航空科学技術委員会(第70回) 議事録

1.日時

令和3年8月23日(月曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

オンラインにて開催

3.議題

  1. 航空科学技術分野に関する研究開発ビジョン最終取りまとめ骨子(案)について
  2. 研究開発課題の評価について
  3. その他

4.出席者

委員

科学技術・学術審議会臨時委員  李家 賢一【主査】
科学技術・学術審議会専門委員  浦松 香津子
科学技術・学術審議会専門委員  太田 惠子
科学技術・学術審議会専門委員  河合 宗司
科学技術・学術審議会専門委員  佐藤 哲也
科学技術・学術審議会専門委員  武市 昇
科学技術・学術審議会専門委員  土屋 武司
科学技術・学術審議会専門委員  戸井 康弘
科学技術・学術審議会専門委員  冨井 哲雄
科学技術・学術審議会専門委員  二村 真理子  
科学技術・学術審議会専門委員  山岡 建夫
科学技術・学術審議会専門委員  和田 雅子

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)  原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課長  福井 俊英
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長  須藤 正幸
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐  先光 吉宗

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空技術部門長  張替 正敏
航空技術部門 航空プログラムディレクタ  渡辺 安

オブザーバー

経済産業省
国土交通省

5.議事録

1. 開会

【先光課長補佐】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 航空科学技術委員会(第70回)」を開会させていただきたいと思います。
 本日はオンラインにより御出席をいただきまして、ありがとうございます。私は事務局を務めさせていただきます宇宙開発利用課の先光と申します。よろしくお願いいたします。
 委員会開始に当たりまして、本日、航空科学技術委員会の委員12名全員の委員に御出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしているということを、まず御報告させていただきます。
 このほか、説明者としてJAXAから、オブザーバーとして関係省庁からも御出席をいただいております。個別の御紹介はお手元の出席者一覧に代えさせていただきます。
 続きまして、資料の確認でございますが、本日の配付資料につきましては、あらかじめ委員の皆様には電子メールにてお送りをしています。
 配付資料の一覧のとおりですが、もし過不足等お気づきの点がございましたら、事務局までチャット機能を使ってお知らせいただければと思います。
 それでは、以後の議事の進行につきましては、李家主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【李家主査】 李家でございます。今日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、早速、第70回の航空科学技術委員会の議事に入らせていただきます。

2. 議事

(1) 航空科学技術分野に関する研究開発ビジョン最終取りまとめ骨子(案)について
【李家主査】 まず、議事の1番目、航空科学技術分野に関する研究開発ビジョン最終取りまとめ骨子(案)についてということで、事務局から説明をお願いいたします。

【先光課長補佐】 事務局から説明をさせていただきます。
 前回の委員会で、中間取りまとめを踏まえた個別具体の研究開発課題について、JAXAから御報告をいただきました。
 これを踏まえて、研究開発ビジョン最終取りまとめの骨子案を事務局で作成しています。
 資料70-1-1を御覧いただけますでしょうか。
 最終取りまとめの骨子の考え方について、これまでの議論において、資料の上に記載しておりますとおり、これまでの方針、研究開発計画(2017年)に相当する粒度の内容を次期研究開発計画の形式に整合する形式で記載をするということと、構成は現行の研究開発計画を維持することを基本に、中間取りまとめでの三つの方向性の内容を盛り込むということが挙げられておりました。それを踏まえまして、事務局において作成をしています。
 こちら資料左側に、JAXAの最終報告書の構成、右側に研究開発ビジョンの構成を示しています。
 まず、JAXAから報告された中間取りまとめを踏まえた個別具体の研究開発課題、主に第4章に記載されている内容を整理して、研究開発ビジョンの5章として新たに追記をするということと、JAXAから報告された研究開発の推進方策、主に5章の研究開発実施体制や研究環境についてに関することですが、こちらは研究開発ビジョンの第4章、実現方策を支えるシステム改革のところに反映するということ、さらに当委員会で御検討いただいておりました「新型コロナウイルス感染症を踏まえた検討について」を、これに反映させていくという方針の下で作業を進めてまいりました。
 2ページに参りまして、個別具体の研究開発課題につきましては、具体的には、研究開発ビジョンの5章として未来社会デザイン・シナリオを実現する個別具体の研究開発課題という章を設けまして、未来社会デザイン・シナリオで示した、既存形態での航空輸送・航空利用の発展に必要な研究開発課題、次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用に必要な研究開発課題、さらに、これらのデザイン・シナリオを実現するための基盤技術ということで、その三つに整理をしております。
 既存形態での航空輸送・航空機利用の発展に必要な研究開発課題につきましては、JAXA報告書の課題A、脱炭素社会に向けた航空機のCO2排出低減技術、課題Bの超音速機の新市場を拓く静粛超音速機技術、4.2重点課題以外の研究開発課題候補とその他の研究開発テーマのうち、旅客機低騒音化技術と気象影響防御技術、運航制約緩和技術を記載しています。
 次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用に必要な研究開発課題につきましては、課題Cから国土強靱化、空の移動革命を実現する多種・多様運航統合/自律化技術、あとは4ポツ2、重点課題以外の研究開発課題候補とその他の研究開発テーマのうち、航空宇宙機への水素燃料適用技術を記載しております。
 デザイン・シナリオを実現するための基盤技術といたしましては、課題Dの新たな航空機を創出するライフサイクルDX技術を、こちらに記載しております。
 続きまして、資料70-1-2を御覧いただけますでしょうか。
 こちらが具体的に最終取りまとめの中に入れる項目を記載しました骨子の案です。
 黒字が参考資料1でつけている中間取りまとめの記述を引用したもの、青字が参考資料2で添付しているJAXAの報告書の記述を引用したもの、括弧書きの数字はJAXA報告書の該当する章番号となっております。赤字で書かれているものが、参考資料3で添付している本航空科学技術委員会で検討した「新型コロナウイルス感染症を踏まえた検討について」の記述。1か所オレンジ色で記載しているところは、政府の政策文書から引用したもので、「国際連携の充実も図りつつ、経済安全保障の取組を強化・推進する」のために、「我が国の自立性の確保・優位性の獲得を実現する」という観点の記述を追記したものです。
 本文ですが、2.の我が国の航空分野の現状ですが、コロナ禍の観点としまして、有事の際の需要が落ち込む点、回復までに時間がかかる見込みであるが、最終的には成長を再開して需要拡大の傾向が維持されるという点。20行目からですけれども、国の役割が相対的に大きくなる点。航空機産業が牽引し、新しい場の創出により技術・人材の維持をする点。先鋭・多様なニーズに応え、次なる有事に備えを進める点。28行目からはカーボンニュートラルを目指す動きについて追記をしています。
 2ページ目の3.航空科学技術分野における未来社会デザイン・シナリオの実現方策の章になりますが、こちらでは、まず、(1)の未来社会デザインとシナリオですけれども、背景といたしまして、コロナ禍の記述を再掲するとともに、丸1の既存形態での航空輸送・航空機利用の発展においては、航空輸送・航空機利用の発展が引き続き必要であり、特に量から質へ要求がシフトしていくことと、移動に対するコストの意識が変化していくこと。他分野連携も活用したレジリエンス強化が課題であることを追記しています。
 丸2の次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用につきましては、ドローンや空飛ぶクルマに加えて宇宙輸送機にも資する技術の観点を追記し、コロナ禍の新たな生活様式におけるオンデマンドのユーザーニーズを次世代モビリティで対応していく点を追記しております。
 さらに3ページ目、8行目からですが、(2)のデザイン・シナリオを実現する研究開発、基盤技術整備の方向性、この中では、我が国の優位技術を考慮した研究開発戦略において、環境負荷の低減や運航コストの削減、時間的・地理的制約の緩和などにより、航空輸送の価値をより一層高める研究開発が必要である点。異分野連携も活用した革新技術の創出において、デジタル技術、IoTを活用した連携拡大等により、より多様なシナリオに即応できる機動性を高める体制を構築するという点。AI・ロボット・IoTを活用した省人化や無人運航、次世代モビリティも組み合わせたオンデマンド輸送を実現するということなど、有事の際にも利便性が損なわれないようにする研究開発が必要であるという点を追記しております。
 出口を見据えた産業界との連携におきましては、4ページ目に移りますけれども、今後も有事による国際共同開発が遅延・中止となるリスクを抱える中で、デュアルユースの拡大等により、技術の陳腐化や実用化・製品化機会の喪失を回避するとともに、研究開発を効率よく進めるために、出口からの意見やニーズ・要請を積極的に取り入れる体制が必要であるという点。さらには、JAXAの報告書に書かれていたところですけれども、研究開発成果の社会実装を確実にしていくために、研究開発の期限と出口を明確化した上で、エコシステム(研究成果を社会実装する枠組み)を活用して、受取手と共同での開発・評価、技術移転後のフォローアップを着実に行っていくという点を、ここで位置づけております。
 さらに4ページ目の下に移りまして、4.の実現方策を支えるシステム改革の章になりますが、丸1の研究人材の改革につきましては、コロナ禍を踏まえて、航空科学技術分野における感染症に関する知見を持つ人材育成や外部研究者との連携も必要になっていくという点と、JAXAの報告書に書かれておりました、新たな人材の取り込みですとか、既存人材の育成の観点として、JAXAにおいて外部機関との相互出向、クロスアポイント等を積極的に行って、自らの機関内にはない外部機関の専門能力を活用するという点、JAXA外の人材育成への貢献として、若年層に向けた航空宇宙科学技術の教育機会の提供であるとか、実用につながる研究開発に携わる機会の提供を進める必要性について記載をしております。
 丸2の資金の改革は民間企業の資金の活用の観点を追記しております。
 丸3の研究環境の改革ですけれども、こちらはコロナ禍を踏まえて、新しい研究開発課題に取り組むために、システム実証を可能にする設備ですとか、解析技術を検証する基盤研究設備、サイバー空間の協働を可能にする設備へのニーズが高まっている点、新たな社会に対応する研究設備の整備やリモートでの研究環境も必要になってくるのではないかという点を追記しております。
 丸4の研究開発実施組織の改革につきましては、コンソーシアム等を通じて、産学官のステークホルダーが幅広くビジョンやユースケースを共有して、共通のシステムに対して技術開発を行うことが重要であるという点と、国際標準化活動に参画することにより、日本のプレゼンスを向上することが必要である点を追記しております。
 最後に5ポツの未来社会デザイン・シナリオを実現する個別具体の研究開発課題ですが、こちらは冒頭の考え方のところでもお示ししましたとおり、既存形態での航空輸送・航空機利用の発展に必要な研究開発課題、次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用に必要な研究開発課題、あとは二つの未来社会デザイン・シナリオを実現するための基盤技術ということで整理をしております。
 これらの5章の内容につきましては、最終的には参考資料4の現行の研究開発計画の粒度で文章を作成していこうと考えているところです。
 事務局からの説明は以上になります。まずは骨子の案ということで、最終取りまとめとして記載するべきポイントについて、これまで議論してきた内容を踏まえて整理をさせていただきました。過不足等がございましたら、御意見を賜れればと考えております。よろしくお願いいたします。

