第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第3回)議事録

1.日時

令和6年1月19日(金曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省会議室(※Web開催)

3.議題

  1. 分野別研究開発プランについて
  2. 研究開発課題の中間評価について(マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)
  3. ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  4. その他

4.議事録

【高梨主査】 おはようございます。主査の高梨でございます。定刻となりましたので、ただいまより第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第3回を開会いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。前回、私、体調を崩して欠席になりまして、おわび申し上げます。菅野委員には主査代理として議長を務めていただきまして、ありがとうございました。
それから、本年は元日から大変な災害が起きていて、北陸の方々に心よりお見舞い申し上げたいと思いますが、今日は、高村委員は大変なところをオンラインで出席していただきまして、ありがとうございます。
では、始めたいと思いますが、本日は文部科学省研究振興局会議室、それから、オンラインのハイブリッド開催となります。私自身はオンラインで参加させていただいております。
それでは、事務局より委員の出欠及び本日の会議の流れの説明をお願いいたします。

【柴田補佐】 ありがとうございます。文科省事務局の柴田です。本日、事務局からの説明を担当させていただきます。
まず、出欠確認をさせていただきます。本日は上杉委員、関谷委員、納富委員、吉江委員、長谷川委員が御欠席と伺っております。また、永次先生が11時頃御退出と伺っております。また、マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業の永野POが、本日、中間評価がございますので、御出席いただいておりますのと、当省より参事官の宅間が出席しております。

【宅間参事官】 よろしくお願いします。

【柴田補佐】 出欠については、以上です。
次に資料の確認でございます。本日の議事は、議事次第のとおり3つございます。また、配付資料も議事次第のとおりですが、不足等ございましたら事務局までお申しつけください。また、議事の途中でも結構ですので、事務局までお知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。
次に会議の流れでございます。本日は議題1「分野別研究開発プランについて」において、事務的な修正の案がございますので、そちらを御確認いただきます。また、議題2「研究開発課題の中間評価について」では、マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業の中間評価について御説明いたします。また、議題3「ナノテクノロジー・材料科学の推進方策について」において、分野の動向等及び今後の展望の説明を踏まえまして、総合討議を行うことを予定してございます。また、会議の進め方についてですが、本日は高梨主査がオンラインで参加しておられますので、会議の進行上、御発言を希望される場合は対面で御参加いただいている先生方も挙手ボタンにて御発言の意思を表明いただけますと助かります。どうぞ御協力よろしくお願いいたします。
また、御発言の際は、議事録の作成の関係上、お名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。本日、特にリアルで参加されている先生方、目の前にマイク等ないのですけれども、そちらの丸いものが音を拾いますので、基本的にはこの会議室の音はその集音マイクで常に拾われている状態になっておりますので、よろしくお願いいたします。
最後になりますが、本日オンライン参加の先生方におかれましては、回線負担の軽減や雑音防止の観点から、御自身の御発言の際以外はマイクをミュートにしていただき、ビデオはオンにしていただくようお願いいたします。
以上でございます。高梨先生、お願いいたします。

【高梨主査】 どうもありがとうございました。
それでは、議題1の「分野別研究開発プランについて」に移りたいと思います。本件につきましては、まず事務局より御説明いただきます。では、事務局、お願いいたします。

【柴田補佐】 ありがとうございます。資料1-1に基づいて御説明いたします。こちらの研究開発プランですけれども、親会議である研究計画・評価分科会において研究課題の評価について、各委員会において研究開発プログラム及び研究開発プランというものを、あらかじめ作成の上で各事業の評価を進めていくこととされております。こちらの研究開発プランにつきましては、前期、第11期の際に一度お諮りして確定しているものでございますけれども、事業の進捗等ございまして、修正がありましたので、今回、お諮りするものでございます。
まず初めに1ページ目のところなのですけれども、前期のほうで事後評価を行いました元素戦略プロジェクト及びナノテクノロジープラットフォームにつきましては、今回、評価の対象となる研究開発課題から削除しているところでございます。また、瑣末ではございますけれども、各事業の略称を追記してございます。
次に2ページ目の帯状の表でございますけれども、アウトプット指標及びアウトカム指標について一部修正がございましたので、反映しているところでございます。
それから、帯状の表の4のデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトにつきましては、大変事務的な修正で申し訳ないのですけれども、中間評価の位置が少し間違っておりましたので、このタイミングで修正させていただくものです。
事務局からの修正の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【高梨主査】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に対して御質問や御意見がございましたら、挙手ボタンをよろしくお願いします。先ほど事務局からも説明がありましたけれども、私がオンラインで出ており、会場の様子がダイレクトに見られませんので、会場の方も御意見がある場合にはタブレットから挙手ボタンを押していただければと思います。よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。特に挙手ボタン、見られませんが、よろしいでしょうかね。この修正は軽微な、あるいは事務的な修正なので、特に問題はないかと思いますが。では、特に御意見・御質問がなければ、御了解いただければと思います。どうもありがとうございました。
それでは、議題の2番目の研究開発課題の中間評価に入ります。本件につきましては、令和3年度から実施しているマテリアル先端リサーチインフラ、いわゆるARIMについて中間評価を行うものでございます。昨年11月に外部有識者からなる中間評価検討会を実施いたしまして、中間評価票案を作成しております。初めに事務局より評価方法について御説明をいただきます。その後、具体的な評価の内容については、中山委員より御説明をお願いしたいと思います。中山委員には、本事業の中間評価検討会に本委員会から主査として御参加いただいております。また、質疑応答の際には必要に応じてARIM事業の永野POからも御発言いただくことがあります。
なお、利害関係の範囲については、8月に開催した第1回委員会の参考資料1、「第12期研究計画・評価分科会における研究開発課題の評価について」のとおり、研究計画・評価分科会と同様の範囲としております。本日、御出席の委員のうち、高村委員、馬場委員、宝野委員については利害関係に当たると考えられますので、評価に関わる御発言は控えていただければと思います。その他に利害関係者に当たる方はいらっしゃいますでしょうか。いらっしゃらないようですので、事務局及び中山委員より中間評価票案について説明をお願いいたします。

【柴田補佐】 主査、ありがとうございます。文科省事務局、柴田でございます。
それでは、こちら、中間評価の結果について説明方法を簡単に御説明させていただきます。まず、資料は2-1及び2-2を用いさせていただきますが、2-1及び2-2の途中まで事務局、私のほうから御説明させていただきます。特に資料2-2の中間評価資料の構成として、前半に中間評価委員会の名簿やナノ材委員会の名簿、事業の概要を記載してございまして、11ページから中間評価の本票になってございます。11ページからの御説明は中山委員にお願いしたいと考えておりますので、それまでの御説明を私から簡単にさせていただきます。
それでは、資料2-1を用いまして御説明をいたします。事業の概要につきましては、前回の会議で曽根PDのほうから詳細を御説明していただいておりますので、本日は簡単にその施策上の位置づけや、特に中間評価の中で御議論いただいた運営体制が立ち上がっているかどうかという意味で、その体制について私から御説明させていただきます。
まず初めに政策上の位置づけですが、マテリアル革新力強化戦略におきましては、下のほうにアクションプランとございますけれども、まさに良質なマテリアルの実データやノウハウの収集・蓄積、利活用の促進ということで、マテリアルDXプラットフォームの一翼を担っている事業でございます。また、関連しまして重要なマテリアル技術、あるいはマテリアル技術の戦略的な研究開発の推進という基盤を支える事業でもございますので、こちらも関連するというところで印をつけさせていただいております。
次に3ページ目をお願いいたします。ナノテクノロジー・材料科学技術研究開発戦略にも関連して、こちらも広範に関連してくるところではございますので、必ずしも赤枠や括弧でくくっているところに限るものではないのですけれども、特に関わってくるところというところで(3)に関連の施策に印をつけているところでございます。
続きまして4ページ目をお願いいたします。文科省のマテリアルDXプラットフォーム構想の中では、特に左下、印をつけてございます「つくる」のところに本事業、位置づけてございます。全国25の大学、研究機関の先端共用設備を整備、高度化したり、共用設備から創出されたデータを利活用可能な形で蓄積・提供したりという役割を担ってございます。ただ、関連する事業それぞれと一体的に進めていくことが特にこのマテリアルDXプラットフォーム構想の実現のために必須でございます。本日、中間評価の説明のときに少し中山委員からも補足いただく予定でございますけれども、一事業の最適化というよりも、関連する事業全体として一体的にどう進めていくかという観点も、重要になってございますので、よろしくお願いいたします。
事業の概要、5ページ目、一般的な概要説明資料をつけておりますけれども、後半に詳細がございますので、説明は割愛させていただきますが、令和6年度予算案では、データ収集・蓄積・構造化に関する人材の手当てを拡充しておりますので、右下に少し紹介してございます。
次のページをお願いします。事業に参画している機関と全国での分布をお示ししている地図でございますけれども、このように地域的な広がりを持って各地域での利用支援や、研究支援が可能な体制を組んでいるところでございます。また、センターハブとして物質・材料研究機構がその機能を担っており、東北、東京、名古屋、九州、京都にハブ機関を設置いたしまして、ハブ&スポーク体制で実施しているところでございます。
次のページをお願いします。事業の運営体制ですが、左下に運営体制の全体像、また、右に実際に参画いただいている有識者の先生方のお名前を記載してございます。少し説明させていただきますが、事業の実際の進捗状況管理や運営管理という意味で、年2回文科省が実施するマテリアル先端リサーチインフラプログラム運営委員会で各重要技術領域及びセンターハブ・運営機構の進捗状況を把握するとともに、運営機構が開催する運営機構会議や各委員会において進捗状況を把握・管理しているところでございます。また、2年に1回のペースでPD・PO等がハブ機関・スポーク機関を訪れ、意見交換を行うサイトビジットを実施し、取組状況を把握してございます。
次のページをお願いします。こちらが実際の実施体制をもう少し詳細に記載しているところでございますけれども、本事業はプログラム運営委員会、PD・POの下に運営機構がそれぞれ25機関を束ねる形で置かれているという実施体制を組んでございます。この25機関は、7つの重要技術領域ごとに編成されておりまして、それぞれにハブ、スポークという形で体制を組んでおります。また、それらのハブを取りまとめる形でセンターハブが置かれておりまして、25機関からそれぞれ人を出して運営機構を組織いたしまして、そこで意思決定をしていくという形を組んでございます。
次のページをお願いします。実際のその体制で実施しておりますARIM事業における技術支援の内容につきましては、大きく分けて6つございますが、特に右下の赤い部分、データ利用というところが前身のナノテクプラットフォーム事業から追加された、ARIM事業になって加わった取組でございます。
事業内容を紹介させていただきますと、左上から技術相談ですとか、機器利用ですとか、技術補助、あるいは技術代行といって機器を提供するだけではなくて、その技術の利用者の代わりに、その実際の作業をしたりということも行ったりですとか、右上の技術補助のように技術スタッフが実際の操作を支援するような、横につきながらやったりということもできますので、まさに自分のところで研究装置を持っていない方々のスタートアップを支援するような形になってございます。
次に中間評価の内容について御説明をいたします。まず、10ページ目が中間評価に参加いただいた委員の名簿になってございます。主査は本日もナノ材委員会に御出席いただいている、ナノ材委員会の委員でもある中山委員にお願いしてやっていただきました。
また、中間評価の評価項目ですけれども、11ページから12ページにございます。事業全体の実施計画、運営体制、資源配分の妥当性ですとか、2番、大学等の研究力強化ですとか、1から7までございますけれども、今回、中間評価では特に1について確認をしてございます。
12ページをお願いします。総合評価につきましては、1から7の評価を踏まえた上で総合的な評価を実施しておりまして、必要性、有効性、効率性の観点で評価をしてございます。
なお、事前評価時、ナノ材委員会で実施していただきました事前評価時の指摘事項とその対応状況でございますけれども、指摘事項といたしましては、中間評価の実施時期ですとか、実際に中間評価のときに何を見るのかということで指摘をいただいておりました。今回、関連するのは3年目の中間評価でございますけれども、こちら、データ創出・収集・蓄積としての基盤体制の方向性について確認するということになっておりまして、実際、今回、その観点で確認しております。その内容につきましては、この後、中山委員から御説明いただきますけれども、こちら、事前評価時の指摘事項として御紹介させていただきます。
最後は中間評価の評価スケジュールになりますけれども、こちらは御参考に御確認ください。この後、ナノ材委員会での中間評価票案が確定いたしました後には、計評分科会に報告いたしまして、そちらで決定となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からの説明は以上でございます。
続きまして、中間評価の実際の内容につきまして、中山委員からよろしくお願いいたします。

