資料1 原子力基盤強化作業部会中間整理

平成21年8月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
原子力分野の研究開発に関する委員会
原子力基盤強化作業部会

1.はじめに

 国際的に原子力ルネサンスの潮流がある中で、我が国で原子力発電を基幹電源として維持・発展していくとともに、核燃料サイクルを確立し、長期的には高速増殖炉の実用化を図っていくため、我が国の原子力研究開発や人材育成の基盤を強化していくことが重要である。このための方策について検討を行うことを目的に「原子力基盤強化作業部会」では、これまで5回の検討を実施してきた。この検討には、多角的な観点から詳細な分析が必要であるが、これまでの議論により今後の検討課題が出そろってきたので、これを中間的に整理し、早期に実現すべき課題は具体化に移していくとともに、中長期的な課題は引き続き検討を深めていくこととする。

2.中間整理に当たっての基本的考え方

<タイムリーに検討結果を発信し、施策の具体化を促進>

○理念的・総花的なものより、具体的な施策や検討の方向性を明確に

○タイムリーな時期に検討結果を発信
 <早急に対応すべき課題>
  ・来年度予算要求に反映
  ・原子力機構の次期中期目標・中期計画の策定議論に反映
 <中長期的に検討すべき課題>
  ・原子力政策大綱の改訂議論に反映
  ・中長期的に実現

○本作業部会で全て具体案を検討するのではなく、他に適当な検討の場や相応しい機関がある場合には、対応主体を明確にした上で、そこでの検討を促す

○また、本作業部会は、原子力機構における中期計画改訂の検討など、各対応主体における検討状況を適切にフォローアップし、本中間整理の実効性を高めるとともに、引き続き作業部会において検討を行うとされた項目について関係機関と連携を図りながら、具体的な検討を進める


 上記の考え方を基本に、まず、原子力基盤強化に当たっての基本考え方を再確認した上で、
・原子力人材の育成
・研究開発インフラ
・原子力技術の戦略的な技術移転・産業化
・原子力機構の基盤的機能
の4項目毎に課題を整理する。

 本作業部会としては、今後、早急に対応すべき課題について関係機関における具体化に向けた取組をフォローしていくとともに、中期的な課題について検討を継続していく。

3.原子力基盤強化についての基本的な考え方

(1)原子力を巡る現状認識

(原子力の今後の展開)

○原子力発電は、現在、総電力量の約3割をまかなう基幹電源となっており、特に昨今の低炭素社会の実現に向けた流れの中で、温室効果ガス排出削減の中期目標を達成するためには、原子力発電比率を2020年時点で40%程度とする必要がある。

○核燃料サイクルについては、プルサーマルや再処理など関連事業の本格化が見込まれている。

○高速増殖炉サイクル技術については、実証炉に向けた動きが加速している。

○海外に目を向ければ、アジアを中心に原子力発電の新規導入の拡大など原子力ルネッサンスが進行しており、我が国のプラントメーカは、国際展開を進めようとしている。

○また、このような原子力の国際展開の活発化に伴い、核不拡散や安全確保に向けた取組が益々重要となっており、唯一の被ばく国であるとともに優れた技術を有する原子力先進国として、我が国が果たすべき役割は大きい。

(国内の関係機関の現状)

○大学は、ここ数十年の長期トレンドとして、学部の大括り化などに伴い、原子力の学部・学科数は大幅に減少しており、人材育成機能の弱体化が懸念される。

○原子力黎明期から発展期を支えてきた優秀な人材の大量退職の時期に入ってきている。一方で特に原子力機構以外では、施設維持費用の問題、放射性廃棄物管理や安全管理等の課題から研究用原子炉やホット施設を独自に維持管理することが極めて困難な状況となっている。

○世界的な経済不況の中、将来の研究開発に対する投資が減少し、国・電気事業者・メーカの三すくみの構造に陥る危険性が指摘されている。

(研究開発の状況)

