方向に電子を飛ばすという状態をつくって測定をしてみました。そうしますと、当然、ないときは電流は全く流れないのですが、こういう電流電圧特性が出まして、いわゆるパワポレーションパスのような電子のパスが移っていくということが観察されるようになりました。これをうまく利用しますと、電極を例えば入力側のベクトルを、こちらとこちら、1、2というように入れますと、ここから電子を流すことによって、どこに電子が落ちるかというパスを、ここの電圧によって確率的に動かすことができますので、先ほどのベクトルマッチングの具体的に、ここの部分をデバイス(ハード)で実現できる。熱擾乱をそのまま使える素子ができる可能性が出てまいりました。
 ということで、バイオを使ってナノ構造を簡単につくり込むということで、まずはフローティングゲートメモリーをねらいまして、その作製に成功しました。また、その先に実際にナノドットのゆらぎを利用してベクトルマッチングの回路が設計できるということも証明させていただきました。
 ということで、一番最初のところに戻るのですが、半導体は非常に微細化が進んでおります。その壁のところを、このバイオ分子によって越えられる可能性があるということを実際に我々はフローティングゲートメモリーをつくって実証し、さらにその先に、モアムーアのところからさらにbCMOS、量子効果を使った素子をつくるということで、ノイズを利用した生物情報処理利用という素子のところに一歩踏み出しているところです。それからもう一つ、これは非常に重要なところなのですが、我々がやったのはタンパクと基板との相互作用を精密に制御していくということでありまして、そこから得られた知見は、実はバイオとの共生、いわゆる無機材料とバイオ分子の接点をうまく制御できるようになったからだと思っています。これはひいては細胞と固体分子、もしくはバイオセンサーといったところにつながっていくのではないかと思っております。
 ということで、まとめますと、私どもは、バイオ分子を用いるナノ構造作製プラットフォームというものを完成させたと考えております。これを使って、現在、社内で応用展開を進めておりまして、また各先生方も、きょうは寒川先生の確率共鳴素子の例を挙げましたが、ほかの先生方のところでも逐次、新しい素子を考案され、発展しているという状況であります。以上でございます。よろしくお願いいたします。

【榊主査】
 ありがとうございました。それではただいまのご説明に関してご質問、コメントをお願いしたいと思います。

【川合委員】
 中間評価のときも少し問題にはなったのですが、タイトルが「新しい原理のデバイス開発」というので、ちょっと誤解を招きやすいというか、2つ考えられて、新しい原理、新原理デバイスという点がちょっと強調され過ぎてきたような感じがするのですが、多分、LPの関連解説記事にあるように、一番のポイントは、新しいプロセスというものが主なのではないかなと思っています。それで、今、まとめてきいていて、ナノバイオの新しいプロセスでデバイスをつくっていこうと。その辺は随分進んだように印象を受けます。それから、では、ほんとうにそれが新しい原理のデバイスかというところは、最後にあったゆらぎなんかのところ、これはリーディング・プロジェクトの期間というよりは今後に期待するというところなのではないかなと思うのですが、まず全体として、そういうことでよろしいかどうかをお聞きしたいのですが。

【山下リーダー】
 ここに示しましたように、新しい原理に基づくデバイス開発手法、新しい手法を見出しましょうということで、特にバイオを使った、フィーチャーした新しいナノ構造のつくり方をやりましょうということでやっています。
 新しい原理という意味では、ここにも書いてありますとおり、生物の情報処理原理を用いたチップ設計と。そういうあたりまでは一応、想定しておりまして、それが柳田先生と一緒にやらせてもらいましたベクトルマッチングチップのところの回路設計になると思います。ただ、厳密な形でデバイスではまだできておりませんで、設計というところで、そういう意味では最初にお約束した範囲内のところまでは行ったとは思うのですが、デバイスのところまでは行っておりませんが、そこにようやく手がかかってきたというところです。

【川合委員】
 前半の一番のプロセスという意味だと、この5年間の成果である程度使えそうな感じなのかどうか。そこはいかがですか。

【山下リーダー】
 一番問題になったのはここなのですが、実はシリコン系の皆さんに入れてほしいと。先ほど、バイオナノプロセス実験室を建てていただいたと言いましたが、最初はそこでしか入れられなかったのです。ところが、我々のところで、これはゲル濾過と限外濾過と書いてありますが、実際にアルカリ金属類を徹底的に抜くと。そのときにタンパク質が変成してしまったらだめなのですが、それを遺伝子工学的に安定化させるということで、実際に使えるレベルまで落とすことができました。これをやることによって、今、実際にシリコン系のところに入れることが可能になってまいりました。ということは、バイオ系で、ナノ構造――これは今、ナノ粒子しかやっていませんが、ナノワイアを今、別途、そこのまとめのものをつくっております。そういったものを実際に入れ込んでいくことができるようになったと思っています。そういう意味で使えるレベルになってきているというのが私の認識です。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。

【小長井委員】
 フローティングゲートメモリーに埋め込まれてしまうといいと思うのですが、埋め込まれる前に、タンパク質と下地というのは、どのぐらいの強度でくっついているのかがすごく心配なのですが。プロセスの途中で取れるのではないかとかですね。今見せていただいているのは、ほんとうに短い、小さい領域しか見ていないですよね。ですから、もう少しうまくできていないところはないかとか、いろいろ気になるところがあるのですが、その点、コメントをいただければと思います。

【山下リーダー】
 まず最初、私どもも凝集が起こって、結局、かたまりになってしまって、ドットが離散しないのではないかという話を最初はさせてもらいまして、実際に実験的にやってみますと、そういうことはなくて、きっちりしたようです。CVDでデップしますので、その分散状態は保たれているようです。それは断面TEMで何枚か切って、ずっと見ていって、凝集しているところはない。ナノドットの大きさも、つくったナノドットと大きさが合っていると。また還元すると、体積は酸素が抜けたときの体積率からいっても合うということで、分散されたものがそのままいるようです。ただし、AFMでノーコンタクトモードで見ますと、きれいに見えるのですが、コンタクトモードで、少し7ニュートンを越えるぐらいの針の圧力をかけてひっかきますと、実際には動いてしまいます。7ニュートンが強いのかどうかというのはまた議論があるかと思いますが、今のところ言えるのは、CVDでデップする程度の状態、そういうときには動かない。だけれども、強くひっかけば、やはり動いてしまうという回答になるかと思います。

【小長井委員】
 もう一つよろしいでしょうか。先ほど、例えば埋め込まれた粒子の大きさは、平均7ナノメートルという表現をされたと思うのですが、プラスマイナスは幾つなのですか。それと、そういう7ナノメートルプラス幾つと変わったとき、それがフローティングゲートメモリーに入ったときに、どの箇所か影響が出るのかですね。

【山下リーダー】
 密度という意味ですか。密度という意味では、プラスマイナスの意味がよくわからないのですが、断面積を見れば、完全に平均化されていますので、ぐっと小さい領域を見ていきますと、やはりドットですから、当然、例えば10個しかないところに1個、数える領域から外れたどうかによって10パーセントずれますので、そういう意味では、そういう定義はちょっと難しいかなと思います。

【小長井委員】
 直径の分散という意味では。

【山下リーダー】
 直径の分散は、今のところ、1σが10パーセントぐらいのところです。ただ、大きなものは絶対にできませんので、上がカットされているような分布になっています。

【榊主査】
 どうぞ。

【魚崎委員】
 いろいろなところでバイオの考慮をされているわけですが、例えばナノ粒子をつくるということだけでいえば、バイオというか、タンパク質でなくてもいろいろな方法がありますよね。

【山下リーダー】
 あります。

【魚崎委員】
 それから、並べるのもいろいろあると。そのおのおのについて、これならではというところを整理して、もう一回教えていただければと思います。

【山下リーダー】
 まず、タンパク質は、1つの遺伝子からつくられています。構造が一定です。またサイズが一緒、形状が一緒であると。今、10パーセントのコアの形がばらつきがあると言いましたが、全部、埋めることがきっちりできれば、同じ構造になるということがまず一つ。それから、タンパク質の外側は遺伝子工学によって変えることができますので、先ほどお見せしました一分子配置などは、チャージを簡単に変えることができて、一分子配置の確率を上げることができます。それから、遺伝子工学によって簡単に外側に無機材料認識ペプチド、私たちの場合はカーボン認識材料とチタン認識材料をつけておりますが、これも簡単につけることができて、ねらったところに持っていくことができます。そういう意味では化学的なやり方に比べて、形状がきっちり同じものができて、しかも外側の性質を変えやすいというのが一つのメリットになるわけです。

【魚崎委員】
 例えば外側だと化学的な修飾方法がありますが、遺伝子工学を使うほうが、特に……。我々カーボンな立場からすると、何となく大変かなという気がするのですが。

【山下リーダー】
 そういう意味では、化学のナノ粒子修飾の方法でやられるのは非常にいい方法だと思います。では、高次構造をつくるときに、シンメトリーを崩したようなところをやろうとしたときに、タンパクは非常に有効になってくると。遺伝子で、例えばどこかの方向だけを修飾したいというときには、遺伝子でやるほうが圧倒的に有利になるということです。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。横山さん、いかがですか。

【横山委員】
 バイオプロセスを半導体のプロセスの中に入れるということで、ほんとうに世界から注目された研究だと思っていまして、高く評価できると思います。ただ、トップダウンの微細化の限界をこれで破れるかといわれると、要は粒子をつくってフローティングゲートしているだけなので、必ずしも微細化の限界を打破するものではないので、少し説明の仕方に工夫が要るのかなと思います。
 ただ、タンパクを使って、ワイアができるとすれば、それはまさにスケーリングをさらに進めるというツールになると思うので、それはどうなんでしょうか。タンパクからワイアができるということですか。

【山下リーダー】
 そのとおりです。今回の派生のところなのですが、タバコモザイクウイルスというものを使いまして、今、直径が4ナノメートルのワイアができるようになりつつあります。同時に、これはまだ発表しておりませんが、外側に先ほどの無機材料認識ペプチドを使いまして、電極上に配置するということも一部可能になっています。

【横山委員】
 そのワイアというのは半導体なのですか。メタリック?

【山下リーダー】
 今はメタリックです。

【横山委員】
 それが半導体にも入ると。

【山下リーダー】
 半導体にも入りますが、まだ長さがちょっとメタリックの長さは行っておりません。そこのところはその程度です。

【横山委員】
 これからということですね。

【山下リーダー】
 ええ、これからということで、まだ数値的にこれだけだと言える状況ではないと理解していただければよろしいのですが、できております。

【横山委員】
 あともう一点、ドットを使って新しい演算ができるとすれば、ある意味、トップダウンの微細化の限界を破れると言えると思うのですが、確率的ベクトルマッチングというのはよくわからなくて、これは結局、何ができるのか。もう少しわかりやすく教えてください。

【山下リーダー】
 失礼しました。一つは、簡単に言いますと、ベクトルマッチングするときに、デジタル演算ですと、すべて計算が終わらないと結果が出ないのですが、我々の場合は、ノイズを入れておりますので、パルスの確率として演算結果が出てきます。合っていれば、たくさん出てきまして、合っていないとあまり出ないと。そういう形で出てきます。ですから、最初から演算は非常に低いエネルギーでできるということです。熱エネルギーと同じような状態でできるということが一つと、もう一つは、デジタル演算ですと、もしもデータが抜けていると、それを補完する方法はないわけですが、この場合は実はデータがなくても、大体合っているという形で判断をしてくれます。そういう意味では、例えば顔写真なんかのベクトルをとったときに、ノイズでいっぱい抜けている。抜けていても、ベクトルマッチングの演算がローファーで早くできるというのが特徴になってくるかと思います。

【横山委員】
 もう少しわかりやすく言うと、例えばパターン認識とか、レコグニッションとか、特に四則演算を速くするとか、そういうのではなくて、ある種の機能を持った演算ができると。

【山下リーダー】
 そうですね。今までできなかった、つまりデータ補完とか、そういうものは瞬時にできなかったのですが、暗闇の中で写真を撮って、これはよくわからないというものでも判断できる素子ができるということです。ノイズがいっぱいのものでも一定の判断ができる素子ができるということです。

【横山委員】
 どうもありがとうございました。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【樽茶委員】
 ノイズを混ぜた情報処理というのは大変関心があるというか、おもしろいと思うのですが、ナノディスク二次元配列によるゆらぎ素子というので、ゆらぎ、トンネルしながらいろいろな過程を電子が通っていくようなデバイスができたという感じなのですが、これを情報処理というのにどう使っていくのかというのが、いまいち、よく理解できなかったのですが。

【山下リーダー】
 私どもが考えている一つのやり方なのですが、二次元のナノ粒子を用意しておいて、今、パワポレーションパスのようなことが実際に起こっているわけですね。あっちに流れたり、こっちに流れたりということが起こっている。それを電極をつけてやることによって、バイアス、ポテンシャルを変えてやることによって、このパスが変わっていく過程の確率を変えてやる。そうしますと、電子はポンピングで1つ入れてやって、こっちに流すようなバイアスにしておきますが、ここのわずかな差で、確率的にA、B、Cの電極に落ちてくるものが変わっていくと。これを計算できるだろうと。そうしますと、先ほど言いましたように、入力はここなのですが、この入力に対するベクトルマッチングで、例えばこれが1であり、これがゼロであり、1、1とかなのですが、実際にはノイズがあるので、0.7、0.3といったものでも、こちらで、きっちりある確率で判断できると。そういう素子ができるということです。

【樽茶委員】
 そうすると、入力は1つで出力がマルチプルだということを言っていらっしゃるのでしょうか。

【山下リーダー】
 そうですね。実際にはBだけがアウトプットですね。実際の先ほどのベクトルマッチングでいうならば、Bが出力で、A、Cは捨てるアウトプットになるのですが。

【榊主査】
 ほかに。どうぞ。

【北澤委員】
 このプロジェクトは5年間で幾らぐらい使ったのでしたっけ。

【山下リーダー】
 この資料のところにありますように、最初に建屋を建てていただきまして、そのときは14年の補正予算で、装置を含めて21億いただきました。その後は、大体3億7,000万から最終年は2億4,000万ぐらいです。

【北澤委員】
 それは5人の研究全員でですよね。

【山下リーダー】
 はい、全員です。

【北澤委員】
 お金は全部、山下さんの裁量でお分けになられたのですか。

【山下リーダー】
 これに関しましては、私のほうで、こういう新しいことをやるためには、ある程度まとめてやらなければだめだろうということで、一応、私が中心になりまして、お金の割り振りと仕事の分担をさせていただきました。その中で生物、化学、物理のところ、お金のかかるところを勘案しながら、皆さんと相談して決めさせていただきました。

【北澤委員】
 それは実績は上がったとお考えになっていますか。それとも失敗だったと思っていますか。

【山下リーダー】
 お金の割り振りですか。

【北澤委員】
 いえ、こういう形で分散して研究をやっている箇所に多額のお金を1人の人が配るというこのやり方なのですが。ほかのほとんどの研究というのは、もっと小口のお金を一つずつ、みんな、審査して配っているわけですね。ところが、このリーディング・プロジェクトというのは、どーんと大きなお金を配って5年たったわけですが、このやり方の意味はどういうふうにお考えになっていますか。

