原子力分野の研究開発に関する委員会(第27回) 議事録

1.日時

平成21年4月16日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 3F 2特別会議室

3.出席者

委員

田中主査、本島主査代理、秋庭委員、石田委員、伊藤聡子委員、伊藤範久委員、井上委員、岡﨑委員、長﨑委員、中西委員、服部委員、早野委員、山口委員、山名委員

オブザーバー

櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、山野原子力計画課長、板倉原子力研究開発課長、林量子放射線研究推進室長、次田放射性廃棄物企画室長、稲田原子力研究開発課課長補佐、山本核融合科学専門官

4.議事録

【山野原子力計画課長】

 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第27回原子力分野の研究開発に関する委員会を開催いたします。
 本日は第5期の最初の委員会ですので、冒頭便宜的に事務局であります私のほうで進めさせていただきます。
 それでは、まず初めに、大臣官房審議官の櫻井のほうから挨拶をさせていただきます。

【櫻井審議官】

 おはようございます。原子力の研究開発を担当しております審議官の櫻井でございます。
 山野のほうから申し上げましたように、本委員会が所属しております科学技術・学術審議会が新たな第5期に入ることに伴い、本委員会も新たに秋庭先生、伊藤聡子先生、服部先生の3名の方に、ご多忙の中、委員をお引き受けいただき、また、他の先生方におかれましても、引き続き委員をお引き受けいただきありがとうございます。
 これは釈迦に説法でございますが、今、原子力を取り巻く動きというのは、G8サミットあたりと前後しまして、地球環境の問題、CO2の排出というようなところに実践的に重点が置かれているわけですが、原子力のエネルギーというものは、その中での役割の重要性というものが、さらに認識されているところでございます。これもエネルギー安全保障の観点、それから今申し上げましたような観点を含めまして、ますますもって国として力を入れていくという状況になっているかと思います。
 さはさりながら、一方で足元を見ますと、再処理工場の話や、「もんじゅ」の運転再開の話、さらには高レベル放射性廃棄物というようなことにつきましても課題が山積しておりまして、我が省としましても、係る課題に対しまして、どのように貢献をしていけるのかということについて政策的に十分に議論を進めていく大事な節目に来ているかと思います。
 よりまして、後で事務局のほうからも提案がございますが、少し原点に返った形で原子力の研究開発というものを見つめたときに、基盤というもの、人材とか、研究開発体制とか、いろいろなことがあるかと思いますが、さらには事業化にどうつなげていく、また、国として技術をどういうふうに蓄積していくというような観点も含めまして、原子力基盤強化作業部会というものを設置するとことも後でお諮りしたいと考えてございます。
 今日は限られた時間ではございますが、何卒原子力分野の研究開発の推進に向けての忌憚のないご議論・ご意見を賜りたいと思いますので、本日はよろしくお願いします。

【山野原子力計画課長】

 それでは、資料1‐1に名簿がございます。第5期ということで、これからの2年間を念頭に置いての委員会のメンバーでございます。
 田中主査をはじめとして、○印がついていない方は前期から引き続きお願いする方でございます。また後ほど、それぞれ一言ずつご挨拶をいただこうと思いますので、簡単にしかご紹介しませんが、○がついてございます秋庭委員、伊藤聡子委員、服部委員につきましては、今期から新しくお願いするということでございます。委員の皆様方におかれましては、積極的なご協力をよろしくお願いいたします。
 なお、田中委員におかれましては、この委員会の親部会であります研究計画・評価分科会の会長からから指名を受けて、引き続き主査を務めていただくということになってございますので、皆様よろしくお願いします。
 それでは、ここから田中主査に議事の進行をお願いしたいと思います。
 あわせて、規定に基づきまして、主査代理を指名するということになってございます。こちらもあわせてお願いいたします。

【田中主査】

 ただいま話がございましたが、私が引き続き、この委員会の主査を務めさせていただくことになりましたので、よろしくお願いします。櫻井審議官から話がありましたとおり、原子力をめぐる情勢は大きく変わっていく中で、文部科学省のこの委員会としても、そのような状況をよく理解して、的確な議論をし、それをいろいろな分野の政策等に反映していくことがあるかと思いますので、よろしくご議論をお願いいたします。
 まず、先ほど山野課長から話がありましたが、主査代理を指名させていただきたいと思います。私としましては、第4期に引き続きまして本島委員にお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 では、山野課長からありましたが、議事に入る前に、初めて参加される委員の方もいらっしゃいますので、皆様から一言ずつ簡単にご挨拶をいただきたいと思います。
 初めに、本島主査代理からお願いいたします。

【本島主査代理】

 今ご指名をいただきました本島です。田中主査をサポートさせていただくため主査代理をさせていただきます。私の専門はプラズマ物理学、それも実験を中心として、核融合分野全般でございます。3月31日に核融合科学研究所の所長の任務を無事終わりまして、名誉教授になっております。どうぞよろしくお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 それでは、名簿に沿いまして、秋庭委員のほうから順番にお願いいたします。

【秋庭委員】

 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の秋庭と申します。どうぞよろしくお願いします。
 消費者にとって原子力というのはなかなか難しい問題で、どのように自分たちが考えていったらいいのかという、分かりにくいところがあります。また、特にその研究分野におきましては、もっともっと自分たちの将来の電気や暮らしのことに関わることなのですが、またそこのところも分かりにくいために、見ない、考えないというところもあります。でも、しっかりと私たちも考えていかねばならない問題と思っておりますので、消費者の視点で、この委員会でもお話を伺い、そして、それをまた広く知らせていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

【石田委員】

 金沢学院大学学長の石田でございます。前期に引き続きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【伊藤(聡)委員】

 フリーキャスターの伊藤聡子と申します。私は専門家ではないのでが、素人の立場でいろいろな原子力施設に取材をさせていただいて、その様子をなるべくわかりやすく一般の方に知らせることができたらという立場で今までやってきております。
 原子力というのは、今後、日本にとっては欠かせないものであるにもかかわらず、なかなか一般感覚とは乖離しているという部分がありますので、何とかそこを埋めるべく、私も努力していきたいと思いますし、勉強していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【伊藤(範)委員】

 電気事業連合会専務理事の伊藤でございます。引き続き委員ということで務めさせていただきます。よろしくお願いします。
 一言、六ヶ所の再処理工場の関係で、トラブルなどいろいろございまして、皆様方にご心配をおかけしておりますが、何としても全力でやり遂げるということで頑張ってまいりたいと思っております。
 それと、今回のテーマになります原子力の基盤強化というのは、まさにこれから私ども電気事業が安定的に原子力を進めていく上でも、また、原子力産業が海外へ展開していく上でも、それから新規に新しい原子力を開発していく上でも大変大事なこと、重要なことだと思っておりますので、この場で何か申し上げることがあれば積極的に申し上げたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【井上委員】

 井上信と申します。昔、京都大学の原子炉実験所の所長をしておりましたが、狭い意味の原子力の専門というより、私の専門は原子核物理学と加速器科学でございます。よろしくお願いします。

【岡崎委員】

 独立行政法人日本原子力研究開発機構の岡崎でございます。
 我々原子力機構は、この委員会でお示しをいただいた方針に沿って日本の原子力研究開発を支えるという、その責任を果たしていきたいと思っております。ただし、今日のご審議の課題も多くが私どもの原子力機構にかかわるところであるわけですし、「もんじゅ」の問題を含めて、しっかりと皆さん方のご指導に沿って、その責任を果たしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【長崎委員】

 東京大学の長崎でございます。引き続き委員ということで、よろしくお願いいたします。

【中西委員】

 東京大学の中西と申します。
 一言ということですが、私は放射化学に始まり、放射線の応用に長く関わってきており、今、農学部で植物を対象に放射線を利用したイメージングをしております。それから原子力グローバルCOEにも参加させていただいております。よろしくお願いいたします。

【服部委員】

 日本原子力産業協会の理事長をやっております服部でございます。
 初めてこの場に参加させていただきますが、私どもの協会は、前身の日本原子力産業会議ができましたのが1956年でございます。大変歴史のあるところでございますが、産業界の立場で日本の原子力の健全な発展を側面から支えていくという、そういう役割を担っているところでありますが、近年は新規に原子力を始めようとするような国々の支援だとか、あるいは人材問題にも深くかかわらせていただいておりまして、そういう立場から、この場でも微力ながら貢献してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

【早野委員】

 日本電機工業会専務理事の早野でございます。引き続きこの委員会に参加をさせていただいております。
 私はメーカーの立場から、いろいろご意見させていただきたいと思いますし、皆様のご意見も拝聴したいと思っております。いずれにしても、原子力の発展にはメーカーの役割が大変重いと思っておりますので、この場も十分ご意見いただきながら進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【山口委員】

 大阪大学環境エネルギー工学専攻の山口と申します。よろしくお願いいたします。先期に続きまして、今期も引き続き務めさせていただきます。
 私の専門は原子力工学でございます。それで、大学ということですので、原子力の分野では研究開発という側面と、それから原子力に携わる人材育成という側面と2つかかわっているということでございますので、この委員会の場で議論に加わらせていただいているということはありがたく存じております。よろしくお願いいたします。

【山名委員】

 京都大学原子炉実験所の山名でございます。
 専門はアクチニド化学、あるいは核燃料サイクル工学、再処理工学というのをやっておりますが、同時に私は京都大学原子炉実験所、全国共同利用施設でございますが、その共同利用に提供する実験設備を管理する責任の立場にも立っております。そういうことで、原子力全般、あるいは全国共同利用、そういった視点から意見を述べさせていただくことになると思います。よろしくお願いいたします。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。よろしくお願いします。
 それでは、これより議事に入りたいと思います。
 初めに、事務局のほうから配付資料の確認をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 まず、議事次第があると思います。個々には確認しませんが、資料1‐1から参考資料5まで非常に多くの資料が入ってございます。その都度、もし何か不備がありましたら言っていただければその都度対応いたします。
 また、最初ですので、議事次第を少し説明しておきますと、今日は第5期の最初ということですから、最初に若干形式的なところもあるのですが、いろいろなことを決めることは決めさせていただくという案件があります。メインの議事は2でありますが、今後原子力基盤強化作業部会を設置して議論していきたいと思っていますので、それについてどういうことを議論していったらいいかなどについて忌憚のない意見をいただければと思います。
 また、議事3以降は、「もんじゅ」をはじめとする既存の大きなプロジェクトの進捗状況の報告でございます。これらはごく簡単にご説明するということで対応させていただければと思っています。
 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 では、最初の議題であります「原子力分野の研究開発に関する委員会について」であります。事務的なこともございますが、事務局のほうからご説明お願いします。