【中山委員】 中山から御説明させていただきます。資料の11ページから御覧いただければと思います。10ページまでは、今、柴田さんから御説明いただいた内容が再掲されている部分でございます。11ページが中間評価票の本文でございます。最初のページは上位施策との関係が書いておりますので、これも既に御説明があったところでございますので割愛させていただいて、その次からポイントを絞り、与えられた時間内で御説明します。
12ページです。課題の進捗状況につきまして、ポイントは真ん中の辺りです。約500名規模の専門技術人材が最先端の設備群を全国の産学官の利用者に提供することで異分野融合を促進し、付加価値や相乗効果を創出していること。また、他分野に先駆けてデータ利活用に関する具体的な基盤整備を進めていること。さらに、最先端の研究インフラを利用できる貴重なプラットフォームとなっており、全国的な共用体制の下で高度な技術支援とデータ利活用を支える専門技術人材の増強など課題解決のための支援の拡張が重要性を増してきている中での施策であること。それらが書かれています。
そして、前身事業に引き続き利用が定着・拡大していることが認められます。最後のほうですが、産業界からの利用については、事業化開発や実用化、製品化につながっている事例もあり、産業競争力につながるイノベーション創出にも貢献していると思われます。これらの成果は、前身事業からの共用基盤とノウハウがスムーズに継承され、データ収集の取組も含めて事業として発展・成長を続けている結果であると思われます。
次のページは全体の運営体制であり、既に説明されたことですので省略いたします。
13ページの下のほうは、必要性に関する評価でございます。14ページで、項目に沿って説明させていただきます。まず大学内の共用体制の整備につきまして、大学等における設備の重複投資を排除して最先端設備の有効利用を図るとともに、専門技術人材等の経験・知識が蓄積される体制を整備しております。一般の研究者、特に若手研究者にとっては、個別に設備等を導入することなく、最先端の共用設備が利用できるということで、成果の創出に大いにつながるものと思われます。
次が、若手を含めた人材の育成です。特に若手研究者が研究に必要な先端設備を活用して独自の研究アイディアを結実させることは、育成において非常に効果的であろうと思います。また、データ利活用を扱う人材の育成も重要で、マテリアル×デジタルの人材育成が進められております。さらに、一部の機関においては、高度な研究インフラを支える専門技術人材を対象に任期無しの雇用への転換を進めています。これは、関連する人材のインセンティブにつながり、キャリア開発に対して重要な役割を果たしており、こういうこともより促進されるべきであろうと考えております。もちろん評価すべき点と思われます。
次が、データ利活用についてです。他分野に先駆けて本事業の最大の特徴であるデータ利活用に関する取組を進めております。設備利用に比べてデータ利活用は試行錯誤の段階だとは思うのですが、今後は伸びていくと思われます。ここには書いてはいないですが、世界的に見ても、このようなデータ利活用と共用設備をしっかりとマッチさせるような取組は、我が国が最先端で進んでいるところであり、しっかりとエンカレッジすべきだという議論もございました。
次は15ページです。多くの研究者がデータを利活用するためには、具体的にどのような構造でデータを収集するべきかという好事例やユースケースなどを示すことを求められると思います。しかし、それはこの事業だけでは完結しません。本ARIM事業もその一翼を担っており我が国全体としてのデータ駆動型研究をさらに加速する、マテリアルDXプラットフォームの実現が求められます。また後でこの御説明はさせていただきます。
次に有効性の議論です。15ページの中ほどです。その一番下のほう、事業全体の実施計画についてです。PDが年度ごとの運営方針を明確にするとともに、サイトビジット等を通じて各機関と認識を共有しながら本事業を運営しています。また、柴田補佐から御説明があったように、運営機構と体系的な5つの委員会をシステマティックに構築し、しっかりと運営がなされているものと思われます。委員会の適切な運営が求められると思いまが、しっかりと運営されていると認識しております。
また、センターハブが全体の活動の下支えをすることになっており、これも堅実に遂行されています。共用事業にはこれまでの長い歴史がございますが、そのノウハウを受け継いでしっかりと運営されていると思います。さらに、PDやPOによるガバニング体制も非常に有効に機能していると認められます。
次の大学等の研究力強化は、重複も多いので、御説明は省略いたします。
次が教育との連携・イノベーションの促進です。産業界からの利用は着実に増加しており、本事業に関連した産学連携の事例も多くございます。
次が効率性です。事業全体の実施計画、運営体制の話でございます。前身事業からしっかりと移行されており、よく考えられた運営体制が構築されていることがここにも書かれております。次が大学内の共用体制です。これも国費の有効利用という観点から、極めて有効であろうということが書かれております。
17ページの(3)は、その上位施策への貢献状況で、説明を省略させていただきます。先ほどの御説明の通り、上位施策とはしっかりマッチしているという内容です。
18ページの最後のほう、今後の研究開発の方向性というところです。ここが一番大事なところです。本課題は、この我々の委員会としては継続とさせていただきたいと考えております。理由としては、これまで述べたことに加えまして、引き続いて本事業を加速することによって産業競争力の強化につながるイノベーション創出の加速への期待が高いからです。
最後に、本事業に対する指摘事項の8項目です。
新たに追加されたデータ利活用の取組はもちろん大事です。しかし、先端設備の共用プラットフォームとしてしっかりと運営されていることも大事です。データだけが強調されて、データをやっている人だけが評価されたり、逆に共用をしっかりやっている人にあまり目が向かなくなったりというのは避けなければなりません。その両方をしっかりとやっていただくということがまず大事だというのが最初の丸です。
次が、マテリアルDXプラットフォームを構築する個々の事業の部分最適化に陥らないことが大事であるということです。ARIMだけがよければいいわけでもなく、また、マテリアルDXプラットフォームというのは、DxMTというプログラムとか、あとDICEというデータ中核拠点がNIMSにございますけれども、それぞれが一体となって推進されなければいけないもので、1個だけよければいいわけではないのです。ここを注意しないといけません。要は1個の施策だけで完結しないということです。場合によっては、これら施策群のより上位のナノ材委員会的なところで見ないといけないのかもしれないです。そういう全体のウォッチとガバナンスが大事と考えます。
次が本事業の土台とも言える先端設備の更新です。すぐに先端設備は陳腐化してしまいます。場合によっては設備としての魅力がなくなってしまうかもしれない。魅力を維持するために、お金をしっかりとかけていくことは重要です。ナノテク・材料分野にとっては非常に費用対効果が高い施策でもあり、また、この事業の死活問題でもあるので、ここはしっかりと手当てすべきと思います。
次が下から2つ目の丸です。具体的にどのようなデータを構築して使っていくかという点です。ユースケースとかデータ利活用の好事例を示さなければいけません。ただし、これもARIMだけでできることではなく、むしろ、マテリアルDXプラットフォーム全体として示していかなければいけないし、DICEでためているデータを如何に使っていくかということもまたDICE側とも一緒に考えないといけないと思います。
次がデータ利活用の範囲とか利用ルールについてです。まだまだこういうところは議論の緒についたばかりで未整備な部分が非常に多いです。自分の作ったデータを本当に全部使われてしまうのかとか、いろいろな懸念を持っている方も多い。こういう点を如何に扱っていくかという運用方法のモデルのようなものについて、ここで作っていくというのも大事なことと思われます。
次は最後のページでございます。設備の共用とともに、民間企業や計測装置・加工装置の研究者によって、新しい研究装置の研究開発等に取り組むような新展開があってもいいと思われます。横断や融合を行い、その先ではスパイラルアップするように新しい研究機器を作っていく、生み出していくような機能も必要であるという議論もございました。
また、設備共用を契機としてデータ駆動型のマテリアル研究開発を全国の研究者に周知し、異分野融合をしっかりと加速してほしいというのが下から2つ目です。
最後のところでございます。本事業の運営体制は有効に機能していると認められますが、硬直的な運用にならないように随時改善していくことが期待されます。また、潜在的な利用者の開拓へ向けた広報活動、これもしっかりと行っていただきたい。また、専門技術人材は非常に大事です。それらの方々のキャリア開発とか、適切な評価の在り方もしっかりと考えて進めていただきたい。途中で任期の無い職に移行するなど好事例もございましたが、そのように大事な人材へのインセンティブもしっかりと考えて進めていただきたいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。

【柴田補佐】 ありがとうございました。
主査、こちら、御説明、以上でございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明、御丁寧に御説明いただきまして、ありがとうございます。その評価内容に関しまして、御意見、御質問がありましたら挙手をお願いいたします。いろいろ御意見があるかと思うのですが、いかがでしょうか。
では、折茂委員、よろしくお願いします。

【折茂委員】 東北大学、折茂でございます。よろしくお願いします。御説明、ありがとうございました。最後の御指摘があった18ページ、19ページ、それの最初と最後に関係するのですが、リサーチインフラを支えるデータ、あるいはデータ以外の装置を含めて、そういった人材が活躍された中で、例えば論文の著者に入るとか入らないとか、そういった議論がもしあったら教えていただきたいと思いました。
すなわち、研究者と、その研究支援の間が、ある意味でいい形でオーバーラップするとか、あるいはグレーになった中で、やはり研究支援してくださった、リサーチインフラを見てくださった方のその将来性を考えたときに、そういったアウトプットを出したときのオーサシップというのも非常に重要になってくるのではないかなと思うんですね。ただ、全て入れるとリサーチインフラ側の人材の方のオーサシップがすごく増えてしまうし、そこら辺の切り分けが若干難しいところがあるのかなと思ったのですが、何か事例があれば教えていただければ。

【中山委員】 ありがとうございます。極めてポイントを突く質問でございます。しっかりとしたインセンティブを携わる人に与えていくというところです。ただし、専門技術人材は研究者なのかどうかという非常に悩ましい問題もあり、多分、一番悩んでやっていたのがPOの永野さんかなと思いますので、多少補足いただけますか。

【永野PO】 本事業のPOをしております永野でございます。折茂委員、御質問、ありがとうございます。簡単にお答えさせていただきますと、本事業、研究者も含めまして、研究課題の支援をしていただく全ての人間というのが、860名規模でおります。そのうちの約500名が技術者に相当する方々で、この技術者、多分、日本で最大の技術者集団と言えるかもしれないのですが、利用課題の設備、運用サポート、支援に当たっている。
その方々はやはり最先端の技術を理解していただいて、研究課題に研究者と一緒に当たっていただくことが非常に重要ですので、彼らの技術スキルの向上に資するようなものであれば、積極的に学会等発表いただくということもしておりますし、中には次の技術開発にまで関わるような方まで出てきている。
そういう意味では、私どもとしては、その技術者の方々こそ、本事業の中核的な存在と言えますので、彼らのキャリアアップを含めて支援というよりも、研究者とともに課題解決を担うパートナーであるというような位置づけでやっていただきたいということで、やらせていただいております。

【柴田補佐】 高梨先生、すみません、文科省事務局からも補足、よろしいでしょうか。

【高梨主査】 折茂委員、よろしいですか。

【折茂委員】 もちろんです。お願いします。

【柴田補佐】 文科省事務局からも補足させていただきます。先ほどの技術支援の方々のインセンティブの確保というところで補足させていただきますと、利用課題の評価ですとか、支援スタッフの表彰みたいなところもやっておりまして、そういったところで研究の論文だけではなく、そういった支援の内容が評価されているんだよ、こんなすばらしいものがあるんだよというところも広く伝わるようにという工夫は事業の中で取り組んでいるところでございます。

【折茂委員】 分かりました。ありがとうございます。研究と支援がかなりオーバーラップしているところがありますので、支援をしていらっしゃる方も将来的には、もしかしたら研究に帰ってくるかもしれないということも含めて、どんどん積極的にリスペクトして差し上げるという仕組みがより重要になってくるかなと思いました。ありがとうございます。よく分かりました。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。微妙な問題ですけれども、貴重な御意見、ありがとうございました。
それでは、次に加藤委員、どうぞ、よろしくお願いします。

【加藤委員】 加藤です。ありがとうございます。今の話に関連して、私はユーザーの立場から発言させていただきたいのですけれども、私のところも学生、博士の学生とか、博士研究員のメンバーがこのARIMの装置を使わせていただいて、論文を書く段階になってどうしましょうかということを聞いたりしていて、今のところ、謝辞に入れさせていただいています。それで、論文の場合、本質的な寄与があれば著者に入れることはあるのですけれども、謝辞ということで、そういう謝辞というのを重視して評価するとか、もしきちっと皆で話す場を作っていただくと、今は割と曖昧な形になっていますので、その辺は検討していただく価値があるかなと思います。
それからもう一つは、そういう技術職員の方を見ていて、非常に教育的なところがあると感じています。例えば私のところのメンバーに、私は最先端の電子顕微鏡装置を教えられないわけですね。そうすると、うちのメンバーが通って、一生懸命、楽しそうにと言っては変ですけれども熱心にやっていまして、そういった教育的価値というのも非常に認めて差し上げるべきだなと考えています。そういった方々が、何百人いらっしゃる中で、高度な教育的スキルも持っておられる方いらっしゃいますし、そういうものもきちっとぜひ認めていただきたいし、ユーザーの立場で何か言ってほしいということであれば、ぜひ協力したいと思っています。委員でもあり、ユーザーの立場の意見です。
それからもう一つは、データの活用ですね。先ほど中山委員がおっしゃいましたけれども、データをどう利活用するかで、今、始まったところであるということで、先ほどの御発言で、自分のデータが、まだ発表もしていないのに、どう使われるか分からないという研究者、ユーザーとしては非常に不安なことを言われる場合もあるとおっしゃいました。例えばこのARIMといろいろなマテリアルDXプラットフォームを使って出た論文というのは、最近はオープンアクセスになっているんですね。それで、生データをサポーティングフォーメーション等でどこかに上げていて、ものすごい量のデータが上がっているんですよ。そのために国費の研究費がオープンアクセス代にたくさん使われているんですね。そのオープンアクセス代、誰でも読めるようになっているときに、それが全然整理されていなくて、論文に興味がある人が見れるようになっているんですね。
例えばARIMとか、こういったマテリアルDXプラットフォームの全体的なプロジェクトで、データが出て論文が出たときに、論文リストを集めるだけではなくて、オープンアクセスになっているようなときのデータとか、生データが上がっているのをこっち側から取りに行って統一化して体系化するというのもありではないでしょうか。というのは、オープンアクセスするためにこちら側の研究費を払っているところもありますし、そうすると、オープンになっているデータを体系化して活用するわけですから、非常に有効なのではないかと考えました。
以上です。