【山下リーダー】
 少し口幅ったいのですが、集中的にお金をいただくことによって、目的を決めたところにちゃんと集中的に投資できたという意味では非常にありがたかったと思います。これが小口で全くばらばらですと、この場合は、いわゆる新しい領域を切り開いていくわけですから、そのアイデアに向かって何が重要であるかというところを決めて投資していかなくてはいけないわけです。そこのところが、皆さん、ばらばらですと、お金がまたばらばらになるだけで、今回、ああいったバイオナノプロセス実験室みたいなものをつくっていただけたということは、ほんとうにこれの前進のために大きく役立っていると思いますので、そういう意味では非常にありがたかったと思います。
 ばらばらでやるやり方もあると思うのです。それはいわゆる先生方のアイデアが寄り集まって、シナジー効果で全く新しいことが生まれてくると。そういう一番最初の基礎研究フェーズでは有効かと思うのですが、ある程度新しいことをまとまってやるときには、まとまった形のお金があるほうがありがたいと私はそう考えます。

【岡野委員】
 ちょっと具体的にシナジー効果を出した一例でいいのですが、どういうところにどういうテクノロジーとどういう概念が一体になって、こういうことができたと。そのシナジー効果の実例をお話ししていただけますか。具体例で。コンセプトはわかりましたので、具体例で何ができたかというのを。

【山下リーダー】
 わかりました。まず第一に、一番大きなところを理解してほしいのですが、我々のグループは半導体のデバイスをつくっている人間と生物・物理の専門家と、私のようにデバイスをやっている人間、こういう全く異分野の者が集まって、ディスカッションして、ここまで来たと。私はそれが一番、まず最初の大きなシナジー効果だと思っているのですが、例えば、このデバイスをつくって、ナノ構造をつくり込んでいこうとしたときに、まず動くことがわかったと。では、その次に行こうとしたときに、柳田先生のところのコンセプトとつながって、ナノで並ぶような構造、つまり構造はきっちりしているけれども、電子状態でゆらぐ。そういうものができそうですねと。そのゆらぐ状態を使った新しい原理の素子をつくろうということが、みんなの中で生まれてきたわけですね。それは、こういう形で今、結実しつつあるのではないかなと思っておりまして、実際、これをやり切らないといけないのですが、その辺の一つの具体的な例になるかと思います。

【岡野委員】
 5年間、そういうコンセプトで、非常にそこは評価されるのですが、だけれども、実際に今、シナジー効果のアウトプットのところがちょっと見えないのですよね。どういうふうに合わされて、どういうものができたのかがですね。そこについてはどうですか。具体的な成果に、こういうシナジー効果のために、山下さんがお一人でやったときにはこういうことができなかったのが、こういう形で結実されたと。何か具体的な成果を見せていただけるとわかりやすいかなと思うのですが。

【山下リーダー】
 そういう意味では、ここになってしまうのですが。柳田先生とやっていたこの辺になっちゃうのですが。あとはこれですね。全く私が考えていたのではなくて出てきたのは、これですね。MILCというやつなのですが、これはTFTをやっているメンバーが、この手法を見ていて、非常に核形成のところで苦しんでいると。そうすると、我々のナノドット配列を見て使えるのではないかということで、実際にやってみたら、思わぬところで、非常にニッケルの触媒量を減らしてできたと。これは発表されたらすぐに韓国等から追いかけてきているのですが、そういう意味では、私が考えていなかったことでできた一つの大きな成果はこれかなと思います。

【榊主査】
 どうもありがとうございました。そろそろ時間の制約がございますので、ヒアリングについては、これで終わりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【山下リーダー】
 ありがとうございました。

(発表者入れかえ)

【榊主査】
 それでは第2の課題のほうに移らせていただきたいと思います。第2の課題は「ナノテクノロジーを活用した人工臓器の開発」についてであります。研究リーダーの物質・材料研究機構の立石名誉フェローからご説明をいただきたいと思います。15分でお願いいたします。

【立石リーダー】
 わかりました。立石でございます。
 最初のスライドですが、ナノテクを活用した人工臓器と。人工臓器と書いてありますが、バイオマテリアルをベースとした再生医工学を含む人工組織、人工臓器ということのように理解していただきたいと思います。これは平成15年から19年と5年間やったわけですが、当時、再生医工学がやっと活発になり始めたときに、やはり細胞をマテリアルの上で増殖して、組織・臓器をつくるときに、ナノレベルで細胞の環境を制御しないと細胞が全く違う細胞になる。脱分化といいますが、そういう事態が起こるということで、ナノレベルで制御しようということで始まったわけで、応用を目指した研究ということです。物材研以外で東大医学部、京大再生研、女子医大等々、奈良県立医大とか、医科歯科、横浜市立、その当時、今もそうですが、考え得る最も有力なメンバーで構成されたと思います。
 内容的には、研究の概要のところに書いてありますが、人工骨、靱帯、角膜とナノ構造制御適合材料の開発ということ。2番目に、細胞-生体適合デバイス化ということで、膵臓とか、肝臓をターゲットにしております。それから、これらの組織・臓器というのは、やはりライフラインができていないと結局、何もしないといいますか、壊死を起こしますので、血管化の誘導材料の開発ということで、この3つが基本になるわけです。右側の絵に書いてありますように、下から基盤研究でありまして、それが徐々に臨床に向かって橋渡しをしていくと。一番上に書いてあるのは血管化ということで、これは共通基盤すべての組織材料に対して非常に重要な基盤研究ということで、一応、上に配置しております。
 次にその組織をもう一度概観してみます。当初、この研究をスタートしたときに、総合科学技術会議から、臨床とのコンタクトを密にして、役に立つ研究をやるようにという指導を強力に受けました。ということで、研究推進委員会は医学系の有識者12名から構成されるということで、年2回開催と。それから一方、作業部会ですが、最初、我々の生体材料センターの田中順三氏が責任者になっておりましたが、その転任に伴い、私が最後の2年間は責任者としてやることになったわけでございます。ここに書いてあるように、血管化技術というのは、さっき言った共通基盤的なものですが、真ん中に書いてありますが、組織別に人工骨、靱帯といった組織と、それから膵臓、肝臓といった非常に困難な臓器をターゲットにするということでスタートしたわけでございます。我々物材研(NIMS)は、その基盤的な材料をやるということで、生体適合材料をやるということになったわけです。我々は、つまり専門の融合ということを念頭に置いて作業部会をつくりました。
 一方、総合科学技術会議からの指摘もございましたが、産業ハイウエー委員会というものを設置しました。これは業種の融合ということですね。あるいは地域の融合ということで、いかにして我が国の医療産業を活性化するかということを念頭に置いて、産業界からの有識者17社が集まって、これも年2回、会議をすることになったわけです。
 最初に人工骨ということで、これは我々物材研が最も伝統を持っている材料でございますが、物材研のほかに、医科歯科大学、ペンタックス等を入れまして、骨の成分である水酸アパタイトとコラーゲンのハイブリッド材料を開発して、製造方法の確立と許認可用のデータを得ると。つまり治験に持っていくためのデータ収集というところまでやっております。
 以下、若干の絵を交えながら説明したほうがいいと思いますが、我々はコラーゲンと水酸アパタイトというものの混合物を凍らして、氷晶を用いて、一軸の配向した連通多孔体というものをつくったわけです。これは骨の構造に非常に近いということで、マイナス15度でつくった場合に最も強度的にも、あるいは細胞適合性もいい材料が得られるということで、この動物実験等は東京医科歯科大学がやることになりました。
 それから次に行きまして、そのアパタイト/コラーゲン複合材(ハイブリッド材料)ですが、これのさまざまな応用を考えて、いろいろな形態を持った生体材料の開発ということで、シート状のもの、あるいはそれを円柱状にしたものとか、場所場所によって使えるようにすると。このコラーゲンと水酸アパタイトの複合体というのが非常に骨芽細胞にとって適合性がいいとういことがわかっております。こういう犬とか、ラットの骨欠損部の治癒効果も非常に高かったということがわかっております。
 次に、これは前から我々の特徴とした研究ですが、腱・靱帯というのは、これを断裂すると、ほとんど治すことができないと。今、唯一の方法というのは自家移植を行うということなのですが、その移植をした場合に腱・靱帯が骨とつながります。必ず骨と結合する。その骨の部分がなかなか長期にわたって結合するということが難しいということで、その結合部分をアパタイト化するという方法を開発しました。これは一部、医師法の範囲内で既に臨床経験がありますが、実際にはアパタイト化した人工靱帯を製作する機械の開発ということになりますと、これは治験申請をしなくてはいけないということで、やや大型の動物のヤギを使った動物実験をして、いい結果を得ております。非常に良好な組織構築が行われて、自然の靱帯付着部とほぼ等しいような組織結合が行われております。
 それから次に人工軟骨ですが、これについては産総研と筑波大学と協力して、RWV回転培養と。これは擬似無重力状態を実現させるような縦型の回転培養です。この写真にありますが。これを使って軟骨細胞のスフェロイド、球状の凝集体ですが、そういうものをつくって、ウサギの膝関節の欠損部の治療に用いたと。あるいはコラーゲンスポンジという細胞の足場材料を使った治療を行ったということです。最後はヒトにわりあい近い状態で評価するということでカニクイザルを使って、膝関節の欠損部位をつくりました。これで非常に有効でして、ヒトの細胞を使って、今、生体外ですが、同じような研究で製造方法の確立と許認可用のデータ集積ということを現在行っております。
 これが組織、特に骨、軟骨の分野でございますが、あと基本的な問題として、マテリアルゲノミクスという言葉がありますが、これは水酸アパタイトのようなリン酸カルシウム系の材料の細胞適合性を評価するということで始めたわけですが、材料の化学的組成よりも、むしろ材料の表面の形状というものが非常に重要ということで、それを念頭に置いて、階層型クラスター解析ということをやって、ナノレベルの形態を評価するということをやりました。
 それから、スフェロイドについてもう一つ、人工膵臓の開発ということでスフェロイドの研究をNIMSと横浜市大とでやっております。それから一方、京大再生研でも、幹細胞を用いた膵臓の開発ということで、ざっと飛ばしていきますが、細胞が単独よりも凝集塊体になっていると非常に効果を発揮するということでして、このように凝集塊をつくって、つまり細胞間接着剤を開発したり、血管誘導材料をゲルでつくるということも成功しました。それから横浜市大のほうですが、これは二軸回転の擬似微小重力発生装置というものを使って、しかも、後で話しますが、閉鎖型の還流細胞培養ユニット、無人的・非接触的に培養できるという装置で、膵臓に関してβ細胞を使って、非常にいい結果を得ております。特にインスリンとか、cペプタイドについては生体そのものとほとんど変わらないような成果が得られるし、血糖値の減少ということにも有効なデータを得ております。これは表面を修飾するのに、さまざまな細胞接着因子をつけてやるということで、ラミニン・コーティングした場合に、膵臓の細胞、β細胞が非常によく増殖することを確認しております。
 それからあと、京大再生研ですが、これはサルのES細胞から、インスリンとか、ドーパミン分泌細胞への分化誘導法ということで画期的な方法をやっております。現在、非常に注目されているES細胞あるいはiPS細胞について、これが有効であると考えております。特に免疫隔離膜というので、これを細胞凝集体に導入したということで、免疫反応を防ぐことができるということで成果を得ているということです。そのほか、細胞単体ついても免疫隔離膜をつくるという研究結果、両親媒性高分子によって細胞を表面修飾すると。このiPS細胞を使った場合、このような免疫隔離膜が必要で、自己免疫疾患に対しても、それが有効に作用するということです。
 細胞シート工学は女子医大の開発した技術でございますが、このように肝細胞シートを用いて、これをマウスの皮下に貼付するということで、非常に有効な肝臓の組織を皮下につくることができたということです。
 それから、そのときに電子デバイスのナノ加工技術の応用ということで、パターン化するということで、平面だけではなくて、三次元パターン化ということで、温度応答性の培養表面を実現することができました。これは確認の実験で、アルブミンの遺伝子発現量とか、薬物代謝酵素の活性の上昇が得られたわけです。
 やはり同じような肝細胞のスフェロイドをつくる方法を東京理科大学のほうで開発しておりますが、これはNIMSとの共同研究で行っております。
 それから、培養を無人的・無菌的にやるということは非常に重要なのですが、これについては千代田アドバンスト・ソリューションズが、このような密閉型の容器、そして、自動細胞継代システムを開発して、セットでこれが稼働できることを確認しております。
 最後に、先ほど申し上げましたように、すべての組織・臓器の基盤になる研究として血管化ということがあります。これはライフラインを臓器に対して敷設するということと同じでございますが、それについて伝子紡糸技術という技術を使って、さまざまな形態の素材をつくって、その細胞接着性の評価と血管誘導性の評価をやっております。
 同じようなことでございますが、これは電子スピニングでつくった紡糸技術ですが、特にPGAという合成高分子とコラーゲンのコンポジット、ハイブリッドですが、そういう繊維を得ることによって、非常に良好な細胞接着性、細胞増幅性、それから血管化技術ということと結びつくような成果が得られております。
 もう一方、ゲル状の血管新生誘導材料の開発が非常に重要になってきまして、クエン酸誘導体とコラーゲンゲルの複合体ということで、それも開発して、いろいろな結果が得られました。血管誘導ゲルとスフェロイドを組み合わせて血管を誘導させる。生着を促進するという研究も進んでおります。
 以上、駆け足で話してまいりましたが、ほぼ所期の目的に従って再生医工学の基盤技術というものが開発されたと考えております。この技術を使いますと、より大型の組織・臓器の実現が可能になると考えております。また、さまざまな新しい肝細胞が開発されておりますが、我々のナノテクを使った、ナノテクで制御した生体材料というものが今後、そのような肝細胞に対して有効に利用されて、大型な組織欠損等を補填できると考えております。
 これが最後でございますが、成果でございます。オリジナル論文が218、特許が26というものが我々の成果の一部でございます。以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に対しての質問をお願いしたいと思います。どうぞ。

【魚崎委員】
 個々のことをいろいろ説明されたのですが、全体のつながりとか、お互いの技術の行き来とか、そういうことは何か中間評価でも、そういう議論があったかと思うのですが、いかがですか。

【立石リーダー】
 組織と臓器分野と2つに分けられまして、臓器については膵臓、肝臓というのは共通基盤的な問題がありますので、それは互いにギブ・アンド・テイクで技術を波及させていくことができると思います。組織については、我々が考えた組織は、やはり骨、軟骨を中心にして、そしてあとは、さっきから言っておりますが、共通基盤的な、つまり血管網を配置するというところでつながってくるわけですね。横のつながりが。そこを中心にして、これまでの研究会等で確認してまいりました。各機関と連携をとって、材料提供等をやっております。きょう、実務担当の先生方も来ておりますので、気がついたことがありましたら、答えてもらいます。

【榊主査】
 よろしいですか。ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【遠藤委員】
 いろいろ幅広い成果をお出しになっているのですが、このプロジェクトの中で、標題にございますようにナノテクノロジーを活用したということ、一番ナノが機能して、こんなにいいことができたと。こんなブレークスルーがあったと。今、お話を聞いていると、何となく従来の材料の延長上で、かなり精緻に制御した結果、得られているとも理解できるのですが、やはり大型の予算をかけられて、ナノで何がブレークスルーしたのか。ここを一つ、一番ポイントの宣伝されたいところを一言言っていただければと思います。

【立石リーダー】
 やはり、ある細胞を目的の組織・臓器をつくるところまで誘導していくというのには非常に多くの分解因子というか、タンパクを中心にして、そういうファクターがあるわけでございます。もちろん増殖をさせるというファクターもあるわけですが、そういった因子をいかに取り込んで修飾していくかというところで、かなり我々は力を割いたと思います。それがナノテクを利用したということの一つになっています。
 それからもう一つは、さっきさっと触れましたが、これまで組織構築に必要なのは、やはり生化学的な因子、つまり化学的な組成であるとか、あるいは生物学的ないろいろな因子というものがあるわけですが、そういうことに注目が行っていたわけですが、実は表面性状のナノレベルのさまざまなトポグラフィーといいますが、幾何学ですね。その幾何学というのは、場合によっては力学的な刺激に通ずるかもしれません。その辺も徐々に解明されておりますが、そういったパターン化というのも一つあるわけですが、それと同時に、表面の性状のナノレベルでの制御が非常に重要だということがわかってきまして、それを制御することによって変な細胞に化けてしまわないというところをねらっていきたいと考えております。
 何かありますか。岩田先生は?

