国として戦略的に推進すべき基幹技術に関する委員会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成16年12月15日(水曜日)10時~12時

2.場所

コンファレンススクウェア M グランド(三菱ビル10階)

3.出席者

委員

小宮山主査、青木委員、伊賀委員、桐野委員、澤岡委員、神野委員、柘植委員、中西委員、永松委員、西尾委員、野中委員、米倉委員

文部科学省

結城文部科学審議官、丸山大臣官房審議官、有本科学技術・学術政策局長、青山科学技術・学術政策次長、村田科学技術・学術総括官、河村政策課長、小田研究振興局審議官、森振興企画課長、坂田研究開発局長、木谷研究開発局審議官、藤嶋開発企画課長

オブザーバー

堀井センター長(独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究システム 安全・安心研究センター)

4.議事要旨

(1)国として戦略的に推進すべき基幹技術について(これまでの議論の整理)
   藤嶋開発企画課長より、資料2−1について説明。

(2)プロジェクトシステム抽出の方法論:スーパーコンピューターを例に
   独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究システム 安全・安心研究センター 堀井センター長より資料3について説明、引き続き、藤嶋開発企画課長より資料2−2について説明後、意見交換が行われた。

  柘植委員:
 
   これまでの議論のまとめとしてはよい。今後はプロジェクトの具体化が問題。ターゲットとプロジェクトの間にもう一つ階層が入る余地が有ると考えられこの方法論が今後の課題。また、国の投資が経済や国の持続的発展という出口に対し、どの様な感度計数を持つのかという、経済と技術の融合シミュレーションが、スーパーコンピューターのプロジェクトの一つにあって欲しい。このシミュレーションが出来ると、ばらつきはありながらも、感覚的にではなく、視点がより確固たるものと成り得るのではないか。

  神野委員:
 
   私の考え方も同じ。基本的には、供給の構造を決定づけているのは技術であって、よって技術を中心とした社会転換、供給構造の変化が今言われている構造改革などに繋がって行くものだと認識している。

  澤岡委員:
 
   全体的には良く出来ている。ただ、堀井センター長のプレゼンに対してだが、日本は本当に計算機科学に強いのか。また、ソフトの開発の話も出ているが、日本人は抽象的であり、デジタル化に弱く、それがソフトを発達させる阻害要因となっている感がある。そういう意味で日本人はハードの分野では強いであろうが、本当にソフトの開発が出来るのか、違和感を感じる点がある。

  堀井センター長:
 
   本日提出した資料3は、プロジェクトの抽出に関する方法論。ただ、今後インタビュー等を行い、方法論をブラッシュアップする上で、今のご意見は貴重なもの。

  中西委員:
 
   堀井センター長の方法論においては、ターゲットを実現するためのプロジェクトが必ずしも1つではないと考えられることから、複数のプロジェクトの発案があって、その間でターゲットに統合される幅広い技術分野の評価や費用対効果の検証も行う必要があるのではないか。

  堀井センター長:
 
   今後、実際に詳細な検討を行うときには、その様な観点も考慮に入れる必要があると考える。

  西尾委員:
 
   プロジェクトの例としてどこまで拾うのか。文科省のプロジェクトだけで留めるのか、他省庁のプロジェクトも含めるのかも問題。他省庁とのデマケーションで、プロジェクトを切り分けていると、そこから重要なプロジェクトが漏れることも有り得る。ここは文部科学省のスタンスに立ちながらも、割合広範なプロジェクトを扱った方がよいのではないか。

  米倉委員:
 
   今回提出された方法論としての、3つのカテゴリ、6つのターゲットというストラクチャーは悪くない。しかし、使っている言葉に問題があるため、堂々巡りの議論となってしまう。「存在感・魅力の発揮」というプロテクティブでディフェンシブな言葉が、日本として何をするのかという言葉が一気に消えてしまう。「日本として世界に貢献すべき分野」というようなものがいい。また、文科省のプロジェクトは、経産省のプロジェクトとは異なり、今日明日の競争力を上げるというものではない。そういう意味では差別化すべきであって、本来重複するはずのないもの。戦略とはプライオリティーを決めることであって、プロジェクト候補を列挙するということでない。文部科学省として、基幹的な技術であって、非常に波及効果の高いものに何年間かかけて取組むという基本方針が示されたと考えている。

  小宮山主査:
 
   経済効果と科学技術の話がどこに位置付けられるのかということと、もう一つは科学技術云々に対する社会の理解の重要性ということが問題意識としてある。社会の理解ということでは、全体的な俯瞰図を示した上で、一つ一つの研究がどうなっているのかということを見えるようにすると言うことだろう。どこがやるのかという問題もあるが、一案としては、スーパーコンピューティングのところに、先の柘植委員の「経済効果と科学技術」の概念も含めた「広報のためのIT技術」といった例を追記することを提案する。

  青木委員:
 
   植民地獲得戦争が終了した現在、領土をExploredして富を拡大する時代ではなくなった。現在は、どの国も自由に活用できる、深海底と宇宙に注力する必要がある。これらの領域は、必然的に国家が関与しなければならないとすると、なにが日本として貢献できるのかという視点も出てくるのではないか。海洋・宇宙というフロンティアを、機能的なものとして日本の比較優位で捉えるのか、地理的な開発というものも含めて考えるのかどうなのか。

  柘植委員:
 