○人的・資金的リソースがプロジェクト型研究に集中する傾向がある。また、量子ビームや核融合関連も重要ではあるが、これらを含めた原子力予算全体が減少傾向の中で、結果として、核燃料や高レベル廃棄物を用いたホットな試験を行うような原子力の本流部分が相対的に軽視傾向になり、基礎・基盤的分野の研究開発体制が弱体化している。

○プロジェクト遂行に際しての産学官連携の不足、一定の線形モデルを前提として周辺部分の基盤が形成されていない危険性や、より積極的な原子力機構のホット施設の外部利用促進の必要性が指摘されている。

(2)基盤強化に向けた基本的考え方

○我が国の原子力の利用については、これまでの軽水炉主体の段階から、多様な核燃料サイクル関連事業の本格化の段階へ入りつつあり、原子炉から核燃料サイクル全般にわたる広範な原子力技術基盤の維持・強化が必要とされる。

○これまでの線型大型プロジェクト偏重から、産学官連携で真の原子力基盤を確立するよう、プロジェクト開発と基礎基盤研究開発が強く相互連携を図り、技術課題に対してユーザーとメーカと技術開発主体が有機的に連携して取り組む体制を構築することが重要である。

○特に、原子力技術の移転・産業化にあたっては、早期の段階から技術の最終ユーザである産業界側が、ステークホルダーとして、主体的に技術開発プロジェクトに関与するような仕組みが肝要となる。

○また一方で、高度な技術力や人材力、先進の研究開発施設を集約する中核的研究開発機関の存在が不可欠であり、我が国において唯一の総合的な原子力研究機関である原子力機構が、その技術ポテンシャルをさらに強化しつつ、実効的に研究開発の中核的役割を担いながら、産学官の関係者が真の意味で連携を図り、all-Japan体制で、我が国の原子力基盤を強化していくことが必要である。

4.今後の具体的取組の整理

(1)原子力人材の育成について

<1.総論>

 原子力基盤の維持・強化を図るために要となるのは優れた人材である。
引き続き、優秀な原子力人材を継続的に輩出していくためには、大学等が実施する研究・教育活動を効果的に支援するとともに、産業界や原子力機構とも連携し、我が国の原子力界全体として、戦略的に人材育成を進めていく必要がある。

<2.早急に対応すべき事項>

Action1:初等中等教育段階における原子力教育の強化
→ 対応主体:文科省 期限:本年中

○初等中等教育段階から原子力に対する正しい知識や正確な判断能力を身に付けるため、原子力教育を充実させることは、将来の原子力人材育成の観点からも有意義である。

○文部科学省は本年中に、経済産業省や日本原子力学会などの関係機関と連携し、教科書の副読本の有効活用や効果的な教員研修の実施など、我が国全体の原子力教育に関する取組を強化する。

Action2:大学レベルの原子 力人材育成支援策の強化
→ 対応主体:文科省 期限:来年度概算要求に反映

○原子力関係学科については、他学科等との統合等により、ここ十数年の長期トレンドにおいては減少傾向にあるものの、昨今、原子力を専門に教育する学科や専攻の開設など、複数の大学において上向きの傾向になりつつある。

○原子力人材育成プログラムは3年目を迎えており、文部科学省においては、8月中までに評価を実施するとともに、評価を踏まえ、プログラムの改善・拡充を図る。その際、今後特に必要とされる人材の質と量を踏まえ、全体の底上げとトップの育成に配慮する。

○また、本年中に原子力人材育成プログラム「コアカリキュラム開発プログラム」において作成している標準的な教科書の効果的・戦略的な活用方策についても検討を行い、実行に移す。

Action3:若手研究者への支援の拡充
→ 対応主体:文科省 期限:来年度概算要求に反映

○今後、研究機関や産業界の中核を担ってきた極めて優秀な原子力人材の大量退職が見込まれることから、次代の中核人材となる若手研究者の育成が急務である。

○若手研究者が自立的に研究を行う体制を強化するため、文部科学省においては、産業界や大学等の実情やニーズを踏まえ、原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ「若手原子力研究プログラム」の改善・拡充を図る。