【山野原子力計画課長】

 資料1‐1は当委員会の構成員名簿です。なお、本日は大島委員と和気委員のお二人がご欠席でございます。
 次に資料1‐2でございますが、これはこの委員会の運営規則ということですが、ここにありますように、2年ほど前の平成19年2月15日に決めたものでございます。原子力以外にもいろいろな分野別委員会がありますが、それらと変わるところはございません。
 少しだけご説明しておきますと、例えば第2条にありますように、「特定の事項を機動的に調査するため、作業部会を置くことができる」ということで、どういう作業部会を置くかということについては次の資料でご説明します。
 また、委員に係る話としましては、2ページ目にありますが、例えば第4条ですが、この会議は公開するということですから、一般の傍聴も入っているところでございます。
 また、議事録につきましては、第5条にありますとおり、議事録を作成して、これを公表するということになってございます。
 こういう形で進めさせていただければと思ってございます。
 次に資料1‐3でございますが、作業部会の設置についてですが、ここにありますように5つの作業部会の設置を考えてございます。そのうち、上の4つ、原子力研究開発作業部会、研究施設等廃棄物作業部会、核融合研究作業部会、量子ビーム研究開発作業部会、これらにつきましては引き続き設置する作業部会でございます。
 また、後ほど説明しますが、一番下の原子力基盤強化作業部会につきましては、研究開発のインフラであるとか、人材とか、また事業化といったことを考えながら柔軟に政策課題に対応、検討していくというものですが、これにつきましては新たに設置したいという提案でございます。
 なお、前期で設置しておりました大強度陽子加速器計画評価作業部会につきましては、基本的にはハードウエアがほぼ完成してきたということですので、作業部会は当面設置しないということにしたいと思っております。
 このように今期も、この5つの作業部会を設置したいということが事務局からの提案でございます。
 参考として、それぞれの作業部会のメンバー案がありますが、それぞれの作業部会のメンバーにつきましては主査が指名するということになっておりますので、田中主査と相談しながら、大体このようなことで考えているということでございます。
 次に資料1‐4ですが、この委員会の1つの使命としましては研究評価を行うということがあります。それで、今年度の研究評価の進め方ということで、基本的な考え方が最初に書いておりますが、何か新しい事業を行おうとすれば事前評価を行う、事業が終わる場合は事後評価を行うということでございます。あわせて、5年以上継続する課題につきましては、原則として3年ごとに中間評価を行うということでございます。
 そういうことで言いますと、新しい課題がある場合は、8月くらいまでに出てきますので、その場合は8月頃に事前評価を行うということでございます。
 2番目の中間評価ということにつきましては、今年度評価を行う課題としましては、まさに2年前につくった原子力人材育成プログラム、これは経済産業省と連携してつくったプログラムですが、これが3年目を迎えるということで、今年は中間評価を行う必要があるということでございます。また、今のところは事後評価というものはないと考えてございます。
 ということで、予算要求に先立ってということですから、また新しい課題については事前評価を、また原子力人材育成プログラムについては中間評価を8月頃に行う必要があるということでございます。
 説明は以上ございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの説明に関してご質問等ございましたらお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、了解されたということでございますが、原子力分野の研究開発に関する委員会運営規則については、当委員会として、引き続きこの規則に則って会議を進めていきたいと思います。
 また、作業部会の設置につきましては、当委員会として資料1‐3に示された作業部会を設置することにいたします。なお、作業部会に所属する委員及び主査については、山野課長から説明があったとおり、委員会運営規則第2条第2項の定めるところにより、委員会の主査が指名することになっておりますので、私に一任させていただきたいと思います。
 平成21年度の研究評価計画につきましては、この計画に沿って進めることとし、事前評価対象課題については、決まり次第、委員の先生方に提示するよう事務局にはお願いしたいと思います。
 事務的なことがいくつかございましたが、次が議題の2で、本日のメインあります。「原子力基盤強化作業部会(新設)における議論の論点について」です。
 まず、事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 資料2‐1と資料2‐2がありますが、資料2‐1は設置紙ということなので、もう1つのA3の資料2‐2に基づきまして簡単に説明をいたします。
 これはあくまでも議論用のたたき台ということですから、別にこれにとらわれる必要はなく、これをもとにどういうことを議論すべきであるとか、こういうことが抜けているとか、そういうことについていろいろご議論していただければというために用意した資料でございます。
 上のほうにあります背景説明というものは、皆さんご存じなので説明は省略いたしますが、少なくとも今後においても原子力は当然必要であるということは皆さんご存じのとおりでございますし、それと、ここに書いていませんが、今後変わってくることとしましては、今までは、どちらかといえば、原子炉、特に軽水炉を中心にいろいろやってきたのですが、今後は核燃料サイクルの話がいろいろ出てくるとか、炉としてもFBRが出てくるとかということで、いろいろなものに対して対応できる技術をきちんとつくっていかないといけないということがおそらく1つ必要であろうかと思います。
 また、言葉は適切でないかもしれませんが、一昔前の右肩上がりから原子力も安定期に入ってきたということですから、人材問題とか、そこらをどうやっていくかということを考えていく必要があろうということでございます。
 そういう中であっても、いろいろ書いていますが、きちんとした広いすそ野を持った原子力の基盤をつくっていく必要があろうということでございます。そういうことで見て、どういうことが論点として出てくるかということを4つのカテゴリーに分けて簡単に整理したのがこの資料でございます。
 それに基づいて説明いたしますと、最初の論点としましては人材の話。これにつきましては、今日の服部委員が座長をされまして、日本原子力産業協会で原子力人材育成関係者協議会をつくって、ここ二、三年ずっと議論してきておるところでございます。そういうところと同じ議論をしても意味がないので、そこらの成果をもとにして、今後どういう人材が本当に不足してネックになるのかというようなことや、どういうタイムリーな対策を打つべきかということでございます。
 そういう場合には、当然、質か量かといった話もあれば、当然、大学側から若手の優秀な人材が次々と出てくる状況ができれば、それはもちろんいいのですが、不足する人材としては、一部言われているような話で言うと、10年、20年後を考えると、安全規制サイドの議論ができるような専門家というものがいなくなるのではないかなど、そういうことを考えながら、議論をしたらどうかということでございます。
 また、少なくとも2年前に大学などへの支援策ということで補助制度をつくっているわけですが、そういうことがきちんと効果で出てきているかどうかとか、もう少し一歩進んだような取り組みが必要ではないかということ。たまたまここは大学と産業界と書いていますが、もっと大きな取り組みやもっと重点的な取り組みなどを考えられないかというのが1つのポイントでございます。
 2番目の論点が、インフラについてです。インフラも、原子力の世界もほかの分野と一緒なのですが、最近のIT流行で、かなりシミュレーション技術が進んできて、シミュレーションやコールド試験といったようになってきている感じがあるのですが、炉であれ再処理であれ、最後はホット試験で確かめる必要があるわけでございます。しかし、大学でも原子力機構でもそうかと思いますが、ホット施設を持っているところは苦労だけが多くて、施設も老朽化しているという状況があります。そういうことなので、まず、我が国における研究炉とか、核燃料系のホットラボなどは、どのようなものがあって、どれぐらい活用されているかということをまず出発点にした上で、今後、オールジャパンとして整備していくとしたら、どういうものが必要になるかというようなことをまず議論したらどうかということでございます。
 あわせて、こういう整備する主体は、おそらく原子力機構が中心になると思いますので、その際にオールジャパンで使っていくというような環境整備や、仕組みといったことが要るのであれば、新たな仕組みなどを考えたらどうかというのが論点の2番目でございます。
 論点の3番目は、技術移転といいますが、事業化への移行ということでございます。これにつきましても、ここには書いていませんが、今まで濃縮や、再処理など、技術移転をしてきて、当時の反省といいますか、当時のことを表に出して、ああでもない、こうでもないと議論するつもりはありませんが、やはりいろいろな反省材料とか、教訓にすべきことがあったと思うので、そういうことも踏まえながら、いろいろと考えたらどうかということでございます。その中で、ここでは大げさにビジネスモデルとかと書いていますが、単純に今までのビジネスモデルは、国費を使って原子力機構が開発して、それを技術移転したら、すぐ産業化できる、ある意味で線形モデル的にやったわけです。炉でいいますと、単純に実験炉、原型炉、実証炉、実用炉という感じでやっていたのですが、必ずしもその線に沿ってうまいこといっているかどうかというのはあるかと思いますので、そういうことをもう一度、あまり理論的な議論する必要はないとは思いますが、考えるべきであろうと思います。
 また、その際には、いろいろリンクするのですが、単純に今までの研究成果をドキュメントとして渡すとか、ノウハウを何かで渡すということで技術移転ができるというものではなくて、日本の社会というのは、人の移転というのはなかなかないものですから、本当に技術移転を考えるのであれば、人とか組織の移転も含めて、あと一歩踏み込んで考えたらいいのではないかということ。
 また、そういう際には、客体としては技術開発主体、それと事業主体、その間に実はメーカーというのがあるのですが、そこらがそれぞれの研究開発段階とか、移行段階、事業化段階で、どのように役割分担、戦略・連携をとっていったらいいかということ。また、そのように将来的な技術移転を念頭にするプロジェクトというのが、研究開発段階からなるべく経済性がいいものをつくるとか、そういうコスト意識を持つことが最終的にはきちんと事業化するということ。そのようなマインドだけではなく、研究開発段階からそういうことがきちんとビルドインされるような研究開発の仕組みがあってもいいのではないかということ。
 また、技術移転後はどうするかということですが、これも例えば濃縮については、旧動燃から日本原燃ということで、現在の原子力機構はほとんど研究をやめているのですが、何かあったときには、今の原子力機構に聞いても濃縮を分かる人はいないといったような状況になるわけで、別に技術移転したら同じことを続ける必要もないのですが、ゼロにする必要もなくて、例えば安全研究とか、基礎的な研究のようなものは、やはり残していったほうがいいのではないかとか、そういうことをひとつ議論したらどうかということでございます。
 次に論点の4ですが、繰り返しの話になりますが、今よりも例えば20年後ぐらいを考えて、日本がきちんと持つべき能力はどういうものかということです。多少ペンが走っているようなところもあるのですが、例えば軽水炉に何かあれば、旧原研や大学など、ある程度万屋相談所的な機能もあったのですが、今後、再処理や濃縮、FBRなどの新しいものが入ったときに、そういう機能を維持していくべきかどうかということ。
 また、それぞれで人材育成をきちんと行っていくというのは、やはりなかなか難しい状況もあるので、例えば原子力機構のホット施設なども使いながら、日本原燃の再処理を運転する人も、原子力機構に来てから、東海の再処理工場を使って経験を積んで、きちんと本格的なオペレーターになるということとか、一部なっているところもありますけど、これも少しペンが走っていますが、原子力道場的な機能を何か考えていったらいいのではないかということ。
 あと、まさに今の熟練の研究者・技術者、50代ぐらいの人が大量に退職していくわけです。それに合わせてノウハウが消えていくということも多少心配されているところもありますので、そういうこともどうやったらいいかということを考えたらいいのではないかということでございます。
 これらそれぞれの論点の1から4というのは、実はそれぞれリンクする話なので、独立的にあまり硬く考える必要はありませんが、このようなことについて、今後、いろいろ議論しておく必要があるのではないかということで作業部会をつくりたいということでございます。
 まさにこのペーパー自体は、論点になりそうな項目をとりあえず取り上げただけですので、この資料の良し悪し云々よりも、議論するに当たって、こういう観点をもっと入れるべきであるとか、こういう観点が抜けているとか、そういった議論を本日お集まりいただいている有識者の皆さん方で、いろいろな忌憚のないご意見をいただければということでございます。
 説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 資料2‐1のほうには、今説明があったようなことが書かれており、また次のページにはメンバーやスケジュール等も書かれてございます。ここにありますように、私がこの作業部会の主査も務めさせていただく予定ですが、来週この作業部会の1回目を予定しております。これから議論の時間として、40分くらい取っておりますので、作業部会で検討するに当たっての注意や要望などさまざまな点について、皆様方の忌憚のないご意見をいただけたらと思います。時間は十分ございますので、いろいろとご議論いただけたらと思います。順不同です。
 まず、岡崎委員、お願いします。