【高梨主査】 ありがとうございます。
これは中山委員というよりも、むしろ、永野POですか。

【永野PO】 加藤委員、ありがとうございます。再び永野からお答えいたします。
3点いただきました。まず、1点目の技術者の方に関してですけれども、研究課題として御利用いただくときの利用の形態によって、関わり方は違ってまいります。例えば機器利用という形で研究者の方が主体的に設備を御利用いただく。そこを若干サポートするみたいなタイプは、研究者中心の活用になるわけですけれども、最近非常に増えておりますのが、技術代行してほしいと。
つまり、サンプルを送っていただいて、ARIMの技術者に直接測定をして解析までお願いしたい、こういうような御利用タイプもございまして、そうなってきますと論文成果等々はぜひ共著で入ってくださいということを研究者の方々からもいただくケースがありますし、非常に機器のオペレーション部分的なところだけだったりしますと、そこは謝辞という形で研究者の方には考えていただく。こういうように利用のタイプによって分かれております。
それから、非常に高度な技術を持った方、スキルが高くて、まさに加藤委員からいただいたように、教育的な意味で、例えば装置の研修講義をしてほしいとか、そういう御依頼をいただくケースもございまして、こういうのは積極的に技術者の方々には対応いただいていまして、本事業としましても技術のスキルを職能名称を付与するという形で、ある種の認定をすることをやっておりまして、最も高度なタイプの方にはエキスパート認定を職能付与としてさせていただく。さらに高度専門技術者、こういうような形で非常に高度な技術を持った方を積極的にプレイアップして御利用者の方々にも信頼関係を作っていただくというようなことをしております。
最後、データですけれども、本事業では研究課題を通じて装置から生まれてくる生データをまず基にして一定のルールに基づいた構造化を自動的に行う自動データ構造化の装置、スクリプトを開発しております。そうすることによってメーカーが異なる、あるいは機種のスペックの異なるようなものから出てくるデータを一定のルールで全て並べて見られるような、そういうデータの貯め方をさせていただいております。これを最大2年間、データを生み出していただいてからの期間は、これは研究者だけがそのデータをお使いいただける期間ということで、その間に論文を発表いただく、あるいは知的財産を取得いただく。そういうことをして、私どもがエンバーゴ機関と呼んでいる2年を経過した後はARIMからデータを共用させていただくプラットフォームを提供いたします。
これが今、試験的にデータ提供のプラットフォームがオープンしたところでございまして、ここから様々なデータを利用したいという方に御利用いただけるようにしようと。いずれ論文という形で、公開となったものに関しては、これは今度、マテリアルDXプラットフォームの枠組みの中でNIMSのデータ中核拠点のほうから、さらにデータの共用という形で使っていただくということで、2段階の共用サービスを検討しております。
以上です。

【加藤委員】 具体的によく分かりました。ありがとうございます。それで、先ほどの独自にシステムで作られているというのはよく分かりました。ジャーナルの生データは、今のところは、そういったオープンアクセスみたいのとは関係はないという形でしょうか。

【永野PO】 はい。おっしゃるとおりで、オープンアクセスですが、ジャーナル生データの直接のリンケージは取っておりません。今後、今、ARIMの共用設備から生まれたデータを共有させていただくというのが基本認識なのですが、中にはARIMの装置を使っていなくてもたくさんデータをお持ちの方がぜひこのARIMのデータプラットフォームにデータを載せてほしいというリクエストもだんだん出てきております。そういったものに関しては、コストの負担等々の割合を調整させていただいた上で、ぜひ共用に資するものであれば、私どものデータの利活用のプラットフォームのほうに載せさせていただきたいなということで検討を進めております。
以上です。

【加藤委員】 よく分かりました。ありがとうございました。

【高梨主査】 ありがとうございます。
評価票の中にもありますけれども、「データ利活用の好事例やユースケースを示すことが求められる」という一文がありますけれども、そういう例がこれから示されてくると、より具体的になるのかなと思いました。
次、順番から言うと菅野委員ですが、宝野委員、今のに関わってということですか、お2人ともそうであれば、この順番で、手の挙がった順番で菅野委員からいきたいと思いますが。

【宝野委員】 先ほどの加藤先生の御質問に対するコメントなのですけれども、評価に関わりませんので……。

【高梨主査】 では、宝野委員、お先にどうぞ。

【宝野委員】 はい。分かりました。では、評価に関わりませんから発言させていただきます。データジャーナルの件なのですが、先生、御存じかもしれませんが、NIMSではSTAM Mというのをオープンアクセスで出版しておりまして、今、日本のデータ関係の皆様方にぜひ御投稿いただくように御案内しているところです。
それから、様々データ、貯めていただいて、例えばジャーナルに使ったデータを公開したいというとき、このデータ中核拠点のサービスの一環としてMDR――Materials Data Repositoryというのを作っておりまして、そこに実験データを頂くと、それに対してDOIを付与するようにしております。ですから、論文で使っていただいたデータをそこに入れていただくと、それがサイタブルな形で世の中に公開されるという仕組みになっておりますので、このARIMと併せて御活用いただければと情報提供させていただきます。

【加藤委員】 コメント、ありがとうございました。Science and Technology of Advanced Materialsは私も存じ上げておりますので、ぜひともよろしくお願いします。

【高梨主査】 重要な情報、どうもありがとうございました。
それでは、菅野委員、どうぞよろしくお願いします。すみません、お待たせしました。

【菅野主査代理】 御説明、どうもありがとうございました。今の加藤先生の質問と全く重なっているのですけれども、データを中核拠点に、どこにどれだけ、いつまで貯めるかというきちんとした議論がなされていて、それが皆さんに分かるようになっているかという点です。細かいことは、もうないのですけれども、装置が吐き出しただけでなくて、ほかのものを取り込むとなったときに、いつまで貯めるか、いつまでキープするかというのは、多分、大問題になると思います。努力してせっかく貯めたものを破棄してしまうというようなことにならないような仕組みというか、それが多分重要で、これからのDxMTも含めての検討課題かと思います。
2番目は、オープンアクセスで、今も御説明いただいたのですが、文科省でも成果のオープンアクセス化の委員会があります。それとの連携があるのかどうか。今のところ、全くなさそうな感じでしたので、今後の検討課題かと思いました。
以上です。

【高梨主査】 ありがとうございます。
これも永野POですかね。

【柴田補佐】 すみません、高梨先生、文科省事務局ですけれども。

【高梨主査】 柴田さん、どうぞ。

【柴田補佐】 事業に閉じることではないので、文科省のほうから回答させていただければと思うのですけれども、よろしいでしょうか。

【高梨主査】 はい。どうぞ。

【柴田補佐】 菅野先生、御質問、ありがとうございます。どこにどれだけ、いつまで貯めるのかというのは非常に重要な検討課題だったと思っております。ARIMのほうは少なくとも最初に装置の利用をしていただき、データ登録をお願いしますとお話をするときに、2年ぐらいのエンバーゴ期間がありますよとか、データ登録のときのルールというのは、ユーザーの方に御説明をして御理解いただいた上で登録という仕組みをとっております。それ以外のところは、おっしゃられるように、どのようにデータ、様々な研究者の方、研究プロジェクトなりから出てきたデータをどういうふうに貯めていくのかというのは、まさに文科省のほうでもこのマテリアルDXプラットフォーム全体の構想の中で、少なくともマテリアルに関わる部分というのは議論していく課題だと思っております。まだ、検討をしているところですので、非常に重要な御認識を改めて今日いただいたというふうに事務局でも理解しておりますし、宿題と思っておりますので、検討を進めていただければと思っております。
また、オープンアクセスのほうとの連携については、今、NIMSのほうで進めておられるデータ中核拠点の構築の取組のほうでNIMSとの連携みたいなところをもう少しお話しておりますし、それぞれに分散してあるデータを一番有効活用していける形を得られることが一番いいことだと思っております。それは、文科省の中でもナノ材担当参事官付と情報担当参事官付で分かれているようなところもあるので、意思疎通しながら進めていきたいと考えております。よろしくお願いします。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。

【高梨主査】 ありがとうございます。よろしいでしょうか、菅野先生。

【菅野主査代理】 はい。ありがとうございます。

【高梨主査】 そろそろ時間が押してきているんですけれども、大変貴重な議論でした。評価票そのものに関して特に御意見がないようでしたら、よろしいでしょうかね。
実は私、1点だけ評価票については申し上げておきたいことがあって、これ、まず中間評価で、しかも、まだ本当に始まったばかりのところの中間評価なので、評価自身がまだ定性的なものでの評価が求められているという状況だと思うんですけれども、中に定量的なものも出すと、よりいいものであれば、もっと定量的なものも、はっきりしているものがあれば出していけばいいと思うんですね。
その中には、数が出ているものもあるのですけれども、先ほどの例えば技術者の任期のない雇用に移行した事例とか、言葉では書いてあるんだけれども、例えばこういうのは、少し定量的なものを出せるのかどうか。出すのが適切かどうかというところも含めて検討が必要ですが、幾つかもう少し定量的なものも出してもらったほうがいいかなというところはあります。それが求められているわけではないので、私も特に定性的な評価を否定をするつもりはないのですけれども、いかがでしょうか。これは中山委員か、永野POか、どちらでもいいのですけれども。

【柴田補佐】 高梨先生、すみません、文科省の柴田ですけれども、こちらは文科省事務局から回答させていただきます。

【高梨主査】 はい。

【柴田補佐】 定量的な部分については、一部11ページ、中間評価票の11ページに紹介させていただいているのですけれども、今、先生がおっしゃられたようなキャリアアップ支援の取組の内容について、もう少し分かるようにとかという指標について、実は令和4年度から集計を、事業全体での指標の集計というのを始めてございます。そちらが、推移で御覧いただけるような形になっておらず、かつ、前身のナノテクノロジープラットフォーム事業のほうでやっていたものではないので、数値的にこれが多い少ないとか、進んでいるとかという議論に今回はそぐわないということで、あまり定量的なものを今回お示ししていないところがございます。
ただ、次回の議論に向けてですとか、事業内で進捗を把握する上で取り組んでいく際には、例えばデータの登録だったらデータの登録数だとか、その利用課題件数だとか、それこそどれくらいの人が関わっているかみたいな話というのは、まさに定量的なところを見ながらやっているところでございます。今ご指摘いただいた、キャリア支援のところの書きぶりで、もし書けるところがあれば少し本文に追記できるかどうかというのは、この後、事務局で検討して御相談させていただければと思いますし、今後の中間評価等では、もう少しここの定量的なものを示せる部分も出てくるかと思います。ただ、一方で数字だけで測り切れない事業でもございますので、そこは定性的な指標と定量的な指標をどう使っていくかというのは、引き続き御相談させていただければと思いますので、よろしくお願いします。

【高梨主査】 ありがとうございます。

【中山委員】 中山から1つだけ追加でお話しさせていただいてよろしいでしょうか。

【高梨主査】 どうぞ、どうぞ。中山委員、どうぞ。

【中山委員】 補足でございます。11ページは、支援件数とか、収入とか、論文数とか、よくある指標はあるのですけれども、この事業は利用支援件数というところでかなり飽和に近いところがあり、これ以上伸びているかどうかという評価ではなくて、むしろ、どれだけ質の高い支援をしたかということが問われるところです。
利用料収入も、企業による利用での高単価を期待するとか、そういうところの伸びはあるかもしれませんが、大学の先生がすばらしい研究で使うというのは大変ありがたいことで、利用料収入をガツガツ延ばしていくというフェーズではないと思います。論文数もより質の高いものをどれだけ産み出したかということを考えなければいけないので、伸ばすフェーズというよりは、そういう深めていくフェーズに移行しているという印象を持っております。補足でございました。
以上です。

【高梨主査】 分かりました。ありがとうございます。
11ページの指標は、数は今も出ているので、私はそんなに気にすることはないのかなと思っていたんですけれども、むしろ、ほかの、先ほど言った技術者の任期なしの移行事例とか、そういうことで何かアピールできるものがあれば、定量的なものがもう既にあってアピールできるものがあれば、出してもいいのではないかなという、そういう意味で申し上げたので。

【中山委員】 これから伸びていく指標は見つけてしっかりと書いていくというのは非常に大事なことだと思います。そのとおりでございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
あと、時間がもう来ているんですけれども、とても細かいことですけれども、実は12ページ記載の数字が少し気になったんですけれども、非常に細かいことで申し訳ないけれども、利用件数2,536件とあって、これが5月時点は2,529件とある。これは、その終わった年度ですぐに件数が決まるんじゃないんですか。その後で、また9月時点でこうなったというのは、言い換えれば翌年度になって少し増えていくというのは、ちょっと違和感があったんですけれども、これはわざわざ書いておく必要あるのかなと思いました。評価票にこういう書き方をするのでしょうか。