【岩田】
 ナノレベルの制御という話なのですが、物材機構の細胞表面と組み合わせてスフェロイドをつくる間のバインダーとなるような分子を使うというのと、もう一つ、今、iPS細胞がうちの研究所で出ていますが、iPS細胞を使ったとしても、1型糖尿病でしたら、自己免疫疾患がありますから、細胞表面をナノレベルできっちり制御して、免疫反応を制御してやらないといかんということもありますので、同じような分子を、共通の分子を使って、ナノレベルで細胞の表面を制御するとか、凝集体をつくるとかというようなことを行っております。

【榊主査】
 ほかに。どうぞ。

【川合委員】
 この人工臓器や再生医療というのは、実際、材料をいろいろ活用するというので一番大きなものは拒絶反応とか、拒否反応とかが起きて、実際はなかなか使うときにハードルが多いと思うのです。それで、今回、非常にたくさん成果を出されたのですが、この中でほんとうに実際の治療なりに使われつつある、もしくは使われそうである。そういうものを二、三、中から、これはすごい大きな進展があって現実にそういういろいろな問題を克服して使われそうだというものを実際選ぶとすると、どういうことになるでしょうか。

【立石リーダー】
 臨床応用を念頭に置きますと、これまで実績のあるマテリアルというものをベースにせざるを得ないですよね。ですから、先ほどから合成ポリマーのほうでは PGAとか、PGLAとか、そういうふうなたぐいのものですね。そういうものをベースにして、あとはやはり実績のあるコラーゲンというものを使っていくということにならざるを得ないのですね。それで全く新しいマテリアルで再生医療用ということになると、これはかなりの基礎研究になってしまうわけでして、今回、臨床家も入って、なるべく早期実現ということをうたっておりましたので。何か新しい材料の話はありますか。

【小林】
 血管化を担当させていただいております小林でございます。こちらはPGAとコラーゲンという既存の医療材料をナノコンポジット化する。1つのファイバー内にナノファイバーの中にコンポジット化をすると、非常に早期に血管が入って、欠損が早く治るとか、結骨が早くなるという結果が東大等において出ております。それは明らかにナノの技術を使って再生医療の治癒を促進するという結果が得られておりまして、有効な材料になったかと思っております。

【榊主査】
 ほかに。どうぞ。

【長我部委員】
 こういったものを生体に使っていこうとすると、何らかの検査とか、あるいは途中の状況のモニタリングとか、あるいは品質の基準というものが物すごく重要になってくると思うのですが、このプロジェクトの中で、そういった観点からの何か前進とかということがあればお聞かせいただけますか。

【立石リーダー】
 特に骨については技術移転が完了しておりまして、それはマテリアルとしては、これまで実績がある水酸アパタイトあるいはリン酸カルシウム系のものを使っていて、内部構造の形態を変えているということですから。しかし、それにしてもそれはすべて治験の対象になりますので、これから企業側がそれをやることになりますが、前臨床試験という治験の前の試験データとしては、我々の出したものがかなり有効である。その辺のところまで行っているものは幾つかあります。現在、実際に臨床に使われているのは骨、軟骨、血管等がありますが、神経ももちろんありますが、そういう再生組織の基盤材料というのは、やはりこれまで実績のあるものを使っていって、それの組み合わせとか、あるいは形態を変えるというところですね。それについては、もう基礎データがかなり集積されたと考えております。

【川合委員】
 一ついいですか。この表と関係しているのですが、こういう分野ではすごく大事だと思うのですが、特許が26件というのは何か少ないなという印象で見たのですが、これはよろしいのでしょうか。

【立石リーダー】
 物材研とか、材料を中心にしている研究機関は特許を出しやすいと。それから、特許を出願する体制といいますか、組織を抱えていると。それに対して医学系では、これはいろいろなプロジェクトに私も関係していて、いいアイデアを持っているのだけれども、それを弁理士のほうに橋渡しするというところがなかなか出てこないという気がするのですが、谷口先生、いかがでしょうか。お医者さんとして。先生のところも随分、いろいろと新しい技術を開発したと思いますが。

【谷口】
 確かに体制的に、特許に向けて体制がまだ十分できていない部分もございます。それからもう一点は、やはり生体を使った研究になりますと、時間がかなりかかるということと、あと、先行研究とのオーバーラップも出てきたりしますので、論文は書けても特許化が難しいケースも出てまいりますので、そのようなことで少し材料研究と比較しますと、出にくい部分はあろうかと存じます。

【立石リーダー】
 骨のほうで、医科歯科大学の早乙女先生は?

【早乙女】
 医科歯科大学は、主にペンタックスさんで機構の構造を制御した人工骨の生体評価を行った関係で、大学から特許という形では出せなかったというのが現状です。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【玉尾委員】
 国内の主要なところがほとんど参加して取り組まれたように思うのですが、ここでターゲットとして用いられた人工臓器を、こういうものに特化して取り組まれた基準というか、そういうところをちょっとお聞かせいただきたいのと、もう一つは、それと全体の世界的な位置づけであるとか、そのあたりをお聞かせください。

【立石リーダー】
 まず骨、軟骨がかなり再生組織の中の中心になっておりますが、これについては私も専門で長い間やってきたわけで、我が国のいろいろな意味でセラミックを中心にした骨の研究というものが、特許的にも、あるいは実際に製品的にも世界を席巻しているとまでは言いませんが、かなりのところまで行っていると。その次の段階で、細胞を組み合わせたような組織になるということが21世紀のターゲットだと思います。そこをねらうというのが我々の一つの課題でしたね。
 それから、臓器については、これは膵臓、肝臓は物すごいニーズがあるわけですが、非常に難しいということで、一時、研究が少しスローダウンしていたわけでございますが、いろいろな肝細胞の研究等と相まって、これは今やっておかないと世界に遅れてしまうという認識を持っておりましたので、細胞移植という方法を使えば、我々の研究はかなり近い将来、臨床応用できるところまで行っておりますので、成功であったなという気がいたします。もっと丸ごとの臓器というのはこれから考えなくてはいけませんが、その前段階は達成したと考えています。

【玉尾委員】
 世界をリードしているという位置づけなのですか。というふうに理解してよろしいのでしょうか。

【立石リーダー】
 どうですか。

【岩田】
 ちょっと全体像を言いますと、まず最初に骨、軟骨関係は臨床応用に近いところを積極的に進めると。肝臓、膵臓は要素技術をしっかり、このプロジェクトで確立するということになっていました。それで骨、軟骨関係は世界先端を進んでいるかと言われると、もう世界は同じようなレベルに達して、欧米も同じぐらいのレベルで進行していると思います。要素技術に関しましては、女子医大のグループ、私のグループ、それぞれ特徴のある研究が出ていまして、世界で発表しても、その技術を使わせてくれとかということはかなりありますので、剣山のように出ているところはいっぱいあると思います。全体をならすと、世界どこも同じようなレベルになってきていると思います。

【立石リーダー】
 どうも。小山先生、ちょっと一言お願いします。

【小山】
 私は血管化を担当させていただいたのですが、再生医学の分野におきまして、今、最も求められているのは、ライフラインである血管の誘導でして、それぞれの細胞の再生に関してはかなり優れた技術が出ておりますが、それをいかに生着させて、長期間機能させるかということに関して、血管をいかに誘導させるかということが今後、重要になってきていると思います。既に世界的に見ますと、少しずつそのような仕事も出ておりますが、まだまだ不足という状況で、今回、このプロジェクトで開発いたしました血管化材料ですね。これは世界的に見ましても、わりあい少ない。オリジナリティーに関してはかなり高いのではないかと考えております。

【榊主査】
 どうぞ。

【魚崎委員】
 一番最初の当初の目標設定のところに、かなり高いことを、リーディング・プロジェクトだから当然なのですが、書かれてあって、先ほどの特許の問題もそうですが、結局、基本特許分の取得を通して、欧米依存型の我が国の医療産業の競争力を強化すると書かれているのですが、そういう当初の目標は、かなり世界をリードするという感じで、特許も含めてなのですが、その点で、個々のレベルはまあまあだということはよくわかったのですが、最初に書かれたレベルは、当初の目的は達成したと考えるというか、そういうレベルになっているのでしょうか。

【立石リーダー】
 医療材料(メディカルマテリアル)という意味では、既にいろいろなところで実用化が進んでいて、そういう意味では、それほど目新しいことはなかったと思いますが、そこに細胞を組み込んだ再生医療用の足場材料という観点からすると、かなり我々の成果は見るものがあったと考えます。そして、先ほどからも申し上げているとおり、やはり臨床に使えるというのは、小さな組織をつくったのでは臨床にはなかなか使えないと。これからわりあい大型の組織にしていくというときに、先ほどの東大からも話もありましたが、血管化ということが非常にきいてくるという意味では、我々の研究は一歩前進したと考えます。それは組織だけではなくて、臓器もそうですね。膵臓、肝臓についても、血管でサポートするという複合構造がとれたということが成果だと思います。

【魚崎委員】
 特許について、先ほど課題があるという議論がありましたが、基本特許と言えるようなものは幾つかあるのでしょうか。

【立石リーダー】
 どうですかね。

【小林】
 先ほどからの話で血管化というところが重要でございまして、その血管化に関しましては、ナノファイバーとナノコンポジット化ということでパテント、それの形態制御ということで、そういう関連でパテントを4件を申請させていただいております。それらがベースになって、これからアプリケーションしたところでございますので、ファイリングまでは行ってございませんが、それが基本特許の一つになると考えてございます。

【榊主査】
 どうぞ。

【岡野委員】
 特許の件については、ちょっと私からコメントを。これは日本の問題なのですが、アメリカでは治療法が特許でとれます。それから、欧米でも半分ぐらいとれるところがあります。ちょっとオーバーラップしているのですが。日本は治療法に関しては全く特許がとれない状況になっていまして、医学の中で、つくった物に関しては特許がとれるのですが、それをいろいろな治療に使う研究をここでもやられているわけですが、その一個一個に特許はとれないのですね。ですから、今、日本の中で、こういう治療法の特許をとろうという動きもあるのですが、特許庁のほうでも今、検討しておりまして、まだ日本がちょっと遅れた状態になっていまして、そういう意味では、少し産業用の特許のとり方と医学用はずれているというのが実情でして、治療法一個一個でとれないのが、数としては、むしろだから、基本特許みたいなところしかとれなくなっている。物でしかとれなくなっているというのが現状だろうと思います。ちょっとコメントさせていただきました。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、これで時間にもなりましたので、終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(発表者入れ換え)

【北澤委員】
 岡野さんへの質問ですが、アメリカに日本から直接特許を請求することはやらないのですか。

【岡野委員】
 そういうふうにしようと、今、皆さんして、とり始めております。ただ、最近、PTCというのですか、あれでやるときに、日本で出しておいて、後でばっとやるようなときに、最初は日本でいきますので、やはりやりにくい。皆さん、工夫はされているようですが、その辺は今、特許庁のほうでも検討されているようなのですが。

【北澤委員】
 でも、特許庁を待っていてもどうしようもないと思うので、やはりいきなりアメリカに特許を出すというのが一番正解かなと僕は思っているのですが。

【岡野委員】
 まあ、そうですね。

【榊主査】
 それでは次の3番目に移りたいと思います。「次世代型燃料電池」プロジェクトにつきまして、研究リーダーの山梨大学の渡辺センター長からご説明をお願いいたします。15分でお願いいたします。