【岡崎委員】

 原子力機構にかかわるところもかなりありますので、冒頭発言をお許しをいただきたいと思います。
 櫻井審議官、あるいは主査のご発言のとおり、今、原子力は大変大事な時期を迎えてきている、こういう中で今回、この委員会で基盤強化ということについてお取り上げをいただくということは、原子力機構にとっても、あるいは日本のこれからの原子力にとっても大変大事な視点であると思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいということを申し上げます。まず、資料2‐2のところの冒頭の「黎明期」から「発展期」から「成熟期」という、ここの位置づけについて、本当にこれから成熟期に入るのだろうかということにいささか違和感を持つわけであります。今までの数十年間の発展期を第1期の発展期とするならば、決して成熟期ではなく、第2の発展期ではないだろうかと思うわけです。まさに原子力を完成していくためには、「これから」というところに書いていただいたとおり、まだまだ多くの課題があるわけです。しかも、もう1つ大事な視点は、国際的な動きの中で、果たして日本がいかなる役割を果たしていくのかという観点からするならば、決して成熟期ではなくて、これからの発展に、その役割をどう果たしていくかという視点が大事ではないかなということを申し上げた上で、この基盤強化という観点で幅広くご議論いただくのは大事なことですが、少し焦点を絞って議論をしていただくということが大事ではないかということで、その焦点を2つ申し上げたいと思います。
 第1は、もちろん大学の皆さんとも非常に密接に関連する将来の人材育成であるとか、あるいは安全の基盤を形成するような将来の原子力全体の発展を支える基盤というもの、あるいはその技術・研究というものがどうあるべきかという、いわゆる全般的な基盤の問題についてご議論をいただくというのが第1点です。
 もう1点は、まさにこれからというように書いていただいているとおり、実は多くの具体的なミッションが今存在をしているということで、何としてもこれを1つ1つ具体的に解決をしていかなくてはなりません。ましてや我々が独立行政法人になったときの集中と選択という観点も入れなさいということ、今の社会全体がそういう厳しい要求があるということを踏まえて、こういった具体的なミッションに対し、どのように技術開発・研究開発が対応していくべきなのかということについて、それぞれの課題ごとに少しプロジェクト的なものと基盤的なものをどう組み合わせながら取り組んでいくべきなのかということ、あるいは、その役割として大学・研究機関、あるいは産業界の皆さんとどう連携すべきかということ、これらと今の取り組みに照らして、ぜひお取り上げをいただいた中で、ではその中で基盤というものをどうしていくのかという具体的な提言にぜひつなげていっていただきたいと思っております。
 ちなみに、資料2‐1の中に、原子力機構として少し気になる文言があるのですが、2の「検討事項例」の中の2つ目の○の「原子力関連の研究開発施設の有効利用」の最後のほうに、「原子力機構が有する施設については、必ずしも大学や産業界の外部利用が進んでいるとは言い難い状況」というご指摘がございます。決して百点満点であるということを申し上げるつもりもありませんが、我が原子力機構も、独立行政法人になったときに共用というものが非常に大きな使命であるということを法律の中にも明記をしていただき、今、我々の17施設が共用施設として位置づけられておりますが、実はその共用の状況は、約4割から、施設によっては9割近くが外部の方にご利用いただいているということであって、決して外部利用をおろそかにしているというわけではないということだけは、ぜひご理解をいただきたいと思います。
 ただし、今、何が起こっているかというと、正直言って、この共用施設に該当する施設をこれから運転していくことすらままなりません。これは財政的な制約、あるいはもちろん人的な制約もあるのですが、こういった基盤として、日本全体、外部の人にも利用していただくためには大きなリソースが必要であり、こういった観点を忘れて議論されると大変困った状況に実はなってきつつあるという状況なものですから、最初に申し上げた第1点、第2点も含めて、ぜひこの議論をしていただくときには、リソースの最適な配分をどうしていくのか、その負担は国が全部負うべきなのか、あるいは、その関連する民間の方々にもご支援をいただく方法はどういう形がいいのだろうかという、その役割分担といったことについても、ぜひしっかりとご議論をいただいて、具体的な提言としてつなげていっていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 たまたま、私ども原子力機構の第1期の中期計画は今年度いっぱいで終わります。そろそろ第2期の中期目標・中期計画のご検討をいただかないといけないという段階に入りますので、基盤強化のこの議論が我々の次の中期計画の策定にぜひしっかりとつなげていくことができるということにつなげていっていただければと思います。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。長崎委員どうぞ。

【長崎委員】

 私はこの作業部会の委員候補の1人になっておりますので、この作業部会で議論する中での枠組みのことについて少し確認したいということで、ご質問をさせていただきたいと思います。
 1つ目は、強化をしていくという提言を行っていく中で、いわゆる予算的な裏づけがあるのか、そこをどこまで考えておくのかということです。例えば、人材育成をするといったことを考えたときに、当然のように予算について考えます。あるいは、例えばこういったことを、これはある程度仕方ないのですが、単年度予算で全部行う、単年度ごとに競争して行うというようなプロジェクトであると、教育という面、あるいは施設の整備という面では非常に大きな税金の無駄遣いになりますので、その辺をどう考えるのかということが知りたいのが1点目です。
 それから2つ目ですが、これは原子力人材育成のところで、今、服部委員の日本原子力産業協会のほうが取りまとめられている原子力人材育成関係者協議会のロードマップのワーキンググループのメンバーもしておりますが、そのロードマップのところでは、一応対象は国内の人材、日本人、それから核分裂のエネルギーを対象にしています。ここで言う原子力人材というのは、核融合炉であるとか、あるいは放射線利用であるとか、そこまで広げて考えるのか、それとも先ほど少し議論があったように、ある程度絞っておいたほうがいいのか、その辺の枠組みを親委員会としてどう考えておくのかということを知りたいと思います。同じようなことは施設についても言えて、韓国にいろいろな炉があり、ヨーロッパにいろいろな炉があります。ヨーロッパではACTINETが動いています。それらに一緒に積極的に係わるというところまで考えるのか、それとも、あくまでドメスティックに考えるのか、そこの枠組みを知っておきたいというのが2つ目の質問です。
 3つ目の質問は、先ほどの岡崎委員の認識と少し違うところがあるので、そこで民間と原子力機構との関係について確認しておきたいのですが、基盤強化ということについては、当然、原子力機構に大きなご尽力をいただかなければいけないというのは、それはそのとおりだと思います。ただし、これからいろいろとプルサーマル、それから再処理の事業、高レベル放射性廃棄物の処分事業といったものが進んでいき、いわゆる民間事業というものが進んで来たときの民間と原子力機構との関係についてどう考えるのか。外部にもいろいろ使われているということですが、原子力機構の外部との協力が本当に十分であるのかどうかということを、いろいろな場で言われているわけです。民間事業と国の事業の役割は違うという割り切りがどこかにあるのだとしたら、きれいごとを報告書に書いても仕方がありませんから、実際に原子力機構が民間事業に協力するのだとしたら、それはどこまでできるのかということが3つ目の質問です。
 それから、これが最後ですが、4つ目は、こういう議論を行っていくと、最後は原子力機構の組織というのは一体どうあるべきかに、かなり係わってくるところがあると思うのです。基盤技術と、それから開発技術というのがかなりあって、そこまで踏み込んだ議論をするのか、それとも、これは原子力機構の話なので原子力機構が考えるべきであるとして、その辺はある程度オブラートに包んだ形にして、あくまでやるべき方向性でとどめていいのということが4つ目の質問です。

【田中主査】

 事務局のほうから、まずお願いします。

【山野原子力計画課長】

 長崎委員が言ったことも踏まえて作業部会で議論すればいいと思うのですが、1つずつ言うと、まず予算的な裏づけということですが、重要だと思うことについては当然やります。やろうとすれば、まず予算を使うわけです。予算措置をするほうが法律をつくるより簡単ですから。いろいろな検討課題はあるわけですが、何でもいいのですが、一歩ずつでも進むものについては、どんどん進ませていって具体化していき、具体化していく過程では、当然、予算措置をするものはするという大前提でやるつもりです。そこは、取りあえずきれいごとを書いたけど、後で予算がないからできませんでしたとはならないようにしたいと思います。当然、重要なものは、きちんと予算措置するという前提で、少し頑張ってこの夏ぐらいまでに一次レポートでまとめたいと思っているわけです。
 それと、人材のカテゴリーをどうするかについては、そんなに固定的に考えているわけではないのですが、やっぱり中心は、どうしても原産協会などで行ったような、基本的にフィッションのということになるのだと思いますが、そしてそこは国内ということになるかも知れませんが、一方で韓国の研究炉を使うという話が本当に合理的であれば、別にそういう政策を打ち出してもいいと思いますし、何かのカテゴリーを絞る必要もないのではないかと思います。ただ、何でもかんでもやって、大風呂敷を広げ過ぎて、発散して、きれいな文章だけできましたとはしたくないという気はしますが、何かやろうとしたときに、ここもきちんと入れたほうがいいとか、そういうのがあればどんどん入れていけばいいのではないかと思います。
 次に、原子力機構と民間との関係や、原子力機構の在り方みたいな話もありましたが、原子力機構だけで全てできるわけでもありませんから、原子力機構と事業主体とメーカーとの関係というのは、いろいろなプロジェクトを行うときに出てきますので、当然、メーカーも一緒に考えるところは考えるし、しかし基盤とか基礎とかになると、やはり原子力機構が中心になるということは、そのとおりだと思いますし、そういう意味で原子力機構の在り方論にも直結するということは私もそう思ってますが、ただ、こういう平場の議論ですから、どこまで生々しい議論にするかとか、そこらはどうしてもやりながらやるところはあるのですが、長崎委員が思っているようなことというのは、背景としては、私どもも同じような感じを持っていることかと思います。

【櫻井審議官】

 つけ加えさせていただきますと、この作業部会の設置の中で、なぜ長崎委員に入っていただいているかということが半分以上答えになっているのだと思いますが、そういうことをたくさん言っていただくために委員になっていただいているのだということだと思います。
 こういう会をつくって議論する機会というのは、先ほども言いましたが、大事な時期に来ているので、今一度原点に立ち返って議論をしていきたいということで、これはどうなるかはまた別な話ではありますが、内閣府での原子力政策大綱の話も議論の俎上に上がってくるようなタイミングであるということ、また経済産業省のほうでは、国際化の対応をどうするかということで、アジアの国々も原子炉を持ってくるという中でどうするということ、また、今岡崎理事長おっしゃいましたように、2期目の原子力機構の中期目標・中期計画というのがありまして、これは中期目標を役所が提示して計画を原子力機構がつくるということで、目標の提示に対しての計画ですから、この目標でどういうことを言うかということは非常に大事なことになるかと思います。
 そういうことを踏まえまして、忌憚のない議論をお願いしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 今、櫻井審議官からありましたように、いろいろな忌憚のないご意見をいただけたらと思います。
 中西先生、お願いします。