【李家主査】 どうもありがとうございました。
 では、ただいまの御説明を踏まえまして、この研究開発ビジョンの最終取りまとめの骨子案について、今日はしばらく時間を取って考えさせていただきたいと思います。
 今もお話がありましたけども、今後の最終取りまとめを作成するに当たっての御意見を伺えればと思っております。
 この最終取りまとめを行いますと、これが文部科学省の研究開発計画に反映されるということで、今後の航空科学技術の研究開発の方向性を示すことになると考えておりますので、御意見、御質問等いただければと思います。
 およそ20分以上時間を取れると思うのですが、皆様からたくさん御意見を伺えればと思いますので、まずは御質問を順次いただいて、ある程度質問が出たところで、まとめて事務局やJAXAから回答していただければと思っております。御質問、御意見等お願いいたします。

【武市委員】 すいません、都立大の武市ですが、質問というよりはコメントに近くてもいいですか。

【李家主査】 お願いします。

【武市委員】 2の2.の最後に、全体の根本的な取りまとめみたいな感じで書いてある部分がありますが、この文章だけを読んだ人が誤解をしないように、追記が必要かと思いました。2ページ目の一番頭の「産業界・学術界から以下の役割が期待されている」というところですが、これは研究開発をやることが期待されているのではなくて、需要に応える研究開発をやって、その成果を還元することが期待されているわけですよね。そういう意味では、丸1のところは、書き方としては、「社会からの需要に対して研究開発の成果を還元する」ということが目的になるのではないでしょうか。研究というのはあくまでもその手段でしかないので、需要があることに対して、そのリスクが高くても研究開発をやりますという意味合いですよね。ですので、あくまでも社会還元、この委員会で言うところの出口に研究成果をつなげることが、一番大事な目的だと思います。
 丸2、丸3はこれでよくて、丸4、基礎力と応用力という人材と書いてありますが、研究を仕事にする人材だったら基礎も応用もあって当たり前なので、理想的な人材像としては、研究開発・成果を社会に還元するまでの視野と実行力を持つ人材の育成というような書き方が適切ではないかと思います。
 また、3の(2)の丸3のエコシステムのところですが、コンソーシアムという御提案を新しくいただいたのは、これまで何もなかったのに比べれば、非常に大きな進歩だと思うのですが、新しい御提案ですので、社会需要を吸い上げる機能としてコンソーシアムだけで十分なのかどうか、あるいは改善の余地がないのか、あるいはほかの手段が必要なのかどうか、評価を継続的にする必要があると思いますので、そういった書き方をどっかにするべきかと思います。
 4の丸1の人材のところですが、前回の委員会でお伝えしたつもりが曖昧だったので、多分、反映されてないと思うんですが、先ほどお伝えしたことと一緒ですね。社会実装とか技術移転といった出口まで研究開発を導ける人材といったものが求められると。
 それから、その育成方針として、JAXAに入った若手のときから、基礎研究だけじゃなくて出口につながる研究開発の課題に常に携わり続ける。要するに、基礎研究と実用化研究の両方に常に携わり続けることが大事ではないかと思います。
 現行の航空技術部門だと、出口につながる研究に携わるというのが難しいかもしれませんので、その場合は32行目にも書いてある取組も使えると思うのですが、例えばJAXAの中だと、相模原とか筑波は非常に出口寄りの研究開発もやっているので、若いうちに一時的にそこで、JAXA内出向のような形で勉強してくるとか、そういったことも効果的ではないかと思います。
 それで、出口につながる研究開発の実績を積み重ねてきた人が、次の世代の管理職に就くようになれば、JAXAの航空部門そのものが、出口につながって当たり前というような組織に生まれ変わるのではないかと思っています。
 4の丸2の研究資金のところですが、民間企業の研究開発資金の活用という項目があるんですが、公的機関のいわゆる競争的研究費、研究資金といったところも大事だと思います。NEDOとかであれば、例えば社会需要を見越した上で、その分野の研究開発を促進するために研究資金を提供するような取組をしており、そういったところの予算を獲得して研究して成果を出せば、より確かな需要があるところに、より短期に応えることができるようになります。ですので、ここでは公的機関の競争的研究費という観点も追加したほうがいいと思います。以上です。

【李家主査】 どうもありがとうございました。
 たくさんご意見をいただきましたので、事務局で整理していただけますでしょうか。

【先光課長補佐】 はい、御指摘いただきました4点。事務局で、最終取りまとめの素案をつくるときに、文章の中で反映をさせていただければと思います。
 4つ目の点として、NEDOなどの公的資金も活用するというお話がありましたけれども、どちらかというとここの趣旨としては、これまで公的資金、競争的資金の獲得というのは割とやってきたけれども、さらにそれに加えて、民間企業の資金というのも、もう少し活用した方がよいのではないかという問題意識で、記載をしておりますので、そういった趣旨が明確になるように、文章を作成したいと思います。

【武市委員】 よろしくお願いします。

【李家主査】 3番目の点で、JAXA内の組織についてコメントいただきましたけど、JAXAからでも結構ですが、御意見等ありますでしょうか。

【先光課長補佐】 JAXAから何かコメントありますでしょうか。特になければ、事務局で文章の案は検討し、JAXAとも、どのような形で対応できるか相談をしながら対応したいと思います。

【李家主査】 分かりました。ありがとうございます。
 では、ほかに御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。

【河合委員】 河合ですけど、よろしいでしょうか。
 今回初めて、この会議に入るので、全体把握できていないかもしれませんが、先ほどの武市先生の御発言で、出口につながって当たり前で、JAXAはそうあるべきで、基礎学術と出口志向の研究、両方やりましょうという話だったと思うのですが、実際問題として、それはなかなか難しいのかなというのが私の思うところです。出口志向の研究に取り組むと、一般的にそちらばっかりなってしまって、基礎研究がおろそかになってしまい、結局は研究技術の空洞化が起こるということが、JAXAをはじめ起こってしまう可能性もあるかと考えられるので、もちろん理想的には基礎研究も出口志向の研究もできて、当然両方分かった上で、国際的トップレベルの基準で両立できるというのがいいとは思うのですが、その辺の書きぶりは、JAXAの意見も含めながら整理するのがいいのかなと私は個人的には思いました。

【李家主査】 ありがとうございます。
 今の件に関して、いろいろな立場で御意見が様々あるかと思います。武市先生、今の点に関してコメントありますでしょうか。

【武市委員】 私自身の経験に基づいて言えば、基礎だけでも駄目だし、実用だけでも駄目です。基礎だけやっている人は実用化まで持っていくプロセスが分からないし、実用だけやっている人は研究基盤を失ってしまう、という主旨です。そういう意味では、宇宙研は非常に分かりやすいのですが、きちんと基礎もやりつつ実用化までやっている。それが理想に近い姿ではあると思います。同じJAXAの中でそういう理想に近い姿があるので、それを実現できるような研究体制をつくっていくというのは、一つ目標としては必要だと思います。

【李家主査】 どうもありがとうございます。
 この辺り、両論併記のような形にもなるかと感じましたが、ほかの委員の先生から、この点に関してでも結構ですし、ほかの点に関しても御質問、御意見等ありましたら、お願いいたします。よろしくお願いします。

【二村委員】 では、すいません、東京女子大学、二村でございます。
 今の基礎と出口の議論というのを伺いながら、同じようなことだとは思うのですが、短期的な視点と長期的な視点、それは両にらみでいかなければならない気がいたしました。当然のことながら、長期的視点の中にはどうしても基礎が入ってくるということにもなるので、JAXAの中で両方の視点を忘れずに、どちらか一方に偏らずに、ということで書いていただくといいかなと思いながら伺っておりました。
 加えて、細かい点で恐縮ですが、7ページの上、6ページの後ろから、次世代モビリティ・システムによるというドローンの辺りの話ですけれども、「災害対応や農林水産業をはじめとする」ということで、「はじめとする」という中に全て入っているだろうと思いつつも、念のため申し上げておきますと、今の人口減のような社会の大きい変革を背景として、過疎化が非常に問題となっている。そういう中で、過疎地の物流に非常にその活用が期待されているところで、こういうところには、いろんな資金が投入されるところであると思いますので、そのような視点を。それから、かなりエリアが変わりますけれども、建設業ですとか、維持管理・補修系のメンテナンスにも、このドローンがかなり活用されるという側面があり、恐らく災害対応、農林水産業ですと、従来型だと思いますから、新しい視点もあるということだけ一応申し上げておきます。ただ、字数の関係もありますし、書きぶりに関しましては、お任せいたします。以上です。

【李家主査】 ありがとうございます。
 もう少し御意見を伺うことにしまして、ほかの先生方、いかがでしょうか。
 お願いします。

【佐藤委員】 早稲田大学の佐藤ですが、よろしいでしょうか。
 すみません、先ほどネットの調子が悪くて、話が聞こえてなかったので立ち上げ直しました――今の、出口志向と基礎研究のところについてのコメントです。航空分野はかなりシステム的に大きな分野です。基礎というかシステムをやっている人で、実際に物をつくり、個別の要素も知っていて、かつ、システムインテグレーションもできるという人というのがなかなか育ちにくい環境です。どうしてもシステムを動かしている人は、細部のところまでなかなか目が届かないということが今までもありました。宇宙研とか筑波でも、航空技術部門と比べて本当に機能しているのかというと、私はちょっと疑問に感じます。基礎と出口という観点と、全体のシステムと要素技術開発という観点から、両方できるような仕組みをつくっていくのがいいのかなと感じました。以上です。