【渡辺リーダー】
 それでは成果を報告させていただきます。私どもの成果に関しましては、多分、お手もとに私どもが提出した資料があるかと思うのですが、「目標の達成状況」というところに大体まとめてございます。大体、きょうのプレゼンも、その順序に従ってさせていただきたいと思います。それでは始めさせていただきます。
 このプロジェクト「次世代型燃料電池」に関しては、そのターゲットとしては、高性能・低コストの次世代型燃料電池を実現するための革新的材料開発ということでありまして、自動車、電気、材料、装置、加工メーカー等の種々のコミットメントのレベルで参加いただいて、5年間のプロジェクトを進めてまいりました。5年間に材料開発、性能実証を終えて、以後速やかな商品化に結びつける見通しをつけるということを目標にしてまいりました。
 2つの課題といいますか、あります。まず一つは、高性能・低コスト高温運転型燃料電池材料の開発と実用性評価でございます。その1つは、燃料電池の一番の課題になっております電解質を炭化水素系で高温作動で、しかも低コストでと。そういう材料を新しく開発する。それから、燃料電池の触媒について、アノード、カソード、いずれも高分散で高活性な合金触媒を開発しようと。それから、それらを組み合わせてMEAのつくり方についての検討、それを評価すると。それから、新たに金属セパレーターも大きな課題でありましたので、それを取り上げて、あわせて副次的に新しく出発して研究してまいりました。それから、燃料電池にとって、やはり水素が大きな課題でありますので、水素の製造・精製触媒についてもテーマとして取り上げて進めてまいりました。
 もう一つのテーマは、メタノール直接型燃料電池材料の開発と実用性評価ですが、これはある意味では、第1番目の課題の研究開発と並行して、それをメタノール型として評価するという観点で進めてまいりました。特に高濃度の燃料をメタノール燃料に使いますので、クロスオーバーと呼ばれる現象が起きて、カソード側で化学ショート反応が起こります。このクロスオーバーを抑えるために、低燃料透過性の電解質で、かつ導電性の高いものということで研究してまいりました。また反応が非常に複雑でありますので、より高活性なアノード触媒、カソード触媒も低温であるということで開発が必要ということで研究してまいりました。また、それの評価をあわせて行いました。
 まず電解質でございますが、その課題はここに掲げますように、幾つかの課題がございます。これらをいずれも解決するということで取り組んでまいりました。種々の電解質を検討してまいりましたが、特にポリイミド系とポリエーテル系の2つの系列について取り上げまして、ここでは今、時間の関係でご説明するのはポリイミドの一つ、SPI-5と我々は呼んでおりますが、これはここに示しますように、イミド系のところは加水分解しやすいので、それをいかに抑えるかということで、親水性の基を側鎖のほうに持っていって、そしてその影響を調べ、またフレキシビリティーを高く持たせることによって、このような基を入れて、導電性を高く保つクラスターチャンネル、イオン導伝チャンネルを形成しやすくするということで、その影響等を調べて、ここの側鎖、主鎖の長さを変えて、従来のNafionとほとんど同等の導伝率を得たところで、その耐久性も確認し、そして、それを実際のセルとして運転していました。従来の使われているNafion膜と同じような高加湿、低加湿の条件で運転しまして、これは開回路電圧ですが、これに見られますように、開回路電圧は5,000時間の長時間にわたって、これは実は公表されている炭化水素系の試験としては最長のものでございますが、ほとんど問題なく、このフッ素系と同じように5,000時間の運転が完了したと。ということで、かなり使える見通しをこの辺で立てることができました。この辺はJACSに投稿して、ホットペーパーにも選ばれております。
 この膜をDMFC、メタノール型にも使った場合ですが、この場合、特にクロスオーバーが、ここに示しますように1/2以下に抑えられるということが明らかになりまして、また、そのために電池電圧も数十mV(メガボルト)ゲインすると。特に、この特徴は高温になるほど、それが顕著でありまして、100度では効率が従来の膜に比べて2倍になるということもわかってきました。さらに、この架橋型のSPIとか、低膨潤性のメタノール抑止層を用いたDMFCの開発と水分分布の解析等々にも成功しております。
 もう一つはポリエーテル系ですが、従来、炭化水素系の膜の決定的な弱点といいますか、特徴といいますか、それは特に低加湿運転条件で導電率が従来のフッ素系の膜に比べて2けた、3けた低くなってしまうということがありまして、それを克服するということで、非常にバルキーな分子を骨格に導入し、水分の入るチャンネルをつくりつつ、また主骨格の安定性を確保するために、メチレン基とか、そういったものを導入して、しかもたくさんのスルホン基を導入するということで、従来のフッ素系の膜に比べて低加湿条件においても同等、高加湿条件においては、それをさらにしのぐプロトン導電膜を開発できております。長時間の運転もテストしておりまして、100度という高加湿条件で運転しても、ほとんど導電性が落ちないと。これは特に120度のようなところでは少し下がっているように見えますが、後で分析しますと、これは配管からの金属不純物の汚染が原因ということがわかっておりまして、そういう意味でも非常に長時間にわたった、こういう実証試験ができて、論文等にも投稿しているということであります。
 次に触媒ですが、実用領域での真の活性の評価というのは、これは不可欠だということを私どもは感じてきました。というのは、世界中でいろいろな情報が飛び交うのですが、その値が信頼できるものでは必ずしもないということがありました。そのほか、高分散触媒の調製法だとか、新しい触媒機構の解明等を多角的に推進してまいりました。その1つの評価法ですが、普通は高分散の触媒というのはガス拡散電極というものでつくるのですが、そのつくり方自体で評価がばらばらになるのが一般的でありまして、それを避けるために、私どもは、触媒そのものの形で、ここに少量の触媒を置いて、電解液に反応物を溶かして、高速で、そこに高速で流すことによって、ガス拡散電極をつくらなくて、活性化支配の触媒を評価するという方法を提案して、広く普及に努めてまいりました。その適用分野というのは、バルキーな触媒だけではなくて、高分散の坦持触媒、そういったものにも広く使えることを証明してまいりました。
 その一つですが、1つは触媒をナノ粒子にすると表面積が増えて高性能が得られるという可能性があるわけですが、従来は粒子サイズ効果が広く信じられておりまして、ナノ粒子にすると触媒活性が十分得られないというのが常識的に考えられておりました。それを我々は1ナノメートルレベルから数ナノメートルのレベルの種々の触媒を調製しまして、その真の速度定数を求めまして比べますと、それらは粒子サイズに全く依存しないということが明らかになりました。その値はバルキーな白金の板の電極の最多点の活性とも、ここに示すように、よく一致することがわかりまして、粒子サイズ効果はないということで、ナノサイズ化によって触媒の高性能化が図られるということを初めて示しました。それから、高温化すると、さらに触媒をこれだけ活性化できるということを、新しいチャンネルフロー電極法というもので。これはほかの方法では実用されるような70度とか、100度とか、こういう領域での触媒評価法ができなかったために、そういうことがわからなかったわけでありますが、ここで明らかにできたと。この結果は、ほかのNMRの研究、イリノイ大学との共同研究の結果ともあわせて論文にして、PCCPのカバーにも取り上げられております。
 この手法を今度は合金の開発に使いまして、これを白金・ニッケルとか、白金・コバルト、こういった合金の活性を調べた結果でありますが、ここで見られますように、単味の白金と活性化エネルギーはほとんど同じで、速度定数だけが大きくなっている。つまり、頻度因子が大きくなっているということがわかりました。この頻度因子が何かというのは、仮定として、酸素の被覆率がおそらく触媒表面で増えて活性が上がっていると。その増えるのは触媒の表面構造が変わっているのだろうということを想定しましたが、その辺のところをいろいろな手法で検討しておりますが、その一例として、電気化学XPSを使って、ここで電気化学的な酸素還元反応を調べた後、速やかに超高真空の中で、その電子構造を調べますと、結果的に単味の白金に比べて、合金――実は合金というのは表面に2、 3原子層のスキンレイヤーがあるということを私たちが初めて世界で示しておりますが、このスキンレイヤーはバルクの白金と全く違う性質で、下地の合金の電子構造の影響を受けて、このように酸素の被覆率が高くなっている。そして、それが酸素還元反応の律速段階のところでの反応物の吸着/乖離酸素の被覆率を上げたために活性が上がっているということがわかりました。こういうことから、新しい触媒を設計するのにどうしたらいいかという指針を得られてまいりました。この電子構造がどう変わったかというのは、このXPSを見ても明らかなように、スキンレイヤーのこの部分が合金化によって下地の合金によって、ケミカルシフトがポジティブにシフトしたということがありまして、このことは燃料中の一酸化炭素による触媒の被毒を抑える新しい触媒開発とも関係がありまして、これはサーフェースコアレベルを一酸化炭素がつく前と後で調べたものでありますが、このように比例関係に見事になっておりまして、コアレベルがポジティブシフトすると結合力が弱くなるということで、どういう触媒を開発したら、耐CO(一酸化炭素)被毒性の触媒が得られるかということも得られたと。
 ナノ触媒についても、ここに示すように新しい手法を提案しておりまして、極めて均一で任意の合金がつくられることを示しております。これは触媒メーカーにも特許ライセンスを既にしております。これは坦持量を変えても、その粒子サイズが全く変わらないで得られるということ。それから、任意の合金がつくられるということ、非常にシャープな粒度分布でつくられるということを示しています。それから、適切な合金を選びますと、非常に高温まで安定で、しかも単味の白金に比べて、より高活性な触媒が得られることを、ここで明らかにしております。
 膜接合体についても、触媒を100パーセント有効利用する。触媒とアイオノマーの接触部分が十分でないと、触媒の利用率が下がって活性が十分に得られない。全部が働かないということがあるわけですが、私たちはイオノマーをうまく混ぜるという手法を種々検討しまして、そうしますと、性能が上がり、実際に観察したところでも、アイオノマーが触媒とうまく混合しているということがわかりました。これは実際に三次元トモグラフで見ても明らかでありまして、これはイオノマーの分布を示しておりますが、触媒層全体に分布していることがわかります。こちらは従来の方法で、壁のように外にしかついていないということがわかりました。
 こんなふうにして、あとは金属セパレーターの研究、水素製造触媒の研究もやっております。水素製造触媒については、改質触媒、シフト触媒、選択酸化触媒を研究しまして、特に新しい新規の噴霧プラズマ法で、ユニークな触媒、表面にだけ触媒が坦持して、それもナノ粒子で固定されるという非常にユニークな触媒をつくっております。それによって、従来の市販の触媒に比べて活性が高く、しかもスチームとカーボンの比を低くしていくと、通常、炭素析出が起こるのですが、市販のものが炭素析出が起こるような領域でも、全く起こらないというユニークな触媒をつくっております。あと、選択酸化触媒についても、 10ppm(パーツパーミリオン)の目標値を達成するようなデオライト坦持合金触媒で、新しい成果を出しております。これは実際に、その成果は、こういう装置にまで今、設計を進めまして、都市エリアプロジェクトで企業との共同研究開発でありますし、触媒については特許を取得して、ライセンスしているところであります。
 研究成果につきましては、お手もとにありますように原著論文をこのように発表し、かつ特に国際会議で、ほとんどですが、招待講演等も多くやっております。また特許は39件、国内外で取得しております。それから、講演につきましては国際会議を催して、その普及に努めている。あと、受賞等々があります。
 以上でございます。少し長くなりまして申しわけありません。

【榊主査】
 ありがとうございました。ただいまのご説明にご質問をお願いいたします。

【魚崎委員】
 いろいろやられていてあれなのですが、まずSPI-5というやつですか、ポリマーですね。これの連続運転の結果で、これはセルボルテージ、あるいはIRロスは、まだNafionに比べて悪いという結果になるのですか。

【渡辺リーダー】
 これは実は膜自体を評価しておりまして、触媒層のほうは、このときには従来のNafionを使った触媒層にしていますが、結局、膜と触媒層の間は異物といいますか、性質が全く違いますので、そこのところの劣化が原因だということがはっきりわかっております。つまり低加湿のときには、特にそこの接合が悪いということで。それで、IRフリーにしますと、そういうことは普通除けるのですが、今のようなことで、そこの部分が悪いと。だけれども、膜自体は試験後に分析しても全く厚みも変わらないとか、そういうことも含めまして。

【魚崎委員】
 あとのエーテル型もそうなのでしょうが、結局、膜としてはいいものができているけれども、まだトータルの燃料電池にするためには、いろいろなことを開発しないといけないということですね。

【渡辺リーダー】
 おっしゃるとおりです。実は触媒層と電解質層はほんとうは理想的には同じ種類のものにしたいのですが、これは私どもに限らず、世界中で今、みんなが取り組んでいますが、一番そこがネックでして、特に触媒層の中のイオノマーの開発というのが今、大きな課題であります。

【魚崎委員】
 Nafionの場合は液体型もあるし、膜もあるし、それが同じもので連続的にいくけれども、こっちはまだそういうところに至っていないと。

【渡辺リーダー】
 はい。それで今、私どもは、そこが何が問題かということはよくわかっておりまして、例えば導電性が高い場合も、膨潤度が一般的な炭化水素系の膜の場合は高いと。それが非常に一方に条件を合わせるとガスの拡散性が悪くなり、一方に合わせると導電性が悪くなると。そこの問題を解決するということで、今、膨潤が低くて、かつ導電性が高いものをということで、いろいろな取り組みが行われています。私どもは、ある程度、その解決法についても方向性は見出しつつあります。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。

【川合委員】
 燃料電池に関しては、サイエンティフィックにもそうですが、例えば自動車会社とか、いろいろなところでやっていて、それでそれなりに公表したりしなかったりとそれぞれやっているのですが、今伺っていて、膜である進展があったとか、それぞれのことは少しわかったのですが、燃料電池全体として、非常にこの5 年間でキーテクノロジーとして、ここのところが突破できたので、プロジェクトとして意味があるという位置づけをすると、どういうところになるのでしょうか。

【渡辺リーダー】
 今の膜については、おっしゃるとおり、ある自動車メーカーは炭化水素系の膜を使ってやっているのですが、実はまだそれも完璧ではなくて、いろいろ問題かあるのですが、公表してないと。それから、セパレーターについても金属を使っているというところがありますが、これは実は内膜は私どもがやっているわけですが、腐食とか、いろいろな問題がまだまだ相当あるとかですね。それから、触媒については一応、今、白金触媒をたくさん使っているのですが、それを合金化していくと。合金化した場合に、まだほんとうに安定なものというのが出てなくて、実はこのプロジェクトで、最後の目標の達成状況の一番最後のところにまとめたのですが、このリーディング・プロジェクトのこういった表に出しているデータやなんかを含めて、特に自動車業界等が評価していただいたということがありますが、ぜひ実用化に向けて、次のフェーズの材料として、この研究を続けてやるようにということで、NEDOのプロジェクト、ハイパープロジェクトというものですが、それは今度は主な出口は自動車業界が期待する、より低コストで、性能は保って高耐久性のものを今後7年間にやるようにということにつながりました。そういう意味で一応、我々が公表してきているデータというのは、そういう意味で自動車会社を含めて評価を十分していただいている範囲だと思います。
 それで先ほどのお話ですが、触媒等の新しい設計指針とか、次のものにつながるものについて私たちはある意味では先導的な成果を今まで既に発表してきておりますし、そういうものをベースにして、耐久性のものも出てきておりますので、先ほど例えば白金・コバルトと言いましたが、これはおそらく市場でこれから試されて、もう既に出されていますが、これらはライセンスした結果を生かしてもらっています。ですから、そういう意味で合金触媒についてもあれですし、あとは膜自体は先ほどのような状況でございます。

【川合委員】
 ですから、位置づけとしては、燃料電池に係る諸問題について、きちんと公表するという形をとりながら、総合的に実用化に向けての前進をしたと。そういう位置づけでよろしいのですか。

【渡辺リーダー】
 ありがとうございます。そういうことが大きな成果であると思います。実際に、さっきの改質装置についてはあまり言いませんでしたが、実はまだ世間でだれも使っていないハニカムタイプにして、しかも自分たちの自前の触媒で、世界最小、コンパクトで一番活性が高いということがありまして、今、世界最小の改質器をメーカーとも一緒にやりながら実証をしつつあるところです。そういう意味で、水素製造触媒についても最先端の触媒ができたということで、装置に今、結びつけつつあるということが言えます。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。

【魚崎委員】
 全体を詳細に見ているわけではないのですが、例えば燃料電池の触媒では一番安定性が、白金の溶出とか云々という議論があるのですが、先生の新しい触媒において、今までの触媒より性能がいいのはわかったのですが、安定性についてもどうなのですか。

【渡辺リーダー】
 常に安定性というのは重要な問題ですので、同じ合金触媒なんかについても、白金に比べて合金はまだ今のところは高電位に持っていったような場合に弱いとか、そういうところはあるのですが、その中で今、試験されている市販触媒の非常に信頼されている触媒と比べても、自動車業界が最近、こういうテストをやってほしいというテストの仕方の一つでやってみると、それよりも我々のほうが、微粒子であるにもかかわらず、耐久性が高いという結果が出ておりますので、今、その耐久性が高いという理由は、私たちの触媒は触媒の粒子がきちんとそろっているということと、1個1個の粒子の組成が全部、最適、一番安定な組成のところに落ち着くことができるということが、そういうところにつながっているかなと思っております。