【中西委員】

 原点に立ち返ってとおっしゃったのですが、原子力にかかわる基盤研究といいますとまず、エネルギー関連の研究を考える傾向があり、放射線の利用分野にはあまり目が向いてないように思われます。例えば、どのように放射性物質が動いたのか、核物質が動いたのかということを知るためには、放射化学の観点が要ると思います。また放射線応用については、安全応用や健康面、特に医学の分野が大切ですが、この分野はかなり進展してきていることは周知の通りです。しかし医学以外の分野でも、研究を支えるための重要なツールとしての放射線やアイソトープの利用があります。原子力政策大綱をつくるときも、放射線の利用は原子力研究の中に入るということで、特に分けては出さないことになったのですが、放射線やアイソトープの利用は非常に大切な分野だと思います。
 放射線が身近でなくなった大きな理由は、大学や研究機関でも放射線やアイソトープを使う人たちが原子力関連分野以外にはほとんどいなくなったことです。昨年、少し調べましたところ、ある理学部ではアイソトープを購入した件数がゼロだったように、身近にはアイソトープを使った研究が全く見られなくなってしまっている状態です。放射性核種の分離や濃縮など、原子力関連の研究でもエネルギー関係の研究でも、化学的な知識が非常に必要だと思います。
 実は今月の最初にアメリカで放射化学関連の国際会議がありましたので参加してきたのですが、アメリカでも放射化学、化学的な知識を持った人材をどうやって育てていくかということに非常に大きな危機感を持っていました。全米のどこの大学に放射化学の専攻がいくつあるかという統計では、ミズーリ大学が一番多かったのですが、他の大学では1つか2つ専攻が残っているところが少しあるだけでした。そこでかつて蓄積されてきた放射化学的知識をどう維持していけるのだろうかと、研究者が非常に大きな危機感を持って議論している状況です。日本では、あまりそういう危機感が持たれておらず、原子力というと大型の炉に関わる研究を中心に考えられています。原子力の基盤を支える研究として関連する基礎研究の分野をきちんと系統的に残していくことが肝要だと思いますので、これらの分野の人たちをどう確保していくのかということも、原子力研究の中にきちんと位置づけて議論していただきたいと思います。特に、日本原子力研究開発機構が非常に沢山の蓄積を持っていましたので、もうなくなってしまった部署も含め、化学的な観点も含めもっと残していっていただきたいと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。放射線利用か原子力エネルギー利用かということではなく、その両方が密接に関係しているところですから、それを全体的にどうやっていくのかが大事だと思います。
 山名委員、お願いします。

【山名委員】

 まず、この作業部会の設置については、文部科学省が原子力のすそ野の部分に注目されているということは非常に適切なことだと思っております。現場サイドから感謝申し上げます。
 私が一番気にしているのは、基礎研究の部分と応用工学研究の部分に明らかにミスマッチがあるということ。それから、ナレッジの流れに明らかに流暢でない部分があるということ。それから、集約されている経験とか知識がどこかで消えてしまっている。それが定式化されてない、体系化されてない、形式化されてない、そういうところに大きな問題があると思うのです。ですから、まず、そういった基礎から応用に向かう流れを、何かの体制的・制度的、あるいは何かのルール、そういったものでまとめ上げる仕組みを強化しないと基盤は強化できないわけです。では、そういう仕組みがきちんとできるには何が要るかというと、全体の情報なりナレッジをきちんとマネージしている、全体的にスーパーバイズするところの機能がもちろん大事でありまして、実はこれが文部科学省のお立場であると認識しております。そのスーパービジョンする力を強化するということが1つです。
 それから、我が国でなぜ流暢にならないか、いろいろ前から考えているのですが、1つ決定的な日本の弱さはテクニカルなフィードバックが極めて弱いということです。つまり、評価して、判断して、例えば駄目なものは駄目、伸ばすべきものは伸ばす、あるいはこの部分は大事だからまとめろという指示を出すとか、そういうフィードバック能力が極めて弱いような気がしています。戻れない技術は育たないというのが一種の宿命であると思っておりまして、つまり、評価とフィードバック、これをどう体系化していくかというのは非常に大きいのではないかと思います。
 岡崎理事長に一言申し上げさせていただきますと、旧原研という極めてすぐれた研究者集団があった。それから旧動燃という、ほどよくすぐれた応用工学集団があったわけです。私もその一員でございました。その融合がまだ不十分ではないかと外から見ていて常に感じております。すぐれた基礎研究集団に応用工学というのは、おそらく優秀な人であれば、あっという間にその勘どころはつかむはずです。応用工学だけで生きてきた人は、なかなか基礎に戻れないという、少し不可逆的なところがありまして、そこをうまくまぜるという経営感覚というのは非常に重要だと思っておりまして、その面で理事長のご采配に強く期待するということでございます。
 それから、原子力がこういったナレッジマネジメントとかフィードバックで弱くなった原因をもう1つ考えてみますと、やはり閉じていたということがあると思うのです。もともと原子力というのは学問がなくて、一般的な土木だとか、機械工学とか、原子核化学が集まって原子力という分野をつくったのですが、なぜか、その時点でその技術者集団が外に対して閉じてくる傾向があった。原子力工学という名前が大学からなくなっているというのは、ある意味で当たり前のことで、もとに開こうとしているということです。閉じた扉を開こうとしていると考えることもできる。原子力は、おそらく今後、原子力村で閉じていては基盤強化はできないと思います。一般工学・一般社会に対して、もっと開いていく姿勢をつくる。つまり、扉を開くということは、結局は応援団を増やし、自分の力も増やしていくのではないかと思っております。
 では、扉を開く具体策は何かというと、岡崎理事長は原子力機構の施設は今たくさん共用にしているとおっしゃいました。大変感謝申し上げます。ただ、おそらくそれを利用しているユーザーは、やはり原子力の中の人間が使っているのではないかと思うのです。私どもの京大炉は全国共同利用施設で、年間に大体4,500人日ぐらいの人間が来て実験するわけですが、ピュアな原子力屋というのはほとんどいないのです。農学、医学、工学、理学、そういったところから、まさに学際的に集まってきて研究をやっているというところなのです。そこで共同利用に接することによって核現象というものを理解し、その応用というものの可能性を理解し、ひいては原子力というものを見る機会を与えるのです。学生というのは、そこでその情報によって気づくわけです。ということは、あまり集中的に原子力ということで施設を運営するのではなくて、もっと広く、だれでも来てくださいというアクティビティーを高めることが結局はすそ野を広げ、基盤を強化する、そして社会コンセンサスの獲得にも貢献していくということになると思っております。
 そういうことで何を言いたいかというと、ユーザーに開ける共同利用というのをもう少し強化する余地がないのかと思っています。別に自分のところのために言っているわけではなくて、日本全体の基盤強化のためには、そういう広い利用施設を維持していくことが大事なのではないかと思うのです。もちろん、先ほど課長からご説明ありましたように、そういう施設の維持管理というのは極めて難しくなってきている。老朽化、資金、それから当然、研究施設等廃棄物の蓄積、そういった過去の負債というものもある。今、文部科学省は一生懸命そこを解決されようとされているので大いに私はそれを支援いたしますが、いずれにせよ、そういうことを解決していって開けた原子力をつくっていく、こういう道をつくっていくということをぜひご検討いただきたいと思っております。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 服部委員、お願いします。

【服部委員】

 ありがとうございます。先ほど来、私どもが運営しておりました原子力人材育成関係者協議会で人材育成の問題について議論したという話が出ておりますので、それを若干紹介したいと思います。
 この場は産官学、それから研究機関も含めて、広く原子力の関係の皆さん方にお集まりいただいて、この1年半ぐらい議論をしておりまして、今回、その結果をまとめて公表しました。先週の金曜日に公表したばかりでありまして、私どものウェブサイトでもアクセスできますので、ぜひ見ていただきたいと思っております。実は昨日まで2日間にわたって原産年次大会というのをやっておりまして、この話をその場でも皆さんに、特に海外の皆さんにお話をしたところ、大変関心が高くて、ぜひその中身を英文にしてくれないかという、そういう要望が強うございまして、至急それに対応したいと思っております。皆さんがお話になったいろいろな課題の中で、人材問題というのは、今回の年次大会の中でも共通した問題であります。人材とサプライチェーンの話は皆さんされましたが、それが現状のルネサンスを進める上での大きな課題と今考えております。
 今申し上げているのは原子力のエネルギーの利用の話ばかりしておりますが、人材問題の議論の中では、もちろん放射線利用についても重要だという話は当然出てきております。まだそこまで手が回らなくて、とりあえず現状のところをまとめたということでして、今回のレポートでは6点提言をしております。簡単に申し上げますと、初等中等教育におけるエネルギー・環境教育の重要性。2つ目が、原子力の魅力をもっと外に向かって発信していく必要があるのではないかということ。3つ目が、産業界と大学との連携といいますか、産業界のニーズが大学側に十分伝わってないというようなことが3点目。4点目が、いわゆる基礎・基盤技術といいますか、溶接だとか、振動だとか、そういう本当の基盤の技術、そういうものに対する若手の技術者を育成していく必要性。5番目が、国際的な人材を育成していく必要がある。6番目は、就職後の人材の育成を継続的に行うこと。というようなことで、当たり前のような提言になっているのですが、これらは広く原子力の関係者にアンケートをしたり、インタビューをしたり等々した結果から課題を引き出して、それをロードマップに展開しながら今のような課題をとりあえずまとめたということでございます。
 ぜひこれからも、これをいろいろな場面で使っていきたいと思っておりますが、さて、今日の資料を見せていただいて、私の感想的なことを申し上げたいと思うのですが、2点あります。
 1点目は、今しがた山名委員からも言われたところと共通するところがあるのですが、できれば地域との連携というようなところ、地域というのは、結局、他産業とも大いに関連するようなところがあると思っているのですが、今、日本の原子力界が少し低迷をしていると言ったらいいのか、そういう状況にあるのは、地域との関係、地域の支援といいますか、そこがまだ十分でき上がってないというところが大きなポイントだと思っておりまして、こういう基盤の強化という大きな活動の中で、いかに地域を巻き込んでいくかという、そういう視点が必要ではないかというのが1点目であります。先ほどの共同利用のようなところで地域と連携するときには1つのヒントだと思っておりますが、私は、例えば高専なんかをもっと活用するというようなことも、地域の活性化、あるいは地域との共生というものにつながっていくのではないかと考えているところですが、もう少し勉強してみたいと思っております。
 2点目は、先ほど岡崎理事長からも指摘があったところですが、国際という話は、この紙から1つも出てきていないのです。国際連携・国際協調というところを、ぜひ検討の中に入れていきたいと思っているところであります。とりわけ東アジア地域では、今回、原産年次大会の場でもありましたが、日中韓というこの3つの国で、あと10年もすれば、本当につかみの数字ではありますが、130基~140基ぐらいのプラント、世界のまさに3分の1ぐらいのプラントがアジアで運転されることになるということで、まさに世界の1つの中心になろうとしている。そこで人材も含めて、あるいは、ここで言われているように基礎・基盤というものを日本が中心になって世界を支えていくとか、世界の発展に貢献していくというような枠組みを考えるべきではないかと思っておりまして、ぜひその視点を入れるべきだと思っております。
 それから最後は、全体にかかわる話ですが、もう少し整理をしてお話をしたいと思っておりますが、研究開発も含めて進めるには、どのぐらいの規模で、どのぐらいのスケジュールでこれを進めていくかということが全体のポートフォリオといいますか、そういう視点というのが大事だと思っています。国の予算ということになりますので、どうしても年度でして、一旦ある項目が認められると、他との関係が全く関係なく、それだけでざっと進んでしまう。それを、先ほど山名委員がおっしゃったようなフィードバックをかけながら、全体を最適にリソースを配分していくという、そういうダイナミックさをぜひ持ちたいと思っております。
 いろいろ制約条件がある中だと思うのですが、いろいろな業界の中で、原子力というのは一番先進的な業界だと思っていますので、原子力がまさにそれをリードしていくようなことが必要ではないかと思うのです。そういうダイナミックな動きをしていくということができるのだということを示していく必要があると思っていますので、知恵を出して、ぜひダイナミックな動きができるような、そういうまとめにしていきたいと思っているところであります。
 ありがとうございました。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 山口委員、お願いします。