【李家主査】 どうもありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。どうぞ、お願いします。

【戸井委員】 JADCの戸井ですが、よろしいでしょうか。
 1ページの32行辺りですけれども、これは前回の私の発言にも関連しますが、CO2排出低減と、超音速旅客機輸送とは、一緒に扱わないほうがよいと思っています。
 CO2排出低減の動きというのは、社会的な役割として大きな流れという捉え方を明記したほうがいいと思いますし、一方で、コロナ後の社会変容で求められる多様性への対応として、超音速等といった高付加価値をしっかりと提供する意義があるというような使い分けをして、超音速技術の価値というものを言ったほうが、皆さん納得できるんじゃないかなと思います。
 前回もそうですけれども、課題として脱炭素、モビリティ、DXと並べて超音速と言うと、やっぱり素直になかなかうなずけない人も多いのではないかと。そういうところを、さっき言ったような丁寧な導入にした方がいいのではないかなと思いました。
 以上です。

【李家主査】 どうもありがとうございます。
 では、ここでまた切らせていただいて、先ほどの基礎か出口かというところ、二村先生からの次世代モビリティに関するところと、それから最後に戸井委員からの超音速関係のところです。その辺りの取扱いについて、事務局から御確認いただけますでしょうか。

【先光課長補佐】 今、御指摘いただきました基礎研究と、出口志向の研究でございますけれども、恐らくこれまで主にJAXAを中心に進められてきたところが、どちらかというと基礎研究の割合が大きく、出口志向という面があまり見えてこなかった部分があるので、今回、JAXAの報告書の中にも、エコシステムという形でもう少し社会実装を踏まえた研究を進めていくという視点が盛り込まれたと考えております。これを踏まえて、この最終取りまとめの中でも、もちろん基礎研究もきちんと進めながら、出口志向もきちんと考えて進めていくということで、そこはバランスを取っていくということで、まとめていければと考えております。
 その中で、短期的な取組、長期的な取組ですとか、もしくはシステム全体と個別の理論といったところのバランスも取っていくということで、書きぶりは今後御相談しながら進めていきたいと思っておりますけれども、そういった形でまとめていければと考えております。
 ドローンの取扱いですけれども、今、例示としては、農林水産ですとかが書かれておりますが、御指摘のありました過疎地域の物流ですとか設備の維持管理につきましても、文章の中で盛り込んでいければと考えております。
 あと、戸井委員から御指摘いただきましたCO2排出削減と超音速の取扱い、書き方につきましても、社会の流れとコロナの対応で、少し違った扱いが必要ではないかという書き方でまとめていければと考えております。

【李家主査】 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。このように対応していただくので、よろしいでしょうか。

【李家主査】 ありがとうございます。
 では、ほかに御意見、御質問等ありましたら、お願いいたします。

【土屋委員】 すいません、土屋ですが、よろしいでしょうか。
 2ページ目の最後のところで、次世代モビリティ・システムの中に、宇宙輸送機というのが追加されていますが、宇宙輸送機をモビリティと言ってよいのでしょうか。言ってもいいとは思うのですが、ちょっと浮いたような感じがします。例えば超音速機とかそういうのもここに入ってくるのではないかとは思うのですが、宇宙輸送機がここに入っているというところに、少し違和感を覚えました。
 それから、先ほど武市委員から、お話があったかと思うのですけど、研究資金等に関して、例えば国の予算であれば、文科省、経産省系の例えばNEDOとかの資金等あります。全体的に国の限られた予算の中で、効率的にそれを使いながら研究を進めていくというところが見えると良いかと思います。
 典型的なのが、次世代モビリティとかドローンがそうですけど、民間の動きが活発なので、そことJAXAをはじめいろいろな民間の資金、資金集めに関しては、新しいクラウドファンディングのようなものもありますし、そういうものをうまく活用しながら、研究を進めるという観点があればいいかと思います。
 それから、先ほどドローンについてのお話があったかと思いますが、ドローンの利用という点では幾らでも細かく書けるとは思いますが、むしろ、あまり利活用をここに強く出すよりは、ドローン・無人航空機に関する基礎的な研究とか、運航管理の研究などの要素技術も打ち出すべきかと思います。利用と言うと、民間主導で進んでいますので、そうではない基礎的研究に関する記述があるといいのかなと思います。私からは以上です。

【李家主査】 はい、ありがとうございます。
 ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。お願いいたします。

【山岡委員】 恐れ入ります、SJACの山岡でございます。
 4ページの上から2ポツ目ですが、赤字で書いてある文章の意味を教えていただければと思います。ここでデュアルユースを拡大すると書いてありまして、デュアルユースは通常我々が思っているような、シビルとミリタリーという意味でいいのか、少し別の意味で書かれているのか。この文章の意図するところがすとんと入ってこないので、そこを教えていただければと思います。この一点だけでございます。

【李家主査】 ありがとうございます。
 では、今の御質問に関して、整理していただけますでしょうか。

【先光課長補佐】 まず、土屋委員から御指摘いただいておりました1点目、宇宙輸送機がモビリティでよいのかという点でございますけれども、ここで言う次世代モビリティというと、主にはドローンですとか空飛ぶクルマを想定しておりましたが、さらにその先の未来の乗り物という位置付けで、次世代モビリティのところに分類をさせていただいております。
 確かに超音速機は既存形態での航空輸送に分類しておりますので、そちらの延長という整理も恐らくできますが、ここでの整理は、まずは既存形態での航空輸送ではなくて、さらにその次の次世代のモビリティということで、こちらに位置づけさせていただいております。
 あと、資金のところですけれども、御指摘いただいたとおり、国の資金ももちろん含まれておりますし、それらを効率的に活用していくという点は、中間取りまとめの中でも記載をしてございますので、最終取りまとめの中でも、こういった形で記載をしていくものと考えております。
 あとドローンの利用ですが、中間取りまとめの際に、次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用という形で、未来社会デザインとそのシナリオを書いております。ここでは未来社会がどうなるのかを想定して整理をしており、二つのデザインとシナリオとして、既存形態での航空輸送と航空機利用と、次世代モビリティ・システムによるさらなる空の利用で、それぞれ既存形態の航空機や次世代モビリティが使われる世の中を想定して、ここを書いているというものでございます。さらにそこから、個別具体の技術について検討を進めていく上で、御指摘のあった無人航空機の基礎的な技術、基礎的な研究として、今回、JAXAからの報告にございましたとおり、統合運航技術ですとか、そういったところを位置づけているというものになっております。
 そういったところで、御指摘の点を踏まえて最終取りまとめの中に、また、文章にすると少し詳しく書けますので、文章にする中でそういったところは書かせていただきたいと思っております。
 あと、山岡委員からございましたデュアルユースの意味するところでございますが、こちらは委員会で御議論いただいたときに、コロナを踏まえて国際共同開発が遅延・中止になるリスクがある中で、ここで言うデュアルユースというのは、御指摘のとおりミリタリーとシビルという意味でのデュアルユースになりますけれども、そういったところの拡大等も含めまして、その技術の陳腐化、実用化の機会逸失といったものを回避していく必要があるということが位置づけられておりまして、最近、アンカーテナンシーという言葉も使われておりますけれども、そういった景気に左右されずに、ミリタリー含めて、国でもこういった技術開発というのをきちんと進められていくような下地をつくっていく必要があるため、こういった文章をここに入れています。

【武市委員】 すいません。さっきのドローンの農林水産とかをはじめとするという表現があったんですが、物流という言葉をどこか1か所だけ入れておいたほうがいいんじゃないですか。

【先光課長補佐】 今、「災害対応や農林水産業をはじめ」と書かれておりますけれども、実際に最終取りまとめ、文章にする中で、過疎地域での物流ですとか、先ほど御指摘のありました建築物の維持管理ですとか、そういった要素につきましては、明示的に書かせていただければと思っております。

【武市委員】 分かりました。ありがとうございました。

【李家主査】 それでは、今までのところはよろしいでしょうか。

【山岡委員】 山岡でございますけれども、今、御説明のあったデュアルユースということで理解いたしました。そうすると、ここの文章の出口側からの意見やニーズというのは、例えばこれは出口の一つとすると防衛省、自衛隊ということになるのですけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。そういうところの意見やニーズ、要請を取り入れていくと。そういう体制が必要だということを、ここの文章で述べていると。

【先光課長補佐】 それだけではないですけど、もちろん、出口側というのは産業界も含めての出口側ということでございます。

【山岡委員】 分かりました。デュアルユースの出口という観点ですね。そうすると、そういうふうに文章で書かれるときには、分かりやすく書いていただくほうがいいかなと思いますので、よろしくお願いいたします。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。

【李家主査】 はい、ほかはいかがでしょうか。お願いします。

【佐藤委員】 佐藤ですけど、よろしいでしょうか。
 5ポツのところで、書き方が例えば「脱炭素社会に向けた航空機のCO2排出低減技術」と「技術」で終わっているところと、「研究開発」というのがついているところがあるのですが、特に差はないと考えていいでしょうか。丸は最後が「研究開発課題」となっていて、黒丸は、「技術」と書いてあるところと「研究開発」と書いてあるところがあるので、特に違いがないのであれば統一されたらいいかなと思います。
 それともう一つ質問ですが、出口という言葉が出てきますが、どこからが出口なのかというのがちょっと私、分からなくて。実際の航空機に何か使えるところが出口なのか、例えば超音速機ですと、音を低減するという技術自身がもう出口だと言っていいのか。出口を見据えたというところが、ビジネスに直結するところなのかどうかを明確にしたほうがいいかなと思いましたが、いかがでしょうか。

【李家主査】 ありがとうございます。
 では、今の佐藤委員からのコメントと質問に関してお願いします。

【先光課長補佐】 出口がどこからの話なのかという点でございますけれども、やはり研究開発をきちんと産業界に渡して、それが製品化なり、世の中にきちんと還元されていく、先ほど御指摘もありましたとおり、社会に還元されていくことが目指すべきところだと思いますので、超音速機であれば、きちんと海外OEMなどに技術として売り込んで、それが採用されて飛行機になって飛んでいくというところを最終的には目指していくと考えておりますので、そういった観点を明確に書かせていただきたいと思います。

【佐藤委員】 分かりました。そうした場合に、出口に非常に近い技術と出口からまだ遠い技術というのがあって、遠い技術は基礎的なものという取扱いと考えてよろしいでしょうか。

【先光課長補佐】 はい、おっしゃるとおりです。

【佐藤委員】 ありがとうございます。

【李家主査】 いかがでしょうか。そろそろ、ご意見が出尽くしたでしょうか。

【太田委員】 ANAの太田です。すみません、次世代モビリティ・システムを進めていくに当たって、新しいルールをつくっていくと思うのですけど、ここが主体ではないと思いますが、そういったルールづくりに対しての連携とか、関与というのはどうしていくんでしょうか。

