第4期ナノテクノロジー・材料委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成20年5月28日(水曜日) 16時~19時

2.場所

文部科学省 3F 2特別会議室

3.出席者

委員

 榊主査、井上委員、魚崎委員、潮田委員、遠藤委員、大泊委員、長我部委員、岸委員、栗原委員、小長井委員、田島委員、田中委員、玉尾委員、樽茶委員、横山委員

文部科学省

 大竹基礎基盤研究課長、高橋ナノテクノロジー・材料開発推進室長、下岡室長補佐、松下学術調査官 他

オブザーバー

委員外
 成瀬参事官(内閣府)、広瀬理事(JST)、馬越理事(NIMS)、熊倉センター長(NIMS)

4.議事録

【榊主査】
 それでは、時間が参りましたので、第8回ナノテクノロジー・材料委員会の会議を始めたいと思います。毎回ではございますけれども、ご多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 まず、事務局より、委員の出欠状況及び手元の資料の確認をお願いいたします。

【高橋室長】
 それでは、まず先生方のご出欠について簡単に申しますと、きょうは岡野先生、片岡先生、川合先生、北澤先生、竹山先生がご欠席でございまして、井上先生が若干おくれて参加されるという予定でございます。
 あと、本日、事務局のほうは藤木審議官と大竹課長、少しおくれておりますが、追っつけ参る予定でございます。
 資料のほうをご紹介申しますと、1枚目が議事次第でございます。次に座席表でございます。資料の1番が3月6日の会議での議事録でございます。
 資料2-1というのが、これはJSTの田中先生の資料でございます。
 資料2-2、これは白い冊子でございますけれども、JSTのおまとめになった資料でございます。
 資料3というのが出てきまして、これが「ナノエレクトロニクス合同戦略会議」という資料3でございます。
 その次が資料4-1でございまして、総合科学技術会議の「革新的技術戦略」という資料でございます。
 次が資料4-2でございまして、これは物材機構の熊倉センター長の「鉄系新超伝導体について」という資料です。
 次が資料4-3でございまして、JSTの資料でございまして、「超伝導の新規物質の研究についてのJSTとしての支援策」の資料でございます。
 次が資料4-4でございますが、これは物材機構の馬越理事の「レアメタル代替材料・回収技術」に関する資料でございます。
 続きまして資料5でございますが、「X線自由電子レーザー計画評価作業部会の設置について」の資料でございます。
 最後に資料6、これは1枚でございますが、今後の当委員会の進め方でございます。
 資料は以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。もし欠落がありましたら、また事務局のほうにお申し出いただきたいと思います。
 それでは、まず最初に前回3月6日に開かれましたナノテクノロジー・材料委員会の議事録がお手元の資料1にございます。これを皆様ごらんの上、点検をいただくようにお願いいたします。来週の金曜日、6月6日までにお気づきの点があればご連絡をお願いしたいということでございます。
 それでは、続いて予定の議題に入りたいと思うのですけれども、その入る前に何かご発言なりがありましたらお伺いしたいのですけれども、よろしいでしょうか。特になければ、予定の順番で議事に入りたいと思います。
 まず、第1の議題は、先ほどもお話がございましたけれども、科学技術・研究開発の国際比較につきまして、JSTの研究開発戦略センター(CRDS)におきまして、この科学技術・研究開発の国際比較について取りまとめが行われておりまして、ナノテクノロジー・材料分野につきまして、特に田中委員からご説明をお伺いしたいと思います。
 田中先生、よろしくお願いいたします。

【田中委員】
 それでは、資料2-1を見ていただきますけれども、パワーポイントの前に、その資料2-1の一番後ろのほうに文書で1つ資料があると思います。「科学技術・研究開発の国際比較 2008年版 調査報告書について」、これがJSTの研究開発戦略センターがどういう目的でこれをつくったかということが端的にまとめられております。我々がこういう国際比較をやることによって、我々の位置づけ、あるいは日本の強さ、弱みというものを分析する重要な材料として、それをプロポーザルに生かしていくというふうなプロセスになっておりまして、そのツールとして調査報告を出している。これがメーンの仕事ではないということなんです。
 対象分野は、そこに書いてありますように電子情報通信、ナノテクノロジー・材料、先端計測技術、ライフサイエンス、環境技術、この5つの分野について、それぞれこのような分厚い資料があります。ここにお手元にお配りしているのは、そのうちの1分冊、ナノテクノロジーの材料分野でございます。これについてパワーポイントでこれから話をしたいと思います。
 これ、どこかで出てくるんでしょうか。このナノテクノロジー・材料分野、2008年版ですが、全体を4つのカテゴリーに分類をして調査をしております。ナノテク・材料、それから、応用、基盤科学技術、関連共通課題に分けております。ほかの4分冊と大きく違うのは、この関連共通課題ということについて調査をしているところが違うところです。これは後で申し上げます。各カテゴリーを分野に分けて、計15分野、66中項目、延べ100名の専門家による執筆協力です。その先生方の意見をまとめて分冊にしたのがお手元の報告書ということになるわけです。
 次、まいります。これは今申し上げました4つに分けたものの、さらにそれをここに示すような形で分けて、それぞれの項目について何人かの先生にお願いをするということにしています。
 ナノテク・材料分野は、難しそうな分野についてはほとんど複数の先生方にお願いしております。複数といいましても、2人、多くても3人ぐらいですから、それが果たして全体を代表しているかどうかということについての不確定性はございますので、それを承知の上で見ていただく必要があると思います。これを説明しましたところ、あるところで説明しましたら、客観性はどうやって保証するのだと聞かれたのですが、保証する手段はございません。だれがやっていても客観的かどうかというのはなかなか難しいところがありますけれども、一応、公平に見てよくわかっているという先生方を選んでお願いしたつもりでございます。
 次、Executive Summaryですが、これはあまり細かいことを話をしていると時間がございませんので、ざっと見ていただきたいと思いますが、欧米、アジア、中国、韓国の動きも全部含めて、端的にそのサマリーがまとめられています。そこでは産業用構造材料まで書かれております。ナノエレクトロニクス分野は、多少気になっております。これは後で少し申し上げます。
 それから、次、同じようにExecutive Summaryの続きでございますけれども、これは生活関連材料からナノ計測・標準までずっとございます。標準活動その他については、ほかに比べまして、比較的日本はよくやっていると思います。ISOの活動の中でもナノテクのテクニカル・コミッティの幹事国の1つをとっておりますし、また、社会受容についてもかなりきちっとしたプロジェクトが走っております。一方、いろいろ新聞の報道がありますように、カーボンナノチューブについてはいろいろ注意が必要であるということに今なってきております。
 このサマリーの最後のところに、共用研究開発拠点とございますけれども、ここが日本はほかに比べると少し弱いのではないかと。社会受容を除いて、日本は確たる戦略を持たず、欧米や台湾におくれをとっている。特に融合と連携を加速推進するための共用施設については、米・欧・韓に比して国家投資と長期戦略が不足している。特に投資額の問題ですね。これは実績としてやはり少ないのではないか。教育・人材については、米国と台湾がK-12という小中高一貫教育のためのナノテク教材作りと教員養成を進めているというような評価をされております。
 それから、各国についてざっと少しずつ述べています。次、お願いします。日本、強い分野。これはナノ構造材料・新機能材料分野、特に機能性ゲル、超分子・デンドリマー、強相関電子材料、これはJSTのプログラムでも幾つか成果が出ております。スピントロニクスについてもしかりです。エネルギー・環境分野への応用としては、太陽電池、二次電池、キャパシタ、光触媒、かなり強いのではないか。
 一方、下降傾向又は比較的弱い分野として、半導体微細加工技術、これはまだ強いと言っていいと思うのですが、加工傾向であることは否めないという評価を受けています。CMOS材料技術、次世代ナノデバイス、こちらも今、他国、欧米に比べますと少し心配されると見られています。教育・人材育成、国際プログラム、この辺は下降傾向というよりも弱い分野だと見られています。
 次、米国です。政府・民間ともに世界最大の投資、戦略性強く多くの分野で優位である。諸インフラストラクチャーの充実、これは共用施設、人材育成、教育プログラム等含めてですね。エネルギー関連国家プロジェクトの再強化、それに伴うナノテク・材料への強い期待が示されているということです。
 次、欧州へ行きます。多くの分野で優位にあり、日本と競合している。伝統的に基礎領域に強い、環境・エネルギー技術。EU統合によりFP7、これはフレームワーク・プログラムですね。2007から2013などを通じて各国の連携強化。ドイツのナノテク戦略強化、国際戦略強化。これはドイツは経済成長率が2パーセントを超えて以後、非常に強化されている。共用研究開発拠点、教育・人材育成、社会受容などの共通課題には政策的、包括的な取り組みをしている。
 次、中国。多方面で日米欧をキャッチアップしている。研究者数、発表論文数ともに急速に増加している。玉石混交ながら、質の高い研究の絶対数が急増しているということですね。それから、欧米研究者との連携、海外留学組との強いネットワークがある。これは多分、その後の超伝導の話にも出てくるかもしれません。企業の先端技術力はまだ未熟である。未熟ですが、研究開発の投資が急激に上がっているということが、ごく最近出ました科学技術白書でも明らかですね。ナノテクノロジー・材料関連の研究人口の増大、量だけでなく、質の急激な向上が見られる。
 次、韓国。日米欧への追走ながらリーダーの座へ近づく。エレクトロニクスが国家の基幹産業、高い技術開発力を持つ。サムスン、LGなど特定企業の資金力により強力な研究開発投資が行われる。共用施設(ファウンドリー)への重点投資がかなりしっかり行われる。部品・素材分野で日本の支配力からの脱却を志向していると見られるというふうに評価されています。
 次、その他の国ですが、台湾、これは米国と同レベルの戦略的な科学技術政策を持つ。ナノテク産業振興策で最も成功している。これはナノマークシステムというのがありまして、ナノの技術で商品開発した会社には、応募があればそれに対して、それを判定して、これは確かにナノ技術であるということで、ナノ産業を振興するという、これは世界でただ1つだと思いますけれども、そういうのがあります。
 東南アジア・インド、再生医療用材料・生体適合材料においてインドとシンガポールは欧米との共同研究に注力し、高いレベル。最近、大学ランキングでも Seoul National UniversityやNUSなどは相当にレベルが高くなっているというのは皆さんご存じだろうと思います。マレーシアもナノテク国家イニシアティブを発進させています。
 それから、ナノテクノロジー・材料分野注目技術動向ですけれども、これはここには次世代ナノデバイス、それから、再生医療用材料・生体適合材料、膜分離技術、国際プログラムと書いてあります。膜分離技術は大変強いというのはご存じだろうと思いますけれども、企業規模が小さいので、その点どういうふうに今後世界市場へ展開していくかという、そういう懸念は示されています。
 再生医療・生体適合材料ではかなりいい成果が出ておりますけれども、これは許認可の問題等々、いろいろ日本は問題を抱えているということですね。次世代ナノデバイスが少し心配な状況にあります。欧米、特に米国はNanoelectronics Research Initiativeという35大学、21州を含んだNSFとSRCの大きなイニシアティブが今進みつつありまして、日本はどうするかというところで対応を迫られていると思います。
 まとめです。これは最後です。ナノテク・材料分野を全体に俯瞰すると、日本は国際的に優位を保つ材料科学・物理学・化学と圧倒的な強さを持つ部素材産業とを車の両輪にして、米国と肩を並べて世界をリードしている。航空機用カーボンファイバー材料は代表格。ただし、欧米に比較して、融合や連携を加速する教育・人材育成・共用施設などの長期的なインフラ構築戦略が脆弱であり、今後の技術の国際競争力強化に不安を残すということです。
 上のほうは少し強みのところを書いたのですが、科学技術白書の一番新しいやつを見ていただきますと、かなり心配しなければならないような傾向が幾つか載っております。
 以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 大変盛りだくさんの内容の概略しかご説明いただけなかったかと思いますが、これから15分ほどの時間を使いまして、これの質疑を行いたいと思います。ご質問、あるいはコメント、いかがでしょうか。皮切りに大泊先生、ナノエレクトロニクスとかCMOSの何とかというような話も含めて少しコメントをいただけますでしょうか。

【大泊委員】
 CMOS材料及び技術が弱いというお話だったのですが、昨日、Seleteのシンポジウムがありまして、そこでは一昨年等と比べますとかなり将来の展望が見えてきているような印象を持ちました。ですから、必ずしもここにおっしゃるようなことでもないのかなと少し思ったりしています。今、私、お示しいただいた6ページを見て申し上げておりますけれども、まず伺いたかったのは、強い分野としての、例えばスピントロニクスといった、これは技術になっているのか、それともまだサイエンスの段階なのか、この辺の切り分けをどうされたんでしょうか。

【田中委員】
 スピントロニクスは、大変有名な成果が出ておりまして、TMRを使ったヘッドとか、MRAMの展開というのは、これはJSTとNEDOの連携で非常にいい成果が出ていますよね。実際に一部は企業化されておりますし、その研究者がIBM科学賞や、あれは朝日賞でしたか、もらうというようなところで、それは 1つの代表であって、そこだけではなくて東北大学やその他、随分いろいろ技術の面で僕は出ていると思います。また、物理の面でも強相関電子技術との関連でやっぱりかなりいろいろなものが出ているというふうに判断をしていると思います。この先生方はですね。

【大泊委員】
 先生方はね。

【田中委員】
 私、申し上げなかったのですけれども、この席上にも、ここにいろいろご協力いただいた方が何人かおられると思います。ありがとうございます。そういうふうな評価をされております。最初のご指摘は確かに……。

【大泊委員】
 要するに、知識と技術と切り分けがあまりはっきりしないのではないかという印象を実は思っていたものですから。

【田中委員】
 それは、そういうふうな頼み方がきちっとしていなかったかもしれません。こんなに皆さんが興味を持って聞かせてくれというふうには、我々、考えてもいなかったんですよ。こういうものに対するニーズが大変強いんだということは、我々がこれを進めているときにはそう考えていなかった。それで、いろいろな方のご質問を受けて、その辺はよく気をつけてほんとうはやっておくべきであろうなと思います。ただ、1つ1つ書いてあるものをこの本の中で見ていただきますと、どういう意味であるかはわかると思います。コメントが全部文章で書いてありますので、どういう意味であるかわかると思います。
 CMOSについてはおっしゃるとおりで、この間のINC4でも、日本の技術は、僕は大したものだと思うわけです。ただ、これは水準が低いというよりも、先ほど少し申し上げたのですけれども、下降気味に対する――つまり、いろいろ今まで培ってきた技術をさらに精選していく、あるいはそれをプロモートしていくような国のプロジェクトがあるのであろうかということについて、多少、懸念をしているということを言ったものだろうと僕は想像しています。

【大泊委員】
 なるほど。そのことに関して私の懸念は、Selete、先ほど少し褒めたのですけれども、実は枝葉をほかに広げる。つまり、 More Mooreの、例えばそれをX軸としますと、X軸方向しか志向していないんですよね。Y軸とかZ軸とかという別の軸で新しい展開をするというようなところがあんまり見えないというのが心配なところではあります。それは今後の課題かもしれませんね。

【田中委員】
 それはまた後で出てくるかもしれませんけれども、ナノエレクトロニクスの合同戦略委員会というんですか、会議でしたか、ああいうものを通じて経産省と文科省がそれぞれ合同でいろいろプロジェクトを始めていったというのがありますね、スタートさせた。ああいうものは比較的明るい材料であろうとは思っています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 産業絡みとその研究の最前線との区分けみたいな話も少し出ましたけれども、横山さん、コメントをいただけますでしょうか。突然言われても困るかもしれませんが。

【横山委員】
 ナノエレクトロニクス関係でやはりアメリカにほんとうにやられるなという危機感を今感じています。ナノテク・ビジネス推進協議会が米国に調査団を派遣して、その調査書も出ているんですけれども、アメリカのナノエレクトロニクスの戦略というのが大きな戦略がありまして、4つの階層に分かれていまして、一番下というか、近いところがセマティックというプログラムがあって、その1つ上がグローバル何とかという組織があって、そしてあとマルコ、フォーカスプログラム、そして一番上に、田中さんがおっしゃいましたNRIというのがあって、そこが実質、Beyond CMOSをやるということになって、特にBeyond CMOSに関しては、アメリカの東、西、あと中ということでグループができていまして、それぞれが実は企業が指導しているんですね。東のほうはIBM、西がインテル、真ん中がTIというんですね。
 だから、アメリカの企業がBeyond CMOSまで含めて完全に戦略の中に入ってきて、しっかりと資金も落としてやっていまして、その辺、日本の企業はだらしないと言えばだらしないんですけれども、これはほんとうに何とかしないといけないというのでぜひ。日本もナノエレクトロニクス関係ということでいろいろなプロジェクトを起こしていただいているんですけれども、最初、話が大きくても、実際、実行となったときにどうしても少し小ぶりになってしまうのかなと思っていまして、やはり拠点をつくるのがいいかどうかは議論が要るのですけれども、もう少し大きな何か仕組みが要るのかなというのは、常々というか、ひしひしと感じているところです。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにもいろいろな話題が出ましたけれども、いかがでしょうか。少し材料とか化学とか、バイオも含めまして、栗原先生、どんなお感じを持たれましたか。