【山口委員】

 ありがとうございます。今までいろいろな論点が出てまいりましたが、共通する部分もありますが、私なりに少し整理して、ご意見申し上げたいと思います。
 原子力基盤強化というのは、これは多分、どなたも反対する方はおられなくて、昔から基盤強化するべきと、ずっと言われてきたわけですが、しかし、今こうやって振り返ってみて、またこういうことが出てくるというのは実態として強化できてないということなのですが、どうしてそうなのかと考えるわけです。今回、こういう作業部会をつくられて、ぜひそれが現実的に実行できるような方策をご検討いただければと思いますが、そういう基盤強化をしっかりやるための仕組み、私なりに欠けていたものは何かという観点で4つほど申し上げたいと思います。
 1つ目は、基盤強化のためのいろいろな政策的な事業があったと思いますが、それをどうやって持続的に持っていくかというところです。具体的には、現在、原子力人材育成プログラム、それから原子力システム研究開発事業といった、基盤強化のためのプログラムがあって、それなりの成果が上がっていると思います。それをこれからどうするかが重要かと思います。例えば、しばらく前にクロスオーバー研究というのがありまして、それはいろいろな分野の研究者がクロスオーバーすることによって新しい知恵が出てくるということで始まったわけですが、では、そのクロスオーバー研究を何期かやってきて、その成果が今の基盤強化にどうつながっていったのかというと、私にはあまりそれが生きてきてないように思えます。そういう意味では、折角今、根づいてきている原子力人材育成プログラムとか、原子力システム研究開発事業を継続的に、持続的に持っていく方策として何がいいのかというのが1つ重要かと思います。
 2点目ですが、今、国際的なという言葉が出ていないという服部委員からお話しありましたが、私も同感でして、ここに書いてあるホット施設にしても、それから安全研究をどうするかという話にしても、それから教育の話にしましても、アジアからのニーズがいろいろあるのです。そういったものを日本でつくっていって運営しようと思ったときに、それが継続できないのは、必ず将来、経年化とか、予算の問題とか、人がいないとか、そういう問題が出てくるわけです。では、それをどうやって維持するかというと、マーケットを国内だけにかかわらず、ここでは国内の利用状況を調査・整理するということが論点2の中に書いてありますが、本当はマーケットを外にも求めて、例えばホットラボをつくったら、それが例えばアジア地域の核として継続的に運用、あるいは経営として維持できるかと、そういう視点でインフラの整備を見ることが重要ではないかと思います。潜在的な顧客というのは、アジアとかに目を向ければ、まだまだいるのではないかと思います。
 それから、3つ目ですが、人材の、あるいは基盤強化ということがうたわれているのですが、1つ問題なのは、人材にせよ基盤強化にせよ、その目標があまり明確でないのではないかと思うわけです。目標が明確でないと、どうしてもどこかで疲れてきて、もういいかということになるのではないか。そうすると、人材や基盤の強化というのは、どこまで目標設定してやればいいのか。そうすると、それはどこまでやっておけば品質確保ができているのか。それから、どういう人材が必要なのか。そうすると、どういう分野で、どういう人材がどれだけ要るか。それから、そういう人を確保するために資格とかをどういう体系化をしていくのか。今、幾つか資格はあるのですが、その資格とかを雨後のタケノコのように出すのではなく、もう少しどういう資格が要るのかと、そういう観点で人材育成、あるいは基盤強化と関連づけることが必要かと思います。
 最後に、技術移転の話がありましたが、1つやはり不透明なのは、原子力の分野を志そうという人にとって将来が見えないといいますか、例えば技術移転と書いてあるのですが、では、技術移転になったら自分たちは将来どうなるのだろうとか、それから、その組織はどうなるんだろうとか、そういったところは技術移転ということで技術あるいは事業化するという側だけから見るのではなくて、そういう分野で働きたいという人の側からも検討して、その技術が完成することによって、さらに発展して、自分たちの研究なり業務が発展していくというような、そういう筋道を見えるようにしておくということ。その最後の点は、原子力技術の戦略的な事業化への移行というところで、実際に技術開発をする人材の側からの視点でも、どういうビジネスプランがいいのか、モデルがいいのかというのを検討いただければと思います。
 以上でございます。

【田中主査】

 早野委員、お願いします。

【早野委員】

 先ほどからメーカーという言葉が出ておりますので、メーカーの立場から何点かお話ししたいと思います。
 まず、原子力人材の育成ということに関してですが、研究がうまくいって実用化の段階になると、私共メーカーも相応に関わることになります。その際には原子力を専攻している人材だけでは成り立たないということをまずご理解いただきたいと思います。実際に原産協会の統計では、主力プラントメーカー3社を含む6社で見てみますと、圧倒的に電気系とか機械系の出身者が多いのです。原子力出身者は10%前後のレベルで、ここ10年ぐらい推移しています。これから先を考えると多少構造が違ってくるかもしれませんが、メーカーとしては幅広く、電気系、機械系を巻き込んだ人材育成を考えて頂くとありがたい。原子力を引き金にして、そこまで広げていただけると、メーカーとしてはありがたい。
 それから、いろいろなご意見がございましたので重複は割愛しますが、戦略的な事業化に関してですが、メーカーは日々それをやっているわけですが、原子力にかかわらず、事業化に成功するために必要なことは、研究開発段階、試作段階、製品化段階で、いろいろな課題も出てくると思いますが、それを研究開発段階から製品化段階に至る幾つかのステージ間でフィードバックができること、それが時間的にもクイックに行うことと思います。事業化を進めていくという検討の中に、まずスピードと適性というか、的確性というか、その機能をできるだけラップさせる、研究開発の部隊と製品化の部隊の間にあまり大きなギャップを作らないほうがよろしいのではないかと思います。
 これから先の原子力開発になると、いろいろなテーマが出てくると思います。産業界が主体でやるにはリスクが大きく、早い段階でドロップアウトしてしまう危険性のある課題も出てくると思われます。かといって、研究機関にメーカーから人材を送り込めば、それで解決するという問題でもないと思います。従って、まずは戦略を国、研究機関、産業界の3者で共有することと、できるだけ開発段階での各推進組織間でギャップを作らないことを議論のポイントにされたらいかがかなと思っております。
 それから、ホットラボの活用の話も出ておりますが、これは繰り返しになりますが、もっと活発な活用がなされていけば、その価値ももっと高まっていくと思います。ですから、ぜひ必要な資金を投じて、誰もが使い勝手のいい、そういうラボにしていっていただきたい。ポイントとしては利便性、経済性ですので、そういった点にもう少し突っ込んだご議論をいただくとありがたい。
 あとは重複しますので、これくらいにしたいと思います。

【田中主査】

 伊藤聡子委員、お願いします。

【伊藤(聡)委員】

 私は、原子力の基盤強化ということを考えたときに、基盤を強化するということは国民の理解なしにはやはりあり得ないことだと思うのです。どんなに研究が進んでも、そこで理解が得られなければ、そこでストップしてしまうという現状があると思いますので、同時並行でそこは進めていかないといけないことなのではないかと思っております。
 それは、ひいては人材の育成ということにもつながると思いますが、現在、若手研究者、大学というと、かなり年がいってからの話になってしまうのですが、基本的に、先ほど服部委員からもご意見がありましたが、私は、小学校、中学校ぐらいの中から、エネルギー教育を含めた原子力の必要性というのをもっともっと認識していく教育というのが非常に必要だと思うのです。その中で実際に子供の気持ちの中から魅力であるとか、使命感を感じるということが将来の原子力に携わってみたいという人材を育成する土壌になっていくと思うのです。そういう意味では、現在はなかなか原子力発電所とか、六ヶ所村のような施設とか、テロの防止ということもあって、なかなか現場を見る機会というのが少なくて、何となく大きな要塞のような施設だけが外観でしか見られない。そうすると、やはり何となく漠然とした不安だけが残っていってしまって、先生からも何の説明もされていない。しかしながら、私たち素人のような者が、施設の中に入って、実際に見て、そして携わっている方々からお話を聞いて、説明されると、やっぱり理解できる部分というのは非常に多いと思います。安全も考慮しなくてはいけないのですが、実際に目で触れて、子供たちの気持ちを育成していく方法というのが何とかとれないのかなと思います。食育というのは非常に頑張っておられるようなのですが、エネルギー教育というのが、それに比べるともう少し遅れているのかなという気もしますので、そこと並行してやっていただきたいなという気がします。
 将来的には、原子力の技術というのは世界の環境のことも含めると、多分日本がリードして、もっともっと世界に貢献するツールとしてやっていかなくてはいけないことだと思いますので、若手に、日本だけのものではなくて、世界のある責任を担う職業なのだという意識を身につけさせるような何か工夫というのも必要なのかなという気がしております。
 以上です。

【田中主査】

 秋庭委員、お願いします。

【秋庭委員】

 ありがとうございます。私も伊藤委員と同じようなお話をさせていただきたいと思っています。
 最初に、現在の状況として、消費者の立場からすると、大変申しわけないのですが、3つの不思議があって、なぜ再処理工場は動かないのか、「もんじゅ」はいつ再開するのか、そして高レベル放射性廃棄物の処分はどうして決まっていかないのか、三不思議という感じがします。基盤を強化していくということももちろん大事なのですが、今言った3つを早くやってほしいというのが大事なところだと思っています。
 基盤強化に関しまして作業部会で議論することは、先生方がおっしゃっていることなど、なるほど、今そういう状況なのかとお伺いさせていただきました。その中で視点として3つぐらい入れていただきたいと思っていることがあります。
 1つ目の国際化ということなのですが、これは先ほどからも服部委員はじめ、いろいろな方がおっしゃっていました。「国際化」というキーワードが入ってないのはおかしいなと思いましたが、長崎委員から原子力は国内の人材のみを対象にするのかということを最初に言われて、ああ、そうなのかと思いました。少し前の新聞に、中国の方が9割、研究室にいらっしゃるところもあると新聞で報道されていました。今、日本の中では、ほんとうにさまざまな国の方々が身近なところで生活していて、電車の中でも外国の方がいない車両はないのではないかと思うぐらいです。その中で人材というのも考えていく必要があるし、また今、原子力ルネサンスと言われていますが、世界の中で日本はどのような位置にいて、どのようにその中でリードしていくのかという視点をぜひ大事にしていただきたいと思います。
 昨日までの原産年次大会の中でも、インドの方のお話が私は大変印象的で、インドでは原子力の開発がどんどん進んでいて、FBRも今後、2つ開発して建設していくそうで、トリウム利用も進めていくということで目が点になりました。皆様にしたら当たり前のことかもしれませんが、私にとっては驚異的な感じがいたしました。日本は、それに対して、どれぐらい進んでいるのか、あるいは一緒にやっていけるのかと、そんなところもちょっと見えない気がしています。そのときに質問をしていた方の中に、韓国の方が必ずいて、韓国がどんなに一生懸命に今頑張っているのかということを垣間見たような気がします。そのように、「国際化」というキーワードはぜひ入れていただきたいということが1つ目です。
 2番目の人材育成のことについても、大学の先生方や産業界の皆様は憂いていらっしゃって、やっていかなくてはいけないことと思いますが、人材育成をするためには、伊藤委員がおっしゃったように、どんなに一生懸命やっていても、原子力の研究者がすばらしい研究をしていて、ぜひやってほしい、頑張ってほしいと社会が評価するようでないと、誰も行かないような気がするのです。子供が原子力の分野に進みたいと言ったときに、母親が、やめなさい、あんなところはやばいよって言うようではなかなか難しいです。現に私の仲間でも、子供が原子力分野の勉強をしていると言うと、みんなが奇異な顔をして、将来はどうするのって、そんなふうに言われるようでは、やはり人材育成は難しいと思います。
 今、伊藤委員から教育の話が出ましたが、私も、エネルギー教育は大変重要だということは昔から言われているのに、なぜこんなに進まないのかって、もどかしい思いをしています。原産年次大会の話で恐縮ですが、フィンランド大使がお話になっていたことですが、なぜフィンランドでは、いろいろな状況の中でヨーロッパで最初に原子力発電所を建てることになったかというと、中学のときに原子力や放射線について、教科書に2ページにわたって書かれており、そういうことがあるので、みんなが冷静に考えることができる。そういう教育レベルがあるからこそ原子力が進められているということをお話になっていらっしゃいました。
 最後に、この作業部会の視点として、どうしても盛り込んでいただきたいことは透明性ということだと思います。原子力に対して、先ほど言ったように社会の評価が決していいとは言えないということは、見えない部分が大変多いからだと思います。そこのところはどのように透明性を図るのか、見えるようにするのかということを必ず入れていただきたいと思います。ちょっと私が不思議に思ったことが、資料2‐2のペーパーの論点例の3のところで「研究開発段階から、コスト意識、技術移転意識などを入れていくための方策は」とあります。そういうものは今まで入ってなかったのかと、すごく不思議な感じがして、やっぱり一般の人と意識の乖離は随分あるのだなと思いました。そういうことも必要なのかもしれませんが、でも、みんなが納得できるように透明性を図るという視点をぜひ入れていただきたいと思います。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。時間もオーバーしていますが、もしほかにございましたら。中西委員、お願いします。