【李家主査】 では、事務局からお願いします。

【先光課長補佐】 研究開発については、この骨子の中にもありましたけれども、コンソーシアムですとか、そういったところを通じて研究開発を進める中で、関係省庁もオブザーバーで参加することで、意見を聞きながら進めていくということで、その中で最近のルールづくりの動向ですとか、基準策定の動向というのもきちんと情報を集めながら、それに沿った研究開発を進めていくということを目指しておりますので、特に、今回書いておりますエコシステムのコンソーシアム型ですとか、あとは国際標準化活動への参画ですとか、そういったところできちんとルールづくりとセットで研究開発を進めていくという視点で書かせていただきたいと思っております。

【太田委員】 どうもありがとうございました。

【李家主査】 ありがとうございます。

【武市委員】 すいません。書き方だけのところですが、4の丸2の研究資金のところで、1か所気になるところがあったので、そこだけ簡単にお伝えします。
 一つ目のポツで長期性・不確実性・予見不可能性が高いテーマに重点的に取り組むと書いてあるんですけど、最初に言ったことと同じですが、重点的に取り組むべきなのは需要の高いテーマであって、需要の高いテーマに対して、ハイリスクであっても取り組むという書き方が趣旨ですよね。だから、ハイリスクだから取り組むという書き方になているので、これは誤解を生むと思いますので、直さないといけないと思います。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。

【李家主査】 その点はよろしいですね。

【先光課長補佐】 はい。

【李家主査】 では、そろそろ時間も過ぎましたし、たくさん御意見いただきまして、ありがとうございました。
 最後に私から二つほどコメントです。4ページでエコシステムという単語が突然出てくるので、前後関係がつかみにくいようです。文章を書かれるときに、少し丁寧に書いていただければいいかなと感じました。
 それから2点目は、最初、コロナに関するところから始まりますけども、やはり我々はコロナ前から本件を議論していて、そこに突然コロナ禍というものが入ってきて、その結果、生活様式も変わり、需要も変わり、航空を取り巻く社会が大きく変わってしまったので、結構それらの点で、議論が発散しそうになったところもあったのかとは思います。その辺りの整理といいますか、コロナと、もともと航空が持っているものとを、うまく整理したり、切り分けていただきながら、先ほどの戸井委員の御発言とも関連するかもしれませんが、うまく整理して、まとめていただければと思いました。
 以上です。
 では、今日もいろいろ御意見いただいた出口に関することとか、そういったところの御意見を踏まえて、この最終取りまとめに反映していただけるということになるかと思います。また、これは次回、紹介いただくときに、最後の御意見を伺える機会はありますでしょうか。

【先光課長補佐】 こちら、本日いただいたコメントを踏まえまして、文章の形で最終取りまとめの素案を作成させていただこうと思っておりますので、そちらを次回、委員会の中で御確認いただいて、また御意見をいただいてという形で進めさせていただきたいと思っております。

【李家主査】 ありがとうございます。
 では、次回の委員会で素案を紹介いただいて、また御意見いただくということで、よろしいでしょうか。

【李家主査】 ありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。
 議題1を終わりまして、次の議題2に移らせていただきます。

(2) 研究開発課題の評価について
【李家主査】 議題2、研究開発課題の評価について、事務局から御説明をお願いいたします。

【先光課長補佐】 それでは、議題の2について事務局から説明をさせていただきます。
 研究開発課題の評価についてですけれども、まず、参考資料5を御覧いただけますでしょうか。
 こちらが前回の委員会で御了解をいただいております、令和3年度の航空科学技術委員会の研究評価計画でございます。
 こちらの評価計画に基づきまして、環境適合性・経済性向上技術の研究開発(低騒音化技術(航空機))の事後評価を行うというものでございます。
 4ポツの留意事項がございますとおり、評価を実施するに当たって、評価指針にのっとり、公正で透明な評価を行うという観点から、原則として利害関係者は評価に加わらないようにするとされております。
 委員の皆様には、御就任の際に確認させていただいておりまして、その時点の範囲では該当される委員はいらっしゃらないと承知しておりますけれども、もし今回の研究開発の課題評価で、こちらは留意事項の丸1から丸3に該当する委員がいらっしゃいましたら、この場でお申出をいただけますでしょうか。
 では、該当する委員いらっしゃらないということなので、このまま進めさせていただきたいと思います。
 まず、資料の70-2-1から2-3までが低騒音化技術の研究開発の資料ですけれども、資料70-2-1が1枚で、研究の概要を書いているものです。
 2-2が今回御議論いただく事後評価票の事務局の案です。
 2-2の参考として、評価票の案の概要を1枚に整理したものをつけております。
 2-3が本件の成果に関するJAXAからの補足説明資料となっております。
 資料の70-2-1ですけれども、本件は平成25年度から29年度まで実施された航空環境技術の研究開発のうち、FQUROHプロジェクトと呼ばれていた低騒音化技術(航空機)について、令和2年度まで実施されたものです。
 騒音の低減のボトルネックとなっている高揚力装置、フラップですとかスラット、あとは降着装置、これらの低騒音化技術の研究開発を行って飛行実証をするものです。飛行実証によりまして、将来の航空機開発並びに装備品開発の適用可能な段階まで成熟度を高めていくというものです。
 具体的には、こちらの資料の右上に書かれておりますが、旅客機の機体騒音の主音源であります高揚力装置と降着装置それぞれに対する低騒音化技術を実機に適用し、飛行試験によって低騒音化の効果があることを実証するということで、実用化に必要な設計技術を獲得することを目標としていたものです。
 2018年度までに、JAXAの試験機「飛翔」を用いまして、実機環境で高揚力装置ですとか降着装置について、低騒音化設計が狙った周波数帯で1デシベル以上の騒音低減効果があることを実証するということと、2020年度までに、「MRJ」を用いた実機飛行環境において、高揚力装置、降着装置それぞれについて、低騒音化設計の結果、2デシベル以上の騒音低減を得るということを実証することを目指して進めてきました。
 本研究課題は平成27年6月の第47回航空科学技術委員会で、進捗を踏まえて継続が妥当との中間評価を行っておりまして、参考資料6の中間評価票について、同年の10月の第55回計評分科会で報告をしております。
 また、その後、平成30年2月の第56回委員会で、前身となる航空環境技術の研究開発の事後評価と併せまして、参考資料7により進捗報告がなされているところです。
 参考資料7の17ページからになりますが、ここでは飛行実証1のJAXA試験機の「飛翔」を用いた実証に向けまして、低騒音化設計と機体の改造、あとは実証の実施、その速報ということで、フラップで5デシベル以上の大幅な低騒音化、あと、主脚で3デシベル以上の低騒音化を確認できたということが報告されております。
 さらに平成31年1月の第60回航空科学技術委員会では、航空環境技術の研究開発の事後評価におきまして、参考資料8の13ページからになりますけれども、その時点での進捗といたしまして、飛行試験データと設計データとの比較から設計データの騒音特性を非常によく予測しているということを確認いたしまして、設計方法の正しさを示したということと、あと、平成29年の飛行実証の成果を航空宇宙学会ですとか、米国の航空宇宙学会で報告したということが、この時点で報告されております。
 これらを経て、昨年度末で実施期間を全て終了したところですので、今回の委員会において、事後評価を実施したいと考えております。
それでは、まず、研究開発課題の成果の概要について、JAXAから御説明をお願いしたいと思います。