【柴田補佐】 高梨先生、すみません。そちらは完全に事務的なところです。こちらの研究計画評価の中間評価の指標のP11の一覧のアウトプットがございますけれども、こちらが各省庁でやっている行政事業レビューシートの数値をそのままここに引用するというルールになってございまして、5月時点の集計になってございます。それで、令和4年度、2529という数字がオープンになっていて、ただ、実態としては、この2,536件です。

【高梨主査】 ずれてしまったんですね。分かりました。

【柴田補佐】 ここは、数字としては2536という数字が令和4年度の最終的な数字なのですけれども、行政事業レビューシートとのずれを説明するためにここに記載しております。失礼いたしました。

【高梨主査】 はい。分かりました。ありがとうございます。

【柴田補佐】 ありがとうございます。

【高梨主査】 はい。どうも、すみません。
すみません、私も何かつい細かいことを聞いてしまって、大分時間が過ぎてしまいまして、評価票に関して特にあとはよろしいでしょうか。何か御意見があれば。特にあればと思いますが、特になければ、現状特に大きな修正という必要性があるということではなかったと思います。ただし、私が少し申し上げた、定量で出せるものがあったらどうですかということで、もしアピールできるものがあれば検討していただきたいと思います。もし修正した場合には、その修正は私に一任いただくということでよろしいでしょうか。
特に御異存がなければ、そういう形で進めさせていただきます。この中間評価票案に関しましては2月以降、たしか2月15日ともう決まっていたと思いますけれども、研究計画・評価分科会においてナノテクノロジー・材料科学技術委員会として私から報告させていただきます。よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。
それでは、続いて議題3に移りたいと思います。「ナノテクノロジー・材料科学の推進方策について」でございます。本日はトヨタ自動車株式会社先端材料技術部長である平田委員及び物質・材料研究機構の理事長である宝野委員よりそれぞれナノテクノロジー・材料科学技術分野の動向等を御説明いただきます。その後、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について総合的な討議を行いたいと思います。
それでは、まず平田委員からナノテクノロジー・材料科学技術分野の動向等について御説明をお願いいたします。

【平田委員】 では、平田より資料を投影させていただきます。これで共有、映りましたでしょうか。それでは、平田よりお話をさせていただきます。お時間、ありがとうございます。トヨタにおけるマテリアルズインフォマティクスの取組を御紹介いたします。まず初めに背景です。私たち、様々な電動車両の動力性能、環境性能に関わる部品、例えば排ガス浄化触媒、モーター、パワーコントロールユニット、電池、FCなど、最近では水素、カーボンニュートラル、人工光合成、ロボットやパーソナルモビリティにつながる材料の研究を主に行っております。私たちの仕事の目的の1つ目は、人類の永続的繁栄に資する新奇な材料、今まで地球になかった材料を創製に世に出すこと。2つ目は、材料の新しい用途、他の用途、多くの用途への展開です。この部分が本日の主な話題です。
これはあくまでも個人の感想ですが、日本は技術立国の国にもかかわらず、トヨタだけでなく、日本全体として海外との相対的な技術力が年々低下、経済も低下していると感じています。このような右肩下がりの状況を右肩上がりに変える。まずは全ての製品の基本である材料の研究開発から変わる、材料から技術立国日本を復活させたいと考えています。そして、これは私の思いですが、Japan as №1を取り戻すことを目標に仕事を進めています。ここに私たちが考えているマテリアルズインフォマティクスの適応対象を示します。本日は、これらのうち、この部分、材料探索に話を絞ります。
次に、材料の類似性と、私たちが材料宝の地図と呼んでいるものを御説明します。これは今までの私たちの材料研究のイメージです。今までは材料用途ごとに別々に研究を行ってきました。しかしながら、材料をよく見てみると、共通性があります。例えば初期の燃料電池車の燃料タンクに使われていた水素吸蔵合金はハイブリッド車のニッケル水素電池にも使われており、材料の多用途での活用はあり得ます。また、電子部品、セラミックスコンデンサに使用されてきたチタン酸ストロンチウムは、近年、太陽光で水を分解し、水素を作る触媒としても着目されており、材料の多用途での活用事例の1つと言えます。さらにナトリウムイオン電池の正極材料と排ガス浄化触媒の材料の結晶構造は非常によく似ています。だったら、いっそのことこんなふうにもっと広く融通し合えないかと考えました。
材料の性質は何で決まるか。考えてみると、材料は原子でできており、材料によって含まれる原子の種類、並び方が異なります。さらに原子ごとに電子の数、エネルギーなど電子状態が異なります。材料の性質は、材料中の原子の種類と並び方、原子配列と電子の数とエネルギー分布を示す電子状態密度でおおよそ決まりますが、分かりにくいので分かりやすく表現する方法を考えました。
原子配列を知るためにXRDスペクトルを測定します。そしてスペクトルを数値化、似ているものを近くに、似ていないものを遠くに配置し、類似度マップを作成します。用途を変えて材料の類似度マップを作るために、実際に私たちの材料データを集めてやってみました。約6,000種類の触媒材料、6,600種類の電池材料、4,700種類の磁石材料、600種類の半導体材料。そしてこれらのマップを重ねると、これが結果です。色の違いは用途の違いで、プロットされた点が入り混ざっています。このことは、これらの材料は何らかの共通性がある、材料データは共通して使うことができることを示しており、私たちは、これを「材料宝の地図」と名づけました。材料中でどんな原子がどんな位置関係に並んでいるかを示すXRDスペクトルを次元削減し、原子配列版の材料宝の地図を作成しました。同様に電子状態に関して、例えば電子状態を反映する光電子分光、XPSスペクトルから電子状態版の材料宝の地図を作ることもできます。
次に私たちがやりたいことを御説明します。「そんなのトヨタの技術がショボいだけでしょ」と言われるかもしれませんが、材料研究、まず当たりません。材料の最終製品での使い方、使われ方をあらかじめ知っている私たちが用途を狙って研究しても、新しい材料を100種類合成した場合、従来品よりも性能が優れる材料は5種類程度、部品・製品で使っても性能が優れる材料は1種類程度と技術使用に耐え得る材料はごく一部です。このことに加えて、バックアップの材料も必要ですし、経済的合理性に基づく判断の結果、研究から生み出された材料が実際に製品に使われる確率は1%にも及ばない。1%の数分の1になってしまうのが現実です。こんな現実でも卓越した製品、新奇な製品を生み出すためには、材料のブレークスルーは必須であり、世界との競争に勝ち抜くためにどうするか、非常に大きな問題と考えています。
人の手で研究開発を行ってきた今までよりも、使える材料を増やす取組として機械化やAI活用で効率を上げれば検討材料が増え、使える材料が増えるかもしれません。さらに増やすための取組として日本中と協力、材料の種類をむちゃくちゃ増やせば何か当たるものが出てくるかもしれません。この部分に関して具体的にやりたいことは、活動に賛同していただけるメンバーで材料の構造データを持ち寄って、メンバー間で相互利用可能な材料宝の地図を作る。そして、この材料宝の地図を使って材料所有者と材料ユーザーをマッチングし、社会実装につなげることです。なお、相互利用する地図に関しては、やりたい人に御参加いただく。材料保有者が地図に掲載する材料(データ)を選ぶ。論文などで公知になっているサンプルデータでもオーケー、データは無償で御提供いただくことを考えています。
ここからはデータ相互利用の考え方、協調と競争に関する話です。データ相互利用の考え方です。材料研究者の皆さんは、材料を記述するデータ、性能データなど様々なデータを集めています。これらのうち、相互利用したい部分は、材料を記述するデータのみで、性能データは研究者ごと、研究機関ごとで閉じた情報、内緒でオーケーです。Step1として、賛同者で協力、材料を記述するデータから材料宝の地図を作ります。この材料宝の地図は、先ほどは便宜上、用途ごとに色をつけていましたが、実際は用途が何か分からない。白黒の地図です。この材料宝の地図の各打点は、スペクトルデータを次元削減した座標値をプロットしてあるだけですので、材料の化学式や組成式も含んでおらず、ひもづく情報は連携するための材料保有者の連絡先のみで、一種の暗号化されたデータになっており、機密性も高いと考えています。
材料宝の地図の使い方は、まず、材料の性能や物性を記述する式を作ります。一般的に材料の性能は、材料中の原子配列と電子状態、さらに表面・界面の状態など多くのパラメータを使ってこのような式で書くことができると考え、この式を私たちは魔法の方程式と名づけました。もちろんパラメータが多いほど正確性が増しますが、多過ぎると大変なので、ここでは「えいっ」と思い切って、こんなふうに単純化します。私たちの目的は簡便に速やかに産業利用することなので、まずはこれでオーケーと考えています。それぞれの研究者は、自身の材料データを使って地図を作ります。次に性能と材料データを結びつける関係式、魔法の方程式を作ります。イメージとして地図上にプロットすると、こんな感じです。この魔法の方程式を作ることができるのは、性能データを知っている本人だけで、他人には魔法の方程式は作れませんので、どなたにも安心していただけると思います。そして、この魔法の方程式を材料宝の地図に重ね合わせて材料を探索します。マテリアルズインフォマティクスというと、未知材料を探索するイメージもありますが、そこまでは求めていません。暗号化された材料カタログからよりよい材料を選ぶイメージです。材料が見つかれば、連絡先が分かりますので材料保有者にコンタクトして、その後、進め方などを協議し、合意ができれば研究実務に移行します。
私たちの考えをまとめます。私たちの考えは、よりよい製品をより早く、より安価に、より多くのお客様に届けることです。したがって、企業、大学で普通に測定されているデータを使う。企業のエンジニア、学生さんが使いこなせる方法、当たらずも遠からずの結果が得られればオーケーで、参画のハードルを極限まで下げることがポイントと考えています。
御説明したこのやり方、考え方は分かったけど、本当にできるのとの疑問もあると思います。これに関しては、排ガス浄化触媒を対象に材料宝の地図と魔法の方程式を使って、性能の優れた材料が見つけられる感触を得ています。
協調と競争の考え方です。研究対象は同じでも、大学、研究機関、企業において作っている材料、性能データの評価法、データの精度などがそれぞれ異なります。したがって、それぞれの研究機関で作られる魔法の方程式は、それぞれ異なります。宝の地図は、みんなで相互利用する、協調する部分。一方、魔法の方程式はそれぞれ異なり、宝物が見つけられるかは、魔法の方程式の精度、技術力次第です。ここは競争する部分と考えています。
仲間づくりに関してです。私たちの取組は、仲間を増やす。仲間が増えればデータが増える。データが増えればマッチングが増えてチャンスをつかむ、一山当てられる可能性が増える好循環を広げていけると考えています。この取組を広げるため、学会での講演や大学、研究機関、企業訪問、お話を通じ、私たちと一緒に取り組んでいただける仲間づくりを進めています。そして、この活動を通じて材料から技術立国日本を復活させたいと考えています。
最後に、国に期待することです。今までの話と毛色は違いますが、国、文部科学省には企業では到底できない広い視野、長期目線での基礎力づくり。企業では想像し得ないぶっ飛んだ研究を期待しています。最近、「えっ、マジ!こりゃまずいぞ!」と思ったこととして、昨年12月、担当理事としてたまたま参加した日本化学会の委員会で、理系を目指す中高生の割合が二十数%、先進7か国中、最下位。アメリカや中国の半分くらいとの話を聞きました。
現実世界で既に起きていることとして、トヨタの場合、自動車の生産は日本と海外の割合が3対7、もう既に海外が主体です。研究開発は今のところ日本が主体ですが、日本人の理系人材不足、米国、欧州の提案はぶっ飛んでいて面白いということもあり、研究開発の海外シフトも確実に進んでいます。そのうち日本の研究開発はなくなるかもしれません。そうならないためには、将来を支える能力の高い人材確保が必須であり、子供たちが大きくなったら科学者になりたい、親御さんも将来、子供たちには科学者になってほしいと思ってもらえることが大切です。そのためには、子供たちが科学に興味を持てる教育、研究職が憧れの職業になる。理工科系の先生方の給与アップ、例えば教授年俸1億円など夢も必要でしょう。起業の原資にできるかもしれません。国際卓越研究大学の費用から出してはいかがでしょうか。優秀な研究者も集まると思います。理系人材が増えれば、優秀な人材が増える。優秀な人材が増えれば科学が進歩、あっと驚く成果が生まれる。成果が生まれれば産業利用され経済が成長し、収入アップ、税収アップの好循環を広げていけると考えています。
御清聴、ありがとうございました。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの御講演、御発表に関しまして何か御質問等ございましたら、お受けしたいと思います。いかがでしょうか。馬場委員、よろしくお願いします。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場でございます。平田委員、どうもありがとうございます。非常に重要かつ興味深い取組で、私どももぜひ一緒にやらせていただければと思いますけれども、今回のお話ですと、X線の結晶構造解析と、それから、電子状態、その2つのデータをみんなで持ち寄ってという話でした。今までの御経験で、その2つがあればある程度新しい材料に行き着く可能性が高くなるということでしょうか。