【栗原委員】
 突然あれなので……。

【榊主査】
 突然言われても困る。

【栗原委員】
 いろいろな分野で進んで――私、今、突然なので全般的なコメントというのはないのですけれども、私もこれの計測分野のところを書かせていただいたんですけれども、研究が進んでいる部分と産業という部分をどういうふうに書くのかというのはすごく困ったんですね。装置も大学の基礎研究的な装置はあるんですけれども、欧米に比べるとやっぱり事業化はすごく、そこの間に、欧米ではわりとスムースに先端のものがどんどん実際に事業化されていくのに、日本ではあまりそういう例がないというのがありましたので、ああいうふうに並べて書いていったときに随分そう思いました。
 この材料からはそれるんですけれども、計測という意味では、まだ欧米と日本とアジアのほかの国々との間では随分差があるような印象がありますので、ただ、アジアのほかの国の人たちはみんな欧米の先端のところに留学生は非常に送っていて、状況はものすごくよく、日本の人たちよりはむしろフォローしているんですね。多分、ほかの分野でも同じだと思うんですけれども、ですから、やれそうになったときにさっと立ち上がるというような、そういう形というのは現在やっていなくても随分出てきていると思いますので、現在、どこまで行っているということと、何かやれそうになったときにさっと立ち上がるということの、そこのところは早いのではないかなと思います。
 私、例えば中国へ行って発表して、質問をいろいろ会場から受けると、日本の中でよりも、むしろよく知っているなという印象の質問がすごく出てくるんです。一般論になっているかどうかわかりませんけれども。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにどうぞ。魚崎先生、お願いします。

【魚崎委員】
 この教育とか人材育成のところなんですけれども、実はきのう、きょうと物材との連携大学院をつくるということでシンポジウムをやっていて、そこでいろいろ青野先生などとも話していたのですけれども、ここにも書かれていますように、やはり横断的とかいろいろなものに対する、学生教育に対する大学院教育とか、要求が非常に高くなってきているんですけれども、一方では、1年生、入ってきた学生に補習をしなければいけないというような、そういうものとの、大学はものすごく要求はされているんですけれども、そこをほんとうに、だから、大学とか大学院教育だけで解決できるのか。
 横断的なことができないということは全く確かにそのとおりだし、私もそう思いますけれども、一方で基盤的な物理だとか、化学だとか、生物の力がものすごく下がってきている中で、先のことだけをやるといっても何かアラカルト的な、カルチャーセンター的な話ばっかりしていてもほんとうの力にはならないし、そうするとやっぱり、初等中等教育と大学がどうスムーズに力を持った理工系の学生を育てるのかというところまでいかないと、いろいろなことが書かれますけれども、ほんとうに現場との乖離が進んでいくのかなという気もちょっとしたりしていますけれども。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【田中委員】
 ここで指摘されている教育の問題というのは、ナノサイエンス、ナノテクノロジーなどを中心にして、小中高、あるいは学部まで入れたシームレスな研究システムがこれでつくれるんだということをやっているわけですよね、アメリカは。特にアメリカ以上によくやっているのが台湾なのですが、教科書が幾つか出ておりますし、そういうものをナノサイエンス、ナノテクノロジーをベースにして、サイエンスに対するリテラシーを上げるための教員の養成まで全部やっているわけですね。そういうのが日本には全然ないというのが、ここに書かれている批判なんですよね。

【魚崎委員】
 ああ、なるほど。

【榊主査】
 どうぞ。

【小長井委員】
 2つありまして、1つは先ほど田中先生がご指摘されたとおりです。このまとめの2番目の共用施設と書いてあるところなんですけれども、私も大学の仕事でかなり欧米の研究所を見せていただいているんですけれども、決定的に違うのはそこだと思うんですよね。前から田中先生がおっしゃられているように、とにかく違った分野の人を強制的に1カ所に集めて話をさせるというところが非常に違うなと。日本にないのはまさにそれだという感じは私も強く受けております。
 それから、この調査に当たって、私、太陽電池のところで少しお手伝いさせていただいたんですけれども、これをまとめたときには、私、それでいいと思ったんですけれども、最近また違う傾向が出てきておりまして、先ほど大泊先生から基礎のところで見ているのか、応用のところでというふうなご質問があったのですけれども、まさにそれでありまして、私はどっちかというと基礎というか、部分、部分に見て回答したんですけれども、最近、世界の傾向を見ると、太陽電池をつくるのでも原料をつくるところからモジュールをつくるところまで、最初から最後まで、上流から下流まで全部やろうとしている企業が出てきているんですね。
 これはやっぱり、うまくいくとなると、巨大資本がドーンとついてきまして、最初から最後まで一気通貫で1つの会社でやると、実はすごく日本から見て脅威でありまして、どこのプロセスが今ネックになって、例えばプライスの問題にしても、それが全部わかってしまうんですね。それを1年間に1ギガワットぐらいつくるくらいのレベルになると、ものすごい効いてきておりまして、日本がこれから――まあ、今でもまだ大丈夫だと思うんですけれども、多少違うものが出てくるとなると、そういうところで1つ危ないなという感じはしております。それは特例だと思いますが。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいろいろご意見あろうかと思いますが、岸先生、少しNIMSの立場も含めまして。

【岸委員】
 いやいや、非常によくまとめていただいて、失礼なんですけれども、研究戦略センター、力をつけてきたなと感じている次第で、今まで何も役に立たなかったというわけでは決してないのですが。
 ただ、こっちの本体には構造材料のことも少し書いてあるんですけれども、こちらのまとめにはないななんていう気がして今見ていたんです。個々には気になるところがあるんです。というのは、的確には書いてあるんですけれども、その比較の難しさですね。ヨーロッパは人口が多いので、面が非常にドイツが強いところもあるんですね。それから、アメリカの軍の研究、表に出ていないのですが、我々の構造材料の専門家で彼らのすばらしい力というのがあるわりには、日本が◎(にじゅうまる)で、ここが△(さんかく)なんて言われると、「おや?」と思っているところはございます。
 ただし、全体像のこのまとめは私などの感じと似通っているような印象を非常に強く受けておりまして、1つ質問なんですが、これは英語版もおつくりになるんですか。いや、というのは、国際的にこういうことは出してよろしいんでしょうかということです。

【田中委員】
 英語版をつくるという余裕は全く、時間的にも何もないんですが。

【岸委員】
 これ、外に出してもいいんですか、見てもらっても。

【田中委員】
 これ、出して構わないでしょう。これはWebに出したんですね。公開していますので、それは問題ないと思います。

【岸委員】
 じゃあ、全然問題ないんですね。それから、これの○(まる)をつけるようなときの原点で、点数のようなものも出していたんですか。

【田中委員】
 これは点数、ありません。

【岸委員】

◎(にじゅうまる)、△(さんかく)が……。

【田中委員】
 いや、点数、ありません。

【岸委員】
 ないんですね。

【田中委員】
 ええ。点数をつけると先生方も嫌がって協力していただけないんじゃないか。

【岸委員】
 先ほども定量性をあんまり言うと問題あると言うのですけれども、あれ、出したほうはギクッとして、確かにわかりいい例もあるんですね。まあ、そんなところで感想から言うとやはり非常に日本が強いと言い切れているところで、これ、もしほんとうにそうだとすると、この人口で大変なことですよね。やり切れているとすると、日本というのはここに書いてある以上に強いんですよね、この人口でヨーロッパに対して。それから、そうは言っても、全体にちょっとヨーロッパに甘いのかなという気もしている。

【田中委員】
 よろしいですか、もう一言。比較、確かに難しくて、これは十分に注意してお読みいただきたいと思っています。先ほど申し上げたように客観性は保証できません。ただ、人は一応、我々のレベルでは選んで頼みはしましたので、そこまでの責任ですね。ですから、客観性というのはなかなか保証できませんけれども、透明性は確保してある。どういう方に頼んだかということは全部リストに挙がっておりますので、そこでご容赦願いたいというところです。

【岸委員】
 いえいえ、ありがとうございます。

【榊主査】
 どうぞ。

【大竹課長】
 この戦略センターの所管、うちの課が実は半分やらせてもらっていまして、これ、こういう話をまとめていただくというので非常に僕らもいいことだと言っておりました。それで、そんな客観的なものなんてできないだろうねというのがもともとのあれで、そんなものつくっても大体四分五裂してまとまらないだろう。
 だから、今、田中さんからご紹介のあったように、ある程度もうお任せしますといって、信頼をおける人に主観的に書いてもらう。これはちゃんと2008年版と書いてあって、こう言うと田中先生は嫌がるでしょうけれども、当然、2009年版が出るはずで、これはやっぱり、いろいろなCRDSの議論をまとめて、従来、背景には助けてくださる人のネットワークができているから、これが1つ目。
 それから、これ以外に実はIT、ITはきょうお配りしていないのですが、ご説明は省略するとして、次回でもまたITのやつもお配りするのもいいかなと思うのですが、IT、ライフサイエンス、それから、先端計測ですね。それは入っていますか。

【田中委員】
 ここに1ページ、先ほど少しご説明いたしましたけれども、この中の後ろのほうに、それぞれの分野のは1ページで簡単にまとめられてはおります。

【大竹課長】
 はい。それで、あとは環境技術とかあるので、先端計測とかあれについては、ご説明はあえてしませんけれども、そういうものが出ているということでお配りすること。それから、環境もお配りしたらどうですか。

【高橋室長】
 はい。

【大竹課長】
 場合によったらライフサイエンスも。お持ち帰りになるのに大変重い、距離に比例して手がくたびれるような分厚さですけれども、ございます。そういうことがあるので、それぞれそういう感じです。
 それから、幾つか申し上げて、教育の問題はこれだけではないんですね。そういう話をすると、だんだん大学につらく当たってくるような発言を私もせざるを得ないのですが、要するにナノサイエンスが必要なら工学部の中を組みかえてくださいという議論だと思うんです。どういうことかというと、別に、じゃあ、金属工学科とか、化学工学科とか、全部今までのを守って、それで、先生方、そこへ来る人たち、自分の弟子を育成するために囲い込むというのであれば、幾らやっても無理だと。ナノサイエンス学科なんかできるわけないんですね。
 むしろ、工学部の中でナノサイエンスに行くように、それは学問としてどうしても必要な量子力学とか、そういう根本のところはちゃんと教えるとして、そういう組み合わせによるカリキュラムなりソーラスをつくって、そういうような学び方をしていただく。だけども、もしこれが例えば何々学科ということになると、その先生方はやはり、いや、おれも真ん中へ来て、あれもこれも、隣の先生の顔を見て、この先生の専門もとやっていったら、新しいものが入る余地はないと思いますよ。
 だから、そういう意味では、その上、学力も落ちているとおっしゃいますが、ここはあんまり速記に残したくないけれども、じゃあ、高校、中学の教え方はどこに起因しているか。大学の入試に照準を当てて教育しているに決まっているんですよね。だから、大学の入試問題で、特にこういう言い方をしてはいけないですけれども、ここに囲んでられる先生方のように、少なくとも定員割れの心配のない大学では科目数を増やせばいいんだと思うんですが、それを何か、そうすると学生が来なくなるとか何とか言ってどんどん減らして入試を楽にしている。
 そうすると、どんどんサイエンスを学ばなくなるので、人に頼む前に自分で考えてくださいという思いがずっとある。国立大学に対して、私は、今や文部科学省も入試をこうせよなんて言えないわけで、センター試験の中からどれをとっていただくか、日本の自分の大学の生き残りだけではなくて、日本の生き残りも含めて学者として考えていただいたらいいのではないか。
 あとは、お金の話は、すみません、科学技術で年間100億しか国のお金は伸びないものですから、その辺は新しいところをやると、「え? 5億?」とか、最近では15億とると、もう大勝利といって花火が上がるような状態なので、なかなかその辺のところはあれなのですが、まあ、我々、財務省からは年金と科学技術、どっちのほうにお金をやるべきか、国民投票で決めてもいいんだぞと言われるぐらいですから、やはり若い人とか社会に対して訴えかけていかなければならない。その意味では、こういうのというのはやはり、ちょっと迂遠ですけれどもいいことだと思って引き続きやっていきますし、やっていただきますし、 CRDSも負担がかかるのですが、ぜひ先生方にもご発言をいただければと思っております。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにもご意見があろうかと思うのですけれども、やや時間のことがありますので、もう1件か2件お伺いしてということですけれども、遠藤先生、いかがですか。

【遠藤委員】
 今の最初のほうで独占問題を触れられたんですけれども、アメリカは少なくとも日本に比べて5周ぐらい先行していて、独占データを出していないんですよね。しかし、次に出すときは、今、彼らは規格基準値を出す計画をしているんですね。ところが、日本は中西先生のプロジェクトが始まって、いい結果が出つつあるんですけれども、1周おくれで、たまたまサンプルをもらった人が比較的プリミティブな結果をドンと出して、しっかり精査しないでそれがひとり歩きしている。悪いことに社会の科学リテラシーが十分いっていないので、結局、社会が右往左往している。ものすごいロスなんですね。
 ところが、米国、ヨーロッパはしっかりしたデータを持って、しっかり見ていて、そして日本に対して迷惑だというぐらいおっしゃっているんですね。つまり、カウンターパートのどなたにクレームをぶつけたらいいのか。つまり、こういう新しいハイテクというのは、いろいろな面がかかわっているんですね。ですから、それを戦略的、統合的にしっかりまとめる部分があって、そしてそれが1つの国策としてどうあるべきか。そういう戦略性を持っていないと瓦解していくような――簡単ですよね。何かすごくいいものを発見されて、将来、その国の産業にとって非常に有利だと。
 それを妨害しようと思ったら、ネガティブなキャンペーンをすれば一発でつぶれるわけですね。しかし、今、間違いなく1つ1つ、そういった独占問題もしっかりデータを積み上げて、かなりいいところへ来ているんですね。ですから、そういった内閣府なり、総合科学技術会議みたいなところで省庁横断的に見ていただく。少なくとも榊先生とか、こういった文科省関係のナノテクの先生がそういうところへ行かれて、少なくとも横のデータ交換等、しっかりやっていただきたい。これが1つですね。それこそ国の戦略として進めていただきたい。
 それから、今の教育の問題、大竹課長がおっしゃっていましたけれども、今年の3月ですか、インドで、日本でちょうどナノテク週間みたいなのが3月にございますね。同じようなものが例のシエノランが主催してやったんですけれども、1日、数百人の高校生が会場に入ってきて講演を聞いているんですね。しかも、彼らは我々とあまり違わないぐらい、ノートにメモをとっているんですよ。あの子供って、質問してくるんですね。最後にCDのお土産をもらって、ものすごくハッピーで帰って行くんですよ。僕は大学生だと思ったら高校生なんですね。つまり、それだけ教育に、そういうところに招待して日常的に勉強させている。ですから、ぜひ3月の、岸先生などがやっていらっしゃる例のナノテクウィークには、選ばれた、あるいは希望する高校生はぜひ読んで、高校生のためのセッションを1つつくっていただいて、インドはこんなに高校生が頑張っているよというのを見せていただいたら、ちょっと話は違うのではないか。
 それからもう一つ、最近、横山先生などの半導体絡みのデバイスのところですけれども、今までアメリカの半導体デバイス、ナノテクで開発してきたのは結構ベンチャーが多いんですね。ところが、最近、1つ問題が起きていまして、サブプライム問題で銀行からの投資が今とまっているんですね。彼らは今少し青息吐息といいますか、そういう問題があるんです。そういう意味では、まあ、人の何とかをというのはちょっと失礼なんですけれども、日本が機に乗じて一気に先に行くいいチャンスなような気がするんです。つまり、日本の場合は大企業がしっかりそういうところをやっていますので、ですから、あまりそういった変な経済問題に左右されない、しっかりした継続性というのが大事ですので、それも1つ日本の戦略の基盤に据えていただきたいなと、こんなふうに思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 この件は国際比較というわけですから、ナノテクをめぐる状況全部が含まれておりますので、短時間で議論し尽くすことのできない問題だと思いますけれども、これまた次回以降も含めましていろいろ議論をさせていただきたいと思います。ぜひ資料をいろいろお読みいただいて、問題提起をしていただければ。最後に、できれば時間を確保して、またこの件でご発言があればお伺いしたいと思います。
 それでは、私の不手際で予定の時間から既に10分おくれていますが、次の議題2のほうに参らせていだきたいと思います。議題2は、ナノエレクトロニクス合同戦略会議についてでございます。それで、ご承知のとおりに、文部科学省と経済産業省との連携でナノエレクトロニクス分野での戦略会議を活動しております。これの活動状況と成果について、ご報告をしてまいりたいと思います。
 この委員会はたまたま私榊が主査をしておりますけれども、事務局で、文部省の方と経済産業省の方で大変ご尽力いただいております。きょうは文科省側のほうの担当であります松下調査官のほうから15分ほどお話をいただいて、それから、メンバーであります田中委員、あるいは私のほうから少しコメントをした上で意見交換をさせていただきたいと思います。
 それでは、松下さん、お願いいたします。