Action4:立地地域における原子力人材育成活動の強化
→ 対応主体:文科省・JAEA・関係者 期限:―

○現在、複数の立地地域において、拠点大学を中心として、各地域に所在する原子力産業や原子力機構のサイトと連携しながら行われている特色ある人材育成活動は重要な取組である。〔六ヶ所村(東北大・八戸工大-原燃)、東海村(東大・茨大-原子力機構)、敦賀市(福井大学-原子力機構)、室蘭市(室蘭工大-日本製鋼所)〕

○各地域の持つ強みや特殊性を最大限活用した、戦略的な人材育成活動が進むよう、関係者間の有機的な連携体制を整備し、効果的な人材育成施策の推進について支援を行う。

<3.中期的に検討を要する課題>

Action1:原子力機構と大学間の抜本的な連携について
→ 対応主体:作業部会・JAEA 期限:―

○現在、原子力機構と各大学との間で協定を締結するなど連携が行われているが、原子力機構の担当職員の熱意や能力に依存する部分が大きく、組織的・機動的な連携としては、未だ十分ではない。

○原子力研修センターの持つ機能も有効活用しつつ、大学等と原子力機構が組織全体としての連携強化を図るとともに、原子力機構において学ぶ学生が、効果的にインフラや知識基盤にアクセスできるような仕組みを構築することが重要であり、原子力機構と大学が緊密に連携し、人材育成や研究開発を強化していく、新たな抜本的な仕組みについて検討を行う。

Action2:退職者人材の戦略的な有効活用について
→ 対応主体:作業部会 期限:―

○今後数年程度の間に、我が国の原子力黎明期から原子力発展期を第一線で支えてきた、極めて優秀な原子力人材の大量退職が見込まれるところ。

○こうした人材を、研究機関や産業界の若手育成や技術相談等の担い手として、我が国の原子力業界全体で有効に活用していく仕組みの創設は有意義であり、今後、当作業部会において、関係団体や関係省庁等とも連携しながら、具体的な人材活用制度の構築に向けて検討を行う。

(2)研究開発インフラについて

<1.総論>

今後の核燃料サイクル事業の本格化などに着実に対応するためには、原子力機構を中心に我が国が有する貴重な原子力研究開発インフラについて、現状及び将来計画の再整理をするとともに、これまで以上に有効活用を図ることが重要である。
このため、海外のインフラの活用状況や産業界や大学等のニーズ等も適切に踏まえながら、よりユーザーサイドに立った望ましい形での共用の促進や、プロジェクトを大型研究開発インフラを介して産学官の協働で推進していくとともに、我が国として今後戦略的に必要となるインフラが如何なるものであるかについて検討を行い、その維持・整備を戦略的に進めていく必要がある。

<2.早急に対応すべき事項>

Action1:既存の研究開発インフラの利用状況やニーズの整理と改善策の検討
→ 対応主体:JAEA・作業部会 期限:次期中期計画に反映

○原子力機構において、既存の原子力研究開発インフラに関して、俯瞰的に現状を把握し、個々の施設の利用状況や長期的な利用ニーズを整理し、今後の利用/改造/廃止計画を策定する。

○また、現在いろいろな制度で外部利用を進めているが、外部利用者のニーズや海外の研究開発インフラと比較しての利用上の課題の要因分析なども踏まえ、問題点の整理を行うとともに改善策の検討を行う。

Action2:役目を終えた施設について計画的な廃止措置の実施
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○原子力機構における既存の複数の原子力施設は、今後老朽化により寿命を迎えることとなるが、稼働率に関係なく施設の維持・管理に一定程度のコストがかかる。

○原子力機構において、2.Action1による整理も踏まえながら、継続的に重要なインフラについての維持・整備を図る一方で、維持管理費抑制の観点からも、役目を終えた施設については計画的・合理的に廃止措置を進める。