【中西委員】

 原子力は国の予算を使って技術開発を進めているのですが、炉を作るメーカーは会社ですから、既にグローバル化しており、日本の国内より世界のマーケットを見ています。そうすると、国のお金を使って、どこまで国の利益のための開発を考えるべきかという難しい問題が出てくると思われます。この問題は原子力分野でなくても、例えば国の予算を使って一生懸命育てたものが、M&Aで外国の会社のものになってしまうこともあろうかと思います。そうすると、国の税金を使って育てたものが何だったかということにもなりかねません。ですから、このこともぜひ議論の対象にしていただければと思います。

【田中主査】

 井上委員、お願いします。

【井上委員】

 いろいろ言いたいのですが、時間の関係もありますので止めておきますが、進め方についてですが、非常にたくさんのことを考えなければいけないというのは皆さんのご意見でよくわかったのですが、長く考え続けていかなければいけないところと、差し当たりレポートを書かなければいけないところとがあるのではないかという気がするのです。
 分野的に言うと、例えば核融合や放射線利用も、もちろん重要なのですが、人材育成などについて特に重要なのが、ここで挙がっているような、いわゆる核分裂エネルギーの利用に関するところであると思うのです。今、国際的にも重要になっているわけですから、そこをどうするのかということと、それから、論点4のところに原子力機構をどうするかとありますが、私はこの点について非常に危惧しておりまして、このままでいいのかという思いがあるのですが、この2枚物のところにはFBRやJ‐PARCやITER等々が書いてありますが、こういうものの位置づけについて、文部科学省としてどこでやるのかや、経済産業省、あるいは国内と国外との役割分担など、そういったことをきちんと見て、文部科学省として、あるいは原子力機構として、どこにリソースを重点化するのかというようなことを出さないと、実効性がないのではないかという気がします。

【田中主査】

 ありがとうございます。井上委員がおっしゃったことは、私も後で言おうかと思っていたのですが、いろいろといいものを言うのは簡単なので、それを多分実行するときには、さまざまな障害があるのだと思います。それがどういう障害があるのかということを見極めて、それを改善するにはどうするかということも同時に考えていかないと、ものにならないと思うのです。例えば現在は、大学も原子力機構もそうだと思いますが、さまざまな研究内容と評価システムというものがあるのです。その評価システムが原子力の研究開発などに向いているのかどうかとか、それから、お金の話もありましたが、お金の仕組みについて、今のままではなく、もう少し変えないといけないのではないかとか、それから、人の交流とか移動とかがありますが、そういうことが本当に評価される仕組みも日本ではつくっておかないといけないとか、さまざまなことに対して、どこが本当に障害になっているのか、その障害を解決・改善するにはどうするのかということも、できたら作業部会のほうで頭出しでもできればいいと思っています。
 さまざまなご意見いただきましたので、また事務局にまとめていただいて、来週に第1回目の作業部会がありますから、そこでまた議論をし、適宜、この親委員会のほうには報告して、委員の方々からご意見いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 あといくつか現在の状況の報告などありますが、遅れぎみですので、説明を少し早目にいただけたらと思います。
 議題の3「主要プロジェクト等の現状と今後の見通しについて」でありまして、4つのプロジェクト等について続けてご説明いただき、最後にまとめてご質問をお受けしたいと思います。事務局のほうから、よろしくお願いいたします。

【稲田原子力研究開発課課長補佐】

 原子力研究開発課の稲田でございます。課長の板倉が本来ご説明する予定でしたが、急遽呼び出されましたので、補佐の私のほうから代理でご説明させていただきます。
 資料3‐1をご覧ください。「もんじゅ」の現状と今後の見通しについてですが、高速増殖炉の「もんじゅ」に関しましては、本来であれば、当初の予定であれば今ごろは動いているはずだったのですが、平成20年3月に起こりましたナトリウムの漏えい検出器の不具合、あるいは12月9日に発見されました屋外の排気ダクトに係る問題、あるいは耐震安全性に関しては、現在、原子力安全・保安院のほうでその評価をいただいているのですが、これの結果がいまだ検討中であるということから、現在、運転再開についての取り組みを続けているという状況でございます。
 我々としては、前二者に関しましては、どのようにやっていくのかという方策をつけて、運転再開の時期等々に向けて見通しを得ているところでして、現在、原子力安全・保安院の耐震の議論の結果を受け、我々のスケジュールが適切であるという見込みが立ちました段階で、地元福井県等々にご説明いたしまして、適切な時期の運転再開に向けての作業を加速していこうというように考えてございます。「もんじゅ」の運転等々に関しましては、やはり安心・安全、あるいは地元の信頼というのが第一であるということから、しっかりと安全面等々に関することについては問題点をクリアにしてから着実に進めていこうというように考えているところでございます。
 ナトリウム漏えい検出器の問題に関してですが、これは誤警報によって、本来問題がないところでも何か悪いというような警報が発生してしまうという問題が生じておるところですが、これは原子力安全・保安院と相談して原因を特定し、現在、その解決の方策を得つつあるところです。
 2ページの屋外排気ダクトに関してですが、これは、「もんじゅ」は海に近いということもあり、排気ダクトに一部腐食が生じ、穴があいてしまったという内容でして、これに関して、こちらに書いてありますように、排気ダクトの適切な保全等々を行うという内容の改善策を講ずるとともに、早期に補修工事を行って運転再開につなげようと考えてございます。
 3ページの耐震安全性の評価でございますが、現在、耐震安全性の見直しについて、事業者として耐震基準度を安全側に見直して、その適正性についてご審議をいただいているところでして、この結果が適切であるという判断が下りましたら、先ほどご説明したように県に対して説明して運転再開の時期を決めていくということを考えておるところでございます。
 特に4ページ目の「もんじゅ」の組織体制の強化というところですが、前二者の問題のときに、「もんじゅ」の保守体制等々、あるいは組織体制に関して、もう少し強化を加えるべきだというご指摘をいただいておりまして、保守点検等々が適切に行われるように、仕事のボトルネックとなっているところについて強化するとともに、責任体制の明確化、あるいは品質保持体制であるとか、あるいは保守管理に関しては、やはり電力会社等々のところに一日の長がございますから、このようなところからノウハウを得るために、人に来ていただいて、一緒になって考えていくというような産学官が連携した形での運転再開に向けた組織体制の強化を実施しているところでございます。
 以上、雑駁ではございますが、「もんじゅ」の運転に関してのポイントでございます。

【山本核融合科学専門官】

 それでは、引き続きまして資料3‐2をご覧ください。ITER計画等の現状と見通しにつきまして、資料は16ページほどございますが、時間の関係もございますので、ポイントだけご説明をさせていただきます。
 2ページのところ、「ITER計画等の推進」とございます。ITERは国際熱核融合実験炉といいますが、ITER計画は核融合実験炉の建設・運転を通じまして、科学的・技術的な実現可能性を実証しようという計画でございます。また、後ほど詳しくご説明しますが、幅広いアプローチ活動、これはBAと称しておりますが、ITER計画と並行して補完的に取り組む先進的核融合研究開発ということで、ITERの次の発電実証を行います原型炉に向けた先進的な研究開発を行うものでございます。
 ITERにつきましては、参加極は今7極でございます。それから、建設場所は南フランスにあるカダラッシュにございます。ちなみに、機構長は日本から出ておりまして、池田要氏が就任をしてございます。計画につきましては、今、建設期ですが、10年間建設を行いまして、運転を20年間行うという計画でございます。幅広いアプローチにつきましては、後ほどご説明いたします。
 3ページですが、これまでの経緯と今後の予定ということで年表的に書かせていただいております。発端は米ソ首脳会談、レーガン・ゴルバチョフ会談が発端でして、2007年の10月にITER協定が発効いたしまして、ITER機構というものが正式に発足したところでございます。それから、第1回の理事会が2007年11月に開催をされてございます。
 4ページですが、ITERの建設スケジュールを示してございます。上の青色の横線がカダラッシュサイトのスケジュールでして、2018年にファーストプラズマを目指すべく、今、建設を開始しているところです。下の緑色の線は、日本が調達を担当する主な機器製作のスケジュールです。今、このようなことで鋭意進めております。
 5ページですが、これは国内の連携体制について書かせていただいております。真ん中に核融合エネルギーフォーラムとありますが、ここで学術界・産業界からのご意見を集約した上で、国、そして実施機関である日本原子力研究開発機構と、この3者が一体となって、今、オールジャパンで取り組んでいるところでございます。
 6ページ、7ページは、ITER機構の運営体制、あるいは現状のサイトの整地の状態でして、写真もございますが、説明は割愛をさせていただきます。
 8ページですが、ITER計画の実施状況ということで幾つか書いてございます。ITER機構の体制整備ということで、現在、専門職員217名おります。10月末現在で古い数字ですが、我が国からは20名の人員を派遣しております。7極中、欧州に次いで2番目で、今、約9%の人員を派遣している状況でございます。
 それから、各極とITER機構による機器調達に係る取り決めを順次締結しておりまして、物納によりまして、このカダラッシュに各極分担によって機器を持ち寄って組み立てるということになってございます。また、ITER理事会、最近の状況が書いてございますが、これは省略をさせていただきます。
 9ページですが、今後の取り組みについて書いております。
 10ページの幅広いアプローチ活動ですが、この活動の目的は、ITER計画への支援とともに、ITERの次の発電実証を行う原型炉に向けた研究開発を実施するということ目的でございます。
 概要ですが、実施極として、日本と欧州が今参加してございます。ITERに参加している他の極についても、今、鋭意参加を呼びかけているという状況でございます。
 事業の内容ですが、3つの事業が書いてありますが、材料照射の関係の取り組み、それから原型炉設計や遠隔実験を行うための取り組みは、青森県の六ヶ所村で取り組まれております。それから、もう一つは、茨城県那珂市において、サテライト・トカマクというJT‐60の改修を行うことにより、今後の原型炉に関する重要な物理的課題を検討するというような取り組みも進んでございます。
 11ページですが、2007年6月1日にBA協定が発効いたしまして、今活動が行われているという年表でございます。
 12ページ、13ページですが、これはスケジュール、活動の実施体制についてですが、こういった3事業にそれぞれ事業長を置きまして運営をしているという状況になってございます。
 14ページですが、六ヶ所のサイトにおいて、管理研究棟がちょうどこの3月に完成をいたしました。
 15ページですが、BA活動の進捗状況についででございます。
 最後のページは予算の状況でございます。
 以上でございます。