【松下学術調査官】
 はい。わかりました。お手元の資料3をベースにしてお話させていただきたいと思います。
 1枚目にありますのが、このナノエレクトロニクス合同戦略会議というのが設立されたときの経緯等でございます。すみません、日付が入っておりませんけれども、この合同戦略会議自身は2006年の10月からやるべきだということで経産省と文科省のほうで議論を始めまして、後ほど出てまいりますけれども、第 1回の会議を2007年の2月26日に開催することになりました。
 それで、その設立された経緯ということなのですけれども、何度もお話に出てまいりますように、このエレクトロニクスの領域というのは、日本はもともと非常に得意としてきた分野ではありますけれども、下降傾向というように昨今では言われておりまして、それは米欧の国策での進め方とか、あるいはアジア諸国の台頭といったことがあるんですけれども、日本におきましては文科省と経済産業省が中心になってこの領域をやっていたのですが、それぞれ別途独自にやっていたということがありまして、国家戦略として考えていくためには、同じ机の上で議論する場を設けることが必要でしょうというのがもともとの設立に至った経緯でございます。
 もともとシリコンCMOSの微細化を中心とした、いわゆるMore Mooreと言われている領域は経産省が担当し、それ以外、非シリコン系、あるいは化合物系等のロジック系のデバイス以外のものも含むんですけれども、それ以外のものという意味でBeyond CMOSという読み方をしてきましたが、そういう領域を文科省がずっと担当してまいりました。
 これ以外にまたシリコン系のデバイスに異種機能を加えますような、そして多機能化するというMore Than Mooreと言われている領域がありますけれども、これらMore Moore、Beyond CMOS、More Than Mooreと3つの領域についても、文科省、経産省で定義が違うのは当然のこと、それぞれの関連する産学官でもそれぞれ明確な位置づけというのが定義されていないというような状況にございましたので、まずはその言葉の定義といいますか、領域を正しく認識、お互い共通で認識するというところから始めて、また、文科省と経済産業省、それぞれJSTとNEDOという独法がございますけれども、それぞれいい、すぐれた研究に対して効果的かつ継続的に支援するというような仕組みをつくるということも念頭に置きながら設立されたということになります。
 次の裏のページにございますのが、その合同戦略会議の構成員の方々でございまして、荒井先生、大野先生、そして榊先生、大学3名の方。独法が、上からいきますと金山さん、田中上席フェロー、NIMSの知京さんということで3名。そして、産業界からは4名で、中村様、前口様、横山様、渡辺様ということになります。
 その次の資料は、初回が平成19年2月26日に開催されて、1年ちょっとで計9回議論されてきたんですけれども、その議事と、それぞれどんな意見があったかということが書いてございます。全部はご紹介いたしませんが、大体概要を説明いたしますと、第1回は、それぞれ経産省、文科省、それぞれ委員及びそれぞれの省の顔合わせをという形でして、これまでどういう施策をやっていたかということを紹介し合ったという形です。また、今後、委員会でどういうことをやっていきましょうかというようなことも議論されました。
 第2回になりますと、平成19年度に文科省から出た戦略目標でできたCRESTと、それと経産省側の内局予算で進めるプロジェクトが、先ほどの分類でいきますと、More Mooreと言われている領域に分類されるかと思うのですが、そこで非常に近いところであるということで、じゃあ、それぞれどのようにして進めていくべきか、どうやって連携できるかというようなことを議論していただきました。
 第3回になりますと、それぞれの連携の進みぐあいに加えまして、20年度ではどういう取り組みをしていきましょうかというようなことを文科省側、経産省側からもご提案いただきまして議論していただきました。
 第4回になりますと、委員の1人の先生から研究紹介という形でお話があった後、文科省側の20年度の取り組みについてまた引き続き議論いただきまして、さらに、また後ほど出てまいりますけれども、International Nanotechnology Conference4というのが、この今年の4月、日本、東京で開催されましたが、それの取り組みについて、そこの事務局の1つを担当いただいた NIMSの竹村さんのほうから、今、こういう取り組みをしていますということでご紹介いただきました。
 第5回目になりますと、そのInternational Nanotechnology Conferenceの3つのグループ、3つのグループというのはどういうものかといいますと、エレクトロニクスとバイオと、あと1つは材料及び科学ということかと思いますけれども、3つの柱があって、そのうちの1つであるナノエレクトロニクスのグループ、これをInternational Planning Working Group on NanoelectronicsでIPWGNと呼ぶんですけれども、それのどういう取り組みをされているかということの紹介と、我々、INCと呼んでいますが、そのInternational Nanotechnology Conferenceとの関連づけの説明をしていただきました。
 第6回になりますと、もうこの時点では19年度のCREST及び経産省側のプロジェクトのそれぞれ採択者が決まっておりましたので、それぞれをご紹介いただくとともに、先ほど出てきましたInternational Nanotechnology Conference4のプログラム案について現状をご説明いただきました。
 次、第7回になりますと、少し趣が変わるのですが、話題提供ということで1人の委員の先生方からお話をいただいたことに加えて、ナノエレクトロニクスの研究基盤、ファウンダリーを含めた研究基盤というのをどういうふうに進めていくべきかということを議論していただくということで、まず海外の状況のご説明をいただいたことに加えて、物質・材料研究機構(NIMS)でナノテクノロジー融合支援センターというものが立ち上がったということでしたので、その説明をいただきました。また、加えて、これは経済産業省側のほうで始まりましたナノテク政策研究会の概要もご説明いただきました。
 第8回になりますと、これが19年度の最後という形になったのですけれども、日立でどういうエレクトロニクスの取り組みをされているかということの話に加えて、また、きょう田中先生にお話しいただいたこととも関係しますけれども、日米でのナノテクへの取り組みのご紹介。そして、前回、第7回は物質・材料研究機構のファウンダリーということで、ナノテク融合センターのご紹介をいただいたんですけれども、この第8回においては産総研側の研究拠点の現状と今後の考え方ということをお話しいただきました。
 加えまして、INC4本番の直前でございましたので、プログラムの最終案をご紹介いただきまして、またさらに平成20年度の文科省側の戦略目標の内容についてお話しさせていただき、かつ、それで立ち上がったCREST等については経産省の産業機械課のプロジェクト、これはBEANSプロジェクトと呼ばれていますけれども、それとの連携を予定しているということをお話しさせていただきました。
 第9回、これは前回、今月の9日に行われたわけですけれども、こちらについてはINC4の実際の開催報告と、それから、先ほども出てきましたIPWGN というものと、それとはまた名称は少し違うのですけれども、同様にエレクトロニクスの世界的な取り組みについて話し合いが行われているITRSとのそれぞれの関連についてのお話をしていただいたということです。
 その次の資料、第1回から第9回ナノエレクトロニクス合同戦略会議の成果ということでまとめさせていただきましたけれども、このように文部科学省と経済産業省がナノエレクトロニクスという領域に関して共通で議論する場を設けたことによりまして、以下の成果が得られたものと考えております。
 まず、3つありますけれども、1つ目としましてはシリコンCMOSの発展を中心としたMore Mooreと呼ばれている領域での連携というのが、実際、それぞれのプロジェクト等を通して進んでいるということです。これは文科省の戦略目標でできた CRESTと経産省の内局で始まったプロジェクトを実際に連携、公募段階から連携を行いまして、これは非常に画期的なことだと思うのですけれども、一部で提案された案件の入れかえという形も行うことができました。
 2つ目、これはMore Than Mooreという領域になるかと思うのですけれども、多機能化というのを志向するMore Than Moore領域での議論というのをこの合同戦略会議でしていただきまして、そこでの議論を踏まえて文科省から20年度に出しました戦略目標、プロセスインテグレーションによるナノシステムの創製というものをつくり上げていく背景といいますか、参考にさせていただきました。この戦略目標をもとにしてJSTのほうで曽根CREST、入江CREST及び長田さきがけというものが立ち上がっております。そのうちの曽根CRESTを中心に、先ほどご紹介いたしました経産省産業機械課のBEANSプロジェクトと連携を進めていく予定となっております。
 3つ目としましては、何回か出てまいりましたけれども、INC4のプログラムの内容及び、そのIPWGN、あるいはITRSとの関連を議論して、どういう位置づけでどういうふうにやっていくべきかということをご議論いただいたということです。
 そこから先はご参考までの資料ということなのですけれども、渡辺久恒総括の顔写真が入っているやつが、表裏になりますけれども、このCRESTのアドバイザー及びどういう方が採択されているかといったもの。
 その次、横書きになりますけれども、プロジェクト推進体制と書いてありますのが、それと連携している経産省側のプロジェクトのアドバイザリーボードと、それから、少し字が細かくて恐縮ですが、採択された案件ということです。
 その次の資料は、これは連携とは少し違うのですけれども、先ほどの渡辺CRESTと同じ戦略目標で立ち上がったさきがけで、こういうものが走っていますという資料です。
 その次の上のほうにオレンジ色の帯のあります資料が3枚ございますけれども、これが上2つが今度立ち上がった曽根CREST、入江CRESTの研究概要とそれぞれの総括の方針。3枚目が長田さきがけの概要と方針ということになります。
 その次に、少し字が小さくて恐縮ですが、INC4のプログラムを縮小したものが2枚、両面刷りでございます。最後につけてございますのが、一応、日本人でどういう方がご講演いただいたかというのをよりわかりやすくするために、プログラムについて一部日本語で書きかえたものというのを添えてございます。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 9回の会合を15分ほどでご説明いただいたので、中身の細部には入ることができなかったかと思いますけれども、私と田中委員から少し補足の説明をさせていただいた上で、皆さんからご質疑をいただきたいと思います。
 先ほど来、お話がありましたけれども、ご承知のとおりにLSIの産業というのは全世界で25兆円ぐらいあって、これは年によっていろいろ上下いたしますけれども、日本で5兆円を超えるような巨大な産業で、これがご承知のとおりに、この10年の間に完璧にナノ寸法のところに入ってくるということで、これの発展というものがその中でどういうふうに工夫されるかということで非常に決定的になるということで、産業力という観点から見てもそういうことでありますし、もう一方で物理全体として見たときに大変ユニークで、チャレンジングなおもしろいテーマが山積しているという領域でもあるということで、そういった学術的なおもしろさと、それから、産業的な重要性というものが文部科学省及び経済産業省から見たときに非常にいい形でその接点となり得るということで、当初から関係の課長の方々、あるいは局長の方々にご理解をいただいてこういうものが発足したということが経緯であります。
 それで、それをどういう形で進めていくかにつきましては、今、松下さんからご報告があったとおりでございますけれども、文部科学省の系統では、主としてナノ系はCRESTとさきがけを使いながら動いてきたということがありますけれども、先ほどもお話がありましたように、ちょうどそれを補完するような形で経済産業省のほうでもプロジェクトを始めて、採択その他についても情報交換をするという非常にユニークな動きがこれのおかげで実現をしてきたという経緯があります。しかしながら、内外の様子を見ますと、まだまだやるべきことが多いということで、有限の資源を使いながら、どういう形でそれをしていくのかについていろいろな意見交換をしてきているということがございます。
 私があまり長くなってもいけませんので、最後のほうにINC4というInternational Nanotechnology Conferenceという会議がございました。これについては私もあまり理解が深くなかったんですけれども、これはいろいろな性格を持ってはいるんですけれども、特にインテルとか、ヨーロッパのSTトムソンとか、そういうLSIで非常に強い分野の人たちが、この分野が将来に向かって発展するためには、競争もあるんだけれども、プリコンペティティブなところで、その学術的に非常におもしろい領域を設定して、切磋琢磨するようなテーマを設定しながら、お互いに刺激し合おうではないかという、そういう観点がかなりあって、それゆえにいい人材がここに引っ張り込まれれば、お互いに得るものが多いという認識のもとで情報交換をしながら動いてきているというようなことで、その線上で、この4月に会議が開かれたという経緯がございます。
 激烈な競争ではあるんですけれども、優秀な人が入ってこなければ産業というのは必ず飽和して、もう頭打ちになるということで、そういう認識のもとで新しい可能性を探ろうというような観点で来ております。その中では、今回、日本の代表的な研究者の方々がInvite talkをされまして、これについては例えば相関系であれば十倉先生が話をされましたし、あるいはグラフェンとかナノチューブの物理では安藤先生のお話があったりとか、学術的に非常にすぐれたものがあるわけですけれども、それがほんとうに産業とつながるようなテクノロジーになっているかということになりますと大変問題が多いというような認識も深めたりしまして、そういった議論をして、なるべく経済産業省、文部科学省のリーダーシップでできることについて、産業界の方々の協力を得てそれを進めていこうという形で今進んでおります。
 概略、松下さんの話と全く同じお話を繰り返したんですけれども、田中委員のほうから引き続いてコメントをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【田中委員】
 私のほうからつけ加えるとしますと、2つほどだと思います。1つはオールジャパンのシナリオを描けるといいますか、議論できる場がどうしても必要ではないかと常々感じていたのですが、このナノエレクトロニクス合同戦略会議というものが、そういうことの先駆けになればいいなと。そして、そういうような可能性は、そこに参加する人たちの、これを育てる意欲があるかないかによって十分に可能性はあると感じる、そういうような会議であったと思います。特に経産省と文科省は個別、独立はいいんですけれども、かなり似通ったものを独立して出すよりも、全体的に補完し合えるように、その全体のシナリオをそれに携わる産官学の方全員が集まって、そこで議論できるような場があれば一番すばらしいと思っておりましたけれども、そういうものができそうであるということを実感させてくれる、そういう会議であったと思います。
 それからもう一つは、ナノエレクトロニクス自体を見たときに、例えば日本がそこへどういうふうに人材を供給するかと考えますと、大学の電気工学科ということに多分なると思います。ご存じのように榊先生や私の出身学科は4年連続定員に満たないという大変悲惨な状況に今ございまして、工学部への入学志望者が少ない。その中でも特にこのナノエレクトロニクスの分野へ来る人がやっぱり少なくなっている。意欲が少なくなっているという現状を考えますと、今後、日本が、この分野は強いというふうに思ってきたのですけれども、ほんとうに支えていけるのかどうかということについて危惧せざるを得ないわけですよ。
 そういう立場で見ますと、先ほどから何回か話題にも出てきましたけれども、アメリカが今展開しようとしているNanoelectronics Research Initiativeというのは、Beyond CMOSという、つまり、ずっと先のサイエンスを巻き込んだところでの新しい技術を多くの学生を引き込んで夢を持たせて、産業自体、将来の人材として育てていこうというふうな、そういうイニシアティブに見えるわけですね。そういうイニシアティブに対して日本は一体何ができるんだろうか。将来、大変心配であるということは、先ほど申しましたように明らかなわけですけれども、何らかの手を打たざるを得ないわけでありまして、そういうものを議論できる場にこれが発展すれば、私はすばらしいのではないかなと考えているわけです。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 今、ご紹介したようなのが概略ですけれども、私もこの会合に出まして、企業の方々との対話の機会があって大変学ぶところがありました。一番印象的なことを1つだけご紹介させていただきますと、LSIの将来展望の中にBeyond CMOSというような形でロジックデバイスがどんな形になるのかということをいろいろな議論をしていますけれども、これは東芝の前口さんのお話なんですけれども、アメリカはインテルとIBMというのは基本的にロジックを世界で先頭に立つ宿命といいますか、運命にある。そうしますと、これはもうBeyond CMOSがどうなるかということを徹底的に考えるのが自分たちの命運を担っている。そういう意味で、その分野で随分冒険的なことも含めてみんなに考えてもらおうと。自分たちも考えるけれどもという、その非常に戦略的なメッセージが見えると。
 それから、一方でヨーロッパのほうを見ますと、これはやはりエレクトロニクスの将来がエネルギーとか、エコロジーとか、ライフとか、ヘルスとか、そういう関係になるので、かなりBeyond CMOSとかMEMSとか、あるいはパワーデバイスのほうにきちっと視点を置いた展開が見られる。日本の半導体の企業は、それぞれの企業でそれぞれいろいろ考えているんですけれども、必ずしもその辺のメッセージが絞り切れていないのではないかというようなことをご自身の反省も含めて言われたところでありまして、これはどこまで当たっているのか私にはわかりませんけれども、技術戦略といった場合にやはり将来の重点分野はどこかという話で、我が社はどう行くかというような1つの考え方があって初めて出てくるようなところがあるということを私も学ばせていただいたというようなことがあります。
 ですから、MEMSなどのお話が最後に中村さん、ご紹介になりましたけれども、MEMSの製品で世界で10大売り上げのあるメーカーに日本は1社しか入っておりません。それは日本電装ですというんですね。圧力センサーとか、そういうような関係でですね。MEMS、MEMSと言っているんだけれども、 10大メーカーに1社しか入っておりません。これは明らかにきちんとしたそういう考え方がないためではないかというような話がある。これは必ずしも企業の戦略会議ではございませんのであれなんですけれども、そういった対話の機会を持たせていただいているので、20年度は少しそういったことも含めまして、議論を1つずつ詰めていきたいと、そんなふうに思っております。
 ほかに、これに関連しましてご質問やコメントをいただければと思いますけれども、どうぞ。

【栗原委員】
 今、学生さんがなかなか来ないということで、私、最近ちょっと興味深い話を聞きましたのですが、東北大学の機械系で工学部のキャンパス公開のときに女子高校生を集中的に、女子校にバスを派遣して、それでちゃんと学科で見学をアレンジするようなことをされたんだそうです。そうしましたら志望者が急に増えて、それで合格者の偏差値も非常に上がったという話を聞きました。ですから、今、文系に行っている女子高生が非常に多いわけですから、そういう意味で、別に男性の中の理系適性の割合と女性の中の理系適性の割合は変わらないと思うので、電気とか機械とか、今までだったらあまり行かない分野にぜひそういう、私、大変地道ですけれども、この先どうなるかわからないんですけれども、その話、印象的でしたのでご紹介させていただきます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 いろいろコメントがあろうかと思いますが、いかがですか。長我部さん、いかがでしょうか。

【長我部委員】
 将来のこととか学生のことを考えると、学生さんはただいま現在の経済状況にものすごく反応するところがあるなと思いまして、そういう意味では私たち電気メーカーの、ある意味ここ数年、そんなに伸びていないというところを見て、何となくやっぱり学生の物理離れとか、ナノエレクトロニクス離れが進んでいるのかというところもあるのですが、そこは先ほどのこういう合同部会が中心になって日本全体としての夢をこの分野に、やっぱり伝統的に強いですし、あるというところをものすごく語っていくということが将来的な強さにつながるのかなと思います。
 先ほど来出ている周辺分野、例えば計測とか、それもやはりナノエレクトロニクスがあってこそ日本が強かったという面がありまして、今では例えば計測ですとIBMや海外の会社がトップなので、そこに向かって次の需要や共同研究を組まなければいけないという状況にありますので、そういう波及効果も考えると、ここが強いということが非常に重要でしょうし、そういう意味の発進ということと、世界の今のマーケットを見ると、途上国のマーケットが伸びているということで、多分、インフラ需要がどうしても底がたくて、総合電気でやると、そこがどうしてももうかるんですけれども、もう少し先を見ると、そういった途上国が進んでくれば必ずエレクトロニクスの需要が大きくなって、もう1回チャンスが来ると思うんです。そこへ向けたやはり日本全体としての底力を学生レベルから充実していく時期かなと思いまして、それは企業だけではなくて、こういう何か文科省、経産省も横断したようなところから強いメッセージが出るとありがたいなと思いました。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。潮田さん。