【渡辺プログラムディレクタ】 JAXA航空プログラムディレクタの渡辺と申します。本日はこの資料に沿って、補足的に説明していきたいと思います。
 それでは、2ページ目を御覧ください。こちらに研究開発の経緯、概要ということで、ただいま事務局から御説明いただいた概要が記されております。
 右上の施策マップを見ていただきますと、当初幾つかの課題が混在して、大きな事業ということで進めてまいりまして、2018年以降、それ以外のところの課題が終了しまして、このFQUROHの課題だけが残ったということです。
 このようにちょっと複雑な経緯がありますことと、あと、事前評価は2012年で、もう当時の委員の方は今いらっしゃらないということになりますので、本日は、この研究開発の背景から、得られた成果のところまで一貫して御説明したいと思います。
 それでは、3ページは目次ですので、4ページ目を御覧ください。
 背景ということで、民間航空機の低騒音化の必要性を説明しております。航空機騒音、基本的には昔はエンジンの騒音が主体で、1960年代からだんだんと技術開発が進んで、静かになってきているということでございますが、現在でもやはり空港周辺の地域社会など、エアラインにとって最も明示的な影響を与えているということでございます。
 左下の図を見ていただきますと、滑走路の矢印の長さに対して、環境騒音基準を超えている第1種騒音区域は、まだ大きく広がっているというのが現状でございます。ですから、こういった飛行経路の下の土地の利用制限であったりとか騒音対策は必要ですし、こういったことがありますので、空港の夜間運用制限であるとか、空港離発着料に影響したりということがございます。
 そして今後ですけれども、こういった低騒音化をしないと仮に仮定しますと、右のグラフのように、今後、航空輸送はどんどん増えていきますので、仮に発着回数が2倍になるとすると、これは騒音の世界で言うと単純に倍になるということで、3デシベルの騒音被害の増加に相当していくということです。ですから、航空輸送の需要予測で見ていくと20年間で2.6倍なので、それぐらい、発着回数が増えていく可能性があるということです。したがいまして、騒音被害を維持、低下させるためには、3デシベル、2.6倍以上の低騒音化をしていく必要があるということでございます。
 では、5ページを御覧ください。
 機体騒音の予測と低減の必要性ということで、まず、左側の図を見てください。こちらは、離陸上昇時の騒音が年代によってどれぐらい下がってきたかを示しています。横軸年代で縦軸が騒音量で、BPRは1から9というふうに書いてありますけれども、BPRはエンジンのバイパス比のことを示しておりまして、昔はバイパス比が小さい、すなわち少量の空気を物すごく加速して噴き出すものですから騒音が大きかったんですが、最近ではバイパス比を上げていくということで、大量の空気をゆっくり加速して出す。それで静かになってきているというのが、この図から見てとれます。特に離陸上昇時は、エンジンの出力が最大になっておりますので、このようにエンジンの低騒音化というのが極めて明確に効いてきているということが分かります。
 一方で、右側の図を御覧ください。こちらは、着陸進入時ということで、エンジンの出力を結構絞ってきているという状況です。そうしますと、年代ごとに、最初のバイパス比が1の時代は、それなりの低騒音化が図られてきたんですが、最近ではあまり効いてこないということになっています。これはなぜかというと、エンジン騒音以外の騒音が大きくなってしまっている。エンジンが静かになったせいで、それ以外の騒音が目立つようになってきているということになっております。
 詳しくは、28ページの参考1に騒音の内訳がありますので、御参照ください。
 では、6ページを御覧ください。
 こちらが機体騒音の概要で、エンジン以外にどういった騒音があるかを示しておりまして、さらにJAXAで、そういった騒音に対してどういう対策技術を考えてきたかを説明しているものでございます。基本的にエンジン以外の騒音というのは、機体に生じている隙間であるとか、端っこであるとか、もしくは出っ張った部分、そういったところから生じる風切り音が主体になります。実際、着陸進入時になりますと、下の真ん中の飛行機の図に図示してありますように、スラット、フラップといった高揚力装置であるとか、降着装置、脚の部分ですね、そういったところから騒音が出てしまうということです。
 それに対して、我々対策を施していきたいというふうに考えておりまして、四つのキー技術というものをつくり上げてきました。
 左上は、先進CFD(数値流体解析)技術です。物理現象をきちんと把握することで低騒音化に役立てられるような、そういった低騒音化設計技術をつくってまいりました。二つ目は、総音源の位置と周波数特性を詳細に把握する音源計測技術ということで、右上の箱に書いてございますけれども、そこにレーダーマップのような航空機に的がついているようなものがありますけれども、こういったものを地上からマイクロホンで計測することで、騒音の位置を特定し、どれぐらいのうるささかといったことも評価できると、具体的にはその右に、ちょっと分かりづらいんですけれども、直径30メートルぐらいの範囲にマイクロホン195本を設置しまして、その上を航空機が通過すれば、こういったマップが取れる。こういった音源計測技術。三つ目として左下ですね、実用性の面で優れた低騒音化コンセプトを出し、最後、右下に書いてございます大型低騒音風洞等を用いた地上で評価する技術、低騒音設計の詳細評価技術をつくり上げてきたということになっています。
 それでは、7ページ目を御覧ください。
 このように技術開発が進められてきましたので、いよいよ飛行実証だということで、各部からの風切り音を低減する改造をJAXAの実験用航空機であります「飛翔」に施して飛行実証するということでございまして、実際改造した部位、下に詳細な部位書いてございますけれども、オレンジ色で色分けしている部分が改造したところになります。
 例えば左下の写真を見ていただきますと、小さな突起を設置ですとか、フラップの端っこには丸みを帯びさせるであるとか、例えば右側の写真ですと、脚の間にカバーを付けたり、脚扉に多孔質材を付けたりと、こういったような工夫をして飛行実証をしていこうというものです。飛行実証に当たっては、航空法11条ただし書に基づいて、飛行許可を取得しながら進めてきたということでございます。
 では、8ページを御覧ください。
 ここでFQUROHの目的、目標ということで記載してございます。
 目的は低騒音化、一つ目のビュレットの2行目、低騒音化技術を将来の旅客機開発並びに装備品開発に適用可能な段階まで成熟度を高めること。それによりまして、国内航空産業界の国際競争力強化と、あと、空港周辺地域社会における騒音被害、エアラインの運航コストの低減に貢献していこうと。これが目的になります。
 目標としましては、実用化の前に、実用化の判断をするレベルまで技術レベルを上げていこうということで、専門用語でいきますと括弧内に記載しております技術成熟度TRL4の技術を6まで高めるということに相当する活動になっております。具体的には、下の線表に書いてございますように、一番左がTRL4で、地上の設備で実証しているレベルをTRL5から6に上げるためには飛行実証が必要ということで、そのような活動をしていくということでございます。
 それでは、9ページを御覧ください。
 その成功基準ですけれども、先ほど事務局から御説明があったとおり、2段階の達成基準を設定してございます。一つ目が2018年度までで、JAXAの実験用航空機「飛翔」を用いた飛行実証で、狙った周波数帯で1デシベル以上の騒音低減効果があることを示す。2段階目が三菱スペースジェットMSJ、旧名称でMRJになりますが、それを用いた実機飛行でもって、高揚力装置、降着装置のそれぞれについて、2デシベル以上の騒音低減量を示すということになってございます。
 達成基準設定の考え方ですが、全機で評価するのではなくて、要素で評価するというのが一つ目のビュレットです。低騒音化の対象についてということで、これは将来の機体の設計によって卓越する音源は代わってしまう可能性がありますので、全機で評価するのではなくて、要素々々で評価していこうというものです。
 二つ目は数値の与え方ですが、重要なのは二つ目のダッシュのところで、海外技術動向を見ても国際的に高いレベルとするということで、具体的には下の青枠に書いてございます、MSJの競争力の一つである低騒音性をさらに強化するものとして、国内メーカーと目標値を共有しているということで御理解いただければと思います。
 さらにその部位につきましては、ボーイングでも協議の対象になっているところでございまして、やはり高揚力装置や脚というのは、世界的に見ても興味の対象ということで、そういったところを研究対象として選んでいるということでございます。
 10ページを御覧ください。
 こちらがFQUROHのスケジュールで、先ほど御説明がありましたとおり、飛行実証1、2と2段階の階段を上っていくようなスケジュールを載せていますが、ここでのポイントは予備実証ということで、最初に行う実証をセットしたところにあります。
 いきなり飛行実証に入るのはやはりリスクが高いので、まずは飛行実証、実証試験のプロセスを確立する必要があるということと、あらかじめどの程度低騒音化できるかの当たりをつけておくということで、予備実証を入れているという計画でございます。
 11ページを御覧ください。
 こちらがFQUROHの体制でございまして、基本的には川崎重工、三菱重工、住友精密工業と、JAXAを加えた4者で共同研究を組みまして、これがFQUROHのプロジェクトの体制ということになります。特にポイントは、一つ目のビュレットの2行目、企業と責任分担に応じて資金分担をする費用構造になっているということで、先方からも資金を出してもらいながら進めてきたプロジェクトでございます。
 さらに基盤研究との連携・協力というのも当然進めておりまして、JAXA内の基盤研究や、大学・海外研究機関とも連携しながら技術開発を進めてきたということでございます。
 それでは、12ページを御覧ください。こちらから成果の説明をしていきます。
 まずは予備実証です。端的に言いますと二つ成果がありまして、1行目に書いてあります飛行試験プロセスを確立したということと、飛行実証1に向けた設計の正しさと課題を確認したと。この二つが成果でございまして、前半につきましては、例えば左側に「飛翔」のコックピットの絵がありまして、その下にデジタルな画面が書いてございますけれども、こちらにつきましてはJAXAの別部門、基盤の部門でTunnel-In-the-Skyというナビゲーションシステムを開発しておりまして、これにより精密な飛行ができると。その結果、「飛翔」を真ん中の写真にあるように、フェーズド・マイクロホン・アレイの指定した場所を飛ばすことができたということになります。
 そして、そのフェーズド・マイクロホン・アレイで測った結果が、右上のマップのようになっておりまして、成果をまとめますと、狙いどおり1キロヘルツ当たりで5デシベル以上の騒音低減ができたということと、一方で、二、三キロヘルツの付近では、実は変な音が発生しており、逆に騒音が増えてしまうような課題も抽出できております。さらに脚騒音につきましては1デシベル程度、あまり低騒音化できてなくて、まだまだ改善の余地があるということも確認できたということでございます。
 次の13ページを御覧ください。
 その音源計測結果に基づいて本試験をしたということで、飛行実証1の成果になりますが、成果概略は以下の三つです。
 一つ目は、予備実証同様、狙ったところ、500ヘルツから1キロヘルツで、これは5デシベル以上の大幅な低減量ということで、上の写真二つを見ていただきますと、左側のベースライン形態では、主翼の後ろが下流側に六つ、片側三つずつの的のような部分がありますが、それがフラップの騒音を表しているものでございまして、右側の写真ではそれが消えているということで、低騒音化が達成できていることが分かるかと思います。
 二、三キロヘルツ付近の異音の原因につきましても、CFDで究明しまして、騒音の増加は見られなくなったということで非常によくなった。それともう一つ主脚ですけれども、こちらにつきましても、脚収納部の低騒音化を新たに加えていくということで、4デシベルの低騒音化が実現できたということになります。
 この辺りは下の図ほうが分かりやすいかと思いますが、左側の図でMain Landing Gearと書いてあるところの的が、右側の図では見えなくなっているということで、低騒音化が図られているということが理解できるかと思います。
 では、14ページをお願いします。
 こちらでは、まとめということで、音源の騒音スペクトル分析による定量評価結果で、左側のグラフがフラップの騒音、右側のグラフが主脚の騒音で、二十回弱の飛行試験データの平均値をプロットしているというものでございます。
 まずは赤い実線と青い実線の差ですが、これが飛行実証による実際の騒音の差を表しておりまして、フラップ騒音では全体で3デシベルぐらい、右側の主脚騒音では全体で4デシベルぐらいの騒音低減が図られたということになります。
 さらに実線と点線の比較、これが飛行実証と地上で評価したときの差を表しておりまして、これぐらい合っていると、その予測技術も相当精度が高いということで、我々自信を持ちまして、その結果として日本航空宇宙学会で2回、AIAA、米国の航空宇宙学会で1回、FQUROHだけに限った特別セッションが開催され、そういったところで成果を報告した結果、非常にいい成果ということで評価されているということでございます。
 それでは、15ページを御覧ください。
 まとめますと、1段階目の成功基準につきましては満足できたということになりまして、先ほどまでの成果は、航空機が自分たちの真上を飛んだ瞬間の低騒音化ということで評価しましたが、ここではさらにそれを発展させまして、ICAOの基準により、着陸にアプローチしてくる、そのプロセス全体で評価した結果、最終的な評価結果として、フラップでは2.1デシベル、主脚では4.0デシベルということで、低騒音化が図られています。具体的な計算手法につきましては、33ページの参考5を見ていただければと思います。
 その次の成果まとめとしまして、過去の欧米の飛行実証と比べまして、先進的なCFD技術をいち早く取り入れてきた成果ということで、これだけの騒音低減結果が出たのではないかというふうに我々考察しておりますし、さらに、実際飛ばしてみて課題が見えてきたということで、飛行実証は改めて重要であったということは確認できましたし、こういった飛行実証データというのは世界的にもなかなかなくて、国際的にみても、この当時、詳細検証データは初ということで、旅客機の低騒音化技術の確立に道を切り開くことができたと考えてございます。
 では、16ページを御覧ください。
 もう少しまとめますと、実証した技術の先進性・先端性・優位性ということでございまして、これは独自の低騒音化コンセプトを実証したということで、非常にいいものが出来上がったということでございます。具体的には参考6、7ということで、34ページ、35ページに記載をしております。さらに、国際的な研究開発をリードする段階まで技術力を高めたということで、論文ですとか特許ですとか、こちらは36ページになりますが、そういったことを参考8に具体的なアウトプットとしてまとめてございます。
 最後に人材育成ということで、JAXAとメーカーとの共同研究体制で、JAXAのみならず共同研究相手先のメーカーを含めた技術者・研究者が得られまして、研究開発を通じて各人の能力向上ができたということでまとめてございます。
 17ページを御覧ください。
 ここからが飛行実証(2)ということで御説明いたします。端的に言いますと、三菱スペースジェットMSJの開発遅延を受けましたので、飛行実証(2)は見送りまして、成功基準は未達ということでございます。
 ただし、具体的に申しますとMSJの開発遅延が2018年度にありまして、実証時期が大分遅れてしまうということと、あと、昨年度、MSJの開発が一旦停止することになってしまいましたので、飛行実証の見込みが立たなくなったということでございます。
 一方で、機体騒音低減の技術確立の必要性は高まっているので、それでも技術開発は進めていかなければならないというふうに考えていることでございます。
 18ページを御覧ください。こちらが変更した計画ということでまとめてございます。
 一つ目は低騒音化設計で、下の線表を見ていただきまして、元の計画と見直した計画ということで、2019年度と20年度の計画を見直してございます。
 重要なのはもともと飛行実証をやる計画を、低騒音化設計(2)という活動と成果の社会実装活動の二つに分けて、計画を見直したということでございまして、最初の低騒音化設計(2)につきましては、MSJを具体的な対象とした低騒音化設計を引き続き進めていこうという活動と、もう一つは出口を少し拡大するという意味で、ボーイングと共に中型旅客機の4輪主脚騒音の理解に向けた研究を行ったということでございます。成果の社会実装活動につきましては、我々の騒音予測技術というものが非常に優れているというのが分かってきましたので、空港騒音の対策に有効な騒音予測モデルを開発して、社会実装を進めていこうという計画でございます。
 19ページを御覧ください。
 こちらが最初の活動の成果です。MSJを具体的な対象とした低騒音化設計ということで、これは「飛翔」にはなかったスラットと呼ばれる翼の前面につけられる高揚力装置を対象に研究を進めてまいりまして、具体的なステークホルダーと共に目標値を定めているということでございます。
その成果としましては、左下の図にあるとおり、スラットの低騒音化前後の騒音を風洞試験レベルで確認しまして、低騒音化が図られていると。これによって、例えば高揚力装置ですと3.3デシベル、これ以外に脚もについては4.5デシベルということで、成果の受取手の国内メーカーとも、満足できるような成果を得ているということでございます。共同特許も4件生まれたということで、国際競争力アップになっているということだと思っております。
 アウトカムですけれども、こういった成果を実際の航空機に適用していけば、被害地域の面積は大体2デシベル下がると70%、4デシベル下がれば50%に縮小すると予想されますので、アウトカムとしても非常によい成果が出ていると思います。この辺のイメージは、38ページの参考10に記載してございます。
 それでは、20ページを御覧ください。
 こちらは中型旅客機の4輪主脚で、出口を少し広げていこうということでボーイングとの共同研究を昨年度立ち上げました。
 一つ目のビュレットにあります2020年7月に共同研究を締結しまして、情報交換をしながら我々で低騒音化検討を進めているということでございます。その成果や、「飛翔」の飛行実証成果を先方に紹介した結果、最終的には共同で飛行実証構想を検討することに合意を得まして、今年、つい先日ですけれども、共同研究の中身を少し改定しまして、中型旅客機による飛行実証を検討する共同研究契約の締結に至っております。
21ページを御覧ください。こちらは、先週の金曜日にプレスリリースしました。新たに出来上がった体制ということで、これが一つ大きなアウトプットということになります。これまでの共同研究の体制と同様の体制に加えまして、ボーイングも交えた共同研究ということで、成果も出口を拡大できるような枠組みができたということになります。