【林量子放射線研究推進室長】

 研究振興局量子放射線研究推進室の林でございます。資料3‐3に基づきまして、J‐PARCの現状と今後の見通しについて、簡単にご説明をいたします。
 1ページ目にJ‐PARCとはどんなものかというようなことが載っております。ほとんどの方はご存じだとは思いますが、最初の方もいらっしゃるので簡単にご説明をいたしますと、そもそもJ‐PARCというのは、Japan Proton Accelerator Research Complexということで、大強度の陽子の加速器の施設群というものです。施設群というのはどういう意味かというと、下に絵がかいてありますが、3つの加速器、最初にリニアックという直線状の加速器で1.8億電子ボルト(eV)というエネルギーまで陽子を加速する。次に、3GeVのシンクロトロンという小さな丸状の加速器ですが、ここで30億eVというエネルギーまで陽子を加速する。そこまで加速したものが、一方は物質・生命科学実験施設というところに行って、中性子やミュオンを使って物質・生命科学の実験を行う、もう1つは、3GeVまでいったのが次に50GeVという、青で囲んでいますが、500億eVというエネルギーまで加速するような加速器に陽子が導かれて、それをもとに原子核・素粒子の実験という基礎研究やニュートリノの実験というものを行うということで、こうした加速器群、実験施設群を用いて電子核・素粒子物理から産業応用につながるような物質・生命科学の実験を行う施設となっております。
 これは平成13年度より茨城県東海村で日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構の共同プロジェクトとして建設を開始し、ほぼ予定どおり、平成20年12月から順次、実験施設の利用が始まっております。まず皮切りに、去年の12月から物質・生命科学実験施設での中性子・ミュオンの実験、今年の2月からは原子核・素粒子の実験、そしてもうすぐになりますが、今年の4月末からはニュートリノの実験と、それぞれ実験が開始される予定であります。
 そのページの下に、原理図がありますが、陽子ビームを加速してどういうことをしているのかというと、陽子ビームを加速して別の標的の原子核に当てることによって、そこからさまざまな粒子が出てきます。例えば一番下に書いてありますが、中性子でありますとか、上に書いてあるミュオンとかニュートリノ、こういったさまざまな粒子を用いて、いろいろな実験をするというような施設でございます。
 では、どういうことをやるのかというと、2ページ目に簡単に書いていますが、左側に物質・生命の機能発現を探るとあります。これは物質・生命科学実験施設というところで行うのですが、こういう実験について、今、放射光やX線を用いて行う実験というのが非常に盛んにされていますが、そういう放射光と比べ、中性子の特徴というものを、ここに2つだけ書いてありますが、軽い元素が見えるとか、鉄の中まで透過能力があるとか、そういった中性子の特徴をうまく使うことによって、例えば上であれば携帯電話や電気自動車のバッテリーとして今利用が盛んであるリチウム電池の機能の向上であるとか、もしくは鉄鋼材料の性能向上、安全性の高い製品開発、こういうものに貢献できるのではないかということです。
 右側は少し基礎的なことを書いておりますが、これは主に高エネルギー加速器研究機構で行いますが、原子核・素粒子実験施設における研究としては、物質の重さがなぜ発現されていくのかというような話であるとか、ニュートリノ、これは小柴先生のノーベル賞受賞で有名になった素粒子ですが、そこのさらなる謎の解明、こういった基礎研究も考えているというものでございます。
 次の3ページ目に各施設の写真がありますが、これは先ほど申し上げましたが、ほとんど完成しておりまして、ニュートリノの施設の一部が今最終的な建設段階に入っているところですが、順次、先ほど申し上げましたが、物質・生命科学実験施設であれば去年の12月から実験が開始されています。また、物質・生命科学実験施設の第2実験ホールという、中性子の具体的なビームラインの写真が載っていますが、今、中性子のビームラインについては8本が運用されており、4本が建設中、3本が今予算がついたというような状況になっております。
 次の4ページですが、J‐PARCの今後の展開についてですが、まず1番目として、各実験施設におけるビーム供用を着実に実施していくということです。これは今年度は、まだ利用開始直後ということで利用日数が44日ということになっているのですが、来年は110日を目指して利用をしていくということでございます。
 2番目としましては、今、国会で審議をされているところですが、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」というものを改正して、このJ‐PARCの中性子線施設について特定先端大型研究施設として位置づけていくということ、これに伴いまして、産業界も含めて、幅広い利用者のニーズにこたえるための2本の共用ビームラインの整備を開始するということです。これは法律が通らないと整備は開始できないのですが、予算的にはついており、これからの整備になるということです。
 次のページに法律のスキームが書いてあり、あまり専門的なことは申し上げませんが、ポイントは2つありまして、J‐PARCのうちの中性子線施設については、大学の先生方だけではなくて、産業界も含めて幅広い利用が可能であろうということで、そうした枠組みを今、SPring‐8や次世代スパコンが、こういう法律の枠組みの中でこの施設を運用しているので、ここにJ‐PARCの中性子線施設を追加しようということで、まず原子力機構の業務として、幅広い利用に供するための共用施設の建設・維持管理といった業務ができるように追加した上で、実際の運用については別組織、ここに登録施設利用促進機関とありますが、JAEA自らが課題選定とか支援とかを行うのではなくて、別組織を応募して、そこの組織に行わせるということです。その組織のそういった活動については、また別途交付金が出せるというような枠組みになっております。この枠組みを活用することによって、今後、中性子線施設を中心に幅広い共用をしていこうということを考えております。
 1枚ページを戻っていただきまして、3番目で、20年度の補正予算において、リニアックビーム増強のための経費を措置と書いております。現在、加速器の一番初めのリニアックと言われているところは、先ほど申し上げましたが、1.8億eVというエネルギーなのですが、これはもともとの計画は4億eVということで、加速器を増強することにより、さらに加速できる陽子の数が増えて、全体的に実験時間の短縮、実験精度の向上ということによって、より高度な研究を早期に実施することが可能となるということで、20年度の補正予算において、その経費を措置されておりますので、これを着実に進めていき、さらに施設の高度化を図っていきたいと思っております。
 簡単ですが、以上でございます。

【次田放射性廃棄物企画室長】

 原子力計画課の放射性廃棄物企画室の次田でございます。資料3‐4の1枚目に沿いまして、研究施設等廃棄物の処分体制の整備の進捗状況について、簡単にご報告をさせていただきます。
 我が国の大学ですとか、研究機関・医療機関等から発生する低レベル放射性廃棄物について、私どもこれを研究施設等廃棄物と呼んでおりますが、その処分について、昨年の通常国会において原子力機構法が改正され、原子力機構が責任をもって処分を行うという体制が整備されたわけでございます。同法では、研究施設等廃棄物の処分については、事業が長期間にわたることから、国が基本方針というものを示し、原子力機構が実施計画を作成し、これを国が認可して初めて処分事業が行われるという仕組みになってございます。
 国が示すべき基本方針につきましては、昨年、本委員会に設置されております研究施設等廃棄物作業部会等におきまして先生方からご意見を拝聴いたしまして、また、昨年8月の本委員会においても先生方からご意見をお伺いした上で基本方針の案を作成し、昨年の秋にパブリックコメントを実施いたしました。集まったご意見については、できるだけ反映させるという方向で修正を行いまして、昨年12月25日に文部科学大臣及び経済産業大臣の決定ということで基本方針を策定したところでございます。
 現在、原子力機構のほうで、基本方針に即して作成する実施計画の検討を進めてお、今後、作業部会等において先生方からご意見を拝聴しながら、その実施計画の策定、及び研究施設等廃棄物の処分の事業の実施に向けた準備が進められる運びとなっております。
 雑駁でございますが、以上ご報告申し上げます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 ただいま4つの件について、ご質問等ありましたら、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。岡崎委員、お願いします。

【岡崎委員】

 順調に進んでいる点は省略をして、2点ばかり補足としてご報告を申し上げたいと思います。
 まず第1点は、「もんじゅ」の件であります。秋庭委員からもご指摘をいただいて、なぜ早く運転できないのかというご心配をおかけしています。10年近い維持管理フェーズから改造工事を行って、いよいよ運転段階に入るという段階において、最終的にいろいろな点検をしている過程で、先ほどご説明をいただいた幾つかの技術的、あるいは構造的な欠陥が見つかったということで、これは速やかに是正をしなければならないということで努力してきたわけですが、その努力はおおよそ見通しがついたと言える段階だと思っております。
 ただし、いろいろなご意見の中でありました、なぜこういうことが事前にきちっと把握できなかったのかという問題、すなわち、組織体制や、あるいは仕事のやり方について強化をしなければならない点について、我々も十分認識をし、体制を強化するだけではなく、仕事の品質管理や安全管理ということに対する取り組みということについても、少し遅れましたが強化をいたしました。また、今課題となっています耐震については、我々原子力機構だけではなくて、日本原燃の皆さん、関西電力の皆さんと共通した取り組みを今しており、若狭地域における耐震評価というものをしっかり見通しをつけた上で、できるだけ早く今後の運転再開に向けての計画を明らかにして、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。
 もう1点、最後にご紹介いただいた研究施設等廃棄物について、おかげさまで、この委員会でも随分詳しくご審議をいただき、法律も改正をされ、昨年の12月には基本方針を文部科学省からお示しをいただきました。もう既に4カ月近くたっている中で、実施計画がまだまだ提出には至らないということでありますが、この実施計画というのは、当然のことながら、処分対象の廃棄物の種類・形態、そういうものをしっかりと特定をして、将来の処分がしっかりと安全に行われるということをお示しするというのは非常に大事な視点であります。ましてや、実施計画をお示しすれば、当然、立地活動に入るわけですので、国民あるいは立地地域をご検討いただく皆さん方にも、しっかりとこの計画の中身であるとか、特に安全についてご理解をいただけるような、しっかりとした実施計画を今つくりつつあるということで若干遅れております。できるだけ速やかにまとめて、本委員会、あるいは作業部会でもご審議をいただいて、地元や、あるいは国民の皆さん方にしっかりと説明責任を果たせるように取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 石田委員、お願いします。