【魚崎委員】
 ここで書かれているのは、ほとんどは酸素還元触媒のお話ですか。

【渡辺リーダー】
 酸素還元触媒で、もう一つは白金とかあるのですが、今のところ、燃料極側については、まだ白金・ルテニウムが実際に使われているところで。

【魚崎委員】
 だから、水素酸化については、ここでは議論されていないと。

【渡辺リーダー】
 成果報告書のほうには、その辺は非常に詳しく研究しておりますので。

【魚崎委員】
 例えばCO(一酸化炭素)のトレランスの問題なんかにも、先生のところでは何か新しい進展はあるのですか。

【渡辺リーダー】
 CO(一酸化炭素)のほうでは、先ほどちらっと申し上げましたが、ルテニウム以外にいろいろな遷移金属のものを入れると耐被毒性が上がるということは、先生が昔、プロジェクトをやられたときにも、そういった成果がちらっと出つつあったのですが、それをさらに発展させまして、どういう遷移金属を入れて、どういう性質になったら、耐被毒性が上がるかと。そういう設計指針が出てきているという点では先導的な仕事をやってきていると思います。

【魚崎委員】
 もう一方、非貴金属型についてはどういう位置づけでしょうか。

【渡辺リーダー】
 私どもも、そういうことについては非常に興味を持っておりますが、例えば今、家電業界は来年から商用化するということで、今、燃料極のほうで白金・ルテニウムを皆さんまだ使っています。まずそこでいかに減らして導入するかというところが非常に大事というか。自動車のほうについても、やはり5年後ぐらいから導入をぼちぼち始めようとしていますが、そこでまず信頼できるあれが欲しいということで、私どもに期待されているのは、まずそこで1/10に減らしても性能が同じように出て、耐久性があるというものをまずやってほしいということを強く要望されていますので、まずそれをメインに置いております。しかし、先生がおっしゃられるみたいに、10年、15年、20年後には、やはり白金だけでは対応できませんので、私たちも、今の白金触媒関連の研究で得た知見をうまく活用して、非白金系のほうに展開したいと。特に今、まずやるのは白金は使うけれども、坦体をカーボンをほかのものに変えるとか、あるいはカーボンでも特殊な耐久性のあるものに変えていくとか、そういうことを今、まず検討しておりますが、今の研究成果を次に生かすつもりでやっております。

【潮田委員】
 全体として性能を上げるとか、低コスト化するだとか、そういう方向、目的に向かって、先生と多くの参加企業の連携で、このプロジェクトは進められたということなのですが、連携するのはなかなか大変なところもあろうかと思うのですが、連携をやる上での特に苦労されたところ、工夫だとか、あるいは課題だとか、そういうことについて教えていただけますか。

【渡辺リーダー】
 このプロジェクトが大体決まるというか、受けさせていただけるという方向になり始めたときから、大手の企業に声をかけました。それまで共同研究をやっていたりしたところもありますが。それはぜひやりましょう、一緒にやりますよという個別の話ではまずあったのですが、いざ今の10社程度が一緒に集まってくるとなったときに、知財をどうするかということで、技術者レベルでは皆さん、約半年か1年ぐらい、何回か会議をやって、わかりましたと。じゃ、大学に一たん成果を集めて、記録をちゃんと残して、実際に使うときには、その寄与に応じて皆さんがそれを使えるようにしましょうという話だったのですが、いざ最後の契約書を結ぶという段階になったら、大手の企業の知財部が入ってきて、山梨大学だけ特例的な扱いをやることは非常に後々困ると。だから、ちょっと待ってくれということで、すぐに話が進まなかったということがありました。そういうことで、私は結局最終的には、個別に共同研究契約を大学と結んで、しかし、実際にはやり始めていいと、これは自分も出して、ほかの人のあれもきくというのが得だと思ったら、そこに一緒に参加すると。ギブ・アンド・テイクのあれでやりましょうということで、実際はだから、全体は一緒の共同研究契約を結ぶのは難しくて、個別の山梨大学とみんなそれぞれが結ぶという形でスタートして、問題なく一応、今日に至りました。

【榊主査】
 どうぞ。

【遠藤委員】
 個々にいい成果を上げていらっしゃるのですが、先生もご存じのように、例えばバイオエレクトロニクス用に小型の燃料電池をつくって、電子計器にビルトインする。なかなかうまくいかずに、いろいろな企業が撤退したり、問題を抱えているわけですね。もちろん一生懸命やろうとしている企業も多いのですが、撤退している企業も多い。それから、自動車の燃料電池も一方で、リチウムイオン電池が大変性能を上げていまして、プラグイン自動車というまた新しいコンセプトがどんどんできて、燃料電池に対する要請性能もまた高くなっている。こういうことで5年前と状況も大分違っていると思うのですね。先生の革新的とか、ローコストとかというのは非常に重要になってきている。渡辺先生は、将来について何か光明を見出すようなヒントがあれば、もっと企業側も元気がつくと思うのですが、ぜひそういう部分で、渡辺先生に革新的イノベーション、ここを期待しているのですが、幾つかそういったものもあるのですが、あえてここでそれを強調なさるとすると、これだというものを一つ。あるいは未来に向けてこれがあるということを教えていただけたらと思います。

【渡辺リーダー】
 今までは一つだけで、ご存じのように電池一つをとっても、いろいろな構成材料があって、それぞれがうまくマッチしないとものにならないわけだから、ある意味で、私はそれぞれの2倍、3倍というようなものの合わせわざというものが必要だなと思っていますが、おっしゃられるように、どうあっても、ほんとうのブレークスルーというのは非常に重要で、その場合、一つは触媒やなんかが打たれ強い触媒ということで、私は今度の新しいプロジェクトの中で、今までの研究成果を背景にして構想は既に練っておりまして、非常に耐久性の高い新しい触媒を提案すると。それは企業側も非常に求めていることでありますし、あと金属セパレーターについても、これは素人が始めたことでありますから、急にはできませんが、そういったものについても、やはり最終的には金属セパレーターにならなきゃいけないだろうなと。だから、それに向けて少しずつ助走を今しております。もちろん膜材料についても、先ほど魚崎先生がご指摘になられましたが、膜だけだったら今もOKなのですが、触媒層との組み合わせということになって、そこについて私たちは新しい成果を上げるつもりで、今、もちろん新しいプロジェクトを受けとめております。

【遠藤委員】
 わかりました。いろいろな組み合わせ、総合力でトータルでは非常にいい成果を上げていらっしゃるので。

【渡辺リーダー】
 そうですね。一つだけではないと。

【遠藤委員】
 わかりました。ありがとうございました。

【渡辺リーダー】
 先ほどのリチウム電池の話ですが、やはり自動車メーカーで実際にやっている方も含めて、あれは燃料電池が課題がいろいろあるものだから、とりあえずまずつなぎというような意識があって、いずれにしてもリチウム電池だけでは長い走行の自動車は実現不可能ですので、将来的には水素エネルギー社会になっていくと燃料電池自動車だろうと。だから、燃料電池にはハイブリッド型が必要ですので、そういう意味でも、決してリチウム電池の発展はマイナスではなくて、非常にプラスだと思っています。

【榊主査】
 よろしいですか。それでは、渡辺先生、ありがとうございました。これで終わりにしたいと思います。

【渡辺リーダー】
 ありがとうございました。

【榊主査】
 ちょっとトイレとか、そういうこともあろうかと思いますので、5分、ここでブレイクさせていただいて、3時10分から再開させていただきたいと思います。

(休憩)

【榊主査】
 そろそろ再開させていただきたいと思います。
 4番目のほうですが、「超高感度NMRの開発」につきまして、研究リーダーの物質・材料研究機構の北口グループリーダーからご説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

【北口リーダー】
 はい。このパワーポイントの資料で説明させていただきます。
 簡単に研究のポイントを申し上げますと、NMRの場合は、特にこれから先々の科学技術ということを考えますと、非常に高感度のものが求められている。それは感度を上げて微小なものを分析するとともに、感度を上げることで高速化をして過渡的な現象を追うようなNMRの解析というニーズが高まるだろうということで、高感度化というものが求められています。
 それで、これは従来、NMRというのは超伝導マグネットの中に鞍型のコイルでNMR信号をピックアップする形だったのですが、これは主に磁石側の要請で、歴史的にこういう形で発展してきています。それで磁場を強くして周波数を上げて感度を上げていくということなのですが、超伝導の磁石側の材料の限界で、そろそろ磁場を上げることで感度を上げることが厳しくなってきたという状況にございました。それでアンテナ側を工夫して、これでもう少し効率のよいアンテナを使うことで感度を上げようというのが、この開発の骨子でございます。そのために従来の鞍型からソレノイド型にアンテナを変えるのですが、このアンテナを使うためには、磁石のほうはスプリット型の磁石にしないといけない。これは磁石のほうがなかなか技術的に難しいものですから、歴史的には、こちらがずっと進んできたということで、最近の進んだ超伝導マグネットの技術と新しいアンテナ技術を組み合わせて感度を上げて、従来にないような高感度のNMRを実現しようというのがポイントでございます。
 装置構成上はプローブであるとか、プローブに使う材料であるとか、マグネット側であるとか、それらを使いこなすための統合システム・アプリケーションというものがございますが、それらそれぞれ分担を決めまして、前半3年で主として個別の要素技術の開発、後半でそれをアッセンブルしてシステムに組み上げるという形で進めてまいりました。
 これが概要なのですが、このプロジェクトの中では、トータル3台のシステムを試作しまして、それぞれ運転をしております。一番最初に原理実証用に原型機というものをつくりまして、確かにこの開発でねらった形のものが高い感度を得られるということを実証するために、まず小さいものを試作しまして、それに続いて磁場を上げたものや、これからアプリケーションが重要になりますので、そのアプリケーションの開発に特化したものなどをプロジェクト中盤でつくってございます。それに加えて、最も重要なパーツであるプローブの部分も種々のプローブの開発を着実に進めて、それらを統合する計測コンソールや、さらに新たなアプリケーションというものの開発も並行して進めてまいりました。この表では、このプロジェクトの中で新たに開発した、従来にない技術というものを列挙したものでございますが、それぞれのパーツにつきまして、種々、新規な技術を開発したということになってございます。
 これは前半3年の要素技術開発の段階での成果の代表的なものをまとめたものです。まず最初につくりました装置で、原理的に新しい方式のNMRが高い感度を得られるということを実証したと。それにあわせて、そのための磁石であるとか、プローブであるとか、種々の技術、あるいは新材料とアプリケーション関係の周辺技術もあわせて開発したということで、これらの要素技術開発の主たる成果でございます。
 それらを盛り込んで、プロジェクト後半の2年間では、まず1つのテーマとして、とにかく高い感度を実現しようということで、世界最高感度へ挑戦するということで、従来の最高感度はS/N比にして8,000ぐらいが最高感度だったのですが、1万というものを目標に設定して、それに挑戦したというので、それのためにいろいろとやったと。特にこの中では、信号をとらえるアンテナ周りの技術をいろいろ開発を進めまして、当初からいくと、第1世代、第2世代、第3 世代とデザインを進化させまして、感度をどんどん上げてきたと。第3世代で従来の世界最高感度8,000を超える1万を実現できるだろうということでございます。
 それでもう一つのほうは、アプリケーションも重要だということで、この新しいNMRでは、スプリット型の磁石というものを使ったものですから、ちょうど磁石と磁石がドーナッツが2つ向かい合わせになったようなものですから、その間に空間があると。それを使って、そういう意味でサンプルへのアクセスするほうが相当自由度が上がりますので、それを活用したようなアプリケーションを開発しましょうということで、そのための装置ということと、これは高磁場型なので磁石が大きいのですが、重量が12トンもあって、相当巨大であると。これは実用という意味を考えるとよろしくないというので、設置性等々も考えて、さらに小型のものということで、これは磁場は下がっていますが、重量としても4.3トンまで下げると。これがさらに低温で動く機器なものですから、通常は液体ヘリウムを入れて、それを維持するために液体窒素を入れるのですが、このタイプでは液体窒素を入れることをなくしまして、電動冷却で冷やすということにして、メンテナンス性の向上だとか、ユーザーとしての使い勝手というものを同様に追求したということで、動いております。
 この2台が双方とも2006年から現在に至るまで、全く問題なく連続運転をしております。ということで、装置としての安定性等々は確立できたと考えている次第です。
 ここのあたりが開発のキーになったアンテナの進化なのですが、これは知的財産上の問題でお手もとに資料はお配りしていないのですが、種々のシミュレーションを行いまして、アンテナでどうやって効率的に信号をとるかということで、電荷の分布、磁界の分布というものをシミュレーションして、より効率のいい形ということでどんどん進化を進めてまいりました。それに伴ってどんどん感度としては向上させてきたということでございます。ただ、若干最新のもので非常に感度を上げたものですから、ものが持っているごく微細な磁性がちょっと問題になりまして、そのあたりの調整をするので若干手間取っておりまして、現在、最終評価へ向けて、最終的なピックアップの製作をして準備を進めているところです。
 さらに、アンテナ側の効率が上がりますと、受信回路のほうもそれに見合ったものに進めていかないといけないわけですが、従来の増長回路でありますと、なかなか効率が上がってきたときに同調がとれないという問題があったのですが、新式の回路方式を考案しまして、非常に高感度のアンテナに対しても十分なゲインがとれるような回路構成も考案して、プローブを実現したということになっております。
 そういう開発を通じて得られた成果なのですが、ここでは特許及び論文、学会等での口頭発表ということで、主として民間会社であります日立さんのほうは特許という形で成果が出ておりまして、大学からも1件あるのですが、特許出願としては5年間でトータル124件と。あくまで現時点での数でございます。論文のほうは大学及び研究所が中心になりまして、論文等の著作で58件、学会等の口頭発表は158件というアウトプットが得られております。
 世界最高感度が現時点で出ていればよかったのですが、若干時間的に手間取った部分がありまして、現在は一番新しい第3世代というアンテナで最終的に従来の最高である8,000を超えるような感度へ向けて準備を進めているところです。それまでのものが、これはシミュレーションで出した値ですが、ほぼシミュレーションどおりの値が得られていることから、現状で第3世代はここに相当するのですが、今、製作しているものが完成すれば、設計値、シミュレーションとしては、1万を超える値が出る設計でやっておりますので、あとはそれを着実に実現して可及的速やかにその値を実現するという予定にしております。今後は、せっかくここまで来たものですから、主として茨城大学と日立の担当の研究で、最もユーザーサイドということになるのですが、今後はユーザーサイドに中心になっていただいて、それをハード側がサポートする形で自主的に開発を継続していくと考えておりまして、そういう形で進めております。
 将来、どんなことが期待できるかというと、こういう高感度なアンテナとスプリット型の磁石を組み合わせということで、サイドに空間があるということを生かして、他の分光技術と組み合わせたような複合分光であるとか、還流システムをつくりまして、いろいろなものを変化させながらNMRを追うと。こういうもので創薬なり、生理機構の解明等々で活躍する機械にできていくだろうと考えております。
 主たる成果以外にも、いろいろマグネットの技術であるとか、材料や材料に派生してできたメッキの技術、これは相当いろいろなところで興味を持たれておる技術であるとか、材料系の技術であるとか、当初想定していなかったような副次的な成果も、このように幾つか出ております。
 すべてを簡潔にまとめたものが、この表になります。達成の度合いということで、お手もとの資料になっているかと思いますが、まず世界最高感度への挑戦というカテゴリーでは、現状では未達であるけれども、実験的、理論的には見通しがあって、あとは着々とその実現に向けて準備を進めておりまして、我々としては時間の問題であると考えております。感度向上については、既に当初に前期3年間で実証しておりまして、新たなNMRのマグネットとアンテナの組み合わせということで、従来の2 倍の感度が得られる。それを実現するためのアンテナ技術であるとか、マグネットの技術は十分に確立したということでございます。アプリケーションにつきましては、今回、説明は省略しましたが、スプリット方式のマグネットを使っている利点を生かした循環フロー型だとかが簡単にできるものですから、そういう形のNMR計測システムを試作のアプリケーションとして構築して、実際に稼働させて有効性は検証しております。それとアプリケーションに特化したような全体の計測システムをつくりまして、非常に使い勝手のいいものができてきた。既にそのシステムではタンパク質スペクトルを取得するような実際の研究段階で使うような形に進んでおりまして、今後、実際の研究現場で活躍していくようにしていくと考えております。そのほかにも派生して出た高速銅メッキ技術であるとか、別の材料技術であるとかも派生して出ているということが全体の成果の総括でございます。以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。それではご質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 私から簡単な質問で、世界最高のところに今迫っているのだけれどもというのですが、世界最高の今の記録というのは、どういう方式で得られているのか、その辺をご説明ください。