 こういった検討を進める際には、知財の扱い等で日本の国内が不利になってはいけませんので、そういった辺りはJAXA法務系の部署と連携しながら、注意して進めているという状況でございます。
 22ページを御覧ください。
 もう一つの成果を説明したいと思います。
 騒音モデルの構築ということで、二つ目のビュレット、例えば羽田空港の飛行ルートを開拓したりとか、そういった検討をしていくときには、当然、空港騒音の悪化が懸念されるんですが、そういった運航方法の対応策を検討するには、騒音の予測が重要であると。一方で、もともと騒音というのはエンジン主体だったということで、それぐらいしか考慮してこなかったモデルしかないということで、なかなか十分な予測ができないというのが現状でございます。
 それで我々の予測技術が役に立つということで、まず、成田空港で、左下の図にありますように、実機の運航上で騒音を計測しまして、我々の騒音予測技術との突き合わせを行ったということです。
 その結果が真ん中のグラフにありまして、推進値ではないですね、推測値の誤植です。それと実測値の比較がございますけれども、非常によい精度でできている。これがどの程度の精度かといいますと、実は同一機種でエンジンが異なる航空機というものは当然ありますけれども、そういった場合でも騒音の寄与率を分解できる。一番右下に円グラフで比較を示しておりますけれども、それぐらいの分解ができるレベルということで、これは非常に高い期待を得ているということでございます。
 23ページを御覧ください。
 こういった高い成果を、実は共同研究の枠組みということで、JAXA・東京大学・小林理研・成田空港振興協会の4者で組みまして、こういった予測技術をつくり上げてきたということになります。それを社会実装する枠組みとしまして、緑の枠組みといった航空機騒音勉強会というものが出来上がりまして、その中に参加されている、赤枠で示しました航空局騒音防止技術室であるとか、空港振興・環境整備支援機構であるとか、あと、枠外にはなってございますけれども成田空港であるとか、そういったところが我々の開発した騒音予測モデルを使ってくれるステークホルダーということで、社会実装の見込みができてきたということが、二つ目の大きな成果になります。
 24ページを御覧ください。
 こちら、そろそろまとめに入っていきますけれども、中間評価における指摘の対応ということで、左の枠に中間評価の指摘内容を書いてございます。
 あまり読み上げませんけれども、1行目は、世界トップレベルの要素技術を確立することが重要であるというコメント。2行目から4行目につきましては、体制の強化であるとか、柔軟な計画変更であるとか、あと、日本航空産業の問題点を認識しながら、例えばシステム的な観点だと思いますが、その解決に向けての方策を積極的に取り入れるべきと。そういったコメントをいただいております。
 5行目、6行目につきましては、本プロジェクトの有用性を社会にもっと認識してもらうことが必要であるとか、日本の産学に眠っているシーズを発掘できる体制づくりということでコメントをいただいておりまして、ここまで説明した成果は、こういった御指摘に全て対応するものでございます。
最後の御指摘ですが、これは、安全技術とも一体化させて、環境に配慮し安全な新世代航空機を究極の目標とすべきであるというふうなコメントをいただいておりますので、これは先ほどの議題であります研究計画のところで、将来構想として我々まとめてきたということでございます。
 では、25ページを御覧ください。
 科学技術基本計画への貢献状況ということで、まず、研究開発計画第5章1ポツが航空ですが、(1)の社会からの要請に応える研究開発につきましては、低騒音化の成果がそのものになりますので、直接の成果として貢献しているということでございます。右側の1ポツの(3)航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発につきましては、騒音試験とかCFD技術ということで、間接的な成果として貢献しているということでございます。
 最後、26ページを御覧ください。
 今後の展望です。アウトカムのイメージとしまして、新しい連携体制ができましたので、そういった国内メーカーを中心とする連携体制にボーイングを追加したということですが、それで中型機を対象とする機体騒音低減技術の飛行実証に向けた検討を進めていきたいと考えております。そして、国内メーカーとJAXAの共同研究により開発した成果が、ボーイングとJAXAの共同研究を通じて飛行実証をすると、そういった枠組みができたということになりますので、研究開発成果の社会実装を加速することを目指していきたいと思っております。
 もう一つ、騒音源モデルにつきましては、これも先ほど説明した新しい体制がございますので、空港騒音予測モデルとして社会実装を目指していきたいというふうに考えております。
 説明は以上になります。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。
 続きまして、資料70-2-2、事後評価票の案につきまして、事務局から説明をさせていただきます。参考資料5をもう一度御覧いただきたいのですが、事後評価票の案につきましては、この参考資料5の研究評価計画に添付されております事後評価票の様式に基づいて作成しております。
 事後評価票につきましては、2ポツの研究開発計画との関係として、施策目標等を記載しまして、3ポツの評価結果といたしましては、課題の達成状況とそれに対する評価を記載しております。ここの評価ですけれども、必要性・有効性・効率性という三つの観点で評価を行うということになっております。
 この三つの観点につきまして、それぞれさらに評価項目というものを設定しまして、必要性の観点であれば、科学的・技術的意義、社会的・経済的意義、国費を用いた研究開発としての意義。有効性の観点としては、新しい知の創出、研究開発の質の向上、実用化・事業化や社会実装に至る全段階を通じた取組、行政施策ですとか人材の養成、知的基盤の整備への貢献や寄与の度合い、あとは見込まれる直接・間接の成果・効果やその他波及効果の内容というもの。効率性につきましては、計画・実施体制の妥当性、目標・達成管理の向上方策の妥当性、費用構造や費用対効果向上方策の妥当性、研究開発の手段やアプローチの妥当性、当該研究開発プログラムの見直しの方法の妥当性といったものがございます。
 これらの評価項目に沿って、それぞれ評価基準を設定しておりますので、それに基づいて記載をすることとしております。さらにその後、科学技術・イノベーション基本計画への貢献、下の18ページ以降になりますが、科学技術・イノベーション基本計画への貢献の状況と総合評価、あとは今後の展望というものを順に記載していくということになっております。
 それでは、資料70-2-2を御覧ください。
 実際の事後評価票の案の説明に移らせていただきます。
 まず、上位施策である研究開発計画との関係ですけれども、研究開発計画において、中目標達成のための重点的に推進すべき研究開発の取組といたしまして、社会からの要請に応える研究開発である環境適合性・経済性向上技術の研究開発を行い、空港周辺地域の騒音低減のボトルネックとなっている高揚力装置、降着装置の低騒音化技術の研究開発を行い、将来の旅客機の開発並びに装備品開発に適用可能となる技術成熟度を高めるとされています。
 また、アウトプット指標といたしまして、JAXAが実施している共同/委託/受託研究数、こちらは記載のとおりの実績です。
 また、アウトカム指標として設定されていた連携数、成果利用数も、同じように記載のとおりの実績ですが、利用成果数につきましては、30年度までは、特定の年度に振り分けることが難しいということから期間中の総数を記載しております。
 次に、3ポツの評価結果の説明をさせていただきたいと思います。
 JAXAにおけるこれまでの成果を基にしまして、先ほど御紹介した中間評価との対比をするように、左側に中間評価結果、中央に今回事務局で作成しました事後評価結果の案を並べて書かせていただいております。右側はコメント欄となっておりますので、現時点では留意するべき点を記載しております。
 全体的な(1)の課題の進捗状況のうち、これまでの成果につきましては、先ほどJAXAの説明を文章にしたものですので、詳細な説明は割愛させていただきたいと思います。
 5ページに行きまして、必要性の評価から順を追って説明をさせていただきたいと思います。
 必要性につきましては、科学的・技術的意義、社会的・経済的意義、国費を用いた研究開発としての意義の三つの評価項目となっております。
 科学的・技術的意義につきましては、評価基準としては、先導性・発展性のある研究開発であったかどうかですけれども、騒音源となる高揚力装置と降着装置からの剥離や渦流れを既存機に適用可能な低騒音化デバイスにより抑制・制御するという、独自の低騒音化コンセプトによる世界初となるフラップの低騒音化技術の飛行実証など、世界に先駆けて実用性のある低騒音化設計の基盤技術を確立したと。現状の構造設計を変更することなく適用可能であるというような優位性もあるということから、先導性・発展性が高い研究開発であったと判断しております。
 また、次の社会的・経済的意義でございますけれども、評価基準としては、産業・経済活動の活性化・高度化に資するかどうかですが、騒音の低減という効果として、本設計技術が多くの旅客機に適用された場合に、着陸時の騒音被害地域の面積が縮小すると予想されておりまして、飛行実証により示された騒音低減量が、この騒音の被害低減のアウトカムを期待するには十分なものであったことから、航空産業の活性化・高度化に資するものであると判断しております。
 最後に、国費を用いた研究開発としての意義。こちらは、評価基準としては国や社会のニーズに適合しているかどうかですが、次世代旅客機への実用化が期待されまして、出口志向の研究開発となっている課題に対して、実験用航空機の「飛翔」を保有し飛行実証実験のノウハウを持っている国内航空技術の中核的機関であるJAXAが果たすべき役割は大きかったということを踏まえて、国費を用いた研究開発による技術課題の解決の意義は大きかったと判断をしています。
 以上のことから、本課題につきましては、騒音低減により世界を先導し、航空産業の活性化・高度化に貢献するというものであり、国や社会的ニーズに合致するということから、必要性は高かったというふうに評価できると考えております。
 続きまして、8ページからの有効性の評価です。少しこちらは項目が多いんですけれども、新しい知の創出への貢献で、独創性、発展性のある成果が得られたかどうかという点ですが、既存機に適用可能な低騒音化デバイスにより抑制・制御するという、独自の低騒音化コンセプトによる世界初となるフラップ低騒音化技術の飛行実証など、世界に先駆けて実用性のある低騒音化設計の基盤技術を確立し、この成果を学会での発表ですとか論文投稿が積極的に行われまして、多くの特許出願や取得につながったということからも、独創性、発展性の高い成果であったと判断しております。
 次の研究開発の質の向上への貢献は、これまでの研究開発から技術レベルが向上しているかどうかという点ですけれども、国内航空機・装備品メーカー3社とJAXAが合同で風洞試験・CFD・実機成立性の検討を行うということによって、JAXAのみならず民間企業の技術向上にも貢献したということから、研究開発の技術レベルの向上に貢献したと判断をしております。
 実用化・事業化や社会実装に至る全段階を通じた取組につきましては、我が国優位技術の実証に資するかどうかという観点ですけれども、国内メーカー3社と共同研究体制の下で騒音低減量等の技術開発目標を共有しまして研究開発が進められ、主にリージョナル機への適用を想定してメーカーへの技術移転を行い、国内産業界の国際競争力確保に貢献したということや、あとはMRJの開発計画の変更がございましたけれども、これに伴う計画変更後には、成果の適用範囲を中型旅客機まで拡大して、社会実装を加速するために新たに海外OEMを取り込み、飛行実証を目指す枠組みを構築したことからも、我が国優位技術の実証に資する研究開発であったと判断しております。
 行政施策への貢献ですけれども、政策に沿った研究開発が進められているかどうかという観点で評価しておりますが、平成26年に策定されました戦略的次世代航空機研究開発ビジョンにおいて、我が国航空産業の国際競争力向上のために、フラップや車輪等の低騒音化の優位技術を開発・実証するということが提言されておりましたので、その実現に貢献しているということからも、国の政策に沿った研究開発を実施してきたと判断しております。
 人材の養成への貢献につきましては、研究を通じて人材の育成ができているかどうかという観点ですが、低騒音化のアイデアはTRL1のレベルから飛行実証TRL6のレベルまで幅広い技術成熟度の範囲をカバーする研究開発を、JAXAと国内航空機・装備品メーカーと共同で研究を行ってきたということで、研究成果を飛行実証までステップアップするプロセスというものと、あとはマネジメントの経験を、JAXAのみならず共同研究相手のメーカーを含めた技術者・研究者の能力向上と育成を図ることができたと考えられることから、人材の養成に貢献する研究開発であったと判断しております。
 知的基盤の整備への貢献ですけれども、国内産業に活用できる成果が得られたかどうかですが、こちらにつきましては、風洞試験や飛行試験において個々の騒音源を分離可能な音源計測技術を開発して、また、実機の複雑な形状に適用可能なCFD解析格子生成ソフトウエアを開発するなど、基盤技術の強化にもつながる成果が創出されたということからも、国内航空産業に活用できる成果が得られたと判断しております。
 見込まれる直接・間接の成果・効果やその他波及効果の内容につきましては、研究成果・効果により産業界や学会に対して波及効果が得られたかどうかという観点ですが、国内3社とJAXAが共同研究により低騒音化技術を開発して、海外OEMとJAXAとの共同研究を通じて飛行実証をする枠組みを新たに構築したこと、あとはエンジンや高揚力装置等の音源ごとの寄与度を算定可能な旅客機の騒音源モデルを構築して、空港騒音の予測に活用される見込みを得たということ、そういったところを踏まえ、国内航空機・装備品メーカー3社と合同で、風洞試験・CFD・実機成立性の検討を行うといったことを進めてまいりましたので、各社の技術力向上にも貢献したということから、国内の産業界に対して波及効果を得られる成果があったと判断をしております。
 以上のことから、本課題の有効性は高いものであったと評価をしております。
 続けて、14ページです。
 効率性への評価になりますけれども、評価項目が四つございます。
 まず、一つ目の計画・実施体制の妥当性の評価基準としては、他機関との連携等により妥当な実施体制が取られていたかどうかですけれども、研究開発成果の受け手となる国内航空機・装備品メーカー3社と共同研究体制で実施してきたということと、研究開発を着実に推進しまして、その成果の社会実装を円滑に進めるという観点からも、そういった体制がきちんと構築されているということから、他機関との連携等によって妥当な実施体制が取られていたと判断をしております。
 二つ目の目標・達成管理向上方策の妥当性ですけれども、世界や国内の動向を踏まえまして柔軟に対応しているかどうかという観点ですが、海外の機体騒音低減技術の研究開発の動向を踏まえまして、ステークホルダーと共に国際競争力のある騒音低減量の目標値を設定して、当該分野で世界をリードする成果が得られたということと、あとはMRJの開発計画の変更に対しましては、海外OEMを加えて中型旅客機で飛行実証に向けた体制を構築するなど、世界や国内の動向を踏まえて、計画に対して柔軟性を持って対応したと判断をしております。
 三つ目の費用構造や費用対効果の向上方策の妥当性ですが、他機関との連携等により妥当な実施体制や費用分担が取られているかどうかという観点で、技術成熟度が低い要素技術研究・実証段階から国内メーカーと責任分担に応じて負担をする費用構造となっておりまして、特に装備品メーカーは主に脚部の解析や試験を担当し、機体メーカーは主に高揚力装置、フラップ等の低騒音化設計ですとか、解析・試験を担当しまして、それに関係する費用を負担していたということで、全てを国費で賄うのではなく、企業との共同実証ということで、連携によって妥当な実施体制や費用分担が取られていたと判断をしております。
 四つ目の研究開発の手段やアプローチの妥当性ですが、日本の航空産業の問題点を認識し、その解決に向けての方策を積極的に取り入れているかどうかという観点です。こちらにつきましては、飛行実証に際しては事前に予備実証を行いまして、飛行実証計画を立てて、予備実証におきましては、適用した技術の効果と、あとはその課題を明確にしまして、それらの対応を飛行実証に適用することによって着実に課題を解決するとともに、より高い効果を示す低騒音技術の獲得につながったということ、あとはMRJの開発計画の変更後は、海外OEMと連携体制をJAXAが主体となって構築して、中型旅客機での飛行実証を通じて、研究開発成果の適用先の拡大を図っていること、こういったことから各要素技術のインテグレートを実証していく体制が弱いといった日本の航空産業の問題点を踏まえて、その解決に向けた方策が取られていたと判断をしております。
 以上を踏まえまして、事業資源を効率的に活用しながら求められる目的の成果を出したということで、本課題の効率性は高かったと評価をしております。
 19ページからの科学技術・イノベーション基本計画等への貢献状況ですけれども、航空科学技術につきましては、冒頭で言及しましたとおり、研究開発計画において重点的に推進するべき研究開発の取組ということで位置づけられております。
 本研究開発課題につきましては、高揚力装置ですとか降着装置の低騒音化設計技術の確立と騒音源モデルの構築、それらの社会実装を加速する体制の構築を進めてきたということで、これらの活動は、空港周辺の地域社会ですとか、エアラインに最も明示的な影響を与えている環境問題である航空機騒音の低減への貢献、あとは次世代航空機開発における優位技術の獲得を通じまして、我が国産業の活性化・高度化に貢献するものであるということからも、研究開発計画に掲げられている取組の推進を通じて、科学技術基本計画ですとか、我が国の航空科学技術の発展に大きく貢献するものであったと考えています。
 20ページからの総合評価になりますが、初期の目標を踏まえまして、低騒音化技術を適用した低騒音化デバイスの騒音低減効果の風洞試験や飛行実証によりまして、高揚力装置、降着装置の低騒音化設計技術を確立したと。初期の計画にありましたMRJでの飛行実証は外的環境によって中断がありましたが、研究開発成果に基づきまして、国内3社とJAXAが共同研究によって低騒音化技術を開発して、海外OEMとJAXAとの共同研究を通じて飛行実証する枠組みを新たに構築したということを踏まえ、これは我が国の航空機産業の競争力の土台となるというもので、こういった成果からも本課題の目標は十分に達成されたのではないかと考えています。
 最後に、21ページ、今後の展望ですけれども、先ほどJAXAからの御説明にもありましたとおり、海外OEMとJAXAの共同研究を通じて飛行実証する枠組みを構築したということで、中型旅客機を対象とする機体騒音低減技術の飛行実証に向けた検討を進めながら、低騒音化技術を幅広く開発して、その中から飛行実証課題を絞り込むということで、引き続き成果が生かされていることを期待していくと考えています。
 少し説明が長くなりましたけれども、事後評価に係る事務局からの説明は以上です。

