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資料2−1

計算科学技術推進ワーキンググループ平成16年度報告概要(案)

平成17年1月27日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
情報科学技術委員会
計算科学技術推進ワーキンググループ

1. 計算科学技術推進ワーキンググループについて

 今後の計算科学技術の推進に係る諸問題についての検討を目的として、情報科学技術委員会運営規則第2条に基づき、情報科学技術委員会の下に「計算科学技術推進ワーキンググループ」(以下「WG」という。)を設置し、平成16年8月から検討を行った。

2. HPCハードウェア開発動向

 平成16年8月に行われた第1回WGおよび、9月に行われた第2回WGでは、HPC(High Performance Computing)ベンダー(注1)から、HPCハードウェア開発の動向を中心にプレゼンテーションを実施した。その際、特に、マルチスケール・マルチフィジックス(注2)(超大規模・複雑)なシミュレーションを実現する仕様と、それを達成するためのハードウェア上のブレークスルーを明らかにすることに主眼を置いたプレゼンテーションを求めた。
 第1回WG、第2回WGで実施したプレゼンテーション内容に基づき、将来の超高速計算機システムの実現に向けたハードウェア開発の問題点、課題などを整理した。
 今回のHPCベンダーからのプレゼンテーション内容から、超高速計算機システム開発に関する以下のような点が明らかになった。

将来の超高速計算機システム開発における課題
 既存技術の延長では、例えば半導体微細加工技術が進む中、リーク電流による消費電力の増大がCPUの高速化を阻害することや、既存の電気伝送技術ではCPU―メモリ間伝送速度の高速化に限界があるなど、物理的な「高速化の壁」が存在することが明らかとなった。
 その「高速化の壁」を突破するための喫緊の課題として、CPUの高速化CPU−メモリ間伝送速度の高速化ノード間伝送速度の高速化低消費電力化・冷却技術の向上等のハードウェア要素技術について、ブレークスルーを実現するための研究開発が必要である。
注1 国内でHPC製品を開発しているベンダー3社(日立製作所、富士通、日本電気)および、海外でHPC製品を開発しているベンダー1社(Intel)。
注2
マルチスケール ミクロからマクロまで異なるスケール
マルチフィジックス 異なる物理現象・状態
参考)
 マルチスケール・マルチフィジックスな系全体の最適シミュレーションの例
  図:大気・海洋結合シミュレーション
図:ヒューマンシミュレーション
図:溶岩流シミュレーション

3. 将来のスーパーコンピューティング環境への期待と課題

 将来(2010年前後を想定)のスーパーコンピューティング環境をテーマに、第2回以降、WG委員から、スーパーコンピュータユーザの立場、あるいは、共同利用可能なスーパーコンピュータセンターを運用する立場からのプレゼンテーションを受け、それに基づいて討議を行った結果、以下のようにまとめられた。

(1) 将来の超高速計算機の必要性について

大学や研究機関においては、ライフサイエンス、原子力、天文、航空・宇宙、ナノサイエンス、地球環境等あらゆる研究分野において、実効性能がペタフロップス超級の超高速計算機に対する強い要求がある。
民間企業においても、製品設計・開発の短縮や新規市場の創出等の観点から、実効性能がペタフロップス超級の超高速計算機の必要性がますます高まっている。
超高速計算機は、安全・安心な社会の構築、産業の国際競争力の向上、国際的リーダーシップの実現等に活用する観点から、国のプロジェクトとして開発を推進する必要がある。

(2) 将来の研究目標について

 従来の単一スケールのシミュレーションや単一現象のシミュレーションに加え、これらを統合もしくは融合したマルチスケール・マルチフィジックスな系全体のシミュレーションが将来の目標として挙げられた。

(3) 将来の超高速計算機システムの開発について

ペタフロップス超級の超高速計算機、特に、ベクトル型、スカラ型計算機のような汎用性のある超高速計算機の開発には、CPUの高速化、低消費電力化をはじめとするハードウェア要素技術の研究開発が必要不可欠である。
分子動力学、格子ガス法等、特定の分野/計算手法に特化した専用計算機の開発が、半導体集積度や発熱の問題を緩和する可能性があるため、汎用性のある計算機と専用計算機の組み合わせも検討すべきである。
マルチスケール・マルチフィジックスな系全体の最適シミュレーションを実現するために、これら複数の計算機アーキテクチャを複合したシステムの開発も検討すべきである。
超高速計算機を効率的に利用・運用するためのソフトウェア開発(OS,コンパイラ、ライブラリ、開発環境、並列アルゴリズム等)、システム開発(システム設計、プログラミングモデル、信頼性、セキュリティ、性能評価法(ベンチマーク))なども課題として挙げられた。
超高速計算機の膨大な計算結果、実験によって得られた結果のデータベース化、超高速計算機利用技術を持った人材の育成、利用技術の展開も必須である。

(4) 共同利用のあり方について

共同利用可能な計算機センターの必要性について
 単独の研究機関や企業では、幅広い計算ニーズに対応する世界最高性能の計算機システムを導入・維持することは、設置スペースや費用等の問題で困難である。従って、外部からの共同利用が可能な超高速計算機センターが設置されることへの要望が強い。
 このようなニーズにこたえるため、既設の共同利用計算機センターを含め、これからも超高速計算機センターについては、より一層の機能の充実をはかり、将来とも十分に役割を果たすべきである。

利用者側からの要望について
 大学や独立行政法人研究機関など、外部利用者からは、遠隔地からのネットワーク利用が可能な環境の実現への要望が高い。
 民間企業からの利用に関しては、市販アプリケーションの使用や機密保持などのセキュリティへの要望が高い。
 また、利用手続きの簡素化、共同利用メニューの多様化、プログラム最適化や利用に関して、広報誌、研究会、ネットワークを通した情報共有・情報公開・教育の推進などの要望が挙げられた。

運用上の課題
 共同利用可能なスーパーコンピュータセンターを運用する立場からは、以下のような運用上の課題が挙げられた。
  保守費、電気料金、ユーザ支援などの運用・維持コストの増加。
  多数のユーザが使用することによる計算機リソース不足、運用の複雑化。
  大量の計算結果を保存するための、データ保存容量の不足。

4. 今後の検討課題について

 今後の検討課題として、以下の様な項目が挙げられる。
1) ペタフロップス超級スーパーコンピューティングのターゲットにふさわしいアプリケーション(グランドチャレンジ)の選定(最先端の科学技術分野や産業界等が必要とする実問題)
2) ペタフロップス超級スーパーコンピューティングの実現方針
選定されたアプリケーションにおいて所要性能を達成するハードウェアとアーキテクチャ
計算機の能力を最大限に発揮させるためのソフトウェア(OS、コンパイラ、ミドルウェア、アプリケーション、データベース等)の開発や性能などの評価手法の方針
システム全体(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等)の一体的な技術開発の方向性
3) 計算科学技術を持続的に発展させていくスキーム
計算結果や計算手法のデータベース化・共有化によって、計算科学技術を知的資産として容易に再利用できる環境の構築方針
計算科学技術分野全般にわたる人材育成方針
外部の共同利用可能な超高速計算機センターのあり方

 わが国の国際競争力の維持や持続的発展に寄与するペタフロップス超級スーパーコンピューティングの実現を含む、計算科学技術の維持、発展に関する今後の国策の指針とすべく、平成17年度も計算科学技術推進WGを継続し、本報告書に記載した課題について検討を進めてゆくべきである。

以上




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