【北口リーダー】
 これが従来方式と書いておりますが、既存のNMRはほぼすべて、この方式でございます。高磁場型のものは。それで、この中でドイツのメーカーのものが現状、世界最高を持っているのですが、アンテナを冷却したり、相当いろいろなことをして、8,000というものを達成しています。我々は、これに比べるとアンテナ側でのゲインが高いものですから、より高い感度が期待できると。同じ周波数であれば、より高い感度が期待できると。現状の世界最高は、マグネットのほうも900メガヘルツという相当高い周波数で出ているのですが、我々はもうちょっと低い、使い勝手のいい600メガヘルツというもので、その世界最高を越えるようなところをねらっているということです。

【榊主査】
 わかりました。ありがとうございました。ほかに。

【魚崎委員】
 そうすると、これは周波数は600メガヘルツだけれども、感度が高いというところに特徴があるということですね。

【北口リーダー】
 そうです。

【魚崎委員】
 そうすると、例えばタンパク質なんかでも、濃度が薄くてもいいとか、そういうことになりますか。

【北口リーダー】
 そうです。感度を上げることによって、より薄い希薄なタンパク質でも分析が可能になりますし、あるいは……。

【魚崎委員】
 測定時間も短くなると。

【北口リーダー】
 ええ、時間変化を追えたりするということと、あとは磁性元素を持っているようなタンパク質ですと、磁場を上げるといろいろ問題が生じますので、それに対しても磁場を上げないまま感度を上げられるというところにポイントがあると思います。

【魚崎委員】
 それから、後のほうに出てきた複合分光ということを書かれていますが、その複合でやることのメリットは、何となくこんなところでやるのはややこしいかなと思ったりもしますが、同時にやらなければいけないというか、NMRはNMRだけやって、RamanはRamanで測るというのと、特に同時分光、同時測定することのメリットはどこかにあるのですか。

【北口リーダー】
 それはお願いします。

【高妻】
 主にそれを担当させていただきました茨城大学の高妻です。特にタンパク質の試料とか、あるいは合成試料でも、合成したばかりで十分な量が供給できないような試料の場合には、ありとあらゆる方法で、すぐさま分析結果を知って、応用展開をねらいたいところなのですが、そのときにせっかくあるサンプルを、特にタンパク質系なんかはそうですが、複合的な方法によって調べておけば、次の開発に向かって、より加速化されるということが期待できるということが一番のポイントになります。
 もう一つは、Raman等、それだけではないですが、吸収スペクトルだとすると、NMRで計測しているときの変化というものが、例えばタンパク質のどういったところに関係しているのかということが必ずしもNMRだけで情報はとれませんので、ほかのものが一緒になることによって、そこで得られる結果というのが非常に多次元的に得られて、次の開発研究が加速化できるということを期待しています。

【魚崎委員】
 あまりこだわりたくはないのですが、測定はもちろん複合的にやるというのはわかります。何となく何カ所にしかない、1つしかないような機械のところに――Ramanなんかは簡単だから、どこででもできますよね。

【高妻】
 タンパク質のRamanの場合、ちょっと難しいところがありまして、それなりにいろいろ用意しなければいけないところがありますが。

【魚崎委員】
 ここにフリー・エレクトロン・レーザーまで書いていますが。

【高妻】
 フリー・エレクトロン・レーザーは、これからの技術ですし、これは、この研究をしている中で、私はX線吸収スペクトルのほうもさせていただいているので、スタンフォード研究所のあたりで聞いていますと、何らかの複合分光技術というものが、これからX線のほうにも重要だということとかを伺っていまして、何かせっかくつくったアクセス空間をもって、マグネットの活用ということを含めて、そういう図を書かせていただきました。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。

【玉尾委員】
 NMRのユーザー側からすると、今、感度をどんどん上げてという取り組みなのですが、分解能も当然、どんどん上がるほうがありがたいのですが、今、 600メガあたりのところで、どんどん感度を上げようと。もっと900とか、1,000とか、そのあたりまで、この方式でも可能は可能なのですか。どんどん重くなってしまって、実は使えないとか。

【北口リーダー】
 理論的には可能ですが、磁石のほうが現実的なサイズになるかどうかというのはあります。

【玉尾委員】
 そういうことですね。先ほどのようなお話だと。

【北口リーダー】
 例えば、この方式で900となると、相当巨大なシステムになりまして。

【玉尾委員】
 なってしまうのですか。実用にはなかなか……。

【北口リーダー】
 日本に1台とか、そういう装置になってしまうと思います。

【玉尾委員】
 何十トンみたいなことになるのですか。

【北口リーダー】
 なります。

【玉尾委員】
 そうすると、感度が倍になったから使うかということには、なかなかならないかもしれませんね。

【北口リーダー】
 感度を上げる手法は、プローブ側でさらに工夫して、どこまで行けるかということはありますが、現状で、こちらでも1ギガぐらいが限界なわけですが、それで現状で感度が8,000ぐらいですから、こちらの方式で1万を超えるのは相当難しい。ですから、こちらのほうで1万を超えるようなところまで持っていっておけば、感度としては十分、当面の間、追いつかれることはないだろうとは考えています。それを生かせるような方向で使うということになるかと思います。

【玉尾委員】
 重くなるのは、磁石が大きくならざるを得ないからですか。

【北口リーダー】
 大きくならざるを得ないからということです。

【玉尾委員】
 それはセパレートだからですか。

【北口リーダー】
 磁場を出すということだけでしたら、磁石としては、こちらのほうが効率がいいので、同じ磁場を出すには、こちらの形式のほうが磁石が大きくなってしまいます。

【玉尾委員】
 そういうことですね。

【北口リーダー】
 はい。

【玉尾委員】
 どうもありがとうございました。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。

【田島委員】
 中心的な研究課題ではないかもしれないのですが、MgP2の薄膜というテーマがあるのですが、これはどういう関係があるのでしょうか。

【北口リーダー】
 このピックアップコイルの効率を上げるためにコイルを超伝導化するのですが、そこで使うということです。それを想定して開発します。

【田島委員】
 コイルの中に薄膜を使うということですか。

【北口リーダー】
 薄膜でコイルを形成するということです。

【田島委員】
 薄膜でコイルを形成されたもの、それはつくられたのですね。

【北口リーダー】
 それはつくりました。

【田島委員】
 それは従来型の材料よりも何かメリットがあるのでしょうか。

【北口リーダー】
 アンテナ効率としては高いものが得られます。

【田島委員】
 ニオブよりいいということですか。

【北口リーダー】
 ニオブは磁場が変わっていませんので、超伝導になりませんので。磁場中で使いますので、純ニオブでは……。

【田島委員】
 いや、純ニオブではなくて、ニオブ系の超伝導材料とか、線材では。

【北口リーダー】
 ニオブ・チタンの場合は、HC2が9テスラぐらいですので、それでも、これは14テスラまで行き、HC2を超えてしまいますので、さらにHC2の高い材料が必要であったと。ニオブ・チタンも使えない状況であったと。ニオブ・スズは薄膜になかなか難しいものですから。

【田島委員】
 わかりました。

【榊主査】
 では、樽茶先生、どうぞ。

【樽茶委員】
 これは多分、最初にスプリット型のコイルの方式をとったということで、アンテナ設計の自由度が上がったり、サンプルスペースがとれたりして、複合化がしやすくなったりという、もともと磁場は少し犠牲にするけれども、感度をねらうと、この方式がいいのだと。そういう考え方だと思うのですが、これは第3世代、第4世代とずっと続くと思うのですが、このアンテナ設計という意味では、ここ10年ぐらい、この技術が従来型に比べるとリーディング・テクノロジーになっていくと考えていてもいいのですか。それとも、すぐ追い越されるということは。

【岡田】
 開発を担当しました日立の岡田でございます。先ほどのアンテナの世代の図を出していただければと。お手もとの資料には入ってございませんが、現在、当社のほうでずっと開発しておりますソレノイド型のアンテナの世代の変遷でございます。第1世代と申しますのは、通常のソレノイドの形状を持ってございますが、第2世代、第3世代と何をやってきたかといいますと、一言で言いますと、感度を確かに上げていくのですが、感度を上げると信号は強くなるのですが、私たちが観測したのは、実はサンプルから来るノイズも一緒に大きくなるということなのですね。サンプルから来るノイズをいかに抑えて、とりたい信号を増やすかということで行ったのが、電界の発生を抑制して、かつRF磁場の均一度を上げる。この2つでございます。これを同時に達成したのが、今の第3世代のコイルでございます。ここに先ほどご質問がありました超伝導の非常に高いQ値を利用して形成しますと、世界最高感度を得られるというところまで来ています。
 実はこの第3世代RFコイルと書いてある、この形状は、一番シンプルな形状でございます。我々のシミュレーションでは、もう少し複雑な難しい構造にすると、さらによくなるという構造もとっておるのですが、現状、まだ先ほど北口先生からご説明がありましたように、まずこの設計で設計値どおりの数字を出すというところに少し苦労しておりまして、そこをクリアした上で構造をさらに高度化する第4世代、第5世代というところに向かいたいと思ってございます。

【榊主査】
 では、川合先生、よろしいお願いします。

【川合委員】
 プロジェクトの最初のときから特殊なプロジェクトだなと思っていたのですね。というのは、リーディング・プロジェクトというのは、ある程度科学技術的に波及効果があるような大事なところをどうっとやるかということだったのですが、この場合ですと、NMRという非常にフォーカスしたものであると。それで伺いたかったのは、もちろんNMR自身はたくさん使われてはいますが、結局、ここで出た成果は数台のNMRができるというところで終わってしまうのか、もう少し科学技術的にいろいろな波及効果を持っているのか。そこら辺はいかがでしょうか。

【北口リーダー】
 当然、装置だけで終わったのでは私としてもつまらないというか、あれですので、こういう新しい従来にない感度の分析であるとか、従来にない組み合わせの分析を使って、主として創薬だとか、医療の分野ですが、そういう部分の学問が進むこと。ひいては創薬・医療産業がございますので、その部分で大きく進むことというのを最終的に長いスパンの先には考えておりまして、それが強いものですから、先ほど説明がありましたが、茨城大学の高妻先生とか、いわゆるバイオの方々と一緒にやって、そちらのほうにもしっかり進んで行けるようにということを考えております。実際、プロジェクトを進める中でも、医学部の先生方であるとか、創薬メーカーの方にも頻繁に意見をお伺いして、どういう方向の分析技術が将来の創薬・医療の技術にとって必要なのか。何が求められているのかというのは絶えずサーベイしながら進めてはまいりました。

【川合委員】
 そういう意味で、ある程度、そういうところにも使えるような装置でないと、まずいのではないかなという気がしていたので。

【北口リーダー】
 それは十分に念頭に置いて進めております。

【川合委員】
 そうですね。何かF1的なすごいものを二、三台つくるということで終わってしまうとまずいかなと。

【北口リーダー】
 ですから、あくまでこれはフラッグシップでございますので、それをフィードバックがかかったモデルが、この次の時代に出てくると。

【川合委員】
 広まりそうな感じなのですか。

【北口リーダー】
 そういうふうに進めていくように努力しているということになります。

【北澤委員】
 そのとき心配しているネックは何ですか。重さですか。値段ですか。それとも……。

【北口リーダー】
 最後は値段ですね。重さもほぼ値段とコンパラですので、重いとどうしても高くなってしまいますので。

【北澤委員】
 より高い磁場の通常のNMRと競合するわけですよね。

【北口リーダー】
 そういうことです。

【北澤委員】
 それは何テスラ対何テスラぐらいで競合するのですか。こっちは何テスラで、相手は何テスラか。

【北口リーダー】
 磁場強度で1.5倍程度上のものと競合することになります。この600が現状の950であるとかと競合することになります。

【北澤委員】
 だけれども、それだと十分値段が高いですよね。相手も。

【北口リーダー】
 ええ、相手も高いですが、こちらも現状ではまだ高いですから、まだ下げる必要はあります。

【北澤委員】
 それは日立のマグネットですか。こちらは。

【北口リーダー】
 今は日立のマグネットです。ここに日立の方がおられますが、日立がつくっている間は高いので、日立ではないところがつくったら、もう少し安くなるかもしれません。

【北澤委員】
 そういう問題ですか。

【北口リーダー】
 そういう問題です。あとは技術的に設計をもう少し、今回はまだ安全サイドに振っていますので、限界設計をして、小型化・軽量化でコストを下げると。今回はまだそこまでは十分にできておりません。

【潮田委員】
 ちょっとよろしいですか。先ほどの波及効果と関係するのですが、高速連続メッキ、これは文書によりますと、常識を越える速度ということになっておりますが、どういう形状のもので、どのぐらい速くなるのか。

【北口リーダー】
 これはもともとは超電導の線の周りに銅を被覆するために開発した技術でございますが、従来のメッキでありますと、数ミクロンのものをゆっくりつけるというものが常識だったのですが、今回は100ミクロン程度のものを、しかも線材の長さにして毎分何メートルという速度でできるようになったと。いろいろそれは技術としては非常に単純で、メッキ屋さんというか、いわゆる中小企業レベルのメッキ工場と一緒に協力してやったのですが、線形状のものの表面に連続的に高速につけられる技術ができたところでプレス発表もしたのですが、そうすると全然、超伝導とは関係がないようなメーカーから、オプティックファイバーの周りに銅をコーティングできないかとか、あとはアルミの細い線に、ロボットとかによく使われるらしいのですが、薄く銅を引きたいのだけれども、できるかとか、そういう問い合わせがいろいろ来ておりまして、どういうふうにこれから別の方向で花開かせていくかというのを担当した若い研究者の方と一緒に考慮しているところです。

【潮田委員】
 いろいろな組み合わせが期待できるのではないかなと思いますね。

【北口リーダー】
 実は一番儲かる技術かもしれません。

【魚崎委員】
 いいですか。まだよく理解していないのですが、感度がよくなるというのは600メガが900メガと結局同じことになるのですか。

【北口リーダー】
 感度としては同じです。

【魚崎委員】
 今はだから、900メガで実現できていることが、これだと600でできると。それ以上のアドバンテージとか、何かこれならではというものは?