【平田委員】 この場合は、新しい材料というよりは、今まで知らなかった材料が使えるんじゃないのというところが見えてくる。ぴったり正解しなくても、実際、そこから実験をしますので、その実験の手間が何分の1かになる。まずはそこから第1ステップだと思っています。

【馬場委員】 もう一つ、私自身はバイオマテリアルの研究ですので、その場合も同じデータでもできるのかもしれませんけれども、その場合は、例えばほかの皆さんで共通化できるような情報を1つか2つ選んでやるというのが、まずは第一歩としては考えておられるのでしょうか。

【平田委員】 そう考えています。例えばIRであるとか、何か説明変数として集めやすくて使いやすいもの、なおかつ精度が比較的高いものだと思っています。私たち正解をいきなり見つけようとは思っていませんので、大体何かというのが分かればいいので、やりやすいところからやるのがいいかなと思っています。

【馬場委員】 はい。分かりました。ありがとうございます。

【高梨主査】 それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 加藤です。平田委員、どうもありがとうございます。また、日本化学会でもいろいろ御貢献いただいて、感謝いたしております。それで、御存じのとおり、例えば材料ですと、マテリアル系もありますが、化学系も多く関係していて、日本化学会とか関連の学会では企業の発表とかほとんどないんですね。そういうこともあって、割と材料とかデータというのは隠すというか、そういうことが多いのですけれども、今のお話を聞いていて、一つは加わったらいいことがあるかなと思えるということと、それから、データがあったときに、そこに連絡して、ただそこで知らない間に利用されているのではなくて、連絡したら共同研究とかに、そこのオリジナリティとかは保持されて、連絡してから共同研究で進んでいく。知らない間に使われることがないけれどもオープンになっているというのが、皆がやりやすくなる一つのポイントかなと思いました。その辺のところをいろいろ考えていただいているのだなと思いましたけれども、いかがでしょうか。

【平田委員】 おっしゃっていただいたとおり、あくまでも誰が持っているかということしか分かりませんし、材料を使いたい人から、この材料を誰が持っているのかというのを知りたいという問合わせがあったときに、材料保有者に誰がその材料に興味を持っているというのをお伝えします。そして、材料保有者が、じゃあ、その興味を持っている相手とやりたいということになれば、そこからマッチングが始まりますので、あくまでも材料を持っている方に主導権があります。

【加藤委員】 そうすると、加わりやすいですよね。ですから、非常によく考えられた御提案で、やりやすいなという印象は受けました。ありがとうございます。

【平田委員】 ありがとうございます。

【高梨主査】 では、大分時間も押しているので、これを最後にしたいと思いますが、堅達委員、どうぞ。

【堅達委員】 貴重なお話をありがとうございました。特に今、日本のそういう素材開発力が落ちているという中で、こういう仕組みを作ってやっていけたら、巻き返せる可能性があるのではないかと思って、大変興味深く拝聴させていただきました。
質問は、世界と比較して今少しレベルが落ちているという話もありましたけれども、海外では何かこういう仕組みがあるのか、あるいはスタートアップ等も巻き込んだ仕組みが、モデルになるようなものがあるのかということと、あと後半の理系を目指す学生、若者不足というところは非常に深刻な問題かと思いますけれども、何か御提案というか、どういうところをポイントにしたらよいとお考えでしょうか。今度、九州大学さんが何か准教授を1,000万とか1,200万とか少し高い年俸でスカウトするみたいなこともニュースになっていたかと思いますけれども、何かいいアイディアがあればぜひ教えていただきたい。その2点でございます。

【平田委員】 御質問、ありがとうございます。まず、この取組ですけれども、今のところ、日本に閉じてやっています。これも個人の思いですけれども、日本人、非常に丁寧に実験をするので、ちゃんとしたデータが集まりやすいというところがまずは一番、日本としてやりたいというところです。私たちアメリカにもヨーロッパにも研究所を持っていて、彼ら、海外の動向は調べていますけれども、なかなかやはり海外って個人主義が強いというところもあって、こういうことがやりにくいというところは、まだここは日本がやれるかなと思っています。
あと、理系人材、途中でぶっ飛んだ研究とかというお話もしましたけれども、私たちトヨタとしては、約20年前から海外での研究をスタートしています。そして、これは正直申し上げると、研究費用として決まった器の中で日本と海外の割合を割り振っていますけれども、どんどん海外の割合が上がってきて、早ければ来年、遅くても再来年には逆転すると思います。なかなかそういった私たちが、これは面白いと思う研究が、海外発のモノが多いというのもありますし、これはトヨタが不人気企業というのもあるかと思いますけれども、学生さん、例えばいろいろな活動をして、採用活動もしたり、例えば共同講座を持ったりしていますけれども、やはりなかなか学生さんがトヨタに就職していただけない、これも現実としてございますし、トヨタと何社か受けられて合格を出しても、辞退されるというケースもよくありますので、我々、そういう産業にいるというように認識しております。

【堅達委員】 大変なんですね。

【高梨主査】 堅達委員、よろしいでしょうか。

【堅達委員】 はい。ありがとうございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございました。

【平田委員】 ありがとうございました。

【高梨主査】 平田委員、本当に幅広い、興味深いお話、ありがとうございます。私も最後のぶっ飛んだ研究とか、そこら辺の中身とかをもう少しお聞きしたいところもあったのですけれども、大分時間も押しておりますので、あと皆さんもまだまだ御質問、御意見があるかと思いますが、もし時間がありましたら、最後の総合討議のところでもお話を続けられればと思います。
それでは、次は宝野委員から御説明をお願いできればと思います。よろしいでしょうか、宝野委員。よろしくお願いします。

【宝野委員】 それでは、NIMSの取組についてざっと紹介させていただきたいと思います。本日、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。まず、最近のNIMSの動向を御理解いただくために、統計をお見せしたいと思います。現在、NIMS、任期のない定年制研究職と呼ばれる方が369名、任期付き、つまり、ポスドクの方が246名、それから、NIMSでは大学院の連携大学院を通してNIMSに来る大学院の博士課程の学生さんをNIMSジュニア研究員として雇用しておりまして、その数が143名ございます。ですから、研究に直接従事している人間の数が740名なのですが、研究職の国際化比率がこのため34%となっておりまして、非常にグローバルな環境で研究を行っているということです。これにつきまして安全保障管理をしっかり行いながら、国際化を進めているところです。
それから、技術、事務を含めますと、定年制607名、任期制923名で、合計1,500名以上の職員がNIMSで従事しております。総収入としては昨年346億円でございまして、このうち公的資金が108億、企業からが14億、特許収入が5億という額でございます。この辺り研究大学と比較いたしましても、研究者1人当たりにしますと、そんなに悪くない数字でございます。論文数が大体年間1,500辺りで、論文の被引用件数は材料科学では2012年以降、常に国内トップでございまして、このような論文指数につきましてもかなり国内の研究機関では高い値となっております。企業連携、積極的に進めております。学術連携のほうも先ほど申し上げたように、連携大学院を重視しておりまして、これによって教員68名、大学院生156という環境を実現しております。
現在の組織とプロジェクトを御紹介します。まず、社会課題解決のための研究開発といたしまして、蛍光体で代表される電子・光機能材料、蓄電池、水素で代表されるエネルギー・環境材料。自動車用磁石材料、さらにデータストレージ材料を含めた磁性・スピントロニクス材料、さらにインフラ、あるいは自動車産業を支える構造材料、これが社会課題解決のための研究開発。さらに次世代の技術を生み出すための基盤研究として量子ナノ材料、本年度から始めた高分子・バイオ材料、マテリアル基盤として先端解析技術と最も重要なデータ駆動型研究に従事しています。それに加えて共用部門として材料データプラットフォーム、さらにナノファブリケーションファシリティを含む材料創製・評価プラットフォーム等がございます。
それで、このような組織分けをしておりますと、研究者が組織の中で固まってしまうということがございます。しかも、NIMSの中長期は7年ですから、7年間コンスタントに基盤研究が進むことになりますので、その時々に重要なトピックスを分野、組織横断型で従事していただくために重点研究というのを定めています。本年度から始めているのがカーボンニュートラル、バイオマテリアル、2020年から量子マテリアル、さらに次年度からマテリアル循環の研究を組織横断型で進めてまいります。ただし、今後、蓄電池研究はGteXのほうでかなり予算化されておりますから、我々としては、この部分は水素関連材料に力点を置いていきたい。さらに量子マテリアルは、次世代半導体基盤につながるような研究にシフトしていこうと考えています。
NIMSの代表的な成果として、2点だけ御紹介させてください。SiAlON蛍光体列、これ、従来、耐熱材料として研究されていたセラミックス材料ですが、希土類元素を同期することによって非常にユニークな蛍光特性が出て、現在、青色LEDと組み合わせて、白色LED光として世界のライティングを変えた発明でございます。30%の世界シェア、NIMSへのライセンス収入がこれまで54億になっております。最近の成果例としましては、耐震性ダンパーですね。これは形状記憶特性を持つ鉄鋼材料なのですが、これが耐震性のダンパー材料として社会実装されておりまして、既に名古屋のJPタワーやAichi Sky Expo等に導入されている実施例でございます。
それから、NIMSは国研としては初めて文科省WPIプログラムに2007年に採択されて、10年間、これを継続させていただいたのですが、現在、ナノアーキテクトニクス材料研究センターというふうに看板を変えまして、現在もこれを基盤にWPIアカデミーのメンバーとして継続しています。この研究はナノ材料の合成デバイスというナノアーキテクトニクスという材料を研究するというもので、代表的な成果としてhBNとか原子スイッチが出てまいりました。これもプロジェクト終了後、相当数進んでおりますので、我々、時代に合わせてテーマを変えていくというので、この基盤を大切にしつつ、現在、量子材料の研究に大きくシフトしてきているところでございます。
こういった成果に基づきまして、例えば今、大学評価等でも非常に騒がれているTop10%論文の数、1人当たりの数、それで、これが、CSTIが定めた国際卓越研究大学の指標でございますが、それをはるかに上回る論文統計を幸いにも獲得しています。さらに特許許諾収入と特許保有件数を見ましても、他の大学と比較しましても研究者数当たりでは非常に卓越した数値になっております。
今後、重点化していきたいテーマについて御説明します。蓄電池研究、前期から非常に力を入れておりまして、今後とも全固体電池には力を入れてまいります。さらに次世代の電池と言われているマグネシウム電池や空気電池の研究、それぞれ用途が違いますから行ってまいります。それから、そのような研究には当然、解析、理論研究が必要ですから、それを一体化させつつ、蓄電池研究に貢献してきた。車載電池のみならず、例えば飛翔体向け超軽量蓄電池とそれぞれ用途が異なった電池開発が必要ですから、タイムリーに様々なプロジェクトを使いながら行っていきたいと考えております。この電池研究を支えるために私どもこれまではJSTのALCA SPRING、現在はGteXの支援をいただいて、蓄電池基盤プラットフォームというのを構築させていただいております。
床面積80平米のスーパードライルームを持っておりまして、電池を試作し、大気にさらすことなく様々な解析研究が行われる。さらにオペランド計測手法も入れておりまして、全固体電池、MOPに参画される企業、あるいは国のプロジェクト等に活用していただいておりまして、大学の研究者の方々にも使っていただけるような整理を行っております。今後、私ども蓄電池研究のほうはかなりGteXでも予算がついていますから、我々として水素関連材料の研究を強化していきたいと考えています。個人レベルではあるのですが、水素製造触媒を行っている研究者、水電解触媒、広域で水素を作る。そのときに貯蔵をしていくわけですが、水素を液化すると効率がいい。そのときにNIMS、世界で唯一成功しているのが磁気冷凍によって高効率な液化を行うということですね。
水素が気化されていくと、例えばこれまで超伝導を使おう、使おうと言っていても液体ヘリウムを使わないと使えないものであれば普及しない。それであれば燃料として普及してくる水素を冷媒として使えるような超伝導を開発しよう。さらにNIMSではグリーンイノベーション基金を使って防爆実験室の中に様々な試験施設を入れた液化水素材料評価施設を作っています。これ、温度、圧力ですが、世界で唯一、NIMSでしか測定できないような環境を達成して、材料信頼性に必要なデータを出していく。それが規制とか規格を変えていく力になるのではないかと思っておりまして、これもデータ戦略の一環として取り組んでいこうと考えています。
さらに、次世代半導体研究です。NIMSはLSTCに参加させていただいていますが、LSTCの課題というのは、Rapidusを中心としてプロセス重視になっています。それで、このLSTCが目指しているものは beyond 2nmという、これまで人類未踏の難しい領域の半導体デバイス、シリコンデバイス、GAA構造をやっていくというときに、このプロジェクトではプロセス重視で、例えば界面の原子レベルの現象を解明するとか、そういったところが落ちています。ここのところを基礎研究、アカデミアを加えて基礎研究をしない限り、我々、beyond 2nmという極めて高い技術達成というのは困難だと思っていて、ですから、今後、基礎研究のプロジェクトが立ち上がる中で、ARIMで整理させていただいたNIMS微細加工プロセス共用設備をアカデミアとLSTC、あるいは産業界をつなぐために使っていただけるのではないかと期待しているところです。
それで、この委員会においては、もう既にNIMSのデータ中核拠点の取組については御存じのとおりだと思います。それで、このデータ中核拠点は、極端なことを言ってしまえば、クラウド上のデータストレージですが、これに魂を込めるにはデータをいかに収集するかということですね。現在、ARIMとデータ創出活用型プロジェクトのデータが自動的に収集できるような環境を整えております。それに加えて、この委員会で以前御指摘いただきましたが、プロジェクトに参加していない先生でも有用なデータを持っておられる方、そういった方々からもデータを収集したいと思っています。残念ながら、予算は認められなかったのですが、我々が自己収入からここの部分を始めていきたいと考えています。
さらに、NIMSは、もう40年クリープ試験といった非常に長期にわたる構造材料のデータベースを蓄積しています。このデータを生成AIのデータとして使って、このこれまで蓄積してきたデータ、一部に活用されているのですが、それをもっと高付加価値を加えるような研究に展開していきたいと思って、現在、これも自己収入で進めているところでございます。それで、データ駆動型材料開発事例ですが、こういった例が次々と出てきておりまして、私どもとしては、データ駆動型研究に進むと宣言して本当によかったなと心から思っているところです。
NIMSは企業との共同研究を実施するため、組織的に実施するために基本的には個別の共同研究契約ですが、組織的に実施するために企業連携センター9社と行わせていただいておりまして、最も新しいのが米国のWestern Digitalとのストレージフロンティアセンター、Western Digitalに言わせると、もうアメリカには、この分野の研究をできる研究者がいないということで、磁性に力があった日本に向けていただいて、現在、センターが立ち上がって精力的にデータストレージに貢献できる材料研究を進めています。
さらに、材料オープンプラットフォームという1ルーフに競合関係のある企業が集まっていただいて、そこで基盤研究を行う。基盤研究の成果というのは、みんなでシェアをして、その個別の基礎研究というのは個別契約によって行っていただくという2回契約で、日本のメジャーの磁石メーカーが全て参加いただいて、うまくいっていると評価しています。こういったMOP、全固体電池、医療医薬品、蛍光体、構造材料DXという分野でも立ち上がっております。先ほど平田様からも御指摘がありましたが、我々が最もリスクマネジメント上、組織の存在に関わる可能性がある程度のリスクとして考えているのが、優秀人材の確保です。人口減によってマテリアル分野における優秀な研究者の確保が極めて難しくなっています。
そういうことで、我々、これは日本のことを考えなければいけないのですが、NIMSではNIMSがマテリアル研究の拠点として魅力的な研究所になるように努力をしてまいりますし、これまでも話してきましたように、若い研究者がNIMSに来る。ヨーロッパでは一般的ですが、そういった環境を実現するためにクロアポ、連携大学院を積極的に進めさせていただいていて、人材のエコシステムを構築したいと思っています。さらにNIMSのブランディングを強化して世界中から優秀な人材を集める。先ほどARIMでエンジニアの話がありましたが、NIMSは優秀なエンジニアを確保するため、研究職と全く同じ処遇にしています。それで、給与票を見ても研究職が上のほうに来るという例が多数ございまして、全く対等にやっている。ただし、研究職の評価において、論文評価は一切しないという方式で行っています。
それから、様々な階層の研究者を世界的に集めるために、全ての階層の研究職の世界公募を常に行っていまして、一番上はフェロークラスでございまして、スタートアップ資金1億円、グループリーダーでも3,000万。それから、給与については、前職からの移動について絶対に下がらないような配慮をしています。これを可能にしているのが業績評価に基づく処遇でございまして、この右の図を御覧いただいて、35歳でNIMSに就職すると、研究職の給与はほとんど同じです。ところが、10年後にはもうこんなに給与に差が出るんですね。800万近く差が出ております。こういったダイナミックな業績に基づく処遇というのを実施しています。
あと、先日、東工大とも連携協定を結ばさせていただきましたが、私どもNIMS、現在7つの研究大学と連携大学院協定を結ばせていただいておりまして、これによって68名の研究職が連携教員としてポストを預かって大学院生、博士課程の大学院生をNIMSに160名、NIMSジュニア研究員として雇用して活躍していただいています。それで、次年度からは入学金相当分を赴任旅費として手当てするということもスタートいたします。それに加えて世界中の人材を集めようということで、国際連携大学院というのもやっておりまして、35校と現在協定を結んで、特に今力を入れているのがインドのIIT、それから、ASEAN諸国のトップレベルの大学から人材を得ようということですね。先ほどの連携大学院と違い、こちらの場合は博士課程在学中の学生を1年間NIMSに滞在させて共同で、博士論文の研究を指導するという仕組みで、これによって共同研究のネットワークも広げるという効果を期待しているところでございます。
以上、ざっと概要を紹介させていただきました。私ども本年度、次期中長期計画が始まった機会にビジョンを定めまして、材料で世界を変えるということで、職員が一丸となって新しいマテリアルを創出しようと励んでいるところでございます。よろしくお願いします。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。NIMSに関する総合的な御紹介で、大変印象的でございました。興味深く聞かせていただきました。
時間は押していますけれども、少し御質問の時間をとりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。皆さん、御遠慮なく挙手をしていただければと思います。特にございませんか。
では、私から少し質問させていただきたいんですけれども、データのプラットフォームのところで、全国の研究者からのデータ収集ということを少しおっしゃっていたんですけれども、これは具体的にはどういうことを今されようとしていますか。