【李家主査】 どうもありがとうございました。
 では、残りの時間、御質問等をお受けしたいと思います。事務局から御説明があると思いますけれども、この事後評価案のコメントに関しては、事後評価案の右側に、我々が記入して、次回の委員会で、また回答いただきながら議論をするということになります。今日のところは、この研究開発に関する御質問とか、こちらの事後評価案の書き方に関する御質問とか、そういったものがありましたら、御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 お願いします。

【和田委員】 日本女性航空協会の和田です。資料70-2-3の、先ほどJAXAから説明してくださった17ページの部分になりますが、機体騒音低減に貢献する研究開発は、今後もとても必要とされる研究分野だと思うんですが、その中で機体騒音低減に貢献する研究開発は、今後は、先ほど御説明にもありましたが、OEM、ボーイングとの共同研究が主となって、そちらに移行していくのでしょうか。それとも、18ページに記載されているとおり、MSJと、1と2のとおり、二つの航空機の大きさによって、今後研究をしていく予定でしょうか。その辺りの方向性を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【渡辺プログラムディレクタ】 JAXA渡辺から回答いたします。
 基本的には、ボーイングにだけやるのではなくて、21ページのところに、FQUROHの体制に加えてボーイングの体制をつくり上げたということでございまして、基本的に、やはりキーとなる技術は国内メーカー3社と、今後も技術開発を進めていくということでございます。その成果の適用先として、MSJが再開した場合には当然そこにも適用することを考えますし、そうでない場合には、ボーイングとJAXAの共同研究でもって、成果の展開を図っていくといった構想でございます。