【石田委員】

 ご説明についてはご質問申し上げることはないのですが、全体の運営につきまして、一言、二言申し上げたいと思います。
 1つは、この科学技術・学術審議会全体のことですが、非常に多くの会が多層的になっておりまして、なかなか全体を見るのは大変でございます。私は、ほぼすべてのレベルの会議に出させていただいて全体を見ておりますと、なかなか容易ではないなと思いますが、新しいグループをつくっていただくのは非常に結構だと思いますし、なるべくそれが機動的に動くということが非常に大事だと思いますので、ぜひその辺は心がけていただきたいと思います。
 いま1つは、すべての会議にわたって、事務方の説明はなるべく短くしていただきたい。今も雑駁、あるいは簡単なご説明とありましたが、ぜひ簡単に説明してほしい。事務方の説明を聞くために、ここにおるということではありません。事前に資料を送ってもらえば読めますし、十分理解できますので、なるべく委員の議論をここでするということをぜひ心がけていただきたいと思います。これは決してここだけで言っているわけではありません。すべての私が出ている会合で同じようなことを言っておりますが、なるべく委員の議論を大切にするということを、ぜひひとつお考えいただきたいと思います。
 それに関連しまして、今日も評価のことが議題にありましたが、この委員会での評価方針ということを決めたわけです。我々が決めるということを理解しないままに、いろいろな議題がありますと、後でこんなことを決めてしまったのかということになります。したがって、今日決めたのは何かというと、評価の方針を決めたことが1つと、基盤強化の作業部会を設置するということを決めたわけです。決めたという気持ちに皆がなるような、そういう運営ということは非常に大事だと思っています。特に評価に関して、科学技術・学術審議会全体として非常に大きな問題になっておりますのは、やはり評価のことであって、これはし過ぎという表現はよくありませんが、評価疲れなどと言われる問題があって、いかにして合理的・効率的な評価をするかということが非常に大事だと思います。
 この評価のところに書いてありますが、例えば原子力機構の運営交付金で行う事業の評価はここではしないと書いてあり、どうしてそうなのか気になりますが、他面、私もほかの委員会に出ていると、課題がたくさんあって容易ではないのです。なるべく評価は簡単に、なおかつ要点について行わなければいけないということなので、決してこの様式が最高だとは思いませんが、ポイントはなるべく簡単に、しかも、なるべく委員が理解できるような、そういう評価をぜひやっていただきたいと強く希望したいと思います。今日の決定につきまして、私、全く異議ないどころか、ぜひこれを迅速に、機動的にお進めいただくことが大事ではないかと思います。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 ほかにありますでしょうか。長崎委員どうぞ。

【長崎委員】

 2つあります。1つは「もんじゅ」、1つはITERのところで質問があります。
 1つは「もんじゅ」のほうで、もう13年間とまっています。止めているだけで年間約100億円の国税が使われているわけです。こういう体制は民間ではおそらく信じられないことだと思います。このような中で原子力機構は「もんじゅ」の組織体制の強化を行ったということですが、これは誰が設計をし、監査をし、評価をしたのかということを知りたいと思います。「もんじゅ」病とか、「もんじゅ」体質とか、動燃体質とか、いろいろなところでたくさん書かれていますが、どのように体制を強化し、そういう批判にも耐えられ、国民の負託、少なくとも1,300億円以上の税金が投入された以上に得るゲインがあるということにつながっていくかという、そこの評価がどうなっているかについて知りたいというのが1点です。
 もう1つはITERのほうですが、ITER機構に今、何人か行かれているとのことですが、これはITER機構に国際公募がかかって、いわゆるITER機構から人件費が出ている体制で行っている方々なのか、それとも日本国政府なりが人件費を出している人が行っているのかを知りたいと思います。といいますのは、この間、たまたま外務省の国際機関への就職のホームページを見ていたところに、ITER機構というのがしっかりと載っていました。そういうところへ行って応募する日本人がいるのかということは、おそらく1つ前の議題での議論にあった、いわゆる国際化というところにつながってくるという一面があると思うのですが、その実態がどうなのかについて教えていただきたいと思います。

【田中主査】

 岡崎委員、お願いします。

【岡崎委員】

 今の長崎委員からのご質問に対して、今わかる範囲内でご説明したいと思います。
 まず、「もんじゅ」の件であります。確かに10年以上停止をし、その間、毎年100億、あるいは200億円ぐらいの大変な資金を使わせていただいているということは大変申しわけないと思いますが、将来の高速増殖炉の実用化に向けては、「もんじゅ」を何としても活用していくということが不可欠であるという認識のもとに、しっかりと改造工事を行い、何としても運転再開をして、初期の性能だけではなくて、将来に向けての、例えば新しい燃料だとか、あるいはプラント技術を高度化していくことに活用していくというために、残念ながら必要な経費であると申し上げざるを得ないということであろうかと思います。
 それから、組織体制の点は、これは昨年に漏えい検出器の問題が発生をしたときから、やはりこの体制を見直さなければならないという議論が原子力機構の中で随分ありました。加えて、ダクトの問題が起こったときに、安全を担当しておられる原子力安全・保安院のほうからも、その問題についてしっかりとした体制をとるべきだというご指摘を厳しくいただきました。去年の夏から秋にかけて、「もんじゅ」について、4ページにお示しをいただいたような、1部体制から3部2室という体制に移行していこうということでやったわけでありますが、その案をつくり、当然のことながら、地元の皆さんだけではなくて、原子力安全・保安院の特別な保安検査の中で、この体制が果たして妥当かどうかということを厳しく審査をいただきました。
 もちろん、体制だけではなくて、そこで責任を持つべき人についても、決して今の「もんじゅ」の中の人間だけではなくて、ここにも書いていただいておりますとおり、電気事業者からも出向でお助けをいただき、あるいは、こういう体制を検討する過程においても、電気事業者の皆さん方のお知恵も拝借しながらこの体制をつくってきました。ただし、これは最終的には法律に基づく保安規定の認可という行為がなくては、この体制の変更はできません。したがって、最終的に原子力安全・保安院の保安規定の認可をいただいたのが今年の2月になりましたので、正式に発足をしたのは2月でありますが、異例なことではありますが、昨年の11月から、もう既にこの体制のほうがより適切だということで、内部的には発令行為を起こして、実質的には、この新たな体制で今のこういう改善の取り組みをしてきたという状況であります。間違いなく、この新しい体制が今後、十分機能を発揮してくれるということを我々原子力機構も確信を持っていますし、安全を見ておられる原子力安全・保安院のほうからも、これでいってよろしいというご了解をいただいた、そういう経緯をたどっておるということをご説明申し上げたいと思います。
 それから、ITERの件は、ITERの職員、おそらくプロフェッショナルというのがITER機構全体で200名ぐらいの体制でいくという計画を持っておられる中で、日本が本来ならば出資としては約1割弱の人員を派遣する権利ということであったのですが、EUからの割譲部分も含めて、約2割近くの人員を派遣する権利を実は保有しておるということであります。したがって、おおよそ30名から40名ぐらいの日本の職員をITER機構に派遣をする権利を持っているわけです。その人件費は、当然のことながらITER機構によって賄われる。すなわち、ITER機構の人間として、国際機関の人間として働くということで位置づけられているわけであります。
 残念ながら、スタートしたときに、できるだけ速やかに30人から40人規模に到達すべく、我が原子力機構だけではなくて、大学の皆さん、あるいはメーカーの皆さん方に呼びかけて、できるだけ多くの優秀な人を派遣したいということで、まさに人が命でありますから、できるだけ優秀な人間を派遣することが、このITER計画の日本人のリーダーシップを発揮できるという、そういう観点から大変重要視して取り組んできたつもりなのですが、現時点において、平成19年度は15名であったのが今ようやく23名というところまでこぎ着けられたというところでございます。候補者も今かなり抱えておりますので、何とかして早く30名ぐらいの規模に到達をしたいというように考えております。
 ただ、残念ながら、今まで我々の努力が明らかに足りなかったということもあるのですが、国内から、メーカーの方も含めて、多くの方が応募していただける状況にはならなかったということで、改めて外務省や国際機関、あるいは外国でのリクルート活動というものを強化しながら、できるだけ多くの候補者をまず我々がITER機構に推薦したいと思っておりますが、最終的に採否を判断されるのはITER機構が面接をして決定されるわけであります。したがって、ITER機構の基準に合格しない限りは、幾ら権利を持っていても、残念ながら日本人だからといって、そう簡単に派遣できるわけではないのです。引き続き何としても優秀な人を、特に若い人にITER機構で働いていただくような、そういう理解活動というものをしっかりとやっていきたいと思いますし、ぜひこの場をおかりして、関係する機関の皆さん方から積極的にこの職員への応募ということをお願いしたいと思います。
 加えて、このITER計画だけではなく、先ほどご説明があった幅広いアプローチ計画においても、まさに同じような問題が起こっておりまして、幅広いアプローチ計画にも必要な人員がまだ不足をしておりますので、ITER計画、幅広いアプローチ計画ともども、ぜひ日本人の優秀な研究者が続々とこの計画に参画していただけるような、そういう雰囲気をぜひおつくりをいただきたいと思っております。そのためにも、ぜひ長崎委員のご尽力をいただければと思っております。
 以上であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 どうぞ、本島委員お願いします。

【本島主査代理】

 私からも少し補足したいと思います。まず、長崎委員のご質問の国際公募かという点については、原則国際公募に応募した人であり、池田機構長は応募ではもちろんありませんが、ハイレベルの選考を受けておられます。それから、確かに人数が少ないという点については、今までいろいろ原子力機構を中心にかなりの苦労はされてきていますが、今、増え出しているということは事実であると思います。例えば大学等という意味で、核融合科学研究所から4月1日に助教が1人退職して正式に移りましたし、大学院生も1人移っております。公募も、テーマによりますが、複数の応募が通常あります。あとはいかに選考を通していくかというところに移ってきているのではないかというように思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 まだあろうかと思いますが、よろしければ、次の議題である「その他課題等の進捗状況」に行きたいと思います。山野課長のほうから簡単に説明をお願いします。

【山野原子力計画課長】

 ごく簡単に説明しますので、後で資料をご覧いただければと思います。
 資料4‐1が文部科学省の平成21年度原子力関係予算でございます。
 資料4‐2については、これだけ簡単に説明しますと、原子力損害賠償制度という制度がございまして、唯一JCOの臨界事故のときに発動しました。今回、法律改正をしなければいけない事項とともに、それに合わせてJCO臨界事故のときの教訓を総括するということも行うということで、今日お越しの伊藤聡子委員にも入っていただいておりますが、原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会で議論して、本日お配りしている第1次報告書を取りまとめました。ご関心のある人は読んでいただければと思います。この法律につきましては、先週、今通常国会で成立をいたしました。あわせて、法律以外で行うことにつきましても、政令で行うこととか、JCOのときの教訓を集約するようなマニュアルづくりといった作業続けて行っています。
 資料4‐3が、いわゆる原子力分野の人材育成のための補助事業でして、3年目になります。これにつきましては3月31日付で採択する課題を決定しております。
 資料4‐4は原子力システム研究開発事業という原子力の公募事業で、資料4‐5は昨年度に創設しました原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブという、これはむしろ原子力の基礎基盤研究における公募事業で、これらについての現在の応募状況の資料でございます。それぞれかなり倍率もありまして、特に原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブについては、まだ2年目ということもあるのですが、倍率が10倍ぐらいあるということなので、ニーズはあるのだろうと感じております。そういうことも含めて、先ほども基盤強化ということでご議論いただきましたが、こういったファンディングのようなものも重視することが必要かと思っております。ここらは参考資料として見ていただければと思います。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 予定した議題は以上ですが、最後にもしご意見等ありましたらお聞かせいただけたらと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、よろしいようですので、これにて終わりにしたいと思いますが、最後事務局のほうから何かありましたらお願いします。

【山野原子力計画課長】

 今日の議事録につきましては、できたらまたメール等でご相談させていただきます。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、第27回の委員会をこれで終了します。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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研究開発局原子力計画課