【潮田委員】
 私、ナノエレクトロニクスとは関係のない構造材にいるわけですが、先ほど長我部さんのほうからお話がありましたように、我々、構造材、非常に厳しい時期がございましたが、今はおかげさまでほかの産業の、あるいはアジアの需要拡大ということで比較的いい状況にあるわけでして、言いかえますと、先ほどの学生さんの人気の話ですが、非常に敏感で変化が見られたりしているんですね。そういった意味からすると、我々、企業がちゃんとそれなりに技術的にも、あるいは経済的にも魅力のある企業にするというのがまず第一、大事なところだと、こんな気がしております。
 鉄鋼は基幹素材ということで長い歴史があるわけでございますが、最近のアジア地区のキャッチアップ、これは非常に驚異的なところがございます。言いかえますと、将来にわたってほんとうに今のような状況が続けられるかどうか。基幹素材においても非常に危機的なところを感じておりまして、遠回りになるということなのかもしれませんが、きっちりと基盤のところ、基礎、教育のところをやるというのが一番大事なのではないかなと、そういう印象を持っております。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。玉尾先生、少し分野は違いますけれども、素材とエレクトロニクスで何か少し。

【玉尾委員】
 分野が違うのですが、人材育成というか、そのあたりのことで、今のお話を聞いていて、我々の科学などの分野もどうしても大学の教官の採用人事、それから、学科での取り組みのところは、そのあたりのところから、むしろきっちりと考える必要があるのかなといつも思っています。どうしても流行の先端のところの人事ばかりをやってしまって、その基礎のところは抜けてしまう。こんなことをすると、あと10年、20年もすると基礎のできるような人は、国の基盤になるような力のある若い人材が抜けてしまうのではないかということをずっと思っています。それで、僕らの分野でも、基礎をきっちりやれるようなことを大学で、やはり人事をきっちりやる必要があるのではないかということは、機会のあるごとにというのか、なかなか機会がないので言う機会も少ないのですが、そう思っています。
 それで、今のお話を伺っていても、こういう先ほどのような、こんなに重要な分野でありながら、学生に人気がないというのは、企業と一体となって大学の、こういう分野の人材を教官としてきっちり採用し、抜け落ちないようにということをやはり一体となって言っていく必要があるのではないかなと思います。一般的なあれですけれども。そうでないと、なかなか産業界だけでの人気に左右されるような形で学生が増えたり、減ったりというのではなくて、きちっと大学人事のところからできるようなことをみんなで取り組む必要があるのではないかなということを感じております。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 工学部の中では電子工学科に比較的近いところは物理工学科ですけれども、樽茶先生がおられるところは人気が非常に高いままですね。学術の魅力をきちんと伝えておられるということなんですけれども……。

【玉尾委員】
 やっておられる。

【榊主査】
 どんなふうに感じておられるか、少しで結構ですので。

【樽茶委員】
 うちの学生は大体エレクトロニクスのメーカーさんに就職するので、私、ナノエレクトロニクスが決して人気がないわけではなくて、全般的に見るとエレクトロニクスという分野全体が人気が低下しているのは確かなんですけれども、そこにナノエレクトロニクスに限って言えば、そこは決して人気がないわけではなくて、ただそのおもしろさが見えていないだけ、ただその重要さが見えていないだけだと思うんですね。これは大変重要な点で、こういうCMOS分野のLSI関係の分野でとても重要だと思うんですけれども、学生がその重要さを認識するのはずっと後になってなんですね。
 それにかわるもっとファッシネーティングなものがあるかというと、Beyond CMOSとか、More Than Mooreとかにあると思うのですが、ここのメッセージが全然伝わっていないんですね。すごくおもしろそうに見えるところのメッセージが伝わらなくて、もう10年もするとLSIの開発はリミットを迎えて、行き着くところに行き着いちゃってということだけが表に出てきてしまっているので、せっかくこの今の戦略会議、委員の皆様がすごく、皆さん先が見えている方なので、ぜひ強いメッセージを出していただいて、こういう分野というのがとてもおもしろくて、とても重要なんだということを企業と独立行政法人と大学という三者で出してもらえると、学生にとってすごく魅力的だと思いますね。
 先ほど女子学生の問題が出てきましたけれども、女子学生の問題について少しコメントというか、もともと理系に入ってくる女子学生が少ないですよね。それは多分、女子学生のが成熟しているんだと思うんですけれども、大学に入る時点で。要するに先を見ると、女性研究者が頑張っているというような――いるんですけれども、そういうことが目に見えていないので、多分、先を見てみると、どうも自分たちが行くようなフィールドではないなというのがわかっちゃっているのではないかと思うんですね。
 ただ、入ってきている女子学生って、物理工学科の中にもいますけれども、ほとんどトップ10に入っているんですね。もともと偏差値は高いんですけれども、学力で決して劣っていないところが非常によく勉強するので、上位を占める女子学生がいるので、全然、能力的とか実力というのが遜色ないと思っているんです。ただ、先を見ると、そういう分野で活躍して、実力を発揮しているような人が見えていないので、そういう意味でもインセンティブというものが少し足りないのかなというのが、これは私たちも反省しないといけないところなんですけれども、そういう女性に対しても何か強いメッセージが出せるようなこともぜひ含んでいただけるといいかなと思います。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 女性の理科系への入学のパーセンテージは、少し古い数字ですけれども、学部をとると生物系は30パーセントで、化学系が20パーセントで、物理系が10 パーセントだと。ところが、上に行くと、またこれがどんどんと減ってくる。大学院とか、そういうようなことがよく指摘されておりますけれども、いい意味でナノ分野は化学と生物と物理というあたりが非常に境界が低くなっている領域ですから、そういったメッセージをいろいろな形で伝えると、また反応が違ってくるのかなというような期待をしていまして、きょうは栗原先生からいいお話を伺いましたので、少しその辺も含めて……。

【魚崎委員】
 今のと関係あるんですけれども、北大の理学部ですけれども、大体30パーセントぐらい女子学生はいますし、修士までは一緒、30パーセント行っていますね。ですから、今、栗原先生がおっしゃったのは、クラシカルには女性があんまり行かないというような機械とか電気とか、その辺もそれなりにちゃんとやれば行くのではないかということだった。それはまた新たな人たちのプールを増やすということになると思うんですね。今まではやっぱり、生物だ、化学だというところ、何となくそういうイメージになっているんですけれども、それで、最近になって電子工学がこんなに人気がないということを知ったんですけれども、我々、電子がものすごい人気があって、一時期、化学なんて最悪だという時代を知っていたわけですけれども、ですから、マスコミのイメージとか、やっぱり夢が、電子産業はどんどん伸びているとか、ところが、今やもう行き詰まりだとか、そういう何かネガティブなイメージが非常に強いからだろうなと思っているんですね。
 ですから、それをどう打破するのか。それで、先ほど東大の場合、物工はいいということなんですけれども、入試の仕方がまた違うと、例えば北大の場合は、私は理学部ですけれども、工学部は応用化学と材料と応用物理が一塊で応用自然科学だか何かってとっているんですね。しかも、そこは物理を必修にしていない。そうすると、教養というか、全学教育が終わって分属するときに物理は嫌いなものだから、応用物理はその3つの中でも最悪らしいんですね。ですから、その物理教育を、今、大竹さん、いなくなりましたけれども、それは物理をどうするのかという問題がかなり大きいところに来ているのかなと。我々も科学で、全体入試はどうしてもほかの学科との調整があってできないのですけれども、推薦入試というか、AO入試では物理を必修にしているんですね、科学ですけれども。そういうことを我々としてはメッセージを出しているんですけれども、なかなか大竹さんがおっしゃるように全体でいろいろ議論をすると、そう理想のように行かないのが大学の苦しいところかなとは思っていますけどね。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 井上先生、学長のお立場で、国立大学の、先ほどおいでになる直前に大竹課長が手厳しいお話をされまして、物理が大事ならば国立大学は全員に物理を必須科目にするぐらいの決断が要るんじゃありませんかというようなことを、もう少し深くおっしゃったんですが、そういうことも含めまして、今後、物理系の分野を国立大学として責任持って育てていくのにはどんなふうな展望があるかということを少し。

【井上委員】
 物理系というのは、今、高校生等のアンケートをとっても物理系に人気がないという、そういうことを反映して。

【榊主査】
 そうです、そうです。

【井上委員】
 ああ、そうですか。いや、東北大学は、どういう視点でお話しすれば、物理系は日本で一応、サイテーション等のランキングでは東京大学に次いで第2位なんですね。それで、今、特に物理、要は理学部の、東北大学は第一物理と第二物理というのがあって、ニュートリノをはじめとする非常にそういうおもしろい、宇宙のそういうことは非常に高校生等も興味があるということで、なかなか材料科学の物性論になっていきますと、高校生のレベルに訴えるというのは、まあ、超伝導などは非常にアピールしやすいのだとは思いますが、わりと宇宙だとか、そういうことで強いところでおもしろいところといったようなことを、栗原先生からもお話があったかもしれないのですが、サイエンス・エンジェル等、出身高校に行ったり、あるいはサイエンスカフェだとか、今、移動講座だとか、いろいろなことで高校生への啓蒙活動を実施していましてね。
 そういうときには一番手っ取り早く高校生に云々というのは、やはり宇宙だとか、地球科学に関しては皆さん小さいときから関心が深いですから、こういう物質でなどはなかなか、小中高のときにどの程度深く、だけども、しょっちゅう日ごろ自然科学の、そういうところに訴えて、そういうようなものをやるのは物理であり、おもしろいですよといった、まあ、科学の人は違った、それは科学ですよという感じで多分、宣伝されているんだとは思いますが、物理はそういう意味では非常に東北大学においては積極的に今活動を開始。
 それと、大学院等においても、今、大学の評価においてドクターの進学率といいますか、それは物理の場合は必ずしも東北大学においても70パーセントぐらいなのですが、ただむやみに質を落とさないということで、いまだに他大学に対しての入学――まあ、他大学が悪いという意味ではないのですが、もうご存じのように、例えば東京理科大学など東京大学に3けたですよね。100人以上、多分、今入っていると思う。東京工業大学など99名入っているとか、そういう感じでどうしても定員の充足率を満足させようというようなこと等々もあるかと思われますが、低くても一応、開き直っているわけではないですけれども、そういうことでやはり、そこを100パーセントにしてしまうと、いろいろな問題があるといったようなこと。
 それと、入ってこられた人に対して、最初の認定で、もう一度全学教育等も受けていただくといったようなことも、今、東北大学では取り組んできている。というのは、教養教育というのは決して1、2年だけではなしに、我々国際高等研究教育機構ということで複眼的、学際的視野を持った人材育成ということに取り組んでいまして、そのときには大学院において違う学科、研究科の科目を学ぶにおいて、もう一度全学教育に戻ってというようなことで、多分、そのときにどうしても大学院に進んでいったときに物理等をおさめないと自分のあれが開けないといったときに、全学教育のときにはとらなかったとしても、もう一度とれるチャンスというようなことでの教育システムを今つくり上げつつあるということで、本学で教養教育院などを新たに今設置しつつあるところで、そういうことで物理関係の人材育成、あるいは物理の教育の充実といいますか、そういうことで取り組んでおります。ただ、それが今の答えになっているのかどうか、ちょっと私。

【榊主査】
 ありがとうございました。大変ヒントになるお話がたくさん含まれていたので、ありがとうございました。
 時間の都合で、最後に田島先生、少し今のお話を伺ってコメントをいただいていいですか。

【田島委員】
 では、電気電子関係の工学部の学科の人気がないということに関しては、なぜなのかなと思うのですが、私の息子の世代ですか、今の若い人たち、理系に行くとしたらどこへ行くといったら、何かやっぱりバイオとか、そういう言葉が先に出るんですね。なぜだろうというと、彼らは生まれたときからコンピュータがあって、そういうものは当たり前になっていて、それがすごくワクワクすることではもうなくなっているので、ナノテクとか、エレクトロニクスとか、そういう言葉を聞いてもあんまり夢を感じないんですね。それが1つ問題なのかな。そういうことは、多分、その詳細を知らないからだと思うのですが、中学生とか小学生とか、そのくらいの年代の子供たちに向けての夢を語る場を積極的につくっていくというのが大事かなと思いますね。高校ではちょっと遅いかもしれないですね。
 もうちょっと小さいほうを照準に、別にナノエレクトロニクスでなくてもいいのですが、物質化学は特にそうですね。先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、高校へ出前授業に行くときに、宇宙とか素粒子とか、そういうのはすごくやりやすいんですね。物理が好きな子でしたら、まずそこに飛びつくわけです。ところが、物質化学になると、何がおもしろいのかが彼らはわからない。そういう意味でも、大学教員でできることは限りがあるんですが、何かそういう社会に向けてメッセージを出せるチャンスがあれば、なるべく物質化学のおもしろさとか、エレクトロニクス最先端のおもしろさを語る、そういうのをみんなでお互いにやり合うというか、プログラムをつくったらいいかなと。まあ、学会を挙げてやっていらっしゃるかもしれませんけれども、そういう組織立った運動が大事かなという気がします。
 女子学生に関して言いますと、女子学生はやっぱり上を見ています。女性研究者が少ないということから、これは私が行く分野じゃないと思ってしまう。例えばサイエンスの分野というのは厳しい。要するに時間の制約がある分野ですけれども、女子学生は医学にはいっぱい行くんですね。医者だって、とても大変な仕事のはずなんですが、医者なら自分にできそうな気がするというのは女医さんがいっぱいいらっしゃるからで、そういうのをモデルを見ていますから、まあ、地道な作業ですが、ある程度、子供たちが目につくようなところに女性のサイエンティストがいるということは相当響くと思います。薬学に非常に希望者が多いのは、薬剤師になる。薬剤師というモデルがいるからなんですね。そういう意味で、意識的にやっていただけるといいかなと思います。
 以上です。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 どうぞ。

【玉尾委員】
 人気を回復させるための1つのあれとしては、我が国の日本の研究者というか、技術者とかが、この今の発展している分野にこれほど貢献しているんだという、具体的に人を挙げてヒーローをつくり上げるというのは、僕は1つ重要な気がしています。だから、エレクトロニクスは何ですか、僕もよくわかりませんが、フラッシュメモリはだれがつくったんだとか、この今のエレクトロニクスの中のこういうディスプレイのどういうところのは、こういうものはこういう人がつくったものであるということをむしろお互いにたたえ合って、この人がつくったんだということを若い人たちに示していくということは重要な気がしています。
 ぜひそういうこともいろいろなところで、よく見えるところに、新聞に大きくウワーッと書くとか、そういうことも僕は重要な気がするんです。そんな気がしております。それはあるときの集会でも話題になったのですが、最近の調査で男子は将来なりたいものの第2位に博士、学者というのがまた上がってきました。これは間違いなくiPS細胞が表面に出てきたからに違いないということ。それから、ノーベル賞を3年続けていたら第1位になったとか、そういうことはありますので、今、出回っているものについても、やっぱりこれを開発したのは日本人のこの人だ、あなたもできますというようなことをアピールするということ、努力するのは必要かなとも思っています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 幾つかこれに関連しても今後議論を続ける必要があるかと思いますが、時間の都合がございますので、きょうは問題の提起というあたりでとめさせていただきたいと思います。
 それでは、私の不手際で大変におくれておりまして、今度は15分おくれの状況になっておりますが、その次の話題にまいりたいと思います。15分おくれじゃなかったな、これ、25分おくれか。私の勘違いです。申しわけございません。
 次の議題は、今月の19日に総合科学技術会議が革新的技術戦略を取りまとめました。この革新的技術戦略につきまして、ナノテク・材料分野として文部科学省がいかなる政策で臨むべきかということを議論してみたいと思います。本日は内閣府からナノ・材料を担当しておられます成瀬参事官にご出席いただいておりますので、革新的技術戦略についてのご説明を承りたいと思います。よろしくお願いいたします。