○また、原子力機構においては低レベル放射性廃棄物の処理・処分事業の着実な具体化を進める。

Action3:ユーザーの利便性向上と施設の外部利用促進のための取組強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○2.Action1における検討も踏まえ、原子力機構において、施設の外部利用に関する窓口機能の強化や、ユーザーのニーズ把握、研究施設や研究者・技術者とのマッチングを行うコーディネーターの設置について検討を行う。

Action4:旧サイクル機構のホットラボ等の戦略的な活用策に関する検討
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○これまで原子力機構においては、主として旧原研のJRR-3等の外部利用に取り組んできたところであるが、一方で、旧サイクル機構のホットラボ等の施設の外部利用は限定的である。

○このため原子力機構において、ホットラボ等の長期的利用ニーズやプロジェクト開発に産業界等とどのように連携していくかなど、ホットラボ等の戦略的活用策の検討を行う。

Action5:研究開発インフラ活用促進のためのファンドの拡充
→ 対応主体:文科省 期限:来年度概算要求に反映

○ホット施設を利用した共同研究に対するファンドを強化することで、原子力基盤を支える研究開発施設のてこ入れを行うこととし、文部科学省においては、平成22年度の事業実施に向け、原子力基礎基盤戦略イニシアティブの改善・拡充を図る。

Action6:計算機を用いたシミュレーション技術の維持・強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○原子力の研究開発については、最終的にはホット試験による技術の実証が必要ではあるが、全体計画をより効率的かつ戦略的に進めていくためには、計算機を用いたシミュレーションの実施が重要となる場合が大きい。

○近年は、計算能力・数値解析能力が飛躍的に向上しており、原子力機構においては、特に実用化プロジェクト研究開発において、シミュレーション技術の戦略的な維持・強化の方策について検討を行う。

<3.中期的に検討を要する課題>

Action1:我が国が戦略的に整備すべきインフラについての検討
→ 対応主体:作業部会 期限:―

○2.Action1による整理も踏まえ、当作業部会において、我が国の有する施設の現状を俯瞰的に見渡した上で、今後我が国の原子力の研究開発を進める上で戦略的に整備すべき研究開発インフラについて整理する。

○また、当該インフラについてall-Japan体制で具体化に向けた設計・整備を行う方策や、戦略的に最大限有効活用を図るための方策についての検討を行う。

Action2:研究開発施設利用に関する安全確保の合理化への技術的検討
→ 対応主体:JAEA・関係者 期限:本年中

○現在、我が国の研究炉等の稼働率は他国と比べて低い水準にあることが指摘されており、この要因の一つに定期点検期間の長さや炉のスクラム後の復旧までに必要な手続きの違いによるものがある。

○多様な研究開発インフラを保有し、それらの保安管理について豊富な経験と、関連する技術的知見を有する原子力機構において、安全性を損なわないことを前提とした上で、研究施設の特性を踏まえ、原子力施設に関する安全確保の仕組みの合理化・効率化についての検討を行う。

Action3:真の意味で外部に開かれた研究開発インフラの活用促進に向けて
→ 対応主体:作業部会・JAEA 期限:本年中

○これまで、原子力機構の持つ施設の共用については、原子力機構が研究開発を行う中で、一部開放された施設を外部が利用するといった側面が強かった。

○今後、こうした施設共用に加え、高速増殖炉や再処理のような大規模な研究開発プロジェクトについて積極的に民間や大学といった外部研究者も巻き込んで研究開発を進めていくとの観点も踏まえ、真の意味で外部に開かれた研究開発インフラの活用に向けた抜本的な制度の改善について、原子力機構と連携を図りながら、当作業部会において検討を行う。