【北口リーダー】
 逆に言うと、磁場を上げることで――周波数が上がると、ギガヘルツに近い世界ですから、サンプルそのものを電子レンジで温めているような状態になりますので、あまり周波数を上げたくないようなサンプルは高い磁場の装置では計測できませんので、そういうものも磁場を下げることによって計測できるようになります。対象が広がるということですね。

【魚崎委員】
 それは600メガと900メガの場合、クリティカルな差になるのですか。そういったところは。

【北口リーダー】
 そうなるサンプルもあると聞いております。

【魚崎委員】
 先ほどの質問とも関係がありますが、広がりという意味でいったら、今までのもので900メガまで来ていて、それに違うものを出したところで、もう既に900とかなんかである程度測れていたら、なかなか新しいところに行かないかなと。

【北口リーダー】
 軸が違うと考えてください。同じ軸で広がるのではなくて、違う軸をつけ加えるというイメージで我々としては考えています。

【魚崎委員】
 その違う軸がどの程度のアドバンテージというか、広がりを持っているようなものなのかということですが。

【北口リーダー】
 それはどうですか。

【高妻】
 例えば非常に重要になってきているのは金属タンパク質の研究なのですが、その中で従来、常磁性のセンターを持っている金属タンパク質、特にHEMは相当なレベルで研究が行われたのですが、非HEMのタンパク質になりますと、その鉄自体の常磁性、あるいは銅タンパク質も同じなのですが、そのために高周波数のNMRでは相当いろいろなマシンのチューニングをはじめとして、エキスパートが相当な時間を使って、初めて何とかそれらしいデータがとることができるようになってきたということを、2年ほど前でしたが、北口先生と一緒にグルノーブルの研究所とか、あるいはウィスコンシン大学の研究所とかをお訪ねして聞いたときに、その部分は全然クリアできていないと。最新の情報では、世界で多分、日本しかない常磁性専用のプローブですが、それがイタリアとアルゼンチンにありまして、そこの私と共同研究している方から、最近、そういうものができてきましたと。そこでお伺いしたデータを、まだS/Nとかという詳しいデータはいただいていませんが、伺っておりますと、思ったより別にS/Nが上がっているという話ではないなということなので、この新しいNMRで、ぜひその辺を。

【魚崎委員】
 だから、こっちもそうは言っているけれども、まだやっていないと。

【高妻】
 ええ、まだパラマクの測定までは、マシンのチューニングを最終的にしなければいけないというところがありまして、やっていません。

【榊主査】
 最後に。はい、どうぞ。

【竹山委員】
 このような大きなお金を使って行われて、非常にスペシフィックな機械を開発するというので、このプロジェクトの期間はいいのですが、いつも、こういうプロジェクトみたいなものは、終わった段階で、例えば企業さんが一緒に入っている場合、その後、企業さんがどれだけ自分がやる気があるかによって、ほんとうに製品として外に出てくるかどうかが非常に疑問になることが多いのですね。大体プロジェクトが終わって消えていってしまうものが今まで非常に多いという感じがあります。今のご発表の中に、今後どうするかということは、自主開発で継続するというような一番怖い言葉が入っているのですが、今回、日立さんが入っていらっしゃって、先ほど、今後の開発のときに、マグネットさんが日立さんのものなら高いからと。研究者側からの考え方だと、ほんとうにそれをものにしていこうというときに、これ以上お金が国から出てこなかった場合、企業も手を引くということもあり得ると思うのですね。そうしたときに、このプロジェクトの将来的なところで、企業からの考え方と研究者の考え方とでちょっと分かれちゃっている部分があると思うのですね。そこら辺のところを今後、どうしたいかと。先ほど言っていた、ここから出てきた派生の技術のほうが高く売れるのではないかと。最終的には、そうやってマネージするしかなくなるかもしれないのですが、当初、これだけ大きなお金を使っていて開発するぞといったものが違う形になってしまうのは残念なのですが、そこら辺のことをお伺いしたいと思います。

【北口リーダー】
 まず私、研究者の立場なのですが、その立場から申しますと、我々としては最大限協力していきつつ、装置はできているわけですから、それを使うような形のものをユーザーの方が中心となって進めていく。現状では、日立側も今後2年間は継続してやりますということで進めていると。現実に続いているということですので、その間にさらに発展させられるだけのものをデータとして出して進めていくということしか、研究者のサイドからはないのだろうと思っています。会社の考え方は、私個人の考え方として、会社を説得することはしております。当然のことながら。それは将来、製品に向かってということで進めておりますが、あとは状況次第という面もありますので、どうですかね、会社の側は。

【岡田】
 大変難しいご質問でお答えしにくい面もございますが、私どもで、やはり開発してきたこの技術なのですが、計測器という非常に信頼性が要求される分野で、世界で初めて今回、5年間かけて、つくり上げました。すぐに製品にできるかと言われると、それはやはり難しいです。というのは、この装置からとれてくるデータに対して、どこまで責任が持てるか。それから、ソフトウェア等、先生方にお渡しして実際に使っていただいて、いろいろな不具合が多分出るのですが、それに対してどこまで私どもで対応できるか。それから、運転していく間に長期間の運転というのも今、この磁石も初めてつくった磁石ですが、やっと2年間、ここまで運転してきたのですが、これも初めてなのですね。そういったところをまず積み上げていってから、実際に製品にしていく上での改良等を加えた上で、事業にするかどうかということを決定しなければならないと思っています。ですから、少なくとも数年間、検討を今、高妻先生のところと一緒に、この春から始めましたが、実際に学生さんに使っていただきながら、私たちもはためで見て、学生さんがいろいろなバグを見つけたりしたときにすぐに対応するというようなことを始めているのですが、そういうことを実際に地道に積み重ねていった上で計測器として使っていただけるという先生があらわれたら、それはその段階でまたご相談ということになると思います。ちょっと時間はかかると思います。やはり難しい計測装置でございますので、そのあたりはご理解いただければと思います。

【玉尾委員】
 すみません。最後だったのに。感度が高くなれば、もっとフロー方式であるとか、何かそういうものに非常に特化した実用機のようなものがむしろ期待できるのではないかなという気がするのですが。そういう方向に特化されたらとも思いますが。

【北口リーダー】
 はい。

【榊主査】
 きょうは5年間の評価のためのいろいろなプレゼンテーションですが、大変関連の方もご関心も高いので、いろいろ対応しながら、いい形で導いていただくようにご尽力いただきたいと思います。とりあえずこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

【北口リーダー】
 ありがとうございました。

【榊主査】
 それではすぐに次のグループに入っていただくようにお願いしたいと思います。

(発表者入れ換え)

【榊主査】
 きょう最後のグループですが、第5番目に「極端紫外(EUV)光源開発等の先進半導体製造技術の実用化」につきまして、研究リーダーの大阪大学の三間先生からご説明いただきます。よろしくお願いいたします。

【三間リーダー】
 大阪大学レーザー研の三間でございます。よろしくお願いいたします。お手もとの資料のうち、目標の達成状況の横長の資料でございますが、これに沿ってパワーポイントを使って説明させいただきます。よろしくお願いいたします。
 全体の構成はここのようになってございまして、最初に極端紫外(EUV)リソグラフィーについての簡単な導入をやらせていただきまして、概要と、その後は達成目標と達成状況について説明をさせてもらって、最後にまとめということでお願いいたします。
 ご承知のように極端紫外(EUV)リソグラフィーの技術開発でございますが、次世代の半導体デバイス微細化の中核技術とされておりまして、国際的にしのぎを削る競争がなされております。ここに示しましたように開発課題はいろいろございますが、その中でも特に重要で困難な課題は、EUV光源の開発ということでございます。これにつきましては、後ろの照射/投影光学系、マスク、レジスト、それからスループットなどの要求から、光源についての仕様が決まってございまして、ここにございますように、この点をインターミディエート・フォーカス点と申しますが、そこで極端紫外光の出力が115ワットとか180ワットと言われております。あとは光源サイズとか、安定性とか、この集光鏡の寿命、すなわちランプでございますが、そういうものが満たす仕様が決まってございます。これを満たすような光源をどうしてつくるか。それの設計指針をリーディング・プロジェクトで我々の研究成果として結果として示したということでございます。
 光源開発自身は3つの要素から研究課題が成り立っておりまして、1つは、光源プラズマそのものの物理と、それを解析もしくは振る舞いを明らかにするための理論・シミュレーション、これを相互に実験結果をシミュレーションに反映させて、シミュレーションの有効性を確認しながら、すなわちベンチマークをしながら、物事を進めると。具体的な研究項目はここに書いてあるようなものでございます。
 これでつくるべきプラズマが決まりますと、それをつくるためのエネルギー注入するためのレーザーで、レーザーの仕様とレーザーを当てるターゲット、どういうターゲットでなければいけないかと。そういう要求が出てまいります。場合によっては、あまりに技術的要求が高過ぎて、またフィードバックがここにかかってくることもあるのですが、こういうことで3つ、3班体制でもって研究を進めてまいりました。
 研究体制でございますが、ちょうど我々の姉妹プロジェクトとして、経産省のほうでEUVAでプロジェクトが進んでおりまして、この両者がEUV光源開発技術委員会を通して、お互いに研究情報を交換しながら開発を進めてまいりました。リーディング・プロジェクトのほうはオール・ジャパンで11の研究機関が連携をして開発を進めました。研究者の数は30名以上でございます。
 年次計画でございますが、先ほど申しました3つの項目について、最初の2年間は基礎物理と基礎技術の立ち上げを行いまして、それを3年目から相互に情報交換、意見交換をして、ベンチマークを行いまして、さらにいろいろな物理とか技術とかの高精度化を重ねて、最終的には絞り込みを行いまして、全体を集大成して、具体的な実用光源の指針を与えると。そういうふうにして進めてまいりました。特に強調したいのは、開発情報を文科省プロジェクトと経産省プロジェクトで共有して協力して進めてきたと。これが成功の一番のもとになったのかなと思っております。今現在は設計指針を経産省のほうは3年間、2008年から3 年間引き続いてプロジェクトを進めておりまして、そちらのほうに設計指針をお渡しして活用していただいております。
 データベース構築とプラズマの最適化の手順でございますが、EUV光源プラズマというのは高電子温度のイオンから成るプラズマでございまして、大体30 万度から40万度ぐらいの温度のプラズマでございまして、輻射、X線、原子過程、チャージドパーティクルのダイナミクスと相当複雑な系で、それを調べるためには、放射流体コードが必要で、それとあわせて原子モデルが必要でございます。個々のエレメンタリー・プロセスを確認するとともに総合的なシミュレーションと統合実験とを比較して、それがきちんと再現できるのを確認しながら、コードの有効性を調べてチェックをして、その上でどういうプラズマをつくれば最適であるかと。結果として、高出力・高効率EUV光源プラズマの設計指針を得たということです。
 目標と成果について先ほど申しました横書きの資料に関係したことでございますが、これは実験データベースのアトミックデータ実験とモデルとを比較したものでございます。これも原子データに基づく原子コードの高精度化ということで、結構かたい原子系の複雑なアトムでございまして、理論だけでは精度に欠けるところがございまして、それを実験と確認をしながら、有効性をチェックしたということです。
 そういう結果を総合して、どういう温度、どういう密度のプラズマをつくればよろしいかということで得たのが、この等高線でございます。結論として、当初は1ミクロンレーザーでプラズマをつくればよろしいということだったのですが、10ミクロン炭酸ガスレーザーのほうがより有効であると。効率も2パーセント内外かなと思っていたのですが、結果として4パーセントの効率を実現することになりました。その1つの理由でございますが、炭酸ガスでつくったプラズマと1ミクロンのレーザーでつくったプラズマとで、発行のスペクトルが違います。これはプラズマの密度の違いによるものでございますが、炭酸ガスプラズマは希薄プラズマで、エミッションがよりシャープになると。こういうことで効率が高くなると。これはスペクトル効率と申しまして、有効な13.5ナノメートルプラスマイナス2パーセントバンド幅の中にどれだけエネルギーが入るか。その効率を示したもので、確かにこういう数十万度で10の18乗前後のプラズマをつくってやればよろしいというのが示されております。
 次は、これを流体コードのほうに組み込みまして、統合実験との比較をしたものでございます。上が実験で、下がシミュレーション結果でございます。それから、これは二次元の温度分布を調べたものでございますが、プラズマの形状が違うと。これについても実験と比較をしながらコードの有効性を確認いたしました。
 こういうことで実験データベースとシミュレーションを組み合わせまして、一つ新しい視点は、ターゲット質量がむやみと大きいと、いろいろ悪い点があるというのを発見いたしました。これが横軸がターゲットの厚みで、コートしたSn(スズ)層の厚みで、縦軸がEUVの強度でございます。あまり薄過ぎると強度が下がるのでございますが、厚過ぎると余分のスズの原子が蒸発しまして、それが集光鏡を傷めるということで、この必要最小限の質量のターゲットを使って、しかもスズのターゲットがよろしいということになっております。
 それから、13.5ナノメートルプラスマイナス2パーセントのバンド幅の光だけが出てくればよろしいのですが、そうはいきませんで、いろいろな余分な光が出てきます。それはプロセスに悪影響を及ぼします。その帯域外放射のエネルギーも、ターゲット形状によってすごく増減いたしまして、こういう球ターゲットで、限られた質量のスズだけが蒸発して発光すると。そういう状況にしておきますと、帯外光を放射すると。これは具体的には130ナノメートルから400 ナノメートルの光の計測でございますが、こんなふうにドラスティックに減少することも発見しております。
 こういうものを総合して、これは一番保守本流といいますか、我々が設計指針として挙げた方式でございまして、スズの液滴を上から入射をしてプレパルスでもって、このスズの液摘、金属玉でございますが、それを膨張させておきまして、具体的にはハンマーで殴るような感じで膨らませるのですね。ある程度膨らんだところでタイミングをはかってCO2(二酸化炭素)レーザーを打つと。これは全体のプロセスは数十キロヘルツでやりまして、光源をつくるということになります。結果として、効率は4パーセントを確認して、それの発光条件を調べられたということでございます。
 それからあわせて、イオンとか、いろいろな中性原子が出てまいりますが、これが集光鏡を傷めまして、それの制御抑制の方法もそれぞれに研究しました。特にこれはレーザー誘起蛍光法でもって、中性原子(中性スズ)のアトムがどんなふうな分布をしているかというので、ここにレーザーが当たったところでございますが、そこにはスズの中性原子はございませんで、周辺に分布していると。ということは、余計な発光に寄与しないスズが随分蒸発すると。こういうドット型にしておきますと、全く中性スズが出てこないと。それに対応するモレキュラーダイナミクスのシミュレーションもやりまして、結果として、局在したスズターゲットにすべきであるということになりました。それで、それのデブリを磁界をかけてイオンについては抑制をすると。それから、そういうデブリが集光鏡に当たったときに、どんな影響があるかを調べたものでございます。
 以上が実験データベース、理論・シミュレーションに関係する話でございまして、以下はターゲット材料の開発でございます。当初はキセノン、スズ、ビシウム、それからターゲットの形状として水溶液から懸濁液、金属液滴から金属セルから、パンチアウト、フォームシェルから、いろいろなものを試しました。それで絞り込んだ結果が一番オーソドックスには金属液滴、それで我々が発見しました日本独自のターゲットでもございますパンチアウトというものを今、候補として残してございます。これが保守本流の方式でございまして、これは新しい方式ということでございます。今言いました、これがパンチアウトの方式に対してスズの金属玉でございます。それから、これはスズの水溶液滴の実験の様子でございます。
 それから最後に、高性能レーザーの開発でございますが、レーザーのコヒーレント結合の技術開発をやりますとか、それから、集光したレーザーの強度分布をいろいろ制御するための技術開発も行いました。それから、あわせて光ファイバーでどこまで行けるか。発振器としてのファイバーレーザーの利用も考えまして、それの開発をしたところでございます。それから、レーザーの本体は半導体レーザー励起の固体レーザーでございまして、それのハイパワー化を進めました。結果として5キロワットのレーザーシステムの開発を行いまして、それで組み上げたのがこれでございます。これがそのときの動作状態を示すグラフでございますが、入力パワーに対して出力パワーで、このワンビームで5.24キロワットを実現したと。これでEUV光をドライブするためのレーザーのモジュール技術開発を完了したということです。
 それから、露光器自体の全体の経費が限られておりまして、その中で光源が占めるべき経費、それでさらにその光源の中のレーザーが占めるべき経費というのが、それぞれ想定されておりまして、それを満たすためにはレーザー装置自身はできるだけ安くすると。そういう低コスト化技術が結構大事で、それの1つの新しい試みとして、大口径のファイバーレーザーのバンドルというものを提案して、これは60ワット大口径高出力ファイバーレーザーの実証をいたしました。
 以上のような技術開発をベースにして、本来、全体の目標でございますこれらの技術、物理研究を総合して、高出力・高効率EUV実用光源に対する設計指針を与えるという目標に対して、我々が与えた設計指針はここに書いてあるようなことでございまして、EUV光源出力は400ワット、インターミディエート・フォーカスは115ワットに相当いたしますが、これはターゲットの定義上、それからプリパルス、ダブルパルスで、こんなふうに照射をしなさいということで、メインパルスはCO2(二酸化炭素)レーザーで、プリパルスは1ミクロンレーザーでやるべしと。そのときのレーザーのコストが1.5億とコスト評価までして、変換効率が4パーセントを出しました。これで実はEUVAサイド(経産省サイド)のプロジェクトで今、今後3年間進める方式でございます。それともう少し別の形で、より魅力的な設計指針も与えてございます。これはファイバーレーザーベースの光源でございます。
 以上でございまして、原子データ、EUV理論、EUV実験データベース、ターゲット開発、高性能レーザー開発をして、これらを総合して115ワットのインターミディエート・フォーカスのEUV光源の設計指針を提示いたしました。以上が本プロジェクトの結論でございます。あとは、いろいろ新聞報道等は資料を見ていただければと思います。どうもありがとうございました。