【宝野委員】 大学の先生とかとお話ししていると、私、こういうデータを持っているので、データ中核拠点に入れて使ってくれないかというお話をいただくことがございます。そういう先生方、それから、このARIMとかデータ創出活用型プロジェクトに入っておられない先生でもデータ駆動型研究を進めておられる先生方がおられるので、その方々と連携しつつ、このNIMSのデータ中核拠点の中にデータを収集させていただき、それを将来的に活用させていただきたいという取組です。そのためにはインセンティブを与えなければいけませんから、若干の研究費も出させていただくということでございます。

【高梨主査】 そのための予算を、ある意味、NIMSさんとして確保してやっているということですね。インセンティブのことを少しお聞きしたかったので。
それからあと、人事評価というか、業績の評価で処遇の話が出てきましたけれども、この業績評価もいろいろな観点を考えたときに非常に複雑になってしまうと思うんだけれども、この研究者の業績評価というのは、どういう観点でやっておられますか。

【宝野委員】 研究職の業績評価は論文、外部資金、その他運営貢献という多数の項目がございまして、それを入力するシステムがございます。それを使って、例えばこのところ論文が弱くなっているというと論文係数を上げるとか、そういった経営上の強化したい部分を強化して評価に当てていくということです。ただし、評価基準は前年度に明確にしておかなければいけませんから、例えばこれから論文係数を上げるといったときに、それを実施するまで2年かかります。そういったことでやっております。

【高梨主査】 では、かなりきめ細かく、結構大変な。

【宝野委員】 そう、かなり細かく。このシステムを開発するのはかなりお金をかけていますから、ぜひ他機関にもお使いいただきたいと思います。そういう御関心があればお声がけいただければ、スタートアップを立ててやっていきたい。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
ほか、何かいかがでしょう。御質問等ございませんか。では、順番に、馬場委員、どうぞ。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場でございます。宝野先生、大変詳細な御説明、ありがとうございます。大変すばらしい取組で、すばらしい成果につながっているので非常に感銘を受けました。企業連携センターのことでお伺いしたいのですが、かなり大規模な取組だと思うのですけれども、NIMSの中にそういう研究場所といいますか、建物とか、そういうのがこの企業連携センターのために確保されているのでしょうか。

【宝野委員】 連携センターの場合は、基本的には共同研究をする研究者のスペースを使って、研究課題は進めてまいりますので、そのためのドーンとした実験スペースを確保しているということはございません。ただし、希望される企業、あるいは常駐されることもございますので、センターを作っていただくと、そのためのオフィススペースを提供してございます。

【馬場委員】 その研究者の方が、そちらの企業に常駐というか、行かれて研究されるという。

【宝野委員】 常駐という例は数件あったと思いますが、大体、行って少し必要な実験をするとか、そういったことはよくございます。

【馬場委員】 ありがとうございます。

【高梨主査】 では、次に加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 御説明、ありがとうございました。大学から見たら、研究所としてよくまとまっているなと非常に感銘を受けました。研究でいろいろなプロジェクトが非常に巧みに行われているのですが、研究者のボトムアップ型の研究と、こういうプロジェクト、トップダウン型の研究、どういうような感じで組み合わされているのでしょうか。一人の研究者から見たとき、あるいは部門で見たとき、その辺を教えていただきたいのですけれども。

【宝野委員】 私たち、プロジェクトをやる、企業と共同研究をやるというとき、やはり基礎的な、しっかりした専門性というのが重要だと思っています。ですから、各研究者にボトムアップの研究、つまり、自由発想研究を奨励しておりまして、そのためのシーズ研究費と、あと上の基盤研究費の中から一定額を確保しているのですが、基本的に自由発想研究は科研費等でやっていただきたいと思います。
ただし、大学と違ってNIMSは一般的には学生さんがおられないので、科研費を取ってきたら、それとマッチングするようにほぼ同額を援助します。それをもって自由発想研究を支援しています。というのは、やはりアイディアのない人に自動的に平等に配るということは効果が出ませんので、ちゃんと自分のアイディアがピアレビューを受けて認められたものについて応援するという仕組みでございます。

【加藤委員】 優れたシーズ研究を応援するということで、よく分かりました。ありがとうございます。

【宝野委員】 それで、この中でも、NIMSの中でもナノアーキテクトニクス材料研究センターに限っては、これはNIMSにおける基礎研究所という位置づけでございまして、ここは基本的にボトムアップの研究提案で、その社会実装などを考える必要はないというふうに伝えております。

【加藤委員】 はい。どうもありがとうございました。

【高梨主査】 ありがとうございます。
では、最後に折茂委員、よろしくお願いします。

【折茂委員】 折茂です。ありがとうございました。14ページのNIMSジュニア研究員、これは次世代の若手の研究者を呼び込む、あるいは育てるために非常に重要だと思います。その内訳が、やはり今のところは中国が、日本より多いというのはちょっと驚きました。ほかのアジア圏ですとか、あるいはヨーロッパも、基本的にはフランスしか見えてこないので、その辺り、広げるというような取組をしていらっしゃったら教えてください。

【宝野委員】 ここは変わってまいります。中国は確実に今減っております。それはやはり経済安全保障の観点で制約が出ること。それで、今、ASEAN諸国、それから、インド、非常に精力的に、組織的にアプローチしておりますので、そこら辺りが増えてくると考えております。それから、ヨーロッパ、アメリカとかは、最初から期待していないということですね。無駄なことはやらない。

【折茂委員】 ありがとうございます。

【高梨主査】 では、どうもありがとうございました。
大分時間が来ておりますので、宝野委員、本当にすばらしいお話、どうもありがとうございました。

【宝野委員】 どうもありがとうございました。

【高梨主査】 それでは、これで本日の話題提供に関する部分は終わりにさせていただきまして、これまでの説明も踏まえまして今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について総合討議を行いたいと思います。12時半まで時間がありますが、総合討議に先立って、事務局より前回の議論も含めた論点の整理について資料3-3に基づき、説明をお願いいたします。