(3)原子力技術の戦略的な技術移転・産業化について

<1.総論>

技術開発主体、関連メーカ、事業実施主体と3つのプレイヤーがいる中で、今後は、より有機的・戦略的な連携を図りながら計画を進めていくことが重要。
今後、「高速増殖炉実証炉」「第二再処理工場」「高レベル放射性廃棄物の地層処分」など重要な原子力技術について事業化に向けた取組の加速が見込まれており、ウラン濃縮技術や再処理技術といった過去の技術移転の状況を教訓として踏まえつつ、円滑かつ戦略的に技術移転・産業化を進める必要がある。

<2.早急に対応すべき事項>

Action1:既移転技術に関するフォローアップの強化
→ 対応主体:JAEA・関係者 期限:本年中

○既に技術移転された軽水炉再処理技術やウラン濃縮技術、さらには現在商用施設の建設が進んでいるMOX燃料加工技術については、原子力機構と日本原燃等の間でいろいろな協力の枠組みがあるが、本年中にその活動状況をレビューし、技術の検証データを実用化プラントへ反映するなどのフォローアップの強化を実施。

○また、技術移転以降も産業化の状況に応じては、原子力機構による継続的な基礎基盤研究への取組が望まれる。制度上や予算上で制約がある場合には、関係者で検討を行い、必要に応じて改善を図る。

Action2:今後の技術移転に向けての関係者間の枠組みの強化
→ 対応主体:JAEA・関係者 期限:本年中

○現在、高速増殖炉サイクル技術については、文部科学省、経済産業省、原子力機構、電気事業連合会、メーカからなる五者協議会を設置して連携を行っているところ。

○今後原子力機構からの技術移転が見込まれる高レベル放射性廃棄物の地層処分技術や原子炉デコミッショニング技術(ふげん廃止措置)などについても、本年中に現状の枠組みをレビューした上で、五者協議会を参考に、最終的な実施主体となるべき民間も含めた適切なメンバーによる連携のための枠組みを強化する。

Action3:技術開発段階における適切な知識の集約・伝承の仕組みを強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○将来の技術移転・産業化を念頭に、技術開発段階から、研究開発成果の集約と知識ベース化や知識伝承のための仕組みの強化策について原子力機構において検討する。

○この際には、技術情報と運転情報で扱いが異なることに留意すべき。

Action4:卓越したプロジェクトリーダーの養成のための環境整備について
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○技術面についても精通し、プロジェクト全体を俯瞰的に掌握しつつ、個人としても情熱を持ちプロジェクト推進の原動力となるリーダーの存在は極めて重要である。

○原子力機構において、原子力プロジェクトは長期間に渡ることも念頭に、単にトップ人材だけでなく中堅・若手なども含め、リーダーを生み出す職場環境や制度について検討を行う。

<3.中期的に検討を要する課題>

Action1:技術移転・産業化に向けたモデルケースシナリオの提示
→ 対応主体:作業部会 期限:―

○当作業部会において、これまでのウラン濃縮等の際の教訓も踏まえ、今後見込まれる技術移転・産業化の事例を具体的に想定し、参考となる適切なモデル的シナリオを提示するとともに、重要配慮事項を整理する。

Action2:技術開発段階から産業界による評価の強化
→対応主体:関係者 期限:―

○例えば、高速増殖炉サイクル技術については、電気事業者が最終的な事業化移行の経済性を含めたエンジニアリングジャッジメントを行うような体制整備を図ることとしており、他の技術開発分野についても、特性に応じて、可能な限り初期の段階から産業界による評価や要求事項の明確化などの関与を得ることが重要である。

○このような仕組みの整備に向けて、2.Action2による枠組みにより、関係者間で具体的な方策を検討する。

Action3:技術移転・産業化に伴う組織・人材の適切な移行
→ 対応主体:作業部会 期限:―

○技術移転・産業化において、単なる技術情報だけでなく、「人」の円滑な移行が重要である。

○技術移転に伴う人材・組織を円滑かつ戦略的に移行するための方策について、関係機関と連携を図りながら作業部会において検討を行う。

(4)原子力機構の基盤的機能について

<1.総論>

我が国の原子力黎明期から発展期にかけて、その基礎基盤となる技術開発を遂行してきた原子力機構の役割は大きい。
 引き続き、我が国の原子力基盤を維持・強化していくためには、産業界や大学等のニーズをくみ取り、我が国の原子力界の中で真に中核となる機関として、原子力機構の組織・体制の改革を図るとともに、その高い技術力・インフラ・人材をall-Japan体制で戦略的に有効活用していくことが重要である。