【和田委員】 ありがとうございます。航空機の大きさによって変えるということではなく、MSJがまた開発できるようになった時点で、そちらも引き続きということですね。

【渡辺プログラムディレクタ】 はい。御理解のとおりでございます。

【和田委員】 ありがとうございました。

【李家主査】 ほか、いかがでしょうか。

【佐藤委員】 早稲田大学の佐藤ですけど、非常にすごい成果が出てよかったと思います。質問ですが、海外OEMと文章の中に入っているのですが、ボーイングという固有名詞は出さないほうがいいということなのかというのが第一点目です。それから、二点目はJAXAへの質問になるかと思うのですけど、音を減らすための実際の設計技術とか、CFDの技術とか計測技術とか、それらを用いて空港に対して、今後どういうふうにしていくかなど、いろいろ技術があるかと思うのですが。どれが一番のポイントになる技術なのか、それとも、全てが同じぐらい重要なのかという点を教えていただきたいんですけど、いかがでしょうか。

【渡辺プログラムディレクタ】 まず、最初の御質問ですが、海外OEM、イコール、ボーイングと御理解いただいてよろしいかと思います。今、御覧になっております21ページの体制につきましては、先週金曜日にJAXAからプレスリリースしておりましたので、この表記については、オープンになっているという御理解でよろしいかと思います。
 後者につきましては、やはり航空産業には、目的が二つありまして、航空産業界の国際競争力強化という観点と、あと社会貢献をするという観点がございますので、おっしゃっていただいた視点は両方重要で、国際競争力強化の観点におきましては、機体を対象に低騒音化技術をつくり上げていく。そういった活動を一つ大きな柱として据えていく必要がございますし、今の構想では飛行実証を目指すということで、資金的にも収集する必要が生じてくると、そういう可能性があるということです。後者につきましては、社会貢献ということで、間接的な成果でつくり上げてきておりますCFDとか計測技術、そういったものを航空機騒音の予測に回しまして、実際にJCABのモデルの改良といったところにつなげていきたいというふうに考えてございます。

【佐藤委員】 ありがとうございます。
 この評価票に、ボーイングという言葉を入れるかどうかは、大きいポイントであると思います。あまり事後評価票の中には入れないほうがいいというお考えですか。

【渡辺プログラムディレクタ】 ここは事務局の御判断もありますけれども、ボーイングという表記でも、現状は差し支えないところに来ていると思います。

【佐藤委員】 ありがとうございます。

【李家主査】 ほか、いかがでしょうか。あとお一方ぐらいから御質問がありましたら、お受けしたいと思います。

【河合委員】 東北大学の河合ですけれども、よろしいでしょうか。
 二点あるのですけれども、まず、一点目がJAXAから御紹介してくださった30ページ目のスライドで、事後評価のところでも、既存機に簡単に取り付けられる方法で低減ができると、いい成果が得られたという御発言だったのですが、要素技術として、基礎研究的には面白いと思ったのですが、実際問題として、例えばPorous-plate Coverなどは、出口ということを考えたときに、FAAの認証が得られるのかという疑問もありましたし、あとVGやPRLEも、フラップの格納にちゃんと既存機で収まるのかなど、いろいろと疑問があって、確かに取り付けられそうには見えて、研究的には面白いと思うのですけれど、出口として考えたときに、そのまま適用できるものなんでしょうか。

【渡辺プログラムディレクタ】 お答えします。
 まず、フラップにつきましては、きちんと格納できるということで考えてございます。脚につきましては、もちろんFAAの認証は取っていかなければいけないんですけれども、まずはその見込みは、当然出していかなければいけないということと、あと、脚については、少し収納性が悪いというようなこともございまして、今はボーイングとの共同研究を進めていく中で、JAXA側では収納性といったものをすごく重視して、それに見合った低騒音化デバイスの開発ということで、今、目指している最中でございます。

【河合委員】 ありがとうございます。
 これからさらに進めていくという観点と理解しました。あともう一点ですが、新しい知の創出への貢献の評価について、発表たくさんあるのでよかったというようなことが事務局から発言あったと思うのですが、8年間で24億円ぐらいで、査読論文が英文誌4編、国内誌1編というのは、客観的に見ると、独創性、発展性という観点から、なかなか外の人が見たときに優れているという評価がちょっと難しいのかなと個人的には思いました。ここはこの表現で大丈夫かと個人的に思いました。いかがでしょうか。

【渡辺プログラムディレクタ】 すいません。こちらは、パワーポイントの資料の36ページを御覧いただきたいと思うのですが。

【河合委員】 ここで査読論文が英文4誌、和文1誌というようにアウトプットのまとめがなっていて、これが先ほどの、事務局の説明のところの事後評価のところで、査読論文5件となっていると思うんですけれども。学術的、新規性とか独創性という観点から言うと、8年間で二十何億円を使って学術論文5編というのは、客観的に見て、評価としては、表に出たときに少ないと評価されないかという心配をしました。

【渡辺プログラムディレクタ】 こちらにつきましては、JAXA側の事後評価という考えでいきますと、やはり社会実装、すなわち産業競争力強化の視点が、このプロジェクトは非常に強く出ているものでございまして、そういった意味では、成果が出たらすぐ論文かというと、そうではなくて、やはりまずは特許だということを考えてございました。
 特許につきましては、ここに記載してありますとおり、出願については、国内・国際合わせて12件、取得についても11件ということで、こちらで非常に大きな成果が出て、そこからオープンにできるところを抽出して査読論文にしたということで、そのような御理解で、我々はいい成果ではないかということで御提案しているところでございます。

【河合委員】 もちろん社会実装という観点で、いい成果出たのは分かるのですが、書き方として、これで世間で見たときにどうかと思っただけです。

【渡辺プログラムディレクタ】 分かりました。コメントありがとうございます。少し配慮していきたいと思います。事務局と相談させていただければと思います。

【李家主査】 今の点ですけども、研究開発計画でアウトプットをどう評価するかとか、そういう指標がありますので、そこに特許数や共同研究数が挙がってたかと思います。それに従って、今回の事後評価の表現方法も変わってくるかと思うので、事務局で、その辺のところは調整していただければと思います。どうもありがとうございました。
 時間も過ぎてしまいましたので、まださらに御質問がある場合には、この委員会の後、事務局にまで御連絡いただければ、事務局から回答していただけることになっております。
 それから、事後評価案に関する御意見ですけども、これは、後ほど事務局から連絡があると思いますけれども、資料70-2-2のフォーマットのコメント欄に記入していただいて、提出していただくようお願いいたします。
 次回の委員会で、それに関する議論をさせていただければと思っておりますが、そのような方向でよろしいでしょうか。

【李家主査】 どうもありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。

(3) その他
【李家主査】 最後の議題の(3)その他ですが、こちらで用意している議題はなかったと思いますが、よろしいですかね。

【先光課長補佐】 はい、事務局からは、その他は特にございません。

【李家主査】 はい、ありがとうございます。
 では、これで本日の議題全て終わりましたので、事務局に進行をお返しいたします。どうも今日は御議論ありがとうございました。

【先光課長補佐】 それでは、最後に事務局から事務連絡をさせていただきます。
 本日御議論いただきました環境適合性・経済性向上の研究開発、こちらの事後評価案に対する御意見につきましては、別途メールでお送りいたしますワードファイルに改めて御記入をいただきまして、事務局に御返送をお願いいたします。併せて、その際に、次回の航空科学技術委員会の日程調整もお願いさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 また、事後評価に関連しまして、御不明な点がございましたら、遠慮なく事務局まで、お問合せいただければと思います。
 また、本日の委員会の議事録につきましては、事務局で案を作成しまして、委員の皆様に御確認の上、文部科学省のホームページにて公表させていただきます。
 それでは、これで科学技術・学術審議会研究会計画・評価分科会 第70回航空科学技術委員会を閉会とさせていただきたいと思います。本日は、お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございました。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課