【宅間参事官】 参事官の宅間でございます。資料3-3につきまして御説明をさせていただきたいと思います。こちらの資料は、本日も含めたこれまでの3回のナノ材委員会の内容を踏まえて作成しています。また、こちらの資料には、参考1として前回いただきました御意見、会議後にいただいた御意見もこちら含めさせていただいておりますけれども、そうしたものをもろもろ踏まえましてナノ材委員の推進方策を御議論いただきたくにあたって、限られた時間を有効に活用していただくためにも、議論の観点の事務局案をまとめております。委員から御覧になって抜け漏れもあるかもしれませんけれども、まず事務局案としてお示しをさせていただきました。
この資料の構成につきまして、まず短期、中期的な論点と2ページ目に長期的な論点というふうに分けて書かせていただきました。ただ、最初は短期の論点、それから、中長期というふうにしていたのですけれども、どうしてもデータの扱いとか、人材育成といったところになりますと、なかなか短期だけではできないということもだんだん混在してきてしまいまして、まず短期・中期、そして長期というふうに分けさせていただきました。しかし、若干あまり明確な役割分担が1ページ目と2ページ目に、もしかしたらないかもしれません。 ただ、この論点を分けた趣旨といたしましては、まず近視眼的には、例えば来年度要求をどういうふうに考えていこうかというようなことがまずございますし、また、本来、中長期的には、今現在、科学技術・イノベーション基本計画、そちらの第6期でございますけれども、令和8年度からの第7期というような期間を迎えるに当たりまして、そろそろ次の期の内容をどういうふうにするのかというような検討も政府内で始まろうとするところでございます。
そういったところに対して、このナノ材分野としては、少し長い目で、どういうふうに議論するべきかについて、ぜひ委員の御意見をいただきたいという趣旨で作らせていただきました。短期・中期のところにつきましては、まずマテリアルDXプラットフォームの進展を踏まえた今後の方向性というふうに書かせていただきました。参考資料2にもつけさせていただき、ここまで何回もお見せしている図でございますので、あまり御説明の必要もないかもしれませんが、文部科学省といたしまして、このデータを活用した材料研究ということで、令和3年度から打ち出しているこの施策のパッケージの姿になります。データを「つくる」、また、「ためる」、そして「つかう」モデルケースを作っていくという意味でのこうした事業のトライアングルを打ち出しているところでございます。ここまでのナノ材委員会で各種評価、また、PDプレゼン等で御説明がありましたように、それぞれの事業で着実に進展をしてきたところでございます。こうしたところを踏まえて今後どのように進めていくべきか、それを考える上でどのような論点があるかということで事務局として幾つか挙げさせていただいております。
例えばこのデータ駆動型の手法、モデルケースを作る事業として、私ども内局事業でデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトという事業をやっておりますが、このトライアングルの目指すところというのは、この事業の方だけがデータ駆動型の手法を使っていくということではなく、ほかの一般の研究者の方々も広くこのデータ駆動型手法を使って、我が国全体のマテリアル研究をデータ駆動を使って革新していくことを目指しております。データ駆動型の手法の展開ですとか、また、生成AIに代表されるような昨今の急速な技術の進展があった部分がございました。そういったことを踏まえて、このデータ駆動型研究というもの、その考え方自体も変わっていくのではないかというようなことを例として挙げさせていただいております。
また、このマテリアルDXプラットフォーム開始から、令和3年度からたちまして、着実な進展が見えたところで、いよいよこのデータを使っていくといったところが本格的に始まっていきます。例えばこのデータ利用に関する人材、基盤の維持ということも当然ですし、オープン・アンド・クローズなどと言われますけれども、このデータの利用ポリシーや標準化といった、どのようにデータを、異なるところで捉えたデータを統合的に活用できるようにしていくのかというような議論も必要かと考えております。
また、当然にマテリアルの革新的材料の開発ということもございますが、第1回で御評価いただいた事業にございますように、成果の社会実装に向けては、並列してプロセスサイエンスというものが非常に重要だと認識しておりますので、プロセスサイエンスによる最適化やオートメーション等も含めての研究成果の社会実装といったところの検討も必要かと思っております。また、ARIMの評価の中でもありましたけれども、データのほうにどうしても視点が行ってしまうところがありますけれども、そもそもいいデータを取るということでは、最先端設備の共用、最先端設備を備えるということが必要でありますし、また、技術者の確保といったようなところも大変重要なところだと認識しております。
また、人材育成、産官学連携によるイノベーションの場としての機能拡充、強化、これはまずARIMの拠点を例えばこのようにというふうなイメージで書いたものではございますけれども、ほか、DxMTでもそれぞれの拠点でありますとか、Materealizeの事業でもその拠点の更なる機能の拡充ということもイメージをいたしまして、書かせていただいたものでございます。
また、データ駆動型の研究の結果を例えば裏付けるためにもということで書かせていただきました。データ駆動というふうに申しますけれども、やはりそこの議論に立ち返ったといいますか、学理的なアプローチ、また、基礎・基盤研究といったものの重要性は変わらないと思いますので、そういったことも忘れないようにという趣旨で書いてございます。特に今回の話題提供に関連してという点につきましては、平田委員から、企業から御覧になったお立場から国に期待することという御発表もいただきましたけれども、例えば社会実装につなげる取組、また、産学官連携等につきまして、産業界が必要とする国としての取組ということも論点になり得ると考えております。
2ページ目に参りまして長期的な論点でございます。今後、支援をするべき研究領域や分野について、前回JSTから国内外動向も御説明いただきましたけれども、そういったことを踏まえて、今後、支援するべき分野等についても論点として挙げさせていただきました。また、データ駆動型研究、それが本当に当たり前になったときにおいて、次はどういうことをやるのかということも少し先を見据えた話ですけれども、もしかしたら御意見いただけるところがあるのではないかなと思って挙げさせていただいています。特に今回の話題提供に関連してということでは、宝野委員からNIMSの取組、御説明いただきましたけれども、国研、また、国に期待されることの1つとしまして、息の長い基礎・基盤的研究といったところをしっかり進めていくということも求められていると思っております。その将来像からバックキャストした基礎・基盤的研究の取組についてということについても論点として挙げさせていただいたところでございます。
参考資料3、突然出てきてしまったという感じがあるので少し補足をさせていただきますが、前回の委員会におきまして、スタートアップ企業のスタートアップの創出などについても含めた出口戦略を意識した仕組みを設けるべきという御意見がございました。それに関連いたしまして、こちらは内閣府の戦略的イノベーション創造事業、SIPというものです。今年度から始まりましたSIP第3期におきまして、このマテリアル分野については、このスタートアップ育成のエコシステム構築という課題を走らせているところでございます。
私自身が内閣府も併任しておりまして、こちらの課題も担当しているということもございますので、関連のこうした施策につきましても情報を提供させていただきたく参考資料としてつけさせていただきました。ここでは、これまで国が整備したデータとかインフラを活用するということが大前提になってございまして、データ駆動型の手法を使って革新的なビジネスを生み出す、そうした企業がユニコーンを目指していくということを支援するエコシステムの構築ということを目指すものでございます。そのため、文部科学省が整備してきましたインフラ、また、データの活用といったところが大いに想定されているものでございます。当省の施策とも関連するものとして御紹介をさせていただきました。
事務局からの説明は、駆け足でしたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。

【高梨主査】 ありがとうございます。
では、今の御説明で、あとは自由に御議論いただければと思うのですが、この今の御説明の論点を念頭に御議論いただければと思います。キーワードとしてはマテリアルDXプラットフォーム、それから、データ駆動型研究、そこら辺がかなり重要なキーワードとして何度も出てきたかと思いますけれども、どこからでも結構ですので、皆さん、御意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。どなたからでも。
では、まず中山委員、口火を切っていただいて。

【中山委員】 私は2点ございます。マテリアルDXプラットフォームのお話がありました。これがこのナノ材分野の、今のところの一丁目1番地であるというのは、そうだろうと思います。けれども、このDXだけではなく、どういう材料を大事するかを考え、どういう推進方策をしていくかということについて、きちんと柱を立てていくべきと思います。DXだけ言っても、ポートフォリオ上は未完成で、広く見ていく必要があろうかと思います。このナノ材委員会が考える内局予算以外の、例えばJSTで行われている事業なども含めて、どういう研究開発が行われていて、どういう優秀なものが出つつあるのか、出ているのかということはきちんとポートフォリオをもってこの委員会で見ていくべきであるとは強く思いましたというのが1点目。
もう一点。マテリアルDXプラットフォーム構想の三角形の絵、「ためる」「つくる」「つかう」、についてです。これについて、マテリアルDXプラットフォーム構想としてこれだけでは不足ではないかなと思いました。データ中核拠点が「ためる」と書いてあって、ARIMが「つくる」「つかう」、でも、外から見ている人にとっては、これはこの3つのプロジェクトの関係にすぎなくて、この上位、周囲との関係も入れたような進化版もしくは上位から見たようなものが必要なのではないかなとは思いました。
あと、この3つの「つくる」「ためる」「つかう」ですけれども、例えばDxMTは使うだけではないです。しかも、このデータ中核拠点からのデータを使うだけで成果が出るわけではないで。きちんとした材料創製を行いしっかりと結果を出していくということの一部として、これを使っていくということだと思います。「ためる」のところも、貯めるだけではないですよね。先ほど宝野委員には、この部分を詳しく御説明いただきましたけれども、これは日本のデータ駆動型材料開発の基盤です。効率的なマテリアル開発の基盤を我が国全体に向けて構築していくのだということだとすると、これではやっぱり表現が足りないです。「つくる」のところも、ARIMは作るだけではないです。先ほどは構造化のお話もありましたし、しっかりとした共用とともにデータを出入りさせ、研究者とARIMがウィン・ウィンの関係をしっかりと築いていくということが大事です。そこに肝があって、「つくる」だけではない。
またもう一つ難しい点があります。マテリアル先端リサーチインフラ、ARIMで構造化のお話をされましたけれども、こことデータ中核拠点の関係に関しては、いまだ明確でないところがあります。このお互いの拠点間の役割を全体として上から見て、どこがどういうことをやっていくべきかということを丁寧に考えなければいけない。各々の三角形の頂点が、それぞれベストエフォートでやれることをやりました、持ち寄りましたでは駄目だと思うので、これをしっかりと見ていくような、もう一つ進化版の絵が必要だと感じます。それが私に返ってくると大変ですし、みんなで考えていけばいいかと思うのですが、現在の絵だと外に対してのメッセージとしては弱いかなと思います。これは予算を取るときにはよかったと思うのですが、推進している段階では、よりよくしていく、さらに周りの人を取り込んでいくという絵になっていてほしいです、もう少し進化できる余地があると思ったところです。
少し長くなりましたけれども、以上でございます。

【高梨主査】 ありがとうございます。
非常に重要な視点だと思うのですけれども、だから、その3つを何か統合するような、私が基本的な質問をするのも何なんですけれども、3つを統合するような、あるいは全体として機能するように見ていくところというのは、結局、そういうものというのは、このナノ材ということですかね。

【中山委員】 そう思います。各々が思ったことを一生懸命やればいいわけではないのです。例えば宝野理事長のところがこのDICEはこうあるべきだと考え、そこだけ進んでもそれはうまくいかないです。また、DxMTがそこだけですばらしく進んでも、それはうまくいったことにはなりません。ARIMも同様です。放っておくと自分の事業の最適化に陥って、その主張に終わってしまいます。だから、個々の事業の尊重は大切ですけれども、より上位で見ていかないといけないのです。

【高梨主査】 ですよね。

【中山委員】 それは非常に強く感じるところでございます。

【高梨主査】 ただ、このナノ材では、意見はいろいろ言えるかもしれないけれども、何かもう少し全体を常に見ていて、有機連携できるような感じの組織という、組織を作ればいいというものではないけれども、何かそういう仕組みというのが必要なような気が、今、お聞きしても非常に強く感じるんですけどね。

【中山委員】 仕組みを作りつつ、各々のインタラクションを考えて、さらにどういう研究開発が材料関連で行われているか、行うべきかのポートフォリオをしっかり考え、その全体の推進方策を議論するところまでやるのが、この委員会のこの1年間の仕事かなという気はします。

【高梨主査】 はい。分かりました。ありがとうございます。
それでは、多くの方から手が挙がっておりますので、順番に、武田委員、お願いいたします。

【武田委員】 武田でございます。このマテリアルDXプラットフォームの取組について、現状に対して、今後いかに良くして発展・成長させるか、非常によく議論されていてすばらしいと思いました。もう一点、ぜひ広げて、客観的かつグローバルな視点から見て、このマテリアルDXプラットフォームの取組の位置づけがどのレベルであるのかというのを評価することが重要と思います。日本がこのマテリアルDXプラットフォームを通じて産業力を強化するためにグローバル、海外と比較したときにどこが強くて、どこが弱いのかという点です。目標設定として、弱い点がもしあるならば、そこは強化するのか、それとも、弱点強化ではなく、強い部分をさらに強化していくのかというような戦略があれば非常に良いと思います。
欧米と比べても日本は優れていて、先行しているとご説明も受けまして、そこはすばらしいと思います。では、どの程度日本が抜きんでているのかということと、今後も世界をリードし続けられるのかどうか、リードし続けるにはどういう目標設定をしたら良いのか、このプログラム全体のあるべき方向としてですが、そういう視点があるといいのではないかというのが私の意見でございます。

【高梨主査】 ありがとうございます。重要な御意見だと思います。
たくさんの方から手が挙がっていますので、どんどん御意見をお聞きできればと思います。次は伊藤委員、よろしくお願いします。

【伊藤委員】 伊藤でございます。お願いいたします。マテリアルDXプラットフォームを「つくる」「ためる」「つかう」といったところの進化というものは、このプロジェクトの中で進んできていると思うのですけれども、私、産業の立場といった観点から申し上げますと、革新的なイノベーションにつなげるというところまでが非常に重要ではなかろうかと。そういった観点からやっぱりこのプラットフォームを普及させていくということも重要ではないかなと思っております。
進化と普及を両立させていくといった観点で、今後やはりデータドリブン開発が重要になってくるといったところも鑑みますと、例えば「ためる」といったところの統合インテグレーションなのか。平田委員のお話や、あと宝野先生のお話の中にもプラットフォームのお話がございましたけれども、そういったものが統合していくのがインテグレーション、接続していくのか。そういった観点をもっとデータを広げていくといった観点で協調と競争を意識しながらやっていくことが重要ではなかろうかなと感じましたので、意見を申し上げさせていただきます。
以上でございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
では、次は折茂委員、よろしくお願いします。