【成瀬参事官】
 それでは、資料4-1でご説明いたします。まず、ここの革新的技術戦略の発端でございますが、これは今年の1月18日に第169回の国会におきまして福田総理が施政方針演説をいたしました。その中に活力ある経済社会の構築を目指してほしい。特にそのために他国の追随を許さない技術を軸に、日本を活気ある、そういう経済状態にしてほしいと。きょうは資料がございませんが、それと同時にもう一つ、環境関係で低炭素社会の転換ということで、これも環境エネルギー技術革新計画というので2つ、これは総合技術会議が担当して、経済財政諮問会議と連携しながら推進して、この5月15日にまとめたものでございます。
 1ページ目は、これはどういう趣旨であるかということが書かれておりまして、例えば真ん中の段にありますが、我が国の研究開発投資のうち、約8割は民間が担っている。ただ、今後、そのイノベーションというものを創出するためにはますます革新的な科学的知見に裏打ちされなければならない。その中で大学とか研究開発独法の役割が増大しているということが書かれております。
 この1ページの一番下には少し反省がありまして、これまで我が国はすぐれた研究成果が多くあるにもかかわらず、それが大きな社会・経済効果をもたらすまでには十分育っていないという側面もあるということでございます。
 それから、2ページ目にまいりまして、ここで何を目指すかということが(i)から書いてありますが、まず、産業の国際競争力強化ということが、これは経済財政諮問会議からの連携にもありますように、まず大事である。それから、健康な社会構築。当時、iPS細胞の話題が出ておりますし、それ以前にも再生医療、それから、日本における高齢化社会というものを見据えて、今後、科学技術、そういうものをどう発展させていくかということが、それが1つの目標として議論されております。
 それから、3ページ目に行きまして、あとは日本と世界の安全保障ということで、最近、食料問題、資源問題、いろいろ温暖化に関連するようなこともありますし、また、感染症のような、そういう伝染病等の問題もあります。ということで、これはやはり国の存立にかかわるものでございますので、最先端技術で国主導で取り組むテーマであるということが書かれております。
 それでは、具体的にどういう整備、また、環境を整えればいいかということが4ページ目に書かれておりまして、重要なのは4ページ目のこの最初の○(まる)にありますが、革新的技術推進費の創設というのがございます。これは非常にいろいろな議論がありましたが、ここに書かれておりますように、そのちょっと下にあります革新的技術推進費については、科学技術振興調整費に新たに措置し、そして、約1パーセント程度ということが経済財政諮問会議において言及されているのを踏まえつつ、6月中に決定いたします。これは詳細はまだこちらも把握しておりませんが、いずれにしろ項目は新たに追加されるということでございます。
 そして、さらに、こういったものに取り上げられて、後でご説明するテーマに関しては、いわゆる今後の資源配分方針において重点的に投資配分される。ですから、重みづけの1つの項目になるということでございます。その下以下は研究開発のマネジメント等を以下にすべきかということで、例えば研究者・技術者ネットワーク(目利き集団)を整備し等、これまでの手法に加えて、もう少し新しい切り口でマネジメントをしていこうということが提案されております。
 5ページ目にまいりまして、これは次の○(まる)ですが、スーパー特区というのがございまして、これも聞きなれない言葉かもしれませんが、要は従来の構造改革特区のような行政区域主体での取り組みではなく、テーマに即して研究開発機構や企業等の産官学が結集した研究複合体を主体とした取り組みを支援する。こういった新しいユニット、そういったもので革新的技術推進費を活用していくということで、例えば先端医療開発特区というのを創設、推進するということが書かれております。
 それから、6ページ目にまいりまして、ここではどういった、ある意味、課題の提言のようになっていますが、真ん中辺をごらんいただきたいと思うのですが、挑戦的かつ高い目標設定の基礎研究への投資、これは「大挑戦研究枠」というのを新設しようと。これは従来の審査基準にとらわれず、斬新なアイデア、チャレンジ性を重視した課題選定、研究遂行上の責務を全うしても、期待された研究成果が上がらなかった研究者に対しては、次の挑戦の機会を閉ざさない。非常に温かいメッセージがここには記載されています。
 それから、次の○(まる)ですが、切れ目のない研究資金供給。やはり革新的技術を育てていくためには、それなりの年限を要するので、継続性のある研究資金供給の仕組みを確立しましょうということが書かれております。
 それから、7ページ目に行きまして、これは競争的資金に係るルールの統一化。研究資金の効率的運用が必要なのですが、煩雑な事務手続等を減らして、研究者の研究専念時間を確保するため等、競争的資金にかかわるルールの統一化をする必要がある。いろいろご意見を集めて、今後、ある意味の統一化をするべきであるというようなことも書かれています。
 それから、7ページの下ですが、今度は人材の話に行きまして、トップクラス人材の流動性確保と育成ということで、下のほうにありますが、例えば「大学において純血主義を排し、みずからの大学出身教員の割合を5割未満とするなど」と核として書かれております。
 それから、8ページ目に行きまして、先ほど来、人材の大学、それから、小中学校との連携等が議論されておりますが、ここではコア・サイエンス・ティーチャー養成プログラム(仮称)ですが、導入を検討する。これはやはり連携をしっかりして理科教育、そういったものを推進していくという提案がなされております。
 それで、時間もありませんが、9ページ以降は、これは既にホームページにも出ておりますが、では、どういったことを推進しようかということで、分類がなされております。例えば一番上から申しますと、オール光通信処理技術、それから、その下、電子デバイス技術では、スピントロニクス技術等があります。これは23項目がありますが、ここでは、その後、細かい説明が17ページまで、国家基幹技術を含めてありますが、一応、例として、この今回の会合にも関係のある元素戦略にも関係がありますレアメタル代替材料・回収技術、これはカラーの資料がついております。
 ここでちょっとポイントとして、回収技術というのもついております。これはもちろん、科学的に代替する材料を研究するということは非常に大事なのですが、一方で同時並行的に我々は回収技術もきちんとやっていかなければいけないということで、それも組み合わせながらやるという施策になっています。
 それからもう一つ、次の新超伝導材料技術(磁性元素超伝導体等)、ここで注目していただきたいのは、最後についております「等」ですね。エトセトラは非常に重要な意味がありまして、まずこれが認められた背景には、今年度初めに新しい超伝導物質が発見されたと。それがある意味、我々の常識を覆すような磁性元素を含みながらすぐれた特性がありそうだということで、これが1つの可能性ですね。ですから、これにとらわれずに新しいサイエンスのもとで超伝導体が出てくるのではないかという期待を込めて、これが採択されております。
 ということで、少し駆け足になりましたけれども、もしご質問等があれば説明いたします。よろしくお願いします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 この革新的技術戦略ではかなり幅広く、さまざまなテーマが取り上げられておりますけれども、中でも材料・ナノテク絡みでの1つの接点としましては、最後にお話がありましたレアメタル代替材料・回収技術と新規の超伝導材料の分野が、ここではもちろん電子デバイスのようにナノチューブだとか、スピントロニクスだとか、さまざまなものも挙がっておりますけれども、そういったことではないかと思います。
 それで、後ほどこのレアメタル代替材料の関係と超伝導材料技術に関連しましてはプレゼンテーションを予定しておりますので、そちらのほうで伺ってから議論をさせていただきたいと思います。その前に数分、今お話がありましたことについてのご質問などをお願いできればと思います。
 成瀬さん、私からなのですけれども、革新技術の推進費ということで振興調整費の1パーセントぐらいというお話だったのですが、これは絶対金額としてはどれぐらいの額になるんでしょうか。

【成瀬参事官】
 約140億円ですね。1パーセントですから、全体が1兆4,000億ぐらいですから、140億ぐらいが。

【榊主査】
 140億円ぐらいですか。ああ、そうですか。ありがとうございました。
 いろいろご質問、コメントがあろうかと思います。いかがでしょうか。

【岸委員】
 これはいつからなんですか。

【榊主査】
 いつからですか。

【成瀬参事官】
 いつからというのは、例えば来年度からとか、そういう意味ですよね。

【岸委員】
 はい。

【成瀬参事官】
 多分、1つ、下に書いてあります、今年度行われる資源配分方針において重点化というのを考えますと、やはり来年度からだと思います。今年度は既に決まっている。予算的には結構決まっているのではないかと、これは私の、まだ確かめていないので、そういうふうになると思われます。

【岸委員】
 そうすると、科学研究費が100億しか増えないけれども、そこで140使うから全体は40減ると、こういう構造になるわけですか。

【成瀬参事官】
 そこが非常に微妙で、まだ私、その質問に答えられる人がいないという、5、6月中にしっかり答える……。

【榊主査】
 そういうことなんですね。

【岸委員】
 そういうことになるはずですよね。いやいや、楽しみにはしているんですが、思い切ったお金の使い方をしていただくのはいいんですけれども。

【榊主査】
 どうぞ。

【魚崎委員】
 まだよくわかっていないのですけれども、この革新的技術を持続的に生み出す環境整備というのがありますね。これは革新的技術推進費というのとはまた別の話になるわけですか。

【成瀬参事官】
 別というよりは……。

【魚崎委員】
 こっちは基盤技術的なということなのか。例えば未知の分野に挑戦する人材の確保というようなことになったときに、大学の純血主義を排しろとかいうようなことを書いていますけれども、具体的にはどういうふうにお金がもらえるというか、あるいはそういうインセンティブをどうするんだとか、既に我々のところはかなり低くて、学内で30パーセントぐらいですけれども、そういうところは褒めてくれるのかよくわかりませんけれども。

【成瀬参事官】
 その分配等についても、いわゆるここに挙がっている項目がありますよね。それに対しては具体的に各省とかいろいろ施策があるので、それに対応するものがありますが、ある意味、これから整備しなければいけないもの等は、それがどういうふうにいつ決まるかというのは、ある意味まだきちんと書かれていないわけですね。そこはわからないという。ですけれども、このペーパーが出たことによって、それは今後、それに関する提案等があったときには、優先的にというか、それに対応するものはついていく可能性がある。

【魚崎委員】
 具体的に進むのは、まずこの革新的技術推進費1パーセントというやつで、この後ろにあるような技術に何らかの形で計算される。

【成瀬参事官】
 そうですね。それの対応が一番核ですね。

【魚崎委員】
 そのほかの人材の確保とか、一般論とか基盤的なものは、これからまたもう少し別の政策を考えていく。

【成瀬参事官】
 そういうふうに考えております。

【榊主査】
 どうぞ。

【大泊委員】
 資料の9ページを見て質問させていただきますが、国家基幹技術一覧とありまして、それで、国の存立にかかわるというのは、多分、私の理解では、産業化にどれだけつながるかということのように思うのですけれども、これはどなたがどういう判断で国の存立にかかわるとして決められたものなんでしょうか。

【成瀬参事官】
 ここは非常に我々、例えば私の担当で言いますと、ナノテクノロジー、物づくりですけれども、これはそこだけに関係していなくて、もう一つ全体を見て、基本専調というのがありまして、例えば次世代スーパーコンピュータであればライフサイエンスにも使えますし、いろいろなものにも使えるわけですね。そうすると、ちょっと言いわけ的になりますが、より1段上のところで全体的なこの項目は決まっているということですね。ただ、ナノテクに関係、特に施策として関係あるのは、この中でもX線自由電子レーザーですね。そういったものは、それがどこに応用されるかと、基本的なものはナノテクの推進に関係するということで、我々の意見がかなり取り入れられている。
 ですから、ご質問の意味は、国家の存立にほんとうにかかわるかどうかというような観点だと思うのですけれども、これは全体的には、例えば高速増殖炉とかいう、そういうものは環境エネルギー担当のほうで出していて、ですから、ここで私が全部どうしてかということは、これが出てきた背景まで申しわけないですがつかんでいないので、ただ、一応、CSTPの中でオーソライズされてこれは動いているということですね。

【大泊委員】
 もしこれが国家の存立に――要するに産業化の展望に乏しいという意味で、国家の存立に関係ないとわかった時点で撤退もあるんですか。

【成瀬参事官】
 それは先ほど言った基本専調というのがありまして、調査専門会、そこでは民間の有識者の意見と思われますし、それから、我々の総合科学技術会議の議員等が議論して、ほんとうにそうかというのは、これは毎年チェックしていますし、そこで議事録等もありますので、ホームページ等参照していただければ、どういう流れでこれが決まっているかとか、それは見れるようになっていると思います。

【榊主査】
 どうぞ。

【小長井委員】
 5ページのところで、このスーパー特区というのに興味があったのですが、これは下のほうの文章を拝見しますと、企業等含めて産官学で結集した組織をつくるということなんですけれども、産官学が結集した組織をつくる場合に、今、どういう規制が問題になっていて、どういう規制を外して特区にしようというふうにお考えなのか、そこが少しよくわからなかったんですけれども。

【成瀬参事官】
 ここの部分は、私もこれが決まる過程でいろいろな会合等に、立場としては傍聴しかできないところもあるんですけれども、これはかなり地方のいろいろな施策にも関係するので、この辺の議論はここに出ているものはやはりもう少し、まだ流動的だし、これからより細かく決まっていくものだと思っております。結構、いろいろな意見が出ていたような、おっしゃるように、全部は申し上げられないんですけれども、とりあえず合意のあるところまで書かれているということです。

【榊主査】
 このお話、いろいろ聞きたいことがたくさんあるんだと思うんですけれども、こういう動きが今進行しているというのでちょっととめさせていただいて、それで、具体的に超伝導のお話と超金属のお話を少し伺った後で、時間が許せばまた引き続きお話をさせていただくということでよろしいでしょうか。

【成瀬参事官】
 はい。よろしくお願いします。

【榊主査】
 意欲的な構想が今検討されているというふうな理解にとどめさせていただきたいと思います。大変申しわけございませんが、時間の都合でそうさせていただきたいと思います。
 続きまして、今お話がありましたように1つの事例といたしましては、超伝導分野の関連のことで議論をしたいと思います。NIMSはご承知のとおりに昔から大変超伝導に関して研究の実績が豊富でありますので、既に内部で対応を検討しておられるということですので、口火を切っていただくということで、本日は NIMSの超伝導材料センターの熊倉センター長にお越しいただいております。それで、この革新的技術戦略に対して研究開発をどう進めるかということにつきましてお話をいただきたいと思います。
 熊倉さん、お願いいたします。