【榊主査】
 ありがとうございました。それではご質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【北澤委員】
 このプロジェクトは非常に特色のあるプロジェクトだと思うのですが、このプロジェクトでは、リーダーとしての先生がこれを試せ、これを試せという感じでアサインされて、みんなが一つずつスクリーングしていったと。そういった研究の進め方になったのでしょうか。それとも、みんながいろいろなことをやって、その中から徐々に選んでいったと。そういうことをやっておられるのか、どういうやり方をされたのでしょうか。

【三間リーダー】
 これは経産省プロジェクトとペアで進めてございまして、実際に露光器を利用するサイドからいろいろな要求が出てまいります。5年間で世界の動向もどんどん変わりまして、必要な出力も100ワットだ、180ワットだというふうに増えてまいりまして、そういう中で適宜、開発項目を決めました。それで一たん目標が決まりますと、それをブレークダウンして、それぞれの現場でもって具体的なテーマを決めていくわけですね。その頭のところは、この委員会で、EUV光源開発技術委員会で、豊田委員長が両プロジェクトにまたがって行司とりをやりまして、堀池リーダーと我々のほうは井澤、三間のほうが、それから副リーダーの宮永がきょうは来ていますが、このあたりで方向性を定めまして、先ほど言いましたように3つの研究テーマでございますが、プラズマとレーザーとターゲットですが、そこのところに課題を下ろすと。下ろした上では、そこではそれぞれの現場でもって研究課題を設定して進めたと。そんな感じです。こんなことでお答えはよろしいでしょうか。

【北澤委員】
 はい。それで最終的に先生は、成功したと言っておられたと思うのですが、その意味では、日本独自のいい、海外に誇れる、そういう光源ができたと言ってよろしいのでしょうか。

【三間リーダー】
 それが使われるかどうかが最終的に成功したかでございますが、それはこれから3年間の経産省のプロジェクト次第ということと、それからユーザーに使ってもらわないことにはしょうがないので、それはまだ3年待たないと……。

【北澤委員】
 海外がよかったら、海外が使うということはないのですか。あり得るわけですか。

【三間リーダー】
 あり得ると思いますが、海外については、これは結構、企業統合みたいなもので、海外の企業も日本の企業もいろいろ連携するような話は聞いておりますが。いずれにしろ、今現在、2つの光源(ランプ)の方式が議論されておりまして、1つはこのレーザー方式でして……。

【北澤委員】
 それで一番のライバルは。これが仮に適用されないとしたら、ライバルは何ですか。

【三間リーダー】
 いずれもEUVなのですが、ダイオード・パンプト・プラズマ(ダイオード・プロデュースト・プラズマ)ですね。レーザーのかわりにパルスパワーでプラズマをつける方法がございます。日本でも、2つの方式がパラレルで3年間、進められる予定でございます。その結果として、ユーザーがどちらを選ぶかということになるのだと思います。だから、もちろん、これとは全然別にエキシンの話というのはございますが、ただ、それはある程度のところで限度があるだろうと聞いております。

【北澤委員】
 はい、わかりました。ありがとうございました。

【川合委員】
 ここのプロジェクトは、EUVAとの関係というのは非常に特徴だと思っています。それで、EUVAの人に言わせると、大変ありがたいと。要するに非常に大事な指針をしっかりした学問に基づいて出してくれているから、自分たちはそれを使えばよいので非常によいと。そういう評価なのですね。だから、そういう意味で経産省と文科省とうまくやっている例なのだと思うのですが、伺いたいのは、そうやって出した結果、もしこれがEUVAのほうで今後使われたとしますね。そうすると、いわゆる特許というか、30人もかかって、文科省系のほうは一生懸命やったのは全部、経産省のほうに行っちゃうのでしょうかね。それとも、しっかりとそういう基本的なところは押えていらっしゃるのですか。

【三間リーダー】
 基本的なところは押えられたかどうかというか、そういうふうに努力したつもりなのですが、特許の形で相当のものはとっております。部分的にはEUVAとの共同の特許にもなっていますし、我々独自のものもあります。

【川合委員】
 EUVAの人に言わせると、基本的なところは彼らは全くわからないので、原理からいろいろなものを全部、大体こちらのほうで文科省系でやってくれていると。それは非常にありがたいと。要するに、いいところ取りを当然するわけですね。そのときに、ある程度そういう波及効果があるものはきちんと押えてあれば、このリーディング・プロジェクトとして、文科省系としてもいいのだと思うのですが、えてして気がついてみると、それにのっとって、使うほうがまたちょっといい特許にして、最初のほうが死んでしまう可能性があると残念だなと思うのですが、そこら辺はどうでしょうか。

【三間リーダー】
 宮永さん、何かコメントはありますか。

【宮永】
 例えば、きょうの朝、書類を出してきたところなのですが、EUVAが4で、我々大阪大学が6とか、そういう比率の共同出願。つまり最終的に技術的に製品になってというところになると、先生がおっしゃったように、原理的なところを我々がやって、ものになるところを一緒に出願して、出願の割合は少しお互いから出たものについては、お互い分を重きを置くと。そういう形で、そういう特許も幾つかはとっているのですが、それが最終的に、向こうはやはり先生がおっしゃったように、EUVAでやっても、特許はすべて企業が出しているのですね。ところが、こちらはそういう形になっていないというのがあって、制度上、今の制度のままで、すべて、例えば単純に言うと大阪大学が儲けられるようになっているかどうかというと、現在の制度上は少し難しいところがあるかもしれないけれども、センター長が申し上げたように、それなりに努力はしたとは思っておりますが。

【川合委員】
 そこはせっかくやったので、やはり原理的なところが最終的に役に立つのだというところの証拠になりますし、後で消えないように努力されるほうがいいのではないかなと思います。

【三間リーダー】
 はい。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。
 ちょっと私からも質問ですが、先ほどの北澤先生のご質問ともかかわるのですが、EUVの開発に関しては、国際的にこの方式と並行して進んでいるようなものがあるとすると、どういう違いがメインにあって、専門家的な立場から見ると、これが最適な設計になっているという物理的な根拠みたいなものはどういうふうに理解すればいいかをちょっと教えていただけますか。

【三間リーダー】
 EUVLのワークショップというか、国際ワークショップがいつもあります。そこで世界の動向をいろいろ議論して、方針が議論されていると。それに我々の研究も振り回されたようなところもあるのですが。ですから、そういう意味では、何かこの研究もグローバル化されているというか。今のスズ・ドロップメントで炭酸ガスというか、2つのレーザーでたたいてという、この方式は、各国ともというか、世界標準になっているかなと思います。

【榊主査】
 そうですか。

【三間リーダー】
 ただ、それがベストかというと、必ずしもそうではなくて、もっといいものがあるのではないかという気もしていて、それであえて我々はファイバーレーザーで、1種類のレーザーで、しかも違った種類のレーザーで、半導体で固体レーザーでやるというのが世界の趨勢なのですが、ファイバーレーザーでやったらどうかというのは、これは我々の意地の提案でございます。我々の井澤元リーダーのほうが相当、それに対して情熱を燃やしていまして提案させてもらっています。それが日の目を見るかどうかは、まだ今後のことでございますが。

【榊主査】
 わかりました。ちょっと横山さん、半導体のいろいろなプロセスにお詳しい立場からコメントなり、質問をお願いします。

【横山委員】
 ちょっと微妙なところがあって、この5年間にどんどん動いていましてですね。おそらくEUVを使われるのは32ナノではなくて、まだ先になると思うのですね。そうすると、それをどこで使うかといわれると、今、いわゆるモアムーア路線に乗っている技術なのですが、これも世界三大拠点化していて、IBM陣営とインテル陣営とTSMC陣営の3つになってきているのですね。だから、おそらくこれを使えるとしても、どうも日本で使えることはないのかなという感じがしていましてね。ただ、ニコンさんとか、キヤノンさんが、この光源を使って、EUVを使って、世界の拠点に持っていけば、これも成功だったと言えるのかなとは思っているのですね。どうしてもプロジェクトを立てたときと、この5年間ですごく変わっているので、日本で使えないから、これはだめだとかは言えないと思うのですね。だから、やはりこの光源がほんとうに使われるかどうかで、このリーディング・プロジェクトがよかったかどうかということになると思うのですね。

【三間リーダー】
 先生、エキシンのダブルエクスプロージャーである程度まで行けるだろうというご意見でございますか。

【横山委員】
 そうです。ちょっとそこはいろいろ意見が分かれていますが。

【西原】
 デバイスの中の、逆にシステムの設計デザインをマニュファクチャリングの観点から言いますと、EUVを使うと、いろいろなタイプの露光装置を並べて適宜使い分けるのではなくて、EUVで全部できると。そういう意味でEUVをできるだけ早く実用化してほしいというのが現場サイドから非常にある要求だと思います。それは外国だけでEUVLを使うというのではなくて、日本のデバイスメーカーもそれをどんどん使っていってほしいというのが我々サイドからしての希望でもあります。

【三間リーダー】
 何かハーフピッチでやるのと、正幅でやるのと、いろいろな定義があって、僕らも混乱しているのですが。

【西原】
 ロジック系とか、EUP系は多分、32ナノのエキシンというのはかなり難しいと思いますので、そういったところから、フラッシュメモリー以外の少しややこしいデバイスでは、EUVLというのは、その先の本命と言われているかと思います。

【横山委員】
 今の未来の、この3年間の中でそのあたりをしっかり決めようという話だと思います。その後、どうするかという議論が今始まっているところなのですね。

【榊主査】
 おそらく私も、ちょっと素人ですが、大変複雑な要素が絡んできて、技術が選ばれるという側面があるので、物理的な利点と今まで蓄積されてきた製造業的な側面の利点、欠点というのがいろいろな形で絡んでくると思いますので、ぜひその辺、異分野の人との会話を引き続き進めていただいて、幸いEUVAの人たちとのやり取りがあるようですから、ぜひせっかくまいた種が大きくなりかけているわけですから、頑張っていただければと思います。
 それでは時間の制約がありますので、ご質問はこの辺でよければ、プレゼンテーションはこれで終わりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【三間リーダー】
 どうもありがとうございました。

【榊主査】
 それでは予定いたしました5件のプレゼンテーションにつきましては、これで終わりましたので、先ほどご依頼がありましたように、これの評価については、先ほどお話がありました期日までに提出していただくようにお願いしたいと思います。
 このほかに事務局からの連絡事項があるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【高橋室長】
 最後に資料8をごらんいただければと思います。今後の当委員会の予定でございます。次回が7月3日でございます。23日、そして8月13日という予定になってございます。

【榊主査】
 大変お忙しくて申しわけございませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 ほかに会を閉じる前に何かご発言をお伺いしたいと思いますが、よろしいですか。どうぞ。

【横山委員】
 リーディング・プロジェクトで、例えば一番最初のバイオのところですね。あれで購入した設備等はそこの所有になってしまうのですか。これから起きる研究とか教育で、その施設を使えるとか、そういうことにはなっていないのでしょうか。

【榊主査】
 どういうふうに原理原則はなっているか、ちょっとご説明をお願いします。

【高橋室長】
 その機関のほうで使うことになっています。もちろん、そういうもの、マグネットみたいなものに出していただくということはあり得るのですが、何もなければ、まずはその機関の方が使うという形でやります。

【横山委員】
 山下さんのバイオをプロセスに使うこと自体はすごくいいことなので、せっかくある設備をもっといろいろ使えばいいのになと思ったりするのですが。だから、あのままもし閉じてしまったりするともったいなという気がするのですね。

【榊主査】
 特に彼らも逆に保持していくのが大変なわけですね。だから、みんなに使えるようにして、なおかつ少し応援してやれば助かる可能性はありますね。
 その投入金額からすれば破格のものがありますので、あのノウハウとか、そっちのほうの維持とマンパワーの維持というのは逆に大変大きな問題になりますから、同じような形での維持は大変難しいと思いますが、その辺はちょっと一つの検討課題として議論を少しさせていただきたいと。基本原則は今、お答えいただいたとおりだと思いますが、どういう可能性があるのかということを、ナノ材の委員会としては一つの問題としてあれしたいと思うのですが。

【魚崎委員】
 この最終報告なのですが、2年ほど前に中間評価をしていますが、その中間評価の書類をいただいたほうが、その中間評価でコメントしたことをどう対応したかということも最終評価では入れたほうがいいのかなと思うのですが。

【榊主査】
 そうですね。それは事務局のほうとしては提供いただけますか。

【高橋室長】
 はい。

【榊主査】
 では、それはお願いします。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、きょうの5件につきましてはよろしくお願いを申し上げたいと思います。それでは、きょうの会合はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

―了―

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