<2.早急に対応すべき事項>

Action1:制度上の隘路の整理
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○原子力機構においては、設置法、国の定める中期目標、関連する報告書や予算措置等、国から与えられた方向性に沿って、研究開発を実施しているが、これらが、原子力機構の柔軟かつ臨機応変な研究開発活動の実施に際し、制約条件となっている可能性が指摘されている。一方で、こうした制約条件が実質的に研究開発活動の弊害になる状況は希であり、大方のケースにおいては、運用の範囲内で十分に適切な対応を図ることが可能との指摘もある。

○こうした点を踏まえ、原子力機構を取り巻く制約条件の状況(実質的弊害の有無等)について整理するとともに改善策を検討する。

Action2:総合的マネージメント機能の強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○原子力の研究開発については、個々の要素技術をトータルインテグレートするマネージメント力や、立地対策や国際動向等にも適切に対応しながら俯瞰的な視野を持って進めていく能力が重要であり、このための、戦略的なプロジェクトマネージメント機能や経営機能の強化が原子力機構に求められる。

○原子力機構において具体的な取組に向けた検討を行う。

Action3:国際対応機能の強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○今後原子力研究開発を進める上で、戦略的な国際協力の展開や核不拡散動向への的確な対応が重要となる。

○原子力機構において、関係機関との間での連携強化を強め情報共有を図るとともに、海外事務所(ワシントン事務所、パリ事務所、ウィーン事務所)の活用策など国際対応機能の強化策について検討を行う。

Action4:旧原研、旧サイクルの融合加速
      → 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○統合によるシナジー効果をより一層高めていくため、特に高速増殖炉、再処理の分野で基礎研究を実施している人材も積極的に活用して体制を強化する方策を原子力機構において検討を行う。

Action5:原子力エネルギー基盤連携センターの強化
→ 対応主体:JAEA 期限:次期中期計画に反映

○原子力機構に設置されている原子力エネルギー基盤連携センターの機能を強化し、より民間側のイニシアティブが強化され、これまで以上に民間企業の参入を促進するとともに、今後、サイクル関連ホットラボ等を用いた産官連携についても対象とすべく、検討を行う。

<3.中期的に検討を要する課題>

Action1:日本原子力界の中核としての原子力機構の基盤強化
→ 対応主体:作業部会 期限:―

○我が国唯一の総合的な原子力研究開発機関である原子力機構を産官学で広く活用し、世界最先端の原子力拠点、原子力道場、原子力の万屋相談所としての多面的な機能を有する中核機関としていくことが重要である。

○当作業部会において、原子力機構と産学官の戦略的連携に関する抜本的方策について検討を行う。

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 
原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力基盤強化作業部会

主査 田中  知 東京大学大学院工学系研究科教授

  市村 敏夫独立行政法人日本原子力研究開発機構核燃料サイクル技術開発部門長

  井上  正財団法人電力中央研究所首席研究員

  小川  徹独立行政法人日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門長

  小澤 通裕社団法人日本電機工業会原子力技術委員長

  高橋 祐治電気事業連合会原子力部長 

  丹沢 富雄東京都市大学工学部特任教授

  長﨑 晋也東京大学大学院工学系研究科教授

  服部 拓也社団法人日本原子力産業協会理事長

  村上 朋子財団法人日本エネルギー経済研究所戦略・産業ユニット原子力グループリーダー

  山名   元京都大学原子炉実験所教授

お問合せ先

研究開発局原子力計画課