【熊倉センター長(NIMS)】
 物質・材料研究機構の熊倉と申します。
 それで、きょうは新しい鉄系の超伝導体についてということで2つの点をご報告させていただきます。1つは発見とこれまでの進展、どんな状況になっているかということと、今後、その研究開発はどういうふうになっていくのだろうかという、少し考察をしてみたいと思います。
 それで、これは皆様方もよくご存じだと思いますが、こういう化学式の物質が東工大の細野先生のところで発見された。TC(テクネチウム)が26K(ケルビン)ということで注目されたわけです。それで、この物質が発見される前に同じ細野先生のところで、この砒素がリンで置きかわった、こういう物質がまず2006年に発見されまして、ただ、これはTC(テクネチウム)が低いわけで、専門家以外はあまり注目を浴びなかった。このリンを砒素に置きかえてTC(テクネチウム)が26K(ケルビン)、かなり高いわけですので注目を集めているというものでございます。
 これは抵抗の温度変化でございまして、重要なのは酸素の一部がフッ素で置きかわっているということでございまして、フッ素で置きかえない場合、酸素だけの場合は導電性はありますが、超伝導にはならない。フッ素で置きかえていきますと、あるところから超伝導があらわれるということでございます。それで、大体、一番高いのが、最適ドープ量が0.11と言われていますが、それで26K(ケルビン)の超伝導が出現する、こういう物質でございます。
 それで、結晶構造はこういうふうになっておりまして、これは細野先生の論文をそのまま持ってきたのですが、いわゆるレイヤー構造をとっている。層状構造をとっている。ランタンのオキサイドがここにあって、鉄、砒素のレイヤーがここにある。酸素の一部をフッ素で置きかえますと、酸素はマイナス2ですから、フッ素のマイナス1で置きかえますと、いわゆる酸素が――失礼しました。電子ですね。エレクトロンが放出されて、ここのところにドープされる。電気伝導になっているのはここでありまして、エレクトロンがドープされると、こういうふうに超伝導があらわれる。すなわち、エレクトロンドープの超伝導体と考えられています。
 類似な超伝導体としては、いわゆる銅酸化物超伝導体というのがあります。これはビスマス系の結晶構造でありますが、これもレイヤー構造を持っていまして、銅酸素面、ここで超伝導が起こるわけですが、この場合はビスマスのところからキャリアがドープされる。ただし、ドープされるのは電子ではなくホールですね。そういう違いがありますが、この酸化物と、それから、今回の新しい物質で似ている面はあるということでございます。
 それで、その後、この細野先生のところでは高圧、圧力をかけてみたということで、そういたしますと、この図がその結果でございますが、圧力をかけていきますとTC(テクネチウム)が上がる。かけ過ぎるとまたTC(テクネチウム)が下がるということですが、大体3ギガパスカルぐらいのところで最高のTC(テクネチウム)が得られまして、そのときのTC(テクネチウム)が43K(ケルビン)ということでございます。
 それで、あとは外国に飛びますが、非常に精力的にやっているのが中国です。これはすべて中国の結果を引っ張ってきたのですけれども、細野先生がやられたのはこれですね。ランタンなのですが、それをほかの希土類で置きかえたらどうなるか。サマリウム、セリウム、ネオジウム、プラセオジウム、高いTC(テクネチウム)のものが幾つか出てきています。43、41、それから、ネオジウムが51.9です。プラセオで52。
 それから、先ほどの細野先生ですと26K(ケルビン)ですが、これは高圧で合成をしますと、できた後、圧力をかけなくても41K(ケルビン)のTC(テクネチウム)が出るという報告がございます。それから、サマリウムで55K(ケルビン)、これも高圧合成ですが、そういう値が報告されている。おそらくこの辺、50K(ケルビン)、この辺が今のところ最高のTC(テクネチウム)ではないかと思います。この物質系ではですね。それで、これは年代とともに超伝導遷移温度がどういうふうに変化してきたかを示すものでございまして、最初はこうゆっくりとTC(テクネチウム)が上がってきたわけですが、ここでいわゆる銅酸化物超伝導体というのが発見されてガーッとTC(テクネチウム)が上がりました。今、こういう状態にあります。何となく似ているわけで、この先がどうなるかというのが非常に気になるところであります。
 それから、これは細野先生のサンプルはこれでございまして、酸素の一部がフッ素で置きかわって電子ドープということでございますが、電子ドープということで言えば、これはフッ素は要らないわけで、酸素の欠損ですね。酸素ベイカンシーがあれば、単純に考えてこれで電子ドープができるはずである。実際にやったのがこちらの結果です。こういうものです。酸素が欠損しているわけですね。これも高圧合成でやったのは中国です。これを見ますと、やはり高いTC(テクネチウム)が出てきまして、サマリウムで開始温度が55K(ケルビン)という高いTC(テクネチウム)が出ているということがわかります。
 それで、こちらのほうは、横軸は格子定数でデルタは0.15、オプティマムなところでフィックスをしまして、いろいろ置きかえていくと、こういうふうな系統的な変化をする。格子定数が小さくなるに従ってTC(テクネチウム)が上がってくるという様子がわかります。
 それからもう一つ興味深いのは、これは今度はランタンの一部をストロンチウムで置きかえた。ランタンはプラス3ですから、それをプラスの2のストロンチウムで置きかえたらどうなるか。これは今度は電子ドープではございませんで、いわゆるホールドープになるわけです。ホールをドープしても超伝導になるという結果でございます。こちらは酸素の一部をフッ素で置きかえた。フッ素の量に対してこういうふうに変化するわけですが、ストロンチウムで置きかえてもやはり25K(カリウム)、そういうふうに超伝導があらわれる。だから、電子でもホールでもドープをして超伝導。類似の結果は酸化物超伝導体でも得られていますので、そういう点でも今回のこの物質は酸化物と似ている、高温酸化物超伝導体ですね。似ている面があると言えるかと思います。これも中国ということです。
 次に少しアプリケーション、最後のことを考えてみたいと思います。応用上、重要なパラメータというのは3つございます。1つはもちろんTC(テクネチウム)で、これは物質固有の値。それから、もう一つは臨界磁界、正確に言いますと、第一種超伝導体の上部臨界磁界ですね。これはほぼ物質固有の値である。3番目に重要なのは臨界電流密度、これは超伝導体の単位面積当たりに流せる最大の超伝導電流でありまして、これは非常に重要なわけですが、これは材料の組織によりまして、そのプロセスに大きく依存する。極端なことを言いますと、欠陥のない完全結晶ではこのJcはゼロになる可能性があります。そういう 3つのパラメータがございまして、今回のこの鉄系を見てみますと、TC(テクネチウム)が50K(ケルビン)ぐらい、最高で55。
 それから、臨界磁界はどの程度か。これも幾つか報告がございますが、横軸、これはテスラですので、どれぐらいの温度で使うかというのが問題になりますが、大体TC(テクネチウム)の半分ぐらいで使うということを想定しますと、30とかそれくらいの非常に高い臨界磁界が報告されていますので、臨界磁界という面でもかなり期待の持てる材料であろうと思います。
 それから、Jcですが、これはきちっとした報告がまだございません。どうなっているかよくわからないというのが現状です。アプリケーションということになりますと、線材というものが必要になるわけですが、もう既にこういう施策も行われています。これも中国なのですが、つくり方は金属管に粉を詰めて加工して熱処理をする。いわゆるパウダー・イン・チューブ法(PIT法)という方法で線材化できます。これは断面ですね。長手方向の断面がこうなる。TC(テクネチウム)は一応出ておりますが、肝心の臨界電流密度については報告がございません。おそらく流れないんだろうなと。この組織を見ますと、ちょっと流れないだろうなと私は想像しています。
 以上が現状でございますが、それで、じゃあ、今後どうするかということでございますが、ここに少し書いてございましたけれども、この図から果たしてこの物質系は高温酸化物超伝導体を超えられるか。まあ、超えないにしても、それと同レベルなところまで行くのだろうか。新しい超伝導ファミリーと書きましたが、そういった期待がある。
 それで、この銅酸化物超伝導、これは非常に数が多うございまして、これは非常に大きな超伝導ファミリーをつくっているわけです。学問的にも、それから、応用の面でも非常にインパクトのある物質群であったわけですが、果たしてこれがどういうふうに育っていくのかなというところは非常に知りたいところでございます。ですから、早急な取り組みが、これがどうなるか、すなわち新物質探索、この周辺の物質で何かもっと高いのが出てくるのではないかということで、新物質探索、これがまずは必要になると思います。これは早急に取り組む必要があるだろうなと思うわけです。
 それから、応用基盤と書いてございますが、アプリケーション、これは非常にいろいろありまして、大きく分けてデバイスのアプリケーションとパワーアプリケーション、英語ではLarge scale applicationというふうに申しますが、そういうものなわけですけれども、こちらのそのパワー応用で考えますと、いきなり線材をつくっても難しいので、まずは基盤をしっかりと検討する、確立する必要があるだろうと考えます。もう少し具体的に申しますと、新物探索ではいろいろな手法がありますが、常圧合成はもちろんですが、高圧合成があるわけです。今回の鉄系はどうもこれがかなり有効であるようですので、この辺は一生懸命精力的にやる必要があるだろう。
 それから、ケミカルな手法、薄膜、これは非常に難しいかもしれませんが、薄膜法、もちろん単結晶もありますが、こういうさまざまな合成技術を駆使して探索を進める必要があるだろうと思います。これがどこまで上がるか。もちろん日本がやらなくても、今、中国が一生懸命やっていますから、いずれこれは、この先がどうなるかというのは明らかになるとは思いますけれども、せっかく日本で発見された物質でありますから、気がついたらこの辺全部、物質特許を中国に押さえられていたというようなことは避けるべきではないかと思います。
 それから、アプリケーションの中の線材化でございますが、高性能線材を作製するということですけれども、まずはわからないことが非常に多い。新しい物質ですから。したがいまして、その線材化のための基礎的な検討を進める必要がある。いわゆるこれがパウダー・イン・チューブ法と言われる方法なのですけれども、パウダー・イン・チューブ法でしたら金属管の選定は、これはもちろん当たり前なのですけれども、結晶粒の結合性の評価ですね。結晶粒の向きをそろえる必要があるのか、ないのか。酸化物超伝導体、高温酸化物超伝導体はこれが必須になります。この新しい超伝導体は、果たしてこれはどうか。
 この2番と関係しますが、異方性の大きさはどうか。レイヤー構造ですから異方性は必ずあるはずですが、その大きさがどの程度かというのがぜひ知りたい。それから、上部臨界、これはある程度わかってまいりましたが、5番目は機械的特性、これは実用上すごく、非常に重要な特性になります。機械的に弱いとやはり使えないということで、具体的な特性はどうなのか。こういうことをきちっと押さえて、それから高性能化に取り組む必要がある。だから、まずはこの辺のところをやる必要があると思います。
 それで、それでは物材機構としては何ができますかということをもし問われるのであれば、まず、新物質探索でございますが、物材機構は新物探索で実績がございまして、一番大きな実績はビスマス系超伝導体の発見ということでございますが、そのほかにもこの高圧合成を用いまして幾つかの銅系の高温酸化物超伝導体を発見しておりますし、それから、最近ではこういうケミカルな方法でコバルト系の超伝導体という新しい超伝導体も発見しています。ということで、特に高圧合成では、これは得意な技術でありますから、今回の新しい物質につきましても十分対応できると私どもは思っています。
 それから、線材につきましても幾つかビスマス系ではこういう最強のマグネット、線材化を経てこういう実績がございますし、それから、MgB2(2 ホウ化マグネシウム)につきましては、これは新しい材料で比較的新しい。やはり日本で発見された材料なのですが、これについても世界最高の特性ということで実績がございますので、今回の新しい材料についても対応できると私どもは考えております。いずれにしても、まずはこういうマグネットとか、そういうのではなくて、基盤、基礎を固める必要があるという認識でおります。
 そういうことで、これは都合のいいあれですけれども、何かプロジェクトが立つのであれば、NIMSを核にしてこういうふうなことでとりあえずスタートをしてみるのも1つの方策であろうと私どもは考えます。これは今、実際に研究開発が進んでいる超伝導材料を並べてみたもので、今、3つございます。精力的に線材化研究が行われている超伝導材料は3つあるわけでございまして、ビスマス系とイットリウム系、この2つはいわゆる銅酸化物超伝導体。それから、MgB2(2 ホウ化マグネシウム)というのがございます。今回の物質がどうなるのかよくわかりませんが、もしこれが入ってきますと4つになりまして、4つのうちの3つは日本で発見された材料、こういうことになるわけでございまして、日本はこの分野、非常に強いと言えるかと思います。
 そういうことでもぜひこの辺のところは精力的に、これは応用でございますが、その前の段階として、この新しい物質がどういうふうに、鉄系がどういうふうに育っていくのかというところを新物質探索、その辺のところをまずきちっとやるということと、それから、線材化のための基礎基盤をやるべきではないか、そんなふうに考えております。
 大体、そんなところでございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 実はもう一つ、この関連のプロジェクト、JSTとしてどう推進するかというお話を伺った後で全体の質問に入らせていただきたいと思いますので、まず、熊倉さん、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、JSTの方においでいただいておりますので、この超伝導の新規物質の研究について、支援策として今後どんなふうに考えているのかについてプレゼンテーションを10分ほどお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【広瀬理事(JST)】
 JSTの担当理事の広瀬でございます。おくれまして申しわけございません。
 それでは、資料の4-3でございます。超伝導の新規物質の研究についてのJSTとしての支援策、この1ページ目は、今、熊倉先生のお話にありましたので省略させていただきます。細野先生の研究はJSTのERATO-SORSTの枠組みの中で得られた成果でございまして、私どもこれをできるだけ柔軟かつ緊急に支援加速をさせていただきたいと考えております。
 2ページでございますが、大きく4つの緊急加速を進めようといたしております。1つは、細野先生のERATO-SORSTの研究活動そのものを支援するということで、これは既に予算の増額等を進めているところでございます。
 もう一つは、細野先生の成果を踏まえまして、今、熊倉先生からお話がございましたけれども、これからどのようにこの新高温超伝導物質の研究を進めていったらいいのかということで検討会を開催いたしております。メンバーは後ろにつけてございますが、その検討の状況を踏まえながら、JSTとしての今後の研究支援というものを考えていきたい、取り組んでいきたいということが第2点でございます。
 第3点は、この関係する研究が国内外でいろいろな形で進められておりますので、国内シンポジウムと国際シンポジウムを早急に開催したいということでございます。国内シンポジウムは6月8日に、国際シンポジウムは6月28、29にそれぞれ東京で開催いたします。
 4点目でございますが、関連研究を迅速に加速・発展させるための緊急支援、これはまだ検討中でございます。先ほど少しお話の出ました京都大学の山中先生のiPS細胞の研究の支援、これを緊急的に私ども取り組んだわけでございますが、この超伝導の新しい物質についても緊急かつ柔軟に支援を加速することが重要ではないかと考えております。現在、考えておりますことは、新物質探索、物性測定、理論、応用検討、この4つを軸に研究支援をしていくということでございまして、今年度から、例えば1課題当たり年間数百万円~2,000万円程度のファンディングを立ち上げるということを現在検討いたしております。
 また、この新しい物質につきましては、革新技術戦略の中で取り上げられていることでございますので、平成21年度からは新しい事業展開を計画し、それにつなげていくということもできないかということをさらに検討をいたしているところでございます。この新しい物質につきましては、緊急に立ち上げていくということの重要性を踏まえて、今年度から研究を開始できるような緊急公募というものをぜひ実現をしていきたいということで、具体的な検討に入っているところでございます。
 また、その内容につきましても、熊倉先生のお話にありましたように、新物質探索から応用検討に至るまで並行してやっていくということができないかということを現在検討いたしているところでございます。21年度の新しい事業展開には、さらにしっかりした枠組みをつくり、それに結びつけていくということを検討したいと考えております。
 以上でございます。

【榊主査】
 まことにありがとうございました。
 それでは、2つのプレゼンテーションをお聞きした後で、皆様、いろいろご質問やコメントをちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。
 この4でお話しになられた年間数百万円~2,000万円程度の話は、即座に始めるような形のプログラムというふうに理解してよろしいのでしょうか。

【広瀬理事(JST)】
 はい。私ども戦略創造事業、競争的資金をいただいておりますので、今年度、公募の枠組みをできるだけ早く開始をするということで、今年度中に公募をして研究を開始していただくという枠組みを現在検討いたしております。

【榊主査】
 いかがでしょうか。横山さん、超伝導とかあれは以前からいろいろな形でごらんになってこられていますけれども、今回の新しいものの誕生と、それから推進ということに関してコメントをいただければと思いますけれども、いかがですか。

【横山委員】
 前回も少しコメントをいたしましたけれども、高温超伝導のエレクトロニクス応用ということで長年やってきたんですけれども、なかなか応用が見つからなくて、今、研究者、少しはいるんですけれども、縮小方向なんですね。もしこの新規の物質が、室温超伝導の可能性がほんとうにあるのなら、もう一度頑張ってやりたいと思っているんですけれども、今回、室温超伝導の可能性も含んでいるのかどうか、そのあたりちょっとコメントをいただきたいのですけれども。

【榊主査】
 熊倉さんのほうがよろしいかと思うんですけれども、なかなか答えにくい質問で。

【熊倉センター長(NIMS)】
 それはもう私は全くわかりません。今よりは高いものが出てくる可能性は非常に高いのではないかという、TC(テクネチウム)がですね。室温超伝導がどうなるのか、それは全くわからない。私自身はわからない状況で、ですから、やってみないとわからないということで、今のご質問に対して自信を持って答えられる人というのは、おそらくいないと思います。ですから、まずはやってみる必要があるのではないでしょうか。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 田島先生、超伝導はいろいろご経験して、少しコメントを。

【田島委員】
 どうコメントしていいかわからないんですけれども、この物質、私もやっています。これからどれぐらいTC(テクネチウム)が上がるかというのが、新しい超伝導体が見つかったときにだれもわからないですね。MgB2(2ホウ化マグネシウム)に関しては比較的早く、あれ以上TC(テクネチウム)は上がらないということがわかりましたけれども、この物質はまだわからないと思います。ただ、銅酸化物を超えるかどうかという、まあ、あまりいいかげんなことは言えないですが、私はちょっと難しいかなとは思っていますけれども、そういう問題ではないんじゃないでしょうか。多分、応用に使おうと思うと別の視点の有利な点があるかないか、つくりやすさとかですね。
 それから、エレクトロニクスでしたらジャンクションの性質がいいかどうかということがポイントになるんだろうと思いますので、その辺はもうちょっとやらないとだめですね。バルクのものも、まともなのができていなのですが、今、超伝導、中国からボンボン、ボンボン論文が出ているんですけれども、日本で追試できていないですね。細野先生のところも55K(ケルビン)で追試されたのかどうかわかりませんが、まだまだインピュリティーだらけのようなものをはかっているような感じはしますし、もうちょっと詰めないと何も言えない段階だという印象を持っています。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【田中委員】
 私はこの分野、そう詳しくないのですが、ただ、専門家の集まった会議がございまして、それをどう判断するかということ、2回ほどあって、私はそれに参加をしたのですが、どうも新しいものが含まれていそうであるというふうな印象は僕は強いように思ったんですよね。そういうことが1つ。
 それからもう一つは、こういうことは僕は千載一遇のチャンスだと思っているんですよね。こういうものを日本のグループがとにかくきっかけとして見つけるということはめったにないことだと思うんですよね。全く何もなくて室温超伝導を探せといったら、だれも何もしようがないけれども、一応、鉄ニクタイドという1つの方向が出されて、そしてそれの結果がきちっとしたサイエンスのエヴィデンスを持って発表され、そしてその情報が、まあ、どう流れたのか知りませんけれども、中国のグループにあっという間に流れて、それで向こうのほうからどんどん追試の結果が出ている。この状況の中で、ここに緊急に、関連研究を迅速に加速・発展させるための緊急支援とありますよね。これ、僕はとても重要だと思います。
 このような状況の中で、今、こういうプログラムを緊急支援という形で組めなかったら、それはやはり戦略的なファンディング機関としては、もしかすると後世、大変な後悔をすることになるのではないだろうかというぐらいに思いますよ。今は、これはうまくいくかどうかわかりませんけれども、こんなチャンスはめったにないと思うわけですよね。うまくいくかどうかわからないけれども、この状況、国際的な状況を見たら、とにかく詳細を検討中というよりも、早くやらないといけないのではないかと思います。どんどん出ているわけですからね。これについては僕はこういうふうに思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。

【横山委員】
 室温超伝導ができればほんとうに世の中が変わるので、この材料にこだわらず、室温超伝導をねらうというプロジェクトにしていただきたいなと思うんですけれども、いろいろな先生が可能性があると言い出されていますよね。あれをほんとうに確かめるようなものにしていただければというふうな感じを持っています。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。これは最初の高温超伝導の研究の1つの大きなブームの後で、酸化物系の材料の技術というのは非常に蓄積されて、十倉先生のお仕事も含めまして非常に多様に発展したということだけは確かで、そういう経験を生かして今度の材料を見たときに、短期間にあまり過剰なものを期待すると、これはある種、息切れがするという可能性がありますので、20年前に経験したことを1つ生かしながら、きちんと取り組んでいくことが多分大事で、JST、あるいは文科省はそういうことを重々お考えで進めていただけるのではないかなと思いますし、今おっしゃったように、日本が全く最初に種をまいたということですので、それをきちんとどこまで育つかを見定める。
 しかも、信頼できるデータで見定めていくということが非常に重要だと思いますから、適正規模のグループが適正な数だけ存在して、きちんと対応していくことにJST、文部科学省がスピーディーに対応していただいているのは大変心強く思いますので、今のメッセージをナノテク系、あるいは物質・材料系の人たちにいい形で伝えていただいて、社会のサポートも含めて確立していかなければいけないかなという印象を持ちました。
 岸先生、NIMSもしっかり取り組んでいただけるというようなことだったんですけれども、理事長としての決意のほどを少し。