【折茂委員】 折茂です。よろしくお願いします。2つあります。1つがDXに限らず、マテリアルサイエンスの戦略を考えるときに、これ、前回も少し議論があったと思うのですが、科研費の分析が少し分析があったほうがいいのかなと思いました。科研費を基に育っていった研究ぐらいから、何か研究のタイトルとして見えてくるんですけれども、恐らく他国に対して先駆けてというところは、もしかしたら科研費で、大小ありますけれども、出てきているのかなと思いました。既にあるということでしたらよろしいかと思うのですが、もう少し科研費の特に材料系の成果とか、そのテーマとか、それの分析、あるいはそれに基づく戦略というのがあってもいいのかなと思いました。これが1つです。
もう一つが、ARIMのときに永野先生からサポートのお話をいただいたときに、技術認定というところがありました。それを可能性としてもう少し広げて、例えば資格みたいな形にするのはどうかなと思いました。何か限定するという意味での資格ではなくて、例えば情報系は非常に資格の制度が多いと思うんですね。そうすると、今までその分野に入っていなかった人からも、一般の人から見て、やっぱりそういった仕事があるのだ、あるいはそういったところが大事なのだというのが見えてくると思うんですね。一方で、マテリアルサイエンスとか、それに関係する評価とか、解析とか、DXとか、そういったものに関する目に見える形での資格というのが今のところないのかなと思いました。そういった一般の人からも、あるいは若手からもこういった仕事があって、こういったことをやってみたいなと思えるような、いい形での制度化、あるいは資格化というのもあってもいいのかなと思いました。2点でございます。ありがとうございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
科研費が出している、そのシーズ研究の成果というのは、何かうまく取り上げていくような仕組みというのがあるといいなと私も思います。ありがとうございます。
では、次は堅達委員、よろしくお願いします。

【堅達委員】 2点ございます。1つは、私、文系委員としての全体的な、こういうものを国民が見たときにどう受け止めるかという観点で言うと、せっかく日本が持っている技術を何のために使うのかというパーパスだったり、今、私の専門の気候変動とかの分野では、本当に去年の夏から、もうやばい、ティッピングポイントをここ数年で超えてしまうのではないかとか、このままだとやっぱり2度を上回ってオーバーシュートしてしまうだろうということが科学者の間で言われるようになってきて、脱炭素のために新しいマテリアル、素材を開発することの重要性というのはものすごく増している。
これがもっと明確に分かるように書いてもらうなり、計画を立てると、さっきからの若者が理系を目指すとか、ある種、お金の問題だけではなく、参画していくインセンティブにもなる。先ほどNIMSの方が「材料で世界を変える。」とおっしゃっていましたが、これは格好いい、とてもいいキーワードなのですけれども、地球を救うためにみんなで英知を結集してやるのだみたいな、そういうものがちゃんともっと明確に示されていると、気候変動とかサーキュラーエコノミーを進める上でも役立つし、同時に日本の産業力強化にもつながるなと感じたのが1点です。
もう1個は、AIなんですけれども、このデータを使ったプラットフォームも含めて、今、この1年で圧倒的に生成AIがどれぐらいこの分野で寄与してくるのか、あるいは使いこなせるのか、じゃあ、それのためにはルールはどうあるべきなのかということをもっとスピード感を持って積極的にここを中期計画に織り込んでいかないと、海外とこの一、二年で差がついてしまうのではないかなという気持ちがしております。ソニーのCTOの方の生成AIのレクチャーを受けたこともあったのですけれども、予算規模が全然違うんですね。向こうが導入している。
残念ですけれども、先ほどからのどんどん長期低落にある部分で、じゃあ、本当にこの重要分野であることを分かった上で、この生成AI分野の研究者とどう連携するかとか、それに向けて思い切って予算を投じるといったような、そういう観点も取り込んでぜひ計画を作っていただけたらいいのではないかと感じました。
以上です。

【高梨主査】 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
それでは、次は馬場委員、よろしくお願いします。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場でございます。私も先ほどの中山委員、それから、折茂先生からの御意見と近い意見ですけれども、2ページ目の長期的な論点の最後で、「我が国の社会像からバックキャストした」というところは当然重要なのですけれども、ボトムアップ的にどういう研究が我が国、あるいは国際的になされているかという情報を、あるいはちゃんと理解した上でこれを考えるということが非常に今後の戦略を考える上で重要ではないかと考えております。
前回の本委員会でCRDSのほうからマテリアル研究開発の俯瞰的なところも御紹介いただいて、永野さんは、ずっとこれに携わられて非常に御見識も深いと思われるので、そういった情報と、あと、先ほど折茂先生がおっしゃったように科研費の情報。これは文科省の中で、私が知る限り、戦略目標を立てるところで基盤Bを中心に情報収集されて、今後のトレンドを考えられていると思うんですけれども、その中の特に我々のナノテクノロジー・材料科学技術委員会に関連する分野を、情報を本委員会で共有していただければ、今後の方針の議論の中でより明確な方針がある程度立てられるのかなと考えております。
ARIM、マテリアルDXプラットフォームの中では、マテリアル革新力戦略に基づいて7つの重要技術領域を取り組んでいるわけですから、ARIMの中で出てくるデータというのも、きっとそういうボトムアップ型の情報としては非常に重要な情報になるのかなと思いますので、そういうARIMの事業、それから、CRDSが2年にやっていただいている俯瞰と、あと科研費の情報、そういうところをうまく統合して今後の本委員会での戦略の検討というのが進められると非常にいい戦略になるのではないかと考えております。
以上でございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
それでは、次、宝野委員、お願いいたします。

【宝野委員】 中山委員が最初に御指摘されたように、私もこのグルグル回る図というのは、何を目的としているのかよく分からないと思っていました。それで、私が発表に使わせていただいたページ、10ページの図なんですけれども、NIMSのデータプラットフォーム担当者が持ってきたときはグルグルの図だったのですけれども、それをグルグルやっている間に必ずそこから新しい材料ができるという矢印をつけたのがこの図なんですね。ぜひそういう説明をいただければと思います。
それで、研究力を高めるために国際化をやっていくのですけれども、何か長年やっているうちに国際化が目的になってというのがよくありますから、あくまでもデータが目的ではなくて、それを使って新しい材料、マテリアル分野においては新しい材料を開発していくという説明をしていただければ、もっと分かりやすいのかなと思います。
それで、特にマテリアルの分野のデータというのは、微細構造、特性は微細構造によって大きく変わりますから、画像のデータが圧倒的に多いですね。ですから、そこで先ほど御指摘がありましたけれども、生成AIを使っていくと物すごく大きな力を発揮すると思います。それにはデータが必要ですから、ここで蓄積された画像データを生成AIで処理していくというところで何とかもう少し予算増とかを図っていただければいいのかなと。その横のつながりをもっとしっかりという御意見がありましたけれども、私は経験上、横のつながりをしっかりさせるにはお金が要ると思っています。お金さえ持ってくればみんな団結してやってくれますので、そこをぜひお願いできればと思っています。
最後、本質とは異なるところなのですけれども、マテリアルDXプラットフォームという名前を使っていただいているのですが、NIMSではこのデータ中核拠点の名前がいつの間にかDICEとなっているんですね。私、人に説明するとき、DICEというのが説明し切れないです。何の略か分からないです。これ、誰が決めたというと、何か適当に誰かが決めているそうなんですよ。それで、今後は、命名権はNIMSにあるから、勝手に決めるなと言っているんですけれども、やはりちょっと説明しにくいので、この辺りは、この組織の名前も含めてナノ材でちゃんと説明しやすいようにしっかりとやっていただいたほうがいいのではないかと常々思っていますので、ぜひ御検討ください。
以上です。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
それでは、次、菅野委員、お願いします。

【菅野主査代理】 菅野です。どうもありがとうございます。少し繰り返しになるかもしれないのですけれども、結局、データを集めて何をするかというと、材料を出さないと、つまり新しい材料を出さないと仕事をしたことにならないので、それが目的であるということが大前提であることがまず1点目。
それから、そのデータを使って新しい材料を出すにあたって、多分、これからARIM、Dマテなどで順番に出てくるだろうと期待しています。このARIM、DxMTの役割というのは、データを作ることではなくて、そこから1つでも新しい画期的な材料を出すこと、それが一番の仕事であるともう一度再認識するということかと思います。材料というのは、どこから出てくるか分からないということがあります。
したがって、今の仕組みの拠点関連のところから出てくるのを期待するのですが、それだけではやはり難しいのではないか、先ほど外部のデータも取り込むということはありましたけれども、その仕組みを考えなければならないと思います。科研費であれば、マッチングファンドみたいな形でデータを取り込むような仕組みを考えるのも1つ方法としてあり得ます。ARIM、Dマテで確立した手法を展開して、日本の各大学の小さなグループの研究者であってもデータを貯めて使えるような状況にすることが理想の姿と思います。
3番目ですが、材料、この材料はやはり基本であって、材料を基本に新しいデバイスなり新しい技術が出てきます。このナノ材の領域で考えることは、新しい材料を出すこと、さらにその基盤づくりです。新しい材料が出ると、それを磁性の特性に応用する、構造材料の特性に応用する、電池の特性に応用する、その役目を担うのは、企業もいますし、それぞれの分野で、文科省の中でもそれぞれの分野で展開することです。その基本となる材料をどうやって出すかというところがこのナノ材の最大の仕事と思います。
以上です。

【高梨主査】 どうもありがとうございます。
関連して私も思うのですけれども、データ駆動型の研究というのは、絶対これから必要なのは分かるんだけれども、それからどれだけ本当に新しい材料ができるかということは非常に重要なことだと思うんです。この後、最後に平田委員が挙手されて、御意見を伺いますけれども、ご発表の中でおっしゃっていた「ぶっ飛んだ研究」というのがちょっと気になっていて、要するにデータ駆動型研究でどれだけぶっ飛んだことができるのかというところは、今後の問題かもしれませんけれども、これまでの延長上のものではなくて、何か完全にぶっ飛んだものというのがデータ駆動でどこまで出てくるかというところは、私自身、疑問なところです。今、お話を聞きながらそういうことも考えました。
最後に、もう時間が大分来ていますので、平田委員に、挙手されています。よろしくお願いします。

【平田委員】 先ほど御質問のあったぶっ飛んだ研究、実は我々がやっているぶっ飛んだ研究って、データ駆動は全然使っていないです。データ駆動に乗るようなもっと前の次元の本当に新しいものを出しませんかということは、ぶっ飛んだ研究としてやっています。

【高梨主査】 なるほど。

【平田委員】 こういう研究先があるのは、具体的には申し上げられませんが、例えば車両の空間位置を光とか、そういったものでないもので周囲状況を認知するための技術であるとか、あとはこれ、どこまでできるかどうか分かりませんけれども、馬場先生、よく御存じかもしれませんが、じゃあ、量子重ね合わせを使って化学反応を促進できないか。これ、材料だけではなくて物理屋さん、材料屋さん、そして生物屋のセットで提案があったり、何か全く新しいもの、芽を出そうとしていたり、ということをぶっ飛んだ研究と言っています。データ駆動に関しては、私が申し上げたことを菅野先生がうまくまとめていただいたんですけれども、ある程度データが出てきて、物づくりに近いところは企業にやらせればやっていくと思いますし、そこがお金、なかなかそういったことって、企業、話しにくいと思うんですね。
むしろ、こういったデータ駆動、極端なことを申し上げると、何に使えるか分からないけれども、何か面白い材料を作ったよという、そういうネタになるような部分がいっぱい集まってくると、企業としては使いやすいと思っています。どれが当たるか分かりませんが、結局、将来、それが物になったときに、一番実入りが多いというか、もうかるのは、それを大量に作る人ではなくて、それを最初に見つけてちゃんとパテントを取った人です。だから、どこが重要かということ、少なくとも、昔は、日本はすごく国力もあって網羅的に全部できたと思いますけれども、今見ると、アメリカはできると思いますけれども、アメリカのように全部できるわけではないので、もう何をやめますか、どこに集中しますかという、そこの議論をやって、もうやめるべきものはやめるということが大切かと思います。
トヨタもフルラインナップで世界中のお客様に車を届けようとしていますけれども、もうトヨタ1社では全くできませんので、いかに多くの方に御協力いただくかということがメインになっています。なので、トヨタはトヨタとして得意なことをやるけれども、あとは仲間に助けてもらうというのが、そうでないと回りませんので、国全体としてもそうかなと。何に集中してやるかということを決めないと、皆さん共倒れになってしまうのではないかなというように感じております。
以上でございます。

【高梨主査】 どうもありがとうございました。
本当に活発な御議論をありがとうございました。これで、もう時間が完全に過ぎてしまいましたので、委員全員の御意見を聞くことはできませんでしたけれども、一応、ここで今日は終わりということにしたいと思います。いっぱい御意見が出て、私の頭の中も多少オーバーフローしているところもありますけれども、これから事務局に今日の御意見をまとめていただいて、次回以降、引き続き検討を進めていくということにさせていただきたいと思います。
それでは、最後に議題の4、その他に移ります。事務局から御説明、よろしくお願いします。

【柴田補佐】 ありがとうございます。文科省事務局です。本日は時間もなくて御発言、不十分だったということもあるかと思いますので、また前回と同様、御発言いただけていなかった御意見等ございましたら、またメールで事務局までお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、次回のナノテクノロジー・材料、次回の委員会につきましては、令和6年3月8日の15時から17時を予定してございます。詳細は追って事務局より御連絡をさせていただきます。また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後にホームページにて公開をいたします。
以上でございます。

【高梨主査】 ありがとうございました。
それでは、少し時間を過ぎてしまって申し訳ございませんでしたけれども、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会は、これにて閉会とさせていただきます。皆さん、御協力、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。