   その点については、ターゲットとプロジェクトの間に大きな階層があって良いと考えている。日本として戦略的に取組むべきくくり方という様なもの。例えば資料記載の電子顕微鏡などは他とはフェーズが異なる。そこを上手く検討していくべき。

  堀井センター長:
 
   本日私が提案した方法論は、リストアップされたプロジェクトに対してどの様に優先順位をつけていくかという方法論かというもの。しかし、青木委員の提案は、ターゲットに合致するプロジェクトをどのように選び出すのかという方法論にかかわるものであると考える。
 また、我々もここでいうターゲットを戦略的に構築していく作業を行うが、その時には、例えばアジアという空間をどの様に捉えるか、中国とアメリカと日本との関係をどの様に捉えるかということを考え、ターゲット・戦略目標を絞り込む。今の意見の視点はその時に必ず入ってくるもの。

  中西委員:
 
   「存在感・魅力の発揮」は、少し寂しく、もの悲しい表現。もう少し大胆なものとしても良い。ここでは、人類益・地球益に貢献するために日本が価値あることをするということを表現しては如何か。また、文科系の人間にとっては、スーパーコンピューターと言われてもなかなかイメージが沸きにくい。ターゲットにどのような貢献をするのか具体的な例示をいただけるとわかりやすい。社会的な許容度・理解度も上がると考える。

  神野委員:
 
   「存在感・魅力の発揮」でもよいが、「人類史的な使命を自ら果たす」というニュアンスが入れば、今までの意見に叶うのではないか。また、本日の資料では、基礎的な産業技術も支えるが戦略的な分野についても国が果たす使命があることをまとめて、基盤的・基礎的な技術の両方を合わせた基幹技術が重要であることを、うまく包含した書き方になっていると考える。ここを変えずに、社会学者にもうまく伝わる表現にすればよい。

  野中委員:
 
   従来のアプローチの打破が必要。極めて政治的なもののレベルが必要である。120世紀型の、税収が右肩上がりとなる考えに基づいた増分主義の予算捕り合戦を改めること。2「『平和力』で世界のリーダーシップをとっていく国」を明記すること。つまり、国が「まるまるという国を目指す」と明らかにした上での予算配分であることを納税者に強く訴えるべき。国民が納得して税金を納めることができなければならない。

  伊賀委員:
 
   このシステムの中に、時間的に発展する評価を組み込まなければならない。その評価の観点の一つに、「経済性」あるいは「市場性」、「文化的な、国際的なインパクト」、「プロセスを見ながらプロジェクトを推進することができる理解と責任」の3点が重要。

  桐野委員:
 
   単に重要と言うだけではなく、Alternativeを示して、「もしこのプロジェクトを実行しなければ、まるまるのようなことが起きる」ということを明らかにすることで、そのプロジェクトの重要性がより明らかになるのではないか。

  柘植委員:
 
   「存在感・魅力の発揮」については、「世界・人類への貢献」と入れるのがよいではないか。

  中西委員:
 
   「人類」、「フロンティア」「課題」「挑戦」という、前向きでアドレナリンが出る言葉にすることが良いのではないか。「適切な貢献」とあると、少し心構えが小さい気がする。後に評価が課題となることもわかるのだが、ターゲットには希有壮大な言葉を入れてもらいたい。

  米倉委員:
 
   アドレナリンが出るとは良い言葉。また、国民対して、何故このプロジェクトが、基幹で、戦略的であるのか。数値目標が年々改善され、「あるべき姿」に対する達成度がどうなっているのかという、説明責任を果たすことができる仕組みを社会に組み込んで欲しい。そのために、文部科学省はこの様な政策を採った、ターゲッティングをしてきたということを省庁全体に伝わる様な仕組みについても組み込んでもらいたい。

  永松委員:
 
   国民の税金を使うからには、その成果をいかに国民が享受できるかが大きな問題となる。その意味では、省庁の枠を越えた議論も必要となるであろう。また、プロジェクトの候補案には、技術的な課題や目標が多く書かれているが、社会への効果もあると良いのではないか。

  青木委員:
 
   「存在感・魅力の発揮」に対しては、「人類の活動分野の拡大と富の創出」、人類の活動分野拡大のための日本の貢献を・・・」といったところがよいのではないか。

  米倉委員:
 
   ここで議論すべきプロジェクトは、明日、すぐ役に立つものではなく、マーケットに任せていては失敗してしまい、さらに、効果は10年後、20年後に現れるものが議論の対象となるべき。そういうものに対して大量の投資をしていくということ。

  柘植委員:
 
   科学はそれ自身が目的であって、経済効果などという次元の話ではない。しかしながら、技術を議論するときは、数年先であろうと、10年先であろうと、技術自身に対する不確かさはあっても良いが、間違っているかもしれないが、経済効果に対する曖昧さはあってはならないと考える。

  小宮山委員:
 
   ターゲットとプロジェクトの間をどう表現するかという工夫、これは6つのターゲットをどの様に表現するかということ。資料2−3のカテゴリ「【存在感・魅力】の発揮」に、人類史的な視野、21世紀に向かってという面を考慮した適当な言葉の選択、具体的なプロジェクトの例示の仕方、の3点を主査一任で検討するとした上で、本日の提案を了承として宜しいか。(異議なし)

  1本日の提案は科学技術・学術審議会へ報告する、2次回の会議開催は未定である旨を事務局より連絡>

  (了)

お問合せ先

研究開発局開発企画課

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