【岸委員】
 頑張りたいと思います。ただ、ほんとうに常温、室温の超伝導の夢は高いんですけれども、言い出すと恥ずかしいというようなところがありまして。

【田島委員】
 すみません、1つよろしいですか。

【榊主査】
 どうぞ。

【田島委員】
 今の榊先生のお話で少し思い出したのですが、確かに銅酸化物の超伝導体が発見された後、その超伝導が実用化されたかどうかという問題、1つ大事なポイントですが、それと酸化物系ということで非常に材料の広がりが競争関係を含めて増えたというのが、まあ、副産物といったら、副産物とは呼べないぐらいに大きな成果があったと思います。それを考えると、この鉄・砒素系、鉄・リン系ですか、オキシニクタイドというのは、これ、鉄をニッケルを変えても超伝導になります。それから、コバルトだと今度半導体になるというふうに、このサイトをいろいろ変えることでいろいろな材料がまた見つかってくる可能性があって、そういう意味で超伝導とは別の意味で新しい材料開拓の分野に、1分野になるのではないかという期待はあります。そういう意味でも、これはきっちりやる必要があるのではないかと思います。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかに何かご質問。どうぞ。

【田中委員】
 もう一度少しつけ加えたいのですけれども、緊急という意味をやはり果たすべきではないかと思うわけですよ。じっくりやらなければいけないというのは、それは当然だと思いますけれども、今おっしゃられたような材料の広がりを考えると、それは挑戦するに値するものだろうと思いますけれども、知財という面からスタートダッシュ的に、せっかくきっかけをつかんだわけですから、緊急に、しかも、スピーディーにさっとスキャンをするというようなことは必要なのではないかと思うんですね。特許の問題、いろいろあるようですけれども、これは日本も大分、その特許のやり方も最近変わったようでして、そういうことに対応できてくるのではないかなと思うんですけれども、そういうような攻め方も同時にやらないとまずいのではないかと思うんです。

【榊主査】
 そうですね。

【田中委員】
 緊急というのだったら、ほんとうに緊急でやっていただきたいと思うわけですね。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。もしお許しいただければ、時間が大変おくれていることもございますので、後で馬越先生にお話しいただく話も含めまして、またジェネラルなディスカッションにさせていただければと思います。
 それでは、まず、とりあえず新規超伝導につきましてNIMS及びJSTの取り組みについてのご理解をいただいたということで、続きましてレアメタル代替材料・回収技術について、元素戦略を推進してまいったわけですけれども、このレアメタル代替・回収技術につきまして、一連の流れを進める上での基礎研究が果たすべき役割につきまして、NIMSの馬越理事にご出席いただいておりますので、この役割についてお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【馬越理事(NIMS)】
 NIMSの馬越でございます。
 この委員会で話題提供させていただくのは初めてでございますので、どういう性格かよく理解していませんので、ある意味、間違いの報告をするかもしれません。先ほどからずっと聞かせていただいていて、余計性格がわからなくなっているのですが、革新的技術戦略、これは総合科学技術会議が決められて、その中のテーマにこのような題名のものが入っているから、それに近い形で我々に提供しろと、私はこう言われて、それに従って提供するわけでございますが、そのほかに先ほど来のお話を聞きますと、大学の教務委員会で話すような内容を話しておりますので、一体ここは何をやるところかという感じがいたしております。
 それで、きょうは、私は平成19年度から、ご承知のように文部科学省で元素戦略というプロジェクトが走りまして、それを立ち上げる。それから、それを推進するに当たりまして元素戦略ワーキングというのをつくりました。私はそこの1つの委員でございまして、そのときに学協会の意見を広く聞きなさいと、こういうふうに申し上げました。そういう関係もございまして、文部科学省からの委員の1人としてご報告するというふうにお受けいただきたいと思います。所属は NIMSになってございますが、4月からだけでございますので、それでNIMSの理事としての責任を問われますと、岸理事長にしかられますので、その辺はお含みおきください。
 それで、前置きが長くなりましたけれども、そういうことでレアメタル代替材料・回収技術というのが大前提でございまして、資源問題を解決するって、我が国、資源がございませんので、これは社会的にも非常に問題になってございます。地殻中に存在する元素の量と、それと実際の市場規模というのが一致していないから、こういう問題が起こってくるわけでありまして、さまざまなレアメタルと、こうある。存在量が少なくても市場規模が小さければ、現在のところは問題になっていない。しかし、さまざまな製品開発をなさいますと、そのバランスが崩れる可能性がございますので、ある意味で、現在、非常に特定された元素についてやってございますが、果たしてそれでいいのかというのがございます。
 資源問題解決に向けて、これは平成19年から文部科学省では元素戦略、これは元素の振る舞いを深く理解し、科学的な立場からこういうことに注目してやっていこうと。極めて基礎的な部分になってございます。それのパートナーとして希少金属代替材料の開発、これは経済産業省さんが主体で、この場合は緊急のといいますか、戦略的な元素としてある程度特定の元素に注目して、それの使用量削減であるとか、代替金属の発見というような、こういう形でやっています。ただ、この量、片や非常に産業界に近いところ、片やそれをサポートする学術的な立場ということで、お互いに文部科学省と経済産業省が連携をとって、今のところ非常にうまくいっている部分ではないかと思っております。
 それで、そのときに、これは私たちの関係する学協会で議論したときに、元素全体の戦略を考える場合には減量戦略、代替、循環、これはリサイクリング。それのみならず、現実問題、例えば規制戦略というのも産業界の立場から見れば非常に重要であろう。ただ、我々は、こういうところを議論する立場にございませんので、主としてこのあたりかなと。それを原子、分子レベルから構造体ぐらいまでの非常に大きなレベルで、それぞれのミクロの構造、あるいは界面の制御であるとか、結晶の構造とか成分制御、あるいは元素に注目して複合機能の解析とか設計とか、そういう立場で議論をしてまいりました。
 そういうことを踏まえまして、これは私が伺ったところでは、経済産業省、環境省、文部科学省の連携によって革新的技術戦略として、このレアメタル代替材料・回収技術というのがかなり重要であり、これを推進する必要があるだろう。その材料の持っている機能を生かして製品に向かう。私が打ち合わせをしたときに、製品まで、とてもじゃない、文部科学省がやるのは無理だろうと申し上げたのですが、こういうことを3省連携で、ここには文部科学省だけではなくて、経済産業省とかそういう部分も並行しているのではないか。
 それから、この部分につきましては、元素戦略の部分で非常に基礎的な試みを19年度からやっている。ただし、実際にこの場合には回収技術とございますので、スクラップから新たな材料をつくったり、あるいはその元素を回収する技術というのもやる必要がある。これについてもやはり基礎的なアプローチ、先ほど申しましたように、現在は非常に特定された元素についてやってございますが、必ずしもその元素だけが戦略物質ではございませんで、将来的には豊富に存在すると思われている元素であっても、使用規模といいますか、そういうものが変化いたしますと価値観が全く変わってまいりますので、基礎的なことを押さえていく必要があるのではないか、そういう感じがいたしております。
 それで、文部科学省の課題としては、この材料をおつくりになった1つにはユビキタス元素であるとか、希少元素を置きかえる。それから、できれば合金元素フリーでのその特性を実現するようなものも何らかの方法で実現する。それから、その機能を使って、目的機能を実現する。ここぐらいまでだろうと。社会に説明するときは、もちろんこういう製品というイメージが必要でございますが、ここの担当はやはり経済産業省さんとか、他の省庁さんが連携してやるべきであって、できないことをここまで言うのは何ですから、この辺は点線にしているというのであります。
 それで、一方、スクラップに関して、スクラップの低品位原料使用を前提とした新たな機能開発ということでございます。具体的にこの課題設定の考え方でございますが、まず、合金元素フリー、ユビキタス元素利用による組織・成分設計、主として希少元素を使わないという立場でございますが、この場合は希少元素をユビキタス元素や同等の機能を発現する組織構造で代替する技術、これはダイレクトに書いてございますが、それで、希少元素の材料中での存在状態と役割を十分理解して、その役割を代替するような科学的な立場で代替元素を探索すべきであろうという、そういった立場で、これは現在、元素戦略での各プロジェクトでそういう立場でやっていただいてございますが、それをさらに発展させて、ターゲットを絞って製品まで結びつくような観点でやっていただければという感じがいたしております。
 もう一つ、スクラップ・低品位原料使用を前提にした新たな機能開発ということでございますが、これはよくリサイクリングとか言いますと、すぐ希少元素を何とかして回収しようと、こういう立場、まあ、それはそれで非常に重要ではございます。しかし、単純な精錬技術で、それを開発できる場合はそれは問題ございませんが、場合によっては、その不純物を十分、特定の元素を回収するということには膨大な経費が生じる場合がございます。場合によっては、それをつくるためにかえって溶媒等の廃棄物を大量につくり出す。こういうことがございますので、むしろ、そういう途中の段階で不純物を含んだ状態でも、その機能が達成できるような、そういうような合金設計とか新たな機能/性能開発をする必要があるのではないか。そういう立場でのアプローチもあるのではないかと考えております。
 それから、不純物を積極的に、それは不純物として見るのではなくて、それが例えば希少元素ではございませんが、例えば鉄の中に銅とか錫とか、トランプエレメントと言われているものが非常に加工段階で有害であるから何とか取り出そうと、本来、熱力学に全くとれないはず、理論的にとれないはずなのにさまざまなアプローチをした経験がございます。そういうものは必ずしも従来の鉄の加工プロセスで有害なだけでありまして、そのものが入っている、いわゆる低温での状態で必ずしも有害ではございませんので、それが残った段階、残しておいて、積極的にそれを使うというような、そういうような合金設計といいますか、材料開発の立場もあるのではないか、そのように思っております。
 それから、それで、各項目について少し、このあたりはそれぞれの元素が、その性質をどういうことが決定しているかというのを十分認識して、物性理論が先行した材料開発をする必要が、文部科学省の立場とすれば、そういうやり方が必要であろうと。それで、そのときの全面代替へのアプローチの仕方として、これは学協会で議論いただいたのを持ってきてございますが、その原子半径であるとかイオン半径が、その特性に非常に効いてきているのであれば、それと同等な元素に代替する。あるいは電子軌道が効いているのか、キャリアが効いているのか、そういうさまざまな、その実際に我々が手にする特性と、その本質は何なのかということを理解して、そういう立場から代替を考えていく。
 あるいは局所領域の構造、あるいは成分偏析であるとか、そういったものが効いている場合もございますので、そういう立場からのアプローチもあるであろうということでございます。一例を申し上げますと、例えば鉄系、金属間化合物における元素シナジー効果というのがございますが、これはそれぞれの元素、例えば銅とかマンガン、アルミとかいうのは、単体では非強磁性でございますが、これを組み合わせることによって、ホイスラー合金として強磁性になっています。その結晶の構造であるとか、その元素の組み合わせ等によって、本来、希少金属を必要としているような性質であっても、それをユビキタスの原子でもって置きかえてやることが可能であるということでございます。
 私、4月からNIMSに来ていますので、NIMSの宣伝も少しさせていただきますが、これは例えば鉄にマンガン、モリブデンとか、そういった元素を含めますと、もちろん非常に高強度で、かなり靱性の高いものができます。それをこういった合金元素を含まないで、非常に単純な炭素鋼でもって高強度、それで高靱性を達成したという、これは最近の須崎さんたちのグループの仕事、最近、『science』に掲載された結果でございますが、非常にナノサイズの組織にするとともに、その集合組織を制御することによって高強度で、なおかつ、従来の材料ではこのぐらいのところであったのが、破壊靱性が飛躍的に改良した。こういう方法であれば、その元素を使わないでも、その求められている特性を十分達成できるということでございます。
 これは東京大学の山口先生たちの仕事でございますが、ヘテロ接触とか、ヘテロ接合界面を利用することをもって、その界面近傍でイオンとか電子欠陥の濃度分布が変わってまいります。それを利用することによって従来にないような触媒反応であるとか、あるいはナノスケール局所電池を利用した新たな機能特性を開発していこうと。いわゆるナノスケールでの界面制御によって、そういった従来の白金等の触媒が果たしていた役割を代替できるのではないか、そういった非常にアカデミックな立場からのアプローチもしていく必要があるのではないかと考えております。
 一方、現在の元素戦略ではあまり注目していませんでした。まあ、どちらかというと泥臭い仕事でありますから、サイエンティストはこういうのをあまり好まないのでありますが、スクラップ・低品位原料使用を前提にした新たな開発でございまして、例えばこういうふうな人工物組成を活用した素材技術というものでありますが、例えばこれがこういったたくさんのエレメントを含んだ材料を取り出す場合に、同系の材料、この赤印のようなものが同時に抽出されます。この中からそれぞれの元素を分離して扱うというのが現在の立場でございますが、そういったものを無理やり抽出するのではなくて、例えば乾電池のマンガンとかございますが、これは両方含んだフェライトならフェライトとして、新たな用途開発をするような、極限まで抽出する必要はないのではないか。そういった立場での研究のアプローチも考える必要があるのではないかと思います。
 また、ある面でシリコン基板の高純度化を達成するときにインピュリティーが悪さをする場合には、全体をするのではなくて、ここに拡散ブロックのようなものを導入して、その拡散を抑えるという、そういう立場、現実にどの程度勝算があるのか、私は専門が違いますのでわかりませんが、そういうふうな大胆な発想でやる必要があるんだと。
 それから、人工循環物由来の機能物性というのがございますが、これはよくご存じのように、鉄鋼精度などのスラグですね。これは膨大な量が排出されております。そのときにシリカとか、ライムとか、アルミナとかというがございます。これはアモルファス構造でほとんど役に立ちません。これを合金元素を添加したり、あるいは熱処理をすることによって結晶質のものになりますし、また、ナノシートであるとか、ナノチューブ、あるいはこういったナノポアの材料を検出することができて、陰イオン吸着材料としての用途開発ができる。こういった、ほとんど組成は変えなくても、その構造を変化させていくことによって有害な物質が無害で有能な力を発揮するというような、そういう立場での研究が必要であろうと思います。
 それから、微量添加物質の循環技術でございますが、これは蛍光体にはさまざまなレアアースが使われてございます。しかし、その一方の蛍光体に使用されるレアアースというのはごく微量であります。しかし、それがないとつくれない。何とかして回収したい。こういうことでございます。ところが、それを溶媒でもって回収しますには膨大な複雑な精錬プロセスを要しますので、なるほど、全部回収できるかもしれませんが、その結果として膨大な有害な廃棄物が生産されるわけで、現実問題としてそんなものは国としてできない。そういうことがございます。それで、もう少し頭を使ってやる。分子認識膜、イオン液体、これは NIMSの有賀さんのアイデアでございますが、管ノウキの分子をここに溶媒の中につける。そうすると、溶媒の中で、このターゲットになる元素を捕獲します。
 それをゲルの上でこういうふうにとって、このゲルのまま回収する。これであれば1回の抽出でもって、そのターゲットになる元素が回収できて、原子マニピュレーションによる選択的物質回収と。これは研究段階ではございますが、さまざまなアプローチが必要であろうと思います。回収に必要な元素の量というのは、現時点では特定できません。先ほども申し上げましたように、市場規模が変化することによって、その社会的な要請というのは時々刻々変わってまいりますので、我々はその将来に向けてそれを準備しておく必要があるということでございます。
 もう一つの例でございますが、イオン液体による微量元素抽出でございますが、これは山口さんという方がやられておりますが、溶媒の中に例えば NaCl(塩化ナトリウム)を溶かします。培養して溶かしますと、これは溶解量が決まっておりますので、そのイオンがある原子を捕獲するにしても非常に微量な量しか捕獲できません。このNaCl(塩化ナトリウム)を800度ぐらいにしますと、これはイオン液体になります。この状態であればナトリウム原子、あるいは塩素イオンというのは大量に存在するわけでありまして、これが選択的にある物質を捕獲し、抽出、場合によっては分離すると、こういうことがございます。
 そういうようなこのイオン液体、この化学式、私にはよく理解できないのですが、こういうふうな化学式の物質をイオン液体という物質を使って、それで選択的に抽出する。こういうふうな従来のような精錬技術というような、工業的には非常に重要でございますが、そういう泥臭いものからサイエンティフィックな発想でもってアプローチすると、これが文部科学省らしいアプローチの仕方であろうと思っています。
 最後に、これは少し迷ったのですが、ここに出てくると、何のために出てくるのかなと思いながら、連携の施策と言っていますから、役割分担をちゃんとやってほしいと。確かに各省、総合科学技術会議のPTの委員、出ていましても、府省連携と言ってやっているのですが、連携はしております。しかし、どのパートをどういうふうにやるか。それぞれ別々に審査をして、選ばれた方は経済産業省との連携なんてあんまり考えないですよね。これでは国全体として、私も納税者の1人としてこれでは困る。ちゃんとやってほしいなという立場でございます。
 それから、革新的技術課題として推進する以上、これは多分、予算的には文部科学省さんが財務省さんに最終的には予算請求するわけでございましょうから、ここで、それでこういうテーマを実行して社会にこう役立てるんだと、こういう説明でやるわけでありますから、その実行に対して説明、ちゃんと責任を持てるような審査であるとか、推進体制であるとか、どこかのファンディング・エージェンシーに丸投げしたり、そんなことをやめていただきたいなと。我々も情報を提供する以上、これはこういうテーマであれば責任持って実行できますよと。先ほどの鉄系の新超伝導材料もそうでありますが、あそこに出す以上、できることしか出していませんので、それに対してちゃんとした形のものをやっていただきたいというのは、これはNIMSの理事としてではなくて、私個人の要望であります。
 以上でございます。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 こちらのほうも大変内容が盛りだくさんでしたので、いろいろご質問があろうかと思います。それで、まず議論に入る前に、この元素代替戦略につきましては、最初にできた委員会の委員長をお務めになった玉尾先生がおいでになる。少しコメントをいただけますでしょうか。

【玉尾委員】
 元素戦略的な視点からというか、このレアメタル代替材料というものとこの今回の回収技術というのは、これは全く違う観点のものですね。だから、代替材料をつくるほう、これはベーシックな研究でもって、それこそ元素戦略そのものの今までのアプローチの考え方だと思うんですけれども、この回収技術ということがここへ強調されて出てきているのは、これを見ると、最近よく言われる都市鉱山みたいな話に直結しているように思われますね。だから、そこのところは全く役割分担で違うものがここに一緒くたに入ってきているので、そういう意味ではこの3つの省の連携というような意味合いからいけば、前のほうの材料のほうは、むしろ文科省レベルの非常にベーシックなところの物質創製のところのアプローチが非常に強いように思われますし、もう一つのほうは、もう少し経産省レベルかな、環境省……。

【馬越理事(NIMS)】
 まあまあ、省庁のバランスは私の関知するところではございません。ただ、先生がおっしゃいました後者の従来のアプローチは、とにかくその元素を取り出そうというような回収と考えていますが、元素戦略的立場からすれば、回収しなくてもある程度で、それも使って別の元素をつくって、新たな機能を生み出せば、それは元素戦略的な立場で、それを再利用するわけですから、廃棄したものを回収して同じ物質をつくるという立場ではなくて、違う、その回収過程でさまざまな不純物、あるいは他の元素が入るかもしれませんが、そういうものを含んだ状態で、なおかつ新たな機能を生み出すような、そういう立場を考えたらどうだと。サイエンスをやっている人、おれはサイエンスをやっているんだというばかりじゃなしに、最終的には人類の幸せのためのやるのがサイエンスでありますから、そういう広い立場で元素戦略をとらえていただきたい、これが私の要望であります。

【玉尾委員】
 はい。そういうアプローチを強調されたと理解はしております。なかなか難しいところです。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 いろいろコメントやご意見があろうかと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【魚崎委員】
 というか、どうコメントをしたらいいのか。

【榊主査】
 それも難しい。

【魚崎委員】
 例えば幾つか例示が出ていますけれども、いっぱい引っかかるところが、分野が近いところなものですからあったりして……。

【馬越理事(NIMS)】
 それはありますね。はい。

【魚崎委員】
 そんなことを言っても仕方がないとは思うんですけれども、こういう例示って、例えば新概念と書いているのはどこですかね。ナノスケール構造設計、ヘテロ界面の革新的何とかというところがありますけれども、私、まさにこれに非常に近いところをやっていますけれども、どこが新しいのかちょっとよくわからなかったりしたりするんですけれども、こういう例示というのは。

【馬越理事(NIMS)】
 必ずしもそれをやるという意味ではございません。はいはい。そのときに、これは議論の過程でこういうふうなアプローチの仕方もありますねと。これがすぐ実用に供するかどうかというのは、私は専門が少し違いますので、いろいろ議論のあるところだろうと思います。しかし、あらゆる観点からのアプローチというか、実際にプロジェクトとして採択してするかどうかは別にして、議論をして、最終的には国の予算を投入する以上、ある部分に絞ってやるべきだろう。
 これは実は、1つには先ほど申し上げました元素戦略に関する各学協会からの意見聴取、それから、NIMSの元素戦略アウトルックというものがございますが、後半の部分は、それをおまとめいただいた原田幸明さんに、きょうのパワーポイントの図面はつくっていただいたわけでありまして、要はこの全体として、国としてやる必要があるのかどうか。まあ、ここだけでそれを決める立場にあるのかどうか、私はここの委員会の性格を知りませんので、何ともいかんとも申し上げられませんが、そういうことでございます。

【魚崎委員】
 だから、今まであんまり考えられていなかったようなアプローチとして例示をしてあって……。

【馬越理事(NIMS)】
 そうです、そうです、そうです。

【魚崎委員】
 だから、ほんとうにこれがエネルギー的にもどうかわからないけれどもということ。

【馬越理事(NIMS)】
 そうです。あくまで、あらゆる可能性を議論すべきだろうということで、1つのたたき台として私はご紹介申し上げたと、そういうことでございます。

【榊主査】
 ありがとうございます。
 これは先ほどの革新的技術の形で、そのプロポーザルなどを集めた場合、どういう観点でその採否を決めていくかというような話になりますと、先ほど玉尾先生がご指摘になられた、あるいは馬越先生がやられたようなことで、どの辺を大事にし、どの辺をマイナーなこととするかというあたりをかなり議論しておく必要があろうかなというような印象を持ちましたけれども。

【馬越理事(NIMS)】
 そうですね。実は私は19年度の、今、20年度ですが、19年度、それが20年度の元素戦略に関しては、実際に予算を立てて、それで実行に移す。公募の要綱も含めてワーキンググループをつくりまして、さまざまな議論をしまして、それで焦点を絞って実施しております。それと、その実行している段階でも評価委員会というか、アドバイスの委員をつけまして、その進捗状況を見ながらこちらがアドバイスしていく。そういう形で、私が関係した中では、非常に真摯に対応しているのではないかなという印象が強うございます。

【榊主査】
 そうですか。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。もう一つ、最初のところでお話になった市場規模の話、これはとても大事なポイントだと思うんですけれども、これはたまたま大きさの下に数字などが書いてあるんですけれども、参考までにこの数字はどんな……。

【馬越理事(NIMS)】
 私もこれをつくっていただいたので、市場規模のところは……。

【榊主査】
 金額。

【馬越理事(NIMS)】
 金額、100万ドルを。

【榊主査】
 そういうような感じで。

【馬越理事(NIMS)】
 はいはいはい。片方のほうは量でございます。地殻のほうは。だから、少し観点が違います。

【榊主査】
 わかりました。わかりました。しかし、これ、大事な1つの目安で、もう一つは、例えば電気自動車みたいのが大量に出てきますと、また、状況が大分変わりますよね。

【馬越理事(NIMS)】
 そうです。

【榊主査】
 ですから、未来に向けて技術予測を、どのあたりがやっぱり非常に変わりそうかというあたりも、多分、もう既に検討されておられると思いますので、現状での市場戦略と、それから、石油が枯渇した時期の1つのビジョンみたいなものというのも少しガイドラインとして……。

【馬越理事(NIMS)】
 それは必要でございますね。はいはい。私もそう思います。はいはい。

【榊主査】
 必要ですね。大変難しい問題だと思いますけれども、ぜひご検討いただいて、また別の機会にお話しいただけると。

【馬越理事(NIMS)】
 はい。

【榊主査】
 このあたりについては、遠藤先生、いろいろカーボン系の材料でやられている。少しコメントをいただければと思いますが。

【遠藤委員】
 大分おもしろい絵がたくさんあるんですけれども、ぜひこういったレアメタル、いろいろエネルギー技術も非常に重要だと思うので、そういう視点も少し入れていただきたいなと思っているんですけれども。

【馬越理事(NIMS)】
 はい。

【遠藤委員】
 今、よくわかりませんけれども、フリーダム・カープロジェクトというのは非常に熱心にやっていまして、未来型の自動車とか、その中にはレアメタルは1つのキーマテリアルズとして入っていますね。これは強力なモータとか、そういうのにも関係しているんですけれども、そういうエネルギー絡みのプロジェクト、テーマも入ったらもっとおもしろいだろうなという感じがします。

【馬越理事(NIMS)】
 はい。どうもありがとうございます。

【榊主査】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【田中委員】
 物質設計ということが1つキーポイントとありますよね。特に物性理論が先行した材料設計と書いてありますけれども、材料設計というのは言ってみれば機能を与えられて、それを満足するような元素の組み合わせとか、あるいは作製方法とか、そういったものを答えを出していくということだと思うんですが、そういう逆問題というのは一般的になかなかとれないわけですよね。

【馬越理事(NIMS)】
 そうです。

【田中委員】
 我々は昔、こういうことに関して、2年ぐらい前ですか、3年ぐらい前ですか、ワークショップをやったことがあるんですけれども、そのときに必要なものは物質感の非常に発達した人間がいるか、いないかというのは、まず決定的に重要であるということが1つと、それからもう一つは、いわゆる絨毯爆撃的にある程度サーッとコンビナトリアル的にやる手法、それを徹底的に改善していくということと、そういうことと、それからあとは、コンピュータの演算能力が上がってくればシミュレーションというものをあるところに絞って速くやっていく。
 そして、コンピュータの中だけで、ある機能だけに絞れば比較的短時間にいろいろなシミュレーションができると思いますけれども、そういうもの3つが合わさっていないとなかなかできないんだと思うんですよ。元素戦略というのは、言葉はいいんだけれども、一般的な手法はないし、それをほんとうに実現できるそういう人とか、アイデアとかなかなかないんですよね。それを今まで既に走っているわけですけれども、新たにこういうものをやったときに、そういった人材をどうやって探していかれるのか、また、あるのかどうかということも非常に心配になるんですけれども。

【馬越理事(NIMS)】
 はいはい。おっしゃるとおりですね。そういう意味でも、ある意味で、単純な公募じゃなくて、ワーキングをつくって、どういう組み合わせでやるかということを十分議論した上で、その募集なり何かをかけてやっていくという。それから、玉尾先生がいらっしゃるからよくご存じだと思うのですが、元素戦略というのは1つの物の考え方で、非常に幅広い分野のことです。この現実問題、課題は非常に現実的なことを挙げているわけですから、それのすべてをどのぐらいの予算をかけるか知りませんが、大した予算ではないでしょうから、そんなの全部できるはずもないので、最終的にはどういう物質なのか、どういう機能なのかというのを絞ってやるのかという議論をしてやらないことには、一般的な、何かやればこう出るだろうというような発想ではうまくいかないと私は思っています。

【榊主査】
 どうぞ。

【玉尾委員】
 今、田中先生がご指摘されたとおりで、どういうものが研究の分野でも出てくるのかということが見えない部分がたくさんあります。そういうことで、それを発掘しようというので、むしろ非常にベーシックなところは科研費の時限的な細目でしたか、を設定し、2年間、とにかくそこから発掘しましょうということに今取り組んでもらっています。
 それと、JSTのほうでもきっとそういうことで新しいプロジェクトを立てていただけるような取り組みをやっていただいていると思いますけれども、そういうことで、何でしょうね、今言われたような人材発掘、それから、テーマ発掘、そういうことが今まだ始まったところぐらいだというふうに思っています。ベーシックなところはですね。それとともに、やはりそこにあるような形で、むしろターゲットを絞って、レアメタルだというようなことで取り組むのと、2本立てというか、3本立てといいますか、そういうようなことで今進んでいると理解いただく必要があるのではないかと思います。

【榊主査】
 ほかに何かコメント、ありますでしょうか。
 それでは、時間の制約もありますので、この後半のお話はこれで終わらせていただきます。馬越先生、ありがとうございました。

【馬越理事(NIMS)】
 はい。どうもありがとうございました。

【榊主査】
 それでは、私の司会の不手際でかなりおくれておりますけれども、このお話はここで終わらせていただきまして、次に議題の4に移らせていただきたいと思います。議題4は、X線自由電子レーザーの整備計画につきまして、今後の進め方に関してご提案があるということですので、大竹課長のほうからお願いいたします。

【大竹課長】
 それでは、資料5に基づきましてご説明申し上げます。X線自由電子レーザー、ナノテク・材料の中に入れるのかどうかということで議論があったという話も伺っておりますが、ただ、今の科学技術基本計画の中ではナノテク・材料の中で、主としてナノテクに寄与するものと考えられていて、そのような分類になっております。
 それで、X線自由電子レーザー、ここにございますとおり、現在、平成22年に完成し、23年度から供用開始に向けて着々と建設をしているのですが、大型プロジェクトは事前評価、中間評価をやれということを国の評価方針で決められておりまして、3年から5年、建設が終わっていないにもかかわらず評価するのかという意見はありますが、3年から5年なので、一度、この機に建設の状況も含め、それから、まず、これは別に、道路と同じでつくることが目的ではなくて、つくった後、使うことが目的ですから、そういう意味での準備もきっちりなされているのだろうかということをチェックしたいということで、この評価につきましての作業部会をナノテクノロジー・材料委員会のもとにつくりたいということでございます。
 それで、設置期間は5月28日からということで、本日からということでお願いできればと考えておりまして、評価終了までということでございます。メンバーの方、私どもで検討した2枚目をごらんいただきますと、今申し上げましたようなことでございますので、例えばユーザーの立場で言いますと、最も期待されるナノテク・材料関係の先生方、それから、もちろんバイオということの利用も考えられておりますのでバイオ関係の方、さらには光ということでありますので光関係の方。そして、これは加速器も使っておりますので加速器の方ということ、あとは民間の方にもお入りいただいて評価できればと考えております。ということでございますので、主査候補は東大の雨宮先生にお願いしようかと思っておりますが、このようなことで設置につきましてご審議いただきまして、設置をご決定いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 今の大竹課長からいただきましたお話につきまして、ご審議をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。大変大きなプロジェクトですので、今お話しした建設の中途の段階で既に中間評価をしなければいけないということで、そういう面で全体を見渡した観点から評価をお願いできるような、この委員の方々が候補として選ばれているんだろうと思いますが、何かコメントがありますでしょうか。私もこの分野、あまり詳しくございませんのであれですが、種々の分野で非常に研究実績もあり、見識もあるような方々を選んでいただいていると認識しておりますので、こういう形で進めていくことについて、この委員会としては了承するということでよろしいでしょうか。では、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、今後のナノテクノロジー・材料委員会の進め方につきまして、資料6に計画が記されておりますので、ごらんいただきたいと思います。第9回目は6月18日に用意、計画されておりまして、そこにありますようにリーディング・プロジェクトの事後評価をするという計画でございます。皆様、何年か前に委員であられた方は覚えておいでだと思いますけれども、一番上にあります松下の山下さんの新しいプロセスを使った原理デバイスの開発でありますとか、人工臓器の関係の立石フェローのプロジェクト、それから、超高感度のNMRの超伝導の非常にユニークな材料を使ったプロジェクト。それから、 EUVで大阪大学の三間先生たちのプロジェクト。それから、最後に山梨大学の渡辺先生が進めておられます次世代型燃料電池プロジェクトというようなこと、この事後評価をさせていただくということでございます。
 それからもう一つは、これとは別に次世代のスーパーコンピュータ・ナノアプリケーションの外部評価委員会の報告ということで、魚崎先生にお願いすることになっております。これにつきまして、何か事務局からの補足といいますか、ご説明、高橋室長、ありますでしょうか。

【高橋室長】
 本日は一応、こういう形で予定しておりますということと、それから、このナノアプリケーションの報告は、今まさに作成中ということでございますが、18 日にはご報告できるのではないかということでございます。また、7月に入りましても、お忙しいところ恐縮ですが、こういった形で考えてございますのでぜひご協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【榊主査】
 今、お話がありましたように10回目は7月3日ということで、キーテクノロジー関係の中間評価、それからもう一つはナノテクノロジーを活用した環境技術に関する検討会ということの活動報告をさせていただきたいと思います。あとは概算要求、それから、最後に8月13日には研究計画・評価分科会への報告(案)ということになっております。お忙しいとは思いますけれども、よろしくご協力をいただきたいと思います。
 それでは、予定いたしました議事はこれでおかげさまで全部終わりましたが、最後に事務局のほうからアナウンスメントがありましたらお願いしたいと思います。よろしいですか。

【高橋室長】
 はい。

【榊主査】
 それでは、これで終わりにしたいと思いますけれども、何かご発言があればお伺いしますが、よろしいでしょうか。どうぞ。

【遠藤委員】
 最近、21世紀の基盤技術ということでエネルギー、環境、バイオ、医療、情報通信、この5つが重要な分野、ナノテクと材料にかかわっていると言われていますけれども、最近、米国で資源というのがここに、リソーシーズ、これが入ってきているんですね。リソーシーズのためのナノテクノロジー・材料技術というのは、これは非常に大事になってきていると思うんですね。と申しますのは、今の石油問題がございます。原油。これは食料にもかかわってきているんですね。どんどん原油が上がってきますと、バイオエタノールがこう出てきて、結果的にはトウモロコシやサトウキビ、どんどん私たちのフードも脅かしているんですね。
 おもしろい話があって、イチゴの農家が、農協がイチゴを集めて全国的に売ろうとするとケーキ屋さんが使うんですけれども、一緒にバターを持ってこないと買わないというんですね。今、バターが市場にないんですよ。一生懸命。ところが、国内でなかなか、牛乳も減っていますので、外国から輸入するとものすごく高いというので、食料も全部ナノテクにかかわっていると言っても過言ではないですね。と申しますのはエネルギー、エネルギーのためのナノテクというのは非常に米国も今一生懸命やっていますので、きょうの議論の中でリソーシーズがないですね。4パーセントしか自分で持っていませんので、これは将来、非常に大きな問題になると思うので、ぜひその分野にフォーカスしたナノテクノロジー・材料というのを議論の対象にしていただきたい。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 今のことを次回か次々回に少し時間を確保してフリーな議論をして、問題を提起していただくということにしたいと思います。きょうは馬越先生からコメントをいただいたように、ちょっと右左に行った部分も確かにあるんですけれども、ナノテクはそれだけいろいろな形で幅広いということとか、対応が教育から産業までということでございますので、次回か次々回に少しその観点で、もう少し広げていただいて議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 どうぞ。

【大竹課長】
 今の件ですが、そのような視点で私ども一部の先生方にはご協力いただいて勉強会をやっておりますので、またそういうところでの議論もまとまりました段階でご報告申し上げたいと思います。

【榊主査】
 そうですね。はい。

【大竹課長】
 まさに資源、環境、エネルギー、この辺だと思っておりますので。

【榊主査】
 ありがとうございました。
 それでは、これで散会にしたいと思います。どうもありがとうございました